JP6186967B2 - 船外機の変速機 - Google Patents

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Description

本発明は、上部のエンジンと下部のプロペラとを連結するドライブシャフトを有する船外機における変速機に関するものである。
従来、船外機本体の上部に配置された動力源であるエンジンと下部に配置されたプロペラを有する推進器とがドライブシャフトを介して相互に連結された船外機において、ドライブシャフトの途中適所に変速機を設けたものがある。このような船外機を搭載した船舶の走行状態あるいは環境等に応じて変速機をシフトし、船外機の動力性能や燃費性能等の向上を図ろうとしている。
かかる変速機の具体的な構成としては種々のものが考案されており、例えば特許文献1に記載の船外機では、エンジンと推進器(ロアユニット)を結ぶドライブシャフトに2個のプラネタリギヤ、3個の湿式多板クラッチ及び1個のワンウェイクラッチから自動変速機を設けている。この例によれば変速機の位置を船外機の上下方向で略中間部位とすることで、船外機全体のプロフィールに影響を与えることなく、コンパクトに変速機付船外機を実現し、これにより加速性能と燃費性能を両立させることができる。
更に、特許文献2のものでは動力伝達効率のよい平行軸平歯車により2速変速機を構成している。また、遠心クラッチを用いて変速機の切替え点を設定するようにしたものや、特許文献3のように変速機ケースと水ポンプケースとを一体に構成したもの等が知られている。
特開2009−149202号公報 特公平2−14237号公報 実公平4−27757号公報 特公平6−104475号公報
特許文献1のものでは湿式多板クラッチは強力な油圧装置を必要とするため、高価である上、油圧を維持するための油圧ポンプ作動に要するエネルギが多大であり、燃費性能の阻害要因となる。また、湿式多板クラッチは滑らかに繋がるが、4輪車の場合と異なり、船外機においては小さな慣性モーメントしか持たないプロペラのプロペラ速度の変化を吸収するために、4輪車の場合程その機能を必要としない。このため湿式多板クラッチにあっては価格、重量及び動作エネルギが大きい割には変速ショックを緩和するメリットが小さい。その他、遊星歯車は高価であるばかりでなく、動力伝達効率に関して平行軸平歯車よりも劣る等々の点から船外機には適していないと言わざるを得ない。
また、特許文献2のものでは変速切換機構がメカニカルリンク機構であるため、その切換時にリンクに伝わるショックを抑止し切れない。そして、変速遷移時に中間点での位置を許容していることから、相対速度差による磨耗の問題がある。更に、動力直結時に低速側、カウンタ経由時に高速側に設定していることから、燃費に大きく影響する巡航時にカウンタ経由の動力伝達となり、歯車伝達効率分だけ燃費が悪化してしまう。
更に、特許文献3のものではカウンタシャフトが進行方向前側に配置され、流体力学的に有利な前すぼまり型のギヤケース内にカウンタギヤを収めるので、大径のギヤを配置することができず、強度的に問題が発生する。また、メカニカルリンク機構によりギヤシフトするため、変速時のショックがリンク側へそのまま伝わってしまう等の問題がある。
一方、上述のような変速機は多数の可動部品を持ち、円滑作動を確保する上でその潤滑は極めて重要である。例えば特許文献4のものではエンジン用の潤滑油のオイルパンの潤滑油圧中に変速機の一部を浸漬することで、変速機の要部を潤滑するようにしている。このように変速機を潤滑するために特別な工夫をし、あるいは潤滑のための特別な装置等を必要としていた。
本発明はかかる実情に鑑み、変速制御を円滑且つ適正に行いながら、動力性能や燃費性能等の向上を図る船外機の変速機を提供することを目的とする。
本発明の船外機の変速機は、上部に搭載したエンジンの鉛直方向に延びるクランクシャフトがドライブシャフトに連結され、前記ドライブシャフトの上下に分離された、前記クランクシャフトと連結するドライブシャフト入力軸及びプロペラを駆動するドライブシャフト出力軸間に、変速比を少なくとも高低2段に切換可能な歯車式変速機を介装した船外機において、前記変速機はドライブシャフトハウジング内に形成した変速機室に収容され、前記ドライブシャフトと、このドライブシャフトと平行に配設したカウンタシャフトと、これらドライブシャフト入力軸及び出力軸と前記カウンタシャフトとの間にそれぞれ掛け渡された歯車列と、高速段と低速段とを選択的に切り換えるドッグクラッチ機構とを含んで構成され、前記変速機室の底部にて前記カウンタシャフトの下部軸受の下部に、この下部軸受を通して流下した潤滑油を溜める潤滑油の下部溜り部を設け、この潤滑油の下部溜り部から前記変速機の各部に潤滑油を送る潤滑油ポンプを備え、前記潤滑油ポンプは、前記カウンタシャフトの中空内部に螺旋溝を設けてなる螺旋ポンプにより構成されることを特徴とする。
