JP6199754B2 - 保温材および繊維製品 - Google Patents

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Description

本発明は、高い保温性、柔らかな風合い、優れた寸法安定性、およびウォッシャブル性を有する保温材および繊維製品に関する。
従来、ダウンジャケット等の防寒衣料品や掛け布団などの寝装寝具用の保温材として、羽毛や綿、ポリエステルなどの合繊綿を開繊させ吹き込んだもの、ウエッブシートや不織布などが使用されている。
なかでも羽毛は、風合いに富み、軽量で、保温性に優れ、体に沿いやすく、嵩高性に優れ、そして回復率の高いことが知られている。しかしながら、羽毛を得るためには、水鳥を多く飼育しなければならず、その結果、水鳥の排泄物による水質汚染、または感染症の発生とその拡散という問題が生じているだけでなく、動物愛護の点からも、羽毛の使用を控える動きもある。また、羽毛製品は家庭で洗濯するのは困難である。
一方、ポリエステルなどの合繊綿を使用した中入れ綿は、羽毛に比べ嵩が出ず、暖かさに劣る。嵩を得る方法としてポリエステル繊維などをアクリル系バインダーなどの樹脂で接着した不織布、熱融着繊維で接着した不織布が以前から使用されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。しかしながら、保温性、風合い、寸法安定性の点でまだ十分とはいえなかった。
特開2013−112911号公報 登録実用新案第3151737号公報
本発明は上記の背景に鑑みなされたものであり、その目的は、高い保温性、柔らかな風合い、優れた寸法安定性、およびウォッシャブル性を有する保温材および繊維製品を提供することにある。
本発明者は上記課題を達成するため鋭意検討した結果、非弾性捲縮短繊維と熱接着性複合短繊維とで構成され、かつこれらの繊維がその厚さ方向に配列してなる繊維構造体の比容積を特定の範囲内とし、かかる繊維構造体を用いて保温材を構成することにより、高い保温性、柔らかな風合い、および優れた寸法安定性、ウォッシャブル性を有する保温材が得られることを見出し、さらに鋭意検討を重ねることにより本発明を完成するに至った。
かくして、本発明によれば「非弾性捲縮短繊維と、該非弾性捲縮短繊維を構成するポリマーよりも25℃以上低い融点を有するポリマーが、熱融着成分としてその表面に配された熱接着性複合短繊維とが重量比率で90/10〜10/90となるように混綿されたウエブを積層して得られた、前記熱接着性複合短繊維同士が交差した状態で熱融着された固着点および/または前記熱接着性複合短繊維と前記非弾性捲縮短繊維とが交差した状態で熱融着された固着点とが散在し、かつ前記非弾性捲縮短繊維と熱接着性複合短繊維とがその厚さ方向に配列してなる繊維構造体を含む保温材であって、前記繊維構造体において、JIS L1097 5.2により測定した比容積が90〜300cm/gの範囲内であり、前記繊維構造体が、不織布ウエブをアコーデオン式に折り畳んだ構造を備える繊維構造体であり、かつ前記繊維構造体において、JIS L1097 5.3により測定した回復率が90%以上であることを特徴とする保温材。」が提供される。
その際、前記非弾性捲縮短繊維が、ポリシロキサンを含む油剤が繊維重量対比0.1〜3重量%の範囲で付着しているポリエステル系繊維を含むことが好ましい。また、前記非弾性捲縮短繊維がアクリル系吸放湿繊維を含むことが好ましい。また、前記非弾性捲縮短繊維がポリトリメチレンテレフタレート繊維を含むことが好ましい。また、前記熱接着性複合短繊維の熱融着成分が熱可塑性エラストマーからなることが好ましい。また、前記非弾性捲縮短繊維において、単繊維繊度が0.1〜5.0dtexの範囲内であることが好ましい。また、前記繊維構造体の片面または両面に目付3〜30g/mの不織布シートを積層していることが好ましい。また、前記繊維構造体の片面または両面が前記熱接着性複合短繊維の融点より20℃低い温度から50℃高い温度で熱処理されていることが好ましい。また、経方向および緯方向のうち少なくとも一方が50g/mm応力に対して5%以上の伸度を有することが好ましい。また、石油系ドライクリーニングを3回行った後の厚み保持率が50%以上であることが好ましい。また、洗濯JISL0217 103号を3回行った後の厚み保持率が50%以上であることが好ましい。また、洗濯JISL0217 103号の洗濯を行う際の吊り干し乾燥時間が、30cm角で6時間以内であることが好ましい。また、140℃のアイロンで20秒間プレスした前後の厚み保持率が50%以上であることが好ましい。
