JP6190410B2 - 車両の変速装置 - Google Patents
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Description
ここで、特許文献1には詳細な開示がないものの、シフトアップ側のシフトスピンドル角に対するクラッチリフト特性は、比較的緩やかな勾配であり、且つ、クラッチの3段容量は所定幅のクラッチリフト量ごとに設定できるため、クラッチやシフトスピンドル等の公差バラツキがあっても目標の半クラッチ容量(例えば中間容量大)に対するシフトスピンドル角を比較的設定し易い。また、目標の半クラッチ容量にシフトスピンドル位置を合わせることも比較的容易である。
また、同じく特許文献1には詳細には開示されていないが、シフトダウン側のシフトスピンドル角に対するクラッチリフト特性は、立ち上がりが早く、且つ、急峻な勾配が設定されているため、公差バラツキがあると目標の半クラッチ容量(例えば中間容量大)に合わせてシフトスピンドル角を設定することは困難である。また、目標の半クラッチ容量にシフトスピンドル位置を合わせることも比較的難しくなる。本願では、シフトダウン側においてクラッチ容量が半クラッチに切り替わるシフトスピンドルの回動角を「タッチポイント」と定義する。
タッチポイントを学習することができれば、例えば、シフトダウン側の変速制御でもクラッチの中間容量を使えたり、ユーザ等がクラッチ位置を調整したか否かの判定ができたり等、AMTのシステムに応用できる。
また、従来例には、タッチポイントの学習方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2では、図5に開示されるフローのように、エンジン運転中でギア位置がニュートラルの時に、クラッチを断接させながら、メイン軸の回転数変化を見ることでクラッチのタッチポイントを学習する制御が開示されている。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、車両の変速装置において、クラッチのタッチポイントを高精度に学習できるようにすることを目的とする。
本発明によれば、制御装置は、シフトスピンドルをシフトアップ側に回動させて、シフトドラムの回動角がドラム角閾値に達する際のモーターの駆動デューティを基準デューティとして記憶した後、シフトスピンドルをシフトダウン側に回動させて、基準デューティが発生する際のシフトスピンドルの回動角を、クラッチが半クラッチ状態となるタッチポイントとして学習する。これにより、制御装置がシフトスピンドルをシフトアップ側に回動させると、シフトドラムがドラム角閾値に達した際に発生するモーターの駆動デューティを基準デューティとして記憶できる。その後、制御装置がシフトスピンドルをシフトダウン側に回動させると、クラッチ操作部材がチェンジ操作部材よりも先に回動するため、クラッチ操作部材を操作するためのトルクに対応する駆動デューティが、基準デューティになったことを検出できる。基準デューティは、シフトドラムをドラム角閾値まで到達させるのに要するトルクに対応した所定の大きさを有するため、シフトダウン側で基準デューティが発生した際のシフトスピンドルの回動角を、クラッチが半クラッチ状態となるタッチポイントとして学習することで、シフトスピンドルの中立位置付近のフリクション等の影響を除外してシフトダウン側のタッチポイントを高精度に学習できる。
本発明によれば、タッチポイントの学習を行う際のシフトスピンドルの制御はランプ応答で実行されるため、シフトスピンドルのトルクの変動が駆動デューティに高精度に反映される。このため、タッチポイントを高精度に学習できる。
また、本発明は、前記シフトスピンドル(76)の回動角に対する前記クラッチ(61)のクラッチリフト量の特性は、シフトアップ側よりもシフトダウン側が、より小さな回動角で立ち上がり、且つ、より急な勾配でリフトするように設定されていることを特徴とする。
本発明によれば、シフトスピンドルの回動角に対するクラッチのクラッチリフト量の特性は、シフトアップ側よりもシフトダウン側が、より小さな回動角で立ち上がり、且つ、より急な勾配でリフトするように設定されているため、シフトダウン側のタッチポイントを高精度に学習することは通常困難であるが、シフトアップ側で記憶した基準デューティを利用することで、シフトダウン側のタッチポイントを高精度に学習できる。また、シフトダウン側では、クラッチリフト量の特性が急な勾配であるため、クラッチリフトに対応した駆動デューティの立ち上がりの時間は短くなるが駆動デューティの立ち上がりが明確になるため、基準デューティと比較することでタッチポイントを高精度に学習できる。
本発明によれば、タッチポイントの学習の制御は、エンジンの始動時、または、車両の主電源が供給される度に1回実行されるため、エンジンの始動時、または、車両の主電源が供給される度に、タッチポイントを高精度に学習できる。
また、本発明は、前記制御装置(17)は、前回の前記エンジン(21)の運転時、または、前回の変速装置(25)の電源がオンにされた時に学習した前記タッチポイントを不揮発性メモリに記憶し、今回学習した前記タッチポイントを前回学習した前記タッチポイントと比較することを特徴とする。
本発明によれば、制御装置は、前回のエンジンの運転時、または、前回の変速装置の電源がオンにされた時に学習したタッチポイントを不揮発性メモリに記憶し、今回学習したタッチポイントを前回学習したタッチポイントと比較する。このため、エンジンや車両が停止されていた間に、タッチポイントが変化したことや、タッチポイントがユーザ等によって調整されたことを判定することができる。
また、シフトスピンドルのランプ応答によってタッチポイントを高精度に学習できる。
また、クラッチリフト量の特性が、小さな回動角で立ち上がり、且つ、より急な勾配でリフトされるものであっても、タッチポイントを高精度に学習できる。
さらに、エンジンの始動時、または、車両の主電源が供給される度に、タッチポイントを高精度に学習できる。
また、エンジンや車両が停止されていた間に、タッチポイントが変化したことを判定できる。
図1は、本発明の実施の形態に係る自動変速装置25を備えた自動二輪車10の左側面図である。
