JP6086038B2 - 誘電体セラミックの製造方法および誘電体セラミック - Google Patents

誘電体セラミックの製造方法および誘電体セラミック Download PDF

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この発明は、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3:以後STOと呼称する)系誘電体セラミックの製造方法、およびSTO系誘電体セラミックに関するものである。
ペロブスカイト型化合物では、通常、酸素イオンの配位数が12となる位置をAサイト、酸素イオンの配位数が6となる位置をBサイトと呼称する。そして、Aサイトに位置する元素をAで表し、Bサイトに位置する元素をBで表し、組成式をABO3で表す。
STOは、Aサイトに存在する元素がSrであり、Bサイトに存在する元素がTiであるペロブスカイト型化合物である。STOは比抵抗が高く、高耐圧を要求されるセラミックコンデンサを構成するセラミック誘電体のベース材料として用いられている。
一方、STOの比誘電率(εr)は、極低温では高いものの、室温以上では低い。そのため、STO系誘電体セラミックを用いて構成されるセラミックコンデンサの静電容量を大きくすることは容易ではない。
上記の課題を解消するために、例えば特開2010−163321号公報(特許文献1)に記載のようなSTO系誘電体セラミックが提案されている。
特許文献1に記載の誘電体セラミックは、主成分が(Sr1-x-ySnxBay)TiO3で表され、かつ上記組成式において、xが0.005≦x≦0.24、yが0≦y≦0.25であることを特徴としている。
純粋なSTOは、高温から絶対零度に至るまで、相転移せずに常誘電体相のままである。一方、特許文献1に記載の誘電体セラミックは、STOのAサイトにSnが所定量存在するようにしている。それにより、強誘電体相への相転移を発生させ、かつその相転移温度を調整して、εrを向上させている。
Snイオンは、基本的には正4価が安定であり、その場合、ペロブスカイト型化合物のBサイトに存在する。一方、特許文献1では、Snが正2価のイオンとしてペロブスカイト型化合物のAサイトに存在することが重要であり、SnがBサイトに存在する場合には、εr向上の効果を期待することはできないとしている。
特開2010−163321号公報
STO系誘電体セラミックは、比抵抗が高いため、例えばサージなどにより突発的な高電圧が印加されてしまう可能性のある、車載用のセラミックコンデンサの誘電体セラミックとして好適である。
一方、車載用のセラミックコンデンサは、常に高温環境となるエンジンルーム内に搭載される電装機器の部品として用いられることが想定される。例えば、エンジンのシリンダーヘッド付近に搭載されるECU(Electronic Control Unit:電子制御装置)などに用いられるセラミックコンデンサは、200℃以上の高温にさらされる可能性がある。
しかしながら、特許文献1に記載の誘電体セラミックは、室温でのεrはSTOに比べて向上させることができているが、上記のような高い温度でのεrについては実証されていない。
そこで、この発明の目的は、高温環境下であっても、高いεrを有するSTO系誘電体セラミックの製造方法、およびそのようなSTO系誘電体セラミックを提供しようとすることである。
上記の課題を解決するため、本発明者は鋭意研究を重ねた結果、ペロブスカイト型化合物のAサイトおよびBサイトの両方にSnが存在するSTO系誘電体セラミックが、高温環境下であっても、高いεrを有することを見出し、この発明を為すに至った。
すなわち、この発明では、誘電体セラミックの製造方法と、誘電体セラミックの組成についての改良が図られる。
この発明に係る誘電体セラミックの製造方法は、以下の第1〜第3の工程を含む。
第1の工程では、元素として、Srと、Tiと、Snとを含む未焼成の成形体を準備する。各元素の量は、モル部で表した場合、Srの量のTiの量に対する比xが0.77≦x≦0.99、およびSnの量のTiの量に対する比yが0.01≦y≦0.23の各条件を満たす。
