以下、実施形態の凝集制御装置、凝集制御方法及び凝集制御システムを、図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態の凝集制御システム2を備える水処理プラント1の構成の具体例を示す図である。水処理プラント1は、固液分離機能を備える設備であれば、特定の設備に限定されない。固液分離機能は、液体に含まれている懸濁物等の固形物を凝集剤によって液体から分離する機能である。水処理プラント1は、例えば、浄水場、製紙工場、食品工場である。水処理プラント1が浄水場である場合、原水は、例えば、河川水、ダム湖水、地下水、雨水、下水である。水処理プラント1が製紙工場又は食品工場である場合、原水は、例えば、工業排水である。以下、水処理プラント1は、一例として浄水場として記述する。
例えば、図1に示す水処理プラント1は、固液分離機能を実現する設備として凝集制御システム2及び各貯水部を備える。例えば、各貯水部は、着水井10、混和池20(急速混和池)、フロック形成池30−1〜30−3、沈殿池40、ろ過池50及び浄水池55である。各貯水部のうち、着水井10は、被処理水の流れに関して最も上流に位置する。各貯水部のうち、浄水池55は、被処理水の流れに関して最も下流に位置する。
着水井10は、水処理プラント1に送られてきた原水を貯え、原水から植物や土砂等の比較的比重の大きい不要物を分離して後段の貯水部に送水する設備である。ここでいう原水とは水処理プラント1の処理対象となる水のことであり、水処理プラント1の内外から着水井10に送られる。以下では、この原水を含め、水処理プラント1において処理中の水を「被処理水」と記載し、処理を終えて放流又は再利用可能となった水を「処理済み水」と記載する。即ち、原水は初期状態の被処理水ということができる。
着水井10には水質計11が備えられる。水質計11は着水井10内の被処理水の水質を測定する。例えば、水質は、濁度や色度、水温、導電率、pH(水素イオン濃度指数)、アルカリ度(酸消費量)等の諸量によって表される。水質計11は、これら諸量の測定によって得られた水質を表す情報を凝集制御システム2に送信する。着水井10では、植物や土砂等の比較的大きな不要物が沈殿によって被処理水から分離される。これらの不要物が分離された上澄みの水(以下「上澄み水」という。)は、沈殿によって分離されずに残留した懸濁物を含んだ状態で後段の混和地20に送られる。なお、着水井10の上流側には流量調整弁13が備えられ、この流量調整弁13によって着水井10に流入する流量が調整される。
着水井10と混和池20との間の配管には流量計12が備えられる。流量計12は、着水井10から混和池20に送られる上澄み水の流量を測定する。流量計12は、着水井10から混和池20に送られる上澄み水の流量を表す情報を、凝集制御システム2に送信する。
凝集制御システム2は、着水井10と混和池20との間の配管(水路)に、pH調整剤を注入する。pH調整剤には酸性のものとアルカリ性のものとがある。例えば、硫酸や塩酸は酸性のpH調整剤であり、水酸化ナトリウム(別名:苛性ソーダ)はアルカリ性のpH調整剤である。
混和池20には、上澄み水が着水井10から送られる。凝集制御システム2は、混和池20の水(混和水)に凝集剤を注入する。例えば、凝集剤には、ポリ塩化アルミニウム(PAC:Poly Aluminum Chloride)や硫酸アルミニウム(硫酸ばんど)などがある。以下、これらの凝集剤又はpH調整剤等が水に注入される工程を「薬注工程」という。
混和池20には撹拌装置21及びpH計22が備えられる。撹拌装置21(急速攪拌装置)は混和池20の水を撹拌する。例えば、撹拌装置21はフラッシュミキサである。撹拌装置21にはモータが接続されており、撹拌スピードが可変であってもよい。pH計22は混和池20の水のpHを連続的に測定する。pH計22は混和池20の水のpHを、予め定められた周期で間欠的に測定してもよい。例えば、pH計22は10分周期でpHを測定する。pH計22は、混和池20の水のpHの値を表す情報を、凝集制御システム2に送信する。pH計22は、混和池20とフロック形成池30−1との間の配管に備えられていてもよい。
pH調整剤として水酸化ナトリウムが注入される場合には凝集剤の添加によってpHが上昇する場合もあるが、一般的には凝集剤が添加されるとpHは低下する。そのため、混和池20のpHは着水井10で計測されたpHよりも低い値をとるのが一般的である。このような凝集剤の添加によるpHの変動を考慮して、混和池20の水のpHの値には上限値や下限値が定められる場合もある。この場合、凝集剤は、注入によって変化したpHがpH計22によって測定されるように、pH計22の測定周期に応じたタイミングで注入される。そして、凝集制御システム2は、pHの測定結果に基づいて、pHが上限値から下限値までの範囲内にとどまるように凝集剤の注入量を監視する。
混和池20に凝集剤が注入されると、被処理水に含まれる懸濁物は凝集してフロックとなる。フロックの凝集状態は被処理水に対する凝集剤の注入量に応じて異なる。フロックの凝集状態の指標は、例えば、流動電流値やフロックの表面荷電の平均値、フロックのゼータ電位等によって表される。フロックの凝集状態の指標は、フロックを沈殿させた後の上澄み水を使って測定されるろ過時間指標(STR:Suction Time Ratio)によって表されてもよい。フロックの凝集状態の指標は、フロックを粒径ごとに分級した被処理水に含まれるアルミニウムの濃度(残留アルミニウム濃度)によって表されてもよい。アルミニウムの濃度は、例えば、エリオクロムシアニンレッドを呈色試薬として用いた吸光光度法によって測定される。フロックの凝集状態の指標は、フロック中の固形物とゲル状物の割合に基づいて算出されるフロックの密度に関する指標値によって表されてもよい。また、フロックの凝集状態の指標は、単にフロックの大きさを測定した粒径によって表されてもよい。
懸濁物の表面は、通常、水中ではマイナスに帯電している。一方凝集剤は、水中ではプラスに帯電している。従って、凝集剤は懸濁物に付着する。懸濁物に付着した凝集剤は、懸濁物のマイナスの荷電を打ち消すことによって、懸濁物の表面荷電を0[mV]に近づける。懸濁物の表面荷電が0[mV]に近づくに従い、ゼータ電位は0[mV]に近づく。従って、凝集剤は、懸濁物同士の反発を弱めて衝突回数を増加させる作用を有する。この凝集剤の作用により、衝突したフロック同士が徐々に集塊化していき、より大きなフロックの形成が促進される。
凝集剤の注入量が不足している場合、懸濁物の表面荷電の平均値がマイナスのままとなり懸濁物同士が反発する。そのため、凝集剤の注入量が不足している状況ではフロックの形成は十分に進まない。一方で、凝集剤の注入量が過剰である場合、懸濁物の表面荷電の平均値がプラスになってしまい懸濁物同士が反発する。そのため、凝集剤の注入量が過剰である状況においてもフロックの形成は十分に進まない。これに対して、凝集剤の注入量が適正である場合、懸濁物の表面荷電が中和して、分子間力の作用により懸濁物同士が互いに引き合う。そのため、凝集剤の注入量が適正である状況ではフロックの形成が進む。従って、凝集剤の注入量は、懸濁物の表面荷電を中和させる(約0[mV]にする)ような適正量に制御されることが望ましい。
凝集剤は、水中では様々な形態に分かれて存在する。浄水場で多く用いられているPACは塩化アルミニウムの重合体である。PACは、水中では、第1形態のアルミニウム(以下「第1形態アルミニウム」という。)と、第2形態のアルミニウム(以下「第2形態アルミニウム」という。)と、第3形態のアルミニウム(以下「第3形態アルミニウム」という。)と、が混合した状態に変化する。第1形態アルミニウム、第2形態アルミニウム及び第3形態アルミニウムの混合の比率は、PACが添加された被処理水のpH又はアルカリ度等に応じて異なる。
第1形態アルミニウムは、第2形態アルミニウム又は第3形態アルミニウムと比較して小さい構造にPACが変化した形態である。第1形態アルミニウムは、モノマーアルミニウムと呼ばれる。第1形態アルミニウムは、第2形態アルミニウム又は第3形態アルミニウムと比較して凝集反応における寄与が小さい。
