以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
<第1実施形態>
図1に、本発明の第1実施形態に係る振動装置2と、これを制御するための制御システム部3を加えて物品搬送装置1として構成した形態を示す。
この制御システム部3は、後述するように振動装置2に組み込まれた圧電素子81、82、83の制御を行うことで、振動装置2に第1方向としてのX、第2方向としてのY、第3方向としてのZの各方向の周期的加振力を与えて振動を生じさせるように構成している。
なお、X、Y、Zの各方向は図中に示した座標軸に示したとおりに定義することとし、以下においても適宜図中で示す座標軸に沿って説明を進めていく。
図2は、上記振動装置2を実際に使用する状態として示したものである。この状態では、ベース4の上に設置されるカバー42によって正面と背面および側面の四面が覆われている。また、上面には可動台6の一部を構成する長方形状の搬送台63が設けられており、その搬送台63の上面63aは搬送面として、搬送する物品9を載せることができるようになっている。
図3に、上記の振動装置2より搬送台63を取り外した状態を示す。振動装置2はその内部でX、Y、Zの3軸方向に対して弾性的に支持された直方体状のブロックとしての可動台座61を有しており、当該可動台座61に対して4個の皿ネジ62a〜62a(図中では2個のみ記載)によって矩形プレート状の可動板62が接続されている。そして、可動板62の上面には上述した搬送台63が設けられ、可動板62と搬送台63とは四隅の近傍に設けられたネジ孔62b〜62bとネジ63b〜63bを用いて締結されている。
これらの可動台座61、可動板62および搬送台63は可動台6として一体化して振動装置2の内部で弾性的に支持されるとともに、後述する加振手段によって振動を与えられる。
上記のカバー42、可動板62および搬送台63を取り外した状態を図4に示す。以下、この図を用いて、本実施形態に係る振動装置2の構成を詳細に説明する。
この振動装置2はベース2に対して、可動台座61をX、Y、Zの3方向に弾性支持するように構成されており、剛体部分としてのベース4、第1中間台51、51、第2中間台52および可動台座61を順次接続するようにして、第1の板状バネ部材71、71、第2の板状バネ部材72、72および第3の板状バネ部材73、73を設けている。各板状バネ部材71〜73は、各々板厚方向がX、Y、Z方向になるように配置されているために、当該方向に対して弾性変形を行い易くなっている。
さらに、可動台座61をX、Y、Zの3方向に振動させるための加振手段としての第1〜第3圧電素子81〜83を備えている。
以下、これらの構成についてさらに詳細に説明を行っていく。
まず、ベース4は、矩形状のプレートとして構成されており、四隅には図示しない外部機器または床面に設置するためのボルト孔が形成されている。ベース4の下には、図示しない防振ゴム等のバネ定数の小さい弾性体を取り付ければ、設置面からの反力を低減させることができて好適である。
そして、四隅よりやや中心寄りの位置に四箇所、矩形状に配置されるようにして取付ブロック41が設けられている。この図では記載を省略しているが、図5に示すように、各取付ブロック41はネジを用いてベース4に対して固定されるようにしてある。
図4に戻って、取付ブロック41は、各々L字型の断面を有するブロックとして形成されており、L字を形成する一方の辺をベース4に対して当接させた状態として、他方の辺が起立した状態となっている。そして、起立した辺は、X方向に対して直交するYZ平面を形成するようにされている。そして、Y方向に対をなして隣接する取付ブロック41、41に接続するようにして、第1の板状バネ部材71、71が設けられている。この第1の板状バネ部材71、71は、上述した各々の取付ブロック41〜41が有するYZ平面に取り付けられるため、板厚方向はX方向となり長手方向はY方向となる。
また、第1の板状バネ部材71、71は、2対の取付ブロック41〜41にそれぞれ設けられるために、X方向に所定距離離れた状態で平行に2個設けられることになる。
また、第1の板状バネ部材71、71の両端部は、矩形状のバネおさえ71d〜71dと上記各取付ブロック41〜41が有するYZ平面との間で挟み込まれるようにして、図示しないネジを用いて固定されているため、たわみ角が規制されるようにして支持される。
そして、第1の板状バネ部材71、71の長手方向中心付近にはバネ座71c〜71cを介して第1中間台51、51が各々接続されている。第1中間台51はそれぞれY方向に延在する直方体形状に形成されている。
バネ座71c〜71cは、第1の板状バネ部材71、71に各々2個設けられているとともに、これらの各バネ座71c〜71cと対向するようにしてバネおさえ71e〜71eが設けられている。第1の板状バネ部材71、71は、対向するバネ座71c〜71cとバネおさえ71e〜71eによって挟み込まれるようにしてたわみ角が規制され、これらの部分でネジ(図5参照)によって上記第1中間台51、51に接続される。第1中間台51、51は、2つに分割された構成となっているが、後述する第2の板状バネ部材72、72によって接続されているため、一体化して動作を行うことになる。
上記第1中間台51、51は上述したように直方体形状に形成されており、6面それぞれがX、Y、Z軸の各面に直交する向きになるように配置されている。そして、各々が有するY軸に直交するXZ面間を接続するようにして、2個の第2の板状バネ部材72、72が設けられている。
このように取り付けることで、2個の第2の板状バネ部材72、72は、各々板厚方向がY軸に対して直交し、かつ、長手方向がX方向を向くようになるとともに、互いにY方向に所定距離離間して平行に配置されることになる。
