次に、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本発明のよる動力伝達装置20の概略構成図である。同図に示す動力伝達装置20は、前輪駆動式の車両に搭載される図示しないエンジンのクランクシャフトに接続されると共にエンジンからの動力を左右の駆動輪(前輪)DWに伝達可能なものである。図示するように、動力伝達装置20は、コンバータハウジング221や当該コンバータハウジング221に連結されるトランスアクスルケース222を含むトランスミッションケース22や、コンバータハウジング221内に収容される流体伝動装置(発進装置)23、オイルポンプ24、トランスアクスルケース222内に収容される自動変速機25、ギヤ機構(ギヤ列)40、デファレンシャルギヤ(差動機構)50等を含む。
流体伝動装置23は、エンジンのクランクシャフトに接続される入力側のポンプインペラ23pや、自動変速機25の入力軸26に接続された出力側のタービンランナ23t、ポンプインペラ23pおよびタービンランナ23tの内側に配置されてタービンランナ23tからポンプインペラ23pへの作動油の流れを整流するステータ23s、ステータ23sの回転方向を一方向に制限するワンウェイクラッチ23o、ロックアップクラッチ23c等を有するトルクコンバータとして構成される。ただし、流体伝動装置23は、ステータ23sを有さない流体継手として構成されてもよい。
オイルポンプ24は、ポンプボディとポンプカバーとからなるポンプアッセンブリと、ハブを介して流体伝動装置23のポンプインペラ23pに接続された外歯ギヤとを備えるギヤポンプとして構成されている。オイルポンプ24は、エンジンからの動力により駆動され、トランスミッションケース22の下部に形成された作動油貯留部65(図3および図4参照)に貯留されている作動油(ATF)を吸引して図示しない油圧制御装置へと圧送する。
自動変速機25は、8段変速式の変速機として構成されており、図1に示すように、ダブルピニオン式の第1遊星歯車機構30と、ラビニヨ式の第2遊星歯車機構35と、入力側から出力側までの動力伝達経路を変更するための4つのクラッチC1,C2,C3およびC4、2つのブレーキB1およびB2、並びにワンウェイクラッチF1とを含む。
第1遊星歯車機構30は、外歯歯車であるサンギヤ31と、このサンギヤ31と同心円上に配置される内歯歯車であるリングギヤ32と、互いに噛合すると共に一方がサンギヤ31に、他方がリングギヤ32に噛合する2つのピニオンギヤ33a,33bの組を自転かつ公転自在に複数保持するプラネタリキャリア34とを有する。図示するように、第1遊星歯車機構30のサンギヤ31は、トランスミッションケース22に固定されており、第1遊星歯車機構30のプラネタリキャリア34は、入力軸26に一体回転可能に接続されている。また、第1遊星歯車機構30は、いわゆる減速ギヤとして構成されており、入力要素であるプラネタリキャリア34に伝達された動力を減速して出力要素であるリングギヤ32から出力する。
第2遊星歯車機構35は、外歯歯車である第1サンギヤ36aおよび第2サンギヤ36bと、第1および第2サンギヤ36a,36bと同心円上に配置される内歯歯車であるリングギヤ37と、第1サンギヤ36aに噛合する複数のショートピニオンギヤ38aと、第2サンギヤ36bおよび複数のショートピニオンギヤ38aに噛合すると共にリングギヤ37に噛合する複数のロングピニオンギヤ38bと、複数のショートピニオンギヤ38aおよび複数のロングピニオンギヤ38bを自転自在(回転自在)かつ公転自在に保持するプラネタリキャリア39とを有する。第2遊星歯車機構35のリングギヤ37は、自動変速機25の出力部材として機能し、入力軸26からリングギヤ37に伝達された動力は、ギヤ機構40、デファレンシャルギヤ50およびドライブシャフト28を介して左右の駆動輪に伝達される。また、プラネタリキャリア39は、ワンウェイクラッチF1を介してトランスミッションケース22により支持され、当該プラネタリキャリア39の回転方向は、ワンウェイクラッチF1により一方向に制限される。
