以下、この発明の好ましい一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明は本発明の一実施形態を例示するのであり、下記の説明に限定されるものではない。本発明の主旨を逸脱しない範囲で、下記の実施形態は変更することができる。
図1は、本発明に係るスリットコータ1の概略正面図、図2はスリットコータ1の概略側面図、図3は別の載置台300の実施態様の概略正面図、図4は本発明に係る別のスリットコータ400の概略正面図、図5はスリットコータ400の概略側面図である。
まず図1を参照すると、本発明に係るノズル浮上ユニット200を備えた塗布装置であるスリットコータ1が示されている。なお図1は、紙面に垂直なY方向(図2参照)の中央付近から見て表されており、図2に示されるY1−Y1矢視図と一致する。したがってY方向に一対備えているものは、図2の左側に示されるものが図1に表されている。
さてこのスリットコータ1は基台2を備えており、基台2上には、被塗布部材である基板Aの保持体として被塗布部材保持手段である載置台10が配置されている。この載置台10の上面18は、真空吸引によって基板Aが吸着固定可能となるように、吸着孔や吸着溝が設けられており、基板Aの下面である基板下面9を吸着する吸着面として構成されている。したがって載置台10は吸着盤として機能する。
基台2上には、さらに一対のガイドレール4A、Bが設けられており、このガイドレール4A、B上には、X軸受14A、Bを介して門型ガントリー6が、矢印で示されているX方向に案内自在に搭載されている。なお、本明細書を通じて、同じ番号の構成部分であって、配置場所が異なると言った理由で番号の後ろにアルファベットをつけて弁別しているものを連続して記載する場合は、番号を省略する場合がある。例えば、ガイドレール4Aとガイドレール4Bをまとめて表す場合は「ガイドレール4A、B」等と表す。
この門型ガントリー6はX軸受14A、Bにそれぞれ固定されている走行部16A、Bとステー12で門型形状を形成しており、図示しないリニアモータで駆動されてX方向に自在に往復動することができる。この門型ガントリー6の塗布幅方向であるY方向両端にある走行部16A、B上には、Z軸ガイドレール70A、Bが設けられている。これによって矢印で示されている上下方向であるZ方向に自在に案内されるのがノズル浮上ユニット200である。
ノズル浮上ユニット200は、これに設置された塗布器であるスリットノズル20を、気体噴出手段であるエアーパッド202A、B、Cの非接触案内により、基板Aの被塗布面である基板上面8に沿わせてZ方向に移動させ、スリットノズル20と基板Aの基板上面8との間隔であるクリアランスCLを常に一定に保つ機構である。
ノズル浮上ユニット200はベースブロック206A、Bを介して門型ガントリー6に取り付けられている。すなわち図2を見ると、ベースブロック206A、Bの各々のY方向中央部付近が、Z軸ガイドレール70A、Bに沿ってZ方向に自在に往復動するZ軸受76A、Bに締結保持されている。
またベースブロック206A、Bの各々のY方向片側端部にはナット78A、Bが締結固定されており、これが門型ガントリー6の走行部16A、B上に備えられたボールネジ72A、Bと係合している。したがってボールネジ72A、Bに直結するモータ74A、Bによってボールネジ72A、Bを回転させると、ナット78A、Bが上下方向に昇降するので、ナット78A、Bに直結したベースブロック206A、Bを介して、ノズル浮上ユニット200全体をZ方向に自在に移動させることができる。
またベースブロック206A、Bのナット78A、Bが固定されている端部とはY方向逆側に、揺動軸212A、Bが固定されている。この揺動軸212A、Bに回転ベアリング210A、Bが回転自在に支持されている。
ここで図1に戻ると、回転ベアリング210A、Bが締結固定されている揺動体214は、揺動軸212A、Bの中心回りに、X−Z平面内で往復自在に回転、すなわち揺動する。ベースブロック206AにはL型のブラケット216も固定されており、これに設けられたストッパー218が、回転ベアリング210Aの一端と接触することにより、揺動体214の反時計方向の回転が制限される。
揺動体214にはまた、X方向には揺動軸212A、Bの中心に対してスリットノズル20とは逆側の位置に、そしてY方向には両端にそれぞれ錘234A、Bが設けられている。なお錘234A、Bの質量(重さ)は、少なくとも揺動体214が反時計方向に回転するように調整される。
また揺動体214のY方向中央部には別の回転ベアリング220が固定されており、これに回転軸224が回転自在に支持されているので、回転軸224を固定保持するコの字型の保持ブラケット222は、回転軸224の中心回りに、Y−Z平面内で往復自在に回転する。したがって保持ブラケット222が固定されている基準プレート226と、この下側に固定されているスリットノズル20も、Y−Z平面内で往復自在に回転する。
またスリットノズル20がノズル上面38が面接触して固定保持されている基準プレート226の基準面228には、気体噴出手段であるエアーパッド202A、B、Cもスペーサ230A、B、Cを介して面接触して固定保持されている。
エアーパッド202Cとスペーサ230Cは、スリットノズル20のX方向の右側に位置し、Y方向に伸びている。一方エアーパッド202A、Bとスペーサ230A、Bは、X方向にはスリットノズル20とほぼ同じ位置で、重なっている。
エアーパッド202A、B、Cの気体噴出面は噴出面236A、B、Cとなっており、ここから空気等の気体が噴出される。気体噴出面236A、B、Cは気体の通過孔が多数設けられており、粒子の多孔質構造によってそれを実現しているものが多く用いられる。
さらにまた、気体噴出面236A、B、Cはスリットノズル20の吐出口面36と平行となっている。したがって、スペーサ230A、B、Cの厚さts(Z方向に測定する)によって、スリットノズル20の吐出口面36とエアーパッド202A、B、Cの気体噴出面236A、B、C間の間隔、または相対距離が距離C1となるように定めることができる。
