JP6083423B2 - 車両の側部車体構造 - Google Patents
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Description
ヒンジピラーは乗員乗降口の周縁部の前側部分を構成しているため、フロントドアを乗員乗降口に対して開閉自在に枢支するための上下1対のドアヒンジがヒンジピラーレインフォースメント(以下、ヒンジピラーレインと略す)に取り付けられている。
それ故、車体前方の衝突が発生した際、衝突荷重によって前輪が後退するため、後退した前輪を介して衝撃緩和されていない衝突荷重が車体側に作用することがある。
スモールオーバーラップ衝突(以下、SOL衝突と略す)では、衝突物とフロントサイドフレームとがオーバーラップしていないため、後退した前輪がヒンジピラーに干渉したとき、前輪から入力した衝突荷重によりヒンジピラー等の乗員周りの車室空間が変形する虞があった。特に、設計要件により、車幅増加が必要な場合、ヒンジピラーが通常よりも車幅方向外側に配設されるため、衝突時、前輪がヒンジピラーに干渉する傾向が高くなる。そこで、前輪からの衝突荷重による車室空間の変形を防止する技術が提案されている。
しかし、特許文献1の車両の側部車体構造では、ヒンジピラーレインと一体的に形成されたガイド手段の傾斜面に前輪を後退させる案内機能を持たせるため、傾斜面を含むヒンジピラーレイン自体に衝突荷重に耐え得る高い強度が要求され、ヒンジピラーレインの総重量が増加する虞がある。
また、ヒンジブラケットが前輪からの衝突荷重により変形又は離脱可能であるため、前輪からの衝突荷重入力時、ヒンジブラケットの変形によって後退する前輪を車幅方向外側に案内することができる。
これにより、ヒンジブラケットがヒンジピラーレインフォースメントに一体成形された車両において、前輪からの衝突荷重入力時、後退する前輪を車幅方向外側に案内することができる。
この構成により、ヒンジブラケットがヒンジピラーレインフォースメントと別体成形された車両において、前輪からの衝突荷重入力時、後退する前輪を車幅方向外側に案内することができる。
これにより、前壁部が前輪の傾斜部分と大きな面積の荷重受部を形成して荷重伝達効率を増加できるため、簡単な構成で後退する前輪の車幅方向外側への案内を促進することができる。
以下の説明は、本発明を車両に適用したものを例示したものであり、本発明、その適用物、或いは、その用途を制限するものではない。また、図中、矢印F方向を、前方とし、矢印L方向を、左方として説明する。
図1に示すように、車両Vは、車体上端部の左右両端位置を前後方向に夫々延びる左右1対の閉断面状のルーフサイドレール1と、これら1対のルーフサイドレール1の前端部を車幅方向に連結する閉断面状のフロントヘッダ2と、車体下端部の左右両端位置を前後方向に夫々延びる左右1対の閉断面状のサイドシル3と、左右1対のフロントドア(図示略)によって夫々開閉可能な左右1対のフロントドア用開口部4と、左右1対のリヤドア(図示略)によって夫々開閉可能な左右1対のリヤドア用開口部5等を備えている。
尚、左右1対の各構成部材は、何れも左右対称の構造であるため、以下、左側の構成部材について主に説明する。
フロントピラー6は、フロントピラーアウタとフロントピラーインナとによって下側程前方に移行するように傾斜状に延びる閉断面を構成している。
ヒンジピラー10は、下端側部分が前輪9に対して前後方向に対向するように配設され、上下1対のドアヒンジ8a,8bを介してフロントドアを開閉自在に支持している。
ヒンジピラー10の上端部をフロントピラー6の下端部に接合して両ピラー6,10の閉断面を上下方向に連続させている。これにより、フロントピラー6の閉断面とルーフサイドレール1及びフロントヘッダ2の閉断面が連続され、ヒンジピラー10の閉断面Cとサイドシル3の閉断面が連続されているため、フロントドア用開口部4の周囲に環状の閉断面構造が形成されている。
図3に示すように、アウタパネル11には、両ドアヒンジ8a,8bに夫々対応するように側壁部の上端側部分と下端側部分とに前後1対の上側ボルト穴11aと前後1対の下側ボルト穴11bが夫々設けられている。これら上側ボルト穴11aと下側ボルト穴11bは、正面視にて同じ車幅方向位置(同一鉛直面上)に形成されている。
ヒンジピラーレイン13は、前端部と後端部とに夫々形成された前後両フランジ部がアウタパネル11とインナパネル12の各々の前後両フランジ部に溶接にて挟着されている。
上半部の側壁部は、1対の上側ボルト穴11aに対応するように前後に隣接した1対のボルト穴13aが形成され、アウタパネル11の側壁部に接合されている。
下半部の側壁部は、閉断面Cを車幅方向外側と内側とに区画するように形成され、ヒンジブラケット15をアウタパネル11の側壁部の裏面に溶接するための前後1対の溶接穴(図示略)が設けられている。
これらのヒンジガセット14a,14bは、ハイテン鋼をプレス成形することにより形成され、両ドアヒンジ8a,8bに夫々対応するようにヒンジピラーレイン13に接合されている。尚、ヒンジガセット14a,14bは、単一部品として構成しても良い。
ヒンジピラーレイン13の下半部とアウタパネル11との間には、ヒンジブラケット15が配設されている。このヒンジブラケット15は、ヒンジピラーレイン13に比べて低強度の鋼板、例えば軟鋼板を素材として部分四角錐形状にプレス加工にて成形されている。
