JP6066727B2 - 偏光フィルムの製造方法及び偏光板の製造方法 - Google Patents

偏光フィルムの製造方法及び偏光板の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを用いた偏光フィルムの製造方法及び偏光フィルム用ポリビニルアルコール系樹脂に関する。また、本発明は、より詳細には、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを短時間で染色し得る偏光フィルムの製造方法及び偏光フィルム用ポリビニルアルコール系樹脂に関する。また、本発明は、上記偏光フィルム用ポリビニルアルコール系樹脂を用いた偏光フィルム用ポリビニルアルコール系樹脂溶液、偏光フィルム及び偏光板に関する。
従来、液晶表示装置等では、ポリビニルアルコール(以下、PVAと記載することがある)系樹脂フィルムを用いて形成された偏光フィルムが広く用いられている。
上記PVA系樹脂フィルムを用いて偏光フィルムを製造する際には、PVA系樹脂フィルムを一軸延伸し、次に染色する。その後、ホウ素酸水溶液などを用いて固定処理を行う。または、PVA系樹脂フィルムを染色した後に一軸延伸し、次にホウ素酸水溶液などで固定処理を行う。
例えば、下記の特許文献1には、PVA系樹脂フィルムを用いた偏光フィルム及び偏光フィルムの製造方法が開示されている。特許文献1では、フィルム幅が2m以上であり、幅方向に1cm離れた2点間のレターデーション差が5nm以下であり、かつ幅方向に1m離れた2点間のレターデーション差が50nm以下であるPVA系樹脂フィルムが開示されている。このPVA系樹脂フィルムでは、色ムラが少なく、均一な延伸が可能であることが特許文献1に記載されている。
また、偏光フィルムでは、優れた偏光性能が強く求められている。特許文献1では、偏光性能と耐久性との観点から、PVAのけん化度が95モル%以上であることが好ましく、99.5モル%以上であることが最も好ましいことが記載されている。
また、例えば下記の特許文献2には、支持フィルム上にPVAを塗布してPVA層を形成し、PVA層を支持フィルムとともに延伸し、染色して得られる偏光板及び偏光板の製造方法が記載されている。特許文献2では、けん化度が98.0〜99.9モル%であり、重合度が1700〜2600である完全けん化型のPVAを用いることが記載されている。
特許第3422759号公報 特開2000−338329号公報
特許文献1に記載のような従来のPVA系樹脂フィルムを用いて偏光フィルムを製造する際には、ヨウ化カリウム水溶液などを用いて染色した後に、一軸延伸する。または、一軸延伸した後に、ヨウ化カリウム水溶液などを用いて染色処理を施す。また、染色及び延伸後に、ホウ酸水溶液などを用いて固定処理を行う。この場合、優れた偏向性能を有しかつ染色ムラの少ない偏光フィルムを得るために、染色及び固定処理に比較的長い時間を要する。従って、染色ムラの少ない偏光フィルムの生産性が低いという問題がある。
また、特許文献2に記載された偏光板の製造方法は、フィルムを温水に浸漬して膨潤させた後、ヨウ素/ヨウ化カリウム水溶液に浸漬してヨウ素を吸着させる。次に、ホウ酸/ヨウ化カリウム水溶液に浸漬した後、50℃で5分間の乾燥処理を行うことにより、染色及び固定化して偏光フィルムを得ている。この場合にも、染色及び固定処理に比較的長い時間を要し、偏光フィルムの生産性が低いという問題がある。
本発明の目的は、短時間で十分に染色でき、かつ固定処理に必要な時間も短縮することができ、従って染色ムラの少ない偏光フィルムの生産性を飛躍的に高め得る偏光フィルムの製造方法、及び染色ムラの少ない偏光フィルムの生産性を高め得る偏光フィルム用ポリビニルアルコール系樹脂、並びに該偏光フィルム用ポリビニルアルコール系樹脂を用いた偏光フィルム用ポリビニルアルコール樹脂溶液、偏光フィルム及び偏光板を提供することである。
本発明の広い局面によれば、JIS K 6726に準拠して求められるけん化度が94〜98.5モル%でありかつ重合度が2500〜3000であるポリビニルアルコール系樹脂を用いて形成されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを用意する工程と、前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを用いて、偏光フィルムを得る工程とを備える、偏光フィルムの製造方法が提供される。
