JP6167156B2 - 仮止め機能に優れた成型面ファスナー - Google Patents

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Description

本発明は仮決め機能に優れた成型面ファスナー、具体的には、雄型面ファスナーと雌型面ファスナーのファスナー面を軽い力で重ね合わせても係合が生じ難く、そして、強い力で重ねた場合に初めて高い係合力が発現する雄型面ファスナー、および同雄型面ファスナーと好適な雌型面ファスナーとの組み合わせに関する。
従来から、物体の表面に対象物を取り付ける手段の一つとして、物体と対象物のいずれか一方の表面にフック状係合素子を有する雄型面ファスナーを固定するとともに、もう一方の表面にループ状係合素子を有する雌型面ファスナーを固定し、そして、両方の面ファスナーを重ね合わせて両方の係合素子を係合させることにより、物体の表面に対象物を固定する方法が用いられている。
雄型面ファスナーには、大別して、織編物からなる基布の表面にモノフィラメントからなるフック状またはキノコ状の係合素子が多数立設された雄型織面ファスナーと、プラスチック基板の上に、プラスチックからなる多数のステムが立設され、同ステムの先端部がキノコ状や鏃状やフック状の形状となっている雄型成形面ファスナーの二種類があるが、本発明はこの雄型成形面ファスナーに関するものである。
このような雄型成形面ファスナーの代表例として、特許文献1に記載された面ファスナー、あるいはこの特許文献1に記載された面ファスナーの係合素子を単に比例拡大した面ファスナーが知られている。
このような面ファスナーを表面に取り付ける際の作業として、まず物体の表面に一方の面ファスナーを固定し、そして対象物の表面にもう一方の面ファスナーを固定する方法が行なわれるが、面ファスナーを固定するに先立って、対象物が所定の位置に間違いなく取り付けられることとなるか否かを確認するために、仮止めあるいは位置合わせと称して、面ファスナーを固定(あるいは仮固定)した対象物を該物体の面ファスナーに近づけ、位置合わせが行なわれる。
しかしながら、従来の面ファスナー、特に上記特許文献1に記載された面ファスナーの係合素子を比例拡大させた係合素子の場合には、位置合わせするために両方の面ファスナーを接触させただけで不要な係合が生じて、正確な位置合わせができないことがある。このような不要な係合が生じた場合、面ファスナーの不要な係合を外して、位置合わせ作業を繰り返す必要がある。一方、不要な係合が生じることを避けるために、両方の面ファスナーを近づけて面ファスナーの位置合わせをする作業を省略して、面ファスナーを物体や対象物の表面の適当な場所に直接強固に取り付けた場合(いわゆる本止めをした場合)には、両方の面ファスナーの位置ズレや、対象物の所定の取り付け位置からのズレを生じていることがあり、これにより対象物の取り付け位置が所定位置と異なり不具合な状況となる。そして、不具合を是正するため係合を外す際に、対象物が損なわれたりすることも場合によっては生じることとなる。
さらに、特に対象物が大きな形状である場合、例えば家屋の天井材や壁材、あるいは自動車における天井材やトランクルームの壁面材等の場合には、不要な係合を外し、再度位置合わせを行なう作業を繰り返すことは、多大な労力と手間を要し、さらに、一定速度で流れるラインにおいて、一定時間内に天井材等を取り付ける作業を行なわなければならない場合には、製造ラインを止めたりする必要が生じ、位置決めを正確にかつ速やかに行なうことが極めて重要となる。
このような問題点を解消するためには、位置合わせ時に単に両面ファスナーを重ね合わせただけでは強固な係合が極力生じないようにすることが必要であるが、そのためには、例えば、フック状係合素子やループ状係合素子の素子密度を低くすることや、フック状係合素子のヘッド部(キノコの笠部分や鏃部分)の形状を小さくしたりしてループ状係合素子と係合し難くする方法等が考えられるが、このような方法を用いると確かに位置決め時の係合発生を低減させることは可能であるが、同時に、本止めした後においても係合力が低く、所望する係合力が得られないこととなる。
なお、フック状係合素子とループ状係合素子を同一面に混在させた、いわゆるフック・ループ混在型織面ファスナーにおいて、本発明の目的と同様に、仮止め時の係合を軽減し、本止めした後においては強固な係合力が発現する構造とすることに関しては、特許文献2で公知であるが、この公知文献に記載された技術は、フック・ループ混在型の織面ファスナーにおける改良であって、雄型成形面ファスナーに適用できるものではない。
また、特許文献3には、柱状部と該柱状部の先端に載った膨頭部からなる係合素子を基材部の少なくとも一面に多数立設した成形面ファスナーにおいて、成形面ファスナーの基材部や係合素子の膨頭部あるいは柱状部の表面に多数の微小な突起列、溝列及び/又は段違い列を設け、表面の光沢を改良する成形面ファスナーが提案されている。
しかし、仮止め時の係合を軽減し、本止めした後においては強固な係合力が発現する成形面ファスナーの構造についての記載はない。
さらに、特許文献4には、略平行な上部主面と下部主面とを有するベースフィルム層を含み、前記ベースの前記上部主面から1平方センチメートルあたり少なくとも50個の離間したフック部材が突出しており、前記フック部材が前記上部主面から1000μm未満の高さを有しており、それぞれ前記ベースの一端に付加されたステム部分と、前記ベースの側とは反対側の前記ステム部分の端部にヘッド部とを含み、少なくともヘッド部分が前記バッキングの表面に略平行な第1の方向に50〜200μmの厚さを有している、弾性のある可撓性のポリマー樹脂の単体フックファスナーが提案されている。
