JP6517828B2 - 割裂強力低減面ファスナー - Google Patents

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Description

本発明は、面ファスナーで取り付けられた内装材等を取り付け面から剥離する際に、取り付けた内装材等が割れたり裂けたりすることなく取り外すことが可能な雄型面ファスナーに関する。より具体的には、雄型面ファスナーとループ面ファスナーの面を重ね合わせて係合させると高い係合力が発現する雄型面ファスナーであって、そのような面ファスナーを用いて天井や壁面や床面等に取り付けた天井材や壁材や床材等の内装材を取り付け面から剥離する際に、面ファスナーの係合力の点で内装材が割れたり裂けたりすることなく容易に内装材を剥離することができる雄型面ファスナーに関する。
従来から、物体の表面に対象物を取り付ける手段の一つとして、物体と対象物のいずれか一方の表面にフック型やきのこ型や鏃型の雄型係合素子を有する雄型面ファスナーを取り付けるとともに、もう一方の表面にループ状係合素子を有する雌型面ファスナーを取り付け、そして両方の面ファスナーを重ね合わせて両方の係合素子を係合させることにより、物体の表面に対象物を取り付ける方法が広く一般に用いられている。
このような面ファスナーにより物体の表面に対象物を取り付ける際の作業として、まず物体の表面に一方の面ファスナーを取り付けるとともに対象物の表面にもう一方の面ファスナーを取り付け、そして両方の面ファスナーの表面を重ね合わせて押さえ付けて係合させて物体の表面に対象物を取り付ける方法が行われる。この際に所定の位置からズレて対象物が取り付けられた場合や方向を間違えて取り付けられた場合等には、一旦対象物を取り外して、再度、正確な位置に対象物を取り付け直す必要があり、係合力によっては取外す際に、対象物に割裂や変形等の破損を生じることがある。
取り付けた対象物が自然にあるいは振動等により面ファスナーの係合が外れて対象物が物体から剥離することを防止するためには、面ファスナーの係合力が高い方が好ましい。しかし、その反面、係合力が高い場合には、上記したように、対象物を取り外す際に、対象物が割裂や変形等の損傷を生じ易いこととなる。一方、面ファスナーの係合力が低い場合には、対象物の損傷を伴うことなく取り外すことが可能であるが、その反面、自然にあるいは振動等により剥離を生じ易く、天井材等が自然落下して問題を生じることとなる。
このようなことから、従来の面ファスナーの場合には、一般的に、係合力の高い面ファスナーが用いられており、取り外すときに係合力が強すぎるため対象物を破損してしまうという問題点を有していた。
さらに、特に対象物が大きな形状である場合、例えば家屋の天井材や壁材、あるいは自動車における天井材やトランクルームの壁面材や床材等の場合には、一旦取り付けた対象物を取り外す為には多大な労力と手間を必要とし、さらに天井材や床材等を取外すときに一部を破損させた場合でも全て交換しなければならず費用が大きくなる。そのような事態とならないように慎重に取り外そうとすると時間が掛かり効率良く作業できないため、取り外しの際に容易に対象物を破損させない面ファスナーを提供することは極めて重要となる。
天井材や床材の固定に雄型面ファスナーを使用することに関しては、我々は既に特許出願しており、それは公開されている(特許文献1)。同文献には、天井基材に天井材を固定するのに適した面ファスナーとして、係合素子の高さに対する係合素子最頂部から係合素子の係合用突起の下端部までの長さの比を大きくした、いわゆる頭が長く伸びた係合素子を緻密に有するものを用いることが報告されている。また、そのような構成によれば、面ファスナー同士を近づけて位置合わせの際に無用な係合が生じないことから位置合わせし易く、かつ係合後には高い係合力が得られることが記載されている。
しかしながら、このような面ファスナーを用いても、位置ずれや方向を間違って誤着を生じる場合があり、そのような場合には、係合力が極めて高いことから、取り外し方によっては対象物を破損するおそれがある。
本発明は、このように従来の雄型係合素子を有する面ファスナーは、重ね合わせて一旦係合させると、その後に取り外すと、取り付け対象物が割裂や変形等の損傷が生じ易く、取り外し作業が極めて困難であるという問題点を有していたことを解消し、取り外す際に取り付け対象物が割裂や変形等の損傷が少なく容易に剥がすことができ、かつ取り付けた後は高い係合力が得られる雄型面ファスナーを提供することにある。
国際公開第WO2012/014667号パンフレット
本発明は、上記の課題を解決するものであり、その一局面は、樹脂からなる基板上に立ち上がる複数の雄型係合素子を有する面ファスナーであって、前記雄型係合素子が、前記基板から立ち上がるステムおよびステムの途中または先端から基板幅方向に突出する突起を有し、前記雄型係合素子が基板長さ方向に列をなしており、さらにそのような列が基板の幅方向に複数列並んでおり、前記基板の幅方向の中央部には下記(A)の雄型係合素子の列が存在し、その幅方向両隣部には下記(A)の雄型係合素子の列が存在している面ファスナーに関する。
(A)ステムから突出する突起が1段であって、かつその突出長が0.4mm以上である雄型係合素子。
(A)ステムから突出する突起がステムの上下方向に2段以上であって、かつその最上段の突出長が0.35mm以下である雄型係合素子。
このような構成の面ファスナーにより、取り外しの際に対象物を損傷させることが少なく、取り外し作業が容易にできる。その結果、取り付け位置や方向が正確でないことによる取り付け直し作業や修理作業が容易となり、しかも取り付けた後においては、従来の面ファスナーと遜色のない係合力が得られる。
