JP6065168B1 - チタン薄板およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

質量%で、Cu:0.1〜1.0%、Ni:0.01〜0.20%、Fe:0.01〜0.10%、O:0.01〜0.10%、Cr:0〜0.20%、残部:Tiおよび不可避的不純物であり、0.04≦0.3Cu+Ni≦0.44%を満足する化学組成を有し、α相の平均結晶粒径が15μm以上であり、Cuおよび/またはNiとTiとの金属間化合物が2.0体積%以下である、チタン薄板。このチタン薄板は、優れた加工性と高い強度を備える。

Description

本発明は、チタン薄板およびその製造方法に関する。
純チタン薄板は、熱交換器、溶接管、マフラーなどの二輪排気系など様々な製品の素材として用いられている。近年、これらの製品の薄肉化・軽量化を図るためにチタン薄板の高強度化のニーズが高まっている。また、高強度でありながら従来どおりの加工性を維持することも望まれている。中でも、プレート式熱交換器(以下、「板熱交換器」という。)は、複雑な形状にプレス成型されるため、その素材には、純チタンの中でも加工性に優れたものが使用されている。
板熱交換器に求められる熱交換効率の向上には薄肉化が必要となる。薄肉化を行った場合、加工性低下、耐圧性能低下が生じることから、十分な加工性の確保と強度の向上が必要となる。そこで、通常の純チタンよりも優れた強度−加工性バランスを得るために、O量、Fe量等の最適化や、粒径制御に関する検討がなされている。
たとえば、特許文献1には、平均結晶粒径が30μm以上を有する純チタン板が開示されている。しかし、純チタンでは強度が劣る。
そこで、特許文献2には、O含有量とβ安定元素としてFeを含有し、α相の平均結晶粒径が10μm以下のチタン合金板が開示されている。特許文献3には、Fe、O量を低減するとともにCuを含有し、TiCu相を析出させてピニング効果により結晶粒径の成長を抑制し、平均結晶粒径が12μm以下のチタン合金薄板が開示されている。特許文献4には、Cuを含有するとともにO含有量を低減するチタン合金が開示されている。
これらの文献によれば、チタンが合金元素を多く含有すると、結晶粒が微細になり高強度になりやすいことを利用し、さらには、O含有量やFe含有量の低減によって加工性の確保を図っている。しかし、これらの文献に開示されている技術では、近年のニーズに対応可能な程度に、十分な加工性を維持しつつ高強度を示すことができていない。
一方、これらの文献とは対照的に、合金元素を含有するとともに結晶粒の粗粒化を図る技術が検討されている。
例えば特許文献5には、CuおよびNiを含有する化学組成を有し、600〜850℃の温度域で焼鈍を行うことにより結晶粒径を5〜50μmに調整する電解銅箔製造用カソード電極に用いるチタン合金およびその製造方法が開示されている。特許文献6には、Cu、Cr、少量のFe、Oを含有する化学組成を有する電解Cu箔製造ドラム用チタン板およびその製造方法が開示されている。この文献には630〜870℃で焼鈍を行った例が記載されている。
また、特許文献7および8には、SiおよびAlを含有する化学組成を有し、冷間圧延の圧下率を20%以下に小さくするとともに焼鈍温度を825℃以上かつβ変態点以下の条件に高温化することによって、平均結晶粒径を15μm以上にする技術が開示されている。
特許第4088183号公報 特開2010−031314号公報 特開2010−202952号公報 特許第4486530号公報 特許第4061211号公報 特許第4094395号公報 特許第4157891号公報 特許第4157893号公報
特許文献2〜4に開示されている技術のように、合金元素を含有して結晶粒を微細にすることでは、優れた加工性および高強度化の両立が十分であるとは言い難い。また、特許文献5〜8に開示されている技術のように、結晶粒を粗大にするような製造方法において、汎用性が高くコストの増加を抑えるような技術は報告されていない。
特に、特許文献5および6で開示された製造方法は、バッチ式であり1時間以上の長時間を要しており、薄板のコイル生産においては生産性が問題となる。加えて、両技術ともFe含有量が低く制御されている。リサイクルによりスクラップを原料に用いてチタン板を製造する場合には、スクラップ中のFeによりFe含有量が多くなるため、Fe含有量を低く制御したチタン板を製造することが困難である。したがって、リサイクルにより特許文献5や特許文献6に記載のチタン板を製造するためには、Fe含有量が低いスクラップを用いるなどの制約が必要となる。
