JP6247978B2 - 変速機 - Google Patents
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Description
詳細に説明すると、蓄力機構のシフトスピンドル55には、シフトスピンドルと相対回転可能なマスターアーム83と、シフトスピンドルと相対回転可能で、マスターアームをその係止片を介して回動するギアシフトアーム81と、シフトスピンドルと一体に回転する蓄力カラー71とが設けられており、ギアシフトアーム側係止部81aと蓄力カラー側係止部71aとの間には蓄力スプリング57の端部がそれぞれ係止される。この構成によれば、シフトスピンドルが回動すると、ギアシフトアームは、蓄力スプリングを介して蓄力カラー側からマスターアームを回動させるような荷重を受けて、マスターアームを押す。
マスターアームは、ギアシフトアーム側からの荷重を受けて、シフトドラムに対し次の変速段に回すような力を加える。しかし、変速動作の際にシフトドラムを回動させるには、変速ギアのドグクラッチ係合(ドグ歯側面同士の当接)を解かなければならないが、変速機がエンジン側からの駆動力を受けている状態では、変速ギアのドグクラッチ側面にエンジン側から荷重がかかっており、ドグ歯当接面の摩擦力が大きいため、ドグクラッチの係合を解くことができない。そのため、シフトドラムはマスターアーム側から荷重を受けるものの、クラッチが切れるまで動くことはなく、シフトスピンドルの回動量が増えるにつれ、蓄力スプリングに蓄えられる荷重も大きくなっていく。シフトスピンドルがさらに回動していき、蓄力スプリングに、シフトドラムを次の変速段まで回動させるのに十分なストローク角度と蓄力荷重を十分に蓄えられれば、クラッチを切って変速ギアのドグクラッチ係合箇所にかかる摩擦力が抜けた瞬間に、一気にギアを移動させて変速させることができ、クラッチを切るだけで変速できる。
変速動作は、クラッチ切断、変速段の移動、及び、クラッチ接続の順に行われる。この期間、車両はクラッチが切れることによる駆動力の抜け時間が発生するが、蓄力機構を採用することで、変速にかかる時間を短くすることができ、その結果、変速操作時の駆動力抜け時間を短くすることができる。
まず、(1)の蓄力スプリングのバネ定数を上げる方法を採る場合、従来例構造のギアシフトアーム側係止部81aと蓄力カラー係止部71a間に配される蓄力スプリング57の線径を上げることとなる。バネ定数を高めれば、シフトスピンドル回動中に、変速スピードを高める上での目標とする新たな蓄力荷重は得られるが、変速操作時のシフトスピンドル最大回動量における蓄力スプリングの蓄力荷重も上がってしまう。シフトスピンドルのアクチュエータ(例えばシフトモータ)が発揮できる最大トルクには制約があるため、蓄力スプリングの蓄力荷重が大きくなり過ぎると、シフトスピンドルを所定量回すことが難しくなる場合がある。例えば、従来例の構造では図16のように、最大スピンドル回動角でシフトモータの最大トルク範囲内に入っていたスプリング特性が、バネ定数を上げることで、図17に示すように、シフトモータの最大トルクによる制約値を超えてしまう。ここで、図16及び図17では、Faは、スプリング荷重の目標値であり、必要な変速スピードに応じて設定される。また、Fmは、スプリング荷重の制約値であり、アクチュエータ(シフトモータモータ等)の最大トルクで決まる。ここで、図17では、Fbは、必要な変速スピードに応じてFaよりも大きく設定されたスプリング荷重の目標値である。
