JP2002029838A - 圧電材料 - Google Patents

圧電材料

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JP2002029838A
JP2002029838A JP2000220975A JP2000220975A JP2002029838A JP 2002029838 A JP2002029838 A JP 2002029838A JP 2000220975 A JP2000220975 A JP 2000220975A JP 2000220975 A JP2000220975 A JP 2000220975A JP 2002029838 A JP2002029838 A JP 2002029838A
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piezoelectric
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pbtio
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JP2000220975A
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English (en)
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Naoyuki Nagameguri
尚之 長廻
Nobuko Oba
伸子 大庭
Kazutoshi Miwa
和利 三輪
Atsutoshi Fukumoto
敦勇 福本
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Toyota Central R&D Labs Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 構成元素として鉛を含まない材料であるとと
もに、充分な圧電特性を有する圧電材料を提供する。 【解決手段】 ペロブスカイト型酸化物ABO3のAサ
イトの全部または一部にSnを配置した、一般式:(S
x1-x)(Tiy1-y)O3{式中、AはSr、C
a、Mg、(M1/21/2)から選ばれる少なくとも1種
を示し(ただし、MはNaまたはK;TはBiまたはL
a);BはZr、(D1/32/3)、(Al1/ 21/2)か
ら選ばれる少なくとも1種を示し(ただし、DはZnま
たはMg;XはV、NbまたはTa);xは0<x≦1
を満たす数を示し;yは0≦y≦1を満たす数を示
す。}で表される圧電材料とする。この非鉛圧電材料で
は、Sn−O原子間に強い結合が形成され、高い圧電性
が得られる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、圧電特性を有する
圧電材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】圧電材料は、結晶に歪み(力学的応力)
が加わると電圧(電気的分極)が発生し、逆に、電圧が
加わると歪みが発生する物質からなる材料であり、電気
的信号と機械的信号とを互いに変換可能な特性から、各
種のセンサやフィルタ、アクチュエータなどに広く用い
られている。
【0003】代表的な圧電材料としては、一般にABO
3で表されるペロブスカイト型酸化物の結晶構造を有す
るセラミックス材料があり、例えば、Aサイト及びBサ
イトにそれぞれPb及びTiが配置されたPbTiO3
(PT)や、Ba及びTiが配置されたBaTiO3
どがある。また、一般式PbZrxTi1-x3(PZ
T)で表されるPZT系セラミックスや、それに所定の
添加物を加えた変性PZT系セラミックスが多く用いら
れている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記したPbTiO3
及びPZT系セラミックスなどは、高い圧電性を有して
いるが、その構成元素として鉛(Pb)を含んでいる。
これに対して、近年、環境問題の観点から、構成元素と
して鉛を含まない非鉛圧電材料の必要性が増してきてい
る。しかしながら、現在までのところ、例えばBaTi
3の圧電性は含鉛圧電材料よりも低いなど、充分な圧
電特性を有する非鉛圧電材料は見出されていない。