しかし、仮止め時の係合を軽減し、本止めした後においては強固な係合力が発現する成形面ファスナーの構造についての記載はない。
特開平2−5947号公報 特開2003−125813号公報 実開平6−34503号公報 特表2005−514976号公報
本発明は、このように単に重ね合わせただけで係合が生じて位置決めすることが極めて困難である面ファスナー、特に雄型成形面ファスナーを改良し、仮止め時(すなわち位置合わせ時)に強固な係合が生じることがなく、本止めした後には高い係合力が得られる成形面ファスナーを提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を鋭意検討した結果、プラスチック基板の表面に多数の雄型係合素子が立設された面ファスナーであって、基板からの係合素子の高さ(H)に対する係合素子の最頂部から該突起下端部までの長さ(D)の比(D/H)が0.35〜0.75であり、かつ該係合素子の基板被覆率が25〜45%である雄型成形面ファスナーを用いることで解決できることを見出し、本願発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の〔1〕〜〔4〕を提供する。
〔1〕プラスチック基板の表面に多数の雄型係合素子が立設された面ファスナーであって、該雄型係合素子が、該プラスチック基板から立ち上がるステムと同ステムからサイドに突出する係合用突起を有しており、基板からの係合素子の高さ(H)が1.6〜2.6mmであり、基板からの該雄型係合素子の高さ(H)に対する該雄型係合素子の最頂部から該突起下端部までの長さ(D)の比(D/H)が0.35〜0.75であり、該雄型係合素子が、基板から遠ざかる方向に突出するくっつき防止用突起を係合用突起より上に有しており、係合素子密度が20〜50個/cmの範囲であり、かつ該雄型係合素子の基板被覆率が25〜45%である成形面ファスナー。
〔2〕比(D/H)が0.45〜0.65である〔1〕に記載の成形面ファスナー。
〔3〕前記雄型係合素子の厚さ(W)が、前記雄型係合素子高さ(H)の0.15〜0.6倍である〔1〕又は〔2〕に記載の成形面ファスナー。
〔4〕係合用突起が存在しない方向に前記雄型係合素子が複数個一定間隔をおいて列をなして並んでいる〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の成形面ファスナー。
本発明の雄型成形面ファスナーの好適な一例の部分の斜視図 本発明の雄型成形面ファスナーを構成する好適な係合素子の一例の斜視図。 参考例としての雄型成形面ファスナーを構成する係合素子の一例の斜視図。 本発明の雄型成形面ファスナーを構成する好適な係合素子のさらに他の好適な一例の斜視図。 従来の雄型成形面ファスナーを構成する係合素子の一例の斜視図。 本発明の雄型成形面ファスナーの一例の上面図であり、本発明で規定する係合素子の基板被覆率を説明するための図。 本発明の雄型成形面ファスナーの他の一例の上面図であり、本発明で規定する係合素子の基板被覆率を説明するための図。 本発明の雄型成形面ファスナーを製造するために使用する押出用ノズルの好適な一例の正面図。
B・・・基板
E・・・雄型係合素子
S・・・ステム
T・・・係合用突起
M・・・くっつき防止用突起
H・・・基板からの係合素子の高さ
D・・・係合素子の最頂部から係合用突起下端部までの長さ
W・・・雄型係合素子の厚さ
V・・・係合用突起の突出長さ
Y・・・係合素子列方向
X・・・係合素子の切れ目方向
以下、図1〜図8を用いて本発明の好適な実施形態を説明する。
本発明の雄型成形面ファスナーの好適例として、図1のような雄型面ファスナーが挙げられ、それを構成する係合素子として図2に示すような係合素子が挙げられる。図中、Bが面ファスナーの基板、Eが雄型係合素子であり、基板(B)の上に雄型係合素子(E)がほぼ垂直に立設されている。そして、雄型係合素子(E)は、基板から立ち上がるステム(S)とその上部でステムからサイドに突出する係合用突起(T)を有しており、そして、図1および図2の雄型係合素子(E)の場合にはステムの先端部にくっつき防止用突起(M)を有している。
なお、雄型係合素子(E)において、係合用突起(T)および同突起の根元より上のステム部分と上記くっつき防止用突起を合わせて係合素子のヘッド部と称することがある。
したがって雄型係合素子は、サイドに係合用突起を有していないステム部と同ステム部より上に存在しているヘッド部からなると言い換えることもできる。
通常、本発明の雄型成形面ファスナーでは、このような係合素子が複数個、縦方向(図1や図2に示すY方向)に一定間隔をおいて列をなして並んでおり(すなわち係合用突起を存在しない面方向に列をなして並んでおり)、そのような列を横方向(図1や図2で示すX方向)にも平行に存在している。
基板(B)および雄型係合素子(E)はともにプラスチックからなり、基板(B)と雄型係合素子(E)は別々の樹脂から形成されていても良いが、生産性の点から通常は同一の樹脂から構成されている。
用いられる樹脂に関しては特に限定されず、通常の成形に用いられる樹脂、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ナイロン6やナイロン66等のナイロン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸等のポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられるが、これら以外に、ポリエステル系のエラストマー樹脂やポリオレフィン系、ポリスチレン系やポリウレタン系等のエラストマー樹脂でもよく、これらは共重合体であってもよい。また樹脂は単独で、あるいは2種以上をブレンドして用いられていてもよい。
