以下、添付図面に従って本発明の実施形態について詳細に説明する。
<インクジェット印刷システムの構成例>
図1は本発明の実施形態に係るインクジェット印刷システムの構成例を示すブロック図である。インクジェット印刷システム10は、コンピュータ本体(以下「PC」と表記する。)12、モニタ14、入力装置16、及びプリンタ18を含んで構成される。PC12は、画像データを管理する機能、画像データを処理する機能、画像処理パラメータを管理する機能を有する。すなわち、PC12は、画像データ管理手段、画像データ処理手段、画像処理パラメータ管理手段として機能する。また、PC12はプリンタ18を制御する機能を有し、プリンタ制御手段として機能する。
PC12にはモニタ14及び入力装置16が接続されており、モニタ14及び入力装置16はユーザーインターフェース(UI)として機能する。入力装置16は、キーボード、マウス、タッチパネル、トラックボールなど、各種の手段を採用することができ、これらの適宜の組み合わせであってもよい。本例では入力装置16として、キーボードとマウスが用いられる。オペレータは、モニタ14の画面に表示される内容を見ながら入力装置16を使って各種情報の入力を行うことができ、プリンタ18を操作することができる。また、モニタ14を通じてシステムの状態等を把握(確認)することが可能である。
PC12は、画像データ20を取り込むための画像入力インターフェース部22と、取り込んだ画像データを保存する画像データ格納手段としてのデータベース(以下、「画像データDB」という。)24と、カラーマッチング処理部26と、インク総量制限処理部27と、色管理(CMS;Color Management System)に用いるテーブルデータ(CMSテーブル)を格納しておくCMSデータ格納手段としてのデータベース(以下、「CMSテーブルDB」という。)28とを備える。
また、PC12は、画像データを処理する画像データ処理部30と、階調変換用のルックアップテーブル(以下、「階調変換LUT」という。)を格納しておくデータベース(以下、「階調変換LUTDB」という。)40と、ムラ補正用のルックアップテーブル(以下、「ムラ補正LUT」という。)を格納しておくデータベース(以下、「ムラ補正LUTDB」という。)42と、ハーフトーン処理のパラメータを格納してデータベース(以下、「ハーフトーンDB」という。)44と、インク量テーブル作成部46と、インク総量制限テーブル算出部47と、プリンタプロファイル作成部48と、システムの全体的な制御を司るシステム制御部50と、ユーザーインターフェース(UI)制御部52とを備える。
画像データ20の入力部として機能する画像入力インターフェース部22は、有線又は無線の通信インターフェース部を採用してもよいし、メモリカードなどの外部記憶媒体(リムーバブルディスク)の読み書きを行うメディアインターフェース部を採用してもよく、これらの組み合わせであってもよい。
画像入力インターフェース部22を介してPC12に入力された画像データ20は、画像データDB24に登録される。モニタ14には、画像データDB24に登録されている画像データの一覧を表示させることができる。オペレータはモニタ14の表示を見ながら入力装置16を操作することにより、対象となる画像データをプリントするか否かを指定することができる。また、オペレータは、画像データDB24に登録されている各画像データに対して、モニタ14と入力装置16を通じてプリント条件(例えば、用紙の種類、サイズ、枚数、カラー/白黒、色補正、濃淡補正など)を指定することできる。
プリント条件には、上記例示した項目の他に、階調変換LUTDB40、ムラ補正LUTDB42、ハーフトーンDB44の各パラメータの適切なデータが含まれる。印刷対象となる各画像データに対し、用紙種やサイズなど指定された条件に合わせて各データベース(40〜44)から適切なデータが選択され、これら情報を含むプリント条件のデータが各画像データに割り付けられる。
画像データ20は、プリント実行の指示がなされると、画像データDB24からプリンタ18へ転送されるが、このプリンタ18への転送の際にカラーマッチング処理部26とインク総量制限処理部27での画像処理を経由する。
カラーマッチング処理部26は、画像データに定義された色でプリントされるように画像データのデバイス値を変換する処理を行う。ここでは、画像データのCMYK値に対する色度値(デバイス非依存色空間で定義された色の値であり、本例ではCIE-L*a*b*値を用いる)の関係を記述したテーブル(「第1のテーブル」に相当、図16符号95参照)と、プリンタ18のデバイス値(CMYK)と色度値の関係を記述したテーブル(「第2のテーブル」に相当、図16符号96参照)の2つがあり、2つのテーブルの色度値が一致するようにCMYK→CMYKの変換関係を決める。
インク総量制限処理部27は、CMYK信号の総量に対応するインク量が、プリンタ18で規定されたインク量(「規定値」に相当)を超えないように色変換するGCR処理からCMYKの変換関係を求める。GCR処理は、CMYで再現するグレー色をKインクで再現し(置き換え)、全体としてインク量を減らす処理である。このGCR処理は、入力CMYK値に対する出力CMYK値の対応関係(入出力関係)を記述したテーブルとして保持しておき、このテーブルを使って変換処理を行う。
カラーマッチング処理部26及びインク総量制限処理部27で使用する各テーブルは、CMSテーブルDB28に格納しておき、用紙種や色再現条件、インク総量上限などの条件に応じて適切なテーブルを選択し、使用する。
画像データ処理部30は、画像データを解析してインク使用量の評価演算を担う処理部であり、画像縮小処理部32、画像変換部34、インク量データ算出部36及び画像解析部38を含む。この画像データ処理部30における処理内容の詳細は後述する。
インク量テーブル作成部46は、インク総量制限テーブル算出部47の計算に使用するインク量テーブルを作成する。インク量テーブルは、C、M、Y、Kの各色の単色信号に対して1画素あたりに単位面積平均でどのくらいのインク量が使用されるかの対応関係を示した表形式で作られる(図13の符号90参照)。
インク総量制限テーブル算出部47は、画像解析部38でインク量が規定値を超えていると判断した場合、インク量が規定値内に収まるようにGCR処理のグレイ置換量を調整してインク総量制限テーブルを再作成する。この作成したインク総量制限テーブル(図16の符号97参照)は、CMSテーブルDB28に登録される。
図1におけるプリンタプロファイル作成部48は、インク総量制限テーブルが更新されたことにより、デバイス値とプリント上の色度値の関係が変化した分を反映したプリンタプロファイルを作成する処理部である。プリンタプロファイル作成部48にて作成されたプリンタプロファイルのテーブルは、CMSテーブルDB28に登録される。
また、PC12は、プリンタ18によって出力されたテストパターンの読取結果からノズル単位のムラ補正ルックアップテーブル(LUT)を作成する信号処理を行うLUT生成部54を備えるとともに、画像縮小処理部32で生成された縮小画像に対するムラ補正処理に相当する信号補正に適用されるルックアップテーブル(以下「ムラ補正サムネイルLUT」という。)をムラ補正LUTから生成するムラ補正サムネイルLUT生成部56を備える。なお、図1に示したPC12内の各部(符号22〜56の各要素)は、PC12のハードウエア又はソフトウェア、若しくはこれらの組み合わせによって構成される。
LUT生成部54は、システム制御部50からの制御信号やUI制御部52から与えられる指令信号(操作信号)に従い、階調変換LUT、ムラ補正LUT、ハーフトーンテーブルなどのデータを生成する。
ムラ補正サムネイルLUT生成部56は、ムラ補正LUTDB42に格納されているムラ補正LUTのデータから、インク使用量の評価演算に適用するムラ補正サムネイルLUTを生成する演算部である。生成されたムラ補正サムネイルLUTは、画像データ処理部30内の画像変換部34が参照するメモリ(不図示)にセットされる。
PC12内のシステム制御部50は、カラーマッチング処理部26、インク総量制限処理部27、インク量テーブル作成部46、インク総量制限テーブル算出部47、プリンタプロファイル作成部48、LUT生成部54、ムラ補正サムネイルLUT生成部56並びに画像データ処理部30など各処理部における演算の制御を行うとともに、UI制御部52と連携してモニタ14の表示制御や入力装置16からの入力指令に対応した制御を行う。また、システム制御部50はプリンタ18のイメージプロセスボード60に信号を与え、プリンタ18の動作を制御する。
画像データDB24に登録された画像データの一覧からプリントしたい画像データを選択し、プリント実行を指示すると、当該選択に係る画像データがPC12内の画像データDB24からカラーマッチング処理部26及びインク総量制限処理部27を経由してプリンタ18に転送される。また、プリンタ18内のイメージプロセスボード60に対してプリント条件に対応したパラメータがセットされる。
プリンタ18は、PC12から受信した画像データをマーキング信号に変換する信号処理を行うイメージプロセスボード60と、マーキング信号に従って印刷を実行するマーキング部68とを備える。イメージプロセスボード60は、階調変換処理部62、ムラ補正処理部64、ハーフトーン処理部66を含み、入力される画像データに対して階調変換処理、ムラ補正処理、ハーフトーン処理を施し、マーキング信号を生成する。イメージプロセスボード60に入力された画像データは、各処理部(62,64,66)による処理を経てマーキング部68により描画される。
階調変換処理部62は、マーキング部68で画像形成するときに、全体的にどのくらいの色の濃さで描画するかという、濃度階調の特性を決める処理を行う。階調変換処理部62は、プリンタ18で規定された発色特性になるように画像データを変換する。例えば、階調変換処理部62は、階調変換LUTに従い、CMYK信号をC’M’Y’K’信号に変換したり、C信号、M信号、Y信号、K信号の各信号を色別に、C’信号、M’信号、Y’信号、K’信号に変換したりする。
階調変換処理部62による信号変換は、PC12内の階調変換LUTDB40に格納されている階調変換LUTを参照して変換関係を定める。階調変換LUTDB40には、プリントする用紙(記録媒体)の種類毎に最適化された複数のLUTが格納されており、使用する用紙に合わせて適切なLUTが参照される。このような階調変換LUTは、インクの色毎に用意されている。本例の場合、CMYKの各色について、それぞれ階調変換LUTが設けられる。
プリントの実行指示が入力されると、その印刷条件に合致した階調変換LUTが自動的に選択され、プリンタ18の階調変換処理部62にセットされる。また、入力装置16からLUTの選択、変更、修正等の指示を入力することにより、所望のLUTに設定することができる。
ムラ補正処理部64は、マーキング部68を構成するインクジェットヘッドの各ノズルからある一定の階調値の入力信号によってインク吐出を行ったときに、階調変換処理部62で規定された濃度が記録媒体上の全面で均一濃度になるように、各ノズルの出力濃度(インク吐出量)を補正する処理部である。インクジェットヘッドは、ノズルによって吐出特性にばらつきがあり、吐出液滴量が必ずしも均一ではない。このようなノズル毎の吐出性能のばらつきに起因する出力濃度ムラをノズル単位で補正するためにムラ補正処理部64にて信号変換が行われる。すなわち、ムラ補正処理部64は、マーキング部68を構成するインクジェットヘッドにおける複数のインク吐出用ノズルのインク吐出量が、ヘッド内並びにヘッド間で所定の許容範囲内となり、画像面内で色ムラがなくなるように、各ノズルの吐出量を補正すべく画像信号を変換する。
例えば、CMYK信号をC”M”Y”K”信号に変換したり、C’信号、M’信号、Y’信号、K’信号の各信号を色別に、C”信号、M”信号、Y”信号、K”信号に変換したりする。この変換処理は、PC12内のムラ補正LUTDB42に格納されているムラ補正LUT」を参照して変換関係を定める。ムラ補正LUTDB42には、プリントする用紙の種類毎(紙種毎)に最適化された複数種類のムラ補正LUTが格納されており、使用する用紙に合わせて適切なLUTが参照される。
ハーフトーン処理部66は、多階調(例えば、1色当たり8ビット256階調)の画像信号を画素単位で、インク吐出する/しないの2値、若しくは、インク径(滴サイズ)が複数選択できる場合はどの滴種を吐出するかの多値の信号に変換する。一般的には、M値(Mは3以上の整数)の多階調画像データをN値(Nは2以上M未満の整数)のデータに変換する処理を行う。ハーフトーン処理には、ディザ法、誤差拡散法、濃度パターン法など、を適用できる。
