以下、実施形態の凝集制御装置を、図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1は、水処理システム1aの構成の例を示す図である。水処理システム1aは、固液分離装置を備える設備であれば、特定の設備に限定されない。固液分離装置は、液体に含まれている懸濁物等の固形物を凝集剤によって液体から分離する装置である。水処理システム1aは、例えば、浄水場、製紙工場、食品工場である。水処理システム1aが浄水場である場合、原水は、例えば、河川水、ダム湖水、地下水、雨水、下水である。水処理システム1aが製紙工場又は食品工場である場合、原水は、例えば、工業排水である。以下、水処理システム1aは、一例として浄水場である。
水処理システム1aは、凝集制御システム2aと、各貯水部とを備える。以下、各貯水部は、一例として、着水井10と、混和池20(急速混和池)と、フロック形成池30−1〜30−3と、沈殿池40と、ろ過池50とである。各貯水部のうち、着水井10は、水の流れに関して最も上流に位置する。各貯水部のうち、ろ過池50は、水の流れに関して最も下流に位置する。
着水井10には、原水(被処理水)が送られる。着水井10は、水質計11を備える。水質計11は、原水の水質を測定する。水質は、例えば、濁度、色度、水温、導電率、pH(水素イオン濃度指数)、アルカリ度(酸消費量)である。水質計11は、水質を表す情報を凝集制御システム2aに送信する。着水井10では、植物や土砂が沈殿することによって、土砂等が原水から分離される。着水井10において土砂等が分離された上澄み水は、懸濁物を含む。
着水井10と混和池20との間の配管は、流量計12を備える。流量計12は、着水井10から混和池20に送られる上澄み水の流量を測定する。流量計12は、着水井10から混和池20に送られる上澄み水の流量を表す情報を、凝集制御システム2aに送信する。
凝集制御システム2aは、着水井10と混和池20との間の配管(水路)に、pH調整剤を注入する。pH調整剤の種類には、酸性のpH調整剤と、アルカリ性のpH調整剤とがある。酸性のpH調整剤は、例えば、硫酸、塩酸である。アルカリ性のpH調整剤は、例えば、水酸化ナトリウムである。
混和池20には、上澄み水が着水井10から送られる。凝集制御システム2aは、混和池20の水(混和水)に凝集剤を注入する。凝集剤は、例えば、ポリ塩化アルミニウム(PAC : Poly Aluminum Chloride)、硫酸アルミニウム(硫酸ばんど)である。以下、凝集剤又はpH調整剤等が水に注入される工程を、「薬注工程」という。
混和池20は、撹拌装置21と、pH計22とを備える。撹拌装置21(急速攪拌装置)は、混和池20の水を撹拌する。撹拌装置21は、例えば、フラッシュミキサである。pH計22は、混和池20の水のpHを連続的に測定する。pH計22は、混和池20の水のpHを、予め定められた周期で間欠的に測定してもよい。予め定められた周期は、例えば、10分周期である。pH計22は、混和池20の水のpHの値を表す情報を、凝集制御システム2aに送信する。なお、混和池20の水のpHの値には、上限値が定められていてもよい。
混和池20の水に含まれている懸濁物は、混和池20の水に凝集剤が注入された場合、凝集してフロックとなる。フロックの凝集状態は、凝集剤の注入量(凝集剤量)に応じて異なる。フロックの凝集状態の指標は、例えば、流動電流値、ろ過時間指標(STR : Suction Time Ratio)、複数のフロックの表面荷電の平均値、ゼータ電位である。フロックの凝集状態の指標は、フロックの粒径ごとにフロックを分級した後の処理水におけるアルミニウムの濃度(残留アルミニウム濃度)でもよい。アルミニウムの濃度は、例えば、エリオクロムシアニンレッドを呈色試薬として用いた吸光光度法によって測定される。
懸濁物の表面は、水中ではマイナスに帯電している。凝集剤は、水中ではプラスに帯電している。したがって、凝集剤は懸濁物に付着する。懸濁物に付着した凝集剤は、懸濁物のマイナスの荷電を打ち消すことによって、懸濁物の表面荷電を0mVに近づける。懸濁物の表面荷電が0mVに近づくに従い、ゼータ電位は0mVに近づく。したがって、凝集剤は、懸濁物同士の反発を弱めてフロックの形成を進める。
凝集剤の注入量が過少である場合、懸濁物の表面荷電の平均値がマイナスのまま、懸濁物同士が反発するため、フロックの形成は十分に進まない。凝集剤の注入量が過剰である場合、懸濁物の表面荷電の平均値がプラスになってしまい、懸濁物同士が反発するため、フロックの形成は十分に進まない。凝集剤の注入量が適正である場合、懸濁物の表面荷電が中和して懸濁物同士が互いに引き合うため、フロックの形成が進む。したがって、凝集剤の注入量の適正量は、懸濁物の表面荷電を中和させる(約0mVにする)量である。
凝集剤は、水中では、複数の形態に分かれる。浄水場で多く用いられているアルミニウム系の凝集剤は、PAC(ポリ塩化アルミニウム)と呼ばれる重合体である。PACは、原水に添加された場合、原水の中では、第1形態のアルミニウム(以下、「第1形態アルミニウム」という。)と、第2形態のアルミニウム(以下、「第2形態アルミニウム」という。)と、第3形態のアルミニウム(以下、「第3形態アルミニウム」という。)とが混合された状態に変化する。第1形態アルミニウムと第2形態アルミニウムと第3形態アルミニウムとの混合の比率は、PACが添加された原水の濁度、pH及びアルカリ度等に応じて異なる。
第1形態アルミニウムは、第2形態アルミニウム又は第3形態アルミニウムと比較して小さい構造にPACが変化した形態である。第1形態アルミニウムは、モノマーアルミニウムと呼ばれる。第1形態アルミニウムは、第2形態アルミニウム又は第3形態アルミニウムと比較して凝集反応における寄与が小さい。