また、本発明の船外機の変速機において、前記螺旋ポンプの螺旋溝は、前記カウンタシャフトの中空内部に上下に貫通する別体の筒体を挿入し、この筒体の外周に螺旋状の凹溝を形成して前記カウンタシャフトの中空内面との間に螺旋状の通路として形成されることを特徴とする。
また、本発明の船外機の変速機において、前記カウンタシャフトの上部に潤滑油の上部溜り部を設け、前記潤滑油ポンプは前記カウンタシャフトの中空内部を通して潤滑油の上部溜り部に潤滑油を汲み上げ、この潤滑油の上部溜り部から前記カウンタシャフトの上部軸受及び前記ドライブシャフト入力軸の軸受に潤滑油を供給する潤滑油通路を設けたことを特徴とする。
本発明によれば、潤滑油の下部溜り部を設けることで、変速機室の下方に配置された特にはギヤ及びそれらの軸受まわりが、下部溜り部中の潤滑油に浴し、潤滑される。これにより特別な装置を必要とすることなく、適正な潤滑を行い、装置の円滑作動を保証することができる。
本発明に係る船外機を示す後方斜視図である。 本発明に係る船外機を搭載した船舶の左側面図である。 本発明に係る船外機の概略構成例を示す左側面図である。 本発明に係る船外機における変速機の配置構成例を示す断面図である。 本発明に係る船外機における変速機のケースを示す分解斜視図である。 本発明に係る船外機におけるミッドユニットに配置構成される変速機を示す破断斜視図である。 本発明に係る船外機における変速機室の横断面図である。 本発明に係る船外機における変速機の破断斜視図である。 本発明に係る船外機における変速機の縦断面図である。 本発明に係る船外機における変速機の縦断面図である。 図9のI−I線に沿う断面図である。 図9のII−II線に沿う断面図である。 図9のIII−III線に沿う断面図である。 本発明に係る船外機における変速機の構成例を示すブロック図である。 本発明における変速機の潤滑系の構成例を示す断面図である。 本発明における変速機の潤滑系の構成例を示す断面図である。 本発明に係る船外機における冷却系の構成例を示すそれぞれ断面図である。 本発明に係る船外機における冷却系の構成例を示す断面図である。 本発明に係る船外機における冷却系の構成例を示すそれぞれ断面図である。
以下、図面に基づき、本発明による船外機の変速機における好適な実施の形態を説明する。
図1は、本発明に係る船外機10の一部破断した外観を示す後方斜視図である。船外機10は図2のように船舶1の船体後部に搭載され、この場合その前部側にて図3に示されるように船舶1の船体の後尾板Pに固定されるものとする。なお、図3は船外機10の概略構成例を示す左側面図であるが、以下の説明中で各図において必要に応じて、船外機10の前方を矢印Frにより、また後方を矢印Rrによりそれぞれ示し、また船外機10の側方右側を矢印Rにより、側方左側を矢印Lによりそれぞれ示す。
先ず、船外機10の全体基本構成について説明する。図1及び特に図3において、上部から下部へエンジンユニットもしくはパワーユニット11、ミッドユニット12及びロアユニット13が順に配置され、これらのユニットは一体的に結合構成される。エンジンユニット11においてエンジン14はエンジンベースもしくはエンジンホルダを介して、そのクランクシャフト15が鉛直方向を向くように縦置きに搭載支持される。なお、エンジン14としては、例えばV型多気筒エンジン等が選ばれる。エンジンユニット11及びミッドユニット12まわりは図1のように外装カバーにより覆われるが、図1ではミッドユニット12の外装カバーの一部を仮想的に破断した状態が示され、概略図示したドライブシャフトハウジング16内部に後述のドライブシャフトが配設される。なお、エンジン14はドライブシャフトハウジング16の上部に搭載される。
ミッドユニット12は、アッパマウント17A及びロアマウント17Bを介して、スイベルブラケット18に設定された支軸19(ステアリング軸)のまわりに一体に回動可能となるように支持される。スイベルブラケット18の左右両側にはクランプブラケット20が設けられ、このクランプブラケット20を介して船体の後尾板Pに固定される。スイベルブラケット18は、左右水平方向に設定された支軸21(チルト軸)のまわりに上下方向に回動可能に支持される。
ミッドユニット12において、クランクシャフト15の下端部に連結するドライブシャフト22が上下方向に貫通配置され、このドライブシャフト22の駆動力が、ロアユニット13のギヤケース内の後述するプロペラシャフトに伝達されるようになっている。ドライブシャフト22の前側には、前後進の切換等を行うためのシフトロッド23が上下方向に平行配置される。ミッドユニット12は、ドライブシャフト22を収容するドライブシャフトハウジング16を有している。