本例のマーキング部68は、大滴、中滴、小滴の3種類の滴サイズを打ち分けることができるものとする。この場合、ハーフトーン処理部66は、ムラ補正処理後の多階調(例えば256階調)のデータから、「大滴インクを吐出する」、「中滴インクを吐出する」、「小滴インクを吐出する」、「吐出しない」の4値の信号に変換する。ハーフトーン処理部66における信号変換は、PC12内のハーフトーンDB44に格納されたテーブル(ハーフトーンテーブル)を参照して変換関係を決める。
ハーフトーンテーブルは、大中小の各サイズのドットが単位面積あたりにどのような割合(比率)で描画するための2次元でのドット描画条件を決めるテーブルであり、N×Nの2次元閾値マトリクスからなるパラメータと大中小のインク滴量のどれを使うかを決定する閾値パラメータで構成される。ハーフトーンDB44には、複数種類のハーフトーンテーブルが格納されており、プリント時にいずれかのテーブルが選択される。
ハーフトーン処理部66で生成された多値の信号(本例の場合4値のマーキング信号)は、マーキング部68に送られ、対応するノズルの吐出エネルギー発生素子(例えば、圧電素子や発熱素子)の駆動制御に用いられる。すなわち、この4値の信号に従ってマーキング部68における各ノズルのインク吐出の制御が行われる。大滴インクによって記録媒体上に大ドットが記録され、中滴インクによって記録媒体上に中ドットが記録され、小滴インクによって記録媒体上に小ドットが記録される。こうして、記録媒体上に形成するインクドットの配置による面積階調によって多階調を再現する。
マーキング部68は、液体吐出ヘッドとしてのインクジェットヘッドを含んで構成される。本実施形態では、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、黒(K)の4色のインクを用いるものとし、各色のインクを吐出する手段として、色別にインクジェットヘッドを備える場合を説明する。ただし、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態に限定されない。
本例のインクジェット印刷システム10は、シングルパス方式で画像を記録するシステムである。すなわち、各色のインクジェットヘッドに対して記録媒体を相対的に移動させる動作を1回行うだけで(1回の副走査で)、記録媒体の画像形成領域に所定記録解像度(例えば、1200dpi)の画像を記録することができる。各ヘッドのインク吐出面(ノズル面)には、用紙の画像形成領域の最大幅に対応する長さにわたってインク吐出用のノズルが複数配列されている。インク吐出面に多数のノズルを二次元的に配列させる構成によって、高記録解像度を実現できる。
二次元ノズル配列を有するインクジェットヘッドの場合、当該二次元ノズル配列における各ノズルを媒体搬送方向(「副走査方向」に相当)と直交する方向(「主走査方向」に相当)に沿って並ぶように投影(正射影)した投影ノズル列は、主走査方向(媒体幅方向)について、記録解像度を達成するノズル密度でノズルが概ね等間隔で並ぶ一列のノズル列と等価なものと考えることができる。「概ね等間隔」とは、インクジェット印刷システムで記録可能な打滴点として実質的に等間隔であることを意味している。例えば、製造上の誤差や着弾干渉による媒体上での液滴の移動を考慮して僅かに間隔を異ならせたものなどが含まれている場合も「等間隔」の概念に含まれる。投影ノズル列(「実質的なノズル列」ともいう。)を考慮すると、主走査方向に沿って並ぶ投影ノズルの並び順に、ノズル位置(ノズル番号)を対応付けることができる。以下の説明で「ノズル位置」という場合、この実質的なノズル列におけるノズルの位置を指す。
<イメージプロセスボード60における画像処理の説明>
ここで、プリンタ18内のイメージプロセスボード60における信号処理の具体例について、図2〜図5を用いて説明する。
図2は、イメージプロセスボード60の処理プロセスを示した説明図である。階調変換処理部62には、CMYKに色分離された多階調データが入力される。ここでは、マーキング部68における各インク色ごとの多階調画像データ(例えば、CMYKの4色に対応した色別の256階調画像データ)が与えられるものとする。なお、RGBフルカラー24ビット(各色8ビット)の画像データが入力される場合や、入力画像の解像度とインクジェット描画装置の出力解像度に差がある場合などには、公知の色変換処理、解像度変換処理が行われる。
階調変換処理部62には、CMYKの色別にテーブル(階調変換LUT)が適用され、入力信号をある目標の濃度階調となるように変換する。階調変換処理部62に入力されたCMYK信号は、色別の階調変換LUTによってC’M’Y’K’信号に変換される。
図3は、階調変換処理部62で用いられる階調変換LUTの概念図である。図3に示すように、階調変換LUTは、CMYKの各色信号別に設けられており、入力信号値を出力信号値に変換する入出力関係を定めたLUTである。階調変換LUTに従って変換された信号は、ムラ補正処理部64に入力される(図2参照)。
図4はムラ補正処理部64(図1、図2)における補正処理の概念図である。図4では、Cインク用のインクジェットヘッドについてノズル数を減らして描いているが、実際には各色ヘッドに備える全ノズルについて、各ノズルに対応してそれぞれ吐出補正LUTが存在している。図4中のi,i+1,・・・,i+4は、ノズル番号を表している。なお、ノズル番号iは、記録解像度によるドット列の形成が可能な実質的なノズル列の端からi=1,2,3・・・という具合に連続する整数の番号で各ノズルに付与することができ、ノズル番号によってノズルの位置を特定することができる。ノズル番号は、記録解像度で記録媒体上の打滴点(記録位置)を記録できるように複数のノズルが配列されたノズル配置における実質的なノズル列のノズル並び順を表す。
図示のように、ノズル毎に入力信号値と出力信号値の変換関係を規定したLUTが存在し、これが全ノズル分集合したLUT群となっており、さらに、色別のヘッドの全ヘッドについて、同様のLUT群が存在する。
ムラ補正処理部64(図1、図10参照)は、入力されるC’M’Y’K’データに対して、ムラ補正LUTを用いて、C”M”Y”K”データに変換する。つまり、ムラ補正処理部64は、インクジェットヘッドの各ノズルの位置(プリント上の記録位置に対応)に依存する記録特性に応じて画像データを補正する補正処理手段となっている。なお、図1、図2は、説明の便宜上、階調変換処理とムラ補正処理とを段階的に行う例を示しているが、階調変換LUTとムラ補正LUTを合成して1つのLUTにまとめ、これらの変換処理を一括で行う演算方法を採用することができる。階調変換処理及びノズル吐出補正処理を経て生成された変換後の信号は、ハーフトーン処理部66に入力される。
図5は、ハーフトーン処理部66(図1参照)のハーフトーン処理によって実現される各ドットの比率を表すハーフトーンドット比率の一例を示すものである。図5の横軸は入力信号を表し、縦軸は単位面積あたりにおける大中小のインクドットの記録割合(ドット比率)を示した量である。例えば、図5の縦軸は、最大で100画素のインク打滴できる領域(「単位面積」に相当)に、大中小のドットインクがそれぞれ何個ずつ打たれるかの割合を示した量である。入力信号値に対して、各種ドットをどのような比率で使用するかを定めたハーフトーンテーブルは複数種類用意され、プリント時にいずれかのテーブルが選択される。ハーフトーン処理部66では、選択されたハーフトーンテーブルに応じたハーフトーン処理が実施され、CMYK各色別の連続階調画像から各色別のドット画像に変換される。
<PC12内における画像データ処理部30の説明>
PC12内の画像データ処理部30は、画像データを印刷する前に、予め当該画像データの印刷に使用されるインク量を計算し、許容量の上限を示す規定値を超えているかどうかを評価判断する処理部である。規定値は、用紙の種類や印刷モードなどに応じて適宜設定される。一例として、用紙搬送上問題となるレベルのコックリングの発生が予測されるインク量の閾値が規定値として定められている。
画像データ処理部30により画像データ20の絵柄からインク量を評価(予測)した結果、所定の閾値(規定値)を超えている場合は、使用インク量が規定値内に収まるように、GCR処理を行うものとし、そのGCR処理を反映させてインク総量制限テーブルを作成し直す。
印刷の対象として画像データDB24に登録された画像データ20は、描画インク使用量を計算するために、まず、画像縮小処理部32で縮小画像データに変換される。画像データDB24に登録される画像データ(入力された元の画像データ)の形式や画素数、解像度などの条件は特に限定はない。
例えば、入力された元の画像データは、原稿画像サイズ「B2」(JIS 規格の用紙寸法:728×515mm)の大きさのページ記述言語データとすることができる。また、入力画像データは、例えば、RGBの各色8ビット(24ビットカラー)の画像データでもよいし、インク色(例えば、CMYKの4色)に色変換された各色8ビットのデータでもよい。画像データDB24への登録画像の形式を整えるために、PC12内で画素数変換処理、色変換処理などの前処理を施してもよい。この場合、PC12内に画素数変換処理部、色変換処理部などを備える。
画像データDB24に登録される入力画像データは比較的大きなデータ量であるため、描画インク使用量の評価演算に際して、当該入力画像データを直接処理すると演算負荷が過大となる。したがって、本実施形態では演算の効率化の観点から、画像データを計算しやすいデータサイズに縮小する。すなわち、入力画像データから画像縮小処理部32にて所定の解像度の縮小画像(「サムネイル」と表記する場合がある。)を生成する。縮小画像の解像度について特に限定はないが、後述する画像解析部38のフィルタ処理に用いるフィルタのサイズとの関係で適当な解像度(画素数)に変換される。一例として、縮小画像における1画素の1辺が印刷用紙上の1mm程度の大きさに相当する解像度(数十dpi、例えば、25dpi程度)の画像に変換される。
コックリングによる用紙変形(波打ち)の程度を判定する際に用いるフィルタ(空間フィルタ)のサイズは、例えば、1辺が1センチ程度の領域の画素範囲を演算対象とするものが用いられる。このような場合、縮小画像データの1画素当たりの面積は、概ねフィルタサイズの10分の1程度の大きさとすることが好ましい。
画像縮小処理部32により生成された縮小画像データは画像変換部34に送られ、この画像変換部34において階調変換処理とムラ補正処理に相当する画像変換処理が行われる。画像変換部34で行われる画像変換処理は、プリンタ18内のイメージプロセスボード60で実施される階調変換処理とムラ補正処理との組み合わせに対応した代替的な処理である。画像変換部34に適用される階調変換LUTは、プリンタ18内のイメージプロセスボード60における階調変換処理部62に適用されるLUTと同等のものであり、階調変換LUTDBから提供される。また、画像変換部34において階調変換LUTを使った変換に続き、ムラ補正サムネイルLUTを使ってムラ補正処理が行われる。
イメージプロセスボード60のムラ補正処理部64に適用されるムラ補正LUTはノズル毎にLUTが割り当てられており、データ量が大きいものであるため、縮小画像データに対する演算に必要なデータに加工/編集したムラ補正サムネイルLUTを作り、このムラ補正サムネイルLUTを画像変換部34に適用する。
なお、ここでは、画像変換部34にて階調変換LUTを用いた階調変換処理を行った後に、ムラ補正サムネイルLUTを用いたムラ補正処理を行うという段階的な処理を説明したが、このような2段階の処理に限定されない。画像変換部34の演算に際して階調変換LUTとムラ補正サムネイルLUTとを統合した1つのLUTを用い、1回の変換演算によって階調変換とムラ補正を含んだ変換結果を得ることも可能である。このような一括変換の処理についても、階調変換LUTとムラ補正サムネイルLUTを適用した画像変換の処理に該当する。
画像変換部34で変換された縮小画像データは、インク量データ算出部36にてインク量分布データに変換される。インク量データ算出部36は縮小画像データの各画素の信号値をハーフトーンのドット配置で再現する際のドットサイズ別の比率と、各ドットサイズに対応したインク滴量の情報から1画素あたりのインク量を計算する。
ハーフトーンDB44には画素の信号値に応じたドットサイズ別比率の情報(ハーフトーンドット比率テーブル)と、ドットサイズ(滴サイズ)ごとのインク滴量の情報が格納されている。インク量データ算出部36はハーフトーンDB44からこれらの情報を取得し、縮小画像データの1画素に相当する範囲毎のインク量を求め、そのインク量を画素の座標に割り付けて、分布データを得る。また、インク量データ算出部36は、CMYKのインク色別に求めたインク量の分布データを全色分加算し、縮小画像の全体(1面)のインク量分布データを生成する。なお、ハーフトーンドット比率テーブルはハーフトーンテーブルの種類毎に設けられており、プリント時に使用されるハーフトーンテーブルに対応したハーフトーンドット比率テーブルが適用される。