第2の板状バネ部材72、72は、両端部を矩形状のバネおさえ72d〜72dと上記第1中間台51、51が有するXZ平面との間で挟み込まれるようにして、当該部分においてネジ(図5参照)によって固定されているため、たわみ角が規制されるようにして支持されている。
第2の板状バネ部材72、72の長手方向中心付近にはバネ座72c〜72cを介して、第2中間台52が接続されている。
バネ座72c〜72cは、第2の板状バネ部材72、72に各々2個設けられているとともに、これらの各バネ座72c〜72cと対向するようにしてバネおさえ72e〜72eが設けられている。第2の板状バネ部材72、72は、対向するバネ座72c〜72cとバネおさえ72e〜72eによって挟み込まれるようにしてたわみ角が規制され、これらの部分でネジ(図5参照)によって上記第2中間台52に接続される。
第2中間台52は、図5の平面図に示すように、矩形の枠体として構成されておりX、Y、Z方向に直交する6面を有する直方体のブロックを4個組み合わせることによって形成されている。
バネ座72c〜72cとバネおさえ72e〜72eには、図6に示すように長孔が形成されており、図5のようにして当該長孔を挿通されるネジにより第2中間台52に第2の板状バネ部材72、72が接続されるようになっている。バネ座72c〜72cとバネおさえ72e〜72eは、その長孔の分X方向、すなわち第2の板状バネ部材の72、72の長手方向に移動することができるようになっており、これにより第2の板状バネ部材72、72は、バネとしての作用する有効長を変えることができるようになっている。
同様に、上述した、第1の板状バネ部材71、71を第1中間台51、51に対して接続するためのバネ座71c〜71cとバネおさえ71e〜71eに対しても長孔が形成されており、その長孔の分Y方向に移動することができるようになっているため、これにより第1の板状バネ部材71、71の有効長も変えることができるようになっている。
上記のように、第1の板状バネ部材71、71、および第2の板状バネ部材72、72はそれぞれ、有効長を変化することによって、バネ定数を変化させるとともに、固有振動数もまた変化させることができる。
図4に戻って、矩形の枠体として構成されている第2中間台52の上面と、下面にはそれぞれ、2個ずつ計4個の第3の板状バネ部材73〜73が設けられている。第3の板状バネ部材73〜73は、各々第2中間台52を形成する矩形を構成する辺のうち、Y方向に平行な2辺の位置に存する部分の上面および下面として形成される各XY平面の間をX方向に接続するようにして設けられている。第3の板状バネ部材73〜73の両端部は、両端部を矩形状のバネおさえ73c〜73cと上記第2中間台52が有するXY平面との間で挟み込まれるようにして、この部分でネジ(図5参照)を用いて固定されているため、たわみ角が規制されるようにして支持されている。
また、第2中間台52の上面に接続される第3の板状バネ部材73、73と、第2中間台52の下面に接続される第3の板状バネ部材73、73(図5参照)の中央部近傍には、両者の間隔を維持するために間隙にバネ間ブロック73eが設けられている。
さらに、前記バネ間ブロック73eの下方には、第2中間台52の下面に接続される第3の板状バネ部材73、73を挟んで、バネおさえ73eが設けられている。バネおさえ73eは、2個の第3の板状バネ部材73、73を第2中間台52の下面との間で挟み込んだ状態として、図示しないネジを用いて固定を行うことができる。
また、前記バネ間ブロック73eの上方には、第2中間台52の上面に接続される第3の板状バネ部材73、73を挟んで、上述した可動台座61が設けられている。可動台座61は、2個の第3の板状バネ部材73、73を第2中間台52の上面との間で挟み込んだ状態として、図5に示すような形態でネジを用いて固定を行うことができる。可動台座61の上面には図3のように可動板が取り付けを行うため、上記のネジは頭が飛び出さないように配慮してある。
上記のように、図4に示す本実施形態の振動装置では、可動台6の下方に、ベース4、第1中間台51,51、第2中間台52、第1の板状バネ部材71、第2の板状バネ部材72および第3の板状バネ部材73が配置されるとともに、ベース4に対して第1中間台51、51が第1の板状バネ部材71、71を用いてX方向に弾性的に支持され、第1中間台51、51に対して第2中間台52が第2の板状バネ部材72を用いてY方向に弾性的に支持され、第2中間台52に対して可動台座61が第3の板状バネ部材73を用いてZ方向に弾性的に支持される構成とされている。これにより、可動台6はベース4に対してX、Y、Zの各方向に弾性的に支持されるようになっている。
各板状バネ部材71〜73は、それぞれ板厚方向となるX、Y、Z方向に弾性を有するとともに、これと直交する幅方向、長手方向には十分な剛性を有する。そのため、各方向への支持は独立しているものと考えることができる。
また、各方向に対して第1〜第3の板状バネ部材71〜73をそれぞれ平行に設けて、対をなして支持させることにより、あたかも平行リンクの一部を構成するように構成している。これによって、各板状バネ部材71〜73は捻れ運動を行うことなく、対をなすも同士の間で隙間を一定とした関係を保ったまま変位することができるようになっている。
さらに、本実施形態の振動装置では、X、Y、Z方向に独立した第1〜第3の加振手段81〜83を有している。
まず、X方向への加振手段である第1の加振手段は、2個の第1の板状バネ部材71、71の表面にそれぞれ2個ずつ貼設された合計4個の第1圧電素子81〜81から構成される。この第1圧電素子81〜81は、電圧を印加されることによって、Y方向に伸びまたは縮みを生じ、第1の板状バネ部材71、71に曲げを生じさせることによってX方向の変位を生じさせることが可能とされている。