第2の工程では、未焼成の成形体を、Snが正4価から正2価に還元され得る雰囲気下で焼成する。この工程により、化合物として、組成式をABO3で表した場合、Aサイトに存在する元素がSrとSnとを含み、Bサイトに存在する元素がTiを含んで構成されるペロブスカイト型化合物を含む焼結体を得る。
第3の工程では、焼結体を、Snが正2価から正4価に酸化され得る雰囲気下で熱処理する。この工程により、ペロブスカイト型化合物においてAサイトに存在しているSnの一部をBサイトに移動させる。
第3の工程の熱処理において適用される温度は、第2の工程の焼成において適用される温度より低くなるようにしてもよい。
さらに、第3の工程の熱処理は、第2の工程の焼成の降温過程において、雰囲気をSnが正2価から正4価に酸化され得る雰囲気に変更して実施してもよい。
また、この発明に係る誘電体セラミックは、元素として、Srと、Tiと、Snとを含む。各元素の量は、モル部で表した場合、Srの量のTiの量に対する比xが0.77≦x≦0.99、およびSnの量のTiの量に対する比yが0.01≦y≦0.23の各条件を満たす。
かつ、化合物として、組成式がABO3で表され、Aサイトに存在する元素がSrとSnとを含み、Bサイトに存在する元素がTiとSnとを含んで構成されるペロブスカイト型化合物を含む。
上記の誘電体セラミックの製造方法では、還元性雰囲気下での焼成により、一旦STOをベースとするペロブスカイト型化合物のAサイトにSnを入れる。次いで酸化性雰囲気下の熱処理により、Aサイトに存在しているSnの一部を、Bサイトに移動させる。
すなわち、焼成時および熱処理時の雰囲気を調整することにより、ペロブスカイト型化合物におけるSnの存在位置を制御している。
したがって、STOをベースとするペロブスカイト型化合物のAサイトおよびBサイトの両方に、Snが確実に存在する誘電体セラミックを、効率よく製造することができる。
焼成後の熱処理において適用される温度を、焼成において適用される温度より低くした場合、誘電体セラミックのさらなる粒成長が生じないため、高い比抵抗が維持され、また機械的強度が低下することがない。
さらに、焼成後の熱処理を、焼成の降温過程において、雰囲気を変更して実施した場合、別の熱処理装置に移し替え、改めて室温から熱処理温度まで昇温させる必要がないため、手間と余分なエネルギー消費を抑えることができる。
また、上記の誘電体セラミックは、STOのAサイトおよびBサイトの両方にSnが存在することにより、200℃でのεrが180以上となり、高温環境下であっても、高いεrを有する。
この発明に係る誘電体セラミックに含まれるペロブスカイト型化合物における、各元素の存在位置を模式的に示す図である。 試料7の誘電体セラミックに含まれるペロブスカイト型化合物を、収差補正TEM(Transmission Electron Microscope:透過型電子顕微鏡)により結晶格子の[001]方向から観察した格子像である。 図2に示した格子像において、収差補正TEMに付属しているEDS(Energy Dispersive X−ray Spectrometry:エネルギー分散型X線分析)を用いたマッピング分析により、図2のX1−X1線に沿って配列する[001]方向の原子列に含まれる元素の種類を分析した結果を示す図である。 図2に示した格子像において、収差補正TEMに付属しているEDSを用いた線分析により、図2のX1−X1線に沿って配列する[001]方向の原子列に含まれる元素の種類を分析した結果を示す図である。 試料1、7および11の誘電体セラミックにおける−225℃〜200℃の温度範囲でのεrの温度特性の変化を示す図である。 図5に示したεrの温度特性において、50℃〜200℃の高温領域を拡大したものを示す図である。
−実施の形態−
以下にこの発明の実施形態を示して、この発明の特徴とするところをさらに詳しく説明する。
<誘電体セラミックの製造方法>
