JP2016145119A - 誘電体磁器およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】積層セラミックコンデンサなどに用いるのに適した特性の良好な誘電体磁器、および、前記誘電体磁器を効率よく製造することが可能な誘電体磁器の製造方法を提供する。
【解決手段】BaとTiとを主成分とするペロブスカイト複合酸化物と、Nb,Sn、および所定の副成分を含む誘電体磁器において、Ti100molに対するNbの含有量X(mol部)をx軸とし、Snの含有量Y(mol部)をy軸として表したとき、(X,Y)が以下の点;A:(0.001,0.0005)、B:(1,0.8)、C:(1,2.0)、D:(0.1,0.3)、E:(0.001,0.0032)で囲まれた領域にあり、かつ、Tiに含まれるTi3+の含有量が全Ti量の0.001mol%以下となるようにする。
【選択図】なし
【解決手段】BaとTiとを主成分とするペロブスカイト複合酸化物と、Nb,Sn、および所定の副成分を含む誘電体磁器において、Ti100molに対するNbの含有量X(mol部)をx軸とし、Snの含有量Y(mol部)をy軸として表したとき、(X,Y)が以下の点;A:(0.001,0.0005)、B:(1,0.8)、C:(1,2.0)、D:(0.1,0.3)、E:(0.001,0.0032)で囲まれた領域にあり、かつ、Tiに含まれるTi3+の含有量が全Ti量の0.001mol%以下となるようにする。
【選択図】なし
Description
本発明は、誘電体磁器およびその製造方法に関し、詳しくは、BaおよびTiを主成分とするペロブスカイト複合酸化物を含む誘電体磁器およびその製造方法に関する。
近年、積層セラミックコンデンサの使用用途が拡大する一方で、その使用環境は厳しさを増している。積層セラミックコンデンサの大容量化は、例えば、代表的な方法として、誘電体素子(内部電極間に存在する誘電体層)を薄くすることによって実現される。さらに、積層セラミックコンデンサの大容量化には、誘電体素子を薄くすることだけではなく、有効面積の拡大や誘電体素子にかかる電界強度の増大を伴うことが多い。
このような状況下、比誘電率を高く保ちながら、薄層化した場合にも高い電界強度を有し、かつ信頼性が高い誘電体磁器(誘電体セラミック)が強く望まれるに至っている。
また、積層セラミックコンデンサにおいて、内部電極間に存在する誘電体層の厚さ方向に対するグレイン数を5個以上確保しないと信頼性が低下する(例えば、平均故障時間(MTTF)が短くなる)ことが知られているが、異常粒成長が生じた場合は、グレイン数が減少し、信頼性が低下するという問題点がある。この異常粒成長は、添加物の不均一性や分散時に生じた微粒子などが原因となって発生することが知られている。そして、この異常粒成長抑制への取り組みが行われているにもかかわらず、必ずしも有効な手法が確立されていないのが実情である。
このような状況下、特許文献1には、焼結助剤として媒体撹拌ミルの媒体(玉石)から磨耗粉を、焼結助剤として0.1mol%以上0.3mol%以下の割合で添加することにより、焼結助剤を均一に分散させ、異常粒成長によるショート不良を引き起こすことなく、積層セラミックコンデンサを焼成させることができるようにした積層セラミックコンデンサの製造方法が提案されている。
そして、特許文献1によれば、積層セラミックコンデンサの誘電体層を2μm以下とした場合にも、上記摩耗粉が焼結助剤として機能し、セラミック誘電体の異常粒成長によるショート不良の発生を抑制することができるとされている。
しかし、上記特許文献1の積層セラミックコンデンサの製造方法の場合、媒体撹拌ミルの媒体(玉石)から供給される磨耗粉量は、媒体の使用時間により変化するため、焼結助剤として機能する磨耗粉量を一定に制御することは困難で、微細構造が変動しやすいという問題点がある。
また、粒成長を抑制するために用いることが可能な成分としては、誘電体の特性に影響を与えないことを重視する見地から、これまでは、主成分に固溶しにくい成分に限定されてきた。そのため、粒成長を抑制する目的で添加することができる元素や化合物の種類は限られており、粒成長を十分に抑制することは困難であった。
本発明は、上記課題を解決するものであり、グレインサイズが小さく、特性の良好な、積層セラミックコンデンサなどに用いるのに適した誘電体磁器、および、焼成工程において粒成長を抑制することが可能で、特性の良好な誘電体磁器を効率よく製造することが可能な誘電体磁器の製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明の誘電体磁器は、
BaとTiとを主成分とするペロブスカイト複合酸化物と、NbおよびSnと、所定の副成分とを含む誘電体磁器であって、
Ti100molに対するNbの含有量X(mol部)をx軸とし、Snの含有量Y(mol部)をy軸として表したとき、
(X,Y)が以下の点;
A:(0.001,0.0005)、
B:(1,0.8)、
C:(1,2.0)、
D:(0.1,0.3)、
E:(0.001,0.0032)
で囲まれた領域にあり、かつ、
Tiに含まれるTi3+の含有量が全Ti量の0.001mol%以下であること
を特徴としている。
BaとTiとを主成分とするペロブスカイト複合酸化物と、NbおよびSnと、所定の副成分とを含む誘電体磁器であって、
Ti100molに対するNbの含有量X(mol部)をx軸とし、Snの含有量Y(mol部)をy軸として表したとき、
(X,Y)が以下の点;
A:(0.001,0.0005)、
B:(1,0.8)、
C:(1,2.0)、
D:(0.1,0.3)、
E:(0.001,0.0032)
で囲まれた領域にあり、かつ、
Tiに含まれるTi3+の含有量が全Ti量の0.001mol%以下であること
