時計や移動体通信機の基準信号源として2本の振動する脚を持った、いわゆる音叉型の水晶振動子が広く用いられている。このような2脚音叉振動子は2本の脚が脚の並ぶ方向すなわち面内で、互いに反対方向に屈曲振動するような振動モード(面内屈曲モード)で使用される。その共振周波数fは温度によって変化し、最大周波数f0に対する変化の割合(f−f0)/f0は図16のaのような二次曲線を示す。温度に対する二次温度係数は約−3.5×10−2ppm/℃2である。水晶は三方晶系に属する異方性単結晶であり、どのような角度に音叉を切り出すかによって性質が異なってくる。従来の2脚音叉振動子では図13のように基部1の幅方向を水晶の結晶軸のX軸(電気軸)とし、脚3の長さ方向および厚み方向を、それぞれ水晶の結晶軸のY軸(機械軸)およびZ軸(光学軸)に一致させた状態からX軸を回転軸として0〜5°回転した方向とすることで、温度特性の二次曲線の頂点(周波数頂点温度、ZTC)が室温付近となり、二次温度係数も最適値を得ている。
例えば、時計用途の場合、共振周波数の変化は時刻の精度に関わるため、様々な温度特性の向上が図られている。その一つに捩り振動モードの利用がある。
捩り振動子については、特開2002−118441号公報などで提案されている。X軸を回転軸として25°〜45°回転した角度に切り出したZ板水晶の捩り振動は、温度変化による周波数の変動が少なく、良好な温度特性を持つことが示されている。さらに、3脚の捩り振動子にすることで、面内振動を抑制することができるとしている。図12は、3脚捩り振動子の切り出し角度を示した図である。図16のbは 捩り振動子の温度特性を示したものである。図16のaに示した通常の屈曲モード振動子の温度特性と比べて、良好なことが分かる。
また、脚部先端に錘をつけて小型化させるという構造の捩り振動子も特許第3135317号公報などで提案されている。
また、屈曲二次振動(屈曲第1高調波、面内屈曲二次モードなどともいう)に捩り振動を結合させた結合振動子が、特開昭58−90815号公報、特開昭59−135916号公報などで提案されている。結合振動を用いることで捩り振動単独の振動子よりもフラットで良好な温度特性を得られるとされるものである。結合振動子の場合、屈曲二次モードと捩りモードの周波数差δfが温度特性に影響を与える。均一な性能の振動子を製造するためには、周波数調整に加えてδfも均一になるように調整する必要がある。
結合振動子において、周波数調整やδf調整は振動脚先端付近に設けた金属膜などを削ることによって行う。金属膜を削ることによって屈曲二次モード、捩りモードの周波数がそれぞれ変化するが、その削り位置によって各モードへの影響度が異なる。そのため、削り位置によって周波数およびδfの調整がそれぞれ可能である。特に、屈曲二次モードの節付近を削った場合は、捩りモードの周波数は変化するが屈曲二次モードの周波数は変化しないという性質があるため、特開昭58−90815、特開昭59−135916では、先端部を削ることによって屈曲二次モード、つまり主振動となる周波数を調整し、屈曲二次振動の節部を削ることによって捩りモードの周波数のみ変化させてδfの調整をしている。また、特開昭60−136406の従来例では、屈曲モードの節部を削ることでδfを調整し、屈曲モードと捩りモードの削りによる変化率が等しい部分(δfの節とする)が脚上に二箇所存在し、その部分を削ることによって主振動となる周波数の調整を行うとしている。屈曲モードの節部も、δfの節部も、節の前後で変化が逆転することから、節前後を均等に削ることによって不要な影響を受けることなく調整量を増やすことが出来る。
以下、本発明による実施の形態を図面に基づいて説明する。但し、本発明の技術的範囲はそれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
本実施例は、周波数調整をしていない場合の実施例である。図3は、本実施例の捩り振動子を正面から見た図である。
図12は、主材が水晶である捩り振動子の水晶方位を説明する説明図である。図14は、捩り振動の振動形態を示す図であり、図15は、副振動である面内屈曲二次モードの振動形態を示す図である。なお、図14、図15では錘部は省いて描いてある。