自動二輪車10(車両)は、ヘッドパイプ(不図示)に回動可能に軸支されたハンドル11と、ハンドル11により操舵される前輪12と、駆動輪である後輪13と、運転者が着座するシート14と、後輪13にチェーン15を介して駆動力を供給するパワーユニット16と、パワーユニット16の制御を行う制御ユニット17(制御装置)と、バッテリ18とを有する。
図2は、パワーユニット16の断面図である。図2では、紙面の左右方向が車幅方向、上方向が車両前方、下方向が車両後方に相当する。
パワーユニット16は、走行駆動力を発生するエンジン21と、発電機22と、エンジン21のクランク軸23に設けられた発進クラッチ24と、発進クラッチ24を介して出力されたクランク軸23の駆動力を変速して出力する自動変速装置25(変速装置)とを備える。
図1に示すように、シリンダヘッド28の吸気ポートには、エアクリーナボックス(不図示)から延びる吸気管52が接続される。吸気管52には、エンジン21に供給する空気量を調整する電子制御式のスロットル弁53が設けられる。吸気管52においてスロットル弁53の下流には、燃料噴射弁54が設けられる。
一側ケース半体26Lと他側ケース半体26Rとは、合わせ面26F(合わせ部)で合わせられ、車幅方向に延びる複数のケース連結ボルト(不図示)によって結合される。
クランク室31及び変速機室32の右側方には、クラッチ室34が設けられ、クランク室31の左側方には、発電機室35が設けられる。クラッチ室34は、他側ケース半体26Rの壁部36の外側面とクラッチカバー30の内面とによって区画される。発電機室35は、一側ケース半体26Lの壁部37の外側面と発電機カバー29の内面とによって区画される。
クランク軸23の軸部23bの一端は、発電機室35に延び、この一端には発電機22のローター22aが固定される。発電機22のステーター22bは、一側ケース半体26Lに固定される。
クランク軸23の軸部23bの他端23cは、クラッチ室34に延び、遠心式の発進クラッチ24は、他端23cの先端部に設けられる。
発進クラッチ24は、クランク軸23の外周に対して相対回転可能なスリーブ45の一端に固定されたカップ状のアウタケース46と、スリーブ45の外周に設けられたプライマリギア47と、クランク軸23の右端部に固定されたアウタプレート48と、アウタプレート48の外周部にウェイト49を介して半径方向外側を向くように取り付けられたシュー50と、シュー50を半径方向内側に付勢するためのスプリング51とを有する。発進クラッチ24では、エンジン回転数が所定値以下の場合にアウタケース46とシュー50とが離間しており、クランク軸23と自動変速装置25との間が遮断状態(動力が伝達されない切り離し状態)となっている。エンジン回転数が上昇し所定値を超えると、遠心力によってウェイト49がスプリング51に抗して半径方向外側に移動することで、シュー50がアウタケース46の内周面に当接する。これにより、アウタケース46とともにスリーブ45がクランク軸23上に固定され、クランク軸23の回転がプライマリギア47を介して自動変速装置25に伝達されるようになる。
自動変速装置25は、前進4段の常時噛み合い式の変速機60と、クランク軸23側と変速機60との間の接続を切り替えるチェンジクラッチ61(クラッチ)と、チェンジクラッチ61を操作するクラッチ操作機構62(クラッチ操作部材)と、変速機60を変速するギアチェンジ機構63(チェンジ操作部材)と、クラッチ操作機構62及びギアチェンジ機構63を駆動するアクチュエータ機構64とを備える。アクチュエータ機構64は、制御ユニット17(図1)によって制御される。
すなわち、自動変速モードでは、車速等に基づいてアクチュエータ機構64の制御が行われ、変速機60が自動で変速される。手動変速モードでは、シフトセレクトスイッチ132aが運転者によって操作されることで変速が行われる。
駆動ギア67a,67b,67c,67dは、この順に被動ギア68a,68b,68c,68dと噛合している。駆動ギア67bは左右にスライドしたとき、隣接する駆動ギア67a又は67cに側面のドグ歯が係合し、被動ギア68cは左右にスライドしたとき、隣接する被動ギア68b又は68dに側面のドグ歯が係合する。
駆動ギア67b(駆動側シフターギア)及び被動ギア68c(被動側シフターギア)は、メイン軸65及びカウンタ軸66に対して回転不能にスプライン結合され軸方向にスライド可能なシフターギアである。
駆動ギア67d及び被動ギア68aはメイン軸65及びカウンタ軸66に固定された固定ギアである。
また、被動ギア68c及び被動ギア68bは、互いに対向する側面に立設されたドグ歯68c1,68b1をそれぞれ備える。ドグ歯68c1,68b1はそれぞれ周方向に間隔をあけて複数形成されており、被動ギア68cと被動ギア68bとを係脱可能に結合するドグクラッチ68Dcを構成する。
また、駆動ギア67bと駆動ギア67aと、及び、被動ギア68cと被動ギア68dとは、側面に設けられた同様のドグクラッチによってそれぞれ係脱可能に結合する。
カウンタ軸66の端部にはドライブスプロケット72が設けられ、ドライブスプロケット72はチェーン15を介して後輪13に回転を伝達する。また、カウンタ軸66の近傍には、非接触でカウンタ軸66の回転数を検出するカウンタ軸回転数センサ73(図9)が設けられている。制御ユニット17は、カウンタ軸回転数センサ73の検出値から車速を算出する。さらに、メイン軸65の近傍には、非接触でメイン軸65の回転数を検出するメイン軸回転数センサ65a(図9)が設けられている。
図2及び図3を参照し、アクチュエータ機構64は、アクチュエータとしてのシフトモーター75(モーター)と、クランクケース26内を車幅方向に延びるシフトスピンドル76(スピンドル部材)と、シフトモーター75の回転を減速してシフトスピンドル76を駆動する減速歯車列77とを備える。減速歯車列77の軸方向の一端は、一側ケース半体26Lの壁部37の外側面に支持され、他端は、壁部37を外側方から覆うカバー78に支持される。
シフトスピンドル76は、クラッチ室34を貫通して設けられており、カバー78及びクラッチカバー30にそれぞれ設けられたベアリング78a,30aに両端を軸支されるとともに、一側ケース半体26Lの壁部37に設けられたベアリング37bによっても途中部を軸支される。クラッチカバー30には、シフトスピンドル76の回転位置を検出するシフトスピンドル角センサ79(スピンドル角センサ)が設けられている。
