JP2011067776A - 凝集剤注入制御システム - Google Patents

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Abstract

【課題】フィードバック補正の時間遅れのさらなる短縮が可能で原水が高濁時の場合にも適用可能であり、適正な凝集剤注入量を演算できる凝集剤注入制御システムを提供する。
【解決手段】原水410に凝集剤を注入してフロックを形成する混和池440、沈殿池470、原水センサ420、原水410を採水する第1採水手段610、回転フィルタを有し濁質分級処理水600を得る濁質分級装置580、濁質分級処理水600の上澄み液630を得る凝集試験装置620、混和池440と沈殿池470との間で凝集剤注入水を採水する第2採水手段570、回転フィルタを有しフロック分級処理水550を得るフロック分級装置530、上澄み液濁度センサ640、分級処理水濁度センサ560、注入率演算機能と注入率補正機能を有して凝集剤の注入量を決定する管理手段100、及び薬品注入設備450を制御する浄水処理施設制御手段300を備える。
【選択図】図2

Description

浄水処理施設の監視制御システムに関し、とくに凝集剤の注入量を制御するシステムに関する。
浄水場では、取水した原水に凝集剤を注入することで、原水中の濁質分を凝集させてフロックを形成し、生成したフロックを沈殿池で沈降分離する凝集沈殿処理が実施されている。フロックを沈降分離した沈殿水は、次の浄水施設であるろ過池に導入されて、ろ過される。この凝集沈殿処理では、原水水質に応じて決定される凝集剤注入率が重要である。河川や湖沼などの表流水を原水とする場合、原水水質は気象条件や季節などが要因となり変動するため、設定された濁度以下の上水を得るには、適正な凝集剤注入率または凝集剤注入量を決定できる凝集剤注入制御方法が必要である。
凝集剤注入制御方法には、原水水質(濁度、アルカリ度、pHなど)の計測結果から予め設定した凝集剤注入モデル式に従い凝集剤注入率を演算し、この凝集剤注入率に基づいて凝集剤を注入するフィードフォワード制御がある。しかし、フィードフォワード制御は、原水水質が変動して過去に作成された凝集剤注入モデル式との整合が取れなくなった場合には、凝集剤注入量が不適正となり、凝集不良を引き起こす。この結果、沈殿池の出口での濁度が高くなり、濁度が高い沈殿水がろ過池に導入されるため、ろ過閉塞が起こりやすくなり、ろ過池の逆洗頻度が増加するという課題がある。
フィードフォワード制御に対して、沈殿池出口での濁度の計測結果に基づいて、凝集剤注入量を補正するフィードバック制御がある。フィードバック制御は原水水質が変動しても、その影響が沈殿池出口での濁度の変化として計測されるならば、フィードバックが働くため凝集剤注入量を修正できる。しかし、原水へ凝集剤を注入した結果が、沈殿池出口での濁度として判明するまでに約3〜4時間を要し、注入量の補正に時間遅れが生じる。この時間遅れのために、原水水質が急激に変動した場合は対応が困難である。
フィードフォワード制御とフィードバック制御にはそれぞれ欠点があるため、各制御方式を組み合わせて、まず、原水水質から基本凝集剤注入率を演算し、その演算値を沈殿池出口での濁度を用いて補正するフィードフォワード・フィードバック制御がある。フィードフォワード・フィードバック制御は、フォードフォワード制御と比較して、凝集剤注入モデル式の整合性が取れない場合でもフィードバックが働くため、凝集剤注入量を適正に維持できる。しかし、フィードバック制御の課題である時間遅れは解決されていないため、原水水質が急激に変動する非定常時への対応は、未だ困難である。
フィードバック補正の時間遅れを短縮するために、以下のような技術が提案されている。
たとえば、特許文献1には、混和池から採取した試料に光を照射して電圧信号を計測し、得られた電圧信号を濁度に関する成分と濁質の偏存度、大きさに関する成分に分離し、さらに信号処理することにより、凝集剤注入量を制御する凝集剤注入制御方法が開示されている。
特許文献2には、混和池から採取した試料を凝集監視装置に導入し、処理液の濁度または色度を計測し、計測値を演算して凝集剤注入ポンプを制御する凝集剤注入制御方法が開示されている。
特開平1−139109号公報 特開平5−146608号公報
特許文献1に記載の技術では、濁度と濁質の偏存度および大きさを凝集剤注入量の制御に用いている。濁度と濁質の偏存度および大きさは、凝集剤が注入された原水(以下、「凝集剤注入水」と称する)についてのデータであり、沈殿池出口までに沈降分離する濁質の影響も受けている。そのため、沈殿池出口でのデータを用いる場合と比較して、凝集剤注入量の補正精度は低くなるという課題がある。
特許文献2に記載の技術では、凝集剤を注入して急速攪拌した後の原水を、凝集監視装置に導入し、フロックを成長させ、ろ過し、濁度または色度を計測する。このため、前述した沈殿池出口での濁度を用いるよりは迅速なフィードバック補正が可能なものの、凝集監視装置では実機プラントと同様の操作が必要となるので、依然として補正に時間遅れが生じる。また、これら一連の操作を実行する凝集監視装置は実機プラントと規模および構成が異なるため、凝集剤注入量の補正精度は低くなるという課題がある。
本発明の目的は、上記の課題に対処し、フィードバック補正の時間遅れのさらなる短縮が可能で、原水が高濁時の場合にも適用可能であり、適正な凝集剤注入量を演算できる凝集剤注入制御システムを提供することにある。
本発明者らは上述した目的の達成に向けて、以下のような基本的特徴を備える凝集剤注入制御システムの発明に至った。
原水が導入される着水井と、前記原水に薬品注入設備により凝集剤を注入してフロックを形成させ凝集剤注入水とする混和池と、前記フロックを分離除去する沈殿池およびろ過池とを備える浄水場の凝集剤注入制御システムにおいて、前記原水の水量および少なくとも濁度を含む水質を計測する原水センサと、前記着水井から前記原水を採水する第1採水手段と、前記第1採水手段で採水された前記原水が供給されるろ過槽、前記ろ過槽内に設置されて濁質を分級する回転フィルタ、前記回転フィルタを駆動する駆動部、および前記ろ過槽から前記回転フィルタを通過した水である濁質分級処理水を得るための送水手段を有する濁質分級装置と、前記濁質分級処理水に凝集剤を注入し、上澄み液を得る凝集試験装置と、前記混和池から前記沈殿池の出口までの間のいずれかの箇所で前記凝集剤注入水を採水する第2採水手段と、前記第2採水手段で採水された前記凝集剤注入水が供給されるろ過槽、前記ろ過槽内に設置されて前記フロックを分級する回転フィルタ、前記回転フィルタを駆動する駆動部、および前記ろ過槽から前記回転フィルタを通過した水であるフロック分級処理水を得るための送水手段を有するフロック分級装置と、前記上澄み液の濁度を計測する上澄み液濁度センサと、前記フロック分級処理水の濁度を計測する分級処理水濁度センサと、前記原水センサが計測した前記原水の水質から前記凝集剤の注入率を演算する注入率演算機能、および前記原水の濁度と前記上澄み液の濁度と前記フロック分級処理水の濁度とから前記凝集剤の注入率の補正値を演算して前記凝集剤の注入量を決定する注入率補正機能を有する管理手段と、前記管理手段が決定した前記凝集剤の注入率に基づいて、前記薬品注入設備を制御する浄水処理施設制御手段と、を備える。
