以下、添付図面に従って本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態に係る印刷システムの構成例を示したブロック図である。この印刷システム10は、DTP(Desk Top Publishing)装置12と、データベースサーバ14と、管理用コンピュータ16と、画像処理装置20と、印刷制御装置22と、印刷装置24と、画像読取装置26と、を備える。画像処理装置20は、電気通信回線28を通じて、DTP装置12、データベースサーバ14、管理用コンピュータ16、印刷制御装置22、及び画像読取装置26と接続されている。
電気通信回線28は、ローカルエリアネットワーク(LAN;local area network)であってもよいし、ワイドエリアネットワーク(WAN;wide area network)であってもよく、これらの組み合わせであってもよい。電気通信回線28は、有線通信回線に限らず、一部又は全部を無線通信回線とすることができる。また、本明細書において、信号の受け渡しが可能な機器同士の「接続」という表記については、有線接続に限らず、無線接続も含む。
DTP装置12は、印刷しようとする画像内容を示す原稿画像のデータを生成する装置である。DTP装置12は、コンピュータのハードウェアとソフトウェアの組み合わせによって実現される。ソフトウェアという用語はプログラムと同義である。DTP装置12は、印刷しようとする文字、図形、絵柄、イラスト、写真画像などの様々な種類の画像部品を編集し、印刷面上にレイアウトする作業を行うために用いられる。
DTP装置12による編集作業等によって印刷元画像データとしての原稿画像データが生成される。DTP装置12は、ページ記述言語(PDL;page description language)による電子原稿を生成する。DTP装置12によって生成された原稿画像データは、データベースサーバ14や画像処理装置20に転送される。なお、原稿画像データを生成する手段については、DTP装置12で作成する形態に限らず、図示せぬ他のコンピュータや画像作成/編集装置等によって作成する態様も可能である。原稿画像データは、電気通信回線28を通じて、或いはメモリカードなどのリムーバブルメディア(外部記憶媒体)を用いて、データベースサーバ14や画像処理装置20、印刷制御装置22等に入力することができる。
データベースサーバ14は、電子原稿のジョブチケット、色見本データ、ターゲットプロファイル、印刷装置24と用紙の組み合わせに適したデバイスプロファイル等の各種データ管理を行う装置である。なお、ジョブチケットは、例えば、JDF(Job Definition Format)ファイルの形式とすることができる。
管理用コンピュータ16は、印刷システム10における各種管理を行う。例えば、画像管理、印刷ジョブの管理、一台又は複数台の印刷装置24の稼働状況の管理などを行う。
画像処理装置20は、DTP装置12等で生成された印刷用の原稿画像データ(例えば、ページ記述言語で記述されたデータ)をラスタライズ処理する手段として機能する。ラスタライズ処理は、RIP(Raster Image Processor)処理と呼ばれる。画像処理装置20は、RIP装置の一機能として実現することができる。
画像処理装置20は、連続調画像である印刷用の原稿画像データから印刷装置24による出力に適した色別のドットパターンのデータに変換するための色変換処理機能及びハーフトーン処理機能を備える。また、本例の画像処理装置20は、ハーフトーン処理機能に関して、印刷システム10における印刷装置24の特性パラメータに基づき、2種類以上のハーフトーン処理規則を生成する機能を備える。つまり、画像処理装置20は、ハーフトーン処理規則を生成するハーフトーン処理生成機能と、生成したハーフトーン処理規則を用いて連続調画像にハーフトーン処理を実施するハーフトーン処理機能と、を備えている。画像処理装置20は、コンピュータのハードウェアとソフトウェアの組み合わせによって実現することができる。
ハーフトーン処理規則とは、連続調画像のデータからドットパターンのデータであるハーフトーン画像のデータに変換するハーフトーン処理を実施するための処理ルールである。ハーフトーン処理規則は、ハーフトーンアルゴリズムと、ハーフトーンパラメータとの組み合わせによって規定される。ハーフトーン処理規則は、ハーフトーン処理の具体的な演算の仕組みを意味しており、ハーフトーン処理の内容を特定するものである。
ハーフトーンアルゴリズムの種類としては、例えば、ディザ法、誤差拡散法、ダイレクトバイナリーサーチ法などがある。ハーフトーンパラメータとは、ハーフトーンアルゴリズムに従った演算処理に用いる具体的なパラメータである。ハーフトーンパラメータは、ハーフトーンアルゴリズム毎に定められる。例えば、ディザ法の場合のハーフトーンパラメータとして、ディザマトリクスのサイズ及び閾値が定められる。誤差拡散法におけるハーフトーンパラメータとして、誤差拡散マトリクスのマトリクスサイズ、誤差拡散係数、及び各誤差拡散マトリクスの適用階調区間の設定がある。ダイレクトバイナリーサーチ法におけるハーフトーンパラメータとして、画素の入れ替え(交換)を行う処理回数を示す画素更新回数、画素の入れ替え行う画素の範囲を示す交換画素範囲、がある。また、各ハーフトーンアルゴリズムに対して、システム誤差に対する耐性の評価用パラメータをハーフトーンパラメータに加えることができる。ハーフトーン処理規則を生成する際には、上記に例示の複数のパラメータのうち少なくとも一つのパラメータがハーフトーンパラメータとして特定される。
画像処理装置20における処理機能の具体的内容については後述する。画像処理装置20で生成されたハーフトーン画像のデータを印刷制御装置22に与えることにより、印刷装置24によって対象画像の印刷が行われる。
印刷制御装置22は、画像処理装置20により生成された印刷画像データに基づき印刷装置24による印刷動作を制御する。印刷装置24は、印刷制御装置22の制御にしたがい印刷を実行する画像形成手段である。印刷装置24における印刷方式や使用する色材の種類については特に限定されない。印刷装置24として、例えば、インクジェット印刷機、電子写真プリンタ、レーザープリンタ、オフセット印刷機、フレキソ印刷機など、各種の印刷装置を採用できる。「印刷装置」という用語は、印刷機、プリンタ、画像記録装置、画像形成装置、画像出力装置などの用語と同義のものとして理解される。色材には、印刷装置24の種類に応じて、インクやトナー等を使用することができる。
ここでは、印刷装置24として、無版式のデジタル印刷機の一例であるインクジェット印刷機を用いる例を説明する。本実施形態の印刷システム10では、印刷装置24の一例として、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の4色のインクを用いてカラー画像の形成が可能なインクジェット印刷機を用いる。ただし、インクの色数やその組み合わせはこの例に限らない。例えば、CMYK4色の他に、ライトシアン(LC)、ライトマゼンタ(LM)などの淡色インクを加える態様や、赤、緑などの特色のインクを用いる態様なども可能である。
図1では、印刷制御装置22と印刷装置24とを別々のブロックで示し、両者の間で有線又は無線の通信接続により信号の受け渡しを行う態様としているが、このような構成に限らず、印刷制御装置22と印刷装置24とが一体的に組み合わせされた印刷装置を構成することも可能である。
また、印刷装置24として印刷版を用いる有版式の印刷機を採用する場合は、印刷制御装置22に加えて、画像データから印刷版を作るプレートレコーダ等の製版装置(不図示)を具備するシステム構成となる。この場合、プレートレコーダ等の製版装置とそのコントローラ、並びに、その製版装置で作成される印刷版を使用して印刷を行う印刷機などが電気通信回線28に接続される。有版式の印刷機の場合、印刷制御装置22と製版装置(不図示)と印刷装置24とを組み合わせた構成を全体として「印刷装置」と把握することができる。印刷装置24は「画像形成部」の一形態に相当する。
画像読取装置26は、印刷装置24によって印刷されたプリント物(印刷物)の画像を読み取り、その読取画像を示す電子画像データを生成する手段である。画像読取装置26は、プリント物の画像を撮像して、その画像情報を電気信号に変換する撮像素子(光電変換素子)と、撮像素子から得られる信号を処理してデジタル画像データを生成する信号処理回路とを含む。
画像読取装置26としては、印刷装置24と別体のスキャナ(例えば、フラットベット型のスキャナなど、いわゆるオフラインで利用可能なオフラインスキャナ)を用いることができる。また、画像読取装置26は、印刷装置24に組み込まれたものであってもよい。例えば、印刷装置24の用紙搬送経路に画像読取用のラインセンサ(撮像ユニット)が設置され、画像形成後のプリント物を搬送しながらラインセンサによってプリント画像を読み取る構成であってもよい。印刷装置24における用紙搬送経路に設置される画像読取用のラインセンサを「インラインスキャナ」又は「インラインセンサ」という用語で呼ばれる場合がある。画像読取装置26は「画像読取手段」の一形態に相当する。
画像読取装置26で生成されたプリント画像の読取画像データは画像処理装置20に入力される。画像処理装置20は、画像読取装置26から得られる読取画像データを解析する機能を備える。
<システム構成のバリエーションについて>
DTP装置12、データベースサーバ14、管理用コンピュータ16、画像処理装置20、印刷制御装置22の機能を1台のコンピュータで実現することも可能であるし、複数台のコンピュータで実現することも可能である。また、コンピュータごとの役割や機能の分担については、様々な形態があり得る。例えば、DTP装置12と画像処理装置20とを統合して1台のコンピュータでこれらの機能を実現してもよいし、或いはまた、管理用コンピュータ16内に画像処理装置20の機能を搭載してもよい。また、画像処理装置20の機能と印刷制御装置22の機能を1台のコンピュータで実現する形態も可能である。更に、画像処理装置20の機能を複数台のコンピュータで分担して実現する構成も可能である。
本システムに含まれるDTP装置12、データベースサーバ14、管理用コンピュータ16、画像処理装置20、印刷制御装置22、印刷装置24、画像読取装置26、製版装置等の台数は特に限定されない。
また、本例ではDTP装置12、データベースサーバ14、管理用コンピュータ16、画像処理装置20、印刷制御装置22等が電気通信回線28に接続されているネットワークシステムの形態を例示しているが、本発明の実施に際しては、各要素が必ずしも通信ネットワークに接続されていなくてもよい。
<画像処理装置20のハードウェア構成>
図2は画像処理装置20のハードウェア構成例を示すブロック図である。本例の画像処理装置20は、パーソナルコンピュータ(PC;Personal Computer)を用いて実現されている。すなわち、画像処理装置20は、PC本体30と表示装置32と入力装置34とを備える。「PC」という表記はパーソナルコンピュータを表しており、デスクトップ型、ノート型、タブレット型など、各種形態のコンピュータが含まれる。PC本体30は、中央演算処理装置(CPU;Central Processing Unit)41と、メモリ42と、各種プログラムやデータ等を記憶保存する記憶装置としてのハードディスク装置(HDD;Hard Disk Drive)43と、入力インターフェース部44と、ネットワーク接続用の通信インターフェース部45と、表示制御部46と、周辺機器用インターフェース部47とを備える。
図1で説明した画像読取装置26は、図2の周辺機器用インターフェース部47を介して画像処理装置20に接続することもできる。
表示装置32は、例えば、液晶ディスプレイや有機EL(Organic Electro-Luminescence)ディスプレイなどを用いることができる。表示装置32は表示制御部46に接続される。入力装置34は、キーボード、マウス、タッチパネル、トラックボールなど、各種の手段を採用することができ、これらの適宜の組み合わせであってもよい。本例では入力装置34として、キーボードとマウスが用いられる。入力装置34は入力インターフェース部44に接続される。表示装置32と入力装置34はユーザーインターフェース(UI;User Interface)として機能する。オペレータ(ユーザー)は、表示装置32の画面に表示される内容を見ながら入力装置34を使って各種情報の入力を行うことができ、画像処理装置20や印刷装置24等を操作することができる。また、表示装置32を通じてシステムの状態等を把握(確認)することが可能である。
ハードディスク装置43には、画像処理に必要な各種プログラムやデータ等が格納されている。例えば、特性パラメータ取得用チャートのチャートデータ、特性パラメータ生成用の演算プログラム、ハーフトーン処理規則の生成処理を含む画像処理プログラム、ハーフトーン選択用チャートの生成プログラムなどが記憶される。ハードディスク装置43に格納されているプログラムがメモリ42にロードされ、これをCPU41が実行することにより、プログラムで規定される各種の手段として機能する。
なお、図2に示したPC本体30と表示装置32と入力装置34と同様のハードウェア構成を図1で説明したDTP装置12、データベースサーバ14、管理用コンピュータ16、印刷制御装置22などのハードウェア構成として採用することができる。
<画像処理装置20の機能に関する説明>
図3は第1の実施形態に係る画像処理装置20の機能を説明するためのブロック図である。画像処理装置20は、制御部50と、特性パラメータ取得部52と、特性パラメータ記憶部54と、優先度パラメータ保持部56と、ハーフトーン処理生成部58と、ハーフトーン処理規則記憶部60とを備える。
制御部50は、画像処理装置20における各部の動作を制御する。特性パラメータ取得部52は、図1で説明した印刷装置24を含む印刷システム10の特性に関する特性パラメータを取得する手段である。印刷システムの特性に関する特性パラメータには、インクジェット印刷システムの場合、例えば、解像度、ノズル数、インク種、平均ドット濃度、平均ドット径、平均ドット形状、各印刷素子のドット濃度、ドット径、ドット形状、ドット形成位置ズレ、不吐、着弾干渉などがある。ここに例示したパラメータの少なくとも一つ、好ましくは複数のパラメータに関する情報が特性パラメータ取得部52を通じて取得される。
上記に例示した様々な特性パラメータのうち、各印刷素子のドット濃度、ドット径、ドット形状、着弾干渉のパラメータは、使用するインクや印刷媒体、記録ヘッドの特性の組み合わせに応じて変わり、また、ドット形成位置ズレや不吐についても記録ヘッドの状態によって変わるため、これらの各種パラメータについて、ユーザーが適切な値を入力することは作業負荷が多大となる。なお、記録ヘッドの特性には、インクを吐出させる際に記録ヘッドに印加される駆動信号の波形や周波数などが含まれ、記録ヘッドの状態とは例えば記録ヘッドの傾きや曲がり、印刷媒体との距離や各印刷素子の状態を示す。
印刷素子とは、印刷装置24においてドットの記録を担う記録素子のことをいう。インクジェット印刷装置の場合、インクジェットヘッドにおけるインク吐出用のノズルが「印刷素子」に相当する。凸版を用いる印刷装置の場合、版における網点の凸部のレリーフが「印刷素子」に相当する。
印刷システムの特性には、複数の印刷素子の個別の記録特性、及び、複数の印刷素子に共通の特性、のうち少なくとも一つが含まれる。印刷素子の個別の記録特性には、ドット濃度、ドット径、ドット形状、ドットの記録位置誤差、及び、記録不能異常のうち少なくとも一つが含まれる。インクジェット印刷装置の場合、ドットの記録位置誤差とはドット形成位置ズレに対応し、記録不能異常とは「不吐」に対応する。
複数の印刷素子に「共通の特性」には、平均ドット濃度、平均ドット径、平均ドット形状、及び、着弾干渉のうちの少なくとも一つが含まれる。
本実施形態による特性パラメータの取得方法は、印刷装置24によって特性パラメータ取得用チャートを出力し、インラインスキャナやオフラインスキャナ等の画像読取装置26(図1参照)によって特性パラメータ取得用チャートを読み取り、その読取画像を解析して各パラメータを取得するものである。
特性パラメータとして例示した解像度、ノズル数、インク種、平均ドット濃度、平均ドット径、平均ドット形状、各印刷素子のドット濃度、ドット径、ドット形状、ドット形成位置ズレ、不吐、着弾干渉などの項目のうち、解像度、ノズル数、インク種は、システム仕様に関する特性パラメータである。
したがって、これらシステム仕様に関する特性パラメータについては、予めシステム内にパラメータを保持しておくことが好ましい。そして、これらシステム仕様に関する特性パラメータである解像度、ノズル数、インク種に基づいて、システム個別の特性に関するパラメータを取得するための特性パラメータ取得用チャートのデータを生成し、又は予めシステム内に保持されている複数の特性パラメータ取得用チャートのデータの中から選択し、当該印刷システム10の印刷装置24によって特性パラメータ取得用チャートを出力し、画像読取装置26(図1参照)から特性パラメータ取得用チャートを読み取り、印刷装置24に固有の特性に関する各種の特性パラメータを取得する構成が好ましい。
システム仕様に関する特性パラメータとしては、他に、滴種、単方向走査であるか双方向走査であるか、走査速度、印刷媒体の搬送量、吐出周波数などがあり、これらの特性パラメータを含めた少なくとも一つのシステム仕様に関する特性パラメータに基づいて、特性パラメータ取得用チャートのデータを生成する構成が好ましい。
本例の画像処理装置20は、印刷システム10の特性に関する特性パラメータを自動的に取得するための手段として、特性パラメータ取得用チャート生成部62と画像解析部64とを備えている。
特性パラメータ取得用チャート生成部62は、印刷システムの特性に関する特性パラメータを得るためのパターンを含んだ特性パラメータ取得用チャートのチャートデータを発生させる処理部である。特性パラメータ取得用チャート生成部62で生成されたチャートデータはデータ出力部66を通じて、印刷制御装置22(図1参照)に送られ、印刷装置24により特性パラメータ取得用チャートが印刷される。
特性パラメータ取得用チャート生成部62と、特性パラメータ取得用チャート生成部62によって生成されたチャートデータに基づいて印刷装置24(図1参照)により特性パラメータ取得用チャートを出力する構成との組み合わせが「特性パラメータ取得用チャート出力手段」の一形態に相当する。また、特性パラメータ取得用チャート生成部62が「特性パラメータ取得用チャート生成手段」の一形態に相当する。
特性パラメータ取得用チャートの例について詳細は後述するが、特性パラメータ取得用チャートとしては、例えば、インクの各色のヘッドによる各印刷素子の単一ドットパターンとすることができる。単一ドットパターンは、各ドットを他のドットと重ねることなく、それぞれ孤立させて、個々に単独のドットとして打滴したパターンである。このような単一ドットパターンのチャートを読み取ることにより、各印刷素子のドット濃度、ドット径、ドット形状、ドット形成位置ズレ、及び不吐に関するパラメータを読み取ることができる。
また、特性パラメータ取得用チャートには、単一ドットパターンに加えて、複数ドットの重なった連続ドットパターンを含めることができる。連続ドットパターンとして二つのドットのドット間距離を変えて、互いにドットの一部が重なるように打滴した連続ドットパターンを含めることができる。このような連続ドットパターンは、着弾干渉によるドット変形量のパラメータを取得するために利用される。
本印刷システム10の滴種が1種類の場合、1種類のドットを単独で打滴して単一ドットパターンとし、複数重ねて打滴して連続ドットパターンとすればよい。滴種が複数有る場合は、各々の種類のドットを単独で打滴して単一ドットパターンとし、各々の種類のドットの組み合わせで複数重ねて打滴して連続ドットパターンとする。
特性パラメータ取得用チャートの出力に際しては、同一印刷素子の単一ドットを複数回印刷し、それらのドット濃度、ドット径、ドット形状、ドット形成位置ズレの平均値を、該印刷素子のドット濃度、ドット径 、ドット形状、ドット形成位置ズレとしても良い。また、更に、各印刷素子のドット濃度、ドット径、ドット形状を平均化して平均ドット濃度、平均ドット径、平均ドット形状を取得しても良い。
システム誤差に対する耐性設計をする場合には、特性パラメータ取得用チャートの読み取りによって得られた測定値の平均値からのばらつきを示す分散σ2を計算し、この分散σ2の平方根である標準偏差σの値を、後ほど使用する誤差の所定量としても良い。
印刷装置24によって印刷された特性パラメータ取得用チャートの印刷結果は画像読取装置26によって読み取られ、特性パラメータ取得用チャートの読取画像のデータが得られる。
画像解析部64は、画像読取装置26によって読み取られた読取画像を解析して、特性パラメータの情報を生成する特性パラメータ生成処理部として機能する。画像解析部64によって、特性パラメータ取得用チャートから自動的に特性パラメータの情報が得られる。画像解析部64は画像解析手段の一形態に相当する。
すなわち、画像処理装置20における特性パラメータ取得部52は、特性パラメータ取得用チャートの読取画像の解析による測定結果から自動的に特性パラメータを取得する構成となっている。画像解析部64と特性パラメータ取得部52との組み合わせは特性パラメータ取得手段の一形態に相当する。
特性パラメータ取得部52を通じて取得された特性パラメータの情報は特性パラメータ記憶部54に記憶される。なお、特性パラメータ記憶部54には、システム仕様に関する特性パラメータを予め保持しておくことができる。
ハーフトーン処理生成部58は、特性パラメータに基づき、ハーフトーン処理に要求される複数の要求項目に対する優先度のバランスが異なる2種類以上のハーフトーン処理のそれぞれの処理内容を規定するハーフトーン処理規則を生成する。画像処理装置20は、シミュレーション画像生成部68と評価値演算部70とを含んだ画質評価処理部74を備えており、ハーフトーン処理生成部58は画質評価処理部74と連携して2種類以上のハーフトーン処理規則を生成する。ハーフトーン処理生成部58はハーフトーン処理生成手段の一形態に相当する。評価値演算部70は評価値算出手段の一形態に相当する。画質評価処理部74は画質評価手段の一形態に相当する。
画質評価処理部74は、シミュレーション画像の生成とシミュレーション画像に対する画像品質の評価値の計算を繰り返しながら、評価値が改善される最適化探索の処理を行う。画質評価処理部74による処理により、ハーフトーンパラメータが決定される。
ハーフトーン処理生成部58により生成された複数種類のハーフトーン処理規則は、ハーフトーン処理規則記憶部60に登録される。図3では、図示の便宜上、2種類の異なるハーフトーン処理規則1,2が生成され、これらハーフトーン処理規則1,2がハーフトーン処理規則記憶部60に記憶保存される様子を示したが、Kを2以上の整数とした場合に、K以上の複数種類のハーフトーン処理規則が生成され得る。そして、生成されたK種類のハーフトーン処理規則1,2,…Kの全て又は一部をハーフトーン処理規則記憶部60にラインアップとして登録することができる。ハーフトーン処理規則記憶部60はハーフトーン登録手段の一形態に相当する。ハーフトーン処理規則記憶部60には、印刷システム10で使用可能なハーフトーン処理の候補としての複数種類のハーフトーン処理規則を登録しておくことができる。こうしてハーフトーン処理生成部58にて生成された複数のハーフトーン処理規則の中から、実際の印刷に使用するハーフトーン処理規則が決定される。
本例の画像処理装置20では、複数のハーフトーン処理規則の中からいずれか一つのハーフトーン処理規則を選ぶための選択支援手段として、ハーフトーン選択用チャート生成部76を備えている。
ハーフトーン選択用チャート生成部76では、2種類以上のハーフトーン処理規則のそれぞれによって得られるハーフトーン画像の印刷結果を対比可能に並べたハーフトーン選択用チャートのチャートデータを生成する。ハーフトーン選択用チャート生成部76で生成されたチャートデータはデータ出力部66を通じて、印刷制御装置22(図1参照)に送られ、印刷装置24によりハーフトーン選択用チャートが印刷される。
ハーフトーン選択用チャート生成部76と印刷装置24との組み合わせはハーフトーン選択用チャート出力手段の一形態に相当する。
ユーザーはハーフトーン選択用チャートの出力結果を見て、所望のハーフトーン処理規則を選択することができる。ユーザーによるハーフトーン処理規則の選択操作は入力装置34を用いて行われる。入力装置34はユーザーが所望のハーフトーン処理規則を選択する操作を行うための「ハーフトーン選択操作手段」として機能する。すなわち、入力装置34は、ハーフトーン選択用チャートの生成に用いられた2種類以上のハーフトーン処理の中からユーザーがいずれかのハーフトーン処理の種類を選択するためのユーザーの操作を受け付けるハーフトーン選択操作手段として機能する。
また、このようなユーザーによるハーフトーン処理規則の選択機能のみならず、システムが自動的に一つのハーフトーン処理規則を選択する機能を備えていてもよい。この場合、ハーフトーン処理に対する複数の要求項目の優先度に関する優先度パラメータを予め保持しておくことが必要である。優先度パラメータ保持部56には、複数の要求項目に関する優先度のバランスを指定した優先度パラメータが記憶されている。優先度パラメータ保持部56は優先度パラメータ保持手段の一形態に相当する。
優先度パラメータは入力装置34を通じてユーザーが自由に入力し、優先度のバランスの設定、並びに、設定内容の変更を行うことができる。或いはまた、優先度パラメータは、システム上、予め一種類又は複数種類の選択候補が用意されていてもよい。優先度パラメータの設定に関する選択候補が複数種類用意されている場合、ユーザーは印刷目的や用途、生産性などを考慮して、入力装置34を通じていずれかの選択候補を選択することができる。
優先度パラメータによって要求項目に対する優先度のバランスを指定しておくことにより、この優先度パラメータ保持部56で特定される優先度パラメータにしたがい、システム上で推奨される最適な一つのハーフトーン処理規則が一意に決定される構成とすることができる。このような自動選択の機能は制御部50によって実現でき、かかる自動選択の処理を担う制御部50の構成がハーフトーン自動選択手段の一形態に相当する。
入力装置34は、ユーザーが各要求項目に対する優先度に関する設定を入力するための優先度入力部として機能する。ユーザーが設定した優先度に応じて、その優先度の設定に基づくハーフトーン処理規則(すなわち、ハーフトーンアルゴリズムとハーフトーンパラメータの組み合わせ)と、そのユーザー設定に係る優先度のバランスと対称的な優先度のバランスとなるハーフトーン処理規則とを生成して、両者の比較を行うという態様があり得る。
また、ユーザーが設定した優先度を基準にして、その優先度のバランスをわずかに振って、複数設定した優先度のバランスに基づき、複数のハーフトーン処理規則を生成するという態様があり得る。