また、本発明によれば、前記の保温材を用いてなる、衣料、寝装寝具、インテリア製品からなる群より選択される繊維製品の製造方法が提供される。
本発明によれば、高い保温性、柔らかな風合い、優れた寸法安定性、およびウォッシャブル性を有する保温材および繊維製品が得られる。
本発明で用いられる繊維構造体を模式的に示す図である。 T/Wの測定方法を説明するための図である。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明において非弾性捲縮短繊維としては、特に限定はないが、綿、ウール等の天然繊維、カーボン繊維等の無機繊維、アクリル系繊維、セルロース系繊維、アラミド系(パラ型またはメタ型)、ポリオレフィン系、ナイロン系、ポリエステル系の合成繊維等、さらには雑綿または反毛とよばれるリサイクル繊維等が例示される。なかでも、取扱い性、廃棄性およびリサイクル性の点で合成繊維が好ましい。
前記ポリエステル系繊維としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリ−1,4−ジメチルシクロヘキサンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリピバロラクトン、ポリ乳酸(PLA)、ステレオコンプレックスポリ乳酸などのポリエステル、またはこれらの共重合体からなる短繊維ないしそれら短繊維の混綿体、または上記ポリマー成分のうちの2種類以上からなる複合短繊維等を挙げることができる。また、マテリアルリサイクルまたはケミカルリサイクルされたポリエステルや、特開2009−01694号公報に記載された、バイオマスすなわち生物由来の物質を原材料として得られたモノマー成分を使用してなるポリエチレンテレフタレートや、さらには、特開2004−270097号公報や特開2004−211268号公報に記載されているような、特定のリン化合物およびチタン化合物を含む触媒を用いて得られたポリエステルなどからなる短繊維でもよい。これら短繊維のうち、繊維形成等の観点から、ポリエチレンテレフタレートまたはポリトリメチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートからなる短繊維が特に好ましい。
また、柔らかな風合いを得る上で、ポリシロキサンを含む油剤が0.1〜3質量%の範囲で付着しているポリエステル系繊維が好ましい。また、保温材に吸放湿性を付加する上でアクリル系吸放湿繊維が好ましい。さらには、保温材にストレッチ性やさらに柔らかな風合いを得る上でポリトリメチレンテレフタレート繊維が好ましい。
前記非弾性捲縮短繊維において、単繊維の断面形状は通常の丸、扁平、四つ山扁平などのくびれ付き扁平、三角や四角の多角形、丸中空や三角中空等の中空などいずれでもよい。
前記の非弾性捲縮短繊維において、単繊維繊度としては、0.1〜6.6dtex(より好ましくは0.5〜5.0dtex、特に好ましくは0.9〜5.0dtex)であることが好ましい。単糸繊度が0.1dtexよりも小さいと、繊維構造体を作るためのカード工程が困難となる、6.6dtexよりも大きいと高い保温性と柔らかな風合いを得ることができなくなるおそれがある。
また、非弾性捲縮短繊維の繊維長としては、繊維長が10〜100mmに裁断されていることが好ましい。
前記の非弾性捲縮短繊維において、捲縮数は3〜40個/2.54cm(好ましくは5〜15個/2.54cm)であることが好ましく、捲縮率としては20〜35%であることが好ましい。かかる捲縮数や捲縮率がこれらの範囲よりも小さいとウエブの嵩が出にくく、ウエブ化が困難となるおそれがある。また同時に、繊維構造体の反発性が乏しく、耐久性の低いものしか得られないおそれがある。逆に、かかる捲縮数や捲縮率がこれらの範囲よりも大きいと、短繊維の絡合が大きすぎてカード等の開繊工程で十分な梳綿をなすことができないおそれがある。