したがって吐出口面36と気体噴出面236A、B、Cが距離C1の間隔をおいて平行となるようにスリットノズル20と、スペーサ230A、B、Cを介してエアーパッド202A、B、Cを共に固定保持する基準プレート226が、塗布器保持手段となる。
さて距離C1と、エアーパッド202A、B、Cからの気体噴出による浮上量、すなわち基板Aの基板上面8と気体噴出面236A、B、C間の距離C2を足し合わせたものが、クリアランスCLとなる。
クリアランスCLは、スリットノズル20と基板A間のすきま、すなわちスリットノズル20の最下端面となる吐出口面36と基板Aの基板上面8間の距離となり、吐出口面36のX方向とY方向の全面にわたって均一に維持される。このクリアランスCLが均一に維持されている状況では、スリットノズル20の吐出口面36は基板Aの被塗布面である基板上面8と相対しており、平行となっている。そのようになるように基板Aは載置台10に保持されている。
ここで再び図2を参照すると、エアーパッド202A、Bとスペーサ230A、Bは、Y方向にはスリットノズル20の両側に配置されている。また、回転ストッパー232A、BがY方向の離れた位置で、揺動体214に設けられている。回転ストッパー232A、Bは、基準プレート226の上面238と接触して、Y方向の中央部にある回転軸224の中心回りの基準プレート226の往復回転範囲を制限する。
またここでY方向の位置関係を再確認すると、揺動体214のY方向の両端には、回転ベアリング210A、B、揺動軸212A、B、錘234A、Bが配置されている。さらにY方向の一番両端には、門型ガントリー6を構成する走行部16A、Bが、X軸受14A、B上に固定されている。
この走行部16A、Bにステー12が連結されて門型となっている。さらに走行部16A、Bのそれぞれには、Z軸ガイドレール70A、Bが設けられており、これにZ軸受76A、Bを介して揺動軸212A、Bが固定されているベースブロック206A、Bが保持されている。
さらに再び図1に戻って、以上で構成を説明したノズル浮上ユニット200の作用について説明する。最初はノズル浮上ユニット200をZ方向の上側で待機させ、スリットノズル20の吐出口面36やエアーパッド202A、B、Cの気体噴出面236A、B、Cと、基板Aの基板上面8とを大きく離して、間隔をとっておく。
この時に、揺動体214が揺動軸212A、Bを中心に反時計方向に回転し、ストッパー218と回転ベアリング210Aの一端とが接触する位置で揺動体214は回転停止する。揺動体214の回転停止位置については、ストッパー218のブラケット216からの突き出し長さで調整する。
次にエアーパッド202A、B、Cの気体噴出面236A、B、Cから空気を所定速度で噴出してから、モータ74A、Bを始動してボールネジ72A、Bを回転させる。このボールネジ72A、Bの回転によって、ノズル浮上ユニット200をゆっくりと下降させ、エアーパッド202A、B、Cの気体噴出面236A、B、Cを基板Aの基板上面8に着地させる。
この時、気体噴出面236A、B、Cから基板Aに空気を介して非接触で負荷圧力が作用するが、負荷圧力が10〜100kPaにバランスするように、あらかじめ錘234A、Bの質量(重さ)を選定し、取り付けておくようにしておく。
その負荷圧力と、気体噴出面236A、B、Cから空気を一定の噴出速度で噴出することで発生する噴出圧力がバランスして、気体噴出面236A、B、Cと基板Aの基板上面8の間に距離C2のすきまが生じる。すなわち距離C2だけ、エアーパッド202A、B、Cは基板A上に浮上する。なおこの浮上時に、ストッパー218と回転ベアリング210Aの一端との間には、すきまが0.1〜5mm設けられるようにしていることが好ましい。
またY方向に基板Aの基板上面8に傾きがあっても(Y−Z面内の傾き)、回転軸224回りの回転作用により、エアーパッド202A、B、Cの気体噴出面236A、B、Cは基板上面8の傾きにならって、距離C2の一様なすきまを保つ。すなわち基板AがY方向に傾いていても、一様に距離C2だけ、エアーパッド202A、B、Cは浮上する。
したがって基板Aの傾き状態に関わりなく、スリットノズル20の吐出口面36と基板Aの基板上面8の間には、エアーパッド202A、B、Cの浮上量である距離C2に、あらかじめ設定した吐出口面36と気体噴出面236A、B、C間の距離C1を加えたクリアランスCLのすきま、すなわち一定間隔が一様に設けられる。
ここで門型ガントリー6をX方向に駆動を開始すると、エアーパッド202A、B、Cによって非接触で基板Aの基板上面8のうねりにならうことになるので、スリットノズル20は基板Aとの間で一様なクリアランスCLを保ったままX方向に移動する。この状態で距離C1と距離C2を小さくしてクリアランスCLを50μm未満の微小値にし、スリットノズル20から塗布液を吐出すると、均一な薄膜塗布が行える。
以上より、エアーパッド202A、B、Cの気体噴出面236A、B、Cから空気を介して基板Aに作用する負荷圧力を、錘234A、Bの質量によって所定値にバランスさせる。それとともに、スリットノズル20とエアーパッド202A、B、Cを含む塗布器保持手段である基準プレート226を、揺動軸212A、Bを中心とした回転方向と、回転軸224を中心とした回転方向の2方向に移動自在に保持する。
これらによって、スリットノズル20の吐出口面36と基板Aの基板上面8が一定間隔であるクリアランスCLになるように作用するノズル浮上ユニット200が、間隔維持手段となる。
さて次にスリットノズル20を図1で見ると、スリットノズル20は、X方向に直交する塗布幅方向(紙面に垂直な方向)にのびているフロントリップ22とリアリップ24を、シム32を介してX方向に重ね合わせ、図示しない複数の連結ボルトにより一体的に結合して構成されている。
スリットノズル20内の中央部にはマニホールド26が形成されており、このマニホールド26もスリットノズル20の長手方向、すなわち塗布幅方向であるY方向にのびている。マニホールド26の下方には、スリット28が連通して形成されている。
このスリット28もスリットノズル20の長手方向にのびており、その下端がスリットノズル20の最下端面、すなわち最も下側に位置する先端部である吐出口面36で開口して、吐出口34を形成する。なおスリット28はシム32によって形成されるので、スリット28の間隙(X方向に測定)は、シム32の厚さと等しくなる。