ロアユニット13において、ドライブシャフト22の駆動力によりプロペラ24を回転駆動する複数のギヤ等を含むギヤケース25を有する。ミッドユニット12から下方へ延出したドライブシャフト22はそれ自体に取り付けたギヤが、ギヤケース25内のギヤと噛合することで最終的にプロペラ24を回転させるが、シフトロッド23の作用でギヤケース25内のギヤ装置の動力伝達経路を切り換える、即ちシフトするようになっている。また、一体形成されたケーシング26にはミッドユニット12との合せ面付近にて上下に配置されたアンチスプラッシュプレート27及びアンチキャビテーションプレート28を有し、これらの下方へ延出したケーシング26の下部には、前後方向に弾丸状もしくは砲弾状を呈するように配置されたギヤケース25が配置される。
ケーシング26におけるギヤケース25の砲弾状の先端部側にシフトロッド23が上下に挿通支持される。シフトロッド23は、プロペラシャフト29の軸線延長線と交差する位置まで垂設される。また、ケーシング26の前後方向の略中央部付近には、ドライブシャフト22が挿通支持される。ギヤケース25において、プロペラシャフト29が前後方向に沿って配置され、複数のベアリングを介して回転自在に支持される。ドライブシャフト22の下端部にはドライブギヤ30が取り付けられ、プロペラシャフト29にはドライブギヤ30と噛合する前後一対のフォワード(前進)ギヤ31及びリバース(後進)ギヤ32が、それぞれ回転自在に支持される。
シフトロッド23を介してのシフト操作によりフォワードギヤ31又はリバースギヤ32からプロペラシャフト29への動力伝達経路が形成される。エンジン14が始動することで、その出力トルクがドイブシャフト22から推進装置に伝達される。即ち、フォワードギヤ31又はリバースギヤ32を介してプロペラシャフト29及びプロペラ24が回転して船外機10が推進力を発生し、従ってこれを搭載する船舶1が前進又は後進する。
上記の基本構成でなる船外機10において、図4にも示すようにミッドユニット12において、クランクシャフト15の下端部に連結するドライブシャフト22が上下方向に貫通配置され、このドライブシャフト22は更に、ロアユニット13のギヤケース25内のプロペラシャフト29に連結される。本発明では特に、図4のようにドライブシャフト22は、クランクシャフト15と連結するドライブシャフト入力軸22Aとプロペラ24を駆動するドライブシャフト出力軸22Bとに上下に分離される。これらドライブシャフト入力軸22A及びドライブシャフト出力軸22B間に、変速比を少なくとも高低2段に切換可能な歯車式変速機33が介装される。
ミッドユニット12においてドライブシャフトハウジング16の下方にて、変速機33の後述する変速機室37を形成するためのアッパケース34及びロアケース35が相互に一体に結合する。アッパケース34はドライブシャフトハウジング16に結合し、ロアケース35はロアユニット13と結合する。図5はアッパケース34及びロアケース35の具体的構成例を示しており、両者は上下に重合して、主にアッパケース34の前半部内に変速機33の変速機室37を形成するためのスペースを有する。なお、アッパケース34及びロアケース35とも後半部には上方に配置されたエンジン14から排出される排気ガスを、下方のロアユニット13側へと流して排出するための排気通路36が形成されている。ここでは、アッパケース34及びロアケース35はドライブシャフトハウジング16と別体に構成されるが、それらは実質的にドライブシャフトハウジング16の一部として機能し、従って変速機33自体もドライブシャフトハウジング16内に配置構成されるとしてもよい。
図6は、ミッドユニット12まわりの外装カバーを取り外し、アッパケース34及びロアケース35内に構成される変速機33を示す破断斜視図である。前述のように一体的に結合するアッパケース34及びロアケース35の内部には、変速機33の変速機室37が形成され、この変速機室37内に変速機33の複数の構成部材が収容配置される。変速機室37内は液密構造になっている。図7は変速機室37の横断面を示しており、アッパケース34の前半部に変速機室37が配置されると共に、その後半部には排気通路36が形成される。
変速機33について、図8等を用いて更に具体的に説明する。変速機33は、変速機室37に収容され、ドライブシャフト22と平行に配設されたカウンタシャフト38と、これらドライブシャフト22のドライブシャフト入力軸22A及びドライブシャフト出力軸22Bとカウンタシャフト38との間にそれぞれ掛け渡された歯車列39と、高速段と低速段とを選択的に切換可能なドッグクラッチ機構40とを含んで構成される。