第1の板状バネ部材71、71は端部のバネおさえ71dによって位置決めされるベース側接続点71aから、中央のバネ座71cとバネおさえ71eによって位置決めされる第1中間台側接続点71bとの間で、その中央に曲がりの方向が変化する屈曲点を有するため、当該部分にまで第1圧電素子81〜81を貼り付けることは、却って変形を阻害して効率を低下させることになる。そのため、第1圧電素子81〜81はバネ有効長の中央を避けて、いずれかの端部寄りに設けることが効率的である。
第1圧電素子81〜81は各々端部から同じ位置に設けられているとともに、出力を調整することで同じ変形を生じさせることができる。このようにすることで、図7のように、X方向に離間させた第1の板状バネ部材71、71の間隔を保ったまま同じように変形させることができ、第1中間台51、51を、水平状態を保ったままX方向にのみ変位させることができる。
次に、図4に戻って、Y方向への加振手段である第2の加振手段は、上述の第1の加振手段と同様、2個の第2の板状バネ部材72、72の表面にそれぞれ2個ずつ貼設された合計4個の第2圧電素子82〜82から構成される。この第2圧電素子82〜82は電圧を印加されることによって、X方向に伸びまたは縮みを生じ、第2の板状バネ部材72、72に曲げを生じさせることによってY方向の変位を生じさせることが可能とされている。第2圧電素子82〜82も、第1圧電素子81〜81と同様の位置に取付がなされており、このようにすることで、図8のように、Y方向に離間させた第2の板状バネ部材72、72の間隔を保ったまま同じように変形させることができ、第2中間台52を、水平状態を保ったままY方向にのみ変位させることができる。
さらに、図4に戻って、Z方向への加振手段である第3の加振手段は、上下に2個ずつ設けられている板状バネ部材73〜73のうち上側の2個の板状バネ部材73、73の表面にそれぞれ2個ずつ貼設された合計4個の第3圧電素子83〜83から構成される。この第3圧電素子83〜83は電圧を印加されることによって、X方向に伸びまたは縮みを生じ、第3の板状バネ部材73、73に曲げを生じさせることによってZ方向の変位を生じさせることが可能とされている。第3圧電素子83〜83も、第1圧電素子81〜81および第2圧電素子82〜82と同様の位置に取付がなされており、このようにすることで、図9のように、Z方向に離間させた第3の板状バネ部材73、73の間隔を保ったまま同じように変形させることができ、可動台座61を水平状態を保ったままZ方向にのみ変位させることができる。なお、第3の圧電素子83〜83を、下側に設けている2個の第3の板状バネ部材73、73に設けることも可能であり、上側と下側の計4個の第3の板状バネ部材73〜73に設けることも可能である。
上記のように、X、Y、Zの各方向に変位を与えることのできる電圧を各々正弦波状に変化させることによって、可動台座61に対して各方向に周期的な加振力を付与することができる。
上記のようにして構成した振動装置2に対して図1に示す制御システム部3は、第1圧電素子81、第2圧電素子82および第3圧電素子83に各々正弦波状の制御電圧を付与することによって、X、Y、Zの各方向の振動を発生させるための周期的加振力を生じさせる。
そのため、制御システム部3は、正弦電圧を生じさせる発振機34を備えており、この正弦電圧をアンプ35により増幅した上で、各圧電素子81、82、83に出力する。さらに、上記制御システム部3はX、Y、Zの各方向の制御電圧を詳細に調整するための振動制御手段31を有している。なお、発振機34により生じさせる振動の周波数は、X、Y、Z方向のいずれかの振動系と共振する周波数とすることで、振動を増幅して省電力化を図るようにしてある。なお、全ての方向の振動系の振動が干渉することを避けるためには、各方向の固有振動数を離してもよい。この時、各方向の固有振動数は例えば−10%〜+10%程度離すようにする。
なお、本実施形態においては、上述したように第1の板状バネ部材71、71および第2の板状バネ部材72、72の有効長を、バネ座71c〜71c、72c〜72cによって各々変更することが可能である。そのため、Z方向の固有振動数を基準として、X方向およびY方向の固有振動数をそれぞれ適切な値になるように変更調整することが可能である。
振動制御手段31は大きくは、X、Y、Zの各方向の制御電圧の振幅を調整する振幅調整回路31aと、それぞれの位相差を調整するための位相調整回路31bとからなる。本実施形態では、X、Y、Zの各制御電圧にそれぞれ対応した振幅調整回路31aを有するとともに、Z方向の制御電圧の位相を基準として、これと所定の位相差となるように制御電圧の位相を調整する位相調整回路31bをX、Yの制御電圧についてそれぞれ設けるように構成している。
そして、制御システム部3は、搬送する物品9に応じた搬送経路および搬送速度を決定するための搬送経路決定手段33と、決定した搬送経路と搬送速度に応じて各振幅調整回路31aおよび各位相調整回路31bに具体的な制御値を変更するための命令を出す振動切替手段32とを有している。
そして、搬送経路決定手段33は、搬送する物品9に応じた搬送経路と搬送速度のデータを内部に複数保存しており、その中から図示しない外部からの指示によって搬送経路と搬送速度を選択した上で、そこで選択した搬送経路および搬送速度に合わせて振動形態を切り替えるように振動切替手段32に対して命令を与える。
さらに、振動切替手段32では搬送経路や搬送速度が命令された目標値となるように、各振幅調整回路31aおよび各位相調整回路31bのそれぞれの具体的な制御値を決定して当該制御値に切り替えるよう命令を出力する。
上記のように構成した物品搬送装置1は、具体的には次のように動作し、可動台6に載せた物品9の搬送や分別などを行う。