第2形態アルミニウムは、PACが多価のイオン性ポリマー化を起こしている状態に変化した形態である。第2形態アルミニウムは、ポリマーアルミニウムと呼ばれる。第2形態アルミニウムは、荷電中和作用に大きく寄与する。
第3形態アルミニウムは、比較的大きいコロイド状のアルミニウムと不溶態のアルミニウムとにPACが変化した形態である。第3形態アルミニウムは、凝集反応における架橋作用に大きく寄与する。したがって、第3形態アルミニウムは、フロックが大きくなって沈降しやすい状態となることに大きく寄与する。第3形態のアルミニウムの量が不十分である場合、荷電中和が良好に進んだとしても架橋作用がうまく働かないため、フロックは大きくならない。フロックが大きくならない場合、フロックが沈降しやすい状態とならないので、原水の濁度はあまり低下しない。
凝集制御システム2aは、凝集剤が注入された混和池20の水(混和水)の一部を採取する。以下、第1形態アルミニウム量と第2形態アルミニウム量と第3形態アルミニウム量との合計量に対する第1形態アルミニウム量の比率を、「第1形態アルミニウム比率」という。以下、第1形態アルミニウム量と第2形態アルミニウム量と第3形態アルミニウム量との合計量に対する第2形態アルミニウム量の比率を、「第2形態アルミニウム比率」という。以下、第1形態アルミニウム量と第2形態アルミニウム量と第3形態アルミニウム量との合計量に対する第3形態アルミニウム量の比率を、「第3形態アルミニウム比率」という。第1形態アルミニウム比率と第2形態アルミニウム比率と第3形態アルミニウム比率とは、例えば、フェロン法によって測定される。
懸濁物の表面荷電を中和させることができる凝集剤の注入量は、原水の水質に応じて異なる。したがって、凝集制御システム2aは、原水の水質に応じて、凝集剤の注入量を定める必要がある。
第2形態アルミニウムは、第1形態アルミニウム、第3形態アルミニウムと比較して、懸濁物の表面荷電を効果的に中和する。したがって、懸濁物や微細なフロック同士は、水中における第2形態アルミニウム比率が高いほど、効果的に凝集する。なお、微細なフロックから大きくなったフロック同士は、水中における第3形態アルミニウム比率が高いほど、効果的に凝集する。
第2形態アルミニウム比率は、懸濁物を含む水の質(水質)に応じて異なる。したがって、凝集制御システム2aは、懸濁物を含む水の質を変化させて水中における第2形態アルミニウム比率を高くすることによって、懸濁物や微細なフロック同士を効果的に凝集させることができる。
図2は、水のpHと第2形態アルミニウム比率との関係を示す図である。横軸はpHを示す。縦軸は第2形態アルミニウム比率を示す。水のpHと第2形態アルミニウム比率との関係は、フェロン法などに基づく測定によって定められる。第2形態アルミニウム比率は、水のpHの値が中性から低くなるほど高くなる。測定されたpHの値がpH閾値未満である場合、第2形態アルミニウム比率は飽和する。すなわち、測定されたpHの値がpH閾値未満である場合、第2形態アルミニウムの増加ポテンシャルは、測定されたpHの値がpH閾値以上である場合と比較して小さい。pH閾値は、測定によって定まる閾値である。
図3は、水のアルカリ度と第2形態アルミニウム比率との関係を示す図である。横軸はアルカリ度を示す。縦軸は第2形態アルミニウム比率を示す。水のアルカリ度と第2形態アルミニウム比率との関係は、フェロン法などに基づく測定によって定められる。第2形態アルミニウム比率は、水のアルカリ度の値が高くなるほど高くなる。測定されたアルカリ度の値がアルカリ度閾値以上である場合、第2形態アルミニウム比率は飽和する。すなわち、測定されたアルカリ度の値がアルカリ度閾値以上である場合、第2形態アルミニウムの増加ポテンシャルは、測定されたアルカリ度の値がアルカリ度閾値未満である場合と比較して小さい。アルカリ度閾値は、測定によって定まる閾値である。
図4は、第1形態アルミニウム比率と第2形態アルミニウム比率と第3形態アルミニウム比率との例を示す図である。図4では、MAn(添字nは、1から12までの任意の整数)は、第1形態アルミニウム比率を示す。PAnは、第2形態アルミニウム比率を示す。CAnは、第3形態アルミニウム比率を示す。第1形態アルミニウム比率MAnと、第2形態アルミニウム比率PAnと、第3形態アルミニウム比率CAnとの合計値は、100%である。
図4では、一例として、pH6.0からpH7.5までについて、第1形態アルミニウム比率と第2形態アルミニウム比率と第3形態アルミニウム比率との例が、pHの値ごとに示されている。図4では、一例として、アルカリ度10mg/lからアルカリ度30mg/lまでについて、第1形態アルミニウム比率と第2形態アルミニウム比率と第3形態アルミニウム比率との例が、アルカリ度の値ごとに示されている。凝集制御システム2aは、図4に示すテーブル情報を、記憶部に記憶してもよい。
図4では、図2に示すように、第2形態アルミニウム比率PA4は、第2形態アルミニウム比率PA1と比較して小さい。図4では、図3に示すように、第2形態アルミニウム比率PA9は、第2形態アルミニウム比率PA1と比較して大きい。図4では、図2及び図3に示すように、第2形態アルミニウム比率PA9は、第2形態アルミニウム比率PA4と比較して大きい。
第3形態アルミニウムは、第2形態アルミニウムによって表面荷電が中和された懸濁物や微細なフロック同士を架橋して、フロックを大きくさせる。
図1に示すフロック形成池30−1〜30−3のうち、フロック形成池30−1は、水の流れに関して最も上流に位置する。フロック形成池30−1〜30−3のうち、フロック形成池30−3は、水の流れに関して最も下流に位置する。
フロック形成池30−1には、混和池20から水が送られる。フロック形成池30−1は、撹拌装置31−1を備える。撹拌装置31−1は、モータに駆動されることによって、フロック形成池30−1の水を撹拌する。撹拌装置31−1は、例えば、フロキュレータである。撹拌装置31−1によって撹拌された水中では、微細なフロックの粒径が大きくなる。