この発明に係る誘電体セラミックの製造方法は、以下の第1〜第3の工程を含む。各工程について、工程順に説明する。
<第1の工程>
第1の工程は、未焼成の成形体を得る工程である。
まず、誘電体セラミックの原料粉末を用意し、これらをスラリー化し、このスラリーをシート状に成形して、グリーンシートを得る。
この誘電体セラミックの原料粉末としては、元素として、種類と量とがこの発明で規定される各条件を満たし、化合物として、ペロブスカイト型化合物を含むものを用いることができる。
ペロブスカイト型化合物粉末の製造方法(合成方法)としては、炭酸塩や酸化物からなる素材を混合し、仮焼して合成する固相法の他、水熱法など種々の公知の方法を用いることができる。あるいは、水熱法などで作製されたSTOと、Snの素材とを、各元素の量がこの発明で規定される条件を満たすように混合した後、仮焼して、ペロブスカイト型化合物粉末を製造してもよい。
また、この誘電体セラミックの原料粉末としては、炭酸塩、酸化物、水酸化物、塩化物など種々の形態からなる素材を、元素の種類と、各元素の量とが、この発明で規定される各条件を満たすように混合したものを用いることもできる。
この場合、誘電体セラミックの焼成時にそれらが反応して、元素の種類と、各元素の量とが、この発明で規定される各条件を満たすようなペロブスカイト型化合物が合成される。
また、この誘電体セラミックの原料粉末としては、水熱法などで作製されたSTOと、Snの素材とを、各元素の量がこの発明で規定される条件を満たすように混合したものを用いることもできる。
この場合も、誘電体セラミックの焼成時にそれらが反応して、元素の種類と、各元素の量とが、この発明で規定される各条件を満たすようなペロブスカイト型化合物が合成される。
得られたグリーンシートを必要数積層し、これを熱圧着することによって、未焼成の成形体が得られる。
成形体は、誘電体セラミックの原料粉末を、プレス装置を用いて圧粉成形する方法により得ることもできる。あるいは、誘電体セラミックの原料粉末をスラリー化し、所定の基板上にスピンコーターなどを用いて薄膜形成する他、インクジェット装置などを用いてパターニングすることにより得てもよい。
<第2の工程>
第2の工程は、還元性雰囲気下での焼成により、焼結体を得る工程である。
第1の工程で得られた未焼成の成形体を、Snが正4価から正2価に還元され得る雰囲気下で焼成する。この工程により、化合物として、組成式をABO3で表した場合、Aサイトに存在する元素がSrとSnとを含み、Bサイトに存在する元素がTiを含んで構成されるペロブスカイト型化合物を含む焼結体を得る。
この第2の工程に用いる熱処理装置は、バッチ炉の他、コンベア炉など種々の公知の装置を用いることができる。
<第3の工程>
第3の工程は、酸化性雰囲気下での熱処理により、ペロブスカイト型化合物におけるSnの存在位置を調整する工程である。
第2の工程で得られた焼結体を、Snが正2価から正4価に酸化され得る雰囲気下で熱処理する。この工程により、前記ペロブスカイト型化合物においてAサイトに存在しているSnの一部をBサイトに移動させ、この発明に係る誘電体セラミックを得る。
前述のように、Snは基本的には正4価が安定である。そのため、誘電体セラミックを、その中に含まれるSnが正4価となる状態で焼結させた後に、Snを正2価に還元することは、例えば焼結温度より高い温度での熱処理が必要になるなど、容易ではない。すなわち、ペロブスカイト型化合物のBサイトに存在するSnを、その量を制御しながらAサイトに移動させることは困難である。
一方、この発明に係る誘電体セラミックの製造方法では、還元性雰囲気下での焼成により、誘電体セラミックをその中に含まれるSnが正2価となる状態で焼結させる。次いで、酸化性雰囲気下の熱処理により、Snの一部を正4価とする。
上記のようにSnは正4価が安定であるから、正2価から正4価への酸化は、酸化性雰囲気下であれば、焼成で適用された温度より低い温度を適用した場合であっても容易に進む。すなわち、ペロブスカイト型化合物のAサイトに存在しているSnの一部を、Bサイトに移動させることは、BサイトからAサイトに移動させることに比べて、より好ましい方法と考えられる。