チェンジ機構89は、シフトスピンドル76に支持されて蓄力機構81によって回動させられるマスターアーム80と、マスターアーム80の回動に連動して回動するシフトドラム70(図13)と、シフトドラム70をシフターギアである駆動ギア67bと被動ギア68cとに接続するシフトフォーク69a,69bと、シフトフォーク69a,69bを軸方向にスライド自在に保持する支持軸(不図示)とを備える。
シフトドラム70がアクチュエータ機構64により駆動されて回転すると、シフトフォーク69a,69bはシフトドラム70のリード溝70aに沿って軸方向に移動し、駆動ギア67b及び被動ギア68cは変速段に応じてスライドする。
変速機60では、駆動ギア67b及び被動ギア68cのスライドに応じて、メイン軸65及びカウンタ軸66間で、ニュートラル状態、または、1速〜4速の何れかの変速歯車対を選択的に用いた動力伝達が可能となる。
リフターカムプレート85は、ベース部材84に面する押圧操作部85aと、押圧操作部85aから延びてクラッチレバー82のレバー部82bに連結される連結アーム部85bと、連結アーム部85bに形成されるカム孔部85cとを備える。リフターカムプレート85は、クラッチレバー82のレバー部82bの先端に設けられたピン87がカム孔部85cに挿通されることでクラッチレバー82に連結される。
リフターカムプレート85のカム孔部85cは、連結アーム部85bの長手方向に沿って屈曲した形状に形成されている。シフトスピンドル76の回動に伴ってクラッチレバー82のピン87がカム孔部85c内を移動することで、リフターカムプレート85が回動する。すなわち、カム孔部85cの形状によってリフターカムプレート85の単位回動量あたりの軸方向の移動量を設定することができ、これにより、チェンジクラッチ61の断接の特性を調整できる。
シフトアップする場合、シフトスピンドル76は、中立位置から図4の時計回り方向(シフトアップ方向)に回動され、ピン87は、カム孔部85cの内端部85c1に位置する。
シフトダウンする場合、シフトスピンドル76は、中立位置から図4の反時計回り方向(シフトダウン方向)に回動され、ピン87は、カム孔部85cの外端部85c2に位置する。
また、シフトダウンを行う場合、制御ユニット17は、シフトモーター75を回転させ、シフトスピンドル76をシフトダウン方向に回転させる。シフトダウン時には、蓄力機構81による蓄力は行われない。シフトダウン時には、シフトスピンドル76の回転に伴い、クラッチレバー82が回動してチェンジクラッチ61が切断され、その後、マスターアーム80がシフトダウン方向に回動する。これにより、シフトドラム70が回転し、ギア位置が一段だけシフトダウンされる。
本第実施の形態では、1つのシフトモーター75によって回転させられる単一のシフトスピンドル76によって、ギアチェンジ機構63及びクラッチ操作機構62の両方が駆動されるため、シフトモーター75が1つで良く、構造をシンプルにできる。
図5は、チェンジクラッチ61の断面図である。ここで、図5では、チェンジクラッチ61が完全に接続された状態が示されている。
チェンジクラッチ61は、プライマリドリブンギア90に固定されるカップ状のクラッチアウタ91と、クラッチアウタ91の径方向内側に設けられ、メイン軸65に一体に固定される円板状のクラッチセンタ92と、クラッチアウタ91の径方向内側に設けられ、メイン軸65の軸方向に移動可能なプレッシャプレート93と、プレッシャプレート93とクラッチセンタ92との間に設けられるクラッチ板94と、クラッチを接続する方向にプレッシャプレート93を付勢するメインスプリング95と、クラッチセンタ92とリフターカムプレート85との間に配置されるリフタープレート96と、リフタープレート96とリフターカムプレート85との間に配置されるサブリフタープレート97とを備える。
クラッチセンタ92とプレッシャプレート93とは組み合されて一体となり、クラッチアウタ91の内側に配置されるクラッチインナを構成する。
クラッチアウタ91は、プライマリドリブンギア90の外側面に一体に固定されており、プライマリドリブンギア90と一体にメイン軸65に対して相対回転可能である。
クラッチセンタ92は、メイン軸65にスプライン嵌合してナット100によって固定されており、メイン軸65に対し、相対回転不能且つ軸方向に移動不能である。
クラッチ板94は、クラッチセンタ92とプレッシャプレート93との間に挟持される。
クラッチ板94は、クラッチアウタ91に設けられる外側摩擦板94aと、クラッチセンタ92に設けられる内側摩擦板94bとを備え、外側摩擦板94a及び内側摩擦板94bは、プレッシャプレート93とクラッチセンタ92との間に交互に複数枚重ねて配置されている。各外側摩擦板94aは、クラッチアウタ91の筒状部にスプライン嵌合によって支持されており、クラッチアウタ91の軸方向に移動可能且つクラッチアウタ91に対して回転不能に設けられている。
各内側摩擦板94bは、プレッシャプレート93の内側円筒部93aの外周部にスプライン嵌合して支持されており、プレッシャプレート93の軸方向に移動可能且つプレッシャプレート93に対して回転不能に設けられている。
バックトルクリミット部材110と、クラッチセンタ92に固定されるリフターピン111とは、バックトルクリミッタ機構を構成する。バックトルクリミッタ機構は、例えば、特開平8−93786号公報に記載された公知のものであり、順方向の動力伝達とは逆方向に所定値以上のトルクが作用した場合に、クラッチを接続状態から半クラッチ状態にする機構である。
プレッシャプレート93のレリーズボス101は、基端部101a側よりも小径に形成されたガイド軸部101bを先端部に有し、ガイド軸部101bの先端面には、ガイド軸部101bよりも大径のストッパ板102がボルト103で締結されている。基端部101aの先端面には、ストッパ板102に対向する段部101cが形成されている。
リフタープレート側ボス106は、リフタープレート96の周方向に略等間隔をあけて複数並べて形成されている。リフタープレート側ボス106は、リング部105を貫通する円筒状に形成されており、レリーズボス101のガイド軸部101bが挿通される孔部106aと、サブリフタープレート97が嵌合する外周部106bとを備える。
第2のサブスプリング99は、クラッチセンタ92の外側面とリフタープレート96との間に挟持されており、リフタープレート96をストッパ板102側に押し付けるように付勢している。クラッチ接続状態では、リフタープレート96は、第2のサブスプリング99の付勢力によって、ガイド軸部101bの先端面がストッパ板102に当接させられており、リング部105と段部101cとの間には隙間G2が形成されている。
