JP6066263B2 - 液滴吐出ヘッド及び画像形成装置 - Google Patents

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Description

本発明は、液体をノズル孔から吐出させる液滴吐出ヘッド及び画像形成装置に関するものである。
一般に、プリンタ、ファックス、複写機、プロッタ、或いはこれらの内の複数の機能を複合した画像形成装置としては、例えばインクの液滴を吐出する液体吐出ヘッドを備えているインクジェット記録装置がある。このインクジェット記録装置では、媒体を搬送しながらインク滴を用紙に付着させて画像形成を行う。ここでの媒体は「用紙」ともいうが材質を限定するものではなく、被記録媒体、記録媒体、転写材、記録紙なども同義で使用する。また、画像形成装置は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液体を吐出して画像形成を行う装置を意味する。そして、画像形成とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与する(単に液滴を吐出する)ことをも意味する。また、インクとは、所謂インクに限るものではなく、吐出されるときに液体となるものであれば特に限定されるものではなく、例えばDNA試料、レジスト、パターン材料なども含まれる液体の総称として用いる。
上記インクジェット記録装置は、インクジェットヘッドを有している。このインクジェットヘッドでは、主に、ノズルプレートとアクチュエータ基板との間に液室形成基板を挟み合わせ、合わせた各基板の間を接合している。ノズルプレートにはインク滴を吐出する複数のノズル孔が設けられている。このインクジェットヘッドはヘッド筐体に取り付けられている。液室形成基板には、ノズル孔に連通する加圧液室や共通液室等の液室が、各ノズル孔に対応づけされて区画形成されている。アクチュエータ基板には、加圧液室内の圧力を変化させるための圧力発生手段及び圧力発生手段による変形変位を加圧液室内のインクに加える振動板が備われている。圧力発生手段によって加圧液室内の圧力を変化させてノズル孔からインク滴が吐出される。液室形成基板は、一般に、加工性の良さからシリコンなどの樹脂材料で形成されている。一方、ノズルプレートや振動板には、ステンレスなどの金属材料で形成されている。液室形成基板に用いられる樹脂材料と、ノズルプレートや振動板に用いられる金属材料の線膨張係数との間に差がある。このため、ノズルプレートと液室形成基板と振動板とが互いに接合して構成したインクジェットヘッドでは、環境温度や動作温度の変化に伴って液室形成基板が撓んでしまう。この液室形成基板の撓みを防ぐ構成を有するインクジェットヘッドとして、特許文献1に記載されているものが知られている。
この特許文献1のインクジェットヘッドは、ノズルプレート、流路形成基板及びアクチュエータ基板を有している。ノズルプレートには複数のノズル孔が設けられている。そして、流路形成基板には、堰部と隔壁部とが設けられている。堰部は、ノズルプレートに接合してノズル孔に連通する加圧液室と、加圧液室に供給するインクが供給される共通液室と、加圧液室と共通液室との間を連通する流路とを含んで構成するインク流路を形成するものである。隔壁部は、複数のノズル孔に対応づけられて形成されるインク流路と、隣接するノズル孔に対応するインク流路とを区画するものである。堰部及び隔壁部は、加圧液室及び流路を形成するため精度高い加工を必要とするため樹脂材料で形成されている。そして、堰部及び隔壁部の樹脂材料の線膨張係数と、堰部及び隔壁部に接合されるノズルプレートや振動板の金属材料の線膨張係数とに差がある。このため、環境温度や動作温度の変化に伴って堰部及び隔壁部を備えている液室形成基板が、板厚方向に撓んでしまう。この撓みを抑制するために、上記特許文献1のインクジェットヘッドでは、インサート成型方法により、流路形成基板を構成する堰部や隔壁部の樹脂部材の中に補強材となる金属板材を埋設することで堰部や隔壁部を含む流路形成基板の剛性を高めている。これにより、環境温度や動作温度の変化に伴って流路形成基板が撓む現象を抑制している。