次に、(2)の蓄力スプリングのセット荷重を上げる方法を採る場合、従来例構造のギアシフトアーム側係止部81aと蓄力カラー係止部71a間に配される蓄力スプリング57(線径は従来例と同等)のセット荷重を上げるべく初期位置でのスプリングねじり量を大きくすることとなる。これによりセット荷重は上げられるが、変速時に、変速操作に必要なストロークを得るべくシフトスピンドルを回動させると、蓄力スプリングにはさらに大きな蓄力荷重がかかっていく。蓄力スプリングの線径はバネ定数を上げられないことから、それ程大きくできないが、この比較的細いバネに大きな蓄力荷重がかかると、バネの許容応力上、蓄力荷重を上げられない場合がある。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、シフトドラムを回動するマスターアームとシフトスピンドルとの間に蓄力機構が設けられた変速機で、シフトスピンドルの回動量とその操作入力の最大トルクをそれ程上げずに、蓄力スプリングの蓄力荷重を高めることができるようにすることを目的とする。
本発明によれば、第1の蓄力スプリングと、ギアシフトアームを挟んで第1の蓄力スプリングと反対側に設けられた第2の蓄力スプリングとの両方のバネ特性を足し合わせたバネ特性によってギアシフトアームに荷重をかけることができる。その結果、バネ定数をそれ程高めることなく、セット荷重を高めることができるため、シフトスピンドルの回動量とその操作入力の最大トルクをそれ程上げずに、蓄力スプリングの蓄力荷重を高めることができる。
本発明によれば、リターンスプリングの配置スペースを有効に利用して、第2の蓄力スプリングをコンパクトに設けることができる。
本発明によれば、第1の係止片及び第2の係止片にかかる蓄力荷重を分散させることができ、ギアシフトアームの強度を確保し易い。
本発明によれば、蓄力の際の第2の蓄力スプリングの変形をサポート部で支持できるとともに、第2の蓄力スプリングを係止する係止溝を、サポート部を利用して簡単な構成で設けることができる。
また、本発明は、前記第2の蓄力スプリング(137)と、前記リターンスプリング(131)とは、その巻き方向が逆になるように設けられることを特徴とする。
本発明によれば、蓄力の際の変形に伴って第2の蓄力スプリングとリターンスプリングとが接触したとしても、一方のスプリングが他方のスプリングの巻き部分に入り込むことを防止できる。
また、第2の蓄力スプリングをコンパクトに設けることができる。
また、ギアシフトアームの強度を確保し易い。
さらに、第2の蓄力スプリングを係止する係止溝を、第2の蓄力スプリングのサポート部を利用して簡単な構成で設けることができる。
また、一方のスプリングが他方のスプリングの巻き部分に入り込むことを防止できる。
図1は、本発明の実施の形態に係る変速機を備えた自動二輪車10の左側面図である。
自動二輪車10は、車体フレーム11にエンジン12が支持され、前輪2を支持する左右一対のフロントフォーク13が車体フレーム11の前端に操舵可能に支持され、後輪3を支持するスイングアーム14(図2)が車体フレーム11の後部側に設けられた車両である。自動二輪車10は、運転者(乗員)が跨るようにして着座するシート15が車体フレーム11の後部の上部に支持された鞍乗り型の車両である。
また、自動二輪車10は、車体フレーム11等を覆う樹脂製の車体カバー16を有する。自動二輪車10は、エンジン12の制御を行う制御ユニット17(制御部)と、バッテリ18とを有する。制御ユニット17及びバッテリ18はシート15の下部で、車体カバー16の内側に配置されている。
エンジン12は、前輪2と後輪3との間の略中間で、シート15の下方やや前方に設けられ、車体フレーム11から吊り下げられるようにして支持される。エンジン12の出力は、駆動チェーン19を介して後輪3に伝達される。
エンジン12は、4サイクル単気筒エンジンである。エンジン12は、車幅方向に略水平に延びるクランク軸36を収容するクランクケース25と、クランクケース25の前部から前方に延びるシリンダ部26とを備える。シリンダ部26は、クランクケース25の前面に結合されるシリンダ27と、シリンダ27の前面に連結されるシリンダヘッド28とを備える。エンジン12は、シリンダ部26のシリンダ軸線26aがやや前上がりの姿勢で前方へ略水平に延びる略水平配置のエンジンである。