図1は、本発明の雄型面ファスナーの一例を模式的に示した斜視図である。 図2は、本発明の雄型面ファスナーの一例の一部を拡大して模式的に示した斜視図である。 図3は、本発明の面ファスナーの一例の一部を上面から見た状態を模式的に示した図である。 図4は、本発明の雄型面ファスナーを製造するのに用いられる押出ノズルの好適な一例の正面図である。
以下、図1〜図3を用いて本発明の雄型面ファスナーおよびその好適な実施形態を説明するが、本発明はこれらに限定されない。
なお、図面における主な符号は以下を示す。A:1段の突起を有する係合素子、A:2段以上の突起を有する係合素子、B:基板、X:基板幅方向、Y:基板長さ方向、1:中央部、2:両隣部、S:係合素子のステム、T:係合素子の突起、M:係合素子のくっつき防止用突起、H:係合素子の高さ、D:係合素子の最頂部から最上段突起の下端部までの長さ、W:係合素子の列方向の厚さ。
図1は、本実施形態の雄型面ファスナーの一例を基板幅方向(X方向)の断面方向からみた斜視図であり、樹脂からなる基板(B)から複数の雄型係合素子(AおよびA)が立ち上がっており、かつそのような雄型係合素子(AおよびA)が基板長さ方向(Y方向)に列をなしており、さらにそのような列が基板の幅方向(X方向)に複数列存在している。例えば、図1では、雄型係合素子(AおよびA)が15列存在している面ファスナーが例示されている。
雄型係合素子(AおよびA)は、図2に示すように、基板(B)からほぼ垂直に立ち上がるステム(S)およびステムの途中または先端から基板幅方向(X方向)に突出する突起(T)を有している。そして、図2の係合素子(AおよびA)の場合にはステムの先端部にくっつき防止用突起(M)を有している。そして、本実施形態の面ファスナーでは、このような係合素子が複数個、基板の長さ方向(図2に示すY方向)に一定間隔をおいて列をなして並んでおり(すなわち突起が突出していない方向に列をなして並んでおり)、そのような列が基板幅方向(図2で示すX方向)に平行に複数列存在している(例えば、図2では3列のみ存在するものが例示されている)。
そして、本実施形態において重要な構成の一つは、図1に示すように、基板の幅方向(X方向)のほぼ中央部には下記(A)の雄型係合素子の列が存在し、その幅方向両隣部には下記雄型係合素子(A)の列が存在していることである。図1の例示においては、下記(A)の1段突起雄型係合素子の列が中央部に3列存在し、その両隣部に2段突起雄型係合素子(A)の列がそれぞれ6列存在している。
なお、Aの雄型係合素子の列の両隣にAの雄型係合素子の列が存在していることが本実施形態において重要である。片隣にしか存在していない場合には、雄型面ファスナーは、幅方向に方向性を有することとなるため、Aの雄型係合素子の列が先に剥離されるように取り付けられた場合には、本発明の効果が得られない。また、本実施形態の雄型面ファスナーにおいて、Aの雄型係合素子の列の両隣に存在するAの雄型係合素子の列は左右同数である必要はない。
さらに本明細書で言う中央部という語は、基板幅方向の正確な中央という意味ではなく、雄型係合素子(A)の列を挟んでその両隣に雄型係合素子(A)の列が存在しているという程度の意味で用いている。
また、雄型係合素子(A)の突起に関しては、最も上段に存在する突起が係合に最も影響することから、最上段に存在する突起の突出長が本実施形態で規定する雄型係合素子(A)の突起の突出長である。
本実施形態の面ファスナーにおいて、(A)の雄型係合素子および(A)の雄型係合素子は下記の通り規定される:
(A)ステムから突出する突起が1段であって、かつその突出長が0.4mm以上である雄型係合素子。
(A)ステムから突出する突起がステムの上下方向に2段以上であって、かつその最上段の突出長が0.35mm以下である雄型係合素子。
図1中、1は突起が1段の雄型係合素子(A)からなる中央部、2は突起が2段以上の雄型係合素子(A)からなる両隣部を表す。そして、上記(A)の1段の突起を有する雄型係合素子は、その突起のステムからの突出長が0.4mm以上であり、上記(A)の2段以上の突起を有する雄型係合素子は、そのステムからの最上段の突出長が0.35mm以下である。
本実施形態において、突起の段数と突起の突出長も重要な構成である。すべての雄型係合素子が1段の突起しか有していない場合や、すべての雄型係合素子が2段以上の突起を有している場合や、1段と2段の突起を有する係合素子の存在する場所が逆となっている場合や、突出長が上記条件を満足していない場合には、損傷を伴うことなく剥離することが困難となり、あるいは係合力が不十分となる。本実施形態の面ファスナー場合には、1段の雄型係合素子(A)が存在している中央部で保持力を確保し、2段以上の雄型係合素子(A)が存在している両隣部で剥離の際の剥離し易さを確保していると考えられる。
1段の雄型係合素子(A)の突出長は0.45〜1.0mmの範囲であることが好ましい。また、2段以上の雄型係合素子(A)の最上段の突出長は0.1〜0.3mmの範囲であることが好ましい。さらに、1段の雄型係合素子(A)の突出長さが、2段以上の雄型係合素子の突出長さより0.15〜0.7mm長いことが好ましい。さらには、1段の雄型係合素子(A)の突出長が0.5〜0.8mmの範囲であることが好ましい。また、2段以上の雄型係合素子(A)の最上段の突出長が0.15〜0.28mmの範囲であるであることがより好ましい。
そして、本実施形態において、雄型係合素子(A)が2段以上の突起を有していることが重要であるが、5段以上となると下部に存在する突起が意味を成さなくなることから4段以内であるのが好ましく、もっとも好ましくは2段の突起を有する場合である。そして、雄型係合素子(A)および雄型係合素子(A)において、ステムを中央にして左右に突出する突起は左右対称である必要はなく、突起の高さや長さや段数が左右で相違していてもよい。
