以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
<第1実施形態>
第1実施形態のワーク分別システムS1は、図1に示すように、大きく分けてワーク供給装置A1と、ワーク分別搬送装置B1と、これらに付随させて設けるワーク収容部C1とから構成されている。そして以下に詳述するように、複数種類が混在した状態でワーク9をワーク供給装置A1に投入すると、ワーク9はワーク供給装置A1より連続してワーク分別搬送装置B1へと供給され、そこで種類毎に分別されてワーク収容部C1に収容されるようになっている。
まず、ワーク分別搬送装置B1の構成について説明を行う。この実施形態におけるワーク分別搬送装置B1は、図2に示すように、大きくは機械装置部2と制御システム部3とから構成される。この制御システム部3は、後述するように機械装置部2に組み込まれた第1圧電素子81〜81および第2圧電素子82〜82の制御を行うことで、機械装置部2にK,Yの各方向の周期的加振力を与えて振動を生じさせるように構成している。
ここで、K方向とは、第1加振手段としての第1圧電素子81を貼設する後述の弾性支持部材71の法線方向をいい、Y方向とは紙面に垂直となる水平方向であって後述の可動台6における幅方向をいうものとする。さらに、後述のZ方向とは鉛直上方向を示し、X方向とは振動によってワーク9を搬送する水平方向を示すものであり、X,Y,Zの各方向は図中左下に示すような互いに直交となる座標軸を構成するものとして定義する。また、搬送方向とは、可動台6の振動によって主として搬送する方向を示すものとして、上記X方向と同じものとして定義する。
以下、この座標軸に沿って説明を進めていく。
機械装置部2は、図3に示すように、床面に設置する固定台4と、その固定台4に対して振動することで上に載せたワーク9を分別しつつ搬送する可動台6と、可動台6を固定台4に対して弾性的に支持する弾性支持手段7とから構成している。固定台4の下に、図示しない防振ゴム等のバネ定数の小さい弾性体を取り付ければ、設置する床に対する反力を低減させることができて好適である。
固定台4は、矩形の平板として形成しており長手方向をX方向に延在させつつY方向が幅方向となるように配したベース41と、その上に、同様の向きに配した下ブロック42とを一体化することで構成されている。
可動台6は、平板状に形成した搬送板61と、このX方向両端部の下面に各々接続されており、搬送板61と接続されて一体的に動作する可動ブロック62,62とから構成されている。搬送板61は、X方向に延在させつつY方向が幅方向となるように、Z方向より見て矩形状になるように形成している。そして、その上部には搬送面61aを形成しており、搬送面61aの上にはワーク9(図1参照)を載置して振動によって搬送することができるようになっている。搬送面61aは、搬送方向(X方向)と直交する幅方向の一端部61a1側に凸状の段差部61bを搬送方向(X方向)に延在するように形成している。そして、この一端部61a1側より他端部61a2側にかけて平坦面となるように形成するとともに、一端部61a1側より他端部61a2側が低くなるように傾斜を設けている。
上記のように構成された可動台6は、固定台4に対して弾性支持されるとともに、振動することができるように構成されている。以下、そのための構成について説明する。
図4は、図3の状態の機械装置部2より搬送板61を取り外した状態を示したものである。
上述したように固定台4の一部を構成するベース41はX方向に長辺を向けた長方形の板状部材として形成されており、その上には下ブロック42が固定されている。そして、この下ブロック42に対して第1弾性支持手段である板状バネ部材71,71を介して上側ブロック53をK方向に弾性支持し、その上側ブロック53に対して第2弾性支持手段である板状バネ部材72〜72を介して可動ブロック62,62をY方向に弾性支持するようにしている。上述したように、可動ブロック62,62は搬送板61と連結されることで可動台6として一体的に動作するものであるため、上記のように各部を接続することで可動台6は、弾性支持手段7として機能する板状バネ部材71〜72によってK方向およびY方向に対して弾性支持されることになる。
また、板状バネ部材71〜72の表面には、加振手段としての第1圧電素子81〜81または第2圧電素子82〜82が各々貼設されており、これらは印加電圧に応じて伸縮して板状バネ部材71,72にたわみを生じさせることで振動を発生させるようにしている。
具体的な構成を以下で詳しく説明する。
ベース41の上面に設置した下ブロック42は、ベース41と同様、X方向に延在する形態としており、さらに、第1弾性支持手段としての板状バネ部材71,71を取り付けるためのバネ取付面42a,42bを互いに平行に、かつ傾斜して設けている。
そして、これらの各バネ取付面42a,42bには板状バネ部材71,71をそれぞれ1つずつ取り付けている。各板状バネ部材71,71は一端部においてバネ取付面42a,42bに各々固定されるとともに、K方向およびY方向に垂直となる図中右上の方向に向かって延出され、延出端において上ブロック53のバネ取付面53a,53bに固定されるようにしている。上ブロック53は下ブロック42と概ね同一の形状としており、バネ取付面53a,53bが対応する下ブロック42のバネ取付面42a,42bと同一平面内にあるようにしているために、各板状バネ部材71,71は平面を保った状態で設置することができる。
上記のように板状バネ部材71,71を設置することで、これらのたわみ方向であるK方向に対して上ブロック53を下ブロック42に弾性支持させるようにしている。
また、上ブロック53の両側面にはスペーサ53c〜53cを介して4つの板状バネ部材72〜72が設けられている。板状バネ部材72〜72はY方向を法線方向とする向きに配置するとともに、一端部がスペーサ53c〜53cを介して上ブロック53に固定され、他端部が上ブロック53よりX方向正側あるいは負側に延在するように構成している。板状バネ部材72〜72は、これらのうちY方向に離間して並行に設けられたもの同士が対となって可動ブロック62,62を各々支持するようにしている。こうすることで、可動ブロック62,62は板状バネ部材72〜72のたわみ方向であるY方向に弾性支持される。板状バネ部材72〜72はスペーサ53c〜53cの厚み分だけ上ブロック53の側面より離間して設けられることになるため、Y方向に対して所定量の変位を生じさせた際にも、端部以外の箇所が上ブロック53の側面と干渉することはない。
2つの可動ブロック62,62の上面には可動台6を設置して一体化する。可動ブロック62は上面が上ブロック53および板状バネ部材72〜72より上側に突出するように設けており、この部分で可動台6の下面を支持するようにしているため、可動台6に変位が生じた際にその下面が上ブロック53や板状バネ部材72〜72に干渉することも無い。また、2つの可動ブロック62は、可動台6を取り付けることによって一体化するために、各々が独立してたわみを生じることはないようにしている。
上記のように、弾性支持手段7を構成する板状バネ部材71〜72を介して、可動台6を固定台4に対してK方向およびY方向に弾性支持することが可能となっている。
さらに、本実施形態におけるワーク分別搬送装置B1では、可動台6に対して、互いに交差する搬送方向(X方向)成分、鉛直方向(Z方向)成分および可動台6の幅方向(Y方向)成分の周期的加振力が合成された加振力を与えて、三次元の楕円の振動軌跡で振動させるための加振手段を有している。この加振手段は、X方向およびZ方向の成分を含んだK方向の周期的加振力を与える第1加振手段と、Y方向の周期的加振力を生じさせる第2加振手段より構成され、それぞれ以下のようにして圧電素子71〜72によって構成している。
まず、K方向の振動を付与する第1加振手段として、板状バネ部材71,71の両面の長手方向中央以下の部分に第1圧電素子81〜81を貼りつけてある。また、Y方向の振動を付与する第2加振手段として、板状バネ部材72,72の外側面の長手方向中央より内側寄りの部分に第2圧電素子82〜82を貼り付けてある。これらの圧電素子81,82は電圧を印加することにより全長に伸びを生じさせることができるため、貼り付けた板状バネ部材71〜72をたわませ、可動台6にK方向あるいはY方向の変位を生じさせることが可能となっている。すなわち、第1加振手段としての第1圧電素子81〜81によって可動台6に対して、搬送方向(X方向)成分と鉛直方向(Z方向)成分とを合成した斜め方向(K方向)の周期的加振力を与えることができる。また、第2加振手段としての第2圧電素子82〜82によって可動台6に対して、上記の搬送方向(X方向)と交差する水平方向(Y方向)の周期的加振力を与えることができる。
このようにして構成した機械装置部2に対して制御システム部3(図2参照)は、第1圧電素子81および第2圧電素子82に各々正弦波状の制御電圧を付与することによって、K,Yの各方向の振動を発生させるための周期的加振力を生じさせ、可動台6をK,Y平面に平行な楕円の振動軌跡を描かせつつ振動させることが可能とされている。また、この振動軌跡を変化させることによって、搬送面61a上のワーク9に対して発生させるX方向の推力と、Y方向の推力とを独立して制御することができるようにしている。
