JP2022178435A - チタン合金 - Google Patents
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Abstract
【課題】23℃における強度が高く、かつ、23℃における熱伝導率が高い新規なチタン合金を提供すること。【解決手段】チタン合金は、12.0≦Zr≦16.0mass%、及び、2.0≦V≦8.0mass%を含み、残部がTi及び不可避的不純物からなる。チタン合金は、23℃における熱伝導率が9.0W/mK以上であるものが好ましい。また、チタン合金は、23℃における0.2%耐力が900MPa以上であるものが好ましい。さらに、チタン合金は、混合組織又は等軸組織を有するものが好ましい。【選択図】図2
Description
本発明は、チタン合金に関し、さらに詳しくは、23℃における強度が高く、かつ、23℃における熱伝導率が高いチタン合金に関する。
実用チタン合金は、
(1)最密六方晶のα相(低温相)からなるα型合金、
(2)体心立方晶のβ相(高温相)からなるβ型合金、
(3)α相とβ相の混合組織を持つα+β型合金、
に大別される。
(1)最密六方晶のα相(低温相)からなるα型合金、
(2)体心立方晶のβ相(高温相)からなるβ型合金、
(3)α相とβ相の混合組織を持つα+β型合金、
に大別される。
これらの内、α+β型合金は、強度、比強度、熱処理性、加工性、耐食性などに優れたバランスの良い材料であり、従来は、主に宇宙航空機材料として用いられてきた。また、自動車用材料、機械構造部品用材料、一般民需用材料、医療器具用材料等としても使用されてきている。特に、α+β型合金の中でもTi-6Al-4V合金は、汎用高力チタン合金として広く用いられており、Ti合金使用量の約80%を占めている。
このようなチタン合金に関し、従来から種々の提案がなされている。例えば、特許文献1には、10.0~10.1mass%のZrと、1.1~7.0mass%のVを含み、残部がTi及び不可避的不純物からなる高強度チタン合金が開示されている。
同文献には、
(A)Zrの単独添加だけでは、高強度は得られない点、及び、
(B)ZrとVとを複合添加すると、70%以上の冷間加工が可能となり、かつ、冷間加工後の引張強度が900MPa以上になる点
が記載されている。
同文献には、
(A)Zrの単独添加だけでは、高強度は得られない点、及び、
(B)ZrとVとを複合添加すると、70%以上の冷間加工が可能となり、かつ、冷間加工後の引張強度が900MPa以上になる点
が記載されている。
特許文献2には、所定量のAl、B、O、S、及び、REMを含み、残部がTi及び不可避的不純物からなる快削高剛性Ti合金が開示されている。
同文献には、
(A)所定の組成を有するTi合金にBを添加すると、TiBがマトリックス中に析出し、Ti合金の剛性が向上する点、及び、
(B)所定の組成を有するTi合金にS及びREMを添加すると、切削性が向上する点
が記載されている。
同文献には、
(A)所定の組成を有するTi合金にBを添加すると、TiBがマトリックス中に析出し、Ti合金の剛性が向上する点、及び、
(B)所定の組成を有するTi合金にS及びREMを添加すると、切削性が向上する点
が記載されている。
さらに、特許文献3には、
(a)所定の組成を有するTi合金をβトランザスより高い温度に加熱した後、Ti合金に対して熱間成形を施し、
(b)次いで、Ti合金に対してβトランザスより低い温度で仕上げ加工を施し、
(c)さらに、50℃/hr以上の冷却速度で冷却する
Ti合金部材の製造方法が開示されている。
同文献には、
(A)βトランザス直上の温度で鍛造すると、β相の動的再結晶化を利用して、微細粒組織を得ることができる点、及び、
(B)仕上げ加工温度をβトランザス未満にすると、冷却過程での結晶粒の粗大化を抑制することができる点
が記載されている。
(a)所定の組成を有するTi合金をβトランザスより高い温度に加熱した後、Ti合金に対して熱間成形を施し、
(b)次いで、Ti合金に対してβトランザスより低い温度で仕上げ加工を施し、
(c)さらに、50℃/hr以上の冷却速度で冷却する
