JP2022024243A - β型チタン合金 - Google Patents

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勝彦 池田
Katsuhiko Ikeda
優樹 中村
Masaki Nakamura
芳紀 鷲見
Yoshinori Washimi
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Abstract

【課題】強度が高く、かつ、冷間加工性に優れた新規なβ型チタン合金を提供すること。【解決手段】β型チタン合金は、6.0<Mn<15.0mass%、3.0<V<8.5mass%、0.5≦Fe≦5.0mass%、及び、0.5<Al<5.0mass%を含み、残部がTi及び不可避的不純物からなる。β型チタン合金は、溶体化処理後硬さが340Hv以下であり、1h時効後硬さが340Hv以下であり、かつ、48h時効後硬さが500Hv以上であるものが好ましい。【選択図】なし

Description

特許法第30条第2項適用申請有り 電気通信回線を通じて発表した講演予稿集の掲載年月日:令和元年 8月28日、掲載アドレス:https://confit.atlas.jp/guide/event/jim2019autumn/proceedings/list 発表を行った集会名:日本金属学会2019年秋期(第165回)講演大会、開催日:令和元年 9月11日、
本発明は、β型チタン合金に関し、さらに詳しくは、強度が高くかつ冷間加工性に優れたβ型チタン合金に関する。
実用チタン合金は、
(1)最密六方晶のα相(低温相)からなるα型合金、
(2)体心立方晶のβ相(高温相)からなるβ型合金、
(3)α相とβ相の混合組織を持つα+β型合金、
に大別される。
これらの内、α+β型合金は、強度、比強度、熱処理性、加工性、耐食性などに優れたバランスの良い材料であり、従来は、主に宇宙航空機材料として用いられてきた。また、自動車用材料、機械構造部品用材料、一般民需用材料等としても使用されてきている。特に、α+β型合金の中でもTi-6Al-4V合金は、汎用高力チタン合金として広く用いられており、Ti合金使用量の約80%を占めている。
しかしながら、Ti-6Al-4V合金は、高価なVを含んでいるために高コストであり、かつ、冷間加工性に乏しい。
一方、β型チタン合金は、一般に、Ti-6Al-4V合金に比べて冷間加工性に優れている。また、成分元素を最適化すれば、その強度は、Ti-6Al-4V合金と同等となる。しかしながら、従来のβ型合金は、高価なVを多量に含んだV系が一般的であり、高コストである。
そこでこの問題を解決するために、従来から種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、8.0<Mn<20.0mass%、0.5≦Fe<5.0mass%、及び、0.5<Al<5.0mass%を含み、残部がTi及び不可避的不純物からなるβ型チタン合金が開示されている。
同文献には、MnはVに比べて安価であるため、Mnをβ安定化元素として用いると、材料コストを低減できる点が記載されている。
特許文献1に記載のβ型チタン合金は、β安定化元素として、Mo、V、Cr、Nbなどの高価な元素ではなく、安価なMnを用いて低コスト化を図っている。また、βトランザス温度以上の温度に加熱して急冷することにより、室温までβ相を室温まで持ち来すことができ、優れた冷間加工性を有する。さらに、このβ型チタン合金に対して時効処理を施すと、β相中にα相が析出し、強度を向上させることもできる。
しかし、この合金は、時効温度に曝されると、短時間で硬さが著しく増加する。そのため、実際の製造工程において、部材サイズや形状、設備の制約等により溶体化処理後の冷却速度を十分に速くすることが困難な場合には、冷却過程でα相が析出して時効硬化してしまい、その後の加工が困難になることがあった。
また、特に厚板や大径の部材の場合、部材内で冷却速度が不均一になりやすい。そのため、冷却速度が遅い部分だけが急激に硬化し、硬さのバラツキが大きくなりやすいという問題があった。
また、周知の事実として、一般に金属の強度と靱性はトレードオフの関係にあり、時効処理により強度が上昇すると、逆に靱性は低下する。従って、製品の要求特性に応じて適切な強度と靱性になるよう、熱処理によって調製できることが重要となる。
