JP6139314B2 - 凝集制御装置及び凝集制御方法 - Google Patents

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Description

本発明の実施形態は、河川水、雨水、下水及び工場排水等の被処理水を処理する、例えば、浄水場、下水処理場、及び産業排水処理施設等において、凝集物の凝集強度で凝集条件を制御する凝集制御装置及びこの装置で用いられる凝集制御方法に関する。
従来、浄水処理及び排水処理の分野において、被処理水中の微細な懸濁粒子等を凝集沈殿処理によって除去する方法が広く用いられている。本技術では、被処理水を必要に応じてpH調整した上で凝集剤を添加し、凝集剤添加後の被処理水を攪拌・混合することで懸濁粒子等を凝集沈殿させる。そして、沈殿した凝集物を汚泥として分離することで、清澄な処理水を得る。
ところで、凝集剤の注入量については、被処理水の水質に応じて最適値が存在する。しかしながら、その最適値より注入量が少ない場合、処理水中の濁質及び/又は色度成分が十分に除去しきらず水質安全の観点から不安全な状態となるケースがある。また、後段プロセスにおける塩素消費量の増加及びろ過池の処理負荷上昇等の原因にもなる。
凝集沈殿処理が良好かどうかは、主に水質安全性の面から沈殿池の出口の処理水濁度によって判断する。このとき、凝集剤注入率を沈殿池の出口の処理水濁度が最も低下する値に設定するため、凝集剤の注入量は、最適値に対してやや過剰になるケースが多い。ところが、凝集剤を過剰に注入すると凝集状態は悪化する場合がある。例えば、凝集物の沈降性及び/又は汚泥の脱水性が悪化し、結果的に沈殿後の処理水の濁度も上昇する上に、汚泥発生量も増加する。また、処理水に含まれる残留凝集剤も増加し、後段のろ過池においてろ過水頭の上昇速度が加速する。これは、過剰分の凝集剤にかかるコストの増加を招くと共に、pH調整剤の注入量が必要な場合にはその注入コストの増加も招く。さらに、排泥池から汚泥を排出する頻度の増加、ろ過池を洗浄する頻度の増加、汚泥処分コストの増加、及び/又は、ろ過池洗浄コストの増加にも繋がる。
特許第5072382号公報 特許第4945461号公報 特許第3199897号公報 特公平6−40928号公報
以上のように、凝集処理の良否は濁質除去性だけでなく、処理水のろ過性、汚泥発生量及び薬品消費量等にも影響する。これら複数の観点から、凝集条件を管理しながら凝集沈殿処理を運用する技術が求められている。
そこで、目的は、最適な凝集条件を設定することで、濁質除去性、処理水のろ過性及び汚泥発生量を改善すると共に、過剰な薬品消費を抑えることが可能な凝集制御装置及び凝集制御方法を提供することにある。
実施形態によれば、凝集制御装置は、凝集物採取装置、衝撃付与装置、凝集指標測定装置及び制御装置を具備する。凝集物採取装置は、凝集物を含む水を採取する。衝撃付与装置は、前記採取された水に対して物理的な衝撃を、前記衝撃の大きさを変えながら付与する。凝集指標測定装置は、前記採取された水に含まれる凝集物の状態を示す第1の凝集指標情報と、前記衝撃を与えられた水に含まれる凝集物の状態を示す第2の凝集指標情報とを測定する。制御装置は、前記第1及び第2の凝集指標情報に基づいて凝集物の凝集強度を算出し、前記算出した凝集強度が予め設定する強度の基準値よりも小さい場合、過去に取得された凝集条件のうち、凝集強度が予め設定する強度の基準値より大きくなる凝集条件を用いて水処理設備のプロセスを制御する。
本実施形態に係る凝集制御装置が用いられる浄水場の構成例を示す模式図である。 物理的衝撃の強度の変化に対する物理的衝撃による変化量の割合を示す図である。 図1に示す凝集制御装置が凝集条件を設定する際の動作を示すシーケンス図である。 図1に示す浄水場のその他の構成例を示す図である。
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る凝集制御装置70が用いられる浄水場の構成例を示す模式図である。なお、本実施形態では、凝集沈殿処理を行う例として浄水場を例に挙げているが、浄水場に限定されず、下水処理場、又は産業排水処理施設等であっても構わない。