スリットノズル20のマニホールド26の上流側は、塗布液供給手段として機能する塗布液供給装置40に連なる供給ホース60に、内部通路(図示しない)を介して常時接続されている。これにより、マニホールド26へは塗布液供給装置40から塗布液66を供給することができる。マニホールド26に入った塗布液66はスリットノズル20の長手方向に均等に拡幅されて、スリット28を経て、吐出口34から吐出される。
なお塗布液供給装置40は、供給ホース60の上流側に、フィルター46、供給バルブ42、シリンジポンプ50、吸引バルブ44、吸引ホース62、タンク64を備えている。タンク64には塗布液66が蓄えられており、圧空源68に連結されて任意の大きさの背圧を塗布液66に付加することができる。タンク64内の塗布液66は、吸引ホース62を通じてシリンジポンプ50に供給される。
シリンジポンプ50では、シリンジ52、ピストン54が本体56に取り付けられている。ここでピストン54は図示しない駆動源によって上下方向に自在に往復動できる。シリンジポンプ50は、一定の内径を有するシリンジ52内に塗布液66を充填し、それをピストン54により押し出して、スリットノズル20に基板Aを一枚塗布する分だけ供給する間欠駆動定容量型のポンプである。
シリンジ52内に塗布液66を充填するときは、吸引バルブ44を開、供給バルブ42を閉として、ピストン54を下方に移動させる。またシリンジ52内に充填された塗布液66をスリットノズル20に向かって供給するときは、吸引バルブ44を閉、供給バルブ42を開とし、ピストン54を上方に移動させることで、ピストン54でシリンジ52内部の塗布液66を押し上げて排出する。
さらに図1で基台2の左側端部を見ると、拭き取りユニット90が基台2上に取り付けられている。拭き取りユニット90の拭き取りヘッド92の上方まで、拭き取りヘッド92と係合するスリットノズル20は門型ガントリー6によって移動することができる。
さて拭き取りユニット90は、スリットノズル20から塗布液66を吐出後、吐出口34や吐出口面36とその近傍からなる先端部に残存する塗布液66を除去して、なおかつ吐出口34まで塗布液66が満たされた状態にする。スリットノズル20をこのような状態にすることを、スリットノズル20の初期化と呼ぶ。
このスリットノズル20の初期化を毎回の塗布前に必ず実施することで、スリットノズル20は常に同じ状態で塗布を開始することができ、多数枚の基板Aに塗布を行っても、すべての基板Aで同じ均一な塗布膜を再現性よく形成することができる。
拭き取りユニット90には、スリットノズル20の吐出口34を含む先端部に係合する形状を有する拭き取りヘッド92が、ブラケット94を介してスライダー96に取り付けられている。スライダー96は駆動ユニット98により、スリットノズル20の長手方向、すなわちY方向に自在に移動する。駆動ユニット98とトレイ100は台102上に固定されている。
また拭き取りを行う時は、スリットノズル20が拭き取りヘッド92に係合する位置まで門型ガントリー6をX方向に移動させ、スリットノズル20を下降して拭き取りヘッド92に係合させる。そして、駆動ユニット98を駆動して拭き取りヘッド92をスリットノズル20の長手方向に摺動させると、スリットノズル20の先端部に残存している塗布液66を除去して、スリットノズル20の初期化を行うことができる。
除去した塗布液66はトレイ100で回収される。トレイ100は図示しない排出ラインに接続されており、内部にたまった塗布液66等の液体を外部に排出、回収することができる。またトレイ100は、スリットノズル20からエアー抜き等で吐出される塗布液66を回収するために使用することもできる。
なお拭き取りヘッド92は、具体的には線接触する合成樹脂製のブレードが好ましく用いられるが、スリットノズル20に均等に係合できるようゴム等の弾性体のブレードであってもよい。さらに塗布液66が高粘度である場合は、拭き取りヘッド92は溶剤をしみ込ませた布を弾性体で保持するものであってもよい。
なお制御信号にて動作するリニアモータ、モータ74A、B、塗布液供給装置40、拭き取りユニット90等はすべて制御装置110に電気的に接続されている。そして、制御装置110に組み込まれた自動運転プログラムにしたがって制御指令信号が各機器に送信されて、あらかじめ定められた動作を行う。なお条件変更時は操作盤112に適宜変更パラメータを入力すれば、それが制御装置110に伝達されて、運転動作の変更が実現できる。
次に本発明のスリットコータ1を用いた塗布方法について詳述する。
まずスリットコータ1の各動作部の原点復帰が行われると、スリットノズル20は上下方向であるZ方向に一番高い位置にある。門型ガントリー6はスリットノズル20が図1の左側端部にある拭き取りヘッド92の上方となる原点位置に来るように移動する。
ここで、タンク64からスリットノズル20まで塗布液66はすでに充満されており、タンク64以降のスリットノズル20までの経路内の残留エアーを排出する作業も既に終了している。この時の塗布液供給装置40の状態は、シリンジ52に塗布液66が充填、吸引バルブ44は閉、供給バルブ42は開、そしてピストン54は最下端の位置にあり、いつでも塗布液66をスリットノズル20に供給できるようになっている。
次に、載置台10の吸着面である上面18で図示しないリフトピンを上昇させ、図示しないローダから基板Aがリフトピン上部に載置される。次にリフトピンを下降させて基板Aを載置台10の上面18に載置し、同時に吸着保持する。
これと並行して、塗布液供給装置40を稼働させて少量の塗布液66をスリットノズル20から吐出後、駆動ユニット98を駆動して、拭き取りヘッド92をスリットノズル20の長手方向端部にある摺動開始位置まで移動させ停止させる。
そしてモータ74A、Bを駆動してボールネジ72A、Bを回転させてスリットノズル20を揺動体214を含むノズル浮上ユニット200ごと下降させて、スリットノズル20の吐出口34とその周辺を拭き取りヘッド92に係合する。その後、拭き取りヘッド92をスリットノズル20の長手方向に摺動させて、スリットノズル20の吐出口34を含む先端部をスリットノズル20の長手方向にわたって拭き取って、スリットノズル20の初期化を実施する。
