JP6454207B2 - 車両の変速装置 - Google Patents
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Description
チェンジ機構は、前記マスターアームと、このマスターアームに回動させられるシフトドラムと、シフトドラムに駆動されるとともに変速機のギア列の一部を成すシフターギアを軸方向に移動させるシフトフォークとを備える。
このような蓄力機構を備える自動二輪車では、走行中にAMTの制御装置から変速信号が出力されてシフトスピンドルが回動すると、ギアシフトアームは、蓄力カラーから蓄力スプリングを介して回動させられる方向に荷重を受ける。しかし、クラッチレバーが回動されてクラッチが切断されるまでは、変速機のギア列のシフターギアとフリーギアとの間のドグクラッチ歯側面(駆動力伝達面)には、走行駆動力によって摩擦力がかかっているため、シフトフォークはシフターギアを動かすことはできない。このため、クラッチが切れるまでは、シフトスピンドルが回動しても、ギアシフトアームがマスターアーム及びシフトドラムを回動させることはなく、蓄力カラー及び蓄力蓄力スプリングのみが回動され、蓄力スプリングには荷重が蓄えられていく。その後、クラッチレバーがクラッチを切断させると、変速機のギア列のドグ歯側面にかかっていた摩擦力が解除され、蓄力スプリングに蓄えられた荷重及び回動角によって、ギアシフトアーム、マスターアーム及びシフトドラムが一気に素早く回動され、結果として、ギアチェンジにかかる時間を短くすることができる。上記従来例のシフトスピンドル角に対するクラッチリフト特性は、変速の際、シフトスピンドルが回動していき、蓄力が完了した後にクラッチが切られるように設定されている。
ここで、従来例のシフトスピンドルの制御では、従来例の図27に示されるように、シフトスピンドル角がクラッチ切断位置を越えた以降も、シフトドラム角が次の変速段に対応する角度に移行するまでシフトスピンドルを逆転しないような仕様とされている。このため、駆動力の抜け時間を短くする観点で、シフトスピンドル角がクラッチ切断側にある時間をより短くすることが課題となる。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、蓄力機構を備える連動スピンドル式の変速装置において、変速時の駆動力の抜け時間を短くできるようにすることを目的とする。
本発明によれば、制御装置は、シフトスピンドルがクラッチ切断側の目標角まで回動したことをシフトスピンドル角センサの出力値から検出すると、シフトスピンドルを中立位置側に戻すように回転制御する。従って、シフトスピンドルがクラッチ切断側の目標角に達すると、チェンジ機構の動作状態によらずシフトスピンドルは中立位置側に戻るため、チェンジ機構の動作をセンサ等で確認する時間を省くことができ、クラッチ切断側にある時間を短かくできる。このため、変速時の駆動力の抜け時間を短くできる。
本発明によれば、浅噛みが発生した場合、シフトスピンドルは、浅噛みが発生した直前の目標角よりも奥側の目標角でクラッチ切断側へ回動されるため、直前の目標角まで回動させた場合よりもギアが変速する時間を長く確保できる。このため、クラッチが再び切断されて駆動力が抜けている間に、蓄力によってシフトドラムは正常なドグクラッチの係合位置まで回動し、変速を完了させることができる。また、シフトスピンドルが奥側の目標角まで回動すると、シフトスピンドルはチェンジ機構の動作状態によらず中立位置側に戻るように制御されるため、変速時の駆動力の抜け時間を短くできる。
本発明によれば、シフトスピンドルを中立位置側に戻す1回目の回動制御におけるシフトスピンドルの目標角は、クラッチの容量が中間容量となる位置に設定され、シフトスピンドルが1回目の回動制御で目標角に達した後にドグ歯の浅噛み判定がされる。これにより、シフトドラムが回動した際にドグ当たりが発生した場合であっても、シフトスピンドルを中立位置側に戻す1回目の回動制御によってクラッチの容量が中間容量となるため、変速先のフリーギアとシフターギアとの間に回転差が生じ、ドグ当たりを早期に解消できる。また、ドグ当たりの解消後に浅噛み判定を行うため、浅噛み判定を適切に行うことができる。
また、浅噛みが発生した場合に、シフトスピンドルは、より奥側の目標角でクラッチ切断側へ回動されるため、浅噛みを解消できる。また、浅噛みを解消する際の駆動力の抜け時間を短くできる。
また、シフトドラムが回動した際にドグ当たりが発生した場合であっても、ドグ当たりを早期に解消できる。また、ドグ当たりの解消後に浅噛み判定を適切に行うことができる。
図1は、本発明の実施の形態に係る自動変速装置25を備えた自動二輪車10の左側面図である。
自動二輪車10(車両)は、ヘッドパイプ(不図示)に回動可能に軸支されたハンドル11と、ハンドル11により操舵される前輪12と、駆動輪である後輪13と、運転者が着座するシート14と、後輪13にチェーン15を介して駆動力を供給するパワーユニット16と、パワーユニット16の制御を行う制御ユニット17(制御装置)と、バッテリ18とを有する。
図2は、パワーユニット16の断面図である。図2では、紙面の左右方向が車幅方向、上方向が車両前方、下方向が車両後方に相当する。
パワーユニット16は、走行駆動力を発生するエンジン21と、発電機22と、エンジン21のクランク軸23に設けられた発進クラッチ24と、発進クラッチ24を介して出力されたクランク軸23の駆動力を変速して出力する自動変速装置25(変速装置)とを備える。
図1に示すように、シリンダヘッド28の吸気ポートには、エアクリーナボックス(不図示)から延びる吸気管52が接続される。吸気管52には、エンジン21に供給する空気量を調整する電子制御式のスロットル弁53が設けられる。吸気管52においてスロットル弁53の下流には、燃料噴射弁54が設けられる。
一側ケース半体26Lと他側ケース半体26Rとは、合わせ面26F(合わせ部)で合わせられ、車幅方向に延びる複数のケース連結ボルト(不図示)によって結合される。
クランク室31及び変速機室32の右側方には、クラッチ室34が設けられ、クランク室31の左側方には、発電機室35が設けられる。クラッチ室34は、他側ケース半体26Rの壁部36の外側面とクラッチカバー30の内面とによって区画される。発電機室35は、一側ケース半体26Lの壁部37の外側面と発電機カバー29の内面とによって区画される。
クランク軸23の軸部23bの一端は、発電機室35に延び、この一端には発電機22のローター22aが固定される。発電機22のステーター22bは、一側ケース半体26Lに固定される。
クランク軸23の軸部23bの他端23cは、クラッチ室34に延び、遠心式の発進クラッチ24は、他端23cの先端部に設けられる。
