以下、添付図面に従って本発明の実施形態について詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1は本発明の第1実施形態に係る不吐出補正方法のフローチャートである。本実施形態による不吐出補正処理は、インクジェット記録装置の不吐出補正に必要な補正パラメータの情報を取得するための「不吐出補正パラメータ作成フロー」と、その補正パラメータを用いて補正処理を実行する「画像出力フロー」に大別される。
(不吐出補正パラメータ作成フローの説明)
本実施形態による不吐出補正処理では、まず、記録ヘッドにおけるインク吐出ノズルのメンテナンスを実施する(ステップS0)。メンテナンス動作としては、例えば、布などによる吐出口の清掃、ブレードを用いたノズル面のワイピング、目詰まりの強制吐出(パージ、予備吐出)、ノズル吸引、洗浄液によるノズル内部の清掃、或いはこれらの適宜の組み合わせなどが挙げられる。所定のメンテナンス動作(ステップS0)を実行した後、これに続いて不吐出補正パラメータの最適値を選定するための計測用チャート(以下、当該計測用チャートを「不吐出補正パラメータ最適値選定用チャート」、或いは単に「最適値選定用チャート」という場合がある。)を出力する(ステップS1)。この出力された最適値選定用チャート(TC1)をスキャナ等の画像読取装置でスキャニングし(ステップS2)、当該チャートのスキャンデータ(DATA2)を得る。このスキャンデータ(DATA2)を数値解析し(ステップS3)、不吐出補正パラメータ(DATA3)を算出する。
また、上記の不吐出補正パラメータ(DATA3)を決定するまでの工程(S0〜S3)とは別に、これら工程(S0〜S3)に先行して、又は、これら工程(S0〜S3)の後に、不吐出補正に必要となる不吐出ノズル位置情報の検出が行われる(ステップS4)。
不吐出ノズル位置情報は、例えば、<1>所定の不吐出ノズル位置検出用テストパターン(一例として、いわゆる1オンNオフによる全ノズルのラインパターンを含んだテストパターン)の出力結果から計測された情報、<2>不良ノズル(既知の不吐ノズル、吐出曲がり、液滴量異常、常時開放)等と判断されて使用不可のノズルとして敢えて不吐出化処理されたノズルの位置、などで構成されている。
この不吐出ノズル位置情報(DATA4)は、装置内の不揮発性メモリ、或いはハードディスクその他の記憶手段に格納され、必要に応じて適宜、その情報が更新される。
(画像出力フローの説明)
次に、上記の不吐出ノズル位置情報(DATA4)及び不吐出補正パラメータ(DATA3)を利用した不吐出補正処理を組み込んだ画像出力フローについて説明する。
まず、描画対象となる画像データの入力が行われる(ステップS5)。画像データを入力するための手段(入力インターフェース)としては、メモリカードや光ディスクに代表される外部記憶媒体(リムーバブルメディア)から情報を取り込むメディアインターフェースや、通信インターフェース(有線、無線を問わない)を採用することができる。また、入力画像データが伝達される信号入力ラインを「画像データ入力手段」と解釈することもできる。
ここでは、インクジェット描画装置における各インク色ごとの多値階調画像データ(例えば、CMYKの4色に対応した色別の256階調画像データ)が与えられるものとする。
なお、RGBフルカラー24ビット(各色8ビット)の画像データが入力される場合や、入力画像の解像度とインクジェット描画装置の出力解像度に差がある場合などには、公知の色変換処理、解像度変換処理が行われる。
次に、画像データ(DATA5)に基づく印刷の実行に先立ち、インク吐出ノズルのメンテナンスを実施する(ステップS6)。ここでのメンテナンス動作(ステップS6)は、ステップS0で実施した内容と同じものであることが好ましい。所定のメンテナンス動作(ステップS6)を実行した後、これに続いて画像データ(DATA5)の印刷に際して不吐出補正の処理を実施し、不吐出補正済み画像データの印刷を行う(ステップS7)。この不吐出補正実施時には、不吐出ノズル位置情報(DATA4)と画像データ(DATA5)の濃度値から、不吐出補正パラメータ(DATA3)のルックアップテーブル(LUT)を参照し、各不吐出ノズルの不吐出補正に使用する不吐出補正パラメータを決定する。
ここでいう不吐出補正パラメータは、既述のとおり、不吐出補正用ノズル画像濃度増幅量Pdensity、不吐出補正用ノズルドット径増幅量Pdotのような、不吐出補正ノズルによる描画の強め量、或いはそれに類する補償量を総括した用語である。例えば、ハーフトーニング処理前の画像データ(画像濃度)を補正する補正係数であってもよいし、ノズルに対応したアクチュエータの駆動電圧信号を補正する補正係数などであってもよい。
上述のステップS5〜ステップS7を経て、不吐出補正済み画像の印刷物(PIM7)が得られる。
最適値選定用チャートの出力直前と、画像データ(DATA5)に基づく画像描画直前に、それぞれインク吐出ノズルのメンテナンスを実施し(ステップS0、S6)、チャート出力直前時と画像描画直線時におけるノズルのメンテナンス状態を同等にしておくことにより、チャート作成時の着弾位置誤差・吐出液滴量誤差と、画像描画出力時におけるこれらの誤差量を概ね同等の状態にすることができる。このため、最適値選定用チャートの読み取りに基づいて決定される不吐出補正パラメータ(選定される最適値)の信頼精度が高い。
なお、仮にチャート出力直前及び画像出力直前にインク吐出ノズルのメンテナンスを実施しないとすると、テストチャートを作成したときの着弾位置誤差・吐出液滴量誤差と画像出力時におけるこれら誤差量が同じである保証が無い。そのため、不吐出補正パラメータ最適値選定の信頼精度が劣化している。これらの誤差量を同じ状態に維持するためには、図1で説明したように、テストチャート出力直前時と画像描画直前時におけるインク吐出ノズルのメンテナンス状態を同様にしておくことが望ましい。
(不吐出補正パラメータ最適値選定用チャートの説明)
図2は、本実施形態による不吐出補正パラメータ最適値選定用チャートの一例を示す模式図である。図2において、符号1はインクジェットプリンタのヘッドモジュール、符号3は被記録媒体としての用紙である。用紙3は、図2の左から右に向かって搬送される。ここでは、シングルパス方式のプリンタを例示した。ヘッドモジュール1には、用紙搬送方向(y方向という。)に対して直交する方向(x方向という。)に所定の記録解像度(例えば、1200dpi)によるドット記録を可能とするノズル配列によって複数のノズルが形成されている。なお、ノズルの配列形態は特に限定されない。
最適値選定用チャート5(「不良記録素子補償パラメータ選定用チャート」に相当)は、用紙3の搬送方向に対し、同一階調Gの複数のパッチ6、7_i(i=1,2,…)が並ぶ構成となっている。パッチには、符号6で示した参照パッチIrefと、符号7_i(i=1,2,…)で示した計測パッチIi meas(Pi)の二種が並存しているものとする。ここで、「i」は各計測パッチに対応する添字とする。参照パッチIrefは階調Gにより均一に塗られた均一画像である。計測パッチIi meas(Pi)は参照パッチIrefに対して、不吐出ノズルの存在を模擬した白筋8が1箇所以上与えられており(図2では、各計測パッチについて白筋8が2箇所与えられている)、各白筋8の両側(x方向両側)は不吐出補正パラメータPiが実際に、若しくは模擬的に、与えられている画像となっている。
実際に、不吐出とするノズルに対して不吐出信号を与え、その両側の記録を担うノズルの描画対して不吐出補正パラメータを適用して計測パッチを描画してもよいし、計測パッチを作る際に、その補正画像を画像データ上で疑似的に再現して、計測パッチの画像データを作成し、これを用紙3上に出力(描画)してもよい。
各計測パッチIi meas(Pi)には、与えられる不吐出補正パラメータPiは各々異なる値とする。各計測パッチに与えられる不吐出補正パラメータPiは、「不良記録素子補償パラメータの候補値」に相当している。
図2の例では、1つの階調値Gについて、1つの参照パッチIrefと、6つの計測パッチIi meas(Pi)(i=1,2,…6)とから成る合計7つのパッチが用紙搬送方向に並んだパッチ列8が形成されている。6つの計測パッチIi meas(Pi)は、それぞれ異なる値の不吐出補正パラメータPiが適用されたものである(i=1,2,…6)。また、図2では、階調値を4段階に変えて、各階調値によるパッチ列がx方向に位置を用紙上に形成されている。図2の最上段に示したパッチ列の階調値をG1、その下(上から2段目)のパッチ列の階調値をG2、その下(上から3段目)のパッチ列の階調値をG3、最下段(上から4段目)のパッチ列の階調値をG4とすると、階調値の小さい順に(インク濃度が薄い順に)、上からG1<G2<G3<G4となっている。
図2の場合、用紙搬送方向に沿って並ぶ複数の計測パッチIi meas(Pi)(i=1,2,…)について、図の左から右に向かって不吐出補正パラメータPiの値が次第に大きくなる(補正による増幅量が大きくなる)順に並んでいるが、計測パッチの配列順と不吐出補正パラメータPiの大小関係については、本例に限定されない。
図2は、図示の便宜上、パッチ数を少なく描いているが、同一階調値による計測パッチの個数、並びに、階調値の数は特に限定されない。例えば、階調値でn種類、同一階調について計測パッチ数をm個とする場合、1モジュール当り、n×(1+m)のパッチ群が形成される。更に、モジュール内における不吐出ノズル位置の場所依存性を考慮して、同一モジュール内で不吐出化するノズル位置を異ならせて計測パッチ(パターン)をk個形成する場合には、更にそのk倍の個数のパッチが形成される(n,m,kは1以上の整数)。1枚の用紙上に全てのパッチを記録することができない場合には、複数枚の用紙に分けて記録される。
また、図2では1つのヘッドモジュールのみを示したが、インクの色別に複数のプリントヘッドが用いられる場合には、インクの色毎に同様のチャートが出力される。
(スキャンデータの解析方法の説明)
図3は、不吐出補正パラメータ最適値選定用チャートを読み取ったスキャンデータ(読取画像)の解析手順の模式図である。最適値選定用チャートを印刷機で出力し、それをフラットベットスキャナなどの光学式読取装置でスキャニングする。ここで用いるスキャナ(光学式読取装置)は、例えば、RGBカラーフィルターなどの色分解フィルタを備え、読取対象画像の色情報を取得可能なカラースキャナである。シアン(C)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)の各インク色ごとに、それぞれの記録ヘッドで出力されたチャートを読み取ることにより、カラー読取画像データが取得される。
図3(a)は、ある階調値Gのパッチ列をスキャニングして得られたスキャンデータを表している。各パッチのスキャンデータをそれぞれSref(x,y),Si meas(x,y,Pi)とする。
スキャンデータの解析において、始めにスキャンデータに対して、色空間変換の処理(例えば、RGB表色系からL*a*b*表色系への色空間変換処理)を行い、当該スキャンデータを、例えば、輝度情報Lref(x,y),Li meas(x,y,Pi)に変換する。なお、RGB表色系からL*a*b*表色系への色空間変換は公知の演算手法が適用される。
次に、この輝度情報Lref(x,y),Li meas(x,y,Pi)に対して人間の視覚特性を考慮している視覚伝達関数VTF(VisualTransfer Function)による画像フィルタリング処理を施す。図3(b)は、VTF処理後のデータを表している。
VTF関数をVTF(u,v)(ただし、(u,v)は空間周波数の二次元座標系)、スキャンデータ輝度情報L(x,y)のVTF処理後のデータをLV(x,y)とすると、これらの関係は次式(式1)で表すことができる。
次に、VTF処理後の計測パッチデータLV,i meas ,(x,y,Pi)から、同じくVTF処理後の参照パッチデータLV ref(x,y)を引いた差分データを作成する。図3(c)は、その差分データを表している。
最後に、各差分データの成分の二乗和の平方根を計算し、これを最小化する最小二乗問題を解くにあたり、参照パッチ自体の濃度ムラ(筋)の発生を考慮した「重み関数W(x,y)」を導入し、重み付き最小二乗問題に帰着させる。すなわち、重み関数W(x,y)を適用した評価指標として、次式の評価値Fi(Pi)を用いる。
重み関数W(x,y)は、参照パッチを記録する際の記録ヘッドの記録特性を反映しており、参照パッチ内で不吐出の影響で白筋になる(インク濃度が薄くなる)ところ、或いは、着弾位置誤差の影響で白筋になるところについて計算上の重みを軽くするようなものとなる。このような既存不吐出或いは着弾位置誤差の発生箇所は、チャート測定におけるデータの信頼性が低いため、計算上の重みを軽くする。
重み関数W(x,y)の一例として、例えば、(式3)に示すように、LV ref(x,y)のLV ref(x,y)平均からの差の逆数を用いた正規分布関数を使用することができる(式3参照)。
このような重み関数Wによれば、既存の不吐出や吐出曲がりによる着弾位置誤差の影響で白筋となった箇所は、輝度の値が大きくなるため、これらの箇所における計算上の重みを軽くすることができる。また、既存の吐出曲がりによる着弾位置誤差の影響で周囲の濃度(平均濃度)よりも濃い筋となった箇所も平均値からのずれが大きくなるため、計算上の重みが軽くなる。これにより、データ信頼性の高い情報を重視した評価値が算出されるため、パラネータの最適値の選定精度が向上する。
重み関数としては、上述した参照パッチの濃度分布を利用する態様に限らず、様々な態様が考えられる。重み関数の他の例としては、参照パッチのスキャンデータの輝度情報Lvをそのまま、重み関数としてもよいし、記録ヘッドの不吐出ノズル情報に基づき不吐出位置の重みを[0]、不吐出位置以外の重みを「1」という、「0」又は「1」の離散的な重みであってもよい。
なお、評価指標として上記のFi(Pi)(「評価値」に相当)を用いる代わりに、平方根をとる前の二乗和のまま(「数2」の式中の平方根内)を評価指標として用いても良い。
図3(d)は、計算された評価指標の値を不吐出補正パラメータPiの値との関係で整理したグラフである。横軸は不吐出補正パラメータPiの値、縦軸は評価指標Fi(Pi)の値を表している。
不吐出補正が完璧な場合(理想的な場合)、評価指標Fi(Pi)の値はゼロとなる。したがって、本実施形態の手法では同評価指標Fi(Pi)が最小となる計測パッチを最適パッチとして選定し、そこに与えた不吐出補正パラメータPiを該当階調Gにおける最適パラメータとして選定する。
