以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
<第1実施形態>
図1に、本発明の第1実施形態に係る振動装置2と、これを制御するための制御システム部3を加えて、物品移動装置としての物品搬送装置1を構成した形態を示す。
この図に示す振動装置2は、後述する載置台や周壁部を取り外した状態とされて駆動部25が露出した状態とされており、この駆動部25はベース4上で弾性支持されるとともに、この中には加振手段としての圧電素子81、82、83が設けられている。さらに、ベース4は固定台21上で弾性支持されている。
制御システム部3は、圧電素子81、82、83に印加する電圧の制御を行うことで、振動装置2に第1の水平方向としてのX、第2の水平方向としてのY、垂直方向としてのZの各方向の周期的加振力を与えて振動を生じさせるように構成している。
なお、X、Y、Zの各方向は図中に示した座標軸に示したとおりに定義することとし、以下においても適宜図中で示す座標軸に沿って説明を進めていく。
図2は、上記振動装置2を実際に使用する状態として示した斜視図であり、図3はこれを平面図として示したものである。図2および図3に示すように、この状態では、ベース4の外周縁に沿って設置される前述した周壁部42によって正面と背面および側面の四面が覆われている。また、上面には可動台6の一部を構成する矩形状の載置台63が設けられており、その載置台63の上面63aは載置面として、搬送する物品9を載せることができるようになっている。
周壁部42は駆動部25(図1参照)の四面を覆って保護する機能と、ベース4の重量を増加させつつ重心位置を調整するための機能とを備えており、ブロック状に形成された下部錘42a〜42b、上部錘42c〜42dを組み合わせることによって構成されている。
ベース4は下面の四隅に配置された防振バネ22〜22を介して固定台21上で弾性支持されており、固定台21は任意の設置面に設置することが可能となっている。固定台21にはX方向に離間させて一対の把手23、23を設けているため、この把手23、23を把持して振動装置2の運搬を容易に行うことが可能となっている。
上記のように防振バネ22〜22を介してベース4が弾性支持される構成となっているために、可動台6に振動を生じさせた場合でもその振動の固定台21への伝播が抑制されて、設置面に対する振動の伝達を防止することが可能となっている。なお、本実施形態における振動装置2では、運搬および設置を容易に行うためにベース2の下側に固定台21を設けているが、防振バネ22〜22を介して直接設置面に設置することも可能である。すなわち、本実施形態においては可搬性の観点より固定台21を設ける構成としているが、本発明の主旨からは固定台21は必須の構成要素とはいえず、この固定台21は設置面と同一視することが可能である。本発明では、後述するように、装置全体の質量を複数の質量体が接続されたものと捉えて、これらの質量体の間における重心位置に関連性を持たせることに特徴を有する。ここでいう装置全体の質量とは、防振バネ22〜22によって弾性支持されたベース4以上の部分の総質量を示すものであり、本発明において必須とはいえないと説明した固定台21の質量は考慮しないものとする。
図2の振動装置2より、可動台6を構成する一部の部材と、下部錘42a〜42b、上部錘42c〜42dの一部と、把手23、23とを取り外した状態を図4に示す。
振動装置2はその内部でX、Y、Zの3軸方向に対して弾性的に支持された可動台座61を有しており、この可動台座61は直方体状のブロックとして形成されている。この可動台座61の上部には、上述した載置台63(図2参照)が設置される。可動台座61は載置台63と一体となって可動台6を構成して、振動装置2の内部でベース4に対して弾性的に支持されるとともに、後述する加振手段によって振動を与えられる。
図3に示したように、ベース4を固定台21に対して弾性支持するための防振バネ22〜22は、ベース4の四隅に配置している。図3に示すように、防振バネ22〜22はベース4より突出するように設けられており、その先端は、Y方向に延在するように配置された下部錘42a、42aと接続されて、これらを介してベース4を弾性支持するようになっている。
具体的な防振バネ22の接続構成について、図8を用いて説明を行う。この図は、図3におけるB−B断面矢視図となっている。
防振バネ22としては、一般的な形態のものを使用可能であり、ここでは中央に円筒状の弾性部を有するとともに、これを挟んで両側に円盤状のプレートを備え、このプレートより両側にネジ部22a、22aが突出したものを使用している。防振バネ22は片側端面を固定台21の上面に当接させつつ、固定台21に形成した孔部21aに対してナットを用いてネジ部22aを固定する。さらに反対側端面はベース4に形成した孔部4bを挿通した状態で、下部錘42aの下面に当接するまでネジ部22aを螺入するようになっている。
このようにして防振バネ22は下部錘4と接続されたベース4を固定台21に対して弾性的に支持させることが可能となっている。上述したように、固定台21を用いない構成とする場合には、下端にネジ部22aを有さない防振バネ22を用いて、直接的に防振バネ22を設置面上に配置するような構成とすればよい。
図4の状態の振動装置2より、さらに周壁部42を取り去った状態を図5に示す。なお、本来、周壁部42を取り去ることによってベース4は支持を失って固定台21との間で離間した状態を保つことはできないが、本図においては、ベース4が弾性支持された通常の位置関係で記載してある。
以下、この図を用いて、本実施形態に係る振動装置2の構成を詳細に説明する。
この振動装置2は、設置面とほぼ同一視することのできる固定台21上で上記の防振バネ22を用いて弾性支持されているベース4に対して、可動台座61をX、Y、Zの3方向に弾性支持するように構成されており、剛体部分としてのベース4、第1中間台51、51、第2中間台52および可動台座61を順次接続するようにして、第1の水平弾性支持手段としての第1の板状バネ部材71、71、第2の水平弾性支持手段としての第2の板状バネ部材72、72、および垂直弾性支持手段としての第3の板状バネ部材73、73を設けている。各板状バネ部材71〜73は、各々板厚方向がX、Y、Z方向になるように配置されているために、当該方向に対して弾性変形を行い易くなっている。
さらに、可動台座61をX、Y、Zの3方向に振動させるための第1の水平加振手段としての第1圧電素子81〜81、第2の水平加振手段としての第2圧電素子82〜82、垂直加振手段としての第3圧電素子83〜83を備えている。
以下、これらの構成についてさらに詳細に説明を行っていく。
まず、固定台21およびベース4は、矩形状のプレートとして各々形成されており、上述したようにベース4は四隅に設けた防振バネ22〜22によって固定台21上で弾性支持されている。この防振バネ22〜22は、各方向に設置した上述の板状バネ部材71〜73に比し、約1/10程度のバネ定数を有する弱いバネ特性を示すものを用いており、ベース4から設置面に対する振動の伝播を抑制するとともに、設置面からの反力を低減させてベース4の姿勢を安定させるようにしている。また、可動台6がベース4と逆位相で振動する形態でのX、Y、Z各方向の共振周波数に対して、ベース4上の装置全体が一体として固定台21に対して振動する形態のZ方向の共振周波数を1/10以下にとどめて、可動台6に振動を生じさせる際にもベース4の安定化を図ることができるようにしている。
そして、ベース4上には、防振ゴム22〜22よりもやや中心寄りの位置に四箇所、矩形状に配置されるようにして取付ブロック41が固定されている。取付ブロック41は、各々L字型の断面を有するブロックとして形成されており、L字を形成する一方の辺をベース4に対して当接させた状態として、他方の辺が起立した状態となっている。そして、起立した辺は、X方向に対して直交するYZ平面を形成するようにされている。そして、Y方向に対をなして隣接する取付ブロック41、41に接続するようにして、第1の板状バネ部材71、71が設けられている。この第1の板状バネ部材71、71は、上述した各々の取付ブロック41〜41が有するYZ平面に取り付けられるため、板厚方向はX方向となり長手方向はY方向となる。
また、第1の板状バネ部材71、71は、2対の取付ブロック41〜41にそれぞれ設けられるために、X方向に所定距離離れた状態で平行に2個設けられることになる。