本発明に係る偏光フィルムの製造方法のある特定の局面では、前記偏光フィルムを得る工程が、前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを染色する工程と、前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを延伸する工程と、前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの染色を固定化する工程とを備える。
本発明に係る偏光フィルムの製造方法の他の特定の局面では、前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを用意する工程は、支持体上に前記ポリビニルアルコール系樹脂と溶媒とを含む樹脂溶液を流延し、乾燥することにより、前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを得る工程である。
本発明に係る偏光フィルム用ポリビニルアルコール系樹脂は、偏光フィルムを得るために用いられるポリビニルアルコール系樹脂であって、JIS K 6726に準拠して求められるけん化度が94〜98.5モル%でありかつ重合度が2500〜3000であるポリビニルアルコール系樹脂である。
本発明に係る偏光フィルム用ポリビニルアルコール系樹脂溶液は、偏光フィルムを得るために用いられるポリビニルアルコール系樹脂溶液であって、上述した偏光フィルム用ポリビニルアルコール系樹脂と、水とを含む。
本発明に係る偏光フィルムは、上述した偏光フィルム用ポリビニルアルコール系樹脂を用いて形成されている。本発明に係る偏光板は、上述した偏光フィルムを用いて形成されている。
本発明に係る偏光フィルムの製造方法では、けん化度が94〜98.5モル%でありかつ重合度が2500〜3000であるポリビニルアルコール系樹脂フィルムを用いているため、従来のポリビニルアルコール系樹脂フィルムを用いた偏光フィルムの製造方法に比べて、染色時間を大幅に短縮することができる。また、染色後に行われる固定処理の時間も大幅に短縮することができる。しかも偏光性能はさほど低下しない。従って、ポリビニルアルコール系樹脂を用いており、かつ良好な偏光性能を有する偏光フィルムを高い生産性で得ることが可能である。
また、本発明に係る偏光フィルム用ポリビニルアルコール系樹脂は、けん化度が94〜98.5モル%でありかつ重合度が2500〜3000であるため、染色性に非常に優れている。このため、染色ムラの少ない偏光フィルムの生産性を大幅に高めることが可能である。
以下、本発明の詳細を説明する。
(ポリビニルアルコール系樹脂)
本発明に係る偏光フィルムの製造方法で用いられるポリビニルアルコール(以下、PVAと記載することがある)系樹脂は、ビニルエステルを重合してポリマーを得た後、得られたポリマーをけん化、すなわち加水分解することにより得られる。従来周知の方法に従って、ビニルエステルを重合してポリマーを得た後、得られたポリマーをけん化することで、PVA系樹脂を得ることが可能である。本発明では、PVA系樹脂のけん化度は、JIS K 6726に準拠して測定した値であり、94〜98.5モル%であることが必要である。上記けんか度は、好ましくは98.5モル%未満、より好ましくは98モル%未満である。なお、PVA系樹脂は、ビニルアルコール単位を有する樹脂であってもよく、ポリビニルアルコール樹脂であってもよい。
上記けん化度は、JIS K 6726に準拠して測定することにより得られた値である。上記けん化度は、けん化によるビニルアルコール単位に変換される単位のうち、実際にビニルアルコール単位にけん化されている単位の割合を示す。上記けん化度が小さすぎると、製造工程中にPVA系樹脂フィルムが溶解したり、偏光フィルムの偏光性能が低下したりする。けん化度が大きすぎると、染色に長時間を必要とし、偏光フィルムの生産性を高めることができない。
