複写機、プリンタ、ファクシミリ、それらの複合機等の電子写真式画像形成装置には、像担持体上に形成した静電潜像を現像装置で現像し、そのトナー像を記録媒体上に転写し、定着装置によって定着して画像形成を行うものがある。
定着装置としては、様々な方式のものが提案されている。その一つとして、例えば、ベルト定着方式を採用した定着装置が知られている。ベルト定着方式の定着装置は、定着ローラと、加熱ローラと、定着ローラ及び加熱ローラの間に張架された無端状の定着ベルトと、定着ローラとの間に定着ベルトを挟むように該定着ローラに対向配置された加圧ローラと、を備えている。そして、この定着装置は、未定着トナー像が形成された記録媒体としてのシートを、加圧ローラと定着ベルトとの圧接によって形成されたニップ部を通過する際に加熱・加圧して、未定着トナー像をシートに定着させる。このようなベルト定着方式の定着装置が、例えば、特許文献1に開示されている。
ここで定着におけるシート搬送について図5を用いて説明する。
図5は、従来の定着装置の概略構成を示す図である。この定着装置(図中、符号800で示す)は、定着ローラ811と、加熱ローラ812と、定着ローラ811及び加熱ローラ812の間に張架された無端状の定着ベルト814と、を備えている。また、定着装置800は、定着ローラ811との間に定着ベルト814を挟むように該定着ローラ811に対向配置された加圧ローラ815と、定着ローラ811に回転力を与えるモータ801及びギヤ802と、を備えている。
この定着装置800は、モータ801、ギヤ802によって定着ローラ811に回転力が与えられており、この定着ローラ811と対向する加圧ローラ815の圧接部Nに記録媒体としてのシートPが進入すると、圧接部Nの挟持力によってシートPが搬送される。
ここで、圧接部NにおけるシートPが送り出される速度は、モータの回転数が一定であっても、熱膨張等により定着ローラ811や加圧ローラ815の直径が大きくなると、シートPが送り出される速度が速くなる。そして、定着装置800から送り出されるシートの速度、即ち、定着装置800の搬送速度が変動すると、定着装置800の上流や下流に配置された各種装置との間でのシートの相対的な線速(移動速度)のずれが生じる。
このような相対的な線速のずれが生じると、例えば、定着装置800の搬送速度が速くなった場合には、下流側の装置(例えば、排紙装置等)との間でシートが弛み、搬送ガイドに強く接触して画像傷が発生することがある。また、定着装置800の速度が遅くなった場合には、下流側の装置との間でシートが突っ張って、シワが発生することがある。
近年では環境問題に対する意識の高揚から、シートとしてパルプの使用量が少なく製紙時の二酸化炭素発生量も少ない薄紙の使用の拡大や、プロダクションプリンティングといった市場の拡大により、薄紙から厚紙への対応力、高速化が求められてきている。しかしながら、プロダクションプリンティングはオフセット印刷並の高い品質が求められるため、上述のような品質の劣化は受け入れられなくなってきている。
このため、例えば、特許文献1の定着装置では、定着装置で搬送されるシートの速度を一定に保つために、定着ローラの芯金の温度を検知して定着ローラの径膨張を予測し、定着モータの回転数を決定するといった手段をとってきた。具体的には、定着ローラの芯金にサーミスタを当接させて、予備実験にて芯金温度とシートの線速の相関を測定しておき、それを補正値として使用するといった手段をとってきた。しかしながら、定着ローラの芯金の温度を検知して定着ローラの回転数を決定する方式の場合、芯金の温度が雰囲気温度によっても左右され、定着ローラの熱膨張量を正確に予測することが難しかった。そのため、シートの搬送速度の変動を抑制することが困難であるという課題があった。また、定着装置においては、圧接力が一定であっても、シートPが、薄紙より厚紙である方が速く、非コーティングシートよりもコーティングシートである方が速いという傾向があるが、このようなシートPの厚み等の違いによる搬送速度の変動に対応できるものではなかった。
そこで、特許文献2に開示された定着装置では、圧接部に圧力センサを配置し、熱膨張によって加圧ローラ径が膨張するに伴い、圧力センサの出力が増加することを利用し、加圧ローラの回転数を一定に保つ様に制御している。しかしながら、特許文献2の定着装置においても、加圧板等の摺動による磨耗の影響などにより圧力センサでの検知精度のばらつきが大きく、加圧ローラ回転数の正確な制御が難しかった。そのため、シートの搬送速度の変動を抑制することが困難であるという課題があった。