そのため、制御システム部3は、図2に示すように、正弦電圧を生じさせる発振機34を備えており、この正弦電圧をアンプ35により増幅した上で、各圧電素子81,82に出力する。さらに、上記制御システム部3はK,Yの各方向の制御電圧を詳細に調整するための振動制御手段31を有している。なお、発振機34により生じさせる振動の周波数は、K,Y方向のいずれかの振動系と共振する周波数とすることで、振動を増幅して省電力化を図るようにしてある。なお、双方の振動系の振動が干渉することを避けるためには、各方向の固有振動数を離してもよい。この時、各方向の固有振動数は例えば−10%〜+10%程度離すようにする。
振動制御手段31は大きくは、K,Yの各方向の制御電圧の振幅を調整する振幅調整回路31a,31aと、両者の間の位相差を調整するための位相調整回路31bとから構成してある。本実施形態では、K,Yの各制御電圧にそれぞれ対応した振幅調整回路31aを有するとともに、K方向の制御電圧の位相を基準として所定の位相差を有するように制御電圧の位相を調整する位相調整回路31bを、Y方向の制御電圧について設けるように構成している。
そして、制御システム部3は、搬送するワーク9に応じて適切な可動台6の振動軌跡を設定することを可能とするために、各方向の周期的加振力を付与する加振手段としての圧電素子71〜72を駆動させる制御電圧の振幅および位相を設定する加振力設定部32を有している。この加振力設定部32は図示しない外部入力装置からの入力に基づいて振幅および位相の具体的制御値を決定して、当該制御値に調整するように振幅調整回路31a,31a、位相調整回路31bに命令を与える。そして、X軸正側(搬送方向下流側)より見て時計回り方向の楕円の振動軌跡を描かせて、図4のように搬送面61a上のワーク9に対して搬送面61aの傾斜に抗するY方向負側への推力と、搬送方向(X方向正側)への推力との成分を含む斜め方向の推力を発生するようにしている。
上記のように構成したワーク分別搬送装置B1を用いることで、具体的には次のようにしてワーク9の分別搬送を行うことができる。
まず、図7のように可動台6の搬送面61a上に搬送方向上流側より角状ワーク9aと球状ワーク9bとを混在させて供給し、搬送面61a上に載置させた状態を考える。この時、可動台6はK方向およびY方向に位相差を有しつつ同一の周波数で同時に加振されて、これらが組み合わさった楕円の振動軌跡が形成される。
この際の楕円の振動軌跡は、図においてX軸正側(搬送方向下流側)より見て時計回り方向になるようにしているために、搬送面61a上の角状ワーク9aに対して搬送面61aの傾斜面に抗する成分と搬送方向(X方向)の成分とを有する推力が与えられ、角状ワーク9bはX方向に進行するとともに段差部61bに近接または当接しながら移動して、やがて後述の第1収容ケースC11に搬送されていく。
しかしながら、角状ワーク9aと異なり球状ワーク9bでは搬送面61a上で転動しやすく、慣性力が打ち勝って搬送面61aの振動による有効な推力が与えられない。そのため、傾斜に沿って低い側に転動していき、やがて搬送面61aの端部より落下してその下側に設けている後述のガイドレールC13を介して第2収容ケースC12に収容される。こうすることで、角状ワーク9aと球状ワーク9bを分別しつつ一方の角状ワーク9aを搬送することができるようになっている。
角状ワーク9aは、搬送面61aの振動によって与えられる推力によって可動台61の段差部61bに近接またはこれに沿いつつ主にX方向に移動していく。これに対して、球状ワーク9bは搬送面61aの傾斜に沿いつつ主としてY方向に移動していくことで角状ワーク9aとの分別が行われる。すなわち、角状ワーク9aと球状ワーク9bとの分別に要する移動方向が略直交していることから、両者の移動が阻害されにくく効率的に分別を行うことができる。そのため、搬送面61aはX方向に延在するのみで広い面積を要することがないために、ワーク分別搬送装置B1全体の小型化が可能となっている。
また、本ワーク分別搬送装置B1では、図2のように、各方向の周期的加振力の振幅および両者の位相差を加振力設定部32を通じて設定することができるようになっている。こうすることで、特性の異なるワーク9を用いる場合であっても、そのワーク9の分別にとって適した推力および位相差を設定することができる。例えば、角状ワーク9aであっても搬送面61aとの摩擦係数が小さい場合には搬送面より得られる推力が小さく、球状ワーク9bとの分別が困難となる場合もある。こうしたときには、第2加振手段としての第2圧電素子82〜82によるY方向の加振力を大きくしてY方向の推力を大きくするような設定とすることで分別を容易に行うように設定することが可能である。
このように、主としてY方向の推力を変化させることによって、角状ワーク9aと球状ワーク9bとの分別を効率的に行うための条件を変化させることができ、そのためにはY方向の周期的加振力の振幅または位相差を変化させればよい。また、ワーク9の摩擦係数だけではなく、重量や大きさ、形状などによっても分別の難度は変わることがある。こうした場合においても、Y方向の周期的加振力の振幅または位相差を変化させて、分別に適した条件とすることができる。
また、第1加振手段としての第1圧電素子81〜81によるK方向の周期的加振力の振幅を変化させることでX方向への推力を変更し、搬送方向への角状ワーク9aの搬送速度を変化させることができる。こうすることで、分別に適した条件とするY方向の周期的加振力とは別に、効率的な搬送速度を決定することができる。
上記のように構成したワーク分別搬送装置B1に対して、その搬送面61a上にワーク9を供給するワーク供給装置A1(図1参照)を以下のように設けている。
ワーク供給装置A1は、図5及び図6に示すようにボウル型振動フィーダとして構成している。全体的に円筒状の形態をしており、下部に設けられている振動発生器13により、上部に配したワーク受容器11を弾性支持するとともに、これに振動を与えることができるようにされている。
ワーク受容器11は、内側をすり鉢状に形成された、いわゆるボウル状の形態とされており、その内周壁11aには螺旋状の搬送路11bが形成されている。また、この搬送路11bの終端と連続しつつ、外方に向かってワーク排出口11が形成されている。ワーク排出口11の内周には傾斜面12aが形成されており、この傾斜面12aに沿ってワーク9を滑落させ、所定の速度を与えつつワーク分別搬送装置A1(図1参照)に供給することができるようになっている。
振動発生器13は、図示しないコントローラを用いて制御を行うことで、ワーク受容器11に対して、上下方向の変位を伴わせつつ中心O回りのねじり振動を生じさせることが可能であり、この振動によってワーク受容器11内に投入したワーク9を搬送路11bに沿って連続的に搬送することが可能となっている。また、コントローラにより振動の振幅や周波数を変更することでワーク9の搬送速度を変えて、ワーク分別搬送装置A1(図1参照)への供給量を調整することも可能となっている。
上記のように構成したワーク供給装置A1は、図7に示すように、可動台6の搬送面61aにワーク排出口12が近接するように配置しており、ワーク供給装置A1に投入したワーク9を、連続してワーク分別搬送装置B1の搬送面61a上に供給することができるようになっている。
さらに、このワーク供給装置A1は、図8に示すように、平面視においてワーク排出口12の向きが、X方向に対して角度θを設定して斜め方向にワーク9を供給することができるようになっている。
このようにして、ワーク排出口12の傾斜面12a(図5参照)を滑落させることで、ワーク9に供給速度Vs1(Vs)を与えつつ搬送面61a上に供給することができるようにしている。ここでいう供給速度Vsとは、方向を含んだベクトル量として定義するものである。この供給速度Vsには搬送面61aに平行な方向の速度成分を含んでおり、そのために、ワーク9を滑らかに搬送面上61aに供給することが可能となっている。
上述したように、角状ワーク9aに対しては、可動台6の振動により、搬送面61aの傾斜面に抗する成分と搬送方向(X方向)の成分とを有する推力が作用し、これが図8に示す図中の左上方向に向かう搬送力F1となる。転動しやすい球状ワーク9bに対しては、上述したように可動台6の振動による推力が効果的に作用しないため、これを搬送させるための搬送力F2は、もっぱら搬送面61aの傾斜に沿って重力により作用するものとなるため、平面視でほぼY方向に向かう傾斜に沿ったものとなる、
供給速度Vs1の向きは、角状ワーク9aと球状ワーク9bに各々働く搬送力F1,F2の間の角度となるようにしてある。具体的には、図中においてX方向に対する角度θが約30°として設定しているが、搬送面61aの傾斜角度や可動台6の振動により設定される搬送力F1,F2の大きさや方向に対応して適宜変更することができる。
