以下、添付図面に従って本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る画像処理装置の構成を示したブロック図である。この画像処理装置10は、処理の対象となる元の画像データとして、低階調数(「第1階調数」に相当、例えば4階調)の画像データ(以下「低階調元データ」という。)12を受け入れる入力インターフェース部14と、入力された低階調元データ12の各画素に付与された第1階調数の階調値による元画素データの配置パターン(以下、「階調値配置」という。)を解析して、その解析結果と各画素の階調値(元画素データ)とに基づいて、元画素データを高階調数(「第2階調数」に相当、例えば256階調)のデータに変換する高階調化処理部16と、高階調化処理部16におけるデータ変換に用いる変換規則を規定したルックアップテーブルを格納しておく変換階調値LUT格納部18と、高階調化変換後の画像データ(以下、「高階調元データ」という。)について所定の画素範囲の単位で画素値を平均化する平均値化処理部20と、平均値化処理後の画像データ(以下、「高階調平均値データ」という。)に対して濃度補正を行う濃度補正処理部22と、濃度補正処理部22における処理に用いる補正値のテーブルを格納しておく補正値テーブル格納部24と、濃度補正処理後の高階調補正後データをハーフトーン処理するハーフトーン処理部26とを備え、ハーフトーン処理部26で生成された低階調(例えば4階調)補正後データ28を出力する。
入力インターフェース部14が「元画像データ取得手段」に相当し、高階調化処理部16が「高階調化処理手段」に相当する。階調値配置解析部32が「解析手段」に相当し、データ変換部34が「データ変換手段」に相当する。変換階調値LUT格納部18が「LUT格納手段」に相当し、濃度補正処理部22が「濃度補正処理手段」に相当する。ハーフトーン処理部26が「ハーフトーン処理手段」に相当する。また、平均値化処理部20は「平均値化処理工程」の処理を行う手段(平均値化処理手段)に相当しており、補正値テーブル格納部24は濃度補正処理の補正値データを格納しておく手段(補正値テーブル格納手段)に相当している。
低階調元データ12は、例えば、図示せぬ別の画像信号処理装置によってハーフトーン処理されて得られたハーフトーン処理済みの画像データである。低階調元データ12の階調数は、ドットサイズの種類数に対応しており、各画素の画素値(画素データ)として与えられる階調値(画素値、或いは、画素データとも呼ばれる)はドットの種類(ドットサイズ種)を示している。「階調値配置」という用語は、階調値にそれぞれ対応したドット種によるドット配置と対応している。低階調元データ12の画素値は、ドットサイズ種(ドット無しを含む)に対応したN値(Nは2以上の整数)の値である。例えば、ドット無し、小ドット、中ドット、大ドットの4種類のドットサイズ種に対応した4階調元データである。或いはまた、ドット無し、小ドット、大ドットの3種類のドットサイズ種による画像データの場合には3階調(3値)の元データとなる。
低階調元データ12における各画素の階調値の配置(元画素データの階調値配置)は、階調数で表されるドットサイズ種によるドット配置形態を表している。つまり、データ上の階調値配置は描画面上のドット配置に対応したものである。本実施形態では、低階調元データ12の階調値配置(ドット配置)を考慮して、各画素の画素データを高階調化する処理を行う。
低階調元データ12の入力部として機能する入力インターフェース部14は、有線又は無線の通信インターフェース部を採用してもよいし、メモリカードなど外部記憶媒体(リムーバブルメディア)の読み書きを行うメディアインターフェース部を採用してもよく、これらの組み合わせであってもよい。また、単なる信号入力端子で構成することも可能である。
高階調化処理部16は、低階調元データ12における階調値配置(ドット配置)を解析する階調値配置解析部32と、その解析結果に応じてLUTを参照して各画素のデータを変換するデータ変換部34と、を備える。変換階調値LUT格納部18には、注目画素の元画素データと、その周囲の隣接画素の階調値配置による隣接ドット同士の重なり具合とを考慮した変換階調値を規定したLUTが記憶されている。データ変換部34は、注目画素の元画素データと階調値配置の条件に基づきLUTから変換階調値を決定する。
<高階調化処理の内容>
本実施形態では、低階調元データ12における注目画素の画素値(元画素データ)を高階調化するにあたり、低階調元データにおける注目画素に隣接する画素のドットサイズ種(低階調の階調値)のパターン(組み合わせ)に応じて、高階調化の値が調整される。すなわち、ハーフトーン処理済み低階調元データ12から高階調の濃度データ(第2階調数の画素データ)に変換するときに、注目画素に隣接する周辺画素の階調値の配置(周辺画素のドット配置に相当)を調査して、隣接ドット間のドットの重なり度合いに応じて高階調化の際の濃度値を調整する。
<階調値配置を考慮した変換階調値の決定方法について>
ここでは説明を簡単にするために、低階調元データとして3階調のデータを例示し、注目画素とこれに隣接する周囲画素(「所定の隣接画素範囲」に相当)として、注目画素の左右に隣接する2画素を対象とする。注目画素及びその左右に隣接する2画素の合計3画素の範囲で隣接ドットの配置関係を例示しながら説明する。
既に説明したとおり、3階調元データの各画素の値は、無ドット、小ドット、大ドットの3種類のドット種に対応した3値で表される。例えば、無ドット=0、小ドット=1、大ドット=2の3階調の数値で表される。図2に3階調元データの一例を示す。図2の左側に示した3階調の画像データを画素毎にドットサイズ種で表すと、図2の右側のような配置となる。図中「無」は無ドット(ドット無し、空白)を表し、「小」は小ドット、「大」は大ドットを表す。
図示の便宜上、縦6画素、横5画素の6×5(=30)画素の範囲を示したが、処理対象となる画像データの画像サイズ(画素数)は特に限定されない。一般には縦m画素、横n画素のm×n画素の画素データを含む画像データを対象とすることができる(m、nは、2以上の任意の整数)。なお、用紙上の1つの画素領域と、画像データ上の1つの「画素データ」が対応する。また、画像内容を構成する複数の画素データが集まって「画像データ」を構成している。画像データ中の注目画素の階調値(ドットサイズ種を示す画素値)とその左右に隣接する隣接画素の階調値との関係(隣接するドットのドットサイズ種の組み合わせ)としては、例えば、図3、図4に示すようなものが有る。
図3及び図4は、低階調元データにおける注目画素のドットサイズとこれに隣接する左右画素のドット配置(ドットサイズ種)の組み合わせパターンに対応した変換階調値の例を示した図表である。図3では同サイズのドットの隣接関係を示し、図4では異種サイズのドットの隣接関係を示している。
図3は、同じドットサイズのドット同士が隣接する場合を例示している。図3の左側は、注目画素が小ドット(注目画素の元画素データが「1」)の場合について、注目画素の左右の隣接画素にドットが無い場合、左右のいずれか片方のみにドット(小ドット)が有る場合、左右両方にドット(小ドット)が有る場合のドット配置の状況を模式的に示している。図示のとおり、小サイズのドットは、互いに隣接してもドット同士が接触しないサイズである。つまり小ドットのドット直径Dsは、出力装置であるインクジェット記録装置の記録解像度で規定される打滴点候補の格子点間隔pxよりも小さいものである。
このように注目画素が小ドット(画素値=1)の場合、小サイズのドット同士が隣接しても、ドットに重なりが発生しない。つまり、注目画素が小ドットの場合、その左右隣接画素の画素値が「0」(=ドット無し)、又は「1」(=小ドット)であるときは、ドットの重なり量が無いため、当該注目画素の画素値の変換階調値はドットの重なり量による調整が不要である。
つまり、注目画素が小ドットで左右にドットが無い場合の変換階調値dssは、孤立した(単独の)小ドットの濃度に対応した値とする。注目画素が小ドットで左右のいずれか一方に小ドットが有る場合の変換階調値dsdは、隣接ドット間でドットが接触しないことから、孤立した小ドットの濃度と同等の値(dsd=dss)とする。注目画素が小ドットで左右の両方に小ドットが有る場合の変換階調値dstは、隣接ドット同士でドットが接触しないことから、孤立した小ドットの濃度と同等の値(dst=dss)とする。
これに対し、図3の右側に示したように、注目画素が大ドット(画素値=2)の場合は、隣にドットが有ると、隣接ドット同士で重なり部分が生じ、その画素が占める実効濃度、或いは、濃度に対する打滴の影響度が変わる。
図3の右側には、注目画素が大ドット(注目画素の元画素データが「2」)の場合について、注目画素の左右の隣接画素にドットが無い場合、左右のいずれか片方のみにドット(大ドット)が有る場合、左右両方にドット(大ドット)が有る場合のドット配置の状況を模式的に示している。大ドットのドット直径DLは、出力装置であるインクジェット記録装置の記録解像度で規定される打滴点候補の格子点間隔pxよりも大きいものである。
図示のように、媒体上に付着したインク滴により形成されるインクドットは、概ね円形で近似される。隣のドットと接触せずに孤立したドットは、円形ドットとして形成される。このような孤立したドットについては、ドットの面積が出力濃度に対応したものとなる。
しかし、隣接するドット同士が重なる場合のように、ある注目画素のドットの一部が隣の画素に形成されるドットに重なって、隣の画素領域に入ってしまう重なり部分(重複部分)を当該注目画素の濃度として計算してしまうと、注目画素の濃度値を過大に数え過ぎてしまう。したがって、本実施形態では、その重複部分に相当する濃度を除いた形のドットとして把握し、この重複部分を除外した修正ドットに対応する濃度の値を変換階調値として割り当てる。
図3の右側に示したとおり、注目画素が大サイズのドットで左右にドットが無い場合の変換階調値dlsは、孤立した(単独の)大ドットの濃度に対応した値とする。注目画素が大ドットで左右のいずれか一方に大ドットが有る場合の変換階調値dldは、dlsからドットの重複部分に応じた濃度の値(Δdll>0)を除く数値調整を行った値とする(dld=dls−Δdll)。したがって、この場合の変換階調値dldは、dlsよりも小さい値となる。
注目画素が大ドットで左右の両側に大ドットが存在する場合の変換階調値dltは、dlsから左右両側のドットの重複部分に応じた濃度の値(2×Δdll)を除く数値調整を行った値とする(dlt=dls−2×Δdll)。したがって、この場合の変換階調値dltは、dldよりも小さい値となる。