本手法における計測パッチと参照パッチとの差分データを計算するという処理により、ヘッドモジュールの状態に起因する画像ムラなどの影響を大幅に軽減することができ、パラメータ選定の精度が向上する。またVTF処理を施すことで、目視計測と同等な精度でのパラメータ計測が可能となる。
<比較例:スキャンデータの解析方法の比較例>
比較のために、上述の重み関数W(x,y)を用いない解析方法について説明する。図3で説明したとおり、印刷機で出力した最適値選定用チャートを光学式読取装置でスキャニングし、得られたスキャンデータある階調値Gの参照パッチ及び計測パッチの各パッチのスキャンデータをそれぞれSref(x,y),Si meas(x,y,Pi)とする。
このスキャンデータを輝度情報Lref(x,y),Li meas(x,y,Pi)に変換し、輝度情報Lref(x,y),Li meas(x,y,Pi)に対して、ぞれぞれ(式1)により、VTF処理を施し、VTF処理済みの参照パッチデータLV ref(x,y)とVTF処理済みの計測パッチデータLV,i meas ,(x,y,Pi)とを得て、LV,i meas ,(x,y,Pi)からLV ref(x,y)を引いた差分データを作成する。ここまでの処理は、既述の実施形態と同様である。
そして、この各差分データの成分の二乗和の平方根Ei(Pi)を次式(4)で計算する。
評価指標として上記のEi(Pi)(「評価値」に相当)を用いる代わりに、平方根をとる前の二乗和のまま(「式4」の式中の平方根内)を評価指標として用いても良い。
不吐出補正が完璧な場合(理想的な場合)、評価指標Ei(Pi)の値はゼロとなる。したがって、同評価指標Ei(Pi)が最小となる計測パッチを最適パッチとして選定し、そこに与えた不吐出補正パラメータPiを該当階調Gにおける最適パラメータとして選定することができる。
(比較例及び特許文献1の問題点)
しかし、かかる比較例や特許文献1の方法は、下記のような課題が存在している。
(1)最適値選定用チャートを出力する際に、既存の不吐出(疑似的に不吐出化するもの以外に、実際に不吐出となっているもの)や着弾位置誤差が発生していると、図4(a)に示すように、参照パッチ6に筋が発生する。既存の不吐出の箇所(符号Aで示す箇所)には白筋が発生し、既存の吐出曲がりによって着弾位置誤差が発生している箇所(符号Bで示す箇所)には、濃淡の筋が発生し得る。これら既存の不吐出・着弾位置誤差の箇所(符号A,B)に対応して、図4(b)に示すように、計測パッチ7においても同様に筋が発生する。このような既存の筋が不吐出補正パラメータ最適値選定精度を劣化させる要因となる。特に、計測パッチ7の描画時に不吐出化処理するノズルがこれら既存の不吐出・着弾位置誤差の箇所に近い場合に問題となる。
(2)また、不吐出補正部はインクが濃くなるため、周囲の色よりも明度だけではなく、彩度にも差が生じている。すなわち色差が生じている。しかし、比較例や特許文献1の手法ではスキャナの読み取り階調のみを考慮し、すなわち明度だけで評価している。人間の視覚では彩度も捉えているため、結果的に計測結果は人間の視覚特性との差が発生する。特にシアンなど彩度が高いインクの濃度が高い状態ではその差は顕著となる。
上述した本発明の実施形態によれば、上記の課題(1)を克服することができる。
<第2実施形態>
課題(2)の解決のために、次のような構成が採用される。すなわち、チャートの読取手段として、色情報の取得が可能なカラー画像読取装置(カラースキャナ)を用い、第1実施形態における評価値Fi(Pi)の演算に代えて、又は、これと組み合わせて、参照パッチと計測パッチの色の差(色差、或いは色度差)によって評価値Fi(Pi)を計算する。
例えば、ある階調Gの参照パッチと計測パッチ各パッチのスキャンデータをそれぞれSref(x,y),Si meas(x,y,Pi)とし、これらにVTF処理を施して、VTF処理済みの色ベクトル分布EV ref(x,y)、EV,i meas ,(x,y,Pi)を計算する。そして、VTF処理済みの計測パッチの色ベクトル分布EV,i meas ,(x,y,Pi)とVTF処理済みの参照パッチの色ベクトル分布からEV ref(x,y)の差を計算し、その差を示す値に重みを付けて評価値Fi(Pi)を次式で計算する。
なお、本例では、カラースキャナから得られるRGB表色系の読取画像データをL*a*b*表色系の座標空間に写像し、L*a*b*の色空間において3次元ベクトルの差から色の差(色差)を計算しているが、他の表色系(色空間)を採用することも可能である。
第2実施形態によれば、上記の課題(1)と併せて、課題(2)を克服することができる。また、上記課題(1)の影響が実質的に問題にならない場合、(式5)における重み関数W(x,y)の適用を省略することも可能である。かかる態様によれば、課題(2)を克服することができる。
<第3実施形態>
図5に示すように、プリントヘッド2が複数のヘッドモジュール1_j(j=1,2…N)で構成される場合において、各ヘッドモジュール1_j(j=1,2…N)の担当描画領域に第1実施形態で説明した不吐出補正パラメータ最適値選定用チャートを形成し(図5参照)、各々のヘッドモジュール1_j(j=1,2…N)で第1実施形態或いは第2実施形態と同様の解析を実施する。これにより、ヘッドモジュール毎に不吐出補正パラメータが最適化され、図31(b)で説明したような補正結果の視認性ばらつきを克服することができる。
<第4実施形態>
図2で説明した不吐出補正パラメータ最適値選定用チャートにおけるパッチの配列形態に代えて、図6に示すように、参照パッチ6を計測パッチ7_i(i=1,2…6)の並びの中央付近に配置する形態を採用してもよい。
最適値選定用チャートをスキャニングする際、スキャン時の用紙の置き方により、容易に傾きが生じる。また、プリントヘッドと用紙との間でも、両者の相対的な位置関係により、描画時に若干の角度差が生じてしまう場合がある。これらの要因により、最適値選定用チャートのスキャンデータは傾くことになる。この時、同一階調値Gにおける参照パッチ6と各計測パッチ7_i(i=1,2…6)7の距離が近いほど、傾きの影響を受けにくくなる。したがって、図6のようなパッチの配置であれば、図2の配置よりも傾きに対して高ロバストなパラメータ計測が可能となる。
<第5実施形態>
図7は、第5実施形態による最適値選定用チャートの例である。図2に示した最適値選定用チャートでは、同一階調値Gについて、補正パラメータを段階的に異ならせた複数個の計測パッチを形成した例を説明したが、このような複数個の計測パッチを用紙搬送方向に並べる形態に代えて、図7(a)に示すように、不吐出補正パラメータを連続的に変化させることも可能である。不吐出補正パラメータを連続的に変化させて帯状に繋がった1つの計測パッチを形成した場合も、第1実施形態又は第2実施形態と同様に、評価指標Fi(Pi)を計算することができる。第1実施形態及び第2実施形態では各計測パッチの添字iに対応して離散的に計算された評価指数の値が得られるのに対し、第5実施形態では図7(b)に示すように、不吐出補正パラメータの連続的な変化に対応して、各不吐出補正パラメータの値に対してそれぞれ評価指数が計算され、連続的な評価指数のグラフが得られる。これにより、不吐出補正パラメータ計測の分解能を高めることができる。
<第6実施形態>
第1実施形態〜第5実施形態で説明した不吐出補正パラメータ最適値選定手順を複数回繰り返すことにより、最適値の選定精度と分解能を向上させることができる。その手順は以下のようにまとめられる。
(工程1):1回目の最適値選定用チャートを印刷、解析し、不吐出補正パラメータ最適値(1回目)を計算する。
(工程2):次に、前回のチャート解析から計算された不吐出補正パラメータ最適値を元に、その値の前後で、計測パッチに与える不吐出補正パラメータPiを変えて、再度、最適値選定用チャートを作成する。
(工程3):工程2で再度作成された最適値選定用チャートを印刷、解析し、不吐出補正パラメータ最適値を計算する。
(工程4):以下、更に、工程2〜3を繰り返すことで、より一層の選定精度向上を達成できる。
上述の工程2における最適値選定用チャートの再作成の際に、計測パッチに与える不吐出補正パラメータPiの刻み幅を細かくすることで、不吐出補正パラメータの最適値選定の分解能を向上させていくことができる。
<第7実施形態>
第1実施形態〜第6実施形態の各実施形態におけるスキャンデータの解析手順において、計算量を低減するために、各パッチデータの紙面搬送方向(y方向)への積算プロファイルを計算して、一次元データに変換した後、図3と同様の計算手順で解析してもよい。
図8に、その解析手順の模式図を示す。図8(a)は、ある階調値Lのパッチ列をスキャニングして得られたスキャンデータを表している(図3(a)と同等)。図8(a)に示した各パッチのスキャンデータSref(x,y),Si meas(x,y,Pi)について、それぞれy方向に積算して1次元のプロファイルデータを得る。図8(b)は、各パッチから計算した積算プロファイル(1次元のデータ)を示している。
次に、この各パッチの1次元データに対して、VTF処理を施す。図8(c)はVTF処理後のデータを表している。
次いで、VTF処理後の計測パッチのデータから、同じくVTF処理後の参照パッチのデータを引いた差分データを作成する。図8(d)は、その差分データを表している。
最後に、評価指標として、第1実施形態と同様に、重み関数W(x,y)を導入して、重み付けした各差分データの成分の二乗和の平方根(または二乗和のまま)を計算する。図8(e)は、計算された評価指数の値を不吐出補正パラメータPiの値との関係で整理したグラフである。ただし、図8(e)では、理解を容易にするために、重み関数W(x,y)を定数=1に置き換えたものを図示した。
こうして計算された評価指数が最小となる計測パッチを最適パッチとして選定し、そこに与えた不吐出補正パラメータPiを該当階調Lにおける最適パラメータとして選定する。
図2で説明した第1実施形態における解析計算では2次元高速フーリエ変換(FFT:fast Fourier transform)を実施することになるが、図8で説明した第7実施形態では1次元FFTの実施となるため、計算量が低減される。
<第8実施形態>
第1実施形態〜第7実施形態において、スキャンデータに画像回転補正処理を施しても良い。第3実施形態で説明したように、スキャニング時の用紙の置き方(用紙とスキャナの相対角度)、或いは、チャート印刷時におけるプリントヘッドに対する用紙の傾きなどに起因して、計測用チャートのスキャンデータには傾きが生じ得る。
この傾きの影響を画像処理(例えば、画像の回転処理)によって補正することにより、より一層精度の高いパラメータ計測が可能となる。
<第9実施形態>
第1実施形態〜第8実施形態におけるスキャンデータ解析手順において、用紙・スキャナ等によるMTF(Modulation Transfer Function)の影響を補正する処理を施すことも有効である。MTFの影響が残存していると、高周波成分のコントラスト劣化を招き、スキャンデータの不吐出補正部の精度劣化を招く。したがって、MTF補正処理を行うことにより、より一層精度の高いパラメータ計測が可能となる。
<第10実施形態>
第1実施形態〜第9実施形態において、スキャンデータに対してVTF処理を施す態様に代えて、ローパスフィルタ(LPF)、バンドパスフィルタ(BPF)、移動平均処理などのフィルタリング、又は計測用チャートの低解像度によるスキャニングなど、視覚特性にとらわれない平滑化処理で代用してもよい。
VTF処理は、LPF、BPF、移動平均処理などと比べると演算量が多い。したがって、これをVTF以外のフィルタリング手法で代用することにより、演算量を低減することができる。
<第11実施形態>
第1実施形態〜第10実施形態において、VTF処理(又はこれに代わる平滑化処理)と、差分データの作成の順番は、逆でも良い。すなわち、計測パッチデータと参照パッチデータの差分データを計算した後に、この差分データに対してVTF処理(又はこれに代わる平滑化処理)を実施しても、同様の結果が得られる。
差分データ作成を先に実施することで、VTF処理(平滑化処理)の回数を減らすことができ、演算量を低減できる。
<第12実施形態>
第1実施形態〜第11実施形態において、評価指標として、重み付けした差分データの成分の二乗和の平方根(又は、二乗和のまま)を用いる態様に代えて、別の値を評価指標としてもよい。例えば、計測パッチと参照パッチの相関係数、又は、差分データの成分の分散値、又は、差分データの成分の最大値、若しくは、これらの適宜の組み合わせなどから、最適パラメータを決定しても、同様の結果が得られる。
<第13実施形態>
第1実施形態〜第12実施形態では、評価指標の最小値から最適パラメータを決定しているが、評価指標からの最適パラメータ選定手順を以下に示す手順で実施してもよい。
(手順1)評価指標を計算するにあたり、重み関数W(x,y)で重み付けした各差分データの成分の二乗和の平方根として計算し、その評価指標を光量に比例した値とする。
(手順2)不吐出補正パラメータPiを不吐出補正用ノズルにおける打滴率に比例した値に換算する。
(手順3)そして、図9に示すように、横軸に打滴率、縦軸に評価指標としたグラフに、各計測パッチにおける評価指標をプロットしたものを考えた場合における、当該グラフ上のプロット点から補正不足を表す回帰直線RL1と、補正過多を表す回帰直線RL2を計算する。
(手順4)次に、回帰直線RL1及びRL2の二直線の交点を計算し、その点における打滴率を算出し、その値を不吐出補正パラメータの値に換算し直す。こうして求めた同値を最適パラメータとする。
上記した手順1〜4により、シャドウ(画像濃度が濃い部分)又はハイライト(画像濃度が低い部分)における最適パラメータの選定精度が向上する。すなわち、一般に、シャドウやハイライトの計測は、感度が悪くなる。この点、手順1〜4の回帰直線RL1、RL2のように、補間処理を利用して評価指標が最小となる点を求めることで、ノイズに対するロバストを高めることができる。
<他の解析例>
図9で示した2本の回帰直線RL1,RL2の交点から最適値を求める方法に代えて、同様の座標系(又は図9の横軸を「不吐出補正パラメータ」に置換した座標系)におけるプロット点からカーブフィッティングによって近似曲線を求め、その近似曲線から最小値を求めてもよい。なお、評価指標の定義によっては、評価指標が最大値となる点が最適値に対応する場合も有りうる。
また、図9と同様の座標系(又は図9の横軸を「不吐出補正パラメータ」に置換した座標系)のグラフにおける2回微分値が最小値若しくは最大値をとる点を「最適値」として決定してもよい。