また、板熱交換器などに用いられるチタン材のような加工性に優れる材質の薄板を製造する場合、熱延板から1回の冷間圧延および焼鈍で製品を製造することが可能であり、特許文献7および8に開示されるような粗粒化処理は冷間圧延と焼鈍の回数を増加させるため、コスト増加の問題がある。
本発明は、特に延性と強度とのバランスに優れるチタン薄板と、生産性に優れる高強度チタン薄板の製造方法を提供することを課題とする。
特許文献2〜4によれば、チタン材料の高強度化においては、結晶粒微細化、合金元素の添加などが有効である。そこで、本発明者らは、上記課題を解決するため、合金元素の添加と結晶粒の制御を行い、強度の向上と双晶変形に対する影響を検討した。その結果、以下の知見を得た。
(1)純チタンに対して、合金含有量および結晶粒径を制御した結果、結晶粒を微細化するよりも、むしろ、合金元素を添加して結晶粒を粗粒化する方が、強度と延性バランスはより改善される知見を得た。
(2)また、CuおよびNiはその他の合金元素よりも焼鈍時の結晶粒の成長が抑制されにくく、粗粒化に適した合金元素である知見を得た。粒成長が抑制され難いのは焼鈍時に組織がほぼα単相となるためである。ただ、これらの元素の過剰添加はTiとの金属間化合物とβ相の一方または両方を生成させるため、粒成長が阻害され、双晶変形を抑制してしまう。ここで、一般に、固溶強化は元素の個数比(at%)の平方根に比例する。このため、これらの元素が過剰添加されても効率的な強化は見込めず、TiCuなどの金属間化合物が析出しやすくなり、期待するほどの強化量が得られない場合もある。したがって、優れた加工性および強度を両立するためには、これらの元素の合計含有量を調整する必要がある。
(3)さらに、同じ組成、粒径であっても焼鈍を低温で行った場合に双晶変形の発生が抑制される傾向があった。すなわち、CuおよびNiをα相への固溶範囲で含有し、これらが十分に固溶できる温度で結晶粒径を粗大化することで双晶変形が促進され、優れた加工性と高い強度を備えるチタン薄板を得ることができる。
(4)また、上記(3)に加えて、焼鈍温度が低温すぎるとTiCuやTiNiが生成してしまい、これらがα相の粗粒化を阻害する。そこで、これらの化合物が生成されないような条件を詳細に検討した結果、Ti−Cu−Ni系チタン合金において、偶然にも、CuおよびNiの含有量と焼鈍温度の下限値との間に密接な関係が存在し、これらの元素の含有量に応じて焼鈍温度の最適な下限値が存在する知見が得られた。
(5)上記のような仕上げ焼鈍の温度範囲とすることによって、短時間で所定の粒径が得られるために生産性が向上する。
ここに、本発明は次の通りである。
[A]質量%で、
Cu:0.1〜1.0%、
Ni:0.01〜0.20%、
Fe:0.01〜0.10%、
O:0.01〜0.10%、
Cr:0〜0.20%、
残部:Tiおよび不可避的不純物であり、
0.04≦0.3Cu+Ni≦0.44%を満足する化学組成を有し、
α相の平均結晶粒径が15μm以上であり、
Cuおよび/またはNiとTiとの金属間化合物が2.0体積%以下である、
チタン薄板。
[B]伸び[%]が42%以上で、かつ下記(1)式を満たす、上記[A]のチタン薄板。
(伸び)[%]≧−0.12×(0.2%耐力)[MPa]+73・・・(1)
[C]前記化学組成が、質量%で、Cr:0.01〜0.20%を含有する、上記[A]または[B]のチタン薄板。
[D]チタン材に熱間加工、酸洗、冷間加工、および、仕上げ焼鈍を行うチタン薄板の製造方法であって、
前記仕上げ焼鈍を、前記化学組成が、0.1%≦Cu≦0.8%のとき、または、0.8%<Cu≦1.0%かつ0.01≦Ni≦0.09%のときには下記(2)式を満たす温度T(℃)で行い、下記(2)式の左辺値以下400℃以上の温度域における滞留時間が60秒以下となるように冷却し、
0.8%<Cu≦1.0%かつ0.09%<Ni≦0.20のときは下記(3)式を満たす温度T(℃)で行い、下記(3)式の左辺値以下400℃以上の温度域における滞留時間が60秒以下となるように冷却する、
上記[A]〜[C]のいずれかのチタン薄板の製造方法。
210[Ni%]+665≦T≦890−340[Ni%]−15[Cu%]−800[Fe%]−200[Cr%]・・・(2)
−0.0037[Ni%]−4+735≦T≦890−340[Ni%]−15[Cu%]−800[Fe%]−200[Cr%]・・・(3)
ただし、(2)式および(3)式中、[Ni%]、[Cu%]、[Fe%]および[Cr%]は、各々チタン板中のNi、Cu、FeおよびCrの含有量(質量%)を表す。