発進クラッチ24は、クランク軸23の外周に対して相対回転可能なスリーブ45の一端に固定されたカップ状のアウタケース46と、スリーブ45の外周に設けられたプライマリギア47と、クランク軸23の右端部に固定されたアウタプレート48と、アウタプレート48の外周部にウェイト49を介して半径方向外側を向くように取り付けられたシュー50と、シュー50を半径方向内側に付勢するためのスプリング51とを有する。発進クラッチ24では、エンジン回転数が所定値以下の場合にアウタケース46とシュー50とが離間しており、クランク軸23と自動変速装置25との間が遮断状態(動力が伝達されない切り離し状態)となっている。エンジン回転数が上昇し所定値を超えると、遠心力によってウェイト49がスプリング51に抗して半径方向外側に移動することで、シュー50がアウタケース46の内周面に当接する。これにより、アウタケース46とともにスリーブ45がクランク軸23上に固定され、クランク軸23の回転がプライマリギア47を介して自動変速装置25に伝達されるようになる。
自動変速装置25は、前進4段の常時噛み合い式の変速機60と、クランク軸23側と変速機60との間の接続を切り替えるチェンジクラッチ61(クラッチ)と、チェンジクラッチ61を操作するクラッチ操作機構62と、変速機60を変速するギアチェンジ機構63と、クラッチ操作機構62及びギアチェンジ機構63を駆動するアクチュエータ機構64とを備える。アクチュエータ機構64は、制御ユニット17(図1)によって制御される。
すなわち、自動変速モードでは、車速等に基づいてアクチュエータ機構64の制御が行われ、変速機60が自動で変速される。手動変速モードでは、シフトセレクトスイッチ132aが運転者によって操作されることで変速が行われる。
駆動ギア67a,67b,67c,67dは、この順に被動ギア68a,68b,68c,68dと噛合している。駆動ギア67bは左右にスライドしたとき、隣接する駆動ギア67a又は67cに側面のドグ歯が係合し、被動ギア68cは左右にスライドしたとき、隣接する被動ギア68b又は68dに側面のドグ歯が係合する。
駆動ギア67b(駆動側シフターギア)及び被動ギア68c(被動側シフターギア)は、メイン軸65及びカウンタ軸66に対して回転不能にスプライン結合され軸方向にスライド可能なシフターギアである。
駆動ギア67d及び被動ギア68aはメイン軸65及びカウンタ軸66に固定された固定ギアである。
また、駆動ギア67bと駆動ギア67aと、被動ギア68cと被動ギア68bと、及び、被動ギア68cと被動ギア68dとは、側面に設けられた同様のドグクラッチによってそれぞれ係脱可能に結合する。
カウンタ軸66の端部にはスプロケット72が設けられ、スプロケット72はチェーン15を介して後輪13に回転を伝達する。また、カウンタ軸66の近傍には、非接触でカウンタ軸66の回転数を検出する車速センサ73(図9)が設けられている。制御ユニット17は、車速センサ73の検出値から車速を算出する。さらに、メイン軸65の近傍には、非接触でメイン軸65の回転数を検出するメイン軸回転数センサ65a(図9)が設けられている。
図2及び図3を参照し、アクチュエータ機構64は、アクチュエータとしてのシフトモーター75と、クランクケース26内を車幅方向に延びるシフトスピンドル76と、シフトモーター75の回転を減速してシフトスピンドル76を駆動する減速歯車列77とを備える。減速歯車列77の軸方向の一端は、一側ケース半体26Lの壁部37の外側面に支持され、他端は、壁部37を外側方から覆うカバー78に支持される。
シフトスピンドル76は、クラッチ室34を貫通して設けられており、カバー78及びクラッチカバー30にそれぞれ設けられたベアリング78a,30aに両端を軸支されるとともに、一側ケース半体26Lの壁部37に設けられたベアリング37bによっても途中部を軸支される。クラッチカバー30には、シフトスピンドル76の回転位置を検出するシフトスピンドル角センサ79が設けられている。
チェンジ機構89は、シフトスピンドル76に支持されて蓄力機構81によって回動させられるマスターアーム80と、マスターアーム80の回動に連動して回動するシフトドラム70(図13)と、シフトドラム70をシフターギアである駆動ギア67bと被動ギア68cとに接続するシフトフォーク69a,69bと、シフトフォーク69a,69bを軸方向にスライド自在に保持する支持軸(不図示)とを備える。
シフトドラム70がアクチュエータ機構64により駆動されて回転すると、シフトフォーク69a,69bはシフトドラム70の溝70aに沿って軸方向に移動し、駆動ギア67b及び被動ギア68cは変速段に応じてスライドする。
変速機60では、駆動ギア67b及び被動ギア68cのスライドに応じて、メイン軸65及びカウンタ軸66間で、ニュートラル状態、または、1速〜4速の何れかの変速歯車対を選択的に用いた動力伝達が可能となる。
リフターカムプレート85は、ベース部材84に面する押圧操作部85aと、押圧操作部85aから延びてクラッチレバー82のレバー部82bに連結される連結アーム部85bと、連結アーム部85bに形成されるカム孔部85cとを備える。リフターカムプレート85は、クラッチレバー82のレバー部82bの先端に設けられたピン87がカム孔部85cに挿通されることでクラッチレバー82に連結される。
リフターカムプレート85のカム孔部85cは、連結アーム部85bの長手方向に沿って屈曲した形状に形成されている。シフトスピンドル76の回動に伴ってクラッチレバー82のピン87がカム孔部85c内を移動することで、リフターカムプレート85が回動する。すなわち、カム孔部85cの形状によってリフターカムプレート85の単位回動量あたりの軸方向の移動量を設定することができ、これにより、チェンジクラッチ61の断接の特性を調整できる。
シフトアップする場合、シフトスピンドル76は、中立位置から図4の時計回り方向(シフトアップ方向)に回動され、ピン87は、カム孔部85cの内端部85c1に位置する。
シフトダウンする場合、シフトスピンドル76は、中立位置から図4の反時計回り方向(シフトダウン方向)に回動され、ピン87は、カム孔部85cの外端部85c2に位置する。
また、シフトダウンを行う場合、制御ユニット17は、シフトモーター75を回転させ、シフトスピンドル76をシフトダウン方向に回転させる。シフトダウン時には、蓄力機構81による蓄力は行われない。シフトダウン時には、シフトスピンドル76の回転に伴い、クラッチレバー82が回動してチェンジクラッチ61が切断され、その後、マスターアーム80がシフトダウン方向に回動する。これにより、シフトドラム70が回転し、ギア位置が一段だけシフトダウンされる。
本第実施の形態では、1つのシフトモーター75によって回転させられる単一のシフトスピンドル76によって、ギアチェンジ機構63及びクラッチ操作機構62の両方が駆動されるため、シフトモーター75が1つで良く、構造をシンプルにできる。
