以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
〔画像処理方法の概要〕
図1は、本発明の実施形態に係る画像処理方法の説明図である。以下に説明する画像処理方法は、インクジェット記録装置などの画像記録装置に適用され、インクジェットヘッド(記録ヘッド)に具備される複数のノズル(記録素子)の一部に不吐出(記録状態の異常))が発生すると、不吐出となったノズルの隣接位置に配置された正常なノズルを用いて、不吐出となったノズルによって本来記録されるべき画像が記録されない画像欠陥を補正するものである。
予め、すべてのノズルについて、近接位置に不吐出ノズルが発生した場合を想定して、近接位置に不吐出ノズルが発生したときに設定される不吐出補正係数が、各ノズルの着弾位置誤差(記録位置誤差)の変動を想定して算出され、データ化される(ルックアップテーブル(LUT)に記憶される)。
そして、印刷時に不吐出ノズルが発生すると、不吐出ノズルの近接位置の正常ノズルは、不吐出ノズルが発生していない場合に設定されるむら補正係数(各ノズルの吐出特性に起因する記録位置の誤差を補正する補正係数、むら補正LUT)が、着弾位置誤差情報を考慮して算出された不吐出補正係数(不吐出補正LUT)に切り換えられる。
なお、本例では「不吐出ノズル」について説明するが、本発明はインク(液滴)を吐出させることができるものの、吐出量の過多、過少、吐出方向(着弾位置)の異常が生じる「吐出異常ノズル」についても適用可能である。
また、「近接位置」は、不吐出ノズルが記録すべき位置に補正の効果を発揮させることができる範囲であり、「近接位置」の一例として「隣接位置(不吐出ノズルの隣)」が挙げられる。
すなわち、以下の説明における「不吐出ノズルの隣接ノズル」は、「不吐出ノズルの近接位置に配置されたノズル」に置き換えることができる。
図1に図示された5つのLUT1から5は、ノズルごとに濃度値(例えば、8ビットで表される0から255)に対する濃度補正係数が格納されている。図1の一番上に図示されているむら補正LUT1は、処理対象ノズルの近接位置に不吐出ノズルが発生していない場合に設定される濃度補正係数が格納されている。
一方、不吐出補正LUT2から5は、処理対象ノズルの近接位置に不吐出ノズルが発生した場合の濃度補正係数が格納されている。不吐出補正LUT2,3(3’)は、不吐出ノズルのノズル番号を(nzl)としたときに、ノズル番号が(nzl-1)のノズルに設定される濃度補正係数が格納され、不吐出補正LUTの一群を構成している。
さらに、不吐出補正LUT2は、各ノズルの着弾位置誤差が標準の場合の(初期状態の着弾位置誤差が反映された)濃度補正係数が格納されており、不吐出補正LUT3(3’)は、各ノズルの着弾位置誤差が基準(標準)に対して変化した場合の(経時による着弾位置誤差が反映された)濃度補正係数が格納されている。
同様に、不吐出補正LUT4,5(5’)は、ノズル番号が(nzl+1)のノズルに設定される濃度補正係数が格納され、不吐出補正LUTの一群を構成し、不吐出補正LUT4は、各ノズルの着弾位置誤差が標準の場合の濃度補正係数が格納されており、不吐出補正LUT5(5’)は、各ノズルの着弾位置誤差が基準に対して変化した場合の濃度補正係数が格納されている。
図1には、着弾位置異常時の不吐出補正LUTを1つだけ図示したが、図2に示すように、着弾位置異常時の不吐出補正LUTを複数のLUTから構成されるLUT群としてもよい。図1に図示した符号(3’)及び符号(5’)は、着弾位置誤差の向き、大きさに応じた符号3,5を付したLUTとは別のLUTを表している。
図2は、図1に示す画像処理方法における濃度補正LUTの切り換えを模式的に図示した説明図である。
入力画像データにおける各画素の濃度値をDo[x][y]とする。xはノズル配列方向の画素位置(画像幅ピクセル数)であり、yはノズルの配列方向と直交する方向の画素位置(画像高ピクセル数)である。
本明細書では、記号に付した[ ]内は当該記号の変数を意味している。例えば、濃度値「Do[x][y]」は、濃度値Doがx、yを変数とすることを意味している。また、既出の変数は省略することがある。
図2に示すように、ノズル番号(nzl)を変数とする不吐出情報(F_npn[nzl])に応じて、濃度補正LUTが選択的に切り換えられる。
濃度補正LUTには、むら補正LUT(COFE[Do][F_npn])、定数、不吐出補正LUT群(L_COFE[Do][F_npn][PIndex],R_COFE[Do][F_npn][PIndex])が含まれる。
ノズル番号が(nzl-1)用の不吐出補正LUT群(L_COFE)は、3つの不吐出補正LUTから構成され、着弾位置誤差情報(PIndex[nzl])に応じて3つの不吐出補正LUTの中から1つの不吐出補正LUTが選択される。
ノズル番号が(nzl-1)用の不吐出補正LUT群(L_COFE)を構成する3つの不吐出補正LUTは、着弾位置誤差が基準範囲内のノズルに適用されるもの、着弾位置誤差が基準範囲を超えているものに分類され、着弾位置誤差が基準範囲を超えているものは、さらに、着弾位置が正方向(プラス方向)にずれているもの、負方向(マイナス方向)にずれているものに分類される。
ここで、「正方向」はノズルの配列方向における一方の端に近づく方向であり、「負方向」はノズルの配列方向における他方の端に近づく方向である。
不吐出補正LUT群を構成する不吐出補正LUTは、着弾位置誤差情報(PIndex)に対応するインデックス値(ERRposiIndex)が付与され、インデックス値(ERRposiIndex)に対応する着弾位置誤差情報(PIndex[nzl])よって、管理されている。
同様に、不吐出補正LUT群(R_COFE)は、3つの不吐出補正LUTから構成され、着弾位置誤差情報(PIndex)に応じて3つの不吐出補正LUTの中から1つの不吐出補正LUTが選択される。
不吐出補正LUT群(R_COFE)を構成する不吐出補正LUTには、不吐出補正LUT群(L_COFE)を構成する不吐出補正LUTと同じインデックス値(ERRposiIndex)が付与されている。
図2に示す構成では、不吐出情報(F_npn)が「0」の場合に、むら補正LUT(COFE)が選択され、不吐出情報(F_npn)が「1」の場合に、定数が選択される。
不吐出情報(F_npn)が「2」の場合は、処理対象画素を記録するノズルのノズル番号をnzlとしたときにノズル番号がnzl-1のノズルが不吐出ノズルとなった場合であり、ノズル番号が(nzl-1)用の不吐出補正LUT群(L_COFE[Do[x][y]][nzl][PIndex[nzl]])が選択される。
不吐出情報(F_npn)が「3」の場合は、処理対象画素を記録するノズルのノズル番号をnzlとしたときにノズル番号がnzl+1のノズルが不吐出ノズルとなった場合であり、ノズル番号が(nzl+1)用の不吐出補正LUT群(R_COFE[Do[x][y]][nzl][PIndex[nzl]])が選択される。
さらに、着弾位置誤差情報(PIndex:0、1、2)を用いて、不吐出補正LUT群の中から、処理対象画素を記録するノズルの現状の吐出特性に対応した不吐出補正LUTが選択される。すなわち、現状の吐出特性が基準となる状態から変動していない場合用の不吐出補正LUT(PIndex=0)と、吐出特性の変動を予測して作成された、現状の吐出特性が基準の吐出特性から変動した場合用の不吐出補正LUT(PIndex=1,2)を準備しておき、測定された着弾位置誤差に基づいて不吐出補正LUTが設定される。
このようにして決められた濃度補正係数(濃度補正係数が格納されたLUT)を用いて、ノズルごと(画素ごと)に入力画像の濃度値(Do[x][y])が補正される。図2では、補正後の各画素の濃度値(出力画像データの濃度値)は、Dn[x][y]と表されている。
図3は、不吐出補正LUTに付与されるインデックス値(ERRposiIndex)の説明図である。図3には、3つの不吐出補正LUTに対してインデックス値(ERRposiIndex)「0」、「1」、「2」が付与される例が図示されている。
また、不吐出補正LUT群(L_COFE)を構成する不吐出補正LUTと、不吐出補正LUT群(R_COFE)を構成する不吐出補正LUTには、共通のインデックス値(ERRposiIndex)が付与される。
このインデックス値(ERRposiIndex)は、図2に示した着弾位置誤差情報(PIndex)に対応しているので、測定された着弾位置誤差を着弾位置誤差情報(PIndex)に変換して、着弾位置誤差情報(PIndex)に対応するインデックス値(ERRposiIndex)を有する不吐出補正LUTを選択することができる。
図3の誤差付与値(EP[ERRposiIndex])は、不吐出補正係数(不吐出補正LUT)を算出する際の不吐出補正係数(不吐出補正LUT)の割り振りに使用される値であり、誤差上限しきい値(SH[ERRposiIndex])は、不吐出補正係数(不吐出補正LUT)を分類するしきい値である(詳細後述)。
〔画像処理装置の説明〕
次に、図1から図3を用いて説明した画像処理方法を具現化するための装置(ハードウエア)構成について説明する。図4は、本発明の実施形態に係る画像処理装置の概略構成を示すブロック図である。
同図に示す画像処理装置10は、装置各部を統括的に制御する制御部12を備え、入力画像データ(例えば、各画素の画素値が8ビット(0から255の値)で表されるラスターデータ)を取得する入力画像データ取得部14(画像データ取得手段)と、取得された入力画像に色変換処理及び分版処理を施す色変換処理部16と、色変換処理後の画像データにガンマ補正処理を施すガンマ補正処理部18と、ガンマ補正処理後の画像データに濃度補正処理を施す濃度補正処理部20(補正処理部)と、濃度補正処理後の画像データにハーフトーン処理を施すハーフトーン処理部22と、ハーフトーン処理後の画像データを出力する画像データ出力部24と、を備えている。