このような考え方により、ドットの重なり量(重複部分)に応じて変換階調値の値を修正する。同じサイズのドット同士が隣接する場合に限らず、図4に示すように、異なるドットサイズのドット同士でドットの重なりが発生する条件もあり得る。注目画素が小ドットで左右のいずれか一方の画素に大ドットが打たれる場合の変換階調値dsdlは、dssからドットの重なり量に応じた濃度の値(Δdsl>0)を除く数値調整を行った値とする(dsdl=dss−Δdsl)。したがって、この場合の変換階調値dsdlは、dssよりも小さい値となる。
また、注目画素が小ドットで左右の両方の画素に大サイズのドットが打たれる場合の変換階調値dstlは、dssから両方のドットの重なり量に応じた濃度の値(2×Δdsl>0)を除く数値調整を行った値とする(dstl=dss−2×Δdsl)。したがって、この場合の変換階調値dstlは、片側にのみ大ドットが有る場合の変換階調値dsdlよりも小さい値となる。
次に、注目画素が大ドットの場合について検討する。図4の右側に示したように、注目画素が大ドットでその左右のいずれか一方の画素に小ドットが打たれる場合の変換階調値dldsは、dlsからドットの重なり量に応じた濃度の値(Δdsl)を除く数値調整を行った値とする(dlds=dls−Δdsl)。したがって、この場合の変換階調値dsdlは、dlsよりも小さい値となる。
注目画素が大ドットでその左右両方の隣接画素に小サイズのドットが打たれる場合の変換階調値dltsは、dlsから両方のドットの重なり量に応じた濃度の値(2×Δdsl)を除く数値調整を行った値とする(dlts=dls−2×Δdsl)。したがって、この場合の変換階調値dltsは、片側のみに小ドットが有る場合の変換階調値dldsよりも小さい値となる。
更に、注目画素が大ドットであり、その左右の隣接画素のうち一方の画素に小ドットが打たれ、他方の隣接画素に大ドットが打たれる場合の変換階調値dltslは、dlsから左右のドットの重なり量に応じた濃度の値(Δdsl+Δdll)を除く数値調整を行った値とする(dltsl=dls−Δdsl−Δdll)。大サイズ同士のドットの重なり量に比べて、異種サイズ(小サイズと大サイズ)のドット同士の重なり量は小さいため、重なり量に応じた濃度の値ΔdLL、Δdslについて、Δdsl<Δdllの関係がある。
したがって、大ドット(注目画素)の左右の一方に小ドット、他方に大ドットが隣接する場合の変換階調値dltslは、左右両側に小ドットが隣接する場合の変換階調値dltsよりも小さい。
図5は、図3及び図4で説明した注目画素の元画素データと左右隣接画素の元画素データの組み合わせ(階調値配置)の条件と、注目画素の元画素データを高階調化する際の変換後の階調値(変換階調値)との対応関係を整理した図表である。変換階調値は、高階調化する所定階調数(例えば、256階調)の信号深度の範囲内で、ドット配置の条件(ドット同士の重なり量の条件)に応じて多段階に数値が割り当てられる。図5に例示したような変換関係を規定したLUTを図1の変換階調値LUT格納部18に記憶しておき、注目画素の画素データと階調値配置の条件からLUTを参照して変換階調値を決定する。
特許文献1に示された従来の方法では、入力された元の低階調データにおける注目画素の低階調数の各階調値に対して、それぞれ固定の変換階調値のみが定められていた。つまり、従来の方法の場合、3値のデータであれば、低階調元画素データ「0」、「1」、「2」の各値に対して、高階調元画素データは「0」、「dss」、「dls」の3種類のみが変換階調値として規定されているに過ぎない。これに対し、本実施形態では、注目画素の階調値とその周囲の隣接画素の階調値との関係(隣接ドット同士の重なり量)を考慮して階調値がより細かく修正され、元の低階調データの階調数よりも多種類の変換階調値が規定されている(図3〜図5参照)。
図2〜図5では、説明を簡単にするために、注目画素の左右方向(横方向)に隣接するドットの重なりのみを考慮した説明となっているが、同様の考え方は注目画素の上下方向(縦方向)に隣接するドットについても適用できる。また更に、注目画素の斜め方向(左上、右下、右上、左下)に隣接するドット同士の重なりについても適用できる。例えば、図6に示すように、注目画素(x,y)を中心に、上下左右の4画素の範囲について、同様のドットの重なりを考慮して変換階調値を多段階に割り当てることができる。更に、上下左右の4画素に加えて、斜め方向の4画素を含めた周囲8画素の範囲について、ドットの重なりを考慮して、変換階調値を更に多段階に割り当てることができる。
なお、図2〜図5の説明では、小ドット同士でドットは重ならないものとしたが、小ドット同士でドットが重なる場合には、その重なり量に応じて変換階調値が修正される。
<左右上下の周囲4画素の隣接画素範囲でドットの重なりを考慮する場合の例>
3値の元データについて、注目画素とその左右上下に隣接する4画素の合計5画素の範囲におけるドット配置の組み合わせは、3×3×3×3×3=35通りある。これらのうち、注目画素の元データが「0=無ドット」の場合には、変換階調値は「0」が適用されるものとする。注目画素の元データが「1=小ドット」又は「2=大ドット」の場合、注目画素に隣接する周囲4画素のドット配置(階調値配置)の組み合わせはそれぞれ、3×3×3×3=34通りある。
注目画素の元データkについて、ドットの重なりが無いものとした場合の濃度に対応する変換階調値をQkとする。例えば、元データが「1=小ドット」の場合に隣接ドットと重複しない条件での変換階調値は「Q1」とする。また、元データが「2=大ドット」の場合に隣接ドットと重複しない条件での変換階調値は「Q2」とする。なお、図2〜4の説明の例では、Q1=dss、Q2=dlsである。
また、注目画素の元データkに対して、隣接ドット同士の重なり量を考慮した変換階調値Qk’は、隣接画素とのドットの重なり量によるドット面積の減少量に相当する階調値の修正を行うため、その修正量をΔQkとすると、Qk’=Qk−ΔQkと表される。
隣接ドット同士の重なり部分による濃度減少の効果に関して、小ドットと小ドットとが隣接する場合のドットの重なり量(重なり部分の面積)に対応した濃度の修正値をΔQSS、小ドットと大ドットとが隣接する場合の重なり量に対応する濃度の修正値をΔQSL、大ドットと大ドットとが隣接する場合の重なり量に対応する濃度の修正値をΔQLLとする。
また、注目画素の左右上下に隣接する4画素範囲のうち無ドットの個数をu、小ドットの個数をv、大ドットの個数をwとする。ただし、u,v,wは、いずれも0以上4以下の整数であり、u+v+w=4を満たす。
注目画素の元画素データ(画素値)が「1=小ドット」のとき、隣接ドットの重なりによるドット面積減少量に相当する濃度の修正値ΔQ1は、ΔQ1=v×ΔQSS+w×ΔQSLで表される。したがって、注目画素の実質的なドット面積の濃度に相当する階調値は、Q1’=Q1−ΔQ1=Q1−(v×ΔQSS+w×ΔQSL)と表される。したがって、このQ1’に相当する階調値を示す256階調(第2階調数)の変換階調値dsvwが割り当てられる。なお、図2〜図4の例で説明したように、ΔQSS=0とすることができる。
注目画素の元画素データ(画素値)が「2=大ドット」のときについても、考え方は同じであり、隣接ドットの重なりによる面積減少量に相当する濃度の修正値ΔQ2は、ΔQ2=v×ΔQSL+w×ΔQLLで表される。したがって、注目画素の実質的なドット面積の濃度に相当する階調値は、Q2’=Q2−ΔQ2=Q2−(v×ΔQSL+w×ΔQLL)と表される。したがって、このQ2’に相当する階調値を示す256階調(第2階調数)の変換階調値dLvwが割り当てられる。
参考のために、図7に注目画素の元データが「2=大ドット」、左右に大ドットが隣接し、上下に小ドットが隣接する場合のドット配置を例示した。この場合、大ドット同士の重なりによる濃度の修正値ΔQLLが2つ、大ドットと小ドットの重なりによる濃度の修正値ΔQSLが2つとなるため、注目画素の実質濃度Q2’はQ2’=Q2−(2×ΔQSL+2×ΔQLL)と表される。こうして修正された濃度Q2’に対応した変換階調値が注目画素の高階調化後の画素データとして適用される。
注目画素と、当該注目画素に隣接する所定画素範囲(ここでは左右上下の4画素を例示)における元画素データの階調配置(ドット配置)の条件に対する変換階調値の対応関係を規定したルックアップテーブル(LUT)を予め記憶しておき、このLUTを参照して条件に適合した変換階調値が選択される。例えば、ドット配置からドット個数テーブルを用いて各ドットの個数を求め、更に、濃度修正値テーブルを用いて隣接ドット種類毎の濃度修正値を得る。
図8は3値画素データ時のドット個数テーブル(LUT)の例を示す説明図である。注目画素の上下左右に隣接する周囲4画素(上画素、下画素、左画素、右画素)のそれぞれのドット種類は「0=無し」、「1=小ドット」、「2=大ドット」の3種類であり、各画素のドット種類は2ビットで特定できる。したがって、周囲4画素(上画素、下画素、左画素、右画素)のドット種類の組み合わせは、8ビットの2進数で表すことができる。周囲4画素のドット種類の組み合わせを示す8ビット2進数から、その対応するドット配置における小ドットの個数と大ドットの個数が特定される。
図9は3値画素データ時の濃度修正値テーブル(LUT)の例を示す説明図である。図9のように、濃度修正値テーブルは、注目画素のドット種類と隣接画素のドット種類との組み合わせに応じた濃度修正値が定められている。図9の例では、注目画素が小ドットの場合に、隣接画素がドット無しであれば濃度修正値は0、隣接画素が小ドットのとき(小ドット同士が隣接するとき)の濃度修正値はΔQSS、隣接画素が大ドットのとき(小ドットと大ドットが隣接するとき)の濃度修正値はΔQSLという具合に値が定められている。
また、注目画素が大ドットの場合に、隣接画素がドット無しであれば濃度修正値は0、隣接画素が小ドットのとき(小ドットと大ドットが隣接するとき)の濃度修正値はΔQSL、隣接画素が大ドットのとき(大ドット同士が隣接するとき)の濃度修正値はΔQLLという具合に値が定められている。図8、図9で例示したようなLUTを利用して注目画素の変換階調値を求めることができる。
なお、図7〜図9では、説明を簡単にするために、隣接するドットサイズ種の個数と修正値ΔQSS、ΔQSL、ΔQLLの積によって修正量を計算したが、図10に示すように、注目画素に隣接する隣接画素同士のドットの重なりを更に考慮して、更に細かく濃度値(階調値)を修正してもよい。
また、図2〜図10で説明した考え方は、元画素データが3値以外の階調数のデータである場合について拡張することができる。例えば、4値の場合を説明する。
<4値の画素データの場合>
ここでは、0=無ドット、1=小ドット、2=中ドット、3=大ドットの4種類のドットサイズ種によるドット配置を表す4値の元画像データが入力される場合を例に説明する。また、説明を簡単にするために、注目画素の左右上下に隣接する周囲4画素の隣接画素範囲でドットの重なりを考慮するものとする。