を特徴としている。
また、本発明の誘電体磁器の製造方法は、
上記本発明にかかる誘電体磁器の製造方法であって、
Ba化合物、Ti化合物、Nb化合物、およびSn化合物を混合し、熱処理することにより、Ti100molに対するNbの含有量X(mol部)をx軸、Snの含有量Y(mol部)をy軸として表したとき、
(X,Y)が以下の点;
A:(0.001,0.0005)、
B:(1,0.8)、
C:(1,2.0)、
D:(0.1,0.3)、
E:(0.001,0.0032)
で囲まれた領域にある、NbとSnとを含むチタン酸バリウム粉末を合成する工程と、
前記チタン酸バリウム粉末に所定の副成分を添加して、誘電体原料を得る工程と、
前記誘電体原料から成型体を作製する工程と、
前記成型体を焼成する工程と
を備えることを特徴としている。
上記本発明にかかる誘電体磁器の製造方法であって、
Ba化合物、Ti化合物、Nb化合物、およびSn化合物を混合し、熱処理することにより、Ti100molに対するNbの含有量X(mol部)をx軸、Snの含有量Y(mol部)をy軸として表したとき、
(X,Y)が以下の点;
A:(0.001,0.0005)、
B:(1,0.8)、
C:(1,2.0)、
D:(0.1,0.3)、
E:(0.001,0.0032)
で囲まれた領域にある、NbとSnとを含むチタン酸バリウム粉末を合成する工程と、
前記チタン酸バリウム粉末に所定の副成分を添加して、誘電体原料を得る工程と、
前記誘電体原料から成型体を作製する工程と、
前記成型体を焼成する工程と
を備えることを特徴としている。
また、本発明の他の誘電体磁器の製造方法は、
上記本発明にかかる誘電体磁器の製造方法であって、
Nb、Sn化合物を混合し、熱処理することでSn2Nb2O7を主成分とする添加物を作製する工程と、
チタン酸バリウム粉末に対して、作製した前記添加物を、Ti100molに対するNbの含有量X(mol部)をx軸とし、Snの含有量Y(mol部)をy軸として表したとき、
(X,Y)が以下の点;
A:(0.001,0.0005)、
B:(1,0.8)、
C:(1,2.0)、
D:(0.1,0.3)、
E:(0.001,0.0032)
で囲まれた領域で表される量だけ添加するとともに、さらに所定の副成分を添加して、誘電体原料を得る工程と、
前記誘電体原料から成型体を作製する工程と、
前記成型体を焼成する工程と
を備えることを特徴としている。
上記本発明にかかる誘電体磁器の製造方法であって、
Nb、Sn化合物を混合し、熱処理することでSn2Nb2O7を主成分とする添加物を作製する工程と、
チタン酸バリウム粉末に対して、作製した前記添加物を、Ti100molに対するNbの含有量X(mol部)をx軸とし、Snの含有量Y(mol部)をy軸として表したとき、
(X,Y)が以下の点;
A:(0.001,0.0005)、
B:(1,0.8)、
C:(1,2.0)、
D:(0.1,0.3)、
E:(0.001,0.0032)
で囲まれた領域で表される量だけ添加するとともに、さらに所定の副成分を添加して、誘電体原料を得る工程と、
前記誘電体原料から成型体を作製する工程と、
前記成型体を焼成する工程と
を備えることを特徴としている。
また、本発明のさらに他の誘電体磁器の製造方法は、
上記本発明にかかる誘電体磁器の製造方法であって、
Ba化合物、Ti化合物、Nb化合物、Sn化合物、および所定の副成分を混合し、熱処理することで、Ti100molに対するNbの含有量X(mol部)をx軸とし、Snの含有量Y(mol部)をy軸として表したとき、
(X,Y)が以下の点;
A:(0.001,0.0005)、
B:(1,0.8)、
C:(1,2.0)、
D:(0.1,0.3)、
E:(0.001,0.0032)
で囲まれた領域で表される誘電体原料を得る工程と、
前記誘電体原料から成型体を作製する工程と、
前記成型体を焼成する工程と
を備えることを特徴としている。
上記本発明にかかる誘電体磁器の製造方法であって、
Ba化合物、Ti化合物、Nb化合物、Sn化合物、および所定の副成分を混合し、熱処理することで、Ti100molに対するNbの含有量X(mol部)をx軸とし、Snの含有量Y(mol部)をy軸として表したとき、
(X,Y)が以下の点;
A:(0.001,0.0005)、
B:(1,0.8)、
C:(1,2.0)、
D:(0.1,0.3)、
E:(0.001,0.0032)
で囲まれた領域で表される誘電体原料を得る工程と、
前記誘電体原料から成型体を作製する工程と、
前記成型体を焼成する工程と
を備えることを特徴としている。
本発明の誘電体磁器は、上述のように、BaとTiとを主成分とするペロブスカイト複合酸化物と、NbおよびSnと、所定の副成分とを含み、Ti100molに対するNbの含有量X(mol部)をx軸とし、Snの含有量Y(mol部)をy軸として表したとき、(X,Y)が、点A(0.001,0.0005)、B:(1,0.8)、C:(1,2.0)、D:(0.1,0.3)、E:(0.001,0.0032)で囲まれた領域にあり、かつ、Tiに含まれるTi3+の含有量が全Ti量の0.001mol%以下であるという要件を備えている。その結果、粒成長を抑制して、信頼性の高い(例えば、平均故障時間(MTTF)の値が大きい)誘電体磁器を提供することが可能になる。
従来、NbはTiとBaを主成分とするペロブスカイト化合物(チタン酸バリウム)中に固溶しやすく、チタン酸バリウム中に固溶することでTiがTi3+に変化し、絶縁抵抗(IR)や信頼性が低下する傾向があるため、粒成長を抑制する目的(ピンニング効果を得る目的)でNb化合物を用いることはできないとされてきた。これに対し、本発明ではNbとともにSnを加えることで、例えば、Sn2Nb2O7と予想される安定な化合物を形成し、Nbのチタン酸バリウム中への固溶を抑制、防止して、TiがTi3+に変化することを抑制しつつ、粒成長を抑えるようにしているので、信頼性の高い(例えば、平均故障時間(MTTF)の値が大きい)誘電体磁器を提供することが可能になる。