<第14実施形態>
第1実施形態〜第13実施形態において、計測用チャートのスキャンに使用する光学式読取装置として、インクジェット印刷機に内蔵されているインラインスキャナを使用することも有益である。このような形態によれば、計測用チャート印刷と平行して、当該チャートの読み取りが可能となり、また、チャートの裁断などの手間も省くことができ、効率的な解析が可能となる。
<第15実施形態>
次に、第1実施形態〜第14実施形態と組み合わせて適用することが望ましい他の不吐出補正技術について説明する。始めに、第15実施形態が解決しようとする補正技術の課題について説明する。
(課題の説明)
インクジェット描画の分野では、インクジェットヘッドによる高解像度な描画を実現するため、例えば、図10のように、複数のノズルヘッドモジュール301を千鳥状に配置した構造によってヘッド300を構成し、用紙340(被描画媒体)上における記録位置間隔Δxをヘッドモジュール301内のノズル320の間隔Pmよりも狭め、記録解像度を高めるなど、様々な工夫がなされている。図10の例では、用紙340上における記録位置間隔Δxが約Pm/2となるノズル配列(千鳥配列)を有するヘッド300が構成されている。
このヘッド300の長手方向と略直交する方向に用紙340を一定速度で搬送し、各ノズル320の打滴タイミングを制御することにより、用紙340上に所望の画像を描画することができる。ここでは、図10の下から上に向かって用紙340が搬送されるものとする。用紙340の搬送方向をy方向、これと直交する用紙幅方向をx方向とすると、用紙340上のx方向について、Δxの間隔でドット(着弾液滴によって形成される記録点)を形成することができる。このΔxは記録解像度に対応した値である(1200dpiの場合、約21.2μm)。
記録解像度に対応した間隔(Δx)で用紙340上のx方向にドット列を形成できるノズル320の並び順(ヘッド300におけるノズル配列をx軸上に投影して得られるノズルの並び順)が実質的なノズルの配列順となる。本明細書では、この実質的なノズル列(x軸上への投影ノズル列)のノズル並び順において互いに隣接関係にあるノズルを「隣接ノズル」或いは「隣接するノズル」と呼ぶ。つまり、ヘッド300におけるノズルレイアウト上で必ずしも隣接した位置関係にないノズル同士であっても、用紙340上のx軸上への投影ノズル列で見たときに隣接して並ぶノズルは「隣接ノズル」と表現される。
このようなインクジェットヘッドを印刷装置に取り付ける際にはヘッドの取付角度及び配置位置の調整が必要となるが、機械的な調整精度には限界がある。このため、図11に示すように、ヘッド300が規定の位置(設計上の理想的な取付位置)から僅かに回転し、回転量(Δθ)が残存した状態で印刷装置に取り付けられてしまう場合がある。また、図12に示すように、ヘッドモジュール301の配置位置が僅かにズレて、この配置位置のズレ(Δd)が残存した状態でヘッド300が印刷装置に取り付けられたりしてしまう場合がある。このような状態でヘッド300のノズル320からインクと吐出すると、用紙340上での着弾位置に誤差(「着弾位置誤差」という。)が発生する。
着弾位置誤差と吐出液滴量誤差が存在するヘッドに対して、従来の不吐出補正技術を適用するにあたり、全ての不吐出ノズルに同じ補正係数を適用すると、ノズルの配置状態によっては過補正若しくは弱補正となり、紙面内に黒筋と白筋が混在するように視認されてしまうという問題がある。
図13にその現象を模式的に図示した。ここでは、図11で説明したようにヘッド300が回転量(Δθ)を残して取り付けられ、上段のノズルNA_jと下段のノズルNB_kが不吐出となった場合について例示している(図13(a))。この場合、通常の不吐出補正技術では、不吐出ノズルの前後(実質的なノズル列における並び順の前後)に隣接するノズルに対応する画素の値(濃度の階調を表す画像設定値)を補正する。図13では、不吐出ノズルNA_jの前後の隣接ノズルNB_j-1、NB_j+1に対応した位置の画像設定値を補正するとともに、不吐出ノズルNB_kの前後の隣接ノズルNA_k-1、NB_k+1に対応した位置の画像設定値を補正する。
図13(b)は、図13(a)のヘッド300に対して、通常の不吐出補正技術を適用し、ある濃度(階調値)のベタ画像(均一濃度画像)を描画した様子を模式的に示したものである。用紙上で不吐出ノズルNA_j、NB_kに対応する位置(x方向の位置)はドットを形成することができないため、その部分は所定の濃度を出せない。これを補うために、隣接ノズルの出力濃度を高める補正が行われる。図13(c)は、各ノズル位置に対応した画素の画像設定値を表している。ベタ画像の濃度を示す階調値D1に対し、不吐出ノズルの隣接ノズルに対応する位置については、所定の補正係数を用いて画像設定値を高い値(D2)に修正する補正が行われている。
しかし、この補正後の出力結果を巨視的に観察すると、図13(d)に示すように、用紙上で不吐出ノズルNA_jに対応する位置は過補正となり出力濃度は高く、いわゆる黒筋が視認される。また、不吐出ノズルNB_kに対応する位置は弱補正となり出力濃度は低く、いわゆる白筋が視認される。
更に、従来の不吐補正技術が支配因子として注目している物理条件は、主に吐出液の着弾位置とドット径(吐出液滴の体積と相関がある値)の2項目であるが、インクジェットヘッドによる画像形成プロセスは前記2項目の物理条件のみで説明しきれるものではなく、これら2項目のみに注目した補正技術では十分な補正性能が得られない場合がある。
従来の不吐補正技術で注目されていない支配因子の一例として「着弾干渉」が挙げられる。着弾干渉とは、液体の表面エネルギーの影響によって、液滴同士が合一する際に、後着弾に係る液滴が先着弾に係る液滴の方に引き寄せられてドットが移動し、本来の着弾位置よりもずれた位置にドットが形成される現象である。着弾干渉は着弾位置とドット径とが密接に絡む現象である。例えば、同じ着弾位置誤差を持つ状態でもドット径の大小により着弾干渉発生の有無が変化する。また、ドット径が同じで着弾位置誤差に大小がある場合でも同様に着弾干渉発生の有無が変化する。
更に、周囲のドット間における打滴の時間差、すなわち着弾順によっても着弾干渉発生の有無が変化する。図14は着弾順による着弾干渉の発生の有無を説明するための模式図である。図14では、図10で説明したヘッド300における各ノズル320の着弾位置誤差及びドット径が全てのノズルで同じであるという理想的な状態を想定し、かかるヘッド300において、いずれかのノズルが不吐出になった場合を示したものである。
図14(a)は、このヘッド300において用紙搬送方向に対して上流側に位置するノズル列(図10において下段のノズル列、以下「上流ノズル列」という。)のうち一つのノズルNB_kが不吐出になった場合を示している。図10のヘッド300では、用紙340の搬送方向に対して上流側に配置される上流ノズル列から先に吐出が行われ、その後、下流側のノズル列(図10において上段のノズル列)から吐出が行われる。
つまり、上流ノズル列と下流ノズル列とでは打滴の時間差(つまり着弾時間差)がある。図14(a)の左側の図は、上流ノズル列のノズルから吐出された液滴350Bが、下流ノズル列から吐出された液滴350Aよりも先に用紙340面上に到達する様子を表している。上流ノズル列に属するノズルNB_kが不吐出になると、当該不吐出ノズルNB_kに対応した紙面上の位置に、液滴が存在しないこととなる。なお、図14(a)では、不吐出である旨を破線で示した。
この場合、当該不吐出ノズルNB_kに隣接するノズル(以下、不吐出ノズルに隣接するノズルを「不吐隣接ノズル」という。)から吐出された液滴350A_k-1、350A_k+1は、更にその外側の隣接ノズルで先行打滴された液滴350B_ k-2、350B_k+2と凝集する。この凝集作用(着弾干渉)によって、不吐隣接ノズルの着弾位置誤差が拡大し、不吐出ノズルNB_k前後の打滴間隔(ドット間距離)は広がる。すなわち、不吐隣接ノズル対で打滴されたドット間の隙間ΔSAは広くなる(図14(a)の右図参照)。
これに対し、図14(b)は、図10で説明したヘッド300において用紙搬送方向に対して下流側に位置するノズル列(図10において上段のノズル列、以下「下流ノズル列」という。)のうち一つのノズルNA_jが不吐出になった場合を示している。
この場合、不吐出ノズルNA_j前後の隣接ノズル(不吐隣接ノズル)で打滴された液滴350B_k-1、350B_k+1は、紙面上に先に着弾するため、上記のような凝集作用(着弾干渉)が発生しない。したがって、不吐出ノズルNA_j前後の打滴間隔(ドット間距離)は、図14(a)の場合よりも狭い。すなわち、図14(b)右側の図に示したように不吐隣接ノズル対で打滴されたドット間の隙間ΔSBは狭くなる(ΔSB<ΔSA)。
なお、図14では、紙面上に着弾した液滴(ドット)を球形状に描いたが、これは吐出液滴350A、350Bとの対応関係をわかりやすく示すための便宜上の記載であり、実際の着弾液滴(ドット)は、液物性と紙面の表面物性との関係で定まる接触角で紙面上に広がった形状となる。
上述のとおり、図14に示すようなヘッド300における各ノズル320の着弾位置誤差及びドット径が全てのノズルで同じという理想的な場合であっても、着弾順次第で位置誤差が増大し、不吐出ノズル前後の打滴間隔は広くも狭くもなり、筋の視認性が大きく変化する。
このように、インクジェットヘッドによる描画では着弾干渉の影響を無視することはできない。不吐出補正技術もこれらの因子に影響を受ける。図1で説明した第1実施形態においても事前に各ノズルの着弾位置誤差を計測するが(図1のステップS4)、この計測の際には位置誤差を計測したいノズル近傍に何も描画せず着弾干渉が発生しない条件を作る必要がある。
しかしながら、実際に描画する際には図14で説明したように、着弾干渉が発生するため、着弾干渉が発生しない条件で計測した位置誤差の計測値と、実際の値とが大きくずれる。したがって、着弾位置誤差と吐出液滴量誤差のみに注目した従来の手法を使用した補正技術では紙面内に黒筋と白筋が混在するように視認される結果となる場合がある。
そこで、ノズル位置と着弾順(着弾パターン)を考慮した不吐出補正処理を行うことが望ましい。第1実施形態〜第14実施形態で説明した不吐出補正パラメータの最適値の選定と合わせて、ノズル位置と着弾順(着弾パターン)を考慮した不吐出補正パラメータを求めるこが望ましい。
(第15実施形態による不吐出補正処理の内容)
図15は第15実施形態に係る画像処理方法のフローチャートである。この第15実施形態による画像補正の処理の全体的な流れを概説すると、まず、[1]不吐出補正LUT計測用のテストチャートを出力し、[2]そのテストチャートを解析して不吐出補正LUTを作成し、[3]この作成した不吐出補正LUTを用いて画像データの補正を実行する、という手順となる。図15において、不吐出補正LUT(図15のDATA27)を得るまでの工程を「不吐出補正LUT作成フロー」といい、この不吐出補正LUTを用いて実際に入力画像データの補正処理を行う工程(図15のS30〜S36)を「画像出力フロー」というものとする。
(不吐出補正LUT作成フローの説明)
始めに、不吐出補正LUT作成フローについて説明する。本実施形態では、ヘッドにおけるノズル位置と着弾干渉パターンの対応情報が必要となる。このような対応情報は、ヘッドの設計情報やヘッド設置状態などから製作者(装置を設計・製作する者)が判断して、作成する必要がある(ステップS10)。
ここでは、説明を簡単にするために、図16で示すようなインクジェットヘッド10(「記録ヘッド」に相当、以下、単に「ヘッド」という。)を想定する。このヘッド10は、図10で説明したヘッド300と同様の構成であり、複数のヘッドモジュール12が千鳥状に配列された構成となっている。各ヘッドモジュール12は、複数のノズル20が一定の間隔Pmで並んだノズル列を有する。説明の便宜上、ノズル数を減らして図示し、1つのヘッドモジュール12について、5つのノズル20が一列に配列されたノズル列を示しているが、実際のヘッドでは、一つのヘッドモジュールに数十〜数百のノズルが設けられている場合もあり、また、数百〜数千個のノズルが二次元的に配列された構成を備える態様もあり得る。
図16において上段に並べられたヘッドモジュール(以下、符号「12_A」と記載する。)によって構成されるノズル列22Aのノズル群を「ノズルグループA」と呼び、図16の下段に並べられたヘッドモジュール(以下、符号「12_B」と記載する。)によって構成されるノズル列22Bのノズル群を「ノズルグループB」と呼ぶことにする。
このようなノズル配置を有するヘッド10に対して、被描画媒体である用紙40は、図16の下から上に向かって搬送されるものとする。用紙の搬送方向をy方向、これと直交する用紙の幅方向をx方向とする。なお、ヘッド10と用紙40は相対的に移動すればよく、用紙40を止めてヘッド10を図16の上から下に向かって移動させても同等であり、ヘッド10と用紙40をともに移動させてもよい。
図16では、ヘッド10が回転量(Δθ)を残した状態で印刷装置に取り付けられた様子を示している。ヘッド10が回転量無く(Δθ=0)、規定の位置に取り付けられていれば、図10で説明したとおり、理想的にはx方向に沿って一定のピッチ(Pm/2)でノズル20が並ぶ構成となる。
図16のようなヘッド10及び用紙40の搬送方向により、用紙40上に描画する場合(例えば、x方向に沿ったラインを描画する場合)、用紙搬送方向の上流に位置するノズルグループBに属するノズル(以下、符号「20B」と表記する。)から吐出した液滴が用紙40上に先に着弾し、その後、下流のノズルグループAに属するノズル((以下、符号「20A」と表記する。)から吐出した液滴が用紙40上に着弾する。
つまり、ノズルグループBとノズルグループAとでは打滴タイミングに時間差があり、ノズルグループBのノズル20Bから吐出された液滴が用紙40上に先に着弾し、その後、ノズルグループAのノズル20Aから吐出された液滴が、先行着弾液滴(ノズルグループBのノズル20Bによって打滴されたドット)の間を埋めるように、これら先行着弾液滴のドットの間に着弾する。こうして、用紙40上には、ノズル20Bで打滴された着弾液滴(先行着弾液滴)とノズル20Aで打滴された着弾液滴(後続着弾液滴)が交互に並んでx方向に連なるドット列が形成され、当該ドット列によってラインが記録される。
