JP6184696B2 - ビスフェノール化合物の製造方法 - Google Patents
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Description
[1]フェノール化合物とカルボニル化合物とを、強酸基を有する陽イオン交換体及び2−(2−メルカプトエチル)ピリジンの存在下に反応させるビスフェノール化合物の製造方法であって、前記フェノール化合物とカルボニル化合物を含む反応原料中の水の濃度が0.05〜0.5重量%であることを特徴とするビスフェノール化合物の製造方法。
[2]前記強酸基を有する陽イオン交換体および前記2−(2−メルカプトエチル)ピリジンが、前記強酸基を有する陽イオン交換体の強酸基の少なくとも一部が2−(2−メルカプトエチル)ピリジンにより保護されている、変性強酸型陽イオン交換体として存在することを特徴とする[1]に記載のビスフェノール化合物の製造方法。
[3]前記変性強酸型陽イオン交換体が、2−(2−メルカプトエチル)ピリジンによりその強酸基の3〜30%が保護されているものであることを特徴とする[2]に記載のビスフェノール化合物の製造方法。
[4]前記強酸基を有する陽イオン交換体及び変性強酸型陽イオン交換体が、その粒径が30〜650μmのものが全体の50%以上であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載のビスフェノール化合物の製造方法。
[5]前記反応原料中のカルボニル化合物に対するフェノール化合物の量が、モル比で10〜40倍であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載のビスフェノール化合物の製造方法。
[6]フェノール化合物とカルボニル化合物とを、前記強酸基を有する陽イオン交換体および/又は変性強酸型陽イオン交換体の存在下、50〜90℃の温度で反応させることを特徴とする[1]〜[5]のいずれかに記載のビスフェノール化合物の製造方法。
[7]前記ビスフェノール化合物が、ビスフェノールAである[1]〜[6]のいずれかに記載のビスフェノール化合物の方法。
本発明は、フェノール化合物とカルボニル化合物とを、強酸基を有する陽イオン交換体及び2−(2−メルカプトエチル)ピリジンの存在下に反応させるビスフェノール化合物の製造方法であって、前記フェノール化合物とカルボニル化合物を含む反応原料中の水の濃度が0.05〜0.5重量%であることを特徴とするビスフェノール化合物の製造方法(以下、「本発明の製造方法」と称することがある)である。
上記カルボニル化合物の製造方法としては、通常用いられる公知の方法が挙げられるが、後で詳述するビスフェノール製造プロセス内で回収されるカルボニル化合物を用いることもできる。
この変性に供する強酸基を有する陽イオン交換体は、一般に用いられる陽イオン交換体にスルホン酸基等の強酸基を導入したものである。
上記強酸基を有する陽イオン交換体としての交換容量(強酸基の量)は、含水状態の樹脂の、単位体積当り、通常0.5meq/mL以上、好ましくは1.0meq/mL以上であり、一方、通常3.0meq/mL以下、好ましくは2.0meq/mL以下である。また、乾燥状態の樹脂では、単位重量当り、通常1.0meq/g以上、好ましくは2.0meq/g以上であり、一方、通常6.0meq/g以下、好ましくは5.5meq/g以下である。含水状態の樹脂から付着水を取り除いた湿潤状態では、通常0.5meq/g以上、好ましくは1.0meq/g以上であり、一方、通常3.0meq/g以下、好ましくは2.0meq/g以下である。この交換容量が低過ぎると触媒活性が不足し、また、過度に交換容量の高い陽イオン交換体は製造困難である。
なお、ここで用いられる強酸基を有する陽イオン交換体の主な形態としては、ゲル型と多孔質型(ポーラス型、ハイポーラス型、又はマクロポーラス型)が挙げられるが、本発明のビスフェノール化合物の製造に用いる場合、製造コストの観点から、ゲル型が好ましい。また、物質拡散性や、樹脂の耐久性、強度の確保の観点で、多孔質型(ポーラス型、ハイポーラス型、又はマクロポーラス型)も好ましい。ゲル型には単純ゲル型共重合体及び拡大網目型ゲル共重合体があり、いずれも用いることができる。一方、多孔質型は多孔性共重合体であって、表面積、気孔率、平均孔径などが任意のものを用いることができる。