図5は、チェンジクラッチ61の断面図である。ここで、図5では、チェンジクラッチ61が完全に接続された状態が示されている。
チェンジクラッチ61は、プライマリドリブンギア90に固定されるカップ状のクラッチアウタ91と、クラッチアウタ91の径方向内側に設けられ、メイン軸65に一体に固定される円板状のクラッチセンタ92と、クラッチアウタ91の径方向内側に設けられ、メイン軸65の軸方向に移動可能なプレッシャプレート93と、プレッシャプレート93とクラッチセンタ92との間に設けられるクラッチ板94と、クラッチを接続する方向にプレッシャプレート93を付勢するメインスプリング95と、クラッチセンタ92とリフターカムプレート85との間に配置されるリフタープレート96と、リフタープレート96とリフターカムプレート85との間に配置されるサブリフタープレート97とを備える。
クラッチセンタ92とプレッシャプレート93とは組み合されて一体となり、クラッチアウタ91の内側に配置されるクラッチインナを構成する。
クラッチアウタ91は、プライマリドリブンギア90の外側面に一体に固定されており、プライマリドリブンギア90と一体にメイン軸65に対して相対回転可能である。
クラッチセンタ92は、メイン軸65にスプライン嵌合してナット100によって固定されており、メイン軸65に対し、相対回転不能且つ軸方向に移動不能である。
クラッチ板94は、クラッチセンタ92とプレッシャプレート93との間に挟持される。
クラッチ板94は、クラッチアウタ91に設けられる外側摩擦板94aと、クラッチセンタ92に設けられる内側摩擦板94bとを備え、外側摩擦板94a及び内側摩擦板94bは、プレッシャプレート93とクラッチセンタ92との間に交互に複数枚重ねて配置されている。各外側摩擦板94aは、クラッチアウタ91の筒状部にスプライン嵌合によって支持されており、クラッチアウタ91の軸方向に移動可能且つクラッチアウタ91に対して回転不能に設けられている。
各内側摩擦板94bは、プレッシャプレート93の内側円筒部93aの外周部にスプライン嵌合して支持されており、プレッシャプレート93の軸方向に移動可能且つプレッシャプレート93に対して回転不能に設けられている。
バックトルクリミット部材110と、クラッチセンタ92に固定されるリフターピン111とは、バックトルクリミッタ機構を構成する。バックトルクリミッタ機構は、例えば、特開平8−93786号公報に記載された公知のものであり、順方向の動力伝達とは逆方向に所定値以上のトルクが作用した場合に、クラッチを接続状態から半クラッチ状態にする機構である。
プレッシャプレート93のレリーズボス101は、基端部101a側よりも小径に形成されたガイド軸部101bを先端部に有し、ガイド軸部101bの先端面には、ガイド軸部101bよりも大径のストッパ板102がボルト103で締結されている。基端部101aの先端面には、ストッパ板102に対向する段部101cが形成されている。
リフタープレート側ボス106は、リフタープレート96の周方向に略等間隔をあけて複数並べて形成されている。リフタープレート側ボス106は、リング部105を貫通する円筒状に形成されており、レリーズボス101のガイド軸部101bが挿通される孔部106aと、サブリフタープレート97が嵌合する外周部106bとを備える。
第2のサブスプリング99は、クラッチセンタ92の外側面とリフタープレート96との間に挟持されており、リフタープレート96をストッパ板102側に押し付けるように付勢している。クラッチ接続状態では、リフタープレート96は、第2のサブスプリング99の付勢力によって、ガイド軸部101bの先端面がストッパ板102に当接させられており、リング部105と段部101cとの間には隙間G2が形成されている。
すなわち、第2のサブスプリング99は、リフタープレート96及びストッパ板102を介してプレッシャプレート93をクラッチセンタ92側に押し付けており、クラッチを接続する方向にプレッシャプレート93を付勢している。
押圧プレート部113は、リフタープレート96のリフタープレート側ボス106が嵌まる孔部113aを備える。孔部113aは、各リフタープレート側ボス106に対応する位置に複数形成される。ボールベアリング88は、円管状部114の先端部に嵌合される。
サブスプリング98は、クラッチセンタ92とサブリフタープレート97の円管状部114に形成された受け部114aとの間に挟持されており、サブリフタープレート97をストッパ板102側に押し付けるように付勢している。
クラッチ接続状態では、サブリフタープレート97は、サブスプリング98の付勢力によって、押圧プレート部113がストッパ板102に当接させられており、押圧プレート部113とリング部105との間には隙間G1が形成されている。
すなわち、サブスプリング98は、ストッパ板102を介してプレッシャプレート93をクラッチセンタ92側に押し付けており、クラッチを接続する方向にプレッシャプレート93を付勢している。
リフターカムプレート85を介し、メインスプリング95、第2のサブスプリング99及び第2のサブスプリング99の付勢力に抗してプレッシャプレート93がプライマリドリブンギア90側に移動させられると、クラッチ板94の狭持が解除され、クラッチ切断状態となる。
図6に示すように、本実施の形態では、チェンジクラッチ61の容量が、シフトスピンドル76の回動角に応じてクラッチ容量に寄与するスプリングが変更されることで可変となっている。詳細には、クラッチ容量は、メインスプリング95、第2のサブスプリング99及び第2のサブスプリング99の付勢力によってクラッチ容量が決まる最大容量C1と、メインスプリング95及び第2のサブスプリング99の付勢力によってクラッチ容量が決まる第1の中間容量C2と、メインスプリング95のみの付勢力によってクラッチ容量が決まる第2の中間容量C3と、メインスプリング95の付勢力の全部が除かれた切断容量C4との複数の段階に可変である。
すなわち、サブリフタープレート97及びストッパ板102は、サブスプリング98の付勢力をプレッシャプレート93に伝達する第1のサブスプリング荷重伝達経路S1を構成する。また、リフタープレート96及びストッパ板102は、第2のサブスプリング99の付勢力をプレッシャプレート93に伝達する第2のサブスプリング荷重伝達経路S2を構成する。
サブリフタープレート97がストッパ板102から離れることで、第1のサブスプリング荷重伝達経路S1は遮断され、サブスプリング98の付勢力は、プレッシャプレート93に伝達されなくなり、クラッチ容量は、メインスプリング95及び第2のサブスプリング99によって決定されるようになる。このため、サブリフタープレート97がストッパ板102から離れた瞬間に、図6に示すように、クラッチ容量は最大容量C1から第1の中間容量C2に低下する。