なお、チタン酸バリウムを構成するTiが、Ti3+となることを抑制して、Ti4+に保つことで、誘電体磁器の絶縁抵抗(IR)の低下を抑制することが可能になる。
また、偏析物の影響によってもたらされると考えられる、粒成長抑制の効果を十分に発現させることが可能になり、本発明の誘電体磁器を用いて積層セラミックコンデンサを作製した場合における積層セラミックコンデンサの信頼性を向上させることができる。
なお、本発明の誘電体磁器に含まれる副成分とは、Dyなどの希土類金属、Ca、Srなどのアルカリ土類金属、Mn、Yなどの遷移金属、Si、Mg、およびそれらの化合物などの種々の成分を含む広い概念である。
また、偏析物の影響によってもたらされると考えられる、粒成長抑制の効果を十分に発現させることが可能になり、本発明の誘電体磁器を用いて積層セラミックコンデンサを作製した場合における積層セラミックコンデンサの信頼性を向上させることができる。
なお、本発明の誘電体磁器に含まれる副成分とは、Dyなどの希土類金属、Ca、Srなどのアルカリ土類金属、Mn、Yなどの遷移金属、Si、Mg、およびそれらの化合物などの種々の成分を含む広い概念である。
また、本発明の誘電体磁器の製造方法は、本発明にかかる誘電体磁器の製造方法であって、Ba化合物、Ti化合物、Nb化合物、およびSn化合物を混合し、熱処理することにより、Ti100molに対するNbの含有量X(mol部)をx軸、Snの含有量Y(mol部)をy軸として表したとき、(X,Y)が、点A(0.001,0.0005)、B:(1,0.8)、C:(1,2.0)、D:(0.1,0.3)、E:(0.001,0.0032)で囲まれた領域にある、NbとSnとを含むチタン酸バリウム粉末を合成し、このチタン酸バリウム粉末に所定の副成分を添加することにより得られる誘電体原料を成型して成型体を作製し、得られた成型体を焼成するようにしているので、粒成長を抑制して、信頼性の高い(例えば、平均故障時間(MTTF)の値が大きい)誘電体磁器を効率よく製造することが可能になる。
また、本発明の他の誘電体磁器の製造方法のように、Nb、Sn化合物を混合し、熱処理することでSn2Nb2O7を主成分とする添加物を作製し、この添加物をチタン酸バリウム粉末に対して、Ti100molに対するNbの含有量X(mol部)をx軸とし、Snの含有量Y(mol部)をy軸として表したとき、(X,Y)が、点A(0.001,0.0005)、B:(1,0.8)、C:(1,2.0)、D:(0.1,0.3)、E:(0.001,0.0032)で囲まれた領域で表される量だけ添加するとともに、さらに所定の副成分を添加して得た誘電体原料を成型して成型体を作製し、得られた成型体を焼成するようにした場合にも、粒成長を抑制して、信頼性の高い(例えば、平均故障時間(MTTF)の値が大きい)誘電体磁器を効率よく製造することが可能になる。
また、本発明のさらに他の誘電体磁器の製造方法のように、Ba化合物、Ti化合物、Nb化合物、Sn化合物、および所定の副成分を混合し、熱処理することで、Ti100molに対するNbの含有量X(mol部)をx軸とし、Snの含有量Y(mol部)をy軸として表したとき、(X,Y)が、点A(0.001,0.0005)、B:(1,0.8)、C:(1,2.0)、D:(0.1,0.3)、E:(0.001,0.0032)で囲まれた領域で表される誘電体原料を得た後、誘電体原料を成型し、得られたを成型体を焼成するようにした場合にも、粒成長を抑制して、信頼性の高い(例えば、平均故障時間(MTTF)の値が大きい)誘電体磁器を効率よく製造することが可能になる。
以下に本発明の実施形態を示して、本発明の特徴とするところをさらに詳しく説明する。
[実施形態1]
<A>誘電体原料配合物の調製
まず、主成分原料であるチタン酸バリウムを作製した。チタン酸バリウムを作製するにあたっては、BaCO3、TiO2、SnO2,Nb2O5粉末を準備した。
<A>誘電体原料配合物の調製
まず、主成分原料であるチタン酸バリウムを作製した。チタン酸バリウムを作製するにあたっては、BaCO3、TiO2、SnO2,Nb2O5粉末を準備した。
そして、Ba、Tiのモル比を1:1とし、Ti100molに対するSnとNbの添加量を表1A,Bのように変化させて各成分を秤取し、純水・分散剤を加えた後、強制循環型の湿式粉砕機(PSZメディアを使用)を用いて粉砕・解砕処理を行った。
処理後のスラリーを、オーブンで乾燥した後、炉内酸素分圧を表1A,Bに示す条件で1100℃、120分間仮焼し、SnおよびNbを含有するチタン酸バリウムを得た。
続いて、誘電体原料を作製するにあたり、上記のようにして作製したチタン酸バリウム粉末に加え、誘電体磁器中のTiとBaの割合を調整するためBaCO3、特性を制御するための副成分であるDy2O3、MgCO3、MnCO3、SiO2を準備した。
そして、上述のチタン酸バリウム、BaCO3、Dy2O3、MgCO3、MnCO3、SiO2を所定量秤取し、純水・分散剤を加えて強制循環型の湿式粉砕機(PSZメディアを使用)を用いて粉砕解砕処理を行った。
このとき、それぞれの添加物の量が、Tiの合計含有量を100モルとした場合に、
(a)Dyの合計含有量m(モル部)が、2.0
(b)Mgの含有量a(モル部)が、1.0
(c)Mnの含有量b(モル部)が、1.0
(d)Siの含有量c(モル部)が、1.5
となるようDy2O3,MgCO3,MnCO3,SiO2を添加した。さらに、Ba/Ti比が焼成後に1.01となるようBaCO3を添加した。
そして、処理後のスラリーを、オーブンで乾燥させることにより、表1Aの実施例1〜17の本発明の要件を備えた誘電体原料と、表1Bの比較例1〜10の誘電体原料を得た。