繊維に捲縮を付与する方法としては、熱収縮率の異なるポリマーをサイドバイサイド型に張り合わせた複合繊維を用いてスパイラル状捲縮を付与、異方冷却によりスパイラル状捲縮を付与、通常の押し込みクリンパー方式による機械捲縮を付与など、種々の方法を用いればよい。
一方、熱接着性複合短繊維は、前記非弾性捲縮短繊維を構成するポリマーの融点よりも25℃以上(より好ましくは25〜150℃)低い融点を有する低融点ポリマーが少なくとも熱融着成分としてその表面に配された短繊維である。加熱により熱融着成分が溶融し、該熱接着性複合短繊維同士の交差点や該熱接着性複合短繊維と前記非弾性捲縮短繊維との交差点が融着する。その際、前記融点差が25℃未満では、接着が不十分となる上、腰のない取り扱いにくい繊維構造体となるおそれがある。また、熱処理温度の細かな制御が必要となり、生産性に劣るものとなる。
前記熱接着性複合短繊維において、熱融着成分を形成する低融点ポリマーが熱可塑性エラストマーであることが好ましい。
かかる熱可塑性エラストマーとしては、耐熱性があり、高温熱成型可能なポリエステル系エラストマーが特に好ましい。ポリエステル系エラストマーとしては熱可塑性ポリエステルをハードセグメントとし、ポリ(アルキレンオキシド)グリコールをソフトセグメントとして共重合してなるポリエーテルエステル共重合体、より具体的にはテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ジフェニル−4,4’−ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、コハク酸、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジ酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体などから選ばれたジカルボン酸の少なくとも1種と、1,4−ブタンジオール、エチレングリコールトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコールネオペンチルグリコール、デカメチレングリコール等の脂肪族ジオールあるいは1,1−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンメタノール等の脂環式ジオール、またはこれらのエステル形成性誘導体などから選ばれたジオール成分の少なくとも1種、および平均分子量が約400〜5000程度のポリエチレングリコール、ポリ(1,2−および1,3−ポリプロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフランとの共重合体等のポリ(アルキレンオキサイド)クリコールのうち少なくとも1種から構成される三元共重合体を挙げることができる。
特に、非弾性捲縮短繊維との接着性性能からすればポリブチレン系テレフタレートをハード成分とし、ポリオキシブチレングリコールをソフトセグメントとするブロック共重合ポリエーテルエステルが好ましい。この場合、ハードセグメントを構成するポリエステル部分は、主たる酸成分がテレフタル酸、主たるジオール成分がブチレングリコール成分であるポリブチレンテレフタレートである。むろん、この酸成分の一部(通常30モル%以下)は他のジカルボン酸成分やオキシカルボン酸成分で置換されていてもよく、同様にグリコール成分の一部(通常30モル%以下)はブチレングリコール成分以外のジオキシ成分で置換されていても良い。また、ソフトセグメントを構成するポリエーテル部分はブチレングリコール以外のジオキシ成分で置換されたポリエーテルであってよい。
