JP6065229B2 - 口腔機能の改善または向上剤、およびそれを含有する口腔用の医薬品、医薬部外品、化粧品または飲食品 - Google Patents
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Description
保湿を目的とした口腔用製剤は、通常プロパンジオール、グリセリン、ジグリセリン等の多価アルコール、ソルビトール、キシリトール等の糖アルコール、ヒアルロン酸等のムコ多糖類などの保湿剤を含有する水溶液に、増粘ゲル化剤を加えてジェル状とし、あるいは前記水溶液を口腔内に射出されるスプレーとして提供されている。
口腔内の清浄化を目的とする口腔用製剤は、主として液状の洗口剤、液状、ペースト状等の歯磨剤として提供され、抗菌剤を含有するものが多い。かかる抗菌剤としては、塩酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等が用いられる。
齲蝕防止、歯周疾患の予防を目的とする口腔用製剤は、歯磨剤、歯肉マッサージ用ジェル等として提供され、モノフルオロリン酸ナトリウム等のフッ素化合物、アラントインおよびその誘導体、グリチルリチンおよびその誘導体等の抗炎症剤、ε−アミノカプロン酸等の抗プラスミン剤、ヒノキチオール、銅クロロフィリンナトリウム等の組織賦活剤などが含有される。
しかし、これらの水溶性の製剤は流動性が高く、口腔粘膜に対する付着性および浸透性が低いことから、特に高齢者や要介護者においては、むせ、誤飲、誤嚥等を生じるおそれがあった。
しかし、かかる油性の口腔内軟膏は、口腔粘膜に対する付着性は高いが、浸透性に劣り、また柔軟性や展延性が、口腔内の広範な領域における塗布や、口腔内のマッサージに十分に適するとはいいがたいものであった。
また、ペースト状またはクリーム状の口腔用製剤は、ほとんどが歯磨剤として提供されており、口腔粘膜への使用を企図するものではない。
[1]オガルカヤ属(Cymbopogon sp.)植物の精油を含有するシアバターよりなる、口腔機能の改善または向上剤。
[2]オガルカヤ属(Cymbopogon sp.)植物の精油の含有量が0.00001重量%〜10重量%である、上記[1]に記載の口腔機能の改善または向上剤。
[3]オガルカヤ属(Cymbopogon sp.)植物が、ウェストインディアンレモングラス(Cymbopogon citratus)またはイーストインディアンレモングラス(Cymbopogon flexuosus)である、上記[1]または[2]に記載の口腔機能の改善または向上剤。
[4]上記[1]〜[3]のいずれかに記載の口腔機能の改善または向上剤を含有する、口腔用医薬品。
[5]口腔機能の改善または向上剤を0.1重量%〜100重量%含有する、上記[4]に記載の口腔用医薬品。
[6]上記[1]〜[3]のいずれかに記載の口腔機能の改善または向上剤を含有する、口腔用医薬部外品。
[7]口腔機能の改善または向上剤を0.1重量%〜100重量%含有する、上記[6]に記載の口腔用医薬部外品。
[8]上記[1]〜[3]のいずれかに記載の口腔機能の改善または向上剤を含有する、口腔用化粧品。
[9]口腔機能の改善または向上剤を0.1重量%〜100重量%含有する、上記[8]に記載の口腔用化粧品。
[10]上記[1]〜[3]のいずれかに記載の口腔機能の改善または向上剤を含有する、飲食品。
[11]口腔機能の改善または向上剤を0.1重量%〜100重量%含有する、上記[10]に記載の飲食品。
[12]保健機能食品、特別用途食品または健康補助食品である、上記[10]または[11]に記載の飲食品。
なお、本発明の口腔機能の改善または向上剤の有する痂皮除去作用により、口腔内の不快感が低減され、飲食物の咀嚼や嚥下における障害の低減が期待される。また、舌根運動の円滑化により、発音や構音における障害の低減が期待される。
また、本発明の口腔機能の改善または向上剤は、口腔粘膜に対する付着性が良好で、口腔内に塗布する際やマッサージを行う際に液だれを生じることがないため、むせ、誤飲、誤嚥等を生じることなく安全に適用することができ、さらに、口腔粘膜に対し低刺激性であることから、長期間の連続使用または連続摂取にも適する。
本発明においては、ウェストインディアンレモングラス(Cymbopogon citratus)等のオガルカヤ属(Cymbopogon sp.)植物を各栽培地より入手し、または適宜栽培して、前記植物の植物体、好ましくは葉より、水蒸気蒸留法等により採取した精油をそのまま、またはさらに精製して用いてもよく、ガイア・エヌピー株式会社、株式会社生活の木等より、「レモングラス精油」として市販されている製品を用いてもよい。