ここで、図10の模式図に示すように簡略化して、可動台6がベース4に対してX、Y、Zの各方向に弾性体74、75、76により弾性的に支持するとともに、各方向の加振手段84、85、86を設けている場合を想定する。このように構成することで、X、Y、Zの三方向に設けた加振手段84、85、86によって可動台6を三方向に動作させることが可能とされている。図10の模式図における弾性体74〜76は、第1〜第3の板状バネ部材71〜73(図4参照)に相当するとともに、加振手段84〜86はそれぞれ第1〜第3加振手段としての第1〜第3圧電素子81〜83(図4参照)に相当する。
図10に示すモデルの可動台6に対して、Z方向にZ=Z0×sinωtで表される周期的な振動変位を与える。ここで、Z0はZ方向の振幅を、ωは角周波数を、tは時間を示す。さらに、X、Y方向にもそれぞれZ方向と同一周波数の振動を、X=X0×sin(wt+φx)、Y=Y0×sin(wt+φy)の式のように与えることとする。ここで、X0、Y0はそれぞれX方向、Yの振幅を、φx、φyはそれぞれX方向、Z方向の振動のZ方向の振動に対する位相差を示す。
このように、X、Y、Zの各方向に正弦波状の周期的な振動変位を加えることにより、可動台6にはこれらが合成された三次元的な振動を生じさせることができる。例えば、図10に示すように、Z方向の振動成分に対してφx、φyの位相差を持たせてX、Y方向の振動を生じさせたとき、二次元的にはXZ平面上で右側を上にした楕円軌道を有する振動が生じ、YZ平面上で右側を下にした楕円軌道を有する振動が生じる。そして、さらにこの2つを合成することで、図中右下に示すように三次元空間上での楕円軌道が生じる。
そして、各方向の振動変位の振幅および位相を変えることにより、XZ平面、YZ平面内の二次元の楕円軌道の大きさや向きを変更することができ、対応して三次元空間上の楕円軌道の大きさや向きを自由に変更することができる。なお、このように各方向への周期的な振動変位を付与するために、制御上は各方向への周期的加振力を付与することで対応を行っている。
以上のように、可動台6が楕円軌道を描きつつ振動することによって、可動台6の上に載せられた物品9は移動を行う。そして、この移動のうちX方向への移動速度成分は上記XZ平面内の楕円軌道によって制御でき、Y方向への移動速度成分は上記YZ平面内の楕円軌道によって制御できる。すなわち、Z方向への振動成分を基準としてX方向、Y方向のそれぞれの振動の振幅と位相差を変化させることで、X、Y方向への移動速度成分を変化させ、任意の方向に搬送させることが可能となる。
具体的には移動速度の変更は次のようにして行う。
発明者らの知見によれば、図10を参照しつつ図11を用いて説明すると、位相差φx(φy)によって物品9の移動速度Vx(Yy)は正弦波に類似したカーブを描くように変化する。そのため、Z方向の振動成分に対するX方向の振動成分の位相差を図10におけるφ12に設定したときにはXが正となる方向に物品9は搬送されていく。また、位相差をφ14に設定したときには、Xが負となる方向に物品9は搬送されていく。これらに対して、位相差をφ11、φ13と設定したときには、移動速度Vxは0になって、物品9はX方向に静止した状態となる。さらに、φ11〜φ13の間またはφ13〜π(-π)〜φ11の間で位相差を変化させることによって、それぞれ正の方向、負の方向に対する速度を増減させることができる。こうした関係は、X方向だけでなくY方向にも成り立ち、同様にZ方向の振動成分に対する位相差を設定することで移動方向と移動速度を変化させることができる。
このように、X、Y各方向の振動成分の振幅X0、Y0と、Z方向振動成分に対する位相差φx、φyとを変化させることによって、X、Y方向への移動速度Vx、Vyを変化さることができる。
さらに、発明者らの知見によれば、図10を参照しつつ説明すると、図11で示した位相差と物品9の移動速度Vx(Yy)との関係を示すカーブは、物品9と可動台6との摩擦係数によって変化し、図12に示す関係となる。すなわち、2種類の物品W11、W12と可動台6との間の摩擦係数をそれぞれμ11、μ12としてμ11<μ12の関係があるとき、W12の時の移動速度のグラフは、W11の時の移動速度のカーブを位相差が正となる方向にずらした形状になる。そのため、楕円振動を行う可動台6の上に同時に摩擦係数の異なる物品9を置いた場合には、移動速度及び移動方向が異なることになる。
具体的には、図12に示す位相差φ11に設定している場合にはW11は移動することなく、W12が負の方向に移動することになる。また、位相差をφ11からφ12の間に設定した場合には、W11を正の方向に、W12を負の方向に移動させることができる。そして、φ12に設定すると、W12を移動させずに、W11のみを正の方向に移動させることができる。また、φ12からφ14の間に設定すると、W11、W12ともに正の方向に移動させることができるが、φ13を境にW11とW12の速度の大小を入れ替えることができる。さらに、φ12からφ14の範囲で位相差を細かく変更すれば、W11とW12の速度比も変更することができる。
そして、位相差をφ14とすれば、W11を移動させずに、W12のみを正方向に移動させることができる。さらに、位相差をφ14からφ15の間に設定すれば、W12を正方向に、W11を負の方向に移動させることができる。位相差をφ15と設定すれば、W12を移動させずにW11のみを負の方向に移動させることができる。そして、位相差をφ15からπの範囲にしたときは、W11とW12の双方とも負の方向に移動させることができ、この範囲で位相差を変えることで両者の移動速度の比を変更することもできる。
さらに、発明者らの知見によれば、図10を参照しつつ図13を用いて説明すると、位相差φx(φy)と物品9の移動速度Vx(Yy)との関係は、振幅X0(Y0)を変えることによっても変化する。すなわち、位相差φx(φy)に対する物品9の移動速度Vx(Yy)である正弦波類似のカーブは、概ね振動変位の振幅X0(Y0)に比例して変化する。このことから、物品9の移動速度Vx(Yy)を2倍にしたい場合には、概ねX(Y)方向の振動変位の振幅を2倍にすればよい。そのためには、それに応じた加振力を与えるべく、制御電圧の振幅を変化させればよい。