図1に示す浄水場は、着水井10、急速混和池20、フロック形成池30、沈殿池40、pH調整剤注入装置50、凝集剤注入装置60及び凝集制御装置70を備える。
着水井10は、被処理水を取り込み、取り込んだ被処理水を配管により接続される急速混和池20へ送る。ここで、被処理水とは、河川水や雨水、下水、工場排水など凝集沈殿処理法の処理対象となる水である。また、着水井10には、被処理水水質計測装置11が設けられる。被処理水水質計測装置11は、被処理水のpH及び濁度等を計測する。なお、計測項目は、必要に応じて任意に選定可能である。流量計12は、着水井10から急速混和池20に送られる被処理水の流量を計測する。急速混和池20に送られる被処理水には、pH調整剤注入装置50により、pH調整剤が注入される。ここで、pH調整剤は、塩酸、硫酸、硝酸及び炭酸水等がある。
急速混和池20では、凝集剤注入装置60により、着水井10から送られる被処理水に凝集剤が注入される。ここで、凝集剤は、アルミニウム及び/又は鉄を含有する凝集剤から選択でき、一例としてポリ塩化アルミニウム(PAC)等がある。
急速混和池20は、例えばモータにより駆動される急速撹拌機21、及び、pH計22が設けられる。急速混和池20では、急速撹拌機21により、被処理水と凝集剤とが撹拌混合される。被処理水は、凝集剤と混合されることで、濁質粒子の微細な凝集物が浮遊している状態となる。pH計22は、急速混和池20のpHを計測し、計測したpH情報を凝集制御装置70及びpH調整剤注入装置50へ出力する。急速混和池20は、濁質粒子の微細な凝集物が浮遊している状態となった水を、フロック形成池30へ送る。
フロック形成池30は、急速混和池20から送られる水を緩速撹拌機31により撹拌する。緩速撹拌機31は、下流に向けて段階的に撹拌の強度が小さくなるように設定されている。これにより、水中に含まれる微細な凝集物同士の衝突が繰り返されることとなり、凝集物が肥大化される。フロック形成池30は、肥大化させた凝集物を含む水を沈殿池40へ送る。
沈殿池40は、フロック形成池30から供給される被処理水を所定時間以上滞留させることで、被処理水に含まれる凝集物を汚泥として沈殿させる。凝集物が沈殿された被処理水の上澄み液は、処理水として次工程へ送られる。次工程については図示していないが、浄水場の場合では、砂ろ過処理を施した後、塩素が注入され、配水池を介して配水管へと分配されるようになっている。なお、砂ろ過に通される前に適宜、オゾン処理や生物活性炭処理が施されたりする場合もある。
pH調整剤注入装置50は、pH計22により計測されたpH情報が、凝集制御装置70により指定されるpHとなるようにpH調整剤を急速混和池20へ注入する。これにより、pH計22におけるpHが適切なpH範囲に収まることとなる。このとき、pH調整剤注入装置50は、塩酸、硫酸、硝酸及び炭酸水等のpH調整剤の種類と、その濃度とを任意に選択する。
凝集剤注入装置60は、凝集制御装置70からの制御に従い、凝集剤を急速混和池20へ注入する。
凝集制御装置70は、図1に示すように、凝集物採取装置71、衝撃付与装置72、凝集指標測定装置73及び制御装置74を備える。
凝集物採取装置71は、凝集物を含む水を、フロック形成池30から沈殿池40への導入口付近で採取する。凝集物採取装置71は、採取した水を衝撃付与装置72及び凝集指標測定装置73へ送る。
衝撃付与装置72は、凝集物採取装置71から送られる水に対して、制御装置74からの制御に従い、段階的に強度を変えながら物理的な衝撃を与える。衝撃付与装置72は、凝集物に衝撃を与えることで、凝集物を破砕する。衝撃付与装置72は、撹拌機及び超音波照射装置等、凝集物の変化が現れるのが速く、しかも衝撃の大きさを調整可能であり、衝撃のエネルギーを数値化(例えば、GT値)できる装置が好ましい。衝撃付与装置72は、衝撃を与えた水を凝集指標測定装置73へ送る。また、衝撃付与装置72は、与えた衝撃の強度情報を制御装置74へ出力する。
