JP7003958B2 - 車両の前部車体構造 - Google Patents

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Description

この発明は、上下方向に延びるヒンジピラーと、該ヒンジピラーに対して車両前方に離間して設けたフロントホイールハウス(以下、「ホイールハウス」と略記する)とを備えた車両の前部車体構造に関する。
車両の前部車体構造としては、特許文献1に例示されるように、スモールオーバーラップ衝突時に前輪(フロントホイール)の後退ひいては車室内への侵入量を低減するための工夫が施されたものが知られている。
下記特許文献1のものは、ヒンジピラー内部に、車両前後方向後部ほど車幅方向外側に位置する前側縦壁部(15b)を前面に有する補強部材(ガセット)としてのヒンジブラケット(15)を設け、該前側縦壁部(15b)によって、後退する前輪を車幅方向外側に変位(いわゆるグランスオフ)させることで前輪の車室内への侵入量を低減するものである(段落[0019]、[0027]、図2参照)。
ところで、前輪は一般に、サスペンションリンクを介して支持されており、スモールオーバーラップ衝突時には、前輪が、サスペンションリンクの車体への支持点を中心として、或いはサスペンションリンクの折れに伴い、車体の車幅方向内側へ旋回しながら後退する。
特に、エンジンが縦置きされるような例えば後輪駆動車等の車両においては、横置きされるような車両と比してホイールハウスがヒンジピラーに対して前方に、より離間して配置されることが多い。このようにパワートレインのレイアウトや車両のデザインによっては、ヒンジピラーとホイールハウスの間隔が長くなる場合があり、その場合には、スモールオーバーラップ衝突時に、車室内だけでなくエンジンルームやダッシュパネル等の車体前部の車幅方向内側へホイールハウス等が侵入する懸念があるため、適切なグランスオフを行うための対策を講じる必要があった。
特開2016-60401号公報
そこで、この発明は、ヒンジピラーに対して車両前方に離間して設けられたホイールハウスを備えた車両において、スモールオーバーラップ衝突時に後退する前輪を確実にグランスオフさせることにより、前輪の後退を抑制することができる車両の前部車体構造の提供を目的とする。
この発明は、上下方向に延びるヒンジピラーと、該ヒンジピラーに対して車両前方に離間して設けられたホイールハウスとを備えた車両の前部車体構造であって、上記ヒンジピラーと上記ホイールハウスとの間に、車両後方ほど車幅方向外側に位置する傾斜面部を前面に有するガセットを設け、上記傾斜面部は、上下方向に延びる面であり、且つ当該傾斜面部は、後退する前輪を車幅方向外側へ変位させるよう車幅方向において上記ヒンジピラーの外側の側面部まで延びており、上記ガセット近傍に、スモールオーバーラップ衝突時に上記ガセットが、後退する前輪から受ける衝撃を緩和する緩衝部材を備えたものである。
上記構成によれば、スモールオーバーラップ衝突時に後退する前輪を確実にグランスオフさせることができる。
詳述すると、上記ガセットは上記ヒンジピラーよりも上記ホイールハウスの側(車両前方)に有するため、例えば上記ヒンジピラー内に備えるよりも、スモールオーバーラップ衝突時に後退する上記ホイールハウスを早期に受け止めてグランスオフさせることができる。
一方、上記ガセットには、後退する前輪を上述したように、早期に受け止める分、上記ホイールハウスから受ける衝撃が大きくなるおそれがあるが、上記ガセット近傍に緩衝部材を備えることで、その衝撃を緩和することができる。
従って、スモールオーバーラップ衝突時に後退する前輪を確実にグランスオフさせることができる。
ここで、上記緩衝部材は、スモールオーバーラップ衝突時に後退する前輪がガセット衝突前に限らず、上記ガセット衝突後に、上記ホイールハウスに衝突してその衝撃を緩和する構成を採用してもよく、具体的には緩衝部材は、上記ヒンジピラーと上記ホイールハウスとの間に備えることが好ましいが、例えば、サイドシルやヒンジピラーに備えることも排除しない。
この発明の態様として、上記緩衝部材は、上記ホイールハウスの少なくとも後面部周りを補強する閉断面構造で構成し、上記閉断面構造は、上記ホイールハウスの上記後面部に沿って上下方向に延びるとともに、内部に上下方向の直交断面視で閉断面空間が構成され、上記ガセットは、上記閉断面空間に設けられ、上記傾斜面部と、該傾斜面部に対して上記ホイールハウスの側で対向する、上記閉断面構造の構成面との間に、上記閉断面空間の一部を成す隙間空間を介在させたものである。