着水井にて原水を採水して、濁質分級装置で沈殿水の濁度に影響を与える粒径の小さな濁質を分級することで、凝集不良の影響を考慮した凝集剤注入率の補正が早期に可能となる。
凝集剤が注入された原水を、従来の沈殿池出口よりも早い段階で採水することでフィードバック補正の時間遅れを短縮し、原水水質が変動しても早期に凝集剤注入率の補正が可能となる。
フロック分級装置で沈降性の悪い、粒径の小さなフロックを分級することで、計測対象となるフロック分級処理水(回転フィルタを通過した水)の濁度は沈殿水の濁度との相関が高くなり、従来よりも高精度で凝集剤注入率の補正が可能となる。
フロック分級装置として回転フィルタを用いた場合、回転フィルタの回転数、凝集剤注入水(凝集剤が注入された原水)のろ過槽への流入量(供給量)、およびろ過槽からのフロック分級処理水の吸引量という運転条件の変更が容易で融通性がある。
凝集剤注入水に含まれるフロックの分級処理前後の粒径分布を説明する図である。 本発明の実施例1による凝集剤注入制御システムの構成図である。 実施例1における回転フィルタを用いたフロック分級装置の構成図である。 回転フィルタの回転数と粒径変化率との関係の一例を示す図である。 回転フィルタの回転数と濁度通過率との関係を示す図である。 回転フィルタのフィルタ面近傍のRe数とろ過可能時間との関係を示す図である。 本発明の実施例1における管理手段の構成図である。 本発明の注入率演算機能の処理フローを説明するフローチャートである。 本発明の注入率補正機能の処理フローを説明するフローチャートである。 本発明のΔTu/Tuと補正値Qとの関係を示す図である。 実施例2における回転フィルタを用いたフロック分級装置の構成図である。 実施例3における阻流板を取り付けた場合のろ過槽の説明図である。 実施例3におけるフロック成長部を設けた場合のろ過槽の説明図である。 実施例2におけるフロック分級装置を運転するための制御パターンの例を示す図である。
図1は、凝集剤が注入された原水(以下、「凝集剤注入水」と称する)に含まれるフロックの、分級処理前後の粒子数の分布(粒径分布)例を示す図である。分級処理は、目開き10μmのフィルタを用いたものとしている。図1は、凝集剤注入水を分級処理すると、分級処理前はフロックの粒径分布がAとBのように異なっていても、沈降性の悪い、粒径の小さなフロック(粒径が10μm以下のフロック)がほぼ同量であれば、フィルタを通過した水(以下、「フロック分級処理水」と称する)のフロックの粒径分布は互いに類似の分布(A’とB’)になるということを示している。従って、粒径分布AとBのように分級処理前のフロックの平均粒径が異なっていても、分級処理後に得られるフロック分級処理水のフロックの粒径分布A’とB’とは、類似になる。すなわち、凝集剤注入水に含まれるフロックがどのような粒径分布であっても、凝集剤注入水から沈降性の悪い、粒径の小さなフロックを多く含むフロック分級処理水を得ることができる。
従来技術では、図1に示した凝集剤注入水の粒径分布Aと粒径分布Bのように、沈降性の悪い、粒径の小さなフロック(粒径が10μm以下のフロック)はほぼ同量であるが、フロックの平均粒径が異なる場合には、粒径分布Aの凝集剤注入水と粒径分布Bの凝集剤注入水とで凝集剤注入量を変える制御することもある。たとえば、平均粒径が大きくなると凝集剤注入量を減少させるような注入率式を用いてフィードバック制御をすると、平均粒径が大きい粒径分布Bに対して凝集剤注入量を減少させる制御をすることになる。凝集剤注入量が減少すると、沈降性の悪い、粒径の小さなフロックはさらに増加するため、結果として沈殿水濁度が高くなる可能性がある。
このように従来技術では、沈降性の悪い、粒径の小さなフロックがほぼ同量のため、本来は凝集剤注入量が同じでよい場合にも凝集剤注入量を変える制御をして沈殿水濁度が高くなるという課題がある。
しかし、本発明では沈降性の悪い、粒径の小さなフロックを多く含むフロック分級処理水に注目することで、従来技術の課題を回避することが可能である。
以下、本発明による凝集剤注入制御システムの実施形態について、図面を参照して説明する。本発明による凝集剤注入制御システムは、回転フィルタを用いた濁質分級装置にて、原水を分級して粒径の小さな濁質を多く含む濁質分級処理水を得て、濁質分級処理水をジャーテストして得られた上澄み液の濁度と、凝集剤注入水から沈降性の悪い、粒径の小さなフロックを多く含むフロック分級処理水を得て、フロック分級処理水から得られた水質を凝集剤注入率の補正パラメータとして凝集剤注入制御に用いることを特徴とする。
図2は、本発明による凝集剤注入制御システムの一実施形態を示す図である。実施例1での凝集剤注入制御システム10は、図2に示すように、管理手段100、ネットワーク200、浄水処理施設制御手段300、原水センサ420、薬品注入設備450、フロック分級装置530、分級処理水濁度センサ560、第2採水手段570、濁質分級装置580、第1採水手段610、凝集試験装置であるジャーテスター620、および上澄み液濁度センサ640から構成される。凝集剤注入制御システム10は、後述するように、浄水処理施設400に凝集剤を注入する。
凝集剤注入制御システム10のうち、原水センサ420、薬品注入設備450、フロック分級装置530、分級処理水濁度センサ560、第2採水手段570、濁質分級装置580、第1採水手段610、ジャーテスター620、および上澄み液濁度センサ640は、浄水処理施設400内に設けられる。管理手段100、ネットワーク200、および浄水処理施設制御手段300は、浄水処理施設400内に設けても、浄水処理施設400外に設けてもよい。本実施例では、浄水処理施設400外に設けている。管理手段100と浄水処理施設制御手段300は、ネットワーク200を介して接続され、浄水処理施設制御手段300と浄水処理施設400とは、通信回線を介して接続され、それぞれデータを送受信する。
浄水処理施設400は、上述した原水センサ420、薬品注入設備450、フロック分級装置530、分級処理水濁度センサ560、第2採水手段570、濁質分級装置580、第1採水手段610、ジャーテスター620、および上澄み液濁度センサ640の他に、着水井430、混和池440、フロック形成池460、沈殿池470、ろ過池490、および浄水池510を備える。