本発明により、優れた加工性と高い強度を備えるチタン薄板と、生産性に優れたチタン薄板の製造方法を提供することができる。
図1は、種々の合金元素を添加したチタン薄板における、0.2%耐力と伸びの関係を示す図である。 図2は、Ti−Cu−Ni系合金について、Thermo−calc.(Thermotech Ti−based Alloys Database version3.0)で計算した600℃〜800℃での相率を示す図であり、図2(a)はCuの含有量を変化させた場合のTiCuおよびTiNiの相率を示す図であり、図2(b)はNi含有量を変化させた場合のTiCuの相率を示す図である。 図3は、Ti−Cu−Ni系合金における、Cu,Ni含有量と(焼鈍上限温度T)−(析出開始温度T)の関係を示す図である。 図4は、本実施例、本比較例、特許文献3および特許文献4に開示されている結果について、0.2%耐力と伸びとの関係を示す図である。 図5は、Ti−Ni−Cu系チタン合金のCu含有量を変更した場合におけるNi含有量と析出温度との関係を示す図である。
本発明を詳述する。なお、以下では、「質量%」を単に「%」と記載する。
1.チタン薄板
(1)本発明の化学組成が得られるまでの経緯
本発明者らは、表1、表2における化学組成のチタン材を用いて検討を行った。
まず、Ti合金に添加する構成元素を調査した。試験材をアーク溶解にて作製し、1000℃および800℃でそれぞれ50%以上の圧下率により熱間圧延を行い、スケール除去を行った後、圧下率が70%の冷間圧延を行い、1mmのチタン薄板を作製した。この時の熱延板から成分分析用のサンプルを採取し、化学組成を分析した。
Figure 0006065168
これらの1mmのチタン薄板に対して750℃で1〜30分の熱処理を行い、空冷し、平均結晶粒径が10〜60μmのチタン薄板を作製した。これらをASTMハーフサイズ試験片に加工し、圧延方向に平行な方向(L方向)の室温での引張試験を行った。引張試験は、ひずみ速度が0.2%耐力までを0.5%/min、その後、破断するまでは20%/minの条件で行った。結果を図1に示す。なお、この条件による各組成での平均結晶粒径は、純チタンでは5〜70μm、0.3Cuでは8〜40μm、0.5Cuでは7〜43μm、0.07Crでは10〜56μm、0.15Crでは36〜52μm、0.13Niでは13〜50μmであった。
図1に示すように、実線により示される純チタンの微細化よりも、合金元素を添加し粗粒化した方が実線よりも右上側にシフトしているため、強度−延性バランスに優れることがわかった。
次に、各β安定化元素をTi合金に添加し、粒径と焼鈍温度との関係を調査した。表2に示す化学組成の試験片を、表1の化学組成の試験片と同様の方法で1mmのチタン薄板を作製した。
Figure 0006065168
これらの1mmのチタン薄板を、750℃で30分の熱処理を行い、空冷し、平均結晶粒径を後述の方法で測定した。表2の化学組成は、2元系平衡状態図において、α単相が得られるような含有量とした。
表2に示すように、種々のβ安定化元素の中でも、CuおよびNi添加チタン合金では純チタンに近い粒径を得ることが可能であることがわかった。一方、Mo、CoおよびV添加チタン合金の場合に粒径が小さくなった。これは第二相が析出しやすくなり、粒成長が抑制されているためと考えられる。したがって、粗大な結晶粒を得られやすい合金元素はCuおよびNiであり、次いでCrであることがわかった。しかし、過剰添加は粒成長を阻害することになるため、粒成長が阻害されないようにCuおよびNiを固溶範囲で含有し、かつ、粗粒化することで、強度−延性に優れたチタン薄板を提供することができる。
このようにして決定された本発明の化学組成は以下の通りである。
(2)化学組成
・Cu:0.1〜1.0%
Cuはα相中への固溶限が最大で約2%と広いが、過剰添加では単相組織であっても粒成長が著しく抑制される。また、著しい偏析を生じる可能性が高くなるため、上限値を1.0%とする。好ましくは0.95%以下、より好ましくは0.92%以下、さらに好ましくは0.90%以下、特に好ましくは0.87%以下、最も好ましくは0.85%以下である。一方、含有量が少ないと高強度化の効果が小さい。下限値を0.10%とする。好ましくは0.20%以上、より好ましくは0.25%以上、さらに好ましくは0.30以上、特に好ましくは0.50%以上である。
・Ni:0.01〜0.20%