インク量データ算出部36で生成された縮小画像のインク量分布データは画像解析部38に送られ、画像解析部38にてフィルタ処理された後、印刷画像上で規定値以上のインク量となる場所が存在するか否かの判定が行われる。規定値以上のインク量分布がある場合は、インク総量制限テーブルの更新処理に移行する。なお、インク総量制限テーブルの更新処理に移行する際には、その旨をオペレータに明示的に伝える情報をモニタ14に表示させてもよい。
その一方、画像解析部38における判定の結果、規定値を超えるインク量分布がなければ、当該画像データをプリントしても特段問題はないため、GCR処理によるインク量の調整を実施せずに、印刷処理に進む。なお、規定値を超えるインク量の分布がない場合にプリントOKである旨を明示的にオペレータに伝える情報をモニタ14に表示させてもよい。
図6は、PC12における信号処理の流れを示すフローチャートである。まず、PC12に画像データを入力する(ステップS11)。入力された画像データが画像データDBに登録された後、又は、画像データDBに登録する処理と並行して、当該画像データから縮小画像データを生成する(ステップS12)。図1で説明した画像縮小処理部32にて縮小画像データが生成される。
縮小画像データの1画素あたりの解像度は、画像解析部38のフィルタ処理で必要なサイズから決められたサイズに対応した解像度を定義し、その解像度になるように縮小処理をする。縮小画像データを生成するための縮小処理方法は、間引き処理やなど、いくつかの方法があるが、使用インク量の評価演算並びに判定の精度を高める方法として、入力画像データ上で縮小画像の1画素あたりの面積に相当する範囲を平均化し、そのデータを縮小画像の1画素として割り当てる方法が望ましい。
図7は画像縮小処理の一例を示す説明図である。図7の左側が画像縮小処理前の元の入力画像データを示しており、図7の右側が画像縮小処理後の縮小画像データを示している。図7では図示の便宜上、画素の数を減じて描いている。図7の左側に示した入力画像データにおいて、点線で示した格子の1セル(符号71)が入力画像データの1画素を表している。また、図7の右側に示した縮小画像データにおいて点線で示した格子の1セル(符号72)が縮小画像データの1画素を表している。
図7では、入力画像データにおける一定の画素領域(符号73の太線で囲んだ4×4=16画素の範囲を例示)が縮小画像データの1画素(図7において符号74の太線で囲んだ範囲)に対応している。図7に示した縮小画像データの1画素は、印刷用紙上で1辺がaミリメートル(mm)の正方形領域(amm×ammの矩形範囲)に相当しており(ただし、aは任意の正数で表される定数)、当該1画素の範囲内に属する元の入力画像データの画素領域について入力画像データの信号値を平均化処理し、その平均値を縮小画像の1画素の値(画素値)とする。つまり、図7の符号73の太線で囲んだ16画素の平均値が縮小画像データにおける符号74の太線で囲んだ1画素の信号値として割り当てられる。入力画像データの全体について、同様の平均化処理が行われ、縮小画像データが生成される。こうすると、元の入力画像における一定範囲の平均的な値が縮小画像の1画素に入るので、インク量の情報としては保存される。したがって、インク量の評価計算において精度の高い計算結果が得られる。なお、図7では、図示の都合上、縮小率を1/16として例示しているが、実際の縮小率はさらに小さく、例えば、元画像1200dpiから25dpi程度に大幅にデータ量が削減される。
また、精度を出す別の方法として、入力画像データ上で縮小画像の1画素あたりの面積に相当する範囲の画素値を加算し、そのデータ加算値から縮小画像の信号値に変換するテーブルを通して1画素に割り当てる方法も望ましい。この場合、データ加算値sに対して縮小画像の信号値jを割り当てるための対応関係を規定したテーブルを予め用意しておき、このテーブルに従って、データ加算値sから縮小画像の信号値jに変換して画素に割り当てる。このような方法を採用しても、縮小処理前の入力画像データの信号値の情報が平均的に保存されるため、精度の高いインク量計算が可能である。
また、別の方法として、元の入力画像データの所定画素領域内の信号値から代表値を定め、この代表値を縮小画像データの1画素の信号値に当てはめるという方法もある。代表値の決定に際しては、平均値の他、中央値(メジアン)や最頻値などを用いることができる。また、ヒストグラムから適当な代表値を決定してもよいし、最大値や最小値などを除外した範囲から代表値を決定してもよく、或いはまた、信号値分布の上位数%のところの平均値を代表値とするなど、統計演算上の工夫を適宜組み合わせてもよい。
画像縮小処理部32にて生成する縮小画像データは、その後の処理工程で(インク量データ算出部36にて)インク量分布データへ変換したときに必要なインク量分解能を保つために、縮小画像データの信号の深度(量子化する数値の範囲)は16ビット以上であることが望ましい。
縮小処理前の入力画像データの信号の深度(階調数)は、例えば、各色8ビット(256階調)とする。画像縮小処理部32にて、画像データの画素数を減らす処理を行う一方、各画素の信号の深度を16ビット化する。こうして、画像縮小処理部32にて生成された縮小画像データは、画像変換部34へと送られ、次に階調変換処理される。
画像変換部34では、前半で画像データ全面に同じLUT(階調変換LUT)を使って変換する階調変換処理を行い、後半でムラ補正処理を行う(図6のステップS13)。
階調変換LUTを使った変換処理は、全体の濃度特性を決める処理である。この階調変換処理は、各信号の変換関係を決める一次元LUT(1D−LUT)を使う方法と、複数の色信号の組み合わせに対応した変換関係を決める多次元のn次元LUT(nD−LUT)を使う方法がある。
画像変換部34におけるムラ補正処理は、ノズル間の出力濃度のばらつきを補正する処理に対応しており、縮小画像の座標のうちノズル配列に対応した座標に対して、その座標に対応する位置のLUTをムラ補正サムネイルLUTから選択し、処理する。なお、縮小画像データの画素の位置と、各画素の面積に対応したノズルの範囲との対応関係は予め把握されており、縮小画像データのある画素の面積に対応する領域の描画を担うノズルの範囲は既知の情報としてPC12内に保持している。
ムラ補正サムネイルLUTは、ムラ補正LUTDB42に格納されている各ノズルに割り当てられているムラ補正LUTから、縮小画像の1画素あたりの幅に対応するLUTを1つのLUTに編集したものである。
ムラ補正サムネイルLUT生成部56にてムラ補正サムネイルLUTを生成する1つの方法として、ノズル単位で規定されているムラ補正LUTから縮小画像の1画素あたりの幅に対応するLUTを平均化して縮小画像の1画素に対応するLUTを作成する。この方法は一例であり、ムラ補正LUTから縮小画像の解像度に応じてノズル並び方向の一定幅毎に1つのLUTを対応させるムラ補正サムネイルLUTの作成方法は上記の例に限らない。
ムラ補正サムネイルLUTを作成する他の方法として、ムラ補正LUTを基に、縮小画像の画素の1画素あたりに幅に対応するLUTの範囲の中で一番大きな値を持つLUTを縮小画像の1画素に対応するLUTにするなどの方法を採用してもよい。ムラ補正サムネイルLUTの作成方法については、後段の画像解析部38で用いるフィルタやインク量判定用の閾値(規定値)等との関係で適切な形態が決定される。
ムラ補正サムネイルLUTを生成するタイミングについては、特に限定されないが、例えば、プリント上でムラ調整を実行し、ムラ補正LUTが新たに生成された直後にムラ補正サムネイルLUTを生成し、画像変換部34で処理が可能な領域に当該最新のムラ補正サムネイルLUTのデータをセットすることが好ましい。
オペレータが印刷状態を監視して、必要に応じて入力装置16から「画像調整」の指令を入力すると、システムは調整処理の動作に入り、ムラ補正用のテストパターンの印刷とその印刷結果の読み取りが行われ、その読み取り情報からムラ補正LUTが作成されて、ムラ補正LUTDB42の情報が更新される。その直後に、当該最新のムラ補正LUTからムラ補正サムネイルLUTも一緒に作成し、当該最新のムラ補正サムネイルLUTを所定のメモリ領域(当該テーブルを参照する記憶保存場所)にセットしておくことが好ましい。このようにムラ補正LUTの更新と一緒にムラ補正サムネイルLUTも常に最新のデータに更新しておくことで、演算処理時間を短縮することが可能である。
また、ムラ補正LUTの生成と同時に(ムラ補正LUTの生成直後に)ムラ補正サムネイルLUTを生成する構成に限らず、インク使用量の評価演算の必要に応じて随時、ムラ補正LUTから作成してもよい。
図8は、画像変換部34における画像変換処理の内容を示した概念図である。CMYKの色別の縮小画像データは、それぞれ色別の階調変換LUTを用いて階調変換された後、色別のムラ補正サムネイルLUTを用いてムラ補正処理が行われる。図8では、階調変換LUTとして色別の一次元LUTを例示した。
各色のムラ補正サムネイルLUTは、ノズル列方向に複数のテーブルを含んでいる。ノズル列方向とは、インクジェットヘッドの複数のノズルが所定の記録解像度を達成するように実質的に並ぶ方向である。図9に示すように、縮小画像データの横方向(x方向)と縦方向(y方向)に座標軸(x軸、y軸)を導入し、xy平面上で各画素の位置を(x,y)の座標で表すとき、例えば、x方向に沿ってインクジェットヘッドのノズルが並んでいるものとする。この場合、縮小画像データのx方向の各画素位置に対応して、1画素あたりに1つのLUTが対応付けられた複数のテーブルを持つ。
つまり、ムラ補正サムネイルLUTは、画素位置(x)の関数として適用され、ノズル列方向(ここではx方向を例示)の単位で同じLUTのセットが適用される。縮小画像データの画素のx座標が同じであれば、y座標が異なる画素に対しても同じLUTが適用される。図9では、太線で囲んだ画素と同じx座標の画素列(y方向に並ぶ各画素)に対して、同じムラ補正サムネイルLUTが適用されることを示している。こうして、階調変換LUTとムラ補正サムネイルLUTを用いた変換処理が実施され、変換後の縮小画像データが得られる。
画像変換部34(図1参照)によって階調変換処理された変換後の縮小画像データは、インク量データ算出部36に送られ、当該縮小画像データからインク量分布データが作成される(図6のステップS14)。インク量データ算出部36では、ハーフトーンドット比率テーブルとインク滴量データを使って印刷画像上の(印刷物上の)インク量分布を生成する。処理の1つの方法として、縮小画像データに対応するハーフトーン処理されたときのインクドットサイズ別比率を求め、その比率に各インクドットサイズのインク滴量を積算した上で、各ドットサイズのインク滴量を加算し、各色に対応するインク量を求める。
このとき、縮小画像データを実際にハーフトーン処理するのではなく、縮小画像データの信号値に対してプリンタ18による階調再現時のインクドットサイズ別の比率データが関連付けられたテーブル(ハーフトーンドット比率テーブル)が用意されており(図5参照)、このハーフトーンドット比率テーブルから所定面積内のインクドットサイズ別比率が把握される。例えば、4値化したときの比率として、無ドット(余白、白抜き)が40%、小ドット30%、中ドット25%、大ドット5%という具合に、ある信号値jに対して、単位面積あたりの平均的なドットサイズ別の記録比率が特定される。
このインクドットサイズ別比率に対して、各ドットサイズの1ドットあたりのインク滴量を掛けて、CMYKの信号別インク量分布データを得る。さらに、各色のインク量分布データを画素毎に加算して、縮小画像の1画素あたりのインク量を求める。このインク量データに座標を割り付け、インク量分布データにする。
図10には、CMYKの各色の信号別縮小画像データから、信号別インク量分布データを作成し、これらを加算してインク量分布データを作成する手順を模式的に説明した図を示した。インク量分布データは、画像解析部38で必要なインク量分解能を保つために、信号の深度は16ビット以上を使うことが望ましい。
こうして生成されたインク量分布データを基に、画像解析部38(図1参照)で規定値以上のインク量が使用されるかどうかの判定を行う。画像解析部38ではインク量分布データに対してフィルタ処理を行い(図6のステップS15)、一定面積のエリア毎のインク使用量が規定値以上となるか否かの判定を行う(図6のステップS16)。
