JP2013228079A - 車両の変速装置 - Google Patents

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【課題】単一のシフトスピンドルに蓄力機構を介して変速機を操作するマスターアームとクラッチを操作するクラッチレバーとが設けられた変速装置において、変速動作に必要な蓄力の完了後にクラッチが切断されることを一層確実に実現できる車両の変速装置を提供する。
【解決手段】シフトスピンドル55に設けられ、シフトスピンドル55の回転力を変速機のシフトドラムに伝達してシフトドラムを回動させて操作するマスターアーム83と、シフトスピンドル55に設けられ、クラッチを操作するクラッチレバー72と、シフトスピンドル55からマスターアーム83へ伝達される回転力の蓄力が可能な蓄力機構57と、を備え、マスターアーム83とクラッチレバー72とは互いに連動する、車両の変速装置50において、シフトスピンドル55とクラッチとの間で、蓄力が完了するまでクラッチレバー72によるクラッチの切断操作を遅らせるディレイ機構を更に備える。
【選択図】図9

Description

本発明は、車両のクラッチ連動式の変速装置に関する。
特許文献1には、車両のクラッチ連動式の変速装置として、1本(単一)のシフトスピンドルに、蓄力機構を介して変速機を操作するマスターアームと、クラッチを操作するクラッチレバーとが設けられた構造が、開示されている。この蓄力機構においては、マスターアームは、シフトスピンドルに対して回動自在に支持されており、クラッチレバーは、シフトスピンドルに固設されている。また、シフトスピンドルには、サブアームが固設されており、マスターアームとサブアームとの間には、プリロードスプリングが介在している。かかる構造によれば、マスターアームとサブアームとの間のプリロードスプリングによって、マスターアームに、変速機を操作する力及び回動ストロークを蓄えながら(蓄力しながら)、クラッチレバーを回動していくことが可能である。そして、プリロードスプリングに、変速機を操作するのに十分な蓄力が完了した後に(このときのシフトスピンドルの回動アングルを「蓄力完了アングル」ともいう)、クラッチが切断されて、マスターアームの蓄力が開放されれば、ギアの切り替えを迅速に行うことが可能となる。
しかしながら、特許文献1に記載の変速装置においては、シフトスピンドルに対して、サブアーム及びクラッチレバーがそれぞれ固設されているため、シフトスピンドルの回動と同時に、サブアーム及びクラッチレバーも回動を開始する。従って、プリロードスプリングによる蓄力とクラッチ操作とは、ほぼ同時に開始されることとなる。
特開2001−280493号公報
しかし、特許文献1に記載の変速装置においては、クラッチの経年変化等により、マスターアームの蓄力が完了する前にクラッチが切断される可能性がある。仮に、蓄力完了アングルになる前にクラッチが切断される場合、開放されたプリロードスプリングでは、変速機を操作するのに必要な回動ストロークが足りないため、シフトスピンドルが所定角度まで回動するのを待たなければならなくなる。このような場合、クラッチが切断された状態が比較的長く続くため、駆動力が抜けた状態が長くなる。
本発明は、単一のシフトスピンドルに、蓄力機構を介して変速機を操作するマスターアームと、クラッチを操作するクラッチレバーとが設けられた変速装置において、変速動作に必要な蓄力の完了後にクラッチが切断されることを一層確実に実現できる車両の変速装置を提供することを目的とする。
請求項1に記載の発明は、単一のシフトスピンドルと、前記シフトスピンドルに設けられ、前記シフトスピンドルの回転力を変速機のシフトドラムに伝達して前記シフトドラムを回動させて操作するマスターアームと、前記シフトスピンドルに設けられ、クラッチを操作するクラッチレバーと、前記シフトスピンドルから前記マスターアームへ伝達される回転力の蓄力が可能な蓄力機構と、を備え、前記マスターアームと前記クラッチレバーとは互いに連動する、車両の変速装置において、前記シフトスピンドルと前記クラッチとの間で、前記蓄力が完了するまで前記クラッチレバーによる前記クラッチの切断操作を遅らせるディレイ機構を更に備えることを特徴とする。
請求項2に記載の発明においては、請求項1に記載の構成に加えて、前記ディレイ機構は、前記シフトスピンドルの回転角度の一部を、前記クラッチレバーによる前記クラッチの切断操作に寄与させないロスト機構として機能することを特徴とする。
請求項3に記載の発明においては、請求項2に記載の構成に加えて、前記クラッチレバーは、前記シフトスピンドルに回動自在に支持されており、前記シフトスピンドルに、ディレイ部材が固定されており、前記クラッチレバー及び前記ディレイ部材は、互いに連係するダボ歯及びダボ穴を有し、前記ディレイ機構は、前記ダボ歯と前記ダボ穴との間の周方向の隙間によって構成されることを特徴とする。
請求項4に記載の発明においては、請求項2に記載の構成に加えて、前記ディレイ機構は、前記クラッチに対して移動することにより前記クラッチの切断を行うクラッチリフタ機構における移動方向の遊びによって、構成されることを特徴とする。
請求項5に記載の発明においては、請求項3に記載の構成に加えて、前記シフトスピンドルと前記ディレイ部材とは一体に回動することを特徴とする。
請求項6に記載の発明においては、請求項1に記載の構成に加えて、前記蓄力機構は、コイル状のスプリングからなり、前記シフトスピンドルの周面に直接被さるように設けられることを特徴とする。
請求項7に記載の発明においては、請求項2に記載の構成に加えて、前記クラッチレバーは、前記クラッチを切断又は接続させるためにリフトさせるクラッチリフタカムに、前記クラッチリフタカムに設けられたガイド穴を介して連結されており、前記ディレイ機構は、当該ガイド穴の遊び穴部として設けられることを特徴とする。
請求項8に記載の発明においては、請求項2に記載の構成に加えて、前記クラッチレバーは、前記クラッチを切断又は接続させるためにリフトさせるクラッチリフタカムに連結されており、当該クラッチリフタカムは、ボール状部材を介してクラッチリフタプレートと連係する複数の谷状の斜板部を有し、前記ディレイ機構は、当該谷状の斜板部に形成された平坦部として設けられることを特徴とする。
請求項9に記載の発明においては、請求項2に記載の構成に加えて、前記クラッチレバーは、前記クラッチを切断又は接続させるためにリフトさせるクラッチリフタカムに連結されており、当該クラッチリフタカムは、ボール状部材を介してクラッチリフタプレートと連係し、当該クラッチリフタプレートは、前記変速機に対して回り止めされるアンカー部を有し、前記ディレイ機構は、当該アンカー部を係止する楕円状の係止穴として設けられることを特徴とする。
請求項10に記載の発明においては、請求項2に記載の構成に加えて、前記クラッチレバーは、前記クラッチを切断又は接続させるためにリフトさせるクラッチリフタカムと、前記クラッチリフタカムに設けられたカム面で連係されており、前記ディレイ機構は、当該カム面の遊びカム部として設けられることを特徴とする。
請求項11に記載の発明においては、請求項2に記載の構成に加えて、前記クラッチレバーは、複数のアーム部材が連結されたリンク機構として設けられ、当該リンク機構における一方のアーム部材は、他方のアーム部材の回動角度を制限するストッパを有し、前記ディレイ機構は、当該リンク機構におけるアーム部材同士が回動可能な範囲として設けられることを特徴とする。
請求項1に記載の発明によれば、クラッチの切断操作よりも先に蓄力を完了させることができるため、変速動作に必要な蓄力の完了後に、クラッチが切断されることを一層確実に実現できる。従って、クラッチが切断された後に迅速な変速を、より確実に実行することができる。
請求項2に記載の発明によれば、前記ディレイ機構は、シフトスピンドルの回転角度の一部を、クラッチレバーによるクラッチの切断操作に寄与させないロスト機構として機能する。そのため、ロスト機構によって容易にクラッチの切断操作よりも先に蓄力を完了させることを実行することができる。
請求項3に記載の発明によれば、クラッチレバー及びディレイ部材としての蓄力カラーは、互いに連係する第2ダボ歯及び第2ダボ穴を有し、前記ディレイ機構は、第2ダボ歯と第2ダボ穴との間の周方向の隙間によって構成される。そのため、ディレイ機構の構成をコンパクトでかつ簡素にすることができる。
請求項4に記載の発明によれば、前記ディレイ機構は、クラッチに対して移動することによりクラッチの切断を行うクラッチリフタ機構における移動方向の遊びによって、構成される。そのため、ディレイ機構の構成を簡素にすることができる。
請求項5に記載の発明によれば、シフトスピンドルとディレイ部材とは一体に回動する。そのため、シフトスピンドルが回動すると、ディレイ部材、蓄力機構などを介して、マスターアームを速やかに回動させることができる。
請求項6に記載の発明によれば、蓄力機構は、コイル状のスプリングからなり、シフトスピンドルの周面に直接被さるように設けられる。そのため、蓄力機構をコンパクトに構成することができる。
請求項7に記載の発明によれば、ディレイ機構は、ガイド穴の遊び穴部として設けられる。そのため、ガイド穴のサイズを大きくすることができる(特にガイド長を長くすることができる)。従って、ディレイ機構のディレイ機能の精度の設定及び管理を容易に行うことができる。
請求項8に記載の発明によれば、ディレイ機構は、谷状の斜板部に形成された平坦部として設けられる。そのため、ディレイ機構を簡素な構成で実現することができる。
請求項9に記載の発明によれば、クラッチリフタプレートは、変速機に対して回り止めされるアンカー部を有し、ディレイ機構は、アンカー部を係止する楕円状の係止穴として設けられる。そのため、ディレイ機構を簡素な構成で実現することができる。
請求項10に記載の発明によれば、クラッチリフタカムにカム面が設けられ、ディレイ機構は、カム面の遊びカム部として設けられる。そのため、ディレイ機構を簡素な構成で実現することができる。
請求項11に記載の発明によれば、クラッチレバーは、複数のアーム部材が連結されたリンク機構として設けられ、ディレイ機構は、リンク機構におけるアーム部材同士が回動可能な範囲として設けられる。クラッチ側にディレイ機構を設ける場合には、一般的に、クラッチリフタカム等にサイズの大きなディレイを実現するための構成を設ける必要がある。これに対して、クラッチレバーをリンク機構で構成し、ディレイ機構をリンク機構におけるアーム部材同士が回動可能な範囲として設けることで、ディレイ機構をコンパクトに設定することができる。