本実施形態において、好ましくは、雄型係合素子(A)が存在する両隣部の面積は、雄型係合素子が存在する中央部と雄型係合素子(A)が存在する両隣部の合計面積の50〜90%である場合である。この範囲であることにより、係合力と剥離し易さがより一層高度に達成される。より好ましくは、60〜85%の範囲にある場合である。ここで雄型係合素子(A)が存在する両隣部の面積と雄型係合素子(A)が存在する中央部と雄型係合素子(A)が存在する両隣部の合計面積の求め方は、ファスナーを上面から見て基盤に雄型係合素子(A)と(A)が自立している部位を合計面積(A)として、(A)/(A)×100で雄型係合素子(A)の占有率で求める。
なお、本実施形態において、本発明の効果を損なわない程度に、雄型係合素子(A)が存在する領域や雄型係合素子(A)が存在する中央部や両隣部には、それぞれ、雄型係合素子(A)や雄型係合素子(A)の範疇に入らない雄型係合素子が一部存在していてもよい。
さらに本実施形態において、係合素子の密度が30〜70個/cmであることが容易に剥離できる点で好ましい。より好ましくは、35〜60個/cmの範囲である。
なお、本実施形態の面ファスナーを形成する雄型係合素子(AおよびA)について、係合用突起(T)および同突起の付根より上のステム部分と上記くっつき防止用突起(M)を合わせて係合素子のヘッド部と称することがある。したがって雄型係合素子は、サイドに係合用突起を有していないステム部と同ステム部より上に存在しているヘッド部からなると言い換えることもできる。
本実施形態の面ファスナーにおいて、雄型係合素子(A)および雄型係合素子(A)が、ともに、基板からの該係合素子の高さ(H)に対する該係合素子の最頂部から最上段突起の下端部までの長さ(D)の比(D/H)が、0.35〜0.75であることが無用な係合を生じないという観点から好ましい。具体的には、図1や図2に記載されているように、ステムの先端部にくっつき防止用突起(M)を有しているのが好ましい。
前記D/Hの値は、従来の雄型面ファスナーが0.30以下であることを考慮すると、本実施形態で好適に用いられる雄型面ファスナーはヘッド部の大きな係合素子を有していることから、特異な形状であると言える。前記D/Hの値が大きいことから、剥離作業中に、せっかく剥離した部分が再度無用な係合を生じて、剥離作用により一層時間や手間を要することを防ぐことができる。
なお係合用突起(T)は、係合力を高めるために、基板に平行に、あるいは図2に示すように、平行より先端部が基板側に下がるような方向にステムから突出していてもよい。
雄型係合素子の高さが極めて低い場合、たとえば使い捨てオムツに使用される成形面ファスナーの場合には、(D/H)の値を小さくすると係合用突起が必然的に薄くなり、それにより係合用突起が簡単に曲がることとなり、必要な係合力が得られないことから、(D/H)の値を高くしたものも存在する。しかし、雄型係合素子の高さ(H)が1.2mmを超えるような係合素子の場合には、(D/H)が0.20〜0.30の範囲のものが採用されており、(D/H)が0.35を超えるようなものは殆ど存在しない。
図2は、本実施形態に用いられる雄型成形面ファスナーの好適な一例であるが、同図の雄型係合素子では、この(D/H)の値を高くするために、雄型係合素子の頂部にくっつき防止用突起(M)を設けている。もちろん、くっつき防止用突起は、雄型係合素子の頂部に設けられている必要はなく、係合用突起部分(T)から、基板から遠ざかる方向に突出していてもよい。さらに、くっつき防止用突起は1本の係合素子に1個である必要はなく、複数個存在していてもよい。
また、くっつき防止用突起は基板面に対して垂直である必要はなく、基板から遠ざかる方向に突出していればよい。さらにくっつき防止用突起は、各雄型係合素子に1個以上存在しているのが好ましいが、雄型係合素子の係合突起方向に隣り合う係合素子2〜3個に1個の割合であってもよい。また、このように雄型係合素子の頂部にくっつき防止用突起を設けたものの他に、D/Hの値を高くするために、雄型係合素子のヘッド部を極めて厚くしたものでも良い。
くっつき防止用突起(M)の高さあるいは雄型係合素子のヘッド部の厚さとしては、上記(D/H)が0.35〜0.75の範囲となるような値が好ましい。すなわち、(D/H)が0.35〜0.75の値となるように、ヘッド部の上にくっつき防止用突起を設けるか、あるいはヘッド部の厚さを厚くすればよい。(D/H)の値が0.35未満の場合には、位置合わせ時や係合剥離時に不要な係合が生じやすく、逆に0.75を超える場合には、本止め後においても強固な係合が妨げられ、所期の係合力が得られない。より好ましくは0.40〜0.70の範囲、最も好ましくは0.45〜0.65の範囲である。
くっつき防止用突起(M)を設ける場合には、くっつき防止用突起の先端部が尖っていると、面ファスナーの手触り感が悪くなるため、くっつき防止用突起は、図2に示すようにヘッド部上に丸みを帯びた形状で存在しているのが好ましい。なお、くっつき防止用突起は、ステムやヘッド部と同一の樹脂で構成されていることが好ましい。
また、係合用突起(T)がステムの両サイドに複数本上下方向に存在している場合には、本実施形態で言う、係合素子(AおよびA)の最頂部から係合用突起(T)の下端部までの長さ(D)は、もっとも上部に存在する係合用突起が対象となる。
上記したように、ステムの高さ(H)に対する係合素子(AおよびA)の最頂部から係合用突起(T)の下端部までの長さ(D)の割合(D/H)が位置合わせ時の無用な係合発生を阻止する上で好ましいが、この(D/H)の割合と同様に好適な条件として、雄型係合素子の基板被覆率が挙げられ、この値が25〜55%の範囲内であることが好ましい。