画像処理装置20は、生成したハーフトーン処理規則にしたがって、連続調画像のデータをハーフトーン処理する機能を有する。すなわち、画像処理装置20は、画像入力部77と、色変換処理部78と、ハーフトーン処理部80とを備える。
画像入力部77は、原稿画像のデータを取り込む入力インターフェース部であり、画像データ取得部として機能する。画像入力部77は、外部又は装置内の他の信号処理部から原稿画像データを取り込むデータ入力端子で構成することができる。画像入力部77として、有線又は無線の通信インターフェース部を採用してもよいし、メモリカードなどの外部記憶媒体(リムーバブルディスク)の読み書きを行うメディアインターフェース部を採用してもよく、若しくは、これら態様の適宜の組み合わせであってもよい。
色変換処理部78は、インターナショナル・カラー・コンソーシアム (ICC;International Color Consortium)によるICCプロファイルの形式に則したカラープロファイルを用いて、原稿画像データの色変換処理を行い、印刷装置24による出力に適したカラー画像信号を生成する。印刷装置24においてCMYKの4色のインクを用いる場合には、色変換処理部78によりCMYKの画像信号が生成される。また、CMYKに加え、ライトマゼンタ(LM)及びライトシアン(LC)を含む6色のインクを用いる場合には、色変換処理部78によりCMYKとLM、LCの各色成分を含む画像信号が生成される。
ハーフトーン処理部80は、ハーフトーン処理生成部58によって生成されたハーフトーン処理規則を用いて、各色の連続調画像に対してハーフトーン処理を行い、ハーフトーン画像を生成する。ハーフトーン処理部80にて生成されたハーフトーン画像のデータはデータ出力部66を通じて、印刷制御装置22(図1参照)に送られ、印刷装置24により印刷が行われる。
ハーフトーン処理部80による処理を経て生成されたハーフトーン画像に基づいて印刷装置24によって印刷媒体に印刷を行うことにより印刷物を得る方法は印刷物の製造方法として把握できる。
また、画像処理装置20の画質評価処理部74はハーフトーン処理部80と連携して、印刷用ハーフトーン画像の評価値を算出することができる。ハーフトーン処理部80によって生成されるハーフトーン画像に関する評価値の情報は、表示装置32の画面上に表示させることができ、また、データ出力部66を通じて外部に提供することができる。
<印刷システムにおけるハーフトーン処理規則の決定手順>
本実施形態の印刷システム10におけるハーフトーン処理規則の定め方について詳説する。図4は本実施形態におけるハーフトーン処理規則の生成方法の一例を示すフローチャートである。
まず、印刷システム10の特性に関する特性パラメータを得るために、特性パラメータ取得用チャートを生成し、印刷装置24(図1参照)によって特性パラメータ取得用チャートを出力する(図4のステップS10)。ステップS10は特性パラメータ取得用チャート出力工程の一形態に相当する。
次に、ステップS10にて出力された特性パラメータ取得用チャートの読み取りを行う(ステップS11)。ステップS11では画像読取装置26(図1参照)によって特性パラメータ取得用チャートの印刷物が読み取られ、特性パラメータ取得用チャートの読取画像が得られる。図4のステップS11は画像読取工程の一形態に相当する。
次に、ステップS11により取得された読取画像を解析して、印刷システムの特性に関する特性パラメータを取得する(ステップS12)。ステップS12は特性パラメータ取得工程の一形態に相当する工程である。
次に、ハーフトーン処理に対する要求項目の優先度の異なる2種類以上のハーフトーン処理規則を生成する(ステップS14)。ハーフトーン処理規則の生成に際しては、優先度パラメータと特性パラメータとに基づき、複数種類のハーフトーン処理規則が生成される。ステップS14はハーフトーン処理生成工程の一形態である。
そして、生成された各ハーフトーン処理規則を用いてハーフトーン選択用チャートを出力する(ステップS16)。ステップS16はハーフトーン選択用チャート出力工程の一形態に相当する。
ユーザーはハーフトーン選択用チャートの出力結果を見て、いずれか一つのハーフトーン処理規則を選ぶことができる。ユーザーの選択操作に基づき、印刷に用いるハーフトーン処理規則が決定される(ステップS18)。すなわち、ステップS18はハーフトーン選択用チャートの生成に用いられた2種類以上のハーフトーン処理の中からユーザーがいずれかのハーフトーン処理の種類を選択するためのユーザーの操作を受け付け、ユーザーによる選択操作に基づいてハーフトーン処理規則が決定される。ステップS18はハーフトーン選択操作工程の一形態に相当する。
<特性パラメータ取得用チャートの例>
図4のステップS12で説明した特性パラメータ取得工程で用いられる特性パラメータ取得用チャートの具体例について説明する。
図5は特性パラメータ取得用チャート100の一例を示す図である。ここでは、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各色の記録ヘッドにおける印刷素子であるノズルによって、印刷媒体101上に、単一ドットパターン102C、102M、102Y、102Kと、第1の連続ドットパターン104C、104M、104Y、104Kと、第2の連続ドットパターン106C、106M、106Y、106Kとが打滴されたものが示されている。単一ドットパターン102C、102M、102Y、102Kは、単一ドットが他のドットと分離された孤立状態で離散的に記録される離散ドットのパターンである。第1の連続ドットパターン104C、104M、104Y、104Kと、第2の連続ドットパターン106C、106M、106Y、106Kは、二つ以上のドットを接触させて記録される連続ドットのパターンである。
単一ドットパターン102C、102M、102Y、102K、第1の連続ドットパターン104C、104M、104Y、104K、第2の連続ドットパターン106C、106M、106Y、106Kは、いずれも特性パラメータを得るためのパターンの一形態に相当する。単一ドットパターン102C、102M、102Y、102Kは、離散ドットのパターンの一形態に相当する。第1の連続ドットパターン104C、104M、104Y、104Kと、第2の連続ドットパターン106C、106M、106Y、106Kは、連続ドットのパターンの一形態に相当する。
図6は図5の特性パラメータ取得用チャートの描画に用いたシリアルスキャン型のインクジェット印刷装置の平面模式図である。図6では、図示の便宜上、各色の記録ヘッドのノズル数を減じて各色4ノズルのみを示した。ノズル数やノズルの配列形態、ノズル密度については、様々な設計が可能である。
図6に示したように、シリアルスキャン型のインクジェット印刷装置におけるヘッドユニット110は、シアンインクを吐出するシアン記録ヘッド112Cと、マゼンタインクを吐出するマゼンタ記録ヘッド112Mと、イエローインクを吐出するイエロー記録ヘッド112Yと、ブラックインクを吐出するブラック記録ヘッド112Kと、がキャリッジ114に搭載され、図6のX方向に沿って往復移動可能に構成されている。X方向に直交するY方向が印刷媒体101の搬送方向である。X方向は「主走査方向」に相当し、Y方向は「副走査方向」に相当する。
シアン記録ヘッド112C、マゼンタ記録ヘッド112M、イエロー記録ヘッド112Y、ブラック記録ヘッド112Kの各記録ヘッドの詳細な構造は図示しないが、それぞれのインクジェット方式の記録ヘッドは、各ノズルに対応してインク吐出に必要な吐出エネルギーを発生させる吐出エネルギー発生素子(例えば、圧電素子や発熱素子)を備えている。各記録ヘッド(112C,112M,112Y,112K)は、印刷制御装置22(図1参照)から与えられる駆動信号及び吐出制御信号に従い、オンデマンドでインク液滴を吐出する。
図6のキャリッジ114をX方向に移動させつつ、適宜のタイミングでシアン記録ヘッド112Cの各ノズル118Cから打滴を行うことにより、図5の符号102Cで示す単一ドットパターンを形成することができる。シアンインクによる単一ドットパターン102Cを描画した後、印刷媒体101をY方向に搬送し、印刷媒体101における記録領域を変えてから、キャリッジ114をX方向に移動させつつ、適宜のタイミングでシアン記録ヘッド112Cの各ノズル118Cから打滴を行うことにより、図5の符号104Cで示す第1の連続ドットパターンを形成することができる。また、シアンインクによる第1の連続ドットパターン104Cを描画した後、印刷媒体101をY方向に搬送し、印刷媒体101における記録領域を変えてから、キャリッジ114をX方向に移動させつつ、シアン記録ヘッド112Cの各ノズル118Cから適宜のタイミングで打滴を行うことにより、図5の符号106Cで示す第2の連続ドットパターンを形成することができる。
第1の連続ドットパターン104Cと第2の連続ドットパターン106Cとでは、重なり合うドット同士のドット間距離の設定が異なっている。ドット間距離を変えて複数種類の連続ドットパターンを記録することにより、ドット間距離dと着弾干渉の影響による変化量との関係に関する特性パラメータを把握することが可能になる。
なお、図5では、ドット間距離を異ならせた2種類の連続ドットパターン(104C,106C)を例示しているが、ドット間距離を変えて3種類以上の連続ドットパターンを形成してもよい。
シアンインクによるドットパターン(102C,104C,106C)の記録に続けて、以下同様に、マゼンタ記録ヘッド112Mの各ノズル118Mによる打滴、イエロー記録ヘッド112Yの各ノズル118Yによる打滴、ブラック記録ヘッド112Kの各ノズル118Kによる打滴を、順次に行うことで、図5に示す特性パラメータ取得用チャート100が生成される。
各色の単一ドットパターン102C、102M、102Y、102Kから、各色の印刷素子ごとのドット濃度、ドット径、ドット形状、ドット形成位置ズレ、及び不吐に関する情報を得ることができる。また、多数の単一ドットの測定結果を統計処理することにより、平均ドット濃度、平均ドット径、平均ドット形状、並びに、それぞれの標準偏差σ(分散σ2の平方根)を得ることができる。各印刷素子のドット濃度、ドット径、ドット形状、及びドット形成位置ズレのうち少なくとも一つの項目について算出される標準偏差σ又は分散σ2はドットのばらつきに関する分散情報の一形態に相当する。
また、各色の第1の連続ドットパターン104C、104M、104Y、104Kと、第2の連続ドットパターン106C、106M、106Y、106Kから、着弾干渉に関する特性パラメータの情報を得ることができる。着弾干渉に関する特性パラメータとは、重なり合うドット同士の相互作用である着弾干渉の影響によるドット間距離の変化、ドット濃度の変化、ドット形状の変化などに関する情報をいう。
<着弾干渉に関する特性パラメータについて>
図7及び図8は着弾干渉に関する特性パラメータの説明図である。図7の左欄は、二つのドットを部分的にオーバーラップさせて連続打滴する際の2ドットのドット間距離の設定値をd1,d2,d3と3段階に異ならせた様子が示されており、図7の右欄は、ドット間距離d1,d2,d3のそれぞれの設定で打滴を行った場合に着弾干渉の影響によってドット間距離が変化した様子を示している。なお、ここでのドット間距離とは、ドットの中心間距離を意味している。
図示のように、設定値としてのドット間距離d1、d2、d3(d1>d2>d3)に対して、それぞれ実際のドット間距離はu1、u2、u3(u1>u2>u3)となる。着弾干渉によって、ドットが引き寄せられることから、d1>u1、d2>u2、d3>u3となる。
ドット間距離の設定を変えて、着弾干渉の影響によるドット間距離の変化のデータを取得することで、図8に示すような着弾干渉データを得ることができる。図8中の横軸はドット間距離の設定値であり、「R」はドットの半径を示す。図8の縦軸は着弾干渉の影響によってドット間距離が変化する変化量を示しており、図7における|di−ui|の絶対値を示している(i=1,2,3)。図8の横軸の「2R」は、2ドットが外接する位置を示している。ドット間距離が2Rよりも大きいとドットは重ならないため、着弾干渉の影響は受けない。ドット間距離の設定が2Rよりも小さい場合に、ドット同士がオーバーラップして着弾干渉によりドットが引き寄せられ、ドット間距離が変化する。
図8では「ドット間距離の変化量」として説明しているが、着弾干渉の影響は、ドット濃度の変化やドット形状の変化としても測定することができる。
図5で説明した特性パラメータ取得用チャート100における第1の連続ドットパターン104C、104M、104Y、104K及び第2の連続ドットパターン106C、106M、106Y、106Kの読取結果から、ドット間距離dの関数としてパラメータ化された着弾干渉データを得ることができる。
このような着弾干渉に関するパラメータを印刷素子毎(ここではノズル毎)に求めて平均化する。色毎に平均化した値を色別に保持してもよいし、全色を平均化した値を共通のパラメータとして保持してもよい。
図5ではCMYK各色について滴種を1種類と仮定した場合の単一ドットパターン及び連続ドットパターンを例示したが、滴種が複数有る場合は、各々の種類のドットを単独で打滴して単一ドットパターンとし、各々の種類のドットの組み合わせで複数重ねて打滴して連続ドットパターンとする。そして各滴種の組み合わせについて着弾干渉に関するパラメータを取得することとなる。また、CMYK各色のドットの組み合わせで複数重ねて打滴して連続ドットパターンを形成し、かつ、各色のドットの組み合わせについて着弾干渉に関するパラメータを取得してもよい。
着弾干渉に関するパラメータを取得するためのチャートとして、複数ドットのドット間距離を変えるだけで無く、複数ドットの記録時間差を変えたチャートを出力してもよい。例えば、複数のドットを記録する時間差として、1パス分、2パス分、3パス分・・・という具合に、複数の水準の時間差を設定し、これら複数水準の時間差でドット同士を接触させたチャートを出力してもよい。記録時間差は打滴時間差に相当する。
例えば、図5のCMYK各色の第1の連続ドットパターン及び第2の連続ドットパターンにおいてオーバーラップさせて打滴した二つのドットを各々ドット1、ドット2として、ドット1とドット2をキャリッジ114の1回のX方向移動で連続して打滴する連続ドットパターンを形成すると共に、ドット1をキャリッジ114の1回目のX方向移動で打滴した後に、印刷媒体101のY方向搬送をせずに、ドット2をキャリッジ114の2回目のX方向移動で打滴する連続ドットパターン、ドット1をキャリッジ114の1回目のX方向移動で打滴した後に、印刷媒体101のY方向搬送をせずに、ドット2をキャリッジ114の3回目のX方向移動で打滴する連続ドットパターン・・・という具合に、複数の水準の時間差(パス差)でドット1とドット2を接触させた連続ドットパターンを形成してもよい。
<ハーフトーン処理に対する要求項目について>
ハーフトーン処理に要求される要求項目には、例えば、以下のようなものがある。すなわち、要求項目の第1分類(a)として、画質、システムコスト 、ハーフトーン生成時間、ハーフトーン処理時間がある。要求項目の第2分類(b)として、画質に関して、更に、「粒状性」と「システム誤差に対する耐性」とがある。これら複数の要求項目は、トレードオフの関係にある。また、システム誤差に対する耐性の中には、「環境変動に対する耐性」がある。環境変動に対する耐性とは、例えば、温度や湿度の影響によってインクの濃度とドットの広がり量が変動するので、その影響をシミュレーションしてハーフトーン処理規則を設計することが考えられる。
本実施形態では、ハーフトーン処理に要求される複数の要求項目に対する優先度のバランスが異なる2種類以上のハーフトーン処理のハーフトーン処理規則が生成されるが、「複数の要求項目」としては、上記に例示した、画質、システムコスト、ハーフトーン生成時間、ハーフトーン処理時間、システム誤差に対する耐性、及び、環境変動に対する耐性のうち少なくとも二つの項目が含まれる。
<ハーフトーンアルゴリズムと各要求項目に対する得失>
第1分類(a)における画質、システムコスト、ハーフトーン生成時間、ハーフトーン処理時間の各要求項目に対する各種ハーフトーンアルゴリズムの得失は、図9の図表に示すとおりである。ここでは、ハーフトーンアルゴリズムとして、ディザ法、誤差拡散法、ダイレクトバイナリーサーチ(DBS)法の3種類を比較した。
システムコストとは、ハーフトーン処理の機能を実現するために必要なCPU(Central Processing Unit)性能、メモリ容量その他のシステム仕様に関するコストが含まれる。ハーフトーン生成時間は、ハーフトーン処理規則を生成するために要する時間であり、例えば、ハーフトーンパラメータを決定するための演算に要する時間が含まれる。ハーフトーン処理時間は、生成されたハーフトーン処理規則を用いて連続調画像のデータからハーフトーン画像のデータに変換するための処理に要する時間である。
ディザ法、誤差拡散法、DBS法の3種類のハーフトーンアルゴリズムを比べると、画質に関して、ディザ法は相対的に画質が低く、DBS法は相対的に画質が高画質であり、誤差拡散法は両者の中間的な画質となる。システムコストに関して、ディザ法は相対的にコストが低く、DBS法は相対的にコストが高い。誤差拡散法のシステムコストは、ディザ法とDBS法の中間レベルである。ハーフトーン生成時間とハーフトーン処理時間に関して、ディザ法は相対的に短時間であり、DBS法は相対的にもっと時間がかかる。誤差拡散法は、ディザ法とDBS法の中間のレベルである。
また、図9に示したハーフトーンアルゴリズムの種類による相対的な得失のみならず、同じハーフトーンアルゴリズムにおいてもハーフトーンパラメータの設定によって、各要求項目に対する得失が変化する。例えば、ハーフトーンアルゴリズムがディザ法の場合、ディザマスクサイズが大きい程、画質は高くなるが、その反面、システムコストが高くなり、かつ、ハーフトーン生成時間やハーフトーン処理時間が長いものになる。
ハーフトーンアルゴリズムが誤差拡散法の場合、誤差拡散マトリクスサイズが大きい程、また、誤差拡散マトリクスを適用する階調区間の区分けが多い程、画質は高いものとなるが、他の要求項目に対してはシステムコストが高くなり、かつ、ハーフトーン生成時間やハーフトーン処理時間が長いものになる。
ハーフトーンアルゴリズムがDBS法の場合、画素の更新回数が多い程、また、交換画素範囲が広い程、画質は高いものになるが、他の要求項目に対してはシステムコストが高くなり、かつ、ハーフトーン生成時間やハーフトーン処理時間が長いものになる。
要求項目の第2分類(b)に関しては、印刷順番、作画のパスや打滴のタイミングなどによってドット濃度、ドット径、ドット形状、ドット形成位置ズレ、不吐などの特性パラメータに誤差を生ずることに対して、粒状性低下やスジ発生を抑えるように、システム誤差に対する耐性設計が可能であるが、この耐性設計によって誤差の無い状態での粒状性は低下することとなる。つまり、粒状性とシステム誤差に対する耐性はトレードオフの関係にある。
システム誤差の要因となり得る印刷順番とは、例えば、インクの色の重ね順である。また、印刷順番には、シリアルスキャン方式のヘッド走査における往路パスと復路パスの順序を含めることができる。パスとは、シリアルスキャン方式のインクジェットヘッドでマルチパスにより描画を完成させる作画モードの場合のパスの順番である。シングルパスプリンタの場合は、主走査方向の一列が「パス」に相当する。タイミングとは、例えば、印刷媒体を送りながら打滴を行う場合に、印刷媒体の搬送の誤差などの影響で打滴のタイミングによって着弾位置やドット形状などに誤差が発生するような場合を想定したものである。
システム誤差としては、他に、印刷素子の経時的な状態変化によってドット濃度、ドット径、ドット形状、ドット形成位置ズレ、不吐などの特性パラメータが変化するため、これも誤差と見做される。また、着弾干渉の影響によるドット濃度、形状や位置の変化に関して図5の様な特性パラメータ取得用チャートのみから正確にパラメータ化してシミュレーション再現する事は困難であり、この現実との乖離もシステム誤差と見做される。
つまりシステムの経時的な状態変化、特性パラメータ取得用チャートや画像読取装置26の制約、シミュレーションモデルの限界などによって生ずるシミュレーション画像と現実との乖離がシステム誤差と見做され、乖離の無い状態での粒状性を最適化し、かつ、これらの乖離が有っても現実の画像の粒状性低下やスジ発生を抑えるように耐性を持たせる設計を行うことになる。
また、ディザ法の場合、例えば、シングルパスプリンタのように各印刷素子が印刷媒体の幅方向の広い範囲に独立に存在する印刷システムの場合、各印刷素子のドット濃度、ドット径、ドット形状、ドット形成位置ズレ、或いは不吐といった特性を直接的に反映して粒状性を最適なものとするハーフトーン設計を行うことが困難である。
したがって、この場合もインク種毎に平均的なドット濃度、ドット径、ドット形状の情報に基づいて粒状性を最適化し、かつ、複数の印刷素子の個別の特性によるドット濃度、ドット径、ドット形状、ドット形成位置ズレ、或いは不吐などの誤差に対して、耐性を持たせる設計を行うことになる。
<具体例による説明>
本例の画像処理装置20では、上述した各要求項目に対する得失に基づき、各要求項目の優先度に応じて2種類以上のハーフトーン処理規則を設定する。ハーフトーン処理規則は、ハーフトーンアルゴリズムとハーフトーンパラメータとの組み合わせによって特定される。
[設定例1]優先度の設定例として、例えば、第1分類(a)に関しては画質重視、かつ、第2分類(b)に関しては粒状性重視の設定とした場合に、この優先度の設定(設定例1)に対応したハーフトーン処理規則として、次のハーフトーン処理規則を定めることができる。
・ハーフトーンアルゴリズム:DBS法
・ハーフトーンパラメータ:画素の更新回数=大、かつ 交換画素範囲=大
・システム誤差に対する耐性設計:無し
なお、ハーフトーンパラメータに関する画素の更新回数を特定する具体的数値や、交換画素範囲を特定する具体的数値については、システム上で選択できる複数の数値候補の中から相対的に大きな値に属する適宜の数値がセットされる。
DBS法に関しては、ハーフトーンパラメータとして、画素の更新回数と、交換画素範囲を指定するだけで、ハーフトーン処理規則を確定したことになる。
[設定例2] 優先度の他の設定例として、例えば、第1分類(a)に関してはハーフトーン処理時間重視、かつ、第2分類(b)に関してはシステム誤差耐性重視の設定とした場合に、この優先度の設定(設定例2)に対応したハーフトーン処理規則として、次のハーフトーン処理規則を定めることができる。
・ハーフトーンアルゴリズム: ディザ法
・ハーフトーンパラメータ:ディザマスクサイズ=小
・システム誤差耐性設計:±10マイクロメートル[μm]の誤差を付加、かつ「スジ」の耐性も考慮する
粒状性評価用パラメータα=1、かつ、スジ評価用パラメータβ=1に設定。
なお、ハーフトーンパラメータに関するディザマスクサイズを特定する具体的数値については、システム上で選択できる複数の数値候補の中から相対的に小さな値に属する適宜の数値がセットされる。上記例示の設定例2において、第2分類(b)に関してはシステム誤差の程度が分からない場合があり、またそのシステム誤差が現実の画像の粒状性やスジ品質にどの程度の影響を及ぼすのか未だ分からないため、システム誤差耐性の優先度に応じて複数設定してもよい。例えば、誤差量を「±10マイクロメートル[μm]」、「±20マイクロメートル[μm]」…と複数設定してもよい。着弾干渉のシミュレーションに関して、「実施しない設定」、「実施する設定」、「実施する際に着弾干渉によるドット移動のみをシミュレーションする設定」、「ドット移動のみでなくドット濃度や形状の変化もシミュレーションする設定」など複数設定してもよい。着弾干渉によるドット移動、濃度や形状の変化の設定に関して、特性パラメータ取得用チャートから取得したパラメータを基準に変更して複数設定してもよい。
また、着弾干渉を考慮したシミュレーションを実施する場合、着弾干渉によるドット移動及び/又はドット変形は、ドット間の距離の関数として与えるのみでなく、時間の関数で与えてもよい。
上記例示の設定例1,2に限らず、様々な優先度の設定に対応したハーフトーン処理規則を生成することができる。
ハーフトーンアルゴリズムとして、ディザ法又は誤差拡散法が選ばれた場合には、更に図10に示すフローチャートによって、各ハーフトーンアルゴリズムに対応したハーフトーンパラメータを生成する処理が行われる。
図10はハーフトーンパラメータの生成処理に関するフローチャートである。図10のフローチャートは、ディザ法と誤差拡散法の両方について共通のフローチャートである。ここでは、ディザ法を例に説明する。
まず、ハーフトーンパラメータを仮設定する(ステップS22)。ディザ法の場合、ディザマスクのマトリクスサイズ(つまりディザマスクサイズ)と各閾値を定めることがハーフトーンパラメータを定めることに相当する。ディザマスクサイズについては32×32、64×64、128×128、256×256など、様々なサイズがあり得る。ディザマスクサイズが指定された場合のハーフトーンパラメータとはディザマスクの閾値を示し、図10のフローチャートを閾値0から最大値まで繰り返すことになる。
ステップS22でハーフトーンパラメータを仮設定した後、次に、その仮設定したハーフトーンパラメータを用いてハーフトーン処理を行う(ステップS24)。ディザ法の場合、このステップS24は、閾値「0」から現閾値までのドットON画素を求めることに相当する。つまり、現閾値の階調を持つ単一階調の入力画像について、ディザマスクを適用したハーフトーン処理後のハーフトーン画像(ドット配置)を求めることに相当する。
次いで、ステップS24で得られたハーフトーン画像に対し、更に、印刷システムの特性に関する特性パラメータを用いて、印刷画像のシミュレーション画像を生成する(ステップS26)。ステップS26では、ハーフトーン画像が示すドットパターンのデータに対して、各印刷素子のドット濃度、ドット径、ドット形状、ドット形成位置ズレ、若しくは不吐、又はこれらの適宜の組み合わせなどに関する特性パラメータを反映させたドットを、ハーフトーン画像の画素に重ねて配置することにより、印刷画像のシミュレーション画像が生成される。
図11はシミュレーション画像の概念図である。図11では、格子状の各セルが画像データの画素を表している。ハーフトーン画像のデータにおいて「ドットON」の画素のセルがスクリーントーンのパターンで表示されており、「ドットOFF」の画素は白抜きで表されている。
シミュレーション画像の生成に際しては、ドットON画素の記録を担う各印刷素子のドット濃度、ドット径、ドット形状、ドット形成位置ズレ、若しくは不吐、又はこれらの適宜の組み合わせなどの記録特性を反映したドットを、当該ドットON画素の位置に配置してゆく。