すなわち、第2のサブスプリング99は、リフタープレート96及びストッパ板102を介してプレッシャプレート93をクラッチセンタ92側に押し付けており、クラッチを接続する方向にプレッシャプレート93を付勢している。
押圧プレート部113は、リフタープレート96のリフタープレート側ボス106が嵌まる孔部113aを備える。孔部113aは、各リフタープレート側ボス106に対応する位置に複数形成される。ボールベアリング88は、円管状部114の先端部に嵌合される。
サブスプリング98は、クラッチセンタ92とサブリフタープレート97の円管状部114に形成された受け部114aとの間に挟持されており、サブリフタープレート97をストッパ板102側に押し付けるように付勢している。
クラッチ接続状態では、サブリフタープレート97は、サブスプリング98の付勢力によって、押圧プレート部113がストッパ板102に当接させられており、押圧プレート部113とリング部105との間には隙間G1が形成されている。
すなわち、サブスプリング98は、ストッパ板102を介してプレッシャプレート93をクラッチセンタ92側に押し付けており、クラッチを接続する方向にプレッシャプレート93を付勢している。
リフターカムプレート85を介し、メインスプリング95、第2のサブスプリング99及び第2のサブスプリング99の付勢力に抗してプレッシャプレート93がプライマリドリブンギア90側に移動させられると、クラッチ板94の狭持が解除され、クラッチ切断状態となる。
図6に示すように、本実施の形態では、チェンジクラッチ61の容量が、シフトスピンドル76の回動角に応じてクラッチ容量に寄与するスプリングが変更されることで可変となっている。詳細には、クラッチ容量は、メインスプリング95、第2のサブスプリング99及び第2のサブスプリング99の付勢力によってクラッチ容量が決まる最大容量C1(クラッチ全容量状態)と、メインスプリング95及び第2のサブスプリング99の付勢力によってクラッチ容量が決まる第1の中間容量C2(半クラッチ状態)と、メインスプリング95のみの付勢力によってクラッチ容量が決まる第2の中間容量C3と、メインスプリング95の付勢力の全部が除かれた切断容量C4(クラッチ切断状態)との複数の段階に可変である。チェンジクラッチ61は、第1の中間容量C2及び第2の中間容量C3となる際は、いわゆる半クラッチ状態となる。
すなわち、サブリフタープレート97及びストッパ板102は、サブスプリング98の付勢力をプレッシャプレート93に伝達する第1のサブスプリング荷重伝達経路S1を構成する。また、リフタープレート96及びストッパ板102は、第2のサブスプリング99の付勢力をプレッシャプレート93に伝達する第2のサブスプリング荷重伝達経路S2を構成する。
シフトスピンドル76の角度が回動角θ1(図6)で、サブリフタープレート97がストッパ板102から離れることで、第1のサブスプリング荷重伝達経路S1は遮断され、サブスプリング98の付勢力は、プレッシャプレート93に伝達されなくなり、クラッチ容量は、メインスプリング95及び第2のサブスプリング99によって決定されるようになる。このため、サブリフタープレート97がストッパ板102から離れた瞬間に、図6に示すように、クラッチ容量は最大容量C1から第1の中間容量C2に低下する。
これにより、チェンジクラッチ61によるカウンタ軸66側とクランク軸23側との間の回転差吸収を適切に行うことができ、変速ショックを低減できる。ここで、変速の前後におけるカウンタ軸66のトルクは、例えば、エンジン回転数、スロットル開度及びカウンタ軸66のトルクの関係を記憶したマップに基づいて求められる。
図7に示すように、シフトアップ側のリフターカムプレート85のリフト特性は、シフトスピンドル76の中立位置(0°)から所定角までの回動に対してリフト量が増加しない遊び区間U1と、シフトスピンドル76の回動量の増加に対して略線形にリフト量が増加するリフト区間U2とを有する。
遊び区間D1は、遊び区間U1よりも小さく設定されている。リフト区間D2では、リフト区間U2よりも大きな傾斜でリフターカムプレート85のリフト量が増加する。
リフターカムプレート85のリフト特性は、リフターカムプレート85のカム孔部85cやクラッチレバー82のカム孔部85cの形状を調整することによって所望の特性に設定される。本実施の形態では、シフトスピンドル76の回動量の増加に対してリフターカムプレート85のリフト量が線形に増加するように設定されている。
隙間G2が0になった後にわずかにシフトスピンドル76がクラッチ切断方向に回動した回動角θ3は、クラッチが切断されるシフトスピンドル76の回動位置である。回動角θ3でのリフターカムプレート85のリフト量は、クラッチが切断される切断リフト量Ldである。
切断リフト量Ldは、シフトアップ方向及びシフトダウン方向で同一である。リフト区間D2では、リフト区間U2よりも急激にリフターカムプレート85のリフト量が増加するため、シフトダウン方向では、シフトアップ方向よりも少ないシフトスピンドル76の回動量で、クラッチが切断される。
シフトダウンする際には、クラッチ容量の段階的な制御は行われず、シフトスピンドル76の回動により、チェンジクラッチ61は切断容量C4まで一気に切断される。
チェンジクラッチ61が完全に切断されてからシフトスピンドル76が所定量Fだけさらにシフトダウン方向に回動すると、マスターアーム80を介してシフトドラム70の回動が開始され、シフトダウンが実行される。
シフトダウンの際の変速ショックは、前記バックトルクリミッタ機構によって低減される。
図9に示すように、自動変速装置25は、発進クラッチ24、プライマリギア47、チェンジクラッチ61、メイン軸65、変速機60、カウンタ軸66、チェーン15、ドライブスプロケット72及び後輪13を備える駆動伝達部130と、変速機60及びチェンジクラッチ61を機械的に操作するアクチュエータ機械部55と、電装部131と、エンジン21の運転を直接的に制御するエンジン運転制御部133とを備える。
駆動伝達部130は、クランク軸23の動力を後輪13まで機械的に伝達する。
エンジン運転制御部133は、スロットル弁53、燃料噴射弁54、及び、点火プラグ57を備える。