また、熱接着性複合短繊維において、熱融着成分の相手側成分としては特に限定されないが、ポリエステル系ポリマーが好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリテトラメチンテレフタレート、ポリ−1,4−ジメチルシクロヘキサンテレフタレート、ポリピバロラクトンまたはこれらの共重合体エステル等を好適に使用できる。
なお、上述のポリマー中には、各種安定剤、紫外線吸収剤、増粘分岐剤、艶消し剤、着色剤、その他各種の改良剤等も必要に応じて配合されていてもよい。
熱接着性複合短繊維において、熱融着成分が、少なくとも1/2の表面積を占めるものが好ましい。重量割合は、熱融着成分と相手側成分とが、この順の複合比率で10/90〜70/30の範囲にあるのが適当である。熱接着性複合短繊維の形態としては、特に限定されないが、熱融着成分と相手側成分とが、サイドバイサイド、芯鞘型であるのが好ましく、より好ましくは芯鞘型である。芯鞘型の熱接着性複合短繊維では、熱融着成分が鞘部となり、相手側成分が芯部となる。この芯部は同心円状または偏心状にあってもよく、偏心状が好ましい。
前記の熱接着性複合短繊維において、単繊維繊度としては0.1〜6.6dtex(より好ましくは0.5〜5.0dtex、特に好ましくは0.9〜5.0dtex)であることが好ましい。単繊維繊度が0.1dtexよりも小さいと、熱接着性複合短繊維自体を作ることが難しくなるおそれがある。逆に、6.6dtexよりも大きいと高い保温性と柔らかな風合いを得ることができなくなるおそれがある。
また、熱接着性複合短繊維の繊維長としては、繊維長が10〜100mmに裁断されていることが好ましい。
本発明においては、上記非弾性捲縮短繊維と熱接着性複合短繊維を混綿させ、加熱処理することにより、該熱接着性複合短繊維同士が交差した状態で熱融着された固着点および/または該熱接着性複合短繊維と該非弾性捲縮短繊維とが交差した状態で熱融着された固着点とが散在してなる繊維構造体が形成される。この際、非弾性捲縮短繊維と熱接着複合短繊維との重量比率は90/10〜10/90である必要がある。熱接着複合短繊維の比率がこの範囲より少ない場合は、固着店が少なくなり、柔らかい風合いと優れた寸法安定性を得ることができない。一方、熱接着複合短繊維の比率がこの範囲より多い場合は、固着点が多くなり過ぎ、柔らかな風合いを得ることができなくなる。
さらに、本発明の保温材に含まれる繊維構造体において、図1に模式的に示すように、前記熱接着性複合短繊維と前記非弾性捲縮短繊維とが繊維構造体の厚さ方向に配列していることが肝要である。ここで、「厚さ方向に配列している」とは、図2に示すように繊維構造体の厚さ方向に対して平行に配列されている繊維の総本数を(T)とし、繊維構造体の厚さ方向に対して垂直に配列されている繊維の総本数を(W)とするとき、T/Wが1.5以上であることである。また、本発明の中入れ綿を衣料や寝具に使用する際に、繊維の方向が厚さ方向であることが好ましい。
前記繊維構造体において、JIS L1097 5.2により測定した比容積が90〜300cm/gの範囲内であることが肝要である。該比容積が90cm/gより小さいと、柔らかな風合いと優れた保温性が得られないおそれがある。逆に、該比容積が300cm/gを越えると、寸法安定性が劣るおそれがある。
また、前記繊維構造体において、JIS L1097 5.3により測定した回復率が90%以上であることが好ましい。該回復率が90%よりも小さいと、柔らかな風合いと優れた保温性が得られないおそれがある。
このような繊維構造体を製造する方法には特に限定はなく、従来公知の方法を任意に採用すれば良いが、例えば非弾性捲縮短繊維と熱接着性複合短繊維とを混綿し、ローラーカードにより均一なウエブとして紡出した後、特開2007−025044号公報の図1に示すような熱処理機を用いて、ウエブをアコーデオン状に折りたたみながら加熱処理し、熱融着による固着点を形成させる方法などが好ましく例示される。例えば特表2002−516932号公報に示された装置(市販のものでは、例えばStruto社製Struto設備など)などを使用するとよい。