また、第1の板状バネ部材71、71の両端部は、矩形状のバネおさえ71d〜71dと上記各取付ブロック41〜41が有するYZ平面との間で挟み込まれるようにして、ボルトを用いて固定されているため、たわみ角が規制されるようにして支持される。
そして、第1の板状バネ部材71、71の長手方向中心付近にはバネ座71cを介して第1中間台51、51が各々接続されている。第1中間台51はそれぞれY方向に延在する直方体形状に形成されている。さらに、各バネ座71c、71cと対向するようにしてバネおさえ71e、71eが各々設けられている。第1の板状バネ部材71、71は、対向するバネ座71c、71cとバネおさえ71e、71eとによって各々挟み込まれるようにしてたわみ角が規制され、これらの部分でボルト止めされることで上記第1中間台51、51に接続される。第1中間台51、51は、図6の平面図に示すように2つに分割された構成となっているが、後述する第2の板状バネ部材72、72によって接続されているため、一体化して動作を行うことになる。
図5に戻って、上記第1中間台51、51は上述したように直方体形状に形成されており、6面それぞれがX、Y、Z軸の各面に直交する向きになるように配置されている。そして、各々が有するY軸に直交するXZ面間を接続するようにして、2個の第2の板状バネ部材72、72が設けられている。
このように取り付けることで、2個の第2の板状バネ部材72、72は、各々板厚方向がY軸に対して直交し、かつ、長手方向がX方向を向くようになるとともに、互いにY方向に所定距離離間して平行に配置されることになる。
第2の板状バネ部材72、72は、両端部を矩形状のバネおさえ72d〜72dと上記第1中間台51、51が有するXZ平面との間で挟み込まれるようにして、当該部分においてボルト止めにより固定されているため、たわみ角が規制されるようにして支持されている。
第2の板状バネ部材72、72の長手方向中心付近にはバネ座72c、72cを介して、第2中間台52が接続されている。さらに、各バネ座72c、72cと対向するようにしてバネおさえ72e、72eが設けられている。第2の板状バネ部材72、72は、対向するバネ座72c、72cとバネおさえ72e〜72eとによって各々挟み込まれるようにしてたわみ角が規制され、これらの部分でボルト止めされることで上記第2中間台52に接続される。
第2中間台52は、図6の平面図に示すように、矩形の枠体として構成されておりX、Y、Z方向に直交する6面を有する直方体のブロックを4個組み合わせることによって形成されている。
上記のように、第1の板状バネ部材71、71および第2の板状バネ部材72、72はバネ座71c〜71cとバネおさえ71e〜71eの大きさを変更することによって有効長を変化させたり、厚みや幅の異なるものを使用したりすることでバネ定数を変化させるとともに、固有振動数もまた変化させることができる。
ここで、図3におけるA−A断面矢視図を図7に示し、図5に加えて図7を補助的に用いて説明を続ける。
矩形の枠体として構成されている第2中間台52の上面と、下面にはそれぞれ2個ずつ計4個の第3の板状バネ部材73〜73が設けられている。第3の板状バネ部材73〜73は、第2中間台52を形成する矩形を構成する辺のうち、Y方向に平行な2辺の位置に存する部分の上面および下面として形成される各XY平面の間をX方向に接続するようにして設けられている。第3の板状バネ部材73〜73の両端部は、矩形状のバネおさえ73c〜73cと上記第2中間台52が有するXY平面との間で挟み込まれるようにして、ボルト止めにより固定されているため、この部分でたわみ角が規制されるように支持されている。
また、第2中間台52の上面に接続される第3の板状バネ部材73、73と、第2中間台52の下面に接続される第3の板状バネ部材73、73の中央部近傍には、両者の間隔を維持するためにバネ間ブロック73dが設けられている。
さらに、前記バネ間ブロック73dの下方には、第2中間台52の下面に接続される第3の板状バネ部材73、73を挟んで、バネおさえ73eが設けられている。バネおさえ73eは、2個の第3の板状バネ部材73、73を第2中間台52の下面との間で挟み込んだ状態として、図示しないネジを用いて固定を行うことができる。
また、前記バネ間ブロック73dの上方には、第2中間台52の上面に接続される第3の板状バネ部材73、73を挟んで、上述した可動台座61が設けられている。可動台座61は、2個の第3の板状バネ部材73、73を第2中間台52の上面との間で挟み込んだ状態として、ネジを用いて固定を行うことができる。可動台座61の上面には矩形プレレート状に形成された可動板62を取り付け、その上面に載置台63が枠部材64とともにネジ止めされる。この載置台63の上面は物品を載せるための載置面63aとなる。これらの載置台63、枠部材64、可動板62は可動台座61とともに前述の可動台6(図3参照)を構成する。
さらに、バネおさえ73eの左右に張り出すように、ブロック状に形成されたカウンタウエイト73f、73fが設けられており、可動台6とのバランスを取って、第3の板状バネ部材73、73によって支持される可動台6側全体の重心位置が、第3の板状バネ部材73、73間の中心に対して水平方向および垂直方向で略同一の位置となるようにしている。以下、この重心位置を「可動台6における重心位置」と称する。
このように、「可動台6における重心位置」が第3の板状バネ部材73、73間の水平方向および垂直方向の中心に位置するようにすることで、可動台6に対してX方向、Y方向の振動を生じさせた場合でも、慣性力の影響によって可動台6が傾く、いわゆる首振り現象を抑制することが可能となっている。
上記のように、図5に示す本実施形態の振動装置では、可動台6の下方に、ベース4、第1中間台51,51、第2中間台52、第1の板状バネ部材71、第2の板状バネ部材72、第3の板状バネ部材73、第1圧電素子81〜81、第2圧電素子82〜82、第3圧電素子83〜83が配置されるとともに、ベース4に対して第1中間台51、51が第1の板状バネ部材71、71によってX方向に弾性的に支持され、第1中間台51、51に対して第2中間台52が第2の板状バネ部材72〜72によってY方向に弾性的に支持され、第2中間台52に対して可動台座61が第3の板状バネ部材73〜73によってZ方向に弾性的に支持される構成とされている。こうした構成とすることで可動台6はベース4に対してX、Y、Zの各方向に弾性的に支持されるようになっている。
各板状バネ部材71〜73は、それぞれ板厚方向となるX、Y、Z方向に弾性を有するとともに、これと直交する幅方向、長手方向には十分な剛性を有する。そのため、各方向への支持は独立しているものと考えることができる。
また、各方向に対して第1〜第3の板状バネ部材71〜73をそれぞれ平行に設けて、対をなして支持させることにより、あたかも平行リンクの一部を構成するように構成している。これによって、各板状バネ部材71〜73は捻れ運動を行うことなく、対をなすもの同士の間で隙間を一定とした関係を保ったまま変位することができるようになっている。
また、本実施形態の振動装置2においては、図2および図3に示したようにベース4上に重心調整部材としての機能を有する周壁部42を設けることによって、ベース4と周壁部42およびこれらに対して固定された部材の重心位置を調整可能に構成している。以下、この重心位置を「ベース4における重心位置」と称する。ベース4は図7に示すように中央部に開口部4aを設け軽量化しているため、周壁部42を設けることによって容易にベース4の重心位置を高い位置に調整できる。こうすることでベース4の重心位置を上記可動台6における重心位置と、水平方向および垂直方向に略同一となる位置に設定している。
周壁部42は、4個のブロックより構成される下部錘42a〜42bと、同様に4個のブロックより構成される上部錘42c〜42dとが上下に接続された構成となっているため、水平方向および上下方向の重心位置を細かく調整することが可能となっている。特に、上部錘42c〜42dは外部に表れていることから取り替えを容易に行うことが可能であり、検査機等の付加的に接続する機器との間でのバランス調整や、搬送を行う物品の重量とのバランス調整など、装置条件や使用条件等の様々な条件変更に対しても即座に対応することが可能となる。
また、ベース4に対して周壁部42としての錘を設けることで、ベース4は可動台6の質量に対して約10倍の質量を有するようにしている。こうすることで、可動台6に対してX、Y、Zの各方向に加振力を与えた場合でも、その反力によってベース4に生じる振動変位を小さくすることが可能となっている。そのため、動作時にもベース4の位置を安定させて、可動台6をより高い精度で振動させることができるようになっている。
