JP2023039098A - 薬注率の補正方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】浄水場等で行われる凝集沈澱処理に使用される凝集剤の適正濃度を、原水の水質変動に応じて連続的に確認して補正できる薬注率の補正方法を提供する。【解決手段】濁質を含む原水の水質に基づいて凝集剤の第1注入率を算出する第1薬注率算出工程と、原水の流入部と、凝集剤の注入部と、凝集剤と反応後の原水の流出部と、が形成された試験槽に対して、混和池における原水の滞留時間よりも長くなるように原水の一部を連続的に供給した状態で、第1薬注率が範囲に含まれるように設定した少なくとも3水準の薬注率に調整する薬注率調整工程と、3水準の薬注率の其々に対して、試験槽の原水に存在するフロックを、撮像装置を用いて撮像し、得られた各画像に含まれる単位フロックの平均体積に基づいて第2薬注率を算出する第2薬注率算出工程と、第2薬注率により第1薬注率を補正する薬注率補正工程と、を実行する薬注率の補正方法。【選択図】図2
Description
本発明は、薬注率の補正方法に関する。
浄水場や排水処理場では、濁質を含む原水の水質を改善するために凝集剤が用いられ、対象となる原水の水質によって使用される凝集剤の種類や注入率等が調整される。
特許文献1には、時間や場所に関わらず普遍的な制御を可能にし、かつリアルタイムで凝集剤の注入率を制御する方法が提案されている。
当該方法は、原水の水質を測定する水質測定工程と、得られた水質測定値から基礎凝集剤注入率を算出する注入率算出工程と、前記水質測定工程とは独立して、原水に対し凝集剤を注入することにより原水中の粒子の集塊が始まるまでの時間を測定する集塊化開始時間測定工程と、前記集塊化開始時間の測定値と凝集剤注入率との相関をフィッティングラインとして算出する工程と、実施設の集塊化開始時間適正値をフィッティングラインに代入し、推奨凝集剤注入率を決定する推奨凝集剤注入率決定工程であって、前記推奨凝集剤注入率は、最新値に更新されるまで前回値が保持されるようにしてなる推奨凝集剤注入率決定工程と、前記基礎凝集剤注入率と、前記推奨凝集剤注入率との差分から補正値を算出する補正値算出工程と、前記補正値に基づいて、前記基礎凝集剤注入率を補正する注入率補正工程とを含む。
特許文献2には、一本の凝集反応装置の延長上に設置した複数の透過光強度測定装置により連続的に測定された透過光強度変化から、凝集反応の良否の判定と最適凝集剤注入量決定を連続的、自動的に行うことを目的とした最適凝集剤注入量決定方法が提案されている。
当該最適凝集剤注入量決定方法は、濃度の異なる凝集剤と懸濁液との混和液を段階的且つ連続的に作成する第1の段階と、光源部と受光部とから成る複数の透過光強度測定装置とを具備する一本の凝集反応装置中に、凝集剤濃度の異なる所定量の混和液を所定の速度で連続的にポンプ送水し、混合・撹拌し、凝集反応を進行させる第2の段階と、第2の段階の過程で、連続的に透過光強度を測定する第3の段階と、第3の段階で連続的に測定された透過光強度変化から、平均透過光強度およびその振幅を求め、これより凝集・フロック形成速度(以下凝集速度と記す)、フロック径、フロック数を算出する第4の段階と、第4の段階で連続的に算出された凝集速度、フロック径、フロック数、及び、それらの最大値又は最小値に基づき、凝集反応の良否の判定と最適凝集剤注入量を決定する第5の段階とを具備することを特徴とする。
特許文献1に記載された方法を採用する場合には、集塊化開始時間の測定値と凝集剤注入率との相関をフィッティングラインとして算出する工程で、前記フィッティングラインが、原水を試料水として複数個の試験用水槽にそれぞれ所定量採取し、前記試料水に対して、予め設定したそれぞれ異なる凝集剤注入率で凝集剤を注入する凝集剤注入工程と、凝集剤注入後、各試料水内の粒子の集塊が始まるまでの集塊開始時間を試料水ごとに測定する集塊化開始時間測定工程と、試料水ごとに測定された集塊化開始時間と、前記各凝集剤注入率とに基づいて、集塊化開始時間と凝集剤注入率との相関をフィッティングラインとして算出するフィッティングライン算出工程とを実行する必要がある。