本発明の製造方法で用いられる強酸基を有する陽イオン交換体(以下、「触媒ビーズ」と称することがある)、及び下述する変性強酸型陽イオン交換体のサイズは、平均粒径が、通常0.2mm以上、2.0mm以下の範囲にあり、かつ粒径分布均一度は、通常1.6以下、好ましくは1.5以下である。また、特に好ましくは、本発明で使用される触媒ビーズおよび下述する変性強酸型陽イオン交換体は、その全体の50%以上、好ましくは60%以上、さらに好ましくは80%以上、最も好ましくは90%以上が、粒径が30〜650μmである。
上記ゲル型触媒ビーズの原料であるスチレン系モノマーとは、スチレン、又はスチレンのベンゼン環若しくはスチレンのビニル基にイオン交換樹脂としての機能を損なわない範囲の任意の置換基を有するモノマーであるが、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリエーテル、ポリスチレンなどのポリマーや、オリゴマーの末端がスチリル構造になっているようなマクロモノマーであってもよい。なお、ここで、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び「メタクリル」を意味する。後述の「(メタ)アクリロイル」についても同様である。
スチレン系モノマーとしては、具体的には、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−エチルスチレン、m−エチルスチレン、p−エチルスチレン、フルオロスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン等の、ベンゼン環が炭素数1〜4のアルキル基又はハロゲン原子で置換されたスチレンや、α−メチルスチレン、α−フルオロスチレン、β−フルオロスチレン等の、ビニル基が炭素数1〜4のアルキル基又はハロゲン原子で置換されたスチレン等が挙げられる。スチレン系モノマーとしては、これらの中でも、スチレンが最も好ましい。また、これらのスチレン系モノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
これらの架橋性モノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明の製造方法で、当該触媒を、固定床流通方式で使用する場合には、含有される触媒ビーズ、又は下述する変性強酸型陽イオン交換体のうち、その粒径が30〜600μmのものが50%以上を占めるものが好ましく用いられる。
平均粒径=樹脂の累積体積の50%に相当する径
均一係数=大粒子側の累積体積が40%に相当する径/大粒子側の累積体積が90%に相当する径
また、篩別法以外の遠心沈降法、コールター法、画像解析法、レーザー回析散乱法などの方法を用いて得られた測定値を換算することにより、篩別法の値として用いることもできる。
上記2−(2−メルカプトエチル)ピリジンは、市販品、または特開2002−003475号公報、特開2002−220373号公報、及び特開2005−170820号公報等に記載されている方法に代表される公知の方法に準じて製造したもののうち、いずれを使用してもよい。
変性強酸型陽イオン交換体としては、その強酸基の3〜30%、好ましくは3〜20%が、2−(2−メルカプトエチル)ピリジンで保護されているものが用いられる。
本発明の製造方法では、上記全反応原料中の水の濃度が0.05〜0.5重量%に調整される。当該水の濃度は、0.1〜0.3重量%がさらに好ましく、0.15〜0.25重量%が最も好ましい。このような濃度の水を反応系中に存在させるには、水を含有しない原料を用いて、適正量の水を添加する方法が好ましい。また、反応前に原料であるフェノール化合物中の水分も除去しておくことが望ましい。水分を除去する方法としては、フェノール化合物の製造方法に記載したように、共沸蒸留などの方法が挙げられる。水を含有した原料を使用した場合でも、原料の水濃度が上記濃度になるように水を添加して使用することができる。
上記方法により製造された反応液中には、大過剰のフェノールの他に、未反応原料、反応時に生成した不純物等が含まれているので、これらの溶液の中から、目的とするビスフェノール化合物を取り出す必要がある。反応混合物から目的物質であるビスフェノール化合物を分離精製する方法は特に制限はなく、公知の方法に準じて行なわれるが、目的物質が、ビスフェノールAの場合を例として以下に説明する。