本実施例の捩り振動子は一つの基部1と基部1から同一の方向に伸びる3本の脚部3で構成されている(図3)。脚部3の先端には、脚幅が広くなった錘部4が形成されている。錘部4の位置は、図15にも示したような、振動子の固有振動モードの一つである、屈曲二次モードの振動の節の位置を含むように設計されている。屈曲二次モードの節は、脚の先端から脚長の約20%近辺に位置しているが、これは有限要素法シミュレーションや実験などによって予め確認しておくとよい。本実施例の捩り振動子では、図3に示すように錘部4は脚部3から幅方向外側に張り出している。
振動子のサイズは、色々に設計できるが、狙い周波数が約262kHzである捩り振動子の一例として、脚幅W=160μm、脚長L=2300m、厚みt=100μmなどである。
水晶は異方性の単結晶であり、その切り出し角によって性質が異なる。本実施例の捩り振動子は、ZカットからX軸周りにθ度回転した方位の水晶ウェハから切り出したものが使用される。θは25〜45°の範囲にある。切り出しには、フォトリソエッチングなどの方法が利用される。
各脚部3の表面には励振電極5が形成されている。励振電極5は、脚部3の基部1側に近い側に形成されている。図8は、励振電極5が形成されている部分の断面であり、各電極のつながりを示している。一つの脚の中で対抗する面同士の電極は同極、表面と側面は異極となるようになっている。また、隣り合う脚同士は逆の極になるように配置されている。各電極は基部1において基部1に形成されている接続電極につながれている。本実施例では、各励振電極5は、クロム下地で金のスパッタ膜が形成されている。膜厚はクロムが200Å程度、金が1200Å程度である。以上の構成により、励振電極5に発振回路を接続して捩りモードの振動を発振させることが可能となる。中央の脚と両脇の脚は、逆の捩り方向となり、モーメントのつりあいを実現している。
捩りモードの周波数faは、脚幅W、脚長L、厚みtとすると、t/Wに比例し、Lに反比例する。また、先端に錘部4を設けると、faは小さくなる。また、面内屈曲二次モードの周波数fbは、Wに比例し、tやLや錘部4にはあまり影響を受けない。よって、同じfaの振動子を得る場合、Wを細くし錘部4を付加した形状の振動子は、faは同じままfbを下げることができ、両モードの周波数差δf(=fa−fb)が大きい振動子となる。図7は、先端部裏面にAgの蒸着膜を厚さ1μmで付けた場合のZTC(周波数頂点温度)と、その膜をすべて除去した場合のZTCの変化を示した図である。横軸をδfの絶対値とfaの比で表してある。ここでは原理を説明するために蒸着膜を付加した例を示すが、本実施例は調整膜6を付加しない例であることに注意されたい。差δfが小さいと、先端部の質量の変化によってZTCが変化しやすくなることがわかる。一方、δfが大きな振動子は先端部の質量の変化によってZTCが変化しにくい。つまり、Wを細くして先端近傍に錘部4をつけた捩り振動子は、δfが大きく、捩り振動の温度特性は面内屈曲二次振動の影響を受け難く、安定している。特に、δfの絶対値とfaの比である|δf|/faが、0.1と等しい、または大きくなる程度にδfを大きくしておけば、温度特性が面内屈曲二次モードの影響を受けづらい。図7からも、ZTCの変化が10℃以下に収まっており、温度特性が安定していることがわかる。|δf|/faが0.2以上であれば、ZTCの変化が5℃以下に収まっていることから、さらによい。また錘部4は屈曲二次モードの節部を含んで形成されているので、製造時の錘部4の寸法ばらつきが生じた場合にも、質量変化がZTCに影響を与え難く、温度特性の安定した振動子となる。
本実施例は、錘部4が脚部3の先端にはかからず、周波数調整をしていない場合の実施例である。図4は、本実施例の捩り振動子を正面から見た図である。
図12は、主材が水晶である捩り振動子の水晶方位を説明する説明図である。図14は捩り振動の振動形態を示す図であり、図15は副振動である面内屈曲二次モードの振動形態を示す図である。なお、図14、図15では錘部は省いて描いてある。
本実施例の捩り振動子は一つの基部1と基部1から同一の方向に伸びる3本の脚部3で構成されている(図4)。脚部3には、脚幅が広くなった錘部4が形成されている。錘部4の位置は、図15にも示したような、振動子の固有振動モードの一つである、屈曲二次モードの振動の節周辺の位置となるように設計されている。屈曲二次モードの節は、脚の先端から脚長の約20%近辺に位置しているが、これは有限要素法シミュレーションや実験などによって予め確認しておくとよい。本実施例の捩り振動子では、図4に示すように錘部4は脚部3から幅方向外側に張り出している。また、脚部3先端部には幅広の錘部4はなく、屈曲二次モード節部を中心に錘部4が形成されている。
