JP6129621B2 - ドグクラッチ - Google Patents
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Description
上記ドグクラッチにおいて、シフト操作時、ドグ歯の傾斜した当接面同士が当り始めると、シフターと変速ギアとの回転速度差によって当接面に、シフターが変速ギアに引き寄せられる軸方向分力が作用し、ドグ歯同士の噛み合い速度を増加させることが可能になる。
本発明は、上述した事情を鑑みてなされたものであり、ドグ歯同士の噛み合い速度の向上と、ドグ歯同士の当接後のシフトフォークにおけるスラスト荷重の発生防止とが両立可能なドグクラッチを提供することを目的としている。
この構成によれば、ドグ歯の噛み合い始めには、傾斜面に作用する軸方向分力によって、噛み合いスピードを高めたり、ドグ歯の浅噛みを防止したりすることができ、また、ドグ歯の噛み合い途中で、平坦面同士を当接させて平坦面には軸方向分力が発生しないようにすることができる。
また、上記構成において、前記傾斜面(72m,72n)は、前記平坦面(72p)の径方向内側の端部又は径方向外側の端部に形成されるようにしても良い。この構成によれば、傾斜面を加工によって形成する際、平坦面の径方向内側の端部又は径方向外側の端部から刃具を入れる方が加工しやすく、傾斜面を容易に形成することができる。
また、上記構成において、前記ドグ歯(58e,58f)同士の噛み合いの前半と後半とは、前記傾斜面(72m,72n)と前記平坦面(72p)との交点(72w)同士が一致したときを境としても良い。
また、傾斜面は、平坦面の径方向内側の端部又は径方向外側の端部に形成されるので、傾斜面を加工によって形成する際、平坦面の径方向内側の端部又は径方向外側の端部から刃具を入れる方が加工しやすく、傾斜面を容易に形成することができる。
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る変速装置を備えた自動二輪車10の左側面図である。
自動二輪車10は、ヘッドパイプ(不図示)に回動可能に軸支されたハンドル11と、ハンドル11により操舵される前輪12と、駆動輪である後輪13と、運転者が着座するシート14と、後輪13にチェーン15を介して駆動力を供給するパワーユニット16と、パワーユニット16の制御を行う制御ユニット17(制御部)と、バッテリ18とを有する。
図2は、パワーユニット16の断面平面図である。図2では、左右方向が車幅方向、上方向が車両前方、下方向が車両後方に相当する。
パワーユニット16は、マニュアルトランスミッションである変速機50を備え、この変速機構Tでは、変速用クラッチ機構51の切替え及び変速段(シフト)の切替えが行われる。
変速機50では、駆動ギア58b及び従動ギア59cのスライドに応じて、メイン軸56及びカウンタ軸57間で、ニュートラル状態、または、1速〜4速の何れかの変速歯車対を選択的に用いた動力伝達が可能となる。
カウンタ軸57の端部にはスプロケット67が設けられ、スプロケット67はチェーン15を介して後輪13に回転を伝達する。また、カウンタ軸57の近傍には、非接触でカウンタ軸57の回転速度を検出する車速センサ68が設けられている。車速センサ68が検出するカウンタ軸57の回転速度は車速を示すことになる。
エンジン21は、クランク軸23から変速用クラッチ機構51への入力回転速度を検出する入力回転センサ45、及び、メイン軸56の出力回転速度を検出する出力回転センサ46を備える。また、自動二輪車10は、吸気装置のスロットル開度を検出するスロットル開度センサ(不図示)を備える。車速センサ68、入力回転センサ45、出力回転センサ46及び上記スロットル開度センサは、検出値を制御ユニット17に供給する。
図3(A)に示すように、駆動ギア58aは、メイン軸56に回転自在に支持されるとともに軸方向移動が規制され、側面に、駆動ギア58b側に突出する複数のドグ歯58eが一体に形成されている。
駆動ギア58bは、メイン軸56にスプライン結合されるとともに軸方向に移動可能に支持され、側面に、駆動ギア58a側に突出する複数のドグ歯58fが一体に形成されている。なお、符号58gは、駆動ギア58bの側面から駆動ギア58c(図2参照)側に突出する複数のドグ歯、58hはシフトフォーク60a(図2参照)が係合するように駆動ギア58bの外周面に形成された環状溝である。
上記の駆動ギア58aのドグ歯58eと駆動ギア58bのドグ歯58fとは、ドグクラッチ65を構成している。