さらに、本実施形態のワーク分別システムS1では、ワーク分別搬送装置B1上で分別搬送された種類の異なるワーク9a,9bを種類毎に収容するためのワーク収容部C1を備えている。
ワーク収容部C1は、可動台6に対してX方向に配置され、搬送面61a上からX方向に落下するワーク9aをそのまま収容する第1収容ケースC11と、搬送面61a上からY方向に落下するワーク9bを捕集するガイドレールC13と、ガイドレールC13により捕集されたワーク9bを収容する第2収容ケースC12とから構成されている。ガイドレールC13は、断面がL字状になるように金属プレートを折り曲げて形成したものであり、折曲げ部が下方になるとともに一端が第2収容ケースC12内に向けて下がるように傾斜して配置している。そのため、搬送面61aより落下してきた球状のワーク9bを受けて、第2収容ケースC12の内部にまで適切に導くことができるようになっている。
なお、図中では、収容ケースC11,C12を、上面を開口した直方体の箱形として記載しているが、適宜利用しやすい形態に変更することも可能である。例えば、第2収容ケースC12をX方向に延在させて、可動台6の側下方に沿うような形態とすることも好適であり、こうすればガイドレールC13を用いる必要もなくなる。
上記のように構成した本実施形態のワーク分別システムS1を用いて、次のようにワーク9を分別することが可能となる。
まず、図7に示すように配置した上流側のワーク供給装置A1のワーク受容器11(図5参照)内に、異なる種類のワーク9a,9bが混合された状態でワーク9を投入する。
ワーク供給装置A1内では搬送路11bに沿って、ワーク9が搬送され、ワーク排出口12より、ワーク分別搬送装置B1の搬送面61a上にワーク9が連続して供給される。
この際、図7及び図8に示すように、ワーク9には搬送面61aに平行な方向の速度成分を含む供給速度Vs1が与えられる。そのため、異なる種類のワーク9a,9bであっても、一方向に安定して供給することができる。
これが、搬送面61a上よりワーク9a,9bを落下させるだけであれば、ワーク9a,9bは互いに重なり合いながら搬送面61aからの反発力を受けて様々な方向に移動するため、供給直後のワーク9a,9bにおいては、移動の方向及び速度が不安定な状態となる。そうなると、ワーク分別搬送装置B1により、異なる方向に搬送力F1,F2を作用させたとしても、ワーク9a,9bが搬送途中で衝突して、円滑に分別することができなくなる恐れが生じる。そのため、種類の異なるワーク9a,9bを確実に分別して、それぞれ目的の方向に搬送させるためには、搬送面61aを広くして、ある程度の時間をかけて分別と搬送を行うことが必要となる。これに対して、本実施形態においては、ワーク9a,9bに供給速度Vs1を与えつつ一方向に安定して供給することができるため、供給直後よりワーク9a,9bに所定の搬送力F1,F2を作用させて、速やかに分別させることができるようになっている。
また、本実施形態においては、上述したように、供給速度Vs1の方向が搬送力F1,F2の間となるように角度θを設定しているため、供給直後より種類の異なるワーク9a,9bは、供給速度Vs1の方向に対して、互いに反対方向に移動することになる。すなわち、図8に示すように、搬送面61a上において、供給直後の角状ワーク9aは搬送力F1の作用により、移動方向を徐々に図中の左上方向に変えていき、やがては段差部61bに近接または当接しながら、図中の左方向に移動して搬送面61aより落下して、第1収容ケースC11内に収容される。他方、供給直後の球状ワーク9bは搬送力F2の作用により、移動方向を徐々に図中の下方向に変えていき、やがては搬送面61aより落下して、ガイドレールC13を介して第2収容ケースC12内に収容される。
このように、種類の異なるワーク9a,9bは、供給速度Vs1として与えられる初期の移動方向より、互いに反対方向に移動することで、互いの移動を阻害すること無く、より円滑に分別することが可能となっている。そのため、搬送面61aを小さくしても効率よくワ−クの分別を行うことが可能であり、ワーク分別搬送装置B1を含むワーク分別システムS1全体を小型化することも可能となる。また、単位時間当たりに分別を行う処理量を増加させることも可能となる。
また、上記のような円滑な分別を行うための供給速度Vs1の方向は、図8のような場合のみには限られない。例えば、図9のようにワーク供給装置A1を平面視で搬送面61aに対して図中右上隅に配して、Y方向正側に合致する向きにワーク排出口12を配し、その方向に供給速度Vs2を設定しても良い。こうした場合であっても、上述した場合と同様、供給直後より角状ワーク9aと球状ワーク9bとを適切に分別することも可能となる。
このように、重力によって球状ワーク9bに作用する搬送力F2の方向と一致させると、球状ワーク9bの移動速度を上げて、より速やかに分別を行うことが可能となる。これに対して、角状ワーク9aの搬送速度は、可動台6の振動の振幅や周波数等の条件を変更することで容易に制御することが可能となる。
ここで、ワーク9に対しワーク供給装置A1により生じる供給速度Vs(Vs1,Vs2)とワーク分別搬送装置B1によって生じる搬送力F1,F2との関係について、図8及び図9を参照しつつ図10の模式図を用いてさらに説明を行う。
まず、種類の異なるワーク9a,9bに生じる各搬送力F1,F2のなす角βの二等分線Lbを考えた場合、この二等分線Lbに対して直交する直線Loを境界として、搬送力F1,F2の向きと同じ側となる図中で示す角度αの範囲内に、供給速度Vsのうち搬送面61aに平行となる速度成分の方向を設定することが適切といえる。こうすることで、搬送面61a上にワーク9a,9bを供給した直後より、種類毎のワーク9a,9bには互いに異なる方向に搬送力F1,F2が作用して、適切に分別しつつ搬送していくことが可能となる。
なお、各搬送力F1,F2がなす角を180°に設定する場合には、供給速度Vsは搬送面61aに平行となる速度成分を含んでさえいれば、いずれの方向に設定したとしても上記の効果を得ることが可能といえる。
また、各搬送力F1,F2のなす角βが180°以外の場合であると、上述の角度αの中でも、搬送力F1,F2のいずれか一方と同一の方向、または、これら搬送力F1,F2のなす劣角βの範囲内に、供給速度Vsのうち搬送面61aに平行となる速度成分の方向を設定することがより効果的といえる。こうすると上述したように、種類の異なるワーク9a,9bは、供給速度Vs1として与えられる初期の移動方向より互いに反対方向に移動することで、互いの移動を阻害することがなく、より搬送効率を向上させることができて好適である。
また、上記のようにワーク供給装置A1は可動台6上の搬送面61aに対して相対位置とワーク排出口12の向きを変更することが可能に構成されており、こうすることでワーク分別搬送装置B1の制御条件と相俟って、ワーク9の特性に合わせた効率の良い条件設定を行うことが可能となっている。
さらに、分別と搬送をより効率よく行わせるために、図3に示すように、搬送面61a上に、ガイド部材61c,61dを設けることも好適である。ガイド部材61cは、搬送面61aからの予定外のワーク9の落下を防ぐことが可能となるとともに、ガイド部材61dは、搬送途中のワーク9の搬送経路を乱すことで、一方の種類のワーク9a(又は9b)群の中に他の種類のワーク9b(又は9a)が取り込まれた状態でも、その凝集状態を一旦解消させることで両者の分別精度をより向上することが可能となる。
以上のように本実施形態に係るワーク分別システムS1は、搬送面61a上に載せた複数種類のワーク9a,9bに対して種類毎に異なる方向に搬送力F1,F2を作用させることでワーク9a,9bを分別しつつ搬送を行うワーク分別搬送装置B1と、そのワーク分別搬送装置B1の搬送面61a上にワーク9a,9bを供給するワーク供給装置A1とを備えており、ワーク供給装置A1が、ワーク分別搬送装置B1の搬送面61a上にワーク9a,9bを供給する際に、搬送面61aに平行な方向の速度成分を含む供給速度Vs1をワーク9a,9bに与えるよう構成したことを特徴とする。
このように構成しているため、搬送面61aに対して平行な方向の速度成分を与えられつつワーク9a,9bが供給されることで、同一の方向に向かって滑らかに安定してワーク9a,9bの供給を行うことができるため、供給直後より種類毎に異なる方向に搬送力F1,F2が作用した際に、ワーク9a,9b同士が互いの移動を阻害することなく円滑に移動することができるため、効率よく分別を行うことができる。そのため、搬送面61aを小さくして小型・軽量化を図ることが可能となるともに、分別精度を向上させつつ、単位時間当たりの分別処理能力を増大させることも可能となっている。
また、ワーク供給装置A1よりワーク9に与える供給速度Vs1のうち搬送面61aに平行な方向の速度成分が、ワーク分別搬送装置B1により異なる種類のワーク9a,9bに対して作用する各搬送力F1,F2の間の方向となるように設定しているため、種類の異なるワーク9a,9bは、供給方向Vs1に対して、それぞれ搬送力F1,F2の作用によって供給直後より移動する方向が同じ向きにはならず、互いに反対方向に移動していくことになるため、互いに移動を阻害することがなく、より効率よく分別することが可能となる。