スリットノズル20の初期化が完了したらスリットノズル20を上昇させる。スリットノズル20の上昇完了後、拭き取りヘッド92を長手方向に最初の位置まで戻す。
次に、門型ガントリー6を右側方向に駆動して、スリットノズル20を基板Aの塗布開始位置の真上に移動させて停止させる。エアーパッド202A、B、Cに所定圧力の空気を供給して気体噴出面236A、B、Cから空気を所定速度で噴出するとともに、モータ74A、Bを駆動してボールネジ72A、Bを回転させてノズル浮上ユニット200を下降し、エアーパッド202A、B、Cの気体噴出面236A、B、Cを基板Aの基板上面8上に着地させる。
そしてノズル浮上ユニット200の下降が停止し、スリットノズル20の吐出口面36と基板Aの基板上面8との間に一定量のすきまであるクリアランスCLが設定できた時点で、シリンジポンプ50を駆動してスリットノズル20から塗布液66を初期吐出量Q0だけ吐出し、スリットノズル20と基板Aとの間にビードBをまず形成する。
つづいてシリンジポンプ50を駆動し、所定吐出速度でスリットノズル20から塗布液66を吐出し、シリンジポンプ50の駆動開始から一定時間T1秒後に門型ガントリー6を所定速度でX方向に移動開始して、塗布液66の基板Aへの塗布を行い、塗布膜Dを形成する。
基板Aの塗布終了位置がスリットノズル20の吐出口34の位置にきたらシリンジポンプ50を停止させて塗布液66の供給を停止し、つづいてモータ74A、Bを駆動してボールネジ72A、Bを塗布開始前とは逆側に回転させ、ノズル浮上ユニット200を上昇させて、スリットノズル20を上昇させる。これによって基板Aとスリットノズル20の間に形成されたビードBが断ち切られ、塗布が終了する。
塗布終了後も門型ガントリー6は動きつづけ、終点位置にきたら一旦停止し、今度は原点位置に向かって逆方向に門型ガントリー6を移動させ、スリットノズル20が拭き取りヘッド92の上方となる原点位置に来たら停止させる。
なお塗布終了では、スリットノズル20の吐出口34が塗布終了位置に来たときに、塗布液66の吐出を停止するとともに門型ガントリー6の移動も停止してスリットノズル20のX方向移動も停止させてよい。この場合、スリットノズル20は塗布終了位置で上昇してビードBを断ち切り、上昇後に原点位置に向かって逆方向に門型ガントリー6を移動させる。
さて、スリットノズル20がX方向の原点位置に戻ってきたら、基板Aの吸着を解除し、リフトピンを上昇させて基板Aを持ち上げる。この時図示されないアンローダによって基板Aの基板下面9が保持され、次の工程に基板Aを搬送する。
これと並行して、供給バルブ42を閉、吸引バルブ44は開としてから、ピストン54を一定速度で下降させ、タンク64の塗布液66をシリンジ52に充填する。充填完了後、ピストン54を停止させ、吸引バルブ44を閉、供給バルブ42を開として、次の基板Aが来るのを待ち、同じ動作をくりかえす。
上記の塗布方法で、スリットノズル20と基板A間のクリアランスCLは、厚さ5μm以下の薄膜塗布を安定して行うために、50μm未満にすることが好ましい。この時に、エアーパッド202A、B、Cの浮上量となる気体噴出面236A、B、Cと基板Aの基板上面8との間の距離C2は、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下となるようにする。これは基板上面8の状況によって浮上量が変動しても、CL=C1+C2となるクリアランスCLは、距離C2そのものが小さければ、その変動の影響が少なくなるからである。
本発明でのエアーパッド202A、B、Cは、基板Aの基板上面8のうねりを非接触でなぞり、基板上面8を非接触で基準にして一定のクリアランスCLを設けられるようにしている。
一方公知の手段では、エアーパッド202A、B、Cの浮上量そのものを調整して、スリットノズル20と基板A間のクリアランスCLを設定できるようにしているが、本発明は、クリアランスCLの大半をスリットノズル20の吐出口面36とエアーパッド202A、B、Cの気体噴出面236A、B、C間の距離C1で設定している。
したがって本発明の方が、従来よりも容易に、さらに浮上の不安定さに影響されないためにより安定して、スリットノズル20と基板A間の一定で微小なクリアランスCLを実現することができる。その結果、5μm以下の厚さの薄膜の塗布膜Dを容易に、安定して形成することが可能となる。
また、スリットノズル20の吐出口面36よりも、エアーパッド202A、B、Cの気体噴出面236A、B、Cの方が必ず基板Aの基板上面8に近い位置にある。そのため、不測の状況、たとえばエアーパッド202A、B、Cへの空気の供給が停止しても、エアーパッド202A、B、Cが基板Aと衝突するだけで、スリットノズル20はそれに保護されて基板Aと衝突することがない。
さらに基板Aと載置台10の上面18の間に異物が挟みこまれていて、それによって基板上面8が隆起していても、気体噴出面236A、B、Cが真先にそれに乗り上げることによって、気体噴出面236A、B、Cより上部にあるスリットノズル20の最下端面となる吐出口面36を、基板Aとの衝突から回避させることができる。
すなわちエアーパッド202A、B、Cの気体噴出面236A、B、C、特にエアーパッド202Cの気体噴出面236Cは、スリットノズル20の基板Aとの衝突を防止する防護部材としての機能も備えている。
なおエアーパッド202A、B、Cの気体噴出面236A、B、Cによるスリットノズル20の基板Aとの衝突防止機能を増強するために、エアーパッド202A、B、Cの気体噴出面236A、B、Cの位置変動を検知するセンサーを設けることが好ましい。また、エアーパッド202A、B、Cが基板Aの隆起部分に乗り上げた時に、その状態からエアーパッド202A、B、Cやスリットノズル20が下降しないように、ノズル浮上ユニット200の下降を阻止するブレーキやストッパーを設けることが好ましい。
さらに上記のセンサーによって、エアーパッド202A、B、Cが基板Aの隆起部分に乗り上げたことが検知されれば、それをトリガーとして、上記のブレーキやストッパーが作動するようにすることが好ましい。