本実施形態に係る変速装置50を備える自動二輪車1の側面図である。 パワーユニットPの左側面図である。 左ユニットケース等を省略して示したパワーユニットPの左側面図である。 パワーユニットPのユニットケース20の内部を断面で示した部分断面図(図2のIV−IV線断面図)である。 右側ユニットケースカバーを外した状態のパワーユニットPの右側面図である。 図5に示す状態よりも更に発進クラッチやクラッチを省略して示したパワーユニットPの右側面図である。 パワーユニットPの変速機構の断面図(図5,図6のVII−VII線断面図)である。 図7におけるクラッチリフタプレート77の周辺を示す部分拡大図である。 変速装置50の主な構成をシフトスピンドル55の軸方向に沿って切断した断面図である。 図9についてシフトリターンスプリング85の側からマスターアーム83等を視た部分拡大斜視図である。 図9についてクラッチレバー72を外し、蓄力カラー71の側からギアシフトアーム81等を視た部分拡大斜視図である。 図9についてプリロードストッパカラー56等を外し、ギアシフトアーム81の側からマスターアーム83等を視た部分拡大斜視図である。 シフトスピンドル55の一部を示す図である。 マスターアーム83、係止バー87等を示す図で、(a)は正面図、(b)は(a)に示すA−A線断面図である。 ギアシフトアーム81を図で示す図で、(a)は正面図、(b)は(a)に示すA−A線断面図である。 プリロードストッパカラー56を示す図で、(a)は正面図、(b)は(a)に示すA−A線断面図である。 蓄力スプリング57を示す斜視図である。 蓄力カラー71を示す図で、(a)は正面図、(b)は(a)に示すA−A線断面図である。 クラッチレバー72等を示す図で、(a)は正面図、(b)は(a)に示すA−A線断面図である。 クラッチレバー72等を示す図で、(a)は背面図、(b)は図19(a)において第2ダボ穴72bを透過させて示す図である。 変速動作に伴う各構成部材の位置関係の変化などを示す図で、(a)は主に蓄力スプリング57よりもマスターアーム83の側の位置関係を示す図、(b)は主に蓄力スプリング57よりもクラッチレバー72の側の位置関係を示す図である。 (a)及び(b)は、図21よりも変速動作が進行した状態を示す図である。 (a)及び(b)は、図22よりも変速動作が進行した状態を示す図である。 (a)及び(b)は、図23よりも変速動作が進行した状態を示す図である。 (a)及び(b)は、図24よりも変速動作が進行した状態を示す図である。 (a)及び(b)は、図25よりも変速動作が進行した状態を示す図である。 変速動作の経過に伴うシフトスピンドルの角度、蓄力スプリングの角度、クラッチリフト量、シフトドラムの角度などの関係を示す図である。 (a)〜(c)は、変形例1に係るディレイ機構の要部の構成及び動作を示す右側面図である。 変形例2に係るディレイ機構の要部を示す図であり、(a)は右側面図、(b)は(a)に示すA−A線断面図である。 (a)〜(c)は、変形例3に係るディレイ機構の要部の構成及び動作を示す右側面図である。 変形例3において、右側ユニットケースカバー49の内側を左側から視た図である。 (a)〜(c)は、変形例4に係るディレイ機構の要部の構成及び動作を示す右側面図である。 (a)〜(c)は、変形例5に係るディレイ機構の要部の構成及び動作を示す右側面図である。 図27に対応する図であり、ドグ当たりが発生した場合におけるシフトスピンドルの制御を説明するための図である。
以下、本発明の一実施形態に係るクラッチ連動式の変速装置50を備える自動二輪車1について、図1〜図20に基づいて説明する。
なお、以下の説明における前後、左右及び上下の方向の記載は、特に明記がない限り、自動二輪車に乗車する運転者から見た方向に従う。また、図中、矢印FRは車両の前方を示し、矢印LHは車両の左方を示し、矢印UPは車両の上方を示す。
図1は、本実施形態に係る変速装置50を備える自動二輪車1の側面図である。図2は、パワーユニットPの左側面図である。図3は、左ユニットケース等を省略して示したパワーユニットPの左側面図である。図4は、パワーユニットPのユニットケース20の内部を断面で示した部分断面図(図2のIV−IV線断面図)である。図5は、右側ユニットケースカバーを外した状態のパワーユニットPの右側面図である。図6は、図5に示す状態よりも更に発進クラッチやクラッチを省略して示したパワーユニットPの右側面図である。図7は、パワーユニットPの変速機構の断面図(図5,図6のVII−VII線断面図)である。図8は、図7におけるクラッチリフタプレート77の周辺を示す部分拡大図である。
図9は、変速装置50の主な構成をシフトスピンドル55の軸方向に沿って切断した断面図である。図10は、図9についてシフトリターンスプリング85の側からマスターアーム83等を視た部分拡大斜視図である。図11は、図9についてクラッチレバー72を外し、蓄力カラー71の側からギアシフトアーム81等を視た部分拡大斜視図である。図12は、図9についてプリロードストッパカラー56等を外し、ギアシフトアーム81の側からマスターアーム83等を視た部分拡大斜視図である。図13は、シフトスピンドル55の一部を示す図である。図14は、マスターアーム83、係止バー87等を示す図で、(a)は正面図、(b)は(a)に示すA−A線断面図である。
図15は、ギアシフトアーム81を図で示す図で、(a)は正面図、(b)は(a)に示すA−A線断面図である。図16は、プリロードストッパカラー56を示す図で、(a)は正面図、(b)は(a)に示すA−A線断面図である。図17は、蓄力スプリング57を示す斜視図である。図18は、蓄力カラー71を示す図で、(a)は正面図、(b)は(a)に示すA−A線断面図である。図19は、クラッチレバー72等を示す図で、(a)は正面図、(b)は(a)に示すA−A線断面図である。図20は、クラッチレバー72等を示す図で、(a)は背面図、(b)は図19(a)において第2ダボ穴72bを透過させて示す図である。
図1に示すように、自動二輪車1の車体フレーム2は、ヘッドパイプ3と、メインパイプ4と、センターフレーム5と、左右一対のリヤパイプ6,6と、左右一対のバックステー7,7とを備える。ヘッドパイプ3は、車体前側(FR側)に位置する。メインパイプ4は、ヘッドパイプ3から斜め後下方に延びている。センターフレーム5は、メインパイプ4の後部から左右に広がって下方に延びている。左右一対のリヤパイプ6,6は、メインパイプ4におけるセンターフレーム5よりも前方から、斜め後上方に延出し、途中では略水平に屈曲して、後方に延びている。左右一対のバックステー7,7は、左右に広がったセンターフレーム5の左右側部とリヤパイプ6,6の後部との間に介装されている。
ヘッドパイプ3には、ステアリングシャフト8が回転自在に枢支されている。ステアリングシャフト8の下側には、サスペンションを備えたフロントフォーク9が延設されている。フロントフォーク9の下端には、前輪Fwが軸支されている。ステアリングシャフト8の上部には、左右に展開したハンドルバー8bが取り付けられている。
リヤフォーク11は、その前端において、ピボット軸10を介してセンターフレーム5に軸支されている。リヤフォーク11は、後方に延出している。リヤフォーク11における上下に揺動する後端には、後輪Rwが軸支されている。リヤフォーク11の後部とリヤパイプ6との間には、リヤクッション12が介装されている。
メインパイプ4の下方には、パワーユニットPが、メインパイプ4及びセンターフレーム5に支持されて懸架されている。パワーユニットPは、ユニットケース20と、ユニットケース20に一体的に構成された内燃機関21及び変速装置50と、を備えている。
出力スプロケット13は、パワーユニットPの出力軸(後記するように変速装置(50)のカウンタ軸52)に嵌着されている。出力スプロケット13は、ピボット軸10の直ぐ前方に位置している。出力スプロケット13と、後輪Rw側の被動スプロケット14との間には、チェーン15が架渡されている。
リヤパイプ6,6の傾斜部には、燃料タンク16が架設されている。シート17は、燃料タンク16及びリヤパイプ6,6の後側水平部の上を覆っている。車体カバー18は、車体フレーム2のほぼ全体を覆っている。センターフレーム5の下端部には、メインスタンド19の基端部が軸支されている。
パワーユニットPは、主として、ユニットケース20の前側に内燃機関21が配置され、後側に変速装置50が配置されて、構成される。内燃機関21は、空冷式単気筒4ストローク内燃機関であり、変速装置50は4段変速の変速ギア噛合機構である。
図2及び図3に示すように、内燃機関21は、クランクケースとして機能するユニットケース20を備える。クランク軸22は、車幅方向(左右方向)に指向し、ユニットケース20に回転自在に軸支されている。ユニットケース20の前部には、シリンダブロック23とシリンダヘッド24とが一体に締結されている。シリンダブロック23及びシリンダヘッド24は、略水平に前傾して突出している。シリンダヘッド24の上には、シリンダヘッドカバー25が被せられている。
略水平に突出したシリンダヘッド24の上面から、吸気管26が上方に延出している。吸気管26は、エアクリーナ28に接続されている。エアクリーナ28は、スロットルボディ27を介してメインパイプ4の前部に吊設されている。
シリンダヘッド24の下面から、排気管30が下方に延出している。下方に延出した排気管30は、直ぐに水平に屈曲し、後方へ斜め右側に偏りながら延び、ユニットケース20の一部下面を通り過ぎて車体の右側に出て、真直ぐ後方に延びて、後輪Rwの右側のマフラー31に接続されている。
ユニットケース20の下面には、ステップバー33が固着されている。ステップバー33は、車幅方向に指向した中央水平部33aの両側が上側に屈曲して、左右アーム部33b,33bを形成している。更に、ステップバー33は、車幅方向外側に屈曲して、左右水平ステップ部33c,33cを形成している。ユニットケース20の下面には、中央水平部33aが固着されて取り付けられる。
ステップバー33の左右アーム部33b,33bは、中央水平部33aからパワーユニットPの左右側面に沿って、斜め前上方に延びている。左右アーム部33b,33bの上端で外側に屈曲した左右水平ステップ部33c,33cには、ステップ部材34,34が取り付けられている。ステップ部材34は、前後に長い直方体状をなしている。なお、中央水平部33aの右側部は、前後に延びる排気管30を下方から跨ぐように屈曲している。
図4に示すように、ユニットケース20は、左ユニットケース20L及び右ユニットケース20Rの左右割りで構成されている。左ユニットケース20Lと右ユニットケース20Rとを一体化結合することで、内空間が形成される。内空間は、前側にクランク室20cを有し、後側に変速室20mを有する。クランク室20cには、クランク軸22がj、左右ユニットケース20L,20Rに主軸受22b,22bを介して回転自在に架設されている。変速室20mには、変速装置50等の変速機構が収容される。