第2形態アルミニウムは、PACが多価のイオン性ポリマー化を起こしている状態に変化した形態である。第2形態アルミニウムは、ポリマーアルミニウムと呼ばれる。第2形態アルミニウムは、荷電中和作用に大きく寄与する。
第3形態アルミニウムは、比較的大きいコロイド状のアルミニウムと不溶態のアルミニウムとにPACが変化した形態である。第3形態アルミニウムは、凝集反応における架橋作用に大きく寄与する。従って、第3形態アルミニウムは、フロックが大きくなって沈降しやすい状態となることに大きく寄与する。第3形態のアルミニウムの量が不足している場合、荷電中和が良好に進んだとしても架橋作用がうまく働かないため、フロックは大きくならない。フロックが大きくならない場合、フロックが沈降しやすい状態とならないので、被処理水の濁度はあまり低下しない。
凝集制御システム2は、凝集剤が注入された混和池20内の被処理水(以下「混和水」という。)の一部を採取する。以下、第1形態アルミニウム量、第2形態アルミニウム量及び第3形態アルミニウム量の合計量に占める第1形態アルミニウム量の比率を「第1形態アルミニウム比率」という。同様に、第1形態アルミニウム量、第2形態アルミニウム量及び第3形態アルミニウム量の合計量に占める第2形態アルミニウム量の比率を「第2形態アルミニウム比率」といい、同合計量に占める第3形態アルミニウム量の比率を「第3形態アルミニウム比率」という。第1形態アルミニウム比率、第2形態アルミニウム比率及び第3形態アルミニウム比率は、例えば、フェロン法によって測定可能である。
懸濁物の表面荷電を中和させることができる凝集剤の注入量は、被処理水の水質に応じて異なる。従って、凝集制御システム2は、被処理水の水質に応じて凝集剤の注入量を定める必要がある。
第2形態アルミニウムは、第1形態アルミニウム及び第3形態アルミニウムと比較して、懸濁物の表面荷電を効果的に中和する。従って、懸濁物や微細なフロック同士は、水中の第2形態アルミニウム比率が高いほど効果的に凝集する。なお、微細なフロックからある程度の大きさに成長したフロック同士は、水中の第3形態アルミニウム比率が高いほど効果的に凝集する。
第2形態アルミニウム比率は、懸濁物を含む被処理水の水質に応じて異なる。従って、凝集制御システム2は、懸濁物を含む被処理水の水質を変化させて水中における第2形態アルミニウム比率を高くすることによって、懸濁物や微細なフロック同士を効果的に凝集させることができる。
図2は、第1の実施形態における、被処理水のpHと第2形態アルミニウム比率との関係を示す図である。横軸は被処理水のpHを示す。縦軸は被処理水における第2形態アルミニウム比率を示す。被処理水のpHと第2形態アルミニウム比率との関係は、フェロン法などの測定方法に基づく測定によって定められる。第2形態アルミニウム比率は、被処理水のpHの値が中性から低くなるほど高くなる。測定されたpHの値がpH閾値未満である場合、第2形態アルミニウム比率は飽和する。即ち、測定されたpHの値がpH閾値未満である場合、第2形態アルミニウムの増加ポテンシャルは、測定されたpHの値がpH閾値以上である場合と比較して小さい。ここで、pH閾値は測定によって定まる閾値である。
図3は、第1の実施形態における、被処理水のアルカリ度と第2形態アルミニウム比率との関係を示す図である。横軸は被処理水のアルカリ度を示す。縦軸は被処理水における第2形態アルミニウム比率を示す。被処理水のアルカリ度と第2形態アルミニウム比率との関係は、フェロン法などの測定方法に基づく測定によって定められる。第2形態アルミニウム比率は、被処理水のアルカリ度の値が高くなるほど高くなる。測定されたアルカリ度の値がアルカリ度閾値以上である場合、第2形態アルミニウム比率は飽和する。即ち、測定されたアルカリ度の値がアルカリ度閾値以上である場合、第2形態アルミニウムの増加ポテンシャルは、測定されたアルカリ度の値がアルカリ度閾値未満である場合と比較して小さい。アルカリ度閾値は、測定によって定まる閾値である。
図4は、第1の実施形態における、第1形態アルミニウム比率、第2形態アルミニウム比率及び第3形態アルミニウム比率の具体例を示す図である。図4では、MAn(添字nは、1から12までの任意の整数)は、第1形態アルミニウム比率を示す。PAnは、第2形態アルミニウム比率を示す。CAnは、第3形態アルミニウム比率を示す。第1形態アルミニウム比率MAn、第2形態アルミニウム比率PAn及び第3形態アルミニウム比率CAnの合計値は100%である。
図4の例は、第1形態アルミニウム比率、第2形態アルミニウム比率及び第3形態アルミニウム比率を、一例として、pH6.0〜7.5までのpHの各値と、アルカリ度10[mg/l]〜30[mg/l]までのアルカリ度の各値との組み合わせごとに示した図である。凝集制御システム2は、図4に示すようなテーブル情報に基づいて、第1形態アルミニウム比率、第2形態アルミニウム比率及び第3形態アルミニウム比率をpH及びアルカリ度の測定値から推定することができる。なお、凝集制御システム2は、図4に示すようなテーブル情報を予め記憶部に記憶してもよい。
ここで、図2に示す関係を踏まえれば、図4における第2形態アルミニウム比率PA4は、第2形態アルミニウム比率PA1よりも小さいことが分かる。同様に、図3に示す関係を踏まえれば、図4における第2形態アルミニウム比率PA9は、第2形態アルミニウム比率PA1よりも大きいことが分かる。これらのことから、即ち、第2形態アルミニウム比率PA9は、第2形態アルミニウム比率PA4よりも大きいことが分かる。
第3形態アルミニウムは、第2形態アルミニウムによって表面荷電が中和された懸濁物や微細なフロック同士を架橋して、フロックを大きくさせる。
次に、第2形態アルミニウムと第3形態アルミニウムによってフロックが成長する過程における、フロックの密度の変化に関して述べる。図4で示したとおり、被処理水に注入された直後における第2形態アルミニウムと第3形態アルミとの比率は、被処理水のpH及びアルカリ度に応じて異なる。
図5は、第1の実施形態において、良好な密度状態を持つフロックが形成される状況を説明する図である。図5(A)は、第2形態アルミニウム比率及び第3形態アルミニウム比率の変化を、pHをパラメータとして表した場合の概念図を示す。ここでのpHは凝集時のpHであり、横軸は混和池20の被処理水に関して測定されたpHを表す。荷電中和作用に貢献する第2形態アルミニウムと、架橋作用に貢献する第3形態アルミニウムの量とが、被処理水中の懸濁物に対して適量である場合、フロックの密度状態は良好となり、ある程度大きな粒径を持つフロックが形成される。図5は、原水時点の濁度から、凝集沈殿処理によって分離されたフロック分だけ濁度が低下し、凝集沈殿後には被処理水中に残留しているフロック分の濁度となることを表している。すなわち、このような場合において、比処理水中の濁度の除去率は最も良好となり、凝集沈澱処理後に比処理水中に残留する濁度分も少なくなる。ここでの密度状態とは、凝集剤に由来するフロック中のゲル状物と懸濁物に由来するフロック中の固形物との面積比で表すことができる。図5(B)に示すように、第2形態アルミニウムと第3形態アルミニウムとが被処理水中に適切な比率で存在する場合、固形物が詰まった状態(良好な密度状態)のフロックが形成される。このようなフロックが形成される状況では、注入した凝集剤が無駄なくフロック中に取り込まれており、またフロックが壊れにくいため、水中に残存する凝集剤(残留凝集剤)の量も少なくなる。
図6は、第1の実施形態における、第2形態と第3形態のアルミニウムの存在量と不良なフロックの密度状態の一例を示した図である。図6(A)は、図5(A)に示した良好な密度状態が崩れた状態でフロックが形成される状況を示している。例えば、図6(A)の例の凝集状態1ではpHが酸性側に傾いており荷電中和作用に貢献する第2形態アルミニウムが過剰に存在している状態である。また、凝集状態2ではpHがアルカリ性側に傾いており架橋作用に貢献する第3形態アルミニウムが過剰に存在している状態である。