なお、衝撃付与装置72としては他に、ポンプにより経路を流れる試料水の送液量を増加させたり、経路の配管径を小さくしたり、配管距離を長くすることによって管路内の水流の勢いや水圧がかかる時間を増加させたりする方法もある。また、これらの装置を複数種類、併用することも可能である。
凝集指標測定装置73は、凝集物採取装置71及び衝撃付与装置72から送られる水に含まれる凝集物ついての凝集指標を測定する。ここで、凝集指標とは、凝集物の状態を示す指標であり、水に含まれる凝集物の粒径分布及び平均粒径、試料水の上澄み液の濁度、残留凝集剤濃度及びSTR(ろ過時間指標)、並びに、凝集物の画像解析によって計測できる沈降速度等から選択される1つ以上の項目を指す。凝集指標測定装置73は、凝集物採取装置71から送られる水、すなわち物理的衝撃を与えていない水について測定した第1の凝集指標情報と、衝撃付与装置72から送られる水、すなわち物理的衝撃を与えた水について測定した第2の凝集指標情報とを制御装置74へ出力する。
制御装置74は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、並びに、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等のCPUが処理を実行するためのプログラムやデータの格納領域等を含む。制御装置74は、CPUにアプリケーション・プログラムを実行させることで、凝集強度演算部741、凝集条件演算部742、凝集情報データベース743及びプロセス制御部744を構築する。
凝集強度演算部741は、凝集指標測定装置73から出力される、第1の凝集指標情報と、第2の凝集指標情報とに基づいて凝集強度を算出する。すなわち、凝集強度演算部741は、物理的衝撃の各強度において、第1の凝集指標情報と、第2の凝集指標情報との差を求め、この差を物理的衝撃による変化量とする。物理的衝撃による変化量とは、例えば、上澄み濁度変化[度]である。凝集強度演算部741は、物理的衝撃の強度の変化に対する物理的衝撃による変化量の割合を、凝集物の凝集強度として求める。凝集強度演算部741は、算出した凝集強度を凝集条件演算部742へ出力する。
図2は、物理的衝撃の強度の変化に対する物理的衝撃による変化量の割合の例を示す図である。図2において、傾きが大きい程、凝集強度が弱く、傾きが小さい程、凝集強度が強いことを示している。すなわち、四角、三角、丸の観測点の順で凝集強度が大きくなる。ここで、丸の観測点(X:物理的衝撃の大きさ,Y:物理的衝撃による変化量)を(Xn,Yn)とすると、凝集強度は、これらの観測点をつなぐ直線の傾きで表される。
凝集強度演算部741は、衝撃の大きさ(X1,X2,X3,…)の設定条件のXnの値、変化間隔及び条件数等を、凝集強度を計算するのに十分なデータを収集できるように自動で設定する。凝集強度演算部741は、設定したXnの値、変化間隔及び条件数等で衝撃付与装置72を制御する。
凝集情報データベース743は、凝集強度演算部741で算出される凝集強度の値と、凝集強度を算出したときの凝集条件とを互いに関連付けて蓄積する。ここで、凝集条件には、被処理水水質計測装置11で計測される水質、プロセス制御部744により設定される凝集剤注入率、pH計22で計測される凝集pH、及び、プロセス制御部744により設定される撹拌強度等が含まれる。
凝集条件演算部742は、凝集強度演算部741で算出される凝集強度が予め設定した強度の基準値を下回るか否かを判断する。ここで、予め設定した強度の基準値とは、凝集物が一定以上の強度を有すると判断することができる境界値として設定した値である。凝集強度が予め設定した強度の基準値を下回る場合、凝集条件演算部742は、凝集情報データベース743に蓄積される凝集条件のうち、この凝集強度が算出された際の水質と類似し、かつ、凝集強度が予め設定された基準値より大きくなる凝集条件を選択する。ここで、類似する水質とは、例えば、凝集条件に含まれる水質の値間の差が予め設定される範囲内にある水質を指す。凝集条件演算部742は、選択した凝集条件に含まれる凝集剤注入率をプロセス制御部744に対して設定する。また、凝集条件演算部742は、選択した凝集条件に含まれるpHをプロセス制御部744に対して設定する。また、凝集条件演算部742は、選択した凝集条件に含まれる撹拌強度をプロセス制御部744に対して設定する。