振動子のサイズは、色々に設計できるが、狙い周波数が約262kHzである捩り振動子の一例として、脚幅W=160μm、脚長L=2300m、厚みt=100μmなどである。
水晶は異方性の単結晶であり、その切り出し角によって性質が異なる。本実施例の捩り振動子は、ZカットからX軸周りにθ度回転した方位の水晶ウェハから切り出したものが使用される。θは25〜45°の範囲にある。切り出しには、フォトリソエッチングなどの方法が利用される。
各脚部3の表面には励振電極5が形成されている。励振電極5は、脚部3の基部1側に近い側に形成されている。図8は励振電極5が形成されている部分の断面であり、各電極のつながりを示している。一つの脚の中で対抗する面同士の電極は同極、表面と側面は異極となるようになっている。また、隣り合う脚同士は逆の極になるように配置されている。各電極は基部1において基部1に形成されている接続電極につながれている。本実施例では、各励振電極5は、クロム下地で金のスパッタ膜が形成されている。膜厚はクロムが200Å程度、金が1200Å程度である。以上の構成により、励振電極5に発振回路を接続して捩りモードの振動を発振させることが可能となる。中央の脚と両脇の脚は、逆の捩り方向となり、モーメントのつりあいを実現している。
捩りモードの周波数faは、脚幅W、脚長L、厚みtとすると、t/Wに比例し、Lに反比例する。また、先端に錘部4を設けると、faは小さくなる。また、面内屈曲二次モードの周波数fbは、Wに比例し、tやLや錘部4にはあまり影響を受けない。よって、同じfaの振動子を得る場合、Wを細くし錘部4を付加した形状の振動子は、faは同じままfbを下げることができ、両モードの周波数差δf(=fa−fb)が大きい振動子となる。図7は、先端部裏面にAgの蒸着膜を厚さ1μmで付けた場合のZTC(周波数頂点温度)と、その膜をすべて除去した場合のZTCの変化を示した図である。横軸をδfの絶対値とfaの比で表してある。ここでは原理を説明するために蒸着膜を付加した例を示すが、本実施例は調整膜6を付加しない例であることに注意されたい。が小さいと、先端部の質量の変化によってZTCが変化しやすくなることがわかる。一方、δfが大きな振動子は先端部の質量の変化によってZTCが変化しにくい。つまり、Wを細くして先端近傍に錘部4をつけた捩り振動子は、δfが大きく、捩り振動の温度特性は面内屈曲二次振動の影響を受け難く、安定している。特に、δfの絶対値とfaの比である|δf|/faが、0.1と等しい、または大きくなる程度にδfを大きくしておけば、温度特性が面内屈曲二次モードの影響を受けづらい。図7からも、ZTCの変化が10℃以下に収まっており、温度特性が安定していることがわかる。|δf|/faが0.2以上であれば、ZTCの変化が5℃以下に収まっていることから、さらによい。また錘部4は屈曲二次モードの節部に形成されているので、製造時の錘部4の寸法ばらつきが生じた場合にも、質量変化がZTCに影響を与え難く、温度特性の安定した振動子となる。錘部4が先端にかからないので、特に温度特性が安定する。
錘部4の長さaは、脚長Lに対して、脚部長手方向において、面内屈曲二次モードの節の位置を中心として、先端側および根元側へ0.05L〜0.2Lの長さをもつと、十分に|δf|を大きくでき、かつ温度特性も安定している。本実施例の振動子では、錘部4の長さa=300μmとしている。
本実施例は、調整膜6を形成し、周波数調整をする場合の実施例である。図2は、本実施例の捩り振動子を正面から見た図である。
図12は、主材が水晶である捩り振動子の水晶方位を説明する説明図である。図14は捩り振動の振動形態を示す図であり、図15は副振動である面内屈曲二次モードの振動形態を示す図である。なお、図14、図15では錘部は省いて描いてある。
本実施例の捩り振動子は一つの基部1と基部1から同一の方向に伸びる3本の脚部3で構成されている(図2(a))。脚部3の先端には、脚幅が広くなった錘部4が形成されている。錘部4の位置は、図15にも示したような、振動子の固有振動モードの一つである、屈曲二次モードの振動の節の位置を含むように設計されている。屈曲二次モードの節は、脚の先端から脚長の約20%近辺に位置しているが、これは有限要素法シミュレーションや実験などによって予め確認しておくとよい。本実施例の捩り振動子では、図2に示すように錘部4は脚部3から幅方向外側に張り出している。
振動子のサイズは、色々に設計できるが、狙い周波数が約262kHzである捩り振動子の一例として、脚幅W=160μm、脚長L=2300m、厚みt=100μmなどである。