スリットノズル20と基板A間のクリアランスCLを、スリットノズル20の長手方向にわたって一様に50μm未満にするには、載置台10の吸着面である上面18のうねりを小さくすることが好ましい。さらに基板Aの下面である基板下面9を吸着して上面18に密着させることで、基板Aを上面18に倣わせて矯正することが好ましい。
そのために上面18の平面度は好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下とする。ただし、本発明のスリットコータ1を用いるなら、上面18の全面にわたって、そのような高精度の小さな平面度にする必要はない。
すなわち、スリットノズル20と基板A間のクリアランスCLを塗布幅にわたって一様に維持するには、原理的に、スリットノズル20の吐出口面36のX方向長さである幅Ws×塗布幅よりなる面内で上記の平面度が実現できておればよい。
したがって、載置台10の上面18を、X方向長さをX1、Y方向長さを塗布する基板Aの最大Y方向長さ(基板最大幅)の面で区切り、この区切った面内で、上面18の平面度は好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下とする。なおX1については、好ましくは10〜100mm、より好ましくは100〜300mmである。
また、載置台10は基板Aよりも大きくする必要は必ずしもなく、図3に示すX方向長さが上記のX1で、Y方向には載置する基板AのY方向長さよりも少し長い載置台300を、基台2上に複数個X方向に並べたものに置き換えてもよい。当然ながら、載置台300の上面302は、平面度を好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下とする。載置台300のX方向配置間隔X2は特に制約はないが、好ましくは0〜50mmとする。
以上の平面度を好ましい範囲にしている載置台10、載置台300を用いるなら、Y方向のうねりが小さくなるので、ノズル浮上ユニット200からスリットノズル20の上流側(図1の右側)にあってY方向に伸びるエアーパッド202Cを省略して、スリットノズル20のY方向両側に配置したエアーパッド202A、Bだけにしてもよい。
載置台10、300に基板Aを吸着保持することで、上面18、302に基板Aを倣わせて基板上面18のうねりを矯正して小さくできるので、スリットノズル20のY方向両側のエアーパッド202A、Bだけでも、スリットノズル20と基板A間のクリアランスCLを塗布幅方向であるY方向にわたって一様にできる。
この場合、塗布面にエアーパッド202Cから空気を噴出することがなくなるので、例えばすでにウェット塗布膜を形成した基板Aに対しても、微小なクリアランスCLを維持して、塗布を行うことができる。
このため、全面の面状塗布膜なら、重ねての多層膜形成ができる。一方ストライプ状の塗布膜なら、Y方向に位相を変えての塗布膜形成が可能となり、例えばカラーフィルタのようにR、G、BがY方向に規則正しく並んだパターン塗布膜を、途中に乾燥を行わず、RGBの順に逐次形成することができる。これによって大幅な工程省略をして、しかもRGB塗布膜を薄膜に形成することが可能となる。
また上記のようにうねりを小さくした載置台10の上面18および、載置台300の上面302に、空気の吐出孔と吸引孔を設け、基板Aの下面である基板下面9に空気を吹き付けるとともに吸引力を作用させることで、基板Aを上面18や上面302に倣って全面にわたり一様に一定の浮上量で浮上させる基板浮上テーブルに、載置台10、載置台300を置き換えてもよい。
この場合は、基板AをZ方向には自在に移動させるが、X、Y方向には拘束する手段を付加する。基板Aの浮上量は、均一性から好ましくは20μm以下とする。基板浮上テーブルとしての上面18、上面302の平面度については、基板Aを倣わせて浮上させることから、上記の区切った面内で、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下とする。
基板Aを浮上させることで、上面18、上面302や、基板Aの基板下面9(塗布面である基板上面8の反対側の面)にパーティクル等のゴミが付着しても、ある大きさ以下なら、スリットノズル20と基板A間のクリアランスCLを所定の値に維持できる。
またスリットコータ1では、ガントリー6をX方向に移動させ、スリットノズル20の移動により塗布を行ったが、ガントリー6を移動させず、スリットノズル20を固定化し、基板Aを保持した載置台10や載置台300をX方向に移動させて、塗布を行ってもよい。
次に図4と図5を用いて、本発明に係る別のスリットコータ400について説明する。図4はスリットコータ400の概略正面図、図5はスリットコータ400の概略側面図、である。
図4に示すスリットコータ400は、スリットコータ1から、おおまかにいえば、まず、ノズル浮上ユニット200をノズル浮上ユニット500に変更した。次に、被塗布部材である基板Aの保持体として被塗布部材保持手段である載置台10を、気体で被塗布部材を浮上させる被塗布部材浮上ユニットである、基板浮上テーブルA、B、C(404、406、408)に変更した。
これによって、スリットノズル20のX方向移動をやめて固定化し、替わりに基板Aを基板浮上テーブルA、B、C(404、406、408)上で浮上させながらX方向に移動させるよう変更した。そして、拭き取りユニット90と塗布液供給装置40を図示省略したものである。
まず図4を見ると、スリットコータ400は基台402を備えており、基台402上には、基板Aを上下方向であるZ方向に保持する被塗布部材浮上テーブルである基板浮上テーブルA404、基板浮上テーブルB406、基板浮上テーブルC408が、X方向に左側から順に並べられている。
基板浮上テーブルA404の上面A414、基板浮上テーブルB406の上面B416、基板浮上テーブルC408の上面C418ともに、空気の吐出孔と吸引孔が設けられており、基板Aの浮上量を随意に調整可能である。スリットノズル20の直下に配置される基板浮上テーブルB406の上面B416については、スリットノズル20と基板A間のすきまであるクリアランスCLを紙面に垂直な方向であるY方向に高精度に維持するために、その平面度を好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下にする。