このとき、周囲ドットを含めた配置状態又はドットを重ねた後の配置状態に基づき、既に取得した着弾干渉によるドット形状の変形パラメータから着弾干渉後のドット形状を算出して再配置してもよい。例えば、印刷媒体搬送方向と平行な方向である「副走査方向」(図11のY方向)のドット間距離yaによる着弾干渉の影響によりY方向にf(ya)の関数で表されるドット移動が発生し、かつ、印刷媒体搬送方向に垂直な方向である「主走査方向」(図11のX方向)のドット間距離xbによる着弾干渉の影響によりX方向にf(xb)の関数で表されるドット移動が発生するものとすると、このような着弾干渉の影響により、f(ya)+f(xb)のドット移動に伴うドット形状の変化が発生するとして、ドットの再配置が行われる。
着弾干渉する周囲ドットは「副走査方向」や「主走査方向」のみでなく斜め方向にも存在し、その影響も受けるため、「副走査方向」や「主走査方向」のみでなく任意の方向の周囲ドットnとのドット間距離cnによる着弾干渉の影響により該ドットの方向にf(cn)の関数で表されるドット移動が発生するものとして、f(ya)+f(xb)+f(c1)+f(c2)+・・・+f(cn)だけドット移動させて再配置してもよい。勿論、着弾干渉の影響は滴種によって異なるため、周囲ドット種によって関数f(*)は異なる。「*」は変数を表す。着弾干渉により、ドット移動だけでなくドット濃度やドット形状の変化も発生するとして、ドットを再配置してもよい。
ドット間距離cn、及びドットの移動を表す関数f(*)はベクトルとして取り扱うことができる。すなわち、図11を用いて説明したドットの移動を表す関数f(ya)+f(xb)、及びf(ya)+f(xb)+f(c1)+f(c2)+・・・+f(cn)についても、パラメータya、xb、c1からcnは方向を有するベクトルとして取り扱われる。そして、関数f(ya)+f(xb)、及びf(ya)+f(xb)+f(c1)+f(c2)+・・・+f(cn)もまた、方向を有するベクトルとして取り扱われる。
ここで、着弾干渉によるドット移動、濃度や形状の変化をドット間距離のみでなくドット間の打滴時間差も含めた関数で与えてもよい。つまり関数f(*)をドット間距離とドット間の打滴時間差による関数としてもよい。
図11において、シミュレーション画像はドット径、ドット形状、ドット形成位置ズレ、着弾干渉などの記録特性を反映して配置するために、ハーフトーン画像データよりも高い解像度が必要となる。例えば、ハーフトーン画像データの解像度が主走査方向、副走査方向ともに1200ドットパーインチ[dpi]の場合、各セルの大きさは約21マイクロメートル[μm]×21マイクロメートル[μm]であるが、ドット形成位置ズレが3マイクロメートル[μm]程度であるとすると、シミュレーション画像は少なくとも7倍の8400ドットパーインチ[dpi]の解像度が必要となる。ただし、一旦、ドットを高解像度なシミュレーション画像上に配置した後に平滑化した上で低解像度なシミュレーション画像に変換する事でシミュレーション画像用に必要なメモリ容量を低減する事は可能である。つまり、高解像度なシミュレーション画像はドットを配置する近傍のみ必要で、全体のシミュレーション画像は低解像度でのみ保持すればよいためメモリ容量を低減する事ができる。
図10のステップS26におけるシミュレーション画像の生成に際して、印刷装置24がシングルパスプリンタのように、各印刷素子が印刷媒体の幅方向の広い範囲にわたって独立に存在する印刷システムの場合、印刷素子毎に個別のドット濃度、ドット径、ドット形状の情報を用いるのではなく、インク種毎に各印刷素子のドット濃度、ドット径、ドット形状として、それぞれの平均値を用いてもよい。
次いで、ステップS26で生成したシミュレーション画像に対して画質評価を行う(図10のステップS28)。
画質評価は、シミュレーション画像にガウシアンフィルタなどのローパスフィルタや、人の視覚感度を表す視覚伝達関数(VTF:Visual Transfer Function)をかけた上で、周波数変換して積分した値、RMS粒状度(Root Mean Square granularity)、入力画像との誤差や標準偏差などのうち少なくとも一つの評価値を算出して行われる。ステップS28の画質評価工程で算出された値は「画質評価値」としてメモリに記憶される。
ここで、システム誤差耐性の設計を実施する場合、ハーフトーン処理結果の現閾値に該当するドットON画素と印刷順番、パス、タイミングのうち少なくとも一つの条件が同じ条件に属する画素のドットに対し、所定のドット濃度、ドット径、ドット形状、ドット形成位置ズレ、及び不吐のうち少なくとも一つの誤差を付加して、上記と同様にシミュレーション画像の生成(ステップS26)と画質評価値の算出(ステップS28)を実施する。
更に、システム誤差への耐性として粒状性の低下のみではなく、スジの発生も抑えるように耐性設計する場合には、スジ評価値として、シミュレーション画像に、上記の誤差を付加して、ローパスフィルタやVTFをかけた上で主走査方向に積分し、1次元の周波数変換を行って積分した値、入力画像の主走査方向積分値との誤差、標準偏差などが算出される。なお、粒状性やスジの定量評価値を計算する方法としては、特開2006−67423号公報や特開2007−172512号公報などに記載されている公知の方法を用いることができる。
本例では画質評価値は、以下の式で算出され、得られた値が保持される。
画質評価値=粒状性評価値[システム誤差無し]+α×{粒状性評価値[システム誤差有り(+所定量)]+粒状性評価値[システム誤差有り(−所定量)}+β×{スジ評価値[システム誤差有り(+所定量)]+スジ評価値[システム誤差有り(−所定量)]} ・・・式(1)
この画質評価値の計算式における粒状性評価値[システム誤差無し]とは、特性パラメータの変動成分に相当するシステム誤差を付加しないシミュレーション画像から算出される粒状性評価値である。粒状性評価値[システム誤差有り(+所定量)]とは、システム誤差としてプラスの(正の)所定量を付加したシミュレーション画像から算出される粒状性評価値である。粒状性評価値[システム誤差有り(−所定量)]とは、システム誤差としてマイナスの(負の)所定量を付加したシミュレーション画像から算出される粒状性評価値である。スジ評価値[システム誤差有り(+所定量)]とは、システム誤差としてプラスの(正の)所定量を付加したシミュレーション画像から算出されるスジ評価値である。スジ評価値[システム誤差有り(−所定量)]とは、システム誤差としてマイナスの(負の)所定量を付加したシミュレーション画像から算出されるスジ評価値である。係数αとβは評価用パラメータであり、係数αは粒状性評価用パラメータ、係数βはスジ評価用パラメータである。システム誤差に対する耐性を高めようとする場合、αやβはより大きな値に設定される。特に、粒状性だけでなく、「スジ」も目立たなくしようとする場合には、βの値を大きくする。既に説明したシステム誤差耐性の優先度に応じて、付加誤差の所定量、付加誤差の種類(濃度、ドット径、ドット形状、ドット形成位置ズレ、不吐、着弾干渉)、評価用パラメータとしての係数α及びβが定められる。
付加誤差の所定量は、特性パラメータ取得用チャートの読み取りによって得られるドット濃度、ドット径、ドット形状、ドット形成位置ズレなどの各項目の標準偏差σを用いることができる。付加誤差の所定量として、ドット濃度の標準偏差、ドット径の標準偏差、ドット形状の標準偏差、ドット形成位置ズレの標準偏差のうち少なくとも一つを用いることができ、これらの適宜の組み合わせとすることもできる。
図10のステップS28にて画質評価値を算出し、画質評価値が改善された場合、ハーフトーンパラメータを更新する(ステップS30)。ステップS32では、ステップS22からステップS30の処理を所定回数繰り返し実施したか否かが判定される。ディザ法の場合のステップS32の「所定回数」とは、閾値の候補の全画素数となる。
ステップS32の判定において、所定回数の繰り返し処理が完了していなければ、ステップS22に戻り、ステップS22からステップS30の処理を繰り返す。ステップS32の判定において、所定回数の繰り返し処理が完了したら処理を終了する。
<誤差拡散法の場合>
図10のフローチャートを誤差拡散法のハーフトーンパラメータの生成に適用する例を説明する。誤差拡散法の場合、ハーフトーンパラメータとは、誤差拡散マトリクスのサイズ、拡散係数、及び、各誤差拡散マトリクスの適用階調区間の設定を示す。ここでは説明を簡単にするために、誤差拡散マトリクスのサイズは1種類の共通サイズとする。
図10のフローチャートを全ての適用階調区間について繰り返すことで、各適用階調区間の誤差拡散マトリクスの拡散係数が定められる。
誤差拡散マトリクスの適用階調区間は、例えば、8ビット階調の場合に、0−50、51−100、101−150、151−200、201−256の5段階に分けることができる。適用階調区間の区切り方は様々な定め方が可能であり、2以上の整数mとしてm段階に均等区分してもよいし、不均等な任意の階調領域に区分けしてもよい。
ある階調区間について、該当階調区間に適用する誤差拡散マトリクスの拡散係数を仮設定し(ステップS22)、当該階調区間における各々の階調の入力画像(単一階調の均一画像)にハーフトーン処理を施し(図10のステップS24)、シミュレーション画像を生成し(ステップS26)、画質評価値の算出(ステップS28)を行い、階調毎の各評価値の平均値を画質評価値とする。
ステップS22におけるハーフトーンパラメータの仮設定に際し、誤差拡散マトリクスの拡散係数の初期値は、1/マトリクスサイズとする。所定回数の繰り返しを行う際の、2回目以降の誤差拡散マトリクス係数の仮設定(ステップS22)においては、それまでの最良の誤差拡散マトリクスの各係数に「±所定範囲の乱数」を付加して、係数総和を「1」に規格化することで、仮設定を実施する。
また、隣接階調区間の誤差拡散マトリクスに関する拡散係数の初期値は、既に最適化した隣接階調区間の誤差拡散マトリクスの拡散係数を用いることが好ましい。
ステップS26のシミュレーション画像の生成は、ディザ法の場合と同様にして実施する。画質評価(ステップS28)もディザ法の場合と同様にして実施する。ただし、システム誤差に対する耐性設計を実施する場合、各々の印刷順番、パスやタイミングに属する画素のドットへの誤差付加を、各々実施して、シミュレーション画像を生成し、粒状性やスジ評価値を算出し、その総和を「評価値」とする。例えば、システム誤差有りの粒状性評価値は、以下の式で表される。
粒状性評価値[システム誤差有り]
=〔粒状性評価値[システム誤差有り(第1グループに「+所定量」誤差付加)]
+粒状性評価値[システム誤差有り(第2グループに「+所定量」誤差付加)]+…
+粒状性評価値[システム誤差有り(第1グループに「−所定量」誤差付加)]
+粒状性評価値[システム誤差有り(第2グループに「−所定量」誤差付加)]+…〕・・・式(2)
ここで第1グループ、第2グループ、…といったグループ分けは、印刷順番 、パス、タイミングのうち少なくとも一つの条件に関して同じ条件に属する画素群を示す。例えば、往復8パスの描画を完成させる作画モードの場合、第1パスで記録される画素群を第1グループ、第2パスで記録される画素群を第2グループ、と順次にグループ分けし、第8パスで記録される画素群を第8グループとすることができる。
グループ分けされた各グループに属する画素に対して、付加する誤差の「所定量」はグループ間で同じ値としてもよいし、グループ毎に異なる値としてもよい。また、「+所定量」と「−所定量」は、絶対値が同じであってもよいし、絶対値が異なる値であってもよい。
図12(A)は8回の走査パスで所定の記録解像度の描画を行う作画モードにおける打滴の順番をパスの番号で示したものである。図12(B)は図12(A)で示した作画モードで描画を行う場合の第1パスの画素のドットに所定量の誤差を付加する場合の概念図である。図12(B)では、第1パスで打滴される各画素群のドットに対して、X方向にドット形成位置ズレの誤差が付与されている。なお、他のパス番号の画素群に対しても同様に誤差を付与することができる。
図13は図12(A)で示した作画モードで描画を行う場合の第3パスの画素のドットについてドット径が所定量だけ小さくなる誤差が付与されている。図13の破線で示したドット径は誤差の無い平均的なドット径を示している。
<ディザ法における他の例>
ディザ法の場合、図10で説明したフローチャートに限らず、公知のボイドアンドクラスタ法(Void-and-Cluster法)を用いてもよい。図14はそのフローチャートである。
まず、ハーフトーンの初期画像を準備する(ステップS42)。ハーフトーンの初期画像の生成方法は、公知のVoid-and-Cluster法に従う。つまり、ある特定階調のシミュレーション画像にフィルタを畳み込んだエネルギー画像において、エネルギー最大値の画素をドットが密なクラスタ画素と見なし、エネルギー最小画素をドットが疎なボイド画素と見なし、クラスタ画素とボイド画素の交換を繰り返すことにより、初期画像が生成される。特定階調としては、例えば、最大濃度の50%程度の階調値とし、0−256階調で表現される画像データにおける階調値「128」の初期画像を生成する。
次に、印刷システムに関する特性パラメータを用いて、ハーフトーン画像からシミュレーション画像を生成する(ステップS44)。シミュレーション画像の生成に関しては、図11で説明した例と同様である。ステップS44で生成したシミュレーション画像に対して、フィルタを畳み込み、ハーフトーン画像のドット未設定の画素のうち、エネルギー最小画素(すなわち、ボイド画素)に閾値を設定し、ハーフトーン画像の当該ボイド画素にドットを設定する(ステップS46)。フィルタを畳み込む際に用いるフィルタとしては、例えばガウシアンフィルタが用いられる。
ステップS48では、全階調について閾値の設定(つまりドットの設定)が完了したか否かが判定され、未完了であれば、ステップS44に戻り、ステップS44、S46の処理が繰り返される。すなわち、ステップS46で、新たにドットが追加されたハーフトーン画像について、シミュレーション画像が生成され(ステップS44)、このシミュレーション画像に対してフィルタを畳み込んだエネルギー画像が生成され、エネルギー最小画素に閾値が設定される(ステップS46)。
ステップS48において、全階調の処理が完了したら、図14の処理を終了する。
図14に示したフローチャートは、初期画像から閾値を増加させていく方向の処理であるが、初期画像から閾値(すなわち階調値)を降下させる方法についても、公知のボイドアンドクラスタ法に従う。つまり、シミュレーション画像にフィルタを畳み込んだエネルギー画像において、ドットが設定されている画素のうち、エネルギー最大の画素をドットが密なクラスタ画素と見做し、閾値を設定すると共に、当該画素のドットを外し、更に、シミュレーション画像を生成、フィルタの畳み込み、閾値設定とドット外し、という処理を順次に繰り返す。なお、フィルタを畳み込む際に用いるフィルタとしては、例えばガウシアンフィルタが用いられる。
システム誤差に対する耐性設計を実施する場合、図10で説明した例と同様に、現閾値に該当する画素と印刷順番、パス、タイミングの少なくとも一つの条件が同じ条件に属する画素のドットに対して、所定量のドット濃度の誤差、ドット径の誤差、ドット形状の誤差、ドット形成位置ズレの誤差、不吐の誤差のうち少なくとも1種類の誤差を付加してシミュレーション画像を生成し(ステップS44)、フィルタを畳み込む(ステップS46)。
また更に、スジ耐性の設計を実施する場合には、スジエネルギーとして、シミュレーション画像に、上記の所定量の誤差を付加し、フィルタを畳み込んだ上で主走査方向に積分した一次元のエネルギー(すなわち、スジエネルギー)を算出する。そして、印刷画像全体のエネルギーとして、スジエネルギーの成分を含んだ以下に示す画像評価値が最小となる画素を探索することとなる。
画像評価値=エネルギー [システム誤差無し] +α×{ エネルギー[システム誤差有り(+所定量)] +エネルギー[システム誤差有り(−所定量)] }+β×{スジエネルギー[システム誤差有り(+所定量)] +スジエネルギー[システム誤差有り(−所定量)] } ・・・式(3)
図10や図14で説明した方法により、ディザ法や誤差拡散法におけるハーフトーンパラメータが決定され、ハーフトーンアルゴリズムとハーフトーンパラメータの組み合わせで特定されるハーフトーン処理規則が生成される。こうして、複数種類のハーフトーン処理規則が生成される。
<ハーフトーン選択用チャートについて>
本実施形態の印刷システム10では、画像処理装置20にて生成された複数種類のハーフトーン処理規則の中から、印刷に用いる1種類のハーフトーン処理規則を選択する際の判断材料を提供するために、ハーフトーン選択用チャートが出力される(図4のステップS16)。
ハーフトーン選択用チャートは、例えばシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックなどの1次色や、レッド、グリーン、ブルーなどの2次色、3次色、4次色を所定の階調ステップで並べた階調別のパッチを含むチャートとすることができる。また、ハーフトーン選択用チャートは、各色について所定の階調ステップで階調値を離散的に変えたパッチに変えて、又はこれと組み合わせて、階調値を連続的に変化させたグラデーション画像を含む構成とすることができる。
更に、ハーフトーン選択用チャートは、空色やペールオレンジ色などの特別な色による所定階調の均一濃度のパッチやグラデーション画像を含む構成とすることができる。「特別な色」の種類については、様々な色を設定することができる。空色やペールオレンジ色は、印刷物において粒状性が特に問題となりやすい色の例である。このように、印刷物において特に重視される色を「特別な色」として設定し、ハーフトーン選択用チャートの画像に含めることができる。
ハーフトーン選択用チャートは、当該チャートに示されるハーフトーン処理の結果から、ユーザーが各ハーフトーン処理の品質を比較して、適切なハーフトーン処理を選択する際の判断材料として利用することができるものである。
複数種類のハーフトーン処理の品質を対比できるようにするため、1枚の印刷媒体に複数種類のハーフトーン処理の処理結果を併置したハーフトーン選択用チャートを生成することが好ましい。
図15はハーフトーン選択用チャートの例を示す模式図である。図15では、1枚の印刷媒体101に2種類のハーフトーン処理規則のそれぞれの処理結果を並べて印刷したハーフトーン選択用チャート150の例が示されている。
図15の左側に示したチャート領域が第1のハーフトーン処理規則(「ハーフトーン1」と表記)の処理結果を示すチャートであり、右側に示したチャート領域が第2のハーフトーン処理規則(「ハーフトーン2」と表記)の処理結果を示すチャートとなっている。
本例のハーフトーン選択用チャート150では2種類のハーフトーン処理規則のそれぞれのハーフトーン処理に関して、C、M、Y、Kの各1次色について、階調値0から256の階調域を「16」刻みで16段階に分けた合計32個の1次色パッチ151、152が並んでいる。
図15では、図示の便宜上、階調ステップの一部を省略して、パッチ数を減じて描いているが、CMYKの各色について、階調値16、32、48、64、80、96、112、128、144、160、176、192、208、224、240、256の各階調値に対応する1次色パッチ151、152が記録される。符号151は、第1のハーフトーン処理規則の処理結果による1次色パッチを示し、符号152は第2のハーフトーン処理規則の処理結果による1次色パッチを示している。
また、ハーフトーン選択用チャート150には、CMYKの各色の1次色パッチ151、152の配列に加え、各色のグラデーション画像161、162と、空色の所定階調による空色パッチ171、172と、ペールオレンジ色の所定階調によるペールオレンジ色パッチ181、182とが含まれている。符号161は、第1のハーフトーン処理規則の処理結果によるグラデーション画像を示し、符号162は第2のハーフトーン処理規則の処理結果によるグラデーション画像を示している。グラデーション画像161、162は、CMYKの各色の1次色について最小階調値から最大階調値までの階調域の範囲で階調値を連続的に変化させた濃淡画像の画像領域である。
符号171は、第1のハーフトーン処理規則の処理結果による空色パッチを示し、符号172は第2のハーフトーン処理規則の処理結果による空色パッチを示している。符号181は、第1のハーフトーン処理規則の処理結果によるペールオレンジ色パッチを示し、符号182は第2のハーフトーン処理規則の処理結果によるペールオレンジ色パッチを示している。
更に、ハーフトーン選択用チャート150には、各ハーフトーン処理規則についてのシステムコスト、インクコスト、及び処理時間に関する情報が印字されている。
また、図15には示されていないが、1次色パッチ151、152の一部又は全てについて、粒状性の評価値及び/又はスジの評価値を示す情報がパッチとの関連付けを有して印字されてもよい。パッチとの関連付けを有して情報を印字する方法としては、例えば、パッチに重ねて情報を印字する態様や、パッチの近くに情報を印字する態様などがある。
同様に、空色パッチ171、172やペールオレンジ色パッチ181、182についても同様に、これらのパッチ(171,172,181,182)の一部又は全てについて、粒状性の評価値の情報及び/又はスジの評価値の情報がパッチとの関連付けを有して印字されてもよい。
ユーザーは、第1のハーフトーン処理規則による処理結果のチャートと、第2のハーフトーン処理規則による処理結果のチャートとを見比べて、好ましいハーフトーン処理規則を選択することができる。
図15に示したハーフトーン選択用チャート150における1次色パッチ151、152、グラデーション画像161、162、空色パッチ171、172、ペールオレンジ色パッチ181、182のそれぞれは、ハーフトーン処理の品質を比較評価するための画像領域であり、比較評価用画像領域の一形態に相当する。
図15に例示したハーフトーン選択用チャート150の形態に限らず、様々なチャートの形態があり得る。図15に例示した1次色のグラデーション画像161、162に代えて、又はこれと組み合わせて、2次色、3次色、4次色など、他の色のグラデーション画像を形成してもよい。比較評価用画像領域としてのパッチやグラデーション画像の色種やレイアウトに関しては様々な形態が可能である。
また、ハーフトーン選択用チャートの出力に際しては、ハーフトーン処理のシステム誤差に対する耐性(粒状性の低下やスジ発生の抑制)も評価するために、印刷媒体の描画可能範囲の全面に同じチャートを並べたり、或いは、同じチャートの内容を複数枚出力したりしてもよい。印刷媒体の描画可能範囲の全面に同じチャートを並べる構成は、描画可能範囲内における印刷位置(印刷場所)に依存するシステム誤差に対する耐性を評価する場合に有益である。また、同じチャートの内容を複数枚出力する構成は、経時的なシステム誤差に対する耐性を評価する場合に有益である。「同じチャートの内容」とは、同じハーフトーン処理結果の画像の一形態である。印刷媒体の描画可能範囲の全面に同じチャートを並べて出力する構成は、同じハーフトーン処理結果の画像を、印刷媒体上の異なる位置に複数出力する、という構成の一形態に相当する。同じチャートの内容を複数枚出力する構成は、同じハーフトーン処理の画像を、異なる印刷タイミングで複数回出力する構成の一形態に相当する。
同じチャートを時間的にずらして複数枚出力する構成において、同じチャートを連続的に出力する際に、ハーフトーン処理を切り替えて、複数種類のハーフトーン処理に関して、連続的なチャート出力を行うことができる。この場合、同じハーフトーン処理の処理結果の印刷場所(印刷媒体上の印刷位置)は固定することが好ましい。同じハーフトーン処理の処理結果のチャートを複数枚出力する場合に、各印刷媒体の同じ場所に、チャートを印刷することにより、場所に依存するシステム誤差の影響を除外することができる。
同じチャートを空間的にずらして複数出力する構成の場合、1枚の印刷媒体上で隣接するハーフトーン処理結果は、互いに異なる種類のハーフトーン処理の処理結果とすることができる。また、同じチャートを空間的にずらして複数出力する構成の場合、同じハーフトーン処理結果を同じ1枚の印刷媒体に収める構成とすることができる。これによって、経時のシステム誤差の影響を除外することができる。
また、図15で説明したように、ユーザーによる判断や選択に有益な情報として、ハーフトーン処理の処理結果を示す画像のみならず、これに加えて、粒状性やスジ の定量評価値、システムコスト、インクコスト、ハーフトーン生成時間、ハーフトーン処理時間などのうち少なくとも一つの情報を、ハーフトーン選択用チャートの印刷物に印字してもよい。「システムコスト」は、例えば、要求されるハーフトーン処理時間に収めるために必要とされるシステム仕様の実現に要する機能強化のための追加的なオプションのコストとして示される。「インクコスト」については、ハーフトーンの種類によってインクの使用量に若干の差が生じるため、同じ画像内容を所定枚数印刷した場合のハーフトーン種類毎のインク使用量からインクコストが計算され、その情報が提示される。システムコストとインクコストのうち少なくとも一方が「コスト」に相当する。
ハーフトーン処理の処理結果に関する粒状性やスジの定量評価値、システムコスト、インクコスト、ハーフトーン生成時間、ハーフトーン処理時間などのうち少なくとも一つの情報は、ハーフトーン選択用チャートの出力時に印字して提示する構成に代えて、又はこれと組み合わせて、ユーザーインターフェースの画面に表示させる構成とすることができる。このような定量評価に関する評価値の情報をハーフトーン選択用チャートとともに印字するための構成や、ユーザーインターフェースの画面に表示させる構成が「情報提示手段」の一形態に相当する。すなわち、画像処理装置20の表示装置32(図2、図3参照)は情報提示手段として機能し得る。
粒状性やスジの定量評価値は、ハーフトーン選択用チャートのハーフトーン処理結果から既述した方法でシミュレーション画像を生成して、粒状性評価値やスジ評価値を算出しても良いし、ハーフトーン選択用チャートの出力結果をインラインスキャナ等の画像読取装置26で読み取り、その読取画像から粒状性評価値やスジ評価値を算出しても良い。
なお、ハーフトーン選択用チャートに関するシミュレーション画像の生成には、システム誤差に対する耐性も評価するために、各々の印刷順番、パスやタイミングのうち少なくとも一つの条件が同一の条件に属する画素群のドットへの所定量の誤差の付加を各々実施してシミュレーション画像を生成することを含む。
シミュレーション画像から粒状性やスジの定量評価値を算出する場合には、その算出した値をハーフトーン選択用チャートの印刷物に印字することができる。
一方、ハーフトーン選択用チャートの出力結果を読み取って、その読取画像から粒状性やスジの定量評価値を算出する場合には、その算出結果をユーザーインターフェースの画面に表示させることができる。ユーザーはユーザーインターフェースの画面に表示される定量評価値を参照し、かつ、ハーフトーン選択用チャートの印刷物を確認して、適切なハーフトーン処理を選択することができる。
