以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
〔不吐出補正処理の高速処理技術の説明〕
図1は、本発明の実施形態に係る画像記録方法(不吐出補正技術)に適用される高速処理技術の概念図である。インクジェット記録装置などの画像形成装置において、ゴミ詰まり等に起因する突然の不吐出が発生することがあり得る。一方、インクジェットヘッドのメンテナンス実行による不吐出状態の回復や経時による突発的な不吐出状態の回復が起こり得る。このようなノズルの吐出状態の変化に対応するためには、各ノズルの吐出状態を定期的に監視するとともに、あるノズルが不吐出状態になったことが把握されると直ちに通常のデータから不吐出補正用のデータへの切り換えが実行されるように、不吐出補正用のデータを予め準備しておく必要がある。
しかし、各ノズルの打滴位置誤差を使用した不吐出補正方法によって高い補正精度を得るためには、新たな不吐出ノズルが発生するたびに補正用のデータの導出演算をやり直すことになり、この補正用データの導出演算は多くの処理時間を必要とするために、補正処理のリアルタイム性が損なわれることが懸念される。
本例に示す不吐出補正方法は、複数のノズルが所定の配置で並べられた構造を有するインクジェットヘッドにおけるすべてのノズルについて、一方の隣接ノズルが不吐出になったときの補正用のデータと、他方の隣接ノズルが不吐出になったときの補正用のデータが予め求められており、不吐出ノズルが発生すると直ちに、当該不吐出ノズルの隣接ノズルに対応する位置(画素)のデータ(濃度値)は予め求められている補正用のデータと入れ換えられる。かかる構成によって不吐出ノズルの発生に対して直ちに補正対応が可能となる。予め求められた補正用のデータは、ノズル番号(x)と濃度値とをパラメータとするLUT(ルックアップテーブル)に記憶される。
図1に示すムラ補正LUT10は、すべてのノズルについて、ノズルごとにムラ補正係数が記憶されたLUTであり、ノズル番号(x=1、2、3、…、i、…)と濃度値(例えば、0〜255)をパラメータとしている。「ムラ補正係数」は、各ノズルの吐出特性(ノズルローカリティ)に起因して出現する記録画像の濃度ムラを補正するための補正係数であり、不吐出ノズルが把握されていない場合は、ムラ補正係数によって濃度値が補正される。
また、不吐出補正LUT(i−1)12は、注目ノズル(ノズル番号iのノズル)が不吐出ノズルとして把握されたときの、(i−1)番目のノズルの補正係数が格納されたLUTである。また、不吐出補正LUT(i+1)14は、注目ノズル(ノズル番号iのノズル)が不吐出ノズルとして把握されたときの、(i+1)番目のノズルの補正係数が格納されたLUTである。不吐出補正LUT(i−1)12及び不吐出補正LUT(i+1)14は、ノズル番号iと濃度値をパラメータとするLUTである。
すなわち、ノズル番号iのノズルが不吐出ノズルとして把握されると、当該不吐出ノズルに隣接するノズル番号(i−1)のノズルに対応する位置と、ノズル番号(i+1)のノズルに対応する位置について、ムラ補正係数は不吐出補正係数に置き換えられる。かかる構成によって、不吐出ノズルが発生すると直ちに、不吐出ノズルの隣接ノズルに対応する位置のデータが補正される。このように、隣接ノズルが不吐出になった場合の補正用のデータを、ノズルごと及び濃度値ごとに求めておき、LUTなどに記憶しておくことで、不吐出ノズルの発生に対する補正処理のリアルタイム性が確保される。
〔近接する不吐出ノズルの補正の最適化技術の説明〕
図2(a)は、近接する複数のノズルが不吐出ノズルとして把握されたときの補正の最適化技術の説明図である。また、図2(b)は、近接する複数のノズルが不吐出ノズルとして把握されたときの補正における問題点を説明する図である。孤立したノズルが不吐出になったときは、両側に隣接するノズルに対応する位置の濃度値を上げて、不吐出ノズルに対応する位置の濃度低下を補正する技術が知られている。例えば、図2(a)に図示されたヘッド20において、ノズル22Aが不吐出になると、不吐出ノズル22Aの一方の隣接ノズル22Cに対応する位置の濃度を上げるとともに、不吐出ノズル22Aの他方の隣接ノズル22Dに対応する位置の濃度を上げると、ノズル22Aに対応する位置の濃度低下を抑制することができる。
不吐出ノズルが複数存在する場合にも、それぞれの不吐出ノズルに隣接するノズルに対応する位置の濃度値を補正することで、各不吐出ノズルに対応する位置の濃度低下を抑制することが可能である。
一方、図2(a)に示すヘッド20は、近接位置にある複数のノズル22A,22Bがともに不吐出となっている。かかる場合に、不吐出ノズル22Aの両隣のノズル22C,22Dに対応する位置の濃度値が補正され、不吐出ノズル22Bの両隣のノズル22E,22Fに対応する位置の濃度値が補正されると、不吐出ノズル22Aに対応する補正と不吐出ノズル22Bに対応する補正が相互に作用してしまい、不吐出ノズル22Aに対応する位置と不吐出ノズル22Bに対応する位置との間に濃度ムラ(黒スジムラ)が視認され得る。特に、ヘッドと記録媒体の描画領域とを相対的に1回だけ操作させて記録媒体の全面にわたって画像記録を行うシングルパス方式では、ヘッドと記録媒体との走査方向に沿うスジ状のムラとして視認される。
図2(b)に示すように、図2(a)に図示されたノズル22C,22D,22E,22Fに対応する位置の補正後の濃度をすべて同じ値(図2(a)では、補正前の濃度の約1.5倍)とすると、出力画像30’には視認され得る黒スジムラ32が発生し、画像品質を著しく低下させてしまう。そこで、近接した位置に不吐出ノズルが存在する場合は、不吐出ノズル22Aの隣接ノズル22Dに対応する位置、及び不吐出ノズル22Bの隣接ノズル22Eに対応する位置の濃度補正値を修正することで、不吐出ノズル22Aに対応する位置と不吐出ノズル22Bに対応する位置との間における濃度ムラを抑制し得る。
すなわち、図2(a)に示すように、ノズル22Dに対応する位置及びノズル22Eに対応する位置の補正後の濃度を、ノズル22Cに対応する位置及びノズル22Fに対応する位置の補正後の濃度よりも小さくすることで、ノズル22Dに対応する位置の補正後の濃度とノズル22Eに対応する位置の補正後の濃度との相互作用が緩和され、出力画像30には出力画像30’に出現したような黒スジムラは視認されない。
複数の不吐出ノズルが近接する位置に存在する場合の修正用データ(修正係数)を予め準備しておき、不吐出ノズルが把握されるとともに、当該不吐出ノズルに近接して別の不吐出ノズルが存在することが把握されると、直ちに、当該不吐出ノズルの隣接ノズルに対応する位置について濃度値が修正される。
しかし、ここで説明した「近接する不吐出ノズルの補正の最適化技術」による高精度の補正を実現しつつ、先に説明した「不吐出補正処理の高速処理技術」により全体処理の高速化を実現するには、不吐出ノズルが発生するたびに不吐出ノズル間の間隔や不吐出ノズルの繰り返し数を分析する工程が必要である。一方、かかる分析工程の存在は不吐出ノズルの発生に対してリアルタイムに処理を実行するための障害となり得る。他方、かかる分析工程に代わり、すべてのノズルについて濃度値ごとに不吐出ノズル間隔分、不吐出ノズルの繰り返し数分のすべての組み合わせについて、不吐出補正係数の修正値のデータを準備することは実質的に困難である。
そこで、本例に示す不吐出補正方法は、既に発生している不吐出ノズルを把握し、不吐出ノズルの発生状況から不吐出となる可能性が高い正常ノズルを予測し(既に不吐出となっている不吐出ノズルの近接位置のノズルのうち、不吐出となる可能性が正常ノズルを把握して)、当該正常ノズルを仮の不吐出ノズルと認識し、当該正常ノズルの隣接ノズルに不吐出補正係数の修正用のデータが割り当てられる。
すなわち、不吐出ノズル情報から把握される不吐出ノズルとの間で所定の条件を満たす正常ノズルについて、当該正常ノズルの隣接ノズルに対して不吐出ノズルと同様の不吐出補正係数の修正用のデータが割り当てられる。したがって、新たに不吐出ノズルが発生しても、直ちに不吐出補正係数が所定の正常ノズルの隣接ノズルに割り当てられた不吐出補正係数の修正用のデータに切り換えることができ、処理の高速性を確保しつつ、近接する不吐出ノズルの補正の最適化が実現可能である。
〔不吐出補正が適用される画像記録の説明〕
次に、上述した「不吐出補正処理の高速処理技術」及び「近接する不吐出ノズルの補正の最適化技術」の両立が実現された画像記録方法について具体例を挙げて説明する。
図3は、本例に示す画像記録方法の処理の流れを示すフローチャートである。ここでは、K(黒)、C(シアン)、M(マゼンダ)、Y(イエロー)の各色インクを用いたインクジェット方式によりカラー画像が記録される場合について説明する。
図3に示すように、ステップS10において画像データが取得される。かかる画像データは、R(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)の各色について256階調を有している。次に、RGBデータをKCMYデータに変換する濃度変換処理が実行される(ステップS12)。
一方、ステップ14において不吐出ノズル情報が取得され、この不吐出ノズル情報に基づいてノズルごとにムラ補正係数と不吐出補正係数との切り換えが行われる(ステップS16)。不吐出ノズルの情報は所定のメモリに記憶され、適宜更新される。すなわち、不吐出ノズルのノズル番号をiとすると、不吐出ノズルの隣接ノズル(ノズル番号がi−1、i+1のノズル)はムラ補正係数から不吐出補正係数へ置き換えられる。なお、ここでいう「不吐出ノズル情報」は画像記録ごとに更新される最新の情報が用いられる。
また、予め決められたノズル属性情報が読み出され(ステップS18)、不吐出補正係数が割り当てられたノズル(不吐出ノズルの隣接ノズル)は、ノズル属性情報に基づいて不吐出補正係数が修正される(ステップS20)。ステップS18の「ノズル属性情報」は、近接する位置に不吐出ノズルが存在する場合の修正用のデータを決めるためのパラメータとして機能している。
ノズル属性情報は、不吐出ノズル間の間隔の情報(間隔情報)及び不吐出ノズルの周期の情報(周期情報)が含まれたものであり、所定の条件を満たす不吐出ノズルの隣接ノズル、及び不吐出ノズルとの関係が所定の条件を満たす正常ノズルの隣接ノズルに付与される。また、ノズル属性情報は不吐出ノズルの情報の更新に対応して更新される。
例えば、図2(a)の不吐出ノズル22Aをノズル番号がi番目のノズルとすると、ノズル22Dはノズル番号が(i+1)番目のノズルであり、不吐出ノズル22Aの補正をするための不吐出補正係数が割り当てられる。さらに、不吐出ノズル22Aに近接して不吐出ノズル22Bが存在しているので、ノズル22Dのノズル属性情報に基づいて不吐出補正係数が修正される。図2(a)のノズル22Eについてもノズル22Dと同様にノズル属性情報に基づく不吐出補正係数の修正処理が実行される。一方、ノズル22Cについては、不吐出ノズル22Aのノズル22C側に他の不吐出ノズルが存在していないので、図3のステップS16で割り当てられた不吐出補正係数が使用される。ノズル22Fについてもノズル22Cと同様に図3のステップS16で割り当てられた不吐出補正係数が使用される。
このようにして、すべてのノズルについて、ムラ補正係数、不吐出補正係数又はノズル属性に基づく修正後の不吐出補正係数(修正用のデータ)のいずれかが割り当てられると、ステップS22に進み、ハーフトーン処理(量子化処理)が実行され、ドットデータが生成される。このドットデータに基づいて生成された駆動信号により各ノズルに対応する加圧素子が駆動され、所定の打滴タイミングにおいて各ノズルからインク液滴が打滴される(ステップS24)。ステップS24において、画像出力が実行されるとともに、不吐出ノズル情報が更新され、更新された不吐出ノズル情報に基づいてノズル属性情報が更新される。