図16の例では、上段のノズルグループAに属する1つのノズルNZ_A(図中白丸で示したノズル)が不吐出となり、下段のノズルグループBに属する1つのノズルNZ_B(図中白丸で示したノズル)が不吐出となった様子を示している。図14で説明したとおり、上流ノズル列のノズルグループBに属するノズルNZ_Bが不吐出になる場合と、下流ノズル列のノズルグループAに属するノズルNZ_Aが不吐出になる場合とでは、それぞれの不吐出ノズル周辺における着弾干渉の影響が異なる。
すなわち、ノズルグループBに属するノズルNZ_Bが不吐出になった場合には、図14(a)で説明したように、当該不吐出ノズルNZ_Bに対応した不吐出位置(記録不能ドット位置)の左右に隣接するドット(ノズルグループAのノズル20Aによって打滴されるもの)は、用紙40上で先に着弾している先行着弾液滴にそれぞれ引き寄せられる(図14(a)参照)。この凝集作用(着弾干渉)のため、不吐出ノズルNZ_Bに隣接するノズル(不吐隣接ノズル)の着弾位置誤差が増大して、これら不吐隣接ノズル対のドット間距離が広がり、不吐出ノズルNZ_Bに対応する欠落ドット位置を挟んで隣接するドット間の隙間が広くなる。
一方、ノズルグループAに属するノズルNZ_Aが不吐出になった場合には、図14(b)で説明したように、当該不吐出ノズルNZ_Aに対応した欠落ドット位置の左右に隣接するドット(ノズルグループBのノズル20Bによって打滴されるもの)は、用紙40上に先に着弾しているため、上記のような凝集(着弾干渉)が起こらない。よって、不吐出ノズルNZ_Aに対応した欠落ドット位置を挟んで隣接するドット間の隙間は、ノズルグループBのノズルNZ_Bが不吐出になった場合よりも狭くなる。
このように、不吐出ノズルの位置(不吐出ノズルが属しているグループ)の違いによって、着弾干渉の影響が異なり、不吐出による画像欠陥(白筋或いは濃度ムラ)の現れ方が異なる。同じノズルグループAに所属する他のノズル20Aが不吐出になった場合についても、ノズルNZ_Aが不吐出になった場合と同様の現象が生じる。また、ノズルグループBに所属する他のノズル20Bが不吐出になった場合についても、ノズルNZ_Bが不吐出になった場合と同様の現象が生じる。
ノズルグループAに所属するノズル20Aが不吐出になった場合に生じる着弾干渉の発生パターン(属性)を「着弾干渉パターンA」といい、ノズルグループBに所属するノズル20Bが不吐出になった場合に生じる着弾干渉の発生パターンを「着弾干渉パターンB」という。すなわち、本例では同じノズルグループAに所属する全てのノズル20Aは、同グループAに属するノズルNZ_Aと同じ着弾干渉パターンA誘発要因を保持しており、ノズルグループBに所属する全てのノズル20Bは、同グループBに属するノズルNZ_Bと同じ着弾干渉パターンB誘発要因を保持しているとみなしている。ノズルグループA,Bの持つ着弾干渉誘発要因(ここでは、着弾順)によって着弾干渉パターンA,Bの違いが現れる。
上述のとおり、ノズルグループAに所属するノズル20Aは「着弾干渉パターンA」と対応付けられ、ノズルグループBに所属するノズル20Bは「着弾干渉パターンB」と対応付けられる。このような対応関係を規定した情報(対応情報)が図15のステップS10で作成される。
なお、図16に示した本例のヘッド構造では、ノズルグループA,Bに対応した2種類の着弾干渉パターンA,Bを説明しているが、ヘッドの設計次第では、着弾干渉パターンが2種以上に分類されることもあり得る。また、図16のヘッド構造では、ノズルグループA,Bの違いによる着弾干渉の発生の有無を議論しているが、吐出液滴量(ドット径)や着弾位置など、他の因子も考慮して、着弾干渉の影響の程度(着弾干渉による位置誤差の変化量の違い)を着弾干渉の属性(パターン)として扱うこともできる。
こうして作成された対応情報(DATA11)に基づいて、補正LUT計測用テストチャートが作成される(ステップS24)。
図17に補正LUT計測用テストチャートの例を示す。図17の左側に示したチャートは着弾干渉パターンAに対応した補正LUT計測用チャートであり、図17の右側に示したチャートは着弾干渉パターンBに対応した補正LUT計測用チャートである。
このように、着弾干渉パターン別に補正LUT計測用テストチャートを作成する。着弾干渉パターンAの補正LUT計測用チャートを作成する際には、着弾干渉パターンAに対応するノズルグループAに属する特定のノズル(少なくとも1つ、好ましくは、適当な間隔を隔てた複数のノズル)について、当該ノズルグループAの描画位置での画像設定値を0とし、若しくは、ヘッドドライバ(駆動回路)に不吐化命令を与えて、インクを吐出させないようにする(特定のノズルに描画させないようにする)ことで、擬似的に不吐出状態としておく。この擬似的に不吐出状態とされたノズルを「疑似不吐出ノズル」と呼ぶ。このような不吐出化処理と同時に、擬似不吐出ノズルの前後に隣接するノズルの描画位置の画像設定値は、所定の濃度(階調値)のベタ画像に相当する基本画像設定値に補正係数が乗算された値とする。ある特定の濃度に対応した基本画像設定値について、補正係数を段階的に(ステップ状に)を変化させて、複数のパッチを描画する。
図17では、図示の便宜上、補正係数を5段階に変化させて、5種類の補正係数に対応した5つのパッチを描画した例を示したが、補正係数を変化させるステップ数は特に限定されない。また、ここでは特定の濃度に対応した1つの基本画像設定値に関するチャート(パッチ群)のみを示したが、濃度(階調値)の異なる複数の基本画像設定値について、同様のパッチ群が形成される。
例えば、0〜255階調の範囲を32段階に等分割し、各階調(濃度)の基本画像設定値について、補正係数をステップ状に20段階に変化させて20個のパッチ群を形成する。つまり、1つの疑似不吐出ノズルについて、32×20のパッチが形成される。測定精度向上(計測の信頼性向上)の観点から疑似不吐出ノズルは複数とすることが好ましく、複数の疑似不吐出ノズルについて、同様のパッチ群が形成される。
図17の右側に示した着弾干渉パターンBの補正LUT計測用チャートを作成する場合は、着弾干渉パターンBに対応するノズルグループBに属する特定のノズル(少なくとも1つ、好ましくは、適当な間隔を隔てた複数のノズル)について、上記同様に不吐出化の処理を行い、擬似不吐出ノズルの擬似不吐出ノズルの前後に隣接するノズルの描画位置の画像設定値として、上述と同様に、基本画像設定値に補正係数を乗算した値を用い、その補正係数を段階的に(ステップ状に)を変化させて、複数のパッチを描画する。
また、複数色のインク(例えば、CMYKの4色)に対応したインク色別に複数のヘッドを備えている場合、色違いのチャート(ヘッド別のチャート)も作成される。
1枚の用紙40上に着弾干渉パターンAの補正LUTチャートと、着弾干渉パターンBの補正LUTチャートを全て形成することが好ましいが、着弾干渉パターンA,Bごとに用紙40に分けてチャートを出力したり、インク色(ヘッド)別に用紙を分けてチャートを出力することも可能である。
こうして実機(インクジェット描画装置)で着弾干渉パターンA、B別の補正LUT計測用チャートを描画出力し(図15のステップS24)、その出力結果(チャート)を計測することにより不吐出補正LUTを作成する(ステップS26)。
すなわち、ステップS26の計測時には、補正LUTチャートにおいて補正係数を変えて描画された複数のパッチの中で視認性が最も良くなる(筋が目立たない良好な出力画質が得られる)補正係数を使用したパッチを選定する。こうして、着弾干渉パターンA、B別に、各基本画像設定値に対する最良の補正係数が決定され、着弾干渉パターン別の不吐出補正LUT(DATA27)が得られる(図18参照)。図18(a)は着弾干渉パターンAノズル用補正LUTの一例を示し、図18(b)は着弾干渉パターンBノズル用補正LUTの一例を示す。
図18(a)、図18(b)の横軸は、テストチャートを作成するときのベタ指令の濃度(ベースとなる階調)を示す画像設定値を示し、縦軸は最良の補正効果が得られる補正係数として決定された値である。図では連続的な滑らかなグラフを示したが、例えば、0〜255の値の範囲で32段階にベース階調を変えてテストチャートを作成した場合には、各値に対応した離散的なデータが得られる。この離散的なデータから公知の補間法を利用することで中間のデータが推定される。
また、上記の着弾干渉パターン別の不吐出補正LUT(図18)を得る工程(S24〜S26)とは別に、これら工程(S24〜S26)に先行して、又は、これら工程(S24〜26)の後に、不吐出補正に必要となる不吐出ノズル位置情報の検出が行われる(ステップS20)。不吐出ノズル位置情報の取得については、図1で説明した例と同様である。
(画像出力フローの説明)
次に、上記の不吐出ノズル位置情報及び不吐出補正LUTを利用した不吐出補正処理を組み込んだ画像出力フローについて説明する。
まず、描画対象となる画像データの入力が行われる(図15のステップS30)。次に、入力画像データ(DATA31)に対して、不吐出補正の処理を実施する(ステップS32)。この不吐出補正実施時には、ノズル位置と着弾干渉パターンとの対応情報(DATA11)及び不吐出ノズル位置情報(DATA21)から、不吐出補正LUT(DATA27)を参照し、各不吐出ノズルの不吐出補正に使用する補正LUTを選定する。そして、この選定した補正LUTから得る補正係数を不吐出ノズル前後の画像設定値に乗算し、不吐出補正処理済みの画像データを作成する。
図16〜図18の例で説明すると、不吐出ノズル位置情報に示された不吐出ノズルがノズルグループAに属するノズルである場合には、着弾干渉パターンAノズル用補正LUT(図18(a))が参照され、対応する画素位置の画像値(画像設定値)と関連付けられた補正係数の値が取得される。この取得した補正係数を用いて不吐ノズル周辺の画像データを修正する。
また、不吐出ノズル位置情報に示された不吐出ノズルがノズルグループBに属するノズルである場合には、着弾干渉パターンBノズル用補正LUT(図18(b))が参照され、対応する画素位置の画像値(画像設定値)と関連付けられた補正係数の値が取得される。この取得した補正係数を用いて不吐出ノズル周辺の画像データを修正する。
こうして得られた不吐出補正済みの画像データ(DATA33)に対してN値化処理を行い(ステップS34)、N値化画像データ(DATA35)に変換する。このステップS34のN値化処理の手段としては、誤差拡散法、ディザ法、閾値マトリクス法、濃度パターン法など、公知のハーフトーン処理の手段を適用できる。ハーフトーン処理は、一般に、M値(M≧3)の階調画像データをN値(N<M)の階調画像データに変換する。最も単純な例では、2値(ドットのオン/オフ)の画像データに変換するが、ハーフトーン処理において、ドットサイズの種類(例えば、大ドット、中ドット、小ドットなどの3種類)に対応した多値の量子化を行うことも可能である。
ステップS34のN値化処理で得たN値化画像データ(DATA35)は、インクジェットヘッドドライバ用フォーマット変換処理部へと送られ、インクジェットヘッドドライバ用データフォーマットに変換される(ステップS36)。こうして、印刷可能なデータ形式の画像データに変換され、出力用の画像データが得られる。
この出力用の画像データを基にインクジェットヘッドの各ノズルからの打滴を制御し、画像を出力する(用紙40上に描画を行う)ことで、不吐出補正済みの画像が形成される。
図19は本実施形態による画像補正の効果を模式的に示したものである。図13で説明した方法と比較すると明らかなように、図19に示す本実施形態では、ノズルグループAに属する不吐出ノズルNZ_A周辺の補正係数と、ノズルグループBに属する不吐出ノズルノズルNZ_B周辺の補正係数とが、それぞれの着弾干渉パターンA,Bに対応した適正な値となり、不吐出ノズルNZ_A周辺の画像設定値と、不吐出ノズルNZ_B周辺の画像設定値が、ともに最適な値に修正されている(図19(c)参照)。
このため、図13で説明した方法で課題となっていた、着弾干渉要因の過補正、弱補正を解消することができ(図19(d)参照)、不吐出ノズルに起因する筋が目立たない良好な画像を形成することができる。
この第15実施形態と既述した第1乃至第14実施形態を組み合わせる場合、例えば、同じ濃度(階調G)のパッチで、着弾パターンの違うものを用紙上に並べた計測用チャートを出力し、当該計測用チャートを読み取って、その読取画像を解析することによって最適な不吐出補正パラメータ(補正係数)を選定する。
つまり、第15実施形態で説明したように、不吐出ノズルの位置によって、不吐出補正の最適パラメータが異なるため、ノズル位置に応じた最適な不吐出補正パラメータの値を求めることが望ましい。よって、同じ濃度(階調G)で、不吐出化するノズル位置(擬似不吐出ノズル)を変えて、計測用パッチ群を形成することが好ましい。
<第16実施形態>
第15実施形態では、ヘッドモジュール12上のノズルがライン状に並んでいるものを例に挙げた。本発明の実施に際して、ノズルの配列形態はこれに限定されない。第16実施形態では、ノズルがマトリックス状に配置された例を説明する。図20に第16実施形態に係るヘッドモジュール50のノズル配置例を示す。用紙40の搬送方向をy方向、これと直交する用紙幅方向をx方向とすると、ヘッドモジュール50のノズル配置は、y方向に位置が異なる4行のノズル列を有する。図20の下から最下段を1行目のノズル列と呼び、その上を2行目、その上を3行目、最上段を4行目のノズル列と呼ぶことにする。
各行のノズル列に注目すると、同じ行内でx方向のノズル間隔Pmは一定である。1行目のノズル列のノズル位置を基準として、2行目のノズル列のノズル位置はx方向にPm/2だけシフトしている。3行目のノズル列のノズル位置は、1行目のノズル列のノズル位置に対してx方向にPm/4だけシフトしており、4行目のノズル列のノズル位置は1行目のノズル列のノズル位置に対してx方向にPm×3/4だけシフトしている。このような4行の千鳥配列で並んだノズル群をx軸上に投影すると、x方向に一定の間隔(Pm/4)でノズル20が並ぶものとなる。すなわち、このヘッドモジュール50は、用紙40上のx軸方向について最小の記録間隔(ドット間隔)がPm/4となる。
用紙40の搬送に伴い、用紙搬送方向(y方向)に対して最上流に位置する1行目のノズル列を最初に吐出させ、その後、用紙搬送速度vとノズル行間隔(y方向距離)Lmで規定される時間差(Lm/v)の打滴タイミングで、2行目→3行目→4行目の順に各ノズル列から打滴が行われることで、x方向に沿ってドットが並ぶラインを描画することができる。なお、図20では各ノズル行の行間隔(y方向距離)Lmを一定としているが、行間隔を異ならせる態様も可能である。