しかし、フィッティングライン算出工程における原水の水質変動に適切に対応するためには、予め予測される水質の変動幅を十分にカバーする範囲で集塊化開始時間と凝集剤注入率を測定する必要があり、水質の変動幅のカバー範囲を逸脱した水質の変動に対応できないという不都合や、複数個の試験用水槽にそれぞれ原水を所定量採取するバッチ式の処理となり凝集剤の適正な注入率を連続的に評価することができないという不都合があった。
また、本願発明者らの確認実験によれば、凝集剤注入率が大きくなるに連れて集塊化開始時間が短くなるという傾向が示されており、特許文献1に記載された方法では、最適の凝集剤注入率を見出すのは困難であるということが確認されている。
特許文献2に記載された最適凝集剤注入量決定方法は、凝集剤注入量が最適値に接近するに連れ、凝集反応速度が増大しフロック径(振幅)も増大するが、過剰注入になると凝集反応速度およびフロック径は減少するという経過を辿る、という現象に基づく発明であり、連続的に測定された透過光強度変化から、平均透過光強度およびその振幅を求め、これより凝集速度、フロック径、フロック数を算出し、算出した凝集速度、フロック径、フロック数、及び、それらの最大値又は最小値に基づき、最適凝集剤注入量を決定するものである。
しかし、平均透過光強度およびその振幅に基づいて凝集速度、フロック径、フロック数等を算出するため、算出結果には一定の誤差が含まれ、正確な値を算出することは非常に困難である。そのため、特許文献2に記載された最適凝集剤注入量決定方法を用いて凝集剤注入量の最適値を決定するのは、実際上困難であった。
本発明の目的は、上述した従来技術の問題点に鑑み、浄水場等で行われる凝集沈澱処理に使用される凝集剤の適正濃度を、原水の水質変動に応じて連続的に確認して補正できる薬注率の補正方法を提供する点にある。
上述の目的を達成するため、本発明による薬注率の補正方法の第一の特徴構成は、濁質を含む原水の水質に基づいて凝集剤の注入率を算出する第1薬注率算出工程と、前記原水の流入部と、前記凝集剤の注入部と、前記凝集剤と反応後の前記原水の流出部と、が形成され、前記流入部から前記原水の一部が連続的に供給される所定容量の試験槽に対して、混和池における前記原水の滞留時間よりも長くなるように前記原水の一部を連続的に供給した状態で、前記注入部から前記凝集剤を注入して前記第1薬注率算出工程で算出した第1薬注率が範囲に含まれるように設定した少なくとも3水準の薬注率に調整する薬注率調整工程と、薬注率調整工程で調整された3水準の薬注率の其々に対して、前記試験槽の原水に存在するフロックを撮像装置を用いて撮像し、得られた各画像に含まれる単位フロックの平均体積、平均面積または平均粒径の何れかに基づいて第2薬注率を算出する第2薬注率算出工程と、前記第2薬注率により前記第1薬注率を補正する薬注率補正工程と、を実行する点にある。
第1薬注率算出工程で原水の水質に基づいて適切に算出された第1薬注率により凝集剤を注入する場合、大まかな凝集剤の調整はできるものの、第1薬注率の算出に用いる水質以外の様々な要因により、最適な凝集剤の注入率の調整までには到っていない。そのような場合でも、試験槽に対して混和池における原水の滞留時間よりも長くなるように原水の一部を連続的に供給した状態で、注入部から凝集剤を注入して第1薬注率算出工程で算出した第1薬注率が範囲に含まれるように設定した少なくとも3水準の薬注率に調整する薬注率調整工程を実行し、其々の水準に対して第2薬注率算出工程を実行することで、リアルタイムに適切な第2薬注率を算出することができ、薬注率補正工程で適切な薬注率に補正できるようになる。