この場合、凝集状態1では、例えば図6(B)に示されるように、フロックの架橋作用が十分に働かないため、密度状態としては良好であっても粒径の小さなフロックとなってしまう。図6は、図5と同様に、被処理水の濁度が原水時点から凝集沈殿後までに変化する様子を示しているが、フロックの沈降性が悪いため被処理水の濁度が十分に低下しない状況を表している。そのため、被処理水から不要物を十分に分離することができない状態となってしまう。
一方、凝集状態2では、例えば図6(C)に示されるように、フロックの架橋作用が促進されて粒径の大きなフロックが形成されるが、ゲル状物の比率が高くなり良好な密度状態のフロックが形成されにくくなってしまう。このような密度状態のフロックは壊れやすく、結果として微小なフロックの破片が残留し、被処理水の濁度を上げてしまうことになる。さらに、このようなフロックの破片は、凝集剤を含んでいるため凝集剤の残留量を増させることになり、被処理水のアルミニウム濃度を高めることになる。被処理水中に残留したアルミニウムは、後段に存在する砂ろ過池の目詰まりの要因となる。砂ろ過池の目詰まりはろ過抵抗の上昇を促進するため、ろ過池の洗浄頻度が高くなり、結果としてコストの増加を招くことになる。また、ゲル状物の比率が高いフロックは、水分を多く含むため、沈殿池の下部に堆積する汚泥の性状に影響を及ぼす。そのため、ゲル状物の比率が高いフロックの増加は汚泥処分にかかる時間を増大させ、結果としてコストの増加を招くことになる。
図6に示す凝集不良の2ケースにおいては、原水に対する凝集剤の注入量が荷電中和を維持するように決定された場合であっても、凝集時のpHが中性付近から大きく外れてしまった場合には発生しうる現象である。そのため、荷電中和状態に加えて、フロックの密度状態を示す情報を入手し、凝集時のpHを適切な値に維持する必要がある。その際、pH調整剤注入の判断、即ちpHを酸性又はアルカリ性のいずれに調整したらよいかの判断を支援する情報を入手することは、良好な凝集状態を得るために重要である。
なお、図6(B)に示されるような、架橋作用に貢献する第3形態アルミニウムの量が少なく、フロックが大きく成長しないような状況においては、撹拌強度を上げたり、撹拌時間を長くしたりすることでフロックの成長を促進する方法もある。
図1の説明に戻る。フロック形成池30−1〜30−3のうち、フロック形成池30−1は、被処理水の流れに関して最も上流に位置する。フロック形成池30−1〜30−3のうち、フロック形成池30−3は、被処理水の流れに関して最も下流に位置する。
フロック形成池30−1には、混和池20から被処理水が送られる。フロック形成池30−1には撹拌装置31−1が備えられる。撹拌装置31−1は、モータに駆動されることによって、フロック形成池30−1の被処理水を撹拌する。例えば、撹拌装置31−1はフロキュレータである。撹拌装置31−1によって撹拌された被処理水中では、微細なフロックが衝突を繰り返すことによってより大きな粒径のフロックが形成される。
フロック形成池30−2には、フロック形成池30−1から被処理水が送られる。フロック形成池30−2には撹拌装置31−2が備えられる。例えば、攪拌装置31−2は、攪拌装置31−1と同様のフロキュレータであり、撹拌装置31−1と比較して弱い力でフロック形成池30−2の水を撹拌する。フロック形成池30−1と同様に、フロック形成池30−2では、撹拌装置31−2の攪拌によるフロック同士の衝突によってより大きなフロックが形成される。
フロック形成池30−3には、フロック形成池30−2から被処理水が送られる。フロック形成池30−3には撹拌装置31−3が備えられる。例えば、撹拌装置31−3は、攪拌装置31−2と同様のフロキュレータであり、撹拌装置31−2と比較して弱い力でフロック形成池30−3の水を撹拌する。フロック形成池30−2と同様に、フロック形成池30−3では、攪拌装置31−3の攪拌によるフロック同士の衝突によって、フロックはさらに大きなフロックへと成長する。これによって、フロック形成池30−3の被処理水中では、フロック形成池30−1及び30−2と比較して粒径の大きいフロックが形成される。以下、フロック形成池30−1〜30−3に共通する事項の説明においては、符号の一部を省略して、フロック形成池30−1〜30−3を「フロック形成池30」と表記する。
沈殿池40には、フロック形成池30−3から被処理水が送られる。沈殿池40には、予め定められた以上の所定時間、被処理水が貯留される。この予め定められた所定時間は、例えば3時間である。沈殿池40では、所定時間の沈殿によってフロックが被処理水から分離される。以下、フロックが被処理水から分離される工程を「分離工程」という。沈殿池40の最下流部では、沈殿によって得られた上澄み水に対してオゾン処理及び生物活性炭処理の少なくとも一方がさらに施されてもよい。
沈殿池40には水質計41が備えられる。水質計41は、沈殿池40内の上澄み水の水質を測定する。例えば、水質計41は上澄み水の濁度及び色度を測定する。水質計41は、沈殿池40の最も下流側付近から採取された上澄み水の水質を測定する。水質計41は、これら諸量の測定によって得られた水質を表す情報を凝集制御システム2に送信する。
ろ過池50には、沈殿池40の上澄み水が送られる。ろ過池50では、沈殿池40から送られた上澄み水がろ過される。ろ過池50によってろ過された水(清浄水)は、浄水池55に送られる。浄水池55では、塩素等よって清浄水に殺菌処理が施される。殺菌処理が施された清浄水は、浄水池55から住宅等に送られる。またろ過池洗浄ポンプ51は浄水池55の水を使ってろ過池の洗浄を行う。このときの洗浄排水は排泥池52に送られる。また排泥池52には、沈殿池40の底に溜まった汚泥が引き抜かれてくる。同じようにフロック形成池30の底に溜まった汚泥も引き抜かれて排泥池52に送られる。排泥池52に溜まった汚泥は汚泥処理施設53に送られ、脱水処理が施され、浄水場外に運び出される。
また、ろ過池50には、水位上昇測定装置51が備えられる。水位上昇測定装置51は、ろ過池50の水位を測定する。例えば、水位上昇測定装置51は、異なる時刻に測定された複数の水位に基づいて水位の上昇を測定する。水位上昇測定装置51は、ろ過池50の水位を表す情報を凝集制御システム2に送信する。
続いて、凝集制御システム2の構成について説明する。凝集制御システム2は、pH調整剤注入装置60、凝集剤注入装置70、凝集制御装置80及び調整装置90を備える。凝集制御システム2は、pH調整剤注入装置60及び調整装置90を備えることにより、水処理プラント1の薬注工程において、予め定められた貯水部又は配管(水路)に注入されるpH調整剤の注入量を制御する。また、凝集制御システム2は、凝集剤注入装置70及び調整装置90を備えることにより、水処理プラント1の薬注工程において、予め定められた貯水部又は配管(水路)に注入される凝集剤の注入量を制御する。図1の例では、凝集制御システム2は、混和池20に凝集剤を注入する。
pH調整剤注入装置60は、pH調整剤の注入量を表す情報を、調整装置90から取得する。pH調整剤注入装置60は、酸性又はアルカリ性のいずれのpH調整剤を注入するかを示す情報を、調整装置90から取得してもよい。
pH調整剤注入装置60は、pH調整剤の注入量を表す情報に基づいて、着水井10と混和池20との間の配管(水路)にpH調整剤を注入する。pH調整剤注入装置60は、例えば、ポンプである。ポンプは、電動でもよい。pH調整剤注入装置60は、アルカリ性のpH調整剤を混和水に注入する場合、pH調整剤の注入量を表す情報に基づいて、混和水のアルカリ度が20±5[mg/l]程度となるようにpH調整剤の注入量を調整してもよい。混和池20では、pH調整剤によって被処理水(混和水)のpHが変化するので、図2に示したような第2形態アルミニウム比率の変化が生じる。pH調整剤注入装置60は、混和地20への注入に加え、さらに混和池20とフロック形成池30との間の配管(水路)にpH調整剤を注入してもよい。即ち、pH調整剤注入装置60は、フロック形成池30−1の流入口にpH調整剤を注入してもよい。