また、周壁部42を駆動部25の保護という観点から見た場合には、少なくとも弾性支持手段としての板状バネ部材71〜73および、これに設けられた圧電素子81〜83を外部から覆うように構成されていることが好ましい。
上述のように定義した「ベース4の重心位置」に対して、第1の板状バネ部材71〜71より第2の板状バネ部材72〜72までの間に位置する剛体部分を「第1中間台51における重心位置」と称し、第2の板状バネ部材72〜72より第3の板状バネ部材73〜73までの間に位置する剛体部分を「第2中間台52における重心位置」と称することとする。第1の板状バネ部材71〜71および第2の板状バネ部材72〜72はそれぞれZ方向に略同一となる取付位置に設けるとともに、上記可動台6を中心として均等に配置している。このため、「第1中間台51における重心位置」と「第2中間台に置ける重心位置」のいずれもが上記「可動台6における重心位置」および「ベース4の重心位置」に対して、水平方向および垂直方向に対して略同一となるように構成されている。なお、板状バネ部材71〜73をZ方向に分割して設ける場合には、それらの中心の位置をもって上記の取付位置と考えることで足りる。
上述した重心位置の関係について換言すると、防振バネ22〜22を用いて弾性支持されている装置全体の質量を、ベース4側から第1の板状バネ部材71〜71および第2の板状バネ部材72〜72を介して順次接続される第1質量体、第2質量体および第3質量体と想定したとき、これらの質量体は各々の重心位置が水平方向および垂直方向に互いに略同一となる関係にある。
このように構成されているため、第1の板状バネ部材71〜71を介してX方向に弾性的に接続されたベース4側の質量体(第1質量体)と、第1中間台側の質量体(第2質量体+第3質量体)との2つの質量体として考えた場合、これらの2つの質量体の重心位置は水平方向および垂直方向のいずれに対しても略同一となる。そのため、第1中間台51側の部分が一体となってX方向に振動を生じた際に、双方の質量体の間で回転モーメントが生じることがないため、ベース4側に傾きが生じることがなく姿勢が安定して、結果として可動台6の動作安定化が達成できる。
また、装置全体を第2の板状バネ部材71〜71を介してY方向に弾性的に接続された第1中間台51側の質量体(第1質量体+第2質量体)と、第2中間台52側の質量体(第3質量体)との2つの質量体として考えた場合、これらの2つの質量体の重心位置は水平方向および垂直方向のいずれに対しても略同一となる。そのため、Y方向に対しても上記と同様の効果が得られる。
図5に示す本実施形態の振動装置では、X、Y、Z方向に独立した加振手段81〜83を有している。
まず、X方向への加振手段である第1の水平加振手段は、2個の第1の板状バネ部材71、71の両端近傍の表裏にそれぞれ2個ずつ貼設された合計8個の第1圧電素子81〜81から構成される。この第1圧電素子81〜81は、電圧を印加されることによって、Y方向に伸びまたは縮みを生じ、第1の板状バネ部材71、71に曲げを生じさせることによってX方向の変位を生じさせることが可能とされている。
第1の板状バネ部材71は端部のバネおさえ71dによって位置決めされるベース側接続点71aから、中央のバネ座71cとバネおさえ71eによって位置決めされる第1中間台側接続点71bとの間で、その中央に曲がりの方向が変化する屈曲点を有するため、当該部分にまで第1圧電素子81〜81を貼り付けることは、却って変形を阻害して効率を低下させることになる。そのため、第1圧電素子81〜81はバネ有効長の中央を避けて、いずれかの端部寄りに設けることが効率的である。
第1圧電素子81〜81は各々端部から同じ位置に設けられているとともに、出力を調整することで同じ変形を生じさせることができる。このようにすることで、X方向に離間させた第1の板状バネ部材71、71の間隔を保ったまま同じように変形させることができ、第1中間台51、51を、水平状態を保ったままX方向にのみ変位させることができる。
次に、Y方向への加振手段である第2の水平加振手段は、上述の第1の水平加振手段と同様、2個の第2の板状バネ部材72、72の両端近傍の表裏にそれぞれ2個ずつ貼設された合計8個の第2圧電素子82〜82から構成される。この第2圧電素子82〜82は電圧を印加されることによって、X方向に伸びまたは縮みを生じ、第2の板状バネ部材72、72に曲げを生じさせることによってY方向の変位を生じさせることが可能とされている。第2圧電素子82〜82も、第1圧電素子81〜81と同様の位置に取付がなされており、このようにすることで、Y方向に離間させた第2の板状バネ部材72、72の間隔を保ったまま同じように変形させることができ、第2中間台52を、水平状態を保ったままY方向にのみ変位させることができる。
さらに、Z方向への加振手段である垂直加振手段は、上下に2個ずつ設けられている板状バネ部材73〜73のうち上側の2個の板状バネ部材73、73の両端近傍の表裏にそれぞれ2個ずつ貼設された合計8個の第3圧電素子83〜83から構成される。この第3圧電素子83〜83は電圧を印加されることによって、X方向に伸びまたは縮みを生じ、第3の板状バネ部材73、73に曲げを生じさせることによってZ方向の変位を生じさせることが可能とされている。第3圧電素子83〜83も、第1圧電素子81〜81および第2圧電素子82〜82と同様の位置に取付がなされており、このようにすることで、Z方向に離間させた第3の板状バネ部材73、73の間隔を保ったまま同じように変形させることができ、可動台座61を水平状態を保ったままZ方向にのみ変位させることができる。なお、第3の圧電素子83〜83を、下側に設けている2個の第3の板状バネ部材73、73に設けることも可能であり、上側と下側の計4個の第3の板状バネ部材73〜73に設けることも可能である。
上記のように、X、Y、Zの各方向に変位を与えることのできる電圧を各々正弦波状に変化させることによって、可動台座61に対して各方向に周期的な加振力を付与することができる。
上記のようにして構成した振動装置2に対して図1に示す制御システム部3は、第1圧電素子81、第2圧電素子82および第3圧電素子83に各々正弦波状の制御電圧を付与することによって、X、Y、Zの各方向の振動を発生させるための周期的加振力を生じさせる。
そのため、制御システム部3は、正弦電圧を生じさせる発振機34を備えており、この正弦電圧をアンプ35により増幅した上で、各圧電素子81、82、83に出力する。さらに、上記制御システム部3はX、Y、Zの各方向の制御電圧を詳細に調整するための振動制御手段31を有している。なお、発振機34により生じさせる振動の周波数は、X、Y、Z方向のいずれかの振動系と共振する周波数とすることで、振動を増幅して省電力化を図るようにしてある。なお、全ての方向の振動系の振動が干渉することを避けるためには、各方向の固有振動数を離してもよい。この時、各方向の固有振動数は例えば−10%〜+10%程度離すようにする。
振動制御手段31は大きくは、X、Y、Zの各方向の制御電圧の振幅を調整する振幅調整回路31aと、それぞれの位相差を調整するための位相調整回路31bとからなる。本実施形態では、X、Y、Zの各制御電圧にそれぞれ対応した振幅調整回路31aを有するとともに、Z方向の制御電圧の位相を基準として、これと所定の位相差となるように制御電圧の位相を調整する位相調整回路31bをX、Yの制御電圧についてそれぞれ設けるように構成している。
そして、制御システム部3は、搬送する物品9に応じた搬送経路および搬送速度を決定するための搬送経路決定手段33と、決定した搬送経路と搬送速度に応じて各振幅調整回路31aおよび各位相調整回路31bに具体的な制御値を変更するための命令を出す振動切替手段32とを有している。
そして、搬送経路決定手段33は、搬送する物品9に応じた搬送経路と搬送速度のデータを内部に複数保存しており、その中から図示しない外部からの指示によって搬送経路と搬送速度を選択した上で、そこで選択した搬送経路および搬送速度に合わせて振動形態を切り替えるように振動切替手段32に対して命令を与える。
さらに、振動切替手段32では搬送経路や搬送速度が命令された目標値となるように、各振幅調整回路31aおよび各位相調整回路31bのそれぞれの具体的な制御値を決定して当該制御値に切り替えるよう命令を出力する。
上記のように構成した物品搬送装置1は、具体的には次のように動作し、可動台6に載せた物品9の搬送や分別などを行う。