シリンダブロック23内に一体成型されたシリンダライナー23cの中には、ピストン35が往復して摺動する。ピストン35とクランク軸22とは、コンロッド36によって連接されて、クランク機構を構成している。
左ユニットケース20Lから左側方へ突出する左側クランク軸部22Lには、主軸受22bの近傍に、動弁駆動系の駆動スプロケット40が嵌着されている。左側クランク軸部22Lの左端には、ACジェネレータ41が設けられている。駆動スプロケット40とACジェネレータ41との間には、始動機構の被動ギア42が嵌着されている。
左ユニットケース20Lの左側に突設されるACジェネレータ41は、左側ユニットケースカバーであるACGカバー43により、左側から覆われる。
一方、右ユニットケース20Rから右側方へ突出する右側クランク軸部22Rには、遠心式の発進クラッチ45が設けられている。発進クラッチ45は、右側クランク軸部22Rに一体に固着されたクラッチインナ45iの周りをクラッチアウタ45oが回転自在に支持されて、構成されている。クランク軸22の回転数(機関回転数)が所定回転数を越えると、クラッチインナ45iのクラッチシューがクラッチアウタ45oに圧接され、これにより動力が伝達される。
なお、クラッチアウタ45oとクラッチインナ45iとの間には、一方向クラッチ44が介装されており、これにより、エンジンブレーキが発進クラッチ45を介さずに直接効くようになっている。
右側クランク軸部22Rには、クラッチアウタ45oの左側に接して共に回転するプライマリドライブギア46が、右側クランク軸部22Rに回転自在に軸支されている。
図4に示すように、ユニットケース20の後側の内空間である変速室20mにおいては、メイン軸51は、クランク軸22の後方位置においてクランク軸22と平行に延びて、左右ユニットケース20L,20Rに軸受51b,51bを介して回転自在に架設されている。メイン軸51の更に後方位置においては、カウンタ軸52は、メイン軸51と平行に延びて、左右ユニットケース20L,20Rに軸受52b,52bを介して回転自在に架設されている。クランク軸22,メイン軸51,カウンタ軸52は、この順に前方から後方へ直線的に並んで配設されている。
変速装置50は、メイン軸51上に配列されるギア列51Gと、カウンタ軸52上に配列されるギア列52Gとの1速段から4速段の各ギア同士が互いに、常時噛み合って構成されている。ギア列51G及びギア列52Gのうちの一方は、軸と共に回転し、それらの他方は、軸に対して自由に回転する。
そして、メイン軸51上のギア列51Gのうちのセレーション嵌合したシフタギア51gsが軸方向に移動して隣りのギアと断接することと、カウンタ軸52上のギア列52Gのうちのセレーション嵌合したシフタギア52gsが軸方向に移動して隣りのギアと断接することとの組み合わせによって、1速段から4速段のいずれかの変速段又はニュートラル状態が確立する。
メイン軸51は、右ユニットケース20Rから右側方に突出している。メイン軸51における突出した部分には、クラッチ60が設けられている。クラッチ60のクラッチアウタ61は、メイン軸51にスリーブ59を介して相対回転自在に軸支されている。このクラッチアウタ61には、プライマリドリブンギア47が緩衝部材48を介して取り付けられている。プライマリドライブギア46は、これと噛み合うプライマリドリブンギア47をクラッチアウタ61と共に減速して回転する。
メイン軸51の右端には、クラッチインナ62が一体に嵌着されている。クラッチインナ62の周壁部の外周にセレーション嵌合する複数の駆動摩擦板63と、クラッチアウタ61の周壁部の内周にセレーション嵌合する被駆動摩擦板64とは、交互に軸方向に配列されている。プレッシャプレート65は、プレッシャプレート65とクラッチインナ62の円板外周部との間に、駆動摩擦板63,被駆動摩擦板64を挟んだ状態で、クラッチインナ62に軸方向に摺動自在に支持されている。
図4及び図7に示すように、軸方向に摺動自在のプレッシャプレート65は、クラッチアウタ61の内部において、クラッチインナ62よりも軸方向内側に位置する。クラッチインナ62の円板部においては、周方向に複数穿孔された貫通孔を、プレッシャプレート65から突出した複数の支持ボス65bが貫通している。支持ボス65bの先端には、環状のレリーズフランジ66がボルト67により締結されている。
レリーズフランジ66とクラッチインナ62との間には、皿バネ状のクラッチバネ68が介装されている。このクラッチバネ68によりレリーズフランジ66と一体に、プレッシャプレート65が右方向に付勢される。プレッシャプレート65は、クラッチインナ62との間で駆動摩擦板63,被駆動摩擦板64を挟み込む。これにより、クラッチ60が接続状態に保持され、クラッチアウタ61の回転がクラッチインナ62に、更にはメイン軸51に伝達される。
レリーズフランジ66が左方に押され、クラッチバネ68に抗してプレッシャプレート65が左方に移動すると、プレッシャプレート65とクラッチインナ62との間隔は拡がる。これにより、駆動摩擦板63,被駆動摩擦板64の挟み込みは緩み、クラッチ60の接続状態は解除される。
クラッチ60は、バックトルクリミッタ機構(バックトルク低減機構などとも呼ばれる)を有するスリッパークラッチからなる。バックトルクリミッタ機構は、クラッチ60に、順方向の動力伝達とは逆方向に過大なトルク(バックトルク)が作用した場合に、クラッチ60を接続状態から、接続を緩めた状態(半クラッチ状態)にする機構である。バックトルクリミッタ機構は、公知の構成のものを用いることができる。バックトルクリミッタ機構によれば、シフトダウン時においてバックトルクに起因するショックを低減することができる。
内燃機関21のクランク軸22の回転は、発進クラッチ45及びクラッチ60を経て、変速装置50のメイン軸51に伝達される。
右側クランク軸部22Rの右端に設けられる発進クラッチ45と、メイン軸51の右端に設けられるクラッチ60とは、右側ユニットケースカバー49により右側から覆われる。
なお、左ユニットケース20Lを左方に貫通したカウンタ軸52の端部に嵌着された出力スプロケット13は、スプロケットカバー53によりチェーン15が延出する後方を除いて、左側から覆われる。
図2、図5、図6に示すように、クランク軸22の斜め後下方であってカウンタ軸52及びメイン軸51の斜め前下方には、シフトスピンドル55が配置されている。シフトスピンドル55は、図7に示すように、左右ユニットケース20L,20Rを左右方向に貧通し、更に右側部が右側ユニットケースカバー49の軸受ボス部49aを貫通し、回転自在に軸支されている。
シフトスピンドル55は、ユニットケース20の下部に配置され、図2に示す側面視でステップ部材34の下方に位置する。
このシフトスピンドル55の回動は、クラッチ作動機構70及び変速作動機構80を共に駆動する。クラッチ作動機構70は、クラッチ60を作動してクラッチ60の切断・接続を行う。変速作動機構80は、変速装置50を作動して変速装置50の変速段の切り換えを行う。
クラッチ作動機構70について、図4及び図7に基づいて説明する。
図4,図7に示すように、シフトスピンドル55における右側ユニットケースカバー49の軸受ボス部49aの近傍には、クラッチレバー72が揺動自在に支持されている。シフトスピンドル55の回動に伴ってクラッチレバー72が揺動する構成及び動作については、後で詳述する。
一方、図4,図7、図8に示すように、クラッチ60の環状のレリーズフランジ66の内周面には、ボールベアリング75の外輪が嵌着されている。ボールベアリング75の内輪には、クラッチリフタカム(作動レバー)74の回動中心の基端凹出部74aが嵌入して固着されている。クラッチリフタカム74は、クラッチ60を切断又は接続させるためにリフトさせるカムである。基端凹出部74aは、先端小径部と大径部との2段に亘って凹出している。その先端小径部は、ボールベアリング75の内輪に嵌入されている。このクラッチリフタカム74の回動するガイド穴(係合カム孔)74cに、クラッチレバー72の先端に突設されたローラ73が係合している。
クラッチ調整ボルト76は、右側ユニットケースカバー49の部分であってメイン軸51の延長上の部分に固着されている。クラッチ調整ボルト76は、クラッチリフタカム74の基端凹出部74aの大径部に右側から挿入され、クラッチリフタカム74を回動自在に且つ軸方向に摺動自在に支持している。クラッチリフタカム74の基端凹出部74aの周囲の基端円板部74bには、右側で対向して、クラッチリフタプレート77が、右側ユニットケースカバー49に回動を規制されて、クラッチ調整ボルト76に支持されている。図7、図8に示すように、クラッチリフタプレート77は、変速機(具体的には、右側ユニットケースカバー49の係止穴49b)に対して回り止めされる(回動を規制される)アンカー部77aを有している。係止穴49bは、右側ユニットケースカバー49の内側に設けられている。クラッチリフタカム74は、アンカー部77aにより回動を規制されたクラッチリフタプレート77に対して相対的に回動自在であり、軸方向に移動可能である。クラッチリフタカム74は、クラッチ60のクラッチバネ68のバネ力がボールベアリング75を介して作用することにより、右方向に付勢されている。
クラッチリフタプレート77の回動軸部分に形成された雌ねじ部と、クラッチ調整ボルト76の雄ねじ部との相対位置(螺合位置)を変更することで、クラッチリフタプレート77とクラッチリフタカム74の基端円板部74bとの対向面同士の間隔を増減させることができる。これにより、クラッチリフタ機構74〜79における移動方向の遊びの大きさを増減させることができる。
クラッチリフタカム74の基端円板部74bとクラッチリフタプレート77との互いに対向する面には、周方向に3箇所放射状に、谷状の溝条74v,77vが形成されている。基端円板部74bとクラッチリフタプレート77との間には、リテーナ78により転動自在に保持された3個のレリーズボール79が、クラッチバネ68に付勢された基端円板部74bとクラッチリフタプレート77とに挟まれて介在する。
クラッチ60が接続状態では、基端円板部74bとクラッチリフタプレート77との対向した面における互いの3条の溝条74v,77vは、対向している。3個のレリーズボール79は、それぞれ対向した溝条74v,77vに落ち込んだ状態にある。