また、ワーク供給装置A1よりワーク9に与える供給速度Vs1のうち搬送面61aに平行な方向の速度成分が、搬送力F2と同一方向となり、搬送力F1とは異なる方向にすることでも同一の効果を得ることができる。
さらに、ワーク供給装置A1が、ワーク9を滑落させるための傾斜面12aを有するワーク排出口12を備えており、搬送面61aに対するワーク排出口12の向きを変更可能に構成しているため、所定の供給速度Vs1を与えつつ、安定してワーク9を搬送面61aに供給するための構成として、具体化しているとともに、ワーク分別搬送装置B1を用いてワーク9a,9bに与える搬送力F1,F2の大きさや方向とのバランスを見ながら、供給速度Vs1の方向を容易に変更することが可能となる。
また、ワーク供給装置A1が、内周壁11aに螺旋状の搬送路11bを形成されたボウル状のワーク受容器11と、そのワーク受容器11に上下方向の変位を伴うねじり振動を生じさせる振動発生器13とを備えたボウル型振動フィーダとして構成されており、搬送路11bの終端より外方に向かってワーク排出口12が形成されるように構成しているため、一般的なボウル型振動フィーダの構成を利用して、より簡便かつ具体的な構成として実現することができるとともに、ボウル型振動フィーダにおける振動発生器13の周波数や変位量を制御することによって、システム全体としてワーク9の分別搬送に係る処理速度を容易に制御することが可能となる。
さらに、分別搬送装置B1が、可動台6を弾性支持する弾性支持手段7と、可動台6に対して振動を与える加振手段81と、加振手段81により可動台6に楕円の振動軌跡を生じさせるよう加振手段81を制御する振動制御手段31とを備えており、搬送面61aが、幅方向の一方61a2側が低くなるように傾斜しており、搬送面61a上の角状ワーク9aに対しては、振動制御手段31によって搬送面61aの傾斜に抗する幅方向の成分と搬送方向の成分を有する搬送力F1を発生させるように前記可動台の振動軌跡を生じさせるとともに、搬送面61a上の球状ワーク9bに対しては、搬送面61aの傾斜に沿って重力による搬送力F2を生じさせるように構成しているため、分別すべきワーク9が角状ワーク9aと球状ワーク9bのように形状が相違する場合に、それぞれの形状の相違を利用して分別を行う効率の良いワーク分別システムとして、より簡便に構成することが可能となるとともに、ワーク分別搬送の効率を向上させることが可能となる。
<第2実施形態>
第2実施形態に係るワーク分別システムS2を構成するワーク分別搬送装置B2のシステム構成図を図11に示す。本実施形態におけるワーク分別システムS2は、第1実施形態の場合と同一のワーク供給装置A1,ワーク収容部C1を備えたものとして構成している。また、ワーク分別搬送装置B2についても、第1実施形態のワーク分別搬送装置B1における機械装置部2と同一のものを用いており、制御システム部203のみが異なるに過ぎない。図中では第1実施形態の場合と共通する部分には同一の符号を用いて、説明を省略する。
制御システム部203では、第1実施形態における制御システム部3に対して、位相切替命令部233が追加された構成となっている。
位相切替命令部233は、図示しない外部入力装置からの入力に基づいて、所定の間隔で間欠的に、位相調整回路31bに対して位相差を切り替えるための位相切替命令を発するように構成している。そして、位相調整回路31bは、通常は加振力設定部32からの命令に応じて第2圧電素子82に印加する制御電圧の位相を設定するものの、位相切替命令が入力されたときのみ、通常時の位相と180°異なる位相の制御電圧を発するようにしている。こうすることで、位相切替命令部からの命令が出力されている間は、可動台6よりワーク9に与えられる推力のY方向成分を通常時に対して正負を逆にすることができる。なお、必ずしも位相を180°切り替えることは必須ではなく、Y方向成分の正負を逆にするために必要な分だけ位相変更を行うようにすることも可能である。
このような構成とすることで、次のような動作をワーク9に対して生じさせることができるようになっている。
まず、図12(a)に示すように、通常時は搬送面61aより角状ワーク9aに対して、搬送方向(X方向正側)の推力Fxと、Y方向負側の推力Fyの成分を有する図中左上方向の合成推力Fcが与えられている。図に示すように角状ワーク9a〜9aが段差部61bに沿ってY方向の抗力を与えられつつX方向に進行していく場合を想定する。このとき、角状ワーク9a〜9aが密集した状態となって、段差部61bと協働して球状ワーク9bを囲い込みながらX方向に進行していくこともあり得る。このような場合には球状ワーク9bの分別が困難な状態となる。
このとき、図12(b)に示すように、位相切替命令部233(図11参照)からの位相切替命令によって推力の発生方向が変更され、通常時にはY方向負側に発生していた推力Fyが、Y方向正側に発生することになる。搬送方向(X方向正側)の推力Fxは通常時と同じ向きを維持するために、合成推力Fcは図中左下方向に発生する。こうすることで、角状ワーク9a〜9aは段差部61bより離間して、段差部61bからの抗力を受けることなくより自由に動きやすい状態となる。そのため、球状ワーク9bに対する角状ワーク9a〜9aおよび段差部61bからの規制がなくなり、球状ワーク9bは搬送面61aの傾斜によって重力で転がりつつY方向に移動できるようになる。
さらに、位相切替命令部233(図11参照)からの位相切替命令を停止することで、図12(c)に示すように再度通常時と同じ推力発生方向に切り替える。こうすることで、球状ワーク9bと分別させた状態で、角状ワーク9a〜9aを段差部61bに沿って搬送させていくことができる。
上記のような位相切替命令部233(図11参照)からの位相切替命令が間欠的に繰り返して出力されることで、搬送過程における角状ワーク9a〜9aに対する推力の方向が繰り返し変化することで分散効果を得て、密集した部分があってもその内部より球状ワーク9bをより確実に分別させることが可能となっている。
このように構成したワーク分別搬送装置B2と、ワーク供給装置A1、ワーク収容部C1とを組み合わせることで、第1実施形態と同様の効果を得ることができるとともに、さらに、より確実に種類の異なるワーク9a,9bの分別を行うことが可能となる。
<第3実施形態>
第3実施形態に係るワーク分別システムS3を図13に示す。本実施形態におけるワーク分別システムS3は、第1実施形態の場合と同一のワーク供給装置A1,ワーク収容部C1を備えたものとして構成している。ワーク分別搬送装置B3は、図14に示すように、第1実施形態のワーク分別搬送装置B1におけるものとは機械装置部302のみが異なり、制御システム部3は同一のものを用いている。以下、図中では第1実施形態及び第2実施形態と共通する部分には同一の符号を用いて説明を省略する。
機械装置部302は、図15および図16に示すように、大きくは床面に設置する固定台4と、固定台4に対して振動することで上に載せたワーク9を分別しつつ搬送する可動台306と、可動台306を固定台4に対して弾性的に支持する弾性支持手段307とから構成している。固定台4の下に、図示しない防振ゴム等のバネ定数の小さい弾性体を取り付ければ、設置する床に対する反力を低減させることができて好適である。
固定台4は第1実施形態の場合と同様に、ベース41とその上に固定した下ブロック42とから構成している。そして、下ブロック42には、弾性支持手段としてのバネ部材371〜371を取り付けるためのバネ取付面42a,42bを互いに平行に、かつ傾斜して設けられている。
そして、これらバネ取付面42a,42bのそれぞれに、弾性支持手段を構成する棒状バネであるバネ部材371が2本ずつ取り付けられている。このバネ部材371は、固定台4のバネ取付面42a,42bに、それぞれ平板状に形成された下側取付部371bで固定しており、当該下側取付部371bより、K方向およびY方向に垂直な、図中右上の方向に向かって延出し、平板状に形成された上側取付部371aで可動ブロック362と連結している。バネ部材371のうち、上側取付部371aおよび下側取付部371bの間となる中間部371cは断面を四角状に形成してある。
可動台306は、搬送板361と上記可動ブロック362が一体化して構成されるものであり、上部の搬送板361は、水平に配置された平板状の形態を基本とし、上面はワーク9を分別するための搬送面361aとして形成している。そして搬送面361aは略水平となるように形成している。また、搬送面361aのY方向負側の端部には凸状の段差部361bを搬送方向(X方向)に延在するように形成している。
前述したように可動台306を構成する搬送板361の下側に可動ブロック362を固定して設けており、当該可動ブロック362において4本のバネ部材371と連結してある。このように構成しているため、4本のバネ部材371はあたかも平行リンク機構のように働き、可動台306は水平状態を維持したまま各方向に移動を行うことができる。