このようにして、摩擦係数の異なる2種の物品9をX(Y)方向に搬送する場合においては、Z方向の振動に対するX(Y)方向の振動の位相差φx(φy)を変更することで、2種の物品9のうちどちらかのみを移動させることや、移動方向を変えつつ速度比を変えることが可能となり、さらにX(Y)方向の振動の振幅を変えることで、移動速度の絶対値を制御することができる。これらを組み合わせることで、片方の速度を維持したままで、他方の速度を変更することや搬送の向きを変更することも可能となる。
以上のような、一方向への搬送速度および向きの制御を、二方向に展開することで、XY平面内で自由に移動させることが可能となる。すなわち、水平方向の振動をX、Yの2方向にして、Z方向の振動とそれぞれ組み合わせることで、XZ平面内の楕円振動、YZ平面内の楕円振動をそれぞれ作り出し、これらを合成した三次元的な楕円振動を発生させ、この楕円振動の向きや大きさを三次元的に切り替えることで、より詳細に物品9の移動方向や移動速度を制御できる。そして、Z方向の制御電圧によって生じる周期的加振力を基準として、X方向、Y方向の制御電圧によって生じる周期的加振力の振幅や位相をそれぞれ変更することによって、XZ平面内の楕円振動成分とYZ平面内の楕円振動成分をそれぞれ変更すれば、上述の図11〜13の関係に従ってそれぞれX方向、Y方向の移動速度成分を物品9に与えることが可能となる。
このことから、具体的には次のようにして物品9の搬送を行わせることが可能となる。以下、図1を参照しつつ、図14(a)〜(f)の各物品の搬送形態を例示した平面図に従って説明を行う。
まず、物品9が一種だけである場合には、図14(a)に示すように、物品9を初期(T0)の時点よりX方向に移動させ、ある時点(T1)よりY方向の移動速度成分も追加して方向を変えて移動させることができる。こうした場合には、物品9の種類に応じて搬送先を変更する場合や、別に設けたカメラによる検査データに基づいて当該物品9を不良品と判断してライン外に搬送する場合がある。このような形態の搬送を行うため、図1における搬送経路決定手段33は、外部より被搬送物関連データとして搬送する物品9の種類を入力され、あらかじめ内部に保存されたデータに基づいて物品9に応じた搬送経路と搬送速度を選択し、あるいは被搬送物関連データとしての検査データに基づいて搬送方向と搬送速度を決定して振動切替手段32に出力する。当該振動切替手段32においては、その搬送方向と搬送速度に対応して各方向の振動形態の切替の要否を判断するとともに、切替が必要な場合には各方向の周期的加振力の振幅と位相を調整するため各振幅調整回路31aおよび位相調整回路31bに具体的な制御値を命令する。
そして、こうした搬送経路変更の判断を随時行い、振動切替手段32によって振幅、位相を調整していくと、図14(b)に示すようにXY方向に自在な軌跡を描かせつつ物品9を移動させることが可能となる。搬送経路変更の判断は、あらかじめ設定したタイミングによるものであっても、外部からの信号に応じて行うものであっても良い。
また、図14(c)に示したように、物品9a、9bが摩擦係数の異なる二種のものである場合には初期段階(T0)は一方向に同速度で搬送しておき、ある時点(T1)より異なる方向に分岐させて移動させることも可能である。この場合には初期段階(T0)では、X方向には図12における位相差φ13で振動させ、Y方向には振動を生じさせずにおき、T1の時点からY方向にも振動を生じさせZ方向との振動位相差をφ11とφ12の間またはφ14とφ15の間に切り替えたものである。同時にX方向の速度においてもZ方向に対する振動の位相差をφ13よりずらすことで、物品9a、9bの間にX方向の速度差を持たせるように切り替えている。この振動の切り替えにあたっても、図1における搬送経路決定手段33が、設定されたタイミングに応じて、または外部から入力された被搬送物関連データに基づいて適切な搬送経路と搬送速度を決定し、それに基づいて振動切替手段32に搬送方向および搬送速度の変更命令を出す。そして、当該振動切替手段32においては、命令された搬送方向および搬送速度に対応した各方向の振幅、位相の具体的制御値を決定し、各振幅調整回路31a、位相調整回路31bに当該制御値に変更するように命令を出す。
また、同様の制御を行うことによって、図14(d)のように物品9a、9bのうち、片方のみを動かすことや、両者に速度差を設けることも可能である。さらに、図14(e)のように、任意の方向を選択した上で、その方向に沿って互いに逆向きに移動させることも可能である。
さらに、このような搬送経路および速度の変更を連続して行うことで、図14(f)のように物品9a、9bの搬送経路と搬送速度をXY平面内で、それぞれ独立させて同時に制御することが可能となる。
また、上記のように摩擦係数の異なる物品9を異なる搬送方向に搬送させるように制御することによって、厳密には摩擦係数が同じものであっても表面形状が異なるなど、見かけ上摩擦係数が異なっているようにとらえられるものについても搬送方向を異ならせることもできる。例えば、同一部材の表面と裏面であっても、面の凹凸が異なり可動台6との接触面積が大きく異なるような場合が該当する。
以上のように、本実施形態に係る振動装置2は、ベース4と、当該ベース4に対して弾性的に支持された可動台6と、当該可動台6を水平な第1方向に振動させる第1の加振手段81と、前記可動台6を水平で且つ前記第1方向に交差する第2方向に振動させる第2の加振手段82と、前記可動台6を垂直な第3方向に振動させる第3の加振手段83とを備えたものであって、前記ベース4と前記可動台6の間に第1中間台51、51と第2中間台52を備えるとともに、前記ベース4、前記第1中間台51、前記第2中間台52および前記可動台6を順次前記第1方向、第2方向、第3方向に弾性的に接続する第1〜第3の板状バネ部材71〜73を具備し、前記第1の板状バネ部材71が厚み方向を前記第1方向にほぼ合致させるとともに長手方向を水平な向きに配されており、前記第2の板状バネ部材72が厚み方向を前記第2方向にほぼ合致させるとともに長手方向を水平な向きに配されており、前記第3の板状バネ部材73が厚み方向を前記第3方向にほぼ合致させるとともに長手方向を水平な向きに配されるようにして構成したものである。