フロック形成池30−2には、フロック形成池30−1から水が送られる。フロック形成池30−2は、撹拌装置31−2を備える。撹拌装置31−2は、モータに駆動されることによって、撹拌装置31−1と比較して弱い力でフロック形成池30−2の水を撹拌する。撹拌装置31−2は、例えば、フロキュレータである。撹拌装置31−2によって撹拌された水中では、フロックの粒径が大きくなる。
フロック形成池30−3には、フロック形成池30−2から水が送られる。フロック形成池30−3は、撹拌装置31−3を備える。撹拌装置31−3は、モータに駆動されることによって、撹拌装置31−2と比較して弱い力でフロック形成池30−3の水を撹拌する。撹拌装置31−3は、例えば、フロキュレータである。撹拌装置31−3によって撹拌された水中では、フロックの粒径が更に大きくなる。これによって、フロック形成池30−3の水中では、フロック形成池30−1の水中と比較して粒径の大きいフロックが形成される。以下、フロック形成池30−1〜30−3に共通する事項については、符号の一部を省略して、「フロック形成池30」と表記する。
沈殿池40には、フロック形成池30−3から水が送られる。沈殿池40では、予め定められた時間以上、水が滞留する。予め定められた時間は、例えば、3時間である。沈殿池40では、フロックが沈殿することによって、フロックが水から分離される。以下、フロックが水から分離される工程を、「分離工程」という。沈殿池40の上澄み水には、オゾン処理及び生物活性炭処理の少なくとも一方が更に施されてもよい。
沈殿池40は、水質計41を備える。水質計41は、沈殿池40の上澄み水の水質(濁度、色度)を測定する。水質計41は、沈殿池40の上澄み水の水質を表す情報を、凝集制御システム2aに送信してもよい。
ろ過池50には、沈殿池40の上澄み水が送られる。ろ過池50は、水位上昇測定装置51を備える。水位上昇測定装置51は、ろ過池50の水位を測定する。水位上昇測定装置51は、異なる時刻に測定された水位に基づいて、水位の上昇を測定してもよい。水位上昇測定装置51は、ろ過池50の水位を表す情報を、凝集制御システム2aに送信してもよい。
ろ過池50は、例えば、砂ろ過装置である。ろ過池50では、沈殿池40から送られた上澄み水が、ろ過される。ろ過池50によってろ過された水(清浄水)は、浄水池に送られる。浄水池では、塩素等よって清浄水に殺菌処理が施される。殺菌処理が施された清浄水は、ろ過池50から住宅等に送られる。
凝集制御システム2aの構成の例を説明する。
凝集制御システム2aは、水処理システム1aの薬注工程において、予め定められた貯水部又は配管(水路)に凝集剤を注入する。図1では、凝集制御システム2aは、混和池20に凝集剤を注入する。凝集制御システム2aは、水処理システム1aの薬注工程において、予め定められた貯水部又は配管(水路)にpH調整剤を注入してもよい。凝集制御システム2aは、pH調整剤注入装置60と、凝集剤注入装置70と、凝集制御装置80aと、調整装置90aとを備える。
pH調整剤注入装置60は、pH調整剤の注入量を表す情報を、調整装置90aから取得する。pH調整剤注入装置60は、酸性又はアルカリ性のいずれのpH調整剤を注入するかを示す情報を、調整装置90aから取得してもよい。
pH調整剤注入装置60は、pH調整剤の注入量を表す情報に基づいて、着水井10と混和池20との間の配管(水路)にpH調整剤を注入する。pH調整剤注入装置60は、例えば、ポンプである。ポンプは、電動でもよい。pH調整剤注入装置60は、アルカリ性のpH調整剤を混和水に注入する場合、pH調整剤の注入量を表す情報に基づいて、水のアルカリ度が20±5mg/l程度となるようにpH調整剤の注入量を調整してもよい。混和池20では、pH調整剤によって水のpHが変化するので、図2に示すように第2形態アルミニウム比率が変化する。pH調整剤注入装置60は、混和池20とフロック形成池30との間の配管(水路)に、pH調整剤を更に注入してもよい。すなわち、pH調整剤注入装置60は、フロック形成池30−1の流入口に、pH調整剤を更に注入してもよい。
凝集剤注入装置70は、凝集剤の注入量を表す情報を、調整装置90aから取得する。凝集剤の注入量を表す情報に基づいて、混和池20の水(混和水)に凝集剤を注入する。凝集剤注入装置70は、例えば、ポンプである。凝集剤注入装置70は、混和池20とフロック形成池30との間の配管(水路)に、凝集剤を更に注入してもよい。すなわち、凝集剤注入装置70は、フロック形成池30−1の流入口に、凝集剤を更に注入してもよい。
凝集制御装置80a(荷電中和到達度評価システム)は、ワークステーション装置、パーソナルコンピュータ装置、サーバ装置等の情報処理装置である。凝集制御装置80aは、混和池20の水に含まれているフロックの電気泳動の速度を、画像解析によって測定する。凝集制御装置80aは、測定された電気泳動の速度に基づいて、凝集剤の注入量とpH調整剤の注入量とを定める。
凝集制御装置80aは、解析部81と、算出部82と、制御部83aと、記憶部84とを備える。解析部81と算出部82と制御部83aとのうち一部または全部は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサが、記憶部84に記憶されたプログラムを実行することにより機能するソフトウェア機能部である。また、これらの機能部のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェア機能部であってもよい。
図1に示す解析部81(画像解析部)は、混和池20の水(混和水)の一部を採取する。解析部81の代わりに水処理システム1aの運転員が、混和池20の水の一部を採取してもよい。採取された混和水(以下、「懸濁液」という。)は、セル(容器)に収容される。懸濁液には、懸濁物や微細なフロックが含まれている。
