JP2002356729A - TiAl基合金及びその製造方法並びにそれを用いた動翼 - Google Patents
TiAl基合金及びその製造方法並びにそれを用いた動翼Info
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Abstract
備え、機械加工性に優れたTiAl基合金及びその製造
方法、並びにこれを用いた動翼を提供する。 【解決手段】 本発明のTiAl基合金は、α2相と、
γ相とが交互に積層された平均粒径1〜65μmのラメ
ラー粒が配列し、該ラメラー粒の間隙をβ相およびγ相
を含む基地が埋めてなる微細組織を有し、前記ラメラー
粒の面積分率が30〜70%であり、前記ラメラー粒内
のα2相どうしの間隔すなわちラメラ間隔が0.4〜
1.5μmであり、前記β相の面積分率が5〜15%で
あるTiAl合金およびその製造方法を採用した。ま
た、上記構成のTiAl基合金を用いて動翼を構成し
た。
Description
びその製造方法並びにそれを用いた動翼に関するもので
ある。
機に用いる材料として、軽量(比重約4)で耐熱性に優
れるTiAl基合金が注目されている。特に、大型の回
転動翼の場合、動翼の構成部材が軽量であるほど遠心応
力が少なくなるので、最高到達回転数の向上や動翼の大
面積化、さらには動翼のディスク部分への負荷応力の低
減を図ることができる。
金属間化合物であるTiAlやTi 3Alを主体とする
合金であり、上述の如く耐熱性に優れているが、室温で
の延性に劣るという問題があり、従来からその対策とし
て組織の制御や第3元素の添加が種々行われている。例
えば、特開平6−49565号公報には、TiAl基合
金の常温延性を向上させるため第3元素としてCrやV
を添加し、さらに強度の向上を図るため、TiAl相と
Ti3Al相を交互に積層して成る層状組織(ラメラー
相)領域を金属組織中に形成させる技術が開示されてい
る。又、Kimは、平均粒径30〜3000μmのラメラ
ー粒を有するTiAl基合金において、ラメラー粒の平
均粒径が大きくなるほど、室温での延性と引張応力が低
下することを報告している(Young-Won Kim.Intermetal
lics. (6) 1998 pp.623-628.)。
1号において、α2相とγ相が交互に積層された平均粒
径1〜50μmのラメラー粒が密に配列してなる微細組
織を有し、その一つの組織形態(以下、組織1と言う)
として、α2相とγ相が交互に積層された平均粒径1〜
50μmのラメラー粒が密に配列している組織、ならび
にもう一つの組織形態(以下、組織2と言う)として、
該ラメラー粒の間隙をβ相を主体とする基地が網目状に
埋め、この基地の比率が10%以上、40%以下である
組織の2種類の微細組織を特徴とするTiAl基合金に
よって、室温での延性、特に、室温での衝撃特性の向上
を実現できることを提案している。
l基合金は、従来自動車用のターボ・タービンホイール
等の小型部品への利用を目的として開発が進められた経
緯があり、このような自動車部品などの複雑な形状を有
する小型部品に用いるTiAl基合金は、目的の形状に
近い形状が得られる精密鋳造によって製造されることが
一般的である。この鋳造により製造されたTiAl基合
金の鋳造品には、機械加工性に劣るという問題があった
が、上記の自動車用の小型部品では、精密鋳造により目
的形状に近い形状が得られるために、鋳造後の機械加工
量を少なくすることができるため、鋳造品の機械加工性
はそれほど問題視されていなかった。しかし、このTi
Al基合金を過給機やタービン等の動翼や航空機に適用
しようとすると、製造される部品が大型となり、また、
これらの大型部品は、一般に機械加工量が多くなるた
め、難削材であるTiAl基合金の機械加工性の向上が
望まれていた。
れたものであって、耐熱合金として必要な高温強度、衝
撃特性を備え、機械加工性に優れたTiAl基合金及び
その製造方法を提供することを目的とする。また本発明
は、上記の優れた特性を有するTiAl基合金からなる
動翼を提供することを目的とする。
に、本発明者らは、鋭意研究を重ね、TiAl基合金の
機械加工性には、TiAl基合金の金属組織中に含まれ