これにより、チェンジクラッチ61によるカウンタ軸66側とクランク軸23側との間の回転差吸収を適切に行うことができ、変速ショックを低減できる。ここで、変速の前後におけるカウンタ軸66のトルクは、例えば、エンジン回転数、スロットル開度及びカウンタ軸66のトルクの関係を記憶したマップに基づいて求められる。
図7に示すように、シフトアップ側のリフターカムプレート85のリフト特性は、シフトスピンドル76の中立位置(0°)から所定角までの回動に対してリフト量が増加しない遊び区間U1と、シフトスピンドル76の回動量の増加に対して略線形にリフト量が増加するリフト区間U2とを有する。
遊び区間D1は、遊び区間U1よりも小さく設定されている。リフト区間D2では、リフト区間U2よりも大きな傾斜でリフターカムプレート85のリフト量が増加する。
リフターカムプレート85のリフト特性は、リフターカムプレート85のカム孔部85cやクラッチレバー82のカム孔部85cの形状を調整することによって所望の特性に設定される。
隙間G2が0になった後にわずかにシフトスピンドル76がクラッチ切断方向に回動した回動位置A2は、クラッチが切断されるシフトスピンドル76の回動位置である。回動位置A2でのリフターカムプレート85のリフト量は、クラッチが切断される切断リフト量Ldである。
切断リフト量Ldは、シフトアップ方向及びシフトダウン方向で同一である。リフト区間D2では、リフト区間U2よりも急激にリフターカムプレート85のリフト量が増加するため、シフトダウン方向では、シフトアップ方向よりも少ないシフトスピンドル76の回動量で、クラッチが切断される。
シフトダウンする際には、クラッチ容量の段階的な制御は行われず、シフトスピンドル76の回動により、チェンジクラッチ61は切断容量C4まで一気に切断される。
チェンジクラッチ61が完全に切断されてからシフトスピンドル76が所定量Fだけさらにシフトダウン方向に回動すると、マスターアーム80を介してシフトドラム70の回動が開始され、シフトダウンが実行される。
シフトダウンの際の変速ショックは、前記バックトルクリミッタ機構によって低減される。
図9に示すように、自動変速装置25は、発進クラッチ24、プライマリギア47、チェンジクラッチ61、メイン軸65、変速機60、カウンタ軸66、チェーン15、スプロケット72及び後輪13を備える駆動伝達部130と、変速機60及びチェンジクラッチ61を機械的に操作するアクチュエータ機械部55と、電装部131と、エンジン21の運転を直接的に制御するエンジン運転制御部133とを備える。
駆動伝達部130は、クランク軸23の動力を後輪13まで機械的に伝達する。
エンジン運転制御部133は、スロットル弁53、燃料噴射弁54、及び、点火プラグ57を備える。
スロットル弁53は、電子制御式であり、制御ユニット17により制御されるスロットル弁駆動モータ(不図示)により駆動される。詳細には、制御ユニット17は、ハンドル11に設けられて運転者が操作するスロットルグリップ(不図示)の操作量をセンサで検出し、この操作量に応じて上記スロットル弁駆動モータを駆動し、スロットル弁53の開度を調整する。
点火プラグ57は、不図示のイグニションコイル駆動部およびイグニションコイルを介して制御ユニット17に接続される。
電装部131は、制御ユニット17と、エンジン回転数センサ58(回転数センサ)と、シフトスピンドル角センサ79と、ドラム角センサ70bと、スロットルポジションセンサ134と、車速センサ73と、メイン軸回転数センサ65aと、ハンドル11に設けられるハンドルスイッチ132とを備える。
エンジン回転数センサ58は、クランク軸23の回転数を制御ユニット17に出力する。
制御ユニット17は、シフトスピンドル角センサ79の検出値から、変速機60の状態、すなわち変速機60が変速中であるか否かを判定できる。
ドラム角センサ70bは、シフトドラム70の回転角を制御ユニット17に出力し、制御ユニット17は、この回転角から現在のギア位置(変速段)を判定する。
スロットルポジションセンサ134は、スロットル弁53の開度を制御ユニット17に出力する。
ハンドルスイッチ132は、モードスイッチ132b及びシフトセレクトスイッチ132aを備える。
また、制御ユニット17は、前記スロットルグリップの操作量に応じて、スロットル弁53の開度、燃料噴射弁54の噴射量、及び、点火プラグ57の点火時期を調整するが、制御ユニット17は、スロットルポジションセンサ134、エンジン回転数センサ58、シフトスピンドル角センサ79、ドラム角センサ70b、及び、車速センサ73の検出値に基づいて、スロットル弁53の開度、燃料噴射弁54の噴射量、及び、点火プラグ57の点火時期を補正する。
他側ケース半体26Rの壁部36は、クランクケース26の合わせ面26Fの近傍に形成される内壁36b(合わせ部寄りの内壁)を、シフトスピンドル76の周囲に備える。
蓄力機構81は、他側ケース半体26Rの壁部36の内壁36bとクラッチカバー30との間に配置される。
蓄力機構81は、シフトスピンドル76と、シフトスピンドル76の軸上にシフトスピンドル76に対して相対回転可能に設けられるギアシフトアーム140と、ギアシフトアーム140を中立位置に付勢するリターンスプリング141と、ギアシフトアーム140に近接した位置でシフトスピンドル76の軸上に固定され、シフトスピンドル76と一体に回転するシフトダウン用カラー142と、ギアシフトアーム140から軸方向に離間した位置でシフトスピンドル76の軸上に固定され、シフトスピンドル76と一体に回転する蓄力カラー143とを備える。
ギアチェンジ機構63は、蓄力機構81に隣接してシフトスピンドル76上に固定されるサブリターンスプリング係止カラー148と、サブリターンスプリング係止カラー148に連結され、シフトスピンドル76を中立位置に付勢するサブリターンスプリング150とを備える。
シフトスピンドル76において、鍔部76dは最も大径であり、ギアシフトアーム支持部76c、支持部76b、及び接続部76aは、接続部76a側に向けて段階的に小径になるように形成されている。また、スプリングカラー支持部76e、カラー支持部76f、支持部76g及びセンサ接続部76hは、鍔部76d側からセンサ接続部76hに向けて段階的に小径になるように形成されている。
サブリターンスプリング係止カラー148、シフトダウン用カラー142、蓄力カラー143、及び、クラッチレバー82は、シフトスピンドル76に対し相対回転不能に固定されており、シフトスピンドル76と一体に回動する。
図10〜図12に示すように、ギアシフトアーム140は、シフトスピンドル76の外周面にベアリング154を介して嵌合する円筒部155と、円筒部155における蓄力スプリング145側の端の外周部から径方向外側に延びるプレート部156とを備える。