従来、一般に知られている雄型成形面ファスナーの場合には、係合素子の基板被覆率が15〜22%であることを考慮すると、本実施形態で好適な範囲である25〜55%という値は、極めて高いと言える。係合素子の基板被覆率が25%未満の場合には、位置合わせ時に無用な係合が生じ易い。一方、55%を越えると本止め後においても強固な係合が生じ難い。より好ましくは、27〜42%の範囲であり、さらに好ましくは28〜40%の範囲である。そして、本実施形態においては、雄型係合素子(A)が存在する中央部および雄型係合素子(A)が存在する両隣部がともに、上記基板被覆率を満足しているのが好ましい。
なお、本明細書でいう雄型係合素子の基板被覆率とは、雄型係合素子が立設されている基板部分の面積に対する雄型係合素子のヘッド部を上部から見た面積の割合である。具体的には、雄型係合素子が連続して存在する部分を上面から光学顕微鏡で写真を撮り、同写真から50個の雄型係合素子が存在している任意の基板部を囲み、その囲った部分の面積(s1)と、同部分に存在する50個の雄型係合素子のヘッド部の上面の面積の合計(s2)を求め、[(s2)/(s1)]×100を算出することにより係合素子の基板被覆率が得られる。
図3は、係合素子が連続して存在する部分を上面から光学顕微鏡で撮った場合の模式図であり、同図中、Sがステム、Tが係合用突起、Bが基板をそれぞれ表す。また同図のX方向およびY方向は、図1〜図4のX方向(基板幅方向)、Y方向(基板長さ方向)と合致している。
図3のように係合素子が基板上に規則正しく立設されている場合には、同図に示すように、1つの係合素子の端部を辺とし隣り合う係合素子の端部を辺とする四辺形を描き(図3において一点鎖線で示す四辺形)、その面積に占める1つの係合素子の上部から見た係合素子の面積(S+2T)の割合を求めることにより係合素子の基板被覆率が求められる。なお、2段以上の係合突起を有する係合素子の場合には、そのもっとも広く張り出している突起で基板被覆率を測定する。
また、雄型係合素子の係合用突起と、同突起方向(すなわち図に示すX方向)に隣り合う雄型係合素子の係合用突起との間隔は0.6〜2.5mmの範囲が適当である。前記間隔が0.6mmより狭い場合には、充分な係合力が得られず、また2.5mmより広い場合には、上記した雄型係合素子の基板被覆率を達成することが困難となる。
また、雄型係合素子の高さ(H)としては、1.2〜3.5mmの高さが好ましい。雄型係合素子の高さが1.2mm未満の場合には、充分な係合力が得られず、また3.5mmを超える場合には、雄型係合素子が倒れやすくなり、軽い力でループ状係合素子に引っ掛かり易くなり好ましくない。より好ましくは1.5〜3.0mmの範囲である。
さらに、係合素子の係合素子列方向(基板長さY方向)の厚さ(W)は、雄型係合素子の高さ(H)の0.15〜0.6倍の範囲が好ましい。0.15倍未満の場合には、雄型係合素子の強度が低くなり充分な係合力が得られず、また0.6倍を超える場合も、ループ状係合素子との係合が困難となり、充分な係合力が得られない。より好ましくは0.18〜0.5倍の範囲である。
さらに、雄型係合素子のステム部の太さとしては、上記係合素子の係合素子列方向の厚さと同一の理由により、基板に平行な面での断面積が0.09〜0.4mmの範囲が好ましい。
なお、基板(B)の厚さとしては、特に限定されないが、0.15〜0.8mmの範囲が適切である。また、係合素子密度としては、Aが存在する中央部およびAが存在する両隣部ともに、20〜60個/cmの範囲が好ましく、特に40〜50個/cmがより好ましい。
本実施形態の面ファスナーにおいて、基板の幅方向中央部には、1段の突起を有する雄型係合素子(A)の列が存在しているが、雄型係合素子(A)の列は1列であってもよいが、好ましくは2〜10列存在している場合であり、より好ましくは3〜6列存在している場合である。
そして、そのような雄型係合素子(A)が存在する中央部の両隣には、2段以上の突起を有する雄型係合素子(A)の列からなる両隣部が存在している。雄型係合素子(A2)の列は左右合計で2列以上存在していることが好ましく、より好ましくは左右それぞれに3〜20列、さらに好ましくは左右それぞれに4〜12列存在している場合である。
本実施形態の面ファスナーにおいて、基板(B)および雄型係合素子(AおよびA)は、ともに樹脂からなることが好ましい。基板(B)と雄型係合素子(AおよびA)は別々の樹脂から形成されていても良いが、生産性の点から通常は同一の樹脂から構成されているのが好ましい。
用いられる樹脂に関しては、特に限定されず、通常の成形に用いられる樹脂、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ナイロン6やナイロン66等のナイロン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸等のポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、エラストマー系の樹脂等が挙げられる。なかでも、ポリエステル系、ポリオレフィン系、ポリスチレン系、ポリウレタン系等のエラストマー樹脂が好ましく、もっとも好ましくはポリエステル系のエラストマーであり、このエラストマーの場合には、対象物を破損することがより一層少なく、かつ係合相手のループ状係合素子を切断することなく剥離することができるという利点がある。
ポリエステル系のエラストマーとは、例えば、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸またはその誘導体を用い、ジオール成分として1,4−ブタンジオールとポリ(オキシテトラメチレン)グリコールまたはそれらの誘導体を用いて得られるものである。ポリエステルエラストマー中における[ポリ(オキシテトラメチレン)]テレフタレート基の割合が40〜70重量%であるものがより好ましい。また上述したような樹脂は単独で、あるいは2種以上をブレンドして用いられていてもよい。