るβ相が大きく影響していること、またTiAl基合金
の高温強度を向上させるためには、TiAl基合金の金
属組織中にラメラー組織を形成させることが必須である
こと、そして、これらラメラー組織とβ相を含む金属組
織を適切に制御することにより、TiAl基合金の機械
加工性と高温強度とを両立させ得ることを知見した。こ
の知見に基づき、金属組織中のラメラー粒の面積分率、
平均粒径、ラメラー間隔(ラメラー粒内のα2相どうし
の間隔)と、β相の面積分率を種々に変化させたとこ
ろ、これらの組織構造が適切な範囲に制御されたTiA
l基合金において、十分な高温強度を備え、かつ機械加
工性が大幅に改善されるという知見を得、本発明の完成
に至ったものである。
性を改善する方法として、TiAl基合金素材を(α+
β)相の平衡温度領域に保持した後に、その後の冷却過
程で高速塑性加工し、さらにこの加工材を(α+β)相
の平衡温度領域または(α+β+γ)相の平衡温度領域
または(β+γ)相の平衡温度領域に保持する熱処理を
行うことを着想し、さらにそのための具体的な方法を見
出したものである。
以下の構成を採用した。本発明のTiAl基合金は、α
2相と、γ相とが交互に積層された平均粒径1〜65μ
mのラメラー粒が分散し、該ラメラー粒の間隙をβ相お
よびγ相を含む基地が埋めてなる微細組織を有し、前記
ラメラー粒の面積分率が30〜70%であり、前記ラメ
ラー間隔が0.4〜1.5μmであり、前記β相の面積
分率が5〜15%であることを特徴とする。
メラー粒と、γ粒およびこれらの間隙を埋めるβ相とか
らなるTiAl基合金の金属組織を、上記範囲となるよ
うに制御したものである。このような金属組織とするこ
とにより、金属組織中に形成されたラメラー粒自体によ
り十分な高温強度とともに、ラメラー粒間のβ相の効果
によって高温変形能が向上し、塑性加工とともに機械加
工が容易となる。なお、機械加工時の刃先の温度は高温
になるため、高温変形能が良くなることで、機械加工性
は向上する。これにより、従来難削材であったTiAl
基合金を動翼や航空機部品などの大型部品に使用した場
合に、効率よく加工を行うことが可能となる。
ある、ラメラー粒の面積分率、ラメラー間隔、およびβ
相の面積分率について説明するが、本発明者らは、後述
の実施例において上記ラメラー粒の面積分率、ラメラー
間隔、ラメラー粒の平均粒径、およびβ相の面積分率の
範囲が適切であることを検証している。これについて
は、後述の実施例に詳述する。
α2相と、γ相が交互に積層された構造を有するラメラ
ー粒が、金属組織中に形成されることにより、TiAl
基合金の強度を向上させることができるが、ラメラー粒
の面積分率が大きくなるほど、高温延性が低下する。す
なわち、ラメラー粒の面積分率が30%未満であると、
機械加工性は良好であるが、高温強度が不足する。また
ラメラー粒の面積分率が70%を越えると、高温延性が
不足するために、機械加工性が不十分なものとなる。従
って、機械加工性と高温強度を両立させる範囲としてラ
メラー粒の面積分率を30〜70%とした。
メラー間隔は、広すぎると高温強度が不十分なものとな
り、狭すぎると機械加工性が低下する。これは、ラメラ
ー間隔が狭いほど、転位等の変形機構が働かなくなるた
め、強度に優れたものとなるが、同時に、延性が低下す
るためである。従って、機械加工性と高温強度を両立し
うる範囲として、ラメラー間隔を0.4〜1.5μmと
した。
はラメラー粒及びγ相に比して高温延性が高く、高温強
度が小さいため、ラメラー粒の間隙を埋める基地にβ相
を析出させると、高温延性が向上するが、高温強度は低
下する。従って、機械加工性と高温強度を両立し得る範
囲としてβ相の面積分率を5〜15%とした。
38〜45原子%、Mn:3〜10原子%、残部:Ti
及び不可避不純物からなる、またはAl:38〜45原
子%、CrまたはVから1種以上:3〜10原子%、残
部:Ti及び不可避不純物からなることが好ましい。係
る構成によれば、機械加工性に係るβ相の面積分率を適
切な範囲に制御することができるので、優れた機械加工
性を備えたTiAl基合金が得られる。
2.5原子%のNbを含有することが好ましい。前記範