上記蒸留等により回収されたフェノール等のフェノール化合物は、これをリサイクルして、ビスフェノール化合物製造方法の原料として用いることができる。
なお、実験室などの小さなスケールでは、原料として用いるフェノール化合物として精製した高純度のフェノール化合物なども用いられるが、工業レベルのスケールでは、通常、プロセス内で回収されたフェノール化合物をリサイクルさせて使用するのが有利である。
上記回収アセトンには不純物として、微量の低級アルコールが含まれる。低級アルコールとは、炭素数1〜8のアルコールを意味し、代表的にはメタノールである。反応工程に供給される未反応のアセトンと回収アセトンを含む全アセトン中のメタノール濃度は、1,000ppm以下、好ましくは500ppm以下、より好ましくは300ppm以下であることが望ましい。
上記、低沸点成分分離工程を経た反応で得られた反応混合物を、続いて、ビスフェノールAとフェノールとの付加物の結晶を含有するスラリーを得る晶析工程に供する。晶析工程に供するビスフェノールAとフェノールとを含む成分のビスフェノールAの濃度は、得られるスラリーの取り扱いの容易さ等から、10〜40%が好ましい。また晶析方法としては、ビスフェノールAとフェノールとを含む成分を直接冷却させる方法、水等の他の溶媒を混合し、当該溶媒を蒸発させることによって冷却を行なう方法、さらにフェノールを除去して濃縮を行う方法及びこれらを組み合わせる方法等が挙げられ、所望の純度の付加物を得るために1回もしくは2回以上晶析させてもよい。
前記固液分離工程で得られた付加物の結晶を、溶融後にフラッシュ蒸留、薄膜蒸留及びスチームストリッピング等の手段によってフェノールを除去することにより、高純度の溶融ビスフェノールAを得る。除去されたフェノールは所望により精製され、反応や前記固液分離工程で得られた付加物の結晶の洗浄等に供することができる。
[実施例1]
(1)共重合体(ゲル型ビーズ)の製造
図1に示す、加振装置として水中スピーカーが取り付けられた液滴製造装置と重合反応装置を用いて、均一粒径の球状のゲル型ビーズ(以下、「共重合体」と称することがある)を製造した。
この液滴製造装置1は、連続相を形成する水性媒質2を保持する液滴製造槽3と、水性媒質2と混和しない疎水性液体4を保持する疎水性液体貯槽5と、疎水性液体貯槽5に貯留されている疎水性液体4を液滴製造槽3に供給する疎水性液体供給管6とを備えている。また、液滴製造装置1は、水性媒質2に接触し、疎水性液体供給管6から供給された疎水性液体4を噴出する噴出孔11を備えたノズル部材7と、液滴製造槽3内の水性媒質2に機械的に振動を加える加振手段である水中スピーカー(水中音響機器)8と、水性媒質2を貯留する水性媒質貯槽9と、水性媒質貯槽9に貯留されている水性媒質2を液滴製造槽3に供給する水性媒質供給管10とを備えている。ここで、符号12は疎水性液体噴出貯槽、符号13、14はそれぞれ疎水性液体、水性媒質の供給ポンプを示す。
また、図1の重合反応装置16は、液滴製造装置1の液滴製造槽3内の液滴15が水性媒質2と共に移送され液滴15を合着、破砕しないで重合反応を行わせる重合反応槽17と、重合反応槽17に液滴製造槽3内からの液滴15を合着、破砕させないで水性媒質2と共に移送する疎水性液滴移送管18とを有している。
液滴製造槽3は、液滴移送管18により重合反応槽17と連結されているため、水性媒質貯槽9から液滴製造槽3内に水性媒質2を供給することにより形成された液滴製造槽3内の水性媒質2の流れによって、液滴製造槽3内で製造された疎水性液体の液滴15は水性媒質2と共に連続的に重合反応槽17へ移送され、重合反応に供される。
得られた共重合体スラリーを、遠心分離機を用いて固液分離し、ポリビニルアルコール水溶液を含まない状態で回収した。得られた共重合体は平均粒径0.29mmで、均一係数は1.02の球状の粒子であった。
平均粒径=樹脂の累積体積の50%に相当する径
均一係数=大粒子側の累積体積が40%に相当する径/大粒子側の累積体積が90%に相当する径