そして、変速時にシフトスピンドル55が回動すると、クラッチレバー72が揺動し、ローラ73とガイド穴74cとの係合を介して、クラッチリフタカム74は回動する。これにより、クラッチリフタカム74の基端円板部74bの溝条74vは、クラッチリフタプレート77の溝条77vに対して相対的に回動する。
すると、クラッチリフタカム74の基端円板部74bとクラッチリフタプレート77とに挟持されたレリーズボール79は、転動して互いの溝条74v,77vの傾斜面を円滑に上りながら、クラッチリフタカム74をクラッチ60側(左側)に押圧して移動する。つまり、クラッチリフタカム74は、レリーズボール79を介して、クラッチリフタプレート77と連係する。そのため、ボールベアリング75を介して、レリーズフランジ66はクラッチバネ68の付勢力に抗して左方に移動すると共に、プレッシャプレート65は左方に移動する。これにより、クラッチ60は、接続状態が解除されて切断される。
以上のように、クラッチリフタカム74、ボールベアリング75、クラッチ調整ボルト76、クラッチリフタプレート77、リテーナ78、レリーズボール79等から、クラッチ60に対して移動することによりクラッチ60の切断を行うクラッチリフタ機構74〜79が構成される。
図7に示すように、クラッチ作動機構70は、クラッチ60の外側(右側)で且つ右側ユニットケースカバー49の内側(左側)において、構成されている。一方、変速装置50を作動して変速段の切り換えを行う変速作動機構80は、クラッチ60の内側(左側)において構成される。
シフトフォーク91,92は、変速装置50のメイン軸51上のシフタギア51gs及びカウンタ軸52上のシフタギア52gsを軸方向に移動する。シフトフォーク91,92は、図3に示すように、メイン軸51とカウンタ軸52との間の上方位置において、左右ユニットケース20L,20Rの間に回動自在に架設されたシフトドラム90の回動により、動作する。
図7に示すように、シフトフォーク91,92は、基端部において、シフトドラム90に相対的に回動自在に軸支される。シフトフォーク91,92は、基端部に突設された係合ピン91p、92pを、シフトドラム90の外周面に形成された所定形状のシフト溝に摺動自在に係合している。シフトフォーク91,92の各先端部は、シフタギア51gs,52gsにそれぞれ係合している。従って、シフトドラム90が回動すると、シフト溝に案内されて軸方向に移動する係合ピン91p,92pを介して、シフトフォーク91,92は、軸方向に移動し、変速装置50の変速段の切り換えを行う。
図6及び図7に示すように、シフトドラム90の右端は、外周面において、右ユニットケース20Rに摺動自在に支持されている。シフトドラム90の右側壁90rは、右ユニットケース20Rの軸受開口から右側に露出している。右側壁90rの中央ボス部には、五芒星状の星型プレート93がボルト94により固定されている。右側壁90rのボルト94の周りには、5本の係止ピン95が植設されている。係止ピン95は、右側壁90rと星型プレート93との間に設けられる。
図6に示すように、ストッパアーム96は、支軸96pに軸支され、スプリング98により揺動されて付勢されている。係止ローラ97は、ストッパアーム96の先端に軸支されている。星型プレート93の5つの放射方向に突出した山部を備える外周面には、係止ローラ97が押圧されている。星型プレート93の山部と山部との間の谷に、係止ローラ97が嵌って安定することにより、シフトドラム90は所要位置に位置決めされる。
このシフトドラム90を係止ピン95に作用して回動する機構は、右ユニットケース20Rの右側面に沿って構成されている。図6、図7、図9〜図11に示すように、ギアシフトアーム81は、スリーブ81dにおいて、シフトスピンドル55に相対的に回動(揺動)自在に外嵌されている。マスターアーム83は、ギアシフトアーム81のスリーブ81dに相対的に回動(揺動)自在に外嵌されている。
マスターアーム83は、扇状をした揺動基端部83aと、揺動基端部83aの上方から延出するアーム部83bと、を備える。側面視でギアシフトアーム81に重なる揺動基端部83aには、規制開孔83hが形成されている。規制開孔83hの揺動中心側の辺には、バネ係止片83fが左方に屈曲して形成されている。ギアシフトアーム81は、左方に屈曲して形成されたバネ係止片81fを有する。バネ係止片81fは、マスターアーム83の規制開孔83hを貫通している。
右ユニットケース20Rに右方に向けて突設された規制ピン84は、マスターアーム83の揺動基端部83aの規制開孔83hを貫通している。規制ピン84の先端部は、ギアシフトアーム81に近接している。そして、スリーブ81dの外周に巻回されたシフトリターンスプリング85の両端は、規制ピン84を挟み込むように延出している。ギアシフトアーム81のバネ係止片81fとマスターアーム83のバネ係止片83fとは、規制ピン84の直径と同じ幅長を有し、シフトリターンスプリング85の両端部により規制ピン84と共に挟まれている。
マスターアーム83の上方に延びたアーム部83bの上端近傍には、連結ピン86により、係止バー87が前端を連結されて後方に延びている。係止バー87は、シフトドラム90と星型プレート93との間に植設された5本の係止ピン95の下方を、後方に延出している。
マスターアーム83のアーム部83bの上端と係止バー87との間には、引っ張りスプリング88が掛け渡されている。引っ張りスプリング88は、後方に延出した係止バー87を上方に揺動させて付勢して、下側に位置する係止ピン95に係止バー87を当接させる。係止バー87上側縁には、前後に離間して、係止爪87f,87rが上方に突出している。
シフトスピンドル55に動力が加わらないときは、図6の実線で示すように、シフトリターンスプリング85の両端は、規制ピン84を挟むと同時に、ギアシフトアーム81のバネ係止片81fとマスターアーム83のバネ係止片83fとを挟む。また、シフトスピンドル55,バネ係止片83f,規制ピン84,バネ係止片81fが一列に配列するように、ギアシフトアーム81及びマスターアーム83が位置している。このとき、係止バー87は、引っ張りスプリング88の付勢力により前後の係止爪87f,87rの間の上側縁を、下側に位置する2本の係止ピン95,95に当接する。
シフトスピンドル55に動力が加わり回動すると、ギアシフトアーム81は、シフトリターンスプリング85に抗して揺動する。バネ係止片81fがマスターアーム83に作用すると、マスターアーム83においても、上方に延出したアーム部83bは前後方向に揺動する。すると、マスターアーム83に連結ピン86により連結された係止バー87が、前後方向に移動するので、係止バー87の前後の係止爪87f,87rのいずれかは、係止ピン95に係止して、シフトドラム90を星型プレート93と共に回動する。
星型プレート93の回動によりストッパアーム96の先端の係止ローラ97が星型プレート93の1つの山部頂上を越えたところで、係止ローラ97の押圧力で、星型プレート93は、シフトドラム90と共に係止ローラ97が谷に落ち着くまで、所定角度回動する。
従って、マスターアーム83の揺動による係止バー87の前後方向の移動は、係止爪87f,87rが係止ピン95に係止して星型プレート93を係止ローラ97が星型プレート93の山部頂上を越えるところまででよい。その後は、マスターアーム83,ギアシフトアーム81,シフトスピンドル55が元の状態に戻ってもよい。
シフトドラム90が所定角度回動することで、シフト溝に案内されて軸方向に移動するシフトフォーク91,92は、変速装置50のシフタギア51gs,52gsを移動させて、変速段の切り換えを実行する。
なお、後述するように、変速装置50における変速段の切り換えが実行される前に、クラッチ60は、接続を解除されるため、変速段の切り換えが円滑に行われる。
以上の変速作動機構80とクラッチ作動機構70の双方を駆動させるシフトスピンドル55は、シフトモータ100の駆動が変速動力伝達機構110を介して伝達されて回動する。この変速動力伝達機構110について以下に説明する。
図2に示すように、シフトスピンドル55は、クランク軸22の斜め後下方でカウンタ軸52及びメイン軸51の斜め前下方に配置されており、左右ユニットケース20L,20Rを左右外側に貫通している。
図7に示すように、右ユニットケース20Rを貫通したシフトスピンドル55の右側部は、右側ユニットケースカバー49の軸受ボス部49aを更に貫通している。右側ユニットケースカバー49の軸受ボス部49aを貫通したシフトスピンドル55の右端部には、シフトスピンドル55の右端部の回動角度を検出する角度センサ121が設けられている。
シフトスピンドル55の左ユニットケース20Lを貫通した左側部には、変速動力伝達機構110が設けられている。変速動力伝達機構110は、前後に長尺で左右幅が狭い扁平な変速動力伝達ケース102内に、収容されている。
変速動力伝達ケース102は、左右割りの左側変速動力伝達ケース102Lと右側変速動力伝達ケース102Rとが合体して構成されている。シフトスピンドル55は、変速動力伝達ケース102の前端部分に挿入されて、後方に向けて延設されている。そして、図2に示すように、変速動力伝達ケース102は、クランク軸22の側方のACジェネレータ41を覆うユニットケースカバーであるACGカバー43、及びカウンタ軸52の側方の出力スプロケット13を覆うスプロケットカバー53の下方に配設される。
変速動力伝達機構110においては、シフトモータ100が駆動され、駆動ギア軸100aが回転すると、この回転は、減速ギア111を介して減速されてクランクギア112の回動に伝達される。クランクギア112の回動は、クランクピン114pを介して揺動アーム116を揺動し、揺動アーム116と一体のシフトスピンドル55を回動する。そして、シフトスピンドル55が回動すると、クラッチ作動機構70が変速クラッチ60を作動してクラッチの切断・接続を行うと共に、変速作動機構80が変速装置50を作動して変速段の切換えを行う。
次に、変速装置50のディレイ機構及びロスト機構に係る構成について、図9〜図20を参照しながら説明する。
図9〜図12に示すように、変速装置50は、ディレイ機構及びロスト機構に係る構成として、主として、単一のシフトスピンドル55と、マスターアーム83と、ギアシフトアーム81と、シフトリターンスプリング85と、プリロードストッパカラー56と、蓄力スプリング57と、蓄力カラー71と、クラッチレバー72と、を備える。
変速装置50においては、蓄力スプリング57は、シフトスピンドル55からマスターアーム83へ伝達される回転力の蓄力が可能な蓄力機構として機能する。シフトスピンドル55とクラッチ60との間には、蓄力スプリング57による回転力の蓄力が完了するまでクラッチレバー72によるクラッチ60の切断操作を遅らせるディレイ機構が設けられる。このディレイ機構は、シフトスピンドル55の回転角度の一部を、クラッチレバー72によるクラッチ60の切断操作に寄与させないロスト機構として機能する。