上記けん化度の調整方法は特に限定されない。上記けん化度は、けん化条件すなわち加水分解条件により適宜調整することができる。
上記ビニルエステルとして、酢酸ビニル、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル及び安息香酸ビニルなどを用いることができる。
また、上記ビニルエステルを重合して得られるポリマーは、上記ビニルエステルと他のモノマーとの共重合体であってもよい。すなわち、上記PVA系樹脂は、ビニルエステルと他のモノマーとの共重合体を用いて形成されていてもよい。上記他のモノマーすなわち共重合されるコモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテンなどのオレフィン類;(メタ)アクリル酸及びその塩;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルなどの(メタ)アクリル酸エステル類;アクリルアミド、n−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸及びその塩などの(メタ)アクリルアミド誘導体;N−ビニルピロリドンなどのN−ビニルアミド類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル類;塩化ビニル、塩化ビニリデンなどのハロゲン化ビニル類;酢酸アリル、塩化アリルなどのアリル化合物;マレイン酸及びその塩またはそのエステル;イタコン酸及びその塩またはそのエステル;ビニルトリメトキシシランなどのビニルシリル化合物;酢酸イソプロピニル等が挙げられる。上記他のモノマーは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記PVAと上記他のモノマーを共重合し、変性PVAとする場合には、変性量は15モル%以下であることが好ましく、5モル%以下であることがより好ましい。すなわち、上記変性PVAにおけるビニルエステルに由来する構造単位と上記他のモノマーに由来する構造単位の合計100モル%中、上記ビニルエステルに由来する構造単位は好ましくは85モル%以上、より好ましくは95モル%以上であり、上記他のモノマーに由来する構造単位は好ましくは15モル%以下、より好ましくは5モル%以下である。なお、本明細書において、ポリビニルアルコール(PVA)には、変性ポリビニルアルコール(変性PVA)が含まれる。
上記ビニルエステルを重合する際に用いる重合触媒としては、例えば、2−エチルヘキシルペルオキシジカーボネート(商品名「TrigonoxEHP」、Tianjin McEIT社製)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、t−ブチルペルオキシネオデカノエート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルペルオキシジカーボネート、ジ−n−ブチルペルオキシジカーボネート、ジ−セチルペルオキシジカーボネート、及びジ−s−ブチルペルオキシジカーボネートなどが挙げられる。上記重合触媒は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記PVA系樹脂の重合度は2500〜3000であることが必要である。重合度が上記範囲内である場合には、染色などの溶液処理を行う際や、PVA系樹脂フィルムが高温高湿下等に晒されたり、水と接触したりした場合に、変形が起こりにくくなる。このため、得られる偏光フィルムの耐水性が高くなるとともに、製造工程における歩留まりを向上させることができ、偏光フィルムの生産性を高めることができる。上記PVA系樹脂の重合度は2500を超えることが好ましく、2550以上であることがより好ましく、2600以上であることが更に好ましい。上記PVA系樹脂の重合度が上記下限を超えると、又は、上記下限以上であると、染色などの溶液処理の際に、上記PVA系樹脂が溶液中に溶解することを防止することができる。上記PVA系樹脂の重合度は3000未満であることが好ましく、2950以下であることがより好ましく、2900以下であることが更に好ましい。上記PVA系樹脂の重合度が上記上限未満であると、又は、上記上限以下であると、染色の時間を短くでき、偏光フィルムの生産性をより一層高めることができる。