モノバックボーンフレーム21の後部には、下方に突出するエンジンハンガ部21aが設けられている。ピボットフレーム22の前部には、前方へ延びるエンジン支持部22aが設けられている。エンジン12は、エンジンハンガ部21a及び前側固定部30に挿通される固定ボルト32と、エンジン支持部22a及び後側固定部31に挿通される固定ボルト33とによって車体フレーム11に固定される。
スイングアーム14の前端は、ピボットフレーム22に軸支される。運転者用の左右一対のステップ23は、クランクケース25の後部の下面から車幅方向外側へ延びるステップステー35の両端にそれぞれ支持されている。
一側ケース37Lと他側ケース37Rとは、合わせ面37Fで合わせられ、車幅方向に延びる複数のケース連結ボルト40によって結合される。発電機カバー38及びクラッチカバー39は、車幅方向に延びる複数の発電機カバー固定ボルト41及びクラッチカバー固定ボルト42によってそれぞれクランクケース25に固定される。
図5に示すように、クランクケース25内の前部には、クランク軸36を収容するクランク室45が設けられ、クランクケース25内おいてクランク室45の後方には、変速機室46が設けられる。変速機室46側には、クランク軸36の駆動力を変速して出力する自動変速機68(変速機)が設けられる。
クランク室45及び変速機室46の右側方には、クラッチ室47が設けられ、クランク室45の左側方には、発電機室48が設けられる。クラッチ室47は、他側ケース37Rの壁部49の外側面とクラッチカバー39の内面とによって区画される。発電機室48は、一側ケース37Lの外壁部50aの外側面と発電機カバー38の内面とによって区画される。一側ケース37Lは、外壁部50aよりも内側に内壁部50bを有する。
クランク軸36の軸部36bの一端51は、発電機室48に延び、一端51には発電機52のローター52aが固定される。発電機52のステーター52bは、一側ケース37Lに固定される。
クランク軸36の軸部36bの他端56は、クラッチ室47に延び、他端56の先端部には、遠心式の発進クラッチ57が設けられる。
自動変速機68では、変速用クラッチ機構71の接続・切断操作、及び、変速段(シフト)の切替えが制御ユニット17の制御のもとに自動で行われる。
すなわち、自動変速モードでは、車速等に基づいてアクチュエータ機構74の制御が行われ、変速機構70が自動で変速される。手動変速モードでは、シフトセレクトスイッチが運転者によって操作されることで変速が行われる。
駆動ギア77a,77b,77c及び77dは、この順に従動ギア78a,78b,78c及び78dと噛合している。駆動ギア77bは左右にスライドしたとき、隣接する駆動ギア77a又は77cに側面のドグが係合し、従動ギア78cは左右にスライドしたとき、隣接する従動ギア78b又は78dに側面のドグが係合する。
変速機構70では、駆動ギア77b及び従動ギア78cのスライドに応じて、メイン軸75及びカウンタ軸76間で、ニュートラル状態、または、1速〜4速の何れかの変速歯車対を選択的に用いた動力伝達が可能となる。
カウンタ軸76は、一側ケース37L及び他側ケース37Rにそれぞれ設けられたベアリング83,84に軸支される。カウンタ軸76の一側の端部は、一側ケース37Lを貫通してクランクケース25の外側に突出しており、この端部には、駆動チェーン19に噛み合うドライブスプロケット85が固定されている。
変速用クラッチ機構71は、クラッチ操作機構72によってリフター部91が軸方向にリフトされてプレッシャプレート88がプライマリドリブンギア82側に移動すると、プレッシャプレート88とクラッチセンタ87とによるクラッチ板89の狭持が解除され、クラッチ切断状態となる。
シフトスピンドル94は、一側ケース37Lに設けられたベアリング96と、クラッチカバー39に設けられたベアリング97とによって両端部を軸支され、メイン軸75に対し平行に配置される。また、シフトスピンドル94は、他側ケース37Rに設けられた支持孔部98によっても中間部を支持される。