第2薬注率算出工程では、試験槽で生じるフロックを撮像装置を用いて撮像した画像から導出される、単位フロックの平均体積、平均面積または平均粒径の何れかに基づいて、濁度と相関を有する適切な第2薬注率を算出することができる。
同第二の特徴構成は、上述の第一の特徴構成に加えて、前記薬注率調整工程は、着水井の原水の一部が前記試験槽に供給される点にある。
試験槽に供給される原水を、凝集剤が添加される前の原水である着水井の原水とすることで、適切な薬注率を算出することができる。
同第三の特徴構成は、上述の第一の特徴構成に加えて、前記薬注率調整工程は、混和池の原水の一部が前記試験槽に供給される点にある。
試験槽に供給される原水は、凝集剤が添加された後の原水である混和池の原水であってもよく、この場合には混和池への凝集剤の供給機構の異常を適切に検知できるようになる。
同第四の特徴構成は、上述の第一から第三の何れかの特徴構成に加えて、前記薬注率調整工程において各水準の薬注率で凝集剤の注入を開始して前記試験槽における前記原水の一部の滞留時間を経過した後に、前記第2薬注率算出工程を実行する点にある。
薬注率を切り替えた後に試験槽における原水の一部の滞留時間(HRT)を経過することで、試験槽の原水に対する薬注率が安定した状態で第2薬注率算出工程を実行することで、精度の良い算出結果が得られる。
同第五の特徴構成は、上述の第一から第四の何れかの特徴構成に加えて、前記第2薬注率算出工程で得られる画像は、前記試験槽の原水にシートレーザー光を照射し、前記シートレーザー光の光路面に存在するフロックを前記光路面に対して交差する方向から撮像装置を用いて撮像することにより得られる画像である点にある。
シートレーザー光源から原水中に照射され、原水中でシート状に広がる照射面を撮像手段により撮像することにより、厚みを限定した領域における原水中のフロックの分布が適切に撮像できる。
以上説明した通り、本発明によれば、浄水場等で行われる凝集沈澱処理に使用される凝集剤の適正濃度を、原水の水質変動に応じて連続的に確認して補正できる薬注率の補正方法を提供することができるようになった。
以下、本発明による凝集剤注入方法の実施形態を説明する。
[浄水場における原水の薬注率管理システムの構成]
図1には、浄水場1における原水の薬注率管理システム10が示されている。
浄水場1は、水源から取水し、沈砂池を経た水を原水として貯留する着水井2と、原水へ凝集剤やpH調整剤等の薬液を注入する薬剤注入装置3と、薬剤が注入された原水を急速攪拌して混和させる混和池4と、緩速撹拌により原水中にフロックを形成させるフロック形成池5(5A,5B)と、集泥設備6を備え懸濁物質やフロックを沈澱させる沈澱池7と、沈澱後の処理水を殺菌処理等の後処理のために取り出す取出設備8等を備えている。
[浄水場における原水の薬注率管理システムの構成]
図1には、浄水場1における原水の薬注率管理システム10が示されている。
浄水場1は、水源から取水し、沈砂池を経た水を原水として貯留する着水井2と、原水へ凝集剤やpH調整剤等の薬液を注入する薬剤注入装置3と、薬剤が注入された原水を急速攪拌して混和させる混和池4と、緩速撹拌により原水中にフロックを形成させるフロック形成池5(5A,5B)と、集泥設備6を備え懸濁物質やフロックを沈澱させる沈澱池7と、沈澱後の処理水を殺菌処理等の後処理のために取り出す取出設備8等を備えている。
取出設備8から取り出された処理水は、必要に応じてろ過池でろ過処理され、さらに塩素注入設備で消毒処理された後に配水池に貯留され、配水池から送水ポンプで需要先に送水される。
薬剤注入装置3は、凝集剤タンク(図示せず)と、凝集剤供給管P1と、凝集剤の注入量を調節可能な薬液注入ポンプPと、pH調整剤タンク(図示せず)と、pH調整剤供給管P2と、pH調整剤の注入量を調整するバルブVと、薬液注入ポンプPの吐出量およびバルブVの開度を調節する制御装置9を備えている。凝集剤として、硫酸アルミニウム(硫酸バンド)、PAC(ポリ塩化アルミニウム)、第二塩化鉄等の無機系凝集剤が好適に用いられる。