プレート部156は、円筒部155から上方に延びる上方延出部156aと、円筒部155から上方延出部156aに略直交する方向へ延びる延出部156bとを備える。
上方延出部156aには、上方延出部156aの先端部から径方向外方に延びた後にシフトスピンドル76と略平行にリターンスプリング141側に延びる第2の係止片159が設けられている。
第2の係止片159は、マスターアーム80の規制開口部160に挿通される基端側の当接部159aと、リターンスプリング141が係止される先端側のリターンスプリング係止部159bとを備える。リターンスプリング係止部159bは、当接部159aよりも細く形成されている。
アーム部162は、図11の正面視では略L字状に形成されており、筒状部161から上方へ延びる位置規制アーム162aと、筒状部161から位置規制アーム162aと略直交する方向に延びる操作アーム162bとを備える。マスターアーム80は、操作アーム162bを介してシフトドラム70に連結されており、マスターアーム80が回動することでシフトドラム70が回転する。
マスターアーム80は、シフトスピンドル76と略平行にリターンスプリング141側に延びるスプリング係止片163を、規制開口部160の上縁部に備える。
蓄力スプリング145は、ねじりコイルバネであり、一端のギアシフトアーム側端部145aが、ギアシフトアーム140の第1の係止片157に係止され、他端の蓄力アーム側端部145bが蓄力カラー143の蓄力アーム168に係止される。
リターンスプリング141は、その一端141aと他端141bとが径方向の外側に延出し、一端141aと他端141bとは、互いに所定の間隔をあけて略平行になるように設けられる。
リターンスプリング141は、一端141aと他端141bとの間にストッパーピン146を挟んだ状態で配置される。
また、マスターアーム80のスプリング係止片163は、ストッパーピン146よりも一端141a及び他端141bの先端側で、一端141aと他端141bとの間に挟持される。ギアシフトアーム140の第2の係止片159は、ストッパーピン146よりも一端141a及び他端141bの基端側で、一端141aと他端141bとの間に挟持される。
図10に示すように、一側ケース半体26Lの壁部37は、他側ケース半体26Rの内壁36bの外側方に位置する。壁部37と内壁36bとの間で変速機室32内の空間169には、壁部37からシフトスピンドル76に沿って内壁36b側に突出する筒状のサブリターンスプリング支持部171が設けられる。シフトスピンドル76を支持するベアリング37bは、サブリターンスプリング支持部171の内周部に支持される。
壁部37は、シフトスピンドル76と略平行に延びるボス173を、サブリターンスプリング支持部171の近傍に備える。ボス173及びサブリターンスプリング支持部171は、壁部37と一体に形成されており、その先端部は、内壁36bの近傍まで延びる。
サブリターンスプリング150は、コイル部150cの内周部がサブリターンスプリング支持部171の外周部に嵌合されて支持され、空間169に配置される。
サブリターンスプリング150は、一端150aと他端150bとの間にボス173を挟持した状態で配置され、ボス173によって周方向に位置決めされている。
サブリターンスプリング係止カラー148は、シフトスピンドル76の係止カラー固定部151に固定される円筒部175と、円筒部175から径方向の外側に延びた後、リターンスプリング141とは反対側に屈曲してサブリターンスプリング150側に延びる腕部176とを備える。
中立状態では、マスターアーム80は、スプリング係止片163がリターンスプリング141の一端141aと他端141bとの間に挟まれることで、回動位置を中立位置に規制されている。リターンスプリング141は、所定の初期荷重が付された状態でマスターアーム80の回動位置を規制している。
中立状態では、ギアシフトアーム140は、リターンスプリング係止部159bがリターンスプリング141の一端141aと他端141bとの間に挟まれることで、回動位置を中立位置に規制されている。リターンスプリング141は、所定の初期荷重が付された状態でギアシフトアーム140の回動位置を規制している。
すなわち、中立状態では、マスターアーム80及びギアシフトアーム140は、シフトスピンドル76の中心とストッパーピン146の中心とを通る直線Lに沿うように位置している。
図13に示すように、中立状態では、サブリターンスプリング係止カラー148は、腕部176がサブリターンスプリング150の一端150aと他端150bの間に挟まれることで、回動位置を中立位置に規制されている。サブリターンスプリング150は、所定の初期荷重が付された状態でサブリターンスプリング係止カラー148の回動位置を規制している。
図15(a)に示すように、ドグ歯164は、中立状態では、ギアシフトアーム140の孔部158の一端に接しており、ドグ歯164と孔部158の他端との間には隙間が形成されている。
制御ユニット17の変速の指示に伴ってアクチュエータ機構64のシフトモーター75が駆動されると、シフトスピンドル76の回動が開始される。シフトアップの方向は、図中に符号UPで示す時計回りの方向である。
図16は、中立状態よりもシフトアップ方向に進んだ状態を示す図である。
図16の状態は、ギアシフトアーム140の第2の係止片159の当接部159aが、マスターアーム80の規制開口部160の内縁160aに当接してギアシフトアーム140が回動できなくなるまでシフトスピンドル76の回動が進んだ状態であり、以下の説明では、この状態を蓄力準備状態と呼ぶ。
蓄力準備状態では、ギアシフトアーム140は、リターンスプリング141の付勢力に抗して回動しており、リターンスプリング141の他端141bは、所定量だけ開かれている。
また、蓄力準備状態では、サブリターンスプリング係止カラー148は、サブリターンスプリング150の付勢力に抗して回動しており、サブリターンスプリング150の他端150bは、図13に2点鎖線で示すように、所定量だけ開かれる。
図17の状態では、蓄力スプリング145は、シフトスピンドル76の回動に伴い、ギアシフトアーム側端部145aが第1の係止片157によって位置を固定されたまま、蓄力アーム側端部145bだけが蓄力アーム168によって所定量Rだけ回動されている。以下の説明では、図17の状態を蓄力状態と呼ぶ。
蓄力状態では、規制開口部160に規制されて回動しないギアシフトアーム140に対し、シフトダウン用カラー142はシフトスピンドル76と共に回動している。このため、蓄力状態では、図15(c)に示すように、ドグ歯164は、ギアシフトアーム140の孔部158の一端と他端との間の中間部に位置する。