このように構成しているため、可動台6を弾性的に支持する弾性支持手段としての第1〜第3の板状バネ部材71〜73を第1〜第3の各方向に弾性変形しやすい向きに有しているとともに、各板状バネ部材71〜73は板厚方向とは異なる方向には大きな剛性を有しているため、可動台6を各方向にそれぞれ独立して弾性支持させることができる。そのため、第1〜第3の加振手段81〜83によって各方向に振動させる場合に、互いの方向に影響を与えることなく独立して振動を制御させることができる。さらに、これらの板状バネ部材71〜73を各々長手方向が水平になる向きに配していることから、ベース4から可動台6までの高さを抑えることができ、可動台6のピッチングやローリングを抑制することができる。
また、前記第1〜第3の板状バネ部材71〜73が、所定距離離して平行に複数個設けられているように構成しているため、各板状バネ部材71〜73は、平行リンクの一部を構成するように接続されるために、各方向に対して間隔を一定とした状態を保持したまま変位しやすくなる。そのため、各板状バネ部材71〜73はねじれ形態での変形が抑制されるために、より上記の3方向への支持を安定して行わせることができるようになる。
また、前記第1〜第3の加振手段が前記第1〜第3の板状バネ部材71〜73の少なくとも片面に貼設された圧電素子81〜83であり、これらの圧電素子81〜83に正弦電圧を付与して周期的な伸びを生じさせることで、前記第1〜第3の板状バネ部材71〜73を振動させるように構成しているため、弾性支持手段としての各板状バネ部材71〜73と、加振手段81〜83とを一体化することによって構成を簡単にしてコンパクト化を行うことが可能となる。
また、前記第1中間台51と前記第1の板状バネ部材71との間、および、前記第2中間台52と前記第2の板状バネ部材72との間に各々バネ座71c〜72cが設けられており、当該バネ座71c〜72cの位置が各々前記第1および第2の板状バネ部材71、72の長手方向に対して変更可能に構成されているため、各バネ座71c〜72cの位置を板状バネ部材71、72の長手方向に対して変更することで、簡単に板状バネ部材71、72の固有振動数を変えることができる。これにより、各方向に対する固有振動数を離間させたり、近接させたりする調整を簡単に行うことができるようになる。
さらに、本実施形態に係る物品搬送装置1は、可動台6の振動により可動台6上に載せられた物品9を搬送するものであって、上記の振動装置2と、当該振動装置2が有する前記第1〜第3の加振手段81〜83による周期的加振力を、位相差を有しつつ同一の周波数で同時に発生させ前記可動台6に三次元の振動軌跡を生じさせるように前記各加振手段を制御する振動制御手段31と、前記各加振手段81〜83による周期的加振力の振幅と位相差を切り替える振動切替手段32とを備えるようにして構成したものである。
このように構成しているため、可動台6上の物品を任意の方向に搬送することが可能な制御性に優れた物品搬送装置1を構成することができる。
<第2実施形態>
図15は、本発明の振動装置2を用いて、物品分別装置101として構成した第2実施形態を示すものである。第1実施形態の場合と同じ部分には同じ符号を付し、説明を省略する。
この実施形態においては、振動装置2としての構成は第1実施形態の場合と同様であり、これを制御するための制御システム部103が異なるにとどまる。具体的には、図1のように第1実施形態における制御システム部3が有していた振動切替手段32、搬送経路決定手段33がなく、これらに代わるものとして図15のように位相差入力部132を有している。位相差入力部132ではZ方向の制御電圧の位相を基準とした、X方向、Y方向のそれぞれの位相差を入力されることで、当該位相差に設定するようにX、Y方向に対応する各位相調整回路31bに命令を出すようになっている。
ここで、本実施形態における物品分別装置101の動作原理も、上述の第1実施形態において図10〜13を用いて説明したものと同様であり、可動台6と物品9との摩擦係数
と各方向の振動の位相差および振幅によって、物品9の移動速度と移動方向を変更するものである。
具体的には次のようにして、物品9の分別を行う。
発明者らの知見によれば、図10を参照しつつ図16を用いて説明すると、位相差φx(φy)によって物品9の移動速度Vx(Yy)は正弦波に類似したカーブを描くように変化するとともに、物品9と可動台6との間の摩擦係数によっても変化する。すなわち、3種類の物品W21、W22、W23と可動台6との間の摩擦係数をそれぞれμ21、μ22、μ23としてμ21<μ22<μ23の関係があるとき、W22の時の移動速度のグラフは、W21の時の移動速度のカーブを位相差が正となる方向にずらした形状となり、W23の時の移動速度のグラフはそれをさらに位相差が正となる方向にずらした形状になる。そのため、楕円振動を行う可動台6の上に同時に摩擦係数の異なる物品9を置いた場合には、移動速度及び移動方向が異なることになる。
具体的には、図16に示す位相差φ21に設定しているときには、W21は正の方向に進み、W22とW23とは同じ負の方向に進むがW23のほうがW22よりも移動速度が大きくなる。さらに位相差φ22に設定すると、W21は正方向に、W22はW21よりも小さな速度で正方向に進み、W23は負の方向に進む。位相差をφ23に設定すると、W21は負の方向に進み、W22は正方向に、W23はW22よりも大きな速度で正方向に進む。位相差をφ24に設定すると、W21は負の方向に、W22はW21よりも小さな速度で負の方向に進み、W23は正の方向に進む。このようなφ21〜φ24以外にも位相は任意に設定可能であり、W21からW23を全て正方向または逆方向に移動させることや、移動速度の大きさの順番を変更することも可能である。