浄水処理施設400では、河川、地下水などの水源から取水した原水410を浄水処理し、最終的に得られたろ過水500を、浄水池510から上水520として送水する。
原水410は、まず、着水井430に導入され、その後、混和池440、フロック形成池460、沈殿池470、ろ過池490、浄水池510の順に導入されて、処理される。以下、原水410の処理過程を説明する。
原水410は、水量と水質が原水センサ420により計測され、粒径の大きな砂などが沈降除去された後、着水井430に導入される。
着水井430では、凝集剤の凝集効果を高めるために、図示しない薬品注入設備から原水410に酸剤やアルカリ剤が注入される。
混和池440では、原水410は、薬品注入設備450から凝集剤が注入され、急速攪拌される。急速攪拌により、原水410中の濁質分は凝集してフロックになる。その後、凝集剤が注入された原水410、すなわち凝集剤注入水は、フロック形成池460に導入される。
薬品注入設備450は、浄水処理施設制御手段300に制御され、原水410に凝集剤を注入し、凝集剤の注入量などのプロセスデータを計測する。
フロック形成池460では、凝集剤注入水が緩速攪拌され、フロックの成長が促進される。緩速攪拌された凝集剤注入水は、沈殿池470に導入される。
沈殿池470では、緩速攪拌後の凝集剤注入水のフロックが沈降分離され、除去される。フロックが分離された凝集剤注入水、すなわち沈殿水480は、ろ過池490に導入される。
ろ過池490では、沈殿水480がろ過され、沈殿池470で沈降分離されなかった微細なフロックが分離除去される。ろ過処理された沈殿水480、すなわちろ過水500は、浄水池510に導入される。ろ過水500は、浄水池510から上水520として需要家に給水される。
着水井430にて、原水410の一部はポンプなどの第1採水手段610を介して採水され、濁質分級装置580に導入される。濁質分級装置580の構成は、フロック分級装置530(図3参照)と同様であり、後で詳細に説明する。
濁質分級装置580は、採水された原水410を分級し、濁質分級処理水600を得る。分級を実施した場合、濁質分級処理水600は、原水410と比較して、粒径の小さな濁質の含有比率が高くなり、排水590は、粒径の小さな濁質の含有比率が低くなる。ここで、排水590は通常の排水設備で排水しても、着水井430に返送してもよい。
濁質分級処理水600の吸引量は、計測器の仕様、濁質分級装置580と計測器間の配管を考慮した上で、速やかに計測可能な値とする。濁質分級処理水600の吸引量は後述するプロセスデータベース120に手動入力で格納する。濁質分級処理水600の吸引量を変更すると、回転フィルタ532(図3に記載)を通過するフロック性状が変化するため、一度決定した吸引量は変更しないことが望ましい。また、濁質分級装置580の回転フィルタ532の回転数を変更すると、濁質分級処理水600の吸引量と同様にフロック性状が変化するため、一度決定した回転数は変更しないことが望ましい。
凝集試験装置であるジャーテスター620では、濁質分級処理水600に所定量の凝集剤を注入し、決められた時間と攪拌強度で、急速攪拌−緩速攪拌−静置を行い、上澄み液630の濁度(以下、「上澄み液濁度」と称する。)を得る。ここで、所定量の凝集剤とは、後で説明する式(20)から演算された凝集剤注入率に0〜1の範囲の係数を掛けたものである。
上澄み液630の水質は、上澄み液濁度センサ640により計測される。
混和池440にて、凝集剤注入水の一部はポンプなどの第2採水手段570を介して採水され、フロック分級装置530に導入される。凝集剤注入水の採水場所は、原水410に凝集剤を注入する混和池440の後、沈殿池470の出口までの間ならどこでもよいが、望ましくは、混和池440とフロック形成池460の間から採水する。
図3は、回転フィルタ532を用いたフロック分級装置530の構成を示す図である。また、濁質分級装置580も、フロック分級装置530と同様の構成である。以下では、フロック分級装置530について説明するが、以下の説明は、濁質分級装置580にも適用できる。
フロック分級装置530は、ろ過槽531、回転フィルタ532、回転フィルタ532を駆動する駆動部であるモータ533、およびろ過槽531からフロック分級処理水550を得るための送水手段であるポンプ534から構成される。
図3では、凝集剤注入水をろ過槽531の底部にある供給部から供給し、排水540をろ過槽531の上部にある排水口より排出しているが、供給部および排水口の位置が入れ替わってもよい。ろ過槽531の底部より排水する場合は、ろ過槽531内にフロックが堆積することを防止できる。また、供給部、排水口は1つだけではなく複数にしてもよく、逆洗機能を取り付けてもよい。
ろ過槽531内では、採水した凝集剤注入水が回転フィルタ532により分級処理される。分級処理により、排水540とフロック分級処理水550とが得られる。回転フィルタ532を通過したフロック分級処理水550は、送水手段であるポンプ534により、ろ過槽531の外部へ送水される。
一般にフロックの粒径は1〜100μmとさまざまであるが、沈降性の悪いフロックとは、粒径が50μm以下、とくに15μm以下の小さなフロックである。そのため、フロック分級装置530による分級は、50μm以下、望ましくは5〜15μmの範囲から決定したある粒径以下の小さなフロックを分離する。従って、回転フィルタ532のフィルタ目開きは5〜15μmの範囲とする。
分級を実施した場合、フロック分級処理水550は、凝集剤注入水と比較して、粒径の小さなフロックの含有比率が高くなり、排水540は、粒径の小さなフロックの含有比率が低くなる。排水540は通常の排水設備で排水しても、フロック形成池460に返送してもよい。
フロック分級処理水550の水質は、分級処理水濁度センサ560により計測される。
フロック分級処理水550の吸引量は、計測器の仕様、フロック分級装置530と計測器間の配管を考慮した上で、速やかに計測可能な値とする。フロック分級処理水550の吸引量は後述するプロセスデータベース120に手動入力で格納する。フロック分級処理水550の吸引量を変更すると、回転フィルタ532を通過するフロックの性状が変化するため、一度決定した吸引量は変更しないことが望ましい。
原水410に含まれる濁質とは異なり、凝集剤注入水に含まれるフロックはフロック分級装置530の運転条件によっては、フロック成長/破壊が起こる可能性がある。従って、フロック分級装置530にて凝集剤注入水に含まれるフロックを分級する場合、ろ過槽531および回転フィルタ532の形状と、フロック分級装置530の運転条件とが重要となる。これらは以下の(A)〜(C)の3点を指標として決定する。
(A)粒径変化率
(B)定量分析に必要な量(濁度通過率)
(C)ろ過可能時間
まず、(A)の粒径変化率について説明する。