なかでも、繊維形成性および延伸性のある樹脂が好ましく、その具体例として、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン類、ナイロン類、ポリエステル類が挙げられる。また、本発明の雄型成形面ファスナーの場合、雄型係合素子のヘッド部が傾き難く係合したループ状係合素子が外れ難いため、無理に剥がすとループ状係合素子が切断され易い傾向にあり、それを防ぐためには、雄型成形面ファスナーをエラストマー樹脂で成形するのも好ましい。
後述するように、本発明の係合素子は、係合素子の高さ(H)に対する係合素子(E)の最頂部から係合用突起(T)の下端部までの長さ(D)の割合(D/H)が従来のものと比べて0.35〜0.75と極めて高いことが本発明の雄型成形面ファスナーの大きな特徴点のひとつとして挙げられる。
雄型係合素子(E)は、ステム(S)と同ステムからサイドに突出する係合用突起(T)を有しており、通常はステムから両サイドに対に係合用突起(T)が突出しているのが好ましい。ステム(S)は、通常、基板(B)から直立している。そして、係合用突起(T)は係合力を高めるために、基板に平行に、あるいは図1〜4に示すように、平行より先端部が基板側に下がるような方向に突出している。
本発明において、まず重要なこととして、係合素子の高さ(H)に対する係合素子(E)の最頂部から係合用突起(T)の下端部までの長さ(D)の割合(D/H)が上記したように、0.35〜0.75と極めて高いことが挙げられる。従来一般に知られている成形面ファスナーは、図5に示すような雄型係合素子形状を有しており、従来の係合素子の場合、その最頂部から係合用突起の下端部までの長さの割合(D/H)は、概ね0.15〜0.25の範囲である。このことを考慮すると、本発明の成形面ファスナーは、係合素子形状が極めて特異であると言える。
なお、係合素子の高さが極めて低い成形面ファスナーの場合には、(D/H)の値を小さくすると係合用突起が必然的に薄くなり、それにより係合用突起が簡単に曲がることとなり、必要な係合力が得られないことから、(D/H)を本願発明で規定するような範囲にしたものも存在するが、係合素子の高さ(H)が1.2mmを超えるような係合素子の場合には、概ね0.20〜0.30の範囲が採用されている。
この(D/H)に関して、特許文献3の図2に記載の係合素子は、図面から計算すると、(D/H)が0.7となるが、本発明で規定する基板被覆率については何らの開示がない。したがって、従来一般の成形ファスナーの基板被覆率を有しているとすると、後述するように15〜22%であるから、仮止め時(すなわち位置合わせ時)に強固な係合が生じることがなく、本止めした後には高い係合力が得られるという本発明の効果を得ることはできない。
また、特許文献4の成形フックファスナーは、同文献に記載の実施例に係る表1に記載のアームドループ(Dに相当)とフック高さ(Hに相当)から(D/H)を求めると、比較例1が0.38、実施例1が0.52、実施例2が0.56、実施例5が0.40で、本発明で規定する(D/H)の範囲を満足するものが含まれる。しかしながら、本発明のもう一つの重要な要件である基板被覆率は、表1のフック幅、フック厚さ、フック個数、フック列から計算すると、最大のものでも比較例1における14.6%であり、本発明が規定する基板被覆率25〜45%の範囲を満足していない。よって、仮止め時(すなわち位置合わせ時)に強固な係合が生じることがなく、本止めした後には高い係合力が得られるという本発明の効果を得ることはできない。
図2は、本発明の雄型成形面ファスナーを構成する係合素子の好適な一例であるが、同図の係合素子では、この(D/H)の値を高くするために、係合素子の頂部にくっつき防止用突起(M)を設けている。図2の係合素子では係合素子の頂部にくっつき防止用突起(M)を設けているが、もちろん、くっつき防止用突起は、係合素子の頂部に設けられている必要はなく、係合用突起部分(T)から、基板から遠ざかる方向に突出していてもよい。さらに、くっつき防止用突起は1本の係合素子に1個である必要はなく、複数個存在していてもよい。
また、くっつき防止用突起は基板面に対して垂直である必要はなく、基板から遠ざかる方向に突出していればよい。さらにくっつき防止用突起は、各係合素子に1個以上存在しているのが好ましいが、係合素子の係合突起方向に隣り合う係合素子2〜3個に1個の割合であってもよい。
また、図3は、本発明の参考例としての雄型成形面ファスナーを構成する係合素子の一例であるが、同図の係合素子では、このD/Hの値を高くするために、くっつき防止用突起を設けるのではなく、係合素子のヘッド部を極めて厚くしている。図5の従来の一般的な形状のものと比べれば、図3の係合素子はヘッド部が極めて厚いことが理解できる。
くっつき防止用突起の高さあるいは係合素子のヘッド部の厚さとしては、上記(D/H)が0.35〜0.75の範囲となるような値である。すなわち、(D/H)が0.35〜0.75の値となるように、ヘッド部の上にくっつき防止用突起を設けるか、あるいはヘッド部の厚さを厚くすればよい。(D/H)の値が0.35未満の場合には、位置合わせ時に係合しやすく、本発明の効果が得られない。逆に0.75を超える場合には、本止め後においても強固な係合が妨げられ、所期の係合力が得られない。好ましくは0.40〜0.70の範囲、より好ましくは0.45〜0.65の範囲である。
くっつき防止用突起を設ける場合には、くっつき防止用突起の先端部が尖っていると、面ファスナーの手触り感が悪くなるため、くっつき防止用突起は、図1や図2に示すようにヘッド部上に丸みを帯びた形状で存在しているのが好ましい。なお、くっつき防止用突起は、ステムやヘッド部と同一の樹脂で構成されているのが好ましい。