そして、この可動台306をX,Y,Zの各方向に振動させるための駆動部として、以下のように圧電素子381,382を設けている。
まず、K方向の振動を付与する第1の加振手段として、バネ部材371の中間部371cの長手方向中央以下の側面でX軸に直交する面に、直方体状の第1圧電素子381を貼りつけてある。また、Y方向の振動を付与する第2の加振手段としてとして、バネ部材371の中間部371cの長手方向中央以下の側面でY軸に直交する面に、直方体状の第1圧電素子382を貼りつけてある。これらの圧電素子381,382は電圧を付与することにより全長に伸びを生じさせることができるため、図17に例として示したように、バネ部材371をたわませ、可動台306にK方向あるいはY方向の変位を生じさせることが可能となっている。
本実施形態においては、図18(a)に示すように、それぞれのバネ部材371に対して第1圧電素子381a,381bと第2圧電素子382a,382bとをそれぞれ対向する面に一対ずつ設けたバイモルフ型として構成した。なお、図18(b)に示すように、対向面のうち一方の面にのみ第1圧電素子381と第2圧電素子382をそれぞれ設けたいわゆるユニモルフ型として構成しても差し支えない。
本実施形態のように圧電素子の伸びを利用してバネ部材にたわみを生じさせようとする場合、対向面に設けた圧電素子の片方を伸び側に設定するときには他方を縮み側に設定する必要があるため、片方を伸び側とした際に、他方が縮み側になるように電圧印加及び貼り付け方向を設定してある。以下、圧電素子に対して付与する電圧に関しては、単純にX方向制御電圧、Y方向制御電圧として説明を行い、X方向およびY方向に正の制御電圧を付与するということは、それぞれ可動台306をX,Y方向正側に移動させる向きにバネ部材371に曲げを生じさせるように、第1圧電素子381、第1圧電素子382を伸び縮みさせる電圧を付与することを意味するものする。
また、バネ部材371は変形を行う場合、図17に示すように中間部371cの長手方向中央を境に、一つの面内の上下で伸び側と縮み側が逆転する。よって、圧電素子381,圧電素子382を長手方向中央を超えて広い範囲に貼りつけることは、却って変形を阻害することになり好ましくない。そのため、本実施形態のように長手方向中央付近より片端部側に寄せた位置に貼りつけることが効率的である。
このようにして構成した機械装置部302に対して、制御システム部3は、上述のように第1実施形態の場合と同様に構成しており、第1圧電素子381および第2圧電素子382に各々正弦波状の制御電圧を付与することによって、K,Yの各方向の振動を発生させるための周期的加振力を生じさせる。
このような制御システム部3を用いて、加振力設定部32により各方向への周期的加振力の位相差をワーク9に応じて設定することで、上述したように形状の異なるワーク9のみならず、摩擦係数が異なるワーク9を分別しつつ搬送することが可能となる。以下、その原理について説明を行う。
ここで、本ワ−ク分別搬送装置B3を図19の模式図に示すような簡略化したモデルで考え、可動台306が固定台4に対してX,Y,Zの各方向に弾性体374,375,376により弾性的に支持するとともに、各方向の加振手段384,385,386を設けている場合を想定する。このように構成することで、X,Y,Zの三方向に設けた加振手段384,385,386によって可動台306を三方向に動作させることが可能とされている。図19の模式図における弾性体374,375,376は、図15におけるバネ部材371に該当するとともに、図19における加振手段384,385,386はそれぞれ圧電素子381,382に該当する。
図19に示すモデルの可動台306に対して、Z方向にZ=Z0×sinωtで表される周期的な振動変位を与える。ここで、Z0はZ方向の振幅を、ωは角周波数を、tは時間を示す。さらに、X、Y方向にもそれぞれZ方向と同一周波数の振動を、X=X0×sin(ωt+φx)、Y=Y0×sin(ωt+φy)の式のように与えることとする。ここで、X0、Y0はそれぞれX方向、Yの振幅を、φx、φyはそれぞれX方向、Z方向の振動のZ方向の振動に対する位相差を示す。
このように、X,Y,Zの各方向に正弦波状の周期的な振動変位を加えることにより、可動台306にはこれらが合成された、本発明で三次元の振動軌跡と称する鉛直平面および水平面に対して傾いた平面内の楕円の軌跡あるいは平面外の立体的な軌跡を有する振動を可動台に対して生じさせることができる。例えば、図19に示すように、Z方向の振動成分に対してφx、φyの位相差を持たせてX、Y方向の振動を生じさせたとき、二次元的にはXZ平面上で右側を上にした楕円軌道を有する振動が生じ、YZ平面上で右側を下にした楕円軌道を有する振動が生じる。そして、さらにこの2つを合成することで、図中右下に示すように三次元の振動軌跡たる三次元空間上での楕円軌道が生じる。
そして、各方向の振動変位の振幅および位相を変えることにより、XZ平面、YZ平面内の二次元の楕円軌道の大きさや向きを変更することができ、対応して三次元空間上の楕円軌道の大きさや向きを自由に変更することができる。なお、このように各方向への周期的な振動変位を付与するために、制御上は各方向への周期的加振力を付与することで対応を行っている。
以上のように、可動台306が楕円軌道を描きつつ振動することによって、可動台306の上に載せられたワーク9は移動を行う。そして、この移動のうちX方向への移動速度成分は上記XZ平面内の楕円軌道によって制御でき、Y方向への移動速度成分は上記YZ平面内の楕円軌道によって制御できる。すなわち、Z方向への振動成分を基準としてX方向、Y方向のそれぞれの振動の振幅と位相差を変化させることで、X、Y方向への移動速度成分を変化させ、任意の方向に搬送させることが可能となる。
具体的には各方向への移動速度成分の変更は次のようにして行う。
発明者らの知見によれば、図19を参照しつつ図20を用いて説明すると、位相差φx(φy)によってワーク9の移動速度Vx(Yy)は正弦波に類似したカーブを描くように変化するとともに、ワーク9と可動台306との間の摩擦係数によっても変化する。すなわち、2種類のワーク9であるW1,W2と可動台306との間の摩擦係数をそれぞれμ1、μ2としてμ1<μ2の関係があるとき、W2の時の移動速度のグラフは、W1の時の移動速度のカーブを位相差が正となる方向にずらした形状となる。そのため、楕円振動を行う可動台306の上に同時に摩擦係数の異なるワーク9を置いた場合には、移動速度及び移動方向が異なることになる。
具体的には、図20に示す位相差φ1にφxを設定したとき、W1のX方向移動速度は0になり、W2は負の値を取る。そしてφ1〜φ2の間に位相差を設定しているときには、W1は正の方向、W2は負の方向と互いに逆方向に進む。位相差φ2ではW2の速度が0になり、W1は正の方向の速度となる。さらにφ2〜φ4の間ではW1、W2ともに正の方向に進むが、そのうちφ3では同じ速度になり、その前後でW1とW2の速度の大きさが逆転する。また、位相差をφ4とするとW1は速度が0になり、W2は正の方向に移動する。位相差φ4〜φ5の範囲ではW1は負の方向に進み、W2は正の方向に進む。さらに、φ5ではW2の速度が0になり、W1は負の方向に進む。また、φ5〜πの範囲では双方とも負の方向に進むが、その中でもφ5の時に同じ速度となり、その前後で速度が逆転する。なお、こうした関係はY方向の移動速度Vyに対してもあてはまる。
また、発明者らの知見によれば、図19を参照しつつ図21を用いて説明すると、位相差φx(φy)とワーク9の移動速度Vx(Yy)との関係は、振幅X0(Y0)を変えることによっても変化する。すなわち、位相差φx(φy)に対するワーク9の移動速度Vx(Yy)である正弦波類似のカーブは、概ね振動変位の振幅X0(Y0)に比例して変化する。このことから、ワーク9の移動速度Vx(Yy)を2倍にしたい場合には、概ねX(Y)方向の振動変位の振幅を2倍にすればよい。そのためには、それに応じた加振力を与えるべく、制御電圧の振幅を変化させればよい。
このような一方向に対する振動制御を、直交するX、Y方向に同時に付与することによって、摩擦係数の異なる複数の種類のワーク9に対して、互いに異なる方向に搬送力を作用させて、可動台306上で分別し異なる方向に搬送させることができる。なお、上記のように摩擦係数の異なるワーク9を異なる方向に搬送させるように制御することによって、厳密には摩擦係数が同じものであっても表面形状が異なるなど、見かけ上摩擦係数が異なっているようにとらえられるものについても搬送方向を異ならせることもできる。例えば、同一の物品の表面と裏面であっても、面の凹凸が異なり可動台306との接触面積が大きく異なる場合が該当し、このような場合でも適宜分別・搬送を行うことができる。
しかしながら、複数の種類のワーク9を搬送しつつ、二方向に分別し、搬送していくことを目的とした場合、上記のような3つの方向への加振手段をそれぞれ別に有することは必須とはいえない。なぜならば、図20から分かるように、X方向に対しては一方にのみ搬送を行い逆方向に進ませることを必要としないのであれば、Z方向に対する位相差を0に、すなわち同位相で駆動させても良い。よって、本実施形態においては、Z方向とX方向の振動成分を有するK方向の加振手段381として一個に構成することができる。