しかしながら、上記特許文献1のインクジェットヘッドでは、流路形成基板の樹脂材料の堰部や隔壁部の中に金属板材を埋設したことにより、以下の理由でインクジェットヘッドが大型になってしまう。
樹脂材料の堰部や隔壁部の中に金属板材を埋設した流路形成基板を製造するために、インサート成型方法を用いている。このインサート成型方法によって流路形成基板を形成するには、先ず金属板材を射出成型用金型に装填しておく。そして、金属板材の周囲に設けられた射出成型用金型との間隙であるキャビティの部分に、溶融状態の樹脂材料が注入される。樹脂材料が固まった後、流路形成基板を射出成型用金型から取り出す。しかし、金属板材の周囲に設けられた射出成型用金型との間隙が狭くなると樹脂材料が入り込んでいかず、流路形成基板における堰部や隔壁部が十分な形状に形成されない虞がある。流路形成基板における堰部や隔壁部が十分な形状に形成するためには、金属板材の周囲に設けられた射出成型用金型と金属板材との間隙を、キャビティの中に溶融状態の樹脂材料が十分入り込んでいく程度の所定の大きさ以上にしておかなければならない。これにより、堰部や隔壁部における樹脂材料の部分でインク流路を形成している内壁表面から埋設された金属板材の表面までの厚みは、間隙の所定の大きさ以上の大きさに相当する規定以上の厚さになってしまう。
一方、樹脂材料の堰部や隔壁部の中に埋設させた金属板材の大きさは、金属板材の剛性を確保するために所定の大きさより小さくできない。特に、インク流路の長手方向の撓みを抑制するため、インク流路の長手方向と同じ金属板材の長手方向の長さを短くすることができない。金属板材の剛性力を確保するために金属板材の板厚も薄くすることができない。これらのように、金属板材は、剛性確保のため規定の大きさにしておき、かつ薄くもできない。このように所定の大きさより小さくできない金属板材が、堰部や隔壁部における樹脂材料の部分の中に埋設されている。このため、金属板材を樹脂部材に埋設した場合の流路形成基板の大きさは金属板材を埋設しなかった場合の流路形成基板の大きさに比べて大きくなる。
以上のように、上記特許文献1のインクジェットヘッドでは、流路形成基板の剛性を高めて流路形成基板の撓みを抑制することができるが、インクジェットヘッドが大型になってしまうという問題点がある。
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、共通液室形成基板の撓みを抑制できるとともに大型化を避けることができる、液滴吐出ヘッド及び画像形成装置を提供することである。
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、インク滴を吐出するノズル孔が設けられているノズルプレートと、ノズル孔に連通する加圧液室を形成し、該加圧液室内の圧力を変化させるための圧力発生手段が設けられているアクチュエータ基板と、前記加圧液室に供給するインクが供給される共通液室を形成する共通液室形成基板とを備え、前記共通液室形成基板は、金属材料の第1板材と、該第1板材の一方の面に設けられる樹脂材料の第2板材と、前記第1板材の他方の面に設けられる樹脂材料の第3板材とが、一体化されて構成される液滴吐出ヘッドにおいて、前記第1板材の前記第3板材に接する面における一部の部分は前記第3板材に接し、他の部分は前記アクチュエータ基板の一方の面に接していることを特徴とするものである。
本発明では、共通液室は通常加圧液室に供給するインクが供給される空間であればよく、液室吐出に直接関係するために精度よく加工する必要がある加圧液室のように樹脂材料だけで形成される必要はない。そのため、共通液室を形成する部分は加圧液室のように精度よく加工する必要がないので、金属材料の第1板材を用いて形成することができる。一方、金属材料の単一の第1板材だけで共通液室を形成する場合、この第1板材はプレス加工によって1枚の金属板から各部品を打ち抜いている。この場合、打ち抜く部品同士の間の距離を最小にして1枚の金属板からより多くの部品を打ち抜くことで生産性を上げている。そのため、打ち抜く部品同士の間の距離と板厚との比であるアスペクト比の関係で板厚が制限される。そして、打ち抜く部品同士の間の距離が板厚より小さくなると、プレス加工による加工品の精度を確保できない虞がある。この結果、金属材料の第1板材の板厚を厚くすることが難しくなる。これにより、必要な容積の共通液室を構成するためには、第1板材を積層する枚数を増やして狙いの板厚を確保することになってしまう。積層する枚数が増えれば接合面が増えてしまうことや、各層の位置決めなどで組立て工程数の増加や複雑化を招くことになる。