図4は、ろ過槽531に供給された凝集剤注入水に含まれるフロックを、回転フィルタ532を用いて分級した場合の、回転フィルタ532の回転数と粒径変化率の関係の一例を示す図である。今回の試験条件では、水質が一定の凝集剤注入水を、一定流量でろ過槽531に供給する。また、回転フィルタ532のフィルタ目開きは10μmである。
粒径変化率Pは、凝集剤注入水に含まれるフィルタ目開き以上の大きさのフロックのうち、何%がろ過槽531内の攪拌状態により、フィルタ目開き以下の大きさのフロックまで破壊されたかを示す指標で、以下の式(1)で定義する。
P=(X−X)/(1−X) ・・・(1)
ここで、Xは凝集剤注入水に含まれるフィルタ目開き以下の大きさのフロックの割合、Xは排水540に含まれるフィルタ目開き以下の大きさのフロックの割合である。粒径変化率が正のときはフロック破壊、負のときはフロック成長が起きている。
図4より、ろ過槽531と回転フィルタ532間の距離d(図3参照)が異なると、回転フィルタ532の回転数に対する粒径変化率のピーク位置がずれることがわかる。ろ過槽531と回転フィルタ532間の距離dが2.5mmの場合は回転数が60rpm、距離dが5.0mmの場合は95rpm付近がフロック成長のピークとなる。これは、回転フィルタ532の回転数に応じて、ろ過槽531内の攪拌状態が変化するためである。
ろ過槽531内の攪拌状態は、距離dが2.5mm、5.0mmに対してそれぞれ回転数が60rpm、95rpmで、フロック形成池460内の攪拌状態と同じ状態、つまり、フロック成長を促進させる攪拌状態になったと推測される。
フロック成長のピーク点となる回転フィルタ532の回転数よりも回転数を増大させると、粒径変化率の変化が小さくなり、安定する。これは、ろ過槽531内の攪拌状態がフロック成長のピークとなる攪拌状態からずれ、フロックの成長速度が低下したためと推測される。
以下では、フロック成長のピーク点における回転数を演算する式について、説明する。
回転フィルタ532の回転により生じた回転エネルギーの一部は、ろ過槽531内の凝集剤注入水に運動エネルギーとして与えられる。ろ過槽531内が十分に攪拌されているならば、回転フィルタ532のフィルタ面近傍で凝集剤注入水に与えられた運動エネルギーは、ろ過槽531内で均一となる。従って、ろ過槽531内の凝集剤注入水のエネルギー密度Eと回転エネルギーJは、以下の式(2)で定義される。
∝J/V ・・・(2)
ここで、Vはろ過槽531内の凝集剤注入水の容量であり、ろ過槽531と回転フィルタ532の上下に隙間がないような場合、以下の式(3)で定義される。
V=π(r −r )・h ・・・(3)
ここで、hは回転フィルタ532の高さ、rは回転フィルタ532の半径、rはろ過槽531の半径(内径)である(図3参照)。
フロック成長のピーク点となるろ過槽531内の凝集剤注入水のエネルギー密度は、ろ過槽531と回転フィルタ532の距離dによらず一定と仮定すると、回転フィルタ532の回転により生じる回転エネルギーJと、ろ過槽531の半径r、回転フィルタ532の半径rおよび高さhについて、以下の式(4)の関係が成り立つ。
∝(r −r )・h ・・・(4)
また、回転エネルギーJは、以下の式(5)で定義される。
=I・ω=(1/2)mr ・ω ・・・(5)
ここで、Iは回転モーメント、mは回転フィルタ532の質量、ωは回転フィルタ532の回転数である。式(5)を用いて、式(4)を整理すると、フロック成長のピーク点となる回転フィルタ532の回転数ωについて、以下の式(6)の関係が成り立つ。
ω=k・√{2(r −r )・h/(mr )} ・・・(6)
ここで、kは係数であり、図4のろ過槽531と回転フィルタ532間の距離dが2.5mmのデータからkを演算すると、k=360kg1/2−1/2min−1となる。
フロック成長のピーク点を過ぎて一定となる回転数ωを、フロック成長のピーク点の回転数の2.5倍とすると、以下の式(7)で定義される。
ω=2.5ω ・・・(7)
ここで、式(6)、(7)に、ろ過槽531の半径r=0.045m、回転フィルタ532の半径r=0.040m、回転フィルタ532の高さh=0.10m、回転フィルタ532の質量m=1.0kgを代入すると、フロック成長のピーク点を過ぎて一定となる回転数ωは210rpmとなる。このようにして、回転フィルタ532の回転数の下限値を決定することが可能である。
式(7)は、フロック分級装置530の運転条件(回転フィルタ532の回転数)を決定できる評価式の1つである。
フロック成長のピーク点における回転数を求める式は、式(7)に限定されるものではない。
次に、(B)の定量分析に必要な量である濁度通過率について、説明する。
図5は回転フィルタ532(フィルタ目開き10μm)の回転数と濁度通過率の関係を示す図である。ここで、濁度通過率とは、原水410の濁度Tu(以下、「原水濁度」と称する)とフロック分級処理水550の濁度Tuの比であり、濁度通過率が低いほどフロックが回転フィルタ532を通過できなかったことを示す。濁度通過率は回転フィルタ532の回転数の増大に伴い減少する傾向を示す。
回転フィルタ532の回転数と濁度通過率の関係について、以下の式(8)が成り立つ。
(Tu/Tu×100)=a・exp{−bω} ・・・(8)
ここで、aとbは、ろ過槽531と回転フィルタ532の形状、回転フィルタ532の目開き、および凝集剤注入水の吸引量で決まる定数である。式(8)は以下の式(9)のように整理可能で、式(9)により回転フィルタ532の回転数を演算できる。
ω=(−1/b)・Ln{(1/a)・(Tu/Tu×100)} ・・・(9)
濁度通過率10%を確保したい場合、a=80、b=0.006とすると、回転フィルタ532の回転数は350rpmとなる。このようにして、濁度通過率10%以上を確保できる、回転フィルタ532の回転数の上限値を決定することが可能である。
定量分析に必要な量は、分級処理水濁度センサ560の計測精度およびユーザーが要求する適用範囲(たとえば、原水濁度5〜300度など)により変わるが、式(9)を用いることで、定量分析に必要な量を確保可能な、回転フィルタ532の回転数を演算できる。
式(9)は、フロック分級装置530の運転条件(回転フィルタ532の回転数)を決定できる評価式の1つである。
濁度通過率と回転フィルタ532の回転数との関係に関する式は、式(8)に限定されるものではない。
最後に、(C)のろ過可能時間について、説明する。
図6は、回転フィルタ532のフィルタ面近傍のレイノルズ数(以下、「Re数」と称する)とろ過可能時間との関係を示す図である。回転フィルタ532のフィルタ面近傍のRe数は、以下の式(10)で定義される。
Re=(2rωρ/μ ・・・(10)
ここで、ρは凝集剤注入水の密度、μは凝集剤注入水の粘度である。