撹拌強度制御装置65は、各撹拌装置31の撹拌強度(回転数)の変更に関する情報を、調整装置90から取得する。撹拌強度制御装置65は、各撹拌強度の回転数を上げるか下げるかの情報を、調整装置90から取得してもよい。
撹拌強度制御装置65は、回転数の変更を表す情報に基づいて、混和池20の撹拌装置21、フロック形成池30−1の撹拌装置31−1、フロック形成池30−2の撹拌装置31−2及びフロック形成池30−3の撹拌装置31−3の回転数を調整する。浄水場によっては、回転数を調整できる機能が一部の攪拌装置にしか備わっていない場合がある。そのような場合、攪拌強度制御装置65は、調整機能が備わっている撹拌装置に関してのみ回転数を調整してもよい。また、制御対象の浄水場に回転数を調整できる機能を備えた攪拌槽が存在しない場合、凝集制御システム2は攪拌強度制御装置65を備えなくてもよい。
攪拌装置の回転数を増加させるとフロックの衝突回数が上がるため、フロックの形成が促進される。その一方で、攪拌装置はモータ等によって駆動されるため、回転数の増加は消費電力の増加につながる場合もある。そこで、攪拌強度制御装置65は、消費電力の増加によって生じる電力コストの増加量と、回転数の増加による凝集プロセスの改善がもたらすコストの削減量との両者を比較して、回転数の増加の判断をしてもよい。
凝集剤注入装置70は、凝集剤の注入量を表す情報を、調整装置90から取得する。凝集剤注入装置70は、凝集剤の注入量を表す情報に基づいて、混和池20の被処理水(混和水)に凝集剤を注入する。凝集剤注入装置70は、例えば、ポンプである。凝集剤注入装置70は、混和地20への注入に加え、さらに混和池20とフロック形成池30との間の配管(水路)に凝集剤を注入してもよい。即ち、凝集剤注入装置70は、フロック形成池30−1の流入口に凝集剤を注入してもよい。
凝集制御装置80は、ワークステーション装置、パーソナルコンピュータ装置、サーバ装置等の情報処理装置である。凝集制御装置80は、混和池20の被処理水に含まれているフロックの電気泳動の速度を、画像解析によって測定する。また、凝集制御装置80は、混和池20の水に含まれているフロックの撮影画像よりフロック中の固形物とフロック中のゲル状物とを識別し、フロック中の固形物及びゲル状物の割合からフロックの密度状態を測定する。凝集制御装置80は、測定された電気泳動の速度とフロックの密度状態とに基づいて、凝集剤及びpH調整剤の注入量、又は撹拌強度及び撹拌時間を定める。撹拌時間の調整は、流量調整弁の操作による流量の制御、即ち被処理水の滞留時間を制御することによって実現される。
凝集制御装置80は、解析部81、算出部82、制御部83及び記憶部84を備える。解析部81、算出部82及び制御部83のうちの一部又は全部は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサが、記憶部84に記憶されたプログラムを実行することにより機能するソフトウェア機能部である。また、これらの機能部のうちの一部又は全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェア機能部であってもよい。
解析部81は、混和池20内の被処理水(混和水)の一部を採取する。解析部81に代えてに水処理プラント1の運転員が被処理水の採取を行ってもよい。採取された混和水は所定の容器(以下「セル」という。)に収容される。混和水には、懸濁物や微細なフロックが含まれている。以下では、必要に応じて混和水を懸濁液と称する。被処理水の採水は混和池20に限定せず、フロック形成池30−1、フロック形成池30−2、フロック形成池30−3のいずれかであってもよい。
図7は、第1の実施形態における、懸濁液300を収容するセル200の具体例を示す図である。セル200の材質は、例えば、ガラスやアクリルなどの透明な材質である。セル200は、図中x軸の正方向の端部に負極210を、負方向の端部に正極220を備える。即ち、負極210と正極220とはx軸方向に対向配置される。負極210と正極220とは、電圧供給部230に接続されている。電圧供給部230は、負極210と正極220との間に電圧を印加する。電圧は、例えば10〜20Vである。電圧の印加時間は、例えば3〜5分間である。この電圧の印加により、正又は負に帯電した懸濁液300中のフロックが正極又は負極の方向に移動する。以下、x軸の正方向の移動速度は正値で表され、x軸の負方向の移動速度は負値で表されるものとする。同様に、y軸の正方向の移動速度は正値で表され、y軸の負方向の移動速度は負値で表されるものとする。ここで、測定容器(セル)のZ軸方向の深さ(厚み)は、例えば1mm〜3mmである。
セル200は、懸濁液300を収容する。電圧供給部230は、負極210と正極220との間に電圧を印加することによって、懸濁液300に電圧を印加する。表面電荷がマイナスである微細なフロックは、懸濁液300に電圧が印加されている場合、正極220に向かってx軸の負方向に電気泳動する。従って、表面電荷がマイナスである懸濁液300内のフロックの電気泳動の平均速度は負値である。
表面電荷がプラスである微細なフロックは、懸濁液300に電圧が印加されている場合、負極210に向かってx軸の正方向に電気泳動する。従って、表面電荷がプラスである懸濁液300内のフロックの電気泳動の平均速度は正値である。
表面電荷が中和している微細なフロックは、電圧を印加した場合でも、懸濁液300内を浮遊する。従って、表面電荷が中和している微細なフロックの電気泳動の方向は、負極210と正極220との間に電圧を印加されている場合でも一定ではない。よって個々の粒子の移動速度のばらつきが大きくなり、移動速度の分散が大きくなる。表面電荷が中和している微細なフロックの電気泳動の速度の分散値は所定値以上となる。つまり、この所定値を閾値として、電圧を印加した場合における分散値を閾値と比較することによって、表面電荷が中和しているか否かを把握することができる。
図1の説明に戻る。解析部81は、光源部810、撮像部811及び速度測定部812を備える。光源部810は光をセル200に照射する。光源部810は、例えばレーザー光や可視光をセル200に照射する。光源部810は、照射する光の強度や波長を変更してもよい。光源部810から照射された光は、透明なセル200を透過して撮像部811の光学系に受光される。
撮像部811は撮像装置である。撮像部811は、懸濁液300の中で電気泳動しているフロックの表面によって反射された散乱光を受光する。例えば、撮像部811はセル200の透明な側面を通して懸濁液300を撮像できるようにセル200の側面に設置される。撮像部811は、懸濁液300に電圧が印加されている場合、懸濁液300の中で電気泳動しているフロックを所定周期で撮像する。所定周期は、例えば1/3秒周期である。所定周期が1/3秒周期である場合、撮像部811は1秒間に3フレームの画像を生成する。表面電荷が中和している微細なフロックは、x軸方向のみならず2次元方向に浮遊する。撮像部811は、フロックが撮像された画像を表す情報を、撮像周期ごとに速度測定部812に送信する。
速度測定部812は、フロックが撮像された画像に対して、ソフトウェアによる画像解析処理を施す。速度測定部812は、撮像された動画像において懸濁液300中を電気泳動するフロックの位置をそれぞれのフロックごとに測定する。速度測定部812は、異なる撮像時刻における各フロックの位置を測定する。第1撮像時刻と第2撮像時刻との間隔は、例えば、1秒間隔又は1/3秒間隔である。速度測定部812は、第1撮像時刻におけるフロックの位置と第2撮像時刻におけるフロックの位置とに基づいて、フロックの電気泳動の速度を測定する。その他、速度測定部812は、二以上の撮像時刻におけるフロックの位置に基づいて、フロックの電気泳動の平均的な速度を測定してもよい。このような測定方法により、速度測定部812はフロックごとの電気泳動の速度を測定する。速度測定部812は、フロックごとの電気泳動の速度を表す情報を算出部82に送信する。