クラッチC1は、ピストン、複数の摩擦プレートやセパレータプレート、作動油が供給される油室等により構成される油圧サーボを有し、第1遊星歯車機構30のリングギヤ32と第2遊星歯車機構35の第1サンギヤ36aとを互いに接続すると共に両者の接続を解除することができる多板摩擦式油圧クラッチである。クラッチC2は、ピストン、複数の摩擦プレートやセパレータプレート、作動油が供給される油室等により構成される油圧サーボを有し、入力軸26と第2遊星歯車機構35のプラネタリキャリア39とを互いに接続すると共に両者の接続を解除することができる多板摩擦式油圧クラッチである。クラッチC3は、ピストン、複数の摩擦プレートやセパレータプレート、作動油が供給される油室等により構成される油圧サーボを有し、第1遊星歯車機構30のリングギヤ32と第2遊星歯車機構35の第2サンギヤ36bとを互いに接続すると共に両者の接続を解除することができる多板摩擦式油圧クラッチである。クラッチC4は、ピストン、複数の摩擦プレートやセパレータプレート、作動油が供給される油室等により構成される油圧サーボを有し、第1遊星歯車機構30のプラネタリキャリア34と第2遊星歯車機構35の第2サンギヤ36bとを互いに接続すると共に両者の接続を解除することができる多板摩擦式油圧クラッチである。
ブレーキB1は、複数の摩擦プレートやセパレータプレート、作動油が供給される油室等により構成される油圧サーボを有し、第2遊星歯車機構35の第2サンギヤ36bをトランスミッションケース22に回転不能に固定すると共に第2サンギヤ36bのトランスミッションケース22に対する固定を解除することができる多板摩擦式油圧ブレーキである。ブレーキB2は、複数の摩擦プレートやセパレータプレート、作動油が供給される油室等により構成される油圧サーボを有し、第2遊星歯車機構35のプラネタリキャリア39をトランスミッションケース22に回転不能に固定すると共にプラネタリキャリア39のトランスミッションケース22に対する固定を解除することができる多板摩擦式油圧ブレーキである。
また、ワンウェイクラッチF1は、第2遊星歯車機構35のプラネタリキャリア39に連結(固定)されるインナーレースや、アウターレース、複数のスプラグ、複数のスプリング(板バネ)、保持器等を含み、インナーレースに対してアウターレースが一方向に回転した際に各スプラグを介してトルクを伝達すると共に、インナーレースに対してアウターレースが他方向に回転した際に両者を相対回転させるものである。ただし、ワンウェイクラッチF1は、ローラ式といったようなスプラグ式以外の構成を有するものであってもよい。
これらのクラッチC1〜C4、ブレーキB1およびB2は、図示しない油圧制御装置による作動油の給排を受けて動作する。図2に、自動変速機25の各変速段とクラッチC1〜C4、ブレーキB1およびB2、並びにワンウェイクラッチF1の作動状態との関係を表した作動表を示す。自動変速機25は、クラッチC1〜C4、ブレーキB1およびB2を図2の作動表に示す状態とすることで前進1〜8速の変速段と後進1速および2速の変速段とを提供する。なお、クラッチC1〜C4、ブレーキB1およびB2の少なくとも何れかは、ドグクラッチといった噛み合い係合要素とされてもよい。
ギヤ機構40は、自動変速機25の第2遊星歯車機構35のリングギヤ37に連結されるカウンタドライブギヤ41と、自動変速機25の入力軸26と平行に延在するカウンタシャフト42に固定されると共にカウンタドライブギヤ41に噛合するカウンタドリブンギヤ43と、カウンタドリブンギヤ43と所定の間隔を空けてカウンタシャフト42に形成(あるいは固定、連結)されると共にカウンタドライブギヤ41,カウンタドリブンギヤ43および当該カウンタシャフト42を介して自動変速機25からの動力が伝達されるドライブピニオンギヤ44と、ドライブピニオンギヤ44よりも下方に配置される(図3参照)と共に当該ドライブピニオンギヤ44に噛合するデフリングギヤ45とを有する。カウンタシャフト42は、入力軸26のみならず、デフリングギヤ45の軸方向やデファレンシャルギヤ50の軸方向(ドライブシャフト28の軸方向)に対して平行に配置される。
デファレンシャルギヤ50は、図1に示すように、一対(2個)のピニオンギヤ51と、それぞれドライブシャフト28に固定されると共に一対のピニオンギヤ51に直角に噛合する一対(2個)のサイドギヤ52と、一対のピニオンギヤ51を支持するピニオンシャフト53と、一対のピニオンギヤ51および一対のサイドギヤ52を収容すると共に上述のデフリングギヤ45が連結(固定)されるデフケース54とを有する。本実施形態において、各ピニオンギヤ51および各サイドギヤ52は、すぐばかさ歯車として構成される。また、ピニオンギヤ51のそれぞれとデフケース54との間には、図示しないピニオンワッシャが配置され、サイドギヤ52のそれぞれとデフケース54との間には、図示しないサイドワッシャが配置される。そして、デフケース54は、トランスミッションケース22により図示しない軸受を介してドライブシャフト28と同軸に回転自在に支持される。