Niは粒成長を促進する効果がある。しかし、α相中への固溶限が小さいため、過剰添加ではCuと同様に粒成長を阻害する。上限値を0.20%とする。好ましくは0.18%以下、より好ましくは0.15%以下、さらに好ましくは0.12%以下である。一方、粒成長の促進、高強度化の効果を発揮するため、下限値を0.01%とする。好ましくは0.03%以上、より好ましくは0.05%以上である。
・0.3Cu+Ni:0.04〜0.44
図2のようにNiおよびCuの含有量の増加によってTiCuなどの析出開始温度が高温化しており、これらの過剰添加は結晶粒成長の阻害だけでなく、析出による固溶量の低下から、期待される強化量が得られなくなる。また、一般に、固溶強化は元素の個数比(at%)の平方根に比例するため、強化量よりも結晶粒成長を阻害するリスクの方が高くなる。このような理由から、CuとNiの含有量の総和を制限する必要がある。
偏析の影響や焼鈍温度のばらつきなどを考慮すると、CuやNiを十分に固溶させるためにはTiCuとTiNiの析出量の総和が2.0%以下となる温度T(析出開始温度)と後述する焼鈍上限温度Tに十分な差があることが望ましい。図3は、Ti−Cu−Ni系合金における、CuおよびNiの含有量と(焼鈍上限温度T)−(析出開始温度T)の関係を示す図である。図3で検討した化学組成は、Fe:0.05mass%、O:0.05mass%、CuおよびNi:図3に記載の含有量、残部Tiである。図3に示すように、50℃≦T−Tを満足するCuとNiの含有量の合計が(6)式を満たす必要がある。
0.04%≦0.3[Cu%]+[Ni%]≦0.44%・・・・(6)
(6)式中、[Cu%]、[Ni%]はそれぞれ、チタン板中のCu、Niの含有量(質量%)を表わす。
上限値は、好ましくは0.42%であり、より好ましくは0.40%であり、さらに好ましくは0.38%である。CuおよびNiはいずれも固溶強化によりチタン材を強化する。下限値は好ましくは0.08%であり、より好ましくは0.10%であり、さらに好ましくは0.15%であり、特に好ましくは0.20%である。
・Fe:0.01〜0.10%
Feは過剰添加によりβ相を安定化させるとともに焼鈍時の粒成長の妨げになる。上限値を0.10%以下とする。好ましくは0.08%以下、より好ましくは0.07%以下、さらに好ましくは0.06%以下である。ただし、工業的には不可避的に含有されるため、下限値を0.01%とする。
・O:0.01〜0.10%
Oは過剰添加により双晶変形の発現が抑制される。上限値を0.10%とする。好ましくは0.09%以下であり、より好ましくは0.08%以下であり、さらに好ましくは0.075%以下であり、特に好ましくは0.07%以下である。ただし、工業的には不可避的に含有されるため、下限値を0.01%とする。ただし、少なすぎると強度が低下するため、好ましくは0.03%以上であり、より好ましくは0.04%以上であり、さらに好ましくは0.05%である。
・Cr:0〜0.20%
Crは、比較的粒成長を妨げないので、0.20%を上限として含有させてもよい。粒成長を妨げないようにするため、Crの含有量は0.01以上とすることが好ましい。
・残部:Tiおよび不可避的不純物
上記以外の残部はTiおよび不可避的不純物である。チタン薄板の製造では、リサイクル推進の観点から、スクラップ原料を使用することがある。このため、チタン薄板には、種々の不純物元素が混入する。このため、不純物元素の含有量を一義的に定めることは困難である。したがって、本発明における不純物とは、本発明の作用効果を阻害しない量で含有される元素を意味する。このような不可避的不純物としては、たとえばN:0.03%以下、C:0.03%以下が挙げられる。
(3)双晶発生頻度
純チタンもしくはチタン低合金において、加工硬化率を高くすることが加工性の向上に有効である。チタン材の加工硬化率の向上には双晶変形の活性化が重要となる。双晶変形によって導入される双晶境界は結晶粒界と同様に転位運動の障害となるためである。このような理由から、加工性改善には双晶変形の活性化、つまりは結晶粒の粗大化が重要である。しかし、双晶変形は結晶粒径以外にも、化学組成などその他の影響因子が存在するため、双晶変形の活性化の程度を評価する方が望ましい。そこで、双晶変形の活性化度を表わす指標として、双晶発生頻度を定義する。双晶発生頻度は「圧延方向に平行な方向に5%の引張変形(弾性変形+塑性変形)を加えた後に除荷し、圧延方向と垂直な方向の断面で観察される組織に存在する結晶粒1個あたりの変形双晶数(本数)の平均」である。