図5は、懸濁液300を収容するセル200の例を示す図である。セル200は、容器である。セル200の材質は、例えば、ガラスやアクリルなどの透明な材質である。セル200には、2次元の座標軸(x軸及びy軸)が定められている。以下、x軸の正方向の速度は、正値で表される。x軸の負方向の速度は、負値で表される。y軸の正方向の速度は、正値で表される。y軸の負方向の速度は、負値で表される。
セル200は、x軸の正方向の端に負極210を備える。セル200は、x軸の負方向の端に正極220を備える。すなわち、負極210と正極220とは、x軸方向に対向配置されている。負極210と正極220とは、電圧供給部230(電源)に接続されている。電圧供給部230は、負極210と正極220との間に電圧を印加する。電圧は、例えば、10〜20Vである。電圧の印加時間は、例えば、3〜5分間である。
セル200は、懸濁液300(試験水)を収容する。電圧供給部230は、負極210と正極220との間に電圧を印加することによって、懸濁液300に電圧を印加する。表面電荷がマイナスである微細なフロックは、懸濁液300に電圧が印加されている場合、正極220に向かってx軸の負方向に電気泳動する。したがって、表面電荷がマイナスである複数のフロックの電気泳動の速度の平均値は、負値である。
表面電荷がプラスである微細なフロックは、懸濁液300に電圧が印加されている場合、負極210に向かってx軸の正方向に電気泳動する。したがって、表面電荷がプラスである複数のフロックの電気泳動の速度の平均値は、正値である。
表面電荷が中和している微細なフロックは、電圧を印加した場合でも、懸濁液300において浮遊し、漂う。したがって、表面電荷が中和している微細なフロックの電気泳動の方向は、負極210と正極220との間に電圧を印加されている場合でも、一定ではない。よって個々の粒子の速度のばらつきが大きくなり、速度の分散が大きくなる。表面電荷が中和している微細なフロックの電気泳動の速度の分散値は、予め定められた閾値よりも大きい。つまり、電圧を印加した場合における分散値が予め定められた閾値と比較して大きいか否かを確認することによって、表面電荷が中和しているか否かを確認することができる。
図1に示す解析部81(画像解析部)は、光源部810と、撮像部811と、速度測定部812とを備える。光源部810(照明機器)は、光をセル200に照射する。光源部810は、例えば、レーザー光や可視光をセル200に照射する。光源部810は、照射する光の強度や波長を変更してもよい。光源部810から照射された光は、透明なセル200を透過して、撮像部811の光学系に受光される。
撮像部811は、撮像装置である。撮像部811は、懸濁液300の中で電気泳動(移動)しているフロックの表面による散乱光を受光する。撮像部811は、例えば、セル200の透明な側面を通して懸濁液300を撮像できるようにセル200の側面に設置される。撮像部811は、懸濁液300に電圧が印加されている場合、懸濁液300の中で電気泳動している複数のフロックを所定周期で撮像する。所定周期は、例えば、1/3秒周期である。所定周期が1/3秒周期である場合、撮像部811は、1秒間に3フレームの画像を生成する。表面電荷が中和している微細なフロックは、撮像された動画像では、x軸方向のみならず2次元方向に浮遊する。撮像部811は、複数のフロックが撮像された画像を表す情報を、撮像時刻ごとに速度測定部812に送信する。
速度測定部812は、複数のフロックが撮像された画像に対して、ソフトウェアによる画像解析処理を施す。速度測定部812は、撮像された動画像において懸濁液300の中を電気泳動(移動)する複数のフロックの位置を、フロックごとに測定する。速度測定部812は、異なる撮像時刻におけるフロックの位置を測定する。第1撮像時刻と第2撮像時刻との間隔は、例えば、1秒間隔、1/3秒間隔である。速度測定部812は、第1撮像時刻におけるフロックの位置と第2撮像時刻におけるフロックの位置とに基づいて、フロックの電気泳動の速度を測定する。速度測定部812は、複数のフロックについて、フロックごとの電気泳動の速度を測定する。速度測定部812は、フロックごとの電気泳動の速度を表す情報を、算出部82に送信する。
算出部82(分散・平均値算出部)は、フロックごとの電気泳動の速度を表す情報を取得する。算出部82は、フロックごとの電気泳動の速度を表す情報に基づいて、複数のフロックの電気泳動の速度の分散値を算出する。算出部82は、電気泳動の速度の分散値を表す情報を、制御部83aに送信する。算出部82は、フロックごとの電気泳動の速度を表す情報に基づいて、複数のフロックの電気泳動の速度の平均値を算出する。算出部82は、電気泳動の速度の平均値を表す情報を、制御部83aに送信する。
制御部83a(薬注操作算出部)は、電気泳動の速度の分散値を表す情報を、算出部82から取得する。制御部83aは、電気泳動の速度の平均値を表す情報を、算出部82から取得する。制御部83aは、pHの値を表す情報をpH計22から取得する。制御部83aは、電気泳動の速度の分散値に基づいて、懸濁物やフロックの表面荷電が中和されているか否かを判定する。すなわち、制御部83aは、電気泳動の速度の分散値に基づいて、ゼータ電位が0mV付近であるか否かを判定する。
制御部83aは、フロックの表面荷電が中和されている場合にはフロックの形成が進むので、凝集剤の注入量を変更しなくてもよい。制御部83aは、フロックの表面荷電が中和されている場合にはフロックの形成が進むので、pH調整剤を注入しなくてもよい。制御部83aは、フロックの表面荷電が中和されていない場合にはフロックの形成が進まないので、凝集剤の注入量を変更してもよい。制御部83aは、フロックの表面荷電が中和されていない場合にはフロックの形成が進まないので、pH調整剤を注入してもよい。