スロットル弁53は、電子制御式であり、制御ユニット17により制御されるスロットル弁駆動モータ(不図示)により駆動される。詳細には、制御ユニット17は、ハンドル11に設けられて運転者が操作するスロットルグリップ(不図示)の操作量をセンサで検出し、この操作量に応じて上記スロットル弁駆動モーターを駆動し、スロットル弁53の開度を調整する。
点火プラグ57は、不図示のイグニションコイル駆動部およびイグニションコイルを介して制御ユニット17に接続される。
電装部131は、制御ユニット17と、エンジン回転数センサ58と、シフトスピンドル角センサ79と、ドラム角センサ70bと、スロットルポジションセンサ134と、カウンタ軸回転数センサ73と、メイン軸回転数センサ65aと、ハンドル11に設けられるハンドルスイッチ132とを備える。
エンジン回転数センサ58は、クランク軸23の回転数を制御ユニット17に出力する。
制御ユニット17は、シフトスピンドル角センサ79の検出値から、変速機60の状態、すなわち変速機60が変速中であるか否かを判定できる。
ドラム角センサ70bは、シフトドラム70の回転角を制御ユニット17に出力し、制御ユニット17は、この回転角から現在のギア位置(変速段)を判定する。
スロットルポジションセンサ134は、スロットル弁53の開度を制御ユニット17に出力する。
ハンドルスイッチ132は、モードスイッチ132b及びシフトセレクトスイッチ132aを備える。
また、制御ユニット17は、前記スロットルグリップの操作量に応じて、スロットル弁53の開度、燃料噴射弁54の噴射量、及び、点火プラグ57の点火時期を調整するが、制御ユニット17は、スロットルポジションセンサ134、エンジン回転数センサ58、シフトスピンドル角センサ79、ドラム角センサ70b、及び、カウンタ軸回転数センサ73の検出値に基づいて、スロットル弁53の開度、燃料噴射弁54の噴射量、及び、点火プラグ57の点火時期を補正する。
他側ケース半体26Rの壁部36は、クランクケース26の合わせ面26Fの近傍に形成される内壁36b(合わせ部寄りの内壁)を、シフトスピンドル76の周囲に備える。
蓄力機構81は、他側ケース半体26Rの壁部36の内壁36bとクラッチカバー30との間に配置される。
蓄力機構81は、シフトスピンドル76と、シフトスピンドル76の軸上にシフトスピンドル76に対して相対回転可能に設けられるギアシフトアーム140と、ギアシフトアーム140を中立位置に付勢するリターンスプリング141と、ギアシフトアーム140に近接した位置でシフトスピンドル76の軸上に固定され、シフトスピンドル76と一体に回転するシフトダウン用カラー142と、ギアシフトアーム140から軸方向に離間した位置でシフトスピンドル76の軸上に固定され、シフトスピンドル76と一体に回転する蓄力カラー143とを備える。
ギアチェンジ機構63は、蓄力機構81に隣接してシフトスピンドル76上に固定されるサブリターンスプリング係止カラー148と、サブリターンスプリング係止カラー148に連結され、シフトスピンドル76を中立位置に付勢するサブリターンスプリング150とを備える。
シフトスピンドル76において、鍔部76dは最も大径であり、ギアシフトアーム支持部76c、支持部76b、及び接続部76aは、接続部76a側に向けて段階的に小径になるように形成されている。また、スプリングカラー支持部76e、カラー支持部76f、支持部76g及びセンサ接続部76hは、鍔部76d側からセンサ接続部76hに向けて段階的に小径になるように形成されている。
サブリターンスプリング係止カラー148、シフトダウン用カラー142、蓄力カラー143、及び、クラッチレバー82は、シフトスピンドル76に対し相対回転不能に固定されており、シフトスピンドル76と一体に回動する。
図10〜図12に示すように、ギアシフトアーム140は、シフトスピンドル76の外周面にベアリング154を介して嵌合する円筒部155と、円筒部155における蓄力スプリング145側の端の外周部から径方向外側に延びるプレート部156とを備える。
プレート部156は、円筒部155から上方に延びる上方延出部156aと、円筒部155から上方延出部156aに略直交する方向へ延びる延出部156bとを備える。
上方延出部156aには、上方延出部156aの先端部から径方向外方に延びた後にシフトスピンドル76と略平行にリターンスプリング141側に延びる第2の係止片159が設けられている。
第2の係止片159は、マスターアーム80の規制開口部160に挿通される基端側の当接部159aと、リターンスプリング141が係止される先端側のリターンスプリング係止部159bとを備える。リターンスプリング係止部159bは、当接部159aよりも細く形成されている。
アーム部162は、図11の正面視では略L字状に形成されており、筒状部161から上方へ延びる位置規制アーム162aと、筒状部161から位置規制アーム162aと略直交する方向に延びる操作アーム162bとを備える。マスターアーム80は、操作アーム162bを介してシフトドラム70に連結されており、マスターアーム80が回動することでシフトドラム70が回転する。
マスターアーム80は、シフトスピンドル76と略平行にリターンスプリング141側に延びるスプリング係止片163を、規制開口部160の上縁部に備える。
蓄力スプリング145は、ねじりコイルバネであり、一端のギアシフトアーム側端部145aが、ギアシフトアーム140の第1の係止片157に係止され、他端の蓄力アーム側端部145bが蓄力カラー143の蓄力アーム168に係止される。
リターンスプリング141は、その一端141aと他端141bとが径方向の外側に延出し、一端141aと他端141bとは、互いに所定の間隔をあけて略平行になるように設けられる。
リターンスプリング141は、一端141aと他端141bとの間にストッパーピン146を挟んだ状態で配置される。
また、マスターアーム80のスプリング係止片163は、ストッパーピン146よりも一端141a及び他端141bの先端側で、一端141aと他端141bとの間に挟持される。ギアシフトアーム140の第2の係止片159は、ストッパーピン146よりも一端141a及び他端141bの基端側で、一端141aと他端141bとの間に挟持される。