本発明の目的には、上記オガルカヤ属(Cymbopogon sp.)植物の精油としては、有機精油を用いることが好ましい。なお、「有機精油」とは、有機栽培したウェストインディアンレモングラス等のオガルカヤ属(Cymbopogon sp.)植物から水蒸気蒸留等によって分離、採取され、化学肥料や農薬の残留成分を含まず、その後の製品加工におけるすべての工程で添加物などを一切含まない精油をいう。
乳鉢、ビーカー等の陶製、磁製、ガラス製、ステンレス製等の容器を15℃〜35℃、好ましくは20℃〜33℃、より好ましくは25℃〜30℃に保温し、所定量のシアバターを入れて、オガルカヤ属(Cymbopogon sp.)植物の精油を少量(たとえば0.025mL)ずつ所定量になるまで滴下しながら混練し、均一に混合した後、箆等を用いて容器に充填する。容器としては、ガラス製、プラスチック製のびんやジャーが挙げられ、褐色ガラスびん等の遮光性容器を用いることが好ましい。
遮光性および防湿性に優れるアルミパウチに所定量のシアバターを入れ、40℃〜80℃、好ましくは50℃〜70℃、より好ましくは55℃〜60℃で湯煎して、シアバターを融解し、常温にて陶製、磁製、ガラス製、ステンレス製等の混合槽に移して放冷する。シアバターが固化しかけて半透明となった状態において、オガルカヤ属(Cymbopogon sp.)植物の精油を攪拌しながら滴下し、均一に混合した後、容器に充填して常温下に静置し、固化させる。容器としては、ガラス製、プラスチック製のびんやジャー、プラスチックチューブ、金属チューブ等が挙げられ、褐色ガラスびん等の遮光性容器を用いることが好ましい。
スティック状の製剤は、上記と同様にシアバターを融解した後、オガルカヤ属(Cymbopogon sp.)植物の精油を添加して均一に混合し、好ましくは脱泡してから型に充填し、室温で固化させ、次いで型から取り出して容器に装填し、フレーミングして製造することができる。または、リップスティック等、スティック状の製剤用容器に直接注入して、室温で固化させることによっても製造することができる。
また、本発明の口腔機能の改善または向上剤をスティック状の剤形とした場合には、特に歯肉や舌背への塗布に適する。
上記矯味剤としては、アスパルテーム、サッカリン等の甘味剤;アジピン酸、カフェイン、ナリンジン、フィチン酸等の苦味剤または酸味剤が挙げられる。
上記着色剤としては、アナトー色素、ウコン色素、β−カロテン、クチナシ黄色素、クロロフィル等の天然色素が挙げられる。
なお、「保健機能食品」は、食品衛生法および健康増進法により創設され運用されている保健機能食品制度によるものであり、「特定保健用食品」および「栄養機能食品」を含む。「特定保健用食品」は、特定の保健の目的が期待できる旨の表示が許可または承認された食品であり、「栄養機能食品」は、内閣総理大臣が定める基準に従い、特定の栄養成分の機能を表示した食品である。また、特別用途食品は、健康増進法の規定により、「特別用途表示」が許可された食品である。
さらに、「健康補助食品」は、公益財団法人日本健康・栄養食品協会の設定する規格基準に従って認定された食品である。
本発明の口腔機能の改善または向上剤を添加し得る既存の飲食品としては、マーガリン、バター、ショートニング等の油脂食品;ヨーグルト、クリーム等の乳化食品;チョコレート等が、好適なものとして挙げられる。
イーストインディアンレモングラス(Cymbopogon flexuosus)精油を0.1重量%含有するシアバターよりなる口腔機能改善剤(油性軟膏剤)を調製した。
すなわち、アルミパウチにシアバター99.9gを量りこみ、60℃で湯煎してシアバターを融解し、次いで15℃〜25℃にて陶製の混合槽に移して放冷した。シアバターが固化しかけて半透明となった状態において、イーストインディアンレモングラス(Cymbopogon flexuosus)精油0.1gを攪拌しながら滴下し、金属製の箆を用いて均一に混合し、ガラス製遮光びんに充填して15℃〜25℃で静置し、固化させた。
なお、イーストインディアンレモングラス(Cymbopogon flexuosus)精油としては、株式会社生活の木より販売されている「生活の木 有機レモングラス」(有機精油)を用いた。また、シアバターとしては、株式会社生活の木より販売されている「生活の木 シアバター(精製)」(精製品)を用いた。
上記実施例1の口腔機能改善剤において、シアバターを白色ワセリンに代替した以外は実施例1と同様に調製し、比較例1の口腔機能改善剤とした。