また、図4に示す雄型係合素子も本願発明の好適な一例であるが、この係合素子の場合には、係合用突起がステムの両サイドに2本ずつ突出している。このように、係合用突起が複数本上下方向に存在している場合には、本発明で言う、係合素子(E)の最頂部から係合用突起(T)の下端部までの長さ(D)は、もっとも上部に存在する係合用突起が対象となる。
本発明において重要な点として、上記したように、ステムの高さ(H)に対する係合素子(E)の最頂部から係合用突起(T)の下端部までの長さ(D)の割合(D/H)が挙げられるが、この(D/H)の割合と同様に重要な点として、係合素子の基板被覆率が挙げられ、この値が25〜45%の範囲内であることが本発明において極めて重要である。従来、一般に知られている雄型成形面ファスナーの場合には、係合素子の基板被覆率が15〜22%であることを考慮すると、本発明で規定している値は、極めて高いと言える。係合素子の基板被覆率が25%未満の場合には、位置合わせ時に係合が生じ本発明の目的を達成できない。一方、45%を超えると本止め後においても強固な係合が生じることを妨げ、所期の係合力が得られない。好ましくは、27〜42%の範囲であり、より好ましくは28〜40%の範囲である。
そして、本発明において、(D/H)の値と係合素子の基板被覆率の両方がともに本発明で規定する範囲内であることが本発明の目的を達成する上で必要であり、いずれか一方が本発明で規定する範囲を外れている場合には、本発明の目的を達成することはできない。
なお、本発明でいう係合素子の基板被覆率とは、雄型係合素子が立設されている基板部分の面積に対する雄型係合素子のヘッド部を上部から見た面積の割合で、具体的には、雄型係合素子が連続して存在する部分を上面から光学顕微鏡で写真を撮り、同写真から50個の雄型係合素子が存在している任意の基板部を囲み、その囲った部分の面積(s1)と、同部分に存在する50個の雄型係合素子のヘッド部の上面の面積の合計(s2)を求め、[(s2)/(s1)]×100を算出することにより係合素子の基板被覆率(%)が得られる。
図6及び図7は、係合素子が連続して存在する部分を上面から光学顕微鏡で写真を撮った場合の模式図であり、同図中、Sがステム、Tが係合用突起、Bが基板をそれぞれ表す。また同図のX方向およびY方向は、図1〜図4のX方向、Y方向と合致している。図6や図7のように係合素子が基板上に規則正しく立設されている場合には、同図に示すように、1つの係合素子の端部を辺とし隣り合う係合素子の端部を辺とする四辺形を描き(図6や7において一点鎖線で示す四辺形)、その面積に占める1つの係合素子の上部から見た係合素子の面積(S+2T)の割合を求めることにより係合素子の基板被覆率が求められる。図6及び図7の場合には、係合素子の基板被覆率は30.3%となる。
また、本発明において、雄型係合素子の係合用突起と、同突起方向(すなわち図に示すX方向)に隣り合う雄型係合素子の係合用突起との間隔は0.6〜2.5mmの範囲が適当であり、0.6mmより狭い場合には、充分な係合力が得られず、また2.5mmより広い場合には、上記した係合素子の基板被覆率を達成することが困難となる。
また本発明において、係合素子の高さ(H)としては、1.2〜3.0mmの高さが好ましく、高さが1.2mm未満の場合には、充分な係合力が得られず、また3.0mmを超える場合には、フックが倒れやすくなり、軽い力でループ状係合素子に引っ掛かり易くなり好ましくない。より好ましくは1.5〜2.7mmの範囲、さらに好ましくは1.6〜2.6mmの範囲である。
さらに本発明において係合用突起は、ステムから0.2〜0.8mm突出しているのが好ましい。すなわち、図2に示す係合素子において、Vが0.2〜0.8mmであるのが好ましい。0.2mmより突起が低い場合には、充分な係合力が得られず、また0.8mmを超える場合には、係合が強固となり、剥離時に素子やループが破損してしまう。より好ましくは0.3〜0.6mmである。そして、係合用突起は、通常、ステムと同一の樹脂から構成される。
さらに本発明において、雄型係合素子の厚さ(図で示すW)は、係合素子の高さ(H)の0.15〜0.6倍の範囲が好ましい。0.15倍未満の場合には、係合素子の強度が低くなり充分な係合力が得られず、また0.6倍を超える場合も、ループ状係合素子との係合が困難となり、充分な係合力が得られない。より好ましくは0.18〜0.5倍の範囲である。
さらに、係合素子のステム部の太さとしては、上記係合素子厚さ(W)と同一の理由により、基板に平行な面での断面積が0.09〜0.4mmの範囲が好ましい。
なお、本発明において、基板(B)の厚さとしては、特に限定されないが、0.15〜0.8mmの範囲が適切である。また、係合素子密度としては、20〜50個/cmの範囲が好ましく、特に30〜40個/cmがより好ましい。
次に、本発明の雄型成形面ファスナーの製造方法について詳細に説明する。
まず、図1に示すようなくっつき防止用突起M、係合突起Tを有する雄型係合素子E、及び面ファスナー基板Bに対応した形状のスリットを有する図8に示すようなノズルから、熱可塑性樹脂を溶融押出し、冷却して、基板表面に、基板に対して直立し、かつ長さ方向に連続しているキノコ状係合素子断面を有する複数の列条を有するテープ状物を成形する。図8に示すBが基板を形成することとなる線状スリットであり、そしてEが雄型係合素子を形成することとなる係合素子用スリットである。図8のようなスリットを用いた場合には、基板表面に直立し、くっつき防止用突起を有する雄型係合素子用列条が6本等間隔で存在しているテープ状物が得られる。列条の本数としては、延伸した後のテープ幅1cm当たり5〜15本が好ましい。また、テープ幅としては20〜50mmが好ましい。