図20のヘッドモジュール50で記録されるx方向のライン(ドット列)について、用紙40上のx方向に互いに隣接して並ぶドットの並び順と、各ドットを記録したノズルの対応関係を見ると、1行目ノズルで打滴されたドットの右隣に3行目ノズルで打滴されたドットがあり、その右隣には2行目ノズルで打滴されたドット、更にその右隣には4行目ノズルで打滴されたトッドが形成される。4行目ノズルで打滴されたドットの右隣には1行目ノズルで打滴されたドットがあり、以下、順次同様の配列規則が繰り返される。つまり、x方向に並ぶドット列を形成するノズルの行番号をドットの並び順で表すと、「1→3→2→4→1→3→2→4→…」という具合に、4ノズルを繰り返し単位とする周期性がある。
このように、図20に示したマトリクス状のノズル配置は、x方向に沿って各ノズルの位置を変えて実質的に一列に並ぶノズル列(x軸上に投影されたノズル列)に置き換えてノズル並び順を見たとき、ノズルの行番号が「1→3→2→4」の順で周期的に並んだものとなる。
ここでは、「1→3→2→4」を繰り返し単位とするが、「3→2→4→1」、「2→4→1→3」、「4→1→3→2」のいずれを繰り返し単位と考えてもよい。
かかるノズル配置を持つヘッドモジュール50を搭載するインクジェット描画装置の場合、始めに、各ノズルがどのような着弾干渉パターンに属するかを仕分けする。既述のとおり、図20のヘッドモジュール50のノズル配列形態は、4ノズルを繰り返し単位とする周期性がある。そこで、この周期性に基づいて、まずはノズル群をノズルグループa〜dに仕分けする。
次に各グループに属するノズル(図20においてノズルNZ_a、NZ_b、NZ_c、NZ_d)が不吐となった場合において、実際にどのような着弾干渉が発生するかを検討する。図21(a)は、ノズルNZ_aとノズルNZ_bが不吐出になった様子を示し、図21(b)は、ノズルNZ_cとノズルNZ_dが不吐出になった様子を示す。図14で説明した現象と同様の理由から、図21(a)に示すとおり、ノズルNZ_aとノズルNZ_bは、同じ着弾干渉パターンを有し、ノズルNZ_cとノズルNZ_dcは、図21(b)に示すとおり、同じ着弾干渉パターンを有すると考えられる。
すなわち、不吐出ノズルNZ_a、ノズルNZ_bの前後に隣接するノズル(不吐隣接ノズル)は、ノズルグループc、dに属しているため(図20参照)、これらノズルグループc、dに属する不吐隣接ノズルから吐出された液滴は、ノズルグループa、bによる打滴よりも先に着弾する。したがって、後に打滴されるノズルグループa、bのノズルNZ_a、ノズルNZ_bが不吐出になっても、先着弾に係る液滴について着弾干渉は発生しない。これは、図14(b)と同様の状況である。したがって、図21(a)の右図に示したとおり、不吐出ノズルNZ_aの不吐隣接ノズル対で打滴されたドット間の隙間ΔSa、並びに、不吐出ノズルNZ_bの不吐隣接ノズル対で打滴されたドット間の隙間ΔSbは、着弾干渉による誤差拡大の作用を受けない狭いものとなる(ΔSa=ΔSb)。
一方、不吐出ノズルNZ_c、ノズルNZ_dの前後に隣接するノズル(不吐隣接ノズル)は、ノズルグループa、bに属しているため、これらノズルグループa、bに属する不吐隣接ノズルから吐出された液滴は、ノズルグループc、dによる打滴よりも後に着弾する。したがって、先に打滴されるノズルグループc、dのノズルNZ_c、ノズルNZ_dが不吐出になると、後続の打滴について着弾干渉が発生する。これは、図14(a)と同様の状況である。したがって、図21(b)の右図に示したとおり、不吐出ノズルNZ_cの不吐隣接ノズル対で打滴されたドット間の隙間ΔSc、並びに、不吐出ノズルNZ_dの不吐隣接ノズル対で打滴されたドット間の隙間ΔSdは、ともに着弾干渉による誤差拡大の作用を受けて、広い隙間となる(ΔSc=ΔSd>ΔSa)。
よって、着弾干渉パターンとしては、図21(a)のような着弾干渉パターンAと、図21(b)のような着弾干渉パターンBの2種に仕分けることができる。以上により、着弾干渉パターンの仕分けが完了した。
ノズルグループa、bに属するノズルは着弾干渉パターンAと対応付けられ、ノズルグループc、dに属するノズルは着弾干渉パターンBと対応付けられる。こうして、ノズルと着弾干渉パターンとの対応情報が得られる。
この後は、第15実施形態と同様に、着弾干渉パターン別の補正LUTを各着弾干渉パターンに対応したテストチャートから計測し、実際の入力画像データに対して不吐出を補正すればよい(図15参照)。
図22は第15実施形態における不吐出補正パラメータ選定用チャートの例、図23は第16実施形態における不吐出補正パラメータ選定用チャートの例である。これらの図面に示したチャートでは、ヘッド10、或いはヘッドモジュール50にて、各着弾パターンにおける選定用チャートが同時に描画されている。ただし、1枚の用紙3に複数の着弾パターンに対応する選定用チャートを必ずしも同時に描画する必要性はないので、チャートを複数枚に分けて描画してもよい。各着弾パターン用の選定チャートにおける選定パッチ(計測パッチ)の不吐出位置はヘッド10、或いはヘッドモジュール50の当該着弾パターンの位置と合致するようになっている。
このようなチャートを第1〜第14実施形態の解析手段により解析することで、各モジュールにおける各着弾パターンの各階調における不吐出補正パラメータの最適値を選定することが可能となる。
<他の実施形態について>
(変形例1):第15実施形態及び第16実施形態では、不吐出ノズル前後の画像設定値を高めることで不吐出補正を実施している。このような画像設定値の修正に代えて、又はこれと組み合わせて、不吐出ノズル前後のドット径を大きくすること、又は打滴密度を上げることで不吐出補正を実施するものとしてもよい。また、図15では、N値化処理前の画像データについて補正を施しているが、N値化処理後の画像データ(N値化画像データ)に対して補正を行う態様も可能である。
(変形例2):第16実施形態ではヘッドモジュール50上にノズル20がマトリックス状に配置された例において、その着弾干渉パターンをノズル配置の周期性に基づき仕分けしている。このノズル配置にその他の規則性(対称性など)がある場合、これらの特性を考慮し、着弾干渉パターンの仕分けを限定してもよい。
<インクジェット記録装置の説明>
図24は、本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の構成例を示す図である。このインクジェット記録装置100(「画像形成装置」に相当)は、描画部116の圧胴(描画ドラム170)に保持された記録媒体124(「被記録媒体」に相当、以下、便宜上「用紙」と呼ぶ場合がある。)にインクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yから複数色のインクを打滴して所望のカラー画像を形成する圧胴直描方式のインクジェット記録装置であり、インクの打滴前に記録媒体124上に処理液(ここでは凝集処理液)を付与し、処理液とインク液を反応させて記録媒体124上に画像形成を行う2液反応(凝集)方式が適用されたオンデマンドタイプの画像形成装置である。
図示のように、インクジェット記録装置100は、主として、給紙部112、処理液付与部114、描画部116、乾燥部118、定着部120、及び排紙部122を備えて構成される。
(給紙部)
給紙部112は、記録媒体124を処理液付与部114に供給する機構であり、当該給紙部112には、枚葉紙である記録媒体124が積層されている。給紙部112の給紙トレイ150から記録媒体124が一枚ずつ処理液付与部114に給紙される。
本例のインクジェット記録装置100では、記録媒体124として、枚葉紙(カット紙)を用いるが、連続用紙(ロール紙)から必要なサイズに切断して給紙する構成も可能である。
(処理液付与部)
処理液付与部114は、記録媒体124の記録面に処理液を付与する機構である。処理液は、描画部116で付与されるインク中の色材(本例では顔料)を凝集させる色材凝集剤を含んでおり、この処理液とインクとが接触することによって、インクは色材と溶媒との分離が促進される。
処理液付与部114は、給紙胴152、処理液ドラム154、及び処理液塗布装置156を備えている。処理液ドラム154は、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)155を備え、この保持手段155の爪と処理液ドラム154の周面の間に記録媒体124を挟み込むことによって記録媒体124の先端を保持できるようになっている。処理液ドラム154は、その外周面に吸引孔を設けるとともに、吸引孔から吸引を行う吸引手段を接続してもよい。これにより記録媒体124を処理液ドラム154の周面に密着保持することができる。
処理液ドラム154の外側には、その周面に対向して処理液塗布装置156が設けられる。処理液塗布装置156は、処理液が貯留された処理液容器と、この処理液容器の処理液に一部が浸漬されたアニックスローラと、アニックスローラと処理液ドラム154上の記録媒体124に圧接されて計量後の処理液を記録媒体124に転移するゴムローラとで構成される。この処理液塗布装置156によれば、処理液を計量しながら記録媒体124に塗布することができる。
本実施形態では、ローラによる塗布方式を適用した構成を例示したが、これに限定されず、例えば、スプレー方式、インクジェット方式などの各種方式を適用することも可能である。
処理液付与部114で処理液が付与された記録媒体124は、処理液ドラム154から中間搬送部126を介して描画部116の描画ドラム170へ受け渡される。
(描画部)
描画部116は、描画ドラム170、用紙抑えローラ174、及びインクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yを備えている。描画ドラム170は、処理液ドラム154と同様に、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)171を備える。
インクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yはそれぞれ、記録媒体124における画像形成領域の最大幅に対応する長さを有するフルライン型のインクジェット方式の記録ヘッド(インクジェットヘッド)であり、そのインク吐出面には、画像形成領域の全幅にわたってインク吐出用のノズルが複数配列されたノズル列が形成されている。各インクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yは、記録媒体124の搬送方向(描画ドラム170の回転方向)と直交する方向に延在するように設置される。
描画ドラム170上に密着保持された記録媒体124の記録面に向かって各インクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yから、対応する色インクの液滴が吐出されることにより、処理液付与部114で予め記録面に付与された処理液にインクが接触し、インク中に分散する色材(顔料)が凝集され、色材凝集体が形成される。これにより、記録媒体124上での色材流れなどが防止され、記録媒体124の記録面に画像が形成される。
すなわち、描画ドラム170によって記録媒体124を一定の速度で搬送し、この搬送方向について、記録媒体124と各インクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yを相対的に移動させる動作を1回行うだけで(即ち1回の副走査で)、記録媒体124の画像形成領域に画像を記録することができる。かかるフルライン型(ページワイド)ヘッドによるシングルパス方式の画像形成は、記録媒体の搬送方向(副走査方向)と直交する方向(主走査方向)に往復動作するシリアル(シャトル)型ヘッドによるマルチパス方式を適用する場合に比べて高速印字が可能であり、プリント生産性を向上させることができる。
なお、本例では、CMYKの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するインクジェットヘッドを追加する構成も可能であり、各色ヘッドの配置順序も特に限定はない。
描画部116で画像が形成された記録媒体124は、描画ドラム170から中間搬送部128を介して乾燥部118の乾燥ドラム176へ受け渡される。
(乾燥部)
乾燥部118は、色材凝集作用により分離された溶媒に含まれる水分を乾燥させる機構であり、乾燥ドラム176、及び溶媒乾燥装置178を備えている。乾燥ドラム176は、処理液ドラム154と同様に、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)177を備え、この保持手段177によって記録媒体124の先端を保持できるようになっている。
溶媒乾燥装置178は、乾燥ドラム176の外周面に対向する位置に配置され、複数のハロゲンヒータ180と、各ハロゲンヒータ180の間にそれぞれ配置された温風噴出しノズル182とで構成される。各温風噴出しノズル182から記録媒体124に向けて吹き付けられる温風の温度と風量、各ハロゲンヒータ180の温度を適宜調節することにより、様々な乾燥条件を実現することができる。
乾燥部118で乾燥処理が行われた記録媒体124は、乾燥ドラム176から中間搬送部130を介して定着部120の定着ドラム184へ受け渡される。
(定着部)
定着部120は、定着ドラム184、ハロゲンヒータ186、定着ローラ188、及びインラインセンサ190(「インラインスキャナ」に相当)で構成される。定着ドラム184は、処理液ドラム154と同様に、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)185を備え、この保持手段185によって記録媒体124の先端を保持できるようになっている。
定着ドラム184の回転により、記録媒体124は記録面が外側を向くようにして搬送され、この記録面に対して、ハロゲンヒータ186による予備加熱と、定着ローラ188による定着処理と、インラインセンサ190による検査が行われる。
定着ローラ188は、乾燥させたインクを加熱加圧することによってインク中の自己分散性ポリマー微粒子を溶着し、インクを被膜化させるためのローラ部材であり、記録媒体124を加熱加圧するように構成される。具体的には、定着ローラ188は、定着ドラム184に対して圧接するように配置されており、定着ドラム184との間でニップローラを構成するようになっている。これにより、記録媒体124は、定着ローラ188と定着ドラム184との間に挟まれ、所定のニップ圧(例えば、0.15MPa)でニップされ、定着処理が行われる。