しかし、β安定化元素としてMnを含む合金は、短時間の時効処理で急激に硬さが上昇し、最高硬さに達してしまうため、強度の調整が困難であった。このような特性は、この合金で量産をする場合に製造性を悪化させる原因となる。
特開2015-025167号公報
本発明が解決しようとする課題は、強度が高く、かつ、冷間加工性に優れた新規なβ型チタン合金を提供することにある。
また、本発明が解決しようとする他の課題は、厚板、あるいは、大径部材を溶体化処理する場合であっても、冷却過程における過度の時効硬化を抑制することができ、高い冷間加工性を示す新規なβ型チタン合金を提供することにある。
上記課題を解決するために本発明に係るβ型チタン合金は、
6.0<Mn<15.0mass%、
3.0<V<8.5mass%、
0.5≦Fe≦5.0mass%、及び、
0.5<Al<5.0mass%
を含み、残部がTi及び不可避的不純物からなる。
Mnは、β安定化元素であると同時に、強力な固溶強化元素である。そのため、β安定化元素としてMnのみを多量に添加したβ型チタン合金の場合、溶体化処理温度に加熱した後、時効が進行する温度に曝された時には、時効硬化が短時間で進行する。
これに対し、β安定化元素として、適量のMnと適量のVを同時に添加すると、急速な時効硬化が抑制される。そのため、溶体化処理後の冷却速度が若干低下した場合であっても、高い冷間加工性を示す。
また、厚板、あるいは、大径部材を溶体化処理する場合であっても、冷却過程における局所的な時効硬化が抑制され、硬さのバラツキを抑制することができる。
さらに、本発明に係るβ型チタン合金は、時効硬化速度が遅いため、βトランザス温度以上の温度で熱間加工及び徐冷を行った場合には、そのまま冷間加工を行うこともでき、必ずしも溶体化処理を必要としない。
以下に、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
[1. β型チタン合金]
本発明に係るβ型チタン合金は、以下のような元素を含み、残部がTi及び不可避的不純物からなる。添加元素の種類、その成分範囲、及び、その限定理由は、以下の通りである。
なお、本発明において「β型チタン合金」という時は、溶体化処理によってβ相単相にすることが可能なチタン合金をいう。
[1.1. 主構成元素]
(1)6.0<Mn<15.0mass%:
Mnは、α-β変態温度を低下させてβ相を拡大することで、室温(23℃程度)においてβ相を安定化させる。また、Mnは、Mo、Cr、Nbなどの既存のチタン合金に使用されてきたβ相安定化元素に比べて地殻中の存在比率が高く、合金価格が安く安定しており、入手性に優れている。β相を安定化させるためには、Mn含有量は、6.0mass%超である必要がある。Mn含有量は、好ましくは、8.0mass%以上である。
一方、Mnは強力な固溶強化元素であるため、Mnを過剰に添加した場合、溶体化処理状態における硬さが高くなり、加工性が悪化する。また、時効析出速度が非常に速いため、熱処理による硬さ制御が極めて困難となる。従って、Mn含有量は、15.0mass%未満である必要がある。
(2)3.0<V<8.5mass%:
Vは、Mnと同様にβ相を安定化させる合金元素である。VはMnに比べて固溶強化能が低いため、Mnの一部をVに置きかえると、溶体化処理状態における硬さを低下させることができる。また、VはTi合金中での拡散速度がMnに比べて遅いため、Mnの一部をVに置きかえると、時効析出速度を制御することができ、熱処理による硬さの制御が容易となる。このような効果を得るためには、V含有量は、3.0mass%超である必要がある。
一方、Vは高価であるため、価格を抑制するためには、V含有量を極力減らすことが好ましい。また、V含有量が過剰になると、時効析出速度が過度に遅くなり、100時間を超える長時間の熱処理を施しても十分な硬さに達しなくなる。従って、V含有量は、8.5mass%未満である必要がある。
(3)0.5≦Fe≦5.0mass%:
Feは、Mnと同様にβ相を安定化させる元素である。Feは、純チタン中に含まれる不純物元素でもある。Feの許容範囲を拡大した低廉なTi原料を用いることで、合金の価格を下げることが可能となる。このような効果を得るためには、Fe含有量は、0.5mass%以上である必要がある。Fe含有量は、好ましくは、1.0mass%以上である。