次に、本実施形態の面ファスナーの製造方法について説明する。
まず、図4に示すようなスリットを有するノズルから樹脂を溶融押出し、冷却して、基板表面に、基板に対して直立しかつ長さ方向に連続しているキノコ状係合素子断面を有する複数の列条を有するテープ状物を成形する。図4に示すBが基板を形成することとなる線状スリットであり、そしてAが雄型係合素子を形成することとなる係合素子用スリットである。図4のようなスリットを用いた場合には、基板表面に直立し、くっつき防止用突起を有する雄型係合素子用列条が9本等間隔で存在しているテープ状物が得られる。
列条の本数としては、延伸した後のテープ幅1cm当たり5〜15本が好ましい。また、テープ幅としては20〜50mmが好ましい。そして、中央部の3本が雄型係合素子(A)用スリットでその両隣部のそれぞれ3本が雄型係合素子(A)用スリットである。
次に、得られたテープ状物の表面に存在する係合素子用列条に、該列条長さ方法を横切る方向、好ましくは直交する方向に、小間隔で該列条の先端から付け根付近まで切れ目を入れる。切れ目の間隔としては0.2〜0.8mm、特に0.4〜0.6mmの範囲が適切である。
次いで、テープ状物を長さ方向に延伸する。延伸倍率としては、延伸後のテープ状物の長さが元のテープ状物長さの1.3〜3.5倍、より好ましくは2.0〜3.0倍となる程度が採用される。この延伸により、列条に入れられた切れ目が広がり、列条が独立した多数の雄型係合素子の列となる。
なお、基板からの係合素子の高さ(H)に対する係合素子の最頂部から該突起下端部までの長さ(D)の比(D/H)の値を高くするためには、図4に示す係合素子用スリット(E)のヘッド部分を厚くするか、あるいは図4に示すようにステムの上にくっつき防止用突起に対応する切欠部(M)を設ければよい。
また、係合素子の基板被覆率を高くするためには、図4に示すノズルの係合素子用スリットのヘッド部分を両翼に大きく張り出しているようにすることにより、また隣り合う係合素子用スリットの間隔を狭くすることにより、さらには延伸倍率を低くすること等により達成できる。
本実施形態の雄型成形面ファスナーと係合するループ面ファスナーとしては、通常のループ状係合素子を有する面ファスナーが特に限定なく用いられる。たとえば、織物基布の表面にマルチフィラメント糸からなるループ状係合素子を存在させた織物ループ面ファスナーが好適に用いられる。
ループ状係合素子を構成するマルチフィラメント糸としては、10〜50dtexのフィラメントが5〜25本集束したマルチフィラメント糸が好ましく、またループ状係合素子の高さとしては1.5〜5mmの範囲が好ましい。
本実施形態の雄型面ファスナーは、誤った位置に取り付けた場合でも、損傷を伴うことなく取り外すことができ、そして取り付け後には強固な係合が得られることから、例えば、壁材、床材、天井材等の分野に好適に用いられる。
特に、前記したように、自動車の生産の際に、一定速度で流れている生産ラインにおいて、自動車の天井基材に内装材である天井材を固定する作業や自動車のトランクルーム用位置にトランクルームを形成する成形材を固定する作業において、固定する位置を間違えると、係合を一旦剥がして再度固定する作業が必要となり、そのために、生産ラインに混乱が生じたり、ライン速度を落としたりするなどの対応が必要となるが、本実施形態の雄型成形面ファスナーは、ループ面ファスナーと組み合わせて、天井基材に取り付ける際の、あるいはトランクルーム形成用成形材を取り付ける際の、取り付け手段として用いると、不適切な位置に係合させたとしても、剥離の際に容易に剥がすことができ、修正が可能となり、ラインを停止したり速度を遅くする必要がなくなる。
また、家屋等の内装工事において、天井材や壁材に本実施形態の雄型面ファスナーとループ面ファスナーの組み合わせを用いると、位置ズレを生じた天井材や壁材を取り外す際に、天井材や壁材が損傷することを防ぐことができ、特に取り付ける対象物が大きな形状である場合には、本実施形態の雄型面ファスナーを用いる効果は非常に大きい。
このように本実施形態の雄型面ファスナーは、面積の大きい対象物を所定の位置に固定する際の固定手段として極めて優れており、たとえば面積が0.1m以上、特に0.2m以上のシート、あるいは板状物が取り付け対象物である場合に特に優れた効果を発揮する。
なお、取り付け対象物を剥がす際には、取り付け対象物の端部と基材の隙間に手や器具を挿入して剥離する方法が用いられることから、本実施形態の雄型面ファスナーは、取り付け対象物の端部と面ファスナーの係合素子列が平行となるように取り付けられるのが、本実施形態の雄型面ファスナーの効果を発揮する上で好ましい。
本実施形態の雄型面ファスナーは、接着剤や粘着剤によりあるいは融着や縫製、ホッチキス等により対象物の裏面あるいは基材表面に取り付けられ、一方、ループ面ファスナーも同様に、接着剤や粘着剤により、あるいは融着や縫製、ホッチキスにより対象物の裏面や基材表面に取り付けられる。
本明細書は、上述したように様々な態様の技術を開示しているが、そのうち主な技術を以下に纏める。
本発明の一局面に関する面ファスナーは、樹脂からなる基板上に立ち上がる複数の雄型係合素子を有する面ファスナーであって、前記雄型係合素子が、前記基板から立ち上がるステムおよびステムの途中または先端から基板幅方向に突出する突起を有し、前記雄型係合素子が基板長さ方向に列をなしており、さらにそのような列が基板の幅方向に複数列並んでおり、前記基板の幅方向の中央部には下記(A)の雄型係合素子の列が存在し、その幅方向両隣部には下記(A)の雄型係合素子の列が存在していることを特徴とする。
(A)ステムから突出する突起が1段であって、かつその突出長が0.4mm以上である雄型係合素子。
(A)ステムから突出する突起がステムの上下方向に2段以上であって、かつその最上段の突出長が0.35mm以下である雄型係合素子。