また、他の方法として、ハーフトーン選択用チャートの出力結果を読み取って、その読取画像から粒状性やスジの定量評価値を算出する場合には、当該読み取りを実施したハーフトーン選択用チャートに対して、その算出結果を追加印字する構成としてもよいし、或いは、読み取りを実施したハーフトーン選択用チャートの出力後に、同じハーフトーン選択用チャートを出力する際に、既に算出してある粒状性やスジの定量評価値を印字する構成としてもよい。
粒状性やスジの定量評価値の情報を提示する場合に、ユーザーに対して、特に、注意を喚起する必要のある評価値の差異や、評価値が変動しているパッチの部分について、画面上や印刷物上で強調表示を行う態様も好ましい。
例えば、時間的に印刷タイミングをずらして複数枚のハーフトーン選択用チャートを出力して、経時変化による変動を確認する場合、ハーフトーン選択用チャートの読取画像から算出される定量評価値の変化が許容範囲を超えて大きいものについて、その旨をユーザーに注意喚起する強調表示を行う態様がある。この場合、定量評価値の履歴をメモリに保存し、定量評価値の変化量が許容範囲を超えた場合に、差別化表示その他の強調表示を行う。
また、経時的なシステム誤差、つまり時間に対するシステムの不安定性についてのハーフトーン選択用チャートによる確認の他、印刷媒体上の印刷位置(場所)に依存するシステム誤差、つまり空間(場所)に対するシステムの不安定性についてハーフトーン選択用チャートによる確認を行うこともできる。この場合も、場所の違いによる定量評価値の差が許容範囲を超えて大きいものについて、その旨をユーザーに注意喚起する強調表示を行う態様がある。
また、システムの自動選択によって、又はユーザーの選択操作によって、一つのハーフトーン処理規則が選択された後に、要求項目の第1分類(a)及び第2分類(b)の優先度バランスが、この選択されたハーフトーン処理規則と近い、他のハーフトーン処理規則を更に複数生成して優先度パラメータに基づいて画質評価値や総合評価値を算出し、又はハーフトーン選択用チャートを出力し、これらを含めてシステム又はユーザーが更に最適なハーフトーン処理規則を選択できるようにしてもよい。システムが自動的にハーフトーン処理を選択する場合、画質評価値や総合評価値が所定の閾値以上になるまで、ハーフトーン処理規則の生成を繰り返してもよい。
<DBS法によるハーフトーン選択用チャートの生成方法について>
図16はDBS法によるハーフトーン選択用チャートのハーフトーン画像を生成する手順を示したフローチャートである。DBS法の場合、既に決めたハーフトーンパラメータに基づき、ハーフトーン選択用チャートのハーフトーン画像を図16のフローチャートに従い取得する。
まず、ハーフトーンの初期画像を準備する(ステップS52)。ハーフトーンの初期画像は、ハーフトーン選択用チャートに対して、別途、簡易に生成したディザマスク、又は図4のステップS14で生成したディザ法のハーフトーン処理規則によるディザ処理をかけることにより生成される。
次いで、ハーフトーン画像におけるドットを置き換える処理を行う(図16のステップS54)。そして、ドットの置き換え前と、置き換え後のそれぞれに関し、印刷システムの特性に関する特性パラメータを用いてシミュレーション画像を生成する(ステップS56)。生成したシミュレーション画像について画質評価を行い(ステップS58)、置き換えの前後で評価値が改善された場合はハーフトーン画像を更新する(ステップS60)。ステップS58における画質評価に際して算出される画質評価値は、シミュレーション画像にガウシアンフィルタなどのローパスフィルタや人の視覚感度を表す視覚伝達関数(VTF)をかけた上で入力画像との誤差(差分)を算出して得られる。
予め設定されている「画素更新回数」に従い、所定回数のドットの置き換えを行い、ステップS54からステップS60の処理を繰り返す。
ステップS62において、所定回数のドットの置き換えの処理を完了したか否かが判定され、所定回数の処理が未完了の場合は、ステップS54に戻り、ステップS54からステップS60の処理を繰り返す。ステップS62において、所定回数の処理が完了したと判定された場合は、本処理を終了する。
<着弾干渉の影響による画質劣化を補償する手段について>
これまで、図10、図14のフローチャートで表されるディザ法及び誤差拡散法のそれぞれのハーフトーンパラメータ生成、又は、図16のフローチャートで表されるDBS(Direct Binary Search)法のハーフトーン処理において、着弾干渉の影響を加味して良好なハーフトーン処理結果を得るために、着弾干渉まで含めたシミュレーション画像を生成することを前提として説明してきた。しかしながら、着弾干渉のシミュレーションには多大な時間を要し、シミュレーション精度も課題であることから、シミュレーションを実施せずに、簡易な方法で着弾干渉の影響による画質劣化を補償できることが望ましい。かかる観点から、ドット接触時の着弾干渉による画質劣化を補償する手段を備えた構成とすることも望ましい形態の一つである。
例えば着弾干渉の影響による粒状性劣化を補償するために、各画素のドットについて周囲ドットの種類、接触方向や接触量に基づき移動方向や移動量を概算し、該移動方向及び/又は移動量に基づき各ドットを同じ移動方向及び/又は同じ移動量の小グループに分類し、各小グループの粒状性を良好に保ってハーフトーンパラメータ生成、又はハーフトーン処理を行ってもよい。また更に、ドット径、ドット形状、ドット形成位置ズレ、及び不吐の誤差が有る場合の着弾干渉によるスジ、ムラ発生及び粒状性劣化を補償するために同一の印刷順番、パスやタイミングに属する画素のグループのドットに所定のドット径、ドット形状、ドット形成位置ズレ、及び不吐のうち少なくとも一つの誤差を付加した上で、該グループの各画素のドットについて周囲ドットの種類、接触方向や接触量に基づき移動方向や移動量を概算し、該移動方向及び/又は移動量に基づき各ドットを同じ移動方向及び/又は同じ移動量の小グループに分類し、各小グループの粒状性を良好に保ってハーフトーンパラメータ生成、又はハーフトーン処理を行ってもよい。
或いはまた、ドット径、ドット形状、ドット形成位置ズレ、及び不吐のうち少なくとも一つの誤差が有る場合の着弾干渉によるスジ、ムラ発生及び粒状性劣化を補償するために、同一の印刷順番、パスやタイミングに属する画素のグループのドットに所定のドット径、ドット形状、ドット形成位置ズレ、及び不吐のうち少なくとも一つの誤差を付加しても、該グループのドットの周囲ドットとの接触状態の変化が少なくなるようにハーフトーンパラメータ生成、又はハーフトーン処理を行ってもよい。
着弾干渉に対する耐性を付与するようにハーフトーンパラメータの生成、又はハーフトーン処理を行う構成の更なる具体例については後述する。
<ハーフトーン選択用チャートを出力する意義>
ハーフトーン選択用チャートは、2種類以上のハーフトーン処理規則の処理結果を比較するために出力するという第1の意義と、システムの不安定性を確認するために出力するという第2の意義と、の少なくとも一方の意義を有している。1枚の印刷媒体101に2種類以上のハーフトーン処理規則の処理結果を併置するチャート構成は第1の意義において有益なものである。その一方で、第2の意義に注目する場合には、必ずしも1枚の印刷媒体101に2種類以上のハーフトーン処理規則の処理結果を併置する必要性はない。むしろ、場所に依存するシステムの不安定性を確認する目的や時間に対するシステムの不安定性を確認する目的に対しては、1枚の印刷媒体101において1種類のハーフトーン処理規則の処理結果のみを記録するチャート形態とすることもあり得る。
<2種類以上のハーフトーン処理規則の生成とそれらの処理結果の比較について>
本実施形態では、少なくとも2種類のハーフトーン処理規則を生成するが、より好ましくは2種類よりも多くのハーフトーン処理規則を生成する構成とする。
図17は横軸を画質、縦軸をシステムコスト又はハーフトーン処理時間とした場合の各種ハーフトーン処理規則の定性的な傾向を示したグラフである。ディザ法、誤差拡散法、DBS法のそれぞれのハーフトーンアルゴリズムについて、相対的に比較すると、画質については、ディザ法、誤差拡散法、DBS法の順に高画質化してゆき、システムコストやハーフトーン処理時間に関しては、ディザ法、誤差拡散法、DBS法の順に高コスト化、長時間化してゆく。ただし、ディザ法、誤差拡散法、DBS法のそれぞれのアルゴリズムの中でも、ハーフトーンパラメータの設定次第で、画質と、システムコスト又はハーフトーン処理時間とのバランスを変えることができる。
要求項目のバランスが異なる様々な種類のハーフトーン処理の設定が可能であるが、図17に示す例では、ディザ法、誤差拡散法、DBS法のそれぞれについて、「画質」のレベルを低/中/高の3段階に異ならせた合計9種類の設定が行われる様子が示されている。図17におけるD1,D2,D3はディザ法における3種類の設定を示しており、ED1,ED2,ED3は誤差拡散法における3種類の設定を示しており、DBS1,DBS2,DBS3はDBS法における3種類の設定を示している。
また、図17で説明したハーフトーンアルゴリズムに依存した各要求項目に対する得失とは別に、図18に示すように、ハーフトーンアルゴリズムによらず、一つのパラメータで粒状性をよくすると、システムの不安定性に対する耐性が悪くなるという傾向がある。
図18の横軸は粒状性、縦軸はシステムの不安定性に対する耐性を示している。図18では、システムの不安定性に対する耐性としては、粒状性の耐性と、スジの耐性の両方の視点があるが、両者ともに、同じような定性的な傾向がある。図18では粒状性の耐性についてのみ示した。すなわち、図18に示すように、粒状性を高めると、システムの不安定性に対する耐性が悪くなり、スジの耐性も低下するという傾向が見られる。逆に、粒状性を犠牲にすると、システム不安定性に対する耐性が向上し、スジの耐性も向上する、という関係にある。
システムの不安定性に対する耐性の設定例として、例えば、耐性のレベルを高/中/低の3段階に異ならせた3種類の設定を行うことが考えられる。図18のT1,T2,T3はシステムの不安定性に対する耐性についての3種類の設定を示している。
図17及び図18で説明した定性的な傾向を基に、ハーフトーン処理に対する複数の要求項目のバランスが異なる2種類以上のハーフトーン処理規則が生成される。例えば、図17で説明した9種類の設定と図18で説明した粒状性の耐性に関する3種類の設定の組み合わせによる合計27種類のハーフトーン処理規則をデフォルトで生成する構成とすることができる。
27種類のハーフトーン処理規則のそれぞれの処理結果によるハーフトーン選択用チャートを出力して、それらの中からユーザーに一つのハーフトーン処理規則を選択させる構成とすることができる。
また、他の方法として、ユーザーが要求項目に対する優先度の設定を指定し、その優先度の設定に近い、2種類又は数種類のハーフトーン処理規則を生成するなどして、予めユーザーの意向を反映させて、ハーフトーン処理の種類の提示範囲を絞り込んでもよい。
例えば、画質重視の設定が指定されている場合には、DBS法か誤差拡散法に絞られ、画質かつコストバランスを重視する設定の場合には誤差拡散法、コスト重視の設定であればディザ法というように、予めハーフトーンアルゴリズムの種類を制約して、ハーフトーン処理規則を生成してもよい。
また、要求項目のうち、ハーフトーン処理時間やコストについては、ある程度、目標とする定量的な要求値が予め想定されていることが多い。すなわち、ユーザーは、生産性などの要求から、目標とするハーフトーン処理時間やコストについて、目標値を事前に設定することができるケースが多いと考えられる。
したがって、そのようなユーザー側の要求(目標値)を満たす範囲で、27種類の中から複数のハーフトーン処理規則を選び、実際にハーフトーン選択用チャートとして出力する態様も可能である。
<ハーフトーン処理の選択について>
2種類以上のハーフトーン処理規則の中から一つのハーフトーン処理規則を選択する方法として、ハーフトーン選択用チャートのチャート出力を確認して、ユーザーがいずれか1のハーフトーン処理を選択する構成とする形態に限らず、システムが自動的に一つのハーフトーン処理を選択する構成とすることも可能である。
この場合、システムは、複数の要求項目に対する優先度パラメータを予め保持している。例えば、第1分類(a)に関し、画質、システムコスト、ハーフトーン生成時間、第2分類に関して、粒状性、システム誤差に対する耐性、という要求項目があり、システムは以下の優先度パラメータA,B,C,D及びp,q,rを予め保持しており、以下の式によって総合評価値を算出する。
総合評価値=A×画質評価値+B×システムコスト+C×ハーフトーン生成時間+D×ハーフトーン処理時間
画質評価値=p×粒状性評価値[システム誤差無し]+q×{粒状性評価値[システム誤差有り(第1グループに「+所定量」の誤差付加)]+ 粒状性評価値[システム誤差有り(第2グループに「+所定量」の誤差付加)] + …+ 粒状性評価値[システム誤差有り(第1グループに「−所定量」の誤差付加)]+ 粒状性評価値[システム誤差有り(第2グループに「−所定量」の誤差付加)] + …}
+r×{スジ評価値[システム誤差有り(第1グループに「+所定量」の誤差付加)]+ スジ評価値[システム誤差有り(第2グループに「+所定量」の誤差付加)] + …+ スジ評価値[システム誤差有り(第1グループに「−所定量」の誤差付加)]+ スジ評価値[システム誤差有り(第2グループに「−所定量」の誤差付加)] + … }・・・式(4)
ここで画質評価値を得るために、ハーフトーン選択用チャートのハーフトーン処理結果から、既述した方法でシミュレーション画像を生成して、粒状性評価値やスジ評価値を算出し、適宜、各色、各階調や空色、ペールオレンジ色に関して、評価値の値を平均化する。
各インク種に対しては、粒状性評価値やスジ評価値を平均化してもよいし、しなくてもよい。シミュレーション画像の生成には、システム誤差に対する粒状性やスジ評価値も得るために、各々の印刷順番、パスやタイミングが同一の条件に属する画素群(グループ)のドットへの誤差付加を各々実施してシミュレーション画像を生成することを含む。
なお、前段階として2種類以上のハーフトーン処理規則を生成するハーフトーン処理生成の際に適用するシミュレーション条件と、2種類以上のハーフトーン処理規則の中からユーザー選択により又はシステムの自動選択により一つのハーフトーン処理規則を選択するハーフトーン選択におけるシミュレーション画質評価の際に適用するシミュレーション条件は必ずしも一致しない。例えば、ハーフトーン処理生成におけるシミュレーションは、ハーフトーン処理規則の生成を速やかに実施するために、着弾干渉のファクターを含めない条件で、又は着弾干渉のファクターのうち「ドット移動」のみを考慮してシミュレーションする条件で実施し、ハーフトーン自動選択におけるシミュレーションは、なるべく現実の画像を忠実に再現するために、着弾干渉によるドット移動、ドット形状及びドット濃度のそれぞれの変化の全てを含めてシミュレーションを実施してもよい。ここで「ハーフトーン処理生成」とは、ハーフトーンアルゴリズムがディザ法や誤差拡散法の場合にはハーフトーンパラメータの生成を示し、DBS法の場合にはハーフトーン画像の生成を示す。
また、付加する誤差の所定量(つまり所定誤差量)は、別途、適宜の値を決めておいてもよいし、特性パラメータ取得用チャートの読み取り結果から算出される標準偏差等であってもよい。
或いはまた、上記のシミュレーション画像に基づく評価値の算出に代えて、印刷装置24により出力したハーフトーン選択用チャートを画像読取装置26で読み取り、その読取画像から粒状性評価値やスジ評価値を算出して、適宜、各色、各階調、空色、ペールオレンジ色に関して評価値の値を平均化して、以下の式により画質評価値を得てもよい。
画質評価値=p×粒状性評価値+r×スジ評価値
また、画質評価値、システムコスト、ハーフトーン生成時間、ハーフトーン処理時間及び粒状性評価値[システム誤差無し]、粒状性評価値[システム誤差有り]、スジ評価値のそれぞれに対して、各々許容閾値を設定しておき、各値が閾値以上となるハーフトーン処理規則をまず抽出し、その中で上記の総合評価値に基づいて、最適なハーフトーン処理を決定してもよい。
例えば、システムコストがなるべく低いハーフトーン処理を決定したい場合、画質評価値、システムコスト、ハーフトーン生成時間、ハーフトーン処理時間及び粒状性評価値[システム誤差無し]、粒状性評価値[システム誤差有り]、スジ評価値のそれぞれについて、各々の許容閾値以上となるハーフトーン処理をまず抽出した後に、優先度パラメータBを大きい値に設定して総合評価値を得る方法となる。
総合評価値は「判定評価値」の一形態である。優先度パラメータA,B,C,D,p,q,rはそれぞれ、優先度を表す実数が設定される。
なお、システムの自動選択によって、又は、ユーザーの選択操作によって、一つのハーフトーン処理規則が選択された後に、要求項目の第1分類(a)及び第2分類(b)の優先度バランスが、この選択されたハーフトーン処理規則と近い、他のハーフトーン処理規則を更に複数生成して優先度パラメータに基づいて画質評価値や総合評価値を算出し、又はハーフトーン選択用チャートを出力し、これらを含めてシステム又はユーザーが更に最適なハーフトーン処理規則を選択できるようにしてもよい。システムが自動的にハーフトーン処理を選択する場合、画質評価値や総合評価値が所定の閾値以上になるまで、ハーフトーン処理規則の生成を繰り返してもよい。
<第2の実施形態による画像処理装置の機能に関する説明>
図19は第2の実施形態に係る画像処理装置の機能を説明するためのブロック図である。図3で説明した第1の実施形態に係る画像処理装置の構成に代えて、図19に示す第2の実施形態の画像処理装置を用いることができる。図19において図3で説明した構成と同一又は類似する要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
図19に示す第2の実施形態に係る画像処理装置20におけるハーフトーン処理生成部58は、前段階ハーフトーン処理生成部58Aと、ハーフトーン自動選択部58Bとを備える。前段階ハーフトーン処理生成部58Aは、特性パラメータに基づき、ハーフトーン処理に要求される複数の要求項目に対する優先度のバランスが異なる2種類以上のハーフトーン処理のそれぞれの処理内容を規定するハーフトーン処理規則を生成する。ハーフトーン自動選択部58Bは、前段階ハーフトーン処理生成部58Aで生成された2種類以上のハーフトーン処理規則によって規定されるハーフトーン処理の種類の中から、優先度パラメータに基づき、本印刷システム10の印刷に用いるハーフトーン処理の種類を自動的に選択する処理を行う。
ハーフトーン自動選択部58Bはハーフトーン自動選択手段の一形態に相当する構成である。ハーフトーン自動選択部58Bは判定評価値算出手段の一形態としての判定評価値演算部59を備えている。
判定評価値演算部59は、前段階ハーフトーン処理生成部58Aで生成されたハーフトーン処理規則によって規定されるハーフトーン処理の適正性を評価する判定評価値を算出する演算手段である。判定評価値演算部59は、優先度パラメータ保持部56に保持されている優先度パラメータに基づいて判定評価値を算出する。すなわち、判定評価値演算部59は、判定評価値の一形態である総合評価値を算出する。総合評価値の具体例については既に説明したとおりである。ハーフトーン自動選択部58Bは、判定評価値演算部59により算出された判定評価値を基に、本印刷システム10での印刷に用いるハーフトーン処理の種類を自動的に選択する。
優先度パラメータ保持部56には、複数の要求項目に関する優先度のバランスを指定した優先度パラメータが記憶されている。優先度パラメータ保持部56に優先度パラメータを記憶させておく工程は優先度パラメータ保持工程の一形態に相当する。
優先度パラメータは入力装置34を通じてユーザーが自由に入力し、優先度のバランスの設定、並びに、設定内容の変更を行うことができる。
また、画像処理装置20は、シミュレーション画像生成部68と評価値演算部70とを含んだ画質評価処理部74を備えており、ハーフトーン処理生成部58は画質評価処理部74と連携してハーフトーン処理規則を生成する。シミュレーション画像生成部68はシミュレーション画像生成手段の一形態に相当する。評価値演算部70は画質評価値算出手段の一形態に相当する。
画質評価処理部74は、シミュレーション画像の生成とシミュレーション画像に対する画像品質の評価値の計算を繰り返しながら、評価値が改善される最適化探索の処理を行う。画質評価処理部74による処理により、ハーフトーンパラメータが決定される。また、シミュレーション画像生成部68は前段階ハーフトーン処理生成部58Aで生成されたハーフトーン処理規則によって規定されるハーフトーン処理を適用して得られるハーフトーン画像を印刷した場合のシミュレーション画像を生成し、評価値演算部70はシミュレーション画像生成部68で生成されたシミュレーション画像から画質評価値を算出する。ハーフトーン自動選択部58Bの判定評価値演算部59は、画質評価処理部74で算出される画質評価値を用いて判定評価値を算出することができる。
前段階ハーフトーン処理生成部58Aにより生成された複数種類のハーフトーン処理規則は、ハーフトーン処理規則記憶部60に登録される。
図19に示した画像解析部64は、特性パラメータ取得用チャートの読取画像を解析して特性パラメータを生成する手段として機能することに加え、印刷装置24から出力されたハーフトーン選択用チャートの読取画像を解析して、ハーフトーン画像の定量評価値を算出する手段として機能する。また、ハーフトーン自動選択部58Bの判定評価値演算部59は、画像解析部64においてハーフトーン選択用チャートの出力結果を基に算出される粒状性評価値及びスジ評価値のうち少なくとも一つの定量評価値の情報を画像解析部64から取得して、判定評価値を算出することができる。ハーフトーン自動選択部58Bは、ハーフトーン選択用チャートの読取画像から算出された定量評価値を基に、最適なハーフトーン処理規則を自動選択する処理を行うことができる。
図20は第2の実施形態による画像処理装置を備えた印刷システムにおけるハーフトーン処理規則の生成方法を示したフローチャートである。
図20において、図4で説明したフローチャートにおける工程と共通する工程(ステップ)には同一のステップ番号を付し、その説明は省略する。図20において、ステップS10からステップS14までの工程は図4のフローチャートと同様である。
ステップS14において、特性パラメータに基づき、2種類以上のハーフトーン処理規則が生成された後、これら生成された2種類以上のハーフトーン処理規則の中から、優先度パラメータに基づき、1種類のハーフトーン処理規則が決定される(ステップS17)。すなわち、ステップS14とステップS17の組み合わせは、ハーフトーン処理生成工程の一形態に相当する。ステップS14は、システムにとって最適な一つのハーフトーン処理を得るための前段階として2種類以上のハーフトーン処理規則を生成し、ステップS17ではステップS14で生成した2種類以上のハーフトーン処理規則から優先度パラメータを最適な1種類を選択するという段階的な処理が行われる。
ただし、本発明の実施に際しては、必ずしも図20のような段階的な処理のステップを経る構成に限らない。例えば、優先度パラメータの設定を反映した評価関数を定義し、ハーフトーンアルゴリズムとハーフトーンパラメータの組み合わせに対する評価関数の値としての評価値を最大化又は最小化する最適解を探索する最適化手法を用いて、1種類のハーフトーン処理規則を生成する構成とすることができる。
この場合、最適解を求める演算処理の過程で、複数種類のハーフトーン処理規則が生成されるという見方もできるが、最終的にシステムで利用可能なハーフトーン処理の種類として生成されるハーフトーン処理規則は最適解としての1種類のハーフトーン処理規則であると解釈することができる。
優先度パラメータの設定に従い、システムによって一つのハーフトーン処理規則を自動的に選択(決定)する構成とした場合であっても、その自動選択によって決定されたハーフトーン処理規則を、その後、ユーザーが適宜変更することができる構成としてもよい。また、ユーザー操作やシステムのプログラムにより、優先度パラメータの設定を変更して、ハーフトーン処理規則を選択し直すことができるように、画像処理装置20にて生成された各種のハーフトーン処理規則をラインアップとして登録しておくことが好ましい。
更に、それぞれのハーフトーン処理規則に関する粒状性やスジの定量評価値、ハーフトーン生成時間、ハーフトーン処理時間、システムコストなどの情報についても、必要に応じて参照できるように、これらの情報をハーフトーン処理規則と関連付けて保存しておくことが好ましい。
印刷装置24で使用するインクの色毎に、つまり、インク種毎に、画質評価値、システムコスト、ハーフトーン生成時間、ハーフトーン処理時間を算出して、インク種毎に異なるハーフトーンアルゴリズム、ハーフトーンパラメータを選択してもよいし、全色で画質評価値、システムコスト、ハーフトーン生成時間、ハーフトーン処理時間を算出して、全色に同じ共通のハーフトーンアルゴリズム、ハーフトーンパラメータを選択してもよい。
<特性パラメータ取得用チャートの他の例>
図21は特性パラメータ取得用チャートの他の例を示す図である。図21に示す特性パラメータ取得用チャート200は、シングルパスプリンタによって出力される特性パラメータ取得用チャートの例である。
図21に示す特性パラメータ取得用チャート200は、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各色の記録ヘッドにおける印刷素子であるノズルによって、印刷媒体201上に記録された単一ドットパターン202C、202M、202Y、202Kと、第1の連続ドットパターン204C、204M、204Y、204Kと、第2の連続ドットパターン206C、206M、206Y、206Kとを含んでいる。
単一ドットパターン202C、202M、202Y、202Kは、単一ドットが他のドットと分離された孤立状態で離散的に記録される離散ドットのパターンである。第1の連続ドットパターン204C、204M、204Y、204Kと、第2の連続ドットパターン206C、206M、206Y、206Kは、二つ以上のドットを接触させて記録される連続ドットのパターンである。
単一ドットパターン202C、202M、202Y、202Kは、図5で説明した特性パラメータ取得用チャート100における単一ドットパターン102C、102M、102Y、102Kに対応するものである。また、図21における第1の連続ドットパターン204C、204M、204Y、204Kは、図5で説明した特性パラメータ取得用チャート100における第1の連続ドットパターン104C、104M、104Y、104Kに対応し、図21における第2の連続ドットパターン206C、206M、206Y、206Kは、図5で説明した特性パラメータ取得用チャート100における第2の連続ドットパターン106C、106M、106Y、106Kに対応ものである。ただし、図5における第1の連続ドットパターン104C、104M、104Y、104Kと第2の連続ドットパターン106C、106M、106Y、106Kは、互いに接触させる複数のドットを主走査方向に隣接させたものであるのに対し、図21における第1の連続ドットパターン204C、204M、204Y、204Kと第2の連続ドットパターン206C、206M、206Y、206Kは、互いに接触させる複数のドットを副走査方向に隣接させたものとなっている点で相違する。