そして、このような課題の解決に応用可能な技術が、特許文献3、4に開示されている。
特許文献3に開示された定着装置は、定着ベルトとしてのエンドレスフィルムの片側端部に複数の孔が等間隔で形成されており、同端部の縁全周囲には光を遮光するためのマスキング処理が施されている。そして、この定着装置は、フォトインタラプタによってエンドレスフィルムの周速を検知している。また、特許文献4に開示された定着装置は、定着ベルトの回転に追従して回転するコロを有する回転伝達装置を備え、回転伝達装置の出力に基づいて定着ベルトの回転状態を検知している。
これら引用文献3、4の技術を応用することにより、定着ベルトの線速(表面移動速度)を検知して、それを一定にするように定着ローラ等の回転速度を制御する構成が考えられる。
(定着装置の実施形態)
以下、本発明の一実施形態の定着装置、図1〜図3を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態の定着装置の概略構成図である。図2は、図1の定着装置を通されるシートの厚みと加熱ローラの回転数との関係の一例を示すグラフである。図3は、図1の定着装置の加熱ローラの回転数と該定着装置を通されるシートの線速との関係の一例を示すグラフである。
図1に示すように、定着装置100は、定着ローラ11と、加熱ローラ12と、テンションローラ13と、定着ベルト14と、加圧ローラ15と、フォトセンサ16と、クリーニング機構17と、第1分離爪18と、第2分離爪19とを備えている。また、定着装置100は、定着ローラ11を回転駆動する駆動部30と、加熱ローラ12の回転数を検知する回転数検知部40と、駆動部30を制御する制御部50と、を備えている。
定着ローラ11は、アルミニウム(アルミニウム合金含む)又は鉄などの金属製の芯金11aの上にシリコーンゴム等の弾性層11bが設けられている。定着ローラ11の弾性層11bには、ウォームアップ時間短縮のため、定着ベルト14の熱を吸収しにくいように発泡のシリコーンゴムを用いてもよい。
加熱ローラ12は、アルミニウム製又は鉄製の中空ローラで、定着ローラ11と軸同士が互いに平行になるように間隔をあけて対向配置されている。加熱ローラ12は、その内部にハロゲンヒータなどのヒータ12hからなる熱源を有している。熱源は誘導加熱機構(IH)でもよい。加熱ローラ12は、弾性層を有する定着ローラ11と比較して熱膨張量は無視できる程度のものとされている。または、熱源となるヒータは、加熱ローラ12内ではなく、定着ベルト14の外周面に対向して配置されていてもよい。本発明の目的に反しない限り、定着ベルト14を加熱する熱源の構成及び配置は任意である。加熱ローラ12は、従動ローラの一例に相当する。
テンションローラ13は、アルミニウムや鉄などの金属製又は樹脂製の中空ローラある。テンションローラ13は、定着ローラ11と加熱ローラ12との間に、軸同士が互いに平行で、かつ、その軸が定着ローラ11と加熱ローラ12のそれぞれの軸を含む一平面内に収まらないようにずれて配置されている。テンションローラ13は、従動ローラの一例に相当する。また、定着ローラ11、加熱ローラ12及びテンションローラ13は、ローラ群の一例に相当する。
定着ベルト14は、無端状のベルトであり、断面構造としては、例えばニッケル、ステンレス、ポリイミドなどの基材にシリコーンゴム層などの弾性層を形成した2層構造となっている。定着ベルト14は、定着ローラ11、加熱ローラ12及びテンションローラ13に一定のテンションで架け渡されている。また、定着ベルト14の内周面と加熱ローラ12(即ち、回転数が検知される従動ローラ)の外周面とは滑りが発生しない摩擦関係に設定されている。定着ベルト14の回転移動により加熱ローラ12が回転されるので、定着ベルト14の線速(表面移動速度)は、加熱ローラ12の回転数(回転速度)と相関関係を有する。定着ベルト14は、定着部材の一例に相当する。
加圧ローラ15は、アルミニウム又は鉄などの金属製の芯金15aの上にシリコーンゴム等の弾性層15bが設けられた円筒形状のローラである。加圧ローラ15は、定着ベルト14に対して図中下側で回転自在に配置され、定着ローラ11の外周面に定着ベルト14を介して自身の外周面が押しつけられている。加圧ローラ15は、定着ベルト14との間に定着圧接部Nを形成している。加圧ローラ15は、加圧部材の一例に相当する。