これに対し、Y方向にはワーク9の種類に応じて分別する機能が必要となるため、Z方向の周期的加振力に対する位相差、すなわちK方向の周期的加振力に対する位相差を物品の摩擦係数に応じて切り替えることができるように構成している。
上記のように、本実施形態におけるワーク分別搬送装置B3は、搬送すべきワーク9が種類によって異なる摩擦係数を有する場合には、それぞれの摩擦係数との関係に基づいて位相差を設定して、異なる方向に移動する搬送力を作用させるようにすることができる。これは、上述の第1実施形態において図8を用いて説明した搬送力F1,F2を、ワーク形状の相違や搬送面61aの傾斜によることなく、可動台306の振動軌跡を制御することで実現することにほかならない。
このような場合であっても、第1および第2実施形態の場合と同様に、ワーク供給装置A1及びワーク収容部C1と組み合わせることで、より円滑にワークの分別を行うことが可能となる。
以上のように本実施形態に係るワーク分別システムS3は、ワーク分別搬送装置B3が、可動台306を弾性支持する弾性支持手段371〜371と、可動台306に対して振動を与える加振手段381〜382と、加振手段381〜382により可動台306に楕円の振動軌跡を生じさせるよう加振手段381〜382を制御する振動制御手段31とを備えており、搬送面361a上にある種類毎に摩擦係数の異なるワーク9(W1,W2)に対しては、それぞれの摩擦係数との関係に基づいて、ワーク9が種類毎に異なる方向に移動するよう可動台306の振動軌跡を生じさせるように構成したものである。
このように構成しているため、上述の実施形態と同様の効果を得るとともに、分別すべきワーク9が種類毎に摩擦係数を相違する場合には、その摩擦係数の相違を利用して種類毎に異なる方向の搬送力を作用させ、効率よく分別を行うワーク分別システムS3として簡便に構成することが可能となっている。
なお、本実施形態においては、個々のワーク9の摩擦係数に着目して、この摩擦係数を基準にワーク9の分別・搬送を行うように構成したが、ワーク9の表面形状によっては局所的な摩擦係数は同一であっても見かけ上は摩擦係数が異なるものと扱っても支障がない場合もある。また、ワーク9の表面形状を大きく変えることにより可動台306の上で転動や揺動を行うようになり、摩擦による推力の伝達を効果的に行うことができなくなる場合もある。さらには、可動台306の表面の硬さと、ワーク9の重量及び硬さとの関係から生じる幾何学的な形状変化もワーク9に与える推力に影響を与える。そのため、通常の意味での摩擦係数に加えて、ワーク9および可動台306の搬送面361aの形状や表面粗度、さらには重量や硬さによる形状変化等の影響を含めて、現実にワーク9に対して水平方向に作用する推力を広い意味での摩擦力として捉え、当該広い意味での摩擦力を基準として各方向の振動成分の制御を行い、ワーク9の分別・搬送を行わせるように構成することも可能である。こうした考えを採る限りにおいては、ワーク9の分別・搬送を行うために基準として用いる摩擦係数の中に、上記広い意味での摩擦力の考えを取り込ませることも可能である。すなわち、上記広い意味での摩擦力をワーク9に対する可動台6の垂直抗力で除した係数を広い意味での摩擦係数として、これを一般の摩擦係数と置き換えて基準として用いることでより多様なワーク9の分別・搬送ができるようになるのであり、上記の意図はこうした内容をも含むものである。
<第4実施形態>
第4実施形態に係るワーク分別システムS4を構成するワーク分別搬送装置B4の機械装置部402を図22に示す。本実施形態におけるワーク分別搬送装置B4は、機械装置部402と、第1実施形態の場合と同一であるシステム制御部3とから構成されている。また、このワーク分別搬送装置B4に加えて、第1実施形態の場合と同一のワーク供給装置A1、ワーク収容部C1を備えたものとしてワーク分別システムS4構成している。以下、図中では第1〜第3実施形態と共通する部分には同一の符号をいて説明を省略する。
なお、この実施形態においては、上述の第1〜第3実施形態とはX方向及びK方向の座標の向きが異なっているが、図面上左右が反転してワーク9の搬送方向が逆になっているのみで、機能上の差異はないものである。
この実施形態におけるワ−ク分別搬送装置B4の機械装置部402は、図22に示すように、大きくは床面に設置する固定台4と、この固定台4に対して第1棒状バネ部材471〜471によって弾性支持された中間台405と、この中間台405に対して第2棒状バネ部材472〜472によって弾性支持された可動台406とから構成されている。可動台406の上部は搬送板461により構成されており、その上面は搬送面461aとして、分別搬送を行うワーク9を載せることができるようになっている。
搬送面461aは、第1実施形態における搬送板61と同様に構成しており、Y方向正側の端部に向かって低くなるように傾斜するとともに、反対側の端部には凸状の段差部461bを形成している。
可動台406の一部を構成する搬送板461を取り外した場合を図23に示す。可動台406は、後で詳述するように、搬送板461に加え、上可動ブロック462と、下可動ブロック463と、これら上可動ブロック462と下可動ブロック463とを連結する一対の連結部材464,464とから構成されている。
固定台4は第1実施形態と同様、長手方向をX方向に向けて配置された長方形状のベース41と、その上部に固定された下ブロック42とから構成されている。この下ブロック42は、ベース41と同様、長手方向をX方向に向けて配置された略直方体の形状とされるとともに、X方向前後より見た際の正面及び背面が第1棒状バネ部材471を接続するためのバネ設置面42a,42bとして各々設定され、Z方向に対して傾斜した互いに平行な平面として形成されている。
中間台405は、図24に示すように、下ブロック42と同様、長手方向をX方向に向けた略直方体の形状とされるとともに、X方向前後より見た際の正面及び背面が第1棒状バネ部材471を接続するためのバネ設置面405a,405bとして各々設定され、下ブロック42におけるバネ設置面41a,41bと平行な平面として形成されている。また、バネ設置面405a,405b間の寸法は、上記下ブロック42におけるバネ設置面42a,42b間の寸法と等しくなるように設定している。
中間台405は、上記下ブロック42の上部で、これとほぼ平行になるように配置され、中間台405のバネ設置面405aと下ブロック42のバネ設置面41aとが平行になるように対応させつつ、それぞれ2本の第1棒状バネ部材471,471を介して接続するようにしている。第1棒状バネ部材471,471はバネ設置面41a,405aに沿って配置されることで、これらの傾斜と同様に、Z軸に対して傾斜して配置される。同様に、中間台405のバネ設置面405aと下ブロック42のバネ設置面41aも、それぞれ2本の第1棒状バネ部材471,471を介して接続するようにしている。
このようにZ方向に対して傾斜しつつ、互いに平行に設けられた合計4本の第1棒状バネ部材471〜471によって、中間台405は固定台4に対して弾性的に支持される構成としている。
また、中間台405の下面には、後述するように中間台405の質量及び重心位置を調整するための補助ウエイト451が設けられている。
中間台405の下方で且つ下ブロック42の上方には、可動台406の一部を構成する下可動ブロック463が配置されている。下可動ブロック463は、上記下ブロック42や中間台405と同様に、長手方向をX方向に向けた略直方体の形状とされるとともに、X方向前後より見た際の正面及び背面が後述する第2棒状バネ部材472を接続するためのバネ設置面463a,463bとして各々設定され、上述した下ブロック42におけるバネ設置面42a,42bと平行な、Z方向に対して傾斜した平面として形成されている。さらに、下可動ブロック463は上記第1棒状バネ部材471との干渉を避けるために、バネ設置面463a,463b間の寸法を、下ブロック42におけるバネ設置面42a,42b間の寸法及び中間台405におけるバネ設置面405a,405b間の寸法よりも僅かに小さく設定している。
下可動ブロック463のバネ設置面463aと中間台405のバネ設置面405aとは、互いに平行になるように各々対応させつつ、後述するスペーサを挟みつつ、それぞれ2本の第2棒状バネ部材472,472を介して接続するようにしている。第2棒状バネ部材472,472はバネ設置面463a,405aに沿って配置されることで、これらの傾斜と同様に、Z軸に対して傾いて配置される。同様に、下可動ブロック463のバネ設置面463bと中間台405のバネ設置面405bも、それぞれ2本の第2棒状バネ部材472,472を介して接続するようにしている。
このようにZ方向に対して傾斜しつつ、互いに平行に設けられた合計4本の第2棒状バネ部材472〜472によって、下可動ブロック463は中間台405に対して弾性的に支持される構成としている。このように構成することで、第2棒状バネ部材472〜472は、第1棒状バネ部材471〜471に対しても平行に配置される関係となっている。