シングルパス方式の場合もシリアルスキャン方式の場合と同様に、連続ドットパターンにおいてオーバーラップさせて打滴した二つのドット間の距離のみでなく打滴時間差も変えた複数水準の連続ドットパターンを形成してもよい。シングルパス方式の場合、印刷媒体201の搬送速度を変える事により連続ドットパターンの二つのドット間の打滴時間差を変える事ができる。
図22は図21に示した特性パラメータ取得用チャート200の出力に用いたシングルパスプリンタとしてのインクジェット印刷装置の記録ヘッド部分の平面模式図である。図22において上から下に向かう縦方向が印刷媒体201の搬送方向である。印刷媒体201を搬送する手段(媒体搬送手段)については、ドラム搬送方式、ベルト搬送方式、ニップ搬送方式、チェーン搬送方式、パレット搬送方式など、各種形態を採用することができ、これら方式を適宜組み合わせることができる。印刷媒体201の搬送方向を「媒体搬送方向」という。図22では媒体搬送方向を白抜き矢印によって示した。媒体搬送方向は「副走査方向」に相当する。図22における横方向、すなわち、紙面に平行で、かつ媒体搬送方向と直交する方向を「媒体幅方向」という。媒体幅方向は「主走査方向」に相当する。
図22に示すシングルパスプリンタとしてのインクジェット印刷装置は、シアンインクを吐出するシアン記録ヘッド212Cと、マゼンタインクを吐出するマゼンタ記録ヘッド212Mと、イエローインクを吐出するイエロー記録ヘッド212Yと、ブラックインクを吐出するブラック記録ヘッド212Kとを備える。
シアン記録ヘッド212C、マゼンタ記録ヘッド212M、イエロー記録ヘッド212Y、ブラック記録ヘッド212Kのそれぞれは、媒体搬送方向と直交する媒体幅方向の画像形成領域の最大幅に対応する長さにわたって複数のノズルが配列されたノズル列を有するラインヘッドである。
各色の記録ヘッド(212C,212M,212Y,212K)におけるノズル数やノズルの配列形態、ノズル密度については、様々な設計が可能である。各色の記録ヘッド(212C,212M,212Y,212K)について、全色共通のヘッド設計としてもよいし、一部の色又は各色それぞれの記録ヘッドについて異なるヘッド設計としてもよい。
ここでは、図示を簡略化するために、各色の記録ヘッド(212C,212M,212Y,212K)について全色共通のヘッド設計による共通の構造であるとし、各記録ヘッド(212C,212M,212Y,212K)について、それぞれ40ノズルのみを示した。なお、図22では、CMYKの4色のインクを用いるインクジェット印刷装置を例示しているが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態に限定されない。図6でも説明したとおり、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。また、各色の記録ヘッドの配置順序も図22の例に限定されない。
図22に示したシアン記録ヘッド212Cのインク吐出面には、インク吐出用の複数のノズル218Cが主走査方向に沿う行方向と、主走査方向に対し非平行かつ非直交の一定の角度を有する斜めの列方向とのそれぞれの方向に、規則的な配列パターンで配列されている。ここでは、斜めの列方向に沿って4つのノズル218Cが一定間隔で並んだノズル列が主走査方向に位置を異ならせて10列形成された4行×10列のマトリクス配列によるノズル配列の例が示されている。
かかる二次元ノズル配列は、行方向に沿って10個のノズル218Cが等間隔で一列に並んだ行方向ノズル列が副走査方向の異なる位置に4行ある。これら4行の行方向ノズル列について、図22の下から上に向かって(つまり、媒体幅方向の下流側から上流側に向かって)、1行目、2行目、3行目、4行目の順に行番号を付与した場合、1行目と2行目では主走査方向のノズル位置が異なっている。同様に、2行目と3行目、3行目と4行目、4行目と1行目のそれぞれの行同士においても、主走査方向のノズル位置が異なっている。
行方向ノズル列内において等間隔で一列に並ぶノズル218Cの主走査方向のノズル間隔をLNとすると、1行目と2行目、2行目と3行目、3行目と4行目、4行目と1行目の主走査方向のノズル位置のシフト量はLNを行総数で割った値であるLN/4となっている。このような二次元ノズル配列は、各ノズル218Cが主走査方向に等間隔(「LN/4」の間隔)で並ぶノズル列として考えることができる。
マゼンタ記録ヘッド212Mにおけるインク吐出用のノズル218Mの配列形態、イエロー記録ヘッド212Yにおけるインク吐出用のノズル218Yの配列形態、ブラック記録ヘッド212Kにおけるインク吐出用のノズル218Kの配列形態についても、シアン記録ヘッド212Cのノズル配列形態と同様である。
図22に例示したマトリクス配列に限らず、一般に、二次元ノズル配列を有する記録ヘッドの場合、当該二次元ノズル配列における各ノズルを媒体幅方向(主走査方向に相当)に沿って並ぶように投影(正射影)した投影ノズル列は、主走査方向(媒体幅方向)について、記録解像度を達成するノズル密度でノズルが概ね等間隔で並ぶ一列のノズル列と等価なものと考えることができる。ここでいう「等間隔」とは、インクジェット印刷装置で記録可能な打滴点として実質的に等間隔であることを意味している。例えば、製造上の誤差や着弾干渉による媒体上での液滴の移動を考慮して僅かに間隔を異ならせたものなどが含まれている場合も「等間隔」の概念に含まれる。投影ノズル列(「実質的なノズル列」ともいう。)を考慮すると、主走査方向に沿って並ぶ投影ノズルの並び順に、ノズル位置(ノズル番号)を対応付けることができる。二次元ノズル配列を構成するノズル数やノズルの配列形態については、記録解像度と描画可能幅に応じて適宜設計される。
また、ラインヘッドを構成するにあたり、複数のノズルが二次元に配列された短尺のヘッドモジュールを複数個繋ぎ合わせることで媒体幅方向に所要の長さのノズル列を有するラインヘッドを構成する態様も可能である。
図22に示すように印刷媒体201の画像形成領域の全幅に対応する長さのノズル列を有するラインヘッドとしての記録ヘッド(212C,212M,212Y,212K)を用いたインクジェット印刷装置は、図示せぬ媒体搬送手段によって印刷媒体201を一定の速度で搬送し、かつ、印刷媒体201の搬送に合わせて、各記録ヘッド(212C,212M,212Y,212K)から適宜のタイミングで打滴を行い、媒体搬送方向について、印刷媒体201と各記録ヘッド(212C,212M,212Y,212K)と相対的に移動させる動作を1回行うだけで(すなわち1回の副走査で)、印刷媒体201の画像形成領域に画像を記録することができる。
図22の構成によれば、印刷媒体201を図示せぬ媒体搬送手段によって媒体搬送方向に一定の速度で搬送し、かつ、適宜のタイミングで各記録ヘッド(212C,212M,212Y,212K)のそれぞれのノズル(218C,218M,218Y,218K)から打滴を行うことにより、図21に示す単一ドットパターン202C,202M,202Y,202Kと、第1の連続ドットパターン204C,204M,204Y,204Kと、第2の連続ドットパターン206C,206M,206Y,206Kと、を形成することができる。
すなわち、シアン記録ヘッド212Cの各ノズル218Cから打滴を行うことにより、図21の単一ドットパターン202C、第1の連続ドットパターン204C、及び、第2の連続ドットパターン206Cを形成することができる。第1の連続ドットパターン204Cと、第2の連続ドットパターン206Cは、重なり合う二つのドット同士のドット間距離が異なる。つまり、第1の連続ドットパターン204Cと、第2の連続ドットパターン206Cとでは、重なり合う二つのドットを記録する2回の打滴タイミングの間隔が異なる。
M、Y、Kの各色についても同様であり、印刷媒体201を搬送し、かつ、適宜のタイミングで図22のマゼンタ記録ヘッド212Mの各ノズル218Mから打滴を行うことにより、図21の単一ドットパターン202M、第1の連続ドットパターン204M、及び、第2の連続ドットパターン206Mを形成することができる。
また、印刷媒体201を搬送し、かつ、適宜のタイミングで図22のイエロー記録ヘッド212Yの各ノズル218Yから打滴を行うことにより、図21の単一ドットパターン202Y、第1の連続ドットパターン204Y、及び、第2の連続ドットパターン206Yを形成することができる。
同様に、印刷媒体201を搬送し、かつ、適宜のタイミングで図22のブラック記録ヘッド212Kの各ノズル218Kから打滴を行うことにより、図21の単一ドットパターン202K、第1の連続ドットパターン204K、及び、第2の連続ドットパターン206Kを形成することができる。
なお、図21において、横方向(主走査方向)に隣り合うドットが重なることがないように、図22において、横方向に隣り合うノズルの打滴タイミングは所定時間だけ離す(時間差を設ける)必要がある。ここでいう「横方向に隣り合うノズル」とは、横方向に沿って並ぶ「実質的なノズル列」としての投影ノズル列において隣り合うノズルである。
図22に示した構成の場合、印刷媒体201の搬送に合わせて、K→Y→M→Cの順に打滴し、また、各色については、二次元ノズル配列における4行のうち、1行目→2行目→3行目→4行目の順に打滴を行うことにより、図21に示すようなパターンを形成することができる。ただし、異なるノズルによって記録されるドット同士が重なることがないように、各色、各行のノズルの打滴タイミングは所定量だけ離す(時間差を設ける)必要がある。
上述のような打滴タイミングの制御は、既に説明した特性パラメータ取得用チャート生成部62(図3及び図19参照)と印刷制御装置22(図2参照)との組み合わせによって実現される。図5及び図6で説明した構成に代えて、図21及び図22で説明した構成を採用することができる。
<システム誤差という概念によるシステム特性パラメータの包摂>
これまでの説明では「システム誤差無し」或いは「システム誤差耐性」という用語内における「システム誤差」とは、特性パラメータの変動成分として、主に、経時的に及び/又は場所毎に変化する誤差という意味を持たせて説明してきた。
その一方で、システム誤差の中には、既に説明したとおり、ノズル故障による不吐や、製造誤差に起因するノズル位置の誤差などの再現性のある誤差も含まれている。これら再現性のある誤差は、システムの特性を示すパラメータとして把握することができ、かつ、「システム誤差」のパラメータとして考えることができる。すなわち、システム誤差のうち、テストチャートの読み取り結果などに基づく測定やユーザーからの入力などによって確定的に規定可能なもの、つまり、再現性のある誤差は、システムの特性パラメータとして考えることができる。この再現性のある誤差を本明細書では、「特性誤差」と呼ぶことにする。特性誤差は、システム特性としての誤差という意味を表す。システム誤差のうち、再現性のある誤差である特性誤差は、システムの特性パラメータになるため、特性誤差に対しては、その特性誤差を見込んだ最適なハーフトーン処理規則の生成が可能である。
一方、システム誤差のうち、経時的に及び/又は場所毎に変化するもの、つまり、不規則に変動する誤差を本明細書では「ランダムシステム誤差」と呼ぶ。ランダムシステム誤差に対しては、誤差への耐性を付与するハーフトーン設計を行うことしかできない。
特性誤差とランダムシステム誤差の関係は、ある注目する誤差項目の測定値の分布に関する期待値(平均値)や中央値などの代表値と、その代表値からのばらつき、或いは変動幅などの「散らばり」の関係に対応するものと把握することができる。
システム誤差について更なる具体的な例を説明する。シリアルスキャン方式のインクジェット印刷システムと、シングルパス方式のインクジェット印刷システムとに共通の「システム誤差」の例として、ヘッドの各ノズル誤差、不吐、滴種毎の位置ズレなどがある。
ノズル誤差は、各ノズルの液滴の飛翔方向の誤差、吐出速度の誤差、滴量の誤差、又はドット形状の誤差などが含まれる。吐出速度は「滴速」という用語で表される場合がある。滴量の誤差は、ドット濃度の誤差として把握することができる。ドット形状は「ドットプロファイル」と同義である。また、飛翔方向の誤差、吐出速度の誤差、滴量の誤差、及び、ドット形状の誤差は、滴種に依存する誤差である場合があるため、滴種毎にこれらの誤差を把握することが好ましい。
ノズル誤差は、主走査方向及び/又は副走査方向のノズル位置の誤差、ドット濃度の誤差、ドット径の誤差、若しくは、ドット形状の誤差、又は、これらの適宜の組み合わせの誤差を包括して表現する用語である。
滴種とは、ヘッドによって記録制御可能なドットサイズに対応する液滴の種類である。例えば、小ドット、中ドット、及び大ドットの三種のドットサイズに対応する小滴、中滴及び大滴の吐出制御が可能な構成の場合は、三種の滴種ということになる。滴種毎の位置ズレとは、滴種毎の主走査方向及び/又は副走査方向の着弾位置誤差を意味する。
各ノズルのノズル誤差は、ノズル毎に概ね平均的に観測される「特性誤差」として取り扱うことができる値を定めることができる一方で、経時的に及び/又は場所毎に変化する「ランダムシステム誤差」の対象となりうる。
シリアルスキャン方式のインクジェット印刷システムにおける「システム誤差」の例として、スキャンの双方向の位置ズレ、滴種ごとの双方向の位置ズレ、キャリッジ移動に伴うヘッド振動誤差、又は、用紙搬送誤差などがある。
双方向の位置ズレは、キャリッジの往復動作における往路方向に移動中に打滴した場合のドット記録位置と、復路方向に移動中に打滴した場合のドット記録位置の主走査方向の誤差である。
滴種ごとの双方向の位置ズレは、キャリッジ移動の往路と復路のそれぞれの方向に移動中に打滴した場合の滴種ごとの主走査方向及び副走査方向の位置の誤差である。
ヘッド振動誤差は、キャリッジの駆動ベルトの振動に起因し、主走査方向及び/又は副走査方向のドットの位置の変動として観測される。用紙搬送誤差は、用紙搬送方向である副走査方向についての用紙送り量の誤差である。用紙搬送誤差は、副走査方向の記録位置誤差として観測される。
シングルパス方式のインクジェット印刷システムにおける「システム誤差」の例として、ラインヘッドを構成しているヘッドモジュールの振動による誤差(「ヘッドモジュール振動誤差」という。)、又は、各ヘッドモジュールの取付位置の誤差(ヘッドモジュール取付誤差)などがある。ヘッドモジュール振動誤差は、主走査方向及び/又は副走査方向のドット位置の誤差として観測される。ヘッドモジュール取付誤差も主走査方向及び/又は副走査方向のドット位置の誤差として観測できる。
ヘッドモジュール取付誤差は、特性誤差に該当する。
[システム誤差パラメータを取得するためのチャートについて]
図5では特性パラメータを取得するための「特性パラメータ取得用チャート」について説明した。既述のとおり、特性パラメータは、システム誤差のうちの特性誤差を示すパラメータとして把握できるため、特性パラメータはシステム誤差パラメータの一種であると理解できる。したがって、「特性パラメータ取得用チャート」は「システム誤差パラメータ取得用チャート」の一形態に該当すると理解される。
シリアルスキャン方式のインクジェット印刷システムにおけるシステム誤差パラメータ取得用チャートとして、次のようなチャートを用いることができる。
(例1)システム誤差のうち、各ノズル誤差や不吐パラメータなどを得るためのチャートは、図5で説明した特性パラメータ取得用チャートを用いることができる。
(例2)滴種毎の位置ズレ(双方向の位置ズレを含む)など、滴種ごとノズル誤差を把握するためには、図5で説明した特性パラメータ取得用チャートを滴種ごとに、また、往路と復路のそれぞれについて作成する。例えば、小滴、中滴、大滴の三種類の滴種を打滴制御できるシステムの場合、小滴、中滴、大滴のそれぞれの滴種について、図5で説明した特性パラメータ取得用チャートを出力し、測定すればよい。各滴種に関して、目標とする記録位置(画素の位置)に対して、実際に記録されるドットの位置がどれだけズレているか、という位置ズレの情報を得ることができる。また、図5で説明した特性パラメータ取得用チャートを往路と、復路のそれぞれについて、各滴種のそれぞれで作成する。それぞれのチャートの測定結果から、滴種ごとに、往路と復路のそれぞれのキャリッジ移動方向(主走査方向)に関する位置ズレの情報を取得することができる。
(例3)キャリッジ移動に伴うヘッド振動誤差を測定するためのチャートの一例を図23に示す。ここでは、図示の簡略化のために、ブラック記録ヘッド112Kのみを模式的に示した。図23に示すように、キャリッジを移動させながら、記録ヘッドの特定のノズル118Sで連続的に吐出を行うことにより、ヘッド振動誤差測定用のチャートを作成する。ここでいう「連続的に吐出」とは、各ドットが重ならず、個々に分離した(孤立した)独立のドットとして記録される程度に時間間隔を開けたサイクルで吐出を繰り返すことを意味する。
図23では、説明の便宜上、主走査方向のドット間隔や、ヘッド振動誤差を極端に大きく強調(デフォルメ)して描いている。キャリッジの移動に伴って、ヘッドが振動することにより、主走査方向及び/又は副走査方向のズレ量が変動する。
図23に示すようなチャートの出力結果をインラインセンサなどの画像読取装置26(図1参照)で読み取り、各ドットについて、本来打たれるべき理想的位置に対して、主走査方向と副走査方向のそれぞれのズレ量を測定する。各画素位置に対して実際の着弾位置がどれだけズレているかを計測する。本来打たれるべき理想的位置は、主走査方向に一列状に画素位置が決まっている。主走査方向の本来打たれるべき画素の位置を「n」で表し、各画素位置nに関する主走査方向のズレ量Δx(n)と副走査方向のズレ量Δy(n)を測定できる(図24参照)。「n」は、吐出を実施した画素の主走査方向の位置座標(X座標)を示す。nは0からNまでの整数とすることができる。この場合のNは、打滴するドットの個数に対応した整数を示す。Δx(n),Δy(n)は理想の着弾位置からのズレを表している。
図25(A),(B)に、ヘッド振動誤差の例を示す。図25(A)は、横軸が主走査方向の画素位置n、縦軸が主走査方向の位置ズレ量を示す。図25(B)は、横軸が主走査方向の画素位置n、縦軸が副走査方向の位置ズレ量を示す。
こうして、主走査方向のズレ量Δx(n)と副走査方向のズレ量Δy(n)が画素位置nの関数として求められる。
なお、図23では、特定の単一のノズル118Sからの連続的な打滴を行う例を説明したが、複数個の特定ノズルから、同様に連続的な打滴を行い、それぞれの測定から得られるズレ量Δx(n),Δy(n)を統計処理して、ヘッド振動誤差のパラメータを生成してもよい。
(例4)用紙搬送誤差は、用紙送り量のばらつきを示す誤差である。用紙搬送誤差は、印刷システムにおける用紙搬送機構が原因でドットの位置がズレてしまう誤差である。図26は、用紙搬送誤差の情報を得るためのチャートの例である。ここでは、図示の簡略化のために、ブラック記録ヘッド112Kのみを模式的に示した。用紙搬送誤差のパラメータを取得する場合、図23の例と同様に、記録ヘッドの特定のノズル118Sで連続的な打滴を行い、主走査方向に沿ったドット列のラインを描画する。なお、図23における特定のノズル118Sと、図26における特定のノズル118Sは同じノズルであってもよいし、異なるノズルであってもよい。
図26に示すように、第1行目のドット列DL1を描画したら、副走査方向に一定量の用紙搬送を行う。「用紙搬送」は「用紙送り」、「紙送り」と同義である。一定量の用紙搬送の制御量をΔy0とする。そして、同様に第2行目のドット列DL2を描画する。このような一定量Δy0の用紙搬送と、連続打滴を繰り返し、複数本のドット列DL1,DL2,DL3・・・を描画する。このチャートは、キャリッジ移動の往路のみ、又は復路のみ、のいずれか一方の走査で記録することが好ましい。
第k行目のドット列における各ドットの吐出指令位置としての画素位置を(n,k)と表す。kが1からmまでの整数であり、mが2以上の整数である。第k行目のドット列における各ドットの副走査方向位置の平均値yav(k)と、第(k+1)行目のドット列における各ドットの副走査方向位置の平均値yav(k+1)との差yav(k+1)−yav(k)を、第k回目の用紙送り量Δykとして測定する。第k回目の用紙搬送の誤差は、Δyk−Δy0で表すことができる。
図27は、用紙搬送誤差測定用のチャートから測定されるΔyk(k=1,2・・・m−1)の測定値の分布の例を示している。横軸は用紙搬送誤差Δyを示している。図示の用紙送り量の分布は、正規分布に準じた分布となっている。
シングルパス方式のインクジェット印刷システムにおけるシステム誤差パラメータ取得用チャートとして、次のようなチャートを用いることができる。
(例5)システム誤差のうち、各ノズル誤差や不吐パラメータなどを得るためのチャートは、図21で説明した特性パラメータ取得用チャートを用いることができる。
(例6)滴種毎の位置ズレ(双方向の位置ズレを含む)など、滴種ごとのノズル誤差を把握するためには、図21で説明した特性パラメータ取得用チャートを滴種ごとに作成する。例えば、小滴、中滴、大滴の三種類の滴種を打滴制御できるシステムの場合、小滴、中滴、大滴のそれぞれの滴種について、図5で説明した特性パラメータ取得用チャートを出力し、測定すればよい。各滴種に関して、目標とする記録位置(画素の位置)に対して、実際に記録されるドットの位置がどれだけズレているか、という位置ズレの情報を得ることができる。
(例7)シングルパス方式におけるヘッド振動誤差のパラメータを取得するためのチャートの例を図28に示す。図28では、図示の便宜上、シアン記録ヘッド212Cのみを示す。図28のシアン記録ヘッド212Cは、複数のヘッドモジュール220−j(j=1,2,・・・,Nm)をつなぎ合わせて構成されたラインヘッドとなっている。同図ではヘッドモジュールの連結個数の一例としてNm=5の例が示されているが、連結個数は特に限定されず、任意の個数に設計することができる。
複数のヘッドモジュール220−j(j=1,2,・・・,Nm)は、共通の支持フレーム222に固定されており、全体として一つのヘッドバーの形態となっている。このヘッドバー自体が振動することに起因してドットの記録位置が変動する。図28に示すように、印刷媒体201を副走査方向に一定速度で搬送しながら、特定の単一のノズル228Sから連続的に吐出を行い、副走査方向に沿って並ぶドット列を記録する。図23で説明した例と同様に、「連続的に吐出」とは、各ドットが重ならず、個々に分離した(孤立した)独立のドットとして記録される程度に時間間隔を開けたサイクルで吐出を繰り返すことを意味する。
図28も図23と同様に、説明の便宜上、副走査方向のドット間隔や、ヘッド振動誤差を極端に大きく強調(デフォルメ)して描いている。ヘッドバーの振動により、主走査方向及び/又は副走査方向のズレ量が変動する。
図28に示すようなチャートの出力結果をインラインセンサなどの画像読取装置26(図1参照)で読み取り、各ドットについて、本来打たれるべき理想的位置に対して、主走査方向と副走査方向のそれぞれのズレ量を測定する。各画素位置に対して実際の着弾位置がどれだけズレているかを計測する。本来打たれるべき理想的位置は、副走査方向に一列状に画素位置が決まっている。副走査方向の本来打たれるべき画素の位置を「n」で表し、各画素位置nに関する主走査方向のズレ量Δx(n)と副走査方向のズレ量Δy(n)を測定できる。ここでの「n」は、吐出を実施した画素の副走査方向の位置座標(Y座標)を示す。
図23で説明した例と同様に、図28のチャートの測定結果から、シングルパス方式におけるヘッド振動誤差のパラメータを得ることができる。
(例8)シングルパス方式に特有のシステム誤差として、ヘッドモジュール取付誤差がある。図29はヘッドモジュール取付誤差のパラメータを取得するためのチャートの例である。各ヘッドモジュール220−j(j=1,2・・・Nm)は、設計上の取付位置(理想的な取付位置)からズレて取付られることがある。各ヘッドモジュール220−j(j=1,2・・・Nm)の取付位置は、主走査方向誤差、副走査方向誤差、及び面内回転方向の誤差を含み得る。ヘッドモジュール取付誤差に起因して、ドットの記録位置が理想的な位置からずれることになる。
図29に示すチャートでは、ヘッドモジュール220−j(j=1,2・・・Nm)のそれぞれのノズル群で、主走査方向に一列状に並ぶ画素列を打滴し、ヘッドモジュール220−j(j=1,2・・・Nm)単位のドット列Ds(j)を記録する。
そして、当該チャートの読み取り画像から、ヘッドモジュール220−j(j=1,2・・・Nm)ごとのドット列Ds(j)について、それぞれの濃度分布から、ドット列Ds(j)のかたまりの重心位置G(j)と、主走査方向に対する傾き角度θ(j)とを算出する(図30(A)(B)参照)。
各ドット列Ds(j)はそれぞれ、本来狙いとする(つまり、設計上の理想的な)重心位置G0(j)が定められている。したがって、図30(A)に示すように、チャートの読み取りから算出されたドット列Ds(j)の重心位置G(j)が、理想的な重心位置G0(j)から主走査方向、及び副走査方向のそれぞれの方向にどれだけズレているか、という重心位置のズレを把握することができる。重心位置のズレから主走査方向誤差と副走査方向誤差を把握することができる。また、ヘッドモジュール220−j(j=1,2・・・Nm)は、面内で回転して取り付けられていることも想定しているため、図30(B)に示すように、主走査方向に対するドット列Ds(j)の傾き角度θ(j)も測定される。この傾き角度θ(j)は、面内回転方向の誤差を示すものである。
[システム誤差パラメータの蓄積と活用について]
上記に例示した「ヘッドモジュール取付誤差」は、経時的に変化するものではなく、ヘッドモジュールの取り付けによって確定的に定まる特性誤差に該当する。その一方で、各ノズル誤差(滴種ごとの各ノズル誤差を含む)、双方向の位置ズレ(滴種ごとの双方向の位置ズレを含む)、ヘッド振動誤差、及び用紙搬送誤差などの各誤差項目は、経時的に変化し得る。
したがって、上述した各チャートから得られるシステム誤差パラメータの取得結果をメモリその他の記憶部に蓄積しておき、過去に取得されたシステム誤差パラメータの蓄積データと、新たに取得されたシステム誤差パラメータとを含めて、システム誤差の分布データを更新し、更新された最新のシステム誤差分布を基に、「ランダムシステム誤差」を定め、システム誤差への耐性設計を行うことも好ましい形態である。