図4は、ムラ補正係数、不吐出補正係数、修正用のデータ(修正係数)の切り換えを説明する概念図である。同図に示すムラ補正LUT10は、両隣のノズルが正常ノズルである場合の各ノズルのムラ補正係数が格納されている。ムラ補正LUT10は全ノズル数×濃度値(階調数)分のデータを有し、ノズル番号(x)と濃度値がパラメータとなっており、ノズルごと及び濃度値ごとにムラ補正係数が記憶されている。
また、不吐出補正LUT(i−1)12(図1参照)は、一方の隣接ノズル(ノズル番号が1つ前のノズル)が不吐出である場合の各ノズルの不吐出補正係数が格納され、不吐出補正LUT(i+1)14は、他方の隣接ノズル(例えば、ノズル番号が1つ後のノズル)が不吐出である場合の各ノズルの不吐出補正係数が格納されている。不吐出補正LUT(i−1)12及び不吐出補正LUT(i+1)14は、全ノズル数×濃度値分のデータを有し、ノズル番号(x)と濃度値がパラメータとなっており、ノズルごと及び濃度値ごとに不吐出補正係数が記憶されている。
図4に示す選択部40は、フラグテーブル42と、LUT切換部44と、インデックステーブル46と、を備えている。フラグテーブル42は、ルックアップテーブルの選択情報(フラグデータ)が記憶されている。本例では、対象ノズルの両隣のノズルが不吐出ノズルでない場合は「0」、対象ノズルが不吐出ノズルである場合は「1」、対象ノズルの1つ前のノズル番号を有するノズルが不吐出ノズルの場合は「2」、対象ノズルの1つ後のノズル番号を有するノズルが不吐出ノズルの場合は「3」が入力される。図4に示すフラグテーブル42は、不吐出ノズル情報に基づいて作成される。
LUT切換部44は、ノズル番号(x)に基づいてフラグテーブル42から対象ノズルのフラグデータ(0〜4)を読み出し、該フラグデータに応じてムラ補正LUT10からムラ補正係数を読み出すか、不吐出補正LUT12又は不吐出補正LUT14から不吐出補正係数を読み出すか、又は定数を読み出すかの切り換えを実行する。
また、選択部40は、ノズル属性情報に対応する修正係数が格納されたインデックステーブル46を備えている。このインデックステーブル46の詳細は後述するが、ノズル番号(x)をパラメータとして、ノズル属性情報記憶部48からから対象ノズルに付与されるノズル属性情報が読み出される。読み出されたノズル属性情報に基づいて、インデックステーブル46から修正係数が読み出され、かかる修正係数によって当該不吐出補正係数が修正される。
先に説明したように、ノズル属性情報記憶部48に記憶されているノズル属性情報は、不吐出ノズル情報の更新に対応して更新されるので、インデックステーブル46から修正係数を読み出す際には、最新のノズル属性情報が適用される。
〔ノズル属性情報の説明〕
次に、本例に示す画像記録における不吐出補正処理に適用されるノズル属性情報について説明する。先に説明したように、複数の不吐出ノズルが近接した位置に存在する場合に、適正な補正処理を実行するためには、不吐出ノズルの間隔及び不吐出ノズルの周期を分析しなくてはならない。しかし、不吐出ノズルの発生に対してリアルタイムに補正処理をしつつ、画像記録全体として高速に処理を行なうには、不吐出ノズル間の間隔及び不吐出ノズルの周期を分析する工程の処理時間が問題となる。
そこで、未だ不吐出となっていない正常ノズルについて、仮に不吐出となり既に不吐出ノズルとして把握されている他のノズルと近接する可能性があるものについて、当該正常ノズルを仮の不吐出ノズルと認識して、当該仮の不吐出ノズルの隣接ノズルについて予め修正係数が準備される。この修正係数が決められる際に各ノズルに付与されたノズル属性情報が用いられる。
図5は、ノズル属性情報の生成手順を示すフローチャートである。先ず、最新の不吐出ノズル情報が取得され(ステップS100)、最新の不吐出ノズル情報について、不吐出ノズル間の間隔が解析されるとともに(ステップS102)、不吐出ノズル間の周期が解析される(ステップS104)。ステップS102及びステップS104において求められた不吐出ノズルの間隔及び周期に基づいて、条件Aを満たす不吐出ノズルの隣接ノズルにノズル属性情報が付与されるとともに(ステップS106)、条件Bを満たす不吐出ノズルの隣接ノズルにノズル属性情報が付与される(ステップS108)。ステップS106及びステップS108において対象ノズルに付与されたノズル属性情報は、所定のメモリに記憶(更新)される(ステップS110)。
ステップS106における「条件A」とは、不吐出ノズルに対して設定される、特定の間隔数及び周期数条件を示し、ステップS108における「条件B」とは、正常ノズルに対して設定される、不吐出ノズルとの間隔数条件を示している。
ここで、上述した「条件A」における不吐出ノズル間の間隔(間隔数)及び不吐出ノズル間の周期(周期数)、「条件B」における不吐出ノズルとの間隔数について説明する。図6(a)は、不吐出ノズル間隔の説明図である。同図における「○」は正常ノズルを意味し、「×」は不吐出ノズルを意味している。同図に示すように、間隔数は不吐出ノズル間のノズルピッチ数(不吐出ノズル間に存在する正常ノズルの数に1を加えた値)を意味している。すなわち、「間隔数=4」は、2つの不吐出ノズルは4ノズル間ピッチ離れた位置にあり、これらの間に正常ノズルが3つ存在している状態を意味している。
「間隔数=5」は、2つの不吐出ノズルは5ノズルピッチ離れた位置にあり、これらの間に正常ノズルが4つ存在している状態を意味し、「間隔数=6」は、2つの不吐出ノズルは6ノズルピッチ離れた位置にあり、これらの間に正常ノズルが5つ存在している状態を意味している。
図6(b)は周期数の説明図であり、図6(a)と同様に「○」は正常ノズルを表し、「×」は不吐出ノズルを意味している。図6(b)に示すように、「周期数=0」は不吐出ノズルが単独で存在し、近接する位置に他の不吐出ノズルが存在していない場合を意味している。「周期数=1」は近接する位置に不吐出ノズルが2つ存在する場合を意味し、「周期数=2」は近接する位置に不吐出ノズルが3つ存在する場合を意味している。
すなわち、「ノズル属性情報」は、図6(a)を用いて説明した「間隔数」と、図6(b)を用いて説明した「周期数」を用いて表される。例えば、間隔数4の不吐出ノズルが3つ存在する場合は「間隔数4、周期数2」となり、間隔数5の不吐出ノズルが3つ存在する場合は「間隔数5、周期数2」となる。
次に、図5のステップS106における「条件A」、ステップS108における「条件B」について詳細に説明する。図7(a)は、不吐出の状況(不吐出ノズル情報)が模式的に表された図である。同図における上段は各ノズルの不吐出の有無を表しており、「○」は正常ノズル、「×」は不吐出ノズルを意味している。
同図の中段に示す数値は各ノズルの間隔数であり、各ノズルは左右2つの間隔数を有している。なお、間隔数の「N」は間隔数の値が所定の範囲外であることを意味している。例えば、左端から7番目の不吐出ノズルの間隔数は「N/4」である。この不吐出ノズルは、図中左側に不吐出ノズルが存在せず(隣接する不吐出ノズルとの間隔が無限大であり)、右側の「間隔数=4」の位置に他の不吐出ノズルが存在している。また、左端から11番目の不吐出ノズルの間隔数は「4/4」であり、図中左側の「間隔数=4」の位置に他の不吐出ノズルが存在し、右側の「間隔数=4」の位置に他の不吐出ノズルが存在している。
図7(a)の下段の数値は各ノズルの周期数である。間隔数と同様に各ノズルの左右両側についてそれぞれ周期数を有している。例えば、左端から7番目の不吐出ノズルの周期数は「0/2」である。この不吐出ノズルは、図中左側に不吐出ノズルが存在せず、右側に近接する他の不吐出ノズルが2つ存在している。また、左端から11番目の不吐出ノズルの周期数は「1/2」であり、図中左側に近接する他の不吐出ノズルが1つ存在し、右側に近接する他の不吐出ノズルが2つ存在している。
図7(a)において破線で囲まれたノズルは、他の不吐出ノズルとの関係が条件Aを満たす不吐出ノズルを示している。本例では、間隔数が4〜6、周期数が1以上の不吐出ノズルが「条件Aを満たす不吐出ノズル」該当にする。なお、図7(a)において間隔数「N」は、間隔数が3以下又は7以上を表している。
図7(b)は、不吐出ノズルとの関係が条件Bを満たす正常ノズルの説明図であり、同図中破線で囲まれたノズルが「不吐出ノズルとの関係が条件Bを満たす正常ノズル」に該当する。例えば、同図中左端のノズルは、左端から7番目の不吐出ノズルとの間隔数(右側の間隔数)が6であり、左端から2番目のノズルは左端から7番目のノズルとの間隔数が5であり、左端から3番目のノズルは左端から7番目のノズルとの間隔数が4である。
また、左端のノズル、左端から2番目のノズル、左端から3番目のノズルの周期数は、左端から7番目の不吐出ノズルの周期数2に1を加えた3となる。
同図中右端のノズルは右端から7番目の不吐出ノズルとの間隔数(左側の間隔数)が6であり、右端から2番目のノズルは右端から7番目の不吐出ノズルとの間隔数(左側の間隔数)が5であり、右端から3番目のノズルは右端から7番目の不吐出ノズルとの間隔数(左側の間隔数)が4である。右端のノズル、右端から2番目のノズル、右端から3番目のノズルの周期数は右端から7番目の不吐出ノズル周期数1に1を加えた2となる。
本例では、不吐出ノズルと間隔数が4〜6の条件を満たす正常ノズルが「不吐出ノズルとの関係が条件Bを満たす正常ノズル」に該当する。
図7(c)は、ノズル属性情報が付与されるノズルの説明図であり、同図中破線で囲まれた正常ノズルに対してノズル属性情報が付与される。左端から8番目のノズルは左端から7番目の条件Aを満たす不吐出ノズルの右側に隣接しているので、左端から7番目の不吐出ノズルの右側の間隔数4、右側の周期数2がノズル属性情報として付与される。
また、左端から11番目の不吐出ノズルの左側に隣接する左端から10番目のノズルは、左端から11番目の不吐出ノズルの左側の間隔数4及び周期数1がノズル属性情報として付与され、左端から11番目の不吐出ノズルの右側に隣接する左端から12番目のノズルは、左端から11番目の不吐出ノズルの右側の間隔数4及び周期数2がノズル属性情報として付与される。
一方、条件Bを満たす正常ノズルの隣接ノズルにもノズル属性情報が付与される。すなわち、左端から2番目のノズルには左端のノズルの間隔数6及び周期数3がノズル属性情報として付与され、左端から3番目のノズルには左端から2番目のノズルの間隔数5及び周期数3がノズル情報として付与され、左端から4番目のノズルには左端から3番目のノズルの間隔数4及び周期数3がノズル情報として付与される。
このようにして、図5のステップS108において求められた、条件Aを満たす不吐出ノズルの隣接ノズルのノズル属性情報と、ステップS110において求められた、条件Bを満たす正常ノズルの隣接ノズルのノズル情報が記憶される。不吐出ノズル情報が更新されるたびにノズル属性情報は更新される。
図8は、図4に示したインデックステーブル46の具体例を模式的に図示した説明図である。同図に示すインデックステーブル46は、間隔数(i)と周期数(j)とをインデックスとし、予め実験等によって求められた修正係数fijが記憶されている。この修正係数fijは1以上2以下の値であり、修正係数fijが1の場合は「補正なし」であり、修正係数fijの標準的な値は1.5である。
つまり、不吐出ノズルが存在するときの、不吐出ノズルの両隣の正常ノズルの位置の標準的な画素値は1.5倍とされ、当該不吐出ノズルが他の不吐出ノズルと隣接している場合(本例では、間隔数が4〜6の場合)には、不吐出ノズルに隣接する正常ノズルの位置の画素値が1倍(補正なし)から2倍の範囲で調整される。