次に図5を見ると、基板Aは塗布幅方向であるY方向の両側で、その下面である基板下面9を左吸着パッド420A、B、右吸着パッド430A、Bで吸着保持されている。なお紙面に垂直なX方向で、左吸着パッド420A、右吸着パッド430Aは、基板Aの手前側、左吸着パッド420B、右吸着パッド430Bは、基板Aの奥側を吸着保持している。
左吸着パッド420A、B、右吸着パッド430A、Bは、それぞれ左ガイド422A、B、右ガイド432A、Bで、上下方向であるZ方向には自在に移動するよう案内されるが、XとY方向には移動しないように拘束される。左ガイド422A、B、右ガイド432A、Bは、それぞれ左昇降ユニット424A、B、右昇降ユニット434A、Bに固定されているので、左吸着パッド420A、B、右吸着パッド430A、Bを別々にZ方向に昇降させることができる。
これによって、基板AのY方向の片側だけを、左吸着パッド420A、Bか、右吸着パッド430A、Bかで吸着保持することが選択できる。また左昇降ユニット424A、B、右昇降ユニット434A、Bはそれぞれリニア軸受けを備えた左ベースブロック426A、B、右ベースブロック436A、Bに固定されている。
左ベースブロック426A、B、右ベースブロック436A、Bは、基板浮上テーブルB406のY方向両側に配置された一対のレール440A、BによってX方向に案内され、図示されていない個々のリニアモータによって、それぞれ独立してX方向に自在に移動可能となっている。
したがって左吸着パッド420A、B、右吸着パッド430A、Bは、X方向に独立して往復動させることができる。左吸着パッド420A、B、右吸着パッド430A、BのX方向移動により、これらに吸着保持され、さらに基板浮上テーブルA404、基板浮上テーブルB406、基板浮上テーブルC408上を浮上している基板Aを、X方向に任意の速度で移動させることができる。
同じく図5でノズル浮上ユニット500を見ると、揺動体514のY方向中央部の下側には、回転ベアリング220をはじめとして、ノズル浮上ユニット200と全く同じものがとりつけられている。ただしエアーパッド202A、B、Cについては、基準プレート226に取り付けられているスリットノズル20のY方向両側には、基準プレート226にスペーサ230A、Bを介してエアーパッド202A、Bは取り付けられているが、中央のエアーパッド202Cは省略されている。
この構成により、スリットノズル20、エアーパッド202A、B、スペーサ230A、B、基準プレート226が、回転軸224の回りに、Y−Z平面内で往復自在に回転する。したがって基準プレート226に取り付けられているスリットノズル20も同様に回転する。この回転角度は、揺動体514に設けられた回転ストッパー232A、Bと基準プレート226の上面238と接触させることで、制約できる。
また揺動体514はそのY方向両側にある保持部510A、BでリニアZ軸受454A、Bに固定されている。リニアZ軸受454A、Bは門型フレーム450を構成する支柱452A、Bにそれぞれ設けられた一対のガイドレール458A、Bに係合して、Z方向に自在に移動できるので、揺動体514とそれに取り付けられているスリットノズル20とエアーパッド202A、Bも上下方向であるZ方向に自在に移動可能となっている。
ここで門型フレーム450は、支柱452A、Bをステー456でY方向に接続することにより、門型に構成されている。なお、スリットノズル20の下降下限位置は、支柱452A、Bに取り付けられたブラケット506A、Bに設けたストッパー508A、Bと揺動体514の保持部510A、Bの下面を接触させることにより、任意に設定できる。
さらに揺動体514のY方向中央部上側を見ると、固定具504が揺動体514に締結固定されている。この固定具504には歯付きのタイミングベルト502の一端が固定されている。このタイミングベルト502は上に伸びて、タイミングベルト502の歯とかみ合うタイミングプーリ520に巻かれている。
タイミングプーリ520の回転軸528は、その長手方向がY方向と平行となっており、タイミングプーリ520のY方向両側にある回転ベアリング522A、Bに回転自在に支持されている。なお回転ベアリング522A、Bは門型フレーム450のステー456の上部に固定されている。またタイミングプーリ520の回転軸528の一端は、これまたステー456上に固定されているクラッチ524に接続されている。クラッチ524の回転軸528が接続されている反対側には、ステー456上にブラケット532を介して固定されているモータ526が接続されている。
したがってタイミングプーリ520には、モータ526の駆動力が、クラッチ524が作動時には伝えられる。このモータ526の駆動力は、タイミングプーリ520を介してタイミングベルト502にも伝えられるので、タイミングベルト502に接続されている揺動体514がZ方向に昇降可能となり、あわせてスリットノズル20、エアーパッド202A、Bも随意にZ方向に昇降可能となる。
ここで図4を再び参照すると、タイミングプーリ520に巻かれているタイミングベルト502の固定具504に固定されているのとは逆側の一端が、錘530が接続されている。
錘530の質量(重さ)の選定については、クラッチ524を非作動にしてタイミングプーリ520が自在に回転できるようにした状態で、エアーパッド202A、Bの気体噴出面236A、Bから所定速度で空気を噴出しながら基板Aの基板上面8に接触させ、空気を介して両者間に作用する負荷圧力が10〜100kPaになるように、錘530の質量を調整する。
錘530の替わりに、タイミングプーリ520と揺動体514を接続するタイミングベルト502に発生する張力を、エアーパッド202A、Bの気体噴出面236A、Bと基板A間に作用する負荷圧力が10〜100kPaになるようにモータ526をトルク制御してもよい。この制御を行う場合は、モータ526の駆動力が伝えられるように、クラッチ524は作動状態にする。
なおスリットノズル20への塗布液供給については図示省略しているが、スリットコータ1と同じく、塗布液供給装置40によって行なう。