上記重合度が低すぎると、溶媒に対する溶解性が高くなり、偏光フィルムの強度が低下する。また、染色工程において変形及び染色ムラが発生する。このため、上記重合度が低すぎると、染色時間を短縮する観点でけん化度を調整したにもかかわらず、高い生産性で偏光フィルムを製造することが極めて困難となる。上記重合度が高すぎると、上記PVA系樹脂の溶媒に対する溶解性が低くなり、溶液流延による成膜が困難となる。なお、上記重合度は、JIS K 6726に準拠して測定することができる。
上記PVA系樹脂を用いて形成された樹脂フィルムを用意する際には、上記PVA系樹脂を適宜の方法で成膜する方法を用いることができる。好ましくは、支持体上において、PVA系樹脂と、溶媒とを含むPVA系樹脂溶液を流延し、乾燥する方法が用いられる。上記PVA系樹脂と溶媒とを含むPVA系樹脂溶液は、偏光フィルムを得るために好適に用いられる。上記PVA系樹脂溶液を、支持体上に塗布し、乾燥する方法が好適に用いられる。上記支持体上に塗布する方法として、ワイヤーバーコーティング、リバースコーティング、グラビアコーティング、ダイコート、カンマコート、リップコート、スピンコーティング、スクリーンコーティング、ファウンテンコーティング、ディッピング及びスプレー等の各種の方法が挙げられる。
上記溶媒としては特に限定されず、上記PVA系樹脂を溶解し得る溶媒が好適に用いられる。上記溶媒としては、例えば、水及び有機溶剤等が挙げられる。上記溶媒は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記有機溶剤としては、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチロールプロパン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン及びジグリセリン等が挙げられる。
上記PVA系樹脂の溶解性に優れていることから、上記溶媒は、水、グリセリン又はジメチルスルホキシドを含むことが好ましい。上記溶媒は、水を含むことが好ましく、グリセリンを含むことが好ましく、ジメチルスルホキシドを含むことが好ましい。上記PVA系樹脂の溶解性に優れていることから、上記溶媒は、水であるか、水とグリセリンとの混合溶媒であるか、又はジメチルスルホキシドであることが好ましい。上記溶媒は、水を含むことが特に好ましい。上記PVA系樹脂溶液は、水を含むことが特に好ましい。
なお、上記PVA系樹脂溶液は、必要に応じて、可塑剤を含んでいてもよく、界面活性剤を含んでいてもよい。上記可塑剤を用いると、PVA系樹脂フィルムの延伸性が高くなる。
上記可塑剤として、特に限定されないが、多価アルコールが好適に用いられる。上記多価アルコールとしては、上記溶媒としても用いられる。すなわち、上記多価アルコールは、可塑剤として作用し、更に溶媒として用いられる。上記溶媒は、上記多価アルコールを含むことが好ましい。上記多価アルコールとしては、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジグリセリン及びトリエチレングリコール等が挙げられる。上記多価アルコールは1種のみが添加されてもよく、2種以上が添加されてもよい。上記PVA系樹脂フィルムの延伸性を高めるためには、ジグリセリン、エチレングリコール及びグリセリンが好ましい。
上記PVA系樹脂溶液における上記多価アルコールの含有量は、上記PVA系樹脂100重量部に対し、1〜25重量部であることが好ましい。上記多価アルコールの含有量が1重量部以上であると、染色性及び延伸性をより一層高くすることができる。上記多価アルコールの含有量が25重量部以下であると、染色及び延伸時のPVA系樹脂フィルムの取扱い性が向上する。
上記界面活性剤として、特に限定されず、適宜のアニオン性またはノニオン性の界面活性剤を好適に用いることができる。
