JP6262092B2 - フロックの凝集状態評価方法およびフロックの凝集状態評価装置 - Google Patents
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フロックの凝集状態は、原水に対する凝集剤の注入量によって変化する。しかし、フロックの凝集状態が良好となる凝集剤の注入量は、原水の水質の変動に伴って変化する。このため、原水の水質の変動に対応させて、フロックの凝集状態が良好となるように、凝集剤の注入量を適切に制御する方法が検討されている。
このため、これらの指標を用いて原水への凝集剤の注入量を制御しても、注入率を制御することによる効果が十分に得られない場合があった。
移動速度測定工程は、フロックを含む試験水中に陽極と陰極を配置し、前記試験水に電圧を印加して複数の前記フロックの移動速度を前記フロック毎に測定する工程である。分散値算出工程は、各フロックの移動速度のベクトルが、前記陽極方向の成分を含む場合に第1符号を付与し、前記陰極方向の成分を含む場合に第2符号を付与し、前記第1符号の移動速度および前記第2符号の移動速度をそれぞれ所定の大きさ毎に集計して、前記複数のフロックの移動速度分布における分散値を算出する工程である。評価工程は、前記分散値に基づいて、前記フロックの凝集状態の良否を評価する工程である。
例えば、図1における(E)のグラフは、フロックの移動速度分布の分散値と、混和水中の凝集剤の注入率との関係を示したものである。図1における(E)のグラフ中の点は、それぞれ図1における(A)〜(D)のヒストグラムで示すフロックの移動速度分布の分散値σに対応している。
また、図1における(A)、(D)のヒストグラムの分散値σは、図1における(E)のグラフ中の目標値と比較して非常に小さく、フロックの凝集状態が不良であると判断される。
また、図1における(B)のヒストグラムの分散値σは、(A)、(D)のヒストグラムの分散値σと比較してかなり大きいものの、目標値未満であるため、フロックの凝集状態が不良であると判断される。
また、図1における(A)のヒストグラムで示す検出個数は、マイナスの領域にシャープなピークを有しており、フロックの移動速度の分布の平均値はマイナスの値である。したがって、混和水中において、プラスの電荷を持つ凝集剤が不足していると判断される。
水処理装置1は、着水井10と、混和池22と、沈殿池40と、濾過池50と、フロックの凝集状態評価装置60と、パラメータ調整装置91とを有している。
フロックの凝集状態評価装置60は、フロックの凝集状態を評価するものである。フロックの凝集状態評価装置60は、移動速度測定装置80と、分散値算出装置81と、評価装置90とを有している。
電圧供給装置62は、セル61内に対向配置された陽極62aと陰極62bとによって、セル61内の試験水に電圧を印加するものである。電圧供給装置62は、試験水に10〜20Vの電圧を印加するものであることが好ましい。
カメラとしては、例えば、試験水中のフロックを光源により照射して得られるフロック表面の散乱光を受光するものを用いることができる。
また、分散値算出装置81は、集計に用いるマイナスの移動速度として、マイナスの移動速度のうち、各フロックの移動速度のベクトルに含まれる陽極62a方向の成分の移動速度のみを用い、かつ、集計に用いるプラスの移動速度として、プラスの移動速度のうち、各フロックの移動速度のベクトルに含まれる陰極62b方向の成分の移動速度のみを用いてもよい。
なお、分散値算出装置81は、陰極方向および陽極方向に速度成分を持たない移動速度は0とするものである。
具体的には、評価装置90は、分散値算出装置81の算出した分散値に基づいて、分散値が目標値以上である場合、フロックの凝集状態が良好であると判断し、分散値が前記目標値未満である場合、フロックの凝集状態が不良であると判断するものであることが好ましい。分散値の目標値は、複数のビーカを用いて凝集剤注入率をパラメータとしたビーカ試験における分散値の実測値や、沈殿池40から排出される上澄水の濾過時間指標(Suction time ratio:STR)に基づいて予め決定されたものとすることができる。
具体的には、評価装置90は、上記のフロックの凝集状態の評価が不良であって、平均値がマイナスの値である場合に、試験水中の凝集剤の注入率が不足していると判定するものであることが好ましい。
評価装置90は、上記のフロックの凝集状態の評価が不良であって、平均値がプラスの値である場合に、試験水中の凝集剤の注入率が過剰であると判定するものであることが好ましい。
本実施形態の評価装置90は、試験水中の凝集剤の注入率が不足していると判定した場合または試験水中の凝集剤の注入率が過剰であると判定した場合に、パラメータ調整装置91に、凝集剤の注入率が不足している信号または試験水中の凝集剤の注入率が過剰である信号を入力するものである。