システム誤差に含まれる特性誤差についても、過去に取得されたシステム誤差パラメータの蓄積データと、新たに取得されたシステム誤差パラメータとを含めたデータの分布から「特性誤差」の値を更新することが好ましい。
[システム誤差耐性設計におけるシミュレーション画像の生成と画質評価]
システム誤差を特性誤差とランダムシステム誤差という視点で分類した場合、ハーフトーン処理規則の生成に際して、システム誤差に対する耐性設計をする場合のシミュレーション画像の生成と画質の評価を、複数のランダムシステム誤差の水準ごとに実施して、水準ごとの評価の総合値(加重和)を画質評価値とする。
シミュレーション画像の生成に際して、付加するランダムシステム誤差の「複数の水準」は、当該印刷システムにおけるシステム誤差分布にしたがう構成とする。
図31は、システム誤差分布とシミュレーション画像の生成に反映させるランダムシステム誤差の水準との関係を示したグラフである。
図31の横軸はシステム誤差である。システム誤差の具体的な項目としては、各ノズル誤差でもよいし、双方向の位置ズレでもよいし、ヘッド振動誤差でもよく、或いは、用紙搬送誤差であってもよい。
図31に示すように、システム誤差は、特性誤差の値Aを中心にして、プラス方向及びマイナス方向にばらついて分布するものとなっている。このようなシステム誤差分布の広がりの範囲内で、ランダムシステム誤差の複数の水準を定める。図31の例では、システム誤差分布の標準偏差σを用いて、±σと±2σの4つの水準を定めた例を示した。なお、特性誤差の値Aはシステム誤差分布における平均値に相当する。標準偏差σを利用して水準を規定する構成に限らず、任意の数値で水準を定めることができる。
シミュレーション画像を生成する際にランダムシステム誤差として付加する誤差量として、「-2σ」、「-σ」、「+σ」及び「+2σ」の4段階の水準が定められている場合、それぞれの水準の誤差量を付加して、水準ごとのシミュレーション画像を生成し、それぞれのシミュレーション画像について画質の評価を行う。
また、水準ごとに実施したシミュレーション画像の評価から総合値としての画質評価値を算出する。この場合、複数の水準の各ランダムシステム誤差を付与する頻度を図31で示した分布にしたがうようにしてもよい。「頻度」がシステム誤差分布にしたがうとは、分布の中心値付近については、より多くのシミュレーション画像を生成してそれぞれの評価値を算出する、という意味である。
或いはまた、各水準のランダムシステム誤差のシミュレーション画像、又は、それらの評価値に、図31に示した分布にしたがう重み係数をかけて、加重和を算出してもよい。
例えば、図32に示すように、システム誤差分布から、ランダムシステム誤差の複数の水準として、「+a1」、「+a2」、「-a1」及び「-a2」の4段階の水準を定めた場合を説明する。ただし、ここでのa1とa2は「0<a1<a2」を満たす数値である。説明を簡単にするために、システム誤差分布の中心値(平均値)を「0」とし、分布関数f(x)が正規分布であるとして、正負対称に水準を設定している。
この場合、各水準のランダムシステム誤差を付与した各シミュレーション画像の評価値をそれぞれVal[+a1]、Val[+a2]、Val[-a1]及びVal[-a2]と表すと、各水準のシステム誤差を付与したシミュレーション画像の評価の総合値である総合評価値としての画質評価値Total_Valueは、次式で表される。
Total_Value=A1×Val[+a1]+A2×Val[+a2]+A3×Val[-a1]+A4×Val[-a2]・・・式(5)
重み係数A1、A2、A3及び、A4は、図32のシステム誤差分布にしたがう。つまり、システム誤差分布の分布関数をf(x)で表すと、f(-a1)=f(a1)、かつ、f(-a2)=f(a2)であり、正の比例定数uを用いて、A1=A3=u×f(a1)、かつA2=A4=u×f(a2)である。
図32では、説明を簡単にするために、システム誤差分布の中心値(平均値)を「0」とし、分布関数f(x)が正規分布であるとして、正負対称に4つの水準を設定した例を述べたが、分布関数は、実際のチャート測定値に基づいて定めることができ、分布の広がりの範囲で、複数の水準を任意に設定することができる。
[画質評価値を求める式へ適用]
既に説明した画質評価用の式(1)〜(4)について、特性誤差と、その変動成分としてのランダムシステム誤差という観点で捉え直すと、次のようになる。すなわち、式(1)〜式(4)で説明した粒状性評価値[システム誤差無し]の記載は、粒状性評価値[ランダムシステム誤差無し(特性誤差有り)]と置き換えて理解でき、粒状性評価値[システム誤差有り]の記載は、粒状性評価値[ランダムシステム誤差有り]と理解できる。また、スジ評価値[システム誤差有り]の記載は、スジ評価値[ランダムシステム誤差有り]と理解できる。以下、式(1)〜式(4)のそれぞれについて、図32と式(5)で説明した考え方を導入して、修正した修正式を説明する。
[1]ディザ法の場合
ディザ法の場合における式(1)の修正式として、次の式(6)を用いることができる。
画質評価値=粒状性評価値[ランダムシステム誤差無し(特性誤差有り)]+
α×{A1×(粒状性評価値[システム誤差有り(+a1)]+粒状性評価値[システム誤差有り(−a1)] ) +A2×(粒状性評価値[システム誤差有り(+a2)]+粒状性評価値[システム誤差有り(−a2)] ) +...}
+β×{A1×(スジ評価値[システム誤差有り(+a1)]+スジ評価値[システム誤差有り(−a1)] ) +A2×(スジ評価値[システム誤差有り(+a2)]+スジ評価値[システム誤差有り(−a2)] ) +...}
・・・式(6)
なお、a1、a2、A1、A2は、図32で説明した関係にしたがう。式(1)に代えて、式(6)を用いて評価を行うことができる。
[2]誤差拡散法の場合
誤差拡散法についても、上記のディザ法の場合と同様でありまた、既に説明した誤差拡散法の場合における式(2)の修正式として、次の式(7)を用いることができる。
「粒状性評価値[システム誤差有り]
=α×{A1×{粒状性評価値[システム誤差有り(第1グループに「+a1」誤差付加)]+粒状性評価値[システム誤差有り(第2グループに「+a1」誤差付加)]+ …+粒状性評価値[システム誤差有り(第1グループに「−a1」誤差付加)]+粒状性評価値[システム誤差有り(第2グループに「−a1」誤差付加)] + …}
+A2×{粒状性評価値[システム誤差有り(第1グループに「+a2」誤差付加)]+ 粒状性評価値[システム誤差有り(第2グループに「+a2」誤差付加)] + …
+粒状性評価値[システム誤差有り(第1グループに「−a2」誤差付加)]+粒状性評価値[システム誤差有り(第2グループに「−a2」誤差付加)] + …} +...}
+β×{A1 ×{スジ評価値[システム誤差有り(第1グループに「+a1」誤差付加)]+スジ評価値[システム誤差有り(第2グループに「+a1」誤差付加)] + …
+ スジ評価値[システム誤差有り(第1グループに「−a1」誤差付加)]+ スジ評価値[システム誤差有り(第2グループに「−a1」誤差付加)] + …}
+ A2×{スジ評価値[システム誤差有り(第1グループに「+a2」誤差付加)]+ スジ評価値[システム誤差有り(第2グループに「+a2」誤差付加)] + …
+スジ評価値[システム誤差有り(第1グループに「−a2」誤差付加)]+スジ評価値[システム誤差有り(第2グループに「−a2」誤差付加)] + …} +...}…式(7)
式(2)に代えて、式(7)を用いて評価を行うことができる。
[3]ディザ法に対してボイドアンドクラスタ法を用いる場合
ボイドアンドクラスタ法の場合における式(3)の修正式として、次の式(8)を用いることができる。
画像評価値=エネルギー[ランダム誤差無し(特性誤差有り)]
+α×{A1×(エネルギー[システム誤差有り(+a1)] +エネルギー[システム誤差有り(−a1)] )+A2 ×(エネルギー[システム誤差有り(+a2)] +エネルギー[システム誤差有り(−a2)] )+....}
+β×{A1 × (スジエネルギー[システム誤差有り(+a1)] +スジエネルギー[システム誤差有り(−a1)] ) +A2 ×(スジエネルギー[システム誤差有り(+a2)] +スジエネルギー[システム誤差有り(−a2)] )+...} …式(8)
式(3)に代えて、式(8)を用いて評価を行うことができる。
[4]DBS法の場合
DBS法の場合も、シミュレーション画像の評価に際して、上述の式(6)〜(8)で説明した例と同様の評価方法を採用しうる。
[5]ハーフトーン処理の自動選択における評価式の場合
2種類以上のハーフトーン処理規則の中から一つのハーフトーン処理規則を、システムが自動的に選択する場合の画質の評価に用いるとして説明した式(4)の修正式として、次の式(9)を用いることができる。
画質評価値=p×粒状性評価値[ランダムシステム誤差無し(特性誤差有り)]+q×{A1×{粒状性評価値[システム誤差有り(第1グループに「+a1」の誤差付加)]+粒状性評価値[システム誤差有り(第2グループに「+a1」の誤差付加)] + …+粒状性評価値[システム誤差有り(第1グループに「−a1」の誤差付加)]+粒状性評価値[システム誤差有り(第2グループに「−a1」の誤差付加)] + …}
+A2×{粒状性評価値[システム誤差有り(第1グループに「+a2」の誤差付加)]+粒状性評価値[システム誤差有り(第2グループに「+a2」の誤差付加)] + …+粒状性評価値[システム誤差有り(第1グループに「−a2」の誤差付加)]
+粒状性評価値[システム誤差有り(第2グループに「−a2」の誤差付加)] + …}+....}
+r×{A1×{スジ評価値[システム誤差有り(第1グループに「+a1」の誤差付加)]
+スジ評価値[システム誤差有り(第2グループに「+a1」の誤差付加)] + …+ スジ評価値[システム誤差有り(第1グループに「−a1」の誤差付加)]+スジ評価値[システム誤差有り(第2グループに「−a1」の誤差付加)] + …} +
A2×{スジ評価値[システム誤差有り(第1グループに「+a2」の誤差付加)]+スジ評価値[システム誤差有り(第2グループに「+a2」の誤差付加)] + …+スジ評価値[システム誤差有り(第1グループに「−a2」の誤差付加)]+スジ評価値[システム誤差有り(第2グループに「−a2」の誤差付加)] + …} +....}
・・・式(9)
なお、ここでは説明を簡単にするため、システム誤差分布として図31や図32のように一次元の分布を仮定し、画質評価値の算出式も一次元の誤差を仮定した場合を説明した。しかしながら、実際には各ノズル誤差やヘッド振動誤差などは、図33から図35に示すように、主走査方向及び副走査方向の二次元の誤差分布を示す。
図33は主走査方向及び副走査方向の二次元の誤差分布を濃淡で表した図である。図34は図33に示した二次元の誤差分布における主走査方向に沿った誤差分布断面図である。図35は図33に示した二次元の誤差分布における副走査方向に沿った誤差分布断面図である。
例えば、図34及び図35に示すように、システム誤差分布からランダムシステム誤差の複数の水準として、主走査方向、副走査方向に各々4段階の水準「+a1」、「+a2」、「-a1」、「-a2」及び「+b1」、「+b2」、「-b1」、「-b2」を定めた場合、一例としての画質評価値Total_Valueは、式(5)の代わりに次の式(10)で表される。
Total_Value=A1×Val[+a1,0]+A2×Val[+a2,0]+A3×Val[-a1,0]+A4×Val[-a2,0]
+B1×Val[0,+b1]+B2×Val[0,+b2]+B3×Val[0,-b1]+B4×Val[0,-b2]
+C1×Val[+a1,+b1]+C2×Val[+a1,-b1]+C3×Val[-a1,+b1]+C4×Val[-a1,-b1]
+D1×Val[+a2,+b2]+D2×Val[+a2,-b2]+D3×Val[-a2,+b2]+D4×Val[-a2,-b2]・・・式(10)
ここで主走査方向にx、副走査方向にyの誤差量のランダムシステム誤差を付加したシミュレーション画像の評価値をVal[x,y]と表す。重み係数A1〜A4、B1〜B4、C1〜C4、並びにD1〜D4は、図33〜図35に示したシステム誤差分布にしたがう。つまり、システム誤差分布の分布関数をf(x,y)で表すと、
A1=A3=u×f(a1,0)、A2=A4=u×f(a2,0)、B1=B3=u×f(0,b1)、B2=B4=u×f(0,b2)、C1=C2=C3=C4=u×f(a1,b1)、D1=D2=D3=D4=u×f(a2,b2)である。ここでuは正の比例定数を表す。
ここまでに説明したシミュレーション画像の生成、及び、式(1)〜式(10)によって表される画質評価において、システム誤差有りのシミュレーション画像の生成及び画質評価の方法は、ハーフトーン画像の中で、各々の印刷順番、パスやタイミングに属する画素のグループ毎に、独立に、所定のシステム誤差を付加してシミュレーション画像を生成し評価値を算出する実施形態であった。しかしながら、各々の印刷順番、パスやタイミングに属する画素のグループの全てに所定のシステム誤差を付加したシミュレーション画像を生成し画質評価してもよい。また、これまでに挙げた各ノズル誤差(滴種毎の位置ズレを含む)、不吐、双方向の位置ズレ(滴種ごとの双方向の位置ズレを含む)、ヘッド振動誤差や用紙搬送誤差などの各々の項目のシステム誤差を独立にハーフトーン画像に付加してシミュレーション画像を生成し画質評価してもよいし、全ての項目のシステム誤差をハーフトーン画像に同時に付加してシミュレーション画像を生成し画質評価してもよい。その他、システム誤差有りのシミュレーション画像の生成(誤差水準の設定を含む)及び画質評価の方法に関しては本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、多くの実施形態が可能である。
[第3の実施形態による画像処理装置の構成]
図36は第3の実施形態に係る画像処理装置の機能を説明するための要部ブロック図である。図36において、図3で説明した構成と同一又は類似する要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
図36に示す第3の実施形態に係る画像処理装置20は、システム誤差パラメータ取得部53と、システム誤差パラメータ記憶部55と、システム誤差設定部67を備える。システム誤差パラメータ取得部53は、システム誤差に関するパラメータを取得する手段である。システム誤差パラメータ取得部53は、パラメータ取得手段の一形態に相当する。システム誤差パラメータ取得部53は、図3で説明した特性パラメータ取得部52と同様の役割を果たし、特性パラメータ取得部52としての役割を備えている。
システム誤差パラメータ記憶部55は、システム誤差パラメータ取得部53から取得したシステム誤差パラメータを記憶する手段である。システム誤差パラメータ記憶部55は、特性誤差記憶部55Aと、ランダムシステム誤差記憶部55Bとを含んでいる。特性誤差記憶部55Aは、システム誤差における特性誤差のパラメータを記憶する記憶部である。ランダムシステム誤差記憶部55Bは、システム誤差におけるランダムシステム誤差のパラメータを記憶する記憶部である。システム誤差パラメータ記憶部55には、過去に取得したパラメータのデータが蓄積される。制御部50は、システム誤差パラメータ記憶部55に記憶されたシステム誤差のデータ群の分布から、統計処理の演算を行い、システム誤差分布の中心値に相当する特性誤差の値と、ランダムシステム誤差の複数の水準を定める。
システム誤差パラメータ記憶部55は、図3で説明した特性パラメータ記憶部54としての役割を備えている。システム誤差パラメータ記憶部55は、記憶手段の一形態に相当する。
システム誤差設定部67は、印刷システム10(図1参照)によって印刷を実施した場合に想定されるシステム誤差に関するパラメータを設定する手段である。システム誤差設定部67は、シミュレーション画像生成部68にてシミュレーション画像を生成するためのシミュレーション条件としてのパラメータを設定する。システム誤差設定部67は、設定手段の一形態に相当する。また、システム誤差設定部67がシステム誤差を設定する処理がシステム誤差設定工程の一形態に相当する。なお、システム誤差設定部67の機能が制御部50に搭載されていてもよい。
シミュレーション画像生成部68は、システム誤差設定部67によって設定されたパラメータで示されるシステム誤差をハーフトーン処理結果に反映させて、ハーフトーン処理結果より高解像度なシミュレーション画像を生成する。または一旦、高解像度なシミュレーション画像を生成した後に平滑化した上で低解像度に変換したシミュレーション画像を生成する。シミュレーション画像生成部68によってシミュレーション画像を生成する処理の工程がシミュレーション画像生成工程の一形態に相当する。評価値演算部70は、シミュレーション画像生成部68で生成されたシミュレーション画像の画質を評価する評価値を算出する。また、評価値演算部70は、水準ごとのシミュレーション画像の評価値の総和、又は水準ごとのシミュレーション画像の評価値に重み係数をかけて加重和を算出する演算手段として機能する。
また、画像処理装置20は、入力装置34を用いてユーザーが印刷システム10の特性に関する特性パラメータを直接的に入力することができる。すなわち、画像処理装置20における特性パラメータ取得部52の態様は、入力装置34を用いてユーザーが印刷システム10の特性に関する特性パラメータを直接的に入力する構成であってもよいし、特性パラメータ取得用チャート(システム誤差パラメータ取得用チャート)の測定結果から自動的に特性パラメータを取得する構成であってもよく、これらの組み合わせであってもよい。入力装置34は情報入力手段の一形態に相当する。図3及び図19で説明した画像処理装置20についても、入力装置34からパラメータを直接入力可能な構成とすることができる。
図36に示した画像処理装置20は、式(6)〜式(9)で説明したシミュレーション画像の生成と、評価を行うことができる構成である。
上述した各実施形態における画像処理装置20による処理の内容は、画像処理方法として把握することができる。
[着弾干渉に対する耐性を付与する手段の具体例について]
次に、着弾干渉による画質劣化を抑制するハーフトーン設計、又はハーフトーン処理を実現する構成の具体例を説明する。
本明細書において既に「着弾干渉の影響による画質劣化を補償する手段」について概説し、着弾干渉時のドット移動による画質劣化を抑えるようなハーフトーンパラメータの生成、又はハーフトーン処理の方法に言及した。ここでは、着弾干渉に対する耐性を付与する手段の更に詳細な具体例を説明する。
着弾干渉による画質劣化を抑制するための手段は、複数の画素におけるドットの配置形態を表すドット画像のデータから各ドットについて他の隣接ドット(つまり周囲ドット)との接触状態を解析し、着弾干渉の影響を評価することで、その評価結果を基に、着弾干渉に対する耐性を付与するようにハーフトーンパラメータの生成(すなわち、ハーフトーン設計)、又は、ハーフトーン処理を行うというものである。
かかる機能を実現するための形態は、いくつか考えられるが、本明細書では、各ドットについて、周囲ドットとの接触方向及び接触量に基づき、着弾干渉によるドットの移動量を見積もり、全体としての移動量(つまり、着弾干渉の影響)が小さくなるハーフトーン設計、又はハーフトーン処理を行うという処理の内容について説明する。このようなハーフトーン設計、又はハーフトーン処理を行うことにより、着弾干渉が発生しても、その影響によるドットの移動が比較的少ないハーフトーン画像が得られることになる。
既に説明した図10、図14、及び図16の各例にならい、ディザ法又は誤差拡散法におけるハーフトーンパラメータを生成する処理の例と、ディザ法に対してボイドアンドクラスタ法によりハーフトーンパラメータを生成する処理の例と、ダイレクトバイナリーサーチ法によるハーフトーン処理の例の3つの例について、それぞれ説明する。
図37は、ディザ法又は誤差拡散法におけるハーフトーンパラメータを生成する処理に関するフローチャートである。
図10で説明したフローチャートに代えて、図37に示すフローチャートを採用することができる。
図37に示すフローチャートは、ディザ法と誤差拡散法の両方について共通のフローチャートである。ここでは、ディザ法を例に説明する。
まず、ハーフトーンパラメータを仮設定する(ステップS501)。ディザ法の場合、ディザマスクの各閾値を定めることがハーフトーンパラメータを定めることに相当する。図37のフローチャートを閾値0から最大値まで繰り返すことになる。
ステップS501でハーフトーンパラメータを仮設定した後、次に、その仮設定したハーフトーンパラメータを用いてハーフトーン処理を行う(ステップS502)。ディザ法の場合、ステップS502は、閾値「0」から現閾値までのドットON画素を求めることに相当する。つまり、現閾値の階調を持つ単一階調の入力画像について、ディザマスクを適用したハーフトーン処理後のハーフトーン画像(ドット配置)を求めることに相当する。
次いで、ステップS502で生成されたハーフトーン画像の画質評価を行う(ステップS503)。図10のフローチャートでは、画質評価(ステップS28)に際して、印刷システムの特性に関する特性パラメータを用いてシミュレーション画像を生成する場合を説明した(図10のステップS26)。
しかし、図37に示すフローチャートにおける画質評価(ステップS503)に際しては、シミュレーション画像の生成は必須の処理ではない。すなわち、ステップS502のハーフトーン処理によって生成されるハーフトーン画像そのものについて、シミュレーション無しに、画質を評価してよい。
また、ステップS503における画質評価に際して、図10の例のように、システムの特性パラメータを考慮したシミュレーションを実施する場合であっても、図11で説明した着弾干渉の影響に関するシミュレーションは実施しないものとする。着弾干渉の影響については、別途、図37のステップS504で評価を行うためである。
ステップS503の画質評価は、ハーフトーン画像にガウシアンフィルタなどのローパスフィルタや、人の視覚感度を表す視覚伝達関数(VTF:Visual Transfer Function)をかけた上で、周波数変換して積分した値、RMS粒状度(Root Mean Square granularity)、入力画像との誤差や標準偏差などのうち少なくとも一つの評価値を算出して行われる。ステップS503の画質評価工程で算出された値は「画質評価値」としてメモリに記憶される。
次いで、着弾干渉影響を評価する(ステップS504)。そして、着弾干渉影響の評価結果と、ステップS503で得られた画質評価の評価結果とを基に、ハーフトーンパラメータの更新の可否を判断してハーフトーンパラメータの更新を行う(ステップS505)。
図37のフローチャートにおいて、ステップS504とステップS505の処理を行う点が、図10のフローチャートと比較して大きく相違する点である。図37におけるステップS504とステップS505の更に詳細な処理内容は後述する。
図37のステップS506では、ステップS501からステップS505の処理を所定回数繰り返し実施したか否かが判定される。ディザ法の場合のステップS506の「所定回数」とは、閾値の候補の全画素数となる。
ステップS506の判定において、所定回数の繰り返し処理が完了していなければ、ステップS501に戻り、ステップS501からステップS505の処理を繰り返す。ステップS506の判定において、所定回数の繰り返し処理が完了したら処理を終了する。
図38は、図37のステップS504とステップS505の部分の更に詳細な処理内容の一例を示すフローチャートである。
図38のステップS511からステップS514が図37のステップS504の工程に相当し、図38のステップS515が図37のステップS505の工程に相当する。
図38に示すように、まず、ハーフトーン画像に含まれる複数のドットの各ドットについて、周囲ドットとの接触方向及び接触量に基づき、着弾干渉による移動方向と移動量を算出する(ステップS511)。
図39は着弾干渉によるドット移動の移動方向と移動量の算出方法を説明する説明図である。図39におけるグリッドの各セルは画素を示している。図39に示した二次元のグリッドに直交座標系を導入して図39の横方向をX方向とし、縦方向をY方向として説明する。ここでは、Y方向が用紙搬送方向に相当する。
図39中の波線で示した円は、ドットの広がり領域を示している。図39においてセルの中に示した「1」から「6」の数字は、ドットの番号を示している。1番のドットを「ドット1」、2番のドットを「ドット2」という具合に、ドット番号を付して各ドットを表記する。
図39に示した1番から6番の各ドットについて、それぞれ他のドットである周囲ドットとの接触方向と接触量に基づき算出されたドットの移動方向と移動量を、ドットごとに矢印で示した。矢印の矢が指す方向がドットの移動方向を表し、矢印の長さが移動量の大きさを表している。着弾干渉によるドットの移動方向及び移動量はベクトルとして扱うことができる。つまり、着弾干渉による各ドットの移動量は、移動方向と移動量の大きさを持つベクトル量で表すことができる。
周囲ドットの範囲は、着弾干渉が発生し得る範囲、つまり、隣接するドット同士が重なり合う可能性がある範囲である。ドットが大きいほど、周囲ドットの範囲は広くなる。
「接触方向」は、例えば、左方向、右方向、上方向、下方向、左上方向、左下方向、右上方向、及び右下方向の8方向のいずれかに分類することができる。当然、8方向より細かく、又は粗く分類することができる。
「接触量」は、ドットの大きさとドットの中心間の距離に依存する。接触量は、簡易的には、ドットの中心間の距離で表すことができる。また、「接触量」はドットの中心同士を結ぶ線上でドットが重なっている距離で表してもよく、又は、ドットが重なっている面積で表してもよい。例えば、ドット1の直径をD1、ドット2の直径をD2、1画素のX方向のサイズをpxとした場合に、ドット1とドット2の中心間の距離はpxであり、ドット1とドット2の中心同士を結ぶ線上でドットが重なっている距離は(D1/2)+(D2/2)−pxと表すことができる。
与えられるハーフトーン画像におけるドットの配置形態を解析することにより、各ドットについて、周囲ドットとの接触方向と接触量を把握することができる。そして、周囲ドットとの接触方向と接触量の情報を基に、各ドットについて、着弾干渉によるドットの移動方向と移動量を見積もることができる。
ドット1は、その右隣の画素に形成されるドット2と接触するため、ドット1については、ドット2との着弾干渉による移動方向は図39の右方向であり、着弾干渉による移動量は、接触量に応じた大きさとなる。図39においてドット1の着弾干渉による移動方向と移動量を表す移動ベクトルをMv12で示した。なお、iとjがドット番号を示す整数である場合に、ドットiのドットjとの着弾干渉による移動ベクトルをMvijと表記する。また、移動ベクトルMvijの大きさを|Mvij|と表記する。|Mvij|は、ドットiのドットjとの着弾干渉による移動量の絶対値を意味する。