かくして得られた繊維構造体において、その厚さとしては、3〜100mmであることが好ましい。該厚さが3mmよりも小さいと、保温性が損われるおそれがある。逆に、該厚さが100mmよりも大きいと、取扱い性が損われるおそれがある。なお、繊維構造体を複数枚重ねてもよく、例えば、厚さ10mmの繊維構造体を重ね合わせて厚さ100mmの繊維構造体としてもよい。
また、前記繊維構造体の平均密度としては2〜20kg/mの範囲内であることが好ましい。この範囲を外れると、前記比容積を90〜300cm/gの範囲内とすることが困難になるおそれがある。
かかる繊維構造体には、撥水加工、防炎加工、難燃加工、マイナスイオン発生加工、金属蒸着など公知の機能加工が付加されていてもさしつかえない。
また、かかる繊維構造体には、片面または両面が前記熱接着性複合短繊維の融点より20℃低い温度から50℃高い温度で熱処理されていることが好ましい。ただし、熱処理による繊維構造体の厚み減少率は30%以下であることが好ましい。30%を超えると繊維構造体が有していた風合いおよび保温性を損なうおそれがある。
本発明の保温材は前記繊維構造体だけで構成されていてもよいし、他の布帛等と組み合わせて構成されていてもよい。
例えば、前記繊維構造体において、片面または両面に目付3〜30g/mの不織布シートを積層していてもよい。低目付の不織布シートを積層することで、前記繊維構造体の風合い、保温性を維持したまま洗濯耐久性を向上させることができる。不織布シートを積層する方法としては熱によるラミネーションが好ましい。その場合、シートそのものが80〜140℃の融点を有する接着シートや、片面ホットメルト接着剤が付着した不織布シートを用いる方法、不織布シートの間に低融点樹脂パウダーを挟んで接着させる方法などが好ましい。ただし、ラミネーションによる繊維構造体の厚み減少率は30%以下であることが好ましい。30%を超えると繊維構造体が有していた風合いおよび保温性を損なうおそれがある。
本発明の保温材において、経方向および緯方向のうち少なくとも一方が50g/mm応力に対して5%以上の伸度を有することが好ましい。わずかな応力での伸度を有することで、衣料用中綿および寝具等で用いられる際、良好な追随性および肌沿い性を得ることができる。
本発明の保温材は、前記に述べた構成を有することで、高い保温性、柔らかな風合い、優れた寸法安定性、優れたウォッシャブル性、石油系ドライクリーニング性、速乾性、アイロン後の優れた寸法安定性を有する。具体的には、洗濯JISL0217 103号を3回行った後の厚み保持率が50%以上であることが好ましい。また、石油系ドライクリーニングを3回行った後の厚み保持率が50%以上であることが好ましい。また、洗濯JISL0217 103号の洗濯を行う際の吊り干し乾燥時間が、30cm角で6時間以内であることが好ましい。また、140℃の市販アイロンで20秒間プレス(アイロンかけ)した前後の厚み保持率が50%以上であることが好ましい。
厚み保持率(%)=100×(アイロンかけ後の厚み)/(アイロンかけ前の厚み)
本発明の保温材を中入れ綿として使用する場合は、通気度が10cm/cm・sec以下である低通気布帛(側地)で表地および/または裏地を構成すると、人体より放熱された熱を低通気布帛で寝具内に閉じ込めることができるため、衣料や寝具の保温性を向上させることができ好ましい。該布帛の通気度が10cm/cm・secを越える場合は、放熱が大きくなるため、保温性が損われるおそれがある。なお、通気度が10cm/cm・sec以下である低通気度布帛は、公知のポリエステル繊維や綿繊維を用いて常法により織編成した織編物(通気度を10cm/cm・sec以下とする上で織物が好ましい。)。
ここで、中入れ綿単独の保温性の指標として、下記のクロー値が1.3以上(好ましくは1.3〜2.0)であることが好ましい。
クロー値=(温度差/熱流量)×2.3×10
また、人体側に遠赤外線を放出するシート状物を配置することにより、人体より放出された赤外線を吸収し遠赤外線を放出するため、保温効果をさらに向上させることができる。例えば、遠赤外線を放出するポリエステル繊維として帝人(株)のウォーマル(登録商標)を用いて必要に応じて紡績糸とした後、織物または不織布を得て、前記保温材と布帛の間に挿入してもよい。