クラッチカバー39には、シフトスピンドル94の回転位置を検出する角度センサ99が設けられている。
歯車列95は、一側ケース37Lの外面と一側ケース37Lの外面に取り付けられるカバー100とによって両端を軸支される。また、シフトスピンドル94の一端側の先端も、カバー100の内面に設けられたベアリング101によって軸支されている。
リフターカムプレート106は、クラッチレバー103のレバー部110の先端に設けられたピン108に連結される連結部111と、ベース部材105に対向する押圧操作部112とを有する。押圧操作部112及びベース部材105の互いに対向する面には、斜面状のカム部112a,105aがそれぞれ形成されており、ボール107は、カム部112a,105aの間に狭持されている。
リフターカムプレート106は、中央に設けられたガイド穴106aに、ベース部材105のガイド軸105bが嵌合することで、軸方向の移動をガイドされる。また、押圧操作部112の先端部には、ボールベアリング113が設けられており、リフターカムプレート106は、ボールベアリング113を介して変速用クラッチ機構71に接続される。
マスターアーム115は、シフトドラム125に連結されており、アクチュエータ機構74によってマスターアーム115が回動することで、シフトドラム125が回転し、変速が行われる。
他側ケース37Rは、板状の上記壁部49と、壁部49の周縁部の全周から立設される側壁部117とを備える。壁部49は、軸受け部49a(図5)を介してクランク軸36を支持するクランク支持孔部118と、ベアリング81を介してメイン軸75を支持するメイン軸支持孔部119と、ベアリング84を介してカウンタ軸76を支持するカウンタ軸支持孔部120と、シフトドラム125を支持するシフトドラム支持孔部126とを有する。
また、クランク支持孔部118は、壁部49の上下の中間部に位置し、メイン軸支持孔部119はクランク支持孔部118よりも上方に位置し、カウンタ軸支持孔部120は、クランク支持孔部118の上方且つメイン軸支持孔部119の下方に位置する。
シフトスピンドル94は、壁部49の後部の下部でカウンタ軸支持孔部120の下方に配置されている。シフトドラム支持孔部126は、シフトスピンドル94の前方でメイン軸支持孔部119の下方に配置されている。
蓄力機構116は、シフトスピンドル94上に配置されている。マスターアーム115は、蓄力機構116に組み込まれてシフトスピンドル94上に配置されている。
蓄力機構116は、他側ケース37Rの壁部49とクラッチカバー39との間に配置される。
蓄力機構116は、シフトスピンドル94の軸上にシフトスピンドル94に対して相対回転可能に設けられるギアシフトアーム130と、ギアシフトアーム130を中立位置に付勢するリターンスプリング131と、ギアシフトアーム130に近接した位置でシフトスピンドル94の軸上に固定され、シフトスピンドル94と一体に回転するシフトダウン用カラー132と、ギアシフトアーム130から軸方向に離間した位置でシフトスピンドル94の軸上に固定され、シフトスピンドル94と一体に回転する第1の蓄力カラー133とを備える。
また、蓄力機構116は、ギアシフトアーム130に対して第1の蓄力スプリング135の反対側に設けられる第2の蓄力カラー136と、第2の蓄力カラー136とギアシフトアーム130との間に設けられる第2の蓄力スプリング137とを備える。
さらに、蓄力機構116は、マスターアーム115の回動位置を規制するストッパーピン138を備える。ストッパーピン138は、他側ケース37Rの壁部49に固定されている。
シフトスピンドル94において、鍔状部94dは最も大径であり、ギアシフトアーム支持部94c、支持部94b、及び接続部94aは、接続部94a側に向けて段階的に小径になるように形成されている。また、スプリングカラー支持部94e、カラー支持部94f及び支持部94gは、鍔状部94d側から支持部94gに向けて段階的に小径になるように形成されている。