色変換処理部16では、例えば、RGBで表現されたカラーの入力画像がインクジェット記録装置で使用されるインク色のCMYKで表現される画像に変換され、さらに、色ごとの画像データに分版される(分版データが生成される)。
ガンマ補正処理部18では、色変換処理及び分版処理が施された画像データに対して、ガンマ補正処理(入力値と出力値との非線形性を補正する処理)が施される。
濃度補正処理部20では、色変換処理、分版処理及びガンマ補正処理が施された画像データに対して、図1から図3を用いて説明した濃度補正処理が施される。すなわち、むら補正記憶部26に記憶されているむら補正係数(むら補正LUT)、又は不吐出補正係数記憶部28に記憶されている不吐出補正係数(不吐出補正LUT)を用いて、濃度補正処理が施される。
不吐出情報取得部30(異常記録素子検出データ取得手段)では、インクジェットヘッドに具備される複数のノズルの中で、不吐出となったノズルのノズル番号(nzl)の情報を含む、不吐出検出データ(NPN[nzl]、異常記録素子検出データ)が取得される。
取得された不吐出検出データ(NPN)に基づいて不吐出情報(F_npn)が設定され、不吐出情報(F_npn)に基づいて濃度補正処理における、むら補正LUT(COFE)と不吐出補正LUT(L_COFE,R_COFE)との切り換えがされる。
着弾位置誤差情報取得部32(記録位置誤差データ取得部)では、着弾位置誤差値データ(DotPMeasure[nzl])がノズルごとに取得される。取得されたノズルごとの着弾位置誤差値データ(DotPMeasure)から、着弾位置誤差差分値データ(DotPosition[nzl])に応じて、不吐出補正LUT群の中から不吐出補正LUTが選択される。
着弾位置誤差値データ(DotPosition)は、基準の着弾位置誤差値データ(REFerr_x[nzl])から取得された着弾位置誤差値データ(DotPMeasure)を減算した値とされる。
ハーフトーン処理部22では、濃度補正処理後の画像データから、二値又は多値のハーフトーン画像が生成される。ハーフトーン処理には、誤差拡散法、閾値マトリクス法などが適用される。
このようにして、多階調の入力画像データから、入力画像データが有する階調数よりも小さい階調数を有するハーフトーン画像が生成されると、画像データ出力部24からハーフトーン画像が出力される。
なお、図示は省略するが、図4に示す画像処理装置10は、入力画像データが一時記憶されるメモリや、各処理部(演算部)の処理領域(演算領域)として使用されるメモリが具備されている。
図5は、図4に示す画像処理装置10における画像処理の制御の流れを示すフローチャートである。
画像処理が開始されると(ステップS10)、入力画像データが取得され(ステップS12、画像データ取得工程、画像データ取得機能)、色変換処理(ステップS14)、分版処理(ステップS16)、ガンマ変換処理(ステップS18)が施される。
さらに、濃度(むら)補正処理(ステップS20、補正処理工程、補正処理機能)、ハーフトーン処理(ステップS22)が施され、ハーフトーン画像が生成される。ステップS12からステップS22の各工程を経て生成されたハーフトーン画像が出力され(ステップS24)、当該画像処理は終了される(ステップS26)。
図5を用いて説明した画像処理方法における各工程に対応する機能を、コンピュータに実行させるプログラムを生成することが可能である。コンピュータとして、図4に図示した制御部12に対応する中央演算装置、及び周辺回路、周辺装置を具備する構成例が挙げられる。また、当該プログラムを書き換え不能な記憶媒体に記憶し、記憶媒体からプログラムを読み出して、実行することも可能である。
以上説明した画像処理方法、装置、プログラムは、インクジェット方式の画像記録装置だけでなく、電子写真方式の画像記録装置などの各種画像記録装置に適用することができる。
(濃度補正処理の詳細な説明)
次に、図5のステップS20に示す濃度(むら)補正処理について、詳細に説明する。図6は、濃度補正処理の流れを示すフローチャートである。
濃度補正処理が開始されると(ステップS60)、ステップS62において、予め生成されているむら補正LUT(COFE)、不吐出補正LUT群(L_COFE)、不吐出補正LUT群(R_COFE)が読み込まれる(ステップS62)。
なお、ステップS62において読み込まれたむら補正LUT(COFE)、不吐出補正LUT群(L_COFE)、不吐出補正LUT群(R_COFE)は、所定のメモリから読み込まれてもよいし、入力インターフェースを介して外部から読み込まれてもよい。
次に、ステップS64において、各ノズルの不吐出検出データ(NPN)が読み込まれ(異常記録素子検出データ取得工程)、ノズルごとの不吐出検出データ(NPN)に基づいて、ノズルごとに不吐出情報(F_npn)が設定される(異常記録素子情報設定工程)。
不吐出検出データ(NPN)は、正常ノズルが「0」、不吐出ノズルが「1」で表される。不吐出情報(F_npn)は、対象ノズルの状態及び対象ノズルの隣接ノズルの状態に対応した「0」、「1」、「2」、「3」の4つの値で表される。
(1)対象ノズルが正常ノズルであり、かつ、対象ノズルの両側の隣接ノズルが正常ノズルの場合は、不吐出情報として「0」が設定される(F_npn=0)。すなわち、対象ノズルのノズル番号をnzlとしたときに、NPN[nzl]=0,NPN[nzl-1]=0,NPN[nzl+1]=0の場合は、不吐出情報(F_npn)として「0」が設定される。
(2)対象ノズルが不吐出ノズルの場合は、不吐出情報(F_npn)として「1」が設定される。すなわち、対象ノズルのノズル番号をnzlとしたときに、NPN[nzl]=1の場合は、不吐出情報として「1」が設定される。
(3)対象ノズルが正常ノズルであり、かつ、対象ノズルのノズル番号が1つ前のノズルが不吐出ノズルの場合は、不吐出情報として「2」が設定される。すなわち、NPN[nzl]=0,NPN[nzl-1]=1の場合は、不吐出情報として「2」が設定される。
(4)対象ノズルが正常ノズルであり、かつ、対象ノズルのノズル番号が1つ後のノズルが不吐出ノズルの場合は、不吐出情報として「3」が設定される。すなわち、NPN[nzl]=0,NPN[nzl+1]=1の場合は、不吐出情報として「3」が設定される。
ステップS66に進み、ノズルごとの着弾位置誤差値データ(DotPMeasure)が取得される(記録位置誤差データ取得工程、記録位置誤差データ取得機能)。着弾位置誤差値データ(DotPMeasure)は定期的に測定され、所定のメモリに記憶されている。
着弾位置誤差値データ(DotPMeasure)の測定例として、テストチャートを出力して、テストチャートの読取データからノズルごとの着弾位置を測定し、この測定値と理論上の着弾位置との差を求める方法が挙げられる。
そして、予め決められている基準着弾位置誤差値データ(REFerr_x)から着弾位置誤差値データ(DotPMeasure)が減算され、着弾位置誤差差分値データ(DotPosition)が算出される。
次に、ステップS68に進み、着弾位置誤差差分値データ(DotPosition)が、着弾位置誤差情報(Pindex)へ変換される(記録位置誤差情報変換工程、記録位置誤差情報変換機能)。ステップS68における着弾位置誤差情報(Pindex)へ変換では、予め決められた誤差上限しきい値(SH[ERRposiIndex])が用いられる(図3参照)。
以下に、着弾位置がマイナス方向へずれている場合の誤差上限しきい値SH[0]、及び着弾位置がマイナス方向へずれている場合の誤差上限しきい値SH[1]を用いた着弾位置誤差差分値データ(DotPosition)の着弾位置誤差情報(Pindex)への変換例を示す。
(1)着弾位置誤差差分値データ(DotPosition)<SH[0]の場合、すなわち、経時によってマイナス方向へしきい値を超える着弾位置ずれが発生している場合には、着弾位置誤差差分値データ(DotPosition)は、着弾位置誤差情報(Pindex)「0」に変換される。
(2)SH[0]≦着弾位置誤差差分値データ(DotPosition)≦SH[1]の場合、すなわち、マイナス方向、プラス方向ともしきい値以下の着弾位置ずれが発生している場合には、着弾位置誤差差分値データ(DotPositon)は、着弾位置誤差情報(Pindex)「1」に変換される。
(3)着弾位置誤差差分値データ(DotPosition)>SH[1]の場合、すなわち、経時によってプラス方向へしきい値を超える着弾位置ずれが発生している場合には、着弾位置誤差差分値データ(DotPosition)は、着弾位置誤差情報(Pindex)「2」に変換される。
このようにして、不吐出情報(F_npn)及び着弾位置誤差情報(Pindex)が生成されると、ノズルごとの不吐出情報(F_npn)、及びノズルごとの着弾位置誤差情報(Pindex)に基づいて、ノズルごとに濃度補正係数が設定され(補正係数設定工程、補正係数設定機能)、濃度補正処理が実行される(ステップS70、補正処理工程、補正処理機能)。
図3に示すように、誤差上限しきい値(SH)は、誤差付与値(EP:不吐出補正係数を算出する際に決められる値)と関連して決められる。例えば、誤差付与値(EP)を10マイクロメートルとしたときに、誤差上限しきい値(SH)は8マイクロメートルとされる。さらに、多数の誤差上限しきい値(SH)を用いて、多段階の切り換えをすることも可能である。