このようにして、既に不吐出ノズルとして把握されているノズルだけでなく、将来的に不吐出ノズルになる可能性が高い正常ノズルを不吐出ノズルの間隔数及び周期数の情報により予測しておき、予測された正常ノズルが実際に不吐出ノズルとなり、かつ、既に把握されている他の不吐出ノズルと近接する場合には、不吐出補正係数が予め準備されている修正係数fijに切り換えられる。不吐出ノズルの間隔数及び周期数と修正係数fijとの関係を求めておくことで、新たに不吐出ノズルが発生するたびに修正係数fijを算出する必要がないので、近接する不吐出ノズルの補正の最適化処理が画像記録全体の高速処理を妨げることがない。
本例に示す不吐出補正処理では、間隔数が3以下の場合(不吐出ノズル間に存在するノズルが0〜2つの場合)は、近接する不吐出ノズルの補正の最適化処理が実行できない条件としてエラー処理が実行される。また、間隔数が7以上の場合は間隔数が無限大とされ(図7(a)〜(c)では「N」と記載)、近接する不吐出ノズルの補正の最適化処理は不要と判断される。
図9は、上述した画像記録方法が適用される装置構成例を示すブロック図である。同図に示す画像処理装置100は、画像データ(例えば、RGB256階調のカラー画像データ)が入力される画像入力部102と、不吐出ノズル情報が取得される不吐出ノズル情報取得部104と、入力された画像データがCMKYのデータに変換される濃度値変換部106と、補正係数記憶部108に記憶されているムラ補正係数、又は不吐出補正係数により濃度値が補正される濃度値補正部110と、ノズル属性情報記憶部112に記憶されているノズル属性情報に基づいて、修正係数記憶部114から読み出された修正係数を用いて濃度値が修正される濃度値修正部116と、画像データにハーフトーン処理が施されるハーフトーン処理部118と、ハーフトーン処理後の画像データが出力されるデータ出力部120と、を備えて構成されている。
図9に示す画像処理装置100の出力データ(ドットデータ)に基づいて形成される駆動信号を用いてインクジェットヘッド(図2(a)参照)が駆動されると、記録媒体上に所望のカラー画像が形成される。
図9の濃度値補正部110は図4の選択部40に対応し、ノズル属性情報記憶部112はノズル属性情報記憶部48に対応している。また、図9の補正係数記憶部108は図4のムラ補正LUT10、不吐出補正LUT(i−1)12、不吐出補正LUT(i+1)14が記憶され、修正係数記憶部114は図4のインデックステーブル46が記憶されている。
上記の如く構成された画像記録方法では、隣接するノズルが不吐出ノズルになったときに、画素値を補正する係数がムラ補正係数から不吐出補正用係数に切り換えられる画像記録において、予め条件Aを満たす不吐出ノズルの隣接ノズル、及び条件Bを満たす正常ノズルの隣接ノズルにノズル属性情報が付与され、ノズル属性が付与されたノズルの隣接ノズルが不吐出となると、ノズル属性情報に基づいて決められる修正係数によって不吐出補正係数が修正される。したがって、不吐出ノズルが新たに発生したときに、その不吐出ノズルが他の不吐出ノズルと隣接する場合でも、近接する不吐出ノズルの補正の最適化処理を実行することが可能となる。
また、修正係数を間隔数及び周期数をインデックスとしたインデックステーブルに記憶しておくことで、ノズルごと及び濃度値ごとに間隔数及び周期数に対応した修正係数を記憶しておく必要がなく、修正係数を記憶しておくメモリを節約することが可能であるとともに、新たに不吐出ノズルが発生した場合でも直ちに対応することが可能である。
なお、本例では、画像記録の一例としてインクジェット方式によるカラー画像形成を例示したが、本発明はLED方式、電子写真方式などインクジェット方式以外の他の画像記録方式にも適用可能である。
〔ムラ補正係数及び不吐出補正係数の説明〕
次に、上述したムラ補正係数及び不吐出補正係数について詳述する。
図10は、ムラ補正係数及び不吐出補正係数の導出の手順を示すフローチャートである。まず、各ノズルの特性を検出するために、インクジェットヘッド(図2(a)参照)のすべてのノズルからインクを吐出させてテストパターンが描画され(ステップS202)、読取装置(スキャナー)によってテストパターンの読み取りが行われる(ステップS204)。
次に、テストパターンの読取結果に基づいてすべてのノズルについて着弾位置誤差が測定され(ステップS206)、着弾位置誤差に基づいてムラ補正係数が導出されるとともに(ステップS208)、不吐出補正係数が導出され(ステップS210)、ムラ補正係数及び不吐出補正係数の導出は終了する(ステップS212)。
図11(a)は、図10のステップS202において形成されるテストパターンの一例を示す模式図であり、図11(b)は、図11(a)の部分拡大図である。図11(a),(b)に示すテストパターンは、一列に配置された複数のノズルを一端から順にA1、A2、A3・・・、Anと定義し、複数のノズルA1〜Anのノズル番号をkとしたときに、4k−3、4k−2、4k−1、4k(k=1,2,3,・・・・)の4つのグループに分け、媒体とインクジェットヘッドとを一方向に相対的に移動させながらノズル番号が4k−3となるノズルからインク液滴を連続的に吐出させて、ノズルごとに媒体の移動方向に沿う直線(ドット列)を形成し、次にノズル番号が4k−2となるノズルからインク液滴を連続的に吐出させ、ノズルごとに直線を形成し、さらにノズルの番号が4k−1のノズル、ノズルの番号が4kのノズルについても同様にノズルごとの直線を形成したものである。
このように、一定間隔離間したノズルをグループ化することで、隣接したノズルからインクを吐出することなく直線が形成され、隣接する直線同士が重なりあうことが防止される。
以上のようにして、図11(a)及び図11(b)に示すように、媒体上には、ノズルの4つのグループに対応して、G1,G2,G3,G4の4つの直線群のグループが形成される。なお、各ノズルが1つの打滴点に滴下する液滴の数を変化させることで複数種類の打滴点を形成できるので、それぞれの種類の打滴点についてもテストパターンを形成する。なお、テストパターンは、1枚の記録媒体にすべてのテストパターンを記録しても、複数のテストパターンに記録してもよいが、1枚の記録媒体に記録することで、より高い精度で後述する記録特性を測定することができる。
図10のステップS204で実行されるテストパターンの読み取りを行なうスキャナーはインクジェットヘッドの記録解像度の1/4以上の読取解像度を有していればよい。
図10のステップS206において測定される着弾位置は、例えば、特開2006−264069号公報に記載されているように、各直線の濃度プロファイルを検出し、その検出結果から各直線の中心を算出することで、各ノズルから吐出されたインク液滴の着弾位置を算出することできる。また、中心位置の算出方法は特に限定されず、インク液滴の両端を検出し、その中間点を中心としても、濃度が最も高い位置を中心としてもよい。
この着弾位置は、各直線の複数点で中心を算出し、その中心を結んで近似直線を算出することが好ましい。複数点の中心を結んで近似直線を算出することで、インク液滴の着弾位置をより正確に検出することができ、さらにこの近似直線を延長させることで、各グループ間の相対的な位置関係も正確に検出することができる。なお、相対的な位置関係は、テストパターンの作成時に基準のノズルを設定し、そのノズルにより形成する直線は4つすべてのグループで形成するようにすればよい。このようにして算出された打滴点の着弾位置に基づいて、打滴点の理想の着弾位置(想定されている打滴点の着弾位置)との差分(着弾位置誤差)が算出される。
図12は、図10のステップS208に示すムラ補正係数、及びステップS210に示す不吐出補正係数の具体例を示すフローチャートである。ここでは濃度値に応じたムラ補正係数及び不吐出補正係数を求めるため、濃度値ごとにムラ補正係数及び不吐出補正係数を算出する例を説明する。なお、図12に示すフローチャートは、1ノズル分のムラ補正係数及び不吐出補正係数を算出するためのものであり、かかる手順が全ノズル(nzl=0〜N)について繰り返されるとともに、濃度値「0.0〜1.0」の範囲について、所定の刻み幅(例えば、「0.5」の刻み)で濃度ごとに補正係数を演算する処理が繰り返される。
まず、選択されたノズル(ノズル番号がnzlのノズル)を不吐出と仮定し、そのノズルに対応する不吐出情報だけをONにし、選択されたノズルを不吐出とした仮定の不吐出情報を作成し、演算対象濃度(d)についてドット打滴率の演算が実行される(ステップS222)。ステップS222では、濃度値ごとにドット種類ごとの存在比率(打滴種類比率)を示すドット打滴率テーブルを使用して、対象画素濃度(d)に応じたドット打滴率(dp_buf[kind])が算出される。
図13は、濃度値(画素濃度)に対する打滴種類比率の関係を示すドット打滞率テーブル(DP_buf[d][kind])の一例を示す図である。図13に示すドット打滞率テーブルは、画素濃度[d]とドット種類[kind]を変数とするテーブルである。図13に示すドット打滞率テーブルでは、ドット種類が4種類(kind=[1drop,2drop,3drop,4drop])の場合を例示している。同図において横軸は画素濃度[d]、縦軸は打滴種類(ドット種類)比率を表している。例えば、画素濃度=0.8の場合における各ドット種の比率を見ると、「3drops」の比率が最も高く、約0.72、次いで「4drops」の比率が約0.24、「2drops」の比率は約0.04、「1drop」の比率は0.0である。このように、ある画素濃度値における各ドット種の比率をdp_bufの値とする。
図13に示すような関係のドット打滴率テーブルは、予め作成しておき記憶しておくものとする。なお、ドット打滴率テーブルは必要に応じて補間演算して利用してもよい。上記のように演算対象濃度についてドット打滴率を求めた後、次に、実行打滴誤差の演算を行う(図12のステップS224)。図12のステップS224の実行打滴誤差の演算では、各ノズルについて、それぞれドット種類ごとの位置誤差データ計測値(err_x[nzl][kind])が実行打滴誤差(位置:err_xx[nzl])に変換される演算が行なわれる。実行打滴誤差のうち「位置:err_xx[nzl]」の成分は、次式〔数1〕によって求められる。
すなわち、実行打滴誤差の「位置:err_xx[nzl]」は、着弾位置誤差の測定値をドット打滴率(dp_buf[kind])と、打滴液量(volume[kind])と、を用いて重み付けして加重平均をとったものである。なお、打滴液量(volume[kind])のテーブルは、予めドット種類ごとの液量を測定して記憶しておくものとする。図14に打滴液量のテーブルの一例を示す。
図12に戻り、ステップS224において、実行打滴誤差の演算が実行されると、濃度補正係数(coef[nzl])の演算及び修正演算が行なわれる。例えば、補正対象ノズルと、その左右1ノズルずつの3ノズルを補正ウインドウ(N=3)としてムラ補正係数、不吐出補正係数を演算する場合を説明する。この場合、補正ウインドウ内における左ノズルの補正係数をp[0]、中央ノズルの補正係数をp[1]、右ノズルの補正係数をp[2]に格納する。また、演算に際しては、ヘッドの不吐出情報(npn[nzl])に基づき、補正ウインドウ内の不吐出ノズルの数と位置で場合分けを行う。
本例では補正ウインドウ内に不吐出ノズルが2カ所以上存在する場合は演算を中止するものとする。具体的な演算例を以下に示す。なお、以下に述べる演算は全ノズルについて繰り返される。
まず、演算対象の補正ウインドウを定め、当該補正ウインドウ内における不吐出ノズルの数と位置に応じて、次の3パターンに場合分けされる。すなわち、不吐出ノズルが無い場合、中央ノズルが不吐出の場合、左又は右ノズルが不吐出の場合、の3パターンに場合分けされ、該当する処理に切り換えられる。