双晶発生頻度は、O,Alなどの一般的に用いられる強化元素に比べて、Cu,Cr,Niによる抑制の度合いは小さい。すなわち、Cu,Cr,Niの添加はチタンを強化しつつ加工性を維持するために適する。
(4)α相の平均結晶粒径が15μm以上
α相の平均結晶粒径が小さいと、双晶変形が抑制されるために延性を確保することができない。十分な延性を確保するため、平均結晶粒径は15μm以上とする。好ましくは20μm以上であり、より好ましくは25μm以上であり、さらに好ましくは30μm以上であり、特に好ましくは35μm以上であり、最も好ましくは40μm以上である。特に、酸素濃度が0.01〜0.05%という低濃度の場合には、α相の平均結晶粒径が15〜50μmであることが好ましい。この場合、特に耐力と伸びのバランスに優れる。
平均結晶粒径については、光学顕微鏡で断面を観察し、100個以上の結晶粒が含まれる視野から求積法による正方形近似でもとめる。なお、本発明のチタン薄板の組織はほぼα相単相である。
(5)Cuおよび/またはNiとTiとの金属間化合物が2.0体積%以下
Cuおよび/またはNiとTiとの金属間化合物は、高濃度のCu,Niを含有しており、固溶強化量が減少するため、抑制される必要がある。そのため、Cuおよび/またはNiとTiとの金属間化合物は2.0体積%以下とする。より望ましくは1.5体積%以下であり、さらに望ましくは1.0体積%以下である。最も望ましいのは金属間化合物が存在しない状態(すなわち、0体積%)である。
β相も金属間化合物と同様に存在することで元素分配が生じ、α相中のCu,Ni固溶量が低下する。しかし、金属間化合物と比較して、その減少量は小さく、固溶量の低下よりも粒成長の抑制に寄与する影響が大きい。すなわち、β相は粒成長を妨げない程度であれば存在しても問題ない。粒成長を阻害しないためのβ相率については後述する。
本発明のチタン薄板は、Cu、Ni、Fe、Oの含有量を規定した上で、Tiとの金属間化合物とβ相の一方または両方を生成させるCuおよびNiの合計含有量を規定するとともに、後述する製造条件で製造することによって、α相の平均結晶粒径を15μm以上とし、金属間化合物を抑制した組織を有する。一般に、0.2%耐力と伸びとはトレードオフの関係にあるため、0.2%耐力が高い場合には加工性が低下する。しかし、本発明では、前述の化学組成、結晶粒径、後述する製造条件のすべての条件が満たされることによって、従来ではなし得なかったこのトレードオフの関係を克服することができる。
(6)機械特性
本発明のチタン板は、伸びが42.0%以上の範囲において、下記(1)式を満たす機械特性を有する。
(伸び)[%]≧−0.12×(0.2%耐力)[MPa]+73・・・(1)
本発明では、特にプレート式熱交換器で用いるチタン板の薄肉化・軽量化を図るために、高強度でありながら複雑形状のプレス成形ができるように優れた加工性を維持することが望まれている。一般に、0.2%耐力と伸びとはトレードオフの関係にある。しかし、本発明では、前述のように、特定の化学組成、結晶粒径を有することにより、使用時には塑性変形が起きにくく、成形時には優れた加工性を示すことができる。本発明では、更に、0.2%耐力が190MPa以上の範囲に入ることが好ましい。これにより、本発明のチタン薄板は両者のバランスが取れた優れた機械特性を有する。
例えば、純チタンを結晶粒の微細化により強化すると、0.2%耐力の増加に伴って急激に伸びが低下する領域がある。これが前述の「トレードオフの関係」を示す領域であり、後述する図5の本比較例、特許文献3および特許文献4で表される領域である。また、0.2%耐力に対して急激に伸びが低下する領域では、伸びと0.2%耐力の関係は線形近似が可能である。そこで、本発明では、図4に記載のように、従来では伸びが急激に低下する領域において、優れた0.2%耐力および伸びを両立する領域として、伸びが42%以上であるとともに本発明の(1)式で表される領域を規定したのである。
(7)チタン薄板の板厚
本発明では特に板熱交換器のような用途に利用する。本発明において、「薄板」とは、0.3〜1.5mm程度の板厚であればよい。
2.製造方法
(1)熱間圧延、焼鈍、冷間圧延
本発明における熱間圧延に供する母材は真空アーク溶解(VAR)もしくは電子ビーム溶解(EBR)にて製造する。得られた鋳塊は必要であれば表面の切削などを行い、800〜1100℃程度に加熱して熱間加工を行う。熱間加工は熱間鍛造、熱間圧延(分塊圧延も含む)をさす。必要に応じて表面切削などを行い、800〜1100℃程度の温度範囲に加熱し、圧下率50%以上の熱間圧延を行い、熱延板を製造する。その後、熱延板を600〜850℃の範囲で焼鈍し、従来と同様の酸洗処理を行い、スケールを除去し、圧延率が50〜95%の冷間加工を行い0.3〜1.5mmの冷延板を製造する。