ステップS70に示す濃度補正処理は、x方向のすべての画素、及びy方向のすべての画素について実行され、各画素の濃度値(Dn[x][y])のデータが出力され(ステップS72)、当該濃度補正処理は終了される(ステップS74)。
(ハーフトーン処理の説明)
次に、図5のステップS22に示すハーフトーン処理について説明する。以下にハーフトーン処理の一例として誤差拡散法について説明するが、ハーフトーン処理は誤差拡散法に限定されず、ディザ法、閾値マトリクス法、濃度パターン法など、各種公知の手段を適用できる。
図7は、ハーフトーン処理の流れを示すフローチャートである。以下に説明するハーフトーン処理は、x方向について1列分の処理が実行され、1列分の全画素の処理が終了すると次の列の処理を実行し、この処理が繰り返されて全画素についてハーフトーン処理が施される。
ハーフトーン処理が開始されると(ステップS80)、エラー積算バッファが初期化される(ステップS82)。図8は、データ格納セルの一例を示す説明図であり、エラー積算として、x方向について全画素に対応するデータ格納セルが具備され、y方向について2ライン分のデータ格納セルが具備される例が図示されている。
図8に示すように、エラー積算バッファの初期化では、すべてのセルにデータ値「0」が書き込まれる。
エラー積算バッファが初期化されると、ステップS84に進む。以下に説明するステップS84からステップS94の各工程は、画像高さ分(y方向の全範囲)について、繰り返し実行される。
ステップS84では、画像データ値に積算エラー値(誤差)が加算される。図9は、積算エラー値の加算処理の説明図である。
処理対象画素「X」について、エラー積算バッファ(図8参照)の処理対象画像と同じ位置の積算エラー値を画像データ濃度に加算し、この積算エラー値を加えた濃度を(modinp)とする。
次に、しきい値テーブルから濃度値(modinp)に応じたしきい値が読み込まれる(ステップS86)。図10はしきい値テーブルの例を示す図である。同図に示すようにしきい値テーブルは、4種類のドットを使用する場合(5値化)の一例であり、ドットの種類(打滴種類)ごとの「1drop」から「4drops」のそれぞれのしきい値は、T1からT4と定められている。
図10に示すしきい値テーブルから読み込まれたしきい値に対して、適宜のノイズを付加した後(図7のステップS88)、対象とする点の濃度値からドットの種類を決定する。本例の場合、「濃度値+エラー積算値」の値と、T1、T2、T3、T4の大小関係によって以下のようにドットの種類が決定される(ステップS90)。
(1)「濃度値+エラー積算値」≧T4の場合
「濃度値+エラー積算値」≧T4の場合には、ドットの種類が4drops(図10参照)に決定され、処理対象画素([x][y])の画素値(濃度値)は、4dropsのドット値(例えば、8ビットで「144」)に決定される。この処理で発生したエラー値は、「濃度値+エラー積算値」から4dropsの濃度値を減算した値となる。
(2)T3≦「濃度値+エラー積算値」<T4の場合
T3≦「濃度値+エラー積算値」<T4の場合は、ドットの種類が3dropsに決定され、処理対象画素位置([x][y])の画素値(濃度値)は、3dropsのドット値(例えば、8ビットで「112」)に決定される。この処理で発生したエラー値は、「濃度値+エラー積算値」から3dropsの濃度値を減算した値となる。
(3)T2≦「濃度値十エラー積算値」<T3の場合
T2≦「濃度値十エラー積算値」<T3の場合は、ドットの種類が2dropsに決定され、当該画素位置([x][y])の画素値(濃度値)は、2dropsのドット値(例えば、「80」とする。)に決定される。この処理で発生したエラー値は、「濃度値+エラー積算値」から2dropsの濃度値を減算した値となる。
(4)T1≦「濃度値+エラー積算値」<T2の場合
T1≦「濃度値+エラー積算値」<T2の場合は、ドットの種類が1dropsに決定され、処理対象画素位置([x][y])の画素値(濃度値)は、1dropのドット値(例えば、8ビットで「48」)に決定される。この処理で発生したエラー値は、「濃度値+エラー積算値」から1dropの濃度値を減算した値となる。
(5)「濃度値十エラー積算値」<T1の場合
「濃度値十エラー積算値」<T1の場合は、処理対象画素位置([x][y])について打滴無し(濃度値「0」)とする。この処理で発生したエラー値は、「濃度値+エラー積算値」となる。
次いで、上述したハーフトーン処理で発生したエラー値(誤差)を、処理対象画素に隣接する未処理画素に拡散させる(図7のステップS92)。
図11(a)は、誤差拡散処理に適用される分配定数(エラー値が拡散される割合)の一例を示す図であり、図11(b)は、エラー値の拡散処理の一例を示す模式図である。
誤差拡散処理では、処理対象画素[X]で発生したエラー値は、処理対象画素に隣接する4つの未処理位置に対して、図11(a)に示す比率(分配定数)で分配される。
x方向の1ラインに属するすべてのX位置についてのハーフトーン処理が終了すると、対象ライン(y)が変更される。このとき、対象ライン(y)の移動に対応して、エラー積算バッファが更新される(図7のステップS94)。
すなわち、図12に示すように、エラー積算バッファをy方向上にスクロールし、新たなラインに対する積算バッファの各セルに0が代入される。こうして、画像高さ(y方向)分の全ラインについて上記の処理を繰り返し、全画素についてドットの種類が決定されると、当該ハーフトーン処理は終了される(図7のステップS96)。
上記の如く構成された画像処理方法及び装置(プログラム)によれば、経時による着弾位置誤差の変動を想定した濃度補正処理が実行される。
具体的には、各ノズルの着弾位置誤差の傾向に対応した不吐出補正LUTが、着弾位置誤差変動の傾向ごとに準備され、着弾位置誤差変動の傾向に対応したインデックス値によって管理される。各ノズルの着弾位置誤差の発生及び着弾位置誤差変動の傾向がインデックス値に変換され、インデックス値に基づいて不吐出補正LUTが切り換えられる。
したがって、経時によって着弾位置誤差の変動が発生した場合でも、その着弾位置誤差の変動の傾向に対応した濃度補正処理が実行される。
〔濃度補正係数の導出の説明〕
次に、上述した濃度補正処理(むら補正処理、不吐出補正処理)に適用される濃度補正係数(むら補正係数、不吐出補正係数)の導出について説明する。
図13は、濃度補正係数の導出の流れを示すフローチャートである。濃度補正係数の導出が開始されると(ステップS100)、テストパターンが出力され(ステップS102)、スキャナ等の読取装置を用いて、出力されたテストパターンが読み取られる(ステップS104)。
まず、ノズルごとの着弾位置誤差値データ(DotPMeasure)が測定され(ステップS106)、記憶される(ステップS108)。インクジェットヘッドの初期状態で測定された着弾位置誤差値データ(DotPMeasure)は、そのインクジェットヘッドにおける基準着弾位置誤差値データ(REFerr_x[nzl])として使用することができる。
次に、着弾位置誤差値データ(DotPMeasure)を用いて、ノズルごと、濃度値ごとのむら補正係数が導出(生成)される(ステップS110)。むら補正係数はノズル番号(nzl)及び濃度値(Do)を変数とするルックアップテーブル(COFE)に記憶される(ステップS112)。
さらに、着弾位置誤差値データ(DotPMeasure)を用いて、ノズルごと及び濃度値ごとの不吐出補正LUT(L_COFE,R_COFE)を構成する不吐出補正係数が導出される(ステップS114)、ノズル番号(nzl)、濃度値(Do)を変数とするルックアップテーブルに記憶される(ステップS116)。
不吐出補正係数がルックアップテーブル(L_COFE,R_COFE)に記憶されると、当該濃度補正係数導出は終了される(ステップS118)。
図14は、図13に示す濃度補正係数導出を実現するハードウエア構成を示すブロック図である。図13に示す濃度補正係数の導出するための構成には、テストパターンを出力するテストパターン出力部40と、テストパターンを読み取るテストパターン読取部50と、テストパターンの読取データを解析して、むら補正係数(むら補正LUT)及び不吐出補正係数(不吐出補正LUT)を導出する濃度補正係数生成部60と、を含んで構成される。
図14に示すテストパターン出力部40は、インクジェットヘッド42と、インクジェットヘッド42の吐出制御を行う吐出制御部44と、を備えている。
テストパターン読取部50は、テストパターンを読み取る読取部52と、読取データに信号処理を施す信号処理部54と、を備えている。読取部52は、撮像素子及びその周辺回路によって構成される。
撮像素子の例として、CCDイメージセンサ(charge-coupled device Image Sensor)、CMOSイメージセンサ(Complementary Metal Oxide Semiconductor Image Sensor)が挙げられる。
読取部52から出力された撮像出力は、信号処理部54において、ノイズ除去、波形整形、増幅等の信号処理が施される。
濃度補正係数生成部60は、テストパターン読取部50から出力された読取データを取得する読取データ取得部62と、読取データから濃度分布を生成する濃度分布生成部64と、着弾位置誤差値データ(DotPMeasure)を生成する着弾位置誤差値データ生成部66と、着弾位置誤差値データ(DotPMeasure)が記憶される着弾位置誤差値データ記憶部68と、着弾位置誤差値データ(DotPMeasure)から、むら補正係数及び不吐出補正係数を生成する補正係数生成部70と、むら補正係数及び不吐出補正係数がルックアップテーブルに記憶される補正係数記憶部72と、を含んで構成される。