囲のNbを添加することにより、TiAl基合金の耐酸
化性を向上させることができる。従って、係る構成によ
れば、高温強度、機械加工性とともに耐酸化性にも優れ
たTiAl基合金が得られる。このような耐酸化性に優
れたTiAl基合金は、比較的高温で用いるのに好適で
ある。本発明のTiAl基合金においては、Mo,W,
Zrから選ばれる1種以上の元素を0.5〜2原子%含
有する構成とすることもできる。このような構成として
も、上記Nbを添加したものと同様に、耐酸化性に優れ
たTiAl基合金とすることができる。
1〜0.4原子%のC(炭素)を含有することが好まし
い。前記範囲のCを添加することにより、TiAl基合
金の高温強度をより向上させることができる。従って、
係る構成によれば、機械加工性が良好であり、特に高温
強度に優れたTiAl基合金が得られる。本発明のTi
Al基合金においては、Si,Ni,Taから選ばれる
1種以上の元素を0.2〜1.0原子%含有する構成と
することもできる。このような構成としても、上記Cを
添加したものと同様に、高温強度に優れたTiAl基合
金とすることができる。
は、少なくとも38〜45原子%のAlと、3〜10原
子%のMnを含有するTiAl基合金素材を、(α+
β)相の平衡温度領域に保持する第1加熱工程と、該温
度に保持したTiAl基合金素材を、所定の加工最終温
度まで冷却しながら高速塑性加工する加工工程と、該加
工後のTiAl基合金素材を、(α+β)相の平衡温度
領域または(α+β+γ)相の平衡温度領域または(β
+γ)相の平衡温度領域に保持する第2加熱工程とを備
えたことを特徴とする。
は、少なくとも38〜45原子%のAlと、3〜10原
子%のCr及び/またはVを含有するTiAl基合金素
材を、(α+β)相の平衡温度領域に保持する第1加熱
工程と、該温度に保持したTiAl基合金素材を、所定
の加工最終温度まで冷却しながら高速塑性加工する加工
工程と、該加工後のTiAl基合金素材を、(α+β)
相の平衡温度領域または(α+β+γ)相の平衡温度領
域または(β+γ)相の平衡温度領域に保持する第2加
熱工程とを備えたことを特徴とする構成であってもよ
い。
るTiAl基合金素材を、(α+β)相の平衡温度領域
に保持し、その後に塑性加工することにより、鋳造欠陥
を無くすことができるとともに、加工歪みと相変態の相
乗効果で組織を微細化することができる。さらに、その
後に、TiAl基合金素材を(α+β)相または(α+
β+γ)相または(β+γ)相の平衡温度領域に保持し
て、ラメラー粒及びβ相の面積分率やラメラー粒の粒径
を制御し、優れた機械加工性と、高温強度を備えたTi
Al基合金を製造することができる。前記塑性加工とし
ては、押出、圧延、自由鍛造、型鍛造を使用することが
できる。
ては、前記TiAl基合金素材として、3〜10原子%
のMn、Cr、Vから選ばれる1種以上を含有するもの
を用いる。これらの元素が添加されたTiAl基合金素
材において、これらの含有量によりラメラー粒とβ相の
面積分率を制御できるので、所望の高温強度と機械加工
性を備えたTiAl基合金を得ることができる。
ては、前記第1加熱工程の保持温度が、1150〜13
50℃であることが好ましい。本発明のTiAl基合金
の製造方法においては、前記加工最終温度が1000℃
であることが好ましい。本発明のTiAl基合金の製造
方法においては、前記加工工程の冷却速度を50〜70
0℃/分として加工することが好ましい。本発明のTi
Al基合金の製造方法においては、前記第2加熱工程の
冷却速度を5〜50℃/分として加工することが好まし
い。
金の(α+β)相の平衡温度領域の下限は、組成により
1120〜1220℃まで分布しているから、1150
〜1350℃の(α+β)相の平衡温度領域に保持した
後、加工最終温度である1000℃まで冷却する間に塑
性加工を施し、ラメラー粒形成の起点となる歪みを与え
て微細な組織とする。この間の冷却速度は50〜700
℃/分が適当である。また、前記第2加熱工程における
冷却速度は、5〜50℃/分が適当である。
ては、前記第2加熱工程の保持温度が、1000〜13
50℃であることが好ましい。第2加熱工程における保
持温度を前記範囲とすることにより、ラメラー粒および