特にドッグクラッチ機構40を駆動する後述の駆動装置63を油圧シリンダで駆動する油圧駆動装置で構成すると共に、この油圧シリンダを変速機室37内に配置する。
更に図9をも参照して、ドライブシャフト入力軸22Aは、変速機室37の前部寄りで左右方向略中央部に上方から挿入され、その下端部がベアリング41(以下、特にことわらない限りテーパローラベアリングを意味する)を介して間接的にアッパケース34に回転可能に支持される。ドライブシャフト出力軸22Bはドライブシャフト入力軸22Aの真下位置で、その上端側がベアリング42を介して間接的にロアケース35に回転可能に支持される。また、カウンタシャフト38はその上下端部がベアリング43,44を介して、それぞれアッパケース34及びロアケース35に回転可能に支持される。
歯車列39として、ドライブシャフト入力軸22Aに回転一体に設けられた主ドライブギヤ45と、ドライブシャフト出力軸22Bに回転自在に軸支された主ドリブンギヤ46と、主ドライブギヤ45に噛合いカウンタシャフト38へ回転一体に設けられたカウンタドリブンギヤ47と、カウンタシャフト38と回転一体に設けられて主ドリブンギヤ46に噛合うカウンタドライブギヤ48とを含んでいる。
ドライブシャフト入力軸22Aの下端部に形成されたスプライン(雄)49と主ドライブギヤ45のボス部に形成されたスプライン(雌)50とが係合することで、ドライブシャフト入力軸22A及び主ドライブギヤ45が回転一体に結合する。また、カウンタドリブンギヤ47及びカウンタドライブギヤ48間にはスペーサ51が介装され、両ギヤの間隔、即ち上下方向位置が規制される。カウンタシャフト38のカウンタドリブンギヤ47及びカウンタドライブギヤ48対応部位にはスプライン(雄)52が形成され、カウンタドリブンギヤ47及びカウンタドライブギヤ48にはそれぞれスプライン(雌)53,54が形成され、これらのスプライン52及び53,54が係合することで、カウンタシャフト38及びカウンタドリブンギヤ47あるいはカウンタドライブギヤ48が回転一体に結合する。このため主ドライブギヤ45、カウンタドリブンギヤ47、カウンタドライブギヤ48及び主ドリブンギヤ46でなる歯車列39は常時接続状態に保持される。
ドライブシャフト出力軸22Bの上端部には中空のアイドルシャフト55が外嵌し、この場合ドライブシャフト出力軸22Bに形成されたスプライン(雄)56とアイドルシャフト55に形成されたスプライン(雌)57とが係合することで、ドライブシャフト出力軸22B及びアイドルシャフト55が回転一体に結合する。また、アイドルシャフト55に外嵌するインナスリーブ58と主ドリブンギヤ46との間にベアリング(ニードルベアリング)59が装着され、主ドリブンギヤ46はドライブシャフト出力軸22Bとの関係では回転自在となる。なお、アイドルシャフト55の上端と主ドライブギヤ45の間にはベアリング42Aが装着される。
歯車列39の各歯車はハス歯歯車で構成される。この場合、相互に係合する主ドライブギヤ45及びカウンタドリブンギヤ47に作用するスラスト反力と、相互に係合する主ドリブンギヤ46及びカウンタドライブギヤ48に作用するスラスト反力が互いに対向するようにハス歯のねじれ角度を設定している。
また、主ドライブギヤ45及びカウンタドリブンギヤ47間のギヤ比Gr1、主ドリブンギヤ46及びカウンタドライブギヤ48間のギヤ比Gr2とすると、歯車列39全体での減速比R=Gr1×Gr2である。
ドッグクラッチ機構40において、アイドルシャフト55に外嵌して、主ドライブギヤ45及び主ドリブンギヤ46間をアイドルシャフト55の軸方向に沿って上下に往復動可能に支持されるドッグクラッチ60を有する。アイドルシャフト55に形成されたスプライン(雄)61とドッグクラッチ60に形成されたスプライン(雌)62とが係合することで、アイドルシャフト55及びドッグクラッチ60が回転一体に結合する。上述のようにドライブシャフト出力軸22B及びアイドルシャフト55は回転一体に結合しており、従ってドッグクラッチ60、アイドルシャフト55及びドライブシャフト出力軸22Bの三者は回転一体に結合する。