また、蓄力状態では、サブリターンスプリング係止カラー148は、サブリターンスプリング150の付勢力に抗して回動しており、サブリターンスプリング150の他端150bは、図13に2点鎖線で示すように、蓄力準備状態の状態よりもさらに所定量だけ開かれる。
チェンジ機構89は、マスターアーム80の先端部に設けられる送り操作部材201と、シフトドラム70(図14)の軸端に設けられる星型プレート202と、星型プレート202の外周部に当接して星型プレート202の回動位置を規制するストッパアーム203とを備える。
星型プレート202は、周方向に略等間隔で放射状に突出した複数(5つ)のカム山部と、各カム山部の外側面から軸方向に突出する複数(5つ)の係止ピン204とを備える。星型プレート202は、シフトドラム70に一体的に設けられており、シフトドラム70は、係止ピン204が送り操作部材201に押圧されることで回動する。
送り操作部材201は、マスターアーム80の操作アーム162bの長手方向にスライド可能であるとともに、シフトスピンドル76側に移動するようにばね等(不図示)によって付勢されている。
送り操作部材201は、係止ピン204側へシフトドラム70の軸方向に突出するシフトアップ用押圧部201a及びシフトダウン用押圧部201bを、先端側に備える。
ここでは、シフトダウンする場合について説明したが、シフトアップする際は、シフトアップ用押圧部201aが係止ピン204を押圧し、シフトドラム70をシフトアップ方向に回動させる。
図20及び図21に示すように、シフトスピンドル76の角度を示すタイムチャートには、制御ユニット17が設定するシフトスピンドル76の角度の目標角パターンTが共に図示されている。制御ユニット17は、シフトスピンドル76の角度が目標角パターンTに追従するようにシフトモーター75を駆動する。目標角パターンTは、最終的な目標角が一度に設定されるステップ入力であるが、目標角は、目標角パターンT´で示すように、時間経過に対して徐々に最終的な目標角に近づけるランプ入力であっても良い。
シフトアップする際には、シフトスピンドル76の角度は、蓄力及びクラッチを切断するために増加し、変速後には、中立位置に戻される。
図20及び図21では、シフトドラム70の角度は、一例として1速から2速に変速する場合の状態が示されているが、他の変速段でも同様の状態となる。
図20及び図21のメイン軸65の回転数Nmは、メイン軸回転数センサ65aによって検出されるメイン軸65の実際の回転数に、メイン軸65とクランク軸23との間の減速比を乗じた値である。チェンジクラッチ61が完全に接続されている状態では、回転数Neと回転数Nmとは等しい。すなわち、図20及び図21の回転数の図表からは、チェンジクラッチ61の接続状態が分かる。
図20及び図22を参照し、シフトアップの指示が出されると、制御ユニット17は、クラッチ切断側のシフトスピンドル76の目標角である切断側目標角T1を設定し(ステップS1)、切断側目標角T1となるようにシフトモーター75を駆動する(ステップS2)。ここで、切断側目標角T1は、チェンジクラッチ61が完全に切断されるシフトスピンドル76の回動位置A2よりも大きな角度に設定されている。このため、チェンジクラッチ61は、シフトスピンドル76が切断側目標角T1に達する前に切断される。
また、チェンジクラッチ61が切断されると、エンジン21の動力が供給されなくなってメイン軸65の回転数Nmは低下する。
シフトスピンドル76の角度が切断側目標角T1に到達している場合(ステップS3:Yes)、制御ユニット17は、シフトスピンドル76を中立位置側へ戻すクラッチ接続側の目標角である戻し側目標角T2を設定し(ステップS4)、中立位置側へシフトスピンドル76を戻すようにシフトモーター75を駆動する(ステップS5)。ステップS4及びステップS5は、シフトアップの処理において、シフトスピンドル76を中立位置側に戻す1回目の回動制御である。ここで戻し側目標角T2は、チェンジクラッチ61の容量が第1の中間容量C2となるシフトスピンドル76の角度である。なお、戻し側目標角T2は、チェンジクラッチ61の中間容量に対応する角度であれば良く、第2の中間容量C3に対応する角度であっても良い。すなわち、戻し側目標角T2は、シフトスピンドル76の角度によって制御されるチェンジクラッチ61の容量を決めるクラッチ容量制御目標角でもある。
次いで、制御ユニット17は、シフトスピンドル76の角度が戻し側目標角T2に到達しているか否かを判定し(ステップS6)、戻し側目標角T2に達していなければ(ステップS6:No)、ステップS5に戻り、シフトモーター75の駆動を継続する。
中立位置への戻り側でチェンジクラッチ61が接続されると、カウンタ軸66のトルクは変速前と同等まで増加する。また、中立位置への戻り側でチェンジクラッチ61が接続されると、メイン軸65の回転数Nmは一瞬だけ回転数Neと同等まで増加して元に戻り、回転数Neは、時間の経過とともに回転数Nmに一致するように減少する。すなわち、中立位置への戻り側でチェンジクラッチ61が接続されると、回転数Neと回転数Nmとの回転差の吸収がチェンジクラッチ61によって行われる。図20では、より高いギアへの変速であるため、変速後のエンジン21の回転数Neは、変速前の回転数Neよりも小さくなる。
図23に示すように、比較例では、制御ユニット17は、センサ出力安定時間H1の経過後に、ドラム角センサ70bでギア位置が次段に入ったことを検出し、その後、戻し側目標角T2を設定してシフトスピンドル76の中立位置側への回動を開始している。これにより、チェンジクラッチ61は、センサ出力安定時間H1が経過した後に接続されることになり、駆動力抜け時間V1が長くなり、運転者が違和感を感じ易くなってしまう。
変速機60は常時噛み合い式であり、互いに結合していない状態では駆動ギア67bと駆動ギア67cとは相対回転しているため、変速時にシフターギアである駆動ギア67bをフリーギアである駆動ギア67c側にスライドさせた場合、ドグ歯67b1とドグ歯67c1とが正常な深さで噛み合う場合もあれば、ドグ歯67b1及びドグ歯67c1の頂面同士が当たるドグ当たり(ドグ当たり及び浅噛みについては特開2014−199102を参照)が発生する場合もある。
ところが、クランク軸23側に駆動される駆動ギア67bは駆動ギア67cよりも速く回転しているため、駆動ギア67bのスライド力が不足すると、ドグ歯67b1が、完全にドグ歯67c1に噛み合う前に、ドグ歯67b1及びドグ歯67c1の側面同士が接してしまい、噛み合いの深さが浅くなることがある。このような、ドグ歯が通常の噛み合い深さよりも浅い状態で噛み合う状態を、ここでは浅噛みと定義する(ドグ当たり及び浅噛みについては特開2014−199102を参照)。浅噛み状態では、互いに接触しているドグ歯67b1及びドグ歯67c1の側面同士の間にはエンジン21の駆動力が作用しているため、摩擦力が生じ、駆動ギア67bはスライドし難い。このため、浅噛みの状態が継続される。