プロセス制御部744は、凝集条件演算部742により設定される凝集剤注入率と、流量計12で計測される被処理水の流量とに基づき、凝集剤の注入量を決定する。プロセス制御部744は、決定した注入量に基づき、凝集剤注入装置60を制御する。なお、プロセス制御部744は、凝集条件演算部742により凝集剤注入率が設定されない場合においては、ビーカーテストによって設定される凝集剤注入率から凝集剤の注入量を決定するようにしても良い。凝集剤注入率が最適に設定されることで、沈殿池40の出口の濁度が十分に低下すると共に、凝集物の沈降性が良くなり汚泥発生量も低減できる。また、必要最小限の凝集剤注入率で済むため運用コストも削減されることとなる。
また、プロセス制御部744は、凝集条件演算部742により設定されるpHに基づき、pH調整剤注入装置50を制御する。なお、プロセス制御部744は、凝集条件演算部742によりpHが設定されない場合においては、ビーカーテストによって確認した最適なpHとなるようにpH調整剤注入装置50を制御しても良い。
また、プロセス制御部744は、凝集条件演算部742により設定される撹拌強度に基づき、急速撹拌機21を制御する。なお、プロセス制御部744は、凝集条件演算部742により撹拌強度が設定されない場合においては、ビーカーテストによって設定される撹拌強度に基づいて急速撹拌機21を制御しても良い。
次に、以上のように構成される凝集制御装置70が凝集条件を設定する際の動作を説明する。図3は、凝集制御装置70が凝集条件を設定する際の動作を示すシーケンス図である。
まず、凝集物採取装置71は、凝集物を含む水を、フロック形成池30から沈殿池40への導入口付近で採取する(シーケンスS31)。凝集物採取装置71は、採取した水を衝撃付与装置72及び凝集指標測定装置73へ送る(シーケンスS32,S33)。
衝撃付与装置72は、凝集物採取装置71から送られる水に対して、物理的な衝撃を与え、凝集物を粉砕する(シーケンスS34)。衝撃付与装置72は、衝撃を与えた水を凝集指標測定装置73へ送る(シーケンスS35)。
凝集指標測定装置73は、凝集物採取装置71から送られる水に含まれる凝集物についての凝集指標を測定する(シーケンスS36)。凝集指標測定装置73は、凝集物採取装置71から送られる水に含まれる凝集物について測定した第1の凝集指標情報を制御装置74へ出力する(シーケンスS37)。
また、凝集指標測定装置73は、衝撃付与装置72から送られる水に含まれる凝集物についての凝集指標を測定する(シーケンスS38)。凝集指標測定装置73は、衝撃付与装置72から送られる水に含まれる凝集物について測定した第2の凝集指標情報を制御装置74へ出力する(シーケンスS39)。
凝集物採取装置71、衝撃付与装置72及び凝集指標測定装置73は、凝集強度演算部741で設定される条件数に達するまでシーケンスS31〜シーケンスS39の処理を繰り返す。このとき、衝撃付与装置72は、計測毎に衝撃の大きさを変え、凝集指標測定装置73は、与えられる衝撃毎に凝集物についての凝集指標を測定する。
制御装置74は、条件数だけ計測を実施すると、凝集強度演算部741により、第1の凝集指標情報と、第2の凝集指標情報とに基づいて凝集強度を算出する(シーケンスS310)。
凝集情報データベース743は、凝集強度演算部741で算出される凝集強度の値と、凝集強度を算出したときの凝集条件とを関連付けて蓄積する(シーケンスS311)。
凝集条件演算部742は、凝集強度演算部741で算出された凝集強度が予め設定した強度の基準値を下回る場合、凝集情報データベース743から、このときの水質と類似し、かつ、凝集強度が予め設定する強度の基準値を超える凝集条件を選択する。凝集条件演算部742は、選択した凝集条件をプロセス制御部744に対して設定する(シーケンスS312)。