上記(1)で得られた共重合体180gを、1Lの4ッ口フラスコに入れ、ニトロベンゼン198gを加えて70℃で1.5時間加熱、撹拌し、共重合体を膨潤させた。冷却後、ニトロベンゼン324g、98重量%硫酸360gと発煙硫酸189gを加えて、70℃まで昇温し、4時間加熱後、105℃まで昇温して3時間保持した。反応後、多量の水を加えてフラスコ内の硫酸を希釈して取り除いた後、脱塩水を加えて加熱、撹拌し、ニトロベンゼンを留去した。得られた樹脂を脱塩水にて洗浄し、ゲル型触媒ビーズ(以下、「強酸性陽イオン交換樹脂」と称することがある)を得た。
窒素ガス導入管を備えた200mLの四つ口フラスコ中に、前記で製造した湿潤状態の強酸性陽イオン交換樹脂20.0g−湿潤状態、及び60℃の脱塩水約40mLを入れ、強酸性陽イオン交換樹脂を洗浄した。洗浄液はデカンテーションにより廃棄し、再度60℃の脱塩水約40mLを導入した。この洗浄操作を3回繰り返した。次いで、洗浄液を廃棄した後、脱塩水約40mLを加え、フラスコ内を窒素で置換した。そこへ、変性剤(助触媒)として2−(2−メルカプトエチル)ピリジン0.74g(5.32ミリモル)を攪拌下に一度に加え、更に、2時間、室温下で攪拌して変性処理を行った。処理終了後、得られた変性陽イオン交換樹脂を脱塩水で洗浄し、2−(2−メルカプトエチル)ピリジン変性強酸性陽イオン交換樹脂触媒(変性率17.2%)を得た。
変性率(%)=[(添加した助触媒のモル数(ミリモル))/[(ゲル型強酸性陽イオン交換樹脂中のスルホン酸基の量(meq/g‐湿潤状態)×変性に使用したゲル型強酸性陽イオン交換樹脂の重量(g−湿潤状態))]]×100
上記(3)で調製した2−(2−メルカプトエチル)ピリジン変性強酸型陽イオン交換樹脂(以下、「触媒」ということがある)3.0g−湿潤状態をフラスコに量り入れ、70℃のフェノール約100mLを用いて、洗浄液の含水率が0.1重量%以下になるまで繰り返し洗浄した。次いで、上記フラスコにフェノールが120.0gになるように加え、反応原料中の水濃度が0.3重量%になるように調整し、窒素を導入した。その後、フラスコ内液温度70℃、攪拌回転数250rpmにしてアセトン7.4gを一度に添加し、反応開始とした。アセトンに対するフェノールの量はモル比で10倍とした。
カラム:Waters Sun FireTM C18 5μm、
4.6φ×250mm
検出器:UV 280nm
溶離液:A液 90%アセトニトリル水溶液
B液 0.59mol/Lりん酸水溶液を含む0.5%りん酸二水素ナトリウム水溶液
アセトン転化率(%)=〔[(原料1kg中のアセトンモル数)−(生成液1kg中のアセトンモル数)]/(原料液1kg中のアセトンモル数)〕×100
実施例1の(4)ビスフェノール化合物の製造において、反応原料中の含水率を0.2重量%に変更した以外は、実施例1と同様に反応を行い、実施例1と同様にしてアセトン転化率、ビスフェノールAと2,4’異性体との合計の選択率及びインダン化合物の選択率を求めた。結果を表2に示す。
実施例1の(4)ビスフェノール化合物の製造において、反応原料中の含水率を0.2重量%に変更し、アセトンに対するフェノールの量をモル比で13倍とした以外は、実施例1と同様に反応を行い、実施例1と同様にしてアセトン転化率、ビスフェノールAと2,4’異性体との合計の選択率及びインダン化合物の選択率を求めた。結果を表2に示す。
実施例1の(4)ビスフェノール化合物の製造において、反応原料中の含水率を0.02重量%に変更した以外は、実施例1と同様に反応を行い、実施例1と同様にしてアセトン転化率、ビスフェノールAと2,4’異性体との合計の選択率及びインダン化合物の選択率を求めた。結果を表2に示す。
実施例1の(4)ビスフェノール化合物の製造において、反応原料中の含水率を1.0重量%に変更した以外は、実施例1と同様に反応を行い、実施例1と同様にしてアセトン転化率、ビスフェノールAと2,4’異性体との合計の選択率及びインダン化合物の選択率を求めた。結果を表2に示す。
(1)4−(2−メルカプトエチル)ピリジンの合成
300mLの四つ口フラスコに、窒素ガス導入管、温度計、ジムロート冷却管、滴下ロートを取り付け、30重量%硫酸水溶液102.9g(0.315モル)と、チオ尿素11.42g(0.15モル)とを仕込んだ。窒素雰囲気下、攪拌しながら70℃まで加熱した後、滴下ロートより、反応温度70℃を保ちながら、4−ビニルピリジン12.62g(0.12モル)を約1時間で滴下し、その後、70℃を保ちながら引き続き5時間反応を行った。この反応液を室温迄冷却した後、トルエン30mlを添加した。