【0005】本発明は、以上の問題点に鑑みてなされた
ものであり、構成元素として鉛を含まない材料であると
ともに、充分な圧電特性を有する圧電材料を提供するこ
とを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】このような目的を達成す
るために、本発明による圧電材料は、下記の一般式:
(Snx1-x)(Tiy1-y)O3{式中、AはSr、
Ca、Mg、(M1/21/ 2)からなる群から選ばれる少
なくとも1種を示し(ただし、MはNaまたはK;Tは
BiまたはLaを示す);BはZr、(D1/32/3)、
(Al1/21/2)からなる群から選ばれる少なくとも1
種を示し(ただし、DはZnまたはMg;XはV、Nb
またはTaを示す);xは0<x≦1を満たす数を示
し;yは0≦y≦1を満たす数を示す。}で表されるペ
ロブスカイト型酸化物からなることを特徴とする。
【0007】従来の圧電材料では、PbTiO3やPZ
T系セラミックスなどの含鉛圧電材料において、上述し
たように高い圧電性が得られている。これは、Aサイト
のPbにおいて、Pb−O原子間に結合が形成されるこ
とに起因するものと考えられる。これに対して、Sn
は、Pbと類似のエネルギー準位を有しており、Aサイ
トに配置されることによって、含鉛圧電材料と同様のS
n−O原子間の結合が形成される。したがって、ペロブ
スカイト型酸化物ABO3のAサイトの全部または一部
にSnを配置することによって、構成元素として鉛を含
まない材料であるとともに、含鉛圧電材料と同等あるい
はそれ以上の高い圧電性を有する非鉛圧電材料が得られ
る。
【0008】また、本発明の圧電材料においては、上記
一般式中、xは0.25≦x≦1を満たす数であること
が好ましい。
【0009】上記した構成の圧電材料において、Snの
構成比となるxをこの0.25≦x≦1の範囲とするこ
とによって、得られる圧電特性がより充分に向上する傾
向にある。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、図面とともに本発明による
圧電材料の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0011】最初に、本発明による圧電材料の結晶構造
となる、一般式ABO3で表されるペロブスカイト型酸
化物の結晶構造について、図1に示す模式図を用いて説
明する。なお、圧電材料の構成元素となるAは後述する
結晶構造のAサイトに配置される単一または複数種類の
原子、Bは結晶構造のBサイトに配置される単一または
複数種類の原子、Oは酸素原子をそれぞれ示している。
【0012】ペロブスカイト構造においては、図1の単
位立方格子に示すように、単位立方格子の8隅にそれぞ
れAイオンが、6面の中心にそれぞれOイオン(酸素イ
オン)が、また、6個のOイオンによって作られる八面
体(酸素八面体)の中心にBイオンがそれぞれ位置す
る。ここで、この結晶構造内でのそれぞれのイオンの位
置については、図1に示したAイオンの位置がAサイ
ト、Bイオンの位置がBサイトとよばれる位置である。
【0013】このようなペロブスカイト型の結晶構造で
は、中心に位置するBイオンは、局所的な場の影響によ
って、酸素八面体の中心位置から変位し易く、したがっ
て、誘電性及び圧電性の発現に対して自由度の大きい結
晶構造となる。本発明による圧電材料は、従来の圧電材
料であるPbTiO3やBaTiO3などと同様に、上記
したペロブスカイト型酸化物の結晶構造を有するととも
に、構成元素として鉛を含まない材料であって、かつ、
充分な圧電特性を有する非鉛圧電材料を提供するもので
ある。
【0014】すなわち、本発明による圧電材料は、一般
式(Snx1-x)(Tiy1-y)O 3で表されるペロブ
スカイト型酸化物からなる。
【0015】具体的には、ペロブスカイト構造のAサイ
トに配置される原子については、Sn及びAのうちの少
なくとも1種であるとともに、式中のxは0<x≦1を
満たす数である。また、式中のAは、Sr、Ca、M
g、(M1/21/2)からなる群から選ばれる少なくとも
1種を示している。ただし、MはNaまたはKを示し、
TはBiまたはLaを示している。このようなAとして
は、特に、大きな原子変位が得られる点でSrz(Na
1/2Bi1/21-zが好ましい。
【0016】また、Bサイトに配置される原子について