水晶は異方性の単結晶であり、その切り出し角によって性質が異なる。本実施例の捩り振動子は、ZカットからX軸周りにθ度回転した方位の水晶ウェハから切り出したものが使用される。θは25〜45°の範囲にある。切り出しには、フォトリソエッチングなどの方法が利用される。
各脚部3の表面には励振電極5が形成されている。励振電極5は、脚部3の基部1側に近い側に形成されている。図8は励振電極5が形成されている部分の断面であり、各電極のつながりを示している。一つの脚の中で対抗する面同士の電極は同極、表面と側面は異極となるようになっている。また、隣り合う脚同士は逆の極になるように配置されている。各電極は基部1において基部1に形成されている接続電極につながれている。本実施例では、各励振電極5は、クロム下地で金のスパッタ膜が形成されている。膜厚はクロムが200Å程度、金が1200Å程度である。以上の構成により、励振電極5に発振回路を接続して捩りモードの振動を発振させることが可能となる。中央の脚と両脇の脚は、逆の捩り方向となり、モーメントのつりあいを実現している。
図9は、周波数調整についての説明図である。図9(b)に示すように、それぞれの脚部3の側面と裏面には、調整膜6が形成されている。調整膜6は、錘部4のみでもいいし、周囲に広げて形成してもよい。調整膜6は、クロム下地で銀の蒸着膜が形成されており、膜厚はクロムが200Å、銀が裏面は1〜5μm程度、側面はその三分の一程度の厚みである。調整膜6をレーザービームなどにより一部を削っていくことにより質量が変化し、捩りモードの共振周波数を所望の値に調整することができる。図9(a)はレーザービームにより裏面にある調整膜6を削って共振周波数を調整するときの状態を示す図であり、脚部3をY’Z’面で切ったときの断面図である。レーザービームは表面から入射させ、調整膜6を除去して質量調整を行う。質量が軽くなると周波数が高くなるため周波数調整をすることができる。本実施例と逆に調整膜6が表面にある場合は、裏面からレーザービームを照射して表面の調整膜を除去する。なお、側面に形成された調整膜6はレーザービームで削ることができないため周波数調整には寄与できないが、裏面(または表面)から連続的に形成することで、裏面(または表面)と側面との角部からの剥がれを防止することができる。このように調整膜6を形成する手法としては、水晶片を回転させながら蒸着をするなどといった方法が用いられる。なお、剥がれが問題とならない場合には、側面に調整膜6を形成せず、裏面(または表面)だけに形成してもよい。
捩りモードの周波数faは、脚幅W、脚長L、厚みtとすると、t/Wに比例し、Lに反比例する。また、先端に錘部4を設けると、faは小さくなる。また、面内屈曲二次モードの周波数fbは、Wに比例し、tやLや錘部4にはあまり影響を受けない。よって、同じfaの振動子を得る場合、Wを細くし錘部4を付加した形状の振動子は、faは同じままfbを下げることができ、両モードの周波数差δf(=fa−fb)が大きい振動子となる。図7は、先端部裏面にAgの蒸着膜を厚さ1μmで付けた場合のZTC(周波数頂点温度)と、その膜を周波数調整としてすべて削った場合のZTCの変化を示した図である。横軸をδfの絶対値とfaの比で表してある。δfが小さいと、ZTCが変化しやすくなることがわかる。一方、δfが大きな振動子はZTCが変化しにくい。つまり、Wを細くして先端近傍に錘部4をつけた捩り振動子は、δfが大きく、捩り振動の温度特性は面内屈曲二次振動の影響を受け難く、安定している。特に、δfの絶対値とfaの比である|δf|/faが、0.1と等しい、または大きくなる程度にδfを大きくしておけば、温度特性が面内屈曲二次モードの影響を受けづらい。図7からも、ZTCの変化が10℃以下に収まっており、温度特性が安定していることがわかる。|δf|/faが0.2以上であれば、ZTCの変化が5℃以下に収まっていることから、さらによい。
図6は上述の調整膜6をY方向の削り位置を変えて削った場合、削り量単位長さ当りのZTC変化を示したグラフである。先端から約500μmの位置で変化がなくなるのが分かる。この位置は、面内屈曲二次モードの節の位置に一致している。また、節の位置から離れた場所を削った場合にも、δfが大きいものはδfが小さいものにくらべてZTCが変わりにくいことも分かる。よって、δfが大きい振動子において、節を中心にした質量の増減は、ZTCに影響を与え難いことがわかる。捩りモードの温度特性には、カップリングしている面内屈曲二次モードが影響しているが、節を削る場合には、面内屈曲二次モードの振動形状は変化せず、よって捩り振動の温度特性も変化しないためである。