(a)Dyの合計含有量m(モル部)が、2.0
(b)Mgの含有量a(モル部)が、1.0
(c)Mnの含有量b(モル部)が、1.0
(d)Siの含有量c(モル部)が、1.5
となるようDy2O3,MgCO3,MnCO3,SiO2を添加した。さらに、Ba/Ti比が焼成後に1.01となるようBaCO3を添加した。
そして、処理後のスラリーを、オーブンで乾燥させることにより、表1Aの実施例1〜17の本発明の要件を備えた誘電体原料と、表1Bの比較例1〜10の誘電体原料を得た。
なお、表1Aの実施例1〜17の試料のうち、実施例1の試料は、NbとSnの含有量とが、図1の点A、実施例11の試料が点B、実施例15の試料が点C、実施例10の試料が点D、実施例5の試料が点Eに相当する試料である。また、実施例1〜17の試料のうち、実施例1,5,10,11,15以外の試料も、NbとSnの含有量が、図1の点A,B,C,D,Eに囲まれた領域内にある試料である。
一方、比較例1〜10の試料は、NbとSnの含有量が、図1の点A,B,C,D,Eに囲まれた領域の外側に位置する試料であり、他の組成は実施例1〜17の試料と同様である。
<B>グリーンシートの作製
上述のようにして作製した各誘電体原料の粉末に、ポリビニルブチラール系バインダー並びにエタノールなどの有機溶媒を加えてボールミルにより湿式混合し、セラミックスラリーを作製した。
それから、このセラミックスラリーをドクターブレード法などにより、焼成後の誘電体素子厚が5.0μmになるようにシート成形し、矩形のグリーンシートを得た。
上述のようにして作製した各誘電体原料の粉末に、ポリビニルブチラール系バインダー並びにエタノールなどの有機溶媒を加えてボールミルにより湿式混合し、セラミックスラリーを作製した。
それから、このセラミックスラリーをドクターブレード法などにより、焼成後の誘電体素子厚が5.0μmになるようにシート成形し、矩形のグリーンシートを得た。
<C>積層セラミックコンデンサの作製
上記<B>で得たグリーンシートと、該グリーンシート上に、Niを含有する導電性ペーストをスクリーン印刷することにより、内部電極用の導体パターンを形成した導体パターン形成済みグリーンシートを用意した。
上記<B>で得たグリーンシートと、該グリーンシート上に、Niを含有する導電性ペーストをスクリーン印刷することにより、内部電極用の導体パターンを形成した導体パターン形成済みグリーンシートを用意した。
それから、以下の方法でグリーンシートを積層することにより、セラミック積層体を得た。積層は、導体パターンが形成されない部分の厚みが100μmとなるようになるようグリーンシートを積層した。
まず、導電性ペーストが印刷されていないグリーンシートを所定枚数積層して、下側の表層部となるグリーンシート層を形成した。
まず、導電性ペーストが印刷されていないグリーンシートを所定枚数積層して、下側の表層部となるグリーンシート層を形成した。
それから、下側の表層部となるグリーンシート層上に、導体パターン形成済みグリーンシートを、導体パターンが引き出されている側が互い違いになるように170枚積層した。
その後、再び導電性ペーストが印刷されていないグリーンシートを所定枚数積層して、上側の表層部となるグリーンシート層を形成した。
次に、このようにして得られる積層体を、N2雰囲気中で、250℃に加熱し、脱バインダー処理を行った後、H2−N2−H2Oガスからなる雰囲気中、1250℃の温度条件下で、炉内酸素分圧を表1A,Bに示す条件に調整して、120分間焼成し、セラミック積層体を得た。
それから、得られたセラミック積層体の端面にB2O3−Li2O3−SiO2−BaO系ガラスフリットを含有するCuペーストを塗布し、N2雰囲気中にて850℃の温度で焼き付け、内部電極と電気的に接続されたCu外部電極を形成した。
さらに、形成されたCu外部電極を覆うようにNiめっき層を形成し、さらにNiめっき層を覆うようにSnめっき層を形成した。これにより、図2、図3に示すような積層セラミックコンデンサ(試料)を得た。
この積層セラミックコンデンサは、積層されている複数の誘電体層(誘電体セラミック層)11と、誘電体層11間の複数の界面に配設されている複数の内部電極12とを有するセラミック積層体10と、セラミック積層体10の両端面に、交互に逆側の端面に引き出された内部電極12と導通するように配設された一対の外部電極13a,13bとを備えた構造を有している。
また、上記のようにして得られた積層セラミックコンデンサの寸法の外形寸法が、幅2.0mm、長さ1.3mm、厚さ1.3mmであった。
また、積層セラミックコンデンサの内部電極12に挟まれた誘電体セラミック層11の厚みは5.0μmであった。
また、積層セラミックコンデンサの内部電極12に挟まれた誘電体セラミック層11の厚みは5.0μmであった。
<D>誘電体層のグレインサイズおよび誘電体層を構成するセラミック中のTi量に対するTi3+の含有量の評価
上述のようにして作製した積層セラミックコンデンサの、内部電極12に挟まれた誘電体層(誘電体セラミック層)のグレインサイズを調べた。
グレインサイズを調べるにあたっては、まず、積層セラミックコンデンサ(試料)を5個ずつ準備した。
グレインサイズを調べるにあたっては、まず、積層セラミックコンデンサ(試料)を5個ずつ準備した。
そして、試料を幅(W)方向が垂直方向となるような姿勢で保持し、試料の周囲を樹脂で固め、試料の長さ(L)と、厚さ(T)により規定されるLT面を、幅(W)方向の1/2程度の深さまで研磨し、さらに研磨面を熱エッチングすることにより、図3に示すようなグレイン観察用の試料断面を得た。