(不吐出ノズルが無い場合)
不吐出ノズルが無い場合は、各ノズルの位置誤差に理想位置間隔値Lが合算され(左:−L、中央:0、右:+L)、絶対位置(a[3])に変換される。すなわち、次式〔数2〕に示す演算が実行される。
そして、当該位置誤差情報(a[3])を用いて補正係数(p[3])が演算される。この演算の詳細は後述する。ここでは、表記の便宜上、補正ウインドウ内のノズル位置を表す[0]、[1]、[2]の3種類をまとめて[3]と表記している。なお、位置誤差情報(a[3])の示す位置誤差が所定のしきい値(例えば、0.1μm)内であれば、実質的に補正不要であるとして位置補正を行わないものとする。補正を行うか否かの判断基準となるしきい値は、誤差を許容できる許容範囲の観点から定められる。当該補正ウインドウ内の各ノズルの補正係数は、次式〔数3〕によって求められる。
さらに、中央ノズル(p[1])に対しては、1を減ずる。すなわち、次式〔数4〕に示す演算が実行される。
次に、ムラ補正係数(coef[nzl])に上記のように求められた補正ウインドウ内補正係数が加算される。すなわち、次式〔数5〕に示す演算が実行される。
(中央ノズルが不吐出の場合)
一方、中央ノズルが不吐出の場合は、各ノズルの位置誤差に理想位置間隔値Lが合算され(左:−L、中央:0、左:+L)、絶対位置(a[3])に変換される(〔数2〕参照)。そして、当該位置誤差情報(a)[3]を用いて補正係数(p[3])の演算が実行される。この演算は、不吐出ノズルを除外して演算が行われる。つまり、不吐の中央ノズルは「ないもの」として演算される。当該補正ウインドウ内の各ノズルの補正係数は、次式〔数6〕によって求められる。
さらに、次式〔数7〕に示すように、中央ノズル(p[1])に対しては、−1が代入される。
そして、ムラ補正係数(coef[nzl])に上記求めた補正ウインドウ内補正係数が加算される。すなわち、次式〔数8〕に示す演算が実行される。
(左又は右ノズルが不吐出の場合)
他方、左又は右ノズルが不吐出の場合は、各ノズルの位置誤差に理想位置間隔値Lが合算され(左:−L、中央:0、右:+L)、絶対位置(a[3])に変換される([数2]参照)。そして、当該位置誤差情報(a[3])を用いて補正係数(p[3])の演算が実行される。この演算は、不吐出ノズルを除外して演算が行われる。つまり、不吐の左ノズル又は右ノズルは「ないもの」として演算される。左ノズルが不吐出のとき、当該補正ウインドウ内の各ノズルの補正係数は、次式〔数9〕によって求められる。
さらに、次式〔数10〕に示すように、中央ノズル(p[1])に対しては、1を減ずる。
また、次式〔数11〕に示すように、左ノズル(p[0])には、0が代入される。
また、右ノズルが不吐出のとき、当該補正ウインドウ内の各ノズルの補正係数は、次式〔数12〕によって算出される。
<右ノズルが不吐出の時>
さらに、次式〔数13〕に示すように、中央ノズル(p[1])に対しては、1を減ずる。
また、次式〔数14〕に示すように、右ノズル(p[2])には0が代入される。
そして、ムラ補正係数(coef[nzl])に上記したように求められた補正ウインドウ内補正係数が加算される。すなわち、次式〔数15〕に示すように演算が実行される。
このようにして、すべてのノズルについて、上記の演算が繰り返される。濃度値ごとに、順次同様の処理を実行した後、各画素濃度での補正係数(coef[j])を、ムラ補正係数(COEF[d][j])、不吐出左隣補正係数(L_COEF[d][j])、不吐出右隣補正係数(R_COEF[d][j])に移動させる。なお、このとき全データに1を加算する。
ここで、下記式に示すように、不吐出と仮定したノズル(j=nzl)の補正係数は、移動させず、不吐出と仮定したノズルの左隣のノズル(j=nzl+1)の補正係数は、L_COEF[d][j]に移動させ、不吐出と仮定したノズルの右隣のノズル(j=nzl−1)の補正係数は、R_COEF[d][j]に移動させる。また、上記3つのいずれでもないノズル(j≠nzl、nzl−1、nzl+1)の補正係数は、COEF[d][j]に移動させる。
以上の処理が実行されると、図12に示すムラ補正係数の導出工程(ステップS226)、及び不吐出補正計数の導出工程(ステップS228)が終了され、ムラ補正係数及び不吐出補正係数は、図9の補正係数記憶部108に記憶され(図12のステップS230)、ムラ補正係数及び不吐出補正係数の導出は終了される(ステップS232)。
なお、上記したムラ補正係数(COEF[d][j])、不吐出左隣補正係数(L_COEF[d][j])、不吐出右隣補正係数(R_COEF[d][j])は、各ノズルの位置誤差変動範囲が一定値内に安定し、各ノズルの吐出特性が予想できる場合には、着弾位置誤差を測定せずに以下のように簡便に求めることもできる。
ここで、C[j]は予め実験的に求めたノズルごとの定数であり、0<C[j]<2が望ましい。また、C
L[d]、C
R[d]は予め実験的に求めた濃度ごとの定数であり、0<C
L[d]<2、0<C
R[d]<2が望ましい。
(ムラ補正係数の説明)
次に、ムラ補正係数の処理の一例を説明する。
ムラ補正処理が実行されると、まず、濃度毎ムラ補正係数テーブル(COEF[Dmax][Nnzl])、不吐出左隣補正係数テーブル(L_COEF[Dmax][Nnzl])、不吐出右隣補正係数テーブル(R_COEF[Dmax][Nnzl])が読み出される。ムラ補正係数及び吐出補正係数は図9の補正係数記憶部108に記憶されている。
次に、実際に測定した測定不吐出情報(NPN[Nnzl])が読み込まれる。ここで、測定不吐出情報は、上述したように、ノズル毎に直線を形成させたテストパターン記録し、各ノズルに対応する直線が形成されているか否かを検出し、不吐出ノズルを検出することで作成することができる。また、測定不吐出情報は、不吐出ノズルがONとされ、正常ノズル(インク液滴を吐出するノズル)がOFFとされた情報である。
次に、読み出した測定不吐出情報に基づいて、ノズルごとに対応するテーブルが選択されるように、ムラ/不吐出選択情報(F_npn[])が作成される。具体的には、対象ノズル(nzl)の左右のノズルが正常ノズルの場合(NPN[nzl+1]=OFF、かつ、NPN[nzl−1]=OFF)は、F_npn[nzl]=0とし、対象ノズル(nzl)が不吐出ノズルの場合は、F_npn[nzl]=1とし、対象ノズル(nzl)の右ノズルが不吐出の場合(NPN[nzl+1]=ON)の場合は、F_npn[nzl]=2とし、対象ノズル(nzl)の右ノズルが不吐出の場合(NPN[nzl−1]=ON)の場合は、F_npn[nzl]=3とする。
そして、画像の高さ方向(y方向、図15参照)について演算対象位置のyの値を順次変えながら、以下の処理が全範囲について繰り返される。すなわち、演算対象位置のyの値における、画像幅方向(x方向、図15参照)について演算対象の位置(xの値)を定め、このx位置について、x位置に応じたノズル番号(nzl番号)が求められ、ムラ補正係数テーブル、不吐出左隣補正係数テーブル、不吐出右隣補正係数テーブルから、画素濃度d[x][y]、nzl値に応じたムラ補正係数、不吐出補正係数が濃度ごとに読み出される。
F_npn[nzl]=0の場合は、濃度ごとにムラ補正係数テーブル(COEF[d][nzl])から対応するnzl、画像濃度dのムラ補正係数が読み出され、読み出されたムラ補正係数が補正係数(f)とされる。F_npn[nzl]=1の場合は、補正係数(f)が定められた定数(例えば、0)とされる。F_npn[nzl]=2の場合は、不吐出左隣補正係数テーブル(L_COEF[Dmax][Nnzl])から対応するnzl、画像濃度dの不吐出補正係数が読み出され、読み出された不吐出補正係数(ムラ補正係数)が補正係数(f)とされる。
F_npn[nzl]=3の場合は、不吐出右隣補正係数テーブル(R_COEF[Dmax][Nnzl])から対応するnzl、画像濃度dの不吐出補正係数が読み出され、読み出された不吐出補正係数(ムラ補正係数)が補正係数(f)とされる。そして、この補正係数(f)を用いて、次式〔数17〕によって補正演算が実行される。
画像幅(x方向)について、xの位置を順次変えながら、画像幅の全範囲について、上述した工程が繰り返される。すべての画素位置[x][y]について、上記の補正演算が終了すると、本処理は終了される。
なお、上述したムラ補正係数及び不吐出補正係数の導出方法はあくまでも一例であり、他の手法(手順)により導出されたムラ補正係数及び不吐出補正係数を適用してもよい。
〔ハーフトーン処理の説明〕
次に、図3のステップS22に示すハーフトーン処理の一例として、誤差拡散法について説明する。誤差拡散処理では、先ず、エラー積算バッファが初期化される。図15にエラー積算バッファの概念図を示す。同図に示すように、エラー積算バッファはx方向について画像の全幅分の各位置に対応するデータ格納セルを有し、y方向については2ライン分のデータ格納が可能である。エラー積算バッファの初期化処理では、各セルのデータをすべて0とする。その後、画像の高さ方向(y方向)について演算対象の位置(yの値)を順次変えながら以下の処理を全範囲について繰り返す。
演算対象画素のyの値のラインに属する各x位置についてラスタ順にN値化の処理を行う。N値化の手順は、まず、画像幅方向の注目位置xについて画像データの濃度に積算エラー値を加算する。図16は、その説明図である。今、注目する位置xについて、エラー積算バッファの同位置の積算エラー値を画像データ濃度に加算し、この積算エラー値を加えた濃度を(modinp)とする。
次に、N値化のためのしきい値テーブルから上記濃度値(modinp)に応じたしきい値が読み込まれる。図17はしきい値テーブルの例を示す図である。同図に示すようにしきい値テーブルは、4種類の打滴を使用する場合(5値化)の一例であり、ドット種別ごとに「1drop」〜「4drops」それぞれのしきい値は、T1〜T4と定められている。
図17に示すしきい値テーブルから読み込まれたしきい値に対して、適宜のノイズを付加した後、対象とする点の濃度値から打滴種類を決定する。本例の場合、「濃度値+エラー積算値」の値と、T1、T2、T3、T4の大小関係によって以下のように打滴種類が決定される(図14参照)。
(「濃度値+エラー積算値」の値がT4以上である場合)
「濃度値+エラー積算値」の値がT4以上である場合には、当該画素位置[x][y]の出力画像(打滴点濃度)を4dropsのドット値(例えば、8ビットで「144」とする。)に決定する。このN値化で発生した対象点のエラー値は、「濃度値+エラー積算値」から4drops打滴点濃度を減算した値となる。
<「濃度値+エラー積算値」の値がT3以上T4未満の場合>
「濃度値+エラー積算値」の値がT3以上T4未満の場合は、当該画素位置[x][y]の出力画像(打滴点濃度)を3dropsのドット値(例えば、「112」とする。)に決定する。このN値化で発生した対象点のエラー値は、「濃度値+エラー積算値」から3drops打滴点濃度を減算した値となる。
(「濃度値十エラー積算値」の値がT2以上T3未満の場合)
「濃度値+エラー積算値」の値がT2以上T3未満の場合は、当該画素位置[x][y]の出力画像(打滴点濃度)を2dropsのドット値(例えば、「80」とする。)に決定する。このN値化で発生した対象点のエラー値は、「濃度値+エラー積算値」から2drops打滴点濃度を減算した値となる。
(「濃度値+エラー積算値」の値がT1以上T2未満の場合)
「濃度値+エラー積算値」の値がT1以上T2未満の場合は、当該画素位置[x][y]の出力画像(打滴点濃度)を1dropのドット値(例えば、「48」とする。)に決定する。このN値化で発生した対象点のエラー値は、「濃度値+エラー積算値」から1drop打滴点濃度を減算した値となる。