フロックの凝集状態評価方法では、試験水中の複数のフロックの移動速度をフロック毎に測定する移動速度測定工程と、複数のフロックの移動速度分布における分散値を算出する分散値算出工程と、分散値に基づいて、前記フロックの凝集状態の良否を評価する評価工程とを行う。
次に、図3に示すように、セル61内の試験水中に、電圧供給装置62の陽極62aと陰極62bとを配置し、試験水に例えば5V〜30V、好ましくは10V〜20Vの電圧を印加する。そして、フロック追跡装置65によって、試験水中の複数のフロックの移動速度をフロック毎に測定する。
移動速度測定工程において、試験水に電圧を印加する時間は、自由に設定でき、例えば3〜5分とすることができる。
なお、移動速度測定工程において、試験水に電圧を印加したときの試験水中の複数のフロックの位置は、カメラを用いて所定の時間毎に複数回撮影してもよい。この場合においても、移動速度測定工程を行うことにより、複数のフロックのフロック毎の移動速度の情報として複数のフロックの各々における所定の時間内での移動距離の情報が得られる。
図4は、カメラによって撮影した所定の時間の連続した複数のフロックの位置を、表示装置65aに表示した写真である。表示装置65aに表示された画像においては、右側が陰極側であり、左側が陽極側である。
分散値算出工程では、カメラを用いて撮影した画像上で認識できるすべてのフロックの移動速度を分散値の算出に用いてもよいし、一部のフロックの移動速度のみを用いてもよい。一部のフロックの移動速度のみを分散値の算出に用いる場合、例えば、カメラを用いて所定の時間毎に複数回撮影した画像において、認識できた回数が撮影回数に対して所定の回数以上であるフロックの移動速度のみ用いてもよい。
また、分散値算出工程において、集計に用いるマイナスの移動速度として、マイナスの移動速度のうち、各フロックの移動速度のベクトルに含まれる陽極62a方向の成分の移動速度のみを用い、かつ、集計に用いるプラスの移動速度として、プラスの移動速度のうち、各フロックの移動速度のベクトルに含まれる陰極62b方向の成分の移動速度のみを用いてもよい。
分散値算出工程において、算出した分散値または、分散値および上記平均値は、評価装置90に入力される。
評価工程においては、分散値が目標値以上である場合、フロックの凝集状態が良好であると判断し、分散値が前記目標値未満である場合、フロックの凝集状態が不良であると判断することが好ましい。
具体的には、評価工程において、上記のフロックの凝集状態の評価が不良であって、平均値がマイナスの値である場合に、試験水中の凝集剤の注入率が不足していると判定することが好ましい。
評価工程において、上記のフロックの凝集状態の評価が不良であって、平均値がプラスの値である場合に、試験水中の凝集剤の注入率が過剰であると判定することが好ましい。
さらに、評価工程において、評価装置90によって、フロックの凝集状態を評価した結果と、フロックの凝集状態が良好であるか不良であるかを判断した結果と、凝集剤の注入率が不足しているか過剰であるかを判断した結果と、フロック追跡装置65の有する表示装置のリアルタイムの画像または動画のうち、いずれか1つ以上の結果を表示装置に表示させてもよい。
混和池22は、急速混和池20と、配管により急速混和池20と接続されたフロック形成池30とを有している。
混和池22の急速混和池20は、着水井10から供給された原水と、凝集剤注入装置70により注入された凝集剤と、必要に応じてpH調整剤注入装置71により注入されたpH調整剤とを収容するものである。急速混和池20では、原水中に含まれる懸濁物質が凝集剤によってフロック化され、フロックを含む混和水が生成される。
濾過池50は、沈殿池40の下流に設けられている。濾過池50には、混和池22から供給された混和水を、沈殿池40において所定時間以上滞留させて得られた上澄水が供給される。濾過池50は、例えば、砂濾過装置である。濾過池50に供給された上澄水は、濾過池50を通過することにより、沈殿池40で沈殿除去されなかった微小なフロックが除去され、清浄水(処理水)として排出される。
急速混和池20に供給する原水の流量は、着水井10と急速混和池20とを接続する配管に設置された流量計63によって測定され、パラメータ調整装置91に入力される。
また、急速混和池20に供給する原水のpHは、着水井10と急速混和池20とを接続する配管に設置されたpH測定装置74を用いて測定され、パラメータ調整装置91に入力される。
原水の流量の測定およびpHの測定は、原水の供給を開始してから終了するまでの間連続して行ってもよいし、所定の時間毎に行ってもよい。
沈殿池40で沈殿したフロックは、汚泥として処理される。沈殿池40内で混和水中のフロックを沈降分離した後に得られる上澄水は、濾過池50に送られる。
さらに、濾過池50を通過した清浄水に、オゾン処理および/または生物活性炭処理を施してもよい。また、上澄水を濾過池50に通過させる前に、上澄水に対してオゾン処理および/または生物活性炭処理を施してもよい。