また、定着ローラ188は、熱伝導性の良いアルミなどの金属パイプ内にハロゲンランプを組み込んだ加熱ローラによって構成され、所定の温度(例えば60〜80℃)に制御される。この加熱ローラで記録媒体124を加熱することによって、インクに含まれるラテックスのTg温度(ガラス転移点温度)以上の熱エネルギーが付与され、ラテックス粒子が溶融される。これにより、記録媒体124の凹凸に押し込み定着が行われるとともに、画像表面の凹凸がレベリングされ、光沢性が得られる。
一方、インラインセンサ190は、記録媒体124に形成された画像(図2で説明した不吐出補正パラメータ最適値選定用チャートや図17で説明したテストパターン、不吐出ノズル検出用のテストパターンなども含む)について、吐出不良チェックパターンや画像の濃度、画像の欠陥などを計測するための計測手段であり、RGB信号の出力が可能なカラーCCDラインセンサなどが適用される。
上記の如く構成された定着部120によれば、乾燥部118で形成された薄層の画像層内のラテックス粒子が定着ローラ188によって加熱加圧されて溶融されるので、記録媒体124に固定定着させることができる。また、定着ドラム184の表面温度は50℃以上に設定されている。定着ドラム184の外周面に保持された記録媒体124を裏面から加熱することによって乾燥が促進され、定着時における画像破壊を防止することができるとともに、画像温度の昇温効果によって画像強度を高めることができる。
なお、高沸点溶媒及びポリマー微粒子(熱可塑性樹脂粒子)を含んだインクに代えて、UV露光にて重合硬化可能なモノマー成分を含有していてもよい。この場合、インクジェット記録装置100は、ヒートローラによる熱圧定着部(定着ローラ188)の代わりに、記録媒体124上のインクにUV光を露光するUV露光部を備える。このように、UV硬化性樹脂などの活性光線硬化性樹脂を含んだインクを用いる場合には、加熱定着の定着ローラ188に代えて、UVランプや紫外線LD(レーザダイオード)アレイなど、活性光線を照射する手段が設けられる。
(排紙部)
定着部120に続いて排紙部122が設けられている。排紙部122は、排出トレイ192を備えており、この排出トレイ192と定着部120の定着ドラム184との間に、これらに対接するように渡し胴194、搬送ベルト196、張架ローラ198が設けられている。記録媒体124は、渡し胴194により搬送ベルト196に送られ、排出トレイ192に排出される。搬送ベルト196による用紙搬送機構の詳細は図示しないが、印刷後の記録媒体124は無端状の搬送ベルト196間に渡されたバー(不図示)のグリッパーによって用紙先端部が保持され、搬送ベルト196の回転によって排出トレイ192の上方に運ばれてくる。
また、図24には示されていないが、本例のインクジェット記録装置100には、上記構成の他、各インクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yにインクを供給するインク貯蔵/装填部、処理液付与部114に対して処理液を供給する手段を備えるとともに、各インクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yのクリーニング(ノズル面のワイピング、パージ、ノズル吸引等)を行うヘッドメンテナンス部や、用紙搬送路上における記録媒体124の位置を検出する位置検出センサ、装置各部の温度を検出する温度センサなどを備えている。
<ヘッドの構造>
次に、ヘッドの構造について説明する。各ヘッド172M、172K、172C、172Yの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号250によってヘッドを示すものとする。
図25(a) はヘッド250の構造例を示す平面透視図であり、図25(b) はその一部の拡大図である。また、図26はヘッド250の他の構造例を示す平面透視図、図27は記録素子単位となる1チャンネル分の液滴吐出素子(1つのノズル251に対応したインク室ユニット)の立体的構成を示す断面図(図25中のA−A線に沿う断面図)である。
図25に示したように、本例のヘッド250は、インク吐出口であるノズル251と、各ノズル251に対応する圧力室252等からなる複数のインク室ユニット(液滴吐出素子)253をマトリクス状に二次元配置させた構造を有し、これにより、ヘッド長手方向(紙送り方向と直交する方向)に沿って並ぶように投影(正射影)される実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化を達成している。
記録媒体124の送り方向(矢印S方向;副走査方向)と略直交する方向(矢印M方向;主走査方向)に記録媒体124の描画領域の全幅Wmに対応する長さ以上のノズル列を構成する形態は本例に限定されない。例えば、図25(a) の構成に代えて、図26(a)に示すように、複数のノズル251が2次元に配列された短尺のヘッドモジュール250’を千鳥状に配列して繋ぎ合わせることで記録媒体124の全幅に対応する長さのノズル列を有するラインヘッドを構成する態様や、図26(b)に示すように、ヘッドモジュール250”を一列に並べて繋ぎ合わせる態様もある。
各ノズル251に対応して設けられている圧力室252は、その平面形状が概略正方形となっており(図25(a)、(b) 参照)、対角線上の両隅部の一方にノズル251への流出口が設けられ、他方に供給インクの流入口(供給口)254が設けられている。なお、圧力室252の形状は、本例に限定されず、平面形状が四角形(菱形、長方形など)、五角形、六角形その他の多角形、円形、楕円形など、多様な形態があり得る。
図27に示すように、ヘッド250は、ノズル251が形成されたノズルプレート251Aと、圧力室252や共通流路255等の流路が形成された流路板252P等を積層接合した構造から成る。ノズルプレート251Aは、ヘッド250のノズル面(インク吐出面)250Aを構成し、各圧力室252にそれぞれ連通する複数のノズル251が2次元的に形成されている。
流路板252Pは、圧力室252の側壁部を構成するとともに、共通流路255から圧力室252にインクを導く個別供給路の絞り部(最狭窄部)としての供給口254を形成する流路形成部材である。なお、説明の便宜上、図27では簡略的に図示しているが、流路板252Pは一枚又は複数の基板を積層した構造である。
ノズルプレート251A及び流路板252Pは、シリコンを材料として半導体製造プロセスによって所要の形状に加工することが可能である。
共通流路255はインク供給源たるインクタンク(不図示)と連通しており、インクタンクから供給されるインクは共通流路255を介して各圧力室252に供給される。
圧力室252の一部の面(図27において天面)を構成する振動板256には、個別電極257を備えた圧電アクチュエータ258が接合されている。本例の振動板256は、圧電アクチュエータ258の下部電極に相当する共通電極259として機能するニッケル(Ni)導電層付きのシリコン(Si)から成り、各圧力室252に対応して配置される圧電アクチュエータ258の共通電極を兼ねる。なお、樹脂などの非導電性材料によって振動板を形成する態様も可能であり、この場合は、振動板部材の表面に金属などの導電材料による共通電極層が形成される。また、ステンレス鋼(SUS)など、金属(導電性材料)によって共通電極を兼ねる振動板を構成してもよい。
個別電極257に駆動電圧を印加することによって圧電アクチュエータ258が変形して圧力室252の容積が変化し、これに伴う圧力変化によりノズル251からインクが吐出される。インク吐出後、圧電アクチュエータ258が元の状態に戻る際、共通流路255から供給口254を通って新しいインクが圧力室252に再充填される。
かかる構造を有するインク室ユニット253を図25(b)に示す如く、主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度θを有する斜めの列方向に沿って一定の配列パターンで格子状に多数配列させることにより、本例の高密度ノズルヘッドが実現されている。かかるマトリクス配列において、副走査方向の隣接ノズル間隔をLsとするとき、主走査方向については実質的に各ノズル251が一定のピッチP=Ls/tanθで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。
また、本発明の実施に際してヘッド250におけるノズル251の配列形態は図示の例に限定されず、様々なノズル配置構造を適用できる。例えば、図25で説明したマトリクス配列に代えて、一列の直線配列、V字状のノズル配列、V字状配列を繰り返し単位とするジグザク状(W字状など)のような折れ線状のノズル配列なども可能である。
なお、インクジェットヘッドにおける各ノズルから液滴を吐出させるための吐出用の圧力(吐出エネルギー)を発生させる手段は、圧電アクチュエータ(圧電素子)に限らず、サーマル方式(ヒータの加熱による膜沸騰の圧力を利用してインクを吐出させる方式)におけるヒータ(加熱素子)や他の方式による各種アクチュエータなど様々な圧力発生素子(エネルギー発生素子)を適用し得る。ヘッドの吐出方式に応じて、相応のエネルギー発生素子が流路構造体に設けられる。
<制御系の説明>
図28は、インクジェット記録装置100のシステム構成を示すブロック図である。図28に示すように、インクジェット記録装置100は、通信インターフェース270、システムコントローラ272、画像メモリ274、ROM275、モータドライバ276、ヒータドライバ278、プリント制御部280、画像バッファメモリ282、ヘッドドライバ284等を備えている。
通信インターフェース270は、ホストコンピュータ286から送られてくる画像データを受信するインターフェース部(画像入力手段)である。通信インターフェース270にはUSB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。
ホストコンピュータ286から送出された画像データは通信インターフェース270を介してインクジェット記録装置100に取り込まれ、一旦画像メモリ274に記憶される。画像メモリ274は、通信インターフェース270を介して入力された画像を格納する記憶手段であり、システムコントローラ272を通じてデータの読み書きが行われる。画像メモリ274は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
システムコントローラ272は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置100の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能する。すなわち、システムコントローラ272は、通信インターフェース270、画像メモリ274、モータドライバ276、ヒータドライバ278等の各部を制御し、ホストコンピュータ286との間の通信制御、画像メモリ274及びROM275の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ288やヒータ289を制御する制御信号を生成する。
また、システムコントローラ272は、インラインセンサ(インライン検出部)190から読み込んだテストチャートの読取データから、不吐出ノズルの位置や着弾位置誤差のデータ、濃度分布を示すデータ(濃度データ)等を生成する演算処理を行う着弾誤差測定演算部272Aと、測定された着弾位置誤差の情報や濃度情報から濃度補正係数を算出する濃度補正係数算出部272Bとを含んで構成される。なお、着弾誤差測定演算部272A及び濃度補正係数算出部272Bの処理機能はASICやソフトウエア又は適宜の組み合わせによって実現可能である。更に、システムコントローラ272は、図1のステップS3で説明したスキャンデータの解析処理手段として機能し、不吐出補正パラメータの最適値を決定する演算手段として機能する。
濃度補正係数算出部272Bにおいて求められた濃度補正係数のデータは、濃度補正係数記憶部290に記憶される。
ROM275には、システムコントローラ272のCPUが実行するプログラム及び制御に必要な各種データ(不吐出補正パラメータの計測用チャートや、不吐出ノズル位置を検出するためのテストチャートを打滴するためのデータ、不吐出ノズル情報などを含む)が格納されている。ROM275は、書換不能な記憶手段であってもよいし、EEPROMのような書換可能な記憶手段であってもよい。また、このROM275の記憶領域を活用することで、ROM275を濃度補正係数記憶部290として兼用する構成も可能である。
画像メモリ274は、画像データの一時記憶領域として利用されるとともに、プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域としても利用される。
モータドライバ276は、システムコントローラ272からの指示に従って搬送系のモータ288を駆動するドライバ(駆動回路)である。ヒータドライバ278は、システムコントローラ272からの指示に従って乾燥部118等のヒータ289を駆動するドライバである。
プリント制御部280は、システムコントローラ272の制御に従い、画像メモリ274内の画像データ(多値の入力画像のデータ) から打滴制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理手段として機能するとともに、生成したインク吐出データをヘッドドライバ284に供給してヘッド250の吐出駆動を制御する駆動制御手段として機能する。
すなわち、プリント制御部280は、濃度データ生成部280Aと、補正処理部280Bと、インク吐出データ生成部280Cと、駆動波形生成部280Dとを含んで構成される。これら各機能ブロック(280A〜280D)は、ASICやソフトウエア又は適宜の組み合わせによって実現可能である。
濃度データ生成部280Aは、入力画像のデータからインク色別の初期の濃度データを生成する信号処理手段であり、濃度変換処理(UCR処理や色変換を含む)及び必要な場合には画素数変換処理を行う。
補正処理部280Bは、濃度補正係数記憶部290に格納されている濃度補正係数を用いて濃度補正の演算を行う処理手段であり、ムラ補正処理を行う。この補正処理部280Bは図1、図15で説明した不吐出補正の処理を行う。
インク吐出データ生成部280Cは、補正処理部280Bで生成された補正後の画像データ(濃度データ)から2値又は多値のドットデータ(図15で説明した「N値化画像データ」に相当)に変換するハーフトーニング処理手段を含む信号処理手段であり、2値(多値)化処理を行う。