図13に示すように、シフトスピンドル55は、軸方向の中央部に設けられる突き当て部55aと、突き当て部55aに軸方向に隣接して左側に設けられるセレーション部55bと、突き当て部55aを挟んでセレーション部55bとは反対側(右側)に突き当て部55aから間隔をおいて設けられるセレーション部55cと、を備える。
図9〜図12、図14に示すように、マスターアーム83は、シフトスピンドル55に揺動自在に支持されている。マスターアーム83は、シフトスピンドル55の回転力をシフトドラム90に伝達して、前述したようにシフトドラム90を回動させて操作する。マスターアーム83は、揺動基端部83aと、アーム部83bと、規制開孔83hと、バネ係止片83fと、スリーブ83dと、挿通孔83cと、を備える。
揺動基端部83aは、先端側に向かって拡がる扇形状を有する。アーム部83bは、揺動基端部83aの上方から延出する。規制開孔83hは、規制開孔83hにおける側面視でギアシフトアーム81に重なる位置に形成されている。バネ係止片83fは、規制開孔83hの揺動中心側の辺に、左方に屈曲(突出)して形成されている。スリーブ83dは、マスターアーム83の揺動中心に軸方向に沿って延びるように且つバネ係止片83fの突出方向に突出するように、設けられている。挿通孔83cは、マスターアーム83の軸方向に沿ってスリーブ83dの内部を貫通するように設けられている。挿通孔83cには、ギアシフトアーム81のスリーブ81d(後述)が挿通して配置される。
係止バー87は、前述した通りである。
図9〜図12、図15に示すように、ギアシフトアーム81は、マスターアーム83と当接し、シフトスピンドル55に回動自在に支持される。ギアシフトアーム81は、揺動基端部81eと、バネ係止片81fと、ギアシフトアーム側係止部81aと、第1ダボ穴81bと、挿通孔81cと、 スリーブ81dと、を備える。
揺動基端部81eは、先端側に向かって窄まる形状を有する。揺動基端部81eは、マスターアーム83の揺動基端部83aの右側に隣接して配置される。バネ係止片81fは、ギアシフトアーム81の先端側が左方に屈曲(延出)して形成されている。バネ係止片81fは、マスターアーム83の規制開孔83hを右側から左側に貫通している。
スリーブ81dは、ギアシフトアーム81の揺動中心に軸方向に沿って延びるように且つバネ係止片81fの突出方向に突出するように、設けられている。挿通孔81cは、ギアシフトアーム81の軸方向に沿ってスリーブ81dの内部を貫通するように設けられている。挿通孔81cには、シフトスピンドル55が挿通して配置される。
ギアシフトアーム側係止部81aは、揺動基端部81eにおける挿通孔81cから径方向に離間した周辺部分に右側に突出している。ギアシフトアーム側係止部81aは、ギアシフトアーム81を軸方向に右側から左側に視た場合に、左下の領域に設けられ、周方向に円弧状に延びている。第1ダボ穴81bは、 プリロードストッパカラー56の第1ダボ歯56a(後述)と連係する。第1ダボ穴81bは、揺動基端部81eにおける挿通孔81cに隣接した部分に左側に凹んで形成されている。第1ダボ穴81bは、ギアシフトアーム81を軸方向に右側から左側に視た場合に、右下の領域に設けられ、周方向に円弧状に延びており、その中心角は約60度である。
プリロードストッパカラー56は、セレーション部55bに嵌合されることで、シフトスピンドル55と一体に回転する。図9〜図12、図16に示すように、プリロードストッパカラー56は、カラー本体56bと、第1ダボ歯56aと、内周セレーション部56cと、を備える。カラー本体56bは、略円筒形状を有する。第1ダボ歯56aは、カラー本体56bの左端面から左側に突出している。第1ダボ歯56aは、周方向に円弧状に延びており、その中心角は約45度である。
第1ダボ歯56aの中心角は、第1ダボ穴81bの中心角度よりも小さい。つまり、第1ダボ歯56aと第1ダボ穴81bとの間には、周方向に、円弧状の遊び(隙間、ガタ)が存在している。
内周セレーション部56cは、カラー本体56bの内周部に設けられており、シフトスピンドル55のセレーション部55bにセレーション嵌合する。内周セレーション部56cがシフトスピンドル55のセレーション部55bにセレーション嵌合した状態において、カラー本体56bの右端面は、シフトスピンドル55の突き当て部55aに当接する。
蓄力スプリング57は、シフトスピンドル55とマスターアーム83との間で、シフトスピンドル55の回転力を蓄力しながらマスターアーム83を揺動方向に付勢する。本明細書において、「回転力を蓄力する」ことには、適宜に「回転アングル(回動アングル)を蓄える」ことを含むものとする。蓄力スプリング57は、シフトスピンドル55からマスターアーム83へ伝達される回転力の蓄力が可能である。
図9、図11、図17に示すように、蓄力スプリング57は、コイル状であり、シフトスピンドル55の周面に直接被さるように設けられる。「直接被さる」とは、蓄力機構としての蓄力スプリング57とシフトスピンドル55との間に、他の部材が介在していないことである。
蓄力スプリング57は、その一端部57aがギアシフトアーム側係止部81aに係止されると共に、その他端部57bが蓄力カラー71の蓄力カラー側係止部71aに係止される。蓄力スプリング57は、シフトドラム90をシフトアップ側に回転させる方向の付勢力を発現する。
以上のように、ギアシフトアーム側係止部81a及び蓄力カラー側係止部71aは、シフトスピンドル55の軸方向と平行に延びるボスから形成される。
図9、図11、図18に示すように、蓄力カラー71は、ギアシフトアーム81に対してクラッチレバー72の側に配され、シフトスピンドル55に固定されて一体に回転(回動)する。
蓄力カラー71は、カラー本体71dと、蓄力カラー側係止部71aと、第2ダボ歯71bと、内周セレーション部71cと、を備える。
カラー本体71dは、略円筒形状を有する。蓄力カラー側係止部71aは、カラー本体71dの左端面から左側に突出している。蓄力カラー側係止部71aは、周方向に円弧状に延びており、その中心角は約60度である。
第2ダボ歯71bは、カラー本体71dの右左端面から右側に突出しており、クラッチレバー72の第2ダボ穴72b(後述)と連係する。第2ダボ歯71bは、周方向に円弧状に延びており、その中心角は約30度である。第2ダボ歯71bは、周方向に離間して、3個設けられている。周方向に隣接する第2ダボ歯71b同士の角度は、約90度である。蓄力カラー71を軸方向に視た場合に、蓄力カラー側係止部71aと3個の第2ダボ歯71bとは、重ならない位置に配置している。
内周セレーション部71cは、カラー本体71dの内周部に設けられており、シフトスピンドル55のセレーション部55cにセレーション嵌合する。
なお、本実施形態においては、蓄力カラー71は、一体に構成されているが、これに制限されない。例えば、蓄力カラー71は、図9に2点鎖線Dで示すような位置において蓄力カラー側係止部71aの側と第2ダボ歯71bの側とに、軸方向に分割された別体の部材から構成することもできる。
図9、図19、図20に示すように、クラッチレバー72は、シフトスピンドル55に回動自在に支持されており、クラッチ60を操作する。クラッチレバー72は、基端部72dと、レバー部72eと、壁部72aと、第2ダボ穴72bと、挿通孔72cと、を備える。
レバー部72eは、基端部72dから延びている。基端部72dの左端部側には、3個の第2ダボ穴72bと、3個の壁部72aと、が設けられている。
3個の第2ダボ穴72bは、蓄力カラー71における3個の第2ダボ歯71bに対応する位置に配置されている。第2ダボ穴72bには、第2ダボ歯71bが挿入されて配置される。つまり、ダボ歯71bとダボ穴72bとは互いに連係する。
第2ダボ穴72bは、周方向に円弧状に延びており、その中心角は約40度であり、第2ダボ歯71bの中心角度よりも大きい。つまり、第2ダボ歯71bと第2ダボ穴72bとの間には、周方向に、円弧状の遊び(隙間、ガタ)が存在している。この周方向の遊び(隙間、ガタ)によって、前記ディレイ機構が構成される。
壁部72aは、周方向に隣接する第2ダボ穴72bの間に設けられる。
挿通孔72cは、クラッチレバー72の軸方向に沿って基端部72dの内部を貫通するように設けられている。挿通孔72cには、シフトスピンドル55が挿通して配置される。
また、図7、図9に示すように、ギアシフトアーム側係止部81a及び蓄力カラー側係止部71aは、シフトスピンドル55の軸方向に対して、クラッチ60とは反対側に配置される。クラッチレバー72とマスターアーム83とは、シフトスピンドル55の軸方向に、クラッチ60を挟んで対向して配置している。変速動作において、マスターアーム83とクラッチレバー72とは互いに連動している。この連動動作の詳細については、後に詳述する。
次に、変速装置50による変速動作におけるマスターアーム83とクラッチレバー72との連動動作について、図21〜図27を参照しながら説明する。
図21は、変速動作に伴う各構成部材の位置関係の変化などを示す図で、(a)は主に蓄力スプリング57よりもマスターアーム83の側の位置関係を示す図、(b)は主に蓄力スプリング57よりもクラッチレバー72の側の位置関係を示す図である。図22は、(a)及び(b)は、図21よりも変速動作が進行した状態を示す図である。図23は、(a)及び(b)は、図22よりも変速動作が進行した状態を示す図である。図24は、(a)及び(b)は、図23よりも変速動作が進行した状態を示す図である。図25は、(a)及び(b)は、図24よりも変速動作が進行した状態を示す図である。図26は、(a)及び(b)は、図25よりも変速動作が進行した状態を示す図である。図27は、変速動作の経過に伴うシフトスピンドルの角度、蓄力スプリングの角度、クラッチリフト量、シフトドラムの角度などの関係を示す図である。
ここでは、シフトアップ時の変速動作について説明する。図21は、変速動作の開始前の状態を示しており、図27における「開始」に対応する状態である。
なお、図27では、変速動作の経過に伴うシフトスピンドル55の角度(Ang)、蓄力スプリング57の角度(Ang)、クラッチリフト量、シフトドラム90の角度(Ang)などの変化及びそれらの関係を示している。