この試料断面をSEM(走査型電子顕微鏡)で撮影し、得られたSEM画像から500個分のグレインの円相当径からその平均値(試料内平均グレインサイズ)を求めるとともに、500個のグレインのうちの最大値(試料内最大グレインサイズ)を調べた。
そして、試料5個のそれぞれの試料内平均グレインサイズから、試料5個あたりの平均グレインサイズを求めるとともに、各試料の最大グレインサイズ(試料内最大グレインサイズ)から、試料5個あたりの平均値(平均最大グレインサイズ)を求めた。その結果表1A,Bに示す。
そして、試料5個のそれぞれの試料内平均グレインサイズから、試料5個あたりの平均グレインサイズを求めるとともに、各試料の最大グレインサイズ(試料内最大グレインサイズ)から、試料5個あたりの平均値(平均最大グレインサイズ)を求めた。その結果表1A,Bに示す。
また、積層セラミックコンデンサの内部電極12に挟まれた誘電体層(誘電体セラミック層を構成するセラミック中のTi量に対するTi3+の含有量を以下に説明する方法で調べた。
まず、積層セラミックコンデンサを構成するセラミック積層体(チップ)を乳鉢で粉砕しXRD(X線回折法)により結晶相を同定した。
また、IPC−MS(誘導結合プラズマ質量分析法)により、試料に含まれるTi量を分析した。
また、IPC−MS(誘導結合プラズマ質量分析法)により、試料に含まれるTi量を分析した。
次に、ESR(Electron Spin Resonance:電子スピン共鳴法)により試料に含まれるTi3+の量を定量分析し、IPC−MSにより求めたTi量に対するTi3+の含有量を求めた。その結果を表1A,Bに示す。なお、表1A,Bにおいて、Ti3+の含有量を[-]と表示した試料は、検出限界以下で0.0001mol%以下であることを示す。
<E>積層セラミックコンデンサの特性の評価
上記のようにして作製した積層セラミックコンデンサに対して、1kHz−1Vrmsにて静電容量の測定を行い、静電容量の累積確率が25%値〜75%値の間にあるものを評価対象の積層セラミックコンデンサ(試料)として抽出した。
上記のようにして作製した積層セラミックコンデンサに対して、1kHz−1Vrmsにて静電容量の測定を行い、静電容量の累積確率が25%値〜75%値の間にあるものを評価対象の積層セラミックコンデンサ(試料)として抽出した。
(HALT試験)
そして、上記の静電容量の累積確率が25%値〜75%値の試料30個を、温度190℃の条件下で40Vの電圧を印加しながら絶縁抵抗値の変化を測定した。絶縁抵抗値が1MΩに低下した時点を故障が発生した時点とし、結果をワイブル解析することにより、平均故障時間(MTTF)を算出した。結果を表1A,Bに示す。
そして、上記の静電容量の累積確率が25%値〜75%値の試料30個を、温度190℃の条件下で40Vの電圧を印加しながら絶縁抵抗値の変化を測定した。絶縁抵抗値が1MΩに低下した時点を故障が発生した時点とし、結果をワイブル解析することにより、平均故障時間(MTTF)を算出した。結果を表1A,Bに示す。
表1Aに示すように、実施例1〜17の試料は、比誘電率εrが3200〜3680の範囲にあり、誘電体材料として実用可能な特性を備えていることが確認された。
また、平均故障時間(MTTF)の値も、20.6〜38.7hrの範囲にあり、信頼性にも優れていることが確認された。
また、結果を検討するため、実施例13,16,17の試料(実施例)を粉砕し、粉末X線回折装置を用いて結晶相を同定した。
なお、実施例13の試料は、SnおよびNbの含有量が1molとなるようにSnO2およびNb2O5を添加した試料である。
また、実施例16の試料は、仮焼時の酸素分圧を1.0×10-13〜1.0×10-11MPaの範囲内(すなわち、1.0×10-12MPa)とし、焼成を5.0×10-11〜5.0×10-9MPaの範囲外(すなわち、6.2×10-9MPa)とした試料である。
さらに、実施例17の試料は、仮焼時の酸素分圧を1.0×10-13〜1.0×10-11MPaの範囲外(すなわち、5.0×10-10MPa)とし、焼成を5.0×10-11〜5.0×10-9MPaの範囲内(すなわち、5.0×10-10MPa)とした試料である。
なお、実施例13の試料は、SnおよびNbの含有量が1molとなるようにSnO2およびNb2O5を添加した試料である。
また、実施例16の試料は、仮焼時の酸素分圧を1.0×10-13〜1.0×10-11MPaの範囲内(すなわち、1.0×10-12MPa)とし、焼成を5.0×10-11〜5.0×10-9MPaの範囲外(すなわち、6.2×10-9MPa)とした試料である。
さらに、実施例17の試料は、仮焼時の酸素分圧を1.0×10-13〜1.0×10-11MPaの範囲外(すなわち、5.0×10-10MPa)とし、焼成を5.0×10-11〜5.0×10-9MPaの範囲内(すなわち、5.0×10-10MPa)とした試料である。
粉末X線回折装置を用いて結晶相を同定した結果、実施例13,16,17の試料については、BaTiO3以外にSn2Nb2O7が存在することが確認された。
また、本発明の要件を備えた実施例1〜17の試料のうち、上述の実施例13,16,17以外の試料については、同様に、Sn2Nb2O7が形成されていると推測されるが、NbおよびSnの添加量が少ない試料については、Sn2Nb2O7がわずかしか検出されないものもあった。
<F>表1に示した結果に基づく検討、評価
表1Aに示すように、本発明の要件を備えた実施例1〜17の試料の場合、平均グレインサイズが410nm以下、平均最大グレインサイズが650nm以下となり、全Tiに対するTi3+の含有量も0.01mol%以下になることが確認された。
また、比誘電率(εr)も3200以上と良好で、MTTFも20.6時間以上と優れていることが確認された。
表1Aに示すように、本発明の要件を備えた実施例1〜17の試料の場合、平均グレインサイズが410nm以下、平均最大グレインサイズが650nm以下となり、全Tiに対するTi3+の含有量も0.01mol%以下になることが確認された。