一方、Feは、極めて凝固偏析しやすい元素である。そのため、Fe含有量が過剰になると、合金中の組成の均一化が困難となる。従って、Fe含有量は、5.0mass%以下である必要がある。Fe含有量は、好ましくは、2.0mass%以下である。
(4)0.5<Al<5.0mass%:
Alは、β相から生成する準安定相であるω相の生成を抑制する。ω相は脆性相であり、多量に析出すると材料の靱延性を著しく損なう。ω相の生成を抑制するためには、Al含有量は、0.5mass%超である必要がある。
一方、Alは、強力なα相安定化元素である。そのため、Alを過剰に添加すると、溶体化処理を施した際に、室温までβ相を持ち来すことができなくなる。従って、Al含有量は、5.0mass%未満である必要がある。
[1.2. 副構成元素]
本発明に係るβ型チタン合金は、上述した主構成元素に加えて、さらに以下のいずれか1種以上の副構成元素をさらに含んでいても良い。
(5)Zr<5.0mass%:
(6)Sn<5.0mass%:
(7)0.5<Al当量<5.0:
ここで、「Al当量」とは、元素mの含有量をXm(mass%)としたとき、Al当量=XAl+(XSn/3)+(XZr/6)で表される値をいう。
Zr、Snは、いずれもAlと同様に、ω相の生成を抑制する元素であり、Alに加えて、Zn及び/又はSnをさらに添加することができる。ω相の生成を抑制するためには、Al当量は、0.5超が好ましい。
一方、これらの元素の含有量が過剰になると、溶体化処理後に室温までβ単相を持ち来すことができなくなる。従って、Zr含有量は、5.0mass%未満が好ましい。同様に、Sn含有量は、5.0mass%未満が好ましい。
さらに、Al当量が5.0未満となるように、Zr及び/又はSnを添加するのが好ましい。
(8)Si<5.0mass%:
Siは、β型チタン合金の耐酸化性を向上させる。このような効果を得るためには、Si含有量は、0.5mass%以上が好ましい。
一方、Si含有量が過剰になると、シリサイドの生成を促進し、機械的特性の低下要因となる。従って、Si含有量は、5.0mass%未満が好ましい。
[1.3. 不可避的不純物]
本発明において、不可避的不純物として、O、C、N、及びHが挙げられる。
(9)O<0.2mass%:
Oは、強力なα相安定化元素である。O含有量が過剰になると、溶体化処理を施した際に、室温までβ相を安定的に保つことができなくなる。従って、O含有量は、0.2mass%未満が好ましい。
(10)C<0.1mass%:
(11)N<0.1mass%:
C含有量及び/又はN含有量が過剰になると、炭化物、窒化物、及び/又は、炭窒化物の生成が促進され、機械的性質の低下要因となる。従って、C含有量及びN含有量は、それぞれ、0.1mass%未満が好ましい。
(12)H<0.01mass%:
Hは、β型チタン合金に固溶し、β型チタン合金の靱性を著しく低下させる。従って、H含有量は、0.01mass%未満が好ましい。
[1.4. 硬さ]
[1.4.1. 溶体化処理後硬さ]
「溶体化処理後硬さ」とは、直径dが30mmである試料をβトランザス温度+5~50℃の温度で1h保持後、水冷する溶体化処理を行った後の、試料の断面の中間位置(試料の表面から中心に向かってd/4の距離に相当する位置)のビッカース硬さをいう。
「βトランザス温度」とは、α+βの二相領域とβ相単相領域の境界温度をいう。
本発明に係るβ型チタン合金において、組成を最適化すると、溶体化処理後硬さは、340Hv以下となる。
なお、本発明に係るβ型チタン合金は、適量のMnと適量のVを含んでいるため、従来の材料に比べて時効析出速度が遅い。そのため、溶体化処理温度と同一温度で熱間加工し、徐冷した場合、その組織は溶体化処理後の組織とほぼ同等となり、その硬さは溶体化処理後硬さとほぼ同等になる場合がある。また、これによって、冷間加工性の向上を主目的とする冷間加工前の溶体化処理を省略することもできる。
[1.4.2. 1h時効後硬さ]
「1h時効後硬さ」とは、直径dが30mmである試料に対して溶体化処理後、450℃で1h時効処理した後の、試料の断面の中間位置(試料の表面から中心に向かってd/4の距離に相当する位置)のビッカース硬さをいう。
1h時効後硬さを測定する際に行われる「溶体化処理」とは、溶体化処理後硬さを測定する際に行われる溶体化処理と同一条件下で行われる処理をいう。