次に本発明の繊維製品は、前記の保温材を用いてなり、衣料、寝装寝具、インテリア製品からなる群より選択される繊維製品である。なお、衣料には、ダウンジャケット、ダウンべスト、ダウンズボンなどのアウター衣料、スキーウエア、マウンテンジャケットなどのスポーツ衣料などが含まれる。また、寝装寝具には、かけ布団、寝袋、枕、こたつ布団、毛布などが含まれる。また、インテリア製品には室内や車両内で用いられる各種保温製品が含まれる。
次に本発明の実施例及び比較例を詳述するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、実施例中の各測定項目は下記の方法で測定した。
(1)融点
Du Pont社製熱示差分析計990型を使用し、昇温20℃/分で測定し、融解ピークをもとめた。融解温度が明確に観測されない場合には、微量融点測定装置(柳本製作所製)を用い、ポリマーが軟化して流動を始めた温度(軟化点)を融点とする。なお、n数5でその平均値を求めた。
(2)T/W
繊維構造体を厚さ方向に切断し、その断面において、厚さ方向に対して平行に配列されている、非弾性捲縮短繊維と熱接着性複合短繊維(図2において0°≦θ≦45°)の総本数を(T)とし、繊維構造体の厚さ方向に対して垂直に配列されている非弾性捲縮短繊維と熱接着性複合短繊維(図2において45°<θ≦90°)の総本数をWとしてT/Wを算出した。なお、本数の測定は、任意の10ヶ所について各々30本の繊維を透過型光学顕微鏡で観察し、その数を数えた。
(3)捲縮数、捲縮率
JIS L 1015に記載の方法により測定した。なお、n数5でその平均値を求めた。
(4)目付・厚み・密度
JIS K−6401に記載の方法により測定した。
(5)比容積
JIS L1097 5.2により比容積を測定した。
(6)回復率
JIS L1097 5.3により回復率を測定した。
(7)クロー値
(株)東洋精機製作所製ASTM型を用いて測定し、下記の式でクロー値を測定した。
クロー値=(温度差/熱流量)×2.3×10
(8)耐アイロン性
140℃に設定したアイロン(商品名:松下電器産業(株)社製の型式NI−U2R)をサンプルの上に静かに載せ、20秒間保持するその前後の厚みを測定し、厚み保持率を次式で算出した。
厚み保持率(%)=100×(アイロンかけ後の厚み)/(アイロンかけ前の厚み)
(9)ストレッチ性
繊維構造体(保温材)を30cm角に切り出し、50gになるように調整したゼムクリップで中央部をはさみ、伸びた長さを計測する。タテ・ヨコ、双方測定した。
(10)ウォッシャブル性
洗濯JISL0217、103号を3回行った前後の繊維構造体厚みを測定し、厚み保持率を次式で算出した。
厚み保持率(%)=100×(洗濯後の厚み)/(洗濯前の厚み)
また、上記洗濯は吊り干しで乾燥させ、乾燥時間を測定した。
(11)耐ドライクリーニング性
石油系ドライクリーニングを3回行った前後の繊維構造体厚みを測定し、厚み保持率を次式で算出した。
厚み保持率(%)=100×(洗濯後の厚み)/(洗濯前の厚み)
[実施例1]
テレフタル酸とイソフタル酸とを80/20(モル%)で混合した酸成分とブチレングリコールとを重合し、得られたポリブチレン系テレフタレート38重量%を更にポリテトラメチレングリコール(分子量2000)62重量%と加熱反応させ、ブロック共重合ポリエーテルポリエステルエラストマーを得た。この熱可塑性エラストマーの融点は155℃であった。この熱可塑性エラストマーを鞘(シース)に、ポリエチレンテレフタレート(融点256℃)を芯(コア)に紡糸して偏心シース・コア型複合繊維を得た。得られた複合繊維を2.0倍に延伸したのち、80℃で乾燥し捲縮を発現させたのち、油剤を付与し、51mmに切断することにより、熱接着性短繊維を得た。該熱接着性短繊維において、単糸繊度は2.2dtex、捲縮数は13個/2.54cm、捲縮率は12%であった。