図6は、凝集剤の注入量とフロックの電気泳動の速度の分散値との関係を示す図である。横軸は、凝集剤の注入量を示す。下段の縦軸は、電気泳動の速度の分散値を示す。上段の縦軸は、ゼータ電位を示す。電気泳動の速度の分散値は、フロックの表面荷電が中和されていない(ゼータ電位が0mV付近でない)場合には、閾値(予め定められた目標値)未満である。閾値は、例えば、着水井10における原水の濁度、色度に基づいて定められる。制御部83aは、電気泳動の速度の分散値が閾値以上であるか否かを判定する。
制御部83aは、電気泳動の速度の分散値が閾値未満である場合、フロックの表面荷電がマイナス又はプラスのいずれであるかを判定する。すなわち、制御部83aは、電気泳動の速度の分散値が閾値未満である場合、電気泳動の方向が正極方向又は負極方向のいずれであるかを判定する。
制御部83a(判定部)は、電気泳動の速度の平均値が負値である場合、フロックの電気泳動の方向が正極220に向かう方向(正極方向)であると判定する。電気泳動の方向が正極方向である場合、フロックの表面荷電はマイナスである。制御部83aは、電気泳動の速度の平均値が正値である場合、フロックの電気泳動の方向が負極210に向かう方向(負極方向)であると判定する。電気泳動の方向が負極方向である場合、フロックの表面荷電はプラスである。
制御部83aは、電気泳動の方向に基づいて薬注操作を選択する。すなわち、制御部83aは、凝集剤の注入量を変更するか又はpH調整剤を混和水に注入するかを、電気泳動の方向に基づいて選択する。
制御部83aは、凝集剤を連続的に注入する時間ごとの凝集剤の注入量を定める。制御部83aは、凝集剤を単発的に注入する時刻ごとの凝集剤の注入量を定めてもよい。
制御部83aは、電気泳動の方向が負極方向である(フロックの表面荷電がプラスである)場合、凝集剤の注入量を減少させる。制御部83aは、凝集剤の注入量を減少させることを選択した場合、凝集剤の注入量を減少させることを表す指示情報を、調整装置90aに送信する。
制御部83aは、電気泳動の方向が正極方向である場合(フロックの表面荷電がマイナスである)には、凝集剤の注入量を増加させてもよい。制御部83aは、凝集剤の注入量を増加させることを選択した場合、凝集剤の注入量を増加させることを表す指示情報を、調整装置90aに送信する。
制御部83aは、電気泳動の方向が正極方向である場合には、凝集剤の注入量を増加させる代わりに、pH調整剤を混和水に注入してもよい。制御部83aは、pH調整剤を混和水に注入することを選択した場合、pH調整剤を混和水に注入することを表す指示情報を、調整装置90aに送信する。
制御部83aは、pH調整剤を混和水に注入した場合に必要とされるコストを表す情報と、凝集剤の注入量を増加させた場合に必要とされるコストを表す情報とを取得する。制御部83aは、pH調整剤を混和水に注入した場合に必要とされるコストが凝集剤の注入量を増加させた場合に必要とされるコストよりも低い場合には、凝集剤を混和水に注入する代わりにpH調整剤を混和水に注入する。
制御部83aは、水質を表す情報を水質計11から取得する。原水又は混和水のpHの値がpH閾値未満である場合、第2形態アルミニウム比率は飽和している。制御部83aは、第2形態アルミニウム比率が飽和している場合にpH調整剤を混和水に注入しても、フロックの表面荷電を中和させることができない。したがって、制御部83aは、原水又は混和水のpHの値がpH閾値未満である場合には、pH調整剤を混和水に注入する代わりに凝集剤の注入量を増加させる。
制御部83aは、混和水のpHの値が下限値に達している場合、pH調整剤を混和水に注入する代わりに凝集剤の注入量を増加させる。制御部83aは、凝集剤の注入量を増加させることを選択した場合、電気泳動の速度の分散値が閾値(目標値)以上となるまで凝集剤の注入量を増加させる。
制御部83aは、電気泳動の方向が正極方向である(フロックの表面荷電がマイナスである)場合、凝集剤の注入量を増加させる代わりにpH調整剤を混和水に注入することを選択してもよい。混和水のpHの値は、制御部83aがpH調整剤を混和水に注入することによって低下する。混和水のpHの値が低下した場合、図2に示すように混和水の第2形態アルミニウム比率は上昇する。したがって、制御部83aは、原水又は混和水のpHの値がpH閾値以上であって、電気泳動の方向が正極方向である場合には、pH調整剤を混和水に注入(添加)することによって、フロックの表面荷電を中和させることができる。
制御部83aは、着水井10から混和池20に送られる上澄み水の流量を表す情報を、調整装置90aから取得してもよい。制御部83aは、凝集剤の注入量と流量を表す情報とに基づいて、凝集剤の注入率を定めてもよい。凝集剤の注入率は、例えば、流量と注入量とを加算した結果で注入量を除算した結果を示す値である。制御部83aは、凝集剤の注入率に基づいて、凝集剤の注入量を定めてもよい。
図1に示す記憶部84は、例えば、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)などの不揮発性の記憶媒体(非一時的な記録媒体)を有する。記憶部84は、例えば、RAM(Random Access Memory)やレジスタなどの揮発性の記憶媒体を有していてもよい。記憶部84は、例えば、ソフトウェア機能部を機能させるためのプログラムを記憶する。記憶部84は、例えば、図4に示すテーブル情報を記憶してもよい。記憶部84は、クラウドコンピューティング技術によって、複数の装置の記憶部に分散して情報を記憶してもよい。
調整装置90aは、サーバ装置等の情報処理装置である。調整装置90aは、凝集剤の注入量を減少させることを制御部83aが選択した場合、凝集剤の注入量を減少させることを表す指示情報を、制御部83aから取得する。調整装置90aは、凝集剤の注入量を減少させることを表す指示情報に基づいて凝集剤注入装置70を動作させることによって、凝集剤の注入量を減少させる。