(2)焼鈍
前述のように製造した冷延板に仕上げ焼鈍を行う。従来では、バッチ式と連続式のいずれかで焼鈍が行われており、バッチ式ではコイルとして巻き取った状態で焼鈍するため、接合する可能性がある。そのため、バッチ式では連続式よりも低温で行う必要があるがチタン板同士の接合を回避するために750℃未満で行う必要がある。そのため、焼鈍温度が750℃未満であれば、連続式での焼鈍でなくてもよい。連続式では焼鈍時間が短くなるため、焼鈍温度を高くし、粒成長を促進する必要がある。ここで、本発明者らは、焼鈍温度を以下のように決定した。
表3に、Cuおよび/またはNiを含有する化学組成のチタン板について、連続式焼鈍炉を用いて700〜800℃の温度域で30分保持した場合の平均結晶粒径を示す。
Figure 0006065168
表3に示すように、焼鈍を高温で行うほど粗粒化するとは限らない。化学組成によって焼鈍に最適な温度が存在する。特に、FeやNiの含有量が多い場合にこのような現象が起こりやすい。800℃で熱処理を行った場合でも15μm以上の粒径が得られない場合がある。したがって、化学組成に応じた焼鈍温度を決定する必要がある。
本発明者らは、種々の温度で焼鈍した結果、Thermo−calc.(Thermotech Ti−based Alloys Database version3.0)から得られる平衡状態図において、β相が1〜2%存在する温度でピン止めにより粒成長が阻害されていることを見出した。そして、種々の化学組成でβ相が1〜2%になる温度を求め、化学組成と温度との関係を重回帰分析により求めた。重回帰分析によって得られた係数は、Fe、Ni、Cu、Crの順に、各々、−1300〜−350、−500〜−200、−20〜+5、−300〜−100であった。そして、本発明者らは、この範囲において、実験結果を再現できる係数を見出し、化学組成に応じた焼鈍温度を決定することができた。
このように、本発明では、仕上げ焼鈍温度の上限値を化学組成に応じて決定することによって、優れた生産性を確保することもできる。表3では前述のように各温度で30分間の処理を行ったが、表3に記載の粒径になるまでに要する時間が大幅に異なる。例えば、表3最下段に示すTi−0.78Cu−0.15Niでは、800℃で15μmにするには40分を要するが、750℃であれば、低温にもかかわらず約1minで同じ粒径が得られる。生産性は40min/1min=40倍となり、飛躍的に向上する。
このように、出願時の技術常識では粒成長を促進するために焼鈍温度を高温に設定してしまうが、化学組成によってはむしろ低温で処理を行う方が粒成長を促進する場合がある。本発明は、組織を粗粒化するために、従来とは正反対の検討を行うことによって完成されたのである。
さらに、本発明では、仕上げ焼鈍温度の上限値に加えて、粗粒化のために下限値をも化学組成に応じて適正化している。仕上げ焼鈍において上限温度だけでなく下限温度を設定することは優れた製品を安定的に生産する上で重要である。従来では、結晶粒を粗大化させたい場合にはなるべく高温にすることで対処されてきた。しかし、単に処理温度を上げてしまうと、前述のようにβ相によって粗大化が妨げられる。また、低温ではそもそも粒成長が抑制されており、金属間化合物などが析出すれば一層のこと粒成長が抑制される。しかし、金属間化合物によって粒成長が阻害されなければ、バッチ式のように低温であっても長時間の焼鈍で粗大な結晶粒を得ることができる。そのため、金属間化合物が粒成長に影響しない温度を下限温度にする必要がある。
そこで、これらの化合物の析出温度を詳細に検討した結果、化学組成に応じて適切な下限値を設けることによって、これらの化合物の析出を抑制することができる知見が得られた。
図5は、Ti−Ni−Cu系チタン合金のCu含有量を変更した場合におけるNi含有量と析出温度との関係を示す図である。この析出温度とは、TiCuまたはTiNiの析出温度を表す。図5に示すように、Ni含有量を増加していくと、Ni含有量が0.09%程度までは直線的に析出温度が高くなるが、Ni含有量が0.09%程度を分岐点として、析出温度の増加傾向が大きく異なることがわかる。これは、β相は700℃前後から高温になるに従って増加していくため、β安定化元素であるCuおよびNiはβ相中へ固溶する。その結果、α相中もしくはβ相中に析出していたTiCuやTiNiは減少する。また、β相は急激に増加する温度域があり、その温度近傍でTiCuやTiNiは急激に減少する。加えて、Niの方がβ相への固溶する優先度が高く、先にTiNiが減少していく。このような熱力学的な理由から、本発明のNiの添加範囲においては、Cuが0.8%までであれば析出温度がNi量に対して、線形近似可能であり、Cu量が多くなると、線形近似ができなくなったと推察される。