以上の構成によってスリットコータ400は、X方向に浮上搬送される基板Aに対して、ノズル浮上ユニット500の作用によって、基板Aの基板上面8を基準に、スリットノズル20と基板A間のすきまであるクリアランスCLを、塗布幅方向にわたって一様にしかも微小にすることができる。
なおクリアランスCLについては、スリットコータ1の時と同様に、スリットノズル20の吐出口面36とエアーパッド202A、Bの気体噴出面236A、B間の距離C1をあらかじめ設定しておき、それにエアーパッド202A、Bの浮上量である距離C2(気体噴出面236A、Bと基板Aの基板上面8の間の距離)を、エアーパッド202A、Bに供給する空気圧力によって気体噴出面236A、Bから一定の噴出速度で空気を噴出させることで定めて、CL=C1+C2で設定する。
これによって、スリットコータ400でも、クリアランスCLをスリットノズル20の長手方向にわたって一様に50μm未満の微小値に設定できるので、厚さ5μm以下の薄膜の塗布膜Dを容易かつ高精度に形成することが可能となる。
以上より、エアーパッド202A、Bの気体噴出面236A、Bから空気を介して基板Aに作用する負荷圧力を、錘530の質量によって所定値にバランスさせる。それとともに、スリットノズル20とエアーパッド202A、Bを含む塗布器保持手段である基準プレート226を、上下方向であるZ方向と、回転軸224を中心とした回転方向の2方向に移動自在に保持する。
これらによって、スリットノズル20の吐出口面36と基板Aの基板上面8が一定間隔であるクリアランスCLになるように作用するノズル浮上ユニット500は、ノズル浮上ユニット200と同様に間隔維持手段となる。
さらにスリットコータ400では、左吸着パッド420A、Bと右吸着パッド430A、Bを、基板Aごとに交互に吸着させてX方向に往復動させることによって、基板Aをつづけてスリットノズル20の直下に搬送して塗布することもできるので、生産性を非常に高くすることができる。
スリットコータ400を用いた塗布方法は、基本的にはスリットコータ1を用いた塗布方法と同じであるが、次のようにして行なう。
図4を見て、まずスリットコータ400の各動作部の原点復帰が行われると、スリットノズル20は上下方向であるZ方向に一番高い位置にある一方、左吸着パッド420A、B、右吸着パッド430A、BともにZ方向の下限位置にあって、X方向の一番左側に移動して停止する。
この時クラッチ524は作動状態であり、モータ526がブレーキとして作動して、スリットノズル20のZ方向位置が維持される。ここで、タンク64〜スリットノズル20まで塗布液66はすでに充満されており、タンク64以降のスリットノズル20までの経路内の残留エアーを排出する作業も既に終了している。
また図示しない拭き取りユニット90が、待機位置からX方向に移動してきて、拭き取りヘッド92がスリットノズル20の直下で停止する。この時の塗布液供給装置40の状態は、シリンジ52に塗布液66が充填、吸引バルブ44は閉、供給バルブ42は開、そしてピストン54は最下端の位置にあり、いつでも塗布液66をスリットノズル20に供給できるようになっている。
次に、図示しないローダから基板AがX方向に搬送されてくるので、左昇降ユニット424A、Bを上昇させて、左吸着パッド420A、Bで基板Aの下面である基板下面9を吸着保持する。
これと並行して、塗布液供給装置40を稼働させて少量の塗布液66をスリットノズル20から吐出後、駆動ユニット98を駆動して、拭き取りヘッド92をスリットノズル20の長手方向端部にある摺動開始位置まで移動させ停止させる。そして、モータ526を駆動して、スリットノズル20を下降させてスリットノズル20の吐出口34とその周辺を拭き取りヘッド92に係合する。
その後、拭き取りヘッド92をスリットノズル20の長手方向に摺動させて、スリットノズル20の吐出口34付近をスリットノズル20の長手方向にわたって拭き取って、スリットノズル20の初期化を実施する。
スリットノズル20の初期化が完了したらスリットノズル20を上昇させる。スリットノズル20の上昇完了後、拭き取りヘッド92を長手方向に最初の位置まで戻す。その後拭き取りユニット90が待機位置に向かってX方向に移動する。
次に、左吸着パッド420A、BをX方向に右側に駆動して、スリットノズル20の直下に基板Aの塗布開始位置を移動させて停止させる。エアーパッド202A、Bに所定圧力の空気を供給して気体噴出面236A、Bから所定速度で空気を噴出する。
それとともに、モータ526を駆動してタイミングプーリ520を回転させてノズル浮上ユニット500の揺動体514を下降し、エアーパッド202A、Bの気体噴出面236A、Bを基板Aの基板上面8上に着地する寸前に、クラッチ524を非作動にして、揺動体514を重力により落下させて、エアーパッド202A、Bの気体噴出面236A、Bを基板Aの基板上面8上に着地させる。
そして、スリットノズル20の吐出口面36と基板Aの基板上面8との間にクリアランスCLが設定できた時点で、シリンジポンプ50を駆動してスリットノズル20から塗布液66を初期吐出量Q0だけ吐出し、スリットノズル20と基板Aとの間にビードBをまず形成する。
つづいてシリンジポンプ50を駆動し、所定吐出速度でスリットノズル20から塗布液66を吐出し、シリンジポンプ50の駆動開始から一定時間T1秒後に左吸着パッド420A、Bを所定速度でX方向に移動開始して、塗布液66の基板Aへの塗布を行い、塗布膜Dを形成する。
基板Aの塗布終了位置がスリットノズル20の吐出口34の位置にきたらシリンジポンプ50を停止させて塗布液66の供給を停止する。つづいてモータ526を塗布開始前とは逆側に回転駆動してからクラッチ524を作動させ、タイミングプーリ520を回転させてスリットノズル20を揺動体514ごと上昇させる。これによって基板Aとスリットノズル20の間に形成されたビードBが断ち切られ、塗布が終了する。
塗布終了後も左吸着パッド420A、Bは動きつづけ、終点位置にきたら停止する。この時に、拭き取りヘッド92をスリットノズル20の直下に移動させるとともに、左吸着パッド420A、Bの基板Aの吸着を解除し、左昇降ユニット424で左吸着パッド420A、Bを下降させる。
それから図示されないアンローダによって基板Aを次の工程に搬送する。基板Aがアンローダで搬出されるのと平行して、左吸着パッド420A、Bを原点位置に向かって逆方向(左方向)に移動させ、原点位置に来たら停止させる。