図6に示した範囲では、ろ過可能時間はRe数と比例関係にあり、ろ過槽531と回転フィルタ532間の距離dが大きいほど、同回転数におけるろ過可能時間は延びる。これは凝集剤注入水のフロック分級装置530への流入量(供給量)が一定の場合、ろ過槽531と回転フィルタ532間の距離dが大きいほど、ろ過槽531内での凝集剤注入水の滞留時間が大きくなるため、フロックが成長しやすくなる。そして、粒径の大きなフロックは、回転フィルタ532の回転により生じるフィルタ面近傍のせん断力の影響を受け、粒径の小さなフロックよりもフィルタ面から剥離しやすいためと推測される。
ろ過可能時間は、凝集剤注入水の水質、フロック分級装置530の運転条件、およびろ過槽531とフィルタ回転装置の形状に影響される。
図6に示した範囲では、ろ過可能時間はRe数と比例関係がある。また、ろ過槽531と回転フィルタ532間の距離(d=r−r)には、t∝Ln{(r−r)×10}の関係がある。さらに、ろ過可能時間は回転フィルタ532のろ過面積にも比例するはずであり、ろ過面積Aは以下の式(11)で定義される。
A=2πr・h ・・・(11)
他に、原水濁度、凝集剤注入水の吸引量、および回転フィルタ532の目開きも、ろ過可能時間に影響する。従って、ろ過可能時間は、以下の式(12)で定義される。
t=f・Ln{(r−r)×10}・(Re)・(rh)
=f・Ln{(r−r)×10}・(r )・(rh)・ω ・・・(12)
ここで、fは原水濁度、凝集剤注入水の吸引量、および回転フィルタ532の目開きからなる関数であり、f=4f×(ρ/μ)である。
ろ過可能時間60min以上を運転条件にしたい場合、f=2.1×10−4min、ろ過槽531と回転フィルタ532の形状は、ろ過槽531の半径r=0.045m、回転フィルタ532の半径r=0.040m、回転フィルタ532の高さh=0.10m((A)と同様)とすると、回転フィルタ532の回転数は280rpmとなる。このようにして、ろ過時間60min以上を運転条件にしたい場合の、回転フィルタ532の回転数の下限値を決定することが可能である。
式(12)は、フロック分級装置530の運転条件(回転フィルタ532の回転数)を決定できる評価式の1つである。
以上より、(A)〜(C)をすべて満たす運転条件は、回転フィルタ532の回転数が280〜350rpmとなる。とくに、ろ過可能時間を延ばしたい場合、回転フィルタ532の回転数を350rpmでフロック分級装置を運転すればよく、このとき、ろ過可能時間は76minとなる。
図2に戻って、本発明による凝集剤注入制御システム10の説明を続ける。
原水センサ420、分級処理水濁度センサ560、および上澄み液濁度センサ640は水質データを、原水センサ420と薬品注入設備450は水量や凝集剤の注入量などのプロセスデータを、それぞれ計測する。この水質データとプロセスデータは、通信回線を介して浄水処理施設制御手段300に送信される。水質データとして、原水センサ420では水量、濁度、およびアルカリ度が計測され、分級処理水濁度センサ560および上澄み液濁度センサ640では濁度が計測される。
浄水処理施設制御手段300は、薬品注入設備450、フロック分級装置530、濁質分級装置580、およびジャーテスター620を制御するなど、浄水処理施設400の各プロセスの制御を実行する。また、浄水処理施設制御手段300は、管理手段100との間で、ネットワーク200を介して、計測した水質データ、プロセスデータ、および後述する制御データを相互に送受信する。
管理手段100は、たとえばパーソナルコンピュータなどの計算機、およびこの計算機で実行されるソフトウェアからなる。管理手段100は、浄水処理施設制御手段300からネットワーク200を介して水質データとプロセスデータを受信し、受信した水質データとプロセスデータを用いて凝集剤の注入量を演算する。この凝集剤注入量は、制御データとして、浄水処理施設制御手段300にネットワーク200を介して送信される。
ここで、図7を用いて、管理手段100について詳しく説明する。図7は本実施形態における管理手段100の構成図である。管理手段100は、CPU110、プロセスデータベース120、水質データベース130、ネットワークインターフェース(IF)140、およびメモリ150を備えている。
メモリ150には、管理手段100にデータ収集機能151と注入率演算機能152と注入率補正機能153とを持たせるためのプログラムが記憶されている。
CPU110は、このプログラムを実行して、上述の各機能を動作させる。
IF140は、ネットワーク200とのインターフェースであり、ネットワーク200に接続された浄水処理施設制御手段300と情報を通信する働きをする。
プロセスデータベース120には、データ収集機能151が現在および過去において浄水処理施設制御手段300を介して収集したプロセスデータが格納される。具体的には、原水センサ420により計測された水量や、薬品注入設備450により計測された凝集剤注入量、計測周期Δtなどを格納する。また、プロセスデータベース120には、フロック分級装置530および濁質分級装置580の運転条件として、フロック分級装置530の回転フィルタ532の回転数、凝集剤注入水のろ過槽531への流入量(供給量)、ろ過槽からのフロック分級処理水550の吸引量、濁質分級装置580の回転フィルタ532の回転数、原水410のろ過槽531への流入量、および濁質分級処理水600の吸引量が、それぞれ予め設定されて格納される。
水質データベース130には、データ収集機能151が現在および過去において浄水処理施設制御手段300を介して収集した水質データが格納される。具体的には、原水センサ420、分級処理水濁度センサ560、および上澄み液濁度センサ640により計測された濁度およびアルカリ度などが格納される。また、水質データベース130には、後述する処理水濁度の目標値DV、上澄み液の濁度の目標値J、および沈殿水濁度の目標値DVが、それぞれ予め設定されて格納される。
データ収集機能151は、上述したように、浄水処理施設制御手段300を介して、プロセスデータや水質データを収集する。
注入率演算機能152は、水質データから基本凝集剤注入率を演算する。基本凝集剤注入率は、原水410の水質から求められる凝集剤注入率である。図8に、注入率演算機能152の処理フローを示す。
S1で、水質データベース130から原水410の水質データを取得する。この水質データは、原水センサ420により計測された原水410の濁度Tuやアルカリ度ALである。
S2で、式(13)に従い、基本凝集剤注入率Fを演算する。
=a1・Tu a2+a3・ALa4 ・・・(13)
ここで、a1、a2、a3、a4は係数であり、予め基礎試験で定めておく。たとえば、a1=5.5、a2=0.4、a3=−0.55、a4=0.04のとき、原水濁度Tuが100度、アルカリ度ALが35mg/Lであれば、基本凝集剤注入率Fは次式で与えられる。