また、加圧ローラ15は、図示しない加圧脱圧手段により定着ベルト14側へ移動されて加圧すること、及び定着ベルト14から引き離す方向に移動されて脱圧することが可能とされている。加圧ローラ15は、定着動作時において、加圧脱圧手段により定着ベルト14の方向へ押されて定着ベルト14に一定の圧力で押し当てられる。本実施形態では、加圧部材として加圧ローラ15(ローラタイプ)の形態を示したが、これに限定されるものではなく、複数のローラに架け渡された無端ベルト状の加圧部材(ベルトタイプ)としてもよい。加圧部材は、本発明の目的に反しない限り、定着ローラ11の外周面に定着ベルト14を介して自身の外周面を押しつけるように配置された回転可能な部材であれば、その構成は任意である。
フォトセンサ16は、定着圧接部Nの搬送方向下流に配置されている。フォトセンサ16は、記録媒体の一例としてのシートPの先端及び後端を検知して、該検知に応じた検知信号を後述する制御部50に出力する。制御部50は、フォトセンサ16からの検知信号に基づくシートPの先端及び後端の通過の検知、及び、これら先端及び後端の通過時間に基づくシートPの速度の計測が可能とされている。
クリーニング機構17は、クリーニングウェブを押し付けて加圧ローラ15のクリーニングを行うものである。第1分離爪18は、定着圧接部Nのシート排出側であって先端が加圧ローラ15に当接して配置され該加圧ローラ15へのシートPの巻き付きを防止する。第2分離爪19は、定着圧接部NのシートP排出側であって先端が定着ベルト14に近接して配置され該定着ベルト14へのシートPの巻き付きを防止する。
駆動部30は、モータ31及びギヤ32を有しており、後述する制御部50からの制御信号に基づいて定着ローラ11を回転駆動する。定着ローラ11が回転駆動されることにより、定着ベルト14が回転移動する。または、駆動部30は、定着ローラ11に代えて、加圧ローラ15を回転駆動するように構成されていてもよく、または、定着ローラ11及び加圧ローラ15を共に回転駆動するように構成されていてもよい。駆動部30は、駆動手段の一例に相当する。
回転数検知部40は、フィラー41と、加熱ローラ回転検知センサ42と、を有している。フィラー41は、加熱ローラ12の回転軸部12aに設けられ該回転軸部12aと一体となって回転される。加熱ローラ回転検知センサ42は、フォトインタラプタで構成されており、加熱ローラ12の回転に伴い、発光部と受光部との間をフィラー41が通過するように配置されている。これにより、回転数検知部40は、加熱ローラ12が1回転する毎に、加熱ローラ回転検知センサ42から出力される検知信号が変化する。回転数検知部40は、回転数検知手段の一例に相当する。
制御部50は、例えば、マイクロコンピュータ等で構成されている。例えば、制御部50は、回転数検知部40からの上記検知信号が入力され、この検知信号に基づいて、加熱ローラ12の回転数を算出する。また、制御部50は、定着ベルト14を目標とする速度で回転させるように、駆動部30に対して制御信号を出力する。また、制御部50は、後述する画像形成装置の表示部に加熱ローラ12の回転数を示す回転数信号を出力する構成としてもよい。これにより、画像形成装置の表示部に加熱ローラ12の回転数を表示してメンテナンス作業者等に示すようにすることで、該作業者にて加熱ローラ12の回転数、即ち定着ベルト14の線速を把握して、該定着ベルト14の線速度の調整を可能とすることができる。制御部50は、制御手段の一例に相当する。
次に、定着装置100における定着動作の一例について説明する。
定着装置100において、定着動作の際に、制御部50からの制御信号に基づいて駆動部30が定着ローラ11を図中時計回り方向に回転駆動する。すると、定着ベルト14が適切なテンションが付与された状態でシートPを排出する方向(図中時計回り方向)に回転移動され、加圧ローラ15、加熱ローラ12及びテンションローラ13がつれ回りされる。また、定着ベルト14は、加熱ローラ12内部に配置されたヒータ12hの発熱により、所定の温度(例えばトナー定着に適する温度)まで加熱される。
このようにして、定着装置100は、定着ベルト14が回転移動されるとともに加圧ローラ15及び加熱ローラ12が回転され、かつ、定着ベルト14の表面は所定の温度に加熱された状態となる。この状態において、定着圧接部Nに未定着トナー像が形成されたシートPが通されると(図中、右側から左側方向への通紙)、定着圧接部Nにおける加圧及び加熱により未定着トナー像がシートP上に熱融着されて、シートPに定着される。