薬注率管理システム10は、着水井2に貯留された濁質を含む原水に注入する凝集剤等の注入量を管理するシステムであり、上述した制御装置9と、凝集剤の注入率(以下、「薬注率」と記す。)を算出する薬注率算出装置11を備えている。薬注率算出装置11は、第1薬注率算出部11Aと、第2薬注率算出部11Bとを備えている。そして、薬注率算出装置11で算出した薬注率に基づいて制御装置9が薬注率を調節するように構成されている。
制御装置9は、着水井2に貯留された原水のpH値が予め設定された凝集に好適な範囲に入るように、pHセンサにより検出されたpH値に基づいてpH調整剤の注入量を制御するとともに、薬注率算出装置11により算出された薬注率となるように凝集剤の注入量を制御する。
[薬注率の補正方法の説明]
制御装置9及び薬注率算出装置11により、本発明の薬注率の補正方法が実行される。
以下、具体的に説明する。薬注率の補正方法は、第1薬注率算出工程と、薬注率調整工程と、第2薬注率算出工程と、薬注率補正工程と、を実行するように構成されている。第1薬注率算出工程が第1薬注率算出部11Aで実行され、薬注率調整工程と、第2薬注率算出工程とが第2薬注率算出部11Bで実行され、薬注率補正工程が制御装置9で実行される。
制御装置9及び薬注率算出装置11により、本発明の薬注率の補正方法が実行される。
以下、具体的に説明する。薬注率の補正方法は、第1薬注率算出工程と、薬注率調整工程と、第2薬注率算出工程と、薬注率補正工程と、を実行するように構成されている。第1薬注率算出工程が第1薬注率算出部11Aで実行され、薬注率調整工程と、第2薬注率算出工程とが第2薬注率算出部11Bで実行され、薬注率補正工程が制御装置9で実行される。
第1薬注率算出工程は、着水井2に貯留された濁質を含む原水の水質に基づいて凝集剤の注入率を算出する工程で、濁度計を用いた濁度の測定結果から、第1薬注率を算出する工程である。なお第1薬注率の算出に用いられる原水の水質としては、他にTOC、色度、アルカリ度、水温、アンモニア濃度、電導度、紫外部吸光度などを用いることが可能である。
薬注率調整工程は、原水の流入部及び凝集剤の注入部が下部に形成されるとともに上部に流出部が形成され、流入部から原水の一部が連続的に供給される所定容量の試験槽に対して、混和池における原水の滞留時間よりも長くなるように原水の一部を連続的に供給した状態で、注入部から凝集剤を注入して第1薬注率算出工程で算出した第1薬注率がその範囲に含まれるように設定した少なくとも3水準の薬注率に調整する工程である。
第2薬注率算出工程は、薬注率調整工程で調整された少なくとも3水準の薬注率の其々に対して、試験槽に存在するフロックを、撮像装置を用いて時間を異ならせて撮像し、得られた各画像に含まれる単位フロックの平均体積、平均面積または平均粒径の複数画像平均値の何れかに基づいて第2薬注率を算出する工程である。
なお各画像のばらつきを抑える目的で、時間を異ならせてフロックの画像を複数枚撮像しているが、フロックの画像にばらつきがない場合や一度に広い範囲のフロックを撮像できる場合には、撮像枚数を減らし、あるいは1枚のフロック画像から単位フロックの平均体積、平均面積または平均粒径の何れかを導出してもよい。
薬注率補正工程は、第2薬注率により第1薬注率を補正する工程である。第1薬注率算出工程は、バッチ式で薬注率を算出する時間を要する工程であり、第2薬注率算出工程は、連続式で薬注率を算出する比較的短時間で実行可能な工程である。
第1薬注率算出工程で原水の水質に基づいて適切に算出された第1薬注率に基づいて、制御装置9により凝集剤を注入する場合、大まかな凝集剤の調整はできるものの、第1薬注率の算出に用いる水質以外の様々な要因により、最適な凝集剤の注入率の調整までには到っていない。そのような場合に、従来通りの複数のジャーテスターを用いた最適な注入率の導出では、時間と手間を要することとなる。