上記PVA系樹脂溶液における上記PVA系樹脂の濃度は、特に限定されないが、好ましくは3重量%以上、より好ましくは5重量%以上、更に好ましくは6重量%以上、特に好ましくは7重量%以上、好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下、更に好ましくは15重量%以下、特に好ましくは12重量%以下である。上記PVA系樹脂の濃度が上記下限以上であると、乾燥に長時間を必要とせず、良好な膜質のPVA系樹脂フィルムを得ることができる。上記PVA系樹脂の濃度が上記上限以下であると、溶液流延が容易になる。
上記溶液流延時に用いられる支持体は、溶液流延時に上記PVA系樹脂溶液を表面に維持し、かつ上記PVA系樹脂フィルムを支持可能であることが好ましい。上記支持体は、フィルム状であることが好ましく、支持フィルムであることが好ましい。上記支持体の材料としては、例えば、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート及びアクリル系樹脂等が挙げられる。上記ポリオレフィンとしては、エチレン及びポリプロピレン等が挙げられる。
偏光フィルムに適した厚みにする観点からは、上記溶液流延により支持体上に形成されるPVA系樹脂フィルムの厚みは、延伸後の厚みで、5〜50μmであることが望ましい。
また、溶液流延後の乾燥方法は、適宜の方法を用いることができ、特に限定されない。乾燥方法としては、自然乾燥する方法、並びに加熱乾燥する方法等が挙げられる。
(偏光フィルムの製造方法)
本発明に係る偏光フィルムの製造方法は、上述したポリビニルアルコール系樹脂を用いて形成されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを用意する工程と、上記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを用いて、偏光フィルムを得る工程とを備える。
例えば、偏光フィルムの製造方法として、1)上記PVA系樹脂フィルムを染色する工程と、染色後に上記PVA系樹脂フィルムを延伸する工程と、染色及び延伸後に上記PVA系樹脂フィルムを固定化する工程とを備える偏光フィルムの製造方法や、2)上記PVA系樹脂フィルムを染色し、かつ、上記PVA系樹脂フィルムを延伸する工程と、染色及び延伸後に上記PVA系樹脂フィルムを固定化する工程とを備える偏光フィルムの製造方法や、3)上記PVA系樹脂フィルムを延伸する工程と、延伸後に上記PVA系樹脂フィルムを染色する工程と、染色及び延伸後に上記PVA系樹脂フィルムを固定化する工程とを備える偏光フィルムの製造方法や、4)上記PVA系樹脂フィルムを染色する工程と、染色後に上記PVA系樹脂フィルムを延伸し、かつ、固定化する工程とを備える偏光フィルムの製造方法等が挙げられる。
本発明の偏光フィルムの製造方法では、上記偏光フィルムを得る工程が、上記PVA系樹脂フィルムを染色する染色工程と、PVA系樹脂フィルムを延伸する延伸工程と、上記PVA系樹脂フィルムの染色を固定化する固定処理工程とを備えることが好ましい。この場合、染色後または染色時に延伸してもよく、延伸後に染色してもよい。また、固定処理は、染色後かつ延伸時に行ってもよく、染色及び延伸後に行ってもよい。
上記PVA系樹脂フィルムを染色する際には、適宜の染料を用いることができる。上記染料として、ヨウ素−ヨウ化カリウム、ダイレクトブラック17,19,154、ダイレクトブラウン44,106,195,210,223、ダイレクトレッド2,23,28,31,37,39,79,81,210,242,247、ダイレクトブルー1,15,22,78,90,108,151,158,202,236,249,270、ダイレクトバイオレット9,12,51,98、ダイレクトグリーン1,85、ダイレクトイエロー8,12,44,86,87、ダイレクトオレンジ26,39,106,107などの二色性染料を用いることができる。上記染料は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
染色する際には、上記染料を含有する染料溶液中に上記PVA系樹脂フィルムを浸漬すればよい。上記PVA系樹脂フィルム上に染料溶液を塗工してもよい。