図15は、図14に図示されたテストパターン出力部40(インクジェットヘッド42)によって媒体(用紙)80上に出力されたテストパターン82を模式的に図示した説明図である。
図15に破線を用いて図示したインクジェットヘッド42は、媒体80のx方向の全幅に対応して複数のノズル46がx方向に1列に配置された構造を有するライン型インクジェットヘッドである。
同図に図示したテストパターン82は、y方向に媒体80を移動させながら、インクジェットヘッド42のすべてのノズルからインクを吐出させて形成される。テストパターン82は、x方向について10ドット間隔でy方向に沿うドット列84が配置され、ドット列のx方向の位置をずらして10段分のパターンが配置されている。
なお、本発明に適用されるテストパターンは、図15に図示されたテストパターン82に限定されず、最小ドット間隔の1/2、又は1/2未満の精度で、ノズルごとの着弾位置を測定でき、各ノズルから吐出させたインクの濃度を測定できればよい。また、別途、濃度測定専用のパターン(パッチ)を形成してもよい。
図15に図示したテストパターン82から、各ノズルの着弾位置誤差値データ(DotPMeasure)を算出する手法として、各ノズルによって形成されたドット列84の中心位置を算出し、各ノズルによって形成されたドット列84の着弾位置を算出して、この算出結果と理論上の着弾位置とを用いてノズルの着弾位置誤差値データ(DotPMeasure)を算出することができる。
(むら補正係数導出の説明)
次に、むら補正係数(COFE)の導出について詳細に説明する。図16は、図13のステップS110に示すむら補正係数(COFE)導出の流れを示すフローチャートである。むら補正係数(COFE)の導出が開始されると(ステップS200)、テストパターンの濃度測定がされ(ステップS202)、濃度測定位置がノズル位置に変換される(ステップS204)。
次に、濃度値の差分が抽出され(ステップS206)、濃度値の差分が画素値の差分に変換され(ステップS208)、画素値の差分を入力画素値(階調値)に加算した出力画素値が計算され(ステップS210)、ノズルごとの入力画素値に対する出力画素値が記憶されたむら補正LUTが生成され(ステップS212)、むら補正係数導出(COFE)は終了される(ステップS214)。
図17は、図16のステップS204に示す解像度変換処理に用いられる解像度変換曲線の説明図である。
図17に示す解像度変換曲線は、横系列がノズル位置であり、縦系列が濃度測定位置となっている。例えば、読取解像度が400ドット毎インチ(dpi)、画像(テストパターン)の記録解像度が1200ドット毎インチのように、読取位置がノズル位置と一対一で対応していない場合に、図17に示す解像度変換曲線を用いて、読取位置がノズル位置へ変換される。
図18は、図16のステップS206に示す濃度値の差分を抽出する処理の概念図である。ノズル位置(横系列)ごとに測定された濃度測定値(太線により図示)から目標濃度値(細線により図示)が減算され、濃度値の差分が抽出される。
図19は、図16のステップS208に示す濃度値の差分を画素値の差分に変換する処理に用いられる画素値−濃度値曲線を示す説明図である。図19に示す画素値−濃度値曲線を用いて、濃度値の差分が画素値の差分に変換される。
以上説明した各工程を経て、むら補正係数(COFE)が導出され、むら補正LUTとして記憶される。
(不吐出補正係数(不吐出補正LUT)導出の説明)
図20は、不吐出補正係数の導出の流れを示すフローチャートである。
不吐出補正係数の導出が開始されると(ステップS300)、不吐出補正基準値(LC_BASE[Do[x][y]][nzl],RC_BASE[Do[x][y]][nzl])が算出される(ステップS302)。なお、不吐出補正基準値(LC_BASE,RC_BASE)は、測定によって求めることも可能である。
不吐出補正基準値(LC_BASE,RC_BASE)の具体的な導出方法は、特開2009−255381号公報に記載された不吐出補正係数の導出方法を参考にすることができるので、ここでの詳細な説明は省略する。
次に、基準着弾位置誤差(REFerr_x[nzl])が決められる(ステップS304)。予め決められた1つのドットの種類について着弾位置誤差値データ(DotPMeasure)が測定され、この値が基準着弾位置誤差(REFerr_x)とされる。
着弾位置誤差値データ(DotPMeasure)の測定に使用されるドットの種類は、最も使用率が高いドットとすることができる。小、中、大の3種類のドットが使用され、この中で中ドットの使用率が最も高い場合は、中ドットを用いて着弾位置誤差値データ(DotPMeasure)が測定される。
次に、ノズル番号(nzl-1)のノズルを不吐出ノズルと仮定して、左不吐出補正修正値(LC)が算出される(ステップS306)。
ステップS306では、まず。ノズル番号が(nzl-1)、(nzl)、(nzl+1)の3つのノズルについて以下の処理が行われる。
すなわち、ノズル番号が(nzl-1)の不吐出と仮定したノズルは、着弾位置誤差値データ(DotPMeasure)から理論上の位置間隔(L)の値が減算され、この値がa[0]に代入される。理論上の位置間隔(L)は、隣接するノズル間の理論上(誤差がゼロの場合)の間隔である。なお、a[ ]の値は「絶対位置」と呼ぶこととする。
また、ノズル番号が(nzl)のノズルの着弾位置誤差値データ(DotPMeasure)がa[1]に代入され、ノズル番号が(nzl+1)のノズルの着弾位置誤差値データ(DotPMeasure)に理論上の位置間隔(L)の値が加算され、さらに、予め決められた誤差値である「誤差付与値(EP[ERRposiIndex])」(図3参照)が加算され、この値がa[1]に代入される。誤差付与値(EP)とは、経時によって変動する着弾位置誤差値データを区別するための基準値である。誤差付与値(EP)の具体例として、記録画像におけるドット間ピッチの最小値の1/2以下(1200ドット毎インチの場合に10マイクロメートル以下)の値が挙げられる。
すなわち、誤差付与値(EP)を通常の画像記録における着弾位置誤差の許容範囲の最大値、最小値とすることで、インクジェットヘッドの着弾位置誤差の許容範囲を超えた場合に、吐出特性の変動が発生したと判断することができる。
次に、絶対位置a[0],a[1],a[2]を用いて、次式〔数2〕によってp[2]が演算される。
このようにして求められたp[2]に対して1が加算された値が、左不吐出補正修正値(LC)として格納される。なお、次式〔数3〕における「d」は濃度値を表している。
次に、ノズル番号(nzl+1)のノズルを不吐出ノズルと仮定して、右不吐出補正修正値(RC)が算出される(ステップS308)。まず。ノズル番号が(nzl-1)、(nzl)、(nzl+1)の3つのノズルについて以下の処理が行われる。
すなわち、ノズル番号が(nzl-1)ノズルは、着弾位置誤差値データ(DotPMeasure)から理論上の位置間隔(L)の値が減算され、さらに、誤差付与値(EP[ERRposiIndex])が加算され、この値がa[0]に代入される。
また、ノズル番号が(nzl)のノズルの着弾位置誤差値データ(DotPMeasure)がa[1]に代入され、不吐出と仮定したノズル番号が(nzl+1)のノズルの着弾位置誤差値データ(DotPMeasure)に理論上の位置間隔(L)の値が加算され、この値がa[1]に代入される。
次に、絶対位置a[0],a[1],a[2]を用いて、次式〔数5〕によってp[0]が演算される。
このようにして求められたp[0]に対して1が加算された値が、右不吐出補正修正値(RC)として格納される。なお、次式〔数6〕における「d」は濃度値を表している。
すべてのインデックス値(ERRposiIndex)、すべてのノズル(nzl)、すべての濃度値(d)について、左不吐出補正修正値(LC)及び右不吐出補正修正値(RC)が算出されると、ステップS310に進み、不吐出補正LUT群(L_COFE,R_COFE)を構成する不吐出補正係数が演算される。
不吐出補正LUT群(L_COFE)は、インデックス値(ERRposiIndex)0、1、2の3つの不吐出補正LUT(L_COFE[1],L_COFE[2],L_COFE[3])から構成される。同様に、不吐出補正LUT群(R_COFE)は、インデックス値0、1、2の3つの不吐出補正LUT(R_COFE[1],R_COFE[2],R_COFE[3])から構成される。
ステップS310において、不吐出補正係数が生成され、ルックアップテーブルに記憶されると(不吐出補正LUT群(L_COFE,R_COFE)が生成されると)、不吐出補正係数の導出は終了される(ステップS312)。
このようにして、各ノズルの着弾位置誤差の経時による変動を予測し、着弾位置誤差の変動が予測値(基準値)を超えたときに使用される不吐出補正LUT(複数の不吐出補正から構成される不吐出補正LUT群)を準備しておくことで、経時による着弾位置誤差の変動に対応することができる。
また、着弾位置誤差データの変動状態の違いに応じたインデックス値(ERRposiIndex)が、それぞれの不吐出補正LUTに付与されるので、不吐出補正LUTをインデックス値(ERRposiIndex)によって管理することができる。
以上説明した画像処理方法、装置(プログラム)を用いて生成された画像データ(ハーフトーン処理後の画像データ)は、インクジェット記録装置などの画像記録装置へ提供され、画像記録装置内において記録ヘッドの駆動データが生成される。
以下に画像記録装置の構成例として、インクジェットヘッドを備えたインクジェット記録装置について説明する。