上記実施例1の口腔機能改善剤において、イーストインディアンレモングラス(Cymbopogon flexuosus)精油を添加しない以外は実施例1と同様に調製し、比較例2の口腔機能改善剤とした。
実施例1および比較例1、2の各口腔機能改善剤について、まず、男性3名、女性3名(35才〜60才、平均年齢=49.0才)を被験者として、予備的な使用試験を行った。該試験は、平成22年6月〜平成22年10月の期間に行った。
その結果、比較例1の口腔機能改善剤については、全被験者が口腔内における操作性の悪さ、口腔粘膜に基剤が残存することによる不快感および悪心を訴え、口腔リハビリテーションにおける使用継続が困難であると判断された。
従って、以下の臨床試験では、実施例1および比較例2の口腔機能改善剤を用いて、口腔リハビリテーションを実施した。
実施例1および比較例2の口腔機能改善剤使用群のそれぞれにつき、臨床試験の実施についての同意を得た患者67名(女性39名、男性28名)を被験者として選択した。各群ともに、被験者の年齢は30才〜98才(平均年齢=79.3才)であり、下記表1に示す症状を主訴とした。なお、被験者のうち、口腔乾燥を呈する3名と、口腔内汚染を呈する3名において、痂皮形成の併発が認められた(従って、総症例数は73例となる)。
本臨床試験は、平成22年12月〜平成24年12月まで、2年にわたって実施した。
上記各群の被験者に、実施例1および比較例2の各口腔機能改善剤を1.5g/回、1日1〜2回(基本的には1日2回とし、被験者の健康状態により1日1回とした)、歯科衛生士または看護師の手の甲の体温で融解し、被験者の口腔粘膜に塗布させ、口腔リハビリテーションを実施した。初診時および試験期間の終了後において、それぞれ主訴とする症状について下記の評価方法により評価した。
口腔内乾燥については、被験者の口腔内の湿潤状況および唾液の分泌状況についての所見により、「重度の乾燥が認められる」(大唾液腺および小唾液腺からの明らかな唾液分泌が認められず、口腔内の乾燥が顕著である)、「中等度の乾燥が認められる」(大唾液腺から分泌された唾液量が少なく、粘稠で気泡を巻き込んでいるため、口腔内の乾燥が明らかに認められる)、「軽度の乾燥が認められる」(大唾液腺からの唾液分泌は認められるが、分泌された唾液が粘稠であるため、口腔内の乾燥がわずかに認められる)、「異常が認められない」(唾液分泌が正常であり、口腔内の乾燥が認められない)の臨床診断基準により評価した。
口腔内汚染については、被験者の口腔内所見により、「口腔内汚染が認められる」、「口腔内汚染が認められない」の臨床診断基準により評価した。
痂皮形成については、被験者の口腔内における痂皮形成に関する所見により、「痂皮形成が認められる」、「痂皮形成が認められない」の臨床診断基準により評価した。
口内炎(口腔領域のいずれかにおいて炎症性病像を有するもので、細菌感染またはウイルス感染によるもの、あるいはアフタ性口内炎)を伴う口腔内疼痛については、被験者より聞き取りによって、「疼痛がある」、「疼痛がない」の臨床診断基準により評価した。
被験者の口臭の程度については、歯科衛生士または看護師の嗅覚により、「重度の口臭が認められる」(口臭が強く、不快感を感じる)、「軽度の口臭が認められる」(口臭が認識できるが許容できる範囲内である)、「口臭が認められない」の臨床診断基準により評価した。
味覚異常については、被験者より聞き取りによって、「すべての味を感じない」、「特定の味を感じない」、「味覚はあるが感じにくい」、「味覚に異常がない」の臨床診断基準により評価した。
嚥下障害については、被験者より聞き取りによって、「嚥下することができない」、「嚥下することが困難である」、「嚥下することに異常はない」の臨床診断基準により評価した。
臨床試験の結果を、各評価を得た症例数にて表2に示す。
表2に示されるように、実施例1の口腔機能改善剤については、上記口腔リハビテーションの実施により症状の改善が認められない症例はみられなかった。また、全症例中の58.9%にあたる43例において、口腔内乾燥、口腔内汚染、痂皮形成、口腔内疼痛、口臭、味覚異常および嚥下障害のそれぞれの症状が改善されており、41.1%にあたる30例において、介入時からの状態および機能が維持されていることが認められた。
なお、「改善が認められない」と評価された症例、すなわち、器質的障害、機能的障害等により、介入時において悪化していた症状または低下していた機能に変化の見られなかった症例は皆無であった。