上述したように、本発明に係るβ型チタン合金は、従来の材料に比べて時効析出速度が遅くなるように、成分が最適化されているため、熱間加工後の冷却過程において、硬さの上昇が抑制される。その結果、熱間加工後の溶体化処理を省略した場合であっても、冷間加工が可能となる場合がある。また、厚板や大径の部材のように、内部で冷却速度が不均一になりやすい部材であっても、溶体化処理後の冷却過程における局所的な時効硬化を抑制することができる。
熱間加工後の冷却過程、あるいは、溶体化処理後の冷却過程において軟化状態が維持されるか否かは、1h時効後硬さで評価することができる。本発明に係るβ型チタン合金において、組成を最適化すると、1h時効後硬さは、340Hv以下となる。
[1.4.3. 48h時効後硬さ]
「48h時効後硬さ」とは、直径dが30mmである試料に対して溶体化処理後、450℃で48h時効処理した後の、試料の断面の中間位置(試料の表面から中心に向かってd/4の距離に相当する位置)のビッカース硬さをいう。
48h時効後硬さを測定する際に行われる「溶体化処理」とは、溶体化処理後硬さを測定する際に行われる溶体化処理と同一条件下で行われる処理をいう。
β型チタン合金を構造用部材に用いる場合、ある程度の硬さが必要となる。本発明に係るβ型チタン合金は、固溶強化元素であるMnと、Mnの時効析出速度を遅らせるVとを含んでいるために、所定時間の時効処理によって必要な硬さを得ることができる。
実用的な時効処理時間で必要な硬さが得られるか否かは、48h時効後硬さで評価することができる。本発明に係るβ型チタン合金において、組成を最適化すると、48h時効後硬さは、500Hv以上となる。
[2. β型チタン合金の製造方法]
本発明に係るβ型チタン合金の製造方法は、溶解・鋳造工程と、熱間加工工程と、第1溶体化処理工程と、冷間加工工程と、第2溶体化処理工程と、時効工程とを備えている。
[2.1. 溶解・鋳造工程]
まず、本発明に係るβ型チタン合金となるように配合された原料を溶解及び鋳造する(溶解・鋳造工程)。
本発明に係るβ型チタン合金は、必須の元素としてFeを含んでいるので、Ti源には、高純度のスポンジチタンだけでなく、0.1~2.0mass%のFeを含む低純度のスポンジチタンを用いることができる。
配合された原料の溶解・鋳造方法は、特に限定されるものではなく、周知の方法を用いることができる。
[2.2. 熱間加工工程]
次に、溶解・鋳造工程で得られた鋳塊に対して熱間加工を行う(熱間加工工程)。熱間加工は、鋳造組織を破壊するため、及び、鋳塊を所定の形状を有する粗形材に加工するために行われる。
熱間加工は、通常、βトランザス温度以上の温度(すなわち、溶体化処理温度と同等以上の温度)で行われる。βトランザス温度は800℃前後の温度にあり、合金の組成によって変動する。この温度より低い温度で加工を続けると、割れを招くことがある。
一方、加工温度が高すぎると、加工中に結晶粒が粗大化し、機械特性が低下する。そのため、熱間加工は、1100℃以下の温度で行うのが好ましい。
[2.3. 第1溶体化処理工程]
次に、必要に応じて、得られた熱間加工材を溶体化処理する(第1溶体化処理工程)。熱間加工材に対して溶体化処理を行うと、室温でも安定なβ単相からなる組織を得ることができる。
本発明に係るβ型チタン合金は、時効硬化速度が遅いので、熱間加工後の冷却中に時効硬化しにくい。そのため、本発明において熱間加工後の材料に対する溶体化処理は、必ずしも必要ではない。
しかし、熱間加工材に対して溶体化処理を行うと、
(a)何らかの事情で熱間加工後の冷却過程で材料の硬さが局所的に上昇した場合には、溶体化処理を行うことにより材料全体を軟化させることができる、
(b)熱間加工によって導入した歪みを除去することで材料を軟化させることができる、
などの利点がある。
溶体化処理は、具体的には、βトランザス温度+5~50℃の温度で保持後、急冷することにより行う。
βトランザス温度(α+βの二相領域とβ相単相領域の境界温度)は、偏析等の影響で部分的にばらつく。そのため、溶体化処理の温度が低すぎると、β単相からなる合金は得られない。従って、溶体化処理の温度は、βトランザス温度+5℃以上が好ましい。
一方、溶体化処理の温度が高すぎると、結晶粒が成長し、機械的特性が低下する。従って、溶体化処理の温度は、βトランザス温度+50℃以下が好ましい。
急冷方法及び急冷条件は、高温安定相であるβ相を室温まで持ち来すことができる限りにおいて、特に限定されない。急冷方法としては、例えば、水焼き入れ、油焼き入れ、空気又はガスによる空冷などがある。