〔インクジェット記録装置への適用例〕
(インクジェット記録装置の全体構成)
図21は、本実施形態に係るインクジェット記録装置の全体構成を示した構成図である。同図に示すインクジェット記録装置310は、色材を含有するインクと該インクを凝集させる機能を有する凝集処理液を用いて、所定の画像データに基づいて記録媒体314の記録面に画像を形成する2液凝集方式の記録装置である。
インクジェット記録装置310は、主として、給紙部320、処理液塗布部330、描画部340、乾燥処理部350、定着処理部360、及び排出部370を備えて構成される。処理液塗布部330、描画部340、乾燥処理部350、定着処理部360の前段に搬送される記録媒体314の受け渡しを行う手段として渡し胴332,342,352,362が設けられるとともに、処理液塗布部330、描画部340、乾燥処理部350、定着処理部360のそれぞれに記録媒体314を保持しながら搬送する手段として、ドラム形状を有する圧胴334,344,354,364が設けられている。
渡し胴332,342,352,362及び圧胴334,344,354,364は、外周面の所定位置に記録媒体314の先端部(又は後端部)を挟んで保持するグリッパー380A,380Bが設けられている。グリッパー380Aとグリッパー380Bにおける記録媒体314の先端部を挟んで保持する構造、及び他の圧胴又は渡し胴に備えられるグリッパーとの間で記録媒体314の受け渡しを行う構造を同一であり、かつ、グリッパー380Aとグリッパー380Bは、圧胴334の外周面の圧胴334の回転方向について180°移動させた対称位置に配置されている。
グリッパー380A,380Bにより記録媒体314の先端部を狭持した状態で渡し胴332,342,352,362、及び圧胴334,344,354,364を所定の方向に回転させると、渡し胴332,342,352,362、及び圧胴334,344,354,364の外周面に沿って記録媒体314が回転搬送される。
なお、図21中、圧胴334に備えられるグリッパー380A,380Bのみ符号を付し、他の圧胴及び渡し胴のグリッパーの符号は省略する。
給紙部320に収容されている記録媒体(枚葉紙)314が処理液塗布部330に給紙されると、圧胴334の外周面に保持された記録媒体314の記録面に、凝集処理液(処理液)が付与される。
その後、凝集処理液が付与された記録媒体314は描画部340に送出され、描画部340において記録面の凝集処理液が付与された領域に色インクが付与され、所望の画像が形成される。
さらに、該色インクによる画像が形成された記録媒体314は乾燥処理部350に送られ、乾燥処理部350において乾燥処理が施されるとともに、乾燥処理後に定着処理部360に送られ、定着処理が施される。乾燥処理及び定着処理が施されることで、記録媒体314上に形成された画像が堅牢化される。このようにして、記録媒体314の記録面に所望の画像が形成され、該画像が記録媒体314の記録面に定着した後に、排出部370から装置外部に搬送される。
(給紙部)
給紙部320は、給紙トレイ322と不図示の送り出し機構が設けられ、記録媒体314は給紙トレイ322から一枚ずつ送り出されるように構成されている。給紙トレイ322から送り出された記録媒体314は、渡し胴(給紙胴)332のグリッパー(不図示)の位置に先端部が位置するように不図示のガイド部材によって位置決めされて一旦停止する。
(処理液塗布部)
処理液塗布部330は、給紙胴332から受け渡された記録媒体314を外周面に保持して記録媒体314を所定の搬送方向へ搬送する圧胴(処理液ドラム)334と、処理液ドラム334の外周面に保持された記録媒体314の記録面に処理液を付与する処理液塗布装置336と、含んで構成されている。処理液ドラム334を図21における反時計回りに回転させると、記録媒体314は処理液ドラム334の外周面に沿って反時計回り方向に回転搬送される。
図21に示す処理液塗布装置336は、処理液ドラム334の外周面(記録媒体保持面)と対向する位置に設けられている。処理液塗布装置336の構成例として、処理液が貯留される処理液容器と、処理液容器の処理液に一部が浸漬され、処理液容器内の処理液を汲み上げる汲み上げローラと、汲み上げローラにより汲み上げられた処理液を記録媒体314上に移動させる塗布ローラ(ゴムローラ)と、を含んで構成される態様が挙げられる。
処理液塗布部330により記録媒体314に付与される処理液は、描画部340で付与されるインク中の色材(顔料)を凝集させる色材凝集剤を含有し、記録媒体314上で処理液とインクとが接触すると、インク中の色材と溶媒との分離が促進される。
(描画部)
描画部340は、記録媒体314を保持して搬送する圧胴(描画ドラム)344と、記録媒体314を描画ドラム344に密着させるための用紙抑えローラ346と、記録媒体314にインクを付与するインクジェットヘッド348M,348K,348C,348Yを備えている。
用紙抑えローラ346は、描画ドラム344の外周面に記録媒体314を密着させるためのガイド部材であり、描画ドラム344の外周面に対向し、渡し胴342と描画ドラム344との記録媒体314の受渡位置よりも記録媒体314の搬送方向下流側であり、かつ、インクジェットヘッド348M,348K,348C,348Yよりも記録媒体314の搬送方向上流側に配置される。
渡し胴342から描画ドラム344に受け渡された記録媒体314は、グリッパー(符号省略)によって先端が保持された状態で回転搬送される際に、用紙抑えローラ346によって押圧され、描画ドラム344の外周面に密着する。このようにして、記録媒体314を描画ドラム344の外周面に密着させた後に、描画ドラム344の外周面から浮き上がりのない状態で、インクジェットヘッド348M,348K,348C,348Yの直下の印字領域に送られる。
インクジェットヘッド348M,348K,348C,348Yはそれぞれ、マゼンダ(M)、黒(K)、シアン(C)、イエロー(Y)の4色のインクに対応しており、描画ドラム344の回転方向(図21における反時計回り方向)に上流側から順に配置されるとともに、インクジェットヘッド348M,348K,348C,348Yのインク吐出面(ノズル面、図25に符号414Aを付して図示する。)が描画ドラム344に保持された記録媒体314の記録面と対向するように配置される。
また、図21に示すインクジェットヘッド348M,348K,348C,348Yは、描画ドラム344の外周面に保持された記録媒体314の記録面とインクジェットヘッド348M,348K,348C,348Yのノズル面が略平行となるように、水平面に対して傾けられて配置されている。
インクジェットヘッド348M,348K,348C,348Yは、記録媒体314における画像形成領域の最大幅(記録媒体314の搬送方向と直交する方向の長さ)に対応する長さを有するフルライン型のヘッドであり、記録媒体314の搬送方向と直交する方向に延在するように固定設置される。
インクジェットヘッド348M,348K,348C,348Yのノズル面には、記録媒体314の画像形成領域の全幅にわたってインク吐出用のノズルがマトリクス配置されて形成されている。
記録媒体314がインクジェットヘッド348M,348K,348C,348Yの直下の印字領域に搬送されると、インクジェットヘッド348M,348K,348C,348Yから記録媒体314の凝集処理液が付与された領域に画像データに基づいて各色のインクが吐出(打滴)される。
インクジェットヘッド348M,348K,348C,348Yから、対応する色インクの液滴が、描画ドラム344の外周面に保持された記録媒体314の記録面に向かって吐出されると、記録媒体314上で処理液とインクが接触し、インク中に分散する色材(顔料系色材)又は不溶化する色材(染料系色材)の凝集反応が発現し、色材凝集体が形成される。これにより、記録媒体314上に形成された画像における色材の移動(ドットの位置ズレ、ドットの色むら)が防止される。
本例では、CMYKの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するインクジェットヘッドを追加する構成も可能であり、各色ヘッドの配置順序も特に限定はない。
(乾燥処理部)
乾燥処理部350は、画像形成後の記録媒体314を保持して搬送する圧胴(乾燥ドラム)354と、該記録媒体314上の水分(液体成分)を蒸発させる乾燥処理を施す溶媒乾燥装置356を備えている。
溶媒乾燥装置356は、乾燥ドラム354の外周面に対向する位置に配置され、記録媒体314に存在する水分を蒸発させる処理部である。描画部340により記録媒体314にインクが付与されると、処理液とインクとの凝集反応により分離したインクの液体成分(溶媒成分)及び処理液の液体成分(溶媒成分)が記録媒体314上に残留してしまうので、かかる液体成分を除去する必要がある。
溶媒乾燥装置356は、ヒータによる加熱、ファンによる送風、又はこれらを併用して記録媒体314上に存在する液体成分を蒸発させる乾燥処理を施し、記録媒体314上の液体成分を除去するための処理部である。記録媒体314に付与される加熱量及び送風量は、記録媒体314上に残留する水分量、記録媒体314の種類、及び記録媒体314の搬送速度(乾燥処理時間)等のパラメータに応じて適宜設定される。
(定着処理部)
定着処理部360は、記録媒体314を保持して搬送する圧胴(定着ドラム)364と、画像形成がされ、さらに、液体が除去された記録媒体314に加熱処理を施すヒータ366と、該記録媒体314を記録面側から押圧する定着ローラ368と、を備えて構成される。なお、定着ドラム364の基本構造は処理液ドラム334、描画ドラム344、及び乾燥ドラム354と共通しているので、ここでの説明は省略する。ヒータ366及び定着ローラ368は、定着ドラム364の外周面に対向する位置に配置され、定着ドラム364の回転方向(図21において反時計回り方向)の上流側から順に配置される。