図21(a)に示すように、変速動作の開始前においては、ギアシフトアーム81のバネ係止片81fとマスターアーム83の規制開孔83hとの間には、シフトアップ方向SUに隙間(遊び)が存在している。プリロードストッパカラー56の第1ダボ歯56aとギアシフトアーム81の第1ダボ穴81bとの間には、シフトアップ方向SUに隙間(遊び)が存在している。蓄力スプリング57の一端部57aとギアシフトアーム81のギアシフトアーム側係止部81aとの間には、シフトアップ方向SUに隙間(遊び)が存在していない。なお、シフトアップ方向SUは、図21〜図26において、右回り方向である。
また、図21(b)に示すように、蓄力カラー71の第2ダボ歯71bとクラッチレバー72の第2ダボ穴72bとの間には、シフトアップ方向SUに隙間(遊び)が存在している。蓄力カラー71の蓄力カラー側係止部71aと蓄力スプリング57の他端部57bとの間には、シフトアップ方向SUに隙間(遊び)が存在していない。
図21に示す変速動作の開始前の状態からシフトスピンドル55の回動が開始すると、図22に示す状態となる。図22は、図27における[1]に対応する状態である。
シフトスピンドル55が回動すると、これと一体の蓄力カラー71も回動する。図21に示す変速動作の開始前の状態において、蓄力スプリング57は、蓄力カラー71及びギアシフトアーム81と当接している。そのため、図22に示す状態において、蓄力カラー71が回動すると、蓄力カラー71に当接している蓄力スプリング57も一体に回動し、直ちに、蓄力スプリング57に当接しているギアシフトアーム81も回動する。
図22(a)に示すように、ギアシフトアーム81がシフトアップ方向SUに回動し、バネ係止片81fがマスターアーム83の規制開孔83hに当接する。また、(シフトスピンドル55と一体の)プリロードストッパカラー56は、シフトアップ方向SUに回動し、プリロードストッパカラー56の第1ダボ歯56aは、ギアシフトアーム81の第1ダボ穴81bの内部を周方向に移動する。図22(b)に示すように、(シフトスピンドル55と一体の)蓄力カラー71は、シフトアップ方向SUに回動し、蓄力カラー側係止部71a及び他端部57bを介して蓄力スプリング57をシフトアップ方向SUに回動させようとする。
一方、ギアシフトアーム81は、クラッチ60が接続状態にあり、駆動力が生じている状態では、回動しないように構成されている。つまり、ギアシフトアーム側係止部81aは移動しない。そのため、ギアシフトアーム側係止部81aに一端部57aが係止されている蓄力スプリング57において、蓄力が開始される。
なお、図22(a)において、プリロードストッパカラー56の回動角度は僅かであるため、ほとんど表れていない。図22(b)において、蓄力カラー71の回動角度は僅かであるため、ほとんど表れていない。
図22に示す状態からシフトスピンドル55の回動が進行すると、図23に示す状態となる。図23は、図27における[1]〜[2]の間に対応する状態である。
図23(a)に示すように、プリロードストッパカラー56は、図22(a)に示す位置よりも更にシフトアップ方向SUに回動し、プリロードストッパカラー56の第1ダボ歯56aは、ギアシフトアーム81の第1ダボ穴81bの内部を、図22(a)に示す位置よりも更に周方向に移動する。その結果、蓄力スプリング57において蓄力が進行する。
また、図23(b)に示すように、蓄力カラー71の第2ダボ歯71bは、クラッチレバー72の第2ダボ穴72bとの隙間(遊び)がなくなるまで、周方向に移動する。
図23に示す状態からシフトスピンドル55の回動が進行すると、図24に示す状態となる。図24は、図27における[2]〜[3]の間に対応する状態である。
図24(a)に示すように、プリロードストッパカラー56は、図23(a)に示す位置よりも更にシフトアップ方向SUに回動し、プリロードストッパカラー56の第1ダボ歯56aは、ギアシフトアーム81の第1ダボ穴81bの内部を、図23(a)に示す位置よりも更に周方向に移動する。その結果、蓄力スプリング57において蓄力が進行し、マスターアーム83を回動させるのに十分な量の蓄力が完了する。
また、図24(b)に示すように、クラッチレバー72の第2ダボ穴72bとの隙間(遊び)がなくなると、クラッチレバー72の回動が開始され、その結果、ローラ73、クラッチリフタカム74等を介して、クラッチ60の切断(クラッチリフト)が開始される。
図24に示す状態からシフトスピンドル55の回動が進行すると、図25に示す状態となる。図25は、図27における[3]に対応する状態である。
図25(a)に示すように、プリロードストッパカラー56は、図24(a)に示す位置よりも更にシフトアップ方向SUに回動し、プリロードストッパカラー56の第1ダボ歯56aは、ギアシフトアーム81の第1ダボ穴81bの内部を、図24(a)に示す位置よりも更に周方向に移動する。その結果、第1ダボ歯56aと第1ダボ穴81bとの間の周方向の隙間(遊び)がなくなるまで、蓄力スプリング57において蓄力が進行し、マスターアーム83を回動させるのに十分な量を超える量の蓄力が行われる。
また、クラッチ60が十分に切断されると、駆動力は、減少し、抜けた状態となる。その結果、シフトドラム90の回転及びギアシフトアーム81の回動が可能となる。
図25に示す状態からシフトスピンドル55の回動が進行すると、図26に示す状態となる。図26は、図27における[3]〜[4]の間に対応する状態である。
駆動力が抜けた状態になると、蓄力スプリング57による蓄力が開放され、この蓄力により、マスターアーム83は直ちに回動する。マスターアーム83の回動によりシフトドラム90が回転し、シフトアップが行われる。シフトドラム90の回転角度が所定の反転開始閾値を超えると、シフトスピンドル55は反転し始める(シフトダウン方向に回転を始める)。また、マスターアーム83の回動は、規制開孔83hに規制ピン84が当接すると、停止する。
以上のようにして、ディレイ機構は、蓄力スプリング57による蓄力が完了するまでクラッチレバー72によるクラッチ60の切断操作を遅らせることができる。また、ディレイ機構は、シフトスピンドル55の回転角度の一部を、クラッチレバー72によるクラッチ60の切断操作に寄与させないロスト機構として機能することができる。
また、クラッチリフタプレート77とクラッチ調整ボルト76との相対位置を変更することで、クラッチリフタプレート77とクラッチリフタカム74の基端円板部74bとの対向面同士の間隔を増減させることができる。これにより、クラッチリフタ機構74〜79における移動方向の遊びの大きさを増減させることができる。例えば、この遊びが大きければ、遊びが小さい場合と比べて、クラッチ60を切断するのに要するクラッチリフタ機構74〜79の移動量が大きくなる。これを利用して、ディレイ機構は、クラッチ60に対して移動することによりクラッチ60の切断を行うクラッチリフタ機構74〜79における移動方向の遊びによって、構成されることもできる。
本実施形態の変速装置50によれば、例えば、以下のような効果を奏する。
本実施形態の変速装置50は、シフトスピンドル55の回転力をシフトドラム90に伝達してシフトドラム90を回動させて操作するマスターアーム83と、クラッチ60を操作するクラッチレバー72と、シフトスピンドル55からマスターアーム83へ伝達される回転力の蓄力が可能な蓄力機構としての蓄力スプリング57と、前記蓄力が完了するまでクラッチレバー72によるクラッチ60の切断操作を遅らせるディレイ機構と、を備える。
そのため、本実施形態の変速装置50によれば、クラッチ60の切断操作よりも先に蓄力を完了させることができるため、変速動作に必要な蓄力の完了後に、クラッチ60が切断されることを一層確実に実現できる。従って、クラッチ60が切断された後に迅速な変速を、より確実に実行することができる。
本実施形態の変速装置50においては、前記ディレイ機構は、シフトスピンドル55の回転角度の一部を、クラッチレバー72によるクラッチ60の切断操作に寄与させないロスト機構として機能する。そのため、本実施形態の変速装置50によれば、ロスト機構によって容易にクラッチ60の切断操作よりも先に蓄力を完了させることを実行することができる。
本実施形態の変速装置50においては、クラッチレバー72及びディレイ部材としての蓄力カラー71は、互いに連係する第2ダボ歯71b及び第2ダボ穴72bを有し、前記ディレイ機構は、第2ダボ歯71bと第2ダボ穴72bとの間の周方向の隙間によって構成される。そのため、本実施形態の変速装置50によれば、ディレイ機構の構成をコンパクトでかつ簡素にすることができる。
本実施形態の変速装置50においては、前記ディレイ機構は、クラッチ60に対して移動することによりクラッチ60の切断を行うクラッチリフタ部材としてのクラッチリフタプレート77における移動方向の遊びによって、構成される。そのため、本実施形態の変速装置50によれば、ディレイ機構の構成を簡素にすることができる。
本実施形態の変速装置50においては、シフトスピンドル55と蓄力カラー71とは一体に回動する。そのため、シフトスピンドル55が回動すると、蓄力カラー71、蓄力スプリング57等を介して、マスターアーム83を速やかに回動させることができる。
本実施形態の変速装置50においては、蓄力機構としての蓄力スプリング57は、シフトスピンドル55の周面に直接被さるように設けられる。そのため、蓄力機構をコンパクトに構成することができる。
次に、本発明の自動二輪車の変形例(変形例1〜変形例5)について、図面を参照しながら説明する。ディレイ機構は、前記実施形態のように、シフトスピンドル55の回転角度の一部を、クラッチレバー72によるクラッチ60の切断操作に寄与させないロスト機構として機能するものに制限されない。なお、変形例の説明にあたって、前記実施形態と同一の構成要件については同一の符号を付し、その説明を省略又は簡略化する。
〔変形例1〕
図28(a)〜(c)は、変形例1に係るディレイ機構の要部の構成及び動作を示す右側面図である。変形例1においては、図28(a)〜(c)に示すように、クラッチレバー72は、クラッチリフタカム74に、クラッチリフタカム74に設けられたガイド穴74cを介して連結されている。また、ディレイ機構は、ガイド穴74cの遊び穴部74dとして設けられる。
詳述すると、ガイド穴74cには、クラッチレバー72のローラ73が配置されて、係合している。屈曲した長穴状のガイド穴74cは、その中央部に遊び穴部74dを有する。遊び穴部74dは、クラッチレバー72の回動方向(ローラ73の移動方向)R1に沿って延びている。そのため、ローラ73が遊び穴部74dに位置している状態においてクラッチレバー72が回動しても、ローラ73は、遊び穴部74dが延びる方向に移動するだけであり、クラッチリフタカム74は、全く又はほとんど回動しない。
一方、ガイド穴74cにおける遊び穴部74dに隣接する部分は、クラッチレバー72の回動方向(ローラ73の移動方向)R1とは異なる方向に、延びている。そのため、ローラ73が当該隣接する部分に位置している状態においてクラッチレバー72が回動すると、それに連動して、ローラ73は、当該隣接する部分を押圧し、クラッチリフタカム74は、直ちに回動する。