また、第3の工程は、第2の工程終了後、得られた焼結体を第2の工程で用いた熱処理装置から取り出し、雰囲気をSnが正2価から正4価に酸化され得る雰囲気とした別の熱処理装置に移して実施することができる。あるいは、第2の工程で用いたものと同じ熱処理装置を用いて、第2の工程の降温過程において、雰囲気をSnが正2価から正4価に酸化され得る雰囲気に変更して実施してもよい。
<誘電体セラミック>
この発明に係る誘電体セラミックは、元素として、種類と量とがこの発明で規定される各条件を満たす。かつ、化合物として、組成式がABO3で表され、Aサイトに存在する元素がSrとSnとを含み、Bサイトに存在する元素がTiとSnとを含んで構成されるペロブスカイト型化合物を含む。
なお、Aサイトに存在する元素の量の、Bサイトに存在する元素の量に対する比は、化学量論的には1.00である。ただし、Sr、TiおよびSnの量と、ペロブスカイト型化合物におけるSnの存在位置により、化学量論組成から外れることもある。
この発明に係る誘電体セラミックは、車載用電子部品としてのセラミックコンデンサの誘電体に用いることができる。また、車載用ICのEMC(Electro−Magnetic Compatibility:電磁両立性)対策用オンチップキャパシタの絶縁膜などに用いてもよい。
−実験例−
次に、この発明を実験例に基づいて、より具体的に説明する。これらの実験例は、この発明に係る誘電体セラミックに含まれる元素の量の条件を規定する根拠を与えるためのものでもある。
<誘電体セラミックの原料粉末の製造>
誘電体セラミックに含まれるSrの素材としてSrCO3、Tiの素材としてTiO2、およびSnの素材としてSnO2の各粉末を準備した。各粉末は、純度99重量%以上のものを用いた。
これらの粉末を、各元素の量をモル部で表した場合、Srの量のTiの量に対する比x、およびSnの量のTiの量に対する比yが、表1に示す値となるように秤量、調合した。調合時には、各粉末の純度に応じた調合量の補正を行なった。
これらの調合原料粉末を、ボールミルを用いて湿式混合し、均一に分散させた後、乾燥し、解砕処理を施して調整粉末を得た。得られた調整粉末を、バッチ式の熱処理装置を用いて、1150℃で仮焼した後、解砕処理を施して誘電体セラミックの原料粉末を得た。なお、仮焼時の熱処理装置内部の酸素分圧(PO2)は、Snが正4価から正2価に還元され得る1×10-13MPaとした。
なお、誘電体セラミックの原料粉末中には、調合原料に由来する不可避の不純物としてCaが混入する可能性がある。また、湿式混合の過程でYSZ(Yttria Stabilized Zirconia:イットリア安定化ジルコニア)ボールをメディアとして用いた場合、不可避の不純物としてZr、Hf、およびYが混入する可能性がある。ただし、これらの不純物は、極微量であるため、この発明の効果に影響を与えないことを別途確認してある。
得られた誘電体セラミックの原料粉末を酸により溶解し、ICP(Inductively Coupled Plasma:高周波誘導結合プラズマ)発光分光分析を行なった。
その結果、上記により得られた誘電体セラミックの原料粉末は、表1に示した組成と、実質的に同じ組成を有していることが確認された。
<誘電体セラミックの製造>
上記で準備した誘電体セラミックの原料粉末に、ポリビニルブチラール系のバインダー、可塑剤およびトルエンなどの有機溶剤を加え、ボールミルにより24時間湿式混合して、誘電体セラミックの原料粉末を含むスラリーを得た。
これらのスラリーを、ドクターブレード法により、ポリエチレンテレフタレートからなるキャリアフィルム上にシート状に成形して、誘電体セラミックの原料粉末を含むグリーンシートを得た。
上記のグリーンシートを適当数積み重ねて、200MPaの静水圧下で、2分間熱圧着後、カットして、表1に示した各組成に対応する未焼成の成形体を得た。得られた未焼成の成形体の外形寸法は、幅が4.0mm、長さが4.0mm、および厚さが0.5mmであった。