ドット2については、ドット1との着弾干渉とドット3との着弾干渉が相殺されて、「移動量無し」となる。つまり、ドット2は、ドット1との着弾干渉による移動ベクトルMv21と、ドット3との着弾干渉による移動ベクトルMv23とが互いに逆方向で大きさが等しい。したがって、ドット2についての着弾干渉による移動ベクトルMv2は、移動ベクトルMv21と移動ベクトルMv23のベクトル和として表され(Mv2=Mv21+Mv23)、着弾干渉の影響が相殺され、移動量無しとなる。つまり、|Mv2|=|Mv21+Mv23|=0である。
ドット3は、その左隣に位置するドット2と接触するため、ドット3については、ドット2との着弾干渉による移動方向は図39の左方向であり、移動量は接触量に応じた大きさとなる。図39においてドット3の移動ベクトルをMv32で示した。
ドット4は、右上方向に隣接して位置するドット5と接触するため、ドット4については、ドット5との着弾干渉による移動方向は右上方向であり、移動量は接触量に応じた大きさとなる。図39においてドット4の移動ベクトルをMv45で示した。なお、ドット4のドット5との接触量は、ドット1のドット2との接触量に比べて小さいため、ドット4の移動量|Mv45|は、ドット1の移動量|Mv12|に比べて小さい。
ドット5は、ドット4とドット6に接触している。ドット5については、左下方向に隣接するドット4との着弾干渉による移動ベクトルMv54と、右下方向に隣接するドット6との着弾干渉による移動ベクトルMv56とが合成されたベクトル和としての移動ベクトルMv5=Mv54+Mv56となる。ドット5の移動ベクトルMv5は、図39に示したように、下方向の移動方向となり、ドット5の移動量|Mv5|は、|Mv5|=|Mv54|×21/2のように表すことができる。
ドット6は、左上方向に隣接して位置するドット5と接触しているため、ドット6については、ドット5との着弾干渉による移動方向は左上方向であり、移動量は接触量に応じた大きさとなる。図39においてドット6の移動ベクトルをMv65で示した。
このようにして、ハーフトーン画像における各ドットについて、周囲ドットとの着弾干渉による移動ベクトルを求め、各ドットの着弾干渉による移動量の総和Aを算出する(図38のステップS512)。
ステップS512で算出される移動量の総和Aは、印刷システムにおける誤差のパラメータを加味していない状態での着弾干渉の影響による各ドットの移動量の絶対値の総和を示すものである。
図39の場合、総和A=|Mv12|+|Mv2|+|Mv32|+|Mv45|+|Mv5|+|Mv65|と表すことができる。
次に、ドット径、ドット形状、ドット形成位置ズレ、及び不吐のうち少なくとも一つの誤差を反映したドット配置における各ドットについて、着弾干渉による移動量を算出する(図38のステップS513)。
ここでは、説明を簡単にするために、反映させる誤差の種類として、ドット形成位置ズレを例に説明する。図40は、記録ヘッドにおける特定のノズルのドット形成位置ズレによる誤差を反映させたドット配置の例を示す。図40では、ドット2とドット5の記録を担うノズルについて、ドット形成位置ズレが発生する場合を図示している。
図40において、ドット2とドット5について、それぞれドット形成位置ズレによって着弾位置が図40の左方向にズレた様子が示されている。ドット形成位置ズレの方向と着弾位置のズレ量は、ドット形成位置ズレの誤差を示すパラメータによって特定される。ドット形成位置ズレによる着弾位置のズレ量を「ドット形成位置ズレ量」と呼ぶ。図40の例ではドット形成位置ズレの方向が「−X方向」であり、ドット形成位置ズレ量は、1/2画素とした。「1/2画素」のドット形成位置ズレ量とは、1画素のX方向のサイズであるpxを単位として、px/2を意味している。
図40に示したドット配置における各ドットについて、周囲ドットとの接触方向と接触量に基づき、着弾干渉による移動量が求められる。
図40におけるドット1は、その右隣に位置するドット2と接触している。ドット形成位置ズレの誤差を付加したドット2は、図39で説明した誤差を付加する前の状態(ドット形成位置ズレ無しの状態)と比べて、ドット1に近づく方向に着弾位置が移動している。したがって、図40において、ドット1のドット2との接触量は、図39における接触量よりも大きな値となる。
図40においてドット1のドット2との着弾干渉による移動ベクトルをMe12で示した。ドット形成位置ズレの誤差を付加したドット配置における各ドットの着弾干渉の影響による移動ベクトルを表記するにあたり、iとjをドット番号を示す整数とする場合に、ドットiのドットjとの着弾干渉による移動ベクトルをMeijと表記する。また、移動ベクトルの大きさを|Meij|と表記する。
図40に示したドット1の移動ベクトルMe12の大きさ|Me12|は、図39で説明したドット1の移動ベクトルMv12の大きさ|Mv12|よりも大きいものとなっている。
図40におけるドット2については、ドット1との着弾干渉による移動ベクトルMe21と、ドット3との着弾干渉による移動ベクトルMe23とが互いに逆方向で大きさが|Me21|>|Me23|となる。したがって、ドット2については、移動ベクトルMe21と移動ベクトルMe23とが合成されて、これらのベクトル和として移動ベクトルMe2=Me21+Me23となる。
図40におけるドット3については、その左隣に位置するドット2と接触しているが、ドット2のドット形成位置ズレによって、図39の例と比較して接触量が小さくなっている。したがって、図40のドット3については、ドット2との着弾干渉による移動方向は左方向であり、移動量は接触量に応じた大きさとなる。図40においてドット3の移動ベクトルをMe32で示した。
図40におけるドット4は、ドット形成位置ズレが発生したドット5と接触している。ドット5のドット形成位置ズレによって、ドット4とドット5との接触量は図39で説明したドット4とドット5との接触量よりも増大している。図40においてドット4の移動ベクトルをMe45で示した。図40に示したドット4の移動ベクトルMe45の大きさ|Me45|は、図39で説明したドット4の移動ベクトルMv45の大きさ|Mv45|よりも大きいものとなっている。
図40におけるドット5は、ドット形成位置ズレによってドット6と非接触となり、ドット4のみと接触している。そのため、図40におけるドット5については、ドット4との着弾干渉による移動ベクトルMe54となる。
図40におけるドット6は、他の周囲ドットと非接触となるため、ドット6については着弾干渉が発生せず、着弾干渉の影響による移動量は「0」である。つまり、ドット6の着弾干渉による移動ベクトルMe6の大きさは、|Me6|=0であり、「移動量無し」となる。
このようにして、所定の誤差を付加した状態のハーフトーン画像における各ドットについて、周囲ドットとの着弾干渉による移動ベクトルを求め(ステップS513)、各ドットの着弾干渉による移動量の絶対値の総和Bを算出する(図38のステップS514)。
ステップS514で算出される移動量の総和Bは、印刷システムにおける誤差のパラメータを反映させた状態での着弾干渉の影響による各ドットの移動量の絶対値の総和を示すものである。
図40の場合、総和B=|Me12|+|Me2|+|Me32|+|Me45|+|Me54|+|Me6|と表すことができる。
図38のステップS511からステップS514の処理によって、図39で説明した「ドット形成位置ズレ無し」の状態と、図40で説明した「ドット形成位置ズレ有り」の状態のそれぞれについて、各ドットの着弾干渉による移動量の絶対値の総和が算出される。つまり、ドット形成位置ズレの誤差を付加しない状態である「ドット形成位置ズレ無し」の状態における各ドットの着弾干渉による移動量の絶対値の総和Aと、ドット形成位置ズレの誤差を付加した状態である「ドット形成位置ズレ有り」の状態における各ドットの着弾干渉による移動量の絶対値の総和Bとが算出される。図39は誤差反映前の状態に相当し、図40は誤差反映後の状態に相当する。
総和Aと総和Bのそれぞれは「着弾干渉評価値」の一形態に相当する。総和Aと総和Bのそれぞれは、各ドットの着弾干渉による移動量を総合した評価値であり、着弾干渉によるドット移動の全体的な影響度合いを指標である。総和Aと総和Bによって着弾干渉の影響の度合いが数値として定量化される。
総和Aが「第1の着弾干渉評価値」の一形態に相当し、総和Bが「第2の着弾干渉評価値」の一形態に相当する。
図38におけるステップS514の後、ステップS515に進む。ステップS515は、ハーフトーンパラメータの更新の可否を判断する判断処理と、判断結果に基づく更新処理とを含む。
すなわち、ステップS515では、移動量の総和Aと総和Bのそれぞれを規定の基準値と比較し、総和Aと総和Bのそれぞれが規定の基準値以下であり、かつ、図37のステップS503で求めた画質評価値が改善された場合に、ハーフトーンパラメータを更新する処理を行う。総和Aと総和Bのそれぞれを規定の基準値と比較する処理が「比較処理」の一形態に相当する。また、総和Aと総和Bのそれぞれが規定の基準値以下であるか否かは、比較処理による「比較結果」に基づくものである。
ここでの規定の基準値は、着弾干渉によるドット移動の影響の許容上限を定めた値であり、着弾干渉による画質劣化が許容できるレベルに収まる範囲に予め定められている。総和Aと総和Bのそれぞれが、規定の基準値以下となる場合には、着弾干渉によるドット移動の影響が、基準値で表されるドット移動の影響と同等以下に小さくなることを意味する。
ステップS515では、移動量の総和Aと総和B、更に、図37のステップS503で求めた画質評価値を組み合わせて、ハーフトーンパラメータの更新の可否を判断している。
「ハーフトーンパラメータを更新する」とは、図37のステップS501で仮設定したハーフトーンパラメータを採用してハーフトーンパラメータを更新することを意味する。
図37から図40で説明した構成によれば、着弾干渉評価値である移動量の総和Aと総和Bのそれぞれと規定の基準値との比較処理の比較結果に基づき、規定の基準値で表される許容範囲に収まるドット配置となるハーフトーンパラメータを生成することができる。
図41は第4の実施形態による画像処理装置の機能を説明するための要部ブロック図である。図41において、図3で説明した構成と同一又は類似する要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
図41に示した第4の実施形態に係る画像処理装置20は、図37から図40で説明した処理を行う機能を備えている。すなわち、図41に示す画像処理装置20は、ハーフトーン画像解析部532と、ドット移動量算出部534と、着弾干渉影響評価部536と、基準値格納部538と、ハーフトーン処理生成部58と、ハーフトーン処理規則記憶部60と、ハーフトーン処理部80とデータ出力部66とを備える。また、画像処理装置20は、パラメータ取得部544と、誤差反映処理部546とを備える。
ハーフトーン画像解析部532は、ハーフトーン画像550のデータを解析し、ハーフトーン画像550における各ドットについて、他のドットである周囲ドットとの接触方向及び接触量の情報を生成する。ハーフトーン画像解析部532は、「解析手段」の一形態に相当する。ハーフトーン画像解析部532にてドットの接触状態を解析し、接触状態を示す接触方向及び接触量の情報を生成する工程が「解析工程」の一形態に相当する。ハーフトーン画像解析部532の処理機能が「解析機能」の一形態に相当する。
ハーフトーン画像550は、ハーフトーン処理生成部58によってハーフトーンパラメータを決定する処理の過程で生成されるドット画像である。ドット画像は、ドットの配置形態を示す画像を意味している。ハーフトーン画像550は、図37のステップS502の工程で生成される。
ドット移動量算出部534は、ハーフトーン画像解析部532から得られる各ドットの周囲ドットとの接触方向及び接触量の情報に基づき、各ドットの着弾干渉によるドット移動の移動方向及び移動量を算出する。ドット移動量算出部534は、「移動量算出手段」の一形態に相当する。ドット移動量算出部534にてドット移動の移動量を算出する工程が移動量算出工程の一形態に相当する。ドット移動量算出部534の処理機能が移動量算出機能の一形態に相当する。
着弾干渉影響評価部536は、ドット移動量算出部534によって得られる移動方向及び移動量を示す情報から着弾干渉によるドット移動の影響を定量評価する着弾干渉評価値を算出する。着弾干渉影響評価部536は、「着弾干渉影響評価手段」の一形態に相当する。着弾干渉影響評価部536にて着弾干渉評価値を算出する工程が「着弾干渉影響評価工程」の一形態に相当する。着弾干渉影響評価部536の処理機能が「着弾干渉影響評価機能」の一形態に相当する。
図38で説明した総和Aと総和Bは「着弾干渉評価値」の一形態である。着弾干渉影響評価部536は、図38で説明した総和Aと総和Bを算出する。
基準値格納部538は、図38のステップS515で説明した規定の基準値の情報を格納しておく記憶手段である。着弾干渉影響評価部536は、算出した着弾干渉評価値としての総和Aと総和Bを規定の基準値と比較し、着弾干渉によるドット移動の影響の程度を判断する。
ハーフトーン処理生成部58は、着弾干渉影響評価部536と連携してハーフトーン処理規則を生成する。
パラメータ取得部544は、ドット径、ドット形状、ドット形成位置ズレ、及び不吐のうち少なくとも一つの誤差を表すパラメータを取得する手段である。図40で説明した例では、ドット形成位置ズレの誤差に関するドット形成位置ズレ方向及びドット形成位置ズレ量を表すパラメータが取得される。パラメータ取得部544は、ユーザーインターフェースで構成してもよいし、外部記憶媒体若しくは装置内部に保持されているパラメータ情報を取り込むデータ取り込み端子、又は通信インターフェースで構成されてもよく、これらの適宜の組み合わせであってもよい。
誤差反映処理部546は、パラメータ取得部544から得られるパラメータで表される誤差を反映したドットの配置を生成する処理を行う。
誤差反映処理部546は、ハーフトーン画像550のデータに対して、パラメータ取得部544から得られるパラメータで表される誤差を反映させて、誤差反映後のドット配置状態を示すドット画像を生成する。図40で説明した例の場合、誤差反映処理部546は、ドット形成位置ズレによる誤差が付加されたドット配置のデータを生成する。誤差反映処理部546は「誤差反映処理手段」の一形態に相当する。
ハーフトーン画像解析部532は、誤差反映処理部546によって誤差を付加する前のハーフトーン画像550と、ハーフトーン画像550に対して誤差反映処理部546によって誤差を付加した後の誤差反映後のハーフトーン画像のそれぞれについて、接触方向及び接触量の解析を行うことができる。
誤差を付加する前の状態が「誤差を非反映とした場合」の一形態に相当する。誤差を付加した後の状態が「誤差を反映した場合」の一形態に相当する。
ハーフトーン画像解析部532とドット移動量算出部534によって、図38のステップS511の処理が行われる。また、パラメータ取得部544と、誤差反映処理部546と、ハーフトーン画像解析部532と、ドット移動量算出部534との組み合わせによって、図38のステップS513の処理が行われる。
着弾干渉影響評価部536によって、図38のステップS512及びステップS514の処理が行われる。更に、着弾干渉影響評価部536とハーフトーン処理生成部58によって、図38のステップS515の処理が行われる。
かかる構成の場合、ハーフトーン処理生成部58(図41参照)が「信号処理手段」の一形態に相当し、ハーフトーン処理生成部58にてハーフトーンパラメータの生成を行う工程が「信号処理工程」の一形態に相当する。また、ハーフトーン処理生成部58の処理機能が「信号処理機能」の一形態に相当する。
なお、図41の画像処理装置20は、図41に明記した構成の他に、図3で説明した画質評価処理部74やハーフトーン選択用チャート生成部76と同様の構成を備える構成とすることができる。
<誤差拡散法の場合>
図37のフローチャートは、誤差拡散法のハーフトーンパラメータの生成についても適用することができる。図10で説明した例と同様に、図37のフローチャートを全ての適用階調区間について繰り返すことで、各適用階調区間の誤差拡散マトリクスの拡散係数が定められる。
すなわち、ある階調区間について、該当階調区間に適用する誤差拡散マトリクスの拡散係数を仮設定し(図37のステップS501)、当該階調区間における各々の階調の入力画像(単一階調の均一画像)にハーフトーン処理を施し(図37のステップS502)、ハーフトーン画像の画質評価(ステップS503)を行い、階調毎の各評価値の平均値を画質評価値とする。画質評価(ステップS503)はディザ法の場合と同様にして実施する。
また、着弾干渉影響の評価(ステップS504)と、ハーフトーンパラメータの更新判断及び更新処理(ステップS505)についてもディザ法の場合と同様にして実施する。
<ディザ法に対してボイドアンドクラスタ法を適用する場合>
図42はディザ法のハーフトーン設計に際してボイドアンドクラスタ法を用いる場合のフローチャートである。図14で説明したフローチャートに代えて、図42に示すフローチャートを採用することができる。
図42に示すフローチャートでは、まず、ハーフトーンの初期画像を準備する(ステップS521)。ハーフトーンの初期画像の生成方法は、図14のステップS42と同様である。
次に、図42のステップS522に進み、ハーフトーン画像に対して、フィルタを畳み込む。フィルタとしては、例えばガウシアンフィルタなどのローパスフィルタが用いられる。ステップS522では、ハーフトーン画像そのものにフィルタを畳み込んでもよいし、印刷システムの特性に関する特性パラメータを考慮したシミュレーション画像にフィルタを畳み込んでもよい。ただし、特性パラメータを考慮したシミュレーションを実施する場合であっても、着弾干渉の影響に関するシミュレーションは実施しないものとする。着弾干渉の影響については、別途、図42のステップS523で評価を行うためである。
次いで、着弾干渉影響を評価する(ステップS523)。そして、着弾干渉影響の評価結果を基に、ハーフトーン画像の更新を行う(ステップS524)。
図42におけるステップS523とステップS524の更に詳細な処理内容は後述する。
ステップS525では、全階調について閾値の設定(つまりドットの設定)が完了したか否かが判定され、未完了であれば、ステップS522に戻り、ステップS522からステップS524の処理が繰り返される。すなわち、ステップS522で、新たにドットが追加されたハーフトーン画像に対してフィルタが畳み込まれ、ステップS523及びステップS524が行われる。
ステップS525において、全階調の処理が完了したら、図42の処理を終了する。
図43は、図42のステップS523とステップS524の部分の更に詳細な処理内容の一例を示すフローチャートである。図43のフローチャートにおいて、図38で説明したフローチャートの工程と同一又は類似する工程には同一のステップ番号を付し、その説明は省略する。図43のフローチャートは、図38で説明したフローチャートのステップS515に代えて、ステップS516の工程を有している。
図43のステップS511からステップS514が図42のステップS523の工程に相当し、図43のステップS516が図42のステップS524の工程に相当する。
図43のステップS516では、ハーフトーン画像のドット未設定の画素のうち、移動量の総和Aと総和Bがそれぞれ規定の基準値以下であり、かつ、エネルギー最小画素(すなわち、ボイド画素)に閾値を設定し、ハーフトーン画像の当該ボイド画素にドットを設定する。
なお、図43に示したフローチャートは、初期画像から閾値を増加させていく方向の処理であるが、初期画像から閾値(すなわち階調値)を降下させる方法についても、公知のボイドアンドクラスタ法に従う。つまり、ハーフトーン画像にフィルタを畳み込んだエネルギー画像において、ドットが設定されている画素のうち、エネルギー最大の画素をドットが密なクラスタ画素と見做し、閾値を設定すると共に、当該画素のドットを外してハーフトーン画像を更新するという処理を順次に繰り返す。
<ダイレクトバイナリーサーチ法によるハーフトーン処理を行う場合>
図44はDBS法によるハーフトーン処理を行う場合のフローチャートである。図16で説明したフローチャートに代えて、図44に示すフローチャートを採用することができる。
図44に示すフローチャートでは、まず、ハーフトーンの初期画像を準備する(ステップS531)。
ハーフトーンの初期画像は、別途、簡易に生成したディザマスク、又は図4のステップS14で生成したディザ法のハーフトーン処理規則によるディザ処理をかけることにより生成される。
次いで、ハーフトーン画像におけるドットを置き換える処理を行う(図44のステップS532)。そして、ドット置き換え前と、ドット置き換え後のそれぞれに関し、画質評価を行う(ステップS533)。
ステップS533の画質評価の方法は、図16のステップS58と同様の方法を採用することができる。ただし、図16のフローチャートでは、画質評価(ステップS58)に際して、印刷システムの特性に関する特性パラメータを用いてシミュレーション画像を生成する場合を説明した(図16のステップS56)。
しかし、図44に示すフローチャートにおける画質評価(ステップS533)に際しては、シミュレーション画像の生成は必須の処理ではない。すなわち、ハーフトーン画像そのものについて、シミュレーション無しに、画質を評価してよい。
また、ステップS533における画質評価に際して、図16の例のように、印刷システムの特性パラメータを考慮したシミュレーションを実施する場合であっても、図11で説明した着弾干渉の影響に関するシミュレーションは実施しないものとする。着弾干渉の影響については、別途、図44のステップS534で評価を行うためである。
次いで、着弾干渉影響を評価する(ステップS534)。そして、着弾干渉影響の評価結果と、ステップS533で得られた画質評価の評価結果とを基に、ハーフトーン画像の更新の可否を判断してハーフトーン画像の更新を行う(ステップS535)。図44におけるステップS534とステップS535の更に詳細な処理内容は後述する。
予め設定されている「画素更新回数」に従い、所定回数のドットの置き換えを行い、ステップS532からステップS535の処理を繰り返す。すなわち、ステップS536において、所定回数のドットの置き換えの処理を完了したか否かが判定され、所定回数の処理が未完了の場合は、ステップS532に戻り、ステップS532からステップS535の処理を繰り返す。ステップS536において、所定回数の処理が完了したと判定された場合は、図44の処理を終了する。
図45は、図44のステップS534とステップS535の部分の更に詳細な処理内容の一例を示すフローチャートである。図45のステップS541からステップS544が図44のステップS534の工程に相当し、図45のステップS545が図44のステップS535の工程に相当する。
図45のステップS541では、ドット置き換え前と、ドット置き換え後のそれぞれに関し、各ドットについて、周囲ドットとの接触方向及び接触量に基づき、着弾干渉による移動方向及び移動量を算出する。
そして、ドット置き換え前と、ドット置き換え後のそれぞれについて、着弾干渉による移動量の総和Aを算出する(ステップS542)。各ドットの着弾干渉による移動量の算出方法と、移動量の総和Aの求め方については、図38のステップS511とステップS512、並びに図39で説明した例と同様である。
図45のステップS542で得られる総和Aのうち、ドット置き換え前の着弾干渉による移動量の総和を「総和A1」と記載し、ドット置き換え後の着弾干渉による移動量の総和を「総和A2」と記載する。
次いで、ドット置き換え前と、ドット置き換え後のそれぞれに関して、ドット径、ドット形状、ドット形成位置ズレ、及び不吐のうち少なくとも一つの誤差を反映したドット配置における各ドットについて、着弾干渉による移動方向及び移動量を算出する(図45のステップS543)。
そして、ドット置き換え前と、ドット置き換え後のそれぞれについて、着弾干渉による移動量の総和Bを算出する(ステップS544)。誤差を反映した場合の各ドットの着弾干渉による移動量の算出方法と、移動量の総和Bの求め方については、図38のステップS513とステップS514、並びに図40で説明した例と同様である。
図45のステップS544で得られる総和Bのうち、ドット置き換え前の着弾干渉による移動量の総和を「総和B1」と表記し、ドット置き換え後の着弾干渉による移動量の総和を「総和B2」と表記することにする。
図45におけるステップS544の後、ステップS545に進む。ステップS545は、ハーフトーン画像の更新の可否を判断する判断処理と、その判断結果に基づく更新処理とを含む。すなわち、ステップS545では、ドット置き換えにより算出された移動量の総和Aと総和Bのそれぞれを規定の基準値と比較し、総和Aと総和Bのそれぞれが規定の基準値以下であり、かつ、図44のステップS533で求めた画質評価値がドット置き換えの前後で改善された場合に、ハーフトーン画像を更新する処理を行う。
つまり、図45のステップS545では、ドット置き換え後の着弾干渉による移動量の総和A2と総和B2、更に、図44のステップS533で求めた画質評価値を組み合わせて、ハーフトーン画像の更新の可否を判断している。
「ハーフトーン画像を更新する」とは、図44のステップS532においてドットの置き換えを実施したドット置き換え後のドット配置状態を採用してハーフトーン画像を更新することを意味する。
図44及び図45で示した処理により、着弾干渉の影響によるドットの移動量が少ないハーフトーン画像を生成することができる。
「ドットの移動量が少ない」とは、ドット移動の影響の程度が、規定の基準値で表されるドット移動の影響の程度と同等以下に小さいことを意味する。
図44及び図45で説明した構成によれば、着弾干渉評価値である移動量の総和A2と総和B2のそれぞれと規定の基準値との比較処理の比較結果に基づき、規定の基準値で表される許容範囲に収まるドット配置となるハーフトーン画像を生成することができる。
図44及び図45で説明したハーフトーン処理は図41に示したハーフトーン処理部80において実施することができる。この場合の着弾干渉影響評価の対象となるハーフトーン画像550はハーフトーン処理部80による処理の過程で生成されるドット画像であり、図44のステップS531で説明した初期画像、若しくは、ステップS532によるドット置き換え後の画像、又はステップS535によって更新された更新後のハーフトーン画像である。図44及び図45で説明したハーフトーン処理を実施するハーフトーン処理部80は(図41参照)、着弾干渉影響評価部536と連携して、DBS法によるハーフトーン画像の更新処理を行う。
かかる構成の場合、ハーフトーン処理部80(図41参照)が「信号処理手段」の一形態に相当し、ハーフトーン処理部80にてハーフトーン画像の生成を行う工程が「信号処理工程」の一形態に相当する。また、ハーフトーン処理部80の処理機能が「信号処理機能」の一形態に相当する。