続いて、図3から図7を参照しながら、動力伝達装置20の要部について説明する。図3および図4は、トランスミッションケース22(トランスアクスルケース222)内に配置されたドライブピニオンギヤ44,デフリングギヤ45およびデファレンシャルギヤ50の周辺の構造を示すものである。トランスミッションケース22の内部は、図5から図7に示すリザーバプレート(カバー部材)70と当該トランスミッションケース22とにより、デフリングギヤ45およびデファレンシャルギヤ50が配置されるデフ室(図示省略)と、作動油を貯留する作動油貯留室60とに区画される。なお、図3および図4においては、カウンタドリブンギヤ43,ドライブピニオンギヤ44およびデフリングギヤ45の外周に形成されるギヤ歯の記載を省略する。また、以下の説明において、「上」、「下」は、動力伝達装置20が車両に搭載される際の鉛直方向の「上」、「下」を示す。
リザーバプレート70は、デファレンシャルギヤ50の上部を含む一部を外側から覆う筒状部(覆い部)71と、筒状部71のデフリングギヤ45側(図3における奥側)の端部からデフリングギヤ45の側面45a(図3参照)と対向するように当該デフリングギヤ45の径方向(デファレンシャルギヤ50の径方向、すなわちドライブシャフト28の径方向。以下、単に「径方向」という)外側に延出されるフランジ部72と、フランジ部72の外周縁部72aから延出されたデフリング包囲部73とを含む。これら筒状部71、フランジ部72およびデフリング包囲部73から構成されるリザーバプレート70は、樹脂により一体に成形される。ただし、リザーバプレート70は、樹脂以外の材料により成形されてもよい。
筒状部71は、フランジ部72の内周部からデフリングギヤ45の軸方向(デファレンシャルギヤ50の軸方向、すなわちドライブシャフト28の軸方向。以下、単に「軸方向」という)に延出される。筒状部71は、図3および図4に示すように、デファレンシャルギヤ50のデフケース54の外周面の一部に沿って延在するように形成され、主に、デフケース54のデフリングギヤ45が取り付けられる部分や当該デフリングギヤ45とは反対側の端部を除く部分を囲む。また、筒状部71は、トランスミッションケース22(コンバータハウジング221)との干渉を避けるように形成された切欠部71sを有する。更に、筒状部71の上側の外周面には、コンバータハウジング221(図1参照)に固定される固定端711tを有すると共に径方向外側に突出する固定部711が形成されている。なお、本実施形態において、コンバータハウジング221は、図3および図4に示すトランスアクスルケース222の端面に形成された複数のボルト孔にボルトを介して締結される。
また、筒状部71の上側の外周面には、図7に示すように、上記固定部711の側方で当該筒状部71を貫通する孔部71oが当該外周面の周方向に沿って延びるように形成されている。孔部71oは、デファレンシャルギヤ50のピニオンシャフト53およびデフケース54(図1参照)の間隙に作動油を滴下可能となるように筒状部71に形成される。そして、孔部71oの近傍における筒状部71の外周面からは、孔部71oをフランジ部72および固定部711(および後述の規制壁72w)とは反対側から囲むように壁部71wが上方に延出されている。壁部71wは、孔部71oの周りで固定部711の端面からフランジ部72と対向するように筒状部71の周方向に延びると共にフランジ部72の近傍まで延びるように略L字状に形成される。ただし、壁部71wは、筒状部71から省略されてもよい。