Ti合金部材の製造方法が開示されている。
同文献には、
(A)βトランザス直上の温度で鍛造すると、β相の動的再結晶化を利用して、微細粒組織を得ることができる点、及び、
(B)仕上げ加工温度をβトランザス未満にすると、冷却過程での結晶粒の粗大化を抑制することができる点
が記載されている。
Ti合金からなる製品や部品(コンプレッサーホイールなど)の製造では、高速度工具鋼や超硬合金の工具を用いた切削加工が行われる。この場合、被加工材の熱伝導率が低いと、加工時に工具に熱が溜まりやすくなり、工具寿命が低下しやすいという問題がある。Ti-6Al-4V合金は、強度は高いが、熱伝導率は低い。そのため、Ti-6Al-4V合金に対して切削加工を施すと、工具寿命が低下しやすい。一方、23℃における強度が高く、かつ、23℃における熱伝導率が高いチタン合金が提案された例は、従来にはない。
本発明が解決しようとする課題は、23℃における強度が高く、かつ、23℃における熱伝導率が高い新規なチタン合金を提供することにある。
上記課題を解決するために本発明に係るチタン合金は、
12.0≦Zr≦16.0mass%、及び、
2.0≦V≦8.0mass%
を含み、残部がTi及び不可避的不純物からなる。
12.0≦Zr≦16.0mass%、及び、
2.0≦V≦8.0mass%
を含み、残部がTi及び不可避的不純物からなる。
Zrは、結晶粒を微細化させる効果がある。また、Vは、固溶強化元素である。さらに、Zr及びVは、いずれも、電気抵抗の増加係数が小さい。そのため、Tiに適量のZr及びVを添加すると、高強度と高熱伝導率とを兼ね備えたチタン合金が得られる。さらに、本発明に係るチタン合金は熱伝導率が高いので、切削加工時における工具寿命の低下を抑制することができる。
以下に、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
[1. チタン合金]
[1.1. 成分]
本発明に係るチタン合金は、以下のような元素を含み、残部がTi及び不可避的不純物からなる。添加元素の種類、その成分範囲、及び、その限定理由は、以下の通りである。
[1. チタン合金]
[1.1. 成分]
本発明に係るチタン合金は、以下のような元素を含み、残部がTi及び不可避的不純物からなる。添加元素の種類、その成分範囲、及び、その限定理由は、以下の通りである。
(1)12.0≦Zr≦16.0mass%:
Zrは、結晶粒を微細化する作用を持つ。この作用により、Zrを添加したチタン合金では、結晶粒が粗大化せず、良好な高強度が得られる。また、Zrは、電気抵抗の増加係数が小さいため、添加しても熱伝導率が低下しにくい。このような効果を得るためには、Zr含有量は、12.0mass%以上である必要がある。Zr含有量は、好ましくは、14.0mass%以上である。
一方、Zr含有量が過剰になると、比重が増加し、チタン合金のメリットである軽量性が失われる場合がある。従って、Zr含有量は、16.0mass%以下である必要がある。
Zrは、結晶粒を微細化する作用を持つ。この作用により、Zrを添加したチタン合金では、結晶粒が粗大化せず、良好な高強度が得られる。また、Zrは、電気抵抗の増加係数が小さいため、添加しても熱伝導率が低下しにくい。このような効果を得るためには、Zr含有量は、12.0mass%以上である必要がある。Zr含有量は、好ましくは、14.0mass%以上である。
一方、Zr含有量が過剰になると、比重が増加し、チタン合金のメリットである軽量性が失われる場合がある。従って、Zr含有量は、16.0mass%以下である必要がある。
(2)2.0≦V≦8.0mass%:
Vは、固溶強化元素である。また、Vは、β相を安定化させる効果もある。さらに、Vは、電気抵抗の増加係数が小さいため、添加しても熱伝導率が低下しにくい。このような効果を得るためには、V含有量は、2.0mass%以上である必要がある。
一方、V含有量が過剰になると、チタン合金が脆化する場合がある。従って、V含有量は、8.0mass%以下である必要がある。V含有量は、好ましくは、4.0mass%以下である。