は、Ti及びBのうちの少なくとも1種であるととも
に、式中のyは0≦y≦1を満たす数である。また、式
中のBは、Zr、(D1/32/3)、(Al1/21/2)か
らなる群から選ばれる少なくとも1種を示している。た
だし、DはZnまたはMgを示し、XはV、Nbまたは
Taを示している。このようなBとしては、特に、大き
な原子変位が得られる点でZr(BサイトがTiyZr
1-y)が好ましい。
【0017】ペロブスカイト型酸化物ABO3からなる
材料において、強誘電性または圧電性が発現する機構
は、上述したように、通常、酸素八面体の中心に位置す
るBイオンに対して形成されるB−O原子間の結合に由
来している。そのような典型的な物質としてはBaTi
3がある。一方、PbTiO3などの鉛を含む圧電材料
の特徴は、B−O原子間の結合に加えて、A−O原子
間、すなわちPb−O原子間にも結合が形成されること
である。そして、このPb−O原子間の結合が、BaT
iO3などと比べて含鉛圧電材料において高い圧電性が
発現する原因となっている。
【0018】これに対して、上記した圧電材料(Snx
1-x)(Tiy1-y)O3では、鉛代替元素として、A
サイトにSn(スズ)が少なくとも配置されている。こ
のSnは、Pbと似たエネルギー準位を持っていること
から、PbをSnに代替することによって、含鉛圧電材
料と同様の高い圧電性を有する非鉛圧電材料が得られ
る。
【0019】図2は、ペロブスカイト型酸化物(a)S
nTiO3、(b)PbTiO3、及び(c)BaTiO
3のそれぞれでのエネルギー準位を示すグラフであり、
横軸はエネルギー(1eV=1.602×10
-19J)、縦軸は状態密度(DOS)を示している。こ
れらのグラフのうち、従来の圧電材料である(b)Pb
TiO 3と(c)BaTiO3とを比較すると、Ba−O
原子間の結合が形成されないBaTiO3では、Pbと
全く異なるエネルギー準位となっていることがわかる。
【0020】これに対して、(a)SnTiO3
(b)PbTiO3とを比較すると、SnTiO3では、
上述したようにPbと類似のエネルギー準位(具体的に
は、図2(a)に示すSn−5sのエネルギー準位)が
現れている。このことは、AサイトにSnを配置するこ
とによって、Pb−Oの場合と同様にSn−O原子間に
結合が形成されて、高い圧電性が得られることを示して
いる。
【0021】なお、Aサイトに配置されるSnの構成比
xの範囲は、0<x≦1の範囲であるが、xが0.25
≦x≦1の範囲にあることにより、圧電性がより向上す
る傾向にあるため好ましい。
【0022】また、Snを含む従来のペロブスカイト型
酸化物は、すべて、SnがBサイトに配置されたもので
ある。この場合には、含鉛圧電材料における上記した高
い圧電性の発現機構からも明らかなように、Snによる
圧電特性の向上の効果は得られない。これに対して、本
発明による圧電材料(Snx1-x)(Tiy1-y)O 3
は、Aサイトの全部または少なくとも一部にSnを配置
し、これによって、高い圧電性を実現するものである。
【0023】以下、上記した構成からなるSnを含む本
発明の非鉛圧電材料が有する圧電特性について具体的に
説明する。
【0024】まず、圧電材料の圧電特性について評価す
るための指標となる、自発分極及び有効電荷について説
明する。圧電性とは、結晶に電圧が加わると歪みが発生
する性質のことであるが、印加される電圧Ei(ただ
し、i=x、y、z)と、誘起される歪みxij(ただ
し、ij=xx、yy、zz、yz、zx、xy)との
関係は、次式 xjk=dijki によって表される。ここで、係数dijkは圧電定数と呼
ばれる量であり、圧電材料の圧電特性を決定する重要な
量となる。
【0025】原形相(高温の常誘電相)で反転対称性を
有する強誘電性のペロブスカイト型酸化物においては、
自発分極をPs i、電歪定数をQijkl、真空誘電率及び誘
電率をそれぞれε0、εijとすると、上記した圧電定数
ijkは、 dijk=2Qiljkε0εlms m と表される。すなわち、自発分極Ps iが大きいほど、圧
電定数dijkは大きくなる傾向にある。したがって、自
発分極は圧電特性についての良い指標となる。
【0026】次に、上記した圧電定数dijkの場合とは
逆に、結晶に歪みが加わったときの電圧(分極)の発生
について考えると、印加される歪みxijと、誘起される