注目画素の元データkについて、ドットの重なりが無いものとした場合の濃度に対応する変換階調値をQkとする。元データが「1=小ドット」の場合に隣接ドットと重複しない条件での変換階調値は「Q1」、元データが「2=中ドット」の場合に隣接ドットと重複しない条件での変換階調値は「Q2」、元データが「3=大ドット」の場合に隣接ドットと重複しない条件での変換階調値は「Q3」とする。
小ドットと小ドットとが隣接する場合のドットの重なり量(重なり部分の面積)に対応した濃度の修正値をΔQSS、小ドットと中ドットとが隣接する場合の重なり量に対応する濃度の修正値をΔQSM、小ドットと大ドットとが隣接する場合の重なり量に対応する濃度の修正値をΔQSL、中ドットと中ドットとが隣接する場合の重なり量に対応する濃度の修正値をΔQMM、中ドットと大ドットとが隣接する場合の重なり量に対応する濃度の修正値をΔQML、大ドットと大ドットとが隣接する場合の重なり量に対応する濃度の修正値をΔQLLとする。
また、注目画素の左右上下に隣接する4画素範囲のうち無ドットの個数をu、小ドットの個数をv、中ドットの個数をw、大ドットの個数をxとする。ただし、u,v,w,xは、いずれも0以上4以下の整数であり、u+v+w+x=4を満たす。
注目画素の元画素データ(画素値)が「1=小ドット」のとき、隣接ドットの重なりによるドット面積減少量に相当する濃度の修正値ΔQ1は、ΔQ1=v×ΔQSS+w×ΔQSM+x×ΔQSLで表される。注目画素の実質的なドット面積の濃度に相当する階調値は、Q1’=Q1−ΔQ1=Q1−(v×ΔQSS+w×ΔQSM+x×ΔQSL)と表される。したがって、このQ1’に相当する階調値を示す256階調(第2階調数)の変換階調値dsvwxが割り当てられる。
注目画素の元画素データ(画素値)が「2=中ドット」のとき、隣接ドットの重なりによるドット面積減少量に相当する濃度の修正値ΔQ2は、ΔQ2=v×ΔQSM+w×ΔQMM+x×ΔQMLで表される。注目画素の実質的なドット面積の濃度に相当する階調値は、Q2’=Q2−ΔQ2=Q2−(v×ΔQSM+w×ΔQMM+x×ΔQML)と表される。したがって、このQ2’に相当する階調値を示す256階調(第2階調数)の変換階調値dmvwxが割り当てられる。
注目画素の元画素データ(画素値)が「3=大ドット」のとき、隣接ドットの重なりによるドット面積減少量に相当する濃度の修正値ΔQ3は、ΔQ3=v×ΔQSL+w×ΔQML+x×ΔQLLで表される。注目画素の実質的なドット面積の濃度に相当する階調値は、Q3’=Q3−ΔQ3=Q3−(v×ΔQSL+w×ΔQML+x×ΔQLL)と表される。したがって、このQ3’に相当する階調値を示す256階調(第2階調数)の変換階調値dLvwxが割り当てられる。
図11は4値画素データ時のドット個数テーブル(LUT)の例を示す説明図である。注目画素の上下左右に隣接する周囲4画素(上画素、下画素、左画素、右画素)のそれぞれのドット種類は「0=無し」、「1=小ドット」、「2=中ドット」、「3=大ドット」の4種類であり、各画素のドット種類は2ビットで特定できる。したがって、周囲4画素(上画素、下画素、左画素、右画素)のドット種類の組み合わせは、8ビットの2進数で表すことができる。周囲4画素のドット種類の組み合わせを示す8ビット2進数から、その対応するドット配置における小ドットの個数、中ドットの個数、及び大ドットの個数が特定される。
図12は4値画素データ時の濃度修正値テーブル(LUT)の例を示す説明図である。図12のように、濃度修正値テーブルは、注目画素のドット種類と隣接画素のドット種類との組み合わせに応じた濃度修正値が定められている。図12の例では、注目画素が小ドットの場合に、隣接画素がドット無しであれば濃度修正値は0、隣接画素が小ドットのとき(小ドット同士が隣接するとき)の濃度修正値はΔQSS、隣接画素が中ドットのとき(小ドットと中ドットが隣接するとき)の濃度修正値はΔQSM、隣接画素が大ドットのとき(小ドットと大ドットが隣接するとき)の濃度修正値はΔQSLという具合に値が定められている。
また、注目画素が中ドットの場合に、隣接画素がドット無しであれば濃度修正値は0、隣接画素が小ドットのとき(中ドットと小ドットが隣接するとき)の濃度修正値はΔQSM、隣接画素が中ドットのとき(中ドット同士が隣接するとき)の濃度修正値はΔQMM、隣接画素が大ドットのとき(中ドットと大ドットが隣接するとき)の濃度修正値はΔQMLという具合に値が定められている。
また、注目画素が大ドットの場合に、隣接画素がドット無しであれば濃度修正値は0、隣接画素が小ドットのとき(小ドットと大ドットが隣接するとき)の濃度修正値はΔQSL、隣接画素が中ドットのとき(大ドットと中ドットが隣接するとき)の濃度修正値はΔQML、隣接画素が大ドットのとき(大ドット同士が隣接するとき)の濃度修正値はΔQLLという具合に値が定められている。図11、図12で例示したようなLUTを利用して注目画素の変換階調値を求めることができる。
なお、このような隣接ドットの配置の組み合わせに応じて、変換階調値を多段階に規定しておく例に限らず、図10で説明したように、注目画素に隣接する隣接画素同士のドットの重なりを更に考慮して、更に細かく濃度値(階調値)を修正してもよい。
<変形例1>
上記で説明したドット配置の条件以外に、各ドット位置での位置誤差データに基づき、ドットの重なり量の増減を考慮して、隣接ドットの重なり程度を調整してもよい。例えば、予め各吐出位置でのドットのずれ量(位置誤差量)を測定し、その測定結果に基づき、ドットの重なり量(すなわち、変換階調値の修正量)を調整する。つまり、ドットの配置形態と各ドット位置での位置誤差データとに基づいて、変換する濃度値を修正する。このような構成によれば、実際の画像出力装置の特性に合致した一層適切な濃度値への変換が可能である。
<変形例2>
各ドット位置でのドット打滴順に応じて隣接ドットの重なり程度を調整してもよい。インクジェット描画の場合、既に打たれているドットと重なるように次ドットを打った場合、後から打ったドットの位置がずれる場合ある。これは、着弾干渉と呼ばれる現象であり、先行着弾液滴に後続の着弾液滴が接触することにより液同士の相互作用で液滴が移動してドットの位置のずれる現象である。このような現象に対して、予め測定用ドットパターンを描画して、ドット着弾順に応じて発生するドットのずれ量を測定し、その測定結果に基づき、ドットの重なり量を調整する。
一例として、注目画素が最初に(他の先行打滴によるドットと接触せずに)打滴される場合は、ドットの接触による位置の移動成分は無いものとして(無視して)扱うことができる。注目画素が打滴される前に、その隣接画素(左画素、右画素、上画素、下画素など)が先に打滴されており、その先行打滴によるドットに接触して注目画素のドットが形成される場合、その先行打滴によるドットの方向にドット位置が移動するため、その分ドット同士の重なり量の増減が発生する。このドット位置の移動によるドットの重なり量の増減を考慮して濃度の値の調整(変換階調値の決定)を行う。このような構成によれば、より一層適切な濃度値への変換が可能である。なお、変形例1と変形例2とを組み合わせる態様も可能である。
<画像処理フローの説明>
図13は、図1に画像処理装置10における画像信号の処理の流れを示したフローチャートである。まず、処理対象とする低階調元データ12を取得する(図13のステップS102)。この低階調元データ12は、例えば、4階調の画像データであり、別の装置でハーフトーン処理されたハーフトーン処理後のドットデータである。
次に、この入力された低階調元データを解析し、注目画素及びこれに隣接する周辺画素の階調値配置を把握する(ステップS104)。この処理は図1の符号32で説明した階調値配置解析部32にて行われる。
図13のステップS104の解析結果を基に、注目画素の元画素データと周辺画素の階調値配置とに基づきLUTを参照して、当該注目画素の変換階調値を決定する(ステップS106)。参照すべきLUTのデータは図1の符号18で説明した変換階調値LUT格納部に格納されている。
図13のステップS106で決定した変換階調値に従い、注目画素の元画素データを高階調(例えば、256階調)の画素データに変換する(ステップS108)。この変換処理は図1の符号34で説明したデータ変換部にて行われる。こうして、高階調の画素データに変換された元データを「高階調元データ」と呼ぶ。低階調元データの全ての画素を注目画素として、全画素の画素データを高階調のデータに変換する。
図14は、4値による元画像データを256階調元データに変換した例を示す図である。ここでは説明を簡単にするために、左右の隣接ドット同士のドットの重なりのみを考慮して変換階調値を修正した例を示す。ここでは、大ドットと中ドットとのドットの重なりによる濃度の修正量を「8」、大ドットと小ドットとのドット重なりによる濃度の修正量を「6」、中ドットと小ドットとのドットの重なりによる濃度の修正量を「4」としたが、ドットの重なり量と修正量との関係は、この例に限定されない。また、左右方向の隣接ドット同士の重なり量を考慮するのみならず、上下方向の隣接ドットの重なりを考慮して、更に細かく階調値を修正することができる。
このような高階調元データは、低階調元データにおけるドットの有無を反映した不連続な濃度データであるため、より自然な(滑らかな)濃度変化となる濃度データに修正するために、高階調元データを単位領域毎に平均値化する処理を行う(図13のステップS110)。このような平均値化の処理は図1の符号20で示した平均値化処理部にて行われる。
図15及び図16は平均値化処理の説明図である。ここでは、特許文献1の開示内容の例に倣って、256階調元データについて、3×3画素の9画素の範囲を単位領域として平均値化の処理を行う例を説明する。図15に示した256階調元データが示す二次元の画素配列について横方向をx方向、縦方向をy方向とする。このx方向は、例えば、インクジェット記録装置における主走査方向に対応し、y方向は副走査方向(媒体の搬送方向)に対応する。シングルパス印字方式のインクジェット記録装置の場合には、x方向はラインヘッドの長手方向(実質的なノズル列方向)に相当する。また、記録ヘッドを往復走行させながら描画を行うシリアルスキャン方式(或いはシャトル方式)のインクジェット記録装置の場合には、x方向はヘッドの往復走行方向に相当するものとなる。
ここでは、図15に示した256階調元データにおいて太線で示した3×3画素の単位領域を平均値化する例を説明する。この単位領域における中央画素(着目画素)の階調値(192)を当該着目画素とその周囲(周辺)の8画素とに分配する演算が行われる。
着目画素に近い画素ほど、着目画素の階調値が多く分配されるように重み付け値が決定される。図16にその例を示した。着目画素(単位領域の中央画素)に対する重み付け値が「3」、着目画素の上下左右に隣接する画素に対する重み付け値が「2」、着目画素の斜め方向に位置する周辺画素に対する重み付け値が「1」の例となっている。
