JP6198341B2 - インク組成物及び繊維の捺染方法 - Google Patents
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近年、コンピューターの画像処理やプリントヘッド製造の技術的進歩により、インクジェットプリンタのプリント速度が大幅に向上されてきたこと;プリントデザインのデジタル化、プリント加工の多様化、及び小ロット化が市場で要求されてきたこと;等を背景に、インクジェット捺染の普及が進んでいる。
インクジェット捺染用の染料インクとしては、シルク、ナイロン等のポリアミド系繊維に用いる酸性染料インク;ポリエステル系繊維に用いる分散染料インク;綿、レーヨン等のセルロース系繊維に用いる反応性染料(反応染料)インク;等が販売されている。
また、上記の4色以外にライトマゼンタ、ライトシアン、ライトブラック(グレー)、ライトレッド、ライトブルー、ゴールデンイエロー、オレンジ、ライトレッド、ライトブルー、バイオレット、グリーン等の特色を加えて印刷することも一般的に行われている。
これらのインクに対しては、高画質、高堅牢性の印捺物の提供が可能で、且つ吐出安定性にも優れるといった性能が要望されている。
これらのうち、レッドインクは基本色である4色のインクセットのみならず、特色としても用いられる汎用性の高いインクである。従来のレッドインクに使用される染料の1つとして、C.I.Reactive Red 3:1が挙げられる。この染料は、色相及び発色性が良好であることが知られている。しかしながら、この染料は、一部のアルコール系溶剤(特にグリセリン、ジエチレングリコール等)と併用したときには染料の分解が生じ、これにより発色性が著しく低下してしまうことが知られており、これにより十分な色再現性が得られないという問題があった。
インク組成には様々な種類があるが、上記のアルコール系溶剤をレッドインクにおいても使用したいとの市場の要求があり、レッドの色相が良好で、且つ発色性、特にイエロー(〜レッド)〜マゼンタの範囲で高い発色性を有し、上記のアルコール系溶剤と併用しても、発色性が低下しないレッドインクが強く要望されている。
即ち本発明は、以下の1)〜6)に関する。
1)
着色剤として、C.I.Reactive Red 245と、C.I.Reactive Orange 13とを含有する、インクジェット捺染に用いるインク組成物であって、該インク組成物の総質量中に含有するC.I.Reactive Red 245と、C.I.Reactive Orange 13との含有比率が、質量基準で75:25〜25:75であるインク組成物。
2)
水溶性有機溶剤をさらに含有する上記1)に記載のインク組成物。
3)
25℃におけるインク組成物の粘度が、3〜20mPa・sの範囲である上記1)又は2)に記載のインク組成物。
4)
上記1)乃至3)のいずれか一項に記載のインク組成物の液滴を、記録信号に応じてインクジェットプリンタにより吐出させ、セルロース系繊維に付着させる工程Aと、該工程により付着させた液滴中の着色剤を熱により繊維に反応固着させる工程Bと、繊維中に残存する未固着の着色剤を洗浄する工程Cとを少なくとも含むセルロース系繊維の捺染方法。
5)
1種類以上の糊材、アルカリ性物質、還元防止剤及びヒドロトロピー剤を少なくとも含む水溶液を、インクを付着させる前の繊維に付与する、繊維の前処理工程Dをさらに含む上記4)に記載のセルロース系繊維の捺染方法。
6)
上記4)又は5)に記載の捺染方法により得られる染色されたセルロース系繊維。
上記インク組成物の総質量中における、着色剤の総含有量は通常0.5〜20%、好ましくは7〜15%である。
インク組成物中における、RR245とRO13の含有比率は、質量基準で通常75:25〜25:75、好ましくは70:30〜30:70、より好ましくは65:35〜35:65、特に好ましくは60:40〜40:60である。
しかし、例えば色調の微調整等を目的として、本発明により得られる効果を阻害しない範囲でRR245とRO13以外の染料をさらに含有しても良い。
そのような着色剤としては反応染料が好ましく、例えば、C.I.Reactive Yellow 2、3、18、81、84、85、95、99、102等のイエロー染料;C.I.Reactive Orange 5、9、12、13、35、45、99等のオレンジ染料;C.I.Reactive Brown 2、8、9、17、33等のブラウン染料;C.I.Reactive Red 3、3:1、4、13、24、29、31、33、125、151、206、218、226、245等のレッド染料が挙げられる。これらの中ではイエロー系及び/又はオレンジ系の染料が好ましい。