薬注率調整工程では、混和池4における原水の滞留時間よりも長くなるように、試験槽に原水の一部を連続的に供給した状態で試験槽内での薬注率を少なくとも3水準のそれぞれに調整され、第2薬注率算出工程では、試験槽に存在するフロックを、撮像装置を用いて時間を異ならせて撮像した複数の画像に対して、各画像に含まれる単位フロックの平均体積、平均面積または平均粒径の複数画像平均値の何れかに基づいて、濁度と相関を有する適切な第2薬注率がリアルタイムで算出される。その結果に基づいて、薬注率補正工程で適切な薬注率に補正される。
薬注率調整工程では、凝集剤が添加される前の原水である着水井2の原水の一部が試験槽に供給されることで適切な薬注率を算出することができる。
なお、薬注率調整工程で、混和池4の原水の一部が試験槽に供給されるように構成してもよく、この場合には混和池4へ凝集剤を供給する供給機構の異常を適切に検知できるようになる。例えば、供給機構の故障により凝集剤の供給が遮断されたような場合や、供給機構の故障により凝集剤の供給量が過剰となった場合に、本来の薬注率に維持されていないことが検出できる。
この場合には、着水井2の原水の一部を試験槽に供給する経路と、混和池4の原水の一部を試験槽に供給する経路を切替可能に構成し、着水井2の原水の一部を試験槽に供給し、供給機構が適切に動作しているか否かを検出する場合に、混和池4の原水の一部を試験槽に供給することが好ましい。
また、薬注率調整工程においては、各水準の薬注率で凝集剤を注入して水理学的滞留時間(以下、「HRT」と記す。)を経過した後に、第2薬注率算出工程を実行することが好ましい。薬注率を切り替えた後にHRTの経過を待つことで、試験槽の原水に対する薬注率が安定した状態で第2薬注率算出工程を実行でき、精度の良い算出結果が得られる。
さらに、第2薬注率算出工程で得られる画像は、試験槽の原水にシートレーザー光を照射し、シートレーザー光の光路面に存在するフロックを光路面に対して交差する方向から撮像装置を用いて撮像することにより得られる画像であることが、原水中のフロックの分布を適切に撮像できるようになる点で好ましい。
[薬注率算出装置の説明]
以下、図2(a),(b)に基づいて、第2薬注率算出部11Bの具体的構成について説明する。
以下、図2(a),(b)に基づいて、第2薬注率算出部11Bの具体的構成について説明する。
第2薬注率算出部11Bは、透明ガラス製あるいは透明樹脂容器である試験槽12と、試験槽12に供給された原水を攪拌するスターラ13と、試験槽12の原水に発生したフロックを撮像する光源・撮像装置14と、画像処理装置15と、演算装置16と、試験制御部17を備えている。
略円筒状の試験槽12は、下部に原水の流入部12A及び凝集剤の注入部12Bが形成されるとともに上部に流出部12Cが形成されている。原水の流入部12Aには、原水供給管P3及び原水供給バルブV1を介して着水井2から流出して混和池4に流入する前の原水、つまりpH調整剤が投入され、且つ凝集剤が投入される前の原水の一部が連続的に供給される。試験槽12に供給された原水は溢流部12Cから試験槽12の外部に溢流する。試験槽12の容量は例えば1Lに設定されており、試験槽12への原水の供給量は試験槽12における原水のHRTが混和池4におけるHRTよりも長くなるように設定されている。
凝集剤の注入部12Bには、凝集剤タンク(図示せず)から凝集剤供給バルブV2を備えた凝集剤供給管P4を介して凝集剤が注入される。試験槽12にはスターラ13により回転駆動される攪拌羽根13Aが配置され、試験槽12に供給された原水及び凝集剤は、スターラ13による急速攪拌により混合される。
試験制御部17により、試験槽12に原水が定量供給され、薬注率が所定値となるように凝集剤が注入され、スターラ13によって急速攪拌された状態で、光源・撮像装置14により、フロックの挙動が所定時間間隔で時系列的に撮像される。