Vは、固溶強化元素である。また、Vは、β相を安定化させる効果もある。さらに、Vは、電気抵抗の増加係数が小さいため、添加しても熱伝導率が低下しにくい。このような効果を得るためには、V含有量は、2.0mass%以上である必要がある。
一方、V含有量が過剰になると、チタン合金が脆化する場合がある。従って、V含有量は、8.0mass%以下である必要がある。V含有量は、好ましくは、4.0mass%以下である。
[1.2. 特性]
[1.2.1. 熱伝導率]
本発明に係るチタン合金は、電気抵抗の増加係数が大きい元素を含まないため、高い熱伝導率を示す。具体的には、組成を最適化すると、23℃における熱伝導率が9.0W/mK以上であるチタン合金が得られる。この値は、汎用のチタン合金(Ti-6Al-4V合金)の約1.5倍に相当する。
[1.2.1. 熱伝導率]
本発明に係るチタン合金は、電気抵抗の増加係数が大きい元素を含まないため、高い熱伝導率を示す。具体的には、組成を最適化すると、23℃における熱伝導率が9.0W/mK以上であるチタン合金が得られる。この値は、汎用のチタン合金(Ti-6Al-4V合金)の約1.5倍に相当する。
[1.2.2. 0.2%耐力]
本発明に係るチタン合金は、強化元素としてZr及びVを含んでいるので、高い強度を示す。具体的には、組成及び組織を最適化すると、23℃における0.2%耐力が900MPa以上であるチタン合金が得られる。
本発明に係るチタン合金は、強化元素としてZr及びVを含んでいるので、高い強度を示す。具体的には、組成及び組織を最適化すると、23℃における0.2%耐力が900MPa以上であるチタン合金が得られる。
[1.2.3. 組織]
図1に、本発明に係るチタン合金のミクロ組織の一例を示す。本発明に係るチタン合金は、室温でα+βの二相組織を呈する。また、本発明に係るチタン合金は、加工条件に応じて、針状組織、混合組織、又は、等軸組織を呈する。
図1に、本発明に係るチタン合金のミクロ組織の一例を示す。本発明に係るチタン合金は、室温でα+βの二相組織を呈する。また、本発明に係るチタン合金は、加工条件に応じて、針状組織、混合組織、又は、等軸組織を呈する。
「針状組織」とは、β相からなるマトリックス中に針状のα相が析出している組織(β相+針状α相)をいう。針状組織は、本発明に係るチタン合金をβトランザス(組織がβ相単相となる温度)以上の温度で仕上げ加工を終了し、冷却中に針状のα相を析出させることにより得られる。針状組織を備えたチタン合金は、低温強度はやや低く、延性及び疲労特性は低いが、高温強度、破壊靱性、及び、クリープ特性が極めて高いという特徴がある。
「等軸組織」とは、等軸状のα相を主とし、相対的に大きな等軸状α相の隙間に、β相+針状α相が存在している組織をいう。等軸組織は、本発明に係るチタン合金をβトランザスより低い温度で仕上げ加工することで、析出しているα相に十分なひずみを導入し、所定の温度で熱処理することにより得られる。十分なひずみが導入されたα相は、仕上げ加工中の動的再結晶や、仕上げ加工後の熱処理による静的再結晶により等軸組織となる。等軸組織を備えたチタン合金は、破壊靱性はやや低く、高温強度及びクリープ特性は低いが、延性が高く、かつ、低温強度及び疲労特性が極めて高いという特徴がある。
「混合組織」とは、等軸状のα相と、針状のα相が析出しているβ相(β相+針状α相)とが混在している組織をいう。混合組織は、本発明に係るチタン合金を等軸組織が得られる温度より高い温度で仕上げ加工を行い、析出しているα相にひずみを導入し、所定の温度で熱処理することにより得られる。α相に導入するひずみを、等軸組織を得るために必要なひずみよりも少なくすることにより、ひずみが十分に加えられなかったα相や仕上げ加工後の冷却中に析出するα相は針状となるため、最終的に等軸状のα相とβ相+針状α相領域が混在した組織となる。混合組織を備えたチタン合金は、延性はやや低いが、低温強度、高温強度、破壊靱性、クリープ特性、及び疲労特性が高く、バランスの良い材料である。
低温強度の高い部材を得るためには、チタン合金は、混合組織又は等軸組織を有するものが好ましい。
低温強度の高い部材を得るためには、チタン合金は、混合組織又は等軸組織を有するものが好ましい。