上記構成によれば、スモールオーバーラップ衝突時に閉断面構造体が、ヒンジピラーよりも車両前方にて、車室側へ向けて後退する前輪の衝撃吸収を行うことで前輪の後退速度を減少させ、そのうえでガセットに備えた傾斜面部によって、後退する前輪の確実なグランスオフを行うことができるため前輪の後退を抑制することができる。
この発明の態様として、上記閉断面構造の上記構成面の上下方向における、上記ガセットと対向するガセット対向部位に、上記閉断面空間から上記閉断面構造の外側へ開口する開口部を貫通形成するとともに、上記ガセット対向部位の上記開口部の周辺部位に、該周辺部位を補強する補強部を設けたものである。
上記構成によれば、上記閉断面構造のガセット対向部位に、開口部を貫通形成することにより、該開口部を、スポット溶接用開口部やサービスホールして利用することができ、生産性、メンテナンス性を高めつつ、開口部を設けることによる、上記ガセット対向部位の上記開口部の周辺部位の剛性低下を例えば、リブ構造等の補強部によって補強することができる。
この発明の態様として、上記閉断面構造の上記構成面の上下方向における、上記ガセットと対向するガセット対向部位よりも上部に、該上部を補強する補強部を設けたものである。
上記構成によれば、補強部によって上記閉断面構造のガセット対向部位よりも上部を補強することで、上記閉断面構造による前輪の後退速度の一層の低減を図ることができる。
この発明の態様として、上記閉断面構造の上記構成面の上下方向における、上記ガセットと対向するガセット対向部位よりも下部に、該下部を補強する補強部を設けたものである。
上記構成によれば、例えば、サイドシル前端補強部材等の補強部によって上記閉断面構造のガセット対向部位よりも下部を補強することで、上記閉断面構造による前輪の後退速度の一層の低減を図ることができる。
この発明によれば、スモールオーバーラップ衝突時に後退する前輪を確実にグランスオフさせることにより、前輪の後退を抑制することができる。
本実施形態の自動車の前部車体構造の要部を前側かつ右側の斜め上方から視た斜視図。 図1において、連結レインを取り外すとともに要部を拡大して示した図1の要部拡大図。 本実施形態の自動車の前部車体構造の要部を示す右側面図。 図3においてA-A線に沿って、連結レインを除いて切断した斜視断面図。 図3中のB-B線断面図。 図3中のC-C線断面図。 サイドシル前部の底面図。
以下、図面に基づいて本発明の車両の前部車体構造を、エンジンが縦置きされたフロントエンジン・リアドライブ方式(FR)の自動車に適用した実施形態について説明する。
図中、矢印Fは自動車の前方を示し、矢印Rは自動車の右側を示し、矢印Lは自動車左側を示し、矢印Uは自動車の上方を示すものとする。また以下の説明では、自動車の右側の構成について説明するが、自動車の左側の構成についても同様であるため、特筆する場合を除いてその説明を省略する。
図1~図4に示すように、実施形態の前部車体構造を備えた自動車は、左右一対のヒンジピラー1とダッシュパネル2と左右一対のフロントサイドフレーム3と左右一対のエプロンレインフォースメント4(図1~図3参照)と左右一対のホイールハウス5と左右一対のサイドシル6とを備えている。
ヒンジピラー1は、車室Cのサイドドア開口9の前縁に沿って上下方向に延びており、ヒンジピラーインナ11(図4参照)と、車室C外側に配置されたヒンジピラーアウタ12とを備えている。
図4、図6に示すように、ヒンジピラーアウタ12は、車幅方向外側の側面部12aと、前後各側から車幅方向内側へ延びる前面部12bおよび後面部12cと、前面部12bから前側へ延びる前側フランジ部12dと、後面部12cから後側へ延びる後側フランジ部12eとで、上下方向の直交断面が車幅方向内側へ開放したハット形状に一体形成されている。
これにより、ヒンジピラー1は、ヒンジピラーアウタ12とヒンジピラーインナ11との間に、上下方向に延びる閉断面空間1sが構成されている。
ヒンジピラー1には、サイドドア開口9に備えた不図示のフロントドアが開閉可能に枢支される。具体的には図1~図3に示すように、ヒンジピラー1(ヒンジピラーアウタ12)の側面部12aには、フロントサイドドアの前縁の上下各側に設けられたヒンジブラケット(図示省略)が取り付けられるサイドドア取付け部13a,13bが、ヒンジブラケットに対応する位置に台座状に設けられている。ヒンジピラー1の上下各側のサイドドア取付け部13a,13bは図6に示すように、閉断面空間1sに備えたヒンジレイン10(下側のサイドドア取付け部13bの補強用のヒンジレイン10のみ図示)によって車幅内側周辺から、その支持剛性が補強されている。
なお図1に示すように、ヒンジピラー1の上端部には、後方程上方に位置するように傾斜して延びるフロントピラー7が接合されている。