このような焼鈍温度の範囲は、高温短時間の焼鈍が行われる連続式焼鈍では、Crを含有しない場合、(A)式および(B)式を満たす必要がある。
Cu≦0.8%のとき、もしくは0.8%<Cu≦1%かつNi≦0.09%のとき、
210[Ni%]+665<T≦890−340[Ni%]−15[Cu%]−800[Fe%]・・・(A)
0.8%<Cu≦1%かつ0.09%<Niのとき、
−0.0037[Ni%]−4+735<T≦890−340[Ni%]−15[Cu%]−800[Fe%]・・・(B)
(A)式および(B)式中、[Ni%]、[Cu%]および[Fe%]は、各々チタン板中のNi、CuおよびFeの含有量(質量%)を表す。
また、表1や表2の結果から、比較的粒成長を妨げないCrを含有する場合には、(C)式および(D)式を満たす必要がある。
Cu≦0.8%のとき、もしくは0.8%<Cu≦1%かつNi≦0.09%のとき、
210[Ni%]+665≦T≦890−340[Ni%]−15[Cu%]−800[Fe%]−200[Cr%]・・・(C)
0.8%<Cu≦1%かつ0.09%<Niのとき、
−0.0037[Ni%]−4+735≦T≦890−340[Ni%]−15[Cu%]−800[Fe%]−200[Cr%]・・・(D)
(C)式および(D)式中、[Ni%]、[Cu%]、[Fe%]および[Cr%]は、各々チタン板中のNi、Cu、FeおよびCrの含有量(質量%)を表す。
焼鈍温度を上記各式の左辺以上としているのは、焼鈍温度を各式の左辺未満にすると、前述のようにTiCuなどを析出させることでCu添加による強化量の低下を招くばかりでなく、延性も低下し、合金元素を含有する材料の連続式焼鈍において低温にすることは未再結晶組織の残存による加工性の低下や焼鈍時間の長時間化をも招くためである。
一方、バッチ式では、TiCuなどを析出させることでCu添加による強化量の低下を防ぐためであり、750℃未満の範囲であれば上記(A)〜(D)式を満たすことによって焼鈍可能である。
焼鈍時間は特に限定されず、所定の粒径となるように決定するが、再結晶させること、生産性の点から連続式では0.5〜30分程度、バッチ式では1〜24h程度である。
また、焼鈍雰囲気は、バッチ式ではチタンの酸化を抑制する観点から、真空中、もしくは不活性ガス雰囲気で行えばよい。連続式では、大気(必要に応じて焼鈍後に酸洗を実施)、もしくは不活性ガス雰囲気で行う。
上述の温度範囲、時間、雰囲気を満たすことで平均結晶粒径15μm以上を効率的に得ることができる。しかし、焼鈍で平均結晶粒径15μm以上を得ることができても、冷却速度が遅い場合には冷却中に金属間化合物が析出する。金属間化合物の析出は、熱力学的に安定であり、原子拡散可能な温度で生じる。金属間化合物が析出する温度範囲は、400℃以上、前述の焼鈍下限温度((A)〜(D)式の左辺)以下である。すなわち、この温度範囲での冷却速度が重要となる。
なお、実施例の本発明例9に記載の化学組成を有する板厚1mmのチタン薄板を大気中で放冷した場合、400℃〜焼鈍下限温度の範囲では4〜15℃/sで冷却されており、約60秒を要した。この時の組織には、金属間化合物が約2.2体積%存在したため、少なくとも60秒以下で冷却する必要がある。55秒で冷却した場合には金属間化合物が1.9体積%であったため、55秒以下であればよく、化学組成に応じた温度範囲で焼鈍するだけでなく、所定の冷却速度で冷却することで、ようやく本発明のチタン薄板を製造することができたのである。
表4に示す化学組成の母材をアーク溶解にて作製し、1000℃および800℃でそれぞれ50%の熱間加工を行い、スケール除去した後、70%の冷間加工を加えて、1mmのチタン薄板を作製した。
これらを、真空雰囲気で表4に示すような種々の温度に設定した焼鈍炉に投入し、連続式焼鈍に相当する焼鈍では赤外線加熱炉を用いて、均熱時間が1〜30分(設定温度±5℃に保持された時間)の焼鈍を行い、バッチ式焼鈍に相当する焼鈍では真空炉を用いて、均熱時間が1〜10hr.(設定温度±5℃に保持された時間)で焼鈍を行った。