図4(A)に示すように、駆動ギア58aは、中央にメイン軸56(図2参照)と嵌合する嵌合穴71aが開けられたボス部71bと、このボス部71bの外周部に形成された複数の歯部71cと、ボス部71bの側面71dに側方に突出するように周方向に等間隔に形成された複数のドグ歯58eとを備える。
ドグ歯58eは、側面視が略扇形状であり、内壁71fと、外壁71gと、周方向に面する2つの側壁71h,71jとを備え、一方の側壁71jが駆動ギア58b(図4(B)参照)のドグ歯58fと当接して(噛み合って)動力伝達が行われる。なお、黒丸で示す符号58Jは駆動ギア58aの中心を通って軸方向(紙面の表裏方向)に延びる軸線であり、上記側壁71hは軸線58Jを通る平面上に位置し、側壁71jは、その一部が軸線58Jを通る平面上に位置する。
ドグ歯58fは、側面視が略扇形状であって駆動ギア58a(図4(A)参照)のドグ歯58e(図4(A)参照)と同形状であり、内壁72fと、外壁72gと、周方向に面する2つの側壁72h,72jとを備え、一方の側壁72jが図4(A)に示した駆動ギア58aのドグ歯58eの側壁71jと当接して(噛み合って)動力伝達が行われる。なお、図4(B)に黒丸で示す符号58Kは駆動ギア58bの中心を通って軸方向(紙面の表裏方向)に延びる軸線であり、上記側壁72hは軸線58Kを通る平面上に位置し、側壁72jは、その一部が軸線58Kを通る平面上に位置する。
ドグ歯58fは、ドグ歯58e(図4(A)参照)と同一形状であり、以下では、ドグ歯58fについて説明する。なお、矢印はドグ歯58fの回転方向である。
ドグ歯58fの側壁72jは、想像線で示した径方向に延びる平面72Lに対して傾斜した2つの傾斜面72m,72nと、平面72L上にあって傾斜面72m,72nの間に径方向に延びるように形成された平坦面72pとからなる。
傾斜面72m,72nは、ドグ歯58fの先端部72k側の上辺72q,72qが平面72Lに対して側壁72hとは反対側に突出し、ドグ歯58fの付け根部72e側の下辺72r,72rが平面72Lに対して側壁72h側寄りに位置するように傾斜した面である。換言すれば、傾斜面72m,72nは、上辺72qが下辺72rよりも周方向に突出するように傾斜している。
図6(A)に示すように、ドグ歯58fの側壁72jには、その内周部及び外周部に形成された傾斜面72m,72nと、傾斜面72m,72nの間に形成された平坦面72pとを備える。
図6(B)に示すように、平坦面72pは、軸線58K(図4(B)参照)を通って径方向に延びる平面72L上に配置されている。
図6(C)に示すように、傾斜面72mは、平面72L(及び平坦面72p)に対して角度θだけ傾斜した面である。ドグ歯58fの付け根部72e側では、平坦面72pの方が傾斜面72mより周方向に突出し、ドグ歯58fの先端部72k側では、傾斜面72mの方が平坦面72pより周方向に突出している。図6(A)に示した傾斜面72nの断面形状についても、傾斜面72mと同様である。
図7は、第1実施形態のドグ歯58e,58fの噛み合いの作用を示す作用図であり、図7(A)〜(D)にて順にドグ歯58e,58fの噛み合いの作用を説明する。
図7(A)に示すように、ドグ歯58e,58fのそれぞれの傾斜面72m,72nの周方向(図の左右方向)の中央に軸方向(図の上下方向)に延びる直線73及び直線74を引いたときに、それぞれの平坦面72pは直線73,74よりも突出している。このようなドグ歯58e,58fの形状が、以下作用を生み出している。
そして、図7(B)に示すように、駆動ギア58bのドグ歯58fが駆動ギア58aのドグ歯58eに当接する、詳しくは、ドグ歯58fの傾斜面72m,72nがドグ歯58eの傾斜面72m,72nに当たる。更に、ドグ歯58fは、矢印Bで示すように傾斜面72m,72nに沿って移動する。この状態では、ドグ歯58e,58fの傾斜面72m,72n同士が当っているだけなので、ドグ歯58fがドグ歯58eを周方向に押し付けることにより、駆動ギア58bを駆動ギア58a側に引き付ける軸方向分力が発生する。この結果、駆動ギア58aに対する駆動ギア58bの噛み合い速度が大きくなる。即ち、ドグ歯58e,58f同士の浅噛みが直ちに解消され、深く噛み合う状態に移行する。
従って、図7(D)に示すように、駆動ギア58bの傾斜面72m,72nは、駆動ギア58aの傾斜面72m,72nから次第に離れ、駆動ギア58bの傾斜面72m,72nと駆動ギア58aの傾斜面72m,72nとの間に距離L1の隙間75が出来る。
この状態では、駆動ギア58a,58bの平坦面72p同士が当っているだけなので、駆動ギア58bを駆動ギア58a側に引きつける軸方向分力は発生しない。