上記の未焼成の成形体を、大気中において、温度280℃で6時間保持して、含まれているバインダーを燃焼させた。バインダーを燃焼させた後の未焼成の成形体を、N2−H2−H2Oの混合ガスを用いた還元性雰囲気中において、温度1300℃で2時間保持して焼成し、表1に示した各組成に対応する焼結体を得た。なお、焼成時の熱処理装置内部のPO2は、Snが正4価から正2価に還元され得る1×10-13MPaとした。得られた焼結体の外形寸法は、幅が3.6mm、長さが3.6mm、および厚さが0.46mmであった。
上記の焼結体を、大気中において、表1に示す条件で熱処理した。
上記の工程により、試料1〜11に係る誘電体セラミックの単板を得た。
<セラミックコンデンサの製造>
上記の誘電体セラミックの単板の両主面に、Agを導電性材料とし、B23−SiO2−BaO系のガラスフリットを含有する導電性ペーストを塗布し、N2雰囲気中において、温度600℃で焼き付けて電極を形成した。これにより、試料1〜11に係る誘電体セラミックの単板を2枚の電極で挟んだ単板型のセラミックコンデンサを製造した。
<誘電体セラミックの分析>
試料1〜11に係るセラミックコンデンサの電極を除去し、得られた誘電体セラミックを酸により溶解し、得られた溶液についてICP発光分光分析を行なった。その際、1つの試料につき10個の誘電体セラミックの単板を溶液化した。ここで、一旦焼き付けた電極を除去して得た誘電体セラミックの単板を溶解し、ICP発光分光分析したのは、電極の焼き付けの影響を受けた、実使用状態にある誘電体セラミックを分析の対象とするためである。以後の分析および測定も、同じ考え方に基づいている。なお、誘電体セラミックの単板を溶解処理して溶液とする方法に特別の制約はない。
その結果、誘電体セラミックは、表1に示した調合組成と、実質的に同じ組成を有していることが確認された。
したがって、この発明に係る誘電体セラミックに含まれる元素の種類と、各元素の量の条件とは、表1に示した組成に基づいて規定するものとする。
次に、試料1〜11に係るセラミックコンデンサの電極を除去し、得られた誘電体セラミックの単板を粉砕して粉末化したものについて、ディフラクトメータを用いたX線回折により、含まれている結晶相の同定を行なった。その際、1つの試料につき10個の誘電体セラミックの単板を粉末化した。
その結果、試料1〜11の全てについて、化合物として、STOをベースとしたペロブスカイト型化合物が含まれていることが確認された。STOをベースとしたペロブスカイト型化合物1における、各元素の存在位置を表す模式図を図1に示す。
この発明に係る誘電体セラミックに含まれるペロブスカイト型化合物1は、以下に述べるように、Aサイト2に存在する元素がSrとSnとを含み、Bサイト3に存在する元素がTiとSnとを含んで構成されている。
次に、試料1〜11に係るセラミックコンデンサの電極を除去し、得られた誘電体セラミックの単板を研磨およびArイオンミリングなどによって加工し、薄膜化した。
試料1〜11に係る誘電体セラミックの薄膜について、収差補正TEMを用いて、ペロブスカイト型化合物1の[001]方向から観察し、格子像を得た。その際、1つの試料につき10枚の誘電体セラミックの薄膜から格子像を得た。
一例として、試料7の誘電体セラミックの10枚の薄膜のうちの1枚から得られた、ペロブスカイト型化合物1の格子像を図2に示す。この格子像は、図1において[001]方向に並ぶAサイト原子列4と、[001]方向に並ぶ酸素−Bサイト原子列5を見たものである。
なお、図2のX1−X1線は、[001]方向から見た(110)面を表しており、Aサイト原子列4と酸素−Bサイト原子列5とは、(110)面に含まれる原子列である(図1参照)。
図2に示した格子像において、収差補正TEMに付属しているEDSを用いたマッピング分析により、図2のX1−X1線に沿って配列する[001]方向の原子列に含まれる元素を分析した結果を図3に示す。また、同じEDSを用いた線分析により、図2のX1−X1線に沿って配列する[001]方向の原子列に含まれる元素を分析した結果を図4に示す。図4では、各元素の存在位置の関係が分かるように、各元素の分析結果を重ね合わせて示している。