光源・撮像装置14は、シートレーザー光源14Aと、撮像装置14Bとで構成されている。シートレーザー光源14Aは試験槽12に収容された原水を所定高さでシート状かつ水平方向に照射するように設置され、照射方向に沿う水平面と直交する上方から原水を撮像するように撮像装置14Bが設置されている。なお、シートレーザー光源14Aは水平方向に照射する必要はなく、また撮像装置14Bもシートレーザーで照射された面を当該面と交差する方向から撮像すればよい。
つまり、光源・撮像装置14は、シートレーザー光源14Aを原水中に照射するとともに、シートレーザーの光路となるシート状の面を撮像装置14Bにより撮像することにより、フロックを撮像するように構成されている。シートレーザー光源14Aの発光波長は635~690nmの赤色、515~532nmの緑色、360~470nmの青色の何れでも使用でき、白色光レーザーも使用可能である。
画像処理装置15は、光源・撮像装置14により撮像された各画像の濃淡を示す画素値を所定の閾値で二値化処理することで、原水と原水に浮遊するフロック像を区分けする。例えば原水を黒に対応する最小値に、フロックを白に対応する最大値に二値化することにより複数のフロックの各大きさを白の画素数で取得する。その際に、二値化処理した画像を例えば膨張・収縮処理することで境界部分の孤立点のノイズを除去することができる。
画像処理装置15は、二値化された画像毎に画像に含まれる複数のフロックの体積を其々算出して加算し、加算値を各画像に含まれるフロック数で除した単位フロックの平均体積を算出する。さらに画像処理装置15は、画像毎に算出した単位フロックの平均体積を全画像にわたって加算した値を画像数(枚数)で除した複数画像平均値を算出する。
ここで、フロックの体積とは、各画像に含まれる各フロックの画素数から求まる面積に基づいて、各フロックが真円であると仮定した場合の当該真円の半径rを算出し、当該半径rを半径とする真球の体積をいう。
演算装置16は、画像処理装置15により算出された複数画像平均値に基づいて第2薬注率を算出する。なお、複数画像平均値は、各画像に含まれる単位フロックの平均体積に代えて、各画像に含まれる単位フロックの平均面積または平均粒径を採用し、それらの複数画像平均値を採用することも可能である。面積を採用する場合には、フロックの断面積または表面積の何れを採用してもよい。
フロックの面積とは、各画像に含まれる各フロックの画素数から求まる面積、或いは当該面積に基づいて、各フロックが真円であると仮定した場合の当該真円の半径rを半径とする真球の表面積を採用することができ、当該真円の半径rを粒径に採用することができる。
図3には、試験制御部17により制御される試験槽12への原水の供給量と凝集剤の注入量の関係が例示されている。試験制御部17は、時間ΔTに原水の供給量が1Lとなるように原水供給バルブV1の開度を調整するとともに、時間3ΔTの間は試験槽12の凝集剤濃度が一定値となるよう凝集剤供給バルブV2の開度を調整する。
この例では、時刻0から時刻3ΔTまでの間は、凝集剤の濃度が第1水準となるように調整し、時刻3ΔTから時刻6ΔTまでの間は、凝集剤の濃度が第2水準となるように調整し、時刻6ΔTから時刻9ΔTまでの間は、凝集剤の濃度が第3水準となるように調整する。水準数は3に限るものではなく、第1薬注率算出工程で算出した第1薬注率を挟むように設定した少なくとも3水準の薬注率であればよく、3水準以上の薬注率でもよい。原水及び凝集剤が連続して供給されることにより、時刻ΔT以降は試験槽12の流出部12Cから時間ΔT当り1Lの流出水が生じる。
試験制御部17は、この状態で各時間ΔTの間にn枚の画像を撮像するように光源・撮像装置14を制御する。つまり撮像間隔Δtは、ΔT/nとなる。画像処理装置15は、各時間ΔTの間に撮像されたn枚の画像を二値化処理して演算装置16に引き渡す。演算装置16は、n枚の画像の其々に含まれる複数のフロックの体積を算出して加算し、加算値を各画像に含まれるフロック数で除した単位フロックの平均体積を算出し、さらに画像毎に算出した単位フロックの平均体積を全画像にわたって加算した値を画像数(枚数)nで除した複数画像平均値を算出する。