[2. チタン合金部材の製造方法]
本発明に係るチタン合金部材の製造方法は、
本発明に係るチタン合金からなる素材をβトランザスより高い温度に加熱し、素材に対して粗加工を行う第1工程と、
粗加工された素材をβトランザス近傍の温度において仕上げ加工を行い、チタン合金からなる部材を得る第2工程と、
仕上げ加工された部材をβトランザス未満の温度で熱処理する第3工程と
を備えている。
本発明に係るチタン合金部材の製造方法は、
本発明に係るチタン合金からなる素材をβトランザスより高い温度に加熱し、素材に対して粗加工を行う第1工程と、
粗加工された素材をβトランザス近傍の温度において仕上げ加工を行い、チタン合金からなる部材を得る第2工程と、
仕上げ加工された部材をβトランザス未満の温度で熱処理する第3工程と
を備えている。
[2.1. 第1工程]
まず、本発明に係るチタン合金からなる素材(鋳塊)をβトランザスより高い温度に加熱し、素材に対して粗加工を行う(第1工程)。
ここで、「粗加工」とは、鋳塊をスラブ、ビレット、ブルーム等の中間製品にするための熱間加工をいう。
まず、本発明に係るチタン合金からなる素材(鋳塊)をβトランザスより高い温度に加熱し、素材に対して粗加工を行う(第1工程)。
ここで、「粗加工」とは、鋳塊をスラブ、ビレット、ブルーム等の中間製品にするための熱間加工をいう。
粗加工は、加工能率を上げるために、β相単相領域において行われる。粗加工時の加熱温度が低すぎると、加工性が低下する。従って、加熱温度は、βトランザス超が好ましい。
一方、加熱温度が高くなりすぎると、結晶粒が粗大化する場合がある。従って、加熱温度は、βトランザス+200℃以下が好ましい。
一方、加熱温度が高くなりすぎると、結晶粒が粗大化する場合がある。従って、加熱温度は、βトランザス+200℃以下が好ましい。
[2.2. 第2工程]
次に、粗加工された素材をβトランザス近傍の温度において仕上げ加工を行い、チタン合金からなる部材を得る(第2工程)。なお、第2工程として、仕上げ加工を行う前に部材を加熱する均熱処理を追加しても良い。
ここで、「仕上げ加工」とは、中間製品を板、棒、線材などの最終製品にするための熱間加工をいう。より詳細には、目標とする寸法及び組織に仕上げるための加工であり、再結晶化を利用するために導入するひずみ量の制御を行う。例えば、等軸α相の量を多くしたいのであれば、α相が析出しやすい温度域まで仕上げ加工温度を抑えつつ、ひずみを多く導入すれば良い。
次に、粗加工された素材をβトランザス近傍の温度において仕上げ加工を行い、チタン合金からなる部材を得る(第2工程)。なお、第2工程として、仕上げ加工を行う前に部材を加熱する均熱処理を追加しても良い。
ここで、「仕上げ加工」とは、中間製品を板、棒、線材などの最終製品にするための熱間加工をいう。より詳細には、目標とする寸法及び組織に仕上げるための加工であり、再結晶化を利用するために導入するひずみ量の制御を行う。例えば、等軸α相の量を多くしたいのであれば、α相が析出しやすい温度域まで仕上げ加工温度を抑えつつ、ひずみを多く導入すれば良い。
仕上げ加工時の加熱温度が低すぎると、変形抵抗が増加し、素材が割れやすくなる。従って、加熱温度は、βトランザス-150℃以上が好ましい。
一方、加熱温度が高くなりすぎると、結晶粒が粗大化する場合がある。従って、加熱温度は、βトランザス+50℃以下が好ましい。加熱温度は、さらに好ましくは、βトランザス-10℃以下である。
上述したように、仕上げ加工の温度は、部材の組織及び機械的特性に影響を与える。従って、仕上げ加工の温度は、これらの点も考慮して最適な温度を選択するのが好ましい。
一方、加熱温度が高くなりすぎると、結晶粒が粗大化する場合がある。従って、加熱温度は、βトランザス+50℃以下が好ましい。加熱温度は、さらに好ましくは、βトランザス-10℃以下である。
上述したように、仕上げ加工の温度は、部材の組織及び機械的特性に影響を与える。従って、仕上げ加工の温度は、これらの点も考慮して最適な温度を選択するのが好ましい。
[2.3. 第3工程]
次に、仕上げ加工された部材をβトランザス未満の温度で熱処理する(第3工程)。