図3および図4において、各元素の信号強度は、各元素の信号強度の最大値を1として正規化されたものであり、各元素の信号強度の絶対値を表すものではない。したがって、この信号強度の比較自体には意味がなく、その比較からペロブスカイト型化合物1のAサイトおよびBサイトに、どの元素がどれだけ存在するかを求めることはできない。なお、酸素−Bサイト原子列5についての分析結果は、酸素が軽元素でありEDSでは検出されないため、Bサイト3に位置する元素のみが検出されている。
なお、図3のマッピング分析では、0.5未満の強度の信号はバックグラウンド信号と判定し、原子列に含まれる元素の種類を分かりやすくするために図示していない。一方、図4の線分析では、分析結果に手を加えずに図示している。そのため、Aサイト原子列4からTiが、また酸素−Bサイト原子列5からSrが検出されているように見えるが、これは上記のようにバックグラウンド信号によるものと考えられる。
図3および図4を見ると、この試料においては、SnはAサイト原子列4と酸素−Bサイト原子列5との両方から検出されている。すなわち、SnがAサイト2とBサイト3との両方に存在していることが分かる。
試料1〜11に係る誘電体セラミックの薄膜において、1枚の薄膜につき、3箇所のAサイト原子列4と3箇所の酸素−Bサイト原子列5の合計6箇所の原子列に関して、上記の方法により元素分析を行なった。3箇所のAサイト原子列4の全てからSnが検出された数aと、3箇所の酸素−Bサイト原子列5の全てからSnが検出された数bをカウントした。この元素分析を、1つの試料につき10枚の誘電体セラミックの薄膜で行なった。
例えば、Aサイト原子列4において、3箇所全てからSnが検出された薄膜の数が7枚であり、1箇所からSnが検出された薄膜の数が3枚であった場合は、7/10とカウントする。そして、10/10の場合に、ペロブスカイト型化合物1のAサイト2に存在する元素がSnを含んでいると判定した。
同様に、10枚の薄膜について、酸素−Bサイト原子列5におけるSnのカウント数が10/10の場合に、ペロブスカイト型化合物1のBサイト3に存在する元素が、Snを含んでいると判定した。
<誘電体セラミックのεrの測定>
試料1〜11に係るセラミックコンデンサについて、静電容量温度特性の測定システムを用い、電圧が1Vrms、周波数が1kHzの交流電圧を印加して、−225℃〜200℃の温度範囲で静電容量を測定した。その際、1つの試料につき3個のセラミックコンデンサの静電容量を測定し、それらの平均値を求めて各測定温度での静電容量とした。
測定システムは、インピーダンスアナライザと、槽内に測定端子が設けられた恒温槽と、それらを制御し、かつデータを記録するパーソナルコンピュータとを含んで構成されている。
各測定温度での静電容量と、誘電体セラミックの単板の寸法とから、各試料に係る誘電体セラミックの各測定温度におけるεrを算出した。
一例として、εrの温度特性を、試料1、7および11の誘電体セラミックの間で比較したものを図5および図6に示す。図5は−225℃〜200℃の温度範囲で、相転移などに由来すると考えられる大きなεrの変化を調べたものである。一方、図6は50℃〜200℃の高温領域における試料1、7および11の誘電体セラミックのεrの違いを明らかにするためのものである。
後掲の表1に示すように、試料1は、純粋なSTO単体であり、試料7は、SnがAサイト2およびBサイト3の両方に存在する誘電体セラミックであり、試料11は、SnがAサイト2のみに存在する誘電体セラミックである。
図5および図6を見ると、試料7では、εrの温度特性において−180℃付近にブロードなピークが発生しており、かつ高温側のεrが試料1および試料11に比べて、全体的に大きくなっていることが分かる。