図1に示すように、ダッシュパネル2は、左右のヒンジピラー1に対して若干前側位置において(図4参照)、これらヒンジピラー1を車幅方向に連結するように縦壁状に配設されており、これによりエンジンルームEとその後方の車室Cとに区分けされている。ダッシュパネル2は、フロアパネル8(図5、図6参照)の前端部から上方へ立ち上がり、上部には、車幅方向に延びるカウルパネル14(図1参照)が接合されている。なお、図2、図7中の符号16はトルクボックスである。
さらに本実施形態の自動車は、図4、図6に示すように、ダッシュパネル2とヒンジピラーアウタ12との間には、上下方向および前後方向に延びるサイドパネル15が介在している。このサイドパネル15の前後方向における、ヒンジピラー1に対応する部分は、上述したヒンジピラーインナ11として、上下方向の直交断面が車幅方向外側へ開放したハット形状に形成されている。すなわち、サイドパネル15は、ヒンジピラーインナ11を含んで構成される。
図1に示すように、フロントサイドフレーム3は、ダッシュパネル2の前方に、前後方向に延びるように配設されている。フロントサイドフレーム3の内部には、前後方向に延びる略矩形状の閉断面(図示省略)が構成されている。
エプロンレインフォースメント4(以下「エプロンレイン4」と略記する)は、フロントサイドフレーム3よりも車幅方向外側かつ上側に配設され、車両前後方向に略水平に延びており、内部に閉断面(図示省略)が構成されている。
エプロンレイン4は、ヒンジピラー1の上端部から前方へ延びるエプロンレイン後部4Rと、該エプロンレイン後部4Rの前端から前方へ延びるエプロンレイン前部4Fとを備えている。
ホイールハウス5は、ヒンジピラー1に対して前方に離間して配設されており、ホイールハウス5には前輪(図示省略)が収容される。ホイールハウス5は、サイドパネル15に対して車幅方向内外各側に配設されたホイールハウスインナ51およびホイールハウスアウタ52を備えている。すなわちホイールハウス5の後部は、ホイールハウスインナ51とホイールハウスアウタ52とでサイドパネル15を挟み込むようにして該サイドパネル15と一体に接合されている。
図1、図3、図4に示すように、ホイールハウスアウタ52の後面部52Rは、ホイールハウスアウタ52の後側に配設される後述する連結レインフォースメント20(以下、「連結レイン20」と略記する。)の前面を形成するように後方程下方に湾曲して延びている。すなわち、後述する連結レイン20は、ホイールハウスアウタ52の後面部52Rを含んで構成される。
図1~図4に示すように、ホイールハウスインナ51の車両前後方向の中間部には、前輪用サスペンション部材としての不図示のダンパを収容するサスペンションハウジング53を備えている。
サスペンションハウジング53は、フロントサイドフレーム3とエプロンレイン前部4Fとに跨って取り付けられており、ホイールハウス5の車幅方向の内側に位置するサスペンションハウジング53の上部には、図3に示すように、不図示のダンパの上端部が取り付けられるサスペンション支持部(ダンパ支持部)としてのサストップ部53aが設けられている。
なお、サスペンションハウジング53は、当例ではホイールハウスインナ51の一部として別体で構成したがこれに限らず、一体に構成してもよい。
図1~図5に示すように、サイドシル6は、車体下端部の左右両端位置にて前後方向に延びており、特に図5に示すように、車幅方向内側に開放した断面ハット状のサイドシルアウタ61と、車幅方向外側に開放した断面ハット状のサイドシルインナ62とを備え、内部に前後方向に延びる閉断面空間6sを構成している。
なお、上述したサイドパネル15の下端部は、サイドシル6の上端部において、サイドシルアウタ61とサイドシルインナ62とに挟み込まれるようにしてこれらの間に介在する(図5参照)。
さらに図1~図4、図7に示すように、サイドシルアウタ61は、その前部を構成するサイドシルアウタ前部61Fと、サイドシルアウタ前部61Fの後端部から車体後方側へ延びるサイドシルアウタ後部61Rとの少なくとも2部材を備えて一体又は一体的に構成されている。
サイドシル6の前部にはヒンジピラー1の下部(付け根部分)が接合されている(図1~図5参照)。
具体的には図2に示すように、ヒンジピラー1の下部は、その上側部分に対して下方程前後方向に末広がり状に形成されており、サイドシルアウタ前部61Fとサイドシルアウタ後部61Rとの結合部61Cを跨ぐように、サイドシル6の前部の上部に接合されている。
これにより当例では図3に示すように、サイドシル6は、ホイールハウスアウタ52の後下端に達するまでヒンジピラー1の前面部12bよりも前方へ突き出すように形成されている。そして、サイドシルアウタ前部61Fにおける、ヒンジピラー1の前面部12bよりも前方部分に相当する前方突出部分61Fa(特に図1参照)の上側部分には、連結レイン20の下端部(付け根部分)が接合されている(図5参照)。