図11は、インク量分布データに対するフィルタ処理の説明図である。図11において、インク量分布データの複数画素領域に対してフィルタ(符号84)が適用される。ここでは、図示の都合上、y方向に並ぶ3画素の画素列範囲に及ぶフィルタ84を例示しているが、フィルタの種類やサイズは様々な形態があり得る。ここでは、y方向の1次元フィルタを例示したが、x方向の1次元フィルタであってもよいし、2次元フィルタであってもよい。
インク量分布データに対して所定のフィルタ84がx方向、y方向に演算対象の画素位置を変えて、繰り返し適用される。図11中のx方向に沿った矢印とy方向に沿った矢印は、フィルタ84がx方向とy方向にそれぞれ位置を変えながら、順次フィルタ処理が進められる様子を示している。フィルタ84のサイズは、インク使用量を評価する画像領域の大きさに対応して適宜の大きさに設計される。
この判定の結果、規定値以上のインク量エリアが存在する場合には、インク総量制限テーブルの更新処理に移行する(図6のステップS17)。その一方、ステップS16の判定において規定値以上のインク量エリアが存在しなければ、ステップS17の処理を省略して図6のフローを終了する。
一例として、コックリングに起因する通紙不良を防止するためのインク量判定について説明する。用紙に対する単位面積当りのインク量が増えると、用紙に水分が吸収されることにより用紙変形(コックリング)が発生し、これが原因で通紙不良(例えば、インクジェットヘッドのノズル面に用紙が接触するなどの問題)が発生する場合がある。このような通紙不良を防ぐことを主目的として、画像解析部38では、用紙上の一定エリア内に一定量(規定値)以上のインク量が使われる場所があるか否かの判定を行い、規定量以上のインク量となる場所が存在するとの判定結果が得られた場合は、インク総量を規定値内に制限するためのGCR処理を適用するインク総量制限テーブルの更新処理に進む(図6のステップS17)。
この例の場合、一定エリアに相当するサイズのフィルタ84をインク量分布データ内の様々な場所に割り当て、規定量以上のインク量の値かどうかを確認する処理を行うことにより、インク総量制限テーブルの更新処理の要否を決める。規定値以上のインク量が使用されているかどうかを判定するインク量の閾値は、用紙の種類、大きさ、厚み、紙目、表裏面によって設定が変わる。また、閾値は1つの値に限らず、複数の評価指標から決定する方法もある。
コックリングと通紙不良の関係については、用紙上のある面積領域がどのくらいのインク量になると通紙不良の恐れがある(通紙保証できない)というインク量許容値が実験的にデータとして把握される。このような条件に基づいて、用紙の種類やインクジェットプリンタの機種毎に、判定条件と閾値が定められる。
図11で例示したように、1種類のフィルタ84について1つの閾値を定めておく構成採用してもよいし、サイズ(面積)の異なる複数のフィルタを用い、各フィルタについてそれぞれ個別に閾値を定めておき、どれか1つでも閾値を超えるものがあったら全体としてNGと判定する、という態様も可能である。
なお、規定値については、上述した用紙変形の観点から定める場合に限らず、インクの消費量(コスト)の観点から上限値を設定する場合も有りうる。
画像解析部38による解析処理の結果、インク量が規定値をオーバーしていると判断されたときには、インク総量制限テーブルの更新処理に進む(図6のステップS17)。
図12はインク総量制限テーブルの更新処理の手順を示すフローチャートである。インク総量制限テーブルの更新は、以下のような処理で行われる。
まず、画像解析部38からインク総量制限テーブル算出部47へ、インク総量上限値の情報と、判定した画像データにおけるインク総量の最大値の情報を渡す(図12のステップS31)。また、画像解析部38からインク量テーブル作成部46へ、インク量が最大値となるノズル位置の情報を渡す(ステップS32)。
インク量テーブル作成部46は、ステップS32で受け取る情報以外に、階調変換LUT、ムラ補正サムネイルLUT、ハーフトーンドット比率テーブル、インク滴量データを受け取り、これらの情報を基に、入力縮小画像のCMYK信号に対して階調変換、縮小画像のムラ補正、インク量の計算を順次を行い、C信号、M信号、Y信号、K信号のそれぞれに対応するインク量の関係を表したインク量テーブルを作成する(ステップS33)。
図13は、CMYK信号からインク量テーブルを作成する処理の流れの概念図である。インク量テーブル90は、C,M,Y,Kの各単色信号に対して、1画素あたりに単位面積平均でどのくらいのインク量が使用されるかの対応関係を示した表(テーブル)の形式で作られる。この表は、信号値として取り得るすべて値について各信号値とそれに対応するインク量とが一対一対応で記述された形式、或いは、一部の離散的な信号値とそれらに対応するインク量の関係のみを記述した形式など、いくつかの記述形式が考えられる。なお、一部の信号値と対応するインク量のみが記述された形式の場合、このテーブルを補間して信号値に対応するインク量の値を求めることになる。
図13を参照してインク量テーブルの作成手順について説明する。ここでは、シアン(C)信号を例に説明するが、M信号、Y信号、K信号についても同様の方法で求められる。
インク量テーブル作成部46は、階調変換処理部86、ノズル吐出補正処理部87、インク量計算部88、及びインク量テーブル生成部89を含んで構成される。まず、階調変換処理部86にて階調変換LUTを使ってC信号からC’信号を求める。この階調変換処理は、図1で説明した階調変換処理部62で使用する階調変換LUTを使って行われる。次に、ノズル吐出補正処理部87にて補正処理が行われる。ここでは、ムラ補正処理部(図1の符号64)で使用するムラ補正LUTを基にインク量を求めるのに十分なデータに間引き処理したムラ補正サムネイルLUTを作成し、このムラ補正サムネイルLUTから、図6のフローチャートの説明で判定したノズル位置(インク量が規定量を超えることになるノズル位置)のLUTを選択し、このLUTでC’信号をC”信号に変換する。このノズル吐出補正処理部87の変換処理は、図4で説明したムラ補正処理と同様の処理である。
次に、インク量計算部88にてハーフトーンドット比率テーブルとインク滴量情報から、入力信号(C”信号)に対するインク量を求める。図5で説明したように、ハーフトーンドット比率テーブルは、入力信号(C”信号)でハーフトーン処理したとき、N×N画素の単位面積当りに、大中小の各サイズのドットをそれぞれ何個ずつ打つかの比率情報が記述されている。このドット比率情報と、大中小各1滴当たりのインク滴量の情報とを組み合わせて、以下の式から、入力信号(C”信号)で描画したときに単位面積で均一にインクが打たれたと仮定したときの1画素あたりのインク量を求める。
〔式1〕インク量Inkvol=S(C”)×a+M(C”)×b+L(C”)×c …(1)
ただし、S(C”):入力信号C”に対する小ドットのドット比率
M(C”):入力信号C”に対する中ドットのドット比率
L(C”):入力信号C”に対する大ドットのドット比率
a:小ドットのインク滴量
b:中ドットのインク滴量
c:大ドットのインク滴量
このような関係で入力信号(C”)とインク量の対応関係を求め、インク量テーブル生成部89にて、入力値とインク量の対応表形式にまとめたインク量テーブル(図13の符号90)の形にまとめられる。
インク総量制限テーブル算出部47は、図12のステップS31で説明した情報と、ステップS33で生成したインク量テーブルの情報を受け取り、インク量テーブルを参照しながら、GCR量(グレイ置換量)を調整し、インク総量が規定値内に収まるように、CMYとKの信号比率を調整する(図12のステップS34)。この調整は、例えば、CMYKの入力に対してCMYKの出力の変換関係を示した4次元LUTに対して、インク量が規定値をオーバーしている格子点を求め、予め定義されたCMY→Kの置き換え変換関係に基づき、CMYとKのバランスを変えながら規定値内にインク量が収まるような方法で処理する。
つまり、インク総量制限テーブルは、プリンタ18で使用するインクの色の種類数(n色)と同じn次元のテーブルで構成されており、プリント上のインク量が規定値を超えている領域のみ変換関係が変更される。こうして、インク量が規定値内に収まるようなCMYK→CMYKの変換関係を規定するテーブル(インク総量制限テーブル)が作成される。
なお、インク総量を制限(削減)するための色信号の変換処理に際しては、CMYの等比成分をKに置換するGCR処理に限らず、Kを用いない2次色についてもインク総量を制限するために1色又は2色の信号値を調整する処理を行うことができる。
インク総量制限テーブル算出部47によりインク総量制限テーブルを作り直した後、次に、プリンタプロファイルを更新する(図12のステップS35)。プリンタプロファイルの更新は以下のような処理で行われる。プロファイルの作成に必要なCMYKの組み合わせ(ここではn=4色)に対して、インク総量制限処理後のC’M’Y’K’を求める。このC’M’Y’K’に対して、インク総量制限無しの条件でのCMYKと色度値の関係を記述したプリンタプロファイルを使ってC’M’Y’K’に対応する色度値を求める。
このn色のC’M’Y’K’と色度値の対応関係からカラープロファイルを作成し、インク量調整後のプリンタプロファイルとして使用する。
なお、Kを含まない色相領域(例えば、CとMのみを用いる青(B)、MとYのみを用いる赤(R)、YとCのみを用いる緑(G)など)では、インク総量の上限値に従ってインク量を減らすと色味が必ず変化してしまう。このような領域が生じたときは、ユーザーインターフェース(UI)上で色味が変わることを警告するメッセージを表示したり、ジョブの仕分けをし、この警告のジョブをまとめておくなどの対処が好ましい。
ユーザは、GUI画面からインク量を減らす(色味の変更を許容する)/減らさない(色味を変更しない)を選択することができ、インク量を減らすことを容認する選択をした場合は、インク量を減らす条件のプロファイル及びテーブル類を使い、インク量を減らすことを禁じた選択をした場合は、従来の条件の(インク総量制限処理が適用される前の条件の)プロファイル及びテーブル類を使う設定を行う。
図14、図15には、色味が変更される色調整がなされる場合の警告表示の表示画面例を示した。PC12の画像データDB24に入力画像データを登録した直後に、画像データ処理部30によるインク使用量の評価演算を開始し、その判定結果に基づくインク総量制限処理によって色味の変化が懸念される画像のジョブをモニタ14で識別可能に表示させる。
図14に示す例では、色味の変化が生じると判定されたジョブに対して、ハイライト表示がなされるとともに、「警告」を示す文字が付される。警告表示の具体的な形態は図示の例に限定されないが、ここに例示したように色味の変化が懸念されるジョブについて、背景色や文字の色を異ならせたり、特定の文字や記号等による表示を付加したりするなど、他の正常印刷が可能なジョブ(OKジョブ)と明確に区別できるような差別化表示が行われる。
この警告表示とともに、色味の変更を許容する(インク量の削減を行う)旨の選択を行うためのGUIボタン92と、色味の変更を許容しない(インク量の削減を行わない)旨の選択を行うためのGUIボタン93が表示される。ユーザはこれらのGUIボタン(符号92、93)から、所望の選択を行うことができる。なお、ユーザの選択操作を支援するために、例えば、デフォルトで「色味の変更を許容する」が選択されるような構成となっていてもよい。
或いはまた、図15に示したように、問題なく正常に印刷ができるジョブ群(警告が出ていないジョブ群)と、色味の変更が懸念されるジョブ群(警告が出ているジョブ群)とをモニタ14の画面上で表示領域を明確に区別して表示させてもよい。図15では、画面の上段にOKジョブの表示が振り分けられ、画面の下段に警告対象ジョブの表示が振り分けられている。そして、警告対象ジョブの表示欄に、色味の変更を許容する(インク量の削減を行う)旨の選択を行うためのGUIボタン92と、色味の変更を許容しない(インク量の削減を行わない)旨の選択を行うためのGUIボタン93が表示される。なお、図14及び図15の例では、各画像に対応したジョブの一覧を文字表示する画面を示したが、各ジョブIDに代えて、又はこれと組み合わせて、印刷対象の画像内容を表示させてもよい。図14や図15で例示したようなモニタ表示により、オペレータは警告に係る画像データに対するインク総量制限処理の適用の有無を選択したり、印刷ジョブをキャンセルしたり、或いは、プリント条件を修正したりするなどの対処を行うことができる。
また、階調変換LUTやムラ補正LUTが更新されると、インク量分布の結果が変わるため、その都度、判定結果の更新が行われる。すなわち、本実施形態のシステムでは、階調変換LUTやムラ補正LUTが更新されると、その最新のテーブルに基づいてインク量分布データが再計算され、規定値以上のインク使用量となるか否かの判定の再判定が行われる。この判定結果に従いモニタ14の表示が更新される。