調整装置90aは、凝集剤の注入量を増加させることを制御部83aが選択した場合、凝集剤の注入量を増加させることを表す指示情報を、制御部83aから取得する。調整装置90aは、凝集剤の注入量を増加させることを表す指示情報に基づいて凝集剤注入装置70を動作させることによって、凝集剤の注入量を増加させる。
調整装置90aは、pH調整剤を混和水に注入することを制御部83aが選択した場合、pH調整剤を混和水に注入することを表す指示情報を、制御部83aから取得する。調整装置90aは、pH調整剤を混和水に注入することを表す指示情報に基づいてpH調整剤注入装置60を動作させることによって、pH調整剤を混和水に注入する。
調整装置90aは、着水井10から混和池20に送られる上澄み水の流量を表す情報を、流量計12から取得してもよい。調整装置90aは、着水井10から混和池20に送られる上澄み水の流量を表す情報を、制御部83aに送信してもよい。調整装置90aは、凝集剤の注入量と流量を表す情報とに基づいて、凝集剤の注入率を定めてもよい。調整装置90aは、凝集剤の注入率に基づいて、凝集剤の注入量を定めてもよい。
調整装置90aは、凝集剤を連続的に注入する時間ごとの凝集剤の注入量を定める。調整装置90aは、凝集剤を単発的に注入する時刻ごとの凝集剤の注入量を定めてもよい。
調整装置90aは、水処理システム1aの運転員による操作を受け付けてもよい。操作は、例えば、凝集剤の注入量を表す情報、pH調整剤の注入量を表す情報を受け付ける操作である。調整装置90aは、水処理システム1aの運転員による操作に基づいて、凝集剤の注入量を定めてもよい。調整装置90aは、水処理システム1aの運転員による操作に基づいて、pH調整剤の注入量を定めてもよい。なお、調整装置90aは、制御部83aに代わって、薬注操作を選択してもよい。
次に、凝集制御装置80aの動作を説明する。
図7は、凝集制御装置80aの動作の例を示すフローチャートである。制御部83aは、pH調整剤及び凝集剤を混和池20に注入する(ステップS101)。解析部81は、混和池20の水に含まれているフロックの電気泳動の速度を、画像解析によって測定する(ステップS102)。算出部82は、フロックごとの電気泳動の速度を表す情報に基づいて、複数のフロックの電気泳動の速度の分散値及び平均値を算出する(ステップS103)。
制御部83aは、電気泳動の速度の分散値が閾値以上であるか否かを判定する(ステップS104)。電気泳動の速度の分散値が閾値以上である場合(ステップS104:YES)、制御部83aは、ステップS101に処理を戻す。電気泳動の速度の分散値が閾値未満である場合(ステップS104:NO)、制御部83aは、電気泳動の方向が負極方向又は正極方向のいずれであるかを判定する(ステップS105)。
電気泳動の方向が負極方向である場合(ステップS105:負極方向)、制御部83aは、凝集剤の注入量を減少させることを表す指示情報を、調整装置90aに送信する。調整装置90aは、凝集剤の注入量を減少させることを表す指示情報に基づいて、凝集剤の注入量を減少させる(ステップS106)。制御部83aは、ステップS101に処理を戻す。
電気泳動の方向が正極方向である場合(ステップS105:正極方向)、制御部83aは、pH調整剤を混和水に注入することよりも凝集剤の注入量を増加させることを優先するか否かを判定する(ステップS107)。
凝集剤の注入量を増加させることを優先する場合(ステップS107:YES)、制御部83aは、凝集剤の注入量を増加させることを表す指示情報を、調整装置90aに送信する。調整装置90aは、凝集剤の注入量を増加させることを表す指示情報に基づいて、凝集剤の注入量を増加させる(ステップS108)。
pH調整剤を混和水に注入することを優先する場合(ステップS107:NO)、制御部83aは、pH調整剤を混和水に注入することを表す指示情報を、調整装置90aに送信する。調整装置90aは、pH調整剤を混和水に注入することを表す指示情報に基づいて、pH調整剤を注入する(ステップS109)。
以上のように、第1の実施形態の凝集制御装置80aは、算出部82と、制御部83aとを持つ。算出部82は、凝集剤が注入された水に含まれている複数のフロックの電気泳動の速度の分散値及び平均値を算出する。制御部83aは、フロックの表面荷電がプラス又はマイナスのいずれであるかを平均値の正負に基づいて判定する。制御部83aは、分散値が第1閾値未満でありフロックの表面荷電がマイナスである場合、pH調整剤を水に注入する。
これによって、第1の実施形態の凝集制御装置80aは、凝集剤の注入量が不要に増加することを防ぐことができる。
第1の実施形態の凝集制御装置80aは、第2形態アルミニウム比率が高くなるように調整された高価な凝集剤を混和水に注入する場合と比較して、精度のよい薬注操作が可能であるため、凝集剤の注入量が不要に増加することを防ぐことができる。
第1の実施形態の凝集制御装置80aは、凝集剤の注入量が適正であったか否かを評価することができる。すなわち、第1の実施形態の凝集制御装置80aは、水中のポリマーアルミ比率又はポリマーアルミ量が適正であるか否かを評価することができる。凝集制御装置80aは、凝集剤の注入量を評価した結果に基づいて、凝集剤の注入量が不要に増加することを防ぐことができる。
制御部83aは、水におけるpHの値が第2閾値未満である場合、pH調整剤を水に注入する代わりに凝集剤の注入量を増加させることを選択してもよい。制御部83aは、分散値が第1閾値未満でありフロックの表面荷電がプラスである場合、凝集剤の注入量を減少させることを選択してもよい。算出部82は、複数のフロックが撮像された画像に基づいて測定された電気泳動の速度の分散値及び平均値を算出する。
第1の実施形態の凝集制御装置80aは、流動電流値、ろ過時間指標(STR)又はアルミニウム濃度を用いなくても電気泳動の速度の分散値を用いて、凝集剤の注入量が不要に増加することを防ぐことができる。