これにより、連結レイン20の下部は、ヒンジピラー1の下端部や連結レイン20の下端部が接合されるサイドシルアウタ前部61Fによって補強され、スモールオーバーラップ衝突時に連結レイン20による前輪の後退速度の一層の低減を図ることができる。
本実施形態におけるサイドシルアウタ前部61Fは、サイドシルアウタ後部61Rよりも板厚を薄く形成することで、自動車の前面衝突時にヒンジピラー1や連結レイン20からサイドシル6へのスムーズな荷重伝達を実現している。
ところで本実施形態のように、フロントエンジン・リアドライブ方式(FR)を採用した自動車においては、一般に車体コントロール性の観点から車体の重心を前後方向における中心線上に極力集めることが好ましい。
本実施形態の自動車は、エンジンルームE内において縦置きされた不図示のエンジンをホイールハウス5の中心位置よりも極力後方にレイアウトするために、ヒンジピラー1の前面部12bとホイールハウスアウタ52の後面部52Rとの車両前後方向の間隔が、エンジン横置きタイプの自動車と比して車両前後方向の間隔が長くなるように設定されている。
図1、図3、図4に示すように、連結レイン20は、このように車両前後方向の間隔が長くなるように設定された、ヒンジピラー1とホイールハウス5との間に配設されている。
連結レイン20は、ホイールハウス5の少なくとも後面周りを補強するホイールハウス補強部材21と、該連結レイン20の前面部を構成する上述したホイールハウスアウタ52の後面部52Rとで構成され、サイドパネル15とその前方のホイールハウスインナ51の車幅方向外面とに対して、これらを前後方向に跨ぐように車幅方向外側から取り付けられている。
これにより図5、図6に示すように、ホイールハウス補強部材21、ホイールハウスアウタ52の後面部52R、サイドパネル15およびホイールハウスインナ51等によって、連結レイン20は、その内部に延在方向に沿って延びる閉断面空間20sが構成されている。
また図1、図3、図4に示すように、連結レイン20は、車両側面視でヒンジピラー1の前側かつエプロンレイン前部4Fの下方のコーナー部において、ヒンジピラー1とエプロンレイン4とを筋交い状に連結するように配設されている。
図3、図4に示すように、ホイールハウス補強部材21は、下部にヒンジピラー1に沿って主に上下方向に延びる鉛直部21xと、鉛直部21xの上部の前側コーナー部から主に上方程、前方へ傾斜して延びる傾斜部21yとで一体に形成され、全体として上述したように、車両側面視でホイールハウスアウタ52の後面部52Rに沿って延びている。
具体的に図3、図4、図6に示すように、ホイールハウス補強部材21は、鉛直部21xから傾斜部21yにかけて車幅方向外側の面を形成する側面部21aと、側面部21aの傾斜部21yにおける後縁から車幅方向内側へ延出する後面部21e(図3、図4参照)とを備えている。
なお、側面部21aの前縁は、ホイールハウスアウタ52の後面部52Rの車幅方向外縁に対応して車両側面視で上方程前方へ湾曲するアーチ状に形成されている(図1参照)。
さらにホイールハウス補強部材21は、側面部21aの前縁から車幅方向外側に延出する側面前縁フランジ部21bと、側面部21aの前上縁から前方かつ上方に延出する側面上前縁フランジ部21c(図3、図4参照)と、側面部21aの鉛直部21xにおける後縁から後方へ延出する側面後縁フランジ部21d(同図参照)とが一体形成されるとともに、後面部21eの上端から前方へ延出する後面上縁フランジ部21f(同図参照)と、後面部21eの車幅方向内端から上方へ延出する後面車幅内縁フランジ部21g(同図参照)と、後面部21eの後下端から下方へ延出する後面下縁フランジ部21h(同図参照)とが一体形成されている。
そして、ホイールハウス補強部材21は、上記各フランジ部等が夫々に対向する車体側構成部材にスポット溶接等により接合されている。
具体的には、側面前縁フランジ部21bは、ホイールハウスアウタ52の後面部52Rの車幅方向外縁に形成されたフランジ部52Ra(図6参照)に接合されている。
さらに側面上前縁フランジ部21cは、エプロンレイン前部4Fの後下部およびエプロンレイン後部4Rの前下部の各車幅方向外側の側面に接合され、後面上縁フランジ部21fは、エプロンレイン後部4Rの前部における下面に接合されている。これにより、連結レイン20の上部は、エプロンレイン前部4Fの後端における、エプロンレイン後部4Rとの接合部分の下部に後側から接続されている。