βトランザス未満の温度で仕上げ加工を行った場合、第2工程の過程で析出する針状α相にひずみが導入される。十分なひずみが導入されたα相は、仕上げ加工中に動的再結晶が起こるほか、所定の温度で熱処理することで静的再結晶が起こり、針状α相は等軸状になる。その結果、等軸状α相を主とする等軸組織が得られる。
次に、仕上げ加工された部材をβトランザス未満の温度で熱処理する(第3工程)。
βトランザス未満の温度で仕上げ加工を行った場合、第2工程の過程で析出する針状α相にひずみが導入される。十分なひずみが導入されたα相は、仕上げ加工中に動的再結晶が起こるほか、所定の温度で熱処理することで静的再結晶が起こり、針状α相は等軸状になる。その結果、等軸状α相を主とする等軸組織が得られる。
一方、等軸組織が得られる温度よりも高い温度で仕上げ加工を行った場合、第2工程の過程でα相が析出するものの全面には析出せず、等軸組織が得られる場合と比べて、析出するα相は少なくなる。その結果、前述の動的再結晶により等軸化する領域と、加工後の冷却中に針状α相が析出する領域とを有する組織が得られる。これを所定の温度で熱処理すると、前述の静的再結晶により等軸状α相がさらに得られ、組織の安定化が完了する。その結果、混合組織が得られる。
すなわち、熱処理は、ひずみが導入されたα相を等軸化させるため(すなわち、組織を安定化させるため)に行われる。
すなわち、熱処理は、ひずみが導入されたα相を等軸化させるため(すなわち、組織を安定化させるため)に行われる。
熱処理温度が低すぎると、組織安定化(再結晶)に長時間を要する。従って、熱処理温度は、後述の上限を超えない限りにおいて、600℃以上が好ましい。熱処理温度は、さらに好ましくは、650℃以上、さらに好ましくは、700℃以上である。
一方、熱処理温度が高くなりすぎると、等軸状のα相が消失したり、減少したりする場合がある。従って、熱処理温度は、βトランザス-30℃以下が好ましい。熱処理温度は、さらに好ましくは、βトランザス-50℃以下である。
一方、熱処理温度が高くなりすぎると、等軸状のα相が消失したり、減少したりする場合がある。従って、熱処理温度は、βトランザス-30℃以下が好ましい。熱処理温度は、さらに好ましくは、βトランザス-50℃以下である。
[3. 作用]
Ti-6Al-4V合金は、高強度は得られるが、熱伝導率は低い。Ti-6Al-4V合金の熱伝導率が低いのは、電気抵抗の増加係数が大きいAlを多量に含んでいるためである。
Ti-6Al-4V合金は、高強度は得られるが、熱伝導率は低い。Ti-6Al-4V合金の熱伝導率が低いのは、電気抵抗の増加係数が大きいAlを多量に含んでいるためである。
これに対し、Zrは、結晶粒を微細化させる効果がある。また、Vは、固溶強化元素である。さらに、Zr及びVは、いずれも、電気抵抗の増加係数が小さい。そのため、Tiに適量のZr及びVを添加すると、高強度と高熱伝導率とを兼ね備えたチタン合金が得られる。さらに、本発明に係るチタン合金は熱伝導率が高いので、切削加工時における工具寿命の低下を抑制することができる。
(実施例1~5、比較例1~3)
[1. 試料の作製]
表1に示す組成となるように配合された原料をコールドクルーシブル半浮遊溶解炉で溶製し、2kgのインゴットを得た。
次に、表1に示す条件下で、溶製したインゴットを40mm角の角材に鍛造加工(粗鍛造)した。次いで、表1に示す条件下で、鍛造加工した角材を直径dが16mmである棒材に鍛造加工(仕上げ鍛造)した。さらに、仕上げ鍛造された棒材を、720℃(実施例5は640℃)で1時間熱処理(焼鈍)し、空冷した。
[1. 試料の作製]
表1に示す組成となるように配合された原料をコールドクルーシブル半浮遊溶解炉で溶製し、2kgのインゴットを得た。
次に、表1に示す条件下で、溶製したインゴットを40mm角の角材に鍛造加工(粗鍛造)した。次いで、表1に示す条件下で、鍛造加工した角材を直径dが16mmである棒材に鍛造加工(仕上げ鍛造)した。さらに、仕上げ鍛造された棒材を、720℃(実施例5は640℃)で1時間熱処理(焼鈍)し、空冷した。
[2. 試験方法]
[2.1. 熱伝導率]