次に、変形例1におけるクラッチリフタカム74の動作について説明する。図28(a)に示すように、クラッチレバー72のローラ73は、遊び穴部74dに位置している。図28(a)及び(b)に示すように、クラッチレバー72が回動方向R1に回動すると、ローラ73は、遊び穴部74dが延びる方向に移動する。ローラ73が遊び穴部74dの端部に到達する迄の間において、クラッチリフタカム74は、全く又はほとんど回動しない。つまり、ディレイ機能が働いている。
図28(b)に示すローラ73が遊び穴部74dの端部に到達した状態から、更にクラッチレバー72が回動すると、ローラ73は、ガイド穴74cを押圧し始める。そのため、図28(c)に示すように、クラッチリフタカム74は回動方向R2に回動し、延いては、クラッチリフタプレート77(図28では図示省略)も回動方向R2に回動する。これにより、クラッチ60の切断(クラッチリフト)が行われる。
変形例1によれば、ディレイ機構は、ガイド穴74cの遊び穴部74dとして設けられる。そのため、ガイド穴74cのサイズを大きくすることができる(特にガイド長を長くすることができる)。従って、ディレイ機構のディレイ機能の精度の設定及び管理を容易に行うことができる。
〔変形例2〕
図29は、変形例2に係るディレイ機構の要部を示す図であり、(a)は右側面図、(b)は(a)に示すA−A線断面図である。変形例2においては、図29(a)に示すように、クラッチレバー72は、クラッチリフタカム74に連結されている。なお、変形例2におけるクラッチリフタカム74の屈曲した長穴状のガイド穴74cは、変形例1とは異なり、遊び穴部74dを有していない。
クラッチリフタカム74は、複数(3個)の谷状の斜板部としての溝条74vを有する。図29(a)及び(b)に示すように、溝条74vは、ボール状部材としての3個のレリーズボール79を介して、クラッチリフタプレート77と連係する。溝条74vの谷部には、クラッチリフタカム74の回動方向R2に延びる平坦部74wが、形成されている。
また、クラッチリフタプレート77は、クラッチリフタカム74の溝条74vに対向する面に、複数(3個)の谷状の溝条77vを有する。図29(b)に示すように、溝条77vの谷部には、クラッチリフタカム74の回動方向R2に延びる平坦部77wが、形成されている。
つまり、クラッチリフタカム74の溝条74vとクラッチリフタプレート77の溝条77vとは、同様の谷形状を有する。ディレイ機構は、クラッチリフタカム74の溝条74vに形成された平坦部74w及びクラッチリフタプレート77の溝条77vに形成された平坦部77wとして設けられる。
なお、変形例2においてクラッチリフタプレート77の平坦部77wは設けられていなくてもよい。
次に、変形例2におけるクラッチリフタカム74の動作について説明する。図29(b)に示すように、レリーズボール79は、クラッチリフタカム74の溝条74vに形成された平坦部74wと、クラッチリフタプレート77の溝条77vに形成された平坦部77wとに挟まれて、配置されている。クラッチレバー72が回動方向R1に回動すると、レリーズボール79は、平坦部74w及び平坦部77wが延びる方向に移動する。レリーズボール79が平坦部74w又は平坦部77wの端部に到達する迄の間において、クラッチリフタカム74は、全く又はほとんど回動しない。つまり、ディレイ機能が働いている。
レリーズボール79が平坦部74w及び平坦部77wの端部に到達した状態から、更にクラッチレバー72が回動すると、レリーズボール79は、クラッチリフタプレート77の溝条77vを押圧し始める。そのため、クラッチリフタプレート77は、回動方向R2に回動する。これにより、クラッチ60の切断(クラッチリフト)が行われる。
変形例2によれば、ディレイ機構は、谷状の溝条74vに形成された平坦部74w及び谷状の溝条77vに形成された平坦部77wとして設けられる。そのため、ディレイ機構を簡素な構成で実現することができる。
〔変形例3〕
図30(a)〜(c)は、変形例3に係るディレイ機構の要部の構成及び動作を示す右側面図である。図31は、変形例3において、右側ユニットケースカバー49の内側を左側から視た図である。
変形例3においては、図30に示すように、クラッチレバー72は、クラッチリフタカム74に連結されている。クラッチリフタカム74は、ボール状部材としての3個のレリーズボール79を介してクラッチリフタプレート77と連係している。図7、図8、図30、図31に示すように、クラッチリフタプレート77は、変速機に対して回り止めされるアンカー部77aを有している。ディレイ機構は、アンカー部77aを係止する楕円状の係止穴49bとして設けられる。
図30に示すように、アンカー部77aは、クラッチリフタプレート77の上部に設けられている。アンカー部77aは、クラッチレバー72の回動方向R1の両端部にそれぞれに、一対の突き当て部77b,77bを有する。
図31に示すように、楕円状の係止穴49bは、右側ユニットケースカバー49の左側の内面に設けられている。係止穴49bは、クラッチレバー72の回動方向R1に長い楕円状となっている。なお、図31に示す仮想線49cは、係止穴が真円状の場合の形状を示す仮想線である。
次に、変形例3におけるクラッチリフタカム74の動作について説明する。図30(a)及び(b)に示すように、クラッチレバー72が回動方向R1に回動すると、クラッチリフタカム74は回動方向R2に回動しようとすると共に、レリーズボール79を介して、クラッチリフタプレート77も回動方向R2に回動しようとする。しかし、係止穴49bがクラッチレバー72の回動方向R1に長い楕円状となっているため、クラッチリフタプレート77のアンカー部77aは、突き当て部77bが係止穴49bに突き当たる迄、移動方向R3に移動する。その後、クラッチレバー72が回動方向R1に回動すると、アンカー部77aを回動中心として、クラッチリフタプレート77は、回動方向R2に回動する。つまり、ディレイ機能が働いている。そして、クラッチ60の切断(クラッチリフト)が行われる。
変形例3によれば、クラッチリフタプレート77は、変速機に対して回り止めされるアンカー部77aを有し、ディレイ機構は、アンカー部77aを係止する楕円状の係止穴46bとして設けられる。そのため、ディレイ機構を簡素な構成で実現することができる。
〔変形例4〕
図32(a)〜(c)は、変形例4に係るディレイ機構の要部の構成及び動作を示す右側面図である。変形例4においては、図32(a)〜(c)に示すように、クラッチレバー72は、クラッチリフタカム74と、クラッチリフタカム74に設けられたカム面74eで連係されている。ディレイ機構は、カム面74eの遊びカム部74fとして設けられる。
クラッチリフタカム74は、その下端部にカム面74eを有する。カム面74eは、その中央部に遊びカム部74fを有する。遊びカム部74fは、クラッチレバー72の回動方向R1に沿って延びている。一方、クラッチレバー72の頂部72fは、カム面74eに当接して押圧する。クラッチレバー72の頂部72fが遊びカム部74fに位置している状態においてクラッチレバー72が回動しても、頂部72fは、遊びカム部74fが延びる方向に移動するだけであり、クラッチリフタカム74は、全く又はほとんど回動しない。
一方、カム面74eにおける遊びカム部74fに隣接する部分は、クラッチレバー72の回動方向R1とは異なる方向に、延びている。そのため、クラッチレバー72の頂部72fが当該隣接する部分に位置している状態においてクラッチレバー72が回動すると、それに連動して、クラッチレバー72の頂部72fは、当該隣接する部分を押圧し、クラッチリフタカム74は、直ちに回動する。
次に、変形例4におけるクラッチリフタカム74の動作について説明する。図32(a)に示すように、クラッチレバー72の頂部72fは、遊びカム部74fに位置している。図32(a)及び(b)に示すように、クラッチレバー72が回動方向R1に回動すると、頂部72fは、遊びカム部74fが延びる方向に移動する。クラッチレバー72の頂部72fが遊びカム部74fの端部に到達する迄の間において、クラッチリフタカム74は、全く又はほとんど回動しない。つまり、ディレイ機能が働いている。
図32(b)に示すクラッチレバー72の頂部72fが遊びカム部74fの端部に到達した状態から、クラッチレバー72が更に回動すると、頂部72fは、カム面74eを押圧し始める。そのため、図32(c)に示すように、クラッチリフタカム74は、回動方向R2に回動し、延いては、クラッチリフタプレート77も、回動方向R2に回動する。これにより、クラッチ60の切断(クラッチリフト)が行われる。
変形例4によれば、クラッチリフタカム74にカム面74eが設けられ、ディレイ機構は、カム面74eの遊びカム部74fとして設けられる。そのため、ディレイ機構を簡素な構成で実現することができる。
〔変形例5〕
図33(a)〜(c)は、変形例5に係るディレイ機構の要部の構成及び動作を示す右側面図である。変形例5においては、図33(a)〜(c)に示すように、クラッチレバー72は、複数のアーム部材721,722(第1アーム部材721、第2アーム部材722)が連結されたリンク機構として設けられている。リンク機構における一方の第1アーム部材721は、他方の第2アーム部材722の回動角度を制限するストッパ721aを有している。ディレイ機構は、リンク機構における第1アーム部材721、第2アーム部材722同士が回動可能な範囲として設けられる。
クラッチリフタカム74は、その下端部にカム面74eを有する。カム面74eは、その中央部に円弧状凹部74gを有する。
クラッチレバー72は、クラッチ60の側の第1アーム部材721と、シフトスピンドル55の側の第2アーム部材722とがリンク結合されて、構成されている。第1アーム部材721は、第1アーム部材721と第2アーム部材722との結合部分に、ストッパ721a,721aを有している。ストッパ721a,721aは、クラッチレバー72の回動方向R1に一対設けられている。ストッパ721aは、第2アーム部材722の側面に突き当たる突き当て部として機能し、第2アーム部材722の回動角度を制限する。
クラッチレバー72(第1アーム部材721)の頂部72fは、カム面74e(円弧状凹部74gを含む)に当接して押圧する。クラッチレバー72の頂部72fが円弧状凹部74gに位置している状態においてクラッチレバー72が回動しても、頂部72fは、円弧状凹部74gの内側を回転するだけであり、クラッチリフタカム74は、全く又はほとんど回動しない。