また図3、図4に示すように、後面車幅内縁フランジ部21gは、サイドパネル15等に接合され、側面後縁フランジ部21dはヒンジピラー1の側面部12aに接合され(図6参照)、後面下縁フランジ部21hはヒンジピラー1の前面部12bに接合されている。
さらに連結レイン20の下部、すなわちホイールハウス補強部材21とホイールハウスアウタ52の後面部52Rの各下部は共に、サイドシルアウタ61の前方突出部分61Faに接合されている。
これにより、連結レイン20は、内部(ホイールハウス補強部材21およびホイールハウスアウタ52の後面部52R等の間)に閉断面空間20sが構成されており(図5、図6参照)、ホイールハウス5の少なくとも後面周りを補強する閉断面構造として構成されている。閉断面空間20sは、連結レイン20の延在方向に対応してホイールハウスアウタ52の後面部52Rに沿って上下方向に延びている。
そして図2、図5、図6に示すように、連結レイン20の上下方向に延びる閉断面空間20sにおける、上下方向の中間部(鉛直部21xと傾斜部21yとの境界部)には、スモールオーバーラップ衝突時に前輪を含めた前輪の後退ひいては車室C内への侵入量を低減するためのガセット30が設けられている。このガセット30については後述する。
図3、図4に示すように、ホイールハウス補強部材21の側面部21aには、スポット溶接ガンを挿通させる溶接作業用の複数の開口部23a,23b,23c,23d,24a,24bが上下方向の中間部と上部との夫々に集中的に設けられている。
なお、図5においては開口部23b,23dの図示を省略している。
ホイールハウス補強部材21の側面部21aの上下方向の中間部に有する複数の開口部23a,23b,23c,23dは、ガセット30をヒンジピラーアウタ12およびサイドパネル15に対して溶接する溶接作業用に開口形成したものであって、側面部21aの上下方向における、ガセット30と対向する部位およびその周辺部位に開口形成されたものである。
すなわち、側面部21aの上下方向の中間部は、本発明のガセット対向部位に相当する。
当例では、側面部21aの中間部には、上部かつ前側に正円形状に形成した上前側開口部23aと、上部かつ後側に上方程後方に位置するように傾斜して延びる長穴形状に形成した上後側開口部23bと、下部かつ後側に正円形状に形成した下後側開口部23dと、下後側開口部23dよりも下部かつ前側に上下方向に延びる長穴形状に形成した下前側開口部23cとの4つを備えている。
側面部21aの上部に有する開口部24a,24bは、エプロンレイン後部4Rの下端フランジ4Ra(図3参照)をサイドパネル15に対して溶接する溶接作業用に開口形成したものであって、当例では側面部21aの上部には、前後各側に共に正円形状に形成した下側開口部24aと上後側開口部23bとの2つを備えている。
図3、図4に示すように、側面部21aの上部、中間部、下部後側部には、自動車の側面視で周辺に対して厚肉に形成した厚肉部25(上部厚肉部25a、中間厚肉部25b、下部厚肉部25c)が形成されている。
なお、図5、図6においては厚肉部25の図示を省略している。
上部厚肉部25aには、上述した下側開口部24aと上部後側開口部24bが開口形成され、この上部厚肉部25aによって下側開口部24aと上部後側開口部24bの各周縁部が補強されている。
上部厚肉部25aと中間厚肉部25bとは、共にホイールハウス補強部材21の車幅方向全体に亘って形成され、これら上部厚肉部25aと中間厚肉部25bとの間には、これら厚肉部25a,25bを連結するように側面部21aの前縁に沿って延びる前縁リブ26fと側面部21aの後縁に沿って延びる後縁リブ26rとが形成されている。
前縁リブ26fと後縁リブ26rとの間を横切るようにこれらリブ26f,26rを連結する複数の横架リブ26a,26b,26cが形成されている。当例では横架リブ26a,26b,26cは、上側横架リブ26aと中間横架リブ26bと下側横架リブ26cとの3つを備えている。
上部厚肉部25aの下縁と上側横架リブ26aと前縁リブ26fとで囲まれた領域、上側横架リブ26aと中間横架リブ26bと後縁リブ26rとで囲まれた領域、中間横架リブ26bと下側横架リブ26cと前縁リブ26fとで囲まれた領域、並びに下側横架リブ26cと中間厚肉部25bの上縁と後縁リブ26rとで囲まれた領域は、いずれも自動車の側面視で略三角形状を成すトラス構造Ta,Tb,Tc,Tdを構成しており、これら4つの略トラス構造Ta,Tb,Tc,Tdは、それぞれ側面部21aの傾斜部21yの延設方向に沿って配設されている。
このように、上部厚肉部25aと中間厚肉部25bとの間に複数のトラス構造Ta,Tb,Tc,Tdを配設することにより、この間の強度を高めながら、この間全体を厚肉に形成する場合と比して軽量化を図っている。