(「濃度値十エラー積算値」の値がT1未満の場合)
「濃度値+エラー積算値」の値がT1未満の場合は、当該画素位置[x][y]について打滴無し(打滴点濃度0)とする。このN値化で発生した対象点のエラー値は、「濃度値+エラー積算値」そのものとなる。次いで、上述した5通りのN値化で発生した対象点のエラー値を当該対象点に隣接する未処理画素に拡散する処理が実行される。
図18(a)は、誤差拡散処理に適用される分配定数(誤差が拡散される割合)を示す図であり、図18(b)は、エラー値の拡散処理の一例を示す模式図である。同図に示す誤差拡散処理は、対象点[x]で発生したエラー値は、隣接する4つの未処理位置に対してそれぞれ図18(a)に示す比率(分配定数)で分配される。対象ラインに属するすべてのx位置について上記のN値化が終了すると、対象ライン(y)を変更する。このとき、対象ライン(y)の移動に対応して、エラー積算バッファが更新される。
すなわち、図19に示すように、エラー積算バッファをy方向上にスクロールし、新たなラインに対する積算バッファの各セルに0が代入される。こうして、画像高さ(y方向)分の全ラインについて上記の処理を繰り返し、全画素について打滴種類が決定されると当該誤差拡散処理は終了される。
なお、ハーフトーン処理の手段としては、誤差拡散法、ディザ法、閾値マトリクス法、濃度パターン法など、各種公知の手段を適用できる。
〔インクジェットシステムへの適用例〕
次に、上述した不吐出補正技術(画像記録方法)がインクジェット記録装置(インクジェットシステム)へ適用された場合について説明する。
(インクジェット記録装置の全体構成の説明)
図20は、本実施形態に係るインクジェット記録装置の全体構成を示した構成図である。同図に示すインクジェット記録装置310は、色材を含有するインクと該インクを凝集させる機能を有する凝集処理液を用いて、所定の画像データに基づいて記録媒体314の記録面に画像を形成する2液凝集方式の記録装置である。
インクジェット記録装置310は、主として、給紙部320、処理液塗布部330、描画部340、乾燥処理部350、定着処理部360、及び排出部370を備えて構成される。処理液塗布部330、描画部340、乾燥処理部350、定着処理部360の前段に搬送される記録媒体314の受け渡しを行う手段として渡し胴332,342,352,362が設けられるとともに、処理液塗布部330、描画部340、乾燥処理部350、定着処理部360のそれぞれに記録媒体314を保持しながら搬送する手段として、ドラム形状を有する圧胴334,344,354,364が設けられている。
渡し胴332,342,352,362及び圧胴334,344,354,364は、外周面の所定位置に記録媒体314の先端部(又は後端部)を挟んで保持するグリッパー380A,380Bが設けられている。グリッパー380Aとグリッパー380Bにおける記録媒体314の先端部を挟んで保持する構造、及び他の圧胴又は渡し胴に備えられるグリッパーとの間で記録媒体314の受け渡しを行う構造を同一であり、かつ、グリッパー380Aとグリッパー380Bは、圧胴334の外周面の圧胴334の回転方向について180°移動させた対称位置に配置されている。
グリッパー380A,380Bにより記録媒体314の先端部を狭持した状態で渡し胴332,342,352,362及び圧胴334,344,354,364を所定の方向に回転させると、渡し胴332,342,352,362及び圧胴334,344,354,364の外周面に沿って記録媒体314が回転搬送される。
なお、図20中、圧胴334に備えられるグリッパー380A,380Bのみ符号を付し、他の圧胴及び渡し胴のグリッパーの符号は省略する。
給紙部320に収容されている記録媒体(枚葉紙)314が処理液塗布部330に給紙されると、圧胴334の外周面に保持された記録媒体314の記録面に、凝集処理液(以下、単に「処理液」と記載することがある。)が付与される。なお、「記録媒体314の記録面」とは、圧胴334,344,354,364の保持された状態における外側面であり、圧胴334,344,354,364に保持される面と反対面である。
その後、凝集処理液が付与された記録媒体314は描画部340に送出され、描画部340において記録面の凝集処理液が付与された領域に色インクが付与され、所望の画像が形成される。
さらに、該色インクによる画像が形成された記録媒体314は乾燥処理部350に送られ、乾燥処理部350において乾燥処理が施されるとともに、乾燥処理後に定着処理部360に送られ、定着処理が施される。乾燥処理及び定着処理が施されることで、記録媒体314上に形成された画像が堅牢化される。このようにして、記録媒体314の記録面に所望の画像が形成され、該画像が記録媒体314の記録面に定着した後に、排出部370から装置外部に搬送される。
以下、インクジェット記録装置310の各部(給紙部320、処理液塗布部330、描画部340、乾燥処理部350、定着処理部360、排出部370)について詳細に説明する。
(給紙部)
給紙部320は、給紙トレイ322と不図示の送り出し機構が設けられ、記録媒体314は給紙トレイ322から一枚ずつ送り出されるように構成されている。給紙トレイ322から送り出された記録媒体314は、渡し胴(給紙胴)332のグリッパー(不図示)の位置に先端部が位置するように不図示のガイド部材によって位置決めされて一旦停止する。
(処理液塗布部)
処理液塗布部330は、給紙胴332から受け渡された記録媒体314を外周面に保持して記録媒体314を所定の搬送方向へ搬送する圧胴(処理液ドラム)334と、処理液ドラム334の外周面に保持された記録媒体314の記録面に処理液を付与する処理液塗布装置336と、含んで構成されている。処理液ドラム334を図20における反時計回りに回転させると、記録媒体314は処理液ドラム334の外周面に沿って反時計回り方向に回転搬送される。
図20に示す処理液塗布装置336は、処理液ドラム334の外周面(記録媒体保持面)と対向する位置に設けられている。処理液塗布装置336の構成例として、処理液が貯留される処理液容器と、処理液容器の処理液に一部が浸漬され、処理液容器内の処理液を汲み上げる汲み上げローラと、汲み上げローラにより汲み上げられた処理液を記録媒体314上に移動させる塗布ローラ(ゴムローラ)と、を含んで構成される態様が挙げられる。
なお、該塗布ローラを上下方向(処理液ドラム334の外周面の法線方向)に移動させる塗布ローラ移動機構を備え、該塗布ローラとグリッパー380A,380Bとの衝突を回避可能に構成する態様が好ましい。
処理液塗布部330により記録媒体314に付与される処理液は、描画部340で付与されるインク中の色材(顔料)を凝集させる色材凝集剤を含有し、記録媒体314上で処理液とインクとが接触すると、インク中の色材と溶媒との分離が促進される。
処理液塗布装置336は、記録媒体314に塗布される処理液量を計量しながら塗布することが好ましく、記録媒体314上の処理液の膜厚は、描画部340から打滴されるインク液滴の直径より十分に小さくすることが好ましい。
(描画部)
描画部340は、記録媒体314を保持して搬送する圧胴(描画ドラム)344と、記録媒体314を描画ドラム344に密着させるための用紙抑えローラ346と、記録媒体314にインクを付与するインクジェットヘッド348M,348K,348C,348Yを備えている。なお、描画ドラム344の基本構造は、先に説明した処理液ドラム334と共通しているので、ここでの説明は省略する。
用紙抑えローラ346は、描画ドラム344の外周面に記録媒体314を密着させるためのガイド部材であり、描画ドラム344の外周面に対向し、渡し胴342と描画ドラム344との記録媒体314の受渡位置よりも記録媒体314の搬送方向下流側であり、且つ、インクジェットヘッド348M,348K,348C,348Yよりも記録媒体314の搬送方向上流側に配置される。
渡し胴342から描画ドラム344に受け渡された記録媒体314は、グリッパー(符号省略)によって先端が保持された状態で回転搬送される際に、用紙抑えローラ346によって押圧され、描画ドラム344の外周面に密着する。このようにして、記録媒体314を描画ドラム344の外周面に密着させた後に、描画ドラム344の外周面から浮き上がりのない状態で、インクジェットヘッド348M,348K,348C,348Yの直下の印字領域に送られる。
インクジェットヘッド348M,348K,348C,348Yはそれぞれ、マゼンダ(M)、黒(K)、シアン(C)、イエロー(Y)の4色のインクに対応しており、描画ドラム344の回転方向(図20における反時計回り方向)に上流側から順に配置されるとともに、インクジェットヘッド348M,348K,348C,348Yのインク吐出面(ノズル面、図5に符号114Aを付して図示する。)が描画ドラム344に保持された記録媒体314の記録面と対向するように配置される。なお、「インク吐出面(ノズル面)」とは、記録媒体314の記録面と対向するインクジェットヘッド348M,348K,348C,348Yの面であり、後述するインクが吐出されるノズル(図22に符号408を付して図示する。)が形成される面である。
また、図20に示すインクジェットヘッド348M,348K,348C,348Yは、描画ドラム344の外周面に保持された記録媒体314の記録面とインクジェットヘッド348M,348K,348C,348Yのノズル面が略平行となるように、水平面に対して傾けられて配置されている。
インクジェットヘッド348M,348K,348C,348Yは、記録媒体314における画像形成領域の最大幅(記録媒体314の搬送方向と直交する方向の長さ)に対応する長さを有するフルライン型のヘッドであり、記録媒体314の搬送方向と直交する方向に延在するように固定設置される。
インクジェットヘッド348M,348K,348C,348Yのノズル面には、記録媒体314の画像形成領域の全幅にわたってインク吐出用のノズルがマトリクス配置されて形成されている。
記録媒体314がインクジェットヘッド348M,348K,348C,348Yの直下の印字領域に搬送されると、インクジェットヘッド348M,348K,348C,348Yから記録媒体314の凝集処理液が付与された領域に画像データに基づいて各色のインクが吐出(打滴)される。
インクジェットヘッド348M,348K,348C,348Yから、対応する色インクの液滴が、描画ドラム344の外周面に保持された記録媒体314の記録面に向かって吐出されると、記録媒体314上で処理液とインクが接触し、インク中に分散する色材(顔料系色材)又は不溶化する色材(染料系色材)の凝集反応が発現し、色材凝集体が形成される。これにより、記録媒体314上に形成された画像における色材の移動(ドットの位置ズレ、ドットの色ムラ)が防止される。
また、描画部340の描画ドラム344は、処理液塗布部330の処理液ドラム334に対して構造上分離しているので、インクジェットヘッド348M,348K,348C,348Yに処理液が付着することがなく、インクの吐出異常の要因を低減することができる。
なお、本例では、CMYKの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するインクジェットヘッドを追加する構成も可能であり、各色ヘッドの配置順序も特に限定はない。
(乾燥処理部)
乾燥処理部350は、画像形成後の記録媒体314を保持して搬送する圧胴(乾燥ドラム)354と、該記録媒体314上の水分(液体成分)を蒸発させる乾燥処理を施す溶媒乾燥装置356を備えている。なお、乾燥ドラム354の基本構造は、先に説明した処理液ドラム334及び描画ドラム344と共通しているので、ここでの説明は省略する。