[2.4. 冷間加工工程]
次に、必要に応じて、熱間加工後の材料又は溶体化処理後の材料を冷間加工する(冷間加工工程)。熱間加工後の材料又は溶体化処理後の材料に対して冷間加工を行うと、結晶粒が微細化され、機械的特性を向上させることができる。
β型チタン合金は、室温での塑性変形能に優れるため、溶体化処理(又は、これと同等の効果を奏する熱間加工)によりβ単相とした後、冷間加工により線材、帯材などに加工することができる。また、Mnを添加したβ型チタン合金は、加工硬化が大きいため、冷間加工により高い強度を得ることができる。一般に、冷間加工の加工率が大きくなるほど、高い強度が得られる。
ここで、「加工率(%)」とは、冷間加工前の断面積(S0)に対する冷間加工後の断面積(S)の変化量の割合(=|S-S0|×100/S0)をいう。
高い強度を得るためには、加工率は、5%以上が好ましい。
一方、加工率が高すぎると、高強度化する代わりに延性が低下し、塑性加工が困難となる。従って、加工率は、80%以下が好ましい。
[2.5. 第2溶体化処理工程]
次に、必要に応じて、冷間加工後の材料を溶体化処理する(第2溶体化処理工程)。冷間加工後の溶体化処理は、必ずしも必要ではない。
しかし、冷間加工材に対して溶体化処理すると、
(a)溶体化処理時にβ相の再結晶が起こり、組織が均一化する、
(b)冷間加工時の残留応力が除去される、
(c)冷間加工時の歪みが除去されるので、再度、冷間加工を行う場合には、冷間加工性を向上させることができる、
などの利点がある。
第2溶体化処理工程に関するその他の点については、第1溶体化処理工程と同様であるので、説明を省略する。
[2.6. 時効工程]
次に、必要に応じて、冷間加工後の材料又は溶体化処理後の材料に対して時効処理を行う(時効工程)。時効処理を行うと、β相中にα相が析出し、強度が向上する。時効処理条件は、要求される特性に応じて、最適な条件を選択する。
一般に、時効処理温度が低すぎると、実用的な処理時間内に必要な硬さが得られない。従って、時効処理温度は、350℃以上が好ましい。時効処理温度は、好ましくは、400℃以上である。
一方、時効処理温度が高くなりすぎると、α相の析出量が多くなり、強度が向上しない。従って、時効処理温度は、600℃以下が好ましい。時効処理温度は、好ましくは、450℃以下である。
時効処理時間は、時効処理温度に応じて最適な時間を選択する。最適な時効処理時間は、時効処理温度や要求される特性に応じて異なるが、通常、4時間~72時間である。本発明に係るβ型チタン合金は、時効硬化速度が遅いので、時効処理時間により硬さ(すなわち、α相の析出量)を調節するのが容易である。
[3. 作用]
Mnは、β安定化元素であると同時に、強力な固溶強化元素である。そのため、β安定化元素としてMnのみを多量に添加したβ型チタン合金の場合、溶体化処理温度に加熱した後、時効が進行する温度に曝された時には、時効硬化が短時間で進行する。
これに対し、β安定化元素として、適量のMnと適量のVを同時に添加すると、急速な時効硬化が抑制される。そのため、溶体化処理後の冷却速度が若干低下した場合であっても、高い冷間加工性を示す。
また、厚板、あるいは、大径部材を溶体化処理する場合であっても、冷却過程における局所的な時効硬化が抑制され、硬さのバラツキを抑制することができる。
さらに、本発明に係るβ型チタン合金は、時効硬化速度が遅いため、βトランザス温度以上の温度で熱間加工及び徐冷を行った場合には、そのまま冷間加工を行うこともでき、必ずしも溶体化処理を必要としない。
(実施例1~24、比較例1~10)
[1. 試料の作製]
表1に示す組成となるように配合された原料をコールドクルーシブル半浮遊溶解炉で溶製し、10kgのインゴットを得た。溶製したインゴットを直径dが30mmである棒材に鍛造加工した。次いで、鍛造加工した材料について、850℃で1h保持した後、水冷する溶体化処理(ST)を行った。さらに、溶体化処理後の材料について、450℃で1時間又は48時間の時効処理を行った。時効処理後、炉から取り出し、空冷した。
Figure 2022024243000001
[2. 試験方法]
[2.1. 組織の同定]
ST後の素材よりミクロ組織の観察用試料を作製した。フッ酸を用いて試料の観察面をエッチングした後、光学顕微鏡を用いて観察した。
[2.2. 硬さ]