中間台405の上方には、この中間台405と平行になるように上可動ブロック462が設けられている。上可動ブロック462は、X方向に延在するよう略プレート状に形成されるとともに、上面462aに上述の搬送板461を載せた状態で固定することができるようにしている。
上可動ブロック462は、上記の下可動ブロック463とY方向の寸法が同一となるように形成しており、上可動ブロック462と下可動ブロック463とは各側面を両側から挟み込むようにして設ける一対の連結部材464,464を介して連結されている。上可動ブロック462、下可動ブロック463及び連結部材464は、搬送板461とともに一個の可動台406を構成して一体となって動作を行うようにしている。
ここで、上述した第1棒状バネ部材471〜471及び第2棒状バネ部材472〜472の取付構造について、図25及び図26を基に詳細に説明する。まず、図25は、図23にて示したM部周辺を拡大したものである。
第1棒状バネ部材471及び第2棒状バネ部材472は各々I字型状に形成されており、上端及び下端には矩形状の平板部471a,472aが形成されている。そして、それ以外の部分はバネとして機能するバネ部471b,472bとして設定され、これらのバネ部471b,472bは長手方向に対して直交する平面で見た場合、略正方形となる矩形断面を有する形態とされている。このようにしてバネ部471b,472bは直方体状に形成するとともに、これらの側面のうち背面合わせとなる2面が、上記平板部471a,472aを形成する表面及び裏面と各々連続するように構成している。このように構成することで、第1棒状バネ部材471及び第2棒状バネ部材472は、平板部471a,472aに対して直交する第1方向と、この第1方向に直交するとともに平板部471a,472aに平行となる第2方向との2つの方向に対して、バネ部471b,472bが撓みやすくなるように設定している。
上記のような撓み方向特性を有する第1棒状バネ部材471及び第2棒状バネ部材472を以下のように取り付けてある。
すなわち、下ブロック42のバネ設置面42bに対して、第1棒状バネ部材471の平板部471aをバネおさえ473を介してネジ止めしている。この第1棒状バネ部材471のバネ部471bをY方向両側より挟み込むようにして一対の矩形板状のスペーサ475,475を配置する。下ブロック42と近接しつつ直上に配置される下可動ブロック463のバネ設置面462aに対して、上記矩形板状のスペーサ475,475を挟んで第2棒状バネ部材472の平板部472aを配置し、バネおさえ473を介してネジ止めしている。
スペーサ475,475は、第1棒状バネ部材471のバネ部471bよりも厚く形成されるとともに、このバネ部471bよりも離間するように配置している。
このように構成することで、第1棒状バネ部材471の外側に、これと平行になるように第2棒状バネ部材472が配されるとともに、両者の間で隙間が形成されるようにしている。また、第1棒状バネ部材471のバネ部471bは、上記矩形板状のスペーサ475,475の間で形成される開口部475a内に位置することで、下可動ブロック463側より干渉されることがないため、独立して中間台405(図24参照)の支持状態を維持することが可能となっている。なお、本実施形態におけるワ−ク分別搬送装置B4は、僅かな振動でワーク9の搬送が可能であるために、下可動ブロック463の振動振幅は1mm以下とする設定で十分であり、上記開口部475aの内側と第1棒状バネ部材471のバネ部471bとのクリアランスは、K方向及びY方向に対して各々1mm程度の小さいものとすれば足りる。
さらに、これらの第1棒状バネ部材471及び第2棒状バネ部材472の上端は、図26に示すように各部と接続されている。すなわち、第1棒状バネ部材471の上側の平板部471aと、矩形板状のスペーサ474と、第2棒状バネ部材472の上側の平板部472aとを重ね合わせた状態で、バネおさえ473を介して中間台405のバネ設置面405bにネジ止めしている。このスペーサ474の厚みは、上述したように第1棒状バネ部材471の外側に第2棒状バネ部材472が平行に配される関係となるように設定している。
このように接続することによって、第1棒状バネ部材471を介して中間台405は下ブロック42(図24参照)によって弾性支持され、第2棒状バネ部材472を介して中間台405が可動台406(図24参照)を弾性支持するように構成している。
また、各第1棒状バネ部材471と第2棒状バネ部材472とは、それぞれバネ部471b,472bがZ軸に対して傾斜しつつ平行に配置されることになるとともに、バネ部471b,472bの各側面がK方向またはY方向に垂直となる向きとなる。すなわち、第1棒状バネ部材471と第2棒状バネ部材472は上述した撓み方向特性として、第1方向としてのK方向側と第2方向としてのY方向側に撓みやすい特性を有している。そのため、第1棒状バネ部材471と第2棒状バネ部材472はそれぞれ主にK方向及びY方向に対して弾性支持を行う弾性支持手段として機能している。
こうした各部材間の弾性支持構造について、図27に示す模式図を用いてさらに説明を加えておく。
図27(a)は、上述した機械装置部402を簡略化したモデルとして表したものである。このモデルを構成する各構成要素に付した符号は、図22〜25において用いた符号に「m」を付加したものであり、実際の部材との対応関係が分かるようにしている。すなわち、ここでモデルを用いて説明する考え方は、実際の機械装置部2において同様に適用されている。
このモデルから分かるように、固定台4mの上方に中間台405mを配置するとともに、第1棒状バネ部材471mを介して固定台4mに対して中間台405mを弾性支持している。さらに、中間台405mの下方で且つ固定台4mよりも上方に下可動ブロック463mを配置するとともに、第2棒状バネ部材472mを介して中間台405mに対して下可動ブロック463mを弾性支持している。加えて、中間台405mを挟んで上可動ブロック462mとこの上部に固定する搬送板461mとを配置し、連結部材464mによって下可動ブロック463mとの間で一体化されることで、可動台406mを構成している。
上記のように構成するとともに、第1棒状バネ部材471mと第2棒状バネ部材472mとを隙間を形成しつつ平行になるように構成している。こうすることで、相互に干渉することなく独立して変位することを可能としている。また、中間台405mの重心位置405gと、可動台406mの重心位置406gが略同一の位置となるように、両者の位置関係を構成している。なお、ここでいう略同一の位置とは、X,Y,Zの各方向に対して各々略同一であることを指す。
可動台406mは、中間台405mの下方に配置される下可動ブロック463mと、中間台405mの上方に配置する上可動ブロック462m及び搬送板461mと、下可動ブロック463mと上可動ブロック462mとを繋ぐ連結部材464m(,464m)によって、中間台405mと取り囲むようなロ字状に形成されているため、双方の重心位置405g,406gを略同一に設定しやすい装置構成としている。さらに、重心位置の調整を補助的に行うため、図24に示すように中間台405の下方に補助ウエイト451を設置し、その位置及び重量を調整することによって重心位置405gの調整を簡単に行うことができるようにしている。こうすることで、各部材の形状変更や部品の追加、または分別搬送するために載せるワーク9の重量を大きく変化させた場合であっても、容易に対応させることができるようになっている。
上述したモデルをさらに簡略化したモデルを図6(b)に示す。このモデルを構成する各構成要素に付した符号は、図22〜25において用いた符号に「M」を付加したものであり、実際の部材との対応関係が分かるようにしている。
このように、固定面としての固定台4Mに対して中間台としての質量体405Mがバネ471Mによって弾性支持され、この質量体405Mの外側を囲むようにして可動台としての質量体406Mが配置されるとともに、この質量体406Mが質量体405Mに対してバネ472Mによって弾性支持されたモデルとして考えることができる。質量体406Mは、上可動ブロック462M及び搬送板461Mと下可動ブロック463Mと、これらを連結する連結部材464M,464Mとから構成されており、質量体406Mの重心位置406Gは中間台としての質量体405Mの重心位置405Gと略同一の位置となるように構成されることになる。
こうすることで、質量体405Mと質量体406Mとの間でバネ472Mと同じ方向に相対力を作用させると両者は逆位相で弾性変位を行うことになる。後述する加振手段を用いてこのような方向に加振力を与えることで上記逆位相の形態で振動を生じさせることが可能となる。この逆位相の形態での振動とは、質量体405Mが例えば図の下方向に変位した際には質量体406Mは逆の上方向に変位し、質量体405Mが図の上方向に変位した際には質量体406Mは逆の下方向に変位するような形態の振動のことを指す。こうした振動の形態は、特に、逆位相形態(所謂逆位相モード)での固有振動数で効率よく発生させることができ、その固有振動数は質量体405Mの質量m1と、質量体406Mの質量m2と、バネ472Mのバネ定数k1と、バネ471Mのバネ定数k1に依存する。この形態の振動を効率よく得られるようにするためには、バネ472Mのバネ定数k1に対して、バネ471Mのバネ定数k2を1/10程度に設定することが好ましい。