上記の結果より、本発明の実施例1の口腔機能改善剤を用いて口腔リハビリテーションを行うことにより、口腔機能が改善され、または維持されることが示された。
なお、口腔内乾燥等において認められた改善または状態および機能の維持は、シアバターの有する保湿性に起因するものであると推察される。
実施例1および比較例2の各口腔機能改善剤を用いて、以下の通り臨床試験を行った。
摂食・嚥下機能障害を有する66才〜91才(平均年齢=80.4才)の被験者58名(女性26名、男性32名)を選択した。なお、被験者全員より、臨床試験についての同意を得た。
本臨床試験は、平成24年10月〜平成24年11月に実施した。
上記の各被験者に対し、実施例1および比較例2の各口腔機能改善剤1.5gを、それぞれ歯科衛生士または看護師の手の甲の体温で融解し、被験者の口腔内に塗布して口腔リハビリテーションを実施した。口腔機能改善剤を塗布する前および口腔リハビリテーションを実施した後の舌背または唾液中における細菌数を、下記の方法により測定した。
すなわち、実施例1および比較例2の各口腔機能改善剤を塗布する前および口腔リハビリテーション実施後に、それぞれ被験者の舌背(22例)または唾液(36例)から試料を採取した。舌背からは、本機器に付属の定圧検体採取器具を用いて一定の加重(20g)下に滅菌綿棒にて試料採取を行い、唾液については、舌下の唾液を滅菌綿棒で採取した。試料を採取した前記綿棒を上記細菌数測定装置に設置して、各試料中の細菌数を測定した。その結果について、実施例1および比較例2の各口腔機能改善剤を用いて口腔リハビリテーションを実施することにより、被験者の舌背または唾液における細菌数に変化がみられるかどうかを検討した。
被験者の舌背または唾液における細菌数の変化について、表3に示す。
表3に示されるように、実施例1の口腔機能改善剤を使用して口腔リハビリテーションを行うことにより、舌背における細菌数については22例中17例(77.3%)において減少が認められ、唾液中における細菌数については36例中27例(75.0%)において減少が認められた。すなわち、本発明の口腔機能改善剤を用いることにより、摂食・嚥下機能に障害の見られる患者の口腔内環境が改善されることが示唆された。
また、本発明によれば、上記本発明の口腔機能の改善または向上剤を含有し、口腔粘膜への付着性が良好で、口腔粘膜に対する浸透性が高く、口腔機能の改善、向上効果に優れ、口腔リハビリテーションに適する口腔用の医薬品、医薬部外品および化粧品、ならびに口腔機能の改善または向上用飲食品を提供することができる。
Claims (12)
- オガルカヤ属(Cymbopogon sp.)植物の精油を含有するシアバターよりなる、口腔機能の改善または向上剤。
- オガルカヤ属(Cymbopogon sp.)植物の精油の含有量が0.00001重量%〜10重量%である、請求項1に記載の口腔機能の改善または向上剤。
- オガルカヤ属(Cymbopogon sp.)植物が、ウェストインディアンレモングラス(Cymbopogon citratus)またはイーストインディアンレモングラス(Cymbopogon flexuosus)である、請求項1または2に記載の口腔機能の改善または向上剤。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の口腔機能の改善または向上剤を含有する、口腔用医薬品。
- 口腔機能の改善または向上剤を0.1重量%〜100重量%含有する、請求項4に記載の口腔用医薬品。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の口腔機能の改善または向上剤を含有する、口腔用医薬部外品。
- 口腔機能の改善または向上剤を0.1重量%〜100重量%含有する、請求項6に記載の口腔用医薬部外品。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の口腔機能の改善または向上剤を含有する、口腔用化粧品。
- 口腔機能の改善または向上剤を0.1重量%〜100重量%含有する、請求項8に記載の口腔用化粧品。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の口腔機能の改善または向上剤を含有する、飲食品。
- 口腔機能の改善または向上剤を0.1重量%〜100重量%含有する、請求項10に記載の飲食品。
- 保健機能食品、特別用途食品または健康補助食品である、請求項10または11に記載の飲食品。
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