フランジ部72は、図4に示すように、ドライブピニオンギヤ44との干渉を避けるように形成された切欠部72sを有する。これにより、フランジ部72は、筒状部71の外周に沿って円弧状(略C字状)に延在する。また、フランジ部72の外周縁部72aの下部には、シール保持部74が設けられており、当該シール保持部74には、外周縁部72aに沿って図示しないシール部材が装着される。更に、フランジ部72の外周縁部72aには、コンバータハウジング221およびトランスアクスルケース222に固定される第1〜第3固定部721,722,723が形成されている。第1固定部721は、筒状部71に形成された固定部711の上方に形成される。そして、フランジ部72は、図3等に示すように、第1固定部721と筒状部71の固定部711との間で、当該フランジ部72の表面から筒状部71側に突出すると共に筒状部71(固定部711)の表面から径方向外側に向けて延びる規制壁72wを有する。ただし、規制壁72wは、フランジ部72から省略されてもよい。
デフリング包囲部73は、デフリングギヤ45の外周面の概ね4分の1程度を上方から覆うように、フランジ部72の外周縁部72aから筒状部71とは軸方向反対側に延出される。当該デフリング包囲部73およびフランジ部72には、図4から図6に示すように、開口部73oが形成されている。開口部73oは、デフリング包囲部73の軸方向における略中央部からフランジ部72の径方向における略中央部まで達するように形成される。当該開口部73oは、デフリングギヤ45の最下点からみて当該デフリングギヤ45の主たる回転方向(動力伝達装置20が搭載される車両が前進走行する際の回転方向)の下流側に形成される。
本実施形態において、トランスアクスルケース222は、図3および図4に示すように、デフリングギヤ45の外周に沿って円弧状に延びる内周面222nと、当該内周面222nと同一の曲率半径の内周面を有するように形成されてデフリングギヤ45の一部を囲むリブ部222rとを有する。そして、リザーバプレート70は、フランジ部72の外周縁部72aが内周面222nとリブ部222rの内周面とに図示しないシール部材を介して密着するようにトランスミッションケース22内に配置される。また、筒状部71の固定部711に形成された固定端711tや、フランジ部72の外周縁部72aに形成された第1〜第3固定部721,722,723は、コンバータハウジング221やトランスアクスルケース222に固定される。
これにより、フランジ部72の外周縁部72aとトランスミッションケース22の内周面222nおよびリブ部222rの内周面との間を介して作動油貯留室60に貯留された作動油がデフ室内に流入するのをシール部材によって良好に抑制することができる。また、デフ室内に作動油が流入したとしても、デフリングギヤ45の回転によって掻き上げられた当該デフ室内の作動油をリザーバプレート70のデフリング包囲部73に形成された開口部73oから作動油貯留室60側へと良好に排出することが可能となる。この結果、デフ室内に作動油が滞留するのを良好に抑制することができるため、デフリングギヤ45の回転抵抗(撹拌抵抗)をより低減させることが可能となる。
上述のように構成されたリザーバプレート70は、更に、フランジ部72の外周部において第1固定部721のドライブピニオンギヤ44側の側方に設けられた作動油受容部100を含む。作動油受容部100は、少なくとも一部がドライブピニオンギヤ44の側方かつデフリングギヤ45の上方に位置するようにフランジ部72の外周縁部72aから延出される底部110と、底部110のドライブピニオンギヤ44とは反対側の軸方向に延びる端部から径方向外側に延出される遮蔽部120とを有する。当該作動油受容部100の全体または少なくとも一部は、筒状部71,フランジ部72およびデフリング包囲部73と一体に成形されてもよく、別体に成形された後にフランジ部72に固定されてもよい。
底部110は、フランジ部72の外周縁部72aから延出される第1スロープ部111と、第1スロープ部111に対して軸方向においてデファレンシャルギヤ50すなわちフランジ部72とは反対側に配置される第2スロープ部112とから構成される。本実施形態において、底部110すなわち第1および第2スロープ部111,112は、図6に示すように、軸方向においてそれぞれデファレンシャルギヤ50すなわちフランジ部72に近づくにつれて下方に傾斜する。ただし、第2スロープ部112は、底部110から省略されてもよく、第1および第2スロープ部111,112は、軸方向に対して水平に形成されてもよい。
第1スロープ部111は、図3から図5に示すように、ドライブピニオンギヤ44の側方かつデフリングギヤ45の上方に配置されると共に、デフリングギヤ45の外周に概ね沿うように形成される。この結果、第1スロープ部111は、少なくともその一部がドライブピニオンギヤ44とデフリングギヤ45との噛合部側に作動油を導くように遮蔽部120から離間するにつれて下方に傾斜するように形成される。ただし、第1スロープ部111を全体として遮蔽部120から離間するにつれて下方に傾斜させてもよい。