=5.5・Tu 0.4+(−0.55)・AL0.04=34mg/L ・・・(14)
凝集剤注入率Fは、原水410の水質、水量、および浄水場の仕様により異なるが、少なくとも5〜100mg/Lの範囲であることが望ましい。
基本凝集剤注入率Fを演算する式は、式(13)に限定されるものではない。原水センサ420でアルカリ度、水温、pH、または紫外線吸光度を計測し、その計測値を考慮した式に従って、基本凝集剤注入率Fを演算してもよい。
演算された基本凝集剤注入率Fは、注入率補正機能153に入力され、補正される。
次に、注入率補正機能153の説明をする。図9に、実施例1における注入率補正機能153の処理フローを示す。
S3で、予め設定された処理水濁度の目標値DV(以下、「目標濁度DV」と称する)を水質データベース130から取得する。処理水濁度とは、フロック分級処理水550の濁度のことである。
S4で、水質データベース130から、原水濁度Tuと分級処理水濁度センサ560により計測された処理水濁度Tuとを取得する。
S5で、式(15)に従い、処理水濁度Tuと目標濁度DVとの偏差ΔTuを演算する。
ΔTu=Tu−DV ・・・(15)
S6で、式(16)に従い、偏差ΔTuを用いて基本凝集剤注入率Fの補正値Qを演算する。
=b1・(ΔTu/Tu) ・・・(16)
ここで、b1は係数であり、予め基礎試験で定めておく。図10に、式(16)で表されるΔTu/Tuと補正値Qとの関係を示す。たとえば、b1=30のとき、原水濁度Tuが100度、処理水濁度Tuが20度、および目標濁度DVが5度であれば、補正値Qは次式で与えられる。
=30・(ΔTu/Tu)=4.5mg/L ・・・(17)
補正値Qは、凝集剤注入水の採水位置、フロック分級装置530の仕様、および基本凝集剤注入率Fの演算式の設定により適正値が異なるが、少なくとも−20〜20mg/Lの範囲にあることが望ましい。
S6で補正値Qを演算する式は、式(16)に限定されるものではない。原水センサ420でアルカリ度、水温、pH、または紫外線吸光度を計測し、その計測値を考慮した式に従って、補正値Qを演算してもよい。
S7で、予め設定された上澄み液濁度の目標値J(以下、「目標濁度J」と称する)を水質データベース130から取得する。
S8で、水質データベース130から、上澄み液濁度Tuを取得する。
S9で、式(18)に従い、上澄み液濁度Tuと目標濁度Jとの偏差ΔTuを演算する。
ΔTu=Tu−J ・・・(18)
S10で、式(19)に従い、偏差ΔTuを用いて基本凝集剤注入率Fの補正値Qを演算する。
=b2・ΔTu ・・・(19)
ここで、b2は係数であり、予め基礎試験で定めておく。
補正値Qは、原水410の採水位置、濁質分級装置580の仕様、および基本凝集剤注入率Fの演算式の設定により適正値が異なるが、少なくとも−20〜20mg/Lの範囲にあることが望ましい。
S10で補正値Qを演算する式は、補正値Qを演算する式(16)と同様に、式(19)に限定されるものではない。原水センサ420でアルカリ度、水温、pH、または紫外線吸光度を計測し、その計測値を考慮した式に従って、補正値Qを演算してもよい。
S11で、注入率演算機能152で演算した基本凝集剤注入率Fを取得する。
S12で、式(20)に従い、凝集剤注入率Fを演算する。
=F+Q+Q ・・・(20)
S13で、プロセスデータベース120から原水センサ420により計測された原水410の水量を取得する。
最後に、S14で凝集剤注入量を演算する。凝集剤注入量は、原水410の水量に凝集剤注入率Fを掛けて求められる。
演算された凝集剤注入量は、制御データとして、浄水処理施設制御手段300を介して薬品注入設備450に入力される。薬品注入設備450は、この凝集剤注入量に応じて凝集剤を原水410に注入する。
本発明では、浄水処理施設400のプロセスの早い段階(着水井430およびフロック形成池460の前)で採水するので、注入量の補正の時間遅れが短縮可能であり、原水410の水質が変動しても早期に基本凝集剤注入率Fの補正が可能となる。
また、フロック分級装置530により沈降性の悪い、粒径の小さなフロックを分級することで、計測対象となるフロック分級処理水550の濁度Tuは沈殿水480の濁度Tuとの相関が高くなり、従来よりも高精度で補正値Qの決定が可能となる。
さらに、濁質分級装置580により沈殿水480の濁度Tuに影響を与える粒径の小さな濁質を分級することで、凝集不良の影響を考慮した補正値Qの決定が可能となる。
フロック分級装置として回転フィルタを用いた場合、液体サイクロン、沈降分離装置、浮上分離装置などを用いた他の分級方法と比較して、運転条件(回転フィルタの回転数、凝集剤注入水のろ過槽への流入量、およびろ過槽からのフロック分級処理水の吸引量)の変更が容易で融通性がある。
以上のようにして求めた補正値QおよびQが正偏差(Q>0、Q>0)の場合は不足分の凝集剤を追加注入し、負偏差(Q<0、Q<0)の場合は過剰な凝集剤注入を抑制することで、沈殿池出口での沈殿水濁度を、予め設定された沈殿池出口での沈殿水濁度の目標値DVに維持することが可能である。また、負偏差の場合には、過剰な凝集剤注入を抑制できるので、コスト低減に寄与することも可能である。
偏差ΔTuの演算としては式(15)以外にも、凝集剤注入水が沈殿池出口に到達した時の濁度Tu cal(以下、「予測沈殿水濁度Tu cal」と称する)を予測し、予測した濁度に基づいて凝集剤注入量を求めてもよい。この場合、図9のS5の前で式(21)に従い、処理水濁度Tuより、予測沈殿水濁度Tu calを演算する。
Tu cal=c1・(Tuc2+c3 ・・・(21)
ここで、c1、c2、c3は係数であり、予め基礎試験で定めておく。予測沈殿水濁度Tu calを演算する式も式(19)に限定されるものではない。原水センサ420でアルカリ度や水温やpHなどを計測し、その計測値を考慮した式に従って、予測沈殿水濁度Tu calを演算してもよい。
そして、S5で、式(22)に従い、予測沈殿水濁度Tu calと目標濁度DVとの偏差ΔTuを演算する。
ΔTu=Tu cal−DV ・・・(22)
S5で偏差ΔTuを演算した以降は、上述したS6〜S10と同様の処理を行うことになる。
予測沈殿水濁度Tu calを用いると、浄水場で一般的に目標値として設定されることが多い沈殿水濁度を、偏差ΔTuの演算に用いているので、作業者が水質状況を把握しやすいという利点がある。
実施例2は、実施例1の凝集剤注入制御システムにおいて、フロック分級装置530のろ過槽531内で凝集剤注入水に含まれるフロックを成長させた後、回転フィルタ532にて分級する場合の例である。凝集剤注入制御システム10の構成や処理は実施例1と同様だが、フロック分級装置530の構成と運転方法が異なる。