算出部82は、フロックごとの電気泳動の速度を表す情報を取得する。算出部82は、フロックごとの電気泳動の速度を表す情報に基づいて、各フロックの電気泳動の速度の分散値を算出する。算出部82は、電気泳動の速度の分散値を表す情報を制御部83に送信する。算出部82は、フロックごとの電気泳動の速度を表す情報に基づいて、各フロックの電気泳動の速度の平均値を算出する。算出部82は、電気泳動の速度の平均値を表す情報を制御部83に送信する。
制御部83は、電気泳動の速度の分散値を表す情報を算出部82から取得する。制御部83は、電気泳動の速度の平均値を表す情報を算出部82から取得する。制御部83は、pHの値を表す情報をpH計22から取得する。制御部83は、電気泳動の速度の分散値に基づいて、懸濁物やフロックの表面荷電が中和されているか否かを判定する。即ち、制御部83は、電気泳動の速度の分散値に基づいて、ゼータ電位が0[mV]付近であるか否かを判定する。制御部83は、電気泳動の速度の平均値に基づいて、懸濁物やフロックの表面荷電が中和されているか否かを判定する。即ち、制御部83は、電気泳動の速度の平均値に基づいて、ゼータ電位が0[mV]付近であるか否かを判定する。ここで、懸濁物やフロックの表面荷電が中和されているか否かを判定には、電気泳動の速度の分散値を用いてもよいし、電気泳動の速度の平均値を用いてもよい。電気泳動の速度の平均値を用いる場合には、電気泳動の速度の平均値が0[μm/秒]付近となるときが、ゼータ電位が0[mV]付近となるときである。
制御部83は、フロックの表面荷電が中和されていない場合にはフロックの形成が進まないので、凝集剤の注入量の変更やpH調整剤の注入を実施する。一方、フロックの表面荷電が中和されている場合にはフロックの形成が進むので、制御部83は凝集剤の注入量の変更やpH調整剤の注入を実施しなくてもよい。
図8は、第1の実施形態における、凝集剤の注入量とフロックの電気泳動の速度の分散値との関係を示す図である。横軸は凝集剤の注入量を示す。上段の縦軸はゼータ電位を示す。下段の縦軸は電気泳動の速度の分散値を示す。電気泳動の速度の分散値は、フロックの表面荷電が中和されていない(ゼータ電位が0[mV]付近でない)場合には、閾値(予め定められた目標値)未満である。閾値は、例えば、着水井10における原水の濁度、色度に基づいて定められる。制御部83は、電気泳動の速度の分散値が閾値以上であるか否かを判定する。
制御部83は、電気泳動の速度の分散値が閾値未満である場合、フロックの表面荷電がマイナス又はプラスのいずれであるかを判定する。即ち、制御部83は、電気泳動の速度の分散値が閾値未満である場合、電気泳動によるフロックの移動方向が正極方向又は負極方向のいずれであるかを判定する。
制御部83は、電気泳動の速度の平均値が負値である場合、フロックの電気泳動の方向が正極220に向かう方向(正極方向)であると判定する。電気泳動の方向が正極方向である場合、フロックの表面荷電はマイナスである。制御部83は、電気泳動の速度の平均値が正値である場合、フロックの電気泳動の方向が負極210に向かう方向(負極方向)であると判定する。電気泳動の方向が負極方向である場合、フロックの表面荷電はプラスである。
図7に示したセル200においては、前述した電気泳動に関する情報に加えて、フロックの密度の情報も同時に取得できる。セル200を用いた密度指標の検出方法は次のとおりである。まず、図1に示したように、混和池20の被処理水(混和水)の一部を採取して、セル200に通水する。次いで、撮像部811によって懸濁液中のフロックを連続的に撮像する。この撮像は前述した、電気泳動による分散値及び平均値を求めるときの撮像と同一である。撮像部811には、モノクロカメラやRGBカメラ、複数のカラーフィルターの切り替えが可能なカメラ、ハイパースペクトルカメラなどの撮像装置を用いることが出来る。
図9は、第1の実施形態における、面積比算出におけるフロック画像の明視野像及び位相差像の具体例を示す図である。図9は、数μm〜数十μmの大きさのフロックの写真である。図9(A)の明視野像では、フロック中の固形物を明確に識別できるが、フロックの輪郭に関しては明確な識別が出来ない。一方、図9(B)の位相差像では、フロック中の固形物の周囲に存在する透過性のゲル状物を明確に識別出来るが、固形物に関しては明確な識別が出来ない。
図10は、第1の実施形態における、面積比算出におけるフロック画像のリングライトによる撮像及び同軸落射による撮像の第一の具体例を示す図である。図10は、数十μm〜数百μmの大きさのフロックの写真である。図10(A)の同軸落射照明を用いて撮影された画像では、フロックの輪郭、フロック中固形物、被処理水が明確に識別出来る。一方、図10(B)のリングライト照明を用いて撮影された画像では、フロックの輪郭、フロック中の固形物、被処理水を明確に識別出来ない。
図11は、第1の実施形態における、面積比算出におけるフロック画像のリングライトによる撮像及び同軸落射による撮像の第二の具体例を示す図である。図11は、数百μm〜数mmの大きさのフロックの写真である。図11(A)のリングライト照明を用いて撮影された画像では、フロックの輪郭、固形物、被処理水が明確に識別出来る。一方、図11(B)の同軸落射照明を用いて撮影された画像では、全体が影となり、フロックの輪郭、フロック中の固形物、被処理水を明確に識別出来ない。
このように、フロックの寸法等(例えば、上述した3段階)に応じて、フロックの輪郭、固形物、被処理水を明確に識別するための条件が異なる。なお、光源及び観察方法は、フロックの寸法により適正なものを用いる。
本実施形態では、解析部81は、上述した撮影方法、撮影装置に適した方法を用いて画像処理を行う。
図12は、実施形態における、凝集剤添加量とフロック中のゲル状物に対する固形物の面積比の関係を示した図である。図12(A)は、各凝集剤添加量における、フロックのゲル状物に対する固形物の面積比を示したものである。固形物量に対して凝集剤添加量が不足している場合には、相対的に多い固形物を少量の凝集剤が取り合う形になり、ゲル状物に対する固形物の割合は高くなる。よって固形物の面積比は大きくなる。凝集剤添加量を徐々に増やしていくと、被処理水中に残留する固形物が徐々にゲル状物中に取り込まれていき、ゲル状物に対する固形物の割合が小さくなっていく。さらに凝集剤添加量を増やしていくと、過剰な凝集剤がゲル状物中にとりこまれていき、フロックのゲル状物の割合が増えていくことになり、固形物の割合はさらに小さくなる。このようにフロックのゲル状物に対する固形物の面積比は凝集剤添加量によって変化する。
図12(B)は、各凝集剤添加量における、フロックの外にある固形物の量を示したものである。固形物量に対して凝集剤添加量が不足している場合には、凝集物中に取り込みきれない固形物が被処理中に残留する。凝集剤添加量を徐々に増やしていくと、被処理水中の固形物がフロック中に取り込まれていき、被処理水中に残留する固形物量が減少する。さらに凝集剤添加量を増やしていくと、被処理水中に残留する固形物がほぼ、フロック中に取り込まれ、被処理水中の固形物量の変化は穏やかになっていく。
上記のような密度指標を取得する処理は、撮像部811から送信されるフロックが撮像された画像を表す情報に基づき、算出部82によって実施される。算出部82は、フロックが撮像された画像を処理することで、フロックごとのゲル状物に対する固形物の割合を表す情報を算出する。算出部82は、ゲル状物に対する固形物の割合の平均値を表す情報を制御部83に送信する。また算出部82は、フロックの画像処理において取得したフロックの粒径に関する情報を制御部83に送信する。
制御部83は、上述したように電気泳動の速度の分散値に基づいて、懸濁物やフロックの表面荷電が中和されているか否かを判定する。即ち、制御部83は、電気泳動の速度の分散値又は平均値に基づいて、ゼータ電位が0[mV]付近であるか否かを判定する。その上で、ゲル状物に対する固形物の割合の平均値を表す情報と、予め設定した割合の閾値(第2の閾値)とを比較して、凝集状態に改善の余地があるか否かを判定する。改善の余地があると判定された場合、制御部83はpH調整剤の注入を行ってもよいし、撹拌強度の変更を行ってもよいし、流量を調整することで撹拌時間の調整を行ってもよい。