第1の蓄力カラー133、第2の蓄力カラー136、シフトダウン用カラー132、及び、クラッチレバー103は、シフトスピンドル94に対し相対回転不能に固定されており、シフトスピンドル94と一体に回動する。
図7〜図9に示すように、ギアシフトアーム130は、シフトスピンドル94の外周面にベアリング142を介して嵌合する円筒部143と、円筒部143における第1の蓄力スプリング135側の端の外周部から径方向外側に延びるプレート部144とを備える。
プレート部144は、円筒部143から上方に延びる上方延出部144aと、円筒部143から前方に延びる前方延出部144bとを備える。
上方延出部144aには、上方延出部144aの先端部から径方向外方に延びた後にシフトスピンドル94と略平行に第2の蓄力スプリング137側に延びる第2の係止片147が設けられている。第2の係止片147は、第2の蓄力スプリング137が係止される基端側の第2の蓄力スプリング係止部147aと、リターンスプリング131が係止される先端側のリターンスプリング係止部147bとを備える。リターンスプリング係止部147bは、第2の蓄力スプリング係止部147aよりも幅が狭く形成されている。
アーム部149は、正面視では略L字状に形成されており、筒状部148から上方へ延びる位置規制アーム149aと、筒状部148から前方へ延びる操作アーム149bとを備える。マスターアーム115は、操作アーム149bを介してシフトドラム125に連結されており、マスターアーム115が回動することでシフトドラム125が回転する。
マスターアーム115は、シフトスピンドル94と略平行に第2の蓄力スプリング137側に延びるスプリング係止片151を、規制開口部150の上縁部に備える。
第1の蓄力スプリング135は、ねじりコイルバネであり、一端のギアシフトアーム側端部135aが、ギアシフトアーム130の第1の係止片145に係止され、他端の蓄力アーム側端部135bが第1の蓄力カラー133の第1の蓄力アーム157に係止される。
図7、図10及び図11に示すように、第2の蓄力カラー136は、第2の蓄力カラー固定部139に固定される円筒部160と、円筒部160のギアシフトアーム130側の面から軸方向に突出する筒部161とを備える。筒部161の内周部は、ギアシフトアーム130の円筒部143の外周側に位置する。筒部161の外周部の径は、マスターアーム115の筒状部148の外径と略同一であるとともに、筒部161と筒状部148とは軸方向に連続している。
サポート部162には、サポート部162を外周面側から切り欠くようにして設けられた係止溝163が設けられている。係止溝163はサポート部162を軸方向に貫通する。
詳細には、ギアシフトアーム側端部137aは、コイル部137cから径方向外側に延出して第2の係止片147の側面に当接する。また、蓄力アーム側端部137bは、コイル部137cから軸方向に延出し、係止溝163に挿入される。コイル部137cの内周面は、筒部161及び筒状部148の外周面にガイドされる。
リターンスプリング131は、一端131aと他端131bとの間にストッパーピン138を挟んだ状態で配置される。
マスターアーム115は、スプリング係止片151がリターンスプリング131の一端131aと他端131bとの間に挟まれることで、中立状態における回動位置を中立位置(初期位置)に規制されている。
ギアシフトアーム130は、リターンスプリング係止部147bがリターンスプリング131の一端131aと他端131bとの間に挟まれることで、中立状態における回動位置を規制されている。
すなわち、中立状態では、マスターアーム115及びギアシフトアーム130は、シフトスピンドル94の中心とストッパーピン138の中心とを通る直線Lに沿うように位置している。
また、中立状態では、第2の蓄力スプリング137は、第2の蓄力カラー136の係止溝163と第2の蓄力スプリング係止部147aとの間で所定のねじり量だけ初期撓みを付与された状態で設けられており、第2の蓄力スプリング137には所定のセット荷重が発生している。