図7(a)〜図7(d)に示すように、ヒンジブラケット15は、ヒンジ取付壁部15aと、前後1対の縦壁部15b,15cと、上下1対の横壁部15d,15eと、前後1対の縦フランジ部15f,15gと、上側横フランジ部15hと、下側横フランジ部15i等を備えている。
この前側縦壁部15bは、ヒンジ取付壁部15aの前端部から車幅方向内側前方に延び、側面視にて下側程後方に移行するように傾斜状に形成され且つ平面視にて左側程後方に移行するように傾斜状に形成されている。
後側縦壁部15cは、ヒンジ取付壁部15aの後端部から車幅方向内側後方に延び、平面視にて左側程前方に移行するように傾斜状に形成されている。
上側横壁部15dは、ヒンジ取付壁部15aの上端部から車幅方向内側上方に延び、後側程下方に移行するように傾斜状に形成され、下側横壁部15eは、ヒンジ取付壁部15aの下端部から車幅方向内側下方に延び、後側程下方に移行するように傾斜状に形成されている。
図8(a)に示すように、車体左側におけるスモールオーバーラップ(SOL)衝突の初期段階では、前輪9に衝突荷重が作用してロアアーム21が後側に湾曲するため、前輪9が後退を始め、スポーク9aの上半部の周壁部が前側縦壁部15bに衝突する。
スポーク9aの周壁部が左側程後方に移行するように傾斜状に形成されているため、平面視にて前側縦壁部15bの傾斜面に略沿うことにより大きな荷重受面積を確保することができる。尚、アウタパネル11は極めて薄く、強度面の影響が小さいため、説明の便宜上、アウタパネル11を介しての当接、衝突、変形を、単に当接、衝突、変形と説明する。
上側横壁部15d及び下側横壁部15eが後側程下方に移行するように傾斜しているため、ヒンジブラケット15の変形を促進し、衝撃吸収効果を高めている。
衝突初期段階では、ヒンジブラケット15がヒンジピラーレイン13のヒンジブラケット15近傍部よりも低強度であるため、ヒンジブラケット15が優先的に変形して衝突荷重の吸収が行われ、ヒンジピラーレイン13の前側稜線13f及び後側稜線13rは衝突前と比べて殆ど変化しない。
図8(b)に示すように、衝突中期段階では、ジョイント部22が破断を開始するため、ブレーキディスク9cが部分的に潰れたヒンジピラーレイン13の左側前端部に衝突し、ヒンジピラーレイン13の変形が増加する。ブレーキディスク9cとヒンジピラーレイン13との当接部が除々に後方へ移行し、この後方移行した当接部を中心にして前輪9が更に反時計回りに回動する。
これにより、前輪9との干渉に起因したヒンジピラー10の変形量を抑制し、前輪9を介した衝突荷重による車室空間の変形を防止している。
これにより、前側縦壁部15bが前輪9の傾斜部分と大きな面積の荷重受部を形成して荷重伝達効率を増加できるため、簡単な構成で後退する前輪9の車幅方向外側への案内を促進することができる。
1〕前記実施形態においては、ヒンジブラケットとヒンジピラーレインとが別体に形成された例を説明したが、ヒンジブラケットをヒンジピラーレインと一体形成しても良い。
この場合、ヒンジブラケットを含むヒンジピラーレインをプレス加工した後、ヒンジブラケット部分に所定の熱処理を施すことで、ヒンジブラケット部分の組成を変更し、ヒンジブラケット部分の強度をその他の部分の強度よりも低下させる。
これにより、ヒンジブラケットがヒンジピラーレインのヒンジブラケット近傍部よりも低強度に構成されるため、ヒンジブラケットがヒンジピラーレインに一体成形された車両において、前輪からの衝突荷重入力時、ヒンジブラケットの変形を用いて後退する前輪を車幅方向外側に案内することができる。
また、アルミ製以外のホイールを選択することも可能である。
8a,8b ドアヒンジ
9 前輪
10 ヒンジピラー
11 アウタパネル
12 インナパネル
13 ヒンジピラーレイン
15 ヒンジブラケット
15b 前側縦壁部
C 閉断面
Claims (4)
- アウタパネルとこのアウタパネルと協働して上下方向に延びる閉断面を構成するインナパネルとを有するヒンジピラーと、前記閉断面内に配設されたヒンジピラーレインフォースメントと、前記ヒンジピラーに上下1対のドアヒンジを介して開閉自在に取り付けられるフロントドアとを備えた車両の側部車体構造において、
前輪に対して前後方向に対向するように配設され且つ下側ドアヒンジを前記ヒンジピラーレインフォースメントに取り付けるためのヒンジブラケットを備え、
前記ヒンジブラケットが前記ヒンジピラーレインフォースメントのヒンジブラケット近傍部よりも低強度に構成されたことを特徴とする車両の側部車体構造。 - 前記ヒンジブラケットが、前記前輪から衝突荷重入力時、前記衝突荷重によって変形させられることを特徴とする請求項1に記載の車両の側部車体構造。
- 前記ヒンジブラケットが、前記ヒンジピラーレインフォースメントと別体に形成され、前記前輪から衝突荷重入力時、前記衝突荷重によって変形させられる又は前記ヒンジピラーレインフォースメントから離脱させられることを特徴とする請求項1に記載の車両の側部車体構造。
- 前記ヒンジブラケットの前壁部が、前記前輪の上半部に前後方向に対向するように配設され且つ側面視にて下側程後方に移行するように傾斜状に形成されたことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の車両の側部車体構造。
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