また、中間厚肉部25bには、上述した上前側開口部23aと上後側開口部23bが開口形成され、この中間厚肉部25bによって上前側開口部23aと上後側開口部23bの各周縁部が補強されている。一方、下前側開口部23cと下後側開口部23dは、共に中間厚肉部25bよりも下方近傍に設けられている。
なお、中間厚肉部25bの前下コーナー部には三角形状の窪み部27が形成され、中間厚肉部25bの下縁の下部および前縁の下部は、窪み部27を形造るようにリブ状に形成されている。
このように窪み部27を形成することにより、中間厚肉部25bは、軽量化を図りながら強度を確保している。
ホイールハウス補強部材21の側面部21aの下部には、下部厚肉部25cに対して上方に間隔を空けて略水平に延びる水平リブ26dが設けられている。この水平リブ26dは、下部厚肉部25cと前後方向に略同じ長さに形成されている。水平リブ26dの前端から下部厚肉部25cの前縁を通過するように鉛直下方に延びる鉛直リブ26eが設けられている。
さらに、水平リブ26dの前端と中間厚肉部25bの下部との間には、これらを連結するように上方程前側に傾斜して延びる傾斜リブ26fが形成されている。傾斜リブ26fは、互いに隣接する下前側開口部23cと下後側開口部23dとの間を通過するように延びている。
また、上述した水平リブ26dは下後側開口部23dに対して下側かつ後方近傍に設けられ、鉛直リブ26eは下前側開口部23cに対して後方近傍に設けられている。
これにより、下前側開口部23cと下後側開口部23dとの各周縁部は、夫々の近傍に設けられた水平リブ26d、鉛直リブ26e、傾斜リブ26f、中間厚肉部25b、および下部厚肉部25cによって補強されている。
図2、図5、図6に示すようにガセット30は、連結レイン20の閉断面空間20sにおいてヒンジピラー1とサイドパネル15とのコーナー部に配設されており、これらに対してスポット溶接等により接合されている。
具体的には、ガセット30は、車幅方向外側程後方に位置するように傾斜する前面としての傾斜面部30aと、傾斜面部30aの上端から車幅方向内側(後方)に延びる上面部30b(図2、図5参照)と、傾斜面部30aの下端から車幅方向内側(後方)に延びる下面部30c(図5参照)と、傾斜面部30aの前端(車幅方向内端)から前方へ延出する前縁フランジ部30d(図2、図6参照)と、傾斜面部30aの後端(車幅方向外端)から後方へ延出する後縁フランジ部30e(同図参照)と、上面部30bの車幅方向内端から上方へ延出する前上フランジ部30f(図2参照)と、上面部30bの後端から上方へ延出する後上フランジ部30g(同図参照)と、下面部30cの車幅方向内端から下方へ延出する前下フランジ部30h(図2、図5参照)と、下面部30cの後端から下方へ延出する後下フランジ部30iとで一体形成されている(図2参照)。
そして、前縁フランジ部30dと前上フランジ部30fと前下フランジ部30hとは共に、サイドパネル15に接合されている。
なお、当例では、前上フランジ部30fと前下フランジ部30hの各後部は、ヒンジピラー1の前側フランジ部12dを介してサイドパネル15に接合されている。
さらに、後上フランジ部30gと後下フランジ部30iは、共にヒンジピラー1の前面部12bに接合され、後縁フランジ部30eは、ヒンジピラー1の側面部12aに接合されている。
また図2、図6に示すように、ガセット30における傾斜面部30aには、開口部31が開口形成されている。この開口部31は図6に示すように、傾斜面部30aにおける、ホイールハウス補強部材21の側面部21aに開口形成した後下側開口部23d(図3参照)と自動車の側面視で一致する部位に形成されており、スポット溶接ガンを後下側開口部23dおよび開口部31に差し込み可能としている。さらに図2、図5、図6に示すように、傾斜面部30aには、開口部31の周縁部を含めて後端から前縁フランジ部30dに至るまで前後方向に延びるリブ32が形成されている。
図6に示すように、ガセット30は、連結レイン20の閉断面空間20sに配設された状態において傾斜面部30aが連結レイン20の閉断面空間20sの一部を成す隙間空間20saを隔てて該連結レイン20の構成面のうち、前方に位置するホイールハウスアウタ52の後面部52Rと車幅方向外側に位置する側面部21aとの夫々に対向する。
隙間空間20saは、連結レイン20の閉断面空間20sの上下方向における、ガセット30に対応する位置における上下方向の直交断面視にて、ガセット30の傾斜面部30aと、ホイールハウスアウタ52の後面部52Rおよび側面部21aとによって囲まれた略三角形状の閉断面を構成している。
また、ガセット30は、ヒンジピラー1の側面部12aに設けた下側のサイドドア取付け部13bと略同じ高さに設けられている(図2参照)。