また、溶液流延により上記PVA系樹脂フィルムを支持体上に形成する方法では、支持体からPVA系樹脂フィルムを剥離して染色してもよい。または、支持体に支持されたPVA系樹脂フィルムを、支持体に支持された状態で染色してもよい。支持体に支持されたPVA系樹脂フィルムを染色する場合には、延伸後に染色することが好ましい。いずれの染色方法であっても、本発明では、PVA系樹脂のけん化度が、94〜98.5モル%の範囲内であるため、染色を速やかに行うことができる。
上記延伸工程では、上記PVA系樹脂フィルムを一軸延伸してもよく、一軸延伸以外の延伸を行ってもよい。上記PVA系樹脂フィルムを一軸延伸することが好ましい。延伸方法は、湿式延伸法であってもよく、乾熱延伸法であってもよい。また、染色時に延伸を行ってよい。その場合には、染料溶液中に上記PVA系樹脂フィルムを浸漬した状態で延伸すればよい。
染料溶液を用いて染色した後に、上記PVA系樹脂フィルムを空気中で延伸してもよい。
延伸温度は特に限定されないが、好ましくは30℃以上、より好ましくは50℃以上、好ましくは180℃以下、より好ましくは90℃以下である。上記PVA系樹脂フィルムを単独で湿式延伸する場合には、延伸温度は30〜90℃であることが好ましい。上記PVA系樹脂フィルムを単独で乾熱延伸する場合には、延伸温度は50〜180℃であることが好ましい。上記PVA系樹脂フィルムを支持体等に支持された状態で乾熱延伸する場合には、支持体の種類によるが、支持体が延伸される温度以上であり、かつ、上記PVA系樹脂フィルムの劣化や分解が起こらない温度以下に、延伸温度を適宜設定すればよい。上記PVA系樹脂フィルムを支持体等に支持された状態で乾熱延伸する場合には、延伸温度は、例えば、支持体がポリプロピレンの場合は30〜130℃であることが好ましく、支持体がポリエチレンテレフタレートの場合は60〜140℃であることが好ましい。支持体が湿式延伸に適用可能であれば、湿式延伸してもよい。
延伸倍率は、好ましくは4倍以上、より好ましくは5倍以上である。延伸倍率を高めることにより偏光性能を高めることができる。延伸倍率が高すぎると、均一に延伸することができないおそれがある。従って、延伸倍率は8倍以下であることが望ましい。
本発明では、染色及び延伸後に、または染色後かつ延伸時に、染料の配向を固定化するための固定処理を行う。この固定処理は、周知の方法に従って行うことができる。すなわち、ホウ素原子を含む溶液中に上記PVA系樹脂フィルムを浸漬することにより、上記固定処理を行うことができる。上記ホウ素原子を含む溶液は、例えば、ホウ酸又はホウ素化合物を含む。上記固定処理時の温度は特に限定されず、30〜90℃程度とすればよい。
上記のように支持体上にPVA系樹脂フィルムを成膜した場合には、支持体からPVA系樹脂フィルムを剥離した後に延伸してもよく、支持体にPVA系樹脂フィルムが支持(積層)された状態で、上記PVA系樹脂フィルムを支持体とともに延伸してもよい。
上記のように染色、延伸並びに固定処理を経た後、上記PVA系樹脂フィルムを乾燥することにより、偏光フィルムを得ることができる。この乾燥は、自然乾燥により行ってもよい。乾燥速度を高めるには、加熱乾燥することが望ましい。加熱温度は好ましくは30℃以上、より好ましくは50℃以上、好ましくは150℃以下、より好ましくは100℃以下である。
上記のようにして得られる偏光フィルムは、JIS K 6726に準拠して(基づき)測定されたけん化度が94〜98.5モル%でありかつ重合度が2500〜3000である上記PVA系樹脂を用いて得られているので、染色工程及び固定処理に必要な時間を大幅に短縮することができる。さらに、上記PVA系樹脂フィルムを短時間で十分に染色できるため、得られる偏光フィルムの染色ムラが少ない。従って、高い生産性で染色ムラの少ない偏光フィルムを得ることができる。
なお、上記のようにして得られる偏光フィルムは、液晶表示装置の偏光板などの様々な光学デバイスや表示デバイスに用いられる。上記偏光フィルムは、上記偏光フィルムの両面又は片面に保護膜を積層し、偏光板を得るために用いられることが好ましい。上記保護膜として、三酢酸セルロース(トリアセチルセルロース、TAC)フィルム、酢酸・酪酸セルロース(CEB)フィルム、オレフィン系フィルム、アクリル系フィルム、及びポリエステル系フィルムなどを用いることができる。また、偏光板を得る際の貼り合わせに用いられる接着剤として、PVA系接着剤及びウレタン系接着剤などを用いることができる。