上記各色のインクに含有する着色剤としては特に制限されないが、染料が好ましく、反応染料がより好ましい。
上記インク組成物をインクジェット捺染に用いるときは、これらの無機不純物を除去するために限外濾過法、逆浸透法、イオン交換法等の公知の方法を利用し、インク組成物中に含有する無機不純物をできるだけ除去することが好ましい。インク組成物の総質量中に含有する無機不純物の含有量は、通常1%以下、好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.1%以下である。下限は、検出機器の検出限界以下、すなわち0%でよい。
上記インク組成物の総質量中における、水溶性有機溶剤の含有量は通常1〜50%、好ましくは5〜40%である。上記インク組成物は、 水溶性有機溶剤としては多価アルコール類、ピロリドン類等を挙げることができる。多価アルコール類としては、例えばアルコール性水酸基を2〜3個有するC2−C6多価アルコール及び、又は繰り返し単位が4以上で、分子量20,000程度以下のポリC2−C3アルキレングリコール、好ましくは液状のポリアルキレングリコール等が挙げられる。これらの中ではC2−C3アルキレングリコール及びピロリドン類が好ましく、前者がより好ましい。
水溶性有機溶剤の具体例としては、グリセリン、1,3−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール等のアルコール性水酸基を2〜3個有するC2−C6多価アルコール;ジグリセリン、ポリグリセリン等のポリグリセリルエーテル;ポリオキシエチレンポリグリセリルエーテル、ポリオキシプロピレンポリグリセリルエーテル等のポリオキシC2−C3アルキレンポリグリセリルエーテル;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等の、モノ、ジ又はトリC2−C3アルキレングリコール;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリC2−C3アルキレングリコール;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等のピロリドン類;等が挙げられる。これらの中ではプロピレングリコール及び2−ピロリドンが特に好ましい。
これらの水溶性有機溶剤は、単独、又は併用して使用される。
アニオン界面活性剤としてはアルキルスルホカルボン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、N−アシルアミノ酸又はその塩、N−アシルメチルタウリン塩、アルキル硫酸塩ポリオキシアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、ロジン酸石鹸、ヒマシ油硫酸エステル塩、ラウリルアルコール硫酸エステル塩、アルキルフェノール型燐酸エステル、アルキル型燐酸エステル、アルキルアリールスルホン酸塩、ジエチルスルホ琥珀酸塩、ジエチルヘキシルスルホ琥珀酸塩、ジオクチルスルホ琥珀酸塩等が挙げられる。
その具体例としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等の金属水酸化物;及び、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン;等が挙げられる。これらの中では、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンが特に好ましい。
上記インク組成物の総質量中におけるトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンの含有量は、通常0.1〜2質量%、好ましくは0.3〜1.5質量%である。
同様に、プレート法にて測定したときには通常20〜40mN/mの範囲が好ましい。インク組成物の粘度は上記の範囲で、使用するプリンタの吐出量、応答速度、インク液滴の飛行特性、及びインクジェットヘッドの特性等を考慮し、適切な物性値に調整することができる。
フルカラーの捺染を行うときは、各色のインク組成物を、それぞれの容器に充填し、それらの容器をインクジェットプリンタの所定位置に装填して使用する方法が挙げられる。