また、調整膜6を削った場合の捩りモードの周波数変化は、削り位置によって異なる。幅方向(X方向)の違いでは、幅方向外側の方が変化量が大きく、中心に寄るにしたがって変化量が少ない。錘部4は面内屈曲二次モードの節部近傍で幅方向に広がりを持ち、幅方向外側(調整済み領域14)を重点的に削ることで周波数調整量も確保できるため、削ってもZTCが変わり難くかつ十分な周波数調整量を確保することが可能となった(図2(b))。
本実施例は、錘部4が脚3の先端にはかからず調整膜6を形成し、周波数調整をする場合の実施例である。図1は、本実施例の捩り振動子を正面から見た図である。
図12は、主材が水晶である捩り振動子の水晶方位を説明する説明図である。図14は捩り振動の振動形態を示す図であり、図15は副振動である面内屈曲二次モードの振動形態を示す図である。なお、図14、図15では錘部は省いて描いてある。
本実施例の捩り振動子は一つの基部1と基部1から同一の方向に伸びる3本の脚部3で構成されている(図1(a))。脚部3には、脚幅が広くなった錘部4が形成されている。錘部4の位置は、図15にも示したような、振動子の固有振動モードの一つである、屈曲二次モードの振動の節周辺の位置となるように設計されている。屈曲二次モードの節は、脚の先端から脚長の約20%近辺に位置しているが、これは有限要素法シミュレーションや実験などによって予め確認しておくとよい。本実施例の捩り振動子では、図1に示すように錘部4は脚部3から幅方向外側に張り出している。また、脚部3先端部には幅広の錘部4はなく、屈曲二次モード節部を中心に錘部4が形成されている。
振動子のサイズは、色々に設計できるが、狙い周波数が約262kHzである捩り振動子の一例として、脚幅W=160μm、脚長L=2300m、厚みt=100μmなどである。
水晶は異方性の単結晶であり、その切り出し角によって性質が異なる。本実施例の捩り振動子は、ZカットからX軸周りにθ度回転した方位の水晶ウェハから切り出したものが使用される。θは25〜45°の範囲にある。切り出しには、フォトリソエッチングなどの方法が利用される。
各脚部3の表面には励振電極5が形成されている。励振電極5は、脚部3の基部1側に近い側に形成されている。図8は励振電極5が形成されている部分の断面であり、各電極のつながりを示している。一つの脚の中で対抗する面同士の電極は同極、表面と側面は異極となるようになっている。また、隣り合う脚同士は逆の極になるように配置されている。各電極は基部1において基部1に形成されている接続電極につながれている。本実施例では、各励振電極5は、クロム下地で金のスパッタ膜が形成されている。膜厚はクロムが200Å程度、金が1200Å程度である。以上の構成により、励振電極5に発振回路を接続して捩りモードの振動を発振させることが可能となる。中央の脚と両脇の脚は、逆の捩り方向となり、モーメントのつりあいを実現している。
図9は、周波数調整についての説明図である。図9(b)に示すように、それぞれの脚部3の側面と裏面には、調整膜6が形成されている。調整膜6は、錘部4のみでもいいし、周囲に広げて形成してもよい。調整膜6は、クロム下地で銀の蒸着膜が形成されており、膜厚はクロムが200Å、銀が裏面は1〜5μm程度、側面はその三分の一程度の厚みである。調整膜6をレーザービームなどにより一部を削っていくことにより質量が変化し、捩りモードの共振周波数を所望の値に調整することができる。図9(a)はレーザービームにより裏面にある調整膜6を削って共振周波数を調整するときの状態を示す図であり、脚部3をY’Z’面で切ったときの断面図である。レーザービームは表面から入射させ、調整膜6を除去して質量調整を行う。質量が軽くなると周波数が高くなるため周波数調整をすることができる。本実施例と逆に調整膜6が表面にある場合は、裏面からレーザービームを照射して表面の調整膜を除去する。なお、側面に形成された調整膜6はレーザービームで削ることができないため周波数調整には寄与できないが、裏面(または表面)から連続的に形成することで、裏面(または表面)と側面との角部からの剥がれを防止することができる。このように調整膜6を形成する手法としては、水晶片を回転させながら蒸着をするなどといった方法が用いられる。なお、剥がれが問題とならない場合には、側面に調整膜6を形成せず、裏面(または表面)だけに形成してもよい。