以下、本発明の具体的な実施例及び比較例を挙げることにより、本発明の効果を明らかにする。なお、本発明は以下の実施例に限定されない。
なお、以下の参考例2、実施例〜10及び比較例5において使用したPVA系樹脂は、常法により酢酸ビニルを重合し、けん化することにより作製したPVA系樹脂である。重合度については、重合温度及び圧力などの重合条件により制御した。けん化度については、加水分解条件により制御した。
参考例1)
けん化度98.5モル%のPVA系樹脂(セキスイスペシャリティケミカルズ製、商品名:CELVOL C350、重合度2500)100重量部に水を添加し、PVA系樹脂の濃度が10重量%であるPVA系樹脂水溶液を調製した。
得られたPVA系樹脂水溶液を、支持フィルムであるポリプロピレンフィルム(厚み60μm)上に塗布し、乾燥させ、PVA系樹脂フィルムを得た。
上記支持フィルムに支持されたPVA系樹脂フィルムを、110℃に保った恒温槽中において自由端一軸延伸して、5.5倍に延伸したフィルムを得た。次いで上記フィルムをヨウ素0.4g/L及びヨウ化カリウム40g/Lの濃度でヨウ素及びヨウ化カリウムを含む水溶液中に、30℃の温度で120秒間浸漬し、染色した。次に、ホウ酸60g/L及びヨウ化カリウム30g/Lの濃度でホウ酸及びヨウ化カリウムを含む水溶液中に、PVA系樹脂フィルムを支持フィルムとともに55℃で2分間浸漬して、偏光フィルムを得た。得られた偏光フィルムの厚みは20μmであった。この偏光フィルムに厚み80μmのトリアセチルセルロースフィルムを貼り合わせ、偏光板を得た。
参考例2)
PVA系樹脂として、けん化度95モル%のPVA系樹脂(重合度2500)を用いたこと以外は参考例1と同様にして偏光フィルムを作製し、かつ偏光板を得た。
(実施例3)
PVA系樹脂として、けん化度98モル%のPVA系樹脂(重合度2700)を用いたこと以外は参考例1と同様にして偏光フィルムを作製し、かつ偏光板を得た。
(実施例4)
PVA系樹脂として、けん化度97モル%のPVA系樹脂(重合度2700)を用いたこと以外は参考例1と同様にして偏光フィルムを作製し、かつ偏光板を得た。
(実施例5)
PVA系樹脂として、けん化度96モル%のPVA系樹脂(重合度2700)を用いたこと以外は参考例1と同様にして偏光フィルムを作製し、かつ偏光板を得た。
(実施例6)
PVA系樹脂として、けん化度98モル%のPVA系樹脂(重合度2800)を用いたこと以外は参考例1と同様にして偏光フィルムを作製し、かつ偏光板を得た。
(実施例7)
PVA系樹脂として、けん化度97モル%のPVA系樹脂(重合度2800)を用いたこと以外は参考例1と同様にして偏光フィルムを作製し、かつ偏光板を得た。
(実施例8)
PVA系樹脂として、けん化度96モル%のPVA系樹脂(重合度2800)を用いたこと以外は参考例1と同様にして偏光フィルムを作製し、かつ偏光板を得た。
(実施例9)
PVA系樹脂として、けん化度95モル%のPVA系樹脂(重合度2900)を用いたこと以外は参考例1と同様にして偏光フィルムを作製し、かつ偏光板を得た。
(実施例10)
PVA系樹脂として、けん化度96モル%のPVA系樹脂(重合度2900)を用いたこと以外は参考例1と同様にして偏光フィルムを作製し、かつ偏光板を得た。
(比較例1)
PVA系樹脂として、けん化度99.3モル%のPVA系樹脂(セキスイスペシャリティケミカルズ製、商品名:CELVOL C165、重合度2500)を用いたこと以外は参考例1と同様にして偏光フィルムを作製し、かつ偏光板を得た。
(比較例2)
PVA系樹脂として、けん化度99.3モル%のPVA系樹脂(セキスイスペシャリティケミカルズ製、商品名:CELVOL C125、重合度1800)を用いたこと以外は参考例1と同様にして偏光フィルムを作製し、かつ偏光板を得た。
(比較例3)
PVA系樹脂として、けん化度99.3モル%のPVA系樹脂(セキスイスペシャリティケミカルズ製、商品名:CELVOL C165、重合度2500)を用いたこと、並びに染色時間を240秒及びホウ酸処理時間を5分間としたこと以外は参考例1と同様にして偏光フィルムを作製し、かつ偏光板を得た。