図10に示すように、一側ケース半体26Lの壁部37は、他側ケース半体26Rの内壁36bの外側方に位置する。壁部37と内壁36bとの間で変速機室32内の空間169には、壁部37からシフトスピンドル76に沿って内壁36b側に突出する筒状のサブリターンスプリング支持部171が設けられる。シフトスピンドル76を支持するベアリング37bは、サブリターンスプリング支持部171の内周部に支持される。
壁部37は、シフトスピンドル76と略平行に延びるボス173を、サブリターンスプリング支持部171の近傍に備える。ボス173及びサブリターンスプリング支持部171は、壁部37と一体に形成されており、その先端部は、内壁36bの近傍まで延びる。
サブリターンスプリング150は、コイル部150cの内周部がサブリターンスプリング支持部171の外周部に嵌合されて支持され、空間169に配置される。
サブリターンスプリング150は、一端150aと他端150bとの間にボス173を挟持した状態で配置され、ボス173によって周方向に位置決めされている。
サブリターンスプリング係止カラー148は、シフトスピンドル76の係止カラー固定部151に固定される円筒部175と、円筒部175から径方向の外側に延びた後、リターンスプリング141とは反対側に屈曲してサブリターンスプリング150側に延びる腕部176とを備える。
中立状態では、マスターアーム80は、スプリング係止片163がリターンスプリング141の一端141aと他端141bとの間に挟まれることで、回動位置を中立位置に規制されている。リターンスプリング141は、所定の初期荷重が付された状態でマスターアーム80の回動位置を規制している。
中立状態では、ギアシフトアーム140は、リターンスプリング係止部159bがリターンスプリング141の一端141aと他端141bとの間に挟まれることで、回動位置を中立位置に規制されている。リターンスプリング141は、所定の初期荷重が付された状態でギアシフトアーム140の回動位置を規制している。
すなわち、中立状態では、マスターアーム80及びギアシフトアーム140は、シフトスピンドル76の中心とストッパーピン146の中心とを通る直線Lに沿うように位置している。
図13に示すように、中立状態では、サブリターンスプリング係止カラー148は、腕部176がサブリターンスプリング150の一端150aと他端150bの間に挟まれることで、回動位置を中立位置に規制されている。サブリターンスプリング150は、所定の初期荷重が付された状態でサブリターンスプリング係止カラー148の回動位置を規制している。
図15(a)に示すように、ドグ歯164は、中立状態では、ギアシフトアーム140の孔部158の一端に接しており、ドグ歯164と孔部158の他端との間には隙間が形成されている。
制御ユニット17の変速の指示に伴ってアクチュエータ機構64のシフトモーター75が駆動されると、シフトスピンドル76の回動が開始される。シフトアップの方向は、図中に符号UPで示す時計回りの方向である。
図16は、中立状態よりもシフトアップ方向に進んだ状態を示す図である。
図16の状態は、ギアシフトアーム140の第2の係止片159の当接部159aが、マスターアーム80の規制開口部160の内縁160aに当接してギアシフトアーム140が回動できなくなるまでシフトスピンドル76の回動が進んだ状態であり、以下の説明では、この状態を蓄力準備状態と呼ぶ。
蓄力準備状態では、ギアシフトアーム140は、リターンスプリング141の付勢力に抗して回動しており、リターンスプリング141の他端141bは、所定量だけ開かれている。
また、蓄力準備状態では、サブリターンスプリング係止カラー148は、サブリターンスプリング150の付勢力に抗して回動しており、サブリターンスプリング150の他端150bは、図13に2点鎖線で示すように、所定量だけ開かれる。
図17の状態では、蓄力スプリング145は、シフトスピンドル76の回動に伴い、ギアシフトアーム側端部145aが第1の係止片157によって位置を固定されたまま、蓄力アーム側端部145bだけが蓄力アーム168によって所定量Rだけ回動されている。以下の説明では、図17の状態を蓄力状態と呼ぶ。
蓄力状態では、規制開口部160に規制されて回動しないギアシフトアーム140に対し、シフトダウン用カラー142はシフトスピンドル76と共に回動している。このため、蓄力状態では、図15(c)に示すように、ドグ歯164は、ギアシフトアーム140の孔部158の一端と他端との間の中間部に位置する。
また、蓄力状態では、サブリターンスプリング係止カラー148は、サブリターンスプリング150の付勢力に抗して回動しており、サブリターンスプリング150の他端150bは、図13に2点鎖線で示すように、蓄力準備状態の状態よりもさらに所定量だけ開かれる。
チェンジ機構89は、マスターアーム80の先端部に設けられる送り操作部材201と、シフトドラム70(図14)の軸端に設けられる星型プレート202と、星型プレート202の外周部に当接して星型プレート202の回動位置を規制するストッパアーム203(付勢部材)とを備える。
星型プレート202は、周方向に略等間隔で放射状に突出した複数(5つ)のカム山部と、各カム山部の外側面から軸方向に突出する複数(5つ)の係止ピン204とを備える。星型プレート202は、シフトドラム70に一体的に設けられており、シフトドラム70は、係止ピン204が送り操作部材201に押圧されることで回動する。
送り操作部材201は、マスターアーム80の操作アーム162bの長手方向にスライド可能であるとともに、シフトスピンドル76側に移動するようにばね等(不図示)によって付勢されている。
送り操作部材201は、係止ピン204側へシフトドラム70の軸方向に突出するシフトアップ用押圧部201a及びシフトダウン用押圧部201bを、先端側に備える。
ここでは、シフトダウンする場合について説明したが、シフトアップする際は、シフトアップ用押圧部201aが係止ピン204を押圧し、シフトドラム70をシフトアップ方向に回動させる。
詳細には、タッチポイントとは、シフトスピンドル76をシフトダウン側に回動させて行った場合に、サブリフタープレート97(図5)がストッパ板102から離れるときのシフトスピンドル76の回動角θd1(図8)を意味する。
また、回動角θd2においてチェンジクラッチ61で起こる動作はシフトアップ側の回動角θ2の動作と同一であり、回動角θd3においてチェンジクラッチ61で起こる動作はシフトアップ側の回動角θ3の動作と同一である。