捩りモードの周波数faは、脚幅W、脚長L、厚みtとすると、t/Wに比例し、Lに反比例する。また、先端近傍に錘部4を設けると、faは小さくなる。また、面内屈曲二次モードの周波数fbは、Wに比例し、tやLや錘部にはあまり影響を受けない。よって、同じfaの振動子を得る場合、Wを細くし錘部を付加した形状の振動子は、faは同じままfbを下げることができ、両モードの周波数差δf(=fa−fb)が大きい振動子となる。図7は、先端部裏面にAgの蒸着膜を厚さ1μmで付けた場合のZTC(周波数頂点温度)と、その膜を周波数調整としてすべて削った場合のZTCの変化を示した図である。横軸をδfの絶対値とfaの比で表してある。δfが小さいと、ZTCが変化しやすくなることがわかる。一方、δfが大きな振動子はZTCが変化しにくい。つまり、Wを細くして先端近傍に錘部をつけた捩り振動子は、δfが大きく、捩り振動の温度特性は面内屈曲二次振動の影響を受け難く、安定している。特に、|δf|/faが、0.1と等しい、または大きくなる程度にδfを大きくしておけば、温度特性が面内屈曲二次モードの影響を受けづらい。図7からも、ZTCの変化が10℃以下に収まっており、温度特性が安定していることがわかる。|δf|/faが0.2以上であれば、ZTCの変化が5℃以下に収まっていることから、さらによい。
図6は上述の調整膜6を削り位置を変えて削った場合、削り量単位長さ当りのZTC変化を示したグラフである。先端から約500μmの位置で変化がなくなるのが分かる。この位置は、面内屈曲二次モードの節の位置に一致している。また、節の位置から離れた場所を削った場合にも、δfが大きいものはδfが小さいものにくらべてZTCが変わりにくいことも分かる。よって、δfが大きい振動子において、節を中心にした質量の増減は、ZTCに影響を与え難いことがわかる。捩りモードの温度特性には、カップリングしている面内屈曲二次モードが影響しているが、節を削る場合には、面内屈曲二次モードの振動形状は変化せず、よって捩り振動の温度特性も変化しないためである。
また、調整膜6を削った場合の捩りモードの周波数変化は、削り位置によって異なる。幅方向(X方向)の違いでは、幅方向外側の方が変化量が大きく、中心に寄るにしたがって変化量が少ない。また、長さ方向(Y’方向)の違いでは、先端へいくほど変化量が多く、根元へ近づくほど変化量が少ない。面内屈曲二次モードの節部付近に限定して錘部を設けた本実施例の振動子は、先端部を削る場合よりも周波数調整量としては不利であるが、節部近傍で幅方向に広がりを持つため幅方向外側(調整済み領域14)を重点的に削ることで周波数調整量も確保できるため、脚部3の先端まで錘部4が形成されている場合に比べて、削ってもZTCがさらに変わり難くかつ十分な周波数調整量を確保することが可能となった(図1(b))。
錘部4の長さaは、脚長Lに対して、脚部長手方向において、面内屈曲二次モードの節の位置を中心として、先端側および根元側へ0.05L〜0.2Lの長さをもつと、周波数調整量を十分に確保でき、温度特性も安定している。本実施例の振動子では、錘部4の長さa=300μmとしている。
本実施例は、別の錘部形状の捩り振動子に関するものである。図5は、本実施例の捩り振動子を正面から見た図である。
図12は、主材が水晶である捩り振動子の水晶方位を説明する説明図である。図14は捩り振動の振動形態を示す図であり、図15は副振動である面内屈曲二次モードの振動形態を示す図である。なお、図14、図15では錘部は省いて描いてある。
本実施例の捩り振動子は一つの基部1と基部1から同一の方向に伸びる3本の脚部3で構成されている(図5(a))。脚部3には、脚幅が広くなった錘部4が形成されている。錘部4の位置は、図15にも示したような、振動子の固有振動モードの一つである、屈曲二次モードの振動の節周辺の位置となるように設計されている。屈曲二次モードの節は、脚の先端から脚長の約20%近辺に位置しているが、これは有限要素法シミュレーションや実験などによって予め確認しておくとよい。本実施例の捩り振動子では、図1に示すように錘部4は脚部3から幅方向外側に張り出している。また、脚部3先端部には幅広の錘部4はなく、屈曲二次モード節部を中心に錘部4が形成されている。さらに、錘部4の幅は、面内屈曲二次モードの節に近いほど幅が大きく、節から離れるほど幅が小さくなっている。
振動子のサイズは、色々に設計できるが、狙い周波数が約262kHzである捩り振動子の一例として、脚幅W=160μm、脚長L=2300m、厚みt=100μmなどである。