このような重み付け値の分布により、着目画素自身に最も多くの階調値38.4(=192×3/15)が分配される。着目画素のx方向又はy方向に並ぶ周辺画素(着目画素から第1の距離だけ離れた周辺画素)に対しては、階調値25.6(=192×2/15)が分配される。また、着目画素の斜め方向に位置する周辺画素(注目画素から第1の距離よりも距離の遠い第2の距離だけ離れた周辺画素)に対しては、階調値12.8(=192×1/15)が分配される。
このように、高階調化した元データにおける全ての画素を順次、着目画素として、単位領域毎に着目画素の階調値を平均値化する。このようにして、高階調(例えば、256階調)の元データを平均値化して得られたデータを「高階調平均値データ」(「第2階調数の平均値化画素データ」に相当)と呼ぶ。高階調平均値データにおいて、各画素データの示す階調値は、高階調元データにおける該当画素の画素データの階調値を周辺画素に分配した残りの階調値(着目画素自身に分配した値)と、周辺画素から分配された階調値の合計値となる。
次に、高階調平均値データの各画素の階調値に対して補正値テーブルから補正値を決定し(図13のステップS112)、この補正値を適用して高階調平均値データの画素データの濃度補正処理を行う(ステップS114)。これらの処理は図1の符号22で示した濃度補正処理部22にて行われる。
濃度補正処理部22は、出力装置を構成するインクジェットヘッドの各ノズルからある一定の階調値の入力信号によってインク吐出を行ったときに、規定の濃度で記録媒体上の全面(全描画範囲)において均一濃度となるように、各ノズルの出力濃度(インク吐出量)を補正する処理部である。インクジェットヘッドは、ノズルによって吐出特性にばらつきがあり、吐出液滴量が必ずしも均一では無い。このようなノズル毎の吐出性能のばらつきに起因する出力濃度ムラをノズル単位で補正するために濃度補正処理部22にて信号変換が行われる。すなわち、濃度補正処理部22は、出力装置のインクジェットヘッドにおける複数のインク吐出用ノズルのインク吐出量が、ヘッド内並びにヘッド間で所定の許容範囲内となり、画像面内で色ムラが無くなるように、各ノズルの吐出量を補正すべく画像信号を変換する。
濃度補正処理に適用される補正値は、インクジェットヘッドによるノズル位置に対応した画素列の単位で、色別に、濃度値毎に規定される。例えば、各ヘッドのノズル毎に入力信号値と出力信号値の変換関係を規定したLUTが存在し、これが全ノズル分集合したLUT群となっており、更に、色別のヘッドの全ヘッドについて、同様のLUT群が存在する。これらLUT群が補正値テーブルとして補正値テーブル格納部24(図1参照)に格納されている。また、補正値テーブルが離散的な濃度値について規定されている場合に、補正前の画素データの値がその離散的な値に合致しない場合には、補正値テーブルのデータに基づいて適宜の補間処理を行い、補正値が決定される。
こうして、図13のステップS114の濃度補正処理工程により補正後の高階調データ(以下、「高階調補正後データ」という。)が生成される。その後、この高階調補正後データに対し、ハーフトーン処理が行われる(ステップS116)。このハーフトーン処理は、図1の符号26で示したハーフトーン処理部にて行われる。ハーフトーン処理部26は、高階調の信号深度を持つ画像信号を画素単位で、インク吐出する/しないの2値、若しくは、インク径(滴サイズ)が複数選択できる場合はどの滴種を吐出するかの多値の信号に変換する。一般的には、M値(Mは3以上の整数)の多階調画像データをN値(Nは2以上M未満の整数)のデータに変換する処理を行う。例えば、256階調のデータを4階調のドットデータに変換する。ハーフトーン処理の手法は特に限定されない。ハーフトーン処理には、ディザ法、誤差拡散法、濃度パターン法など、各種の処理方法を適用することができる。
図13のステップS116のハーフトーン処理工程にて生成された低階調(例えば、4階調)のデータ(ドットデータ)は、印字方式に応じたコマンドデータ(搬送量など)と共に、印刷データとしてプリンタ(インクジェット記録装置)に送信される。プリンタは、受信した印刷データに基づいてインクジェットヘッドの各ノズルに対応する吐出エネルギー発生素子の駆動を制御して描画を行う。プリンタの構成としては、公知の構成(例えば、特許文献1に開示されたもの)を採用することができる。
また、本実施形態で説明した画像処理装置10による処理内容を実現するためのプログラムをCD−ROMや磁気ディスク、メモリカードその他の情報記憶媒体(外部記憶装置)に記録し、該情報記憶媒体を通じて当該プログラムを第三者に提供したり、インターネットなどの通信回線を通じて当該プログラムのダウンロードサービスを提供したり、ASP(Application Service Provider)サービスとして提供したりすることも可能である。
また、本実施形態で説明した画像処理装置10による処理内容を実現するためのプログラム一部又は全部をホストコンピュータなどの上位制御装置に組み込む態様や、プリンタ側の中央演算処理装置(CPU)の動作プログラムとして適用することも可能である。
なお、図13のフローチャートのステップS102が「元画像データ取得工程」に相当し、ステップS104が「解析工程」に相当する。ステップS106は「注目画素の変換階調値を決定する工程」に相当し、ステップS104からS108が「高階調化処理工程」に相当する。ステップS110が「平均値化処理工程」に相当し、ステップS112からS114が「濃度補正処理工程」に相当する。ステップS116が「ハーフトーン処理工程」に相当する。
<濃度補正(ムラ補正)に用いる補正値テーブルの生成方法の例>
ここで、濃度補正処理部22に適用される補正値テーブルの作成方法の一例を説明する。補正値テーブルを作成する算出タイミングは任意であり、特に、限定されない。例えば、印刷ジョブを実行する前に、テストチャートを出力して補正値の算出を行う態様、所定枚数のプリントを実施する毎に1回というタイミングでテストチャートを出力して補正値の算出を行う態様、用紙の種類、用紙サイズを切り換えるタイミングでその印刷前にテストチャートを出力して補正値の算出を行う態様、画像出力毎に記録媒体の余白部にテストチャートを出力して補正値の算出を行う態様、或いは、定期メンテナンスやユーザーからの指示があったときに上記の補正値の算出を行う態様、などがあり得る。補正値テーブルは適当なタイミングで更新される。
図17は、記録媒体上に記録されるテストチャート(テストパターンと呼ぶ場合もある)の一例を示す図である。ここではシングルパス印字方式のインクジェット記録装置の場合を例に説明する。図17に示した濃度分布測定用テストチャート90は、階調値の異なる複数種類(ここでは8種類)の帯状のパターン90A〜90Hを含んで構成される。各帯状のパターン90A〜90Hは、媒体搬送方向に直交する媒体幅方向に沿って長い矩形形状となっている。媒体幅方向は、ラインヘッドによる実質的なノズル列の方向であり、各帯状のパターン90A〜90Hは、ノズル列の長さに対応する範囲で概ね均一の濃度で形成される。「概ね均一の濃度」とは、パターンの記録に際して、階調の指令値(設定値)として一定であることを意味している。一定の階調値の指令に基づいて描画されるパターンの濃度分布を測定することで、当該階調値に対応する各ノズルの吐出特性のばらつきを把握することができる。
二次元ノズル配列を有するインクジェットヘッドの場合、当該二次元ノズル配列における各ノズルを媒体搬送方向(「副走査方向」に相当)と直交する方向(「主走査方向」に相当)に沿って並ぶように投影(正射影)した投影ノズル列は、主走査方向(媒体幅方向)について、記録解像度を達成するノズル密度でノズルが概ね等間隔で並ぶ一列のノズル列と等価なものと考えることができる。「概ね等間隔」とは、インクジェット印刷システムで記録可能な打滴点として実質的に等間隔であることを意味している。例えば、製造上の誤差や着弾干渉による媒体上での液滴の移動を考慮して僅かに間隔を異ならせたものなどが含まれている場合も「等間隔」の概念に含まれる。投影ノズル列(「実質的なノズル列」ともいう。)を考慮すると、主走査方向に沿って並ぶ投影ノズルの並び順に、ノズル位置(ノズル番号)を対応付けることができる。以下の説明で「ノズル位置」という場合、この実質的なノズル列におけるノズルの位置を指す。
本例では、媒体搬送方向の上流側から下流側に向かって(図17における下から上に向かって)順に、インク濃度が小さくなる配列順で濃度を異ならせたパターン90A〜90Hが形成されている例を示したが、パターンの配列順や帯状のパターンの数(濃度を変えるステップ数)は特に限定は無い。各帯状のパターンを記録する設定階調値は適宜設定することができ、帯状のパターンの数も適宜設計できる。このようなテストチャート90は、CMYKの各ヘッドにより、色毎に形成される。また、1枚の記録媒体(用紙)92上に全てのパターン90A〜90Hを記録する態様に限らず、これら帯状のパターンを複数枚の記録媒体に分けて記録してもよい。
こうして記録媒体92上に形成されたテストチャート90は、オフラインスキャナー、或いは、インクジェット印刷システムの用紙搬送経路中に設置された画像読取センサ(インラインセンサ)などの読取装置によって読み取られ、当該テストチャート90の読取データ(電子画像データ)が取得される。この読取データから、画像内の各位置における光学濃度(OD:Optical Density)値が求められ、各位置に対応するノズル毎の出力記録濃度(インク濃度)を示す出力濃度データが取得される。このようにして求められる出力濃度データと、入力階調値の値とに基づいて、ノズル毎の吐出特性(記録濃度特性)を示す特性曲線が取得される。
図18は、あるノズルの吐出特性曲線の例を示したグラフである。横軸は入力画像データ(入力階調値)、縦軸は出力濃度を示している。図18中の曲線Gtは、テストチャートの読取結果から取得されたノズルの特性曲線を示している。図18中の破線で示した曲線Gaは、設計上想定される適正なインク吐出が行われる場合に得られる特性曲線(適正特性曲線)を表している。図18に示すように、実際のノズルの特性曲線Gtは、製造ばらつき、その他の要因により、適正特性曲線から多少ずれた曲線を描くのが通常であり、図18中の上下双方向矢印で示されるように、ノズル間で出力濃度値のばらつきが見られる。各ノズルの特性曲線Gtは、適正特性曲線Gaと比較され、その比較結果に応じて、対象ノズルの吐出制御に対する補正値のテーブルが生成される。
こうして、全てのノズルについて補正値のテーブルが求められ、これら全ノズル分の補正値テーブル群が補正値テーブル格納部24(図1参照)に格納される。なお、ノズルの特性曲線Gtと適正特性曲線Gaとの比較によって、そのノズルが不吐出ノズルであるか否か、或いは補正不能なレベルの吐出異常ノズルであるか否かの判断も可能である。また、いわゆる1オンnオフ型のラインパターンを含んだテストパターンなどを形成して、その読取結果から不吐出ノズルや吐出量異常、着弾位置誤差などを把握することも可能である。