この例では、同水準の薬注率に対して3n枚の画像が撮像されることになるが、薬注率の水準を切り替えた後、切り替え直前の水準の原水が試験槽12から排出されて切り替え後の薬注率で安定する時点、すなわち薬注率を切り替えた後に試験槽12におけるHRTであるΔTを経過した以降の複数枚の画像であればよい。
具体的には第1水準では時刻2ΔT前後の複数枚の画像、第2水準では時刻5ΔT前後の複数枚の画像、第3水準では時刻8ΔT前後の複数枚の画像が、複数画像平均値を算出する対象画像となる。対象画像の枚数はnであってもよい。また、nの値は撮像間隔Δtと時間ΔTにより適宜設定される値である。
演算装置16は、各水準の薬注率に対して求まる複数画像平均値が最大値を示す水準を適正な薬注率、つまり第2薬注率と判定する。例えば、薬注率が第1水準から第3水準に順番に高くなるように設定され、複数画像平均値が第1水準と第3水準で小さく、第2水準で大きくなる場合に、第2水準が適正な薬注率、つまり第2薬注率と判定する。
以下に実験例を説明する。
図4には、ある浄水場における着水井2に貯留された濁質を含む原水であって、pH調整され凝集剤の注入前の原水に対して、第2薬注率算出部11Bで算出された第2薬注率の実験データが示されている。凝集剤として硫酸バンドが使用されている。
図4には、ある浄水場における着水井2に貯留された濁質を含む原水であって、pH調整され凝集剤の注入前の原水に対して、第2薬注率算出部11Bで算出された第2薬注率の実験データが示されている。凝集剤として硫酸バンドが使用されている。
薬注率が24ppm、27ppm、30ppm、33ppm、36ppmの5水準に対して、1L/14分の供給量で容量1Lの試験槽12に原水の一部を連続供給し、42分経過する度に薬注率が次第に大きくなるように凝集剤の注入量を切替えた。第1薬注率算出部11Aで算出された第1薬注率は24ppmから36ppmの間の値である。
光源・撮像装置14を用いて、試験槽12の流出部12Cより僅かに下方位置を水平方向にシートレーザー光を照射して、10秒毎にフロックを撮像した。二値化された画像毎に画像に含まれる複数のフロックの体積を其々算出して加算し、加算値を各画像に含まれるフロック数で除した単位フロックの平均体積を算出すし、さらに画像毎に算出した単位フロックの平均体積を全画像にわたって加算した値を画像数(枚数)で除した複数画像平均値を算出した。
図4(a)には、このような処理を3回連続して繰返して得られた複数画像平均値である平均検出粒子体積が、各処理及び3回の平均に区分けして示されている。図4(b)には、複数画像平均値である平均検出粒子体積が、各水準に区分けして示されている。図4(c)には、3回の処理の平均値である平均検出粒子体積が各水準に区分けして示されるとともに、その際に同じ原水が供給される浄水場において各水準の薬注率で原水を処理した際の取水設備から取り出される処理水の濁度が示されている。
図4(c)に示すように、平均検出粒子体積が最大となる凝集剤の薬注率(濃度)と、処理水の濁度が最小値を示す凝集剤の薬注率(濃度)との間に相関関係があることが確認された。
図5(a),(b),(c)には、複数画像平均値に代えて、単位フロックの平均体積の複数画像合計値、つまり各画像に含まれるフロックの平均体積の合計値を指標とした場合の特性が示され、図6(a),(b),(c)には、複数画像平均値に代えて、各画像に含まれるフロックの総数の画像枚数平均値を指標とした場合の特性が示されている。
各画像に含まれるフロックの平均体積の合計値、各画像に含まれるフロックの総数の画像枚数平均値の何れも、濁度との相関関係がみられないことが判明した。