第2スロープ部112は、図3に示すように、カウンタシャフト42およびカウンタドリブンギヤ43の側方に位置するように第1スロープ部111に隣接して形成される。また、第2スロープ部112は、図5に示すように、遮蔽部120に近づくにつれて下方に傾斜する。更に、図3から図7に示すように、第2スロープ部112の遮蔽部120とは反対側すなわちカウンタシャフト42およびカウンタドリブンギヤ43側の縁部112aの一部には、上方に向けて延びる壁部112wが形成されている。当該壁部112wは、軸方向におけるドライブピニオンギヤ44とカウンタドリブンギヤ43との間で当該ドライブピニオンギヤ44の外径よりカウンタシャフト42に近接するように配置される。
また、底部110は、図3および図5に示すように、遮蔽部120に沿って延在すると共に底部110のフランジ部72側の端部で開口する凹部(溝)110oを有する。凹部110oは、フランジ部72の外周縁部72aよりも当該フランジ部72の径方向内側に窪むように第1および第2スロープ部111,112の双方に連続して形成されている。当該凹部110oは、フランジ部72の頂部に対してドライブピニオンギヤ44とは反対側にオフセットされた位置で開口する。ただし、凹部110oは、底部110から省略されてもよい。
遮蔽部120は、板状に形成され、底部110の第1および第2スロープ部111,112のドライブピニオンギヤ44やカウンタシャフト42,カウンタドリブンギヤ43とは反対側の軸方向に延びる端部から径方向外側に延出される。遮蔽部120は、図6に示すように、第1スロープ部111と概ね同幅に(第1スロープ部111よりもわずかに第2スロープ部112側まで延びるように)形成される第1遮蔽部121と、第1遮蔽部121から第2スロープ部112のフランジ部72とは反対側の端部までを延びる第2遮蔽部122とを含む。第1遮蔽部121の上端は、図3から図5に示すように、トランスアクスルケース222との干渉を避けながら、当該第1遮蔽部121に向かって飛散してくる作動油がデフ室内に流入しないように、ドライブピニオンギヤ44側に向かって湾曲するように形成されている。第2遮蔽部122は、図3に示すように、トランスアクスルケース222との干渉を避けるため、第1遮蔽部121よりも低背に形成されている。
上述のように構成された作動油受容部100は、図4に示すように、ドライブピニオンギヤ44に対して自動変速機25の入力軸26(図4の点線参照)とは反対側に配置される。これにより、ドライブピニオンギヤ44の近傍で入力軸26周りに配置されるクラッチC1やクラッチC3等の潤滑・冷却に用いられた後に、当該クラッチC1やクラッチC3の回転によってドライブピニオンギヤ44に向けて入力軸26周りから飛散してくる作動油を作動油受容部100の底部110および遮蔽部120によって良好に受容することができる。
また、本実施形態では、底部110にドライブピニオンギヤ44の側方に位置する第1スロープ部111のみならず、カウンタシャフト42やカウンタドリブンギヤ43の側方に位置する第2スロープ部112が設けられているので、当該第2スロープ部112によりカウンタシャフト42やカウンタドリブンギヤ43に向けて入力軸26周りから飛散してくる作動油をも良好に受容することができる。更に、第2スロープ部112は、遮蔽部120に近づくにつれて下方に傾斜しており、第2スロープ部112のカウンタシャフト42側(遮蔽部120とは反対側)の縁部112aの一部には、上方に延びる壁部112wが形成されている。これにより、第2スロープ部112で受容した作動油が当該縁部112aから流出してデフ室内に流下するのをより良好に抑制することができる。
そして、作動油受容部100の第1スロープ部111は、ドライブピニオンギヤ44とデフリングギヤ45との噛合部側に作動油を導くように遮蔽部120から離間するにつれて下方に傾斜している。従って、動力伝達装置20では、底部110上の作動油を第1スロープ部111を介してドライブピニオンギヤ44とデフリングギヤ45との噛合部へと良好に供給することが可能となる。また、本実施形態において、第1および第2スロープ部111,112は、軸方向においてデファレンシャルギヤ50すなわちフランジ部72に近づくにつれて下方に傾斜している。従って、第2スロープ部112に受容された作動油を第1スロープ部111へとスムースに導くと共に、第1スロープ部111から作動油をドライブピニオンギヤ44とデフリングギヤ45の噛合部に沿って満遍なく供給することができる。