また塗布が終了した時点で、他の動作と平行して供給バルブ42を閉、吸引バルブ44は開としてから、ピストン54を一定速度で下降させ、タンク64の塗布液66をシリンジ52に充填する。充填完了後、ピストン54を停止させ、吸引バルブ44を閉、供給バルブ42を開として、待機する。
さて基板浮上テーブルA404から先の基板Aがなくなった時点で、次の基板Aがローダによって送り込まれるので、右昇降ユニット434A、Bを上昇させて、右吸着パッド430A、Bで次の基板Aの基板下面9を吸着保持する。
先の基板Aへの塗布が終了し、シリンジポンプ50に次の塗布液66が充填され、各バルブが切り替わった時点で、少量の塗布液66をスリットノズル20から吐出後拭き取りヘッド92でスリットノズル20の拭き取りを行い、以降同じ動作を左吸着パッド420A、Bに替わって右吸着パッド430A、Bで行なって、塗布を繰り返す。この後は左吸着パッド420A、Bと右吸着パッド430A、Bを交互に入れ替えて動作させる。
以上のスリットコータ1とスリットコータ400では、塗布器として面状の塗布膜が形成できるスリットノズル20を使用したが、ストライプ状の塗布膜が形成できるストライプノズルを適用してもよい。
以上説明した本発明が適用できる塗布液66としては粘度が1〜100000mPaSであり、ニュートニアンであることが塗布性から好ましいが、チキソ性を有する塗布液66にも適用できる。
具体的に適用できる塗布液66の例としては、カラーフィルタ用のブラックマトリックス、RGB色画素形成用塗布液、レジスト液、オーバーコート材、柱形成材料、TFTアレイ基板用のポジレジスト等の低粘度薄膜塗布用のペースト、有機EL用のホール注入層形成用ペースト、画素形成用ペースト、PDP背面板用の隔壁用ペースト、誘電体ペースト、電極ペーストの高粘度薄膜塗布用のペースト、等がある。
基板Aである被塗布部材としてはガラスの他にアルミ等の金属板、セラミック板、シリコンウェハー等を用いてもよい。さらに使用する塗布条件としては、塗布速度が0.1〜500mm/s、より好ましくは0.5〜200mm/s、スリットノズル20のスリット間隙は好ましくは100μm未満、より好ましくは50μm未満、塗布厚さはウェット状態で好ましくは0.2〜10μm、より好ましくは1〜5μmである。
以下実施例により本発明を具体的に説明する。
360×465mmで厚さ0.7mmの無アルカリガラス基板を、ウェット洗浄によって基板A上のパーティクルを除去後、スリットコータ1で上記に記載した塗布方法により、ブラックマトリックス材をウェット厚さで4μmだけ、ガラス基板中の310(Y方向)×410(X方向)の面領域に塗布した。
使用したスリットノズル20は、スリット28のY方向長さが310mm、スリット28の間隙(X方向長さ)は0.1mmで、310mm幅の塗布膜を形成できるものであった。エアーパッド202A、B、Cについては、図1の構成で配置し、セラミック多孔質構成のものを使用し、気体噴出面236A、B、Cの平面度はいずれも3μm以下であった。
エアーパッド202A、Bの気体噴出面236A、Bは、X方向に30mm、Y方向に10mmの矩形状で、基板AのY方向両端から10mmの範囲に位置させて浮上するようにした。エアーパッド202Cの気体噴出面236Cは、X方向に10mm、Y方向に300mmの矩形状で、スリットノズル20のスリット28の位置からX方向右側に30mmから10mmの範囲に位置させてスリットノズル20に先行して浮上するようにした。
またスリットノズル20の吐出口面36から気体噴出面236A、B、Cまでの距離C1は、スペーサ230A、B、Cの厚さts=15μmにしてC1=15μmにした。錘234A、Bは、気体噴出面236A、B、Cからガラス基板に作用する圧力が10kPaになるように調整した。この状態でエアーパッド202A、B、Cに0.3MPaの圧縮空気を供給したところ、エアーパッド202A、B、Cの浮上量である距離C2は5μmであった。
載置台10は400mm(Y方向)×500mm(X方向)×100mm(Z方向)の石製のものを使用し、上面18の400mm(Y方向)×500mm(X方向)の全面を吸着面とした。また上面18は400mm(Y方向)×100mm(X方向)の5個の面領域に分け、それぞれで平面度が2μm以下になるように仕上げられていた。
事前に無アルカリガラス基板を上記の載置台10に吸着させ、上記のエアーパッド202A、B、Cを取り付けたノズル浮上ユニット200にて、スリットノズル20と無アルカリガラス基板間にクリアランスCLを設けるようにし、クリアランスCLのスリットノズル20の長手方向(Y方向)分布を測定したところ、20±1μmであった。
上記のウェット厚さで4μm塗布したときの塗布条件としては、塗布速度は100mm/s、シリンジポンプ50の吐出速度は124μl/s、初期吐出量Q0は10μlであった。
なお塗布したブラックマトリックス材には、遮光材にカーボンブラック、バインダーにアクリル樹脂、溶剤にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を使用し、さらに感光剤を添加して、固形分濃度50%、粘度10mPasに調整したペーストを用いた。
次にブラックマトリックス塗布工程で塗布された基板Aを、30秒で65Paに到達する真空乾燥を60秒行ってから、100℃のホットプレートで10分間さらに乾燥した。ついで露光・現像・剥離を行った後、260℃のホットプレートで30分加熱して、キュアを行い、基板Aの塗布幅方向(Y方向)にピッチが254μm、基板Aの塗布方向(X方向)にピッチが85μm、線幅が20μm、RGB画素数が4800(基板塗布方向)×1200(基板幅方向)、対角の長さが20インチ(基板Aの塗布幅方向に305mm、基板Aの塗布方向に408mm)となる格子形状で、厚さが1μmとなるブラックマトリックス膜の格子を作成した。
高固形分濃度のブラックマトリックス材を薄く塗布できたので、ブラックマトリックスの蒸発させるべき溶剤の量を非常に少なくすることができ、コストダウンが行えた。この後、ブラックマトリックス膜の格子を作成した基板Aを、通常のRGB工程に供給し、カラーフィルタを作成した。