インクジェットプリンタには、例えば機械的振動を利用したピエゾ方式;加熱により生ずる泡を利用したバブルジェット(登録商標)方式;等を利用したものがある。上記インクジェット記録方法は、いかなる方式であっても使用が可能である。
洗浄後の繊維を50〜120℃の温度で、5〜30分乾燥することにより、目的とする染色されたセルロース系繊維を得ることができる。
前処理を施す工程としては、糊剤、アルカリ性物質、還元防止剤及びヒドロトロピー剤を含む前処理剤の水溶液を前処理液として用い、セルロース系繊維に付着、好ましくは該繊維を前処理液に含浸させて付着させるのが好ましい。
上記糊剤としては、グアー、ローカストビーン等の天然ガム類、澱粉類、アルギン酸ソーダ、ふのり等の海藻類、ペクチン酸等の植物皮類、メチル繊維素、エチル繊維素、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の繊維素誘導体、カルボキシメチル澱粉等の加工澱粉、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸エステル等の合成糊等があげられる。好ましくはアルギン酸ソーダが挙げられる。
上記アルカリ性物質としては、例えば無機酸または有機酸のアルカリ金属塩;アルカリ土類金属の塩;並びに加熱した際にアルカリを遊離する化合物が挙げられ、無機又は有機の、アルカリ金属水酸化物及びアルカリ金属塩が好ましく、ナトリウム化合物及びカリウム化合物等が挙げられる。具体例としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ金属水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸ナトリウム等の無機化合物のアルカリ金属塩;蟻酸ナトリウム、トリクロル酢酸ナトリウム等の有機化合物のアルカリ金属塩;等が挙げられる。好ましくは、炭酸水素ナトリウムが挙げられる。
上記還元防止剤としては、メタニトロベンゼンスルホン酸ナトリウムが好ましい。
上記ヒドロトロピー剤としては、尿素、ジメチル尿素等の尿素類等が挙げられ、尿素が好ましい。
上記糊剤、アルカリ性物質、還元防止剤、及びヒドロトロピー剤の4種の前処理剤は、単独で用いても併用しても良いが、併用するのが好ましい。また、各前処理剤のそれぞれについては単独で使用しても併用してもよい。
前処理液の総質量中における各前処理剤の混合比率は、例えば、いずれも質量基準で、糊剤が0.5〜5%、炭酸水素ナトリウムが0.5〜5%、メタニトロベンゼンスルホン酸ナトリウムが0〜5%、尿素が1〜20%、残部が水である。
前処理剤をセルロース系繊維へ付着させる方法としては、例えばパディング法が挙げられる。パディングの絞り率は40〜90%程度が好ましく、より好ましくは60〜80%程度である。
本発明のインクを用いて染色された染色布は、レッドの色範囲における彩度及び色再現性に優れる。また、耐光性、耐水性、耐湿性、色安定性、耐擦性、耐水性、耐酸化ガス性、耐汗性、耐塩素性、白地汚染性、洗濯堅牢度の各種堅牢度等においても優れる。この理由から、染色布の長期の保存安定性に優れる。
また、セルロース系繊維と同様に、ポリアミド系繊維を用いたときでも染色布の彩度、明度、及び印字濃度等の発色性、各種堅牢度にも優れる。
[実施例1]
下記表1に記載した各成分を混合し、固形分が溶解するまでおおよそ1時間攪拌して溶液とすることにより、実施例1のインク組成物を得た。得られたインク組成物を0.45μmのメンブランフィルター(商品名、セルロースアセテート系濾紙、アドバンテック社製)で濾過することにより、評価試験用の実施例1のインク組成物を調製した。
なお、下記表1中の各成分の数値は部数であり、「−」は、その成分を含有しないことを意味する。
なお、表1中「RR3:1」は括弧書きを記載していないが、以下の略号中では紛らわしさを排除するため、括弧書きとして記載した。
RR245:C.I.Reactive Red 245。
RO13:C.I.Reactive Orange 13。
「RR3:1」:C.I.Reactive Red 3:1。
PG:プロピレングリコール。
Gly:グリセリン。
2−Py:2−ピロリドン。
THMAM:トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン。
SF440:サーフィノール440。
GXL:プロクセルGXL(s)。