水晶は異方性の単結晶であり、その切り出し角によって性質が異なる。本実施例の捩り振動子は、ZカットからX軸周りにθ度回転した方位の水晶ウェハから切り出したものが使用される。θは25〜45°の範囲にある。切り出しには、フォトリソエッチングなどの方法が利用される。
各脚部3の表面には励振電極5が形成されている。励振電極5は、脚部3の基部1側に近い側に形成されている。図8は励振電極5が形成されている部分の断面であり、各電極のつながりを示している。一つの脚の中で対抗する面同士の電極は同極、表面と側面は異極となるようになっている。また、隣り合う脚同士は逆の極になるように配置されている。各電極は基部1において基部1に形成されている接続電極につながれている。本実施例では、各励振電極5は、クロム下地で金のスパッタ膜が形成されている。膜厚はクロムが200Å程度、金が1200Å程度である。以上の構成により、励振電極5に発振回路を接続して捩りモードの振動を発振させることが可能となる。中央の脚と両脇の脚は、逆の捩り方向となり、モーメントのつりあいを実現している。
図9は、周波数調整についての説明図である。図9(b)に示すように、それぞれの脚部3の側面と裏面には、調整膜6が形成されている。調整膜6は、錘部4のみでもいいし、周囲に広げて形成してもよい。調整膜6は、クロム下地で銀の蒸着膜が形成されており、膜厚はクロムが200Å、銀が裏面は1〜5μm程度、側面はその三分の一程度の厚みである。調整膜6をレーザービームなどにより一部を削っていくことにより質量が変化し、捩りモードの共振周波数を所望の値に調整することができる。図9(a)はレーザービームにより裏面にある調整膜6を削って共振周波数を調整するときの状態を示す図であり、脚部3をY’Z’面で切ったときの断面図である。レーザービームは表面から入射させ、調整膜6を除去して質量調整を行う。質量が軽くなると周波数が高くなるため周波数調整をすることができる。本実施例と逆に調整膜6が表面にある場合は、裏面からレーザービームを照射して表面の調整膜を除去する。なお、側面に形成された調整膜6はレーザービームで削ることができないため周波数調整には寄与できないが、裏面(または表面)から連続的に形成することで、裏面(または表面)と側面との角部からの剥がれを防止することができる。このように調整膜6を形成する手法としては、水晶片を回転させながら蒸着をするなどといった方法が用いられる。なお、剥がれが問題とならない場合には、側面に調整膜6を形成せず、裏面(または表面)だけに形成してもよい。
捩りモードの周波数faは、脚幅W、脚長L、厚みtとすると、t/Wに比例し、Lに反比例する。また、先端近傍に錘部4を設けると、faは小さくなる。また、面内屈曲二次モードの周波数fbは、Wに比例し、tやLや錘部にはあまり影響を受けない。よって、同じfaの振動子を得る場合、Wを細くし錘部を付加した形状の振動子は、faは同じままfbを下げることができ、両モードの周波数差δf(=fa−fb)が大きい振動子となる。図7は、先端部裏面にAgの蒸着膜を厚さ1μmで付けた場合のZTC(周波数頂点温度)と、その膜を周波数調整としてすべて削った場合のZTCの変化を示した図である。横軸をδfの絶対値とfaの比で表してある。δfが小さいと、ZTCが変化しやすくなることがわかる。一方、δfが大きな振動子はZTCが変化しにくい。つまり、Wを細くして先端近傍に錘部をつけた捩り振動子は、δfが大きく、捩り振動の温度特性は面内屈曲二次振動の影響を受け難く、安定している。特に、|δf|/faが、0.1と等しい、または大きくなる程度にδfを大きくしておけば、温度特性が面内屈曲二次モードの影響を受けづらい。図7からも、ZTCの変化が10℃以下に収まっており、温度特性が安定していることがわかる。|δf|/faが0.2以上であれば、ZTCの変化が5℃以下に収まっていることから、さらによい。
図6は上述の調整膜6をY方向の削り位置を変えて削った場合、削り量単位長さ当りのZTC変化を示したグラフである。先端から約500μmの位置で変化がなくなるのが分かる。この位置は、面内屈曲二次モードの節の位置に一致している。また、節の位置から離れた場所を削った場合にも、δfが大きいものはδfが小さいものにくらべてZTCが変わりにくいことも分かる。よって、δfが大きい振動子において、節を中心にした質量の増減は、ZTCに影響を与え難いことがわかる。捩りモードの温度特性には、カップリングしている面内屈曲二次モードが影響しているが、節を削る場合には、面内屈曲二次モードの振動形状は変化せず、よって捩り振動の温度特性も変化しないためである。