冷却は、連続式焼鈍相当ではArガスを用いたガス冷却、バッチ式焼鈍相当ではArガス冷却もしくは炉冷を行った。この薄板から採取したASTMハーフサイズ試験片を用いて、室温で引張試験を行い、強度を0.2%耐力、加工性を伸びで評価した。引張試験は、ひずみ速度が0.2%耐力までを0.5%/min、その後、破断するまでは20%/minの条件で行った。また、平均結晶粒径については、光学顕微鏡で圧延方向に平行な断面を観察し、100個以上の結晶粒が含まれる視野から求積法による正方形近似で、視野中の結晶粒のすべてについて平均結晶粒径を求めた。結果を表4に示す。
Figure 0006065168
本発明の要件をすべて満たす本発明1〜12では0.2%耐力および伸びがいずれも良好な値を示した。また、いずれも平均結晶粒径が15μm以上であり、金属間化合物も2%以下であった。
一方、比較例1は純チタンであり、0.2%耐力が低い。比較例2および3は焼鈍温度が低く微細なため、伸びが低い。比較例4および5は焼鈍温度が(A)(B)式を満たしているもののCuの含有量が多いため、結晶粒が微細であり伸びが低い。比較例6はOの含有量が多く伸びが低い。比較例7はNiが上限値を超えており、なおかつ(B)式を満たさないため、結晶粒が微細であり伸びが低い。
比較例8は(B)式の左辺を下回る温度で焼鈍されており、同じ組成で750℃で焼鈍した本発明9よりも0.2%耐力、伸びが低い。比較例9は400℃〜焼鈍下限温度での保持時間が長いため、金属間化合物の析出量が多くなり、0.2%耐力と伸びのバランスが劣る。また、比較例10は酸素が高いため、伸びが低くなっているとともに、Niが添加されていない。Niを添加した実施例9と比較すると、結晶粒径はほぼ同じであるが、同じ焼鈍温度750℃で焼鈍しても、要した時間が本発明9は1minであり、比較例10は3minであった。Niの有無によって要する時間は3倍違い、生産性に大きく影響する。
比較例11、12はCuが添加されていない。そのため、Niのみでは0.2%耐力が不十分であり、優れた伸びと0.2%耐力のバランスが得られない。
本発明が伸びと0.2%耐力とのバランスに優れていることを図4を用いて説明する。図4は、本発明、本比較例、特許文献3および特許文献4に開示されている結果について、横軸を0.2%耐力、縦軸を伸びとしてプロットした図である。図4に示すように、本発明では、いずれも伸びが42%以上、0.2%耐力が190MPa以上、かつ(1)式を満たす。

Claims (4)

  1. 質量%で、
    Cu:0.1〜1.0%、
    Ni:0.01〜0.20%、
    Fe:0.01〜0.10%、
    O:0.01〜0.10%、
    Cr:0〜0.20%、
    残部:Tiおよび不可避的不純物であり、
    0.04≦0.3Cu+Ni≦0.44%を満足する化学組成を有し、
    α相の平均結晶粒径が15μm以上であり、
    Cuおよび/またはNiとTiとの金属間化合物が2.0体積%以下である、
    チタン薄板。
  2. 伸び[%]が42%以上で、かつ下記(1)式を満たす、請求項に記載のチタン薄板。
    (伸び)[%]≧−0.12×(0.2%耐力)[MPa]+73・・・(1)
  3. 前記化学組成が、質量%で、
    Cr:0.01〜0.20%を含有する、請求項1または2に記載のチタン薄板。
  4. チタン材に熱間加工、酸洗、冷間加工、および、仕上げ焼鈍を行うチタン薄板の製造方法であって、
    前記仕上げ焼鈍を、前記化学組成が、0.1%≦Cu≦0.8%のとき、または、0.8%<Cu≦1.0%かつ0.01≦Ni≦0.09%のときには下記(2)式を満たす温度T(℃)で行い、下記(2)式の左辺値以下400℃以上の温度域における滞留時間が60秒以下となるように冷却し、
    0.8%<Cu≦1.0%かつ0.09%<Ni≦0.20のときは下記(3)式を満たす温度T(℃)で行い、下記(3)式の左辺値以下400℃以上の温度域における滞留時間が60秒以下となるように冷却する、
    請求項1から3までのいずれかに記載のチタン薄板の製造方法。
    210[Ni%]+665≦T≦890−340[Ni%]−15[Cu%]−800[Fe%]−200[Cr%]・・・(2)
    −0.0037[Ni%]−4+735≦T≦890−340[Ni%]−15[Cu%]−800[Fe%]−200[Cr%]・・・(3)
    ただし、(2)式および(3)式中、[Ni%]、[Cu%]、[Fe%]および[Cr%]は、各々チタン板中のNi、Cu、FeおよびCrの含有量(質量%)を表す。
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