β相の面積分率を適切な範囲に制御することができる。
ては、前記TiAl基合金素材として、1〜2.5原子
%のNbを含有するものを用いることもできる。このよ
うな素材を用いることにより、耐酸化性に優れたTiA
l基合金を容易に製造することができる。
ては、前記TiAl基合金素材として、0.1〜0.4
原子%のC(炭素)を含有するものを用いることもでき
る。このような素材を用いることにより、特に優れた高
温強度を備えたTiAl基合金を容易に製造することが
できる。
ては、前記加工工程において、前記高速塑性加工による
有効歪みが、0.8以上となるように前記TiAl基合
金素材を加工することが好ましい。
あっては、前記TiAl基合金素材の加工度を大きくす
るほど、金属組織の微細化が進行し、機械加工性と、高
温強度の両方を向上させることができる。そして、その
加工度を有効歪みで0.8以上とすることにより、十分
な高温強度を備え、かつ機械加工性に優れたTiAl基
合金を製造することができる。
工による強度変化を実用的な線図で比較検討する場合
に、加工法で異なった表示をする加工度を統一するため
に導入される概念である。例えば、据え込み鍛造におけ
る圧下率ηと、高速四面鍛造における断面減少率qは、
下記(数1)に示す式により有効歪みψFと関係づける
ことができ、この有効歪みにより両者の加工度を比較す
ることが可能になる。本願発明においては、この有効歪
みの概念を用いてTiAl基合金素材の加工度を定義し
ている。
鍛造前後の材料の厚さをそれぞれh 1,h2とすると、下
記(数2)に示す式で表されるものであり、高速四面鍛
造における断面積減少率qは、鍛造前後の材料の断面積
をそれぞれA1,A2とすると、下記(数3)に示す式
で表されるものである。
速塑性加工による有効歪みが、1.2〜4.0となるよ
うに前記TiAl基合金素材を加工することがより好ま
しい。すなわち、前記TiAl基合金素材の加工度をよ
り高めることにより、さらに機械加工性と高温強度に優
れたTiAl基合金を製造することが可能になる。
ては、前記高速塑性加工として鍛造法を用いることが好
ましい。また、大きな有効歪み量を短時間に得る鍛造方
法として高速四面鍛造法が挙げられる。前記高速塑性加
工によるTiAl基合金素材の加工度が大きいほど、組
織を微細化することができるので、加工度を大きくでき
るこれらの鍛造法を採用することにより、より高温強度
と機械加工性に優れたTiAl基合金を製造することが
可能となる。
iAl基合金を用いたことを特徴とする。このような構
成とすることにより、高温強度および衝撃特性に優れて
いるので、エンジンの過給機や各種タービンの動翼とす
れば、信頼性を維持しつつ、回転数の上昇によるエネル
ギー効率の向上や、軽量化に貢献することが可能とな
る。
を参照して説明する。
態のTiAl基合金について説明する。図1は本実施形
態のTiAl基合金の顕微鏡組織の模式図である。図1
において、TiAl基合金10は、平均粒径の1〜65
μmのラメラー粒3が配列してなる微細組織を有してお
り、各ラメラー粒3の間隙を埋めるように基地4が形成
されている。このラメラー粒3はα2相(Ti3Al)
1’とγ相(TiAl)2’が交互に積層された、層状
のいわゆるラメラー組織からなり、各ラメラー粒3にお
ける積層方向はそれぞれ異なっている。又、基地4の面
積分率は30%を越えて70%未満であり、図1に示す
ように、β相5とγ相2が等軸的に複合化した組織であ
る。そして、積層方向が異なるラメラー組織により、材
料に生じる亀裂がジグザグになるので、亀裂が進行し難
くなり、材料の靱性や強度が向上するものと考えられ
る。
のラメラー粒が金属組織中に配列されていることが特徴
の一つである。さらに好ましくは、平均粒径1〜30μ
mのラメラー粒が密に配列されていると、金属組織がよ
り微細となり、高温延性および高温強度が向上する。
又、すべてのラメラー粒のうち、粒径20μm以下のラ
メラー粒が40%以上含まれていると、金属組織の微細
化、高温強度の向上の点でより好ましい。ここで、本発
明における「平均粒径」は、JIS−G0552に規定
する方法で測定される。
満とすることは工業的に困難であり、又、平均粒径が6