ここで、図9の模式図に示すように簡略化して、可動台6がベース4に対してX、Y、Zの各方向に弾性体74、75、76により弾性的に支持するとともに、各方向の加振手段84、85、86を設けている場合を想定する。このように構成することで、X、Y、Zの三方向に設けた加振手段84、85、86によって可動台6を三方向に動作させることが可能とされている。図9の模式図における弾性体74〜76は、第1〜第3の板状バネ部材71〜73(図5参照)に相当するとともに、加振手段84〜86はそれぞれ第1〜第3圧電素子81〜83(図5参照)に相当する。
図9に示すモデルの可動台6に対して、Z方向にZ=Z0×sinωtで表される周期的な振動変位を与える。ここで、Z0はZ方向の振幅を、ωは角周波数を、tは時間を示す。さらに、X、Y方向にもそれぞれZ方向と同一周波数の振動を、X=X0×sin(wt+φx)、Y=Y0×sin(wt+φy)の式のように与えることとする。ここで、X0、Y0はそれぞれX方向、Yの振幅を、φx、φyはそれぞれX方向、Z方向の振動のZ方向の振動に対する位相差を示す。
このように、X、Y、Zの各方向に正弦波状の周期的な振動変位を加えることにより、可動台6にはこれらが合成された三次元的な振動を生じさせることができる。例えば、図9に示すように、Z方向の振動成分に対してφx、φyの位相差を持たせてX、Y方向の振動を生じさせたとき、二次元的にはXZ平面上で右側を上にした楕円軌道を有する振動が生じ、YZ平面上で右側を下にした楕円軌道を有する振動が生じる。そして、さらにこの2つを合成することで、図中右下に示すように三次元空間上での楕円軌道が生じる。
そして、各方向の振動変位の振幅および位相を変えることにより、XZ平面、YZ平面内の二次元の楕円軌道の大きさや向きを変更することができ、対応して三次元空間上の楕円軌道の大きさや向きを自由に変更することができる。なお、このように各方向への周期的な振動変位を付与するために、制御上は各方向への周期的加振力を付与することで対応を行っている。
以上のように、可動台6が楕円軌道を描きつつ振動することによって、可動台6の上に載せられた物品9は移動を行う。そして、この移動のうちX方向への移動速度成分は上記XZ平面内の楕円軌道によって制御でき、Y方向への移動速度成分は上記YZ平面内の楕円軌道によって制御できる。すなわち、Z方向への振動成分を基準としてX方向、Y方向のそれぞれの振動の振幅と位相差を変化させることで、X、Y方向への移動速度成分を変化させ、任意の方向に搬送させることが可能となる。
具体的には移動速度の変更は次のようにして行う。
発明者らの知見によれば、図9を参照しつつ図10を用いて説明すると、位相差φx(φy)によって物品9の移動速度Vx(Yy)は正弦波に類似したカーブを描くように変化する。そのため、Z方向の振動成分に対するX方向の振動成分の位相差を図10におけるφ12に設定したときにはXが正となる方向に物品9は搬送されていく。また、位相差をφ14に設定したときには、Xが負となる方向に物品9は搬送されていく。これらに対して、位相差をφ11、φ13と設定したときには、移動速度Vxは0になって、物品9はX方向に静止した状態となる。さらに、φ11〜φ13の間またはφ13〜π(-π)〜φ11の間で位相差を変化させることによって、それぞれ正の方向、負の方向に対する速度を増減させることができる。こうした関係は、X方向だけでなくY方向にも成り立ち、同様にZ方向の振動成分に対する位相差を設定することで移動方向と移動速度を変化させることができる。
このように、X、Y各方向の振動成分の振幅X0、Y0と、Z方向振動成分に対する位相差φx、φyとを変化させることによって、X、Y方向への移動速度Vx、Vyを変化さることができる。
さらに、発明者らの知見によれば、図9を参照しつつ説明すると、図10で示した位相差と物品9の移動速度Vx(Yy)との関係を示すカーブは、物品9と可動台6との摩擦係数によって変化し、図11に示す関係となる。すなわち、2種類の物品W11、W12と可動台6との間の摩擦係数をそれぞれμ11、μ12としてμ11<μ12の関係があるとき、W12の時の移動速度のグラフは、W11の時の移動速度のカーブを位相差が正となる方向にずらした形状になる。そのため、楕円振動を行う可動台6の上に同時に摩擦係数の異なる物品9を置いた場合には、移動速度及び移動方向が異なることになる。
具体的には、図11に示す位相差φ11に設定している場合にはW11は移動することなく、W12が負の方向に移動することになる。また、位相差をφ11からφ12の間に設定した場合には、W11を正の方向に、W12を負の方向に移動させることができる。そして、φ12に設定すると、W12を移動させずに、W11のみを正の方向に移動させることができる。また、φ12からφ14の間に設定すると、W11、W12ともに正の方向に移動させることができるが、φ13を境にW11とW12の速度の大小を入れ替えることができる。さらに、φ12からφ14の範囲で位相差を細かく変更すれば、W11とW12の速度比も変更することができる。
そして、位相差をφ14とすれば、W11を移動させずに、W12のみを正方向に移動させることができる。さらに、位相差をφ14からφ15の間に設定すれば、W12を正方向に、W11を負の方向に移動させることができる。位相差をφ15と設定すれば、W12を移動させずにW11のみを負の方向に移動させることができる。そして、位相差をφ15からπの範囲にしたときは、W11とW12の双方とも負の方向に移動させることができ、この範囲で位相差を変えることで両者の移動速度の比を変更することもできる。
さらに、発明者らの知見によれば、図9を参照しつつ図12を用いて説明すると、位相差φx(φy)と物品9の移動速度Vx(Yy)との関係は、振幅X0(Y0)を変えることによっても変化する。すなわち、位相差φx(φy)に対する物品9の移動速度Vx(Yy)である正弦波類似のカーブは、概ね振動変位の振幅X0(Y0)に比例して変化する。このことから、物品9の移動速度Vx(Yy)を2倍にしたい場合には、概ねX(Y)方向の振動変位の振幅を2倍にすればよい。そのためには、それに応じた加振力を与えるべく、制御電圧の振幅を変化させればよい。
このようにして、摩擦係数の異なる2種の物品9をX(Y)方向に搬送する場合においては、Z方向の振動に対するX(Y)方向の振動の位相差φx(φy)を変更することで、2種の物品9のうちどちらかのみを移動させることや、移動方向を変えつつ速度比を変えることが可能となり、さらにX(Y)方向の振動の振幅を変えることで、移動速度の絶対値を制御することができる。これらを組み合わせることで、片方の速度を維持したままで、他方の速度を変更することや搬送の向きを変更することも可能となる。
以上のような、一方向への搬送速度および向きの制御を、二方向に展開することで、XY平面内で自由に移動させることが可能となる。すなわち、水平方向の振動をX、Yの2方向にして、Z方向の振動とそれぞれ組み合わせることで、XZ平面内の楕円振動、YZ平面内の楕円振動をそれぞれ作り出し、これらを合成した三次元的な楕円振動を発生させ、この楕円振動の向きや大きさを三次元的に切り替えることで、より詳細に物品9の移動方向や移動速度を制御できる。そして、Z方向の制御電圧によって生じる周期的加振力を基準として、X方向、Y方向の制御電圧によって生じる周期的加振力の振幅や位相をそれぞれ変更することによって、XZ平面内の楕円振動成分とYZ平面内の楕円振動成分をそれぞれ変更すれば、上述の図10〜12の関係に従ってそれぞれX方向、Y方向の移動速度成分を物品9に与えることが可能となる。
このことから、具体的には次のようにして物品9の搬送を行わせることが可能となる。以下、図1を参照しつつ、図13(a)〜(f)の各物品の搬送形態を例示した平面図に従って説明を行う。
まず、物品9が一種だけである場合には、図13(a)に示すように、物品9を初期(T0)の時点よりX方向に移動させ、ある時点(T1)よりY方向の移動速度成分も追加して方向を変えて移動させることができる。こうした場合には、物品9の種類に応じて搬送先を変更する場合や、別に設けたカメラによる検査データに基づいて当該物品9を不良品と判断してライン外に搬送する場合がある。このような形態の搬送を行うため、図1における搬送経路決定手段33は、外部より被搬送物関連データとして搬送する物品9の種類を入力され、あらかじめ内部に保存されたデータに基づいて物品9に応じた搬送経路と搬送速度を選択し、あるいは被搬送物関連データとしての検査データに基づいて搬送方向と搬送速度を決定して振動切替手段32に出力する。当該振動切替手段32においては、その搬送方向と搬送速度に対応して各方向の振動形態の切替の要否を判断するとともに、切替が必要な場合には各方向の周期的加振力の振幅と位相を調整するため各振幅調整回路31aおよび位相調整回路31bに具体的な制御値を命令する。