ドッグクラッチ60を上下動させる駆動装置については後述するが、上方に移動して主ドライブギヤ45と係合し(上側係合位置)、下方に移動して主ドリブンギヤ46と係合する(下側係合位置)。そして、変速機33はドッグクラッチ60が上下にスライドして高速段と低速段とに切り換えるように構成され、ドッグクラッチ60の下側係合位置が低速段に設定される。図9ではドッグクラッチ60の中立、即ちニュートラル位置が示されているが、上方へ移動することでドッグクラッチ60は主ドライブギヤ45と係合し、この場合ドライブシャフト入力軸22A及びドライブシャフト出力軸22B間は主ドライブギヤ45及びドッグクラッチ60を介して直結される。また、ドッグクラッチ60が下方へ移動することでドッグクラッチ60は主ドリブンギヤ46と係合し、この場合ドライブシャフト入力軸22A及びドライブシャフト出力軸22B間は、主ドライブギヤ45、カウンタドリブンギヤ47、カウンタドライブギヤ48及び主ドリブンギヤ46を経てなる動力伝達経路を介して、減速比Rで接続される。
変速機33の駆動装置63は、油圧シリンダによって駆動する油圧駆動装置で構成される。この油圧駆動装置は、電動式の油圧ポンプを備え、この油圧ポンプで発生させた油圧により油圧シリンダを作動させるようになっている。図10に示されるようにそのシリンダ軸線が鉛直方向に設定された油圧シリンダ64を有し、この例では油圧シリンダ64のシリンダ本体が変速機室37の天上部37aに固定支持される。油圧シリンダ64とドッグクラッチ60は、両者の間に配置されたスライドヨーク65を介して連結される。この場合スライドヨーク65は、変速機室37内に垂架されたガイドシャフト66に沿って上下にスライド可能に支持され、一端側は油圧シリンダ64の出力ロッド64aに連結される。これにより油圧シリンダ64によってスライドヨーク65を上下動させる。
また、スライドヨーク65の他端側にはシフトフォーク67が付設され、このシフトフォーク67はドッグクラッチ60側へ延出してこれと係合する。具体的にはドッグクラッチ60は図11等に示されるように平面視で概略円形状を呈し、図10及び図11のようにその外周縁に沿ってフランジ部60aが突設される。シフトフォーク67は図11のように平面視で円弧状を呈し、フランジ部60aを上下両側から挟むように係合する(図10)。
ここで、図11あるいは図12に示されるようにドライブシャフト22(ドライブシャ
フト入力軸22A及びドライブシャフト出力軸22B)は変速機室37の最前部の左右方向中央部に配置される。また、カウンタシャフト38と油圧シリンダ64とをドライブシャフト22の後方でそれぞれ左右にオフセットして平面視において三角形状に配置する。つまりドライブシャフト22、カウンタシャフト38及び油圧シリンダ64の三者が、前後方向あるいは左右方向に直線的に並ばない配置関係となっている。
油圧シリンダ64には図6のように油圧配管68が接続され、これらの油圧配管68を介して油圧シリンダ64に圧油が流出入する。これら油圧シリンダ64直近の油圧配管68は外装カバー内に収容されるが、変速機33の駆動装置63のうち油圧シリンダ64を除く電動式油圧ポンプや電磁切換弁等は船外機10の外部、即ち船舶1の船体側に配置される。この場合、油圧配管68と船体側の油圧ポンプは図1に示される油圧ホース69を介して接続される。
変速機33において、図13に示したように少なくともスライドヨーク65の移動位置を、ドッグクラッチ60の上側係合位置に保持するデテント装置70を設けることができる。デテント装置70は図10(A矢視)をも参照して、アッパケース34の側壁に固定され、スライドヨーク65側へ突設されたデテントホルダ71を有し、このデテントホルダ71に装着されたボール72がスプリング73の弾力によりスライドヨーク65の外側面に弾接するようになっている。なお、このデテント装置70は必要に応じて選択的に設けることができる。
図14は、駆動装置63の全体構成例を示している。油圧シリンダ64を含む油圧系において、電動モータ74Aにより駆動される油圧ポンプ74、油圧調整を行うレギュレータ75、ワンウェイバルブ76、フィルタ77、アキュームレイタ78、ソレノイドバルブ79、油圧センサ80及びリザーバタンク81が油圧配管82を介して図示のように接続される。これらの構成部材は船体側に装備され、ソレノイドバルブ79と油圧シリンダ64とは前述したように油圧ホース69を介して接続される。ソレノイドバルブ79等は船体側に装備のECU(Engine Control Unit)2によって作動制御される。油圧シリンダ64にはストロークセンサ83が付帯され、このストロークセンサ83により油圧シリンダ64の少なくとも作動ストローク端が検出されて、その検出信号がECU2へ送出される。なお、図1に示されるように船舶1の操縦席にはステアリング装置3やリモートコントロール装置4等が配置されており、これらの操作に応じてECU2を介して駆動装置63が制御される。