図8は、第2実施形態のドグ歯77の概略形状を示す斜視図である。図5に示した第1実施形態と同一構成については同一符号を付け、詳細説明は省略する。
ドグ歯77は、内壁77a、外壁77b、側壁77c,77dを備える。
側壁77dは、想像線で示した径方向に延びる平面72Lに対して角度θだけ傾斜した傾斜面777gと、平面72L上にあって傾斜面77gの両側に径方向に延びるように形成された2つの平坦面77f,77fと、傾斜面77g及び平坦面77f,77fの付け根部77m側に形成された平坦面77hとからなる。
傾斜面77gは、ドグ歯77の先端部77j側の上辺77pが平面72Lに対して側壁77cとは反対側に突出し、ドグ歯77の付け根部72e側の下辺77qが平面72Lに対して側壁77c側寄りに位置するように傾斜した面である。換言すれば、傾斜面77gは、上辺77pが下辺77qよりも周方向に突出するように傾斜している。
また、図4及び図6に示したように、傾斜面72m,72nは、平坦面72pの径方向内側の端部又は径方向外側の端部に形成されるので、傾斜面72m,72nを加工によって形成する際、平坦面72pの径方向内側の端部又は径方向外側の端部から刃具を入れる方が加工しやすく、傾斜面72m,72nを容易に形成することができる。
例えば、上記実施形態において、図5及び図8に示したように、単一のドグ歯に傾斜面又は平坦面を複数形成したが、これに限らず、単一のドグ歯に傾斜面と平坦面とを少なくとも1つずつ形成しても良い。この場合、傾斜面を平坦面の径方向外側に形成した方が形成しやすくなる。
また、本発明のドグクラッチは、マニュアルトランスミッションの車両に適用されるものとして説明したが、自動変速機構の車両に適用されるものであっても良い。
56 メイン軸(回転軸)
58a 駆動ギア(変速ギア)
58b 駆動ギア(シフター)
58e,58f,77 ドグ歯
65 ドグクラッチ
72e,77m 付け根部
72k,77j 先端部先端部
72m,72n,77g 傾斜面傾斜面
72p,77e,77f 平坦面
75 隙間
Claims (4)
- 変速機(50)の回転軸(56)に回転を規制されながら軸方向移動可能に設けられるシフター(58b)と、前記回転軸(56)に回転可能に支持されながら軸方向移動が規制される変速ギア(58a)とを備え、
前記シフター(58b)及び前記変速ギア(58a)の側面にそれぞれ側方に突出するとともに互いに噛み合うドグ歯(58e,58f)が形成され、前記ドグ歯(58e,58f)に、互いに当接するとともに付け根部(72e)よりも先端部(72k)が周方向に突出するように径方向に対して傾斜した傾斜面(72m,72n)を備えるドグクラッチにおいて、
前記シフター(58b)及び前記変速ギア(58a)のそれぞれの前記ドグ歯(58e,58f)は、前記傾斜面(72m,72n)の径方向一側に軸方向且つ径方向に延びる平坦面(72p)を備え、
前記平坦面(72p)を前記シフター(58b)の移動方向とは直交する方向から前記平坦面(72p)に沿って見たときに、前記平坦面(72p)は、前記傾斜面(72m,72n)と交差し、
前記シフター(58b)が軸方向移動するときに、前記シフター(58b)及び前記変速ギア(58a)の前記ドグ歯(58e,58f)の噛み合いの前半で前記傾斜面(72m,72n)同士が当接し、前記ドグ歯(58e,58f)の噛み合いの後半で前記平坦面(72p)同士が当接することを特徴とするドグクラッチ。 - 前記シフター(58b)と前記変速ギア(58a)との互いの前記平坦面(72p)が当接した後に、前記シフター(58b)の軸方向移動が完了するまでに、前記傾斜面(72m,72n)同士に隙間(75)が発生するように前記傾斜面(72m,72n)と前記平坦面(72p)との位置関係が設定されることを特徴とする請求項1に記載のドグクラッチ。
- 前記傾斜面(72m,72n)は、前記平坦面(72p)の径方向内側の端部又は径方向外側の端部に形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載のドグクラッチ。
- 前記ドグ歯(58e,58f)同士の噛み合いの前半と後半とは、前記傾斜面(72m,72n)と前記平坦面(72p)との交点(72w)同士が一致したときを境とすることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のドグクラッチ。
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