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、凝集制御システム2bがアルカリ度調整剤を貯水部に注入する点が、第1の実施形態と相違する。第2の実施形態では、第1の実施形態との相違点についてのみ説明する。
図8は、水処理システム1bの構成の例を示す図である。水処理システム1bは、凝集制御システム2bと、着水井10と、混和池20と、フロック形成池30−1〜30−3と、沈殿池40と、ろ過池50とを備える。
凝集制御システム2bは、水処理システム1bの浄水工程において、貯水部に凝集剤を注入する。図7では、凝集制御システム2bは、混和池20に凝集剤を注入する。凝集制御システム2bは、pH調整剤注入装置60と、凝集剤注入装置70と、凝集制御装置80bと、調整装置90bと、アルカリ度調整剤注入装置100と、粒径測定装置110と、不足判定装置120と、状態検出装置130とを備える。
pH調整剤注入装置60は、制御部83b又は調整装置90bから取得した指示情報に基づいて、混和池20とフロック形成池30との間の配管にpH調整剤を更に注入する。すなわち、pH調整剤注入装置60は、制御部83b又は調整装置90bから取得した指示情報に基づいて、pH調整剤をフロック形成池30−1に注入する。
凝集剤注入装置70は、制御部83b又は調整装置90bから取得した指示情報に基づいて、混和池20とフロック形成池30との間の配管に凝集剤を更に注入する。すなわち、凝集剤注入装置70は、制御部83b又は調整装置90bから取得した指示情報に基づいて、凝集剤をフロック形成池30−1に注入する。
凝集制御装置80bは、ワークステーション装置、パーソナルコンピュータ装置、サーバ装置等の情報処理装置である。凝集制御装置80bは、解析部81と、算出部82と、制御部83bと、記憶部84とを備える。
制御部83bは、第3形態アルミニウムが過剰となっていることを表す情報を、調整装置90bを介して状態検出装置130から取得する。制御部83bは、第3形態アルミニウムが過剰となっていることを表す情報を取得した場合、アルカリ度調整剤を注入することを表す指示情報を、調整装置90bを介してアルカリ度調整剤注入装置100に送信する。制御部83bは、混和水のアルカリ度を上げることによって第2形態アルミニウム比率を上げて、第3形態アルミニウム比率を下げることができる。
制御部83bは、第3形態アルミニウムが不足していることを表す情報を、調整装置90bを介して不足判定装置120から取得する。制御部83bは、第3形態アルミニウムが不足となっていることを表す情報を取得した場合、アルカリ度調整剤を注入することを表す指示情報を、調整装置90bを介してアルカリ度調整剤注入装置100に送信する。制御部83bは、アルカリ度調整剤を注入することによって混和水のアルカリ度を下げる。制御部83bは、混和水のアルカリ度を下げることによって第2形態アルミニウム比率を下げて、第3形態アルミニウム比率を上げることができる。
調整装置90bは、第3形態アルミニウムが過剰となっていることを表す情報を、状態検出装置130から取得する。調整装置90bは、第3形態アルミニウムが過剰となっている(第3形態アルミニウム比率が閾値以上である)ことを表す情報を、制御部83bに送信する。調整装置90bは、第3形態アルミニウムが過剰となっていることを表す情報を取得した場合、アルカリ度調整剤を注入することを表す指示情報を、アルカリ度調整剤注入装置100に送信する。調整装置90bは、混和水のアルカリ度を上げることによって第2形態アルミニウム比率を上げて、第3形態アルミニウム比率を下げることができる。
調整装置90bは、第3形態アルミニウムが不足していることを表す情報を、不足判定装置120から取得する。調整装置90bは、第3形態アルミニウムが不足している(第3形態アルミニウム比率が閾値未満である)ことを表す情報を、制御部83bに送信する。調整装置90bは、第3形態アルミニウムが不足となっていることを表す情報を取得した場合、アルカリ度調整剤を注入することを表す指示情報を、アルカリ度調整剤注入装置100に送信する。調整装置90bは、アルカリ度調整剤を注入することによって混和水のアルカリ度を下げる。調整装置90bは、混和水のアルカリ度を下げることによって第2形態アルミニウム比率を下げて、第3形態アルミニウム比率を上げることができる。
アルカリ度調整剤注入装置100は、制御部83b又は調整装置90bから取得した指示情報に基づいて、着水井10と混和池20との間の配管(水路)にアルカリ度調整剤を注入する。したがって、アルカリ度調整剤注入装置100は、原水によって希釈されたアルカリ度調整剤を、混和池20に注入する。アルカリ度調整剤注入装置100は、例えば、ポンプである。ポンプは、電動でもよい。アルカリ度調整剤は、炭酸ナトリウムである。混和池20では、アルカリ度調整剤によって水のアルカリ度が変化するので、図3に示すように第2形態アルミニウム比率が変化する。
粒径測定装置110は、情報処理装置である。粒径測定装置110は、混和池20の水に含まれているフロックが撮像された画像情報を、撮像部811から取得する。粒径測定装置110は、混和池20の水に含まれているフロックが撮像された画像情報に基づいて、混和池20の水に含まれているフロックの粒径を測定する。粒径測定装置110は、混和池20の水に含まれているフロックの粒径を表す情報を、不足判定装置120に送信する。粒径測定装置110は、フロック形成池30から採取された水におけるフロックが撮像された画像に基づいて、フロック形成池30の水に含まれているフロックの粒径を測定する。
不足判定装置120は、混和池20の水に含まれているフロックの粒径を表す情報を、粒径測定装置110から取得する。不足判定装置120は、フロック形成池30の水に含まれているフロックの粒径を表す情報を、粒径測定装置110から取得する。