定着処理部360では、記録媒体314の記録面に対してヒータ366による予備加熱処理が施されるとともに、定着ローラ368による定着処理が施される。ヒータ366の加熱温度は記録媒体の種類、インクの種類(インクに含有するポリマー微粒子の種類)などに応じて適宜設定される。例えば、インクに含有するポリマー微粒子のガラス転移点温度や最低造膜温度とする態様が考えられる。
定着ローラ368は、乾燥させたインクを加熱加圧することによってインク中の自己分散性ポリマー微粒子を溶着し、インクを被膜化させるためのローラ部材であり、記録媒体314を加熱加圧するように構成される。具体的には、定着ローラ368は、定着ドラム364に対して圧接するように配置されており、定着ドラム364との間でニップローラを構成するようになっている。これにより、記録媒体314は、定着ローラ368と定着ドラム364との間に挟まれ、所定のニップ圧でニップされ、定着処理が行われる。
加熱ローラで記録媒体314を加熱することによって、インクに含まれるポリマー微粒子のガラス転移点温度以上の熱エネルギーが付与されると、該ポリマー微粒子が溶融して画像の表面に透明の被膜が形成される。
この状態で記録媒体314の記録面に加圧を施すと、記録媒体314の凹凸に溶融したポリマー微粒子が押し込み定着されるとともに、画像表面の凹凸がレベリングされ、好ましい光沢性を得ることができる。なお、画像層の厚みやポリマー微粒子のガラス転移点温度特性に応じて、定着ローラ368を複数段設けた構成も好ましい。
図21に示すインクジェット記録装置310は、定着処理部360の処理領域の後段(記録媒体搬送方向の下流側)には、インラインセンサ382が設けられている。インラインセンサ382は、記録媒体314に形成された画像(又は記録媒体314の余白領域に形成されたチェックパターン)を読み取るためのセンサであり、CCDラインセンサが好適に用いられる。
本例に示すインクジェット記録装置310は、インラインセンサ382の読取結果に基づいてインクジェットヘッド348M,348K,348C,348Yの吐出特性の経時による変化が検出される。
すなわち、図22に示すように、画像が記録される記録媒体314の余白部にテストパターン384が形成され、テストパターン384は図21のインラインセンサ382によって読み取られ、読取データから各ノズルの着弾位置誤差の情報が取得される。
画像記録が実行されるごとに、インクジェットヘッド348M,348K,348C,348Yに具備される各ノズルの着弾誤差位置が測定され、各ノズルの着弾位置誤差の情報が更新されるので、各ノズルにおける最新の吐出状態が反映された不吐出ノズルの補正が実行される。
(排出部)
図21に戻り、インクジェット記録装置310は、定着処理部360に続いて排出部370が設けられている。排出部370は、張架ローラ372A,372Bに巻きかけられた無端状の搬送チェーン374と、画像形成後の記録媒体314が収容される排出トレイ376と、を備えて構成されている。
定着処理部360から送り出された定着処理後の記録媒体314は、搬送チェーン374によって搬送され、排出トレイ376に排出される。
(インクジェットヘッドの構造の説明)
図23は、図21に示すインクジェットヘッドの概略構成図であり、図23はインクジェットヘッドから記録媒体の記録面を見た図(ヘッドの平面透視図)となっている。
なお、図21に図示したインクジェットヘッド348M,348K,348C,348Yは同一構造を有しているので、以下の説明ではインクジェットヘッド348M,348K,348C,348Yを区別する必要がない場合は、これらを総称して「インクジェットヘッド348」と記載する。
同図に示すインクジェットヘッド348は、n個のサブヘッド348‐i(iは1からnの整数)を一列につなぎ合わせてマルチヘッドを構成している。また、各サブヘッド348‐iは、インクジェットヘッド348の短手方向の両側からヘッドカバー349A,349Bによって支持されている。なお、サブヘッド348‐iを千鳥状に配置してマルチヘッドを構成することも可能である。
複数のサブヘッドにより構成されるマルチヘッドの適用例として、記録媒体の全幅に対応したフルライン型ヘッドが挙げられる。フルライン型ヘッドは、記録媒体の移動方向(副走査方向)と直交する方向(主走査方向)に沿って、記録媒体の主走査方向における長さ(幅)に対応して、複数のノズル(図24に符号408を付して図示する。)が並べられた構造を有している。かかる構造を有するインクジェットヘッド348と記録媒体とを相対的に一回だけ走査させて画像記録を行う、いわゆるシングルパス画像記録方式により、記録媒体の全面にわたって画像を形成し得る。
図24は、サブヘッド348‐iのノズル配列を示す平面図である。同図に示すように、各サブヘッド348‐iは、ノズル408が二次元状に並べられた構造を有し、かかるサブヘッド348‐iを備えたヘッドは、いわゆるマトリクスヘッドと呼ばれるものである。
図24に示したサブヘッド348‐iは、副走査方向Yに対して角度αをなす列方向W、及び主走査方向Xに対して角度βをなす行方向Vに沿って多数のノズル408が並べられた構造を有し、主走査方向Xの実質的なノズル配置密度が高密度化されている。
図24では、行方向Vに沿って並べられたノズル群(ノズル行)は符号408Vを付し、列方向Wに沿って並べられたノズル群(ノズル列)は符号408Wを付して図示されている。
かかるマトリクス配列において、副走査方向の隣接ノズル間隔をLsとするとき、主走査方向については実質的に各ノズル408が一定のピッチ(Ls/tanθ)で直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。
図24に示す構造を有するインクジェットヘッド348は、主走査方向Xと角度βをなす行方向V及び副走査方向Yに対して角度αをなす列方向Wに沿って一定の配列パターンで格子状に多数配列させることにより、本例の高密度ノズルヘッドが実現されている。
図25は、インクジェットヘッド348の立体構造の一例を示す断面図であり、記録素子単位となる1チャンネル分の液滴噴射素子が図示されている。同図に示すインクジェットヘッド348は、圧力室416の天井面に設けられた圧電素子432を動作させて圧力室416内の液体を加圧して、圧力室416と連通するノズル408から液滴を噴射させるように構成されている。
ノズル408から液滴が噴射されると、圧力室416と連通される供給口422を介して、液体の供給源たるタンク(不図示)から共通流路418を経由して圧力室416へ液体が充填される。
図25に示すインクジェットヘッド348は、ノズル面414Aにノズル408が形成されたノズルプレート414と、圧力室416、供給口422、共通流路418等の流路が形成された流路板420等を積層接合した構造から成る。
ノズルプレート414は、インクジェットヘッド348のノズル面414Aを構成し、各圧力室416にそれぞれ連通する複数のノズル408が所定の配置パターンで配置されている。
流路板420は、圧力室416の側壁部を構成するとともに、共通流路418から圧力室416にインクを導く個別供給路の絞り部(最狭窄部)としての供給口422が形成される流路形成部材である。
なお、説明の便宜上、図25では簡略的に図示しているが、流路板420は一枚又は複数の基板を積層した構造である。ノズルプレート414及び流路板420は、シリコンを材料として半導体製造プロセスによって所要の形状に加工することが可能である。
圧力室416の一部の面(図25において天井面)を構成する振動板424には、上部電極(個別電極)426及び下部電極428を備え、上部電極426と下部電極428との間に圧電体430がはさまれた構造を有する圧電素子(ピエゾ素子)432が接合されている。
振動板424を金属薄膜や金属酸化膜により構成すると、圧電素子432の下部電極428に相当する共通電極として機能する。なお、樹脂などの非導電性材料によって振動板を形成する態様では、振動板部材の表面に金属などの導電材料による下部電極層が形成される。
上部電極426に駆動電圧を印加することによって圧電素子432が変形するとともに振動板424が変形して圧力室416の容積が変化し、これに伴う圧力変化によりノズル408から液滴が噴射される。
本発明に係る画像処理方法は、特に、フルライン型のインクジェットヘッドを用いたシングルパス方式による画像記録に効果を発揮する。かかる画像記録では、不吐出ノズルが発生すると、当該不吐出ノズルによる描画位置に記録媒体の移動方向に沿うすじ状の濃度むらや、故障ノズルの近接による視覚効果(黒すじむら)が発生すると、画像品質を著しく低下させてしまう。
もちろん、本発明に係る画像記録方法は、シリアル方式におけるシングルパス画像記録についても、ヘッドの走査方向に沿うすじ状のむらの視認性の低減化に一定の効果を発揮する。
(制御系の説明)
図26は、インクジェット記録装置310のシステム構成を示すブロック図である。図26に示すように、インクジェット記録装置310は、通信インターフェース440、システム制御部442を備え、システム制御部442により装置各部の統括的な制御が行われる。
通信インターフェース440は、ホストコンピュータ454から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース440にはUSB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。