不吐出ノズル或いは補正不能な吐出異常ノズルについては、記録に使用することができない不良ノズルであるとして、画像記録時に吐出駆動させない扱いにする。
<ノズル毎の吐出制御に対する補正値の算出方法の概要>
図19は、ノズル毎の濃度補正値を求める処理の一例を示す説明図である。図19のS200に示されるように、読取装置の画素位置(濃度測定位置)とノズル位置との対応関係を示す解像度変換曲線のテーブルデータが予めメモリに記憶されており、テストチャートの読取結果から、この解像度変換曲線に従って、テストチャートの読取データ(スキャン画像)における各測定濃度位置(例えば、400dpiの読取解像度による画素位置)が、インクジェットヘッドにおける対応ノズルの位置(例えば、1200dpiの記録解像度を実現するノズル列内のノズル位置)に変換される。
こうして求められるノズル位置と、当該ノズル位置に対応するテストチャートにおける濃度測定値(出力濃度値)D1とが図19のS202に示されるように対応付けられ、予め定められ記憶されている目標濃度値D0と濃度測定値(出力濃度値)D1との差分が算出される。ここで用いられる目標濃度値D0は、対象ノズルから吐出させるインク濃度の目標値であり、必要に応じて適宜決定することが可能である。例えば、予め定められたノズル範囲から吐出されるインクの平均濃度を算出して目標濃度値D0として記憶しておいてもよい。
そして、図19のS204に示されるように、予め実験的に求められた画素値と濃度値との対応関係を示す画素値−濃度値曲線に従って、濃度測定値(出力濃度値)D1及び目標濃度値D0(S204の「濃度値」)に対応する出力画素値(S204の「画素値」)P0、P1が求められる。そして、この出力画素値の差分量(P0−P1)は、ノズル位置毎の濃度補正値として記憶される(S206)。
このようにして、ノズル毎に入力信号値(画素値)に対する補正値が定まり、ノズル毎に入力信号に対する出力信号の関係を規定した補正値テーブルが得られる。なお、上述した補正値テーブルの生成手順は例示に過ぎず、他の処理手順によって補正値テーブルを作成してもよい。例えば、補正値テーブルの生成方法、並びに、補正値を適用した濃度補正方法については、特許文献1の開示内容と同様の構成を採用することができる。すなわち、図9のステップS114の濃度補正処理工程については、ハーフトーン処理前の高階調画像データに対して、インクジェットヘッドのノズル特性に応じた濃度補正を行う公知の処理技術を適用することができる。
<インクジェット記録装置の説明>
次に、出力装置としてのプリンタの構成例について説明する。ここではシングルパス印字方式のインクジェット印刷機を例に説明するが、本発明の実施に際しては、他の装置形態(例えば、特許文献1に記載のプリンタの構成など)を採用してもよい。
図20は、本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の構成例を示す図である。このインクジェット記録装置100は、描画部116の描画ドラム170に保持された記録媒体124(「媒体」に相当、以下、便宜上「用紙」と呼ぶ場合がある。)にインクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yから複数色のインクを打滴して所望のカラー画像を形成する直描方式のインクジェット記録装置であり、インクの打滴前に記録媒体124上に処理液(ここでは凝集処理液)を付与し、処理液とインク液を反応させて記録媒体124上に画像形成を行う2液反応(凝集)方式が適用されたオンデマンドタイプの画像形成装置である。
図示のように、インクジェット記録装置100は、主として、給紙部112、処理液付与部114、描画部116、乾燥部118、定着部120、及び排紙部122を備えて構成される。
(給紙部)
給紙部112は、記録媒体124を処理液付与部114に供給する機構である。給紙部112には、枚葉紙である記録媒体124が積層されている。給紙部112の給紙トレイ150から記録媒体124が一枚ずつ処理液付与部114に給紙される。ここでは記録媒体124として、枚葉紙(カット紙)を用いるが、連続用紙(ロール紙)から必要なサイズに切断して給紙する構成も可能である。
(処理液付与部)
処理液付与部114は、記録媒体124の記録面に処理液を付与する機構である。処理液は、描画部116で付与されるインク中の色材(本例では顔料)を凝集させる色材凝集剤を含んでおり、この処理液とインクとが接触することによって、インクは色材と溶媒との分離が促進される。
処理液付与部114は、給紙胴152、処理液ドラム154、及び処理液塗布装置156を備えている。処理液ドラム154は、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)155を備え、この保持手段155の爪と処理液ドラム154の周面の間に記録媒体124を挟み込むことによって記録媒体124の先端を保持できるようになっている。処理液ドラム154は、その外周面に吸引孔を設けるとともに、吸引孔から吸引を行う吸引手段を接続してもよい。これにより記録媒体124を処理液ドラム154の周面に密着保持することができる。
処理液ドラム154の外側には、その周面に対向して処理液塗布装置156が設けられる。処理液塗布装置156は、処理液が貯留された処理液容器と、この処理液容器の処理液に一部が浸漬されたアニックスローラと、アニックスローラと処理液ドラム154上の記録媒体124に圧接されて計量後の処理液を記録媒体124に転移するゴムローラとで構成される。この処理液塗布装置156によれば、処理液を計量しながら記録媒体124に塗布することができる。本実施形態では、ローラによる塗布方式を適用した構成を例示したが、これに限定されず、例えば、スプレー方式、インクジェット方式などの各種方式を適用することも可能である。
処理液付与部114で処理液が付与された記録媒体124は、処理液ドラム154から中間搬送部126を介して描画部116の描画ドラム170へ受け渡される。
(描画部)
描画部116は、描画ドラム170、用紙抑えローラ174、及びインクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yを備えている。描画ドラム170は、処理液ドラム154と同様に、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)171を備える。
インクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yはそれぞれ、記録媒体124における画像形成領域の最大幅に対応する長さを有するフルライン型のインクジェット方式の記録ヘッド(インクジェットヘッド)であり、そのインク吐出面には、画像形成領域の全幅にわたってインク吐出用のノズルが複数配列されたノズル列が形成されている。各インクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yは、記録媒体124の搬送方向(描画ドラム170の回転方向)と直交する方向に延在するように設置される。
描画ドラム170上に密着保持された記録媒体124の記録面に向かって各インクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yから、対応する色インクの液滴が吐出されることにより、処理液付与部114で予め記録面に付与された処理液にインクが接触し、インク中に分散する色材(顔料)が凝集され、色材凝集体が形成される。これにより、記録媒体124上での色材流れなどが防止され、記録媒体124の記録面に画像が形成される。
すなわち、描画ドラム170によって記録媒体124を一定の速度で搬送し、この搬送方向について、記録媒体124と各インクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yを相対的に移動させる動作を1回行うだけで(即ち1回の副走査で)、記録媒体124の画像形成領域に画像を記録することができる。かかるフルライン型(ページワイド)ヘッドによるシングルパス方式の画像形成は、記録媒体の搬送方向(副走査方向)と直交する方向(主走査方向)に往復動作するシリアル(シャトル)型ヘッドによるマルチパス方式を適用する場合に比べて高速印字が可能であり、プリント生産性を向上させることができる。
なお、本例では、CMYKの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するインクジェットヘッドを追加する構成も可能であり、各色ヘッドの配置順序も特に限定は無い。
描画部116で画像が形成された記録媒体124は、描画ドラム170から中間搬送部128を介して乾燥部118の乾燥ドラム176へ受け渡される。
(乾燥部)
乾燥部118は、色材凝集作用により分離された溶媒に含まれる水分を乾燥させる機構であり、乾燥ドラム176、及び溶媒乾燥装置178を備えている。乾燥ドラム176は、処理液ドラム154と同様に、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)177を備え、この保持手段177によって記録媒体124の先端を保持できるようになっている。
溶媒乾燥装置178は、乾燥ドラム176の外周面に対向する位置に配置され、複数のハロゲンヒータ180と、各ハロゲンヒータ180の間にそれぞれ配置された温風噴出しノズル182とで構成される。各温風噴出しノズル182から記録媒体124に向けて吹き付けられる温風の温度と風量、各ハロゲンヒータ180の温度を適宜調節することにより、様々な乾燥条件を実現することができる。
乾燥部118で乾燥処理が行われた記録媒体124は、乾燥ドラム176から中間搬送部130を介して定着部120の定着ドラム184へ受け渡される。
(定着部)
定着部120は、定着ドラム184、ハロゲンヒータ186、定着ローラ188、及びインラインセンサ190で構成される。定着ドラム184は、処理液ドラム154と同様に、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)185を備え、この保持手段185によって記録媒体124の先端を保持できるようになっている。
定着ドラム184の回転により、記録媒体124は記録面が外側を向くようにして搬送され、この記録面に対して、ハロゲンヒータ186による予備加熱と、定着ローラ188による定着処理と、インラインセンサ190による検査が行われる。