次に得られたテープ状物の表面に存在する係合素子用列条に、該列条長さ方向(Y方向)を横切る方向、好ましくは直交する方向に、小間隔で該列条の先端から付け根付近まで切れ目を入れる。切れ目の間隔としては0.2〜0.6mm、特に0.3〜0.5mmの範囲が適切である。次いで、テープ状物を長さ方向に延伸する。延伸倍率としては、延伸後のテープ状物の長さが元のテープ状物長さの1.3〜3.5倍となる程度が採用される。この延伸により、列条に入れられた切れ目が広がり、列条が独立した多数の雄型係合素子の列となる。なお、切れ目を列条長さ方向に直交する方向で入れた場合が図6であり、斜め方向に入れた場合が図7である。本発明では、切れ目を、列条長さ方向に直交する方向、或いは斜め方向いずれの方向に入れてもよい。
なお、本発明で規定するように、基板からの係合素子の高さ(H)に対する係合素子の最頂部から該突起下端部までの長さ(D)の比(D/H)の値を高くするためには、図8に示す係合素子用スリット(E)のヘッド部分を厚くするか、あるいは図8に示すようにステムの上にくっつき防止用突起に対応する切欠部(M)を設ければよい。また、本発明では、上記したように、係合素子の基板被覆率が高いことが必要であるが、係合素子の基板被覆率を高くするためには、図8に示すノズルの係合素子用スリットのヘッド部分のTを両翼に大きく張り出しているようにすることにより、また隣り合う係合素子用スリットの間隔を狭くすることにより、さらには延伸倍率を低くすること等により達成できる。
上記の説明は、本発明の雄型成形面ファスナーを、樹脂をスリットから押出、係合素子用列条に切れ目を入れ、そして延伸する方法により製造する場合についてのものであるが、本発明の雄型成形面ファスナーは、この製造方法に限定されるものではなく、例えば、ステム用穴を多数表面に設けた金属面上に溶融樹脂液を流して、ステム用穴に樹脂を流し込むとともに金属面上に樹脂液層を形成し、そしてそれを冷却し、その後に、金属面から樹脂シートを剥がして、基板樹脂シートの表面に多数の直立するステムを有する樹脂板を製造し、そして、ステム先端のみをさらにくっつき防止用突起部用凹みを有する加熱金属板に圧着して溶融させ、ステムをキノコ形状とすると共に、キノコ先端部がくっつき防止用突起部となるように成形する、あるいはキノコの傘部分を厚くする方法等でも製造できる。
このように、本発明は、単に重ね合わせただけで係合が生じて、位置合わせすることが極めて困難である従来の面ファスナー、特に雄型成形面ファスナーを改良し、位置合わせ時には強固な係合が殆ど生じることがなく、本止めした後には高い係合力が得られる雄型成形面ファスナーに関するものであるが、このような効果をより高度に発現するためには、このような雄型成形面ファスナーと対になって用いられる雌型面ファスナーについても改良の工夫を加えるのが好ましい。
例えば、雌型面ファスナーとして、(1)基板の表面にマルチフィラメント糸からなるループを有しており、ループを構成するマルチフィラメント糸が樹脂により集束されている雌型面ファスナー、あるいは(2)基板の表面にモノフィラメントからなるループを有している雌型面ファスナーを用いると、上記した本発明の効果がより高度に発現する。
このような雌型面ファスナーについて説明すると、このような雌型面ファスナーとしては、織編物を基板とした、いわゆる織編面ファスナーが用いられる。対をなす雄型面ファスナーが成形面ファスナーであるのに対して、それと対になって用いられる雌型面ファスナーは織編面ファスナーが好ましいこととなる。
通常、織編面ファスナーのうち、雌材となるループ状係合素子織編面ファスナーは、織物や編物の基板である基布にループ状係合素子となるマルチフィラメント糸が織り込まれ、または編み込まれる。用いられるマルチフィラメント糸として、10〜50デシテックスのフィラメントを5〜15本束ねた糸を用いることが、位置合わせのし易さと本止めした後の高い係合力を兼ね備える点で好ましい。また、マルチフィラメントからなるループ状係合素子の場合、ループ状係合素子は、大半のフィラメントが集束して束(ループ)を形成しているものの、一部のフィラメントは束から外れて単独あるいは2〜3本集まった状態でループ状係合素子から突出してループを形成している場合もある。このような、通常のループから突出したループが、位置合わせ時に雄型成形面ファスナーと重ね合わせただけで係合が生じる場合がある。
そこで、位置合わせをさらにし易くするといった観点から、ループを構成するマルチフィラメント糸の束から一部のフィラメントが分離することをどのようにすれば防げるかについて検討した結果、上記(1)又は(2)のような雌型面ファスナーを用いれば解決できることを見出した。
まず、上記(1)の雌型面ファスナーについて説明すると、ループを構成するマルチフィラメント糸を樹脂により集束固定したものを用いる、あるいはループを形成した後のマルチフィラメント糸に樹脂を塗布して、マルチフィラメント糸から一部のフィラメントが分離するのを防止する方法が挙げられる。
用いる樹脂としては、マルチフィラメント糸に対して接着性を有する樹脂が好ましく、例えば、ポリウレタンで代表されるエラストマー樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ナイロン系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂等が代表例として挙げられる。樹脂は溶液あるいはエマルジョンの状態でマルチフィラメント糸に、あるいはループ状係合素子に塗付される。塗付する樹脂量としては、マルチフィラメント糸に対して5〜15重量%が適当である。塗付したのち、乾燥することによりマルチフィラメント糸を構成する個々のフィラメントは拘束され、マルチフィラメントを構成するフィラメントがマルチフィラメントから分かれてループから突出したループを形成するという問題も生じにくくなる。