そして、こうした搬送経路変更の判断を随時行い、振動切替手段32によって振幅、位相を調整していくと、図13(b)に示すようにXY方向に自在な軌跡を描かせつつ物品9を移動させることが可能となる。搬送経路変更の判断は、あらかじめ設定したタイミングによるものであっても、外部からの信号に応じて行うものであっても良い。
また、図13(c)に示したように、物品9a、9bが摩擦係数の異なる二種のものである場合には初期段階(T0)は一方向に同速度で搬送しておき、ある時点(T1)より異なる方向に分岐させて移動させることも可能である。この場合には初期段階(T0)では、X方向には図11における位相差φ13で振動させ、Y方向には振動を生じさせずにおき、T1の時点からY方向にも振動を生じさせZ方向との振動位相差をφ11とφ12の間またはφ14とφ15の間に切り替えたものである。同時にX方向の速度においてもZ方向に対する振動の位相差をφ13よりずらすことで、物品9a、9bの間にX方向の速度差を持たせるように切り替えている。この振動の切り替えにあたっても、図1における搬送経路決定手段33が、設定されたタイミングに応じて、または外部から入力された被搬送物関連データに基づいて適切な搬送経路と搬送速度を決定し、それに基づいて振動切替手段32に搬送方向および搬送速度の変更命令を出す。そして、当該振動切替手段32においては、命令された搬送方向および搬送速度に対応した各方向の振幅、位相の具体的制御値を決定し、各振幅調整回路31a、位相調整回路31bに当該制御値に変更するように命令を出す。
また、同様の制御を行うことによって、図13(d)のように物品9a、9bのうち、片方のみを動かすことや、両者に速度差を設けることも可能である。さらに、図13(e)のように、任意の方向を選択した上で、その方向に沿って互いに逆向きに移動させることも可能である。
さらに、このような搬送経路および速度の変更を連続して行うことで、図13(f)のように物品9a、9bの搬送経路と搬送速度をXY平面内で、それぞれ独立させて同時に制御することが可能となる。
また、上記のように摩擦係数の異なる物品9を異なる搬送方向に搬送させるように制御することによって、厳密には摩擦係数が同じものであっても表面形状が異なるなど、見かけ上摩擦係数が異なっているようにとらえられるものについても搬送方向を異ならせることもできる。例えば、同一部材の表面と裏面であっても、面の凹凸が異なり可動台6との接触面積が大きく異なるような場合が該当する。
上記のように本実施形態における振動装置2を用いて、物品移動装置としての物品搬送装置1を構成することで、物品9を任意方向に搬送させることが可能となる。さらに、本実施形態における振動装置2は、上述したように第1〜第3質量体の重心位置関係が構成されているために、第1の板状バネ部材71〜71を介してX方向に弾性的に接続される部分の重心位置が水平方向および垂直方向に略同一に構成され、かつ、第2の板状バネ部材72〜72を介してY方向に弾性的に接続される部分の重心位置が水平方向および垂直方向に略同一に構成されることとなり、X方向およびY方向への振動に際してベース4側と、可動台6側との間での回転モーメントの発生を抑制することが可能となる。こうすることで、ベース4は防振バネ22〜22によって固定台21上で弾性的に支持されているものの、傾きを生じることなく姿勢を安定に保つことが可能となる。そのため、ベース4に支持される可動台6側に安定して振動を生じさせることが可能となり、より精度の高い物品9の搬送を行わせることが可能となる。また、ベース4の姿勢が安定することによって、不要な振動が固定台21および設置面に対して伝達することがなくなり、振動の伝達および騒音の発生を抑制して作業環境の向上に寄与させることができる。
さらに、第1の板状バネ部材71〜71および第2の板状バネ部材72〜72が第1〜第3質量体の重心位置に対して、垂直方向に略同一となるように設けられていることから、第1圧電素子81〜81および第2圧電素子82〜82によるX方向およびY方向への加振力が重心方向に作用するようになっている。そのため、上記第1〜第3質量体の姿勢を安定させて、可動台6の動作をより安定化させることが可能となっている。
また、本実施形態における振動装置2においては、上述した第3質量体の一部を構成する可動台6にカウンタウエイト73f、73fを設けて可動台6の重心位置を、第3の板状バネ部材73〜73間の中心と略同一にするように構成している。そのため、X、Y方向に振動を生じさせた際に、慣性力の作用から可動台6に傾きが生じ、いわゆる首振りが生じることがなく、可動台6をより安定して振動させることが可能となり、一層精度の高い動作を行わせることが可能となる。
さらには、ベース4は周壁部42が設けられていることによって、駆動部25の保護が図れるとともに、ベース4側の質量が増加することで加振力の反力によるベース4の変位を小さくすることができるため、より可動台6の動作安定性を向上させることが可能となっている。
以上のように、本実施形態に係る振動装置2は、防振バネ22〜22を介して接地面上に支持されたベース4と、当該ベース4に対して弾性的に支持された可動台6と、当該可動台6をX方向に振動させる第1圧電素子81〜81と、前記可動台6をY方向に振動させる第2圧電素子82〜82と、前記可動台6をZ方向に振動させる第3圧電素子83〜83とを備えた振動装置2であって、前記ベース4と前記可動台6との間に第1中間台51、51と第2中間台52とを備えるとともに、前記ベース4、前記第1中間台51、51、前記第2中間台52および前記可動台6を順次X方向、Y方向およびZ方向に弾性的に接続する複数の第1の板状バネ部材71〜71と、複数の第2の板状バネ部材72〜72と、複数の第3の板状バネ部材73〜73とを具備しており、装置全体を前記第1の板状バネ部材71〜71と第2の板状バネ部材72〜72とを境界とする第1質量体、第2質量体および第3質量体と想定したとき、これらの質量体の各重心位置が垂直方向および水平方向に略同一となるように構成したものである。
このように構成しているため、XYの水平2方向と垂直方向(Z方向)の3方向に加振して可動台6に三次元的な振動を生じさせることができるとともに、ベース4の下に防振バネ22〜22を設ける構成としても、水平方向に加振力を生じさせた際に回転モーメントの発生を抑制してベース4の姿勢を安定させ、可動台6に正確に振動を生じさせることができるようになる。また、設置面に対して振動の伝播を行わせることがなく、周辺に対する振動の伝達や騒音の発生を抑制して作業環境の改善も図ることが可能となる。
さらに、前記各質量体の重心位置と各板状バネ部材71〜73の取付位置とが垂直方向に略同一となるように構成しているため、水平2方向に対して可動台6の姿勢をより安定させつつ振動を生じさせることができるようになる。
また、前記複数の第3の板状バネ部材73〜73が前記各質量体の重心位置を中心として各加振方向に対して対称となるように設けられているとともに、これらの第3の板状バネ部材73〜73を挟んで対称となる位置に前記可動台6に対するカウンタウエイト73f、73fが設けられているように構成しているため、動作時の可動台6の首振りなど予期せぬ振動を抑制することも可能となる。
さらに、前記ベース4の外周縁近傍より立ち上げた周壁部42を設けており、前記周壁部42が板状バネ部材71〜73および圧電素子81〜83を囲むように構成するとともに、ベース4の重心位置を調整する重心調整部材とするように構成しているため、ベース4の重心位置を高くして、上記の質量体ごとの重心位置を合わせやすくするとともに、駆動部25を保護するためのカバーとして機能させることが可能となる。
さらに、本実施形態に係る物品移動装置1は、上記のように構成した振動装置2と、当該振動装置2が有する複数の圧電素子81〜83による周期的加振力を、位相差を有しつつ同一の周波数で同時に発生させて前記可動台6に楕円振動を生じさせるように前記各圧電素子81〜83を制御する振動制御手段31を備え、振動制御手段31により生じる楕円振動を用いて可動台6上に載せた物品9の搬送または分別の少なくとも何れか一方を行うように構成したものである。このようにしているため、物品9の搬送機能を有する制御性に優れた物品搬送装置1として有効に構成することができる。
<第2実施形態>