不足判定装置120は、第3形態アルミニウムが不足しているか否かを判定する。例えば、不足判定装置120は、フロック形成池30−3の水に含まれているフロックの粒径が閾値未満である場合、第3形態アルミニウムが不足していると判定する。例えば、不足判定装置120は、混和池20の水に含まれているフロックの粒径とフロック形成池30−3の水に含まれているフロックの粒径との差が閾値以下である場合、第3形態アルミニウムが不足していると判定する。すなわち、不足判定装置120は、混和池20の水に含まれているフロックの粒径とフロック形成池30−3の水に含まれているフロックの粒径とがあまり変わらない場合、第3形態アルミニウムが不足していると判定する。
不足判定装置120は、第3形態アルミニウムが不足していると判定した場合、第3形態アルミニウムが不足していることを表す情報を、調整装置90bに送信する。不足判定装置120は、不溶性アルミニウムが不足しているか否かを判定してもよい。不足判定装置120は、不溶性アルミニウムが不足していると判定した場合、不溶性アルミニウムが不足していることを表す情報を、調整装置90bに送信してもよい。
第3形態アルミニウムが不足していない場合、第3形態アルミニウムが過剰となっている(第3形態アルミニウムが残留している)場合がある。第3形態アルミニウムは、不溶性アルミニウムでもよい。状態検出装置130は、ろ過池50の水位を表す情報を、水位上昇測定装置51から取得する。状態検出装置130は、ろ過池50の水位の上昇速度が閾値以上である場合、ろ過性が不良であると判定する。
状態検出装置130は、ろ過池50におけるろ過時間指標を表す情報を、ろ過時間指標測定装置42(STR測定装置)から取得する。状態検出装置130は、ろ過時間指標が閾値以上である場合、ろ過性が不良であると判定する。
状態検出装置130は、ろ過性が不良であると判定した場合、第3形態アルミニウムが過剰となっていることを検出する。状態検出装置130は、第3形態アルミニウムが過剰となっていることを検出した場合、第3形態アルミニウムが過剰となっていることを表す情報を、調整装置90b及び制御部83bに送信する。
次に、凝集制御装置80bの動作を説明する。
図9は、凝集制御装置80bの動作の例を示すフローチャートである。図8に示すステップS201からステップS209までは、図7に示すステップS101からステップS109までと同じである。
粒径測定装置110は、フロックが撮像された画像情報に基づいて、フロックの粒径を測定する(ステップS210)。不足判定装置120は、フロックの粒径が閾値以上であるか否かを判定する(ステップS211)。フロックの粒径が閾値以上である場合(ステップS211:YES)、制御部83b又は調整装置90bは、薬注操作を選択する(ステップS212)。
pH調整剤の注入を選択した場合(ステップS212:pH調整剤)、制御部83b又は調整装置90bは、pH調整剤注入装置60に指示情報を送信することによって、混和池20とフロック形成池30との間の配管に、pH調整剤を注入する(ステップS213)。pH調整剤を注入した後、制御部83b又は調整装置90bは、ステップS211に処理を戻す。
凝集剤の注入を選択した場合(ステップS212:凝集剤)、制御部83b又は調整装置90bは、凝集剤注入装置70に指示情報を送信することによって、混和池20とフロック形成池30との間の配管に、凝集剤を注入する(ステップS214)。凝集剤を注入した後、制御部83b又は調整装置90bは、ステップS211に処理を戻す。
フロックの粒径が閾値未満である場合(ステップS211:NO)、状態検出装置130は、ろ過池50の水位の上昇速度を検出する。状態検出装置130は、ろ過時間指標を表す情報を、ろ過時間指標測定装置42から取得する(ステップS216)。
状態検出装置130は、ろ過池50の水位の上昇速度又はろ過時間指標が閾値以上であるか否かを判定する。すなわち、状態検出装置130は、ろ過性が不良であるか否かを判定する(ステップS217)。
ろ過池50の水位の上昇速度又はろ過時間指標が閾値以上である場合(ステップS217:YES)、制御部83b又は調整装置90bは、アルカリ度調整剤注入装置100に指示情報を送信することによって、着水井10と混和池20との間の配管にアルカリ度調整剤を注入する(ステップS218)。ろ過池50の水位の上昇速度及びろ過時間指標が閾値未満である場合(ステップS217:NO)、制御部83b及び調整装置90bは、図8に示す処理を終了する。
以上のように、第2の実施形態の制御部83bは、アルカリ度調整剤、凝集剤又はpH調整剤を、フロックの粒径の変化に基づいて水に注入する、
これによって、第2の実施形態の凝集制御装置80aは、凝集剤の注入量が不要に増加することを、より防ぐことができる。
制御部83bは、複数のフロックが撮像された画像に基づいて測定された粒径の変化に基づいて、アルカリ度調整剤、凝集剤又はpH調整剤を水に注入してもよい。制御部83bは、ろ過時間指標、アルミニウムの濃度、ろ過池の水位の上昇に基づいて、アルカリ度調整剤を水に注入してもよい。
第2の実施形態の凝集制御装置80bは、凝集剤の主成分であるアルミニウムが水に残留することを防ぐことができる。第1の実施形態の凝集制御装置80aは、ろ過池50の洗浄コストと凝集剤のコストとが不要に増加することを防ぐことができる。第2の実施形態の凝集制御装置80bは、第3形態アルミニウム量を減量するので、ろ過池50のろ過性能を向上させることができる。
以上述べた少なくともひとつの実施形態によれば、分散値が第1閾値未満でありフロックの表面荷電がマイナスである場合、pH調整剤を水に注入する制御部を持つことにより、凝集剤の注入量が不要に増加することを防ぐことができる。
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。