このように、動力伝達装置20では、デフリングギヤ45の回転により掻き上げられる作動油以外の作動油、すなわち入力軸26周りから飛散してくる作動油を用いてドライブピニオンギヤ44とデフリングギヤ45との噛合部を潤滑・冷却することができる。この結果、リザーバプレート70によってデフ室と作動油貯留室60とを区画してデフ室内に作動油をできるだけ滞留させないようにすることで、デフリングギヤ45により掻き上げられる作動油の量が比較的少なくなっても、ドライブピニオンギヤ44とデフリングギヤ45との噛合部を良好に潤滑・冷却することができる。なお、作動油受容部100は、ドライブピニオンギヤ44に向かって飛散してくる作動油を受容できさえすれば、必ずしもドライブピニオンギヤ44に対して入力軸26とは反対側に配置されなくともよい。
また、本実施形態では、第1および第2スロープ部111,112が軸方向においてフランジ部72に近づくにつれて下方に傾斜しているので、第1および第2スロープ部111,112に受容された作動油の一部は、第1スロープ部111からフランジ部72を介して筒状部71の外周面へと流下する。そして、筒状部71の外周面に達した作動油は、当該筒状部71の外周面に形成された孔部71oを介してデファレンシャルギヤ50のピニオンシャフト53およびデフケース54の間隙へと供給される。これにより、当該間隙を介して作動油を主にピニオンギヤ51とデフケース54との間に配置される図示しないピニオンワッシャへと供給し、当該ピニオンワッシャを潤滑・冷却することができる。
更に、第1および第2スロープ部111,112には、遮蔽部120に沿って延びると共にフランジ部72の外周縁部72aで開口する凹部110oが形成されているので、遮蔽部120に衝突した作動油や第1および第2スロープ部111,112に受容された作動油を当該凹部110oに集めると共に、当該凹部110oからフランジ部72へと良好に流下させることができる。特に、本実施形態では、第2スロープ部112が遮蔽部120に近づくにつれて下方に傾斜していることから、第2スロープ部112に受容された作動油をより良好に凹部110oに集めることが可能となる。
また、フランジ部72には、上述したように、作動油受容部100のドライブピニオンギヤ44とは反対側の側方に形成される第1固定部721と筒状部71の固定部711との間で、当該フランジ部72の表面から筒状部71側に突出すると共に筒状部71(固定部711)の表面からデフリングギヤ45の径方向外側に向けて延びる規制壁72wが形成されている。これにより、フランジ部72の頂部に対してドライブピニオンギヤ44とは反対側にオフセットされた位置で開口する凹部110oから流下した作動油が当該フランジ部72の表面をドライブピニオンギヤ44とは反対側、すなわち孔部71oから離間する方向に流れるのを規制壁72wによって良好に抑制し、作動油を孔部71o側へとより良好に導くことができる。
更に、筒状部71には、上述したように、孔部71oをフランジ部72、固定部711および規制壁72wとは反対側から囲むように壁部71wが上方に延出されている。これにより、フランジ部72の表面や規制壁72wから筒状部71の外周面に伝達された作動油が孔部71oから離間した方向に流れるのを壁部71wや固定部711によって良好に抑制しつつ、当該壁部71wと固定部711の端面とによって孔部71oの周囲に作動油を一時的に貯留し、作動油を当該孔部71oへとより一層良好に導くことができる。
このように、この動力伝達装置20では、作動油受容部100からフランジ部72を伝って流下する作動油をデファレンシャルギヤ50に導く孔部71oが筒状部71に形成されている。これにより、オイルポンプ24からの供給される作動油による潤滑、すなわち強制潤滑を用いることなくデファレンシャルギヤ50を良好に潤滑することができる。この結果、オイルポンプ24の駆動負荷を低減させて、当該オイルポンプ24の大型化やオイルポンプ24の駆動による損失(ロストルク)の増加を良好に抑制することが可能となる。