図14は、第1実施形態におけるものと同一の振動装置2を用いて、物品移動装置としての物品分別装置101を構成した第2実施形態を示すものである。第1実施形態の場合と同じ部分には同じ符号を付し、説明を省略する。
この実施形態においては、振動装置2としての構成は第1実施形態の場合と同様であり、これを制御するための制御システム部103が異なるにとどまる。具体的には、図1に示したように第1実施形態における制御システム部3が有する振動切替手段32、搬送経路決定手段33がなく、これらに代わるものとして図14のように位相差入力部132を有している。位相差入力部132ではZ方向の制御電圧の位相を基準とした、X方向、Y方向のそれぞれの位相差を入力されることで、当該位相差に設定するようにX、Y方向に対応する各位相調整回路31bに命令を出すようになっている。
ここで、本実施形態における物品分別装置101の動作原理も、上述の第1実施形態において図9〜12を用いて説明したものと同様であり、可動台6と物品9との摩擦係数と各方向の振動の位相差および振幅によって、物品9の移動速度と移動方向を変更するものである。
具体的には次のようにして、物品9の分別を行う。
発明者らの知見によれば、図9を参照しつつ図15を用いて説明すると、位相差φx(φy)によって物品9の移動速度Vx(Yy)は正弦波に類似したカーブを描くように変化するとともに、物品9と可動台6との間の摩擦係数によっても変化する。すなわち、3種類の物品W21、W22、W23と可動台6との間の摩擦係数をそれぞれμ21、μ22、μ23としてμ21<μ22<μ23の関係があるとき、W22の時の移動速度のグラフは、W21の時の移動速度のカーブを位相差が正となる方向にずらした形状となり、W23の時の移動速度のグラフはそれをさらに位相差が正となる方向にずらした形状になる。そのため、楕円振動を行う可動台6の上に同時に摩擦係数の異なる物品9を置いた場合には、移動速度及び移動方向が異なることになる。
具体的には、図15に示す位相差φ21に設定しているときには、W21は正の方向に進み、W22とW23とは同じ負の方向に進むがW23のほうがW22よりも移動速度が大きくなる。さらに位相差φ22に設定すると、W21は正方向に、W22はW21よりも小さな速度で正方向に進み、W23は負の方向に進む。位相差をφ23に設定すると、W21は負の方向に進み、W22は正方向に、W23はW22よりも大きな速度で正方向に進む。位相差をφ24に設定すると、W21は負の方向に、W22はW21よりも小さな速度で負の方向に進み、W23は正の方向に進む。このようなφ21〜φ24以外にも位相は任意に設定可能であり、W21からW23を全て正方向または逆方向に移動させることや、移動速度の大きさの順番を変更することも可能である。
また、図12を用いて上述したように、位相差φx(φy)と物品9の移動速度Vx(Yy)との関係は、振幅X0(Y0)を変えることによっても変化する。すなわち、位相差φx(φy)に対する物品9の移動速度Vx(Yy)である正弦波類似のカーブは、概ね振動変位の振幅X0(Y0)に比例して変化する。このことから、物品9の移動速度Vx(Yy)を2倍にしたい場合には、概ねX(Y)方向の振動変位の振幅を2倍にすればよい。そのためには、それに応じた加振力を与えるべく、制御電圧の振幅を変化させればよい。
このような一方向に対する振動制御を、直交するX、Y方向に同時に対して行うことによって、複数の種類の物品9を可動台6上で分別し異なる方向に移動することができる。
以下、図16に示すように、可動台6上にW21、W22、W23の三種の物品が載っていることを想定して説明を行う。なお、それぞれの摩擦係数はμ21、μ22、μ23としこれらの間にμ21<μ22<μ23の関係があるものとする。
このような物品を可動台6上で移動させる速度は、X方向移動速度成分Vx、Y方向移動速度成分Vxに分解して考えることができ、上述したようにVx、VyはそれぞれXZ平面内の楕円軌道、YZ平面内の楕円軌道によって制御でき、それぞれZ方向の振動成分に対する位相差との関係で、上述の図15の関係を有する。
ここで、摩擦係数の異なる物品W21、W22、W23を移動する方向として、図16のように上下左右で領域を分け、それぞれA、B、C、D領域とする。X、Yの振動成分のZ方向振動成分に対する位相差φx、φyを変化させることで、移動方向をこれらの領域のいずれかに設定することが可能となる。
例えば、φx、φyをそれぞれ、図15に示すφ21、φ22に設定したとき、図17(a)の表に示したように、W21、W22、W23のX方向移動速度成分Vxは、それぞれ正(+)、負(−)、負(−)の値となり、Y方向移動速度成分Vyは、それぞれ正(+)、正(+)、負(−)の値となる。すなわち、図16に示す領域においては、W21はD領域に、W22はC領域に、W23はA領域に移動しようとすることになり、その結果、図19(a)に示すようにW21〜W23はそれぞれの領域に分別されつつ移動する。
これと同様に図17(b)の表に示すように、φx=φ21、φy=φ24のときはW21、W22、W23はそれぞれB、A、C領域に向かい、その結果、図19(b)に示すようにW21〜W23はそれぞれの領域に分別されつつ移動する。
さらに、図17(c)、(d)および図18(e)〜(h)に示すように、φx=φ22、φy=φ21のときはW21、W22、W23はそれぞれD、B、A領域に、φx=φ22、φy=φ23のときはW21、W22、W23はそれぞれB、D、C領域に、φx=φ23、φy=φ22のときはW21、W22、W23はそれぞれC、D、B領域に、φx=φ23、φy=φ24のときはW21、W22、W23はそれぞれA、B、D領域に、φx=φ24、φy=φ21のときはW21、W22、W23はそれぞれC、A、B領域に、φx=φ24、φy=φ23のときはW21、W22、W23はそれぞれA、C、D領域に分別されつつ移動することになる。
このように摩擦係数の異なる物品9であればそれぞれ別の方向に移動することができるとともに、それぞれを任意の移動方向に変更することも可能である。
上記のような原理を用いて、具体的には、次のように本物品分別装置101を用いて物品9の分別を行う。以下、図14および図15を用いて説明を行う。
まず、位相差入力部132よりZ方向の振動成分に対するX方向、Y方向の振動成分のそれぞれの位相差φx、φyを入力する。この入力値に従って位相差入力部132は、X、Y方向の振動の位相をφxまたはφyずらすように、それぞれに対応する位相調整回路31b、31bに命令する。そして、位相調整回路31bは、もともとの発振機34の信号より位相をφxまたはφyずらして制御電圧として第1圧電素子81、第2圧電素子82に加えることでZ方向の振動成分との位相差を与える。このようにして、例えば位相差入力部132よりφx=φ23、φx=φ22と設定するものとして入力すると、上記のW21、W22、W23の性質を有する物品9は、それぞれ図18(e)のケースと同様にして、図16のC、D、B領域に分別することができる。
また、位相差入力部132より図17、図18に示すような位相差を設定すれば、それぞれの表中に記載の通り物品9を分別することができる。
ここで、本発明においては、上記分別を行うための位相差に設定したときに、移動速度が0になる摩擦係数を基準摩擦係数として定義する。すなわち、図15における位相差φ21、φ23に対応する基準摩擦係数はμaであり、φ22、φ24に対応する基準摩擦係数はμbである。すなわち、位相差をφ23に設定することは、分別を行う境界として基準摩擦係数をμaに設定しつつ、これより摩擦係数が大きな物品9は正の方向に、摩擦係数が小さな物品9は負の方向に進ませるように設定することと同義である。同様に、位相差をφ22に設定することは、分別を行う境界として基準摩擦係数をμbに設定しつつ、これより摩擦係数が大きな物品9は負の方向に、摩擦係数が小さな物品9は正の方向に進ませるように設定することと同義である。
よって、上記の位相差入力部132を、X、Yの各方向に分別する基準として位相差そのものを入力するものではなく、X、Yの各方向に対する基準摩擦係数と、当該基準摩擦係数に対する摩擦係数の大小に応じて物品が進行する正負のいずれかの方向とを入力するものとして、これらの情報から内部に保存しておいた図15のグラフを基にして自動的に位相差を設定して出力するように構成することも可能である。
さらに、図15から分かるように、Z方向の振動に対して振動の位相差を変えることで、摩擦係数の異なる物品9の移動方向を変更できると同時に、速度差を設けることも可能である。そのため、本物品分別装置101は可動台上6の四隅に対応する領域に分別していくだけでなく、それらの領域の中間などのさらに細かな領域設定を行った上で、4種類以上に分別させることも可能である。