以上のように、上記実施形態では、衝撃付与装置72において、撹拌機及び超音波照射装置を用いて凝集物へ衝撃を与えたり、流量、経路の内径及び経路の長さを調整することで生じる圧力を用いて凝集物へ衝撃を与えたりしている。これにより、凝集制御装置70は、衝撃付与装置72の操作条件等を一定に設定すれば、簡易的かつ定量的な衝撃により凝集物の状態を変化させることが可能となる。
また、上記実施形態では、凝集指標測定装置73は、衝撃を与えない水と、凝集物採取装置71において衝撃を与えた水とについてそれぞれ凝集指標を測定し、測定結果をそれぞれ第1及び第2の凝集指標情報とする。そして、凝集強度演算部741は、物理的衝撃の大きさと、物理的衝撃により生じる第1及び第2の凝集指標情報の差との関係性を、凝集強度として求めるようにしている。このため、凝集強度演算部741は、実測に基づいた情報から凝集物の強度、すなわち凝集物密度を定量化することが可能である。また、従来技術においては、凝集物の状態を表す指標を計測する際、採取された試料水が計測装置へ導入されるまでに凝集物が何らかの物理的な衝撃を受けて状態が変化することは避けられない。そのため、従来の計測結果は、元の凝集状態が変化した状態で計測されたものということになる。本実施形態では、物理的衝撃を与える前の凝集物についての凝集指標と、物理的衝撃を与えて凝集物を変化させた後の凝集指標とを計測することで、衝撃を与える前後での凝集物の状態を計測する。このため、凝集強度演算部741は、元の凝集物の凝集良否を精確に把握することが可能となる。
また、上記実施形態では、凝集情報データベース743は、凝集強度演算部741で算出された凝集強度を、このときの凝集条件と共に蓄積する。そして、凝集条件演算部742は、凝集情報データベース743に記録されている凝集条件から、現状に適応し、かつ、凝集強度が予め設定される強度の基準値より大きくなる凝集条件を選択し、選択した凝集条件をプロセス制御部744に対して設定するようにしている。ストークスの式からも分かる通り、凝集強度、すなわち凝集物の密度は沈降速度に直接影響する。凝集物密度が高いことは沈降性が良いことと相関関係を有するため、このときの凝集条件を採用してpH調整剤注入装置50、凝集剤注入装置60及び急速撹拌機21を制御することで、結果的に濁質除去性、ろ過性及び汚泥発生量が改善し、薬品注入量が抑えられることになる。
一方、特許文献1では、流動電流計を用いた凝集物の流動電流計測値と処理水濁度の計測値とに基づいて凝集剤注入量を決定する凝集剤注入制御装置が提案されている。しかしながら、特許文献1では、濁度としてカウントされない残留凝集剤の濃度は計測していないため、処理水のろ過性に関する指標について十分に観察しているとはいえない。さらに、流動電流を測定する際、凝集物を流動電流計へ導入する必要があるが、そのとき凝集物は物理的な衝撃を受けてしまう。そのため、凝集沈殿後の凝集物本来の状態での計測は難しいという課題がある。
特許文献2で提案される水処理システムでは、凝集剤と凝集補助剤とを併用して被処理水を凝集処理して生成させた凝集物のうち、大粒径のものを重力沈降により除去する。そして、沈殿しきらずに残留した微小な凝集物等を含む上澄み液を砂ろ過したときのろ過差圧を計測し、その計測値によって凝集剤及び凝集補助剤の注入量を決定する。
特許文献2は、凝集沈殿後の処理水のろ過性について計測している点では優れているが、計測までにかかる時間が長いと考えられる。まず初めに、砂ろ過前に大粒径の凝集物を重力沈降させるのに一定時間を要する上に、砂ろ過後、ろ過差圧が上昇し始めるまでにも時間を要する。これにより注入量を調整するのが遅れるというデメリットがあり、その遅れを短縮化するためには凝集補助剤の注入量を増加させる必要も考えられ、薬品コストが上がるという課題がある。
特許文献3で提案される凝集剤注入制御装置は、急速混和池とフロック形成池との間、もしくは、フロック形成池の入り口付近で凝集物の画像を撮影し、その画像検出装置の検出データから凝集物の粒径分布を把握し、その情報に基づいて凝集剤注入率を決定する。