そして、トナー像が定着されたシートPは定着圧接部Nから排出されるが、このときシートPが定着ベルト14あるいは加圧ローラ15に巻き付いたまま出てくることがある。そのため、第1分離爪18、第2分離爪19の先端がシートPの先頭端部に当接することにより、該シートPを定着ベルト14あるいは加圧ローラ15から分離させるようになっている。定着圧接部Nから排出されたシートPは、所定の排出経路を通過して定着装置100から送り出される。
次に、定着装置100における制御部50の動作の一例について説明する。
定着ローラ11が回転されると、定着ローラ11との摩擦力により定着ベルト14が回転移動され、さらに、定着ベルト14との摩擦力によって加熱ローラ12は回転させられる。ここで加熱ローラ12の外周面と定着ベルト14の内周面とは滑りが発生しない摩擦関係に設定されているので、加熱ローラ12の回転数と定着ベルト14の線速は相関関係(比例関係)を有している。そのため、定着ベルト14と加熱ローラ12が比例関係である場合、加熱ローラ12の回転数を計測することで、定着ベルト14の線速、即ち、シートPの線速(搬送速度)に換算することができる。
定着動作に先立って、制御部50は、駆動部30の制御のための予備計測を行う。具体的には、制御部50は、加圧脱圧手段を制御して定着ベルト14を介して定着ローラ11に加圧ローラ15を押しつけた加圧状態とし、駆動部30を制御して所定の回転数Rでモータ31を回転させる。そして、制御部50において、回転数検知部からの検知信号に基づいて、厚みの薄いシートや厚みの厚いシートなどの厚みの異なる複数のシートPを定着圧接部Nに通した際の加熱ローラ12の回転数rを計測する。また、フォトセンサ16からの検知信号に基づいて、その際のシートPの線速Vを計測する。予備計測以外にも、シミュレーションなどにより、これら加熱ローラ12の回転数r及びシートPの線速Vを求めてもよい。
この計測結果について、シートPの厚さtと加熱ローラ12の回転数rの関係で整理したグラフの一例を図2に示し、加熱ローラ12の回転数rとシートPの線速Vの関係で整理したグラフの一例を図3に示す。これらの図2、図3に表される関係を示す関係情報(例えば、情報テーブルや算出式など)は、制御部50に設けられたROM等の記憶手段に記憶されている。そして、制御部50は、上記関係情報を用いることにより、ある回転数でモータ31を回転させた時のシートPの線速に対して、目標とする線速で搬送するための加熱ローラ12の回転数の必要変化量を求めることができる。
定着装置100において、定着ローラ11の回転数が一定であった場合でも、定着ローラ11は弾性層を有するため、それ自体の熱膨張や、通紙されるシートの厚みの差等によって定着ローラ11の周速度が変動する。そのため、定着ローラ11によって回転移動される定着ベルト14の線速、つまり、シートPの線速(搬送速度)も変動する。そして、制御部50は、定着動作において、加熱ローラ12の回転数を計測するとともに、シートPの線速を目標値とするための加熱ローラ12の回転数の必要変化量を求める。制御部50は、加熱ローラ12の回転数が該必要変化量だけ変化するように、駆動部30を制御してモータ31の回転数を調整する。これにより、シートPの線速を目標値とすることができる。
また、上記予備計測では、厚みの異なる複数のシートPについて、加熱ローラ12の回転数r及びシートPの線速Vを計測して、それらの関係を導き出したが、これに限定されるものではない。例えば、紙厚に代えて、コーティング紙や非コーティング紙などの紙質の異なる複数のシートPについて、同様に加熱ローラ12の回転数r及びシートPの線速Vを計測して、それらの関係を導き出してもよい。または、予備計測において非通紙状態での加熱ローラ12の回転数を計測し、この計測結果より、次に通される厚さのシートを目標の線速で搬送するための加熱ローラの必要変化量を求めることも可能である。
また、上記予備計測を行わずに、制御部50において、加熱ローラ12の回転数に基づくフィードバック制御を行うようにしてもよい。具体的には、制御部50は、定着動作時に加熱ローラ12の回転数が、例えば、定着ベルト14の線速が目標値となる所定の数値となるように、加熱ローラ12の回転数をフィードバックして駆動部30による定着ローラ11の回転駆動を制御するようにしてもよい。制御部50は、定着ベルト14の線速の変動を抑制するように定着ローラ11の回転駆動を制御する。