また、比誘電率(εr)も3200以上と良好で、MTTFも20.6時間以上と優れていることが確認された。
これに対し、表1Bに示すように、Nb、Snを添加していない比較例1の試料の場合、ピンニング効果による粒成長抑制の効果が十分に得られず、平均最大グレインサイズが950nmと大きくなり、MTTFが2.5時間と短くなることが確認された。
また、添加したNbに対してSnの添加量が少ない比較例2では、Nbの固溶が進み、全Tiに対するTi3+の含有量が0.0016mol%と0.001mol%を超え、またピンニング効果による粒成長抑制の効果が不十分で、平均最大グレインサイズが820nmと大きくなり、MTTFが8.2時間と短くなることが確認された。
また、添加したNbに対してSnの添加量が多い比較例3では、平均最大グレインサイズが860nmと大きく、MTTFも4.3時間と短くなることが確認された。これは、Nbに対するSnの添加量が多すぎるため、偏析相が分散しにくく、ピンニング効果が十分に発揮されなかったことによるものと考えられる。
また、Sn、Nbとも、その添加量が本発明の範囲よりも少ない試料である比較例4では、平均最大グレインサイズが980nmと大きく、MTTFは5.2時間と短いことが確認された。これは、Sn、Nbの添加量が少なく、ピンニング効果による粒成長抑制の効果が十分に得られなかったことによるものと考えられる。
また、比較例5および7のように、Nbに対するSnの割合の少ない試料の場合、Nbの固溶が進んで、比較例5ではTi3+の生成量が0.058mol%、比較例7ではTi3+の生成量が0.230mol%と多くなり、また、MTTFは、比較例5では2.9時間、比較例7では0時間と短くなることが確認された。これは、Nbに対するSnの添加量が少なく、Nbの固溶が進んだことによるものと考えられる。
また、比較例6および8のように、Nbに対してSnの添加量が多すぎる試料の場合、平均最大グレインサイズが大きく(比較例6では550nm、比較例8では780nm)、MTTFも短くなる(比較例6では7.7時間、比較例8では0.1時間になる)ことが確認された。これは、偏析相が分散状態しにくく、ピンニング効果が十分に発揮されなかったことによるものと考えられる。
また、SnおよびNbの添加量が、ともに本発明の範囲を超えている比較例9の試料では、ピンニング効果による粒成長抑制の効果は十分に得ることが可能で、MTTFも40.3時間と長くなるが、εrが2600と3000を下回ってしまうことが確認された。
また、焼成時の酸素分圧が高く設定されている比較例10の試料の場合、Nbの固溶が進み、Ti3+の生成量が0.038mol%と多くなるとともに、平均最大グレインサイズも870nmと大きくなり、MTTFは7.2時間と短くなることが確認された。
これは、焼成時の酸素分圧が高いため、Sn2+の生成が抑制され、Sn2Nb2O7の生成が不十分になったことによるものと考えられる。
これは、焼成時の酸素分圧が高いため、Sn2+の生成が抑制され、Sn2Nb2O7の生成が不十分になったことによるものと考えられる。
[実施形態2]
SnO2とNb2O5粉末を同モルになるように秤量し、これを500mlのポリエチレン製のポットに投入して、φ2mmのPSZ製のメディア、純水、および分散剤を添加した後、24h混合、粉砕し、スラリーを得た。
SnO2とNb2O5粉末を同モルになるように秤量し、これを500mlのポリエチレン製のポットに投入して、φ2mmのPSZ製のメディア、純水、および分散剤を添加した後、24h混合、粉砕し、スラリーを得た。
得られたスラリーをバットに排出し、バットごと乾燥機に入れて乾燥し、固形物を得た。それから、得られた固形物を匣に入れ、焼成炉にて以下の条件で熱処理した。
昇温降温速度:200℃/min、
トップ温度 :1100℃、30minキープ
窒素投入量 :10L/min、
H2Oガス投入量 :1g/min、
水素投入量 :120mL/min
昇温降温速度:200℃/min、
トップ温度 :1100℃、30minキープ
窒素投入量 :10L/min、
H2Oガス投入量 :1g/min、
水素投入量 :120mL/min
そして、熱処理後、X線回折法(XRD)にて結晶相を同定した。その結果、主成分がSn2Nb2O7であり、微量のSnNb2O6およびNb2O5を含んでいることが確認された。
なお、熱処理は、Snが2価となるように還元雰囲気にすることが望ましく、また、熱処理にて合成した構造を維持するためには、急速に降温することが好ましい。
なお、熱処理は、Snが2価となるように還元雰囲気にすることが望ましく、また、熱処理にて合成した構造を維持するためには、急速に降温することが好ましい。
次に、主成分原料であるチタン酸バリウムを作製するにあたり、BaCO3、TiO2粉末を準備し、Ba、Tiのモル比を1:1とし、各成分を秤量したあと純水・分散剤を加えて強制循環型の湿式粉砕機(PSZメディアを使用)を用いて粉砕・解砕処理を行った。処理後のスラリーはオーブンで乾燥した後、大気雰囲気中1100℃にて120分間仮焼した。
このようにして作製したチタン酸バリウム粉末に、BaCO3、Dy2O3、MgCO3、MnCO3、SiO2を上記実施形態1の場合と同様の添加量となるように加え、さらにSn2Nb2O7を表2の割合になるように添加して、誘電体原料配合物を調製した。
それから、実施形態1と同様の方法で積層セラミックコンデンサを作製した。なお、焼成は1250℃で、炉内酸素分圧を表2に示した条件として、120分間の焼成を行った。
得られた積層セラミックコンデンサを構成する誘電体磁器の構造と、積層セラミックコンデンサの電気特性を評価した。結果を表2に示す。