ここで、ヒンジピラー1の上下方向の中でも、下側のサイドドア取付け部13bに対応する部位は、上述したように、閉断面空間1sにヒンジレイン10を備えて頑強に構成されている。よって、ガセット30を、このようにヒンジピラー1の上下方向の中でも、下側のサイドドア取付け部13bと略同じ高さに設けて、該下側のサイドドア取付け部13bに対応する部位の直前に設けることで、ヒンジレイン10と共に前輪の後退をより効果的に抑制することができる。
上述したように、本実施形態の自動車の前部車体構造は、上下方向に延びるヒンジピラー1と、該ヒンジピラー1に対して前方に離間して設けられたホイールハウス5とを備え(図1~図3参照)、ヒンジピラー1とホイールハウス5との間に、ホイールハウス5の少なくとも後面周りを補強する閉断面構造としての連結レイン20を有し(図1、図3~図6参照)、連結レイン20は、ホイールハウス5に備えたホイールハウスアウタ52の後面部52Rに沿って上下方向に延びるとともに、内部に上下方向の直交断面視で閉断面空間20sが構成され(図5、図6参照)、閉断面空間20sに、後方ほど車幅方向外側に位置する傾斜面部30aを前面に有するガセット30を設け(図2、図5、図6参照)、傾斜面部30aと、連結レイン20の構成面のうち、該傾斜面部30aに対してホイールハウス5の側(前側)で対向する、連結レイン20の構成面(前面)としてのホイールハウスアウタ52の後面部52Rとの間に、閉断面空間20sの一部を成す隙間空間20saを介在させたものである(図6参照)。
上記構成によれば、ヒンジピラー1よりも前方に連結レイン20を配置し、連結レイン20の内部に有する閉断面空間20sに、傾斜面部30aを有するガセット30を設け、傾斜面部30aと、ホイールハウスアウタ52の後面部52Rとの間に、閉断面空間20sの一部を成す隙間空間20saを介在させた構成を採用することで、スモールオーバーラップ衝突時に、連結レイン20の構成面としての後面部52Rや側面部21aによって、後退する前輪をヒンジピラー1よりも早期に受け止めつつ、ガセット30の傾斜面部30aとの間に有する隙間空間20saの分だけ連結レイン20が潰れることで後退する前輪からの衝撃荷重を吸収することができる。
これにより前輪の後退速度を減少させることができる。さらに、ガセット30の傾斜面部30aによってホイールハウス5からの衝撃荷重を車幅方向外側へ受け流す(横ずれさせる)ことで、該傾斜面部30aによって確実なグランスオフを行うことができる。
従って、スモールオーバーラップ衝突時に前輪の後退を抑制することができる。
詳述すると、仮にヒンジピラー1の閉断面空間1sにガセット30を設けた場合には、特にヒンジピラー1とホイールハウス5の間隔が長い形態の自動車の前部車体構造においては、ヒンジピラー1やその内部に備えたガセット30により、後退する前輪を早期に受け止めることができずに適切にグランスオフさせることができないことが懸念される。
例えば、スモールオーバーラップ衝突時にサスペンション支持部を支点として車体の車幅方向内側へ旋回しながら後退しようとする前輪がヒンジピラー1にしっかりと当たることなく、該ヒンジピラー1よりも前方からエンジンルームEやダッシュパネル2の側へ侵入することが懸念される。
これに対して本実施形態は、上述したように、スモールオーバーラップ衝突時に後退する前輪をヒンジピラー1よりも早期に受け止めて衝撃荷重を吸収するとともに、ガセット30によって確実なグランスオフを行うことができる。
またこの発明の態様として、連結レイン20の構成面としての側面部21aの上下方向における、ガセット30と対向するガセット対向部位に、閉断面空間20sから連結レイン20の外側へ開口する開口部23a,23b,23c,23dを形成するとともに、これら開口部23a,23b,23c,23dの周辺部位に、該周辺部位を補強する補強部としての水平リブ26d、鉛直リブ26e、傾斜リブ26f、中間厚肉部25b、および下部厚肉部25cを設けたものである(図3、図4参照)。
上記構成によれば、連結レイン20のガセット対向部位に、開口部23a,23b,23c,23dを開口形成することにより、該開口部23a,23b,23c,23dを、スポット溶接用開口部やサービスホールして利用することができ、車体前部構造の生産性、メンテナンス性を高めつつ、開口部23a,23b,23c,23dを設けることによる、連結レイン20の開口部23a,23b,23c,23dの周辺部位の剛性低下を補強部26d,26e,26f,25b,25cによって補強することができる。