そのために、単一の金属板材の板厚だけでは、必要な容積の共通液室を構成するための狙いの板厚にならない。狙いの板厚に足らない板厚分を補うために、その不足の板厚を有する樹脂材料の第2板材及び第3板材と単一の金属材料の第1板材とが、一体化されて共通液室形成基板を構成している。これによって、共通液室形成基板の狙いの板厚に構成できることで、インクジェットヘッドの大型化を抑制できる。そして、共通液室形成基板が金属材料の第1板材と樹脂材料の第2板材と樹脂材料の第3板材とが、一体化されて構成されていることにより、第2板材及び第3板材は高い剛性の第1板材で補強される。このため、共通液室形成基板の線膨張係数と異なる線膨張係数を有するノズルプレートやアクチュエータ基板と共通液室形成基板とが接合され、環境温度や動作温度が変化した場合、環境温度や動作温度の変化による共通液室形成基板の撓みを抑制することができる。さらに、第1板材の第3板材に接する面における一部の部分は第3板材に接し、他の部分はアクチュエータ基板の一方の面に接していることで、アクチュエータ基板と接する金属材料の第1板材の剛性によってアクチュエータ基板の撓み変形も抑制することができる。よって、共通液室形成基板の撓みを抑制できるとともに大型化を避けることができる、という特有な効果が得られる。
液滴吐出ヘッドを搭載したインクジェット記録装置の一例を示す側面図である。 本実施形態の液滴吐出ヘッドの構成を示す斜視図である。 本実施形態の液滴吐出ヘッドの構成を示す分解斜視図である。 インク流路基板の構成を示す分解斜視図である。 インク流路基板、アクチュエータ基板及びノズルプレートの短手方向の断面を示す図である。 本実施形態のインクジェットヘッドの変形例を示す断面図である。
以下、本発明に係る液滴吐出ヘッド及び該液滴吐出ヘッドを有する液滴吐出装置としてのインクジェット記録装置に用いる一実施形態について説明する。
図1は液滴吐出ヘッドを搭載したインクジェット記録装置の一例を示す側面図である。
このインクジェット記録装置30は、印字機構部33等を収納している。この印字機構部33は、装置本体の内部に走査方向に移動可能なキャリッジ31、キャリッジ31に搭載した液滴吐出ヘッド10、液滴吐出ヘッド10へインクを供給するインクカートリッジ32等で構成されている。そして、装置本体の下方部には前方側から多数枚の用紙34を積載可能な給紙カセット(或いは給紙トレイでもよい)35を抜き差し自在に装着されている。また、用紙34を手差しで給紙するために開かれる手差しトレイ36を有し、給紙カセット35あるいは手差しトレイ36から給送される用紙34を取り込む。印字機構部33によって所要の画像を記録した後、後面側の装着された排紙トレイ37に排紙する。印字機構部33では、図示しない左右の側板に横架したガイド部材である主ガイドロッド38と従ガイドロッド39とで、キャリッジ31を主走査方向に摺動自在に保持する。このキャリッジ31には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンダ(M)、ブラック(Bk)の各色のインク滴を吐出する液滴吐出ヘッド10を複数のインク吐出口(ノズル)を主走査方向と交差する方向に配列している。そして、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。また、キャリッジ31には液滴吐出ヘッド10に各色のインクを供給するための各インクカートリッジ32を交換可能に装着している。インクカートリッジ32は、上方に大気と連通する大気口、下方には液滴吐出ヘッド10へインクを供給する供給口が設けられ、内部にはインクが充填された多孔質体を有している。多孔質体の毛管力により液滴吐出ヘッド10へ供給されるインクをわずかな負圧に維持している。また、液滴吐出ヘッド10としては各色の液滴吐出ヘッド10を用いているが、各色のインク滴を吐出するノズルを有する1個の液出ヘッドでもよい。