こうして、常に最新の画像調整パラメータを反映させたインク量分布データが計算され、プリント品質に影響を与えるかどうかが判定される。これにより、精度の高い判定が可能である。
上述の説明では通紙保証の観点からプリント品質の影響の有無を判定する例を説明したが、着弾位置ズレによる画質低下などの観点からプリント品質への影響の有無を判定することもできる。画像解析部38で適用するフィルタの形態と判定用の閾値の設定に応じて、様々な観点でプリント品質への影響を評価することができる。或いはまた、インク消費量(コスト)の観点からインク総量の上限値を規定する印刷モードを用意し、コスト面からインク量を制限してもよい。
また、本実施形態における画像解析に基づくインク総量制限テーブルの更新処理を含む画像処理は、画像処理パラメータの作成を行うため、画像の1枚当たり要するプリント時間よりも演算の処理時間がかかる場合がある。そのため、同じ絵柄を連続して出力するか、プリント毎で絵柄を変えるかなどジョブ内容に応じて、本画像処理を実施する/しないを切り替えできる機能を持たせる構成が好ましい。このような切り替えの選択を行うためのユーザーインターフェースが用意され、ユーザの選択に応じて処理が切り替えられる。
図16は、図7で説明した画像処理の流れを示した要部ブロック図である。図中、図1で説明した構成と同一又は類似の要素には同一の符号を付してある。なお、本発明の実施に際して、縮小画像の生成処理に関しては、当該処理を省略することができるため、図16では画像縮小処理部を省略した。
PC14の画像データDBに登録された画像データは、画像変換部34に送られ、その後、インク量データ算出部36、画像解析部38、インク量テーブル作成部46、インク総量制限テーブル算出部47を経由してインク総量制限テーブル(図中「C」で示したテーブル、符号97)が生成される。
そして、印刷対象の画像データは、画像データDB24からカラーマッチング処理部26とインク総量制限処理部27とを経由してプリンタ18のイメージプロセスボード60に転送される。
カラーマッチング処理部26に入力される画像データは、ターゲット色を表す第1の色空間のデバイス値(ここではCMYK値)で定義された画像であるものとする。すなわち、画像データを構成する各画素に第1の色空間(デバイス依存色空間)の信号値が与えられたデジタル画像データが入力される。
カラーマッチング処理部26は、第1の色空間のデバイス値とデバイス非依存色空間(例えば、CIE-L*a*b*空間)の色度値との対応関係を記述したテーブル(図中「A」で示した第1のテーブル、符号95)、並びに、デバイス非依存色空間の色度値と第2の色空間のデバイス値との対応関係を記述したテーブル(図中「B」で示した第2のテーブル、符号96)を用いて、入力カラー画像データ(第1の色空間のデータ)を第2の色空間(デバイス依存色空間)の信号値に変換する処理を行う。
カラーマッチング処理部26から出力された第2の色空間のデバイス値で定義された画像データは、インク総量制限処理部27に送られる。インク総量制限処理部27は、入力された第2の色空間のデバイス値から、プリント上のインク総量が規定値を超えない範囲で同第2の色空間のデバイス値への対応関係を記述したテーブル(インク総量制限テーブル97)を用いて、第2の色空間のデバイス値へ画像データを変換する処理を行う。インク総量制限処理部27から出力された第2の色空間のデバイス値による画像データがプリンタ18のイメージプロセスボード60に転送される。
こうして、カラーマッチング処理部26及びインク総量制限処理部27の処理を経て、プリンタ18のCMYKインクで印刷するために最適な配合比率のC、M、Y、Kの各色信号が得られる。
カラーマッチング処理部26の第2のテーブル96と、インク総量制限処理部27のインク総量制限テーブル97とを統合して、カラーマッチング処理とインク総量制限処理を1つの工程で一括して行うこともできる。例えば、カラーマッチング処理部26で適用する第2のテーブル96における第2の色空間のデバイス値を、インク総量が規定値を超えない範囲で記述しておき、このような第2のテーブル96を用いてカラーマッチング処理を行うことで、当該カラーマッチング処理の工程によってインク総量制限処理の工程も兼ねることができる。
本実施形態で説明した色調整の処理を行うことにより、画像データをプリントするデバイス信号の範囲でインク量が規定値を超えた場合に限って、GCR処理のようなインク総量を制限する処理が行われる。このため、実際のプリント時にインク量が規定値を超えない絵柄(画像内容)では、インク総量制限処理が回避される。したがって、不要な色再現性の劣化を抑制することができる。
また、GCR処理を実行した場合でも、その後、プリンタプロファイルもGCR処理に合わせて更新するため、プリントの色を変えることなく、インク量を規定値内に収めることができる。すなわち、GCR処理を行った後に、カラーマッチング処理で使うプリンタプロファイルに対してGCR処理の変更による色度値の変化量を反映させることで、カラーマッチング性能を維持することができる。これにより、GCR処理のみの変更と比べて、より高精度な色再現性の保存が可能である。
<ムラ補正LUTの生成方法の説明>
ここで、ムラ補正LUTの生成方法について説明する。ムラ補正処理部64(図1、図10参照)に適用されるムラ補正LUTは、次のような手順で生成される。図17は、ムラ補正LUTの生成手順の一例を示したフローチャートである。ムラ補正LUTを作成する算出タイミングは任意であり、特に、限定されない。例えば、印刷ジョブを実行する前に、テストチャートを出力して補正値の算出を行う態様、所定枚数のプリントを実施する毎に1回というタイミングでテストチャートを出力して補正値の算出を行う態様、用紙の種類、用紙サイズを切り換えるタイミングでその印刷前にテストチャートを出力して補正値の算出を行う態様、画像出力毎に記録媒体の余白部にテストチャートを出力して補正値の算出を行う態様、或いは、定期メンテナンスやユーザからの指示があったときに上記の補正値の算出を行う態様、などがあり得る。ムラ補正LUTのデータは適当なタイミングで更新される。
図17に示すムラ補正LUTの生成処理がスタートすると、まず、記録濃度分布の測定に用いるテストチャートの出力が行われる(ステップS60)。
図18は、記録媒体上に記録されるテストチャート(テストパターンと呼ぶ場合もある)の一例を示す図である。図18に示した濃度分布測定用テストチャート100は、階調値の異なる複数種類(ここでは8種類)の帯状のパターン100A〜100Hを含んで構成される。各帯状のパターン100A〜100Hは、媒体搬送方向に直交する媒体幅方向に沿って長い矩形形状となっている。媒体幅方向は、ラインヘッドによる実質的なノズル列の方向であり、各帯状のパターン100A〜100Hは、ノズル列の長さに対応する範囲で概ね均一の濃度で形成される。「概ね均一の濃度」とは、パターンの記録に際して、階調の指令値(設定値)として一定であることを意味している。一定の階調値の指令に基づいて描画されるパターンの濃度分布を測定することで、当該階調値に対応する各ノズルの吐出特性のばらつきを把握することができる。
本例では、媒体搬送方向の上流側から下流側に向かって(図18における下から上に向かって)順に、インク濃度が小さくなる配列順で濃度を異ならせたパターン100A〜100Hが形成されている例を示したが、パターンの配列順や帯状のパターンの数(濃度を変えるステップ数)は特に限定ない。各帯状のパターンを記録する設定階調値は適宜設定することができ、帯状のパターンの数も適宜設計できる。このようなテストチャート100は、CMYKの各ヘッドにより、色毎に形成される。また、1枚の記録媒体(用紙)102上にすべてのパターン100A〜100Hを記録する態様に限らず、これら帯状のパターンを複数枚の記録媒体に分けて記録してもよい。
こうして記録媒体102上に形成されたテストチャート100は、オフラインスキャナー、或いは、インクジェット印刷システム10の用紙搬送経路中に設置された画像読取センサ(インラインセンサ)などの読取装置によって読み取られ、当該テストチャート100の読取データ(電子画像データ)が取得される。この読取データから、画像内の各位置における光学濃度(OD:Optical Density)値が求められ、各位置に対応するノズル毎の出力記録濃度(インク濃度)を示す出力濃度データが取得される(図17のステップS62)。このようにして求められる出力濃度データと、入力階調値の値とに基づいて、ノズル毎の吐出特性(記録濃度特性)を示す特性曲線が取得される。
図19は、あるノズルの吐出特性曲線の例を示したグラフである。横軸は入力画像データ(入力階調値)、縦軸は出力濃度を示している。図19中の曲線Gtは、テストチャートの読取結果から取得されたノズルの特性曲線を示している。図19中の破線で示した曲線Gaは、設計上想定される適正なインク吐出が行われる場合に得られる特性曲線(適正特性曲線)を表している。図19に示すように、実際のノズルの特性曲線Gtは、製造ばらつき、その他の要因により、適正特性曲線から多少ずれた曲線を描くのが通常であり、図19中の上下双方向矢印で示されるように、ノズル間で出力濃度値のばらつきが見られる。各ノズルの特性曲線Gtは、適正特性曲線Gaと比較され、その比較結果に応じて、対象ノズルの吐出制御に対する補正値のテーブル(吐出補正LUT、すなわちノズル毎のムラ補正LUT)が生成される(図17のステップS64)。
こうして、すべてのノズルについて吐出補正LUTが求められ、これら全ノズル分の吐出補正LUTがムラ補正LUTDB42(図1参照)に格納される(図17のステップS66)。なお、ノズルの特性曲線Gtと適正特性曲線Gaとの比較によって、そのノズルが不吐出ノズルであるか否か、或いは補正不能なレベルの吐出異常ノズルであるか否かの判断も可能である。また、いわゆる1オンnオフ型のラインパターンを含んだテストパターンなどを形成して、その読取結果から不吐出ノズルや吐出量異常、着弾位置誤差などを把握することも可能である。
不吐出ノズル或いは補正不能な吐出異常ノズルについては、記録に使用することができない不良ノズルであるとして、画像記録時に吐出駆動させない扱いにしてもよい。このような不吐出化の処理を行う不良ノズルについては、対応するノズルの吐出補正LUTをムラ補正LUTDB42に保存しなくてもよい。
<ノズル毎の吐出制御に対する補正値の算出方法の概要>
図20は、ノズル毎のムラ補正LUTを求める処理の一例を示す説明図である。図20のS200に示されるように、読取装置の画素位置(濃度測定位置)とノズル位置との対応関係を示す解像度変換曲線のテーブルデータが予めメモリに記憶されており、テストチャートの読取結果から、この解像度変換曲線に従って、テストチャートの読取データ(スキャン画像)における各測定濃度位置(例えば、400dpiの読取解像度による画素位置)が、インクジェットヘッドにおける対応ノズルの位置(例えば、1200dpiの記録解像度を実現するノズル列内のノズル位置)に変換される。
こうして求められるノズル位置と、当該ノズル位置に対応するテストチャートにおける濃度測定値(出力濃度値)D1とが図20のS202に示されるように対応付けられ、予め定められ記憶されている目標濃度値D0と濃度測定値(出力濃度値)D1との差分が算出される。ここで用いられる目標濃度値D0は、対象ノズルから吐出させるインク濃度の目標値であり、必要に応じて適宜決定することが可能である。例えば、予め定められたノズル範囲から吐出されるインクの平均濃度を算出して目標濃度値D0として記憶しておいてもよい。
そして、図20のS204に示されるように、予め実験的に求められた画素値と濃度値との対応関係を示す画素値−濃度値曲線に従って、濃度測定値(出力濃度値)D1及び目標濃度値D0(S204の「濃度値」)に対応する出力画素値(S204の「画素値」)P0、P1が求められる。そして、この出力画素値の差分量(P0−P1)は、ノズル位置毎の濃度補正値として記憶される(S206)。
このようにして、ノズル毎に入力信号値(画素値)に対する補正値が定まり、ノズル毎に入力信号に対する出力信号の関係を規定したムラ補正LUTが得られる。なお、上述したムラ補正LUTの生成手順は例示に過ぎず、他の処理手順によってムラ補正LUTを作成してもよい。
ムラ補正LUTは、ノズル単位のLUTのテーブルデータ群であり、データ容量が大きい。例えば、菊半裁(636mm×469mm)の用紙について、1回の紙送りで長辺方向の全描画範囲を記録可能なシングルパス方式の長尺ラインヘッド(シングルパスページワイドヘッド)を用いるシステムの場合を検討すると、CMYKの4色に対応した各色のインクジェットヘッドが紙送り方向に並べて配置され、記録解像度1200dpiのシステムの場合、1ヘッドあたり約3万個のノズルを有している。これがインク色数分(本例では4色)あるので、全ノズル数は約12万個にもなる。