また、図8に示すように、シフトドラム70の回動は、チェンジクラッチ61が完全に切断されてからシフトスピンドル76が所定量Fだけさらにシフトダウン方向に回動すると開始される。
制御ユニット17は、シフトスピンドル76の実際の回動角を目標回動角に追従させるようにシフトスピンドル76の回動角のフィードバック制御を行っている。フィードバック制御は、目標回動角と実際の回動角との差が小さくなるようにモーター印加電圧を調整するものであり、モーター印加電圧の調整は、PWM(パルス幅変調)制御の駆動デューティの調整で行っている。
シフトモーター75は、ランプ応答中、シフトモーター75の出力がランプ応答の設定速度に追従できる程度に十分であれば、ランプ応答に必要な駆動デューティDuを時々刻々と出力する。
一方で、シフトスピンドル76を回動させるには、各種フリクション(シフトスピンドル76周辺のベアリングの回動に伴うフリクション、シフトモーター75のコギングトルクやフリクション等)に抗するためや、ギアチェンジ機構63及びクラッチ操作機構62を動作させるためのトルクが必要であり、この必要トルクは、シフトスピンドル76の回動角の変化によって時々刻々と変化する。このため、ランプ応答が正しく実行される範囲において、シフトスピンドル76のある回動角における必要トルクはシフトモーター75の駆動デューティDuと相関があり、駆動デューティDuからシフトスピンドル76のトルクの変化点を検出できる。
シフトドラム70の回動角が回動角θ1から増加して回動角θc1に達すると、シフトドラム70がシフトアップ方向に回動し始め、回動角が回動角θc2まで増加すると、シフトドラム70の回動角Sdは、所定の大きさのドラム角閾値Sd1に達する。
また、ギアチェンジ機構63を介してシフトドラム70を回動させるトルクが必要となるため、駆動デューティDuは、回動角θc1または回動角θc1の僅かに手前側から急激に増加し始め、回動角θc2になると所定の大きさの基準デューティDustdに達する。すなわち、基準デューティDustdは、シフトドラム70の回動角Sdがドラム角閾値Sd1に達したときの駆動デューティDuである。
制御ユニット17は、自動二輪車10の主電源がメインキー等によってオン状態とされる度に、タッチポイント学習制御を1度行う。制御ユニット17は、タッチポイント学習制御を、自動二輪車10が走行しておらず停止しており、且つ、変速機60がニュートラル状態の際に実行する。主電源がオンになると、制御ユニット17は、シフトモーター75を駆動可能になる。
まず、制御ユニット17は、シフトスピンドル76を中立位置からシフトアップ側にランプ応答で回動させて行き(ステップS1)、シフトドラム70の回動角がドラム角閾値Sd1に達しているか否かを判定する(ステップS2)。制御ユニット17は、ドラム角閾値Sd1に達していない場合(ステップS2:No)、ステップS1に戻る。
次いで、制御ユニット17は、シフトスピンドル76を中立位置側へランプ応答で回動させて行き(ステップS4)、シフトスピンドル76が中立位置に達したか否かを判定する(ステップS5)。シフトスピンドル76が中立位置に達していない場合、制御ユニット17は、ステップS4に戻り、シフトスピンドル76の回動を継続する。
駆動デューティDuが、基準デューティDustdと同一の値に達している場合(ステップS7:Yes)、制御ユニット17は、駆動デューティDuが基準デューティDustdと同一の値に達したときのシフトスピンドル76の回動角θdtpを、タッチポイントとして不揮発性メモリに学習(記憶)し(ステップS8)、図21の処理を終了する。
このため、中立位置からシフトダウン側にシフトスピンドル76を回動させる場合に、駆動デューティDuclがシフトアップ側で検出された基準デューティDustdと同一の値になったときのシフトスピンドル76の回動角θdtpをタッチポイントとして学習することで、フリクション等に影響されずにタッチポイントを高精度に学習できる。
また、ドラム角閾値Sd1は、シフトドラム70の回動角がドラム角閾値Sd1に達したときのシフトスピンドル76の回動角で、駆動デューティDuが基準デューティDustdとなるように設定される。
このため、タッチポイント学習制御を行う際に、基準デューティDustdを毎回取得することで、温度の影響を低減してタッチポイントを高精度に学習できる。
図22は、比較制御の処理を示すフローチャートである。
まず、制御ユニット17は、学習したタッチポイントである回動角θdtpと基準となる基準タッチポイントとの差の絶対値を算出し、この絶対値が、所定の閾値以上であるか否かを判定する。(ステップS11)。ここで、基準タッチポイントは、前回以前に学習(記憶)された基準となるタッチポイントであり、シフトスピンドル76の所定の回動角である。この基準タッチポイントは、例えば、前回に自動二輪車10の主電源がオンにされてエンジン21が運転された際に学習したタッチポイント、前回に自動二輪車10の主電源がオンにされて自動変速装置25に電源が供給された際に学習したタッチポイント、及び、自動二輪車10の工場での生産時に初期値として設定(学習)されたタッチポイント等である。
絶対値が所定の閾値よりも大きい場合(ステップS11:Yes)、制御ユニット17は、自動二輪車10に設けられたインジケータ(不図示)を介して、タッチポイントが基準タッチポイントから変更されていることを、ユーザや作業者等に報知し(ステップS12)、処理を終了する。
なお、図21のフローチャートの処理は、自動二輪車10の主電源がオンにされたときに、ニュートラル状態ではなく、変速段がいずれかの段に入ったインギア状態のときに実行されても良い。
これにより、制御ユニット17がシフトスピンドル76をシフトアップ側に回動させると、シフトドラム70がドラム角閾値Sd1に達した際に発生するシフトモーター75の駆動デューティを基準デューティDustdとして記憶できる。その後、制御ユニット17がシフトスピンドル76をシフトダウン側に回動させると、クラッチ操作機構62がギアチェンジ機構63よりも先に回動するため、クラッチ操作機構62を操作するためのトルクに対応する駆動デューティDuclが、基準デューティDustdになったことを検出できる。基準デューティDustdは、シフトドラム70をドラム角閾値Sd1まで到達させるのに要するトルクに対応した所定の大きさを有するため、シフトダウン側で基準デューティDustdが発生した際のシフトスピンドル76の回動角θdtpを、チェンジクラッチ61が第1の中間容量C2となるタッチポイントとして学習することで、シフトスピンドル76の中立位置付近のフリクション等の影響を除外してシフトダウン側のタッチポイントを高精度に学習できる。