溶媒乾燥装置356は、乾燥ドラム354の外周面に対向する位置に配置され、記録媒体314に存在する水分を蒸発させる処理部である。描画部340により記録媒体314にインクが付与されると、処理液とインクとの凝集反応により分離したインクの液体成分(溶媒成分)及び処理液の液体成分(溶媒成分)が記録媒体314上に残留してしまうので、かかる液体成分を除去する必要がある。
溶媒乾燥装置356は、ヒータによる加熱、ファンによる送風、又はこれらを併用して記録媒体314上に存在する液体成分を蒸発させる乾燥処理を施し、記録媒体314上の液体成分を除去するための処理部である。記録媒体314に付与される加熱量及び送風量は、記録媒体314上に残留する水分量、記録媒体314の種類、及び記録媒体314の搬送速度(乾燥処理時間)等のパラメータに応じて適宜設定される。
溶媒乾燥装置356による乾燥処理が行われる際に、乾燥処理部350の乾燥ドラム354は、描画部340の描画ドラム344に対して構造上分離しているので、インクジェットヘッド348M,348K,348C,348Yにおいて、熱又は送風によるヘッドメニスカス部の乾燥によるインクの吐出異常の要因を低減することができる。
記録媒体314のコックリングの矯正効果を発揮させるために、乾燥ドラム354の曲率を0.002(1/mm)以上とするとよい。また、乾燥処理後の記録媒体の湾曲(カール)を防止するために、乾燥ドラム354の曲率を0.0033(1/mm)以下とするとよい。
また、乾燥ドラム354の表面温度を調整する手段(例えば、内蔵ヒータ)を備え、該表面温度を50℃以上に調整するとよい。記録媒体314の裏面から加熱処理を施すことによって乾燥が促進され、次段の定着処理時における画像破壊が防止される。かかる態様において、乾燥ドラム354の外周面に記録媒体314を密着させる手段を具備するとさらに効果的である。記録媒体314を密着させる手段の一例として、真空吸着、静電吸着などが挙げられる。
なお、乾燥ドラム354の表面温度の上限については、特に限定されるものではないが、乾燥ドラム354の表面に付着したインクをクリーニングするなどのメンテナンス作業の安全性(高温による火傷防止)の観点から75℃以下(より好ましくは60℃以下)に設定されることが好ましい。
このように構成された乾燥ドラム354の外周面に、記録媒体314の記録面が外側を向くように(すなわち、記録媒体314の記録面が凸側となるように湾曲させた状態で)保持し、回転搬送しながら乾燥処理を施すことで、記録媒体314のシワや浮きに起因する乾燥ムラが確実に防止される。
(定着処理部)
定着処理部360は、記録媒体314を保持して搬送する圧胴(定着ドラム)364と、画像形成がされ、さらに、液体が除去された記録媒体314に加熱処理を施すヒータ366と、該記録媒体314を記録面側から押圧する定着ローラ368と、を備えて構成される。なお、定着ドラム364の基本構造は処理液ドラム334、描画ドラム344、及び乾燥ドラム354と共通しているので、ここでの説明は省略する。ヒータ366及び定着ローラ368は、定着ドラム364の外周面に対向する位置に配置され、定着ドラム364の回転方向(図20において反時計回り方向)の上流側から順に配置される。
定着処理部360では、記録媒体314の記録面に対してヒータ366による予備加熱処理が施されるとともに、定着ローラ368による定着処理が施される。ヒータ366の加熱温度は記録媒体の種類、インクの種類(インクに含有するポリマー微粒子の種類)などに応じて適宜設定される。例えば、インクに含有するポリマー微粒子のガラス転移点温度や最低造膜温度とする態様が考えられる。
定着ローラ368は、乾燥させたインクを加熱加圧することによってインク中の自己分散性ポリマー微粒子を溶着し、インクを被膜化させるためのローラ部材であり、記録媒体314を加熱加圧するように構成される。具体的には、定着ローラ368は、定着ドラム364に対して圧接するように配置されており、定着ドラム364との間でニップローラを構成するようになっている。これにより、記録媒体314は、定着ローラ368と定着ドラム364との間に挟まれ、所定のニップ圧でニップされ、定着処理が行われる。
定着ローラ368の構成例として、熱伝導性の良いアルミなどの金属パイプ内にハロゲンランプを組み込んだ加熱ローラによって構成する態様が挙げられる。かかる加熱ローラで記録媒体314を加熱することによって、インクに含まれるポリマー微粒子のガラス転移点温度以上の熱エネルギーが付与されると、該ポリマー微粒子が溶融して画像の表面に透明の被膜が形成される。
この状態で記録媒体314の記録面に加圧を施すと、記録媒体314の凹凸に溶融したポリマー微粒子が押し込み定着されるとともに、画像表面の凹凸がレベリングされ、好ましい光沢性を得ることができる。なお、画像層の厚みやポリマー微粒子のガラス転移点温度特性に応じて、定着ローラ368を複数段設けた構成も好ましい。
また、定着ローラ368の表面硬度は71°以下であることが好ましい。定着ローラ368の表面をより軟質化することで、コックリングにより生じた記録媒体314の凹凸に対して追随効果を期待でき、記録媒体314の凹凸に起因する定着ムラがより効果的に防止される。
図20に示すインクジェット記録装置310は、定着処理部360の処理領域の後段(記録媒体搬送方向の下流側)には、インラインセンサ382が設けられている。インラインセンサ382は、記録媒体314に形成された画像(又は記録媒体314の余白領域に形成されたチェックパターン)を読み取るためのセンサであり、CCDラインセンサが好適に用いられる。
本例に示すインクジェット記録装置310は、インラインセンサ382の読取結果に基づいてインクジェットヘッド348M,348K,348C,348Yの吐出異常の有無が判断される(詳細後述)。また、インラインセンサ382は、水分量、表面温度、光沢度などを計測するための計測手段を含む態様も可能である。かかる態様において、水分量、表面温度、光沢度の読取結果に基づいて、乾燥処理部350の処理温度や定着処理部360の加熱温度及び加圧圧力などのパラメータを適宜調整し、装置内部の温度変化や各部の温度変化に対応して、上記制御パラメータが適宜調整される。
(排出部)
図20に示すように、定着処理部360に続いて排出部370が設けられている。排出部370は、張架ローラ372A,372Bに巻きかけられた無端状の搬送ベルト374と、画像形成後の記録媒体314が収容される排出トレイ376と、を備えて構成されている。
定着処理部360から送り出された定着処理後の記録媒体314は、搬送ベルト374によって搬送され、排出トレイ376に排出される。
(インクジェットヘッドの構造の説明)
図21は、本発明に適用されるインクジェットヘッドの概略構成図であり、同図はインクジェットヘッドから記録媒体の記録面を見た図(ヘッドの平面透視図)となっている。なお、図20に図示したインクジェットヘッド348M,348K,348C,348Yは同一構造を有しているので、以下の説明ではインクジェットヘッド348M,348K,348C,348Yを区別する必要がない場合は、これらを総称して「インクジェットヘッド348」と記載する。
同図に示すインクジェットヘッド348は、n個のサブヘッド348‐i(iは1からnの整数)を一列につなぎ合わせてマルチヘッドを構成している。また、各サブヘッド348‐iは、インクジェットヘッド348の短手方向の両側からヘッドカバー349A,349Bによって支持されている。なお、サブヘッド348を千鳥状に配置してマルチヘッドを構成することも可能である。
複数のサブヘッドにより構成されるマルチヘッドの適用例として、記録媒体の全幅に対応したフルライン型ヘッドが挙げられる。フルライン型ヘッドは、記録媒体の移動方向(副走査方向)と直交する方向(主走査方向)に沿って、記録媒体の主走査方向における長さ(幅)に対応して、複数のノズル(図23に符号408を付して図示する。)が並べられた構造を有している。かかる構造を有するインクジェットヘッド348と記録媒体とを相対的に一回だけ走査させて画像記録を行う、いわゆるシングルパス画像記録方式により、記録媒体の全面にわたって画像を形成し得る。
図22は、図21に図示したインクジェットヘッド348の一部拡大図である。同図に示すように、サブヘッド348‐iは、略平行四辺形の平面形状を有し、隣接するサブヘッド間にオーバーラップ部が設けられている。オーバーラップ部とは、サブヘッドのつなぎ部分であり、サブヘッド348‐iの並び方向(図21における左右方向、図22に図示する主走査方向X)に隣接するドットが異なるサブヘッドに属するノズルによって形成される
図23は、サブヘッド348‐iのノズル配列を示す平面図である。同図に示すように、各サブヘッド348‐iは、ノズル408が二次元状に並べられた構造を有し、かかるサブヘッド348‐iを備えたヘッドは、いわゆるマトリクスヘッドと呼ばれるものである。
図23に示したサブヘッド348‐iは、副走査方向Yに対して角度αをなす列方向W、及び主走査方向Xに対して角度βをなす行方向Vに沿って多数のノズル408が並べられた構造を有し、主走査方向Xの実質的なノズル配置密度が高密度化されている。図23では、行方向Vに沿って並べられたノズル群(ノズル行)は符号408Vを付し、列方向Wに沿って並べられたノズル群(ノズル列)は符号408Wを付して図示されている。
かかるマトリクス配列において、副走査方向の隣接ノズル間隔をLsとするとき、主走査方向については実質的に各ノズル408が一定のピッチP=Ls/tanθで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。
図23に示す構造を有するインクジェットヘッド348は、主走査方向Xと角度βをなす行方向V及び副走査方向Yに対して角度αをなす列方向Wに沿って一定の配列パターンで格子状に多数配列させることにより、本例の高密度ノズルヘッドが実現されている。
図23における主走査方向X及び副走査方向Yはそれぞれ、図15,16,18,19におけるx方向及びy方向に対応している。
図23は、インクジェットヘッド348の立体構造の一例を示す断面図であり、記録素子単位となる1チャンネル分の液滴噴射素子が図示されている。同図に示すインクジェットヘッド348は、圧力室416の天井面に設けられた圧電素子432を動作させて圧力室416内の液体を加圧して、圧力室416と連通するノズル408から液滴を噴射させるように構成されている。ノズル408から液滴が噴射されると、圧力室416と連通される供給口422を介して、液体の供給源たるタンク(不図示)から共通流路418を経由して圧力室416へ液体が充填される。
図23に示すインクジェットヘッド348は、ノズル面414Aにノズル408が形成されたノズルプレート414と、圧力室416、供給口422、共通流路418等の流路が形成された流路板420等を積層接合した構造から成る。ノズルプレート414は、インクジェットヘッド348のノズル面414Aを構成し、各圧力室416にそれぞれ連通する複数のノズル408が所定の配置パターンで配置されている。
流路板420は、圧力室416の側壁部を構成するとともに、共通流路418から圧力室416にインクを導く個別供給路の絞り部(最狭窄部)としての供給口422が形成される流路形成部材である。なお、説明の便宜上、図23では簡略的に図示しているが、流路板420は一枚又は複数の基板を積層した構造である。ノズルプレート414及び流路板420は、シリコンを材料として半導体製造プロセスによって所要の形状に加工することが可能である。