一方、カム面74eにおける円弧状凹部74gに隣接する部分は、略直線状に延びている。そのため、クラッチレバー72の頂部72fが当該隣接する部分に位置している状態においてクラッチレバー72が回動すると、それに連動して、クラッチレバー72の頂部72fは、当該隣接する部分を押圧し、クラッチリフタカム74は、回動方向R2に回動する。
次に、変形例5におけるクラッチリフタカム74の動作について説明する。図33(a)に示すように、クラッチレバー72の頂部72fは、円弧状凹部74gに位置している。図33(a)及び(b)に示すように、クラッチレバー72の第2アーム部材722が回動すると、第2アーム部材722は、第1アーム部材721のストッパ721aに突き当たる迄、回動する。この間、クラッチリフタカム74は、全く又はほとんど回動しない。つまり、ディレイ機能が働いている。
図33(b)に示す第2アーム部材722が第1アーム部材721のストッパ721aに突き当たった状態から、更に第2アーム部材722が回動すると、頂部72fは、カム面74eを押圧し始める。そのため、図33(c)に示すように、クラッチリフタカム74は、回動方向R2に回動し、延いては、クラッチリフタプレート77も、回動方向R2に回動する。これにより、クラッチ60の切断(クラッチリフト)が行われる。
変形例5によれば、クラッチレバー72は、複数のアーム部材721,722が連結されたリンク機構として設けられ、ディレイ機構は、リンク機構におけるアーム部材721,722同士が回動可能な範囲として設けられる。クラッチ60の側にディレイ機構を設ける場合には、一般的に、クラッチリフタカム74等にサイズの大きなディレイを実現するための構成を設ける必要がある。これに対して、クラッチレバー72をリンク機構で構成し、ディレイ機構をリンク機構におけるアーム部材721,722同士が回動可能な範囲として設けることで、ディレイ機構をコンパクトに設定することができる。
ところで、ギア列52Gの複数の歯車は、ドグ歯(凸部)及びドグ孔(凹部)を有し、ドグ歯とドグ孔とが軸方向で噛み合うことにより同軸上で隣接する歯車間で回転駆動力の伝達を行うドグクラッチからなる。この場合において、変速操作時に、ドグ歯がドグ孔に入らない「ドグ当たり」状態が発生し、シフトドラム90が、間欠的な所定の変速段位置に位置しない可能性がある。
また、シフトドラム90に対しては、その回動角度を検出する角度センサ(ポジションセンサ)が設けられている。検出された回動角度に基づいて、シフトドラム90がどの変速段位置に位置するか、又は、ドグ当たり等によりいずれの変速段位置にも位置しないか、つまり、シフトドラム90における変速動作が正常に行われたか否かを判定することができる。
図34は、図27に対応する図であり、ドグ当たりが発生した場合におけるシフトスピンドルの制御を説明するための図である。ここでは、1速から2速に変速される場合について説明する。変速が正常に行われた場合には、図27の[4]に示すように、シフトドラム90の回動角度は、速やかに変更される。一方、変速の途中でドグ当たりが発生した場合には、図34に示すように、シフトドラム90の回動角度は、1速に対応する回動角度と2速に対応する回動角度との間の角度となり、その角度が継続する。従って、これをもって、ドグ当たりが発生したものと判定する。
そこで、ドグ当たり(いずれの変速段位置にも位置しない)が判定された場合には、図34の[12]に示す範囲において、以下の制御(対応)を行う。
ドグ当たりが判定された場合(図13の[11]参照)には、シフトモータ100を逆転状態から正転させる。クラッチリフト量がクラッチバネ有効範囲の付近になったら、シフトスピンドル55の作動を停止させる。その後、徐々にクラッチ60を接続させて、シフトドラム90が回転するまで(シフトドラム90の位置が2速の位置に移動するまで)待機する。シフトドラム90が回転したシフトスピンドル55の角度を記憶し(図34の[13]参照)、記憶した当該角度に基づいて、シフトモータ100の正転開始のタイミングを補正する。
また、クラッチ60を切断・接続させるためのアクチュエータに対して、油温を測定する油温センサが設けられている。油温センサにより測定される油温の高い場合には、アクチュエータの作動量を小さくし、一方、油温センサにより測定される油温の低い場合には、アクチュエータの作動量を大きくすることが好ましい。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に制限されることなく、種々の形態で実施することができる。
例えば、本発明の変速装置が適用される車両は、自動二輪車に制限されず、二輪車以外の鞍乗型車両でもよい。
1 自動二輪車(車両)
49b 楕円状の係止穴
50 変速装置
55 シフトスピンドル
56 プリロードストッパカラー
56a 第1ダボ歯
57 蓄力スプリング(蓄力機構)
57a 一端部
57b 他端部
60 クラッチ
71 蓄力カラー(ディレイ部材)
71a 蓄力カラー側係止部
71b 第2ダボ歯
72 クラッチレバー
72b 第2ダボ穴
721 一方のアーム部材
721a ストッパ
722 他方のアーム部材
73 ローラ
74 クラッチリフタカム(クラッチリフタ機構)
74c ガイド穴
74d 遊び穴部
74e カム面
74f 遊びカム部
74v 溝条(斜板部)
74w 平坦部
75 ボールベアリング(クラッチリフタ機構)
76 クラッチ調整ボルト(クラッチリフタ機構)
77 クラッチリフタプレート(クラッチリフタ機構)
77a アンカー部
78 リテーナ(クラッチリフタ機構)
79 レリーズボール(ボール状部材、クラッチリフタ機構)
81 ギアシフトアーム
81a ギアシフトアーム側係止部
81b 第1ダボ穴
81f バネ係止片
83 マスターアーム
83f バネ係止片
85 シフトリターンスプリング
86 連結ピン
87 係止バー
90 シフトドラム

Claims (11)

  1. 単一のシフトスピンドル(55)と、
    前記シフトスピンドル(55)に設けられ、前記シフトスピンドル(55)の回転力を変速機のシフトドラム(90)に伝達して前記シフトドラム(90)を回動させて操作するマスターアーム(83)と、
    前記シフトスピンドル(55)に設けられ、クラッチ(60)を操作するクラッチレバー(72)と、
    前記シフトスピンドル(55)から前記マスターアーム(83)へ伝達される回転力の蓄力が可能な蓄力機構(57)と、を備え、
    前記マスターアーム(83)と前記クラッチレバー(72)とは互いに連動する、車両の変速装置(50)において、
    前記シフトスピンドル(55)と前記クラッチ(60)との間で、前記蓄力が完了するまで前記クラッチレバー(72)による前記クラッチ(60)の切断操作を遅らせるディレイ機構を更に備える
    ことを特徴とする車両の変速装置(50)。
  2. 前記ディレイ機構は、前記シフトスピンドル(55)の回転角度の一部を、前記クラッチレバー(72)による前記クラッチ(60)の切断操作に寄与させないロスト機構として機能する
    請求項1に記載の車両の変速装置(50)。
  3. 前記クラッチレバー(72)は、前記シフトスピンドル(55)に回動自在に支持されており、
    前記シフトスピンドル(55)に、ディレイ部材(71)が固定されており、
    前記クラッチレバー(72)及び前記ディレイ部材(71)は、互いに連係するダボ歯(71b)及びダボ穴(72b)を有し、
    前記ディレイ機構は、前記ダボ歯(71b)と前記ダボ穴(72b)との間の周方向の隙間によって構成される
    請求項2に記載の車両の変速装置(50)。
  4. 前記ディレイ機構は、前記クラッチ(60)に対して移動することにより前記クラッチ(60)の切断を行うクラッチリフタ機構(74〜79)における移動方向の遊びによって、構成される
    請求項2に記載の車両の変速装置(50)。
  5. 前記シフトスピンドル(55)と前記ディレイ部材(71)とは一体に回動する
    請求項3に記載の車両の変速装置(50)。
  6. 前記蓄力機構(57)は、コイル状のスプリングからなり、前記シフトスピンドル(55)の周面に直接被さるように設けられる
    請求項1に記載の車両の変速装置(50)。
  7. 前記クラッチレバー(72)は、前記クラッチ(60)を切断又は接続させるためにリフトさせるクラッチリフタカム74に、前記クラッチリフタカム(74)に設けられたガイド穴74cを介して連結されており、
    前記ディレイ機構は、当該ガイド穴(74c)の遊び穴部74dとして設けられる
    請求項2に記載の車両の変速装置(50)。
  8. 前記クラッチレバー(72)は、前記クラッチ(60)を切断又は接続させるためにリフトさせるクラッチリフタカム(74)に連結されており、
    当該クラッチリフタカム(74)は、ボール状部材79を介してクラッチリフタプレート(77)と連係する複数の谷状の斜板部74vを有し、
    前記ディレイ機構は、当該谷状の斜板部(74v)に形成された平坦部74wとして設けられる
    請求項2に記載の車両の変速装置(50)。
  9. 前記クラッチレバー(72)は、前記クラッチ(60)を切断又は接続させるためにリフトさせるクラッチリフタカム(74)に連結されており、
    当該クラッチリフタカム(74)は、ボール状部材79を介してクラッチリフタプレート(77)と連係し、
    当該クラッチリフタプレート(77)は、前記変速機に対して回り止めされるアンカー部77aを有し、
    前記ディレイ機構は、当該アンカー部(77a)を係止する楕円状の係止穴49bとして設けられる
    請求項2に記載の車両の変速装置(50)。
  10. 前記クラッチレバー(72)は、前記クラッチ(60)を切断又は接続させるためにリフトさせるクラッチリフタカム(74)と、前記クラッチリフタカム(74)に設けられたカム面74eで連係されており、
    前記ディレイ機構は、当該カム面(74e)の遊びカム部74fとして設けられる
    請求項2に記載の車両の変速装置(50)。
  11. 前記クラッチレバー(72)は、複数のアーム部材721,722が連結されたリンク機構として設けられ、
    当該リンク機構における一方のアーム部材721は、他方のアーム部材722の回動角度を制限するストッパ721aを有し、
    前記ディレイ機構は、当該リンク機構におけるアーム部材(721,722)同士が回動可能な範囲として設けられる
    請求項2に記載の車両の変速装置(50)。
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