以上説明したように、本発明による動力伝達装置は、変速機と、前記変速機からの動力が伝達されるドライブピニオンギヤと、前記ドライブピニオンギヤの下方に配置されると共に該ドライブピニオンギヤに噛合するデフリングギヤと、前記デフリングギヤが連結されるデファレンシャルギヤと、前記デファレンシャルギヤの少なくとも一部を覆うカバー部材とを備えた動力伝達装置において、前記カバー部材は、前記デフリングギヤの側面と対向するように該デフリングギヤの径方向に延びるフランジ部と、前記デファレンシャルギヤの上部を覆うように前記フランジ部の内周部から前記デファレンシャルギヤの軸方向に延出される覆い部と、前記フランジ部の外周部に設けられた作動油受容部とを含み、前記作動油受容部は、少なくとも一部が前記ドライブピニオンギヤの側方かつ前記デフリングギヤの上方に位置するように前記フランジ部の外周部から延出される底部と、前記底部の前記ドライブピニオンギヤとは反対側の前記軸方向に延びる端部から前記径方向の外側に延出される遮蔽部とを有し、前記底部は、前記フランジ部に前記軸方向に近づくにつれて下方に傾斜しており、前記カバー部材の前記覆い部には、前記作動油受容部から前記フランジ部を伝って流下する作動油を前記デファレンシャルギヤに導く孔部が形成されていることを特徴とする。
この動力伝達装置において、デファレンシャルギヤの少なくとも一部を覆うカバー部材は、デフリングギヤの側面と対向するように当該デフリングギヤの径方向に延びるフランジ部と、デファレンシャルギヤの上部を覆うようにフランジ部の内周部から当該デファレンシャルギヤの軸方向に延出される覆い部と、フランジ部の外周部に設けられた作動油受容部とを含む。当該作動油受容部は、少なくとも一部がドライブピニオンギヤの側方かつデフリングギヤの上方に位置するようにフランジ部の外周部から延出される底部と、底部のドライブピニオンギヤとは反対側の上記軸方向に延びる端部から径方向の外側に延出される遮蔽部とを有する。これにより、例えば変速機に含まれる構成要素を潤滑・冷却した後、ドライブピニオンギヤに向けて飛散してくる作動油を当該作動油受容部の遮蔽部および底部によって良好に受容することができる。そして、作動油受容部の底部は、フランジ部に上記軸方向に近づくにつれて下方に傾斜するように形成され、カバー部材の覆い部には、作動油受容部からフランジ部を伝って流下する作動油をデファレンシャルギヤに導く孔部が形成されている。これにより、作動油受容部の底部から作動油をフランジ部、覆い部へとスムースに流下させると共に、覆い部に達した作動油を孔部からデファレンシャルギヤへと供給することができる。従って、この動力伝達装置では、強制潤滑を用いることなくデファレンシャルギヤを良好に潤滑することが可能となる。
また、前記カバー部材は、前記フランジ部の表面から前記覆い部側に突出する規制壁を有してもよい。これにより、作動油受容部からフランジ部へと流下した作動油が孔部から離間する方向に流れるのを規制壁によって良好に抑制し、作動油を当該孔部へと良好に導くことが可能となる。
更に、前記作動油受容部の前記底部は、前記遮蔽部に沿って延在すると共に前記底部の前記フランジ部側の端部で開口する凹部を有してもよい。これにより、作動油受容部に受容された作動油を遮蔽部に沿って形成された凹部に集めると共に、当該凹部からフランジ部へと良好に流下させることが可能となる。
更に、前記覆い部には、前記孔部を囲むように上方に延びる壁部が形成されてもよい。これにより、フランジ部から筒状部の外周面へと伝達された作動油が孔部から離間する方向に流れるのを壁部によって抑制しつつ、当該壁部によって孔部の周囲に作動油を一時的に貯留し、作動油を孔部へとより良好に導くことが可能となる。
更に、本発明による動力伝達装置は、前記変速機、前記ドライブピニオンギヤ、前記デフリングギヤおよび前記デファレンシャルギヤを収容するケースを更に備えてもよく、前記カバー部材は、前記ケース内を前記デフリングギヤおよび前記デファレンシャルギヤが配置されるデフ室と作動油が貯留される作動油貯留室とに区画してもよい。
そして、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の外延の範囲内において様々な変更をなし得ることはいうまでもない。更に、上記発明を実施するための形態は、あくまで課題を解決するための手段の欄に記載された発明の具体的な一形態に過ぎず、課題を解決するための手段の欄に記載された発明の要素を限定するものではない。