このようなマルチフィラメント糸に樹脂を塗布する方法の他に、ループ状素子を形成する糸として、従来一般に用いられているマルチフィラメント糸に代えて、モノフィラメント糸を用いる方法が挙げられる。この方法の場合、用いるモノフィラメント糸としては、直径0.04〜0.12mmのものが好ましい。
マルチフィラメント糸やモノフィラメント糸を構成する樹脂としては、基板(B)および雄型係合素子(E)に用いる樹脂として前記した樹脂から選ばれる、延伸性を有する繊維形成性の樹脂が挙げられる。特に、モノフィラメントを構成する樹脂としては、通常の合成繊維用樹脂、例えばポリエチレンやポリプロピン等のポリオレフィン系樹脂、ナイロン6、ナイロン66等のナイロン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸等のポリエステル系樹脂等が挙げられる。
このようなループ状雌型面ファスナーの製造方法としては、従来一般的に織編面ファスナーの製造に用いられている方法と同一の方法が用いられる。このようなループ状雌型面ファスナーのループ状係合素子密度としては、30〜150個/cmが一般的である。
面ファスナー基布からのループ素子の高さとしては、1〜2mmが好ましい。
なお、従来の一般的な雌型面ファスナー(すなわちループ状係合素子を構成するマルチフィラメント糸が樹脂等により収束されていない雌型ファスナー)は、本発明の雄型成形面ファスナーと組み合わせて使用する限り、従来一般的に用いられている雄型面ファスナーと雌型面ファスナーの組み合わせと比べて、位置合わせし易さと本止めした後の高い係合力がはるかに優れていることから、本発明の雄型成形面ファスナーと併用するループ状雌型面ファスナーとして、従来一般に用いられている物を用いる。また、さらに位置合わせのし易さの観点から、好ましい組合せとしては、上記したようなマルチフィラメントからなるループを樹脂で結束した、あるいはループ素子としてモノフィラメントを用いたループ状雌型面ファスナーを用いる場合である。
以上、本発明によれば、仮止め時(すなわち位置合わせ時)に強固な係合が生じず、本止め後には強固な係合が得られる。その結果、面ファスナー取り付け時の位置合わせが容易となり、しかも、本止めの後においては、従来の雄型成形面ファスナーと遜色のない係合力が得られることとなる。特に、本発明の雄型成形面ファスナーと雌型面ファスナーの組み合わせを用いると、上記の効果がより高度に達成されることとなる。
特に、自動車の生産の際に、一定速度で流れている生産ラインにおいて、自動車の天井基材に天井材を固定する作業や自動車のトランクルームにトランクルーム用表面材を固定する作業において、固定する位置を間違えると、係合を一旦剥がして再度固定する作業が必要となり、そのために、生産ラインに混乱が生じたり、ライン速度を落としたりするなどの対応が必要となるが、本発明の成形用面ファスナーを用いると、位置合わせが容易となるため、位置ずれが生じることを減らすことが可能となる。
また、家屋等の内装工事において、天井材や壁材に本発明の雄型成形面ファスナーを用いると、位置ズレを防ぐことができ、作業手間の軽減や位置ズレを生じた天井材や壁材を取り外す際の天井材や壁材の損傷を防ぐことができ、特に取り付ける対象物が大きな形状である場合には、本発明の雄型成形面ファスナーを用いる効果は非常に大きい。
本発明の雄型成形面ファスナーは、面積の大きい対象物を所定の位置に固定する際の固定手段として極めて優れており、たとえば面積が0.1m以上、特に0.2mのシート、あるいは板状物が取り付け対象物である場合に特に優れた効果を発揮する。
また、本発明の雄型成形面ファスナーは、接着剤や粘着剤によりあるいは融着や縫製、ホッチキス等により対象物や裏面、あるいは基材表面に取り付けられ、一方、雌型織面ファスナーは、同様に、接着剤や粘着剤により、あるいは融着や縫製、ホッチキスにより対象物の裏面や基材表面に取り付けられる。
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。
なお、実施例中、係合力はJIS L3416に記載されている方法に準じて測定した。
本発明者等は、位置合わせ時に通常発生する押圧について観測したところ、約100g/cm程度であることを発見し、この事実から、押圧100g/cmで雄型面ファスナーの係合面と雌型面ファスナーの係合面を押さえつけた時に発生する係合力を位置合わせ時の係合力とした。また、本止め時の係合力として押圧500g/cmで雄型面ファスナーの係合面と雌型面ファスナーの係合面を押さえつけた時に発生する係合力を本止め時の係合力とした。
なお、雌型面ファスナーとしては、特に断りがない場合には、クラレファスニング(株)製、雌型面ファスナー(B2790Y:ループ糸は265デシテックス/7フィラメントのポリエステルマルチフィラメントからなる。)のループ素子にポリウレタン系樹脂を該マルチフィラメントに対して10重量%塗布してループ素子を収束したものであって、ループ素子密度が40個/cmのものを用いた。
実施例1
図8に示すようなノズルを用いて、ポリエステル樹脂を押し出し、冷却して、長さ方向に連続しているキノコ状係合素子断面を有する複数の列条を有するテープ状物を成形した。該列条の本数は10本で、テープ状物の幅は35mmである。そして、該列条に、該列条長さ方法に直交する方向に、0.5mm間隔で該列条の先端から付け根付近まで切れ目を入れた。次いで、テープ状物を長さ方向に2.2倍延伸した。得られた雄型係合素子は、図1及び図2に示すような、ヘッド部分の上にくっつき防止用突起(M)を有している。