溶体化処理後の材料、1時間時効処理後の材料、及び48時間時効処理後の材料について、ビッカース硬さを測定した。棒材の長さ方向と垂直な円形断面上の円の中心と棒材表面との中間位置(d/4に相当する位置)を観察できるように、棒材から試料を切り出した。これを樹脂に埋め、研磨した後、中間位置のビッカース硬さをJIS Z 2244に準拠して測定した。硬さ測定は、中間位置で5回測定し、その平均値を求めた。
[3. 結果]
表2に、結果を示す。表2より、以下のことが分かる。
なお、表2中、冷間加工性に関し、「○」は、溶体化処理後硬さが340Hv以下であることを表し、「×」は、溶体化処理後硬さが340Hv超であることを表す。
時効挙動に関し、「○」は、1h時効後硬さが340Hv以下であることを表し、「×」は、1h時効後硬さが340Hv超であることを表す。
さらに、最高硬さに関し、「○」は、48h時効後硬さが500Hv以上であることを表し、「×」は、48h時効後硬さが500Hv未満であることを表す。
Figure 2022024243000002
(1)比較例1~4は、いずれも、1h時効後硬さが400Hvを超えた。これは、Mnを単独添加しているために、時効硬化が早く進行したためと考えられる。
(2)比較例5は、MnとVを同時添加しているにもかかわらず、1h時効後硬さが400Hvを超えた。これは、Mn量が過剰であるためと考えられる。
(3)比較例6は、溶体化処理後においてもβ単相組織が得られなかった。これは、Mnを単独で添加しており、かつ、Mn量が不足しているためと考えられる。
(4)比較例7、8は、48h時効後硬さが低い。これは、V量が過剰であるために、時効硬化速度が過度に遅くなったためと考えられる。
(5)比較例9は、溶体化処理後においてもβ単相組織が得られなかった。これは、Feが不足しているためと考えられる。
(6)比較例10は、溶体化処理後においてもβ単相組織が得られなかった。これは、Alが過剰であるためと考えられる。
(7)実施例1~24は、いずれも溶体化処理後においてβ単相組織が得られた。また、溶体化処理後硬さ及び1h時効後硬さは、いずれも、340Hv以下であった。さらに、48h時効後硬さは、いずれも、500Hv以上であった。
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は、上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
本発明に係るβ型チタン合金は、ゴルフクラブヘッド、化学工業装置、電気機器、宇宙機器、航空機、船舶、車両、医療器、復水器、熱交換器、海水淡水化装置などに用いられる各種構造用部品、耐食用部品等に用いることができる。

Claims (4)

  1. 6.0<Mn<15.0mass%、
    3.0<V<8.5mass%、
    0.5≦Fe≦5.0mass%、及び、
    0.5<Al<5.0mass%
    を含み、残部がTi及び不可避的不純物からなるβ型チタン合金。
  2. Zr<5.0mass%、及び/又は、
    Sn<5.0mass%
    をさらに含み、かつ、
    元素mの含有量をXm(mass%)としたとき、Al当量=XAl+(XSn/3)+(XZr/6)が0.5超5.0未満である
    請求項1に記載のβ型チタン合金。
  3. Si<5.0mass%
    をさらに含む請求項1又は2に記載のβ型チタン合金。
  4. (a)溶体化処理後硬さが340Hv以下であり、
    (b)1h時効後硬さが340Hv以下であり、かつ、
    (c)48h時効後硬さが500Hv以上である
    請求項1から3までのいずれか1項に記載のβ型チタン合金。
    但し、
    「溶体化処理後硬さ」とは、直径dが30mmである試料をβトランザス温度+5~50℃の温度で1h保持後、水冷する溶体化処理を行った後の、前記試料の断面の中間位置(前記試料の表面から中心に向かってd/4の距離に相当する位置)のビッカース硬さ、
    「1h時効後硬さ」とは、前記溶体化処理後、450℃で1h時効処理した後の、前記試料の断面の中間位置のビッカース硬さ、
    「48h時効後硬さ」とは、前記溶体化処理後、450℃で48h時効処理した後の、前記試料の断面の中間位置のビッカース硬さ、
    をいう。
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