図13は、第1の実施形態における、凝集剤の注入量と、フロックの電気泳動の速度の分散値及びゲル状物に対する固形物の割合(面積比)との関係を示す図である。横軸は、凝集剤の注入量を示す。上段の縦軸は、ゼータ電位を示す。中段の縦軸は、電気泳動の速度の分散値を示す。下段の縦軸は、フロックのゲル状物に対する固形物の割合(面積比)を示す。電気泳動の速度の分散値は、フロックの表面荷電が中和されていない(ゼータ電位が0[mV]付近でない)場合には、閾値(予め定められた目標値)未満である。閾値は、例えば、着水井10における原水の濁度、色度に基づいて定められる。制御部83は、電気泳動の速度の分散値が閾値以上であるか否かを判定する。
このようにして、表面荷電が中和した状態の凝集剤注入率を分散値と平均値から設定できるのは前述したとおりである。ここで、ゲル状物に対する固形物の割合(面積比)には、これ以上は改善されないという閾値(第2の閾値)が予め設定されてもよい。第2の閾値を設定しておくことで、制御部83は、算出された現在の面積比と第2の閾値とを比較することで、凝集状態に改善の余地が有るか否かを面積比の面から判断することができる。
凝集状態に改善の余地があると判断された場合、制御部83は、まず電気泳動の方向に基づいて薬注操作を選択する。即ち、制御部83は、凝集剤の注入量を変更するか否か又はpH調整剤を混和水に注入するか否かを、電気泳動の方向に基づいて選択する。
制御部83は、凝集剤を連続的に注入する時間ごとの凝集剤の注入量を定める。制御部83は、凝集剤を単発的に注入する時刻ごとの凝集剤の注入量を定めてもよい。
制御部83は、電気泳動の方向が負極方向である(フロックの表面荷電がプラスである)場合、凝集剤の注入量を減少させる。この場合、制御部83は、凝集剤の注入量を減少させることを表す指示情報を調整装置90に送信する。
制御部83は、電気泳動の方向が正極方向である場合(フロックの表面荷電がマイナスである)には、凝集剤の注入量を増加させてもよい。この場合、制御部83は、凝集剤の注入量を増加させることを表す指示情報を調整装置90に送信する。
制御部83は、電気泳動の方向が正極方向である場合には、凝集剤の注入量を増加させる代わりに、pH調整剤を混和水に注入してもよい。この場合、制御部83は、pH調整剤を混和水に注入することを表す指示情報を調整装置90に送信する。
制御部83は、pH調整剤を混和水に注入した場合に必要とされるコストを表す情報と、凝集剤の注入量を増加させた場合に必要とされるコストを表す情報とを取得する。制御部83は、pH調整剤を混和水に注入した場合に必要とされるコストが凝集剤の注入量を増加させた場合に必要とされるコストよりも低い場合には、凝集剤を混和水に注入する代わりにpH調整剤を混和水に注入する。
制御部83は、原水の水質を表す情報を水質計11から取得し、混和水の水質を表す情報を水質計22から取得する。原水又は混和水のpHの値がpH閾値未満である場合、第2形態アルミニウム比率は飽和している。この場合、pH調整剤を混和水に注入しても、フロックの表面荷電を中和させることができない。従って、制御部83は、原水又は混和水のpHの値がpH閾値未満である場合には、pH調整剤を混和水に注入する代わりに凝集剤の注入量を増加させる。
制御部83は、混和水のpHの値が下限値に達している場合、pH調整剤を混和水に注入する代わりに凝集剤の注入量を増加させる。この場合、制御部83は、電気泳動の速度の分散値が閾値(目標値)以上となるまで凝集剤の注入量を増加させる。
制御部83は、電気泳動の方向が正極方向である(フロックの表面荷電がマイナスである)場合、凝集剤の注入量を増加させる代わりにpH調整剤を混和水に注入してもよい。混和水のpHの値は、pH調整剤が注入されることによって低下する。混和水のpHの値が低下した場合、図2に示したように混和水の第2形態アルミニウム比率が上昇する。従って、制御部83は、原水又は混和水のpHの値がpH閾値以上であって、電気泳動の方向が正極方向である場合には、pH調整剤を混和水に注入することによって、フロックの表面荷電を中和させることができる。
制御部83は、着水井10から混和池20に送られる上澄み水の流量を表す情報を、調整装置90から取得してもよい。制御部83は、凝集剤の注入量と被処理水の流量とに基づいて、凝集剤の注入率を定めてもよい。凝集剤の注入率は、例えば、流量と注入量とを加算した結果で注入量を除算した結果を示す値である。制御部83は、凝集剤の注入率に基づいて、凝集剤の注入量を定めてもよい。
制御部83は、上述したように、まず電気泳動の方向に基づいて凝集剤注入量を調整する。次に、制御部83は、ゲル状物に対する固形物の割合(面積比)の現在値と、ゲル状物に対する固形物の割合(面積比)の閾値(第2の閾値)を比較することで、凝集状態に改善の余地があるか否かを面積比の面から判定する。凝集状態に改善の余地があると判定された場合、制御部83は、pH調整剤の注入によりpHを調整していく。このとき、制御部83は、電気泳動の方向による荷電中和状態を維持しながらpHを調整していく。こうすることで、制御部83は、荷電中和状態を維持しながら、凝集状態をさらに良くする注入量を探索していくことができる。
また、制御部83は、pHを調整するだけでなく、撹拌強度の調整や撹拌時間の調整を行ってもよい。なお、どのような調整を行うかの基準は、選択した調整を実施することで増加するコストと、その一方で凝集状態が改善されることで削減されるコスト(例えば、洗浄費の低減や汚泥処分費の低減)とを比較した結果に応じて選択されればよい。
図1に示した記憶部84は、例えば、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)などの不揮発性の記憶媒体(非一時的な記録媒体)を用いて構成される。記憶部84は、例えば、RAM(Random Access Memory)やレジスタなどの揮発性を有する記憶媒体を用いて構成されてもよい。記憶部84は、例えば、ソフトウェア機能部を機能させるためのプログラムを記憶する。記憶部84は、例えば、図4に示したテーブル情報を記憶してもよい。記憶部84は、クラウドコンピューティング技術により複数の装置に分散して情報を記憶するものであってもよい。
調整装置90は、サーバ装置等の情報処理装置である。調整装置90は、制御部83が凝集剤の注入量を減少させることを決定した場合、凝集剤の注入量を減少させることを表す指示情報を制御部83から取得する。調整装置90は、凝集剤の注入量を減少させることを表す指示情報に基づいて凝集剤注入装置70を動作させることによって、凝集剤の注入量を減少させる。
調整装置90は、制御部83が凝集剤の注入量を増加させることを決定した場合、凝集剤の注入量を増加させることを表す指示情報を制御部83から取得する。調整装置90は、凝集剤の注入量を増加させることを表す指示情報に基づいて凝集剤注入装置70を動作させることによって、凝集剤の注入量を増加させる。
調整装置90は、制御部83がpH調整剤を混和水に注入することを決定した場合、pH調整剤を混和水に注入することを表す指示情報を制御部83から取得する。調整装置90は、pH調整剤を混和水に注入することを表す指示情報に基づいてpH調整剤注入装置60を動作させることによって、pH調整剤を混和水に注入する。
調整装置90は、着水井10から混和池20に送られる上澄み水の流量を表す情報を、流量計12から取得してもよい。調整装置90は、取得した上澄み水の流量を表す情報を制御部83に送信してもよい。調整装置90は、凝集剤の注入量と上澄み水の流量とに基づいて、凝集剤の注入率を定めてもよい。調整装置90は、凝集剤の注入率に基づいて、凝集剤の注入量を定めてもよい。
調整装置90は、凝集剤を連続的に注入する時間ごとの凝集剤の注入量を定める。調整装置90は、凝集剤を単発的に注入する時刻ごとの凝集剤の注入量を定めてもよい。