上述した本実施形態の定着装置100は、無端状の定着ベルト14と、定着ベルト14が張架され、定着ローラ11並びに定着ベルト14の回転移動に伴って回転される加熱ローラ12及びテンションローラ13と、を有している。また、定着装置100は、定着ローラ11の外周面に定着ベルト14を介して自身の外周面を押しつけるように配置された回転可能な加圧ローラ15と、定着ベルト14が回転移動されるように、定着ローラ11を回転駆動する駆動部30と、を有している。トナー像が形成されたシートPが定着ベルト14と加圧ローラ15の間(定着圧接部N)を通過すると、シートPにトナー像が定着される。また、定着装置100は、加熱ローラ12の回転数を検知する回転数検知部40と、回転数検知部40によって検知された加熱ローラ12の回転数に基づいて、駆動部30による定着ローラ11の回転駆動を制御する制御部50と、を有している。
また、定着装置100は、加熱ローラ12の回転数と定着ベルト14の線速との関係を示す関係情報が記憶された制御部50をさらに有している。そして、制御部50が、回転数検知部40によって検知された加熱ローラ12の回転数、及び、制御部50に記憶された関係情報に基づいて駆動部30による定着ローラ11の回転駆動を制御するように構成されている。
以上より、本実施形態によれば、駆動部30によって、定着ベルト14が回転されるように定着ローラ11を回転駆動する。回転数検知部40によって、加熱ローラ12の回転数を検知する。そして、制御部50によって、回転数検知部40で検知された加熱ローラ12の回転数に基づいて、駆動部30による定着ローラ11の回転駆動を制御する。このような構成により、定着ベルト14が張架された加熱ローラ12の回転数は定着ベルト14の線速(表面移動速度)と相関関係を有するので、該回転数に基づいて定着ベルト14の線速を把握することができる。そのため、加熱ローラ12の回転数に基づいて、駆動部30を制御することにより、定着ベルト14の加工やコロなどの部材を追加することなく定着ベルト14の線速を把握して、定着ベルト14の線速の変動を抑制するよう制御できる。これにより、安価な構成でシートPの搬送速度の変動及び定着ベルト14の耐久性の低下をともに抑制できる。
また、加熱ローラ12の回転数と定着ベルト14の線速との関係を示す関係情報が制御部50に記憶されている。そして、制御部50が、回転数検知部40によって検知された加熱ローラ12の回転数、及び、制御部50に記憶された関係情報に基づいて駆動部30による定着ローラ11の回転駆動を制御するように構成されている。そのため、制御部50が、予備計測等に基づいて作成した加熱ローラ12の回転数と定着ベルト14の線速との関係を示す関係情報を用いて駆動部30を制御するので、より精度の高い制御が可能となり、これにより、シートPの搬送速度の変動をさらに抑制できる。
(画像形成装置の実施形態)
以下、本発明の一実施形態の画像形成装置について、図4を参照して説明する。
図4は、本発明の一実施形態の画像形成装置であるタンデム型のカラー複写機の構成を示す。
図4に示すように、カラー複写機200は、装置本体中央部に位置する画像形成部200Aと、該画像形成部200Aの下方に位置する給紙部200Bと、画像形成部200Aの上方に位置する図示しない画像読取部とを有する高速機である。また、カラー複写機200は、画像形成部200A及び給紙部200Bの間でかつ画像形成部200Aのシート搬送方向下流側に、上述した定着装置100で構成された定着部100が組み込まれている。
画像形成部200Aには、水平方向に延びる転写面を有する転写ベルト210が配置されており、該転写ベルト210の上面には、色分解色と補色関係にある色の画像を形成するための構成が設けられている。すなわち、補色関係にある色のトナー(イエローY、マゼンタM、シアンC、ブラックK)による像を担持可能な像担持体としての感光体205Y、205M、205C、205Kが転写ベルト210の転写面に沿って並置されている。
各感光体205Y、205M、205C、205Kはそれぞれ同じ方向(図中反時計回り方向)に回転可能なドラムで構成されている。例えば、感光体205Yの周りには、回転過程において画像形成処理を実行する光書き込み装置201、帯電装置202Y、現像装置203Y、1次転写装置204Y、及び図示しないクリーニング装置が配置されている。各感光体205M、205C、205K、についても、感光体205Yと同様に、その周囲に各装置が配置されている。