また、調整膜6を削った場合の捩りモードの周波数変化は、削り位置によって異なる。幅方向(X方向)の違いでは、幅方向外側の方が変化量が大きく、中心に寄るにしたがって変化量が少ない。また、長さ方向(Y’方向)の違いでは、先端へいくほど変化量が多く、根元へ近づくほど変化量が少ない。面内屈曲二次モードの節部付近に限定して錘部を設けた本実施例の振動子は、先端部を削る場合よりも周波数調整量としては不利であるが、節部近傍で幅方向に広がりを持つため幅方向外側(調整済み領域14)を重点的に削ることで周波数調整量も確保できるため、脚部3の先端まで錘部4が形成されている場合に比べて、削ってもZTCがさらに変わり難くかつ十分な周波数調整量を確保することが可能となった(図5(b))。さらに、本実施例の捩り振動子の錘部4の幅は、面内屈曲二次モードの節に近いほど幅が大きく、節から離れるほど幅が小さくなっている。削ってもZTCが変わりにくい部分で重点的に周波数調整ができ、温度特性がより安定化する。
錘部4の長さaは、脚長Lに対して、脚部長手方向において、面内屈曲二次モードの節の位置を中心として、先端側および根元側へ0.05L〜0.2Lの長さをもつと、周波数調整量を十分に確保でき、温度特性も安定している。本実施例の振動子では、a=300μmとしている。
次に、本発明における捩り振動子の製造方法の実施例について説明する。これらは、実施例1〜5に示す捩り振動子共通の製造方法である。図10は、捩り振動子のエッチング工程を示す断面図である。図11は、電極形成工程を示す断面図である。
まず、水晶ウェハ7を準備する(図10(a))。水晶ウェハ7の表裏両面に金属耐食膜8を成膜する。金属耐食膜8は下地にCrのAuスパッタ膜などが利用される。その上に、フォトレジスト9を成膜する(図10(b))。捩り振動子音叉形状が形成されたフォトマスク10を用いてフォトレジスト9を露光(図10(c))、現像する。音叉形状には、先端付近に錘部4が形成されており、実施例1〜5に示した形状などの捩り振動子である。得られたフォトレジストパターンをマスクとしてAu、Cr膜をエッチングする(図10(d))。エッチングされたAu、Crパターンをマスクとして、マスクに覆われていない部分の水晶をフッ酸などを含むエッチング液でエッチングし、水晶の音叉形状を得る(図10(e))。金属耐食膜8、フォトレジスト9を剥離し、電極形成工程に進む(図11(a))。なお、フォトレジスト9は水晶のエッチング前にあらかじめ剥離しておいてもよい。
表面用および裏面用フォトマスクに形成されている振動脚形状には、先端付近に脚幅よりも幅広になった錘部4が設けられている。この周波数調整部は、屈曲二次モードの節の部分になる場所に設定されている。屈曲二次モードの節となる位置は、有限要素法シミュレーションで予測し、実験的にも確認をするとよい。
得られた音叉形状の水晶片に電極膜となる金属膜11をスパッタなどで形成する。電極膜となる金属膜11は、下地にCrやNi、上層にAu膜などが利用される。この上に、フォトレジスト12を形成し(図11(b))、電極マスク13を用いて露光(図11(c))、現像する。得られたフォトレジストパターンをマスクとして金属膜11をエッチングし、脚部3に形成された励振電極5およびその他の部分の電極が形成される(図11(d))。
ここから先は、実施例3〜5の捩り振動子に限って行う工程であり、実施例1および2の捩り振動子を製造する場合には行なわない工程である。錘部4付近にAgなどの金属膜を調整膜6として、蒸着、スパッタなどで形成する。次に、捩り振動子の共振周波数を測定する。測定は、基部1に設けられた電極パッドにプローブを当てることで行われる。共振周波数が所望の周波数でない場合、錘部4に形成された調整膜6をレーザーで一部分削ることによって周波数を調整する。調整膜6を取り除くと共振周波数は上がるため、調整膜6を削る前の状態では所望の周波数よりも少し低くなるように設定しておき、測定した周波数と所望の周波数の差分だけ周波数が高くなり、調整後所望の周波数になるように調整膜6を除去する。測定を都度行いながら調整膜6を除去してもよい。このときの削り位置は、前述の屈曲二次モードの節付近にある錘部4上にある。これでも足りない場合は錘部4だけでなく、先端側や根元側を削っても良い。また、周波数調整は本実施例のように水晶上に形成した調整膜6を削ることによってもよいが、水晶自体を削っても良いし、膜やその他質量を付加してもよい。質量を付加する場合は、周波数は下がる方向に調整される。