また、上記のように摩擦係数の異なる物品9を分別させるように制御することによって、厳密には摩擦係数が同じものであっても表面形状が異なるなど、見かけ上摩擦係数が異なっているようにとらえられるものについても分別することができる。例えば、同一部材の表面と裏面であっても、面の凹凸が異なり可動台6との接触面積が大きく異なるような場合が該当する。
以上のように、本実施形態の物品移動装置101は、第1実施形態において上述した振動装置2と、当該振動装置2が有する圧電素子81〜83による周期的加振力を、位相差を有しつつ同一の周波数で同時に発生させて前記可動台6に楕円振動を生じさせるように前記各圧電素子81〜83を制御する振動制御手段31とを備え、前記振動制御手段31により生じる楕円振動を用いて可動台6上に載せた物品の分別を行うように構成したものである。このようにしているため、複数の物品9の分別機能を有する制御性に優れた物品分別装置101として有効に構成することができる。
<第3実施形態>
図20は、第1実施形態および第2実施形態におけるものとは別の振動装置202として構成した第3実施形態を示すものである。第1実施形態および第2実施形態の場合と同じ部分には同じ符号を付し、説明を省略する。
この振動装置202は後述するように、可動台206に対してX方向およびZ方向の加振力を与えることで、XZ平面内で任意の楕円振動軌跡を生じさせることが可能であり、制御システム部3(図1参照)を加えることで、Xの正逆方向に対して物品の搬送または分別を行う物品移動装置201として構成できる。
本実施形態3で用いる制御システム部に関する詳細な構成説明は割愛するが、図1における制御システム部3、および図14における制御システム部103より、Y方向の加振力を制御するための位相調整回路31b、振幅調整回路31aおよびアンプ35を省略した構成とするだけで足りる。
本実施形態における振動装置202は、図20および図22に示すように、矩形プレート状に形成された固定台221の上部に、防振バネ22〜22を介してベース204が弾性的に支持されている。ベース204に対しては、後述するように可動台206がX方向およびZ方向に対して弾性支持されているとともに、これらの支持部を覆うようにベース204の外周縁に沿って周壁部242が設けられている。周壁部242は、4つのブロックからなる下部錘242a〜242bを矩形状の枠体として構成し、その上部に2つのブロックからなる上部錘242c、242cを設けることによって構成している。
可動台206の上部には、X方向に延在する載置台263が設けられており、この載置台263の上面は載置面263aとして物品9を載せることが可能に構成されている。そして、載置面263aを幅方向に挟むようにしてYの正逆方向それぞれに段差部263b、263bが設けられており、載置面263aに載せた物品9のY方向への移動を規制するようにしている。
図20の状態より載置台263および周壁部242の一部を取り外した状態を図21に示す。
可動台206を中心とする弾性支持手段および加振手段の基本的な構成は、図5に示した第1実施形態における振動装置2とほぼ同様であり、これよりY方向に関する第2の板状バネ部材72、72および第2圧電素子82〜82を取り去り、第1中間台51、51に対して直接的に第3の板状バネ部材73、73を支持させた構成といえる。
図21を用いて簡単に説明すると、まず、ベース204に対して、水平方向であるX方向に弾性変位可能に構成された2個の第1の板状バネ部材271、271を介して2つの中間台251が弾性支持されている。さらに、中間台251に対して、垂直方向であるZ方向に弾性変位可能に構成された4個の第3の板状バネ部材273〜273を介して可動台座261が弾性支持されている。
ここで、図22におけるA−A断面矢視図を図23に示す。この図から分かるように、第3の板状バネ部材273〜273はバネ間ブロック273dを挟んで上下に平行に配置されており、さらにその上部には第3の板状バネ部材273を挟んで可動台座261が、下部には第3の板状バネ部材273を挟んでバネ座273eが設けられている。
可動台座261は、その上部に載置台263が設けられることで、これと一体化して可動台206を構成する。
また、バネ座273eには、カウンタウエイト273f、273fが設けられており、可動台206とのバランスを取り、第3の板状バネ部材273〜273を介して弾性接続されている可動台206側全体の重心位置が第3の板状バネ部材273〜273間の中心位置に対して水平方向および垂直方向に略同一の関係となるように構成している。
また、この重心位置に対して、第3の板状バネ部材273〜273の中心位置も垂直方向に同一となるようにしている。さらに、中間台251、251、第1の板状バネ部材271、271および第3の板状バネ部材273〜273は全て、上記重心位置を中心にX、Y、Zの各方向に対して対称になるように設けている。そのため、第1の板状バネ部材271、271によって支持される中間台251、251側の質量全体の重心位置は、第3の板状バネ部材273〜273間の中心と水平方向および垂直方向に略同一の位置となる。
さらに、ベース204に対して周壁部242を設けることによって、ベース204側の重心位置を調整可能に構成している。こうすることで、ベース204側の重心位置も前記第3の板状バネ部材273〜273間の中心と水平方向および垂直方向に略同一の位置となっている。
上記の点を換言すると、装置全体を第1の板状バネ部材271、271を境界とするベース204側の質量体と、中間台251側の質量体からなる2個の質量体に置き換えて考えた場合、これらの質量体の重心位置が水平方向および垂直方向に対して略同一の位置になる関係となっているものといえる。
また、この振動装置202においては、第1の板状バネ部材271、271および第3の板状バネ部材273〜273のうち上方に位置するものに対して、それぞれ圧電素子281、281、283、283が設けられており、これを電圧により制御することで各方向への加振を行うことができるようになっている。
この振動装置202を用いて物品移動装置201として構成した場合には、図22に示すように載置面263a上に置かれた物品9をXの正方向または逆方向の任意の方向に、さらには速度を変更しつつ搬送を行わせることが可能となる。また、物品9が、摩擦係数が異なる物品9a、9bである場合には、一方をXの正方向に移動させつつ他方を逆方向に移動させることによって両者を分別させることも可能となる。
このような動作を行わせる場合において、上述したような重心位置の関係となっているためにベース204の姿勢を安定化させて、可動台206の振動を精度良く生じさせることが可能となる。また、可動台206に対してカウンタウエイトが273f、273fが取り付けられて重心位置が適正化されていることによって、可動台206の首振り現象も抑えられてより精度が向上する。さらに、ベース204に対して周壁部242が設けられていることで駆動部225の保護を図ることができるとともに、ベース204の重量を増大させて、加振力に対する反力によるベース204の動作を小さくして、より上記の効果を高めることが可能となる。
以上のように、本実施形態における振動装置202は、防振バネ22〜22を介して接地面上に支持されたベース221と、当該ベース221に対して弾性的に支持された可動台206と、当該可動台206を水平方向に振動させる第1圧電素子281〜281と、前記可動台206を垂直方向に振動させる第3圧電素子283〜283とを備えた振動装置であって、前記ベース221と前記可動台206の間に中間台251、251を備えるとともに、前記ベース221、中間台251および前記可動台206を順次水平方向および垂直方向に弾性的に接続する複数の第1の板状バネ部材271、271と複数の第3の板状バネ部材273〜273とを具備しており、装置全体を第1の板状バネ部材271、271を境界とする2個の質量体と想定したとき、これらの質量体の各重心位置が垂直方向および水平方向に略同一となるように構成したものである。
このように構成しているため、水平方向と垂直方向に加振して可動台206に楕円振動軌跡を生じさせることができるとともに、ベース204の下に防振バネ22〜22を設ける構成としても、水平方向に加振力を生じさせた際に回転モーメントの発生を抑制してベース204の姿勢を安定させ、可動台206に正確に振動を生じさせることができるようになる。また、設置面に対して振動の伝播を行わせることがなく、周辺に対する振動の伝達や騒音の発生を抑制して作業環境の改善も図ることが可能となる。