得られた積層セラミックコンデンサを構成する誘電体磁器の構造と、積層セラミックコンデンサの電気特性を評価した。結果を表2に示す。
表2から明らかなように、本発明の範囲内の誘電体磁器を用いた実施例101〜103の試料(積層セラミックコンデンサ)の場合、平均グレインサイズが400nm以下、平均最大グレインサイズが610nm以下となることが確認された。
また、全Tiに対するTi3+の含有量は0.01mol%以下で、MTTFは28.7時間以上と優れており、εrも3300以上と良好であることが確認された。
これに対して、本発明の要件を備えていない、Sn2Nb2O7の添加量が0mol部の比較例101の試料や、Sn2Nb2O7の添加量が0.000355mol部でSn、およびNbの添加量が少ない比較例102の試料では、粒成長の抑制効果が不十分で、平均最大グレインサイズがそれぞれ950nm、870nmと大きくなり、MTTFはそれぞれ2.5時間、7.1時間となり、信頼性が低いことが確認された。
また、SnおよびNbが本発明の範囲外を超えている、Sn2Nb2O7の添加量が0.75mol部である比較例103の試料の場合、ピンニング効果による粒成長抑制の効果が不十分で、MTTFは48.2時間と良好であるものの、εrが2810と3000を下回ってしまうことが確認された。
[実施形態3]
上記実施形態2の場合と同様の方法で作製したチタン酸バリウム粉末を準備した。
所定量のチタン酸バリウム粉末を秤量し、Ti100molに対するSnとNbの添加量を、表3のように変化させて添加した。さらに、BaCO3、Dy2O3、MgCO3、MnCO3、SiO2を実施形態1の場合と同様の添加量になるように添加し、誘電体原料配合物を得た。
上記実施形態2の場合と同様の方法で作製したチタン酸バリウム粉末を準備した。
所定量のチタン酸バリウム粉末を秤量し、Ti100molに対するSnとNbの添加量を、表3のように変化させて添加した。さらに、BaCO3、Dy2O3、MgCO3、MnCO3、SiO2を実施形態1の場合と同様の添加量になるように添加し、誘電体原料配合物を得た。
得られた誘電体原料配合物を用いて、実施形態1の実施例1〜15の場合と同様にして、積層セラミックコンデンサを作製した。なお、焼成は表3に示すように、1250℃で、酸素分圧を5.0×10-10MPaに調整して行った。
そして、得られた積層セラミックコンデンサを構成する誘電体磁器の構造と、積層セラミックコンデンサの電気特性を評価した。結果を表3に示す。
そして、得られた積層セラミックコンデンサを構成する誘電体磁器の構造と、積層セラミックコンデンサの電気特性を評価した。結果を表3に示す。
表3から明らかなように、本発明の範囲内の誘電体磁器を用いた実施例201〜204の試料(積層セラミックコンデンサ)の場合、平均グレインサイズが430nm以下、平均最大グレインサイズが690nm以下となることが確認された。
また、全Tiに対するTi3+の含有量は、実施例201および203においては、0.01mol%以下で、MTTFはいずれも21.8時間以上と優れており、εrも3562以上と良好であることが確認された。
これに対して、Nb、Snを添加していない比較例201の試料(本発明の要件を備えていない比較例)の場合、ピンニング効果による粒成長抑制の効果が得られず、平均最大グレインサイズが950nmと大きくなり、MTTFが2.5時間と短くなることが確認された。
また、添加したNbに対するSnの添加量の少ない比較例202の試料の場合、Nbの固溶が進み、全Tiに対するTi3+の含有量が0.0017mol%と0.001mol%を超え、またピンニング効果による粒成長抑制の効果が不十分で、平均最大グレインサイズが850nmと大きくなり、MTTFも5.9時間と短くなることが確認された。また、添加したNbに対するSnの添加量の少ない比較例204の試料の場合にも類似した傾向となることが確認された。
また、添加したNbに対するSnの添加量が多すぎる比較例203の試料の場合、平均最大グレインサイズが790nmとなり、MTTFも8.2時間と短くなることが確認された。これは、偏析相が分散状態しにくく、ピンニング効果が十分に発揮されなかったことによるものと考えられる。
また、Sn、Nbとも、その添加量が本発明の範囲よりも少ない試料である比較例204の試料の場合、ピンニング効果による粒成長抑制の効果が不十分で、平均最大グレインサイズが910nmと大きくなり、MTTFが3.5時間と短くなることが確認された。
また、添加したNbが1.0モルと多く、かつNbに対するSnの添加量の少ない比較例205の試料の場合、Nbの固溶が進み、全Tiに対するTi3+の含有量が0.317mol%と0.001mol%を超え、MTTFが0時間と短くなることが確認された。
また、添加したNbが1.0モルと多く、かつNbに対するSnの添加量が多すぎる比較例206の試料の場合、平均最大グレインサイズが720nmと大きくなり、MTTFも2.6時間と短くなることが確認された。
これは、これは、Nbに対するSnの添加量が多すぎるため、偏析相が分散しにくく、ピンニング効果が十分に発揮されなかったことによるものと考えられる。
これは、これは、Nbに対するSnの添加量が多すぎるため、偏析相が分散しにくく、ピンニング効果が十分に発揮されなかったことによるものと考えられる。
また、NbおよびSnの添加量が、ともに本発明の範囲を超えている比較例207の試料の場合、ピンニング効果により粒成長が十分に抑制され、MTTFが39.8時間と長くなるものの、εrが2580と3000を下回ってしまうことが確認された。
上述の各実施形態より、SnO2とNb2O5を低酸素雰囲気で熱処理することでSn2Nb2O7が生成すること、Sn2NB2O7は、Sn、Nb素材からチタン酸バリウムを合成する際に添加してもよく、チタン酸バリウムと希土類などの添加物を混合した後に、低酸素雰囲気で焼成することによっても形成することが可能であることなどが確認された。