(比較例4)
PVA系樹脂として、けん化度93モル%のPVA系樹脂(セキスイスペシャリティケミカルズ製、商品名:CELVOL C543、重合度2450)を用いたこと以外は参考例1と同様にして偏光フィルムを作製し、かつ偏光板を得た。
(比較例5)
PVA系樹脂として、けん化度98モル%のPVA系樹脂(重合度2400)にPVA系樹脂を用いたこと以外は参考例1と同様にして偏光フィルムを作製し、かつ偏光板を得た。
(実施例、参考例及び比較例の評価)
(1)偏光度の測定
参考例1,2、実施例〜10及び比較例1〜5で得られた各偏光板の偏光度Pを、島津製作所製の分光光度計UV−3101PC装置を用いて、クロス透過率及びパラレル透過率を測定して求めた。偏光度を下記の基準で判定した。なお、クロス透過率をYC、パラレル透過率をYPとしたとき、偏光度Pは下記式で表される。
偏光度P={(YP−YC)/(YP+YC)}1/2
[偏光度の判定基準]
○:偏光度が99以上
△:偏光度が90以上かつ99未満
×:偏光度が90未満
(2)染色ムラの評価
参考例1,2、実施例〜10及び比較例1〜5で得られた各偏光フィルムを観察し、染色ムラを以下の基準で評価した。
[染色ムラの判定基準]
○:全く染色ムラは見られない
△:染色ムラが見られる
×:染色ムラに加えて変形が見られる
結果を下記の表1に示す。
Figure 0006066727
表1から明らかなように、比較例1及び2では、参考例1,2、実施例〜10と同様に染色時間を120秒及びホウ酸処理時間を2分としたが、得られた偏光フィルムの偏光度が90未満であり低かった。比較例3では、偏光フィルムの偏光度は良好であるが、染色に240秒を要し、ホウ酸による固定処理に5分要し、固定処理に非常に長い時間を要していた。また、比較例1〜3では、偏光フィルムの変形や染色ムラが見られた。
また、比較例4及び5では、偏光フィルムの固定処理時間及び偏光度は共に良好であるものの、偏光フィルムの変形や染色ムラが見られた。
これに対して、参考例1,2、実施例〜10では、染色時間を120秒、固定処理時間を2分に短くしているにもかかわらず、得られた偏光フィルムの偏光度は良好であった。さらに、得られた偏光フィルムの変形や染色ムラがほとんど見られなかった。従って、低いけん化度及び高い重合度を有するPVA系樹脂を用いた上記参考例1,2、実施例〜10では、良好な偏光性能に加えて、染色ムラの少ない偏光フィルムを高い生産性で得られることがわかる。

Claims (3)

  1. JIS K 6726に準拠して求められるけん化度が94〜98.5モル%でありかつ重合度が2700〜3000であるポリビニルアルコール系樹脂と、前記ポリビニルアルコール系樹脂を溶解し得る溶媒である水とを含むポリビニルアルコール系樹脂水溶液を、支持体上に流延し、支持体上に流延された前記ポリビニルアルコール系樹脂水溶液を乾燥することにより、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムをる工程と、
    前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを用いて、偏光フィルムを得る工程とを備える、偏光フィルムの製造方法。
  2. 前記偏光フィルムを得る工程が、前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを染色する工程と、前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを延伸する工程と、前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの染色を固定化する工程とを備える、請求項1に記載の偏光フィルムの製造方法。
  3. 請求項1又は2に記載の偏光フィルムの製造方法により偏光フィルムを得る工程と、
    得られた偏光フィルムを用いて偏光板を形成する工程とを備える、偏光板の製造方法。
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