なお、得られた雄型成形面ファスナーの係合素子高さ(H)は2.5mm、係合素子の最頂部から該突起下端部までの長さ(D)は1.3mm、雄型係合素子の係合用突起と、同突起方向(すなわち図2に示すX方向)に隣り合う雄型係合素子の係合用突起との間隔は1.0mm、係合用突起の突出長さ(V)は0.6mm、雄型係合素子の厚さ(図2で示すW)は0.5mm、係合素子のステム部の太さは0.3mm、基板(B)の厚さは0.2mm、係合素子密度は、31個/cmである。
得られた雄型成形面ファスナーをプラスチック板に貼り付け、一方、この雄型成形面ファスナーと係合させる雌型面ファスナーとして、前記したループ面ファスナー[クラレファスニング(株)製、雌型面ファスナー(B2790Y)]のループ素子をポリウレタン樹脂で収束したものを用いた。そして、両面ファスナーを重ね合わせ、押圧100g/cmの時と押圧500g/cmの時のそれぞれのピール強度を測定した。その結果、押圧100g/cmのときは、係合が生じず、500g/cmの時には600g/cmのピール強度が得られた。この雄型成形面ファスナーは、位置決め時には係合せず、本止め後の通常の押さえつけで強固な係合が生じていることを確認した。
この雄型成形面ファスナーを自動車の天井用内装材の裏面に接着剤で取り付け、一方車体の天井部の鉄板に雌型織面ファスナーを接着剤で取り付け、そして両者を位置合わせのために重ね合わせたが係合は生じることなく、位置合わせが容易に行なうことができ、そして、最適場所を決め、天井用内装材を押しつけたところ、十分な係合力で両者は固定していた。
実施例2
上記実施例1において、延伸倍率を1.5倍に変更する以外は同様の方法により、雄型成形面ファスナーを製造した。得られた雄型成形面ファスナーの係合素子高さ(H)は2.5mm、係合素子の最頂部から該突起下端部までの長さ(D)は1.3mm、雄型係合素子の係合用突起と、同突起方向(すなわち図1や図2に示すX方向)に隣り合う雄型係合素子の係合用突起との間隔は1.8mm、係合用突起の突出長さ(V)は0.6mm、雄型係合素子の厚さ(図2で示すW)は0.5mm、係合素子のステム部の太さは0.3mm、基板(B)の厚さは0.25mm、係合素子密度は40個/cmである。
得られた雄型成形面ファスナーを、実施例1と同様に、実施例1と同様の雌型織面ファスナーと係合させた。そして、押圧100g/cmの時と押圧500g/cmの時の係合力(ピール強度)を測定した。その結果を表1に示す。この実施例の場合も実施例1と同様に、位置決め時には係合せず、本止め後の通常の押さえつけで強固な係合が生じているものであることを確認した。
比較例1
上記実施例1において、延伸倍率を1.2倍に変更する以外は同様の方法により、雄型成形面ファスナーを製造した。得られた雄型成形面ファスナーの係合素子高さ(H)は2.5mm、係合素子の最頂部から該突起下端部までの長さ(D)は1.3mm、雄型係合素子の係合用突起と、同突起方向(すなわち図1や図2に示すX方向)に隣り合う雄型係合素子の係合用突起との間隔は2.0mm、係合用突起の突出長さ(V)は0.6mm、雄型係合素子の厚さ(図2で示すW)は0.5mm、係合素子のステム部の太さは0.3mm、基板(B)の厚さは0.3mm、係合素子密度は45個/cmである。
得られた雄型成形面ファスナーを、実施例1と同様に、実施例1と同様の雌型織面ファスナーと係合させた。そして、押圧100g/cmの時と押圧500g/cmの時の係合力(ピール強度)を測定した。結果を表1に示す。
その結果、位置決め時のみならず本止め後の通常の押さえ付けでも強固な係合が生じないことを確認した。
比較例2
上記実施例1において、延伸倍率を3.3倍に変更する以外は同様の方法により、雄型成形面ファスナーを製造した。得られた雄型成形面ファスナーの係合素子高さ(H)は2.5mm、係合素子の最頂部から該突起下端部までの長さ(D)は1.3mm、雄型係合素子の係合用突起と、同突起方向(すなわち図1や図2に示すX方向)に隣り合う雄型係合素子の係合用突起との間隔は0.8mm、係合用突起の突出長さ(V)は0.6mm、雄型係合素子の厚さ(図2で示すW)は0.5mm、係合素子のステム部の太さは0.3mm、基板(B)の厚さは0.15mm、係合素子密度は20個/cmである。
得られた雄型成形面ファスナーを、実施例1と同様に、実施例1と同様の雌型織面ファスナーと係合させた。そして、押圧100g/cmの時と押圧500g/cmの時の係合力(ピール強度)を測定した。結果を表1に示す。その結果、位置決め時でも強固な係合が生じていることを確認した。
実施例3〜4、比較例3〜4
実施例1において、図8のMに相当する部分の高さを種々変更したノズルを用いる以外は実施例1と同様の方法により雄型成形面ファスナーを製造した。そして、実施例1と同様に、ループ素子を樹脂で拘束した雌型織面ファスナーを用いて押圧100g/cmの時と押圧500g/cmの時の係合力(ピール強度)を測定した。結果を表2に示す。
実施例3〜4のものは、いずれも位置決め時は係合が殆ど生じず、一方、通常の係合を生じさせる押圧で、十分に係合が生じることを確認した。
比較例3〜4のものは、図8のMに相当する部分を有さない図5に示される通常形状のフックとなるノズルを用いる以外が実施例1と同様の方法により雄型成形面ファスナーを製造したものである。そして、これら比較例3〜4のものについて、実施例1と同様に、ループ素子を樹脂で拘束した雌型織面ファスナーを用いて押圧100g/cmの時と押圧500g/cmの時の係合力(ピール強度)を測定した。結果を表2に示す。