インク吐出データ生成部280Cで生成されたインク吐出データはヘッドドライバ284に与えられ、ヘッド250のインク吐出動作が制御される。
駆動波形生成部280Dは、ヘッド250の各ノズル251に対応した圧電アクチュエータ258(図27参照)を駆動するための駆動信号波形を生成する手段であり、該駆動波形生成部280Dで生成された信号(駆動波形)は、ヘッドドライバ284に供給される。なお、駆動波形生成部280Dから出力される信号は、デジタル波形データであってもよいし、アナログ電圧信号であってもよい。
駆動波形生成部280Dは、記録用波形の駆動信号と、異常ノズル検知用波形の駆動信号とを選択的に生成する。各種波形データは予めROM275に格納され、必要に応じて使用する波形データが選択的に出力される。本例に示すインクジェット記録装置100は、ヘッド250の各圧電アクチュエータ258に対して、共通の駆動電力波形信号を印加し、各圧電アクチュエータ258の吐出タイミングに応じて各圧電アクチュエータ258の個別電極に接続されたスイッチ素子(不図示)のオンオフを切り換えることで、各圧電アクチュエータ258に対応するノズル251からインクを吐出させる駆動方式が採用されている。
プリント制御部280には画像バッファメモリ282が備えられており、プリント制御部280における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ282に一時的に格納される。なお、図28において画像バッファメモリ282はプリント制御部280に付随する態様で示されているが、画像メモリ274と兼用することも可能である。また、プリント制御部280とシステムコントローラ272とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
画像入力から印字出力までの処理の流れを概説すると、印刷すべき画像のデータは、通信インターフェース270を介して外部から入力され、画像メモリ274に蓄えられる。この段階では、例えば、RGBの多値の画像データが画像メモリ274に記憶される。
インクジェット記録装置100では、インク(色材)による微細なドットの打滴密度やドットサイズを変えることによって、人の目に疑似的な連続階調の画像を形成するため、入力されたデジタル画像の階調(画像の濃淡)をできるだけ忠実に再現するようなドットパターンに変換する必要がある。そのため、画像メモリ274に蓄えられた元画像(RGB)のデータは、システムコントローラ272を介してプリント制御部280に送られ、該プリント制御部280の濃度データ生成部280A、補正処理部280B、インク吐出データ生成部280Cを経てインク色ごとのドットデータに変換される。
ドットデータは、一般に画像データに対して色変換処理、ハーフトーン処理を行って生成される。色変換処理は、sRGBなどで表現された画像データ(たとえば、RGB8ビットの画像データ)をインクジェット印刷機で使用するインクの各色の色データ(本例では、KCMYの色データ)に変換する処理である。
ハーフトーン処理は、色変換処理により生成された各色の色データに対して誤差拡散法や閾値マトリクス法等の処理で各色のドットデータ(本例では、KCMYのドットデータ)に変換する処理である。
すなわち、プリント制御部280は、入力されたRGB画像データをK,C,M,Yの4色のドットデータに変換する処理を行う。このドットデータへの変換処理に際して、図1、図15で説明したように、不吐出補正処理が行われる。
こうして、プリント制御部280で生成されたドットデータは、画像バッファメモリ282に蓄えられる。この色別ドットデータは、ヘッド250のノズルからインクを吐出するためのCMYK打滴データに変換され、印字されるインク吐出データが確定する。
ヘッドドライバ284は、アンプ回路を含み、プリント制御部280から与えられるインク吐出データ及び駆動波形の信号に基づき、印字内容に応じてヘッド250の各ノズル251に対応する圧電アクチュエータ258を駆動するための駆動信号を出力する。ヘッドドライバ284にはヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
こうして、ヘッドドライバ284から出力された駆動信号がヘッド250に加えられることによって、該当するノズル251からインクが吐出される。記録媒体124の搬送速度に同期してヘッド250からのインク吐出を制御することにより、記録媒体124上に画像が形成される。
上記のように、プリント制御部280における所要の信号処理を経て生成されたインク吐出データ及び駆動信号波形に基づき、ヘッドドライバ284を介して各ノズルからのインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
インラインセンサ(検出部)190は、図24で説明したように、イメージセンサを含むブロックであり、記録媒体124に印字された画像を読み取り、所要の信号処理などを行って印字状況(吐出の有無、打滴のばらつき、光学濃度など)を検出し、その検出結果をプリント制御部280及びシステムコントローラ272に提供する。
プリント制御部280は、必要に応じてインラインセンサ(検出部)190から得られる情報に基づいてヘッド250に対する各種補正を行うとともに、必要に応じて予備吐出や吸引、ワイピング等のクリーニング動作(ノズル回復動作)を実施する制御を行う。
図中のメンテナンス機構294は、インク受け、吸引キャップ、吸引ポンプ、ワイパーブレードなど、ヘッドメンテナンスに必要な部材を含んだものである。
また、ユーザインターフェースとしての操作部296は、オペレータ(ユーザ)が各種入力を行うための入力装置297と表示部(ディスプレイ)298を含んで構成される。入力装置297には、キーボード、マウス、タッチパネル、ボタンなど各種形態を採用し得る。オペレータは、入力装置297を操作することにより、印刷条件の入力、画質モードの選択、付属情報の入力・編集、情報の検索などを行うことができ、入力内容や検索結果など等の各種情報は表示部298の表示を通じて確認することができる。この表示部298はエラーメッセージなどの警告を表示する手段としても機能する。
システムコントローラ272及びプリント制御部280の組み合わせが「評価値演算手段」、「最適値決定処理手段」、「チャート出力制御手段」、「重み情報生成手段」及び「不良記録素子補償手段」に相当する。濃度補正係数記憶部29が「不良記録素子補償パラメータ記憶手段」に相当し、インラインセンサ190及びその信号処理する着弾誤差測定演算部272Aが「不良記録素子位置情報取得手段」に相当する。
なお、図28で説明した着弾誤差測定演算部272A、濃度補正係数算出部272B、濃度データ生成部280A、補正処理部280Bが担う処理機能の全て又は一部をホストコンピュータ286側に搭載する態様も可能である。
<オフラインスキャナを用いる不吐出補正パラメータ決定装置の構成例>
図24乃至図28では、インクジェット記録装置100に内蔵されたインラインセンサ190を用いてチャートを読み取り、その読取画像の解析処理装置もインクジェット記録装置100に搭載されている例を説明したが、本発明の実施に際しては、インクジェット印刷機とは別体のオフラインスキャナ等を用いてチャートを読み取り、その読取画像のデータをパソコン等の装置によって解析する構成も可能である。
図29は、本発明による不吐出補正パラメータ計測用チャートの解析に用いる不吐出補正パラメータ決定装置の構成例を示したブロック図である。
図1のステップS3及び図15のステップS26で説明したスキャンデータの解析処理アルゴリズムをコンピュータに実行させるプログラムを作成し、このプログラムによってコンピュータを動作させることにより、当該コンピュータを不吐出補正パラメータ決定装置の演算装置(「評価値演算手段」、「重み情報生成手段」、「最適値決定処理手段」に相当)として機能させることができる。
図29に示した不吐出補正パラメータ決定装置400は、画像読取装置402としてのフラットベットスキャナと、画像解析の演算等を行うコンピュータ410とから構成される。
画像読取装置402は、不吐出補正パラメータ最適値選定用チャートその他のチャートを撮像するRGBラインセンサを備えるとともに、該ラインセンサを読み取り走査方向(スキャナ副走査方向)に移動させる走査機構及びラインセンサの駆動回路、センサの出力信号(撮像信号)をA/D変換して、所定フォーマットのデジタル画像データに変換する信号処理回路等を備えている。
コンピュータ410は、本体412と、ディスプレイ(表示手段)414及びキーボードやマウスなど入力装置(各種の指示を入力するための入力手段)416から構成される。本体412内には中央演算処理装置(CPU)420、RAM422、ROM424、入力装置416からの信号入力を制御する入力制御部426、ディスプレイ414に対して表示用の信号を出力する表示制御部428、ハードディスク装置430、通信インターフェース432、及びメディアインターフェース434などを有し、これら各回路はバス436を介して相互に接続されている。
CPU420は、全体の制御装置及び演算装置(演算手段)として機能する。RAM422は、データの一時記憶領域やCPU420によるプログラム実行時の作業用領域として利用される。ROM424は、CPU420を動作させるブートプログラムや各種設定値・ネットワーク接続情報などを記憶する書換可能な不揮発性の記憶手段である。ハードディスク装置430には、オペレーティングシステム(OS)や各種のアプリケーションソフト(プログラム)やデータ等が格納される。
通信インターフェース432は、USB(Universal Serial Bus)やLAN、Bluetooth(登録商標)など所定の通信方式に従って外部機器や通信ネットワークに接続するための手段である。メディアインターフェース434は、メモリカードや磁気ディスク、光磁気ディスク、光ディスクに代表される外部記憶装置438の読み書き制御を行う手段である。
本例では、通信インターフェース432を介して画像読取装置402とコンピュータ410とが接続され、画像読取装置402で読み取った撮像画像のデータがコンピュータ410に取り込まれる。なお、画像読取装置402によって取得された撮像画像のデータを外部記憶装置438に一旦記憶し、外部記憶装置438を通じて撮像画像データをコンピュータ410に取り込む構成も可能である。
本発明の実施形態に係る不吐出補正パラメータ決定方法におけるチャートの読取画像を解析するための処理プログラムは、ハードディスク装置430、或いは外部記憶装置438に格納されており、必要に応じて当該プログラムが読み出され、RAM422に展開されて実行される。或いは、通信インターフェース432を介して接続される不図示のネットワーク上に設置されたサーバによってプログラムが提供される態様も可能であるし、インターネット上のサーバによって本プログラムによる演算処理サービスASP(Application ServiceProvider)サービスを提供するという態様も考えられる。
オペレータは、ディスプレイ414上に表示されるアプリケーションウインドウ(不図示)を見ながら入力装置416を操作して各種初期値の設定を入力することができるとともに、演算結果をディスプレイ414上で確認することができる。
また、演算結果のデータ(計測結果)は、外部記憶装置438に記憶したり、通信インターフェース432を介して外部に出力したりすることができる。計測結果の情報は、通信インターフェース432又は外部記憶装置438を介してインクジェット記録装置(不良記録素子補償パラメータを用いた補償処理を実施する印刷機)に入力される。
<被記録媒体について>
「被記録媒体」は、記録素子によってドットが記録される媒体の総称であり、印字媒体、記録媒体、被画像形成媒体、受像媒体、被吐出媒体など様々な用語で呼ばれるものが含まれる。本発明の実施に際して、被記録媒体の材質や形状等は、特に限定されず、連続用紙、カット紙、シール用紙、OHPシート等の樹脂シート、フイルム、布、配線パターン等が形成されるプリント基板、ゴムシート、その他材質や形状を問わず、様々な媒体に適用できる。
<ヘッドと用紙を相対移動させる手段について>
上述の実施形態では、停止したヘッドに対して被記録媒体を搬送する構成を例示したが、本発明の実施に際しては、停止した被記録媒体に対してヘッドを移動させる構成も可能である。なお、シングルパス方式のフルライン型の記録ヘッドは、通常、被記録媒体の送り方向(搬送方向)と直交する方向に沿って配置されるが、搬送方向と直交する方向に対して、ある所定の角度を持たせた斜め方向に沿ってヘッドを配置する態様もあり得る。
<ヘッド構成の変形例について>
上記実施形態では、記録媒体の全幅に対応する長さのノズル列を有するページワイドのフルライン型ヘッドを用いたインクジェット記録装置を説明したが、本発明の適用範囲はこれに限定されず、シリアル型(シャトルスキャン型)ヘッドなど、短尺の記録ヘッドを移動させながら、複数回のヘッド走査により画像記録を行うインクジェット記録装置についても本発明を適用可能である。
<本発明の応用例について>
上記の実施形態では、グラフィック印刷用のインクジェット記録装置への適用を例に説明したが、本発明の適用範囲はこの例に限定されない。例えば、電子回路の配線パターンを描画する配線描画装置、各種デバイスの製造装置、吐出用の機能性液体として樹脂液を用いるレジスト印刷装置、カラーフィルター製造装置、マテリアルデポジション用の材料を用いて微細構造物を形成する微細構造物形成装置など、液状機能性材料を用いて様々な形状やパターンを描画するインクジェットシステムに広く適用できる。
<インクジェット方式以外の記録ヘッドの利用形態について>
上述の説明では、記録ヘッドを用いる画像形成装置の一例としてインクジェット記録装置を例示したが、本発明の適用範囲はこれに限定されない。インクジェット方式以外では、サーマル素子を記録素子とする記録ヘッドを備えた熱転写記録装置、LED素子を記録素子とする記録ヘッドを備えたLED電子写真プリンタ、LEDライン露光ヘッドを有する銀塩写真方式プリンタなど、ドット記録を行う各種方式の画像形成装置についても本発明を適用することが可能である。
<付記>
上記に詳述した実施形態の記載等から把握されるとおり、本明細書では発明1〜12及び以下に付記する発明を含む多様な技術思想の開示を含んでいる。また、発明1〜12と付記1〜27の各発明を適宜組み合わせる態様が可能である。