調整装置90は、制御部83が各撹拌装置の回転数を調整することを決定した場合、各撹拌装置に回転数の変更を表す指示情報を制御部83から取得する。調整装置90は、各撹拌装置に回転数の変更を表す指示情報に基づいて撹拌強度制御装置65を動作させることによって、各撹拌装置の回転数を調整する。
調整装置90は、水処理プラント1の運転員による操作を受け付けてもよい。操作は、例えば、凝集剤の注入量を表す情報、pH調整剤の注入量を表す情報を受け付ける操作、各撹拌装置の回転数の変更に関する情報である。調整装置90は、水処理プラント1の運転員による操作に基づいて、凝集剤の注入量を定めてもよい。調整装置90は、水処理プラント1の運転員による操作に基づいて、pH調整剤の注入量を定めてもよい。調整装置90は、水処理プラント1の運転員による操作に基づいて、各撹拌装置の回転数を定めてもよい。なお、調整装置90は、制御部83に代わって、薬注操作を選択してもよい。
次に、凝集制御装置80の動作を説明する。
図14は、第1の実施形態における、凝集制御装置80の第1の動作例を示すフローチャートである。制御部83は、pH調整剤注入装置60がpH調整剤を注入する動作、及び凝集剤注入装置70が凝集剤を混和池20に注入する動作を制御する(ステップS101)。解析部81は、混和池20の被処理水に含まれているフロックの電気泳動の速度を、画像解析によって測定する(ステップS102)。算出部82は、フロックごとの電気泳動の速度を表す情報に基づいて、各フロックの電気泳動の速度の分散値及び平均値を算出する(ステップS103)。
制御部83は、電気泳動の速度の分散値が閾値以上であるか否かを判定する(ステップS104)。電気泳動の速度の分散値が閾値以上である場合(ステップS104:YES)、制御部83は、ステップS101に処理を戻す。電気泳動の速度の分散値が閾値未満である場合(ステップS104:NO)、制御部83は、電気泳動の方向が負極方向又は正極方向のいずれであるかを判定する(ステップS105)。電気泳動の速度の分散値が閾値以上であるか否かの判定は、電気泳動の速度の平均値がゼロ付近か否かの判定に置き換えられてもよい。また、制御部83は、分散値を用いた判定を行うか、又は平均値を用いた判定を行うかを、対象とする原水の水質や水質の変動のスピードに応じて切り替えるように構成されてもよい。
電気泳動の方向が負極方向である場合(ステップS105:負極方向)、制御部83は、凝集剤の注入量を減少させることを表す指示情報を、調整装置90に送信する。調整装置90は、凝集剤の注入量を減少させることを表す指示情報に基づいて、凝集剤の注入量を減少させる(ステップS106)。制御部83は、ステップS101に処理を戻す。
電気泳動の方向が正極方向である場合(ステップS105:正極方向)、制御部83は、pH調整剤を混和水に注入することよりも凝集剤の注入量を増加させることを優先するか否かを判定する(ステップS107)。
凝集剤の注入量を増加させることを優先する場合(ステップS107:YES)、制御部83は、凝集剤の注入量を増加させることを表す指示情報を、調整装置90に送信する。調整装置90は、凝集剤の注入量を増加させることを表す指示情報に基づいて、凝集剤の注入量を増加させ(ステップS108)、ステップS101に処理を戻す。一方、pH調整剤を混和水に注入することを優先する場合(ステップS107:NO)、制御部83は、pH調整剤を混和水に注入することを表す指示情報を、調整装置90に送信する。調整装置90は、pH調整剤を混和水に注入することを表す指示情報に基づいて、pH調整剤の注入量を増加させ(ステップS109)、ステップS101に処理を戻す。
次に、フロックのゲル状と固形物との面積比を測定する(ステップS110)。面積比が予め設定した第2の閾値以下であるかを判定する(ステップS111)。第2の閾値以下でない場合(ステップS111:NO)、その他の操作は加えず、再び電気泳動の測定に戻る。一方、第2の閾値以下である場合(ステップS111:YES)、pH調整剤を混和水に注入する(ステップS112)か、撹拌強度を変更する(ステップS113)か、撹拌時間を変更する(ステップS114)かのいずれかを一つを選択し、その操作を加える。この操作によって、電気泳動による荷電中和状態が変更することも考えられるので、再び電気泳動状態の測定により分散値と平均値から凝集剤注入率を見直していく。
図15は、第1の実施形態における、凝集制御装置80の第2の動作例を示すフローチャートである。図15に示す各処理は、図14において同じ符号が付された処理と同様である。すなわち、第1の動作例が電気泳動速度の分散値に基づく制御(注入量の減少(ステップS106)、注入量の増加(ステップS108)又はpH調整剤の注入(ステップS109))を、フロックの電荷がある程度中和されるまで実行した後に面積比に基づく制御(pH調整剤の注入(ステップS112)、攪拌強度変更(ステップS113)又は攪拌時間変更(ステップS114))を実行したのに対し、第2の動作例は、分散値に基づく制御と面積比に基づく制御とを一連の処理として実行する点で第1の動作例と異なる。
以上のように、第1の実施形態の凝集制御装置80は、算出部82と、制御部83とを持つ。算出部82は、凝集剤が注入された水に含まれているフロックの電気泳動の速度の分散値及び平均値を算出する。さらに、算出部82はフロック中のゲル状物に対する固形物の面積比を算出する。制御部83は、フロックの表面荷電がプラス又はマイナスのいずれであるかを平均値の正負に基づいて判定する。制御部83は、分散値が第1閾値未満でありフロックの表面荷電がマイナスである場合、凝集剤の注入量を増加させる。フロックの表面荷電がプラスである場合、凝集剤の注入量を減少させる。さらに、フロックのゲル状と固形物との面積比が第2の閾値以下である場合、pHを調整するためにpH調整剤の注入を操作する。もしくは、制御部83は、撹拌強度又は撹拌時間を調整する。
第1の実施形態の凝集制御装置80は、上記操作を繰り返すことによって、荷電中和状態を維持しながら、被処理水のpHを密度状態が良好なフロックが形成される状態へと徐々に近づけていくことができる。
第1の実施形態の凝集制御装置80は、凝集剤の注入量が適正であったか否かを評価することができる。即ち、第1の実施形態の凝集制御装置80は、被処理水中のポリマーアルミ比率又はポリマーアルミ量が適正であるか否かを評価することができる。凝集制御装置80は、凝集剤の注入量を評価した結果に基づいて新たな凝集剤の注入量を決定することにより、凝集剤の注入量が不要に増加することを防ぐことができる。
第1の実施形態の凝集制御装置80は、被処理水が撮像された画像からフロックの電気泳動の速度の分散値や平均値、フロック中のゲル状物に対する固形物の面積比を取得することができ、取得したこれらの情報に基づいて凝集剤又はpH調整剤の注入量を制御することにより、凝集剤の注入量が不要に増加してしまうことを抑制することができる。そのため、第1の実施形態の凝集制御装置80は、流動電流値やアルミニウム濃度、ろ過時間指標等を用いずに、被処理水のpHを凝集状態のより良いフロックが形成されるpHに近づけることができる。
(第2の実施形態)
第2の実施形態における凝集制御システムは、アルカリ度調整剤を貯水部に注入する点が、第1の実施形態の凝集制御システムと相違する。第2の実施形態では、第1の実施形態との相違点についてのみ説明する。
図16は、第2の実施形態の水処理プラント1aの構成の具体例を示す図である。水処理プラント1aは、凝集制御システム2a、着水井10、混和池20、フロック形成池30−1〜30−3、沈殿池40及びろ過池50を備える。
凝集制御システム2aは、水処理プラント1aの浄水工程において、貯水部に凝集剤を注入する。図16では、凝集制御システム2aは、混和池20に凝集剤を注入する。凝集制御システム2aは、凝集制御装置80に代えて凝集制御装置80aを備える点、調整装置90に代えて調整装置90aを備える点、アルカリ度調整剤注入装置100、粒径測定装置110、不足判定装置120及び状態検出装置130をさらに備える点で第1の実施形態における凝集制御システム2と異なる。