実施例1の(3)の2−(2−メルカプトエチル)ピリジン変性強酸型陽イオン交換樹脂の調製において、助触媒として2−(2−メルカプトエチル)ピリジンの代わりに、上記で得られた4−(2−メルカプトエチル)ピリジンを用いた他は、実施例1と同様の方法で、共重合体及びゲル型触媒ビーズの製造を行い、4−(2−メルカプトエチル)ピリジン変性強酸型陽イオン交換樹脂(変性率15.8%)の調製を行った。該樹脂の物性測定結果を表1に示す。
実施例1において、2−(2−メルカプトエチル)ピリジン変性強酸型陽イオン交換樹脂の代わりに、上記で得られた4−(2−メルカプトエチル)ピリジン変性強酸型陽イオン交換樹脂を用いて、実施例1と同様に反応を行い、実施例1と同様にしてアセトン転化率、ビスフェノールAと2,4’異性体との合計の選択率及びインダン化合物の選択率を求めた。結果を表3、及び図3に示す。図3から明らかなように、ビスフェノールAの生成反応において、2−(2−メルカプトエチル)ピリジンにより変性された触媒は、4−(2−メルカプトエチル)ピリジンにより変性された触媒よりもインダン化合物の選択率が低く、表2より、反応原料中の水濃度が0.2重量%以上で、特にインダン化合物の生成を抑制する効果が高いことがわかった。
実施例1で製造したゲル型触媒ビーズを用いて、実施例1と同様の方法で調製した2−(2−メルカプトエチル)ピリジン変性強酸性陽イオン交換樹脂触媒(変性率17.2%)7.5mLを、内径1cm、全長44cmのステンレス製カラムに充填した。60℃のフェノールを26mL/hrで触媒を充填した反応器上部より24時間通液し、触媒中の水分を完全にフェノールで置換し、その後、フェノール/アセトン(モル比)が11の混合液(アセトン4.4重量%、フェノール76.9重量%、4,4’−ビスフェノールA9.7重量%、水0.3重量%、その他の物質8.7重量%)を、73℃にて26mL/hrで反応器上部よりダウンフローで連続的に通液して反応を行なった。反応器下部から反応液を採取し、ガスクロマトグラフィーにより下記の条件で分析し、分析値から下式によりアセトン転化率、ビスフェノールAと2,4’異性体との合計の選択率及びインダン化合物の選択率を算出した。結果を図4から6に示す。
ガスクロマトグラフィー:SHIMADZU製「GC−14B」
カラム:アジレント・テクノロジー株式会社製「DB-WAX 15m×0.53mm× 1.0μm」
検出器:TCD
キャリアーガス:He
アセトン転化率(%)=〔[(原料1kg中のアセトンモル数)−(生成液1kg中のアセトンモル数)]/(原料液1kg中のアセトンモル数)〕×100
<ビスフェノールAと2,4’異性体との合計の選択率(%)、インダン化合物選択率(%)>
ガスクロマトグラフィー:SHIMADZU製「GC−2014」
カラム:ジーエルサイエンス株式会社製「INERT CAP 1 15m×0.25mm×1.5μm」
検出器:FID
キャリアーガス:窒素
シリル化剤: N,O‐Bis(trimethylsilyl)trifluoroacetamide (ジーエルサイエンス株式会社社製)
ビスフェノールAと2,4’異性体との合計の選択率(%)=〔(生成液1kg中のビスフェノールAモル数+2,4’異性体モル数)−(原料液1kg中のビスフェノールAモル数+2,4’異性体モル数)〕/〔(原料液1kg中のアセトンモル 数)−(生成液1kg中のアセトンモル数)〕×100
インダン類選択率(%)=〔(生成液1kg中のインダン化合物モル数)−(原料液1kg中のインダン化合物モル数)〕×2/〔(原料液1kg中のアセトンモル数)−(生成液1kg中のアセトンモル数)〕×100
ゲル型触媒ビーズとして、三菱化学株式会社製の架橋度4%ゲル型強酸性陽イオン交換樹脂(商品名:ダイヤイオン(登録商標)SK104)を使用した以外は、実施例1と同様の方法で調製した2−(2−メルカプトエチル)ピリジン変性強酸性陽イオン交換樹脂触媒(変性率15.8%)7.5mLを、内径1cm、全長44cmのステンレス製カラムに充填した。60℃のフェノールを26mL/hrで触媒を充填した反応器上部より24時間通液し、触媒中の水分を完全にフェノールで置換し、その後、フェノール/アセトン(モル比)が11の混合液(アセトン4.5重量%、フェノール78.5重量%、4,4’−ビスフェノールA9.4重量%、水0.09重量%、その他の物質7.5重量%)を、73℃にて26mL/hrで反応器上部よりダウンフローで連続的に通液して反応を行なった。反応器下部から反応液を採取し、ガスクロマトグラフィーにより実施例4におけるのと同様の条件で分析し、同様にアセトン転化率、ビスフェノールAと2,4’異性体との合計の選択率及びインダン化合物の選択率(%)を算出した。結果を図4から6に示す。