これは、STOのAサイト2およびBサイト3の両方にSnを存在させることにより、純粋なSTOには見られなかった強誘電体相への相転移が生じるようになったためと考えられる。このεrの温度特性におけるブロードなピークは、いわゆるリラクサー材料のように、温度による微小なサイズの強誘電体相領域の大きさの変化と、強誘電体相領域間の相互作用とにより生じるものと考えられるが、詳細は不明である。
一方、SnがAサイト2のみに存在する試料11では、強誘電体相への相転移は生じているが、ピークの形状が試料7に比べてブロードではなく、高温側のεrが試料1に比べて大きくなっていない。
すなわち、STOにおいて、高温側のεrを大きくするためには、SnをSTOのAサイト2およびBサイト3の両方に存在させることが重要であると言える。
上記で説明した、誘電体セラミックに含まれるSrの量のTiの量に対する比xと、Snの量のTiの量に対する比yと、熱処理条件と、ペロブスカイト型化合物中のSnの存在位置と、200℃でのεrとを、表1にまとめて示す。
表1において、試料番号に*を付したものは、この発明に係る誘電体セラミックにおいて規定される、各元素の量の条件またはペロブスカイト型化合物中のSnの存在位置の条件から外れた試料である。
表1に示すように、誘電体セラミックに含まれる各元素の量、およびペロブスカイト型化合物中のSnの存在位置が、この発明で規定される条件を満たす各試料においては、誘電体セラミックの200℃におけるεrが180以上となる。すなわち、高温環境下であっても、高いεrを有することが確認された。
これに対し、各元素の量およびSnの存在位置が、この発明で規定される条件を満たさない試料においては、誘電体セラミックの200℃におけるεrが180未満となり、好ましくない結果となることが確認された。
なお、この発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、誘電体セラミックの組成などに関し、この発明の範囲内において、種々の応用、変形を加えることが可能である。
1 ペロブスカイト型化合物
2 Aサイト原子列
3 酸素−Bサイト原子列

Claims (4)

  1. 元素として、Srと、Tiと、Snとを含み、前記各元素の量をモル部で表した場合、
    Srの量のTiの量に対する比xが0.77≦x≦0.99、および
    Snの量のTiの量に対する比yが0.01≦y≦0.23
    の各条件を満たす、未焼成の成形体を準備する、第1の工程と、
    前記未焼成の成形体を、Snが正4価から正2価に還元され得る雰囲気下で焼成することにより、化合物として、組成式をABO3で表した場合、Aサイトに存在する元素がSrとSnとを含み、Bサイトに存在する元素がTiを含んで構成されるペロブスカイト型化合物を含む焼結体を得る、第2の工程と、
    前記焼結体を、Snが正2価から正4価に酸化され得る雰囲気下で熱処理することにより、前記ペロブスカイト型化合物においてAサイトに存在しているSnの一部をBサイトに移動させる、第3の工程と
    を含む、誘電体セラミックの製造方法。
  2. 前記第3の工程の熱処理において適用される温度は、前記第2の工程の焼成において適用される温度より低い、請求項1に記載の誘電体セラミックの製造方法。
  3. 前記第3の工程の熱処理は、前記第2の工程の焼成の降温過程において、雰囲気をSnが正2価から正4価に酸化され得る雰囲気に変更して実施される、請求項2に記載の誘電体セラミックの製造方法。
  4. 元素として、Srと、Tiと、Snとを含み、前記各元素の量をモル部で表した場合、
    Srの量のTiの量に対する比xが0.77≦x≦0.99、および
    Snの量のTiの量に対する比yが0.01≦y≦0.23
    の各条件を満たし、
    化合物として、組成式がABO3で表され、Aサイトに存在する元素がSrとSnとを含み、Bサイトに存在する元素がTiとSnとを含んで構成されるペロブスカイト型化合物を含む、誘電体セラミック。
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