図11は、実施例2のフロック分級装置530の構成図である。図11において、図3(実施例1のフロック分級装置)と同一の符号は、実施例1と同一または対応する要素を示す。本実施例のフロック分級装置530は、実施例1のフロック分級装置と同様に回転フィルタ532を用いている。また、本実施例のフロック分級装置530は、電磁弁535が凝集剤注入水の供給部に取り付けられており、浄水処理施設制御手段300にて電磁弁535を閉じることで、ろ過槽531への凝集剤注入水の連続的な流入を止め、バッチ運転とすることが可能となる。
実施例2の場合、プロセスデータベース120には、浄水処理施設制御手段300にてフロック分級装置530を運転するための制御パターンが設定される。
制御パターンを、供給パターン、吸引パターン、および回転パターンの3つに分類して説明する。図14に、フロック分級装置530を運転するための制御パターン(供給パターン、吸引パターン、および回転パターン)の一例を示す。
供給パターンは、ろ過槽531への凝集剤注入水の供給/停止のタイミングである。プロセスデータベース120には、凝集剤注入水のろ過槽531への流入量(供給量)と、電磁弁535の開時間および閉時間が設定される。図14に示した例では、電磁弁535は、凝集剤注入水の供給時には開き、フロック成長処理およびフロック分級処理の実行時には閉じる。
吸引パターンは、フロック分級処理水550の、ろ過槽531からのフロック分級処理水550の吸引/停止のタイミングである。プロセスデータベース120には、フロック分級処理水550のろ過槽531からの吸引量と、フロック分級処理水550を得るための送水手段であるポンプ534の運転時間および停止時間が設定される。図14に示した例では、ポンプ534は、凝集剤注入水の供給時およびフロック成長処理の実行時には停止し、フロック分級処理の実行時には運転する。
回転パターンは、凝集剤注入水に含まれるフロックの成長/分級のタイミングである。プロセスデータベース120には、フロック成長処理時の回転フィルタ532の回転数、フロック分級処理時の回転フィルタ532の回転数、フロック成長時間、分級時間、および停止時間が設定される。図14に示した例では、回転フィルタ532は、凝集剤注入水の供給時には停止し、フロック成長処理の実行時には設定したフロック成長処理時の回転フィルタ532の回転数で運転し、フロック分級処理の実行時には設定したフロック分級処理時の回転フィルタ532の回転数で運転する。
以上の設定値に基づいて、浄水処理施設制御手段300により電磁弁535を制御し、フロック分級装置530をバッチ運転する。
実施例2では、予め設定された制御パターンを用いて、浄水処理施設制御手段300がフロック分級装置530を運転することで、凝集剤注入水に含まれるフロックの成長を促進させる。そして、フロック成長後、回転フィルタ532により凝集剤注入水を分級し、ポンプ534を起動してろ過槽531からフロック分級処理水550を送水し、フロック分級処理水550を得る。
実施例2では、実施例1と異なり、フロックを成長させる処理(以下、「フロック成長処理」と称する)がフロック分級装置530の運転に追加される。図14は、フロック成長処理が追加されたフロック分級装置530の運転例である。図14のように設定された制御パターンに従い電磁弁535、ポンプ534、および回転フィルタ532を制御することで、フロック分級装置530は、凝集剤注入水の供給、フロック成長処理、およびフロック分級処理を実施する。
ここで、フロック成長処理とは、電磁弁535を閉じてポンプ534を停止した状態で、回転パターンに設定されたフロック成長時の回転フィルタ532の回転数でフロック成長時間の間、運転することである。フロックを成長させる場合、回転フィルタ532の回転数は、フロック成長がピークとなる回転数であることが望ましい。たとえば、実施例1で示した式(6)を用いて、予めフロック成長がピークとなる回転数を演算し、この回転数をプロセスデータベース120に格納する。
分級処理時の回転フィルタ532の回転数は、フロック成長時の回転フィルタ532の回転数と同じでもよいが、実施例1で示した式(7)などを用いて決定してもよい。
実施例2の凝集剤注入制御システムは、実施例1と比較してフロック分級装置の運転にフロック成長処理が追加される分、時間遅れが生じてしまうが、フロック成長処理と分級処理を連続的に実施できるため、従来技術よりも迅速なフィードバックが可能である。また、フロック成長処理により、計測対象となるフロック分級処理水550は、実施例1のフロック分級処理水550よりもさらに沈降性の悪い、粒径の小さなフロックのみが残留することになるため、凝集良否の判断の精度が増し、実施例1よりも高精度で補正値Qを決定できる。
実施例3は、実施例1または実施例2の凝集剤注入制御システムにおいて、フロック分級装置530のろ過槽531内でのフロック成長を促進させるため、ろ過槽531の構造を変更した場合の例である。
図12は、フロック分級装置530において、阻流板700を取り付けた場合のろ過槽531を示す図である。阻流板700は、ろ過槽531の内壁に2枚、中心軸に対して対照的な位置に設けてある。なお、図12では、モータ、ポンプ、および排水口は、図示を省略している。
実施例1や実施例2のように阻流板700が設けられていないろ過槽531では、回転フィルタ532の回転と共に凝集剤注入水が回転(共回り)する。このため、ろ過槽531内で凝集剤注入水が攪拌されなくなり、凝集剤注入水の混合の程度がよくない。
ろ過槽531に阻流板700を取り付けることで、凝集剤注入水の流れを乱して回転フィルタ532の回転に伴う共回りを抑制し、ろ過槽531内での凝集剤注入水の混合の程度をよくすることが可能である。凝集剤注入水の混合の程度がよいと、フロック同士の衝突頻度を多くすることができ、フロックの成長を促進させることが可能である。
なお、図12では、阻流板700を2枚取り付けているが、阻流板700の数はこれに限定されない。阻流板700の枚数・形状・大きさ・取り付け位置などの条件は、フロック成長を促進することが可能ならば、とくに限定しない。
図13は、フロック分級装置530において、フロック成長部710を設けた場合のろ過槽531を示す図である。図13では、図12と同様に、モータ、ポンプ、および排水口は、図示を省略している。フロック成長部710は、ろ過槽531の内部で凝集剤注入水の導入部に設置され、凝集剤注入水をろ過槽531に導入するための流入部730を備える。フロック成長部710は、内部が空洞になっており、晶析装置に似た構造である。
図13の下部に、フロック成長部710の位置A(フロック成長部710の上面)での断面図と位置B(フロック成長部710の下面)での断面図を示す。これらの断面図に示すように、フロック成長部710の上面と下面には、空隙720、721が設けられている。図13に示した例では、指示棒750、751により、空隙720、721はそれぞれ4箇所設けられている。フロック成長部710の上面での空隙720は、下面での空隙721よりも大きい。また、フロック成長部710の上面には、天板760が設けられ、上面の中央部は塞がっている。