しかしながら、特許文献3では、撮影する凝集物がフロック形成池で成長したフロックではなく、成長過程の微細なフロックであるため、その凝集状態の観察では凝集良否を判断するのに十分な情報は得られない。また、凝集物の画像から粒径分布を検出しているが、粒径の大きさと凝集物の沈降性は必ずしも相関関係にあるとは言えないため、凝集状態を十分に評価していることにはならない。凝集物の沈降性から凝集良否を判断するには、凝集物の密度や強度も視野に入れる必要がある。
特許文献4で提案される凝集剤注入制御装置では、フロック形成池や沈殿池におけるフロックを撮影する。そして、そのフロック画像の輝度情報からフロック体積、平均粒径、沈降速度及び密度等を演算し、凝集剤注入率を決定する。
特許文献4は、凝集物の密度及び沈降速度に関する情報も視野に入れて凝集剤注入率を制御している点では優れているが、これらは双方ともフロック画像に基づいて求めた複数の計算値から間接的に算出した値に過ぎず実測値ではないため、その信頼性は低い。
本実施形態に係る凝集制御装置70によれば、最適な凝集条件を設定することができ、この凝集条件を採用してpH調整剤注入装置50、凝集剤注入装置60及び急速撹拌機21の少なくともいずれかを制御する。すなわち、凝集制御装置70は、被処理水へのpH調整剤の注入、被処理水への凝集剤の注入、及び、急速攪拌機21の回転の少なくともいずれかである水処理設備のプロセスを制御する。したがって、凝集制御装置70は、濁質除去性、処理水のろ過性及び汚泥発生量を改善すると共に、過剰な薬品消費を抑えることができる。また、凝集制御装置70により、過不足のない機械操作も可能となるため、浄水場における電力消費を抑制することもできる。
なお、上記実施形態では、凝集制御装置70は、図3で示すように、物理的衝撃の強度を変えながら凝集指標の計測を繰り返す場合を例に説明したが、これに限定されない。例えば、図3のシーケンスS34において、並列して複数の物理的衝撃を凝集物に付与する。そして、シーケンスS38において、衝撃が付与されたそれぞれの凝集物について凝集指標を並列して測定するようにしても構わない。
また、沈殿池40には、図4に示すように、出口近傍に処理水水質計測装置41、水中カメラ42及び濁度計43等の計測装置が設置されても良い。処理水水質計測装置41は、処理水の水質を測定し、測定結果を制御装置74の凝集情報データベース743に蓄積させる。
水中カメラ42は、画像解析装置44に接続される。水中カメラ42は、処理水を撮影し、撮影結果を画像解析装置44へ出力する。画像解析装置44は、解析結果を凝集情報データベース743に蓄積させる。
濁度計43は、処理水における上澄み液の濁度を計測する。濁度計43は、計測結果を凝集情報データベース743に蓄積させる。
凝集条件演算部742は、凝集情報データベース743に蓄積される処理水の水質、画像の解析結果及び濁度に基づいて凝集条件を設定する。例えば、凝集条件演算部742は、凝集情報データベース743に蓄積される凝集条件のうち、被処理水の水質が類似し、凝集強度が予め設定される強度の基準値より強く、かつ、処理水の濁度が低い凝集条件を選択する。これにより、凝集制御装置70は、凝集条件をより正確に設定することが可能となる。
また、上記実施形態では、凝集制御装置70は、フロック形成池30から水を採取し、採取した水から計測される凝集指標に基づいて凝集強度を算出する場合を例に説明したが、これに限定されない。例えば、凝集制御装置70は、急速混和池20から水を採取し、採取した水から計測される凝集指標に基づいて凝集強度を算出するようにしても構わない。なお、これらの2系統による計測を並列して行うことで、より多くの情報を取得することが可能となるため、凝集条件をより正確に設定することが可能となる。
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