次いで、制御ユニット17は、シフトスピンドル76の角度が中立目標角T3に到達しているか否かを判定し(ステップS12)、中立目標角T3に到達していなければ(ステップS12:No)、ステップS11に戻ってシフトモーター75の駆動を継続する。
制御ユニット17は、シフトスピンドル76の角度が中立目標角T3に到達した場合(ステップS12:Yes)、処理を終了する。
図24は、浅噛み解消処理のフローチャートである。
浅噛み解消処理は、ステップS1からステップS6までと同様の処理であり、ステップS1からステップS6までの処理において、ステップS1の切断側目標角T1を、切断側目標角T1よりも大きな角度(奥側の角度)の浅噛み解消用目標角T1aとする処理である。すなわち、浅噛み解消処理は、変速操作後に接続されたチェンジクラッチ61を再び切断して、蓄力またはストッパアーム203の力によってシフトドラム70を回動させて浅噛みを解消する処理である。詳細には、浅噛みの解消の際、浅噛みの程度が大きい(噛み合いが浅い)場合には、シフトドラム70は主として蓄力によって回動され、浅噛みの程度が小さい(噛み合いが比較的深い)場合には、シフトドラム70はストッパアーム203の付勢力によって回動される。
シフトスピンドル76の角度が浅噛み解消用目標角T1aに到達している場合(ステップS23:Yes)、制御ユニット17は、戻し側目標角T2aを設定し(ステップS24)、中立位置側へシフトスピンドル76を戻すようにシフトモーター75を駆動する(ステップS25)。ここで、戻し側目標角T2aとステップS4の戻し側目標角T2とは同一である。
次いで、制御ユニット17は、シフトスピンドル76の角度が戻し側目標角T2aに到達しているか否かを判定し(ステップS26)、戻し側目標角T2aに達していなければ(ステップS26:No)、ステップS25に戻り、シフトモーター75の駆動を継続する。
戻し側目標角T2aに達している場合(ステップS26:Yes)、制御ユニット17は、ステップS7に移行し、ドラム角センサ70bのセンサ出力安定時間H1が経過しているか否かを判定する(ステップS7)。
また、制御ユニット17は、シフトスピンドル76が浅噛み解消用目標角T1aに到達したことを検出すると、戻し側目標角T2aを設定して直ぐに中立位置側へシフトスピンドル76を戻す。詳細には、制御ユニット17は、ドラム角センサ70bによってギア位置が次段(2速)に入ったことを検出する前に、シフトスピンドル76の中立位置側への回動を開始する。これにより、蓄力機構81及びチェンジ機構89の作動にかかる時間及びセンサ出力安定時間H1を省略した分だけ、チェンジクラッチ61を早期に再接続でき、駆動力抜け時間V2を短縮できるため、運転者が違和感を感じることを抑制できる。
また、ステップS6においてチェンジクラッチ61の容量が第1の中間容量C2にされるため、浅噛み解消処理の前の段階で、ドグ当たりは解消されている。このため、ドグ当たりが解消された状態で、ステップS8において浅噛みが発生しているか否かを正しく判定でき、浅噛み解消処理を適切に実行できる。
図25では、自動変速でシフトアップする場合において、シフトアップの前後のカウンタ軸66のトルクが示されている。図25では、自動変速でシフトアップする場合が示されており、変速後にはより高いギアとなるため、シフトアップ後のカウンタ軸66のトルクはシフトアップ前よりも小さくなる。
制御ユニット17は、変速前のカウンタ軸66のトルクを複数の領域に区分して判別している。詳細には、変速前のカウンタ軸66のトルクは、トルクが大きい方から順に、変速前大領域Q1、変速前第1の中領域Q2a、変速前第2の中領域Q2b、及び、変速前小領域Q3に区分される。ここで、変速前のカウンタ軸66のトルクは、例えば、エンジン回転数、スロットル開度、カウンタ軸66のトルク、ギア位置、及び、車速等の走行パラメーターの関係を記憶したマップに基づいて制御ユニット17によって算出される。
制御ユニット17は、変速後のカウンタ軸66のトルクを複数の領域に区分して判別している。詳細には、変速後のカウンタ軸66のトルクは、トルクが大きい方から順に、変速後大領域Q1´、変速後中領域Q2´、及び、変速後小領域Q3´に区分される。ここで、変速後のカウンタ軸66のトルクは、変速前或いは変速中に、例えば、エンジン回転数、スロットル開度、カウンタ軸66のトルク、ギア位置、及び、車速等の走行パラメーターの関係を記憶したマップに基づいて制御ユニット17によって算出(予測)される。
図26(a)に示されるように、第1の中間容量C2でチェンジクラッチ61が接続されることで、シフトアップの前後におけるカウンタ軸66のトルクの変動が小さくなっている。
図26(b)に示されるように、第2の中間容量C3でチェンジクラッチ61が接続されることで、シフトアップの前後におけるカウンタ軸66のトルクの変動が小さくなっている。
図26(c)に示されるように、エンジン21のトルクが小さい場合、シフトアップの際にチェンジクラッチ61を切断してもトルクの変動は小さく、切断後に所定時間だけ切断容量C4にすることで、変速ショックを低減できる。
なお、ここでは、駆動ギア67bと駆動ギア67cとドグクラッチの浅噛みを例に挙げて説明したが、上記の構成により、変速機60の他のギアのドグクラッチにおいても同様に浅噛みが解消されることは勿論である。
上記実施の形態では、制御ユニット17は、シフトスピンドル76がチェンジクラッチ61の切断側目標角T1まで回動したことをシフトスピンドル角センサ79の出力値から検出すると、シフトスピンドル76をクラッチ容量制御目標角である戻し側目標角T2に戻すように回転制御するものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、中立位置側に戻すものであれば良い。例えば、制御ユニット17は、シフトスピンドル76がチェンジクラッチ61の切断側目標角T1まで回動したことをシフトスピンドル角センサ79の出力値から検出すると、中立目標角T3を設定し、シフトスピンドル76を中立位置(0°)に戻すように回動制御しても良い。
また、上記実施の形態では、ドグクラッチは、ドグ歯67b1,67c1を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、ドグクラッチは、例えば、ギアの側面に設けられたドグ歯が、他のギアの側面に設けられたドグ穴に係合するものであっても良い。この場合、ドグ当たりは、ドグ歯の頂面と他のギアの側面との間で発生し、浅噛みは、ドグ歯とドグ穴との間で発生する。