フロック成長部710は、凝集剤注入水が回転フィルタ532に到達する前に、ろ過槽531の内部での凝集剤注入水の流れを変えることができる。凝集剤注入水は、フロック成長部710での凝集剤注入水の流れ740に示すように、流入部730からフロック成長部710に流入し、フロック成長部710内部を上から下へ流れ、下面での空隙721と上面での空隙720を順に通ってフロック成長部710から流出し、回転フィルタ532にて分級される。このような凝集剤注入水の流れ740により、フロック同士の衝突頻度を多くすることができ、フロックの成長を促進させることが可能である。
実施例3の凝集剤注入制御システムは、実施例1で述べた凝集剤注入制御システムと同様の効果がある。また、ろ過槽531内でフロックを成長させることにより、計測対象となるフロック分級処理水550は、実施例1のフロック分級処理水550よりもさらに沈降性の悪い、粒径の小さなフロックのみが残留することになるため、凝集良否の判断の精度が増し、実施例1よりも高精度で補正値Qを決定できる。
実施例3の凝集剤注入制御システムは、実施例2の凝集剤注入制御システムと同様に、電磁弁を凝集剤注入水の供給部に取り付けて、バッチ運転を可能にしてもよい。
なお、濁質分級装置580は、フロック分級装置530と同様の構成であるが、実施例2と実施例3については、フロック分級装置530の構成だけが変更される。すなわち、実施例2と実施例3における濁質分級装置580の構成は、実施例1と同じである。
10…凝集剤注入制御システム、100…管理手段、110…CPU、120…プロセスデータベース、130…水質データベース、140…ネットワークインターフェース(IF)、150…メモリ、151…データ収集機能、152…注入率演算機能、153…注入率補正機能、200…ネットワーク、300…浄水処理施設制御手段、400…浄水処理施設、410…原水、420…原水センサ、430…着水井、440…混和池、450…薬品注入設備、460…フロック形成池、470…沈殿池、480…沈殿水、490…ろ過池、500…ろ過水、510…浄水池、520…上水、530…フロック分級装置、531…ろ過槽、532…回転フィルタ、533…モータ、534…ポンプ、535…電磁弁、540…排水、550…フロック分級処理水、560…分級処理水濁度センサ、570…第2採水手段、580…濁質分級装置、590…排水、600…濁質分級処理水、610…第1採水手段、620…ジャーテスター、630…上澄み液、640…上澄み液濁度センサ、700…阻流板、710…フロック成長部、720,721…空隙、730…流入部、740…フロック成長部での凝集剤注入水の流れ、750,751…指示棒、760…天板。

Claims (6)

  1. 原水が導入される着水井と、前記原水に薬品注入設備により凝集剤を注入してフロックを形成させ凝集剤注入水とする混和池と、前記フロックを分離除去する沈殿池およびろ過池とを備える浄水場の凝集剤注入制御システムにおいて、
    前記原水の水量および少なくとも濁度を含む水質を計測する原水センサと、
    前記着水井から前記原水を採水する第1採水手段と、
    前記第1採水手段で採水された前記原水が供給されるろ過槽、前記ろ過槽内に設置されて濁質を分級する回転フィルタ、前記回転フィルタを駆動する駆動部、および前記ろ過槽から前記回転フィルタを通過した水である濁質分級処理水を得るための送水手段を有する濁質分級装置と、
    前記濁質分級処理水に凝集剤を注入し、上澄み液を得る凝集試験装置と、
    前記混和池から前記沈殿池の出口までの間のいずれかの箇所で前記凝集剤注入水を採水する第2採水手段と、
    前記第2採水手段で採水された前記凝集剤注入水が供給されるろ過槽、前記ろ過槽内に設置されて前記フロックを分級する回転フィルタ、前記回転フィルタを駆動する駆動部、および前記ろ過槽から前記回転フィルタを通過した水であるフロック分級処理水を得るための送水手段を有するフロック分級装置と、
    前記上澄み液の濁度を計測する上澄み液濁度センサと、
    前記フロック分級処理水の濁度を計測する分級処理水濁度センサと、
    前記原水センサが計測した前記原水の水質から前記凝集剤の注入率を演算する注入率演算機能、および前記原水の濁度と前記上澄み液の濁度と前記フロック分級処理水の濁度とから前記凝集剤の注入率の補正値を演算して前記凝集剤の注入量を決定する注入率補正機能を有する管理手段と、
    前記管理手段が決定した前記凝集剤の注入率に基づいて、前記薬品注入設備を制御する浄水処理施設制御手段と、を備えることを特徴とする凝集剤注入制御システム。
  2. 請求項1記載の凝集剤注入制御システムにおいて、
    前記フロック分級装置の前記回転フィルタの目開きは、5〜15μmの範囲内にある凝集剤注入制御システム。
  3. 請求項1記載の凝集剤注入制御システムにおいて、
    前記フロック分級装置は、前記ろ過槽内における分級処理前後の前記フロックの粒径変化率、前記回転フィルタの濁度通過率、およびろ過可能時間のうち、少なくとも1つを指標に用いて、前記回転フィルタの回転数が決定される凝集剤注入制御システム。
  4. 請求項1記載の凝集剤注入制御システムにおいて、
    前記フロック分級装置への前記凝集剤注入水の供給量、前記フロック分級装置からの前記フロック分級処理水の吸引量、および前記フロック分級装置の前記回転フィルタの回転数を含む制御パターンが設定されるプロセスデータベースを備え、
    前記浄水処理施設制御手段は、前記プロセスデータベースに設定された前記制御パターンに基づいて、前記フロック分級装置を運転する凝集剤注入制御システム。
  5. 請求項1記載の凝集剤注入制御システムにおいて、
    前記フロック分級装置は、前記ろ過槽内の前記凝集剤注入水の流れを乱す阻流板を前記ろ過槽に備える凝集剤注入制御システム。
  6. 請求項1記載の凝集剤注入制御システムにおいて、
    前記フロック分級装置は、前記ろ過槽の内部で前記凝集剤注入水の導入部にフロック成長部を備え、
    前記フロック成長部は、前記凝集剤注入水が前記回転フィルタに到達する前に、前記ろ過槽の内部での前記凝集剤注入水の流れを変える凝集剤注入制御システム。
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JP2020006346A (ja) * 2018-07-12 2020-01-16 オルガノ株式会社 凝集処理設備の運転方法及び運転システム
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