5μmを超えると、高温延性および高温強度が低下す
る。そして、平均粒径1〜65μmのラメラー粒、より
好ましくは平均粒径1〜30μmのラメラー粒を金属組
織中に密集して形成させると、ラメラー粒自体により強
度が向上するとともに、粒径の小さいラメラー粒が密集
するために金属組織が微細になり、高温強度が向上す
る。又、詳しくは後述するが、本発明においては熱間鍛
造後に所定の冷却速度で冷却が行われ、この冷却速度は
通常の熱処理のように炉内で徐冷する場合に比べて大き
いため、ラメラー間隔もより狭まり、これによっても強
度が向上する効果が得られる。
中のラメラー粒3の平均粒径(1〜65μm)、面積分
率(30〜70%)、ラメラー間隔(0.4〜1.5μ
m)、及びβ相の面積分率(5〜15%)が所定の範囲
に制御されて構成されている。このような範囲にそれぞ
れを制御することにより、十分な高温強度と、優れた機
械加工性を備えたTiAl基合金とされている。従っ
て、本発明のTiAl基合金を用いるならば、大型部材
でありながら軽量の蒸気タービンの動翼などを製造する
ことが可能であり、また角材等からの削り出しによって
これらの大型部品を製造する場合にも、容易に機械加工
が可能である。
加工時間を短くすることができるとともに、加工精度の
向上も望める。さらには、加工時のビビリや欠損を起こ
りにくくすることができるので、加工用の工具の寿命も
延ばすことができる。従って、動翼や航空機部品、自動
車部品などに本発明のTiAl基合金を用いるならば、
製造時間の短縮、歩留まりの向上、製造コストの低減が
可能である。
として、C,Si,Ni,W,Nb,B,Hf,Ta,
Zr,Moの群から選ばれる1種以上を合計で0.1〜
3原子%含有していてもよい。これらの微量元素は、適
宜高温強度、クリープ強度、耐酸化性を向上させるもの
である。この場合、各元素の合計含有量が0.1原子%
未満であると、上記した効果が不充分であり、又、3原
子%を超えても効果が飽和するとともに耐衝撃性の低下
をもたらすため望ましくない。
W,Zr,Hfは、TiAl基合金の耐酸化性を向上さ
せるために添加され、C,Si,Ni,Taは高温強度
を向上させる目的で添加される。また、それぞれの添加
量は、使用される微量元素により適宜最適な添加量を選
択すればよい。例えば、耐酸化性を向上させるためのN
bの添加量は1〜2.5原子%が好ましく、高温強度を
添加させるためのCの添加量は、0.1〜0.4原子%
が好ましい。
過程について、図2及び図3に基づいて説明する。な
お、金属組織の生成過程は、Ti−Al−X(Xは、M
n,Cr,Vのうち1種以上)の3元系合金のいずれを
を用いた場合でもほぼ同様であるので、以下では、Ti
−Al−Mnの3元系合金におけるラメラー粒の生成過
程について説明する。図2は各工程をTi−Al−C
r,Ti−Al−Mn,Ti−Al−V(Cr,V,M
n含有量はいずれも10原子%)の状態図に対応させて
説明したものであり、この図に示すように実線で示すT
i−Al−Mn系合金の(α+β+γ)相領域は、Ti
−Al−Cr,Ti−Al−V系合金のほぼ中間に位置
している。
子%、Mnを3〜10原子%含む、所定の組成のTiA
l基合金素材を、(α+β)相の平衡温度領域である1
150〜1350℃内の温度TAに保持する(第1加熱
工程)。次に、保持温度TAから高速塑性加工の最終温
度TBに至るまで冷却しながら高速塑性加工を行なう
(加工工程)。つまり、本発明の製造方法は、α+β域
から材料を冷却させ、ラメラー相への相変態を生じさせ
ながら、同時に塑性加工を行なう点で、1種の加工熱処
理といえる。
ては、押出、圧延、自由鍛造、型鍛造などを適用するこ
とができるが、この加工工程における加工度を大きくす
るほど、TiAl基合金の結晶粒径を細かくでき、これ
により高温強度と機械加工性を向上させることができる
ので、加工度を大きくすることができる鍛造法を採用す
ることが好ましい。
2加熱工程)。この時の保持温度は、(α+β)相の平
衡温度領域または(α+β+γ)相の平衡温度領域また
は(β+γ)相の平衡温度領域とされる。以上の工程に
より、金属組織が適切に制御されていることにより、十