次に、薬注率を各水準に順次増加させて切替えながら、逐次薬注率の過不足を判定する場合を例示する。図7には、薬注率を24ppm、27ppm、30ppm、33ppm、36ppmの各水準に順次切替えた場合の7分毎の平均検出粒子体積(複数画像平均値)の特性値が示されている。
特性値が薬注率の切り替えの前後で増加する場合には、切り替え前の薬注率では凝集剤が不足していると判定でき、特性値が薬注率の切り替えの前後で減少する場合には、切り替え後の薬注率では凝集剤が過剰であると判定できる。すなわち、この場合は30ppmが最適な薬注率となる。
上述した実施の形態では、試験槽として下部に流入部、上部に流出部を設けた構成を説明したが、試験槽の構成はこの例に限定されるものではなく、試験槽に流入する原水が常時入れ替わる態様であればよい。例えば、試験槽の上部に流入部を設け、下部に流出部を設けた構成、試験槽の下部に流入部と流出部を設けた構成、試験槽の上部に流入部と流出部を設けた構成等を採用することができる。
以上の説明は、本発明による凝集剤注入方法の一例であり、各工程の具体的な態様は本発明の作用効果が奏される範囲で適宜変更設計することが可能であることは言うまでもない。
1:浄水場
2:着水井
3:薬剤注入装置
4:混和池
5:フロック形成池
6:集泥設備
7:沈澱池
8:取出設備
9:制御装置
10:薬注率率管理システム
11:注入率算出装置
11A:第1薬注率算出部
11B:第2薬注率算出部
12:試験槽
12A:原水の流入部
12B:凝集剤の注入部
12C:流出部
13:スターラ
14:光源・撮像装置
15:画像処理装置
16:演算装置
17:試験制御部
2:着水井
3:薬剤注入装置
4:混和池
5:フロック形成池
6:集泥設備
7:沈澱池
8:取出設備
9:制御装置
10:薬注率率管理システム
11:注入率算出装置
11A:第1薬注率算出部
11B:第2薬注率算出部
12:試験槽
12A:原水の流入部
12B:凝集剤の注入部
12C:流出部
13:スターラ
14:光源・撮像装置
15:画像処理装置
16:演算装置
17:試験制御部
Claims (5)
- 濁質を含む原水の水質に基づいて凝集剤の注入率を算出する第1薬注率算出工程と、
前記原水の流入部と、前記凝集剤の注入部と、前記凝集剤と反応後の前記原水の流出部と、が形成され、前記流入部から前記原水の一部が連続的に供給される所定容量の試験槽に対して、混和池における前記原水の滞留時間よりも長くなるように前記原水の一部を連続的に供給した状態で、前記注入部から前記凝集剤を注入して前記第1薬注率算出工程で算出した第1薬注率が範囲に含まれるように設定した少なくとも3水準の薬注率に調整する薬注率調整工程と、
薬注率調整工程で調整された3水準の薬注率の其々に対して、前記試験槽の原水に存在するフロックを撮像装置を用いて撮像し、得られた各画像に含まれる単位フロックの平均体積、平均面積または平均粒径の何れかに基づいて第2薬注率を算出する第2薬注率算出工程と、
前記第2薬注率により前記第1薬注率を補正する薬注率補正工程と、
を実行する薬注率の補正方法。 - 前記薬注率調整工程は、着水井の原水の一部が前記試験槽に供給される請求項1記載の薬注率の補正方法。
- 前記薬注率調整工程は、混和池の原水の一部が前記試験槽に供給される請求項1記載の薬注率の補正方法。
- 前記薬注率調整工程において各水準の薬注率で凝集剤の注入を開始して前記試験槽における前記原水の一部の滞留時間を経過した後に、前記第2薬注率算出工程を実行する請求項1から3の何れかに記載の薬注率の補正方法。
- 前記第2薬注率算出工程で得られる画像は、前記試験槽の原水にシートレーザー光を照射し、前記シートレーザー光の光路面に存在するフロックを前記光路面に対して交差する方向から撮像装置を用いて撮像することにより得られる画像である請求項1から4の何れかに記載の薬注率の補正方法。
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