なお、上述した図37から図45で説明した実施形態における画像処理装置20による処理の内容は、画像処理方法として把握することができる。
[図37から図45で説明した具体例の変形例について]
<変形例1>
図37から図45の説明では、各ドットの接触方向及び接触量を示す情報に基づき、着弾干渉によるドット移動の移動量を算出する例を説明した。しかし、着弾干渉によるドット移動の移動量が、ドットの接触量に概ね比例すると見做して扱うことにより、接触方向及び接触量から直接、「着弾干渉によるドット移動の影響の程度を評価する着弾干渉評価値」を算出することができる。
例えば、図46に示すドット配置の例の場合、中央のドットに注目すると、左右のドットとのそれぞれの接触方向及び接触量は図46中の矢印で示される。矢印の指す方向が接触方向を示し、矢印の長さが接触量を示している。図46に示すドット配置は、図39で説明したドット1、ドット2、及びドット3の配置形態に相当している。
図46に示す接触状態においては、着弾干渉による移動量をあえて算出せずとも、図示の二つの矢印で示されるベクトルの和が「0」となるため、着弾干渉移動量は「0」であることが分かる。図39で説明した移動ベクトルの算出などを実施しなくても、周囲ドットとの接触方向及び接触量を表すベクトルの総和から「着弾干渉評価値」を算出することができる。
したがって、図41で説明した「ドット移動量算出部534」を省略する形態も可能である。
<変形例2>
図38、図43及び図45の各フローチャートでは、ドット径、ドット形状、ドット形成位置ズレ、及び不吐のうち少なくとも一つの誤差である所定の誤差を反映しない場合に加えて、所定の誤差を反映する場合も含めて、それぞれ着弾干渉によるドット移動の影響を抑えるような構成を説明した。
しかし、発明の実施に際しては、かかる構成に限らず、所定の誤差を反映しない場合のみ、又は、所定の誤差を反映する場合のみの着弾干渉によるドット移動の影響を抑えるようなハーフトーン設計、又はハーフトーン処理を行う構成とすることも可能である。所定の誤差を反映しない場合について着弾干渉によるドット移動の影響を抑えるには、総和Aが規定の基準値以下となればよい。
また、所定の誤差を反映する場合について着弾干渉によるドット移動の影響を抑えるには、総和Bが規定の基準値以下となればよい。
所定の誤差を反映する場合の着弾干渉によるドット移動の影響を抑えることにより、所定の誤差が付加された状態で画質良好となる、若しくは、所定の誤差が付加されても画質劣化の小さい(つまり誤差に対する耐性のある)ハーフトーン設計、又はハーフトーン処理が可能である。
<変形例3>
図37のステップS503において着弾干渉に関するシミュレーション無しに画質評価を行う場合に画質評価の対象となる画像の種類と、ステップS504において着弾干渉影響を評価する対象となる画像の種類は、同じであることが好ましい。つまり、評価の対象となる画像について、ドット径、ドット形状、ドット形成位置ズレ、ドット濃度、その他の各種の誤差を反映させるか否か、また、反映させる場合には、その反映させる誤差の種類と量を、画質評価の対象となる画像と、着弾干渉影響の評価の対象となる画像のそれぞれについて、同じにすることが好ましい。
同様に、図42のステップS522において着弾干渉に関するシミュレーション無しにフィルタを畳み込む画像の種類と、ステップS523において着弾干渉影響を評価する対象となる画像の種類は、同じであることが好ましい。
つまり、着弾干渉に関するシミュレーション無しにフィルタを畳み込む画像と、着弾干渉影響の評価の対象となる画像について、ドット径、ドット形状、ドット形成位置ズレ、ドット濃度、その他の各種の誤差を反映させるか否か、また、反映させる場合には、その反映させる誤差の種類と量を同じにすることが好ましい。
また、同様に、図44のステップS533において着弾干渉に関するシミュレーション無しに画質評価を行う場合に画質評価の対象となる画像の種類と、ステップS534において着弾干渉影響を評価する対象となる画像の種類は、同じであることが好ましい。
<変形例4>
図37のステップS505におけるハーフトーンパラメータの更新の基準、又は、図42のステップS524や図44のステップS535におけるハーフトーン画像の更新の基準として、図38のステップS515、図43のステップS516、若しくは図45のステップS545で例示した更新の基準に限らず、様々な更新の基準を定めることができる。
例えば、更新の基準として、「画質評価値又はエネルギーが予め定めた判断基準用の基準値以下であり、かつ、着弾干渉移動量総和が改善された場合」や「画質評価値又はエネルギーと着弾干渉移動量総和の重み付け和が改善された場合」としてもよい。なお、ここでいう「エネルギー」とは、ドット画像にガウシアンフィルタなどのフィルタを畳み込んで得られるエネルギー画像の画像評価値に相当する。
「着弾干渉移動量総和」とは、「着弾干渉評価値」の一形態である。「着弾干渉移動量総和」とは、図38、図43、又は図45で説明した「総和A」と「総和B」のそれぞれでもよいし、総和Aと総和Bの重み付け総和でもよい。
「着弾干渉移動量総和が改善された場合」とは、着弾干渉移動量総和の値自体が増加したか、又は減少したかという増減傾向を把握し、着弾干渉移動量総和が減少した場合に「着弾干渉移動量総和が改善された」と判断される。着弾干渉移動量総和が改善されたか否かを判断するにあたり、着弾干渉移動量総和の値自体を比較して増減の有無を把握することになるため、着弾干渉移動量総和を比較する比較処理を含んでいる。また、着弾干渉移動量総和が改善されたか否かの判定結果は、比較処理による「比較結果」に基づくものである。
「画質評価値又はエネルギーと着弾干渉移動量総和の重み付け和」は、「着弾干渉評価値を基に生成される評価値」の一形態に相当する。
<変形例5>
ハーフトーン画像のドット配置に所定の誤差(ただし、ここでは不吐以外の誤差とする。)を反映させる場合、主に、誤差を反映させるドット群の着弾干渉移動量が、誤差を反映しない場合と比べて大きく変化するため、誤差を反映させるドット群のみの着弾干渉移動量を評価してもよい。つまり、図40に示した例の場合、ドット形成位置ズレの誤差を反映させた場合の着弾干渉移動量総和として、ドット2とドット5のみの着弾干渉移動量の総和を算出してもよい。
着弾干渉によるドット移動の移動量である着弾干渉移動量を見積もる場合の「複数の画素の各ドット」とは、ドット画像に含まれる全てのドットを対象とする態様に限らず、誤差を付加するドット群のみを対象とする態様などのように、ドット画像に含まれる全ドットのうちの一部のドットを対象とすることができる。
<変形例6>
所定の誤差としてドット形成位置ズレを反映させる場合、主に、誤差を付加した方向と平行な方向に着弾干渉移動量が大きく変化するため、誤差を付加した方向と平行な方向のみの着弾干渉移動量を評価してもよい。この場合、誤差を付加した方向に接触するドットのみ、つまり、誤差を付加した方向と平行な移動方向のみのドット移動を含むドットに限って、着弾干渉移動量の総和を算出してもよいし、誤差を付加した方向と平行な方向の線上に投影した着弾干渉移動量の総和を算出してもよい。
図40に示した例の場合、誤差を付加した方向に接触するドット、つまり、誤差を付加した方向と平行な移動方向のみのドット移動を含むドットとは、ドット1、ドット2及びドット3のことである。したがって、着弾干渉移動量総和として、ドット1、ドット2及びドット3についての着弾干渉によるドット移動の移動量の総和を算出してもよい。
<変形例7>
シングルパス方式のインクジェット印刷装置においても、また、シリアル方式のインクジェット印刷装置においても、所定の誤差が付加された場合には、用紙上における走査方向に垂直な方向のドット移動がスジの発生に大きく寄与する。「走査方向」とは、同じノズルで連続して打滴される方向のことをいう。シングルパス方式の場合の「走査方向」とは用紙搬送方向であり、シリアル方式の場合の「走査方向」とはキャリッジによるヘッドの移動方向である。
シングルパス方式の場合における「走査方向に垂直な方向」とは、用紙搬送方向に垂直な方向、すなわち、用紙搬送方向と平行な副走査方向に垂直な方向である主走査方向を意味する。
また、シリアル方式の場合における「走査方向に垂直な方向」とは、キャリッジによるヘッドの移動方向に垂直な方向、すなわち、キャリッジによるヘッドの移動方向と平行な主走査方向に垂直な方向である副走査方向を意味する。
したがって、所定の誤差を付加した状態での着弾干渉の影響を評価する場合には、走査方向に垂直な方向のみのドット移動の移動量を評価してもよい。この場合、走査方向に垂直な方向に接触するドットのみ、つまり、走査方向に垂直な方向のみの移動を含むドットのみについて、着弾干渉移動量の総和を算出してもよいし、走査方向に垂直な方向の線上に投影した着弾干渉移動量の総和を算出してもよい。
図40の例において、「走査方向に垂直な方向のみの移動を含むドット」とは、ドット1、ドット2及びドット3である。図40の場合、ドット形成位置ズレによる誤差を付加する方向はX方向と平行な方向であり、走査方向はY方向である。したがって、誤差を付加する方向と走査方向に垂直な方向は、ともにX方向と平行な方向で一致している。
<システム構成のバリエーション>
印刷システムの特性に関する特性パラメータを取得する手段、つまり、ユーザーが特性パラメータを入力するための装置、特性パラメータ取得用チャートを出力するためのチャート出力制御装置とその制御にしたがって特性パラメータ取得用チャートを印刷する印刷装置、更には、特性パラメータ取得用チャートを読み取ってその読取画像の解析結果を基に特性パラメータを取得する装置、2種類以上のハーフトーン処理規則を生成する装置、ハーフトーン選択用チャートを出力するためのチャート出力制御装置、ハーフトーン選択用チャートのハーフトーン処理結果からシミュレーション画像を生成する装置、ハーフトーン選択用チャートの出力結果を読み取り、そのチャート読取画像から画像評価値を計算する装置、ユーザーがハーフトーン処理規則を選択する操作を行うための装置、など、それぞれの装置は、一体型のシステムで構成されていてもよいし、複数のシステムが組み合わされた、機能分散型の分離型のシステムで構成されていてもよい。
同様に、図36や図41で説明した画像処理装置20の構成についても、一体型のシステムで構成されてもよいし、複数のシステムが組み合わされた分離型のシステムで構成されていてもよい。
[システム構成の変形例1]例えば、特性パラメータを取得する処理を行う装置と、ハーフトーン処理規則を生成する処理を行う装置とをそれぞれ別々の装置で構成することができる。
[システム構成の変形例2]また、ハーフトーン選択用チャートを出力する処理を行う装置と、ユーザーがハーフトーン処理の選択操作を行うための装置とをそれぞれ別々の装置で構成することができる。
[システム構成の変形例3]また、特性パラメータの取得の処理を行う装置と、優先度パラメータを保持してハーフトーン処理規則を生成する処理を行う装置とをそれぞれ別々の装置で構成することができる。
[システム構成の変形例4]他の構成例として、特性パラメータ取得用チャートを出力する処理を行う装置と、出力された特性パラメータ取得用チャートの読み取りを行う画像読取装置と、特性パラメータ取得用チャートの読取画像から特性パラメータの生成と取得の処理を行う装置と、取得された特性パラメータを用いてハーフトーン処理規則を生成する処理を行う装置と、をそれぞれ別々の装置で構成することができる。
また、例えば、特性パラメータ取得用チャートやハーフトーン選択用チャートの出力と、そのチャートの画像読み取りの処理を、印刷機メーカーの工場や印刷会社の個々のローカルな印刷システムで行い、得られた読取画像を一括して、開発部門や別会社の印刷機メーカーのサーバーに送付した後に、特性パラメータの取得と、ハーフトーン処理規則の生成を、その開発部門や別会社のシステムで実施し、生成したハーフトーン処理規則を、元の個々のローカルな印刷システムに送り返す、という運用形態も可能である。
<他の構成例>
上述した実施形態に関して、下記の構成を採用することができる。
[構成例1]新しい印刷ジョブを実施するごとに、或いは、印刷ジョブの実行中に、自動でチャート出力と、そのチャートの読み取り結果からシステム誤差パラメータの取得を行い、その取得したパラメータに基づいてハーフトーン処理規則を生成してもよい。印刷ジョブごと、及び/又は、印刷ジョブ中に、チャートの出力とその読み取りを実施し、システム誤差パラメータが規定の基準以上に変化した場合や、その変化した箇所のみについて、新たにハーフトーン生成を行う構成としてもよい。この場合、システム誤差パラメータ(特性パラメータを含む)に変化がなければ、つまり、システム誤差パラメータの変化量が規定の基準内に収まっている場合は、ハーフトーン処理規則の生成処理が省略され、時間的なロスはない。
また、ハーフトーン処理しようとする画像より手前の画像に付随して、チャート出力を実施してもよい。この場合、時間的ロスが低減される。更に、ハーフトーン処理と、ハーフトーン処理規則の生成処理とは並列化してもよい。
[構成例2]ユーザーの品質要求に応じて、チャート内容、チャート出力条件、スキャン条件(チャートの読み取り条件と同義)、パラメータ取得方法、及びハーフトーン処理規則の生成内容のうち、いずれか一つ又は複数の組み合わせを変更してもよい。かかる構成を採用することにより、処理に要する時間のロスを低減することができる。
[構成例3]ドットの再現精度を調べるための専用チャートからドット再現精度を解析し、その解析結果に基づき、パラメータ取得用チャートの内容、チャート出力条件、スキャン条件、パラメータ取得方法、及びハーフトーン処理規則の生成内容のうち、いずれか一つ又は複数の組み合わせを変更してもよい。かかる構成を採用することにより、処理に要する時間のロスを低減することができる。
<コンピュータを画像処理装置として機能させるプログラムについて>
上述の実施形態で説明した画像処理装置として、コンピュータを機能させるためのプログラムをCD−ROM(Compact Disc Read-Only Memory)や磁気ディスクその他のコンピュータ可読媒体(有体物たる非一時的な情報記憶媒体)に記録し、該情報記憶媒体を通じて当該プログラムを提供することが可能である。このような情報記憶媒体にプログラムを記憶させて提供する態様に代えて、インターネットなどの通信ネットワークを利用してプログラム信号をダウンロードサービスとして提供することも可能である。
このプログラムをコンピュータに組み込むことにより、コンピュータに画像処理装置20の機能を実現させることができる。また、本実施形態で説明した画像処理機能を含む印刷制御を実現するためのプログラムの一部又は全部をホストコンピュータなどの上位制御装置に組み込む態様や、印刷装置24側の中央演算処理装置(CPU)の動作プログラムとして適用することも可能である。
<<印刷媒体について>>
「印刷媒体」には、印字媒体、被印刷媒体、被画像形成媒体、受像媒体、被吐出媒体、記録用紙、など様々な用語で呼ばれるものが含まれる。本発明の実施に際して、印刷媒体の材質や形状等は、特に限定されず、連続用紙、カット紙、シール用紙、OHP(overhead projector)シート等の樹脂シート、フィルム、布、不織布、配線パターン等が形成されるプリント基板、ゴムシート、その他材質や形状を問わず、様々なシート体を用いることができる。
<<画質劣化について>>
本明細書でいう「画質劣化」とは、主に、スジやムラの発生、及び粒状性劣化を示す。画質劣化には、インクの凝集ムラ、光沢ムラ、濃度や色若しくは光沢又はこれらの組み合わせのバンディング、或いは、ブリーディングなど、様々な要因があり得る。
<<実施形態の組み合わせについて>>
上述した各実施形態や変形例、或いは他の構成例等として説明した構成を適宜組み合わせた構成を採用することが可能である。例えば、第4の実施形態の構成に関して、変形例5、変形例6、及び変形例7のうち二つ以上の変形例の構成を適宜組み合わせた構成とすることができる。
<実施形態の利点>
上述した実施形態によれば、次のような利点がある。
(1)着弾干渉に対して耐性を有するハーフトーンパラメータ又はハーフトーン画像の生成が可能である。着弾干渉に起因する画質劣化を抑制することができ、高画質の画像形成が可能なハーフトーン画像の生成を実現することができる。
(2)印刷システムによる実際の印刷を想定したシステム誤差を考慮して、当該印刷システムに適したハーフトーン処理規則を生成することができる。これにより、良好な画質が得られる適切なハーフトーン処理を実現することができ、良好な画質の印刷画像を得ることが可能となる。
(3)特性パラメータ取得用チャートの読取画像から印刷システムの特性に関する各種の特性パラメータを簡単に取得することができる。これにより、各種の特性パラメータの全てをユーザーがユーザーインターフェースから入力する構成と比較して、特性パラメータの設定に関するユーザーの作業負荷を大幅に低減することができる。そして、特性パラメータ取得用チャートから取得された特性パラメータを基に、印刷システムに適したハーフトーン処理規則を生成することができる。
<本明細書に開示されている他の態様>
本明細書は、以下の態様[1]から[21]を開示する。
[1]:印刷システムによって印刷を実施した場合に想定されるシステム誤差に関するパラメータを設定する設定手段と、パラメータで示されるシステム誤差を反映させたシミュレーション画像を生成するシミュレーション画像生成手段と、シミュレーション画像の画質の評価を行う画質評価手段と、評価が目標の範囲に収まるシミュレーション画像を基に、印刷システムに使用するハーフトーン処理の処理内容を規定するハーフトーン処理規則を生成するハーフトーン処理生成手段と、を備える画像処理装置。
「システム誤差を反映させたシミュレーション画像」とは、シミュレーション画像を生成する際のシミュレーションの条件設定において、システム誤差を付加した条件の下で生成したシミュレーション画像を意味する。
「目標の範囲」とは、画質の目標として定義された所定の範囲である。目標の範囲は、要求される画像品質を満たすことができる画質目標として規定することができる。目標の範囲は、許容できるレベルで画質が良好となることを確保するための条件として定義することができる。また、目標の範囲は、画質を評価する指標としての評価値が最良になること、を含めることができる。
態様[1]によれば、印刷システムによる実際の印刷を想定したシステム誤差を考慮して、当該印刷システムに適したハーフトーン処理規則を生成することができる。これにより、良好な画質が得られる適切なハーフトーン処理を実現することができ、良好な画質の印刷画像を得ることが可能となる。
[2]:[1]の画像処理装置において、画質評価手段は、シミュレーション画像の画質評価値を算出する構成とすることができる。
[3]:[1]又は[2]の画像処理装置において、システム誤差に関するパラメータを取得するパラメータ取得手段を備える構成とすることができる。
[4]:[3]の画像処理装置において、パラメータ取得手段として、ユーザーがパラメータを入力するための情報入力手段を備える構成とすることができる。
[5]:[3]又は[4]の画像処理装置において、パラメータ取得手段として、印刷システムによって印刷されたパラメータ取得用チャートの読取画像を解析することによりパラメータを取得する画像解析手段を備える構成とすることができる。
[6]:[1]から[5]のいずれか一態様の画像処理装置において、システム誤差は、印刷システムの特性として再現性が期待される特性誤差である構成とすることができる。
「再現性が期待される」とは、再現性のあるもの、並びに、統計的な確率分布から合理的に高確率で再現性が見込まれること、を含む。例えば、システム誤差の測定値の分布の平均値や中央値などを「特性誤差」とすることができる。
[7]:[1]から[5]のいずれか一態様の画像処理装置において、システム誤差は、印刷システムの特性として再現性が期待される特性誤差と、不規則に変化する誤差としてのランダムシステム誤差とを含む構成とすることができる。
「不規則に変化する」とは、経時的に又は場所に依存して変化することを含む。不規則に変化する誤差は、特性誤差と比較して、再現性が低い誤差であり、統計的な確率分布から特性誤差に対する「散らばり」の成分として把握することができる。ランダムシステム誤差は、特性誤差に付加される変動成分であると理解される。特性誤差に付加される変動成分としてのランダムシステム誤差には正の値と負の値の両方があり得る。
[8]:[7]の画像処理装置において、ランダムシステム誤差の値に関して複数の水準が定められ、シミュレーション画像生成手段によって複数の水準の各々に対応したランダムシステム誤差を反映させた水準ごとのシミュレーション画像が生成される構成とすることができる。
[9]:[8]の画像処理装置において、複数の水準は、印刷システムのシステム誤差分布にしたがって決定される構成とすることができる。
[10]:[8]又は[9]の画像処理装置において、画質評価手段は、水準ごとのシミュレーション画像の各々について画質の評価を行い、水準ごとのシミュレーション画像の画質評価を統合した画質評価値を算出する構成とすることができる。
[11]:[8]から[10]のいずれか一態様の画像処理装置において、画質評価手段は、水準ごとのシミュレーション画像の評価値の総和、又は水準ごとのシミュレーション画像の評価値に重み係数をかけて加重和を算出する演算手段を備え、重み係数は、印刷システムのシステム誤差分布にしたがって決定される構成とすることができる。
[12]:[1]から[11]のいずれか一態様の画像処理装置において、過去に取得されたパラメータのデータを蓄積しておく記憶部を備え、蓄積されたデータに基づき、ハーフトーン処理規則が生成される構成とすることができる。
[13]:[12]の画像処理装置において、蓄積されたデータに基づき、印刷システムのシステム誤差分布の情報が更新される構成とすることができる。
[14]:[1]から[13]のいずれか一態様の画像処理装置と、ハーフトーン処理規則で規定されたハーフトーン処理を経て生成されたハーフトーン画像に基づいて印刷媒体に印刷を行う印刷装置と、を備える印刷システム。
[15]:印刷システムによって印刷を実施した場合に想定されるシステム誤差に関するパラメータを設定する設定手段と、パラメータで示されるシステム誤差を反映させたシミュレーション画像を生成するシミュレーション画像生成手段と、シミュレーション画像の画質の評価を行う画質評価手段と、評価が目標の範囲に収まるシミュレーション画像を基に、印刷システムに使用するハーフトーン処理の処理内容を規定するハーフトーン処理規則を生成するハーフトーン処理生成手段と、ハーフトーン処理規則で規定されたハーフトーン処理を経て生成されたハーフトーン画像に基づいて印刷媒体に印刷を行う印刷装置と、を備える印刷システム。
[16]:印刷システムによって印刷を実施した場合に想定されるシステム誤差に関するパラメータを設定する設定工程と、パラメータで示されるシステム誤差を反映させたシミュレーション画像を生成するシミュレーション画像生成工程と、シミュレーション画像の画質の評価を行う画質評価工程と、評価が目標の範囲に収まるシミュレーション画像を基に、印刷システムに使用するハーフトーン処理の処理内容を規定するハーフトーン処理規則を生成するハーフトーン処理生成工程と、を備えるハーフトーン処理規則の生成方法。
態様[16]について、[2]から[13]で特定した事項と同様の事項を適宜組み合わせることができる。その場合、画像処理装置において特定される処理や機能を担う手段は、これに対応する処理や動作の「工程(ステップ)」の要素として把握することができる。また、態様[16]に係るハーフトーン処理規則の生成方法は、ハーフトーン処理規則を生産する方法の発明として把握することができる。ハーフトーン処理規則は、ハーフトーン処理の用に供する情報であってプログラムに準ずるものと把握できる。したがって、態様[16]は、ハーフトーン処理規則の生産方法と解釈することができる。
[17]:[16]のハーフトーン処理規則の生成方法を実施することによって生成されたハーフトーン処理規則。
[17]のハーフトーン処理規則によれば、目標とする良好な画質の画像生成が可能となる。
[18]:[16]のハーフトーン処理規則の生成方法を実施することによって生成されたハーフトーン処理規則で規定されたハーフトーン処理を行うことによってハーフトーン画像を生成する画像処理方法。
態様[18]に係る画像処理方法は、ハーフトーン画像を生産する方法の発明として把握することができる。「ハーフトーン画像」は、印刷制御の処理の用に供する情報としての画像データの形態であってもよいし、その画像データにしたがって印刷された印刷画像の形態であってもよい。態様[18]は、ハーフトーン画像の生産方法と解釈することができる。
[19]:[16]のハーフトーン処理規則の生成方法を実施することによって生成されたハーフトーン処理規則で規定されたハーフトーン処理を行うことによって生成されたハーフトーン画像。
[20]:[16]のハーフトーン処理規則の生成方法を実施することによって生成されたハーフトーン処理規則で規定されたハーフトーン処理を経て生成されたハーフトーン画像に基づいて印刷媒体に印刷を行うことにより、印刷物を得る印刷物の製造方法。
態様[20]によれば、目標とする画質の範囲に収まる良好な印刷物を生産することができる。
[21]:コンピュータを、印刷システムによって印刷を実施した場合に想定されるシステム誤差に関するパラメータを設定する設定手段と、パラメータで示されるシステム誤差を反映させたシミュレーション画像を生成するシミュレーション画像生成手段と、シミュレーション画像の画質の評価を行う画質評価手段と、評価が目標の範囲に収まるシミュレーション画像を基に、印刷システムに使用するハーフトーン処理の処理内容を規定するハーフトーン処理規則を生成するハーフトーン処理生成手段として機能させるためのプログラム。
[21]のプログラムについて、[2]から[13]で特定した事項と同様の事項を適宜組み合わせることができる。その場合、画像処理装置において特定される処理や機能を担う手段は、これに対応する処理や動作の手段を実現するプログラムの要素として把握することができる。
[1]から[21]に示した態様によれば、実際の印刷を想定したシステム誤差を反映させたシミュレーション画像を基に、適切なハーフトーン処理規則が生成される。これにより、良好な画質の画像を得ることができる。
[1]から[21]に示した態様は、既に説明してある第1態様から第15態様と適宜組み合わせることができる。
以上説明した本発明の実施形態は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜構成要件を変更、追加、削除することが可能である。本発明は以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で当該分野の通常の知識を有するものにより、多くの変形が可能である。