分極量の変化ΔPiとの関係は、次式 ΔPi=cijkij によって表される。ここで、係数cijkはピエゾ定数と
呼ばれる量であり、圧電定数dijkと同様に、圧電材料
の圧電特性を決定する重要な量となる。
【0027】このとき、誘起される分極量には、大きく
分けると、結晶全体が歪みから一様に変形することによ
って生じる分極と、その状態から、原子が歪んだ格子に
おける安定位置へと変位することによって生じる分極
と、の2つの分極成分が寄与している。これらのうち、
後者の分極成分による分極量の変化ΔPiは、原子の原
子変位をΔuI i(i=x、y、z;Iは単位胞内の原子
を指定する添字)、単位胞(unit cell 、単位格子)の
体積をΩとすると、次式 ΔPi=Z* I ΔuI i / Ω によって表される。ここで、Z* Iは、原子変位ΔuI i
分極量の変化ΔPiとの関係を示す実効的な(見掛け
の)電荷量であり、有効電荷と呼ばれる。この式より、
有効電荷Z* Iが大きいほど、ピエゾ定数cijkは大きく
なる傾向にある。したがって、有効電荷は圧電特性につ
いての良い指標となる。
【0028】また、原子の原形相から強誘電相に遷移し
た場合の原子変位をuI i(i=x、y、z)とすると、
このときの自発分極Ps iは、有効電荷Z* Iを用いて、 Ps i≒ΣI* II i / Ω と近似できる。よって、原子変位量が大きいほど、ま
た、有効電荷の絶対値が大きくなるほど、自発分極量は
大きくなる。
【0029】次に、上記した自発分極Ps、有効電荷Z*
I、及び原子変位uなどの量を用いて、AサイトにSn
を配置したペロブスカイト型酸化物(Snx1-x)(T
y1-y)O3からなる圧電材料の圧電特性について、
従来の圧電材料であるPbTiO3及びBaTiO3の特
性と比較しつつ説明する。なお、以下においては、原子
変位uは、各原子の変位量の二乗和の平方根 u=√(ΣI(uI xI x+uI yI y+uI zI z)) によって示すこととする。
【0030】特性の比較は、局所密度近似を用いた密度
汎関数法による計算結果によって行う。この計算方法
は、実験値や経験定数を参照する必要がなく、既存の物
質はもとより、未知の物質に対しても高精度で信頼性の
高い計算が可能な計算方法として、固体物理の分野にお
いて広く用いられている(例えば、強誘電体への適用の
一例として、文献「W. Zhong, R. D. King-Smith, and
D. Vanderbilt, Phys.Rev.Lett. 72, p.3618(1994)」
参照)。
【0031】計算のための入力パラメータは、結晶を構
成する原子の種類、及び結晶構造についてのパラメータ
(格子ベクトルと原子の位置などの結晶学的パラメー
タ)である。ただし、結晶学的パラメータについては、
適当な初期値のみを入力すれば、計算過程において、安
定した構造となるパラメータ値に最適化される。
【0032】ここで、この計算方法において得られる結
晶学的パラメータのパラメータ値を、本発明による圧電
材料(Snx1-x)(Tiy1-y)O3の一例であるS
nTiO3(x=y=1)と、従来の圧電材料であるP
bTiO3及びBaTiO3とについて、表1に示す。
【0033】
【表1】 ここでは、既存の強誘電性ペロブスカイト型酸化物Pb
TiO3及びBaTiO3に対して、正方晶構造及び菱面
体晶構造での計算を行った。これらの計算結果をみる
と、格子定数や軸比、軸角など、各結晶学的パラメータ
ともに計算値と実験値とが良好に一致していることがわ
かる。また、両構造におけるエネルギー差から、PbT
iO3では正方晶構造が、また、BaTiO3では菱面体
晶構造がより安定であるという結果が得られるが、これ
は、実験で観測される両物質の基底状態での結晶構造を
正しく再現している。
【0034】一方、同様な計算方法によって、本発明に
よる圧電材料の一例であるSnTiO3に対して行った
計算結果では、この圧電材料は、その安定構造はエネル
ギー差から正方晶構造である。また、自発分極を有する
強誘電体であることが示された。
【0035】図3は、3種類の圧電材料SnTiO3
PbTiO3、及びBaTiO3に対して求められた、強
誘電相での自発分極Ps(C/m2)の計算値を示すグラ
フである(実線)。このグラフより、自発分極の値は、
SnTiO3>PbTiO3>BaTiO3の順番で大き
くなっていることがわかる。