このような構成により、取り外しの際に対象物を損傷させることが少なく、取り外し作業が容易にできる。その結果、取り付け位置や方向が正確でないことによる取り付け直し作業や修理作業が容易となり、しかも取り付けた後においては、従来の面ファスナーと遜色のない係合力が得られる。
また、上記の面ファスナーにおいて、雄型係合素子(A)が存在する両隣部の面積が、雄型係合素子(A)が存在する中央部と雄型係合素子(A)が存在する両隣部の合計面積の50〜90%であることが好ましい。それにより、面ファスナーの係合力がより一層高度に達成されると考えられる。
また、上記面ファスナーにおいて、雄型係合素子(A)が2〜10列存在する中央部の両隣に雄型係合素子(A)が3〜20列存在する両隣部が存在していることが好ましい。それにより、面ファスナー取外しの際に対象物を破損することなく容易に取外すことができるという利点がある。
さらに、上記の面ファスナーにおいて、雄型係合素子(A)および雄型係合素子(A)が、ともに、基板からの該係合素子の高さ(H)に対する該係合素子の最頂部から最上段突起の下端部までの長さ(D)の比(D/H)が0.35〜0.75であることが好ましい。そのような構成によれば、位置合わせ時等における無用な係合を生じないという利点がある。
さらに、上記の面ファスナーにおいて、前記雄型係合素子の基板被覆率が25〜55%であることが好ましい。そのような構成によっても、位置合わせ時等における無用な係合を生じないという利点と十分な係合力を得ることができる利点がある。
また、上記の面ファスナーにおいて、面ファスナーの雄型係合素子密度が中央部および両隣部ともに30〜70個/cmの範囲であることが好ましい。それにより、必要に応じて容易に剥離できるという利点がある。
さらに、前記基板および前記雄型係合素子を形成する樹脂がポリエステル系エラストマーであることが好ましい。それにより、対象物を破損することがより一層少なく、かつ係合相手のループ状係合素子を切断することなく剥離することができるという利点がある。
さらに本発明の他の局面に関する内装材は、上記の面ファスナーを用いて天井、壁または床面に固定される内装材である。特に、天井用内装材(以下、単に天井材と証する場合がある。)や壁用内装材(以下、単に壁材と称する場合がある。)や床用内装材(以下、単に床材と称する場合がある。)を天井や壁面や床面に固定する際の固定材として使用されることが好ましい。より詳細には、天井基材に天井材を固定する場合に、基材と天井材のいずれかに一方にループ面ファスナーを取り付け、他方にループ面ファスナーと係合可能な上記雄型面ファスナーを取り付けて、両者を係合させることにより天井基材に天井材を固定する等の内装材に関する。より好ましくは車両用に使用する上記内装材である。
さらには、本発明の面ファスナーは、その係合素子列が取り付け対象物の端部に平行になるように対象物に取り付けられている場合により効果を発揮する。特に、このような対象物を剥離する際には、対象物の端部の隙間に手や剥離に使用する道具を挿入して雄型面ファスナーの両隣部の一方の雄型係合素子(A)からまず剥離させ、次に雄型係合素子(A)を剥離させ、そして最後にもう一方の両隣部の雄型係合素子(A)を剥離させるようにすることにより、対象物を取り外すのが、本発明の面ファスナーの効果を発現させる上で好ましい。
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。なお、実施例中、係合力はJIS L3416に記載されている方法に準じて、係合面を垂直方向及び割裂剥離方向に剥離するようにして測定した。
本発明者等は、通常係合させる際の押圧について観測したところ、約900g/cm程度であることを確認し、この事実から押圧900g/cmで雄型面ファスナーとループ面ファスナーの係合させたときに発生する係合力を調査した。またクリープ耐熱試験をクラレファスニング法にて実施した。
クラレファスニング法:雄型面ファスナーとループ面ファスナーを6cm係合させ90℃雰囲気下で面直方向に2kg荷重を掛けた状態で24時間養生させ24時間後落下しなければ合格とする。
実施例1
[雄型面ファスナーの製造]
図4に示すようなノズルを用いて、ポリエステルエラストマー(東レデュポン社製ハイトレル6377)を押し出し、冷却して、長さ方向に連続しているキノコ状係合素子断面を有する複数の列条を有するテープ状物を成形した。該列条の本数は15本で、図1に示すような、ポリエステルエラストマーからなる基板(B)の上に、同じくポリエステルエラストマーからなる雄型係合素子として、1段の突起を有する雄型係合素子(A)用の列条が中央部に3列と2段の突起を有する雄型係合素子(A)用の列条がその両隣部に各6列配置している。テープ状物の幅は40mmであった。
そして、該列条に、該列条長さ方向に直交する方向に、0.5mm間隔で該列条の先端から付け根付近まで切れ目を入れた。次いで、テープ状物を長さ方向に2.2倍延伸した。
得られた雄型面ファスナーの係合素子高さ(H)はAおよびAともに2.6mm、係合素子の最頂部から最上段突起の下端部までの長さ(D)はAおよびAともに1.0mm、雄型係合素子の係合用突起と、同突起方向(すなわち図2に示すX方向)に隣り合う係合素子の係合用突起との間隔(Aの場合は下段の係合用突起)はAおよびAともに0.7mm、係合用突起の突出長さは1段の係合素子(A)が0.61mm、2段の係合素子(A)の上段が0.22mmであり、雄型係合素子の係合素子列方向の厚さは0.5mm、係合素子のステム部の太さはAおよびAともに0.3mm、基板(B)の厚さは0.3mm、係合素子密度は、中央部および両隣部ともに50個/cmで、基板被覆率は35%であった。