ここで、キャリッジ31は後方側(用紙搬送下流側)を主ガイドロッド38に摺動自在に嵌装し、前方側(用紙搬送上流側)を従ガイドロッド39に摺動自在に載置している。そして、このキャリッジ31を主走査方向に移動走査するため、主走査モータ(不図示)で回転駆動される駆動プーリ(不図示)と従動プーリ(不図示)との間にタイミングベルト(不図示)を張装している。このタイミングベルトはキャリッジ31に固定されており、主走査モータの正逆回転によりキャリッジ31が往復駆動される。一方、給紙カセット35にセットした用紙34を液滴吐出ヘッド10に下方側に搬送するために、給紙ローラ40、フリクションパッド41、ガイド部材42、搬送ローラ43、搬送コロ44及び先端コロ45を有している。給紙ローラ40及びフリクションパッド41は、給紙カセット35から用紙34を分離給装する。ガイド部材42は用紙34を案内し、搬送ローラ43は給紙された用紙34を反転させて搬送するローラである。搬送コロ44は搬送ローラ43の周面に押し付け、先端コロ45は搬送ローラ43からの用紙34の送り出し角度を規定する。搬送ローラ43は副走査モータ(不図示)によってギア列を介して回転駆動される。そして、キャリッジ31の主走査方向の移動範囲に対応して搬送ローラ43から送り出された用紙34を液滴吐出ヘッド10の下方側で案内するため、用紙ガイド部材である印写受け部材46を設けている。この印写受け部材46の用紙搬送方向下流側には、用紙34を排紙方向へ送り出すための回転駆動される搬送コロ47と拍車48を設けている。さらに、用紙34を排紙トレイ37に送り出す排紙ローラ49と拍車50と排紙経路を形成するガイド部材51、52とを配設している。
このような構成を有するインクジェット記録装置30で記録時には、キャリッジ31を移動させながら画像信号に応じて液滴吐出ヘッド10を駆動する。このことにより、停止している用紙34にインクを吐出して1行分を記録し、その後、用紙34を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号または用紙34の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了させ用紙34を排紙する。また、キャリッジ31の移動方向右端側の記録領域を外れた位置には、液滴吐出ヘッド10の吐出不良を回復するための回復装置(不図示)を配置している。この回復装置はキャップ手段、吸引手段及びクリーニング手段を有している。キャリッジ31は印字待機中にはこの回復装置側に移動されてキャッピン手段で液滴吐出ヘッド10をキャッピングして吐出口部を湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良を防止する。また、記録途中などに記録と関係ないインクを吐出することにより、全ての吐出口のインク粘度を一定にし、安定した吐出状態を維持する。また、吐出不良が発生した場合等には、キャピング手段で液滴吐出ヘッド10の吐出出口(ノズル)を密封し、チューブを通して吸引手段で吐出口からインクとともの気泡等を吸出する。そして、吐出口面に付着したインクやゴミ等はクリーニング手段により除去され吐出不良が回復される。また、吸引されたインクは、本体下部に設置された廃インク溜(不図示)に排出され、廃インク溜内部のインク吸収体に吸収保持される。このように、このインクジェット記録装置においては、本実施形態の液滴吐出ヘッド10を搭載しているので、安定したインク吐出特性が得られ、画像品質が向上する。上述した説明ではインクジェット記録装置に液滴吐出ヘッドを使用した場合について説明したが、インク以外の液滴、例えばパターニング用の液体レジストを吐出する装置に液滴吐出ヘッドを適用してもよい。