10…着水井、11…被処理水水質計測装置、12…流量計、20…急速混和池、21…急速撹拌機、22…pH計、30…フロック形成池、31…緩速撹拌機、40…沈殿池、41…処理水水質計測装置、42…水中カメラ、43…濁度計、44…画像解析装置、50…調整剤注入装置、60…凝集剤注入装置、70…凝集制御装置、71…凝集物採取装置、72…衝撃付与装置、73…凝集指標測定装置、74…制御装置、741…凝集強度演算部、742…凝集条件演算部、743…凝集情報データベース、744…プロセス制御部

Claims (6)

  1. 凝集物を含む水を採取する凝集物採取装置と、
    前記採取された水に対して物理的な衝撃を、前記衝撃の大きさを変えながら付与する衝撃付与装置と、
    前記採取された水に含まれる凝集物の状態を示す第1の凝集指標情報と、前記衝撃を与えられた水に含まれる凝集物の状態を示す第2の凝集指標情報とを測定する凝集指標測定装置と、
    前記第1及び第2の凝集指標情報に基づいて前記採取された水に含まれる凝集物の凝集強度を算出し、前記算出した凝集強度が予め設定する強度の基準値よりも小さい場合、過去に取得された凝集条件のうち、凝集強度が予め設定する強度の基準値より大きい凝集条件を用いて水処理設備のプロセスを制御する制御装置と
    を具備し、
    前記制御装置は、
    前記衝撃の大きさと、前記第1及び第2の凝集指標情報の差から求められる前記凝集物の変化量とに基づき、前記凝集強度を算出する凝集強度演算部と、
    前記算出された凝集強度と、前記凝集強度が算出される際の凝集条件とを関連付けて蓄積するデータベースと、
    前記算出された凝集強度が予め設定する強度の基準値よりも小さい場合、前記データベースに蓄積されている凝集条件のうち、被処理水の水質が類似し、かつ、凝集強度が予め設定する強度の基準値よりも大きい凝集条件を選択する凝集条件演算部と、
    前記選択された凝集条件に基づき、水処理設備のプロセスを制御するプロセス制御部と
    を備える凝集制御装置。
  2. 前記水処理設備に設けられる沈殿池には、汚泥が沈殿除去された処理水の状態を計測する計測装置が設置され、
    前記データベースは、前記計測装置による計測結果を前記凝集条件に含めて蓄積し、
    前記凝集条件演算部は、前記算出された凝集強度が予め設定する強度の基準値よりも小さい場合、前記データベースに蓄積されている凝集条件のうち、被処理水の水質が類似し、凝集強度が予め設定する強度の基準値よりも大きく、かつ、計測結果により凝集状態が良好と示される凝集条件を選択する請求項記載の凝集制御装置。
  3. 前記プロセス制御部は、前記選択された凝集条件に基づき、pH調整剤注入装置、凝集剤注入装置及び急速撹拌機の少なくともいずれかを制御する請求項又は記載の凝集制御装置。
  4. 前記水処理設備のプロセスは、被処理水へのpH調整剤の注入、前記被処理水への凝集剤の注入、及び、前記被処理水を撹拌する急速撹拌機の回転の少なくともいずれかである請求項1記載の凝集制御装置。
  5. 前記凝集物採取装置は、前記水処理設備に設けられる急速混和池及びフロック形成池から、凝集物を含む水を採取する請求項1乃至のいずれかに記載の凝集制御装置。
  6. 凝集物を含む水を採取し、
    前記採取された水に対して物理的な衝撃を、前記衝撃の大きさを変えながら付与し、
    前記採取された水に含まれる凝集物の状態を示す第1の凝集指標情報と、前記衝撃を与えられた水に含まれる凝集物の状態を示す第2の凝集指標情報とを測定し、
    前記衝撃の大きさと、前記第1及び第2の凝集指標情報の差から求められる前記凝集物の変化量とに基づき、凝集物の凝集強度を算出し、
    前記算出した凝集強度が予め設定する強度の基準値よりも小さい場合、凝集強度と、凝集強度が算出される際の凝集条件とを関連付けて蓄積するデータベースを参照し、前記データベースに蓄積されている凝集条件のうち、被処理水の水質が類似し、かつ、凝集強度が予め設定する強度の基準値より大きい凝集条件を選択し、
    前記選択した凝集条件に基づき、水処理設備のプロセスを制御する凝集制御方法。
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