図12(a)に示すように、ドグ歯153は、中立状態では、ギアシフトアーム130の孔部146の一端に接しており、孔部146の他端との間には隙間が形成されている。
制御ユニット17の変速の指示に伴ってアクチュエータ機構74のモーター93が駆動されると、シフトスピンドル94の回動が開始される。シフトアップの方向は、図中に符号UPで示す時計回りの方向である。
図13は、中立状態よりもシフトアップ方向に進んだ状態を示す図である。
図13の状態は、ギアシフトアーム130の第2の係止片147の側面147cが、マスターアーム115の規制開口部150の内縁150aに当接してギアシフトアーム130が回動できなくなるまでシフトスピンドル94の回動が進んだ状態であり、以下の説明では、この状態を蓄力準備状態と呼ぶ。
図14の状態では、第1の蓄力スプリング135は、シフトスピンドル94の回動に伴い、ギアシフトアーム側端部135aが第1の係止片145によって位置を固定されたまま、蓄力アーム側端部135bだけが第1の蓄力アーム157によって所定量Rだけ回動されている。
また、図14の状態では、第2の蓄力スプリング137は、シフトスピンドル94の回動に伴い、ギアシフトアーム側端部137aが第2の蓄力スプリング係止部147aによって位置を固定されたまま、蓄力アーム側端部137bだけが第2の蓄力カラー136の係止溝163によって所定量Rだけ回動されている。以下の説明では、図14の状態を蓄力状態と呼ぶ。
蓄力状態では、規制開口部150に規制されて回動しないギアシフトアーム130に対し、シフトダウン用カラー132はシフトスピンドル94と共に回動している。このため、蓄力状態では、図12(c)に示すように、ドグ歯153は、ギアシフトアーム130の孔部146の一端と他端との間の中間部に位置する。
なお、本実施の形態では、蓄力を完了した後に変速用クラッチ機構71を切断させるディレイ機構が設けられている。ディレイ機構は、例えば、クラッチ操作機構72の斜面状のカム部112aの一部に平坦部を設ける構成が挙げられる。
角度センサ99の検出結果に基づいて変速の完了が検知されると、制御ユニット17はシフトスピンドル94を逆回転し、マスターアーム115は中立状態に復帰するとともに、変速用クラッチ機構71が接続される。
蓄力機構116は、並列に配置された第1の蓄力スプリング135及び第2の蓄力スプリング137の2つの蓄力スプリングを備えるため、荷重特性は、第1の蓄力スプリング135の荷重特性と第2の蓄力スプリング137の荷重特性とを足し合わせたものとなる。このため、バネ定数の比較的小さい第1の蓄力スプリング135及び第2の蓄力スプリング137を使用したとしても、目標の荷重値Fbを得ることができる。また、バネ定数の小さいばねは、撓み量を大きくとることができるため、バネ定数を小さくした分は、初期撓みを含む全体の撓み量を増やすことで、目標の荷重値Fbを満足させることができる。また、バネ定数が小さいため、シフトスピンドル94の所定の回動範囲における荷重の増加量を小さくできる。このため、2つの蓄力スプリング135,137の合計荷重がモーター93の最大トルクFmを超えないようにすることができる。
さらに、ギアシフトアーム130の第1の係止片145と第2の係止片147とは、共にギアシフトアーム130の第1の蓄力アーム157側の端部から径方向外方に延びた後、それぞれ第1の蓄力スプリング135側と第2の蓄力スプリング137側へと延びるとともに、その周方向の位置が異なるように配される。このため、第1の係止片145及び第2の係止片147にかかる蓄力荷重を分散させることができ、ギアシフトアーム130の強度を確保し易い。
また、第2の蓄力スプリング137と、リターンスプリング131とは、その巻き方向が逆になるように設けられるため、第2の蓄力スプリング137及びリターンスプリング131のコイル部137cとコイル部131cとは互に交差する。このため、蓄力による変形に伴って第2の蓄力スプリング137とリターンスプリング131とが接触したとしても、一方のスプリングが他方のスプリングの巻き部分に入り込むことを防止できる。