フロック制御工程は、評価装置90から試験水中の凝集剤の注入率が不足している信号または試験水中の凝集剤の注入率が過剰である信号が、パラメータ調整装置91に入力されることにより行われる。パラメータ調整装置91は、試験水中の凝集剤の注入率が不足している信号または試験水中の凝集剤の注入率が過剰である信号に基づいて、凝集剤注入装置70から注入される凝集剤の注入量を制御し、試験水を採取した混和池22内の混和水中の凝集剤の注入率を調整する。
また、本実施形態の水処理方法では、混和池22から採取した混和水のフロックの凝集状態を評価した結果に基づいて、混和池22内の混和水中の凝集剤の注入率を調整するので、例えば、沈殿池出口水の濾過時間指標(STR)を評価して混和池への凝集剤の注入量を制御する場合と比較して、原水の水質が変動した場合に、原水の水質が変動してからフロックの凝集条件が変更されるまでの時間が短時間となる。
Claims (10)
- フロックを含む試験水中に陽極と陰極を配置し、前記試験水に電圧を印加して複数の前記フロックの移動速度を前記フロック毎に測定する移動速度測定工程と、
各フロックの移動速度のベクトルが、前記陽極方向の成分を含む場合に第1符号を付与し、前記陰極方向の成分を含む場合に第2符号を付与し、前記第1符号の移動速度および前記第2符号の移動速度をそれぞれ所定の大きさ毎に集計して、前記複数のフロックの移動速度分布における分散値を算出する分散値算出工程と、
前記分散値に基づいて、前記フロックの凝集状態の良否を評価する評価工程とを有するフロックの凝集状態評価方法。 - 前記評価工程において、前記分散値が目標値以上である場合、前記フロックの凝集状態が良好であると判断し、前記分散値が前記目標値未満である場合、前記フロックの凝集状態が不良であると判断する請求項1に記載のフロックの凝集状態評価方法。
- 前記分散値算出工程において、前記複数のフロックの移動速度の、前記第1符号の移動速度と前記第2符号の移動速度の平均値を算出し、
前記評価工程において、前記フロックの凝集状態の評価が不良であって、前記平均値が第1符号である場合に、前記試験水中の凝集剤の注入率が不足していると判定する請求項2に記載のフロックの凝集状態評価方法。 - 前記分散値算出工程において、前記複数のフロックの移動速度の、前記第1符号の移動速度と前記第2符号の移動速度の平均値を算出し、
前記評価工程において、前記フロックの凝集状態の評価が不良であって、前記平均値が第2符号である場合に、前記試験水中の凝集剤の注入率が過剰であると判定する請求項2に記載のフロックの凝集状態評価方法。 - 前記評価工程において、前記フロックの移動速度分布のヒストグラムを生成し、前記ヒストグラムを表示装置に表示する請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のフロックの凝集状態評価方法。
- フロックを含む試験水を収容するセルと、
前記セル内に対向配置された陽極と陰極とによって、前記セル内の前記試験水に電圧を印加する電圧供給装置と、
前記試験水に電圧を印加したときの前記試験水中のフロックの位置を、少なくとも第1時刻と前記第1時刻から所定時間経過後の第2時刻とにフロック毎に測定するフロック追跡装置とを有する移動速度測定装置と、
前記フロック追跡装置の測定した前記試験水中の複数のフロックの位置の信号が入力されることにより、各フロックの移動速度のベクトルを生成し、前記ベクトルが、前記陽極方向の成分を含む場合に第1符号を付与し、前記陰極方向の成分を含む場合に第2符号を付与し、前記第1符号の移動速度および前記第2符号の移動速度をそれぞれ所定の大きさ毎に集計して、前記複数のフロックの移動速度分布における分散値を算出する分散値算出装置と、
前記分散値に基づいて、前記フロックの凝集状態の良否を評価する評価装置とを有するフロックの凝集状態評価装置。 - 前記評価装置は、前記分散値が目標値以上である場合、前記フロックの凝集状態が良好であると判断し、前記分散値が前記目標値未満である場合、前記フロックの凝集状態が不良であると判断する請求項6に記載のフロックの凝集状態評価装置。
- 前記分散値算出装置は、前記複数のフロックの移動速度の、前記第1符号の移動速度と前記第2符号の移動速度の平均値を算出し、
前記評価装置は、前記フロックの凝集状態の評価が不良であって、前記平均値が第1符号である場合に、前記試験水中の凝集剤の注入率が不足していると判定する請求項7に記載のフロックの凝集状態評価装置。 - 前記分散値算出装置は、前記複数のフロックの移動速度の、前記第1符号の移動速度と前記第2符号の移動速度の平均値を算出し、
前記評価装置は、前記フロックの凝集状態の評価が不良であって、前記平均値が第2符号である場合に、前記試験水中の凝集剤の注入率が過剰であると判定する請求項7に記載のフロックの凝集状態評価装置。 - 前記評価装置は、前記フロックの移動速度分布のヒストグラムを生成し、前記ヒストグラムを表示装置に表示させる請求項6〜請求項9のいずれか一項に記載のフロックの凝集状態評価装置。
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