上記構成の変速機33の基本的動作において、油圧シリンダ64を作動させてスライドヨーク65を介して、例えばシフトフォーク67によりドッグクラッチ60を図9のニュートラル位置から上方へ移動させる。この場合、ドッグクラッチ60は主ドライブギヤ45と係合し、ドライブシャフト入力軸22A及びドライブシャフト出力軸22B間は主ドライブギヤ45及びドッグクラッチ60を介して直結され、変速機33は高速段にシフトする。一方、ソレノイドバルブ79を切り換えて、油圧シリンダ64を上記とは逆方向に作動させるとドッグクラッチ60は図9のニュートラル位置から下方へ移動する。この場合、ドライブシャフト入力軸22A及びドライブシャフト出力軸22B間は、歯車列39を介して、減速比Rで接続される。このように変速機33においてドッグクラッチ60を上下にスライドさせることにより、高速段と低速段とに適宜切り換えることができる。
このようにドライブシャフト22の途中に変速機33を設けたことで、動力性能や燃費性能等の向上を図ることができる。また、油圧シリンダ64を変速機室37内に配置されるため、油圧シリンダ64が海水に曝される心配はなく、装置の耐久性を大幅に向上することができる。
本発明において更に、変速機33を潤滑するための潤滑系を備え、歯車列39及びドッグクラッチ機構40等の潤滑を要する変速機33の各部に潤滑油を供給するようにしている。次にこの潤滑系について説明する。
図15及び図16において、変速機室37の底部37bにてカウンタシャフト38の下部軸受であるベアリング44の下部に、このベアリング44を通して流下した潤滑油を溜める潤滑油の下部溜り部84を設けられる。そして、この下部溜り部84から潤滑油を汲み上げて、変速機33の各部に潤滑油を送る潤滑油ポンプ85を備える。
潤滑油ポンプ85は、カウンタシャフト38の中空内部に螺旋溝を設けてなる螺旋ポンプにより構成される。より具体的には、カウンタシャフト38の中空内部に、上下に貫通する別体の筒体でなるヘリカルステータ86が挿入される。なお、ヘリカルステータ86の上端は、アッパケース34の上内壁に形成されたネジ部に螺着する。カウンタシャフト38及びヘリカルステータ86の下端部は下部溜り部84内に浸漬される。図9にも示されるようにヘリカルステータ86の外周には螺旋状の凹溝86aが形成され、この凹溝86aとカウンタシャフト38の中空内面との間に螺旋状の潤滑油通路87が形成される。このようにヘリカル状の潤滑油通路87を持つ螺旋ポンプによれば、カウンタシャフト38が回転することで、下部溜り部84内に溜まった潤滑油を潤滑油通路87に沿って上昇させる(図15、矢印L0)ことができる。
なおここで、本例では図9等に示されるようにヘリカルステータ86の外周に左ネジ方向に螺旋状の凹溝86aが形成される。一方、カウンタシャフト38の回転方向は上面視で反時計方向に設定され、カウンタシャフト38が回転すると、潤滑油はそれ自体の剪断抵抗により潤滑油通路87を上っていく。
汲み上げられた潤滑油は、ヘリカルステータ86の上端から溢れ出し、カウンタシャフト38の上部に形成された潤滑油の上部溜り部88に流入する。ここで、図5に示されるようにアッパケース34には、ドライブシャフト22及びカウンタシャフト38の嵌挿穴89,90がそれぞれ形成されている。カウンタシャフト38の嵌挿穴90の上側に設けられる上部溜り部88は、ドライブシャフト22の嵌挿穴89に向けて拡がるように形成される。更に、上部溜り部88と連通するかたちで、汲み上げられた潤滑油を上部溜り部88からカウンタシャフト38及びドライブシャフト入力軸22Aのそれぞれ軸受であるベアリング43,41に供給する潤滑油通路91,92が形成される。
上部溜り部88には図15のように蓋板93が被せられ、潤滑油通路91,92はアッパケース34外部から遮断されている。また、ヘリカルステータ86は中空構造を有するが、その上端にはプラグ94が嵌着し(図9参照)、潤滑油がヘリカルステータ86の上端からその中空内部に落ちて入ることはない。このため潤滑油は上部溜り部88から潤滑油通路91,92を通って、図15の矢印L1及び矢印L2のようにそれぞれベアリング43,41に供給される。
ここで、歯車列39を構成する主ドライブギヤ45、主ドリブンギヤ46、カウンタドリブンギヤ47及びカウンタドライブギヤ48にはそれぞれ、図11〜図13に示されるように複数の肉盗み穴95が歯幅方向に貫通形成されている。ベアリング43に供給された潤滑油の一部は、カウンタドリブンギヤ47及びカウンタドライブギヤ48のそれぞれ肉盗み穴95を通って順次落下しながら(図15、矢印L3)、それらの歯面や周辺部材を潤滑する。また、ベアリング41に供給された潤滑油の一部は、主ドライブギヤ45及び主ドリブンギヤ46のそれぞれ肉盗み穴95を通ると共に、ベアリング42A(図9)、シフトフォーク67、ドッグクラッチ60及びベアリング59(ニードルベアリング)に順次落下しながら(図15、矢印L4)、それらの歯面及び周辺部材を潤滑する。