また、図13を用いて上述したように、位相差φx(φy)と物品9の移動速度Vx(Yy)との関係は、振幅X0(Y0)を変えることによっても変化する。すなわち、位相差φx(φy)に対する物品9の移動速度Vx(Yy)である正弦波類似のカーブは、概ね振動変位の振幅X0(Y0)に比例して変化する。このことから、物品9の移動速度Vx(Yy)を2倍にしたい場合には、概ねX(Y)方向の振動変位の振幅を2倍にすればよい。そのためには、それに応じた加振力を与えるべく、制御電圧の振幅を変化させればよい。
このような一方向に対する振動制御を、直交するX、Y方向に同時に対して行うことによって、複数の種類の物品9を可動台6上で分別し異なる方向に移動することができる。
以下、図17に示すように、可動台6上にW21、W22、W23の三種の物品が載っていることを想定して説明を行う。なお、それぞれの摩擦係数はμ21、μ22、μ23としこれらの間にμ21<μ22<μ23の関係があるものとする。
このような物品を可動台6上で移動させる速度は、X方向移動速度成分Vx、Y方向移動速度成分Vxに分解して考えることができ、上述したようにVx、VyはそれぞれXZ平面内の楕円軌道、YZ平面内の楕円軌道によって制御でき、それぞれZ方向の振動成分に対する位相差との関係で、上述の図16の関係を有する。
ここで、摩擦係数の異なる物品W21、W22、W23を移動する方向として、図17のように上下左右で領域を分け、それぞれA、B、C、D領域とする。X、Yの振動成分のZ方向振動成分に対する位相差φx、φyを変化させることで、移動方向をこれらの領域のいずれかに設定することが可能となる。
例えば、φx、φyをそれぞれ、図16に示すφ21、φ22に設定したとき、図18(a)の表に示したように、W21、W22、W23のX方向移動速度成分Vxは、それぞれ正(+)、負(−)、負(−)の値となり、Y方向移動速度成分Vyは、それぞれ正(+)、正(+)、負(−)の値となる。すなわち、図17に示す領域においては、W21はD領域に、W22はC領域に、W23はA領域に移動しようとすることになり、その結果、図20(a)に示すようにW21〜W23はそれぞれの領域に分別されつつ移動する。
これと同様に図18(b)の表に示すように、φx=φ21、φy=φ24のときはW21、W22、W23はそれぞれB、A、C領域に向かい、その結果、図20(b)に示すようにW21〜W23はそれぞれの領域に分別されつつ移動する。
さらに、図18(c)、(d)および図19(e)〜(h)に示すように、φx=φ22、φy=φ21のときはW21、W22、W23はそれぞれD、B、A領域に、φx=φ22、φy=φ23のときはW21、W22、W23はそれぞれB、D、C領域に、φx=φ23、φy=φ22のときはW21、W22、W23はそれぞれC、D、B領域に、φx=φ23、φy=φ24のときはW21、W22、W23はそれぞれA、B、D領域に、φx=φ24、φy=φ21のときはW21、W22、W23はそれぞれC、A、B領域に、φx=φ24、φy=φ23のときはW21、W22、W23はそれぞれA、C、D領域に分別されつつ移動することになる。
このように摩擦係数の異なる物品9であればそれぞれ別の方向に移動することができるとともに、それぞれを任意の移動方向に変更することも可能である。
上記のような原理を用いて、具体的には、次のように本物品分別装置101を用いて物品9の分別を行う。以下、図15および図16を用いて説明を行う。
まず、位相差入力部132よりZ方向の振動成分に対するX方向、Y方向の振動成分のそれぞれの位相差φx、φyを入力する。この入力値に従って位相差入力部132は、X、Y方向の振動の位相をφxまたはφyずらすように、それぞれに対応する位相調整回路31b、31bに命令する。そして、位相調整回路31bは、もともとの発振機34の信号より位相をφxまたはφyずらして制御電圧として第1圧電素子81、第2圧電素子82に加えることでZ方向の振動成分との位相差を与える。このようにして、例えば位相差入力部132よりφx=φ23、φx=φ22と設定するものとして入力すると、上記のW21、W22、W23の性質を有する物品9は、それぞれ図19(e)のケースと同様にして、図17のC、D、B領域に分別することができる。
また、位相差入力部132より図18、図19に示すような位相差を設定すれば、それぞれの表中に記載の通り物品9を分別することができる。
ここで、本発明においては、上記分別を行うための位相差に設定したときに、移動速度が0になる摩擦係数を基準摩擦係数として定義する。すなわち、図16における位相差φ21、φ23に対応する基準摩擦係数はμaであり、φ22、φ24に対応する基準摩擦係数はμbである。すなわち、位相差をφ23に設定することは、分別を行う境界として基準摩擦係数をμaに設定しつつ、これより摩擦係数が大きな物品9は正の方向に、摩擦係数が小さな物品9は負の方向に進ませるように設定することと同義である。同様に、位相差をφ22に設定することは、分別を行う境界として基準摩擦係数をμbに設定しつつ、これより摩擦係数が大きな物品9は負の方向に、摩擦係数が小さな物品9は正の方向に進ませるように設定することと同義である。
よって、上記の位相差入力部132を、X、Yの各方向に分別する基準として位相差そのものを入力するものではなく、X、Yの各方向に対する基準摩擦係数と、当該基準摩擦係数に対する摩擦係数の大小に応じて物品が進行する正負のいずれかの方向とを入力するものとして、これらの情報から内部に保存しておいた図16のグラフを基にして自動的に位相差を設定して出力するように構成することも可能である。