定着ローラ188は、乾燥させたインクを加熱加圧することによってインク中の自己分散性ポリマー微粒子を溶着し、インクを被膜化させるためのローラ部材であり、記録媒体124を加熱加圧するように構成される。記録媒体124は、定着ローラ188と定着ドラム184との間に挟まれ、所定のニップ圧でニップされ、定着処理が行われる。また、定着ローラ188は、ハロゲンランプなどを組み込んだ加熱ローラによって構成され、所定の温度に制御される。
インラインセンサ190は、記録媒体124に形成された画像(濃度補正用のテストパターンや不吐出ノズル検出用のテストパターンなども含む)を読み取り、画像の濃度、画像の欠陥などを検出するための手段であり、CCDラインセンサなどが適用される。
なお、高沸点溶媒及びポリマー微粒子(熱可塑性樹脂粒子)を含んだインクに代えて、紫外線(UV)露光にて重合硬化可能なモノマー成分を含有したインクを用いてもよい。この場合、インクジェット記録装置100は、加熱定着の定着ローラ188に代えて、UVランプや紫外線LD(レーザダイオード)アレイなど、活性光線を照射する手段が設けられる。
(排紙部)
定着部120に続いて排紙部122が設けられている。排紙部122は、排出トレイ192を備えており、この排出トレイ192と定着部120の定着ドラム184との間に、これらに対接するように渡し胴194、搬送ベルト196、張架ローラ198が設けられている。記録媒体124は、渡し胴194により搬送ベルト196に送られ、排出トレイ192に排出される。搬送ベルト196による用紙搬送機構の詳細は図示しないが、印刷後の記録媒体124は無端状の搬送ベルト196間に渡されたバー(不図示)のグリッパーによって用紙先端部が保持され、搬送ベルト196の回転によって排出トレイ192の上方に運ばれてくる。
また、図20には示されていないが、本例のインクジェット記録装置100には、上記構成の他、各インクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yにインクを供給するインク貯蔵/装填部、処理液付与部114に対して処理液を供給する手段を備えるとともに、各インクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yのクリーニング(ノズル面のワイピング、パージ、ノズル吸引等)を行うヘッドメンテナンス部や、用紙搬送路上における記録媒体124の位置を検出する位置検出センサ、装置各部の温度を検出する温度センサなどを備えている。
<ヘッドの構造>
次に、ヘッドの構造について説明する。各ヘッド172M、172K、172C、172Yの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号250によってヘッドを示すものとする。
図21(a)はヘッド250の構造例を示す平面透視図であり、図21(b) はその一部の拡大図である。また、図22はヘッド250の他の構造例を示す平面透視図、図23は記録素子単位となる1チャンネル分の液滴吐出素子(1つのノズル251に対応したインク室ユニット)の立体的構成を示す断面図(図21中のA−A線に沿う断面図)である。
図21に示したように、本例のヘッド250は、インク吐出口であるノズル251と、各ノズル251に対応する圧力室252等からなる複数のインク室ユニット(液滴吐出素子)253をマトリクス状に二次元配置させた構造を有し、これにより、ヘッド長手方向(紙送り方向と直交する方向)に沿って並ぶように投影(正射影)される実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化を達成している。
記録媒体124の送り方向(矢印S方向;副走査方向)と略直交する方向(矢印M方向;主走査方向)に記録媒体124の描画領域の全幅Wmに対応する長さ以上のノズル列を構成する形態は本例に限定されない。例えば、図21(a) の構成に代えて、図22(a)に示すように、複数のノズル251が二次元に配列された短尺のヘッドモジュール250’を千鳥状に配列して繋ぎ合わせることで記録媒体124の全幅に対応する長さのノズル列を有するラインヘッドを構成する態様や、図22(b)に示すように、ヘッドモジュール250”を一列に並べて繋ぎ合わせる態様もある。
各ノズル251に対応して設けられている圧力室252は、その平面形状が概略正方形となっており(図21(a)、(b) 参照)、対角線上の両隅部の一方にノズル251への流出口が設けられ、他方に供給インクの流入口(供給口)254が設けられている。なお、圧力室252の形状は、本例に限定されず、平面形状が四角形(菱形、長方形など)、五角形、六角形その他の多角形、円形、楕円形など、多様な形態があり得る。
図23に示すように、ヘッド250は、ノズル251が形成されたノズルプレート251Aと、圧力室252や共通流路255等の流路が形成された流路板252P等を積層接合した構造から成る。ノズルプレート251Aは、ヘッド250のノズル面(インク吐出面)250Aを構成し、各圧力室252にそれぞれ連通する複数のノズル251が二次元的に形成されている。
流路板252Pは、圧力室252の側壁部を構成するとともに、共通流路255から圧力室252にインクを導く個別供給路の絞り部(最狭窄部)としての供給口254を形成する流路形成部材である。なお、説明の便宜上、図23では簡略的に図示しているが、流路板252Pは一枚又は複数の基板を積層した構造である。
ノズルプレート251A及び流路板252Pは、シリコンを材料として半導体製造プロセスによって所要の形状に加工することが可能である。
共通流路255はインク供給源たるインクタンク(不図示)と連通しており、インクタンクから供給されるインクは共通流路255を介して各圧力室252に供給される。
圧力室252の一部の面(図23において天面)を構成する振動板256には、個別電極257を備えた圧電アクチュエータ258が接合されている。本例の振動板256は、圧電アクチュエータ258の下部電極に相当する共通電極259として機能するニッケル(Ni)導電層付きのシリコン(Si)から成り、各圧力室252に対応して配置される圧電アクチュエータ258の共通電極を兼ねる。なお、樹脂などの非導電性材料によって振動板を形成する態様も可能であり、この場合は、振動板部材の表面に金属などの導電材料による共通電極層が形成される。また、ステンレス鋼(SUS)など、金属(導電性材料)によって共通電極を兼ねる振動板を構成してもよい。
個別電極257に駆動電圧を印加することによって圧電アクチュエータ258が変形して圧力室252の容積が変化し、これに伴う圧力変化によりノズル251からインクが吐出される。インク吐出後、圧電アクチュエータ258が元の状態に戻る際、共通流路255から供給口254を通って新しいインクが圧力室252に再充填される。
かかる構造を有するインク室ユニット253を図21(b)に示す如く、主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度θを有する斜めの列方向に沿って一定の配列パターンで格子状に多数配列させることにより、本例の高密度ノズルヘッドが実現されている。かかるマトリクス配列において、副走査方向の隣接ノズル間隔をLsとするとき、主走査方向については実質的に各ノズル251が一定のピッチP=Ls/tanθで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。
また、本発明の実施に際してヘッド250におけるノズル251の配列形態は図示の例に限定されず、様々なノズル配置構造を適用できる。例えば、図21で説明したマトリクス配列に代えて、一列の直線配列、V字状のノズル配列、V字状配列を繰り返し単位とするジグザク状(W字状など)のような折れ線状のノズル配列なども可能である。
なお、インクジェットヘッドにおける各ノズルから液滴を吐出させるための吐出用の圧力(吐出エネルギー)を発生させる手段は、圧電アクチュエータ(圧電素子)に限らず、サーマル方式(ヒータの加熱による膜沸騰の圧力を利用してインクを吐出させる方式)におけるヒータ(加熱素子)や他の方式による各種アクチュエータなど様々な圧力発生素子(エネルギー発生素子)を適用し得る。ヘッドの吐出方式に応じて、相応のエネルギー発生素子が流路構造体に設けられる。
<制御系の説明>
図24は、インクジェット記録装置100のシステム構成を示すブロック図である。図24に示すように、インクジェット記録装置100は、通信インターフェース270、システムコントローラ272、画像メモリ274、ROM275、モータドライバ276、ヒータドライバ278、プリント制御部280、画像バッファメモリ282、ヘッドドライバ284等を備えている。
通信インターフェース270は、ホストコンピュータ286から送られてくる画像データを受信するインターフェース部(画像入力手段)である。通信インターフェース270にはUSB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。
ホストコンピュータ286から送出された画像データは通信インターフェース270を介してインクジェット記録装置100に取り込まれ、一旦画像メモリ274に記憶される。画像メモリ274は、通信インターフェース270を介して入力された画像を格納する記憶手段であり、システムコントローラ272を通じてデータの読み書きが行われる。画像メモリ274は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
システムコントローラ272は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置100の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能する。すなわち、システムコントローラ272は、通信インターフェース270、画像メモリ274、モータドライバ276、ヒータドライバ278等の各部を制御し、ホストコンピュータ286との間の通信制御、画像メモリ274及びROM275の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ288やヒータ289を制御する制御信号を生成する。
また、システムコントローラ272は、インラインセンサ190から読み込んだテストチャートの読取データから、不吐出ノズルの位置や着弾位置誤差のデータ、濃度分布を示すデータ(濃度データ)等を生成する演算処理を行う着弾誤差測定演算部272Aと、測定された着弾位置誤差の情報や濃度情報から濃度補正係数を算出する濃度補正係数算出部272Bとを含んで構成される。なお、着弾誤差測定演算部272A及び濃度補正係数算出部272Bの処理機能はASICやソフトウエア又は適宜の組み合わせによって実現可能である。濃度補正係数算出部272Bにおいて求められた濃度補正係数のデータは、濃度補正係数記憶部290に記憶される。