着色剤の種類及び部数を、上記表1に記載のものに代える以外は実施例1と同様にして、比較例1〜3の比較用のインク組成物を調製した。
アルギン酸ナトリウム、尿素、炭酸水素ナトリウム、メタニトロベンゼンスルホン酸ナトリウムを含む水溶液を用いてパディング法にて前処理を行った木綿布に、実施例1のインク組成物を使用してインクジェットプリンタPIXUS ip4100(キャノン社製)にてベタ柄を捺染した。この捺染物を60〜80℃で中間乾燥後、100〜103℃で8分間スチーミング処理を行った。水洗後、95〜100℃の沸騰水で10分間洗浄し、水洗、乾燥することにより染色された試験染布を得た。この試験染布を染布1とする。
実施例1のインク組成物の代わりに、比較例1〜3のインク組成物を用いる以外はそれぞれ上記と同様にして、比較例1〜3のインク組成物により染色された各試験染布をそれぞれ得た。比較例1〜3のインク組成物に対応する各試験染布を、それぞれ比較染布1〜3とする。
上記のようにして得た各試験染布について、発色性を評価した。発色性の評価は、イエロー及びマゼンタの反射濃度である、DY値及びDM値を測色することにより行った。発色性は、測定値が大きいほど優れる。結果を下記表2に示す。
測色には、GRETAG−MACBETH社製の測色機、商品名SpectroEyeを用いた。
レッドの色相は目視にて観察し、以下の3段階の基準で評価した。
[評価基準]
A:C.I.Reactive Red 3:1に類似する良好なレッドの色相である。
B:C.I.Reactive Red 3:1には類似しないが、色相としてはレッドである。
C:C.I.Reactive Red 3:1には類似せず、レッドにも相当しない色相である。
結果を下記表2に示す。
下記表3に記載した各成分を混合し、固形分が溶解するまでおおよそ1時間攪拌して溶液とすることにより、実施例2〜5のインク組成物を得た。得られたインク組成物を0.45μmのメンブランフィルター(商品名、セルロースアセテート系濾紙、アドバンテック社製)で濾過することにより、評価試験用の実施例2〜5のインク組成物を調製した。
なお、下記表3中の各成分の数値は部数であり、「−」は、その成分を含有しないことを意味する。
また、下記表3中の略号等は、上記表1中の略号等と同じ意味を有する。
着色剤の部数を、上記表3に記載の通りに代える以外は実施例2〜5と同様にして、比較例4〜5の比較用のインク組成物を調製した。
実施例1のインク組成物の代わりに、実施例2〜5、及び比較例4〜5のインク組成物を用いる以外はそれぞれ上記「B.試験染布の調製」と同様にして、各実施例、及び比較例のインク組成物により染色された各試験染布をそれぞれ得た。実施例2〜5のインク組成物に対応する各試験染布を染布2〜5、及び、比較例4〜5のインク組成物に対応する各試験染布を、それぞれ比較染布4〜5とする。
上記のようにして得た染布2〜5、及び比較染布4〜5をそれぞれ用い、上記「C.発色性評価試験」及び「D.色相評価試験」と同様にして、発色性、及び色相をそれぞれ評価した。結果を下記表4に示す。
Claims (6)
- 着色剤として、C.I.Reactive Red 245と、C.I.Reactive Orange 13とを含有する、インクジェット捺染に用いるインク組成物であって、該インク組成物の総質量中に含有するC.I.Reactive Red 245と、C.I.Reactive Orange 13との含有比率が、質量基準で75:25〜25:75であるインク組成物。
- 水溶性有機溶剤をさらに含有する請求項1に記載のインク組成物。
- 25℃におけるインク組成物の粘度が、3〜20mPa・sの範囲である請求項1又は2に記載のインク組成物。
- 請求項1乃至3のいずれか一項に記載のインク組成物の液滴を、記録信号に応じてインクジェットプリンタにより吐出させ、セルロース系繊維に付着させる工程Aと、該工程により付着させた液滴中の着色剤を熱により繊維に反応固着させる工程Bと、繊維中に残存する未固着の着色剤を洗浄する工程Cとを少なくとも含むセルロース系繊維の捺染方法。
- 1種類以上の糊材、アルカリ性物質、還元防止剤及びヒドロトロピー剤を少なくとも含む水溶液を、インクを付着させる前の繊維に付与する、繊維の前処理工程Dをさらに含む請求項4に記載のセルロース系繊維の捺染方法。
- 請求項4又は請求項5に記載の捺染方法により得られる染色されたセルロース系繊維。
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