<第4実施形態>
図24は、第1〜第3実施形態におけるものとは別の振動装置302として構成した第4実施形態を示すものである。第1〜第3実施形態の場合と同じ部分には同じ符号を付し、説明を省略する。
この振動装置302は、第3実施形態の場合と同様、可動台306に対してX方向およびZ方向の加振力を与えることで、XZ平面内で任意の楕円振動軌跡を生じさせることが可能なものであり、第3実施形態の振動装置202(図20参照)の場合と比較して、高さ方向(Z方向)に大きく、機幅方向(Y方向)に小さくなるように構成したものである。この振動装置302においても、実施形態3の場合と同様、制御システム部3(図1参照)を加えることで、Xの正逆方向に対して物品の搬送または分別を行う物品移動装置301として構成可能である。
本実施形態における振動装置302は、図24および図26に示すようにX方向に延在する矩形プレート状に形成された固定台321の上部に、防振バネ22〜22を介してベース304が弾性的に支持されている。ベース304に対しては、後述するように可動台306がX方向およびZ方向に対して弾性支持されているとともに、これらの支持部を覆うようにベース304の外周縁に沿って周壁部342が設けられている。周壁部342は、4つのブロックからなる錘部材342a〜342bより矩形状の枠体として構成している。
可動台306の上部には、X方向に延在する載置台363が設けられており、載置台363の上面は載置面363aとして物品9を載せることが可能に構成されている。そして、載置面363aを挟むようにしてYの正逆方向それぞれに段差部363b、363bが設けられており、載置面363aに載せた物品9のY方向への移動を規制するようにしている。
図24の状態より載置台363および周壁部342の一部を取り外した状態を図25に示す。
可動台306を中心とする弾性支持手段および加振手段の基本的な構成は、図21に示した第3実施形態における振動装置202とほぼ同様であり、ベース204に対して可動台206側をX方向に弾性支持するための第1の板状バネ部材271、271の取付方向および中間台251、251の構成が異なるものである。
図25を用いて簡単に説明すると、まず、ベース304に対して、一対の第1の板状バネ部材371、371をX方向に離間させつつ平行に配置して、Z方向に立ち上げるように取付けている。そして、それらの上部に中間台の一部を構成する2つのブロック351a、351aを接続している。こうすることで、これらのブロック351a、351aがベース304に対してX方向に弾性支持される。
さらに、これらのブロック351a、351a間に渡って、法線方向をZ方向に向けつつ上下に対向して配置した一対の第3の板状バネ部材371、371を設け、これらに支持させることによって、可動台座361をZ方向に弾性支持するようにしている。一対の第3の板状バネ部材371、371の各端部の間にはブロック351b、351bが設けられており、第3の板状バネ部材371、371間の平行を保つことができるようにしている。また、これらの位置関係を保持可能にするために、一対のプレート351c、351cを補強部材として設けており、これらによって挟み込むような構成としている。上記のブロック351a、351a、ブロック351b、351bおよびプレート351c、351cは剛体としての一個の中間台351を構成して、ほぼ一定の形状を保つようにされている。
ここで、図26におけるA−A断面矢視図を図27に示す。この図から分かるように、第3の板状バネ部材373、373はバネ間ブロック373dを挟んで上下に平行に配置されており、さらにその上部には第3の板状バネ部材373を挟んで可動台座361が、下部には第3の板状バネ部材373を挟んでバネ座373eが設けられている。
可動台座361は、その上部に載置台363が設けられることで、これと一体化して可動台306を構成する。
また、バネ座373eには、カウンタウエイト373fが設けられており、可動台306とのバランスを取り、第3の板状バネ部材373、373を介して弾性接続されている可動台306側全体の重心位置が、第3の板状バネ部材373、373間の中心位置に対して水平方向および垂直方向に略同一の関係となるように構成している。
さらに、第1の板状バネ部材371、371を境界とする質量間の重心位置の関係および第3の板状バネ部材を境界とする質量間の重心位置の関係についても、第3の実施形態と同様に構成している。第3の実施形態と異なる点は、第3の板状バネ部材373、373間の中心と第1の板状バネ部材371、371間の中心とがZ方向に僅かにずらして構成されている点のみといえる。
上記のように構成した場合であっても、第3実施形態の場合と同様、可動台306に対してX、Z方向に振動を生じさせることが可能となり、制御システム部を加えて物品移動装置301として構成することで物品の搬送および分別が可能となる。
この実施形態における振動装置302は、第3実施形態の場合と同様の重心位置関係となっていることで、動作中のベース304の姿勢を安定化させて、可動台306の振動を精度良く生じさせることが可能となる。また、可動台306に対してカウンタウエイト373fが取り付けられて重心位置が適正化されていることによって首振り現象も抑えられ、より動作精度が向上する。さらに、ベース304に対して周壁部342が設けられていることで駆動部325の保護を図ることができるとともに、ベース304の重量を増大させて、加振力に対する反力によるベース304の動作を小さくして、より上記の効果を高めることが可能となっている。
なお、各部の具体的な構成は、上述した第1〜第4実施形態のみに限定されるものではない。
例えば、上述の実施形態においては、各方向への加振力をX、Y、Zの互いに直交する方向に与えるように構成していたが、可動台6(206、306)に楕円の振動軌跡を生成・変更できるかぎり必ずしも直交させることは必要でなく、単にそれぞれの方向を交差させるだけでよい。また、各加振手段は厳密に垂直、水平方向に設定することも必要ではないし、ベース4(204、304)を傾けることや、垂直に設置する等の種々の利用の態様も可能である。より具体的には、加振手段を傾けて設けた場合には一個の加振手段によって水平と垂直方向の複数の方向の成分を含む加振力を生じさせることも可能である。
また、上述の実施形態においては、板状バネ部材71〜73(271〜273、371〜373)に貼りつける圧電素子81〜83(281〜283、381〜383)を両面に貼りつけたバイモルフ型としていたが、それぞれを裏表の両面に1個ずつ貼り付けたユニモルフ型としてより簡単に構成することも可能である。
また、上述の実施形態においては、図5、図21および図25に記載するように、各圧電素子81〜83(281〜283、381〜383)は板状バネ部材71〜73(271〜273、371〜373)のそれぞれ外側半分もしくは下側半分に貼りつけてあるが、これを逆にして内側半分もしくは上側半分に貼りつける構成とすることも可能であるし、外側半分と内側半分のそれぞれ、もしくは、下側半分と上側半分のそれぞれに設けるように構成することも可能である。
さらに、上述の実施形態では各板状バネ部材71〜73(271〜273、371〜373)をそれぞれ端部で支持しつつ、中央で別の部材を支持する構成としていたが、中央付近で分割して各々2個の板状バネ部材として構成することも可能である。
また、上述の実施形態では、弾性支持を行うための板状バネ部材71〜73(271〜273、371〜373)と、各方向への加振を行う加振手段としての圧電素子(281〜283、381〜383)を一体化して構成していたが、加振手段として電磁石を用いて、板状バネ部材71〜73(271〜273、371〜373)とは独立させて構成することも可能である
また、上述の実施形態では、Z方向の周期的加振力の位相を基準として、他の方向の周期的加振力の位相を調整するような制御回路としていたが、各方向の周期的加振力の間の位相差を所定の値とすることができる限り、いずれの方向の周期的加振力の位相を基準として構成しても良い。
また、防振バネ22としては、板状バネ部材71〜73(271〜273、371〜373)に対して十分低いバネ定数を有するものである限り、金属バネ構成のものであっても、ゴム等の弾性体による構成のものであっても差し支えなく好適に使用可能である。
その他の構成も、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。