なお、2段の係合素子(A)に関しては、下段に存在している係合用突起の大きさを上段に存在している係合用突起よりも長くすることにより、1段の係合素子(A)が存在する領域の基板被覆率と2段の係合素子(A)が存在する領域の基板被覆率を同一となるようにした。雄型係合素子(A)が存在する両端両隣部の面積は、雄型係合素子(A)が存在する中央部と雄型係合素子(A)が存在する両隣部の合計面積の74.3%であった。
[ループ面ファスナーの製造]
地経糸として、ポリエチレンテレフタレートからなる167デシテックスで30フィラメントからなるマルチフィラメント糸、地緯糸として、ポリエチレンテレフタレートからなる99デシテックスで24フィラメントからなるマルチフィラメント糸、ループ状係合素子用糸として、ポリブチレンテレフタレートからなる265デシテックスの7フィラメントからなるマルチフィラメント糸(1フィラメントの太さ38デシテックス)を用い、織密度を、地経糸(ループ状係合素子用糸を含む)75本/cm、地緯糸20本/cmとし、平織で面ファスナー用生機を作製した。ループ状係合素子は、地緯糸を1本潜り、次の地緯糸上に出てくる毎にループを形成するようにし、かつ地経糸とは交差しないようにした。
得られた生機を160℃で熱処理し、裏面にポリウレタン溶液を固形分35g/m塗布し、乾燥させて、ループ面ファスナーを得た。
得られたループ面ファスナーのループ状係合素子密度は131個/cmであり、ループ状係合素子のループ面はいずれも地緯糸方向を向いていた。ループ状係合素子の高さは2.2mmであり、いずれのループ状係合素子もマルチフィラメントの束状態を保ったままであり、束から分かれて存在するフィラメントはほとんど見当たらなかった。
得られた雄型面ファスナーをプラスチック板に、面ファスナーの基板長さ方向が板の端部と平行になるように、貼り付けた。一方、この雄型面ファスナーと係合させる面ファスナーとして、前記したループ面ファスナーを用いた。そして、両方の面ファスナーを重ね合わせ、押圧900g/cmで押え付け、板端部からの割裂剥離強力と面直強力をそれぞれ測定、およびクリープ耐熱試験を実施した。
その結果、割裂剥離強力は10.5N/cm、面直係合は初回28.3N/cm、5回後19.6N/cm。クリープ試験は24時間保持した。これらの結果から、この雄型成形面ファスナーは、面直強力は強く、割裂剥離強力は面直強力の1/3程度で取外し作業性が良いことが確認された。
実施例1の雄型面ファスナーを、サンルーフ仕様の自動車の製造時に自動車のサンルーフ用に空けた開口部を有する天井用内装材の裏面に、開口部に沿って間隔をあけて接着剤で取り付けた。一方車体の天井部の鉄板に上記ループ面ファスナーを接着剤で取り付け、そして両者を係合させ、最適場所を決め、天井用内装材を押しつけたところ、十分な係合力で両者は係合固定されていた。取り外しも天井材の変形、破損なく容易に短時間で取外すことが出来ることが確認できた。
比較例1
上記実施例1において、雄型面ファスナーを、すべての雄型係合素子が1段の雄型係合素子(A)である雄型面ファスナー(すなわち2段の雄型係合素子が存在していない雄型面ファスナー)に変更した。それ以外は実施例1と同様にした。得られた雄型面ファスナーを実施例1と同様のループ面ファスナーと係合させ、その際の割裂剥離強力及び面直強力、クリープ耐熱試験を測定した。
その結果、割裂剥離強力18.2N/cmで面直強力の初回34.2N/cm、5回後19.7N/cm、クリープ耐熱試験は24時間保持し、これらの性能においては十分に満足できる結果であった。
しかしながら、割裂剥離測定の際にプラスチック板に曲がりが生じた。さらに、実際の天井材の固定に使用した場合には、天井材を剥がす際に、一部の天井材に、割れや裂け、曲がり等の破損が生じた。
実施例2〜3
上記実施例1において、雄型面ファスナーの列数を変更する以外は実施例1と同様にして雄型成形面ファスナーを製造した。すなわち、実施例2では、中央部の2列が1段の係合素子(A)で、その両隣部にそれぞれ4列の2段の係合素子(A)が存在している雄型面ファスナーを製造した。また、実施例3では、中央部の4列が1段の係合素子(A)で、その両隣部に2段の係合素子(A)7列がそれぞれ存在している雄型面ファスナーを製造した。それぞれの雄型面ファスナーを、上記実施例1と同様にループ面ファスナーと係合させ、その際の割裂剥離強度及び面直強度を測定し、さらにクリープ耐熱試験を行った。その結果を表1に示す。
さらに、実施例2および3の雄型面ファスナーを用いて実施例1と同様に天井材に用いたところ、いずれの雄型面ファスナーを用いても、剥離の際に、天井材を破損することがなかった。なお、2段の係合素子の下の係合用突起の太さを大きくすることにより、実施例1の基板被覆率となるようにした。
Figure 0006517828
比較例2
上記実施例1において、雄型係合素子を全て2段の雄型係合素子(A)に変更する以外は実施例1と同様して、雄型面ファスナーを作製し、得られた雄型面ファスナーを実施例1と同様のループ面ファスナーと係合させた。そして、その際の割裂剥離強度及び面直強度を測定し、さらにクリープ耐熱試験を行った。その結果を下記表2に示す。表2から明らかなように、クリープ耐熱試験の点で劣っており、体育館等の天井材の固定に使用した場合には、振動や屋根からの熱により場合により落下の恐れがあることが確認された。
比較例3
上記実施例1において、1段の雄型係合素子(A)と2段の雄型係合素子(A)の場所を変更、すなわち1段の雄型係合素子(A)が存在していた場所に2段の雄型係合素子(A)、2段の雄型係合素子(A)が存在していた場所に1段の雄型係合素子(A)を配置する以外は実施例1と同様して、雄型面ファスナーを作製した。つまり、中央部に2段の雄型係合素子(A)を配置し、その両隣部には1段の雄型係合素子(A)を配置した。