実施例1で製造したゲル型触媒ビーズを用いて、実施例1と同様の方法で調製した2−(2−メルカプトエチル)ピリジン変性強酸性陽イオン交換樹脂触媒(変性率16%)3g−湿潤状態を、内径1cm、全長10cmのジャケット付ガラス製カラムに充填し、ジャケット部に70℃の温水を流通させた。70℃のフェノールを1.5mL/分で触媒を充填した反応器上部より1.5時間通液し、触媒中の水分を完全にフェノールで置換し、その後、含水率0.43重量%のフェノール/アセトン混合液(フェノール/アセトンモル比13)を、70℃にて3mL/分で反応器上部よりダウンフローで連続的に通液して反応を行なった。反応器下部から反応液を採取し、ガスクロマトグラフィーにより実施例4におけるのと同様の条件で分析し、同様にアセトン転化率、ビスフェノールAと2,4’異性体との合計の選択率及びインダン化合物の選択率(%)を算出した。結果を表4に示す。
実施例6において、含水率0.07重量%のフェノール/アセトン混合液(フェノール/アセトンモル比13)を用いた以外は実施例6と同様にして反応を行い、実施例6と同様にアセトン転化率、ビスフェノールAと2,4’異性体との合計の選択率及びインダン化合物の選択率(%)を算出した。結果を表4に示す。
実施例6において、含水率0.03重量%のフェノール/アセトン混合液(フェノール/アセトンモル比13)を用いた以外は実施例6と同様にして反応を行い、実施例6と同様にアセトン転化率、ビスフェノールAと2,4’異性体との合計の選択率及びインダン化合物の選択率(%)を算出した。結果を表4に示す。
実施例5で使用したゲル型触媒ビーズを用いて、実施例5と同様の方法で調製した4−(2−メルカプトエチル)ピリジン変性強酸性陽イオン交換樹脂触媒(変性率15%)を用い、実施例6において、含水率0.06重量%のフェノール/アセトン混合液(フェノール/アセトンモル比13)を用いた以外は実施例6と同様にして反応を行い、実施例6と同様にアセトン転化率、ビスフェノールAと2,4’異性体との合計の選択率及びインダン化合物の選択率(%)を算出した。結果を表4に示す。
実施例1で製造したゲル型触媒ビーズを用いて、実施例1と同様の方法で調製した2−(2−メルカプトエチル)ピリジン変性強酸性陽イオン交換樹脂触媒(変性率5%)を用い、実施例6において、含水率0.05重量%のフェノール/アセトン混合液(フェノール/アセトンモル比13)を用いた以外は実施例6と同様にして反応を行い、実施例6と同様にアセトン転化率、ビスフェノールAと2,4’異性体との合計の選択率及びインダン化合物の選択率(%)を算出した。結果を表4に示す。表4から明らかなように、5%変性率の2−(2−メルカプトエチル)ピリジン変性強酸性陽イオン交換樹脂触媒を用いた場合、その変性率が16%の場合(実施例6)と比べて、インダン化合物選択率は変化がないことがわかった。
実施例6において、含水率0.05重量%のフェノール/アセトン混合液(フェノール/アセトンモル比25)を用いた以外は実施例6と同様にして反応を行い、実施例6と同様にアセトン転化率、ビスフェノールAと2,4’異性体との合計の選択率及びインダン化合物の選択率(%)を算出した。結果を表5に示す。
実施例6において、含水率0.07重量%のフェノール/アセトン混合液(フェノール/アセトンモル比7)を用いた以外は実施例6と同様にして反応を行い、実施例6と同様にアセトン転化率、ビスフェノールAと2,4’異性体との合計の選択率及びインダン化合物の選択率(%)を算出した。結果を表5に示す。表5から明らかなように、フェノール/アセトン比を10以下とするとアセトン転化率も低下し、インダン化合物の選択率も上昇することがわかった。
実施例6において、ジャケット部に75℃の温水を流通させ、含水率0.43重量%のフェノール/アセトン混合液(フェノール/アセトンモル比13)を、75℃にて3mL/分で反応器上部よりダウンフローで連続的に通液して反応を行なった以外は、実施例6と同様にして反応を行い、実施例6と同様にアセトン転化率、ビスフェノールAと2,4’異性体との合計の選択率及びインダン化合物の選択率(%)を算出した。結果を表6に示す。