またこの発明の態様として、連結レイン20の構成面としての側面部21aの上下方向における、ガセット30と対向するガセット対向部位よりも上部、すなわち、側面部21aの上下方向の中間部よりも上部に、該上部を補強する補強部としての上部厚肉部25a、前縁リブ26f、後縁リブ26rおよび横架リブ26a,26b,26cを設けたものである。
上記構成によれば、補強部25a,26f,26r,26a,26b,26cによって、連結レイン20のガセット対向部位よりも上部を補強することで、連結レイン20による前輪の後退速度の一層の低減を図ることができる。
またこの発明の態様として、連結レイン20の構成面としての側面部21aの上下方向における、ガセット30と対向するガセット対向部位よりも下部、すなわち、側面部21aの上下方向の中間部よりも下部に、該下部を補強する補強部としての下部厚肉部25cおよび鉛直リブ26e、並びに、連結レイン20の下部が結合されるサイドシルアウタ前部61Fを設けたものである。
上記構成によれば、補強部25c,26e,61Fによって連結レイン20のガセット対向部位よりも下部を補強することで、連結レイン20による前輪の後退速度の一層の低減を図ることができる。
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではなく様々な実施形態で形成することができる。
1…ヒンジピラー
5…ホイールハウス
12a…ヒンジピラーの側面部(ヒンジピラーの外側の側面部)
61F…サイドシルアウタ前部(下部を補強する補強部)
20…連結レインフォースメント(閉断面構造)
20s…閉断面空間
20sa…隙間空間
21a…側面部(閉断面構造の構成面)
30…ガセット
30a…傾斜面
23a,23b,23c,23d…開口部
25b…中間厚肉部(ガセット対向部位の開口部の周辺部位を補強する補強部)
25c…下部厚肉部(ガセット対向部位の開口部の周辺部位を補強する補強部)
26d…水平リブ(ガセット対向部位の開口部の周辺部位を補強する補強部)
26e…鉛直リブ(ガセット対向部位の開口部の周辺部位を補強する補強部)
26f…傾斜リブ(ガセット対向部位の開口部の周辺部位を補強する補強部)
25a…上部厚肉部(上部を補強する補強部)
26f…前縁リブ(上部を補強する補強部)
26r…後縁リブ(上部を補強する補強部)
26a,26b,26…横架リブ(上部を補強する補強部)
25c…下部厚肉部(下部を補強する補強部)
26e…鉛直リブ(下部を補強する補強部)
52R…ホイールハウスインナの後面部(ホイールハウスの後面部、閉断面構造の構成面)

Claims (5)

  1. 上下方向に延びるヒンジピラーと、該ヒンジピラーに対して車両前方に離間して設けられたホイールハウスとを備えた車両の前部車体構造であって、
    上記ヒンジピラーと上記ホイールハウスとの間に、車両後方ほど車幅方向外側に位置する傾斜面部を前面に有するガセットを設け、
    上記傾斜面部は、上下方向に延びる面であり、
    且つ当該傾斜面部は、後退する前輪を車幅方向外側へ変位させるよう車幅方向において上記ヒンジピラーの外側の側面部まで延びており、
    上記ガセット近傍に、スモールオーバーラップ衝突時に上記ガセットが、後退する前輪から受ける衝撃を緩和する緩衝部材を備えた
    車両の前部車体構造。
  2. 上記緩衝部材は、上記ホイールハウスの少なくとも後面部周りを補強する閉断面構造で構成し、
    上記閉断面構造は、上記ホイールハウスの上記後面部に沿って上下方向に延びるとともに、内部に上下方向の直交断面視で閉断面空間が構成され、
    上記ガセットは、上記閉断面空間に設けられ、
    上記傾斜面部と、該傾斜面部に対して上記ホイールハウスの側で対向する、上記閉断面構造の構成面との間に、上記閉断面空間の一部を成す隙間空間を介在させた
    請求項1に記載の車両の前部車体構造。
  3. 上記閉断面構造の上記構成面の上下方向における、上記ガセットと対向するガセット対向部位に、上記閉断面空間から上記閉断面構造の外側へ開口する開口部を貫通形成するとともに、上記ガセット対向部位の上記開口部の周辺部位に、該周辺部位を補強する補強部を設けた
    請求項2に記載の車両の前部車体構造。
  4. 上記閉断面構造の上記構成面の上下方向における、上記ガセットと対向するガセット対向部位よりも上部に、該上部を補強する補強部を設けた
    請求項2又は3に記載の車両の前部車体構造。
  5. 上記閉断面構造の上記構成面の上下方向における、上記ガセットと対向するガセット対向部位よりも下部に、該下部を補強する補強部を設けた
    請求項2乃至4のいずれか1項に記載の車両の前部車体構造。
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