また、上記実施の形態では、駆動ギア67b及び被動ギア68cを移動させることで変速段を変更するものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、少なくとも1つのギアを移動させることで変速段が変更されるものであれば良い。
さらに、上記実施の形態では、車両として自動二輪車10を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、三輪車両や四輪車両等の車両に本発明を適用しても良い。
17 制御ユニット(制御装置)
21 エンジン
23 クランク軸
25 自動変速装置(変速装置)
60 変速機
61 チェンジクラッチ(クラッチ)
65 メイン軸
66 カウンタ軸
67a,67b,67c,67d 駆動ギア(駆動ギア列)
67a,67c 駆動ギア(駆動側フリーギア)
67b 駆動ギア(駆動側シフターギア)
67b1 ドグ歯
67c1 ドグ歯
68a,68b,68c,68d 被動ギア(被動ギア列)
68b,68d 被動ギア(被動側フリーギア)
68c 被動ギア(被動側シフターギア)
69a,69b シフトフォーク
70 シフトドラム
70a 溝
70b ドラム角センサ
75 シフトモーター(アクチュエータ)
76 シフトスピンドル
79 シフトスピンドル角センサ
80 マスターアーム
81 蓄力機構
82 クラッチレバー
89 チェンジ機構
140 ギアシフトアーム
145 蓄力スプリング
168 蓄力アーム
C2 第1の中間容量(中間容量)
T1 切断側目標角(クラッチ切断側の目標角、直前の目標角)
T1a 浅噛み解消用目標角(奥側の目標角)
T2 戻し側目標角(中立位置側に戻す1回目の回動制御におけるシフトスピンドルの目標角)
Claims (3)
- エンジン(21)のクランク軸(23)の回転動力がクラッチ(61)を介して伝達されるとともに複数の駆動ギア列(67a,67b,67c,67d)を有するメイン軸(65)、及び、前記駆動ギア列(67a,67b,67c,67d)によって駆動される複数の被動ギア列(68a,68b,68c,68d)を有するカウンタ軸(66)を備える変速機(60)と、前記複数の駆動ギア列(67a,67b,67c,67d)または前記被動ギア列(68a,68b,68c,68d)の内少なくとも1つのギアを移動させることで変速段を変更するチェンジ機構(89)と、前記クラッチ(61)の断接を操作するクラッチレバー(82)が設けられるとともに、前記チェンジ機構(89)を操作するマスターアーム(80)が相対回転可能に設けられるシフトスピンドル(76)と、当該シフトスピンドル(76)上に設けられ前記シフトスピンドル(76)と一体に回転する蓄力アーム(168)、前記シフトスピンドル(76)と相対回転可能なギアシフトアーム(140)、及び、前記蓄力アーム(168)と前記ギアシフトアーム(140)との間に架け渡される蓄力スプリング(145)を有する蓄力機構(81)と、前記シフトスピンドル(76)を駆動するアクチュエータ(75)と、前記シフトスピンドル(76)の回動角を検出するシフトスピンドル角センサ(79)と、前記アクチュエータ(75)を制御する制御装置(17)とを備え、前記クラッチレバー(82)は、前記シフトスピンドル(76)が前記蓄力機構(81)を作動させる方向に回動される時に、前記蓄力機構(81)の前記蓄力スプリング(145)に前記ギア列の内少なくとも1つのギア(67b,68c)を操作するのに十分な回動角が蓄力された後、前記クラッチ(61)を切断するように設けられる車両の変速装置において、
前記制御装置(17)は、前記シフトスピンドル(76)を前記蓄力機構(81)を作動させる方向に回動させた後、前記シフトスピンドル(76)が前記クラッチ(61)のクラッチ切断側の目標角(T1)まで回動したことを前記シフトスピンドル角センサ(79)の出力値から検出すると、前記シフトスピンドル(76)を中立位置側に戻すように回動制御することを特徴とする車両の変速装置。 - 前記複数の駆動ギア列(67a,67b,67c,67d)は、前記メイン軸(65)と一体に回転するとともに軸方向に移動可能な駆動側シフターギア(67b)と、前記メイン軸(65)と相対回転可能であるとともに軸方向に固定される駆動側フリーギア(67a,67c)とを備え、前記駆動側シフターギア(67b)と前記駆動側フリーギア(67a,67c)とは、互いの対向面で軸方向に立設されるドグ歯(67b1,67c1)を有するドグクラッチによって係脱可能に設けられ、
前記複数の被動ギア列(68a,68b,68c,68d)は、前記カウンタ軸(66)と一体に回転するとともに軸方向に移動可能な被動側シフターギア(68c)と、前記カウンタ軸(66)と相対回転可能であるとともに軸方向に固定される被動側フリーギア(68b,68d)とを備え、前記被動側シフターギア(68c)と前記被動側フリーギア(68b,68d)とは、互いの対向面で軸方向に立設されるドグ歯を有するドグクラッチによって係脱可能に設けられ、
前記チェンジ機構(89)は、前記マスターアーム(80)と、前記駆動側シフターギア(67b)及び前記被動側シフターギア(68c)を軸方向に移動させる複数のシフトフォーク(69a,69b)と、当該シフトフォーク(69a,69b)の端部が係合される複数の溝(70a)がその外周に形成されるシフトドラム(70)とを備え、
前記シフトドラム(70)の回動角を検出するドラム角センサ(70b)が設けられ、
前記制御装置(17)は、前記シフトスピンドル(76)を前記中立位置側に戻す回動制御の実行後に、前記ドラム角センサ(70b)から前記ドグ歯(67b1,67c1)の浅噛みに相当する出力を検出すると、前記シフトスピンドル(76)をクラッチ切断側へ直前の前記目標角(T1)よりも奥側の目標角(T1a)で回動させるとともに、当該奥側の目標角(T1a)まで回動したことを前記シフトスピンドル角センサ(79)の出力値から検出すると、前記シフトスピンドル(76)を前記中立位置側に戻すように回動制御することを特徴とする請求項1記載の車両の変速装置。 - 前記シフトスピンドル(76)を前記中立位置側に戻す1回目の前記回動制御における前記シフトスピンドル(76)の目標角は、前記シフトスピンドル(76)を前記中立位置側へ戻すクラッチ接続側の目標角である戻し側目標角(T2)であり、
前記戻し側目標角(T2)は、前記クラッチ(61)の容量が、前記クラッチ(61)の最大容量(C1)と前記クラッチ(61)が切断された状態の前記クラッチ(61)の容量である切断容量(C4)との間の中間容量(C2,C3)となる位置に設定され、前記シフトスピンドル(76)が1回目の前記回動制御で前記戻し側目標角(T2)に達した後に前記ドグ歯(67b1,67c1)の浅噛み判定がされることを特徴とする請求項2記載の車両の変速装置。
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