この4色ヘッド群の各ノズルのインク吐出量をLUTで制御する場合、全ノズル数に相当する万単位の入力12ビット、出力12ビットのLUTを扱うことになる。このようなムラ補正LUTのデータサイズは非常に大きく、画像変換部34にてムラ補正LUTに直接アクセスすると、演算効率が悪い(計算時間がかかる)。
本実施形態では、ムラ補正LUTから画像変換部34における演算に必要なLUTデータ(ムラ補正サムネイルLUT)を別途作成しておくことにより、評価計算の演算効率の向上を図っている。
つまり、ムラ補正サムネイルLUTの生成は、画像データ処理部30におけるインク使用量の評価演算と連動させる必要はなく、別途独立に生成しておくことができる。例えば、プリンタ18にセットするムラ補正LUTを生成した際に、ムラ補正サムネイルLUTも一緒に生成しておくことができる。このように、事前にムラ補正LUT及びムラ補正サムネイルLUTを作成しておく処理を「インク吐出量計算前処理」という。
図21はインク吐出量計算前処理のフローチャートである。図21に示した処理フローは、ノズル吐出量調整開始の指示が入力されることにより開始される(ステップS100)。ノズル吐出量調整開始の指示信号は、印刷JOBの実行開始前や用紙種の交換時など、適宜のタイミングで与えられる。当該指示は、印刷制御プログラムに従って自動的に指示信号を発生してもよいし、オペレータが必要に応じて入力装置16から入力してもよい。
図21の処理フローがスタートすると、まず、ムラ補正LUTを生成する処理を行う(ステップS102)。このムラ補正LUTの生成処理の一例については、図17〜図20で説明したとおりである。濃度測定用のテストパターンの印字結果を読み取って、濃度情報を取得し、ノズル毎の出力濃度特性のデータを取得し、そのデータに基づいてノズル毎の補正値を計算することによってムラ補正LUTが得られる。
図21のステップS102の処理工程で生成された全ノズル分のムラ補正LUTのデータDATA104は、PC12内のムラ補正LUTDB42に格納されるとともに、プリンタ18のイメージプロセスボード60におけるムラ補正処理部64にセットされる(図1参照)。また、このムラ補正LUTのデータ(DATA104)を基に、ムラ補正サムネイルLUTの生成処理が行われ(図21のステップS106)、ムラ補正サムネイルLUT(DATA108)が得られる。
なお、本実施形態で説明したPC12による処理内容を実現するためのプログラムをCD−ROMや磁気ディスクその他のコンピュータ可読媒体(情報記憶媒体)に記録し、該情報記憶媒体を通じて当該プログラムを第三者に提供することが可能である。このような有体物たる記憶媒体にプログラムを記憶させて提供する態様に代えて、インターネットなどの通信ネットワークを利用してプログラム信号をダウンロードサービスとして提供することも可能である。或いはまた、当該プログラムにより実現される機能をASP(Application ServiceProvider)サービスとして提供することも可能である。
また、本実施形態で説明したPC12による処理内容を実現するためのプログラム一部または全部をホストコンピュータなどの上位制御装置に組み込む態様や、プリンタ12側の中央演算処理装置(CPU)の動作プログラムとして適用することも可能である。
<インクジェット記録装置の構成例>
次に、図1で説明したプリンタ18の一例であるインクジェット記録装置の構成例について説明する。
図22は、本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の構成例を示す図である。このインクジェット記録装置110は、描画ドラム170に保持された記録媒体124(以下、「用紙」と呼ぶ場合がある。)にインクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yから複数色のインクを打滴して所望のカラー画像を形成する直描方式のインクジェット記録装置であり、インクの打滴前に記録媒体124上に処理液(ここでは凝集処理液)を付与し、処理液とインク液を反応させて記録媒体124上に画像形成を行う2液反応(凝集)方式が適用されたドロップオンデマンドタイプの画像形成装置である。
図示のように、インクジェット記録装置110は、主として、給紙部112、処理液付与部114、描画部116、乾燥部118、定着部120、及び排紙部122を備えて構成される。
(給紙部)
給紙部112には、枚葉紙である記録媒体124が積層されている。給紙部112の給紙トレイ150から記録媒体124が一枚ずつ処理液付与部114に給紙される。記録媒体124として、枚葉紙(カット紙)を用いているが、連続用紙(ロール紙)から必要なサイズに切断して給紙する構成も可能である。
(処理液付与部)
処理液付与部114は、記録媒体124の記録面に処理液を付与する機構である。処理液は、描画部116で付与されるインク中の色材(本例では顔料)を凝集させる色材凝集剤を含んでおり、この処理液とインクとが接触することによって、インクは色材と溶媒との分離が促進される。
処理液付与部114は、給紙胴152、処理液ドラム154、及び処理液塗布装置156を備えている。処理液ドラム154は、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)155を備え、この保持手段155の爪と処理液ドラム154の周面の間に記録媒体124を挟み込むことによって記録媒体124の先端を保持できるようになっている。処理液ドラム154の外周面に吸引孔を設け、吸引孔から吸引を行う吸引手段を接続してもよい。これにより記録媒体124を処理液ドラム154の周面に密着保持することができる。
処理液ドラム154の周面に対向して処理液塗布装置156が配置される。処理液塗布装置156は、処理液が貯留された処理液容器と、この処理液容器の処理液に一部が浸漬されたアニックスローラと、アニックスローラと処理液ドラム154上の記録媒体124に圧接されて計量後の処理液を記録媒体124に転移するゴムローラとで構成される。この処理液塗布装置156によれば、処理液を計量しながら記録媒体124に塗布することができる。本実施形態では、ローラによる塗布方式を適用した構成を例示したが、これに限定されず、例えば、スプレー方式、インクジェット方式などの各種方式を適用することも可能である。
処理液が付与された記録媒体124は、処理液ドラム154から中間搬送部126を介して描画部116の描画ドラム170へ受け渡される。
(描画部)
描画部116は、描画ドラム170、用紙抑えローラ174、及びインクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yを備えている。描画ドラム170は、処理液ドラム154と同様に、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)171を備える。
インクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yはそれぞれ、記録媒体124における画像形成領域の最大幅に対応する長さを有するフルライン型のインクジェット方式の記録ヘッド(インクジェットヘッド)であり、そのインク吐出面には、画像形成領域の全幅にわたってインク吐出用のノズルが複数配列されたノズル列が形成されている。各インクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yは、記録媒体124の搬送方向(描画ドラム170の回転方向)と直交する方向に延在するように設置される。
描画ドラム170上に密着保持された記録媒体124の記録面に向かって各インクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yから、対応する色インクの液滴が吐出されることにより、処理液付与部114で予め記録面に付与された処理液にインクが接触し、インク中に分散する色材(顔料)が凝集され、色材凝集体が形成される。これにより、記録媒体124上での色材流れなどが防止され、記録媒体124の記録面に画像が形成される。
すなわち、描画ドラム170によって記録媒体124を一定の速度で搬送し、この搬送方向について、記録媒体124と各インクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yを相対的に移動させる動作を1回行うだけで(即ち1回の副走査で)、記録媒体124の画像形成領域に画像を記録することができる。
ここでは、CMYKの4色のインクを用いるインクジェット記録装置110を例示しているが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するインクジェットヘッドを追加する構成も可能であり、各色ヘッドの配置順序も特に限定はない。
描画部116で画像が形成された記録媒体124は、描画ドラム170から中間搬送部128を介して乾燥部118の乾燥ドラム176へ受け渡される。
(乾燥部)
乾燥部118は、色材凝集作用により分離された溶媒に含まれる水分を乾燥させる機構であり、乾燥ドラム176、及び溶媒乾燥装置178を備えている。乾燥ドラム176は、処理液ドラム154と同様に、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)177を備え、この保持手段177によって記録媒体124の先端を保持できるようになっている。
溶媒乾燥装置178は、乾燥ドラム176の外周面に対向する位置に配置され、複数のハロゲンヒータ180と、各ハロゲンヒータ180の間にそれぞれ配置された温風噴出しノズル182とで構成される。乾燥部118で乾燥処理が行われた記録媒体124は、乾燥ドラム176から中間搬送部130を介して定着部120の定着ドラム184へ受け渡される。
(定着部)
定着部120は、定着ドラム184、ハロゲンヒータ186、定着ローラ188、及びインラインセンサ190(「読取装置」に相当)で構成される。定着ドラム184は、処理液ドラム154と同様に、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)185を備え、この保持手段185によって記録媒体124の先端を保持できるようになっている。
定着ドラム184の回転により、記録媒体124の記録面に対して、ハロゲンヒータ186による予備加熱と、定着ローラ188による定着処理と、インラインセンサ190による検査が行われる。
定着ローラ188は、乾燥させたインクを加熱加圧することによってインク中の自己分散性ポリマー微粒子を溶着し、インクを被膜化させるためのローラ部材であり、記録媒体124を加熱加圧するように構成される。具体的には、定着ローラ188は、定着ドラム184に対して圧接するように配置されており、定着ドラム184との間でニップローラを構成するようになっている。記録媒体124は、定着ローラ188と定着ドラム184との間に挟まれ、所定のニップ圧でニップされ、定着処理が行われる。
また、定着ローラ188は、ハロゲンランプなどを組み込んだ加熱ローラによって構成され、所定の温度に制御される。
インラインセンサ190は、記録媒体124に形成された画像(濃度測定用のテストチャートや不吐出検出用のテストパターンなどを含む)を読み取り、画像の濃度、画像の欠陥などを検出するための手段であり、CCDラインセンサなどが適用される。
定着部120によれば、乾燥部118で形成された薄層の画像層内のラテックス粒子が定着ローラ188によって加熱加圧されて溶融されるので、記録媒体124に固定定着させることができる。また、定着ドラム184の表面温度は50℃以上に設定されている。定着ドラム184の外周面に保持された記録媒体124を裏面から加熱することによって乾燥が促進され、定着時における画像破壊を防止することができるとともに、画像温度の昇温効果によって画像強度を高めることができる。
なお、高沸点溶媒及びポリマー微粒子(熱可塑性樹脂粒子)を含んだインクに代えて、UV露光にて重合硬化可能なモノマー成分を含有していてもよい。この場合、インクジェット記録装置110は、ヒートローラによる熱圧定着部(定着ローラ188)の代わりに、記録媒体124上のインクにUV光を露光するUV露光部を備える。このように、UV硬化性樹脂などの活性光線硬化性樹脂を含んだインクを用いる場合には、加熱定着の定着ローラ188に代えて、UVランプや紫外線LD(レーザダイオード)アレイなど、活性光線を照射する手段が設けられる。
(排紙部)