次いで、該熱接着性短繊維50重量%と、非弾性捲縮短繊維1として常法にて得られたポリエチレンテレフタレート短繊維(単糸繊度3.3dtex、繊維長51mm、捲縮数14個/2.54cm、捲縮率15%、断面形状は丸中空、融点256℃)30重量%と、非弾性捲縮短繊維2としてポリシロキサンを含む油剤を繊維重量に対する付着量1.0wt%で付与したポリエチレンテレフタレート短繊維(単糸繊度1.7dtex、繊維長51mm、捲縮数14個/2.54cm、捲縮率15%、断面形状は中実、融点256℃)20重量%とを混綿し、通常のカード機でウエブを作製し、Struto社製Struto設備(特表2002−516932号公報に示された装置と同様のもの)を用いて、ローラ表面速度2.5m/分の駆動ローラにより、熱風サクション式熱処理機(熱処理ゾーンの長さ5m、移動速度1m/分)内へ押し込むことでアコーデオン式に折り畳み、熱風200℃×5分間処理し繊維構造体を得た。T/Wが1.5以上であり、熱接着性複合短繊維と非弾性捲縮短繊維とが繊維構造体の厚さ方向に配列していた。なお、重量は100g/m、厚み20mmであった。得られた繊維構造体の両面を150℃で熱処理した。厚みは19mmであった。かかる繊維構造体を保温材とし、比容積、回復率、ストレッチ性を測定した。結果を表1に示す。
一方、経糸および緯糸にポリエチレンテレフタレートからなるマルチフィラメント(総繊度83dtex)を用い、経糸密度が200本/2.54cm、緯糸密度が190本/2.54cm、通気度が2cm/cm・sec、目付が100g/mの織物を用意した。
次いで、該織物2枚で面積1mの前記繊維構造体(保温材)を挟み、縫い目間がタテ20cm、ヨコ15cmになるように格子状にキルティングを施した。
得られたキルティングシートのクロー値を測定した結果を表1に示す。また、キルティングシートの最も厚い部分の厚みを測定し、ウォッシャブル性、ドライクリーニング性、寸法安定性(耐アイロン性)試験を行い、厚み保持率を求めた。結果を表1に示す。
また、かかるキルティングシートをかけ布団として使用したところ、高い保温性、柔らかな風合い、および優れた寸法安定性を有するものであった。また、ウォッシャブル性、ドライクリーニング性にも優れていた。
[実施例2]
実施例1と同様の熱接着性短繊維50重量%と、非弾性捲縮短繊維としてポリエチレンテレフタレート短繊維(単糸繊度3.3dtex、繊維長51mm、捲縮数14個/2.54cm、捲縮率15%、断面形状は丸中空、融点256℃)30重量%と、吸湿発熱繊維(東邦テキスタイル製サンバーナー(商品名)、単糸繊度2.3dtex、繊維長38mm、捲縮数15個/2.54cm、捲縮率14%)20重量%とを混綿すること以外は実施例1と同様にした。比容積、回復率、ストレッチ性、クロー値、厚み保持率の結果を表1に示す。
[実施例3]
実施例1と同様の熱接着性短繊維50重量%と、非弾性捲縮短繊維としてポリトリメチレンテレフタレート短繊維(帝人(株)製ソロテックス(商品名)、単糸繊度3.3dtex、繊維長51mm、捲縮数15個/2.54cm、捲縮率15%、断面形状は丸中空)30重量%と、吸湿発熱繊維(東邦テキスタイル製サンバーナー(商品名)、単糸繊度2.3dtex、繊維長38mm、捲縮数15個/2.54cm、捲縮率14%)20重量%とを混綿すること以外は実施例1と同様にした。比容積、回復率、ストレッチ性、クロー値、厚み保持率の結果を表1に示す。
[比較例1]
テレフタル酸とイソフタル酸とを80/20(モル%)で混合した酸成分とブチレングリコールとを重合し、得られたポリブチレン系テレフタレート38重量%を更にポリテトラメチレングリコール(分子量2000)62重量%と加熱反応させ、ブロック共重合ポリエーテルポリエステルエラストマーを得た。この熱可塑性エラストマーの融点は155℃であった。この熱可塑性エラストマーを鞘(シース)に、ポリエチレンテレフタレート(融点256℃)を芯(コア)に紡糸して偏心シース・コア型複合繊維を得た。得られた複合繊維を2.0倍に延伸したのち、80℃で乾燥し捲縮を発現させたのち、油剤を付与し、64mmに切断することにより、熱接着性短繊維を得た。該熱接着性短繊維において、単糸繊度は6.6dtex、捲縮数は13個/2.54cm、捲縮率は12%であった。