(付記1):複数の記録素子を有する記録ヘッドと被記録媒体の少なくとも一方を搬送して前記記録ヘッドと前記被記録媒体を相対移動させながら前記複数の記録素子によって前記被記録媒体上に描画を行う画像形成装置によって出力されるチャートであって、当該チャートは、前記複数の記録素子のうち1つ又は複数が記録不能な不良記録素子である場合に当該不良記録素子による描画不良を、当該不良記録素子以外の他の記録素子による描画によって補償するための補償量を表す不良記録素子補償パラメータを決定するために使用される不良記録素子補償パラメータ選定用チャートであり、該チャートには、一定の階調による均一濃度で前記被記録媒体上の領域が描画された均一画像から成る参照パッチと、前記参照パッチを描画した複数の記録素子のうち1つ又は複数が非記録状態とされ、かつ、当該非記録状態とされた記録素子による非記録位置の近傍の記録を担う記録素子による描画部分に前記補償量を表す不良記録素子補償パラメータの候補値が与えられて、当該不良記録素子補償パラメータの候補値に応じた補償量による補正後の状態が再現された1つ又は複数個の計測パッチと、が形成されていることを特徴とする不良記録素子補償パラメータ選定用チャート。
(付記2):付記1において、前記候補値を変えて描画された複数個の前記計測パッチが形成されていることを特徴とする不良記録素子補償パラメータ選定用チャート。
(付記3):付記2において、前記チャート内における参照パッチは、当該参照パッチと比較される複数個の計測パッチが並んだパッチ配列の中央部分に配置されることを特徴とする不良記録素子補償パラメータ選定用チャート。
かかる態様によれば、チャート描画時の記録ヘッドと被記録媒体の相対的な傾き(面内回転角度)や、チャート読み取り時における被記録媒体と光学式読取装置と相対的な傾きなどによる傾きに対して高ロバストなパラメータ計測が可能である。
(付記4):付記1において、前記計測パッチに与えられる前記不良記録素子補償パラメータの候補値は、当該計測パッチ内において連続的に変化していることを特徴とする不良記録素子補償パラメータ選定用チャート。
(付記5):付記1乃至4のいずれか1項において、同一階調の参照パッチと計測パッチの組み合わせが、階調毎に複数組形成されていることを特徴とする不良記録素子補償パラメータ選定用チャート。
複数種類の階調について、それぞれ参照パッチと計測パッチを形成する態様が好ましい。かかる態様によれば、階調毎に適切な不良記録素子補償パラメータを決定することができる。
(付記6):付記1乃至4のいずれか1項において、前記記録ヘッドは、複数のヘッドモジュールで構成されており、各ヘッドモジュールによって前記参照パッチ及び前記計測パッチが形成されることを特徴とする不良記録素子補償パラメータ選定用チャート。
かかる態様によれば、ヘッドモジュール毎に適切な不良記録素子補償パラメータを決定することができる。
(付記7):付記1乃至6のいずれか1項に記載の不良記録素子補償パラメータ選定用チャートを光学式読取装置によって読み取るチャート読取工程と、前記チャート読取工程によって前記光学式読取装置を介して取得された取込画像のデータに基づいて不良記録素子補償パラメータの最適値を決定する最適値決定処理工程と、を含むことを特徴とする不良記録素子補償パラメータ決定方法。
不良記録素子補償パラメータ選定用チャートを読み取った読取画像のデータを解析することによって、不良記録素子補償パラメータの最適値を自動的に決定する構成が好ましい。
(付記8):付記7において、前記最適値決定処理工程は、前記参照パッチの取込画像と前記計測パッチの取込画像の差異を評価するための評価指標となる評価値を算出する評価値演算工程を有し、前記評価値に基づいて前記不良記録素子補償パラメータの最適値を求めることを特徴とする不良記録素子補償パラメータ決定方法。
(付記9):付記8において、前記評価値演算工程により、前記参照パッチの取込画像と前記計測パッチの取込画像との差分情報、又は、前記参照パッチの取込画像と前記計測パッチの取込画像との相関情報が計算されることを特徴とする不良記録素子補償パラメータ決定方法。
(付記10):付記8又は9において、前記参照パッチの取込画像及び前記計測パッチの取込画像について、それぞれ各取込画像の積算プロファイルを計算する積算プロファイル生成工程を有し、前記参照パッチの取込画像と前記計測パッチの取込画像の積算プロファイル同士を比較して前記評価値を求めることを特徴とする不良記録素子補償パラメータ決定方法。
(付記11):付記8乃至10のいずれか1項において、前記参照パッチ及び前記計測パッチの各取込画像に対して平滑化処理が施されることを特徴とする不良記録素子補償パラメータ決定方法。
(付記12):付記8乃至11のいずれか1項において、前記参照パッチの取込画像と前記計測パッチの取込画像から両者の差分を表す差分データを生成する差分データ生成工程を有し、前記差分データに対して平滑化処理が施されることを特徴とする不良記録素子補償パラメータ決定方法。
(付記13):付記11又は12において、前記平滑化処理として、視覚伝達関数が使用されることを特徴とする不良記録素子補償パラメータ決定方法。
かかる態様によれば、人間の視覚特性に合致した最適値の選定が可能である。
(付記14):付記8乃至13のいずれか1項において、前記参照パッチの取込画像と前記計測パッチの取込画像から両者の差分を表す差分データが生成され、前記差分データの成分の二乗和、若しくはその平方根を前記評価指標として前記不良記録素子補償パラメータの最適値が決定されることを特徴とする不良記録素子補償パラメータ決定方法。
(付記15):付記8乃至13のいずれか1項において、前記参照パッチの取込画像と前記計測パッチの取込画像から両者の差分を表す差分データが生成され、前記差分データの成分の分散値、又は前記差分データの成分の最大値を前記評価指標として前記不良記録素子補償パラメータの最適値が決定されることを特徴とする不良記録素子補償パラメータ決定方法。
(付記16):付記14又は15において、前記計測パッチに前記候補値として適用される前記不良記録素子補償パラメータ、若しくは、当該不良記録素子補償パラメータから換算される値を第1軸、前記評価指標を第2軸とする座標系のグラフにおける前記評価値のプロット点から求まる二本の回帰直線の交点における不良記録素子補償パラメータの値が前記最適値として決定されることを特徴とする不良記録素子補償パラメータ決定方法。
かかる態様によれば、ノイズの影響を回避して、一層高精度に最適な不良記録素子補償パラメータの値を決定することができる。
(付記17):付記14又は15において、前記計測パッチに前記候補値として適用される前記不良記録素子補償パラメータ、若しくは、当該不良記録素子補償パラメータから換算される値を第1軸、前記評価指標を第2軸とする座標系のグラフにおける前記評価指標の最小値若しくは最大値を対応する不良記録素子補償パラメータの値が前記最適値として決定されることを特徴とする不良記録素子補償パラメータ決定方法。
離散的な計測データから補間処理されたグラフから最小値又は最大値を求めることにより、一層高精度に最適な不良記録素子補償パラメータの値を決定することができる。
(付記18):付記14又は15において、前記計測パッチに前記候補値として適用される前記不良記録素子補償パラメータ、若しくは、当該不良記録素子補償パラメータから換算される値を第1軸、前記評価指標を第2軸とする座標系のグラフにおける2回微分値が最小値若しくは最大値をとる不良記録素子補償パラメータの値が前記最適値として決定されることを特徴とする不良記録素子補償パラメータ決定方法。
(付記19):付記16乃至18のいずれか1項において、前記不良記録素子補償パラメータから換算される値は、前記非記録状態とされた記録素子による非記録位置の近傍の記録を担う記録素子における打滴率に比例する値であることを特徴とする不良記録素子補償パラメータ決定方法。
かかる態様によれば、特に、シャドウ(高濃度部)、及びハイライト(低濃度部)における最適パラメータの選定精度が向上する。
(付記20):付記7乃至19のいずれか1項に記載の不良記録素子補償パラメータ決定方法によって決定された前記最適値を元に、前記計測パッチに与える不良記録素子補償パラメータの前記候補値の刻み幅を更に細かくして、再度、前記不良記録素子補償パラメータ選定用チャートを作成し、当該再作成されたチャートについて付記7乃至19のいずれか1項に記載の不良記録素子補償パラメータ決定方法を適用し、更なる最適値を選定することを特徴とする不良記録素子補償パラメータ決定方法。
付記7乃至19のいずれか1項に記載の不良記録素子補償パラメータ決定方法を複数回繰り返して適用し、最適な値を徐々に絞り込んでいくという処理態様が可能である。
かかる態様によれば、比較的短時間で一層高精度に、不良記録素子補償パラメータの最適値を決定することができる。
(付記21):付記7乃至20のいずれか1項において、前記チャート読取工程により取得された取込画像に対して傾き補正処理が施されることを特徴とする不良記録素子補償パラメータ決定方法。
取込画像について傾きを修正する回転処理などを行うことにより、一層高精度のパラメータ計測が可能である。
(付記22):付記7乃至21のいずれか1項において、前記光学読取装置として、前記画像形成装置に搭載されているインラインスキャナを使用することを特徴とする不良記録素子補償パラメータ決定方法。
かかる態様によれば、1台の画像形成装置において、チャートの出力と共に、その出力結果の読み取りが可能であり、効率的な解析と、その解析に基づく不良記録素子補償パラメータの取得が可能となる。
(付記23):付記7乃至22のいずれか1項において、前記各記録素子はノズルから液滴を吐出し、その吐出液滴を前記被記録媒体上に付着させることにより、前記被記録媒体上に描画を行うものであり、前記記録ヘッドにおける前記複数の記録素子の配列形態と前記相対移動の方向から規定される前記被記録媒体上への前記吐出液滴の着弾順を含む着弾干渉誘発要因に対応した複数種類の着弾干渉パターンと各記録素子との対応関係を示す対応情報に基づいて、前記着弾干渉パターンの違いに対応した異なる記録素子について疑似的に不吐出とする不吐化処理を行い、各着弾干渉パターンに対応した複数種類のテストチャートを作成する着弾干渉パターン別テストチャート作成工程を有し、前記着弾干渉パターン別に作成された前記複数種類のテストチャートの出力結果から前記着弾干渉パターン別の不吐出補正用の不良記録素子補償パラメータを決定することを特徴とする不良記録素子補償パラメータ決定方法。
かかる態様によれば、不吐出ノズル周辺の他のノズルで打滴される液滴の被記録媒体上における着弾干渉の影響が考慮された不良記録素子補償パラメータを求めることができる。
また、このパラメータを用いて不吐出補正を行うことにより、補正性能が一層向上する。
なお、不吐出ノズルによる打滴不能位置の両側に隣接するドットを形成し得る2つのノズル(隣接ノズル対)から吐出された液滴の被記録媒体上での着弾位置間隔は、他のノズルから吐出された液滴同士の着弾干渉の影響に応じて変化する。したがって、この着弾干渉に起因する着弾位置間隔の変化量の観点で「着弾干渉パターン」を決定する態様が好ましい。着弾干渉の発生の有無や、着弾干渉発生状況は、不吐出ノズル周辺の他のノズルによる打滴順番に依存する。
更に、着弾干渉誘発要因には、打滴順の他、ドット径(吐出液滴の体積と相関する値)や各ノズルの打滴位置誤差(着弾位置誤差)などが含まれる。こられの因子を更に考慮して補償パラメータを定める態様も好ましい。
(付記24):付記1乃至6のいずれか1項に記載の不良記録素子補償パラメータ選定用チャートを読み取り、取込画像のデータを生成する光学式読取装置と、前記光学式読取装置を介して取得された取込画像のデータに基づいて不良記録素子補償パラメータの最適値を決定する信号処理を行う最適値決定処理手段と、を備えることを特徴とする不良記録素子補償パラメータ決定装置。
付記24の不良記録素子補償パラメータ決定装置については、付記8〜23で述べた特徴を組み合わせることが可能である。付記8〜23の方法発明における各工程の処理を実行する処理手段を備えた不良記録素子補償パラメータ決定装置が提供される。
(付記25):複数の記録素子を有する記録ヘッドと、前記記録ヘッド及び被記録媒体のうち少なくとも一方を搬送して前記記録ヘッドと前記被記録媒体を相対移動させる搬送手段と、を備え、前記記録ヘッドと前記被記録媒体を相対移動させながら前記複数の記録素子によって前記被記録媒体に描画する画像形成装置であって、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の不良記録素子補償パラメータ選定用チャートを出力させる描画制御を行うチャート出力制御手段と、前記不良記録素子補償パラメータ選定用チャートの出力結果に基づいて決定された不良記録素子補償パラメータを記憶しておく不良記録素子補償パラメータ記憶手段と、前記記録ヘッドの前記複数のノズルのうち、描画に使用できない不良記録素子の位置を示す不良記録素子位置情報を取得する不良記録素子位置情報取得手段と、前記不良記録素子位置情報を基に前記不良記録素子補償パラメータを適用して、当該不良記録素子による描画不良を、当該不良記録素子以外の他の記録素子による描画によって補償する不良記録素子補償手段と、を備えたことを特徴とする画像形成装置。
この画像形成装置に付記24の不良記録素子補償パラメータ決定装置を搭載する形態も可能である。
(付記26):付記25において、前記不良記録素子補償パラメータ選定用チャートを読み取り、取込画像のデータを生成する光学式読取装置としてインラインスキャナを具備していることを特徴とする画像形成装置。
(付記27):付記25又は26において、前記各記録素子はノズルから液滴を吐出し、その吐出液滴を前記被記録媒体上に付着させることにより、前記被記録媒体上に描画を行うものであり、前記記録ヘッドにおける前記複数の記録素子の配列形態と前記相対移動の方向から規定される前記被記録媒体上への前記吐出液滴の着弾順を含む着弾干渉誘発要因に対応した複数種類の着弾干渉パターンと各記録素子との対応関係を示す対応情報に基づいて、前記着弾干渉パターンの違いに対応した異なる記録素子について疑似的に不吐出とする不吐化処理を行い、各着弾干渉パターンに対応した複数種類のテストチャートを作成する着弾干渉パターン別テストチャート作成手段を有し、前記着弾干渉パターン別に作成された前記複数種類のテストチャートの出力結果から前記着弾干渉パターン別の不吐出補正用の不良記録素子補償パラメータが定められ、当該着弾干渉パターン別の不吐出補正用の不良記録素子補償パラメータが前記不良記録素子補償パラメータ記憶手段に記憶されることを特徴とする画像形成装置。