定着部120に続いて排紙部122が設けられている。排紙部122は、排出トレイ192を備えており、この排出トレイ192と定着部120の定着ドラム184との間に、これらに対接するように渡し胴194、搬送ベルト196、張架ローラ198が設けられている。記録媒体124は、渡し胴194により搬送ベルト196に送られ、排出トレイ192に排出される。搬送ベルト196による用紙搬送機構の詳細は図示しないが、印刷後の記録媒体124は無端状の搬送ベルト196間に渡されたバー(不図示)のグリッパーによって用紙先端部が保持され、搬送ベルト196の回転によって排出トレイ192の上方に運ばれてくる。
また、図22には示されていないが、本例のインクジェット記録装置110には、上記構成の他、各インクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yにインクを供給するインク貯蔵/装填部、処理液付与部114に対して処理液を供給する手段を備えるとともに、各インクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yのクリーニング(ノズル面のワイピング、パージ、ノズル吸引等)を行うヘッドメンテナンス部や、用紙搬送路上における記録媒体124の位置を検出する位置検出センサ、装置各部の温度を検出する温度センサなどを備えている。
<ヘッドの構造>
次に、ヘッドの構造について説明する。各ヘッド172M、172K、172C、172Yの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号250によってヘッドを示すものとする。
図23(a) はヘッド250の構造例を示す平面透視図であり、図23(b) はその一部の拡大図である。また、図24はヘッド250の他の構造例を示す平面透視図、図25は記録素子単位となる1チャンネル分の液滴吐出素子(1つのノズル251に対応したインク室ユニット)の立体的構成を示す断面図(図23中のA−A線に沿う断面図)である。
図23(a)に示したように、本例のヘッド250は、インク吐出口であるノズル251と、各ノズル251に対応する圧力室252等からなる複数のインク室ユニット(液滴吐出素子)253をマトリクス状に二次元配置させた構造を有し、これにより、ヘッド長手方向(紙送り方向と直交する方向)に沿って並ぶように投影(正射影)される実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化を達成している。
記録媒体124の送り方向(矢印S方向;副走査方向)と略直交する方向(矢印M方向;主走査方向)に記録媒体124の描画領域の全幅Wmに対応する長さ以上のノズル列を構成する形態は本例に限定されない。例えば、図23(a)の構成に代えて、図24(a)に示すように、複数のノズル251が二次元に配列された短尺のヘッドモジュール250’を千鳥状に配列して繋ぎ合わせることで記録媒体124の全幅に対応する長さのノズル列を有するラインヘッドを構成する態様や、図24(b)に示すように、ヘッドモジュール250”を一列に並べて繋ぎ合わせる態様もある。
各ノズル251に対応して設けられている圧力室252は、その平面形状が概略正方形となっており(図23(a)、(b) 参照)、対角線上の両隅部の一方にノズル251への流出口が設けられ、他方に供給インクの流入口(供給口)254が設けられている。なお、圧力室252の形状は、本例に限定されず、平面形状が四角形(菱形、長方形など)、五角形、六角形その他の多角形、円形、楕円形など、多様な形態があり得る。
図25に示すように、ヘッド250は、ノズル251が形成されたノズルプレート251Aと、圧力室252や共通流路255等の流路が形成された流路板252P等を積層接合した構造から成る。
流路板252Pは、圧力室252の側壁部を構成するとともに、共通流路255から圧力室252にインクを導く個別供給路の絞り部(最狭窄部)としての供給口254を形成する流路形成部材である。なお、説明の便宜上、図25では簡略的に図示しているが、流路板252Pは1枚又は複数の基板を積層した構造である。
ノズルプレート251A及び流路板252Pは、シリコンを材料として半導体製造プロセスによって所要の形状に加工することが可能である。
共通流路255はインク供給源たるインクタンク(不図示)と連通しており、インクタンクから供給されるインクは共通流路255を介して各圧力室252に供給される。
圧力室252の一部の面(図25において天面)を構成する振動板256には、個別電極257を備えた圧電アクチュエータ258が接合されている。本例の振動板256は、圧電アクチュエータ258の下部電極に相当する共通電極259として機能するニッケル(Ni)導電層付きのシリコン(Si)から成り、各圧力室252に対応して配置される圧電アクチュエータ258の共通電極を兼ねる。なお、樹脂などの非導電性材料によって振動板を形成する態様も可能であり、この場合は、振動板部材の表面に金属などの導電材料による共通電極層が形成される。また、ステンレス鋼(SUS)など、金属(導電性材料)によって共通電極を兼ねる振動板を構成してもよい。
個別電極257に駆動電圧を印加することによって圧電アクチュエータ258が変形して圧力室252の容積が変化し、これに伴う圧力変化によりノズル251からインクが吐出される。インク吐出後、圧電アクチュエータ258が元の状態に戻る際、共通流路255から供給口254を通って新しいインクが圧力室252に再充填される。
かかる構造を有するインク室ユニット253を図23(b)に示す如く、主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度θを有する斜めの列方向に沿って一定の配列パターンで格子状に多数配列させることにより、本例の高密度ノズルヘッドが実現されている。かかるマトリクス配列において、副走査方向の隣接ノズル間隔をLsとするとき、主走査方向については実質的に各ノズル251が一定のピッチP=Ls/tanθで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。
ノズル251の配列形態は図示の例に限定されず、様々なノズル配置構造を適用できる。例えば、一列の直線配列、V字状のノズル配列、V字状配列を繰り返し単位とするジグザク状(W字状など)のような折れ線状のノズル配列なども可能である。
<実施形態の用語と請求項の用語の対応関係>
PC12とモニタ14及び入力装置16の組み合わせが「色調整装置」に相当する。画像入力インターフェース部22が「画像入力手段」に相当し、画像データDB24が「画像データ格納手段」に相当する。カラーマッチング処理部26、インク総量制限処理部27がそれぞれ「カラーマッチング処理手段」、「インク総量制限処理手段」に相当し、インク量テーブル作成部46が「インク量テーブル作成手段」に相当する。画像縮小処理部32、インク量データ算出部36、画像解析部38がそれぞれ「画像縮小処理手段」、「インク量算出手段」、「画像解析手段」に相当する。画像変換部34が「階調変換処理手段」と「補正処理手段」に相当する。CMSテーブルDB28が「テーブル格納手段」に相当する。インクジェット印刷システム10が「インクジェット装置」に相当する。イメージプロセスボード60が「画像処理手段」に相当し、システム制御部50とイメージプロセスボード60の組み合わせが「吐出制御手段」に相当する。
<変形例1>
図1で説明した例では、演算の効率化の観点から入力画像データから縮小画像データを生成し、この縮小画像データを基にインク量を計算したが、画像縮小処理部32を省略して、入力画像データから直接インク量を計算する構成も可能である。
<変形例2>
図1で説明した実施形態では、画像データDB24からカラーマッチング処理部26及びインク総量制限処理部27を経由してプリンタ18に画像データを転送しているが、プリンタプロファイルの色度値からデバイス値に変換するテーブルについて、インク総量が規定値内に収まるようなデバイス値で記述した形式とすることにより、カラーマッチング処理部26のみ処理をしてプリンタ18へ転送することも可能である。さらに、この条件でカラーマッチング処理は、プリンタシステムのPC12の処理を使わず、外部の装置のカラーマッチング処理部にプリンタプロファイルを渡してカラーマッチング処理を行い、プリンタシテムのPC12に入力することも可能である。
<変形例4>
上記実施形態では、画像解析部38にてインク量が規定値を超えていると判断された場合にインク量テーブルを計算しているが、インク量テーブルを計算するタイミングは必ずしも、画像解析部38の判断後に限らない。画像解析部38における判断前、又は判断の処理と並行して、インク量テーブルの計算を進めてもよい。
ただし、インク量テーブルは、インク総量制限テーブルの作成時に使用されるものであるため、画像解析部38によりインク量が規定値を超えると判断されてインク総量制限テーブルの作成が必要となってから、インク量テーブルを作成することが好ましい。
<変形例5>
上記実施形態ではCMYKの4色のインクを用いる印刷装置(インクジェット記録装置)を例示し、インク総量を減らす処理としてGCR処理を説明したが、本発明の実施に際しては、CMYK4色に限らず、他の色のインクを用いることができる。CMYの2次色に対応する特別色(緑、赤、青)のインクを用いることにより、2色の組み合わせを特別色の1色で置き換えることによりインク量を減らすことも可能である。
4色以上のインクを用いる場合においても、これらすべての色成分のプリント上でのインク総量を計算して、規定値(閾値)と比較し、インク総量制限テーブルの作成の要否を判断する構成とすることができる。
<変形例6>
上記実施形態では、カラーマッチング処理部26で使用する第1のテーブル95、第2のテーブル96、並びにインク総量制限テーブル算出部47で生成したインク総量制限テーブル97をCMSテーブルDB28に格納したが、各テーブルをそれぞれ別々のテーブル格納手段に記憶させる構成も可能である。
<変形例7>
上記実施形態では、記録媒体124に直接インク滴を打滴して画像を形成する方式(直接記録方式)のインクジェット記録装置を説明したが、本発明の適用範囲はこれに限定されず、一旦、中間転写体上に画像(一次画像)を形成し、その画像を転写部において記録紙に対して転写することで最終的な画像形成を行う中間転写型の画像形成装置についても本発明を適用することができる。
<ヘッドと用紙を相対移動させる手段について>
上述の実施形態では、停止したヘッドに対して記録媒体を搬送する構成を例示したが、本発明の実施に際しては、停止した記録媒体(被描画媒体)に対してヘッドを移動させる構成も可能である。
<記録媒体について>
「記録媒体」は、インクジェットヘッドから吐出された液滴によってドットが記録される媒体の総称であり、印字媒体、被記録媒体、被画像形成媒体、受像媒体、被吐出媒体など様々な用語で呼ばれるものが含まれる。本発明の実施に際して、記録媒体の材質や形状等は、特に限定されず、連続用紙、カット紙、シール用紙、OHPシート等の樹脂シート、フィルム、布、不織布、配線パターン等が形成されるプリント基板、ゴムシート、その他材質や形状を問わず、様々な媒体に適用できる。
上述の実施形態では、コックリングによる用紙変形の観点からインク使用量を制限する例を説明したが、インク使用量の評価に関しては記録媒体(用紙)がインクの水分を吸収して変形するか否かは必ずしも必要な条件ではない。すなわち、インク液が浸透しない非浸透性媒体(或いは浸透性の低い低浸透性媒体)を用いる場合であっても、本発明を適用してインク使用量を正確に把握することができる。
<吐出方式について>
なお、インクジェットヘッドにおける各ノズルから液滴を吐出させるための吐出用の圧力(吐出エネルギー)を発生させる手段は、ピエゾアクチュエータ(圧電素子)に限らない。圧電素子の他、静電アクチュエータ、サーマル方式(ヒータの加熱による膜沸騰の圧力を利用してインクを吐出させる方式)におけるヒータ(加熱素子)や他の方式による各種アクチュエータなど様々な圧力発生素子(吐出エネルギー発生素子)を適用し得る。ヘッドの吐出方式に応じて、相応のエネルギー発生素子が流路構造体に設けられる。
<装置応用例>
上記の実施形態では、カラー印刷用のインクジェット記録装置への適用を例に説明したが、本発明の適用範囲はこの例に限定されない。CMYKの4色を含む複数のインク色を用いてカラー画像を形成する各種印刷装置について本発明を適用することができる。
なお、本発明は以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で当該分野の通常の知識を有するものにより、多くの変形が可能である。
<開示する発明の各種態様>
上記に詳述した実施形態についての記載から把握されるとおり、本明細書及び図面は以下に示す発明を含む多様な技術思想の開示を含んでいる。