比較例3のものは、位置決め時において係合が生じていないが、本止め後においても十分な係合力が得られなかった。また比較例4のものは、位置決め時にも強力な係合が発生し、正確な位置決め作業が困難であった。
参考例1
実施例1において、Mに相当する部分をなくし、その代わりにヘッド部に相当するところを厚くして、得られる雄型成形面ファスナーの係合素子のD/Hの値が0.37となるノズルを用いて、実施例1と同様にして雄型成形面ファスナーを製造した。そして、この得られた雄型成形面ファスナーを用いて、実施例1と同様に、雌型織面ファスナーと係合させて、係合力を測定したところ、押圧100g/cmのときは、係合が生じず、500g/cmの時には620g/cmのピール強度が得られた。結果を表3に示す。そして、この雄型成形面ファスナーは、位置決め時には係合せず、本止め後の通常の押さえつけで強固な係合が生じていることを確認した。
実施例5
実施例1において、係合させる雌型織面ファスナーを、197デシテックスのポリエステルモノフィラメントをループ素子とし、ループ素子密度120個/cmの雌型面ファスナーを用いる以外は実施例1と同様の係合をさせた。その結果、押圧100g/cmのときは、係合が生じず、500g/cmの時には400g/cmのピール強度が得られた。結果を表3に示す。そして、この雄型成形面ファスナーは、位置決め時には係合せず、本止め後の通常の押さえつけで強固な係合が生じていることを確認した。
参考例2
参考例1において得られた雄型成形面ファスナーを用いて、係合させる雌型面ファスナーとして、ループ面ファスナー[クラレファスニング(株)製、雌型面ファスナー(品番ニューエコマジックB2790Y)]の38デシテックスのフィラメントを7本束ねたマルチフィラメント糸からなるループ素子を用いた以外は実施例1と同様の係合をさせた。そして、両面ファスナーを重ね合わせ、押圧100g/cmの時と押圧500g/cmの時のそれぞれのピール強度を測定した。その結果、押圧100g/cmのときは、係合が生じず、500g/cmの時には320g/cmのピール強度が得られた。結果を表3に示す。この雄型成形面ファスナーは、位置決め時には係合せず、本止め後の通常の押さえつけで強固な係合が生じていることを確認した。
この雄型成形面ファスナーを自動車の天井用内装材の裏面に接着剤で取り付け、一方、車体の天井部の鉄板に雌型織面ファスナーを接着剤で取り付け、そして両者を位置合わせのために重ね合わせたが係合は生じることなく、位置合わせが容易に行なうことができ、そして、最適場所を決め、天井用内装材を押しつけたところ、十分な係合力で両者は固定していた。
実施例6
また、同様に、係合させる雌型織面ファスナーとして、クラレファスニング(株)製、雌型面ファスナー(B2790Y:ループ糸は265デシテックス/7フィラメントのポリエステルマルチフィラメントからなる。)のループ素子構成マルチフィラメント糸を樹脂で収束していないものを用いて、実施例1の雄型成形面ファスナーを係合させたところ、押圧100g/cmのときは20g/cmのピール強度で、そして500g/cmの時には700g/cmのピール強度が得られた。結果を表3に示す。
この雄型成形面ファスナーは、位置決め時には係合するものの殆ど問題となるほどではなく、本止め後の通常の押さえつけで強固な係合が生じていることを確認した。
本発明の雄型成形面ファスナーあるいは同面ファスナーと上記した雌型織面ファスナーの組み合わせは、仮止め時(位置合わせ時)に強固な係合が生じず、本止め後には強固な係合が得られることから、従来の雄型成形面ファスナーが用いられている分野、例えば、壁材、床材、天井材等の固定部分野に好適に利用できる。
本発明の基材に対象物を固定する方法は、特に、自動車の天井基材に内装材である天井材を固定する際や、トランクルームに形成用成形材を固定するのに好適な方法として用いることができる。
さらに、本発明の基材に対象物を固定する方法は、家屋等の内装工事において、天井材や壁材に本発明の雄型成形面ファスナーを用いると、位置ズレを防ぐことができ、作業手間の軽減や位置ズレを生じた天井材や壁材を取り外す際の天井材や壁材の損傷を防ぐことができる固定方法として、特に取り付ける対象物が大きな形状である場合に有効な固定方法として利用できる。

Claims (4)

  1. プラスチック基板の表面に多数の雄型係合素子が立設された面ファスナーであって、該雄型係合素子が、該プラスチック基板から立ち上がるステムと同ステムからサイドに突出する係合用突起を有しており、基板からの該雄型係合素子の高さ(H)が1.6〜2.6mmで、該雄型係合素子の係合突起と同突起方向に隣り合う雄型係合素子の係合用突起との間隔が0.6〜2.5mmであり、基板からの該雄型係合素子の高さ(H)に対する該雄型係合素子の最頂部から該突起下端部までの長さ(D)の比(D/H)が0.35〜0.75であり、該雄型係合素子が、基板から遠ざかる方向に突出するくっつき防止用突起を係合用突起より上に有しており、係合素子密度が20〜50個/cmの範囲であり、かつ該雄型係合素子の基板被覆率が25〜45%である、ループ状雌型面ファスナーを係合相手とする成形面ファスナー。
  2. 比(D/H)が0.45〜0.65である請求項1に記載の成形面ファスナー。
  3. 前記雄型係合素子の厚さ(W)が、前記雄型係合素子高さ(H)の0.15〜0.6倍である請求項1又は2に記載の成形面ファスナー。
  4. 係合用突起が存在しない方向に前記雄型係合素子が複数個一定間隔をおいて列をなして並んでいる請求項1〜3のいずれか1項に記載の成形面ファスナー。
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