得られた雄型面ファスナーを実施例1と同様のループ面ファスナーと係合させ、その際の割裂剥離強度及び面直強度、クリープ耐熱試験を測定した。その結果を表2に示す。表2から明らかなように、割裂剥離強力が高すぎ、天井材に使用した場合には、比較例1と同様に剥離の際に天井材の破損が生じた。
比較例4
上記実施例1において、2段の雄型係合素子(A)の上段の係合用突起の突出長さを0.45mmと変更する以外は実施例1と同様にして、雄型面ファスナーを作製した。
得られた雄型面ファスナーを実施例1と同様のループ面ファスナーと係合させ、その際の割裂剥離強度及び面直強度、クリープ耐熱試験を測定した。その結果を表2に示す。表2から明らかなように、割裂剥離強力が高すぎ、天井材に使用した場合には、比較例1と比べると若干の改良は見られるものの、比較例1と同様に天井材の破損が生じた。
比較例5
上記実施例1において、1段の雄型係合素子(A)の係合用突起の突出長さを0.35mmと変更する以外は実施例1と同様にして、雄型面ファスナーを作製した。得られた雄型面ファスナーを実施例1と同様にループ面ファスナーと係合させ、その際の割裂剥離強度及び面直強度を測定し、さらにクリープ耐熱試験を行った。
その結果を表2に示す。表2から明らかなように、クリープ耐熱試験が低く、天井材に使用した場合には、振動等により落下する恐れが容易に予測された。
Figure 0006517828
実施例4
上記実施例1において、1段の雄型係合素子(A)の係合用突起の突出長さを0.45mmと変更する以外は実施例1と同様にして、雄型面ファスナーを作製した。得られた雄型面ファスナーを実施例1と同様にループ面ファスナーと係合させ、その際の割裂剥離強度及び面直強度を測定し、さらにクリープ耐熱試験を行った。
その結果を表3に示す。同表から明らかなように、割裂剥離強度および面直強度がともに実施例1より若干劣るものの、実用上は問題なかった。また、天井材に使用した場合には、剥がす際に天井板が割れや裂けや曲がりが発生することがなく、さらに振動等により落下する恐れもなかった。
実施例5
上記実施例1において、2段の雄型係合素子(A)の上段の係合用突起の突出長さを0.32mmと変更する以外は実施例1と同様にして、雄型面ファスナーを作製した。得られた雄型面ファスナーを実施例1と同様にループ面ファスナーと係合させ、その際の割裂剥離強度及び面直強度を測定するとともにクリープ耐熱試験を行った。
その結果を表3に示す。同表から明らかなように、割裂剥離強力が実施例1よりわずかに高く、剥離する際に慎重を要したものの、天井材が剥離の際に破損することはなかった。
Figure 0006517828
この出願は、2014年9月22日に出願された日本国特許出願特願2014−192607を基礎とするものであり、その内容は、本願に含まれるものである。
本発明を表現するために、前述において図面等を参照しながら実施形態を通して本発明を適切かつ十分に説明したが、当業者であれば前述の実施形態を変更及び/又は改良することは容易になし得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態又は改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態又は当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。
本発明は、面ファスナーの技術分野において、広範な産業上の利用可能性を有する。

Claims (9)

  1. 樹脂からなる基板上に立ち上がる複数の雄型係合素子を有する面ファスナーであって、
    前記雄型係合素子が、前記基板から立ち上がるステムおよびステムの途中または先端から基板幅方向に突出する突起を有し、
    前記雄型係合素子が基板長さ方向に列をなしており、さらにそのような列が基板の幅方向に複数列並んでおり、
    前記基板の幅方向の中央部には下記(A)の雄型係合素子の列が存在し、その幅方向両隣部には下記(A)の雄型係合素子の列が存在している面ファスナー。
    (A)ステムから突出する突起が1段であって、かつその突出長が0.4mm以上である雄型係合素子。
    (A)ステムから突出する突起がステムの上下方向に2段以上であって、かつその最上段の突出長が0.35mm以下である雄型係合素子。
  2. 前記雄型係合素子(A)が存在する両隣部の面積が、前記雄型係合素子(A)が存在する中央部と前記雄型係合素子(A)が存在する両隣部の合計面積の50〜90%である、請求項1に記載の面ファスナー。
  3. 前記雄型係合素子(A)が2〜10列存在する中央部の両隣に前記雄型係合素子(A)が3〜20列存在する両隣部が存在する、請求項1または2に記載の面ファスナー。
  4. 前記基板および前記雄型係合素子を形成する樹脂がポリエステル系エラストマーである、請求項1〜3のいずれかに記載の面ファスナー。
  5. 前記雄型係合素子(A)および前記雄型係合素子(A)が、ともに、前記基板からの該係合素子の高さ(H)に対する該係合素子の最頂部から最上段突起の下端部までの長さ(D)の比(D/H)が0.35〜0.75である、請求項1〜4のいずれかに記載の面ファスナー。
  6. 前記雄型係合素子の基板被覆率が25〜55%である、請求項1〜5のいずれかに記載の面ファスナー。
  7. 前記雄型係合素子密度が中央部および両隣部ともに30〜70個/cmの範囲である、請求項1〜6のいずれかに記載の面ファスナー。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の面ファスナーを用いて天井、壁または床面に固定される内装材。
  9. 車両用である、請求項8に記載の内装材。

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