システム制御部442は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置310の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能する。
また、搬送制御部444、画像処理部446、ヘッド駆動部448などを制御する制御信号を生成し、画像メモリ450、ROM452のメモリコントローラとしての機能を有している。
画像処理部446は、画像データに所定の処理を施す処理ブロックであり、画像処理機能を有するプロセッサが含まれる。ホストコンピュータ454から送出された画像データは通信インターフェース440を介してインクジェット記録装置310に取り込まれ、一旦画像メモリ450に記憶される。
画像メモリ450は、通信インターフェース440を介して入力された画像を格納する記憶手段であり、システム制御部442を通じてデータの読み書きが行われる。画像メモリ450は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
画像メモリ450には、システム制御部442のCPUが実行するプログラム及び制御に必要な各種データ(テストチャートを打滴するためのデータ、異常ノズル情報などを含む)が格納されている。
画像メモリ450は、書き換え不能な記憶手段であってもよいし、書き換え可能な記憶手段であってもよい。
不図示の一時記憶部は、画像データや各種データの一時記憶領域として利用されるとともに、プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域としても利用される。
画像処理部446は、システム制御部442の制御に従い、画像メモリ内の画像データ(多値の入力画像のデータ)から打滴制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理手段として機能する。画像処理部446により生成された打滴制御用の信号(インク吐出データ)はヘッド駆動部448へ供給される。
すなわち、画像処理部446は、濃度データ生成部、補正処理部、インク吐出データ生成部といった機能ブロックを含んで構成される。これら各機能ブロックは、ASICやソフトウエア又は適宜の組み合わせによって実現可能である。
濃度データ生成部は、入力画像のデータからインク色別の初期の濃度データを生成する信号処理手段であり、濃度変換処理(UCR処理や色変換を含む)及び必要な場合には画素数変換処理を行う。
補正処理部は、濃度補正係数(むら補正係数、不吐出補正係数)を用いて濃度補正の演算を行う処理手段であり、むら補正処理などの濃度データの補正処理を行う。すなわち、補正処理部は、図4の濃度補正処理部20に対応している。
インク吐出データ生成部は、補正処理部で生成された補正後の画像データ(濃度データ)から2値又は多値のドットデータに変換するハーフトーニング処理手段を含む信号処理手段であり、二値(多値)化処理を行う。ハーフトーン処理の手段としては、誤差拡散法、ディザ法、閾値マトリクス法、濃度パターン法など、各種公知の手段を適用できる。
図26に示す画像処理部446及び画像処理部446の制御手段として機能するシステム制御部442は、図4の制御部12に対応する構成である。
画像処理部446には不図示の画像バッファメモリが備えられており、画像処理部446における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリに一時的に格納される。
なお、画像バッファメモリは画像処理部446に付随する態様でもよいし、画像メモリと兼用することも可能である。また、画像処理部446はシステム制御部442と統合されて、1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
画像処理部446(インク吐出データ生成部)で生成されたインク吐出データはヘッド駆動部448に与えられ、インクジェットヘッド348のインク吐出動作が制御される。
ヘッド駆動部448は、インクジェットヘッド348の吐出駆動を制御する手段として機能し、インクジェットヘッド348の各ノズル408に対応した圧電素子432(図25参照)を駆動するための駆動信号波形を生成する駆動波形生成部が含まれる。
駆動波形生成部から出力される信号は、デジタル波形データであってもよいし、アナログ電圧信号であってもよい。
画像入力から印字出力までの処理の流れを概説すると、印刷すべき画像のデータは、通信インターフェース440を介して外部から入力され、画像メモリに蓄えられる。この段階では、例えば、RGBの多値の画像データが画像メモリに記憶される。
インクジェット記録装置310では、インク(色材)による微細なドットの打滴密度やドットサイズを変えることによって、人の目に疑似的な連続階調の画像を形成するため、入力されたデジタル画像の階調(画像の濃淡)をできるだけ忠実に再現するようなドットパターンに変換する必要がある。
そのため、画像メモリに蓄えられた元画像(RGB)のデータは、システム制御部442を介して画像処理部446に送られ、濃度データ生成部、補正処理部、インク吐出データ生成部による処理を経てインク色ごとのドットデータに変換される。
すなわち、画像処理部446は、入力されたRGB画像データをM,K,C,Yの4色のドットデータに変換する処理を行う。こうして画像処理部446で生成されたドットデータは、画像バッファメモリに蓄えられる。
この色別ドットデータは、インクジェットヘッド348のノズルからインクを吐出するためのMKCY打滴データに変換され、印字されるインク吐出データ(各ノズルの駆動タイミングと各ノズルにおける駆動タイミングごとのドットサイズ(吐出量))が確定する。
ヘッド駆動部448は、インク吐出データ及び駆動信号(駆動波形)に基づき、印字内容に応じてインクジェットヘッド348の各ノズル408に対応する圧電素子432を駆動するための駆動信号を出力する。ヘッド駆動部448にはヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
こうして、ヘッド駆動部448から出力された駆動信号がインクジェットヘッド348に加えられることによって、該当するノズル408からインクが吐出される。記録媒体314の搬送速度に同期してインクジェットヘッド348からのインク吐出を制御することにより、記録媒体314上に画像が形成される。
上記のように、画像処理部446における所要の信号処理を経て生成されたインク吐出データ、及び波形発生部445により生成された駆動信号波形に基づき、ヘッド駆動部448を介して各ノズルからのインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
図26に図示したインライン検出部470は、ノズル検知パターンの読み取り、読取データの処理、異常ノズルの判断の処理を経て、異常ノズルに関する情報をシステム制御部442へ提供する機能ブロックである。
インライン検出部470は、図21に図示したインラインセンサ382が含まれる。本例に示す画像記録方法において、不吐出ノズル情報を取得する手段として、インライン検出部470によりテストパターンを読み取り、当該読取情報を解析する構成を適用することができる。
システム制御部442は、インライン検出部470から得られる異常ノズルに関する情報や、その他の情報に基づいてインクジェットヘッド348に対する各種補正を行うとともに、必要に応じて予備吐出や吸引、ワイピング等のクリーニング動作(ノズル回復動作)を実施する制御を行う。
このインライン検出部470の検出結果を用いて、インクジェットヘッド348M,348K,348C,348Yの吐出特性の経時変化を監視することができる。図22に図示したテストパターン384を画像記録ごと(又は定期的に)形成し、テストパターン384の読取データから各ノズルの着弾位置誤差データ値を測定し、記憶しておくことが可能である。
また、本例では、不吐出ノズルの補正について説明したが、本発明は、不吐出ノズルだけでなく、吐出がされるものの液滴の着弾位置の誤差が許容範囲を超える着弾位置異常ノズルや、液滴の吐出量の誤差が許容範囲を超える吐出量異常ノズルなど、吐出異常ノズルの補正にも適用可能である。
〔他の装置への応用例〕
他の装置構成例として、例えば、電子回路の配線パターンを描画する配線描画装置、各種デバイスの製造装置、吐出用の機能性液体として樹脂液を用いるレジスト印刷装置、カラーフィルタ製造装置、マテリアルデポジション用の材料を用いて微細構造物を形成する微細構造物形成装置など、液状機能性材料を用いて様々な形状やパターンを得るインクジェットシステムにも広く適用できる。
以上説明した画像処理方法、装置、画像記録装置は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更、追加、削除をすることが可能である。
〔本明細書が開示する発明〕
上記に詳述した発明の実施形態についての記載から把握されるとおり、本明細書は少なくとも以下に示す発明を含む多様な技術思想の開示を含んでいる。
(第1態様):画像データを取得する画像データ取得工程と、記録ヘッドに具備される複数の記録素子のそれぞれの記録特性に起因する画像のむらを補正する補正処理に用いられる補正係数を設定する補正係数設定工程と、設定された補正係数を用いて画像データに補正処理を施す補正処理工程と、近接する位置の記録素子の記録状態が異常であることを示す異常記録素子検出データを取得する異常記録素子検出データ取得工程と、記録ヘッドに具備される記録素子ごとの記録位置誤差を示す記録位置誤差データを取得する記録位置誤差データ取得工程と、記録素子の記録位置誤差の大きさに応じて複数に分類された複数の異常記録素子補正用の補正係数を記憶する記憶工程と、を含み、補正係数設定工程は、取得された異常記録素子検出データに基づいて判断された近接位置の記録素子に異常が発生した記録素子に対して、記憶された異常記録素子補正用の補正係数を設定し、かつ、記録素子の記録位置誤差データに基づいて、記憶された複数の異常記録素子補正用の補正係数の中から、記録素子の記録位置誤差データに対応した補正係数を設定する画像処理方法。