さらに、図16から分かるように、Z方向の振動に対して振動の位相差を変えることで、摩擦係数の異なる物品9の移動方向を変更できると同時に、速度差を設けることも可能である。そのため、本物品分別装置101は可動台上6の四隅に対応する領域に分別していくだけでなく、それらの領域の中間などのさらに細かな領域設定を行った上で、4種類以上に分別させることも可能である。
また、上記のように摩擦係数の異なる物品9を分別させるように制御することによって、厳密には摩擦係数が同じものであっても表面形状が異なるなど、見かけ上摩擦係数が異なっているようにとらえられるものについても分別することができる。例えば、同一部材の表面と裏面であっても、面の凹凸が異なり可動台6との接触面積が大きく異なるような場合が該当する。
以上のように、本実施形態の物品分別装置101は、可動台6の振動により可動台6上に載せられた複数の物品9を分別するものであって、上述の振動装置2と、当該振動装置2が有する前記第1〜第3の加振手段81〜83による周期的加振力を位相差を有しつつ同一の周波数で同時に発生させ前記可動台6に三次元の振動軌跡を生じさせるように前記各加振手段81〜83を制御する振動制御手段31とを備え、前記第1の加振手段81による周期的加振力と前記第3の加振手段83による周期的加振力との位相差、および前記第2の加振手段82による周期的加振力と前記第3の加振手段83による周期的加振力との位相差を、それぞれ所定の基準摩擦係数を境界として個々の物品9が有する摩擦係数の前記基準摩擦係数に対する大小関係に基づき各物品が異なる方向に移動するように設定することで、前記可動台6上に載せられた複数の物品9を同時に分別するようにして構成したものである。
このように構成しているため、可動台6上の複数の物品9を摩擦係数に応じて分別することが可能な制御性に優れた物品分別装置101を構成することができる。
<変形例>
ここで、上述した第1実施形態および第2実施形態に共通する振動装置2を変形した例を、図21に示す。
この変形例においては、ベース4から順次接続する第1の板状バネ部材71、第1中間台51、第2バネ部材72までの形態は、図4におけるものとほぼ同一である。
図21のように、第2の板状バネ部材72とバネ座72cを介して接続される第2中間台252が直方体のブロック状の形状となっている。そして、その第2中間台252の上面および下面より、各々X方向両側に向かって第3バネ部材73〜73が延出するようにして設けられており、第1の板状バネ部材71、71の外側の各々に配置された、直方体状のブロックとして形成されたバネ間ブロック273e、273eに接続されている。
バネ間ブロック273e、273eに対しては、それそれ、Z方向に離間して平行になるように配置された第3バネ部材73〜73が一対ずつ接続されており、下方向よりバネおさえ273d〜273dで、上方向からは可動台座261、261との間で挟み込まれるようにして固定されている。
本実施形態においては、可動台座261、261は、図3の場合と異なり、X方向に離間した形態となるために、可動板62(図3参照)を設けなくても直接搬送台63を可動台座261、261に固定することができる。これに対して、図3に記載した振動装置1のように可動台座61が中央付近にある場合には、搬送台63の中央付近にネジを設けることを回避するために可動台座61と搬送台63との間に可動板62を設けて、ネジ位置をずらす構成とすることが必要となる。従って、こうした構成と比べた場合、本変形例のような構成にすると、可動部分の軽量化が可能となる。
なお、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではない。
例えば、上述の実施形態においては、各方向への加振手段81〜83をそれぞれX、Y、Zの互いに直交する方向に加振力を与えるように構成したが、可動台6に三次元的に合成した振動軌跡を生成・変更できるかぎり必ずしも直交させることは必要でなく、単にそれぞれの方向を交差させるだけでよい。また、各加振手段81〜83は厳密に垂直、水平方向に設定することも必要ではないし、ベース4を傾けることや、垂直に設置する等の種々の利用の態様も可能である。
また、上述の実施形態においては、第1〜第3の板状バネ部材71〜73の側面に貼りつける第1〜第3圧電素子81〜83とは片面に貼りつけたユニモルフ型としていたが、それぞれを裏表の両面に1個ずつ貼り付けたユニモルフ型として、さらに加振力を増すように構成することも可能である。
また、本実施形態においては、図4および図21に記載するように、第1〜第3圧電素子81〜83は第1〜第3の板状バネ部材71〜73のそれぞれ外側半分に貼りつけてあるが、これを内側半分に貼りつける構成とすることも可能であるし、外側半分と内側半分のそれぞれに設けるように構成することも可能である。
さらに、本実施形態では第1〜第3の板状バネ部材71〜73をそれぞれ端部で支持しつつ、中央で別の部材を支持する構成としていたが、中央付近で分割して各々2個の板状バネ部材として構成することも可能である。
また、本実施形態では、弾性支持を行うための第1〜第3の板状バネ部材71〜73と、各方向への加振を行う第1〜第3の加振手段81〜83としての圧電素子を一体化して構成していたが、コンパクト化の要求が小さい場合には、加振手段として電磁石を用いることも可能である
また、上述の実施形態では、Z方向の周期的加振力の位相を基準として、X方向の周期的加振力とY方向の周期的加振力の位相を調整するような制御回路としていたが、Z方向の周期的加振力とX方向及びY方向の各周期的加振力との間の位相差を所定の値とすることができる限り、方向の周期的加振力の位相を変更するように構成しても良い。
その他の構成も、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。