図2は本実施形態の液滴吐出ヘッドの構成を示す斜視図である。図3は本実施形態の液滴吐出ヘッドの構成を示す分解斜視図である。両図に示す本実施形態の液滴吐出ヘッドとしてのインクジェットヘッド10は、主に、ノズルプレート11、アクチュエータ基板12及び液室形成基板であるインク流路基板13を含んで構成されている。その他の構成として、ノズルカバー14、ダンパ部材15及びハウジング16を含んで構成されている。そして、ノズルプレート11には、インク滴を吐出する複数のノズル孔(不図示)が配置されている。アクチュエータ基板12は、ノズル孔にインクを供給する複数の個別液室(不図示)が形成され、各個別液室を加圧する振動板上に下部電極、圧電体、上部電極から構成される電気機械変換素子(不図示)が形成されている。インク流路基板13は、アクチュエータ基板12と接合することにより、共通液室、個別液室及びインク供給路を形成する。ノズルカバー14は、ノズルプレート11に配置されたノズル孔を露出開口して、インクジェットヘッド周縁部を覆うように配置されている。ハウジング16には、ダンパ部材15を収容し、後述するキャリッジ31に係合する位置基準部16a、16bを備え、複数個のインクタンク(図示せず)を保持するタンクホルダ17にネジ等の締結手段18により固定されている。
また、インクジェットヘッド10には、後述するインクジェット記録装置30に配置されるコネクタと電気的に接続されて記録画像に応じた電気信号を伝達する電気パッドを具備するコネクタ基板19が設けられている。更に、アクチュエータ基板12上に設けられた電気機械変換素子を駆動するための駆動IC(不図示)と、駆動ICに電気的に接続するパッド部とコネクタ基板19とを電気的に接続するFPC20とが設けられている。記録画像に応じてインクジェット記録装置から伝達される電気信号が、コネクタ基板19とFPC20を介して電気機械変換素子に供給される。そして、電気機械変換素子によって変換された機械振動が振動板を介して個別液室内のインクを加圧し、ノズル孔から記録用紙に高精度にインクが吐出される。
本実施形態のインクジェットヘッド10におけるノズルプレート11には各列毎に複数個のノズル孔が形成されたノズル列が計4列形成されている。1つのインクジェットヘッドで4色分のインクを吐出できる構成となっている。ノズルプレート11の材質としてはステンレススチール等の板部材を用いることが好適である。加工法としては、プレス加工法、エッチング法、レーザ加工法等が挙げられるが、低コスト化の観点からプレス加工法によってノズル孔を形成することが好適である。ノズルプレート11には撥液材料が表面処理されており、不均一なインクの付着によるインクの吐出曲がりなどの吐出不良を防止する構造となっている。撥液材料としては、表面エネルギーが小さいフルオロカーボンを含む有機材料を好適に用いることができ、蒸着法や浸漬法によりノズルプレート11の表面に塗布したものを用いることができる。一方、ノズルプレート11におけるアクチュエータ基板12との接合面には撥液材料を除去する手段である酸素プラズマ処理等の処理がなされ撥液材料が除去される。これにより、アクチュエータ基板11に塗布した接着剤を介して接合がされやすくなる。接着剤としては、インクジェット記録装置にて使用されるインクに対して耐溶剤性の高い接着剤を用いることができ、具体的にはエポキシ樹脂やシリコーン樹脂を含有する熱硬化型接着剤を好適に用いることができる。
ノズルカバー14はノズルプレート11に形成されたノズル孔部の周辺部が開口されている。また、インク流路基板13の端面部、およびFPC20とアクチュエータ基板12の電気的接続部を覆うように折り曲げられて略箱形に形成され、ハウジング16に設けた突起部16cと勘合して取り付けがなされるための穴部14aが設けられている。ノズルカバー13の材料としてはノズルプレート11と同一材料であるステンレススチールを用いることができる。また、ノズルプレート11の表面に処理された撥液材料をノズルカバー14の表面に対して処理することにより、ノズルカバー14へのインクの付着を抑制することができる。