【0036】すなわち、PbTiO3の自発分極量は、
BaTiO3よりも大きい。これは、圧電材料PbTi
3においてPb−O原子間の結合が形成されて、Ba
TiO3よりも高い圧電性が得られることと対応してい
る。これに対して、SnTiO3では、PbTiO3より
もさらに大きい自発分極量が得られている。なお、既存
の圧電材料であるPbTiO3及びBaTiO3について
は、その実験値についても点線によって示してあり、計
算値と実験値とが良く一致していることがわかる。
【0037】図4は、3種類の圧電材料に対して求めら
れた、Aサイトに位置する原子(それぞれSn、Pb、
Ba)の有効電荷Z* Aの計算値を示すグラフである(実
線)。Aサイト原子のイオン価は、イオン模型からは+
2価と考えられる。これに対して、Baの有効電荷は
2.75であり、イオン模型での値に近い。一方、Pb
の有効電荷は3.89で、イオン模型での値に比べてか
なり大きい値となっている。これは、上述したように、
Pb−O原子間に結合が形成されることに起因してお
り、PbTiO3の自発分極がBaTiO3よりも大きく
なる原因である。これに対して、SnTiO3では、S
nの有効電荷は4.26で、Pbよりもさらに大きい有
効電荷が得られている。このことは、Sn−O原子間に
強い結合が形成されることを示すものである。
【0038】図5は、3種類の圧電材料に対して求めら
れた、原子変位u(Å/単位胞)の計算値を示すグラフ
である(実線)。このグラフより、原子変位の値は、自
発分極及び有効電荷と同様に、SnTiO3>PbTi
3>BaTiO3の順番で大きくなっていることがわか
る。すなわち、SnTiO3では、PbTiO3及びBa
TiO3よりも大きい0.6以上の原子変位が得られて
いる。なお、PbTiO3及びBaTiO3については、
その実験値についても点線によって示してあり、計算値
は原子変位をやや小さく評価する傾向にあるが、実験値
との一致は良好であることがわかる。
【0039】このような原子変位の発生等については、
それぞれにおける価電子密度分布から確認することがで
きる。図6は、SnTiO3の単位立方格子における価
電子密度分布を示す図であり、図6(a)は4つのAサ
イト(Snイオン)及び1つのOイオンを含む面での価
電子密度分布、図6(b)は1つのBサイト(Tiイオ
ン)及び4つのOイオンを含む面での価電子密度分布を
それぞれ示している。また、図7、図8は、PbTiO
3及びBaTiO3について、それぞれ同様に価電子密度
分布を示した図である。
【0040】これらの価電子密度分布より、Pb−O間
(図7)の原子間距離はBa−O間(図8)に比べて小
さいが、Sn−O間(図6)の原子間距離は、Pb−O
間よりもさらに小さくなっていることがわかる。これ
は、Sn−O原子間に、高い圧電性が発現する原因とな
る結合が、Pb−O原子間よりもさらに強く形成されて
いることを示している。これによって、陽イオン(S
n、Ti)と陰イオン(O)との逆位相の変位が促進さ
れ、SnTiO3での原子変位が大きくなって、高い圧
電性が発現される。
【0041】以上、図3〜図5にそれぞれ示した自発分
極、有効電荷、及び原子変位の値より、圧電特性と大き
く関係しているこれらの量は、互いに強い相関関係を有
していることがわかる。特に、Ti−O原子間の結合に
加えて、Pb−O原子間に結合が形成されることによっ
て優れた圧電特性を有するPbTiO3は、Ti−O原
子間の結合のみによるBaTiO3に比べて、各量とも
に大きい値を有している。
【0042】これに対して、圧電材料(Snx1-x
(Tiy1-y)O3の一例であるSnTiO3では、自発
分極、有効電荷、及び原子変位の各量ともに、PbTi
3よりもさらに大きい値が得られている。このこと
は、鉛代替元素として、Aサイトの全部または少なくと
も一部にSnを配置した圧電材料において、Sn−O原
子間に強い結合が形成されて(図6〜図8参照)、Pb
TiO3と同等もしくはそれ以上の圧電特性が発現され
ることを示すものである。
【0043】AサイトにSnを配置した非鉛圧電材料
(Snx1-x)(Tiy1-y)O3としては、上記した
SnTiO3(x=y=1)だけでなく、上記一般式に
含まれている他の様々な混晶系においても、同様に高い
圧電性を有する非鉛圧電材料が得られる。そのような例
として、(Sr0.5Sn0.5)TiO3、(Sn0.5Na0.