また、低酸素雰囲気としては、仮焼時においては1.0×10-13〜1.0×10-11MPa、焼成時においては5.0×10-11〜5.0×10-9MPaの範囲とすることが好ましいこと、仮焼、および焼成のいずれかをこの範囲の酸素分圧で行うことにより、Sn2Nb2O7を効率よく形成することが可能になることなどが確認された。
なお、上記実施形態では、本発明の誘電体磁器を用いて積層セラミックコンデンサを作製したが、本発明にかかる誘電体セラミックは、積層セラミックコンデンサに限らず、LC複合部品などの他の電子部品にも用いることが可能である。
本発明はさらにその他の点においても上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の誘電体セラミックを製造する場合の各原料の種類、仮焼工程、本焼成工程における条件、副成分の割合などに関し、発明の範囲内において種々の応用、変形を加えることが可能である。
10 積層セラミック素子
11 セラミック層
12 内部電極層
13a,13b 外部電極
L 試料の長さ
T 試料の厚さ
W 試料の幅
11 セラミック層
12 内部電極層
13a,13b 外部電極
L 試料の長さ
T 試料の厚さ
W 試料の幅
Claims (4)
- BaとTiとを主成分とするペロブスカイト複合酸化物と、NbおよびSnと、所定の副成分とを含む誘電体磁器であって、
Ti100molに対するNbの含有量X(mol部)をx軸とし、Snの含有量Y(mol部)をy軸として表したとき、
(X,Y)が以下の点;
A:(0.001,0.0005)、
B:(1,0.8)、
C:(1,2.0)、
D:(0.1,0.3)、
E:(0.001,0.0032)
で囲まれた領域にあり、かつ、
Tiに含まれるTi3+の含有量が全Ti量の0.001mol%以下であること
を特徴とする誘電体磁器。 - 請求項1記載の誘電体磁器の製造方法であって、
Ba化合物、Ti化合物、Nb化合物、およびSn化合物を混合し、熱処理することにより、Ti100molに対するNbの含有量X(mol部)をx軸、Snの含有量Y(mol部)をy軸として表したとき、
(X,Y)が以下の点;
A:(0.001,0.0005)、
B:(1,0.8)、
C:(1,2.0)、
D:(0.1,0.3)、
E:(0.001,0.0032)
で囲まれた領域にある、NbとSnとを含むチタン酸バリウム粉末を合成する工程と、
前記チタン酸バリウム粉末に所定の副成分を添加して、誘電体原料を得る工程と、
前記誘電体原料から成型体を作製する工程と、
前記成型体を焼成して、Tiに含まれるTi3+の含有量が全Ti量の0.001mol%以下である誘電体磁器を得る工程と
を備えることを特徴とする誘電体磁器の製造方法。 - 請求項1記載の誘電体磁器の製造方法であって、
Nb、Sn化合物を混合し、熱処理することでSn2Nb2O7を主成分とする添加物を作製する工程と、
チタン酸バリウム粉末に対して、作製した前記添加物を、Ti100molに対するNbの含有量X(mol部)をx軸とし、Snの含有量Y(mol部)をy軸として表したとき、
(X,Y)が以下の点;
A:(0.001,0.0005)、
B:(1,0.8)、
C:(1,2.0)、
D:(0.1,0.3)、
E:(0.001,0.0032)
で囲まれた領域で表される量だけ添加するとともに、さらに所定の副成分を添加して、誘電体原料を得る工程と、
前記誘電体原料から成型体を作製する工程と、
前記成型体を焼成して、Tiに含まれるTi3+の含有量が全Ti量の0.001mol%以下である誘電体磁器を得る工程と
を備えることを特徴とする誘電体磁器の製造方法。 - 請求項1記載の誘電体磁器の製造方法であって、
Ba化合物、Ti化合物、Nb化合物、Sn化合物、および所定の副成分を混合し、熱処理することで、Ti100molに対するNbの含有量X(mol部)をx軸とし、Snの含有量Y(mol部)をy軸として表したとき、
(X,Y)が以下の点;
A:(0.001,0.0005)、
B:(1,0.8)、
C:(1,2.0)、
D:(0.1,0.3)、
E:(0.001,0.0032)
で囲まれた領域で表される誘電体原料を得る工程と、
前記誘電体原料から成型体を作製する工程と、
前記成型体を焼成して、Tiに含まれるTi3+の含有量が全Ti量の0.001mol%以下である誘電体磁器を得る工程と
を備えることを特徴とする誘電体磁器の製造方法。
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WO2020090415A1 (ja) * | 2018-10-31 | 2020-05-07 | 昭栄化学工業株式会社 | Niペーストおよび積層セラミックコンデンサ |
-
2015
- 2015-02-06 JP JP2015021876A patent/JP2016145119A/ja active Pending
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CN112955980A (zh) * | 2018-10-31 | 2021-06-11 | 昭荣化学工业株式会社 | Ni糊及层叠陶瓷电容器 |
CN112955980B (zh) * | 2018-10-31 | 2023-01-10 | 昭荣化学工业株式会社 | Ni糊及层叠陶瓷电容器 |
TWI812799B (zh) * | 2018-10-31 | 2023-08-21 | 日商昭榮化學工業股份有限公司 | Ni糊膏及積層陶瓷電容器 |
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