アクチュエータ基板12に形成された電気機械変換素子は,ゾルゲル法を用いた半導体デバイス製造技術によって微細加工がなされ、電気機械変換素子の高密度化を容易に行うことが可能となっている。ゾルゲル法とは非特許文献1に示されているように、金属アルコキシド等の金属有機化合物を溶液系で加水分解、重縮合させて金属−酸素−金属結合を成長させ、最終的に焼結することにより完成させる無機酸化物の作製方法である。このゾルゲル法により成膜される圧電体材料として具体的には、酢酸鉛、イソプロポキシドジルコニウム、イソプロポキシドチタンを出発材料にしている。そして、これらの出発材料を、共通溶媒としてのメトキシエタノールに溶解させたチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系の材料を好適に用いることができる。
次に、インク流路基板の構成について説明する。
図4はインク流路基板の構成を示す分解斜視図である。同図に示すインク流路基板13は、金属材料で構成された第1構造体13−1、樹脂材料で構成された第2構造体13−2、第3構造体13−3の複合材により形成された基板である。第1構造体13−1には、共通液室13aが形成される部分と、共通液室となる場所以外の場所に形成されて射出成型時に注入された溶融状態の樹脂材料が流れ込んでいく貫通穴13bが形成される部分とに開口部が設けられている。第2構造体13−2は樹脂材料の部材であってダンパ部材15側の面に配置され、第3構造体13−3は樹脂材料の部材であってアクチュエータ基板12の側面に配置されている。第1構造体13−1、第2構造体13−2及び第3構造体13−3は、インサート成型法によって一体化されて構成される。具体的には、第1構造体13−1を形成する金属部材の表面に、溶融樹脂と密着するための表面加工を予め施しておき、第1構造体13−1を射出成型用金型に予め装填しておく。その第1構造体13−1を含めて射出成型用金型内に溶融状態の樹脂が注入され、第2構造体13−2を形成するとともに、貫通穴13bを介して第3構造体13−3を形成する。射出成型用金型から取り出すときには、第1構造体13−1と第2構造体13−2と第3構造体13−3とが強固に密着して一体化されている。このような積層構造にすることで成型時の温度変化に対して発生する熱応力が緩和される。そして、動作環境等の温度変化においてもインク流路基板13の撓み変形を抑制することが可能となる。第1構造体13−1に対して、第2構造体13−2及び第3構造体13−3を接着剤接合などの接合方法によって積層するための工程が不必要となることからコスト削減が可能となる。
また、図4に示すように共通液室をインク流路基板13に形成しているが、共通液室もアクチュエータ基板12に形成して第1構造体13−1には共通液室を形成しない場合でもよい。この場合では第1構造体13−1は隔壁を形成する開口がなくなるため板厚を薄くすることができる。これにより大型化を避けることができる。そして、部品コストを低減できるプレス加工法で金属板材を打ち抜く場合隔壁と板厚とのアスペクト比の関係で金属板材の板厚が制限される。このため、プレス加工法を用いることが従来難しかった。しかし、本実施形態では、第1構造体13−1に共通液室を形成しない場合は共通液室の隔壁を形成する開口をしないので、第1構造体13−1はプレス加工法を用いて形成することができる。よって、部品コストを低減できる。さらに、図4に示すように第1構造体13−1の一方の面をアクチュエータ基板12側に接合しているが、第2構造体13−2の一方の面をアクチュエータ基板12側に接合してもよい。この場合、第2構造体13−2に加圧液室を形成してもよい。