次いで、該熱接着性短繊維50重量%と、非弾性捲縮短繊維としてポリエチレンテレフタレート短繊維(単糸繊度6.6dtex、繊維長64mm、捲縮数13個/2.54cm、捲縮率14%、断面形状は丸中空、融点256℃)50重量%とを混綿し、通常のカード機でウエブを作製し、そのまま熱処理を施すことにより、繊維が厚さ方向に配列していない繊維構造体を得た。繊維構造体の厚みは15mmであった。これ以外は実施例1と同様にした。比容積、回復率、ストレッチ性、クロー値、厚み保持率の結果を表1に示す。
Figure 0006199754
本発明によれば、高い保温性、柔らかな風合い、優れた寸法安定性、およびウォッシャブル性を有する保温材および繊維製品が提供され、その工業的価値は極めて大である。
1:熱接着性複合短繊維または非弾性捲縮短繊維
2:繊維構造体の厚さ方向
3:熱接着性複合短繊維または非弾性捲縮短繊維の配列方向
4:繊維構造体

Claims (14)

  1. 非弾性捲縮短繊維と、該非弾性捲縮短繊維を構成するポリマーよりも25℃以上低い融
    点を有するポリマーが、熱融着成分としてその表面に配された熱接着性複合短繊維とが重
    量比率で90/10〜10/90となるように混綿されたウエブを積層して得られた、前
    記熱接着性複合短繊維同士が交差した状態で熱融着された固着点および/または前記熱接
    着性複合短繊維と前記非弾性捲縮短繊維とが交差した状態で熱融着された固着点とが散在
    し、かつ前記非弾性捲縮短繊維と熱接着性複合短繊維とがその厚さ方向に配列してなる繊
    維構造体を含む保温材であって、
    前記繊維構造体において、JIS L1097 5.2により測定した比容積が90〜
    300cm/gの範囲内であり、
    前記繊維構造体が、不織布ウエブをアコーデオン式に折り畳んだ構造を備える繊維構造体であり、かつ前記繊維構造体において、JIS L1097 5.3により測定した回復率が90%以上であることを特徴とする保温材。
  2. 前記非弾性捲縮短繊維が、ポリシロキサンを含む油剤が繊維重量対比0.1〜3重量%
    の範囲で付着しているポリエステル系繊維を含む、請求項1に記載の保温材。
  3. 前記非弾性捲縮短繊維がアクリル系吸放湿繊維を含む、請求項1または請求項2に記載の保温材。
  4. 前記非弾性捲縮短繊維がポリトリメチレンテレフタレート繊維を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の保温材。
  5. 前記熱接着性複合短繊維の熱融着成分が熱可塑性エラストマーからなる、請求項1〜4のいずれかに記載の保温材。
  6. 前記非弾性捲縮短繊維において、単繊維繊度が0.1〜5.0dtexの範囲内である、請求項1〜5のいずれかに記載の保温材。
  7. 前記繊維構造体の片面または両面に目付3〜30g/mの不織布シートを積層している、請求項1〜6のいずれかに記載の保温材。
  8. 前記繊維構造体の片面または両面が前記熱接着性複合短繊維の融点より20℃低い温度
    から50℃高い温度で熱処理されている、請求項1〜7のいずれかに記載の保温材の製造方法
  9. 経方向および緯方向のうち少なくとも一方が50g/mm応力に対して5%以上の伸度を有する、請求項1〜8のいずれかに記載の保温材の製造方法
  10. 石油系ドライクリーニングを3回行った後の厚み保持率が50%以上である、請求項1〜9のいずれかに記載の保温材の製造方法
  11. 洗濯JISL0217 103号を3回行った後の厚み保持率が50%以上である、請求項1〜10のいずれかに記載の保温材の製造方法
  12. 洗濯JISL0217 103号の洗濯を行う際の吊り干し乾燥時間が、30cm角で6時間以内である、請求項1〜11のいずれかに記載の保温材の製造方法
  13. 140℃のアイロンで20秒間プレスした前後の厚み保持率が50%以上である、請求項1〜12のいずれかに記載の保温材の製造方法
  14. 請求項1〜13のいずれかに記載の保温材を用いてなる、衣料、寝装寝具、インテリア製品からなる群より選択される繊維製品の製造方法
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