25Bi0.25)TiO3、(Sr0.25Sn0.25Na0.25
0.25)TiO3、及びSn(Ti0.5Zr0.5)O3の4
つの混晶系に対して、同様に原子変位(Å/単位胞)を
求めた計算値を、それぞれ表2に示す。なお、表2に
は、比較のため、図5に示したPbTiO3及びBaT
iO3の原子変位についても示してある。
【0044】
【表2】 このように、SnTiO3において、Aサイトに配置さ
れているSnの一部(x=0.5、0.25)、または
BサイトのTiの一部(y=0.5)を他の元素に置換
した混晶系においても、PbTiO3とほぼ同等かそれ
以上の原子変位が得られる。また、原子変位、自発分
極、及び有効電荷の上記した強い相関から、これらの混
晶系によっても、SnTiO3と同様に、高い圧電性を
有する非鉛圧電材料が得られる。なお、Bサイトに配置
される構成元素については、合成時に不純物として混じ
る程度であれば、その一部にSnが配置されても良い。
【0045】これらの非鉛圧電材料の合成について検討
するため、SnTiO3及びその混晶系の生成熱を計算
して求めた結果を、表3に示す。
【0046】
【表3】 既存物質に対する計算値と実験値との比較から、計算さ
れた生成熱の計算精度は、0.1eV/atom程度
(1eV=1.602×10-19J)と考えられる。し
たがって、表3に示した各圧電材料物質の生成熱は0も
しくはわずかに正の値となっているが、この計算精度か
ら考えて、本発明の非鉛圧電材料は、PbTiO3やB
aTiO3等の合成と同様に、ペロブスカイト型酸化物
の合成方法として周知の方法によって合成することが可
能である。
【0047】また、表3の最下段には、酸素雰囲気中で
の反応によるSnTiO3の生成について示してある。
この場合、SnTiO3の生成熱は計算精度の範囲を超
えた正の値となっている。したがって、本発明の非鉛圧
電材料の合成においては、還元雰囲気中で合成反応を行
うことが好ましい。
【0048】
【発明の効果】本発明による圧電材料は、以上詳細に説
明したように、次のような効果を得る。すなわち、ペロ
ブスカイト型酸化物のAサイトの全部または一部にSn
を配置した本発明の非鉛圧電材料によれば、Aサイトに
配置されたSnに対してSn−O原子間の結合が形成さ
れる。これによって、PbTiO3などの含鉛圧電材料
と同等またはそれ以上の高い圧電性を実現可能な非鉛圧
電材料を得ることができる。
【0049】このような本発明の非鉛圧電材料は、環境
の観点から問題となる鉛を構成元素として含まないもの
であり、従来のPbTiO3やPZTなどの圧電材料に
比べて、実用上での取扱いが簡単化されるなどの効果が
得られる。その上で、本発明の圧電材料は、既存の含鉛
圧電材料と同等またはそれ以上の圧電性を有することか
ら、様々な素子または装置などへの広い応用が期待され
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】圧電材料となるペロブスカイト型酸化物の結晶
構造を示す模式図である。
【図2】ペロブスカイト型酸化物(a)SnTiO3
(b)PbTiO3、及び(c)BaTiO3でのエネル
ギー準位を示すグラフである。
【図3】SnTiO3、PbTiO3、及びBaTiO3
での自発分極を示すグラフである。
【図4】SnTiO3、PbTiO3、及びBaTiO3
でのAサイト原子の有効電荷を示すグラフである。
【図5】SnTiO3、PbTiO3、及びBaTiO3
での原子変位を示すグラフである。
【図6】SnTiO3での価電子密度分布を示す図であ
る。
【図7】PbTiO3での価電子密度分布を示す図であ
る。
【図8】BaTiO3での価電子密度分布を示す図であ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 三輪 和利 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41番 地の1 株式会社豊田中央研究所内 (72)発明者 福本 敦勇 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41番 地の1 株式会社豊田中央研究所内 Fターム(参考) 4G031 AA01 AA03 AA04 AA05 AA09 AA12 AA13 AA14 AA15 AA26 AA31 AA35 BA10 CA01

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記の一般式: (Snx1-x)(Tiy1-y)O3 {式中、AはSr、Ca、Mg、(M1/21/2)からな
    る群から選ばれる少なくとも1種を示し(ただし、Mは
    NaまたはK;TはBiまたはLaを示す);BはZ
    r、(D1/32/3)、(Al1/21/2)からなる群から
    選ばれる少なくとも1種を示し(ただし、DはZnまた
    はMg;XはV、NbまたはTaを示す);xは0<x
    ≦1を満たす数を示し;yは0≦y≦1を満たす数を示
    す。}で表されるペロブスカイト型酸化物からなること
    を特徴とする圧電材料。
  2. 【請求項2】 前記一般式中、xは0.25≦x≦1を
    満たす数であることを特徴とする請求項1記載の圧電材
    料。
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