図5はインク流路基板、アクチュエータ基板及びノズルプレートの断面を示す図である。インクジェットヘッドの小型化、高集積化に伴って共通液室を構成する隔壁13d、13eの幅を狭小に設ける場合があるこの場合、第1構造体13−1に高剛性の金属板材を用いている。この結果、樹脂部材で形成される隔壁13eが隔壁13dによって補強されるのでヘッドをより小型化、高集積化することが可能である。第1構造体13−1の金属材料としては、ステンレススチール、あるいはFe−42Ni合金を好適に用いることができる。加工法としては、プレス加工法、エッチング法、ワイヤカット法、レーザ加工法等各種の加工法が挙げられるが、上述したように低コスト化の観点からプレス加工法をより好適に用いることができる。第2構造体13−2、第3構造体13−3の樹脂材料としては、耐溶剤性に優れたポリフェニレンサルファイド(Poly-Phenylene Sulfide)を含む樹脂を好適に用いることができる。さらに、この樹脂にガラス繊維を含有させることによりインク流路基板13の剛性を向上し、樹脂部材の線膨張係数を第1構造体13−1の線膨張係数と略同じようにすることにより、温度変化に伴う撓み変形をより一層抑制することが可能となる。そして、インク流路基板13、アクチュエータ基板12及びノズルプレート11を接合し、図示していないヘッド保持手段に設けることでインクジェットヘッドを構成する。アクチュエータ基板12とノズルプレート11とが接合することでノズル孔11aに連通する個別液室が形成される。なお、ノズルプレート11にはノズル孔21が設けられ、アクチュエータ基板12には、加圧液室22、振動板23及び圧力発生手段としての圧電体素子24が設けられている。
また、図6は本実施形態のインクジェットヘッドの変形例を示す断面図である。アクチュエータ基板と第1構造体13−1とが接合されて、第3構造体13−3の開口領域にアクチュエータ基板12を内包する構成である。つまり、図6のように第3構造体13−3に対しても共通液室13fを形成し、アクチュエータ基板12と第3構造体13−3とを接合する構成にする。この結果、第3構造体13−3にリブ機能を持たせ、第3構造体13−3を含めて第1構造体13−1及び第2構造体13−2によってアクチュエータ基板12の撓み変形を抑制することができる。
以上に説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
(態様1)
共通液室形成基板は、金属材料の第1板材と、該第1板材の一方の面に設けられる樹脂材料の第2板材と、第1板材の他方の面に設けられる樹脂材料の第3板材とが、一体化されて構成される。これによれば、上記実施形態について説明したように、単一の金属材料の第1構造体13−1の板厚だけでは、必要な容積の共通液室を構成するための狙いの板厚にならない。狙いの板厚に足らない板厚分を補うために、その不足の板厚を有する樹脂材料の第2構造体13−2及び第3構造体13−3と第1構造体13−1とが、一体化されて共通液室形成基板を構成している。これによって、共通液室形成基板の狙いの板厚に構成できることで、インクジェットヘッドの大型化を抑制できる。そして、第2構造体13−2及び第3構造体13−3は高い剛性の第1構造体13−1で補強される。このため、共通液室形成基板の線膨張係数と異なる線膨張係数を有するノズルプレート11やアクチュエータ基板12とインク流路基板13とが接合される。そして、環境温度や動作温度が変化した場合、環境温度や動作温度の変化によるインク流路基板13の撓みを抑制することができる。さらに、第1板材の第3板材に接する面における一部の部分は第3板材に接し、他の部分はアクチュエータ基板の一方の面に接していることで、アクチュエータ基板12と接する金属材料の第1構造体13−1の剛性によってアクチュエータ基板12の撓み変形も抑制することができる。よって、共通液室形成基板の撓みを抑制できるとともに大型化を避けることができる
態様2)
(態様1)において、樹脂材料と金属材料とが接する互いの面に表面処理を施す。これによれば、上記実施形態について説明したように、樹脂材料と金属材料の密着が増し、強固に一体化される。
(態様3)
(態様1)において、第1板材及び第3板材の樹脂材料は同一の樹脂材料である。これによれば、上記実施形態について説明したように、温度変化に伴う撓み変形をより一層抑制することが可能となる。
(態様4)
(態様1)〜(態様3)のいずれかにおいて、樹脂材料は、ポリフェニレンサルファイドである。これによれば、上記実施形態について説明したように、樹脂材料の板材の耐溶剤性が向上する。
(態様5)