熱処理後の棒材から、φ10mm×t2mmの試料を切り出した。レーザーフラッシュ法を用いて、得られた試料の23℃における熱伝導率を測定した。
[2.1. 熱伝導率]
熱処理後の棒材から、φ10mm×t2mmの試料を切り出した。レーザーフラッシュ法を用いて、得られた試料の23℃における熱伝導率を測定した。
[2.2. 0.2%耐力]
熱処理後の棒材から、JIS 4号試験片を切り出した。得られた試験片を用いて、JIS Z2241:2011に準拠して23℃において引張試験を行い、0.2%耐力を求めた。
[2.3. 組織観察]
仕上げ鍛造後、及び焼鈍後の組織を光学顕微鏡で観察した。
熱処理後の棒材から、JIS 4号試験片を切り出した。得られた試験片を用いて、JIS Z2241:2011に準拠して23℃において引張試験を行い、0.2%耐力を求めた。
[2.3. 組織観察]
仕上げ鍛造後、及び焼鈍後の組織を光学顕微鏡で観察した。
[3. 結果]
[3.1. 熱伝導率及び0.2%耐力]
表1に、熱伝導率及び0.2%耐力を示す。表1には、各試料の組成、βトランザス、及び、加工条件も併せて示した。表1より、以下のことが分かる。
[3.1. 熱伝導率及び0.2%耐力]
表1に、熱伝導率及び0.2%耐力を示す。表1には、各試料の組成、βトランザス、及び、加工条件も併せて示した。表1より、以下のことが分かる。
(1)比較例1は、Ti-6Al-4V合金である。比較例1は、0.2%耐力は高いが、熱伝導率が低い。これは、電気抵抗の増加係数が大きいAlを多量に含んでいるためと考えられる。
(2)比較例2は、熱伝導率は高いが、0.2%耐力は低い。これは、強化元素であるZr、Alの添加量が不十分であるためと考えられる。
(2)比較例2は、熱伝導率は高いが、0.2%耐力は低い。これは、強化元素であるZr、Alの添加量が不十分であるためと考えられる。
(3)比較例3は、熱伝導率が若干低く、0.2%耐力も低い。これは、電気抵抗の増加係数が大きいAlを含み、強化元素であるZr、Alの添加量が不十分であるためと考えられる。
(4)実施例1~5は、いずれも、0.2%耐力が比較例1と同等であり、かつ、熱伝導率が比較例1の1.5倍以上となった。これは、強化元素として、電気抵抗の増加係数が小さいZr及びVを用いているためと考えられる。
(4)実施例1~5は、いずれも、0.2%耐力が比較例1と同等であり、かつ、熱伝導率が比較例1の1.5倍以上となった。これは、強化元素として、電気抵抗の増加係数が小さいZr及びVを用いているためと考えられる。
[3.2. 組織観察]
図2に、実施例1で得られたチタン合金の仕上げ鍛造後及び焼鈍後の組織写真を示す。図2より、焼鈍後は、等軸化したα相と、β相中に針状α相が析出している針状組織とが混在している混合組織となっていることが分かる。
図2に、実施例1で得られたチタン合金の仕上げ鍛造後及び焼鈍後の組織写真を示す。図2より、焼鈍後は、等軸化したα相と、β相中に針状α相が析出している針状組織とが混在している混合組織となっていることが分かる。
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は、上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
本発明に係るチタン合金は、ゴルフクラブヘッド、化学工業装置、電気機器、宇宙機器、航空機、船舶、車両、医療器、復水器、熱交換器、海水淡水化装置などに用いられる各種構造用部品、耐食用部品等に用いることができる。
Claims (4)
- 12.0≦Zr≦16.0mass%、及び、
2.0≦V≦8.0mass%
を含み、残部がTi及び不可避的不純物からなるチタン合金。 - 23℃における熱伝導率が9.0W/mK以上である請求項1に記載のチタン合金。
- 23℃における0.2%耐力が900MPa以上である請求項1又は2に記載のチタン合金。
- 混合組織又は等軸組織を有する請求項1から3までのいずれか1項に記載のチタン合金。
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