(第1態様):ターゲット色を表す第1の色空間のデバイス値で定義された画像データを入力する画像入力手段と、第1の色空間のデバイス値とデバイス非依存色空間の値との対応関係を記述した第1のテーブルと、印刷装置によるプリント色を表す第2の色空間のデバイス値と前記デバイス非依存色空間の値との対応関係を記述した第2のテーブルとを用い、画像入力手段から取得した入力画像データの前記第1の色空間におけるデバイス値から第2の色空間のデバイス値に変換する処理を行うカラーマッチング処理手段と、入力画像データに基づき入力画像データの印刷装置による印刷画像上のインク量を算出するインク量算出手段と、インク量算出手段で求めたインク量が規定値を超えているか否かを判断する画像解析手段と、第2の色空間のデバイス値とインク量の関係を表すインク量テーブルを作成するインク量テーブル作成手段と、インク量算出手段で求めたインク量が規定値を超えている場合に、インク量テーブルを用いて、入力画像データの印刷装置による印刷画像上のインク量が規定値を超えない範囲で第2の色空間のデバイス値を第2の色空間における他のデバイス値へ変換する変換関係を決めるインク総量制限テーブルを生成するインク総量制限テーブル作成手段と、インク総量制限テーブルで規定される変換関係に従い入力画像データを第2の色空間のデバイス値で定義される画像データに変換するインク総量制限処理手段と、を備える色調整装置。
この態様によれば、画像データが使うデバイス信号の値に対してインク量を求め、インク消費量制限処理の要否を判断するため、不必要なインク総量制限処理が回避される。これにより規定値が示すインク量の制限を実現しつつ、不要な色再現性の劣化を抑えることができる。なお、ここでいう色調整装置は、カラー画像信号を処理する信号処理装置、或いは、画像処理装置として把握することができる。
(第2態様):第1態様に記載の色調整装置において、画像データに対して階調変換を行う階調変換処理手段と、印刷装置の記録位置に依存する記録特性に応じて画像データを補正する補正処理手段と、を備え、インク量算出手段は、階調変換処理手段による階調変換処理及び補正処理手段による補正処理を経て得られた画像データから、当該画像データに対応する画像内容の描画に使用されるインク量の分布を示すインク量分布データを作成する構成とすることができる。
画像データに対して階調変換処理及び補正処理を施した後に印刷装置でその画像の印刷を行う場合、インク量の計算に際しても階調変換処理及び補正処理を行った画像データからインク量を計算することが望ましい。
(第3態様):第1態様又は第2態様に記載の色調整装置において、画像データの信号値と、その信号値の画像をハーフトーン処理して得られるハーフトーン画像のドット配置における単位面積当りのドットサイズ別の比率との対応関係が記述されているハーフトーンドット比率テーブルと、各ドットサイズのインク滴量の情報とを記憶しておくハーフトーン情報格納手段を備え、インク量算出手段は、ハーフトーンドット比率テーブルと各ドットサイズのインク滴量の情報とに基づいて、印刷装置で使用される各色のインク量を計算し、印刷画像上のインク総量の分布を求める構成とすることができる。
画像データを実際にハーフトーン処理しなくても、ハーフトーンドット比率テーブルとインク滴量の情報からインク量を求めることができる。
(第4態様):第3態様に記載の色調整装置において、画像解析手段は、インク量算出手段によって算出される印刷画像上のインク総量の分布を示すデータに対して、画像内の所定面積に相当するサイズのフィルタを適用し、当該所定面積内に規定値以上のインク量が使用されるか否かを判定する構成とすることができる。
フィルタの種類は1種類であってもよいし、複数種類であってもよい。フィルタの種類毎に規定値(閾値)を設定する構成も可能である。
(第5態様):第2態様を引用する第3態様から第4態様のいずれか1項に記載の色調整装置において、インク量テーブル作成手段は、画像解析手段によって判断した画像データのインク量が最大となる画像位置の情報と、階調変換処理に適用する階調変換ルックアップテーブル(LUT)と、補正処理に適用される補正LUTと、ハーフトーンドット比率テーブルと、各ドットサイズのインク滴量の情報とに基づき、各色の信号値に対応するインク量の関係を表したインク量テーブルを作成する構成とすることができる。
(第6態様):第1態様から第5態様のいずれか1項に記載の色調整装置において、インク量テーブル作成手段は、インク量算出手段で求めたインク量が規定値を超えている場合に、インク量テーブルの作成を行う構成とすることができる。
インク量テーブルは、インク総量制限テーブルの作成時に使用されるため、インク総量制限テーブルの作成処理が必要と判断された場合に限ってインク量テーブルの作成を行うことにより、演算処理の効率化を図ることができる。
(第7態様):第1態様から第6態様のいずれか1項に記載の色調整装置において、印刷装置は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の4色のインクを用いるインクジェット記録装置であり、インク総量制限テーブル作成手段は、インク量テーブルからCMYで再現するグレー色をKで置き換えるGCR(Gray-Component Replacement)処理のグレー置換量を調整することによりCMYKの変換関係を求める構成とすることができる。
(第8態様):第1態様から第7態様のいずれか1項に記載の色調整装置において、画像入力手段を介して取得した入力画像データから当該入力画像データよりも解像度の低い縮小画像データを生成する画像縮小処理手段を備え、インク量算出手段は縮小画像データからインク量を算出する構成とすることができる。
かかる態様によれば、計算時間の短縮が可能である。
(第9態様):第1態様から第8態様のいずれか1項に記載の色調整装置において、インク総量制限テーブルから、第2のテーブルを再作成するプリンタプロファイル作成手段を備える構成とすることができる。
インク総量を削減するためのインク総量制限テーブルを作成した後、カラーマッチング処理で使うプリンタプロファイルの第2のテーブルに対して、インク総量制限テーブルの変更によるデバイス非依存空間の値の変化量を反映させる。これにより、カラーマッチング性能を維持することができ、高精度な色再現性を確保することができる。
(第10態様):第1態様から第9態様のいずれか1項に記載の色調整装置において、第2のテーブルにおける第2の色空間のデバイス値を、印刷画像上のインク量が規定値を超えない範囲で記述し、当該第2のテーブルを用いてカラーマッチング処理手段によってカラーマッチング処理を行う構成により、カラーマッチング処理とインク総量制限処理とがカラーマッチング処理手段によって一括して行われ、カラーマッチング処理手段がインク総量制限処理手段を兼ねる構成とすることができる。
(第11態様):第1態様から第10態様のいずれか1項に記載の色調整装置において、印刷装置で使用するインクの色の種類数をn色(nは4以上の整数)とするとき、インク総量制限テーブルは、n次元のテーブルで構成されており、印刷画像上のインク量が規定値を超えている領域のみ変換関係が変更される構成とすることができる。
印刷装置で使用するインクの色の種類数と同じn次元のテーブルとし、インク量が規定値を超える色の部分のみについて変換関係を修正することで、不要な色再現性の劣化を抑えることができる。
(第12態様):第1態様から第11態様のいずれか1項に記載の色調整装置において、インク総量制限処理手段により入力画像データのターゲット色に対してその印刷画像のデバイス非依存色空間の値が変化する修正が行われる場合に、その旨を警告する表示を行う表示手段と、警告に係る入力画像データについて再現色の変更を許容する又は許容しない選択操作を行うための選択手段と、を備える構成とすることができる。
かかる態様によれば、インク総量の制限によって自動的に色調整がなされることによる色再現の変更(プリント画像上での色味の変更)についてユーザの承諾/許否の確認を得てから、実際の印刷を行う構成とすることができる。
(第13態様):第1から第12態様のいずれか1項に記載の色調整装置において、第1のテーブル、第2のテーブル、インク総量制限テーブルを記憶しておくテーブル格納手段を備える構成とすることができる。
第1のテーブルを記憶しておく第1のテーブル格納手段、第2のテーブルを記憶しておく第2のテーブル格納手段、インク総量制限テーブルを記憶しておくテーブル格納手段をそれぞれ別々に設ける構成を採用することも可能であるし、これら各種テーブルをまとめて記憶しておくテーブル格納手段を設ける構成を採用することも可能である。
(第14態様):ターゲット色を表す第1の色空間のデバイス値で定義された画像データを入力する画像入力工程と、第1の色空間のデバイス値とデバイス非依存色空間の値との対応関係を記述した第1のテーブルと、印刷装置によるプリント色を表す第2の色空間のデバイス値とデバイス非依存色空間の値との対応関係を記述した第2のテーブルとを用い、画像入力工程で取得した入力画像データの第1の色空間におけるデバイス値から第2の色空間のデバイス値に変換する処理を行うカラーマッチング処理工程と、入力画像データに基づき入力画像データの印刷装置による印刷画像上のインク量を算出するインク量算出工程と、インク量算出工程で求めたインク量が規定値を超えているか否かを判断する画像解析工程と、第2の色空間のデバイス値とインク量の関係を表すインク量テーブルを作成するインク量テーブル作成工程と、インク量算出工程で求めたインク量が規定値を超えている場合に、インク量テーブルを用いて、入力画像データの印刷装置による印刷画像上のインク量が規定値を超えない範囲で第2の色空間のデバイス値を第2の色空間における他のデバイス値へ変換する変換関係を決めるインク総量制限テーブルを生成するインク総量制限テーブル作成工程と、インク総量制限テーブルで規定される変換関係に従い入力画像データを第2の色空間のデバイス値で定義される画像データに変換するインク総量制限処理工程と、を含む色調整方法。
この色調整方法は、カラー画像信号を処理する信号処理方法、或いは、画像処理方法として把握することもできる。
第14態様の色調整方法について、第2態様から第13態様に記載の特徴と同様の特徴を適宜組み合わせる構成が可能である。この場合「手段」として特定されている事項については、その手段に対応する「工程」が組み合わされる。
(第15態様):コンピュータを、ターゲット色を表す第1の色空間のデバイス値で定義された画像データを入力する画像入力手段と、第1の色空間のデバイス値とデバイス非依存色空間の値との対応関係を記述した第1のテーブルと、印刷装置によるプリント色を表す第2の色空間のデバイス値とデバイス非依存色空間の値との対応関係を記述した第2のテーブルとを用い、画像入力手段から取得した入力画像データの第1の色空間におけるデバイス値から第2の色空間のデバイス値に変換する処理を行うカラーマッチング処理手段と、入力画像データに基づき入力画像データの印刷装置による印刷画像上のインク量を算出するインク量算出手段と、インク量算出手段で求めたインク量が規定値を超えているか否かを判断する画像解析手段と、第2の色空間のデバイス値とインク量の関係を表すインク量テーブルを作成するインク量テーブル作成手段と、インク量算出手段で求めたインク量が規定値を超えている場合に、インク量テーブルを用いて、入力画像データの印刷装置による印刷画像上のインク量が規定値を超えない範囲で第2の色空間のデバイス値を第2の色空間における他のデバイス値へ変換する変換関係を決めるインク総量制限テーブルを生成するインク総量制限テーブル作成手段と、インク総量制限テーブルで規定される変換関係に従い入力画像データを第2の色空間のデバイス値で定義される画像データに変換するインク総量制限処理手段、として機能させるためのプログラム。
第15態様のプログラムについて、第2態様から第13態様に記載の特徴と同様の特徴を適宜組み合わせる構成が可能である。
(第16態様):第1態様から第13態様のいずれか1項に記載の色調整装置と、複数色のインクの各色のインクを吐出するための複数のノズルが配列されたインクジェットヘッドと、インクジェットヘッドに対して記録媒体を相対移動させる媒体搬送手段と、色調整装置から与えられる画像データに対して階調変換処理と、インクジェットヘッドのノズル位置に依存する記録特性に応じて画像データを補正する補正処理と、を行い、さらに前記補正処理後の画像データをハーフトーン処理して2値又は多値のハーフトーンドット画像データを生成する画像処理手段と、画像処理手段で生成されたハーフトーンドット画像データに基づいてインクジェットヘッドの各ノズルからの吐出を制御する吐出制御手段と、を備えるインクジェット装置。
(第17態様):第16態様に記載のインクジェット装置において、インクジェットヘッドは、記録媒体に対する1回の相対移動で画像を記録するシングルパス方式のヘッドである構成とすることができる。