また、ベアリング43及びベアリング41に供給された潤滑油の他の一部は、図16の矢印L5のようにカウンタドリブンギヤ47及び主ドライブギヤ45の上面を伝って、それらの外周部から落下し、あるいは飛散する。このように落下あるいは飛散する場合でもそれらの歯面や周辺部材を潤滑する。
上記のように上部溜り部88からベアリング43,41に供給された潤滑油は、その後図15あるいは図16の矢印L1〜矢印L5のような経路を通って、変速機室37内で落下あるいは飛散する。この場合、潤滑油が通る典型的な経路を示し、あるいは図示したものであり、この潤滑系によれば総じて、変速機室37内の細部まで潤滑油を満遍なく行き渡らせることができる。
変速機室37内の各部を潤滑した潤滑油は、変速機室37の底部37bに落下するが、図16に示されるように底部37bと下部溜り部84とは連通孔96を介して相互に連通している。これにより変速機33の潤滑に供した潤滑油は、変速機室37の底部37bに落下後、下部溜り部84に回収され、再び上記のように潤滑油ポンプ85によって汲み上げられて使用される。なお、連通孔96には図16のようにプラグ97が打設され、塞がれている。
次に本発明の船外機10における変速機33の特長的な作用効果について説明する。先ず、変速機室37の底部37bでカウンタシャフト38のベアリング44の下部に、このベアリング44を通して流下した潤滑油の下部溜り部84を設け、この下部溜り部84から潤滑油を汲み上げて、潤滑油を送る潤滑油ポンプ85を備える。
上記のように潤滑油の下部溜り部84を設けることで、変速機室37の下方に配置された特には主ドリブンギヤ46、カウンタドライブギヤ48及びそれらのベアリング42,44まわりは、下部溜り部84中の潤滑油に浴し、潤滑される。このため潤滑油の特別な供給装置を必要とすることなく、即ち構成の簡素化を図りながら、必要箇所を適正に潤滑することができる。その際、潤滑油を変速機室37内部に充満させることがない、つまり一定量の潤滑油を潤滑油ポンプ85により循環させているので、潤滑油の攪拌抵抗が小さて済む。
また、潤滑油ポンプ85は記カウンタシャフト38を中空にしてその内部に螺旋状の凹溝86aを設けて螺旋ポンプを形成してなる。
このように特別な装置を設けることなく、簡単な構成で潤滑油ポンプ85を実現することができる。螺旋ポンプの作用により、潤滑油を下部溜り部84から上方のベアリング43へと容易且つ的確に導くことができる。
また、ヘリカルステータ86の外周の凹溝86aとカウンタシャフト38の中空内面との間に螺旋状の潤滑油通路87が形成される。
カウンタシャフト38と比べて機械的強度を必要としない別体のヘリカルステータ86に螺旋状の凹溝86aを形成したので、螺旋状の凹溝86aの成形が容易であり、製造上極めて有利である。更に、かかる螺旋溝の横断面をコ字状ではなく「ロ」(四角形)又は「○」(円形)形状の閉断面にできるのでポンプ効率が向上する。
また、潤滑油ポンプ85はカウンタシャフト38の中空内部を通して潤滑油の上部溜り部88に潤滑油を汲み上げ、この潤滑油の上部溜り部88からベアリング43,41に供給される。
特別な装置を設けることなく、潤滑油を上部溜り部88から主ドライブギヤ45上方のベアリング41に導くことができる。また、主ドライブギヤ45の上方のベアリング41を潤滑した潤滑油は、飛散することで主ドライブギヤ45及びこれに噛合するカウンタドリブンギヤ47を特別な潤滑油供給装置なしに潤滑することができる。
また、本発明において更に、エンジン14を冷却するための冷却系を備える。ここでは変速機33との関係で冷却系について概略説明する。ロアユニット13において、図17(A)に概略図示したように冷却水ポンプ98が設置され、この冷却水ポンプ98から上方へ冷却水パイプ99がロアケース35内へと延出する。なお、以下の図において、冷却系における冷却水の流れを矢印Cにより示す。冷却水パイプ99はロアケース35の側部から一旦、外部へ出て図17(B)のように冷却水ホース100に接続される。冷却水ホース100は図1にも示されるように変速機33のケース、特にはアッパケース35を迂回して、図18のようにミッドユニット12内の冷却水導入通路101に接続される。
冷却水導入通路101は図18のようにミッドユニット12内を上昇し、図19(A)のようにアッパユニット11の下端付近の冷却水路102に接続される。冷却水路102に流入した冷却水はその後、図19(B)のようにアッパユニット11内を上昇し、排気マニホールドやシリンダブロック周辺を流通しながら冷却する。