圧力室416の一部の面(図23において天井面)を構成する振動板424には、上部電極(個別電極)426及び下部電極428を備え、上部電極426と下部電極428との間に圧電体430がはさまれた構造を有する圧電素子(ピエゾ素子)432が接合されている。振動板424を金属薄膜や金属酸化膜により構成すると、圧電素子432の下部電極428に相当する共通電極として機能する。なお、樹脂などの非導電性材料によって振動板を形成する態様では、振動板部材の表面に金属などの導電材料による下部電極層が形成される。
上部電極426に駆動電圧を印加することによって圧電素子432が変形するとともに振動板424が変形して圧力室416の容積が変化し、これに伴う圧力変化によりノズル408から液滴が噴射される。
本発明に係る画像記録方法(不吐出補正方法)は、特に、フルライン型ヘッドを用いたシングルパス方式による画像記録に効果を発揮する。かかる画像記録では、不吐出ノズルが発生すると、当該不吐出ノズルによる描画位置に記録媒体の移動方向に沿うスジ状の濃度ムラや、故障ノズルの近接による視覚効果(黒スジムラ)が発生すると、画像品質を著しく低下させてしまう。もちろん、本発明に係る画像記録方法は、シリアル方式におけるシングルパス画像記録についても、ヘッドの走査方向に沿うスジ状のムラの視認性の低減化に一定の効果を発揮する。
(制御系の説明)
図24は、インクジェット記録装置310のシステム構成を示すブロック図である。図24に示すように、インクジェット記録装置310は、通信インターフェース440、システム制御部442を備え、システム制御部442により装置各部の統括的な制御が行われる。
通信インターフェース440は、ホストコンピュータ454から送られてくる画像データを受信するインターフェース部(画像入力手段)である。通信インターフェース440にはUSB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。
システム制御部442は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置310の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能する。また、搬送制御部444、画像処理部446、ヘッド駆動部448などを制御する制御信号を生成し、画像メモリ450、ROM452のメモリコントローラとしての機能を有している。
画像処理部446は、画像データに所定の処理を施す処理ブロックであり、画像処理機能を有するプロセッサが含まれる。ホストコンピュータ454から送出された画像データは通信インターフェース440を介してインクジェット記録装置310に取り込まれ、一旦画像メモリ450に記憶される。画像メモリ450は、通信インターフェース440を介して入力された画像を格納する記憶手段であり、システム制御部442を通じてデータの読み書きが行われる。画像メモリ450は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
画像メモリ450には、システム制御部442のCPUが実行するプログラム及び制御に必要な各種データ(テストチャートを打滴するためのデータ、異常ノズル情報などを含む)が格納されている。画像メモリ450は、書換不能な記憶手段であってもよいし、EEPROMのような書換可能な記憶手段であってもよい。
不図示の一時記憶部は、画像データや各種データの一時記憶領域として利用されるとともに、プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域としても利用される。
画像処理部446は、システム制御部442の制御に従い、画像メモリ内の画像データ(多値の入力画像のデータ)から打滴制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理手段として機能する。画像処理部446により生成された打滴制御用の信号(インク吐出データ)はヘッド駆動部448へ供給される。
すなわち、画像処理部446は、濃度データ生成部、補正処理部、インク吐出データ生成部といった機能ブロックを含んで構成される。これら各機能ブロックは、ASICやソフトウエア又は適宜の組み合わせによって実現可能である。
濃度データ生成部は、入力画像のデータからインク色別の初期の濃度データを生成する信号処理手段であり、濃度変換処理(UCR処理や色変換を含む)及び必要な場合には画素数変換処理を行う。補正処理部は、濃度補正係数を用いて濃度補正の演算を行う処理手段であり、ムラ補正処理などの濃度データの補正処理を行う。すなわち、補正処理部は、図9の濃度値補正部110及び濃度値修正部116に対応している。
インク吐出データ生成部は、補正処理部で生成された補正後の画像データ(濃度データ)から2値又は多値のドットデータに変換するハーフトーニング処理手段を含む信号処理手段であり、二値(多値)化処理を行う。ハーフトーン処理の手段としては、誤差拡散法、ディザ法、閾値マトリクス法、濃度パターン法など、各種公知の手段を適用できる。ハーフトーン処理は、一般に、M値(M≧3)の階調画像データをMよりも小さい二値又は多値の階調画像データに変換する。最も単純な例では、二値(ドットのオン/オフ)のドット画像データに変換するが、ハーフトーン処理において、ドットサイズの種類(例えば、大サイズドット、中サイズドット、小サイズドットなどの3種類)に対応した多値の量子化を行うことも可能である。
図24に示す画像処理部446及び画像処理部446の制御手段として機能するシステム制御部442は、先に説明した画像処理装置100に対応する構成である。
画像処理部446には不図示の画像バッファメモリが備えられており、画像処理部446における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリに一時的に格納される。なお、画像バッファメモリは画像処理部446に付随する態様でもよいし、画像メモリと兼用することも可能である。また、画像処理部446はシステム制御部442と統合されて、1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
画像処理部446(インク吐出データ生成部)で生成されたインク吐出データはヘッド駆動部448に与えられ、インクジェットヘッド348のインク吐出動作が制御される。
ヘッド駆動部448は、インクジェットヘッド348の吐出駆動を制御する手段として機能し、インクジェットヘッド348の各ノズル408に対応したアクチュエータ(図23に図示した圧電素子432)を駆動するための駆動信号波形を生成する駆動波形生成部が含まれる。駆動波形生成部から出力される信号は、デジタル波形データであってもよいし、アナログ電圧信号であってもよい。かかる駆動波形生成部は図1の波形生成部18に対応している。
画像入力から印字出力までの処理の流れを概説すると、印刷すべき画像のデータは、通信インターフェース440を介して外部から入力され、画像メモリに蓄えられる。この段階では、例えば、RGBの多値の画像データが画像メモリに記憶される。
インクジェット記録装置310では、インク(色材)による微細なドットの打滴密度やドットサイズを変えることによって、人の目に疑似的な連続階調の画像を形成するため、入力されたデジタル画像の階調(画像の濃淡)をできるだけ忠実に再現するようなドットパターンに変換する必要がある。そのため、画像メモリに蓄えられた元画像(RGB)のデータは、システム制御部442を介して画像処理部446に送られ、濃度データ生成部、補正処理部、インク吐出データ生成部による処理を経てインク色ごとのドットデータに変換される。
すなわち、画像処理部446は、入力されたRGB画像データをM,K,C,Yの4色のドットデータに変換する処理を行う。こうして画像処理部446で生成されたドットデータは、画像バッファメモリに蓄えられる。この色別ドットデータは、インクジェットヘッド348のノズルからインクを吐出するためのMKCY打滴データに変換され、印字されるインク吐出データ(各ノズルの駆動タイミングと各ノズルにおける駆動タイミングごとのドットサイズ(吐出量))が確定する。
なお、図24では、図9の補正係数記憶部108、ノズル属性情報記憶部112、修正係数記憶部114に対応する構成の図示が省略されているが、これらは、各種パラメータが記憶されるメモリや、他のメモリを利用することができる。
ヘッド駆動部448は、インク吐出データ及び駆動信号(駆動波形)に基づき、印字内容に応じてインクジェットヘッド348の各ノズル408に対応する圧電素子432を駆動するための駆動信号を出力する。ヘッド駆動部448にはヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
こうして、ヘッド駆動部448から出力された駆動信号がインクジェットヘッド348に加えられることによって、該当するノズル408からインクが吐出される。記録媒体314の搬送速度に同期してインクジェットヘッド348からのインク吐出を制御することにより、記録媒体314上に画像が形成される。
上記のように、画像処理部446における所要の信号処理を経て生成されたインク吐出データ、及び波形発生部445により生成された駆動信号波形に基づき、ヘッド駆動部448を介して各ノズルからのインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
図24に図示したインライン検出部470は、ノズル検知パターンの読み取り、読取データの処理、異常ノズルの判断の処理を経て、異常ノズルに関する情報をシステム制御部442へ提供する機能ブロックである。インライン検出部470は図20に図示したインラインセンサ382が含まれる。本例に示す画像記録方法において、不吐出ノズル情報を取得する手段として、インライン検出部470によりテストパターンを読み取り、当該読取情報を解析する構成を適用することができる。
システム制御部442は、インライン検出部470から得られる異常ノズルに関する情報や、その他の情報に基づいてインクジェットヘッド348に対する各種補正を行うとともに、必要に応じて予備吐出や吸引、ワイピング等のクリーニング動作(ノズル回復動作)を実施する制御を行う。
図示を省略するが、クリーニング動作を実行する手段として、インク受け、吸引キャップ、吸引ポンプ、ワイパーブレードなど、ヘッドメンテナンスに必要な部材を含んで構成されるメンテナンス処理部が備えられている。
また、ユーザインターフェースとしての操作部を備え、該操作部はオペレータ(ユーザ)が各種入力を行うための入力装置468と表示部(ディスプレイ)466を含んで構成される。入力装置468には、キーボード、マウス、タッチパネル、ボタンなど各種形態を採用し得る。オペレータは、入力装置468を操作することにより、印刷条件の入力、画質モードの選択、付属情報の入力・編集、情報の検索などを行うことができ、入力内容や検索結果など等の各種情報は表示部466の表示を通じて確認することができる。この表示部466はエラメッセージなどの警告を表示する手段としても機能する。
本例に示す画像記録方法において、入力装置468を介して不吐出ノズル情報が取得される構成も可能である。
また、本例では、不吐出ノズルの補正について説明したが、本発明は、不吐出ノズルだけでなく、吐出がされるものの液滴の着弾位置の誤差が許容範囲を超える着弾位置異常ノズルや、液滴の吐出量の誤差が許容範囲を超える吐出量異常ノズルなど、吐出異常ノズルの補正にも適用可能である。
〔他の装置への応用例〕
他の装置構成例として、例えば、電子回路の配線パターンを描画する配線描画装置、各種デバイスの製造装置、吐出用の機能性液体として樹脂液を用いるレジスト印刷装置、カラーフィルタ製造装置、マテリアルデポジション用の材料を用いて微細構造物を形成する微細構造物形成装置など、液状機能性材料を用いて様々な形状やパターンを得るインクジェットシステムにも広く適用できる。