(態様1)〜(態様4)のいずれかにおいて、樹脂材料には、ガラス繊維が含有されている。これによれば、上記実施形態について説明したように、インク流路基板13の剛性が向上し、温度変化に伴う撓み変形をより一層抑制することが可能となる。
(態様6)
(態様1)又は(態様2)において、金属材料がステンレススチールあるいはFe−42Ni合金である。これによれば、上記実施形態について説明したように、インク流路基板13の剛性が向上し、温度変化に伴う撓み変形をより一層抑制することが可能となる。
(態様7)
(態様1)〜(態様6)のいずれかの液滴吐出ヘッドを備えた画像形成装置に特徴がある。これによれば、上記実施形態について説明したように、ノズル孔から記録用紙に高精度にインクが吐出され、高画質な画像を形成することができる。
10 インクジェットヘッド
11 ノズルプレート
12 アクチュエータ基板
13 インク流路基板
13−1 第1構造体
13−2 第2構造体
13−3 第3構造体
13a 共通液室
13b 貫通穴
13c 共通液室
13d 隔壁
13e 隔壁
13f 共通液室
14 ノズルカバー
15 ダンパ部材
16 ハウジング
17 タンクホルダ
18 締結手段
19 コネクタ基板
20 FPC
21 ノズル孔
22 加圧液室
23 振動板
24 圧電体素子
30 インクジェット記録装置
31 キャリッジ
32 インクカートリッジ
33 印字機構部
34 用紙
35 給紙カセット
36 手差しトレイ
37 排紙トレイ
38 主ガイドロッド
39 従ガイドロッド
40 給紙ローラ
41 フリクションパッド
42 ガイド部材
43 搬送ローラ
44 搬送コロ
45 先端コロ
46 印写受け部材
47 搬送コロ
48 拍車
49 排紙ローラ
50 拍車
51 ガイド部材
52 ガイド部材
特開2003−053966号公報
K. D. Budd、 S. K. Dey、 D. A. Payne、 Proc. Brit.Ceram. Soc. 36、 107 (1985)

Claims (7)

  1. インク滴を吐出するノズル孔が設けられているノズルプレートと、ノズル孔に連通する加圧液室を形成し、該加圧液室内の圧力を変化させるための圧力発生手段が設けられているアクチュエータ基板と、前記加圧液室に供給するインクが供給される共通液室を形成する共通液室形成基板とを備え、前記共通液室形成基板は、金属材料の第1板材と、該第1板材の一方の面に設けられる樹脂材料の第2板材と、前記第1板材の他方の面に設けられる樹脂材料の第3板材とが、一体化されて構成される液滴吐出ヘッドにおいて、
    前記第1板材の前記第3板材に接する面における一部の部分は前記第3板材に接し、他の部分は前記アクチュエータ基板の一方の面に接していることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
  2. 請求項1記載の液滴吐出ヘッドにおいて、
    樹脂材料と金属材料とが接する互いの面に表面処理を施すことを特徴とする液滴吐出ヘッド。
  3. 請求項1記載の液滴吐出ヘッドにおいて、
    前記第2板材及び前記第3板材の樹脂材料は、同一の樹脂材料であることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドにおいて、
    前記樹脂材料は、ポリフェニレンサルファイドであることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドにおいて、
    前記樹脂材料には、ガラス繊維が含有されていることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
  6. 請求項1又は2に記載の液滴吐出ヘッドにおいて、
    前記金属材料がステンレススチールあるいはFe−42Ni合金であることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドを備えたことを特徴とする画像形成装置。
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