ROM275には、システムコントローラ272のCPUが実行するプログラム及び制御に必要な各種データ(濃度補正用パラメータの計測用チャートや、不吐出ノズル位置を検出するためのテストチャートを打滴するためのデータ、不吐出ノズル情報などを含む)が格納されている。ROM275は、書換不能な記憶手段であってもよいし、EEPROMのような書換可能な記憶手段であってもよい。また、このROM275の記憶領域を活用することで、ROM275を濃度補正係数記憶部290として兼用する構成も可能である。
画像メモリ274は、画像データの一時記憶領域として利用されるとともに、プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域としても利用される。
モータドライバ276は、システムコントローラ272からの指示に従って搬送系のモータ288を駆動するドライバ(駆動回路)である。ヒータドライバ278は、システムコントローラ272からの指示に従って乾燥部118等のヒータ289を駆動するドライバである。
プリント制御部280は、システムコントローラ272の制御に従い、画像メモリ274内の画像データ(多値の入力画像のデータ) から打滴制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理手段として機能するとともに、生成したインク吐出データをヘッドドライバ284に供給してヘッド250の吐出駆動を制御する駆動制御手段として機能する。
すなわち、プリント制御部280は、濃度データ生成部280Aと、補正処理部280Bと、インク吐出データ生成部280Cと、駆動波形生成部280Dとを含んで構成される。これら各機能ブロック(280A〜280D)は、ASICやソフトウエア又は適宜の組み合わせによって実現可能である。
濃度データ生成部280Aは、入力画像のデータからインク色別の初期の濃度データを生成する信号処理手段であり、濃度変換処理(UCR処理や色変換を含む)及び必要な場合には画素数変換処理を行う。
補正処理部280Bは、濃度補正係数記憶部290に格納されている濃度補正係数を用いて濃度補正の演算を行う処理手段であり、ムラ補正処理を行う。
インク吐出データ生成部280Cは、補正処理部280Bで生成された補正後の画像データ(濃度データ)から2値又は多値のドットデータに変換するハーフトーニング処理手段を含む信号処理手段であり、2値(多値)化処理を行う。
インク吐出データ生成部280Cで生成されたインク吐出データはヘッドドライバ284に与えられ、ヘッド250のインク吐出動作が制御される。
駆動波形生成部280Dは、ヘッド250の各ノズル251に対応した圧電アクチュエータ258(図23参照)を駆動するための駆動信号波形を生成する手段であり、該駆動波形生成部280Dで生成された信号(駆動波形)は、ヘッドドライバ284に供給される。なお、駆動波形生成部280Dから出力される信号は、デジタル波形データであってもよいし、アナログ電圧信号であってもよい。
駆動波形生成部280Dは、記録用波形の駆動信号と、異常ノズル検知用波形の駆動信号とを選択的に生成する。各種波形データは予めROM275に格納され、必要に応じて使用する波形データが選択的に出力される。本例に示すインクジェット記録装置100は、ヘッド250の各圧電アクチュエータ258に対して、共通の駆動電力波形信号を印加し、各圧電アクチュエータ258の吐出タイミングに応じて各圧電アクチュエータ258の個別電極に接続されたスイッチ素子(不図示)のオンオフを切り換えることで、各圧電アクチュエータ258に対応するノズル251からインクを吐出させる駆動方式が採用されている。
プリント制御部280には画像バッファメモリ282が備えられており、プリント制御部280における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ282に一時的に格納される。なお、図24において画像バッファメモリ282はプリント制御部280に付随する態様で示されているが、画像メモリ274と兼用することも可能である。また、プリント制御部280とシステムコントローラ272とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
印刷すべき画像のデータは、通信インターフェース270を介して外部から入力され、画像メモリ274に蓄えられる。この段階では、例えば、RGBの多値の画像データが画像メモリ274に記憶される。
インクジェット記録装置100では、インク(色材)による微細なドットの打滴密度やドットサイズを変えることによって、人の目に疑似的な連続階調の画像を形成するため、入力されたデジタル画像の階調(画像の濃淡)をできるだけ忠実に再現するようなドットパターンに変換する必要がある。そのため、画像メモリ274に蓄えられた元画像のデータ(例えばRGBデータ)は、システムコントローラ272を介してプリント制御部280に送られ、該プリント制御部280の濃度データ生成部280A、補正処理部280B、インク吐出データ生成部280Cを経てインク色ごとのドットデータに変換される。
ドットデータは、一般に画像データに対して色変換処理、ハーフトーン処理を行って生成される。色変換処理は、sRGBなどで表現された画像データ(たとえば、RGB8ビットの画像データ)をインクジェット印刷機で使用するインクの各色の色データ(本例では、KCMYの色データ)に変換する処理である。
ハーフトーン処理は、色変換処理により生成された各色の色データに対して誤差拡散法や閾値マトリクス法等の処理で各色のドットデータ(本例では、KCMYのドットデータ)に変換する処理である。
すなわち、プリント制御部280は、入力されたRGB画像データをK,C,M,Yの4色のドットデータに変換する処理を行う。こうして、プリント制御部280で生成されたドットデータは、画像バッファメモリ282に蓄えられる。この色別ドットデータは、ヘッド250のノズルからインクを吐出するためのCMYK打滴データに変換され、印字されるインク吐出データが確定する。
ヘッドドライバ284は、アンプ回路を含み、プリント制御部280から与えられるインク吐出データ及び駆動波形の信号に基づき、印字内容に応じてヘッド250の各ノズル251に対応する圧電アクチュエータ258を駆動するための駆動信号を出力する。ヘッドドライバ284にはヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
こうして、ヘッドドライバ284から出力された駆動信号がヘッド250に加えられることによって、該当するノズル251からインクが吐出される。記録媒体124の搬送速度に同期してヘッド250からのインク吐出を制御することにより、記録媒体124上に画像が形成される。
上記のように、プリント制御部280における所要の信号処理を経て生成されたインク吐出データ及び駆動信号波形に基づき、ヘッドドライバ284を介して各ノズルからのインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
インラインセンサ(検出部)190は、図20で説明したように、イメージセンサを含むブロックであり、記録媒体124に印字された画像を読み取り、所要の信号処理などを行って印字状況(吐出の有無、打滴のばらつき、光学濃度など)を検出し、その検出結果をプリント制御部280及びシステムコントローラ272に提供する。
プリント制御部280は、必要に応じてインラインセンサ(検出部)190から得られる情報に基づいてヘッド250に対する各種補正を行うとともに、必要に応じて予備吐出や吸引、ワイピング等のクリーニング動作(ノズル回復動作)を実施する制御を行う。
図中のメンテナンス機構294は、インク受け、吸引キャップ、吸引ポンプ、ワイパーブレードなど、ヘッドメンテナンスに必要な部材を含んだものである。
また、ユーザインターフェースとしての操作部296は、オペレータ(ユーザ)が各種入力を行うための入力装置297と表示部(ディスプレイ)298を含んで構成される。入力装置297には、キーボード、マウス、タッチパネル、ボタンなど各種形態を採用し得る。オペレータは、入力装置297を操作することにより、印刷条件の入力、画質モードの選択、付属情報の入力・編集、情報の検索などを行うことができ、入力内容や検索結果など等の各種情報は表示部298の表示を通じて確認することができる。この表示部298はエラーメッセージなどの警告を表示する手段としても機能する。
なお、図24で説明した着弾誤差測定演算部272A、濃度補正係数算出部272B、濃度データ生成部280A、補正処理部280Bが担う処理機能の全て又は一部をホストコンピュータ286側に搭載する態様も可能である。図1で説明した画像処理装置10はホストコンピュータ286に組み込まれていてもよいし、インクジェット記録装置100に組み込まれていてもよい。
ホストコンピュータ286が画像処理装置10の機能を実現する場合には、画像処理装置10にて生成された低階調補正後データがインク吐出データとしてヘッドドライバ284に与えられる。その一方、インクジェット記録装置100内に画像処理装置10の機能を搭載する場合には、システムコントローラ272及びプリント制御部280の組み合わせによって当該画像処理を行う。
図20から図24で説明したインクジェット記録装置100、或いはこれとホストコンピュータ286との組み合わせが「画像形成装置」に相当する。描画ドラム170が「相対移動手段」に相当し、システムコントローラ272及びプリント制御部280の組み合わせが「吐出制御手段」に相当する。
<本実施形態による利点>
(1)本実施形態によれば、特許文献1の構成と比較して、入力された低階調元データをより精度のよい濃度データ(高階調元データ)に変換できる。このため、適切な濃度補正を行うことができ良好な画像再現(出力)が可能である。
(2)別の装置によってハーフトーン処理されたハーフトーン処理済みの低階調元データを用いて、他の出力装置で良好な画質による画像形成が可能である。通常、ハーフトーン処理の方法は出力装置によって異なり、出力装置の出力解像度や性能に合わせて適切なハーフトーン処理が行われる。しかし、ある装置Aでハーフトーン処理を行って生成したドットデータを用いて、別の装置Bで出力再現したいという場合がある。このような場合、本実施形態によれば、装置Aでハーフトーン処理されたドットデータから、装置Bの出力性能に合わせた濃度補正を施して装置Bに適したハーフトーン処理を行い、装置B用のドットデータに変換することができる。
(3)入力される低階調元データ12の階調数と、最終的に生成出力される低階調補正後データ28の階調数は、同じであってもよいし、異なる階調数であってもよいが、同じ階調数であることが望ましい。ただし、各ドットのサイズまで同じであることは要求されない。つまり、小ドット、中ドット、大ドットという区別において共通していても、低階調元データ12における小ドット、中ドット、大ドットの各ドットサイズ(ドット径)のセットと、低階調補正後データにおける小ドット、中ドット、大ドットの各ドットサイズ(ドット径)のセットは異なっていてもよい。