第1態様によれば、近接位置の記録素子の記録状態が異常であることを示す異常記録素子検出データが取得され、記録ヘッドに具備される記録素子ごとの記録位置誤差を示す記録位置誤差データが取得され、これらに基づいて、近接する位置に異常記録素子が存在する正常な記録素子に対して、記録位置誤差の大きさに応じた異常記録素子補正用の補正係数が設定されるので、異常記録素子の発生による画像欠陥を補正する記録素子の記録位置誤差の経時変化に対応することができる。
入力画像に対して色変換処理を施す色変換処理工程と、色変換後の画像データを色ごとの画像データに分版する分版処理工程と、分版処理後の各色の画像データにガンマ補正処理を施すガンマ補正処理工程と、を含み、ガンマ補正処理後の画像データに対して補正処理を施す態様が好ましい。
また、補正処理後の画像データにハーフトーン処理を施すハーフトーン処理工程を含む態様が好ましい。
(第2態様):第1態様に記載の画像処理方法において、取得された記録位置誤差データを、近接位置に異常記録素子が存在する正常記録素子の記録位置誤差が記録素子の配列の一方の端側へ生じるか、記録素子の配列の他方の端側へ生じるかを表す記録位置誤差情報に変換する記録位置誤差情報変換工程を含み、記憶工程は、複数の異常記録素子補正用の補正係数として、個別のインデックス値が付与された、一方の端側へ記録位置誤差が生じる記録素子を補正する補正係数と、他方の端側へ記録位置誤差が生じる記録素子を補正する補正係数と、を記憶し、補正係数設定工程は、変換された記録位置誤差情報に対応するインデックス値が付与された補正係数を設定する。
第2態様によれば、異常記録素子の発生による画像欠陥を補正する記録素子における、記録位置誤差が発生する方向別に補正係数が準備されるので、記録位置誤差の方向別に補正をすることができる。
(第3態様):第1態様又は第2態様に記載の画像処理方法において、記憶工程は、記録状態が正常である正常記録素子補正用の補正係数を記憶し、補正係数設定工程は、記録状態が正常の正常記録素子であり、正常記録素子に近接する記録素子の記録状態が正常である場合に、正常記録素子に対して正常記録素子補正用の補正係数を設定する。
第3態様によれば、記録状態が正常である正常記録素子は、正常記録素子補正用の補正係数が設定されるので、正常記録素子に適した補正処理が実行される。
(第4態様):第1態様から第3態様のいずれかに記載の画像処理方法において、記憶工程は、記録状態が異常である異常記録素子用の補正係数として定数を記憶し、補正係数設定工程は、異常記録素子に対して定数を設定する。
かかる態様によれば、異常記録素子に対して、補正係数として定数が設定されるので、異常記録素子に適した補正処理が実行される。
かかる態様における定数は、画素値の最小値やゼロを適用することができる。
(第5態様):第1態様から第4態様のいずれかに記載の画像処理方法において、取得された異常記録素子検出データに基づいて、近接位置に異常記録素子が存在する正常記録素子の一方の側に異常記録素子が存在するか、他方の側に異常記録素子が存在するかを示す異常記録素子情報を設定する異常記録素子情報設定工程を含み、記憶工程は、複数の異常記録素子補正用の補正係数として、処理対象の記録素子の一方の側の近接位置に異常記録素子がある場合の補正係数、及び処理対象の記録素子の他方の側の近接位置に異常記録素子がある場合の補正係数を記憶し、補正係数設定工程は、設定された異常記録素子情報に基づいて補正係数を設定する。
第5態様によれば、異常記録素子が一方の側に存在するか、他方の側に存在するかによって補正係数を切り換えることができ、異常記録素子がどちら側に存在するか応じた補正処理を実行することができる。
(第6態様):第1態様から第5態様のいずれかに記載の画像処理方法において、補正係数は、記録素子の番号、画素値を変数とするテーブル形式で記憶される。
第6態様によれば、補正係数をテーブル形式で記憶することで、処理条件に応じた補正係数の切り換えが容易である。
(第7態様):画像データを取得する画像データ取得手段と、記録ヘッドに具備される複数の記録素子のそれぞれの記録特性に起因する画像のむらを補正する補正処理に用いられる補正係数を設定する補正係数設定手段と、設定された補正係数を用いて画像データに補正処理を施す補正処理手段と、近接する位置の記録素子の記録状態が異常であることを示す異常記録素子検出データを取得する異常記録素子検出データ取得手段と、記録ヘッドに具備される記録素子ごとの記録位置誤差を示す記録位置誤差データを取得する記録位置誤差データ取得手段と、記録素子の記録位置誤差の大きさに応じて複数に分類され、分類ごとに生成された異常記録素子補正用の補正係数を記憶する記憶手段と、を備え、補正係数設定手段は、取得された異常記録素子検出データに基づいて判断された近接位置の記録素子に異常が発生した記録素子に対して、記憶された異常記録素子補正用の補正係数を設定し、かつ、記録素子の記録位置誤差データに基づいて、記憶された複数の異常記録素子補正用の補正係数の中から、記録素子の記録位置誤差データに対応した補正係数を設定する画像処理装置。
第7態様において、入力画像に対して色変換処理を施す色変換処理手段と、色変換後の画像データを色ごとの画像データに分版する分版処理手段と、分版処理後の各色の画像データにガンマ補正処理を施すガンマ補正処理手段と、を備え、ガンマ補正処理後の画像データに対して補正処理を施す態様が好ましい。
また、補正処理後の画像データにハーフトーン処理を施すハーフトーン処理手段を備える態様が好ましい。
(第8態様):コンピュータに、画像データを取得する画像データ取得機能と、記録ヘッドに具備される複数の記録素子のそれぞれの記録特性に起因する画像のむらを補正する補正処理に用いられる補正係数を設定する補正係数設定機能と、設定された補正係数を用いて画像データに補正処理を施す補正処理機能と、近接する位置の記録素子の記録状態が異常であることを示す異常記録素子検出データを取得する異常記録素子検出データ取得機能と、記録ヘッドに具備される記録素子ごとの記録位置誤差を示す記録位置誤差データを取得する記録位置誤差データ取得機能と、記録素子の記録位置誤差の大きさに応じて複数に分類され、分類ごとに生成された異常記録素子補正用の補正係数を記憶する記憶機能と、を実現させる画像処理プログラムにおいて、補正係数設定機能は、取得された異常記録素子検出データに基づいて判断された近接位置の記録素子に異常が発生した記録素子に対して、記憶された異常記録素子補正用の補正係数を設定し、かつ、記録素子の記録位置誤差データに基づいて、記憶された複数の異常記録素子補正用の補正係数の中から、記録素子の記録位置誤差データに対応した補正係数を設定する画像処理プログラム。
第8態様において、入力画像に対して色変換処理を施す色変換処理機能と、色変換後の画像データを色ごとの画像データに分版する分版処理機能と、分版処理後の各色の画像データにガンマ補正処理を施すガンマ補正処理機能と、を備え、ガンマ補正処理後の画像データに対して補正処理を施す態様が好ましい。
また、補正処理後の画像データにハーフトーン処理を施すハーフトーン処理機能を備える態様が好ましい。
(第9態様):複数の記録素子を具備する記録ヘッドと、入力画像データをドットデータに変換する画像処理手段と、ドットデータから記録ヘッドを動作させる駆動信号を生成する駆動信号生成手段と、を備え、画像処理手段は、画像データを取得する画像データ取得手段と、記録ヘッドに具備される複数の記録素子のそれぞれの記録特性に起因する画像のむらを補正する補正処理に用いられる補正係数を設定する補正係数設定手段と、設定された補正係数を用いて画像データに補正処理を施す補正処理手段と、近接する位置の記録素子の記録状態が異常であることを示す異常記録素子検出データを取得する異常記録素子検出データ取得手段と、記録ヘッドに具備される記録素子ごとの記録位置誤差を示す記録位置誤差データを取得する記録位置誤差データ取得手段と、記録素子の記録位置誤差の大きさに応じて複数に分類され、分類ごとに生成された異常記録素子補正用の補正係数を記憶する記憶手段と、を備え、補正係数設定手段は、取得された異常記録素子検出データに基づいて判断された近接位置の記録素子に異常が発生した記録素子に対して、記憶された異常記録素子補正用の補正係数を設定し、かつ、記録素子の記録位置誤差データに基づいて、記憶された複数の異常記録素子補正用の補正係数の中から、記録素子の記録位置誤差データに対応した補正係数を設定する画像記録装置。
画像記録装置には、インクジェットヘッドからカラーインクを吐出させるインクジェット記録装置が含まれる。
(第10態様):第9態様に記載の画像記録装置において、記録ヘッドを用いて記録媒体上のテストパターンを生成するテストパターン生成手段と、生成されたテストパターンを読み取る読取手段と、読取手段の読取データに基づいて記録素子ごとの記録状態の異常有無を判断し、判断の結果から異常記録素子検出データを生成する異常記録素子検出データ生成手段と、を備えている。
第10態様によれば、画像記録ごとにテストパターンを生成し、異常記録素子検出データを生成することで、画像記録ごとに異常記録素子が検出されるとともの、記録位置誤差の変動を把握することができる。