アルカリ度調整剤注入装置100は、制御部83a又は調整装置90aから取得した指示情報に基づいて、着水井10と混和池20との間の配管(水路)にアルカリ度調整剤を注入する。従って、アルカリ度調整剤注入装置100は、原水によって希釈されたアルカリ度調整剤を、混和池20に注入する。アルカリ度調整剤注入装置100は、例えば、ポンプである。ポンプは電動でもよい。アルカリ度調整剤は、例えば、炭酸ナトリウムである。混和池20では、アルカリ度調整剤によって被処理水のアルカリ度が変化するので、図3に示したように第2形態アルミニウム比率が変化する。
粒径測定装置110は、情報処理装置である。粒径測定装置110は、混和池20の被処理水が撮像された画像情報を撮像部811から取得する。粒径測定装置110は、混和池20の被処理水が撮像された画像情報に基づいて、混和池20の被処理水に含まれているフロックの粒径を測定する。粒径測定装置110は、混和池20の被処理水に含まれているフロックの粒径を表す情報を不足判定装置120に送信する。粒径測定装置110は、フロック形成池30から採取された被処理水が撮像された画像に基づいて、フロック形成池30の被処理水に含まれているフロックの粒径を測定する。
不足判定装置120は、混和池20の被処理水に含まれているフロックの粒径を表す情報を粒径測定装置110から取得する。不足判定装置120は、フロック形成池30の水に含まれているフロックの粒径を表す情報を粒径測定装置110から取得する。
不足判定装置120は、第3形態アルミニウムが不足しているか否かを判定する。例えば、不足判定装置120は、フロック形成池30−3の被処理水に含まれているフロックの粒径が閾値未満である場合、第3形態アルミニウムが不足していると判定する。例えば、不足判定装置120は、混和池20の被処理水に含まれているフロックの粒径とフロック形成池30−3の被処理水に含まれているフロックの粒径との差が閾値以下である場合、第3形態アルミニウムが不足していると判定する。即ち、不足判定装置120は、混和池20の被処理水に含まれているフロックの粒径とフロック形成池30−3の被処理水に含まれているフロックの粒径とがあまり変わらない場合、第3形態アルミニウムが不足していると判定する。
不足判定装置120は、第3形態アルミニウムが不足していると判定した場合、第3形態アルミニウムが不足していることを表す情報を調整装置90aに送信する。不足判定装置120は、不溶性アルミニウムが不足しているか否かを判定してもよい。不足判定装置120は、不溶性アルミニウムが不足していると判定した場合、不溶性アルミニウムが不足していることを表す情報を調整装置90aに送信してもよい。
第3形態アルミニウムが不足していない場合、第3形態アルミニウムが過剰となっている(第3形態アルミニウムが残留している)場合がある。第3形態アルミニウムは、不溶性アルミニウムでもよい。状態検出装置130は、ろ過池50の水位を表す情報を、水位上昇測定装置51から取得する。状態検出装置130は、ろ過池50の水位の上昇速度が閾値以上である場合、ろ過性が不良であると判定する。
状態検出装置130は、ろ過池50におけるろ過時間指標を表す情報をろ過時間指標測定装置42から取得する。状態検出装置130は、ろ過時間指標が閾値以上である場合、ろ過性が不良であると判定する。
状態検出装置130は、ろ過性が不良であると判定した場合、第3形態アルミニウムが過剰となっていることを検出する。状態検出装置130は、第3形態アルミニウムが過剰となっていることを検出した場合、第3形態アルミニウムが過剰となっていることを表す情報を、調整装置90a及び制御部83aに送信する。
凝集制御装置80aは、制御部83に代えて制御部83aを備える点で、第1の実施形態における制御部83と異なる。制御部83aは、第3形態アルミニウムが過剰となっていることを表す情報を、調整装置90aを介して状態検出装置130から取得する。制御部83aは、第3形態アルミニウムが過剰となっていることを表す情報を取得した場合、アルカリ度調整剤を注入することを表す指示情報を、調整装置90aを介してアルカリ度調整剤注入装置100に送信する。制御部83aは、混和水のアルカリ度を上げることによって第2形態アルミニウム比率を上げ、第3形態アルミニウム比率を下げることができる。
制御部83aは、第3形態アルミニウムが不足していることを表す情報を、調整装置90aを介して不足判定装置120から取得する。制御部83aは、第3形態アルミニウムが不足となっていることを表す情報を取得した場合、アルカリ度調整剤を注入することを表す指示情報を、調整装置90aを介してアルカリ度調整剤注入装置100に送信する。制御部83aは、アルカリ度調整剤を注入することによって混和水のアルカリ度を下げる。制御部83aは、混和水のアルカリ度を下げることによって第2形態アルミニウム比率を下げ、第3形態アルミニウム比率を上げることができる。
調整装置90aは、第3形態アルミニウムが過剰となっていることを表す情報を、状態検出装置130から取得する。調整装置90aは、第3形態アルミニウムが過剰となっている(第3形態アルミニウム比率が閾値以上である)ことを表す情報を、制御部83aに送信する。調整装置90aは、第3形態アルミニウムが過剰となっていることを表す情報を取得した場合、アルカリ度調整剤を注入することを表す指示情報を、アルカリ度調整剤注入装置100に送信する。調整装置90aは、混和水のアルカリ度を上げることによって第2形態アルミニウム比率を上げ、第3形態アルミニウム比率を下げることができる。
調整装置90aは、第3形態アルミニウムが不足していることを表す情報を、不足判定装置120から取得する。調整装置90aは、第3形態アルミニウムが不足している(第3形態アルミニウム比率が閾値未満である)ことを表す情報を、制御部83aに送信する。調整装置90aは、第3形態アルミニウムが不足となっていることを表す情報を取得した場合、アルカリ度調整剤を注入することを表す指示情報を、アルカリ度調整剤注入装置100に送信する。調整装置90aは、アルカリ度調整剤を注入することによって混和水のアルカリ度を下げる。調整装置90aは、混和水のアルカリ度を下げることによって第2形態アルミニウム比率を下げ、第3形態アルミニウム比率を上げることができる。
第2の実施形態において、pH調整剤注入装置60は、凝集制御装置80a又は調整装置90aから取得した指示情報に基づいて、混和池20とフロック形成池30との間の配管にpH調整剤をさらに注入する。即ち、pH調整剤注入装置60は、凝集制御装置80a又は調整装置90aから取得した指示情報に基づいて、pH調整剤をフロック形成池30−1に注入する。
第2の実施形態において、凝集剤注入装置70は、凝集制御装置80a又は調整装置90aから取得した指示情報に基づいて、混和池20とフロック形成池30との間の配管に凝集剤をさらに注入する。即ち、凝集剤注入装置70は、凝集制御装置80a又は調整装置90aから取得した指示情報に基づいて、凝集剤をフロック形成池30−1に注入する。
上記の各実施形態における凝集制御システムが有する各機能部(各種装置を含む)の一部又は全部は、水処理プラント側に設置された各設備とネットワークを介して通信可能な装置又はシステムとして構成されてもよい。
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、凝集剤が注入された被処理水に含まれているフロックの電気泳動の速度の分散値及び平均値と、フロック中のゲル状物と固形物との面積比とを算出する算出部と、上記分散値及び平均値に基づいて被処理水に対する凝集剤注入率を調整し、上記面積比に基づいて被処理水のpHを調整する制御部と、を持つことにより、凝集剤の注入量が必要以上に増加してしまうことを抑制することができる。
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。