この冷却系において冷却水パイプ99はロアケース35の側部から外部へ出て、冷却水ホース100に接続されるが、外装カバーにより覆われて外観に露呈しない。変速機33をミッドユニット12においてドライブシャフト22の途中に配置するが、変速機33が極めてコンパクトに構成されているため、冷却水ホース100を迂回するように配置しても既存の外装カバーを使うことができる。
以上、本発明を種々の実施形態と共に説明したが、本発明はこれらの実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲内で変更等が可能である。
上記実施形態においてヘリカルステータ86の外周に左ネジ方向に螺旋状の凹溝86aを形成する例を説明したが、右ネジ方向に形成し、これに対応してカウンタシャフト38の回転方向を上記実施形態と反対に設定することも可能である。
1 船舶、2 ECU、3 ステアリング装置、4 リモートコントロール装置、10 船外機、11 エンジン(パワー)ユニット、12 ミッドユニット、13 ロアユニット、14 エンジン、15 クランクシャフト、16 ドライブシャフトハウジング、17A アッパマウント、17B ロアマウント、18 スイベルブラケット、19,21 支軸、20 クランプブラケット、22 ドライブシャフト、23 シフトロッド、24 プロペラ、25 ギヤケース、26 ケーシング26(ロアケース)、27 アンチスプラッシュプレート、28 アンチキャビテーションプレート、29 プロペラシャフト、30 ドライブギヤ、31 フォワード(前進)ギヤ、32 リバースギヤ、33 変速機、34 アッパケース、35 ロアケース、36 排気通路、37 変速機室、38 カウンタシャフト、39 歯車列、40 ドッグクラッチ機構、45 主ドライブギヤ、46 主ドリブンギヤ、47 カウンタドリブンギヤ、48 カウンタドライブギヤ、51 スペーサ、55 アイドルシャフト、58 インナスリーブ、60 ドッグクラッチ、63 駆動装置、64 油圧シリンダ、65 スライドヨーク、66 ガイドシャフト、67 シフトフォーク、68 油圧配管、69 油圧ホース、70 デテント装置、71 デテントホルダ、72 ボール、73 スプリング、74 油圧ポンプ、75 レギュレータ、76 ワンウェイバルブ、77 フィルタ、78 キュームレイタ、79 ソレノイドバルブ、80 油圧センサ、81 リザーバタンク、82 油圧配管、83 ストロークセンサ、84 下部溜り部、85 潤滑油ポンプ、86 ヘリカルステータ、87 潤滑油通路、88 上部溜り部、89,90 嵌挿穴、91,92 潤滑油通路、93 蓋板、94 プラグ、95 肉盗み穴、96 連通孔、97 プラグ、98 冷却水ポンプ、99 冷却水パイプ、100 冷却水ホース、101 冷却水導入通路、102 冷却水路。

Claims (3)

  1. 上部に搭載したエンジンの鉛直方向に延びるクランクシャフトがドライブシャフトに連結され、前記ドライブシャフトの上下に分離された、前記クランクシャフトと連結するドライブシャフト入力軸及びプロペラを駆動するドライブシャフト出力軸間に、変速比を少なくとも高低2段に切換可能な歯車式変速機を介装した船外機において、
    前記変速機はドライブシャフトハウジング内に形成した変速機室に収容され、前記ドライブシャフトと、このドライブシャフトと平行に配設したカウンタシャフトと、これらドライブシャフト入力軸及び出力軸と前記カウンタシャフトとの間にそれぞれ掛け渡された歯車列と、高速段と低速段とを選択的に切り換えるドッグクラッチ機構とを含んで構成され、
    前記変速機室の底部にて前記カウンタシャフトの下部軸受の下部に、この下部軸受を通して流下した潤滑油を溜める潤滑油の下部溜り部を設け、この潤滑油の下部溜り部から前記変速機の各部に潤滑油を送る潤滑油ポンプを備え
    前記潤滑油ポンプは、前記カウンタシャフトの中空内部に螺旋溝を設けてなる螺旋ポンプにより構成されることを特徴とする船外機の変速機。
  2. 前記螺旋ポンプの螺旋溝は、前記カウンタシャフトの中空内部に上下に貫通する別体の筒体を挿入し、この筒体の外周に螺旋状の凹溝を形成して前記カウンタシャフトの中空内面との間に螺旋状の通路として形成されることを特徴とする請求項に記載の船外機の変速機。
  3. 前記カウンタシャフトの上部に潤滑油の上部溜り部を設け、前記潤滑油ポンプは前記カウンタシャフトの中空内部を通して潤滑油の上部溜り部に潤滑油を汲み上げ、この潤滑油の上部溜り部から前記カウンタシャフトの上部軸受及び前記ドライブシャフト入力軸の軸受に潤滑油を供給する潤滑油通路を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の船外機の変速機。
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