さらに、この図27(b)に示したモデルにおいてはバネの変位方向をZ方向としていたが、より実機に近い図27(a)のモデルのように実際にはK方向及びY方向に対して弾性支持する構造としているため、弾性支持方向がZ方向とは異なる上に、一方向ではなく二方向に対してそれぞれ独立して弾性変位して、逆位相モードでの振動を生じることができるようにしている。すなわち、各棒状バネ部材471m,472mのバネ定数をK方向及びY方向に対してそれぞれ設定するとともに、各々の方向に対して、第1棒状バネ部材471mのバネ定数を第2棒状バネ部材472mのバネ定数の1/10程度にするように、材質や断面形状及び長さを調整している。また、K方向及びZ方向の逆位相モードでの固有振動数は、共振を避けるために僅かに離間して設定するようにしてある。
さらに、図27(a)に戻って説明を行うと、互いに逆位相で振動を行う中間台405mと可動台406mの重心位置405g,406gが略同一とされていることにより、加振力に応じて中間台405mと可動台406mとが各方向に変位した際に、両者の重心位置405g,406gは当該振動方向に向かう同一直線上を移動することになるため、回転モーメントが発生することがない。そのため、搬送台406m及び中間台405mは、傾きや揺動を生じることなく、そのままの姿勢を維持した状態でK方向及びY方向に平行に移動することが可能となっている。
加えて、中間台405mと可動台406mは互いに逆位相で振動を生じるものの、これらの全体としての重心位置は同一の箇所を維持した状態となるために、これらが動作することによる反力は固定台4mに対してほとんど生じることがない。そのため、固定台4mから設置面に対して余計な力や振動を伝達することがなく、設置環境も良好に保つことができる。
上記のように説明を簡単に行うために、図27(a),(b)のモデルを利用して説明したが、同一の考え方に基づいて図22に示す実際の機械装置部402を構成している。
本実施形態における機械装置部402は、図28に示すように可動台406及び中間台405に対してK,Yの各方向に逆位相形態での振動を生じさせるため、上述した加振力を与える加振手段として、以下のように圧電素子481〜482を設けている。
まず、K方向の振動を付与する第1の加振手段として、第2棒状バネ部材472のバネ部472bの長手方向中央以下の側面でK軸に対して直交する面に、直方体状の第1圧電素子481を設けている。また、Y方向の振動を付与する第2の加振手段として、第2棒状バネ部材472のバネ部472bの長手方向中央以下の側面でY軸に対して直交する面に、直方体状の第2圧電素子482を貼りつけてある。これらの圧電素子481〜482は電圧を付与することにより全長に伸びを生じさせることができ、図28に例として示したように、第2棒状バネ部材472に撓みを生じさせて、可動台406にK方向あるいはY方向の変位を生じさせることが可能となっている。
なお、図28は、変位をわかりやすくするため誇張して示したものであり、実際の変位は上述したように1mm以下に設定しているため、この図のように各部が干渉することはない。また、本図では連結部材464を取り外した状態で示しているが、可動台406としての一体性は損なわれていないと仮定したものとしている。
本図は、弾性変位の一例として、第1圧電素子481の作用によって第2バネ部材472に撓みが生じ、その作用によって中間台405がK方向正側(図中の右上方向)に対して変位した状態を示している。そして、その反力によって可動台406がK方向負側(図中の左下方向)に対して変位する。このように中間台405と可動台406とは非作動時の中立位置を基点として、互いに逆方向になるように変位することになる。また、これらの中間台405と可動台406とは全体として固定台4に対して第1棒状バネ部材471によって支持されており、このバネ定数が第2棒状バネ部材472の1/10程度に十分低く設定されていることから、第1棒状バネ部材471は防振バネとして機能して中間台405及び可動台406を柔軟に支持するようになっている。こうすることで、中間台405と可動台406の動作による反力は固定台4には伝わることなく、設置面に対して安定して支持状態を維持することが可能となっている。また、上記のような弾性変位及び支持の関係は、K方向だけではなくY方向に対しても同様に構成している。
また、この実施形態においても、上述の第3実施形態の場合と同様に、それぞれの第2棒状バネ部材472のバネ部472bに対して第1圧電素子481,481と第2圧電素子482,482とをそれぞれ対向する面に一対ずつ設けたバイモルフ型として構成しているが、上述したようにユニモルフ型として構成しても差し支えない。
このようにして構成した機械装置部402に対して制御システム部3は、第1実施形態と同様に構成しており、これを用いて第1圧電素子481及び第2圧電素子482に各々正弦波状の制御電圧を付与することによって、K,Yの各方向の振動を発生させるための周期的加振力を生じさせ、可動台406に振動を生じさせることができるようになっている。
こうすることで、第1実施形態におけるワーク分別搬送装置B1と同様に、搬送面461aに載置した形状の異なるワーク9に対して、それぞれ異なる搬送力F1,F2(図8参照)を作用させて、種類毎にワーク9a,9bを分別するとともに搬送を行うことが可能となっている。
さらに、簡単な装置構成でありながら、重心位置が適切に配置されていることから、可動台406に傾きや回転を生じさせることなく、安定して3次元的な楕円の振動軌跡を生じさせることができるようになっている。そのため、ワーク9により一層適した細かな振動条件を設定することができ、精密に搬送方向を決定することができるようになっている。
そして、こうしたワーク分別搬送装置402を用いて、第1〜第3実施形態の場合と同様に、ワーク供給装置A1及びワーク収容部C1と組み合わせることで、より円滑にワークの分別を行うことが可能となる。
また、本実施形態においては、搬送面461aを第1実施形態の場合と同様に傾斜させたものとしていたが、第3実施形態の場合と同様に、略水平としつつワーク9の摩擦係数に応じて、各方向の周期的加振力の位相差を変更するようにすれば、摩擦係数の異なるワーク9に異なる方向の搬送力を作用させて、これらを種類毎に分別させるようにすることも可能である。
なお、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではない。
例えば、上述の実施形態においては、全て加振手段として圧電素子を用いていたが、電磁石を使用した構成とすることも可能である。例えば、第4実施形態の構成を基にして、図29及び図30に示すように電磁石581a,582aを加振手段とする機械装置部502を構成することも可能である。これらの図中において上述の実施形態と同一の符号を付した部分は、それらと同一のものであることを示している。
具体的には、K方向の周期的加振力を与えるための第1の加振手段として、中間台505の下面505bにL字形のブラケット581bを介してX方向に磁極面が向くように電磁石581aを設けるとともに、磁性プレート581cを上記磁極面と対向させつつ下可動ブロック463の上面463cより立ち上げるようにして設けている。こうすることで、電磁石581aに対して電流を与えた場合に、第2棒状バネ部材472による支持方向と相俟って、中間台505と可動台406との間でK方向の相対変位を生じさせることができるようになっている。さらに、Y方向の周期的加振力を与えるための第2の加振手段として、中間台505の下面505bにL字形のブラケット582bを介してY方向に磁極面が向くように電磁石582aを設けるとともに、磁性プレート582cを上記磁極面と対向させつつ上可動ブロック462の下面462bより下方向に延びるようにして設けている。固定台505には、磁性プレート582cと対応する位置に開口部582cが形成されており、両者が干渉することがないようにしている。こうすることで、電磁石582aに対して電流を与えた場合に、第2棒状バネ部材472による支持方向と相俟って、中間台505と可動台406との間でY方向の相対変位を生じさせることができるようになっている。
このように各加振手段を電磁石581a,582aを用いて構成した場合であっても、それぞれの方向の電流値を制御することで、上記と同じ効果を得ることが可能であるとともに、K方向、Y方向の動作を圧電素子によって行う場合に対して、容易に大きな出力を得ることができる。
その他の構成も、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。