また、シフトスピンドル76の回動角に対するチェンジクラッチ61のリフターカムプレート85のクラッチリフト量の特性は、シフトアップ側よりもシフトダウン側が、より小さな回動角で立ち上がり、且つ、より急な勾配でリフトするように設定されているため、シフトダウン側のタッチポイントを高精度に学習することは通常困難であるが、シフトアップ側で記憶した基準デューティDustdを利用することで、シフトダウン側のタッチポイントを高精度に学習できる。また、シフトダウン側では、クラッチリフト量の特性が急な勾配であるため、クラッチリフトに対応した駆動デューティDuclの立ち上がりの時間は短くなるが駆動デューティDuの立ち上がりが明確になるため、基準デューティDustdと比較することでタッチポイントを高精度に学習できる。クラッチリフト量の特性が小さな回動角で立ち上がると、初期駆動デューティDufrとクラッチリフトに対応した駆動デューティDuclの立ち上がりとの区別が難しくなるが、基準デューティDustdと比較することで、クラッチリフトに対応した駆動デューティDuclを判定でき、タッチポイントを高精度に学習できる。
また、制御ユニット17は、前回のエンジン21の運転時、または、前回の自動変速装置25の電源がオンにされた時に学習したタッチポイントを不揮発性メモリに記憶し、今回学習したタッチポイントである回動角θdtpを前回学習したタッチポイントと比較する。このため、エンジン21や自動二輪車10が停止されていた間に、タッチポイントが変化したことや、タッチポイントがユーザ等によって調整されたことを判定することができる。
上記実施の形態では、ギアチェンジ機構63は蓄力機構81を備えるものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、蓄力機構81を設けずに、シフトスピンドル76によってシフトスピンドル76と一体的に回動されるマスターアームを介してシフトドラムが回動される構成であっても良い。
また、上記実施の形態では、車両として自動二輪車10を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、三輪車両や四輪車両等の車両に本発明を適用しても良い。
17 制御ユニット(制御装置)
21 エンジン
25 自動変速装置(変速装置)
61 チェンジクラッチ(クラッチ)
62 クラッチ操作機構(クラッチ操作部材)
63 ギアチェンジ機構(チェンジ操作部材)
65 メイン軸
66 カウンタ軸
67b 駆動ギア(駆動側シフターギア)
68c 被動ギア(被動側シフターギア)
69a,69b シフトフォーク
70 シフトドラム
70a リード溝
70b ドラム角センサ
75 シフトモーター(モーター)
76 シフトスピンドル
79 シフトスピンドル角センサ(スピンドル角センサ)
C1 最大容量(クラッチ全容量状態)
C2 第1の中間容量(半クラッチ状態)
C4 切断容量(クラッチ切断状態)
Dustd 基準デューティ
Sd1 ドラム角閾値
θdtp 回動角(基準デューティが発生する際のシフトスピンドルの回動角)
Claims (5)
- エンジン(21)の回転動力がクラッチ(61)を介して入力されるとともに、駆動側シフターギア(67b)を含む複数の駆動ギアを有するメイン軸(65)と、前記複数の駆動ギアによって回動される被動側シフターギア(68c)を含む複数の被動ギアを有するカウンタ軸(66)と、前記駆動側シフターギア(67b)及び前記被動側シフターギア(68c)を軸方向に移動させる複数のシフトフォーク(69a,69b)と、当該シフトフォーク(69a,69b)の端部が係合されるリード溝(70a)を有するシフトドラム(70)と、当該シフトドラム(70)の回動角を検出するドラム角センサ(70b)と、前記クラッチ(61)を操作するクラッチ操作部材(62)及び前記シフトドラム(70)を操作するチェンジ操作部材(63)が設けられるシフトスピンドル(76)と、当該シフトスピンドル(76)の回動角を検出するスピンドル角センサ(79)と、前記シフトスピンドル(76)を回動させるモーター(75)と、当該モーター(75)を制御する制御装置(17)とを備え、前記クラッチ(61)が、クラッチ全容量状態(C1)とクラッチ切断状態(C4)との間に半クラッチ状態(C2)を有する車両の変速装置において、
前記シフトスピンドル(76)がシフトダウン側に回動する際、前記クラッチ操作部材(62)が前記チェンジ操作部材(63)よりも先に回動するように設けられ、
前記制御装置(17)は、前記シフトスピンドル(76)をシフトアップ側に回動させて、前記シフトドラム(70)の回動角がドラム角閾値(Sd1)に達する際の前記モーター(75)の駆動デューティを基準デューティ(Dustd)として記憶した後、前記シフトスピンドルをシフトダウン側に回動させて、前記基準デューティ(Dustd)が発生する際の前記シフトスピンドル(76)の回動角(θdtp)を、前記クラッチ(61)が半クラッチ状態(C2)となるタッチポイントとして学習することを特徴とする車両の変速装置。 - 前記タッチポイントの学習を行う際の前記シフトスピンドル(76)の制御はランプ応答で実行されることを特徴とする請求項1記載の車両の変速装置。
- 前記シフトスピンドル(76)の回動角に対する前記クラッチ(61)のクラッチリフト量の特性は、シフトアップ側よりもシフトダウン側が、より小さな回動角で立ち上がり、且つ、より急な勾配でリフトするように設定されていることを特徴とする請求項1記載の車両の変速装置。
- 前記タッチポイントの学習の制御は、前記エンジン(21)の始動時、または、車両(10)の主電源が供給される度に1回実行されることを特徴とする請求項1記載の車両の変速装置。
- 前記制御装置(17)は、前回の前記エンジン(21)の運転時、または、前回の変速装置(25)の電源がオンにされた時に学習した前記タッチポイントを不揮発性メモリに記憶し、今回学習した前記タッチポイントを前回学習した前記タッチポイントと比較することを特徴とする請求項4記載の車両の変速装置。
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