また、各現像装置203Y、203M、203C、203Kには、それぞれのカラートナーが収容されている。転写ベルト210は、駆動ローラと従動ローラに掛け回されて感光体205Y、205M、205C、205Kとの対峙位置において同方向に移動可能な構成を有している。また、該従動ローラの1つであるローラ211に対向する位置に転写ローラ212が設けられている。また、転写ローラ212から定着装置100までのシートPの搬送経路は横パスとなっている。
給紙部200Bは、記録媒体としてのシートPを積載収容する給紙トレイ220と、該給紙トレイ220内のシートPを最上のものから順に1枚ずつ分離して、転写ローラ212の位置まで搬送する搬送機構221を有している。
カラー複写機200における画像形成に当たっては、感光体205Yの表面が帯電装置202Yにより一様に帯電され、画像読取部からの画像情報に基づいて感光体205Y上に静電潜像が形成される。該静電潜像はイエローのトナーを収容した現像装置203Yによりトナー像として可視像化され、該トナー像は所定のバイアスが印加される1次転写装置204Yにより転写ベルト210上に1次転写される。他の感光体205M、205C、205Kでもトナーの色が異なるだけで同様の画像形成がなされ、それぞれの色のトナー像が転写ベルト210上に静電気力で順に転写されて重ね合わせられる。
つぎに、感光体205Y、205M、205C、205Kから転写ベルト210上に1次転写されたトナー像Tは、ローラ211、転写ローラ212により搬送されてきたシートPに転写される。トナー像Tが転写されたシートPは、さらに定着装置100まで搬送され、定着ベルト14と加圧ローラ15との定着ニップ部N(定着圧接部N)にて定着が行なわれる。定着ニップ部Nを通過したシートPは、下流側に配置された第1分離爪18、第2分離爪19により、シートPは定着ベルト14、加圧ローラ15に巻き付くことなく定着ニップ部Nの下流側に排出される。ついで、定着ニップ部Nから排出されたシートPは排出経路に沿ってスタッカ213へ送り出される。
本実施形態のカラー複写機200は、シートPにトナー像を形成する画像形成部200Aと、画像形成部200AによってシートPに形成されたトナー像を該シートPに定着させる定着部100と、を少なくとも備えている。そして、定着部100が、上述した実施形態の定着装置100である。このような構成により、カラー複写機200によれば、定着部100において、定着ベルト14が張架された加熱ローラ12の回転数は定着ベルト14の線速と相関関係を有するので、該回転数に基づいて定着ベルト14の線速を把握することができる。そのため、加熱ローラ12の回転数に基づいて、駆動部30を制御することにより、定着ベルト14の加工やコロなどの部材を追加することなく定着ベルト14の線速を把握して、定着ベルト14の線速の変動を抑制するよう制御できる。これにより、安価な構成でシートPの搬送速度の変動及び定着ベルト14の耐久性の低下をともに抑制できる。
以上、本発明について、好ましい実施携帯を挙げて説明したが、本発明は上記実施例の構成に限定されるものではない。
例えば、上述した実施形態の定着装置100では、回転数検知部40によって、加熱ローラ12の回転数を検知する構成であったが、これに限定されるものではない。例えば、回転数検知部40によって、加熱ローラ12に代えてテンションローラ13の回転数を検知する構成や、加熱ローラ12及びテンションローラ13の回転数を共に検知する構成などとしてもよい。つまり、回転数検知部40が、定着ベルト14の回転移動に伴って回転されるローラ(従動ローラ)の回転数を検知する構成であれば、本発明の目的に反しない限り、回転数を検知する対象となるローラは任意である。
また、上述した実施形態のカラー複写機200では、複数の感光体が一列に並べて配置されたフルカラーのタンデム型の画像形成装置について説明するものであったが、これに限定されるものではない。例えば、感光体を1つのみ備えるモノクロの画像形成装置や、リボルバ型の画像形成装置であってもよく、本発明の目的に反しない限り、画像形成部と定着部とを少なくとも備えていれば、画像形成装置の構成は任意である。
なお、前述した各実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。かかる変形によってもなお本発明の定着装置及び画像形成装置の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。