上記実施の形態では、第2の蓄力アームは、サポート部162の外周に係止溝163を設けて形成されているものとして説明したが、これに限らず、例えば、サポート部162から径方向外側にアーム状の係止部を延出させても良い。
94 シフトスピンドル
115 マスターアーム
125 シフトドラム
130 ギアシフトアーム
131 リターンスプリング
135 第1の蓄力スプリング
136 第2の蓄力カラー
137 第2の蓄力スプリング
137c コイル部(コイル部分)
145 第1の係止片
147 第2の係止片
157 第1の蓄力アーム
162 サポート部(第2の蓄力アーム)
163 係止溝
Claims (5)
- 変速機の変速段を操作するシフトスピンドル(94)と、当該シフトスピンドル(94)と一体に回動するように設けられる第1の蓄力アーム(157)と、前記シフトスピンドル(94)と相対回転可能であるとともに、前記第1の蓄力アーム(157)との間に第1の蓄力スプリング(135)を介して連結される第1の係止片(145)を有するギアシフトアーム(130)と、当該ギアシフトアーム(130)と相対回転可能であるとともに、前記変速機のシフトドラム(125)を回動させて操作するマスターアーム(115)と、前記シフトスピンドル(94)を駆動するモーター(93)とを備える変速機において、
前記シフトスピンドル(94)上、且つ、前記ギアシフトアーム(130)を挟んで前記第1の蓄力スプリング(135)と反対側に、前記シフトスピンドル(94)と一体に回動するように設けられる第2の蓄力アーム(162)が設けられ、
前記ギアシフトアーム(130)は、前記第1の蓄力スプリング(135)と反対側に、当該第2の蓄力アーム(162)と第2の蓄力スプリング(137)を介して連結される第2の係止片(147)を有し、
前記第1の蓄力スプリング(135)の荷重特性と前記第2の蓄力スプリング(137)の荷重特性とを足し合わせた荷重特性は、前記シフトスピンドル(94)の回動範囲内において、目標の荷重値(Fb)が得られるとともに畜力荷重が前記モーター(93)の最大トルク(Fm)を超えないように設定されていることを特徴とする変速機。 - 前記ギアシフトアーム(130)の前記第2の係止片(147)には、前記マスターアーム(115)を初期位置に戻すリターンスプリング(131)が係止され、
前記リターンスプリング(131)と前記第2の蓄力スプリング(137)とが、軸方向で同じ幅内、且つ、径方向で内外に重なるよう配置されることを特徴とする請求項1記載の変速機。 - 前記ギアシフトアーム(130)の前記第1の係止片(145)と前記第2の係止片(147)とは、共に前記ギアシフトアーム(130)の前記第1の蓄力アーム(157)側の端部から径方向外方に延びた後、それぞれ前記第1の蓄力スプリング(135)側と前記第2の蓄力スプリング(137)側へと延びるとともに、その周方向の位置が異なるように配されることを特徴とする請求項1または2に記載の変速機。
- 前記第2の蓄力アーム(162)は、前記シフトスピンドル(94)と一体的に回動する第2の蓄力カラー(136)として設けられ、
当該第2の蓄力カラー(136)には、前記第2の蓄力スプリング(137)のコイル部分(137c)と径方向の長さが略等しいサポート部(162)が設けられ、前記第2の蓄力スプリング(137)の係止部は、前記サポート部(162)の係止溝(163)として設けられることを特徴とする請求項2記載の変速機。 - 前記第2の蓄力スプリング(137)と、前記リターンスプリング(131)とは、その巻き方向が逆になるように設けられることを特徴とする請求項2記載の変速機。
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