実施例6において、ジャケット部に80℃の温水を流通させ、含水率0.43重量%のフェノール/アセトン混合液(フェノール/アセトンモル比13)を、80℃にて3mL/分で反応器上部よりダウンフローで連続的に通液して反応を行なった以外は、実施例6と同様にして反応を行い、実施例6と同様にアセトン転化率、ビスフェノールAと2,4’異性体との合計の選択率及びインダン化合物の選択率(%)を算出した。結果を表6に示す。表6から明らかなように、反応温度を75℃、及び80℃としても、70℃で反応した場合と比較して、インダン化合物の選択率に影響がないことがわかった。
2 水性媒質
3 液滴製造槽
4 疎水性液体
5 疎水性液体貯槽
6 疎水性液体供給管
7 ノズル部材
8 水中スピーカー
9 水性媒質貯槽
10 水性媒質供給管
11 噴出孔
12 疎水性液体噴出貯槽
13,14 供給ポンプ
15 液滴
16 重合反応装置
17 重合反応槽
18 液滴移送管
Claims (10)
- フェノール化合物とカルボニル化合物とを、強酸基を有する陽イオン交換体及び2−(2−メルカプトエチル)ピリジンの存在下に反応させるビスフェノール化合物の製造方法であって、
前記強酸基を有する陽イオン交換体および前記2−(2−メルカプトエチル)ピリジンが、前記強酸基を有する陽イオン交換体の強酸基の少なくとも一部が2−(2−メルカプトエチル)ピリジンにより保護されている、変性強酸型陽イオン交換体として存在し、
前記フェノール化合物とカルボニル化合物を含む反応原料中のカルボニル化合物に対するフェノール化合物の量がモル比で10倍以上であり、
前記フェノール化合物とカルボニル化合物を含む反応原料中の水の濃度が0.05〜0.5重量%であることを特徴とするビスフェノール化合物の製造方法。 - 前記変性強酸型陽イオン交換体が、2−(2−メルカプトエチル)ピリジンによりその強酸基の3〜30%が保護されているものであることを特徴とする請求項1に記載のビスフェノール化合物の製造方法。
- 前記変性強酸型陽イオン交換体が、2−(2−メルカプトエチル)ピリジンによりその強酸基の3〜20%が保護されているものであることを特徴とする請求項1に記載のビスフェノール化合物の製造方法。
- 前記強酸基を有する陽イオン交換体及び変性強酸型陽イオン交換体が、その粒径が30〜650μmのものが全体の50%以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のビスフェノール化合物の製造方法。
- 前記カルボニル化合物中に含まれるメタノール濃度が300ppm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のビスフェノール化合物の製造方法。
- 前記カルボニル化合物として、アセトン循環工程で得られる回収アセトンを用い、反応工程に供給される未反応のアセトンと回収アセトンを含む全アセトン中のメタノール濃度が
300ppm以下であることを特徴とする請求項5に記載のビスフェノール化合物の製造方法。 - 前記反応原料中の水の濃度が0.05〜0.5重量%になるように水を添加することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のビスフェノール化合物の製造方法。
- 前記反応原料中のカルボニル化合物に対するフェノール化合物の量が、モル比で10〜40倍であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のビスフェノール化合物の製造方法。
- フェノール化合物とカルボニル化合物とを、前記強酸基を有する陽イオン交換体および/又は変性強酸型陽イオン交換体の存在下、50〜90℃の温度で反応させることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のビスフェノール化合物の製造方法。
- 前記ビスフェノール化合物が、ビスフェノールAである請求項1〜9のいずれか一項に記載のビスフェノール化合物の方法。
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