〔付記〕
上記に詳述した実施形態についての記載から把握されるとおり、本明細書では以下に示す発明を含む多様な技術思想の開示を含んでいる。
(発明1):複数の記録素子を備えた記録ヘッドにおける異常記録素子の情報を取得する異常記録素子情報取得工程と、画像データが入力される画像データ入力工程と、隣接する記録素子が異常となった場合の異常補正係数を記録素子ごとに記憶する異常補正係数記憶工程と、前記取得された異常記録素子情報から把握される異常記録素子の発生特性に基づいて決められる第1の条件を満たす異常記録素子に隣接する記録素子の異常補正係数、及び、前記異常記録素子の発生特性に基づいて決められる第2の条件を満たす正常記録素子に隣接する記録素子の、当該正常記録素子が異常記録素子となった場合の異常補正係数を修正する修正係数を、前記異常記録素子の発生特性と関連付けして記憶する修正係数記憶工程と、前記第1の条件を満たす異常記録素子に隣接する記録素子及び前記第2の条件を満たす正常記録素子に隣接する記録素子に対して、前記異常記録素子の発生特性の情報を付与する特性情報付与工程と、処理対象画素に対応する記録素子に隣接する記録素子が異常記録素子である場合に、前記記憶された異常補正係数を用いて処理対象画素の画素値を補正する補正工程と、処理対象画素に対応する記録素子に隣接する異常記録素子が他の異常記録素子と隣接している場合に、前記異常記録素子の発生特性の情報を参照して前記記憶された修正係数を用いて当該処理対象画素の異常補正係数を修正する修正工程と、を含むことを特徴とする画像処理方法。
本発明によれば、予め把握されている異常記録素子についての情報から、異常記録素子の発生特性に基づいて決められる第1の条件を満たす異常記録素子に近接する位置に、他の異常記録素子が存在していることが把握されると、当該異常記録素子に隣接する記録素子に対して異常補正係数を修正するための修正係数が準備されるとともに、該異常記録素子の発生特性に基づいて決められる第2の条件を満たす正常記録素子に隣接する記録素子に対しても当該正常記録素子が異常記録素子となった場合の異常補正係数を修正するための修正係数が準備される。
したがって、異常記録素子が近接して存在する場合には異常補正係数が修正係数により修正され、異常記録素子が近接して存在する場合生じる濃度ムラが抑制される。また、新たに異常記録素子が発生した場合には、予め正常記録素子の隣接記録素子に準備された修正係数を用いて異常補正係数が修正されるので、新たな異常記録素子の発生にも直ちに対応することが可能である。
第1の条件及び第2の条件は、最も近い位置にある異常記録素子間の距離(記録素子の配置ピッチのピッチ数、間隔数)や、異常記録素子の繰り返し発生数(周期数)を含む態様が好ましい。
「記録素子」とは、インクジェットヘッドにおけるノズルや電子写真方式におけるLED素子などを包括する概念である。また、「異常記録素子」とは、形成された画素(ドット)の位置誤差が許容範囲を超えるもの、形成された画素のサイズの誤差が許容範囲を超えるものなどが含まれる。
(発明2):発明1に記載の画像処理方法において、前記第1の条件を満たす異常記録素子は、所定の範囲内の近接位置に他の異常記録素子が存在する異常記録素子であることを特徴とする。
かかる態様によれば、他の異常記録素子が所定の間隔範囲に存在する場合には、異常補正係数が修正されるので、異常記録素子が近接することによる濃度干渉が回避される。
かかる態様において、所定の範囲を異常記録素子間の間隔数(異常記録素子間の記録素子ピッチ数)とすることが可能である。
(発明3):発明1又は2に記載の画像処理方法において、前記第1の条件を満たす異常記録素子は、他の異常記録素子が所定の範囲内の周期で繰り返し出現する異常記録素子であることを特徴とする。
発明2に係る異常記録素子の間隔数と発明3に係る異常記録素子の周期数とを組み合わせて第1の条件としてもよい。
(発明4):発明1乃至3のいずれかに記載の画像処理方法において、前記第2の条件を満たす正常記録素子は、所定の範囲内の近接位置に異常記録素子が存在する正常記録素子であることを特徴とする。
かかる態様によれば、異常記録素子の発生状況(発生分布)に基づき、正常な記録素子の中で異常となる可能性が高いものを仮の異常記録素子として把握し、当該仮の異常記録素子についても異常補正係数を修正するための修正係数が割り当てられる。したがって、仮の異常記録素子が新たに異常となった場合には、直ちに異常補正係数を修正することが可能である。
(発明5):発明1乃至3のいずれかに記載の画像処理方法において、前記第2の条件を満たす正常記録素子は、所定の範囲内の周期で繰り返し出現する異常記録素子の1つが所定の範囲内の近接位置に存在する正常記録素子であることを特徴とする。
発明4に係る異常記録素子の間隔数と発明5に係る異常記録素子の周期数とを組み合わせて第2の条件としてもよい。
(発明6):発明1乃至5のいずれかに記載の画像処理方法において、前記特性情報付与工程は、第1の条件を満たす異常記録素子に隣接する記録素子及び第2の条件を満たす正常記録素子に隣接する記録素子に対して、異常記録素子間の間隔及び異常記録素子の出現周期の少なくともいずれかを前記異常記録素子の発生特性の情報として付与することを特徴とする。
かかる態様において、一方に隣接する記録素子に対する特性情報と、他方に隣接する記録素子に対する特性情報とを別々に付与する態様が好ましい。
(発明7):発明1乃至6のいずれかに記載の画像処理方法において、異常記録素子間の間隔及び異常記録素子の出現周期の少なくともいずれかをインデックスとして前記修正係数をインデックステーブル形式で記憶する修正係数記憶工程を含むことを特徴とする。
かかる態様によれば、異常補正係数を修正するための修正係数を記録素子ごと、画素値ごと、異常記録素子間の間隔ごと、異常記録素子の出現周期ごとに記憶しておく必要がなく、修正係数が記憶される記憶容量の節約が可能となる。
(発明8):複数の記録素子を備えた記録ヘッドにおける異常記録素子の情報を取得する異常記録素子情報取得工程と、画像データが入力される画像データ入力工程と、隣接する記録素子が異常となった場合の異常補正係数を記録素子ごとに記憶する異常補正係数記憶工程と、前記取得された異常記録素子情報から把握される異常記録素子の発生特性に基づいて決められる第1の条件を満たす異常記録素子に隣接する記録素子の異常補正係数、及び、前記異常記録素子の発生特性に基づいて決められる第2の条件を満たす正常記録素子に隣接する記録素子の、当該正常記録素子が異常記録素子となった場合の異常補正係数を修正する修正係数を、前記異常記録素子の発生特性と関連付けして記憶する修正係数記憶工程と、前記第1の条件を満たす異常記録素子に隣接する記録素子及び前記第2の条件を満たす正常記録素子に隣接する記録素子に対して、前記異常記録素子の発生特性の情報を付与する特性情報付与工程と、処理対象画素に対応する記録素子に隣接する記録素子が異常記録素子である場合に、前記記憶された異常補正係数を用いて処理対象画素の画素値を補正する補正工程と、処理対象画素に対応する記録素子に隣接する異常記録素子が他の異常記録素子と隣接している場合に、前記異常記録素子の発生特性の情報を参照して前記記憶された修正係数を用いて当該処理対象画素の異常補正係数を修正する修正工程と、前記補正された画素値及び前記修正された画素値に対してハーフトーン処理を施すハーフトーン処理工程と、前記ハーフトーン処理が施された後のデータを出力するデータ出力工程と、を含むことを特徴とする画像記録方法。
本発明において、データ出力工程より出力された出力データに基づいて記録素子を駆動させるための駆動信号を生成する駆動信号生成工程を含む態様が好ましい。
(発明9):発明8に記載の画像記録方法において、前記取得された異常記録素子情報に基づいて、前記第1の条件における所定の範囲内よりも近接している異常記録素子が存在する場合には、その旨をエラー情報として報知するエラー情報報知工程を含むことを特徴とする。
かかる態様において、前記第1の条件における所定の範囲内よりも近接している異常記録素子が存在する場合には画像処理を中断させるように構成するとよい。
本発明は、発明1から9のいずれかに記載の画像処理方法の各工程をコンピュータに実行させるためのプログラム発明が含まれている。
(発明10):複数の記録素子を備えた記録ヘッドにおける異常記録素子の情報を取得する異常記録素子情報取得手段と、画像データが入力される画像データ入力手段と、隣接する記録素子が異常となった場合の異常補正係数を記録素子ごとに記憶する異常補正係数記憶手段と、前記取得された異常記録素子情報から把握される異常記録素子の発生特性に基づいて決められる第1の条件を満たす異常記録素子に隣接する記録素子の異常補正係数、及び、前記異常記録素子の発生特性に基づいて決められる第2の条件を満たす正常記録素子に隣接する記録素子の、当該正常記録素子が異常記録素子となった場合の異常補正係数を修正する修正係数を、前記異常記録素子の発生特性と関連付けして記憶する修正係数記憶手段と、前記第1の条件を満たす異常記録素子に隣接する記録素子及び前記第2の条件を満たす正常記録素子に隣接する記録素子に対して、前記異常記録素子の発生特性の情報を付与する特性情報付与手段と、処理対象画素に対応する記録素子に隣接する記録素子が異常記録素子である場合に、前記記憶された異常補正係数を用いて処理対象画素の画素値を補正する補正手段と、処理対象画素に対応する記録素子に隣接する異常記録素子が他の異常記録素子と隣接している場合に、前記異常記録素子の発生特性の情報を参照して前記記憶された修正係数を用いて当該処理対象画素の異常補正係数を修正する修正手段と、を備えたことを特徴とする画像処理装置。
本発明において、画像処理後のデータを出力する出力手段を備える態様が好ましい。
(発明11):複数の記録素子を備えた記録ヘッドと、複数の記録素子を備えた記録ヘッドにおける異常記録素子の情報を取得する異常記録素子情報取得手段と、画像データが入力される画像データ入力手段と、隣接する記録素子が異常となった場合の異常補正係数を記録素子ごとに記憶する異常補正係数記憶手段と、前記取得された異常記録素子情報から把握される異常記録素子の発生特性に基づいて決められる第1の条件を満たす異常記録素子に隣接する記録素子の異常補正係数、及び、前記異常記録素子の発生特性に基づいて決められる第2の条件を満たす正常記録素子に隣接する記録素子の、当該正常記録素子が異常記録素子となった場合の異常補正係数を修正する修正係数を、前記異常記録素子の発生特性と関連付けして記憶する修正係数記憶手段と、前記第1の条件を満たす異常記録素子に隣接する記録素子及び前記第2の条件を満たす正常記録素子に隣接する記録素子に対して、前記異常記録素子の発生特性の情報を付与する特性情報付与手段と、処理対象画素に対応する記録素子に隣接する記録素子が異常記録素子である場合に、前記記憶された異常補正係数を用いて処理対象画素の画素値を補正する補正手段と、処理対象画素に対応する記録素子に隣接する異常記録素子が他の異常記録素子と隣接している場合に、前記異常記録素子の発生特性の情報を参照して前記記憶された修正係数を用いて当該処理対象画素の異常補正係数を修正する修正手段と、前記補正された画素値及び前記修正された画素値に対してハーフトーン処理を施すハーフトーン処理手段と、前記ハーフトーン処理が施された後のデータに基づいて前記記録素子を動作させて媒体上に画像を形成する記録制御手段と、を備えたことを特徴とする画像記録装置。
画像記録装置の一例として、複数のノズルが具備されたインクジェットヘッドと、記録媒体とインクジェットヘッドとを相対的に移動させる移動手段と、インクジェットヘッドの吐出を制御する吐出制御手段と、を備えたインクジェット記録装置が挙げられる。