本実施形態においてドットの重なり量に応じた濃度の修正量を計算するには、低階調補正後データを印刷データとして使用する出力装置(インクジェット記録装置)で打滴できるドットサイズを考慮することが好ましい。画像処理装置10の濃度補正処理部22で適用する補正値テーブルは、低階調補正後データを印刷データとして使用する出力装置に合わせたものであるから、補正値テーブルによる補正処理との関係上、当該出力装置の打滴種類サイズを基にドットの重なり量を計算することが望ましい。
<ヘッドと用紙を相対移動させる手段について>
上述の実施形態では、停止したヘッドに対して記録媒体を搬送する構成を例示したが、本発明の実施に際しては、停止した記録媒体(被描画媒体)に対してヘッドを移動させる構成も可能である。
<記録媒体について>
「記録媒体」は、インクジェットヘッドから吐出された液滴によってドットが記録される媒体の総称であり、印字媒体、被記録媒体、被画像形成媒体、受像媒体、被吐出媒体など様々な用語で呼ばれるものが含まれる。本発明の実施に際して、記録媒体の材質や形状等は、特に限定されず、連続用紙、カット紙、シール用紙、OHPシート等の樹脂シート、フィルム、布、不織布、配線パターン等が形成されるプリント基板、ゴムシート、その他材質や形状を問わず、様々な媒体に適用できる。
<吐出方式について>
なお、インクジェットヘッドにおける各ノズルから液滴を吐出させるための吐出用の圧力(吐出エネルギー)を発生させる手段は、ピエゾアクチュエータ(圧電素子)に限らない。圧電素子の他、静電アクチュエータ、サーマル方式(ヒータの加熱による膜沸騰の圧力を利用してインクを吐出させる方式)におけるヒータ(加熱素子)や他の方式による各種アクチュエータなど様々な圧力発生素子(吐出エネルギー発生素子)を適用し得る。ヘッドの吐出方式に応じて、相応のエネルギー発生素子が流路構造体に設けられる。
<装置応用例>
上記の実施形態では、グラフィック印刷用のインクジェット記録装置への適用を例に説明したが、本発明の適用範囲はこの例に限定されない。例えば、電子回路の配線パターンを描画する配線描画装置、各種デバイスの製造装置、吐出用の機能性液体として樹脂液を用いるレジスト印刷装置、カラーフィルター製造装置、マテリアルデポジション用の材料を用いて微細構造物を形成する微細構造物形成装置など、液状機能性材料を用いて様々な形状やパターンを描画するインクジェット装置に広く適用できる。
「インク」という用語は、インクジェット方式の液体吐出ヘッドから吐出する液体(機能性液体)の総称として解釈することができ、グラフィック印刷に用いるカラーインク(色材を含有したインク)に限定されない。微粒子含有インクなど、機能性材料を含有した液体も「インク」という用語の解釈に含まれる。
なお、本発明は以上説明した実施形態に限定されるものでは無く、本発明の技術的思想内で当該分野の通常の知識を有するものにより、多くの変形が可能である。
<開示する発明の各種態様>
上記に詳述した実施形態についての記載から把握されるとおり、本明細書及び図面は以下に示す発明を含む多様な技術思想の開示を含んでいる。
(第1態様):各画素に第1階調数の階調値で表される元画素データが与えられた第1階調元画像データを取得する元画像データ取得工程と、前記取得した前記第1階調元画像データの元画素データを、前記第1階調数よりも高い階調数の第2階調数による画素データに変換する高階調化処理工程であって、前記第1階調元画像データにおける注目画素の元画素データと、当該注目画素に隣接する所定の隣接画素範囲における元画素データの階調値配置とに基づいて、前記注目画素の元画素データを前記第2階調数の画素データに変換する高階調化処理工程と、前記第2階調数の画素データに変換された第2階調画像データ上における画素列ごとに設定された補正値を適用して前記第2階調画像データの画素データを補正する濃度補正処理工程と、前記濃度補正処理工程によって補正された第2階調数の補正後画素データに対してハーフトーン処理を行い、第2階調数よりも低階調数の画素データに変換するハーフトーン処理工程と、を含む画素データの補正方法。
この態様によれば、入力された第1階調元画像データから適切な濃度データ(高階調の元データ)に変換することができる。このように適切に第2階調に変換できるため、その後の濃度補正(ムラ補正)において適切な補正を行うことができる。したがって、従来の方法と比較して、一層良好な濃度補正が可能となり、高画質の画像再現が可能である。
(第2態様):第1態様に記載の画素データの補正方法において、前記ハーフトーン処理工程は、前記第2階調数の補正後画素データを第1階調数の画素データに変換する構成が好ましい。
かかる態様によれば、入力された第1階調元画像データと同じ階調数の第1階調補正後データを得ることができる。
(第3態様):第1態様又は第2態様に記載の画素データの補正方法において、前記第1階調元画像データは、第1階調数のドットサイズ種によるドット配置を表すハーフトーン処理後のデータであるものとすることができる。
かかる態様によれば、他の装置等でハーフトーン処理されたハーフトーン済み第1階調元画像データに対して、出力装置に適したムラ補正(濃度補正)を行い、出力装置用の低階調データを得ることができる。
(第4態様):第1態様から第3態様のいずれか1項に記載の画素データの補正方法において、前記高階調化処理工程は、前記第1階調元画像データにおける元画素データの階調値配置を解析する解析工程と、前記解析工程の解析結果と前記注目画素の元画素データの条件から、当該注目画素の変換階調値を決定する工程と、を含むことができる。
例えば、元画素データが示す階調値と、階調値配置の条件との組み合わせに応じた変換階調値を予めルックアップテーブルとして用意しておき、このテーブルを参照して注目画素の変換階調値を決定することができる。
(第5態様):第1態様から第4態様のいずれか1項に記載の画素データの補正方法において、前記高階調化処理工程は、前記注目画素の元画素データを、前記階調値配置が示すドット配置における隣接ドット同士の重なり量に応じて、前記注目画素の元画素データに対応する第2階調数の階調値を修正した変換階調値を表す画素データに変換する構成が好ましい。
隣接するドット同士の重なり(隣の画素との重複部分)によるドット面積の減少効果を考慮して、その重複部分に相当する濃度減少に応じて階調値が修正された変換階調値を採用することが好ましい。
(第6態様):第1態様から第5態様のいずれか1項に記載の画素データの補正方法において、前記高階調化処理工程によって第2階調数の画素データに変換された第2階調元データにおける各画素の第2階調画素データの示す階調値を周辺の画素に分配し、画素間の階調値の差を低減する平均値化処理工程を含み、前記平均値化処理工程による処理で生成された第2階調平均値データに対して、前記濃度補正処理工程が行われる構成とすることが好ましい。
かかる態様によれば、より自然な濃度データに変換することができ、その後の濃度補正処理も適切に行うことができる。
(第7態様):各画素に第1階調数の階調値を示す元画素データが与えられた第1階調元画像データを取得する元画像データ取得手段と、前記取得した前記第1階調元画像データの元画素データを、前記第1階調数よりも高い階調数の第2階調数による画素データに変換する高階調化処理手段であって、前記第1階調元画像データにおける注目画素の元画素データと、当該注目画素に隣接する所定の隣接画素範囲における元画素データの階調値配置とに基づいて、前記注目画素の元画素データを前記第2階調数の画素データに変換する高階調化処理手段と、前記第2階調数の画素データに変換された第2階調画像データ上における画素列ごとに設定された補正値を適用して前記第2階調画像データの画素データを補正する濃度補正処理手段と、前記濃度補正処理手段によって補正された第2階調数の補正後画素データに対してハーフトーン処理を行い、第2階調数よりも低階調数の画素データに変換するハーフトーン処理手段と、を備える画像処理装置。
第7態様の画像処理装置において、第2態様や第3態様の構成を組み合わせることが可能である。
(第8態様):第7態様に記載の画像処理装置において、前記高階調化処理手段は、第1階調元画像データにおける元画素データの階調値配置を解析する解析手段と、前記解析手段の解析結果と注目画素の階調値の条件から、当該注目画素の変換階調値を決定するデータ変換手段と、を備える構成とすることができる。
(第9態様):第8態様に記載の画像処理装置において、注目画素の階調値と前記隣接画素範囲の階調値配置との組み合わせの条件に対応する変換階調値を規定したルックアップテーブル(LUT)が格納されているLUT格納手段を備え、前記データ変換手段は、前記LUTを参照して注目画素の変換階調値を決定する構成とすることができる。
第7態様から第9態様の画像処理装置は、コンピュータとソフトウエアとの組み合わせによって実現することが可能である。また、第7態様から第9態様の画像処理装置は、例えば、インクジェットプリンタの制御装置に組み込むことも可能である。
(第10態様):コンピュータを、各画素に第1階調数の階調値を示す元画素データが与えられた第1階調元画像データを取得する元画像データ取得手段と、前記取得した前記第1階調元画像データの元画素データを、前記第1階調数よりも高い階調数の第2階調数による画素データに変換する高階調化処理手段であって、前記第1階調元画像データにおける注目画素の元画素データと、当該注目画素に隣接する所定の隣接画素範囲における元画素データの階調値配置とに基づいて、前記注目画素の元画素データを前記第2階調数の画素データに変換する高階調化処理手段と、前記第2階調数の画素データに変換された第2階調画像データ上における画素列ごとに設定された補正値を適用して前記第2階調画像データの画素データを補正する濃度補正処理手段と、前記濃度補正処理手段によって補正された第2階調数の補正後画素データに対してハーフトーン処理を行い、第2階調数よりも低階調数の画素データに変換するハーフトーン処理手段、として機能させるためのプログラム。
第10態様のプログラム発明について、第2態様から第9態様と同様の特徴を組み合わせることができる。
(第11態様):第7態様から第9態様のいずれか1項に記載の画像処理装置と、液体を吐出する複数のノズルが並んだノズル列を有する液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドから吐出された液滴を付着させる媒体と前記液体吐出ヘッドとを相対的に移動させる相対移動手段と、前記画像処理装置の前記ハーフトーン処理手段により生成された前記低階調数の画素データに基づいて前記液体吐出ヘッドによる吐出動作を制御する吐出制御手段と、を備えた画像形成装置。