分な高温強度と、優れた機械加工性を兼ね備えるTiA
l基合金が得られる。
ては、Ti−Al−X(X;Cr,V,Mnのうち1種
以上)の3元系合金が用いられているが、これは、以下
の理由による。まず、2元系のTiAl基合金であって
もAl濃度45〜48原子%とすることにより機械的特
性をある程度良好にすることは可能である。ところが、
図3のTi−Alの2元系状態図に示すように、かかる
成分のTiAl基合金のα相領域の温度は1300℃を
超え、(α+β)相の平衡領域では1400℃以上とな
っている。つまり、α相の単一領域に加熱して製造する
場合であっても1300℃以上に素材を加熱する必要が
あり、また、この製造方法で作製されたTiAl基合金
は基地中にβ相をほとんど含まないものであるため、機
械加工性が十分ではない。さらに、β相を基地中に析出
させて機械加工性を向上させようとすると、保持温度を
(α+β)相の平衡領域内とするために1400℃以上
に加熱する必要があり、この温度に材料を保持すること
は加熱炉の性能の制限から工業的には極めて困難であ
る。
r,V,Mnから選ばれる1種以上を3〜10原子%の
範囲で含有させることにより、図2の状態図に示すよう
に(α+β)相の平衡温度領域の下限を、1150〜1
250℃程度にまで低下させている。これにより、通常
の加熱炉を用いた場合でも問題なく製造が可能である。
TiAl基合金の使用目的に応じて適切なものが選択さ
れ、その含有量も目的に応じて選択される。具体的に
は、上記3つの元素は、TiAl基合金のα相及び(α
+β)相の平衡温度領域の下限を低下させる効果を有す
る点は共通しているが、高温強度の点では、α相あるい
は(α+β)相の平衡温度領域の下限が最も高いCrを
含有するものが最も優れている。その一方で、機械加工
性においてはMnを含有するものが最も優れている。こ
れは、Mnを含有させると、TiAl基合金を構成する
ラメラー粒3のα 2相1’、γ相2’、およびβ相5の
硬度が低下するので、加工工程における塑性加工性や、
実際に動翼などへの加工を行う際の機械加工性が向上す
るためである。
熱工程、加工工程、第2加熱工程)で生じる金属組織に
ついて以下に説明する。上記第1加熱工程では、(α+
β)相の平衡温度領域である1150〜1350℃内の
温度TAに保持されているので、金属組織はα相とβ相
が共存した状態となる。この第1加熱工程工程から平衡
状態の(β+γ)相に到達する際は,α相中からγ相が
特定の方位関係を持って析出することで,α相とγ相が
積層したラメラー組織が形成される。本発明において高
速塑性加工はα相とβ相の共存状態で行なわれ、この
時、金属組織中に加工歪みが多数導入される。そして、
この加工歪みを起点としてα相中の多くの部位からγ相
が析出するので、金属組織中に多数のラメラー粒が形成
されることになる。そして、塑性加工の最終段階である
加工工程では、各ラメラー粒が充分に成長する前に、隣
接するラメラー粒が競合した時点で粒成長が妨げられる
ので、結果として、粒径の小さなラメラー粒が多数密集
した微細組織が得られる。なお、ラメラー粒間の基地は
β相とγ相とを主体とする組織となる。そして、このβ
相は、低温では規則化したB2構造となる。
(α+β+γ)相または(β+γ)相の温度に再加熱し
て保持することにより、金属組織の再構成が行われ、加
熱温度によりラメラー粒およびβ相の面積分率を制御す
ることができ、加熱時間でラメラー粒の粒径を制御する
ことができ、さらに加熱後の冷却速度によりラメラー間
隔を制御することができる。特に、この第2加熱工程に
おいて冷却速度を変化させるならば、上記第1加熱工程
及び加工工程では制御することが困難なラメラー間隔を
容易に制御することができるので、所定のラメラー間隔
を有するTiAl基合金を得ることができる。
造法を適用できるのは、上記第1加熱工程において、素
材を(α+β)相の平衡温度領域に加熱し、金属組織中
に高温延性の優れたβ相を導入していることによる。ま
た、上記のような熱間鍛造を行うことにより、素材中の
鋳造欠陥が無くなるので、TiAl基合金を動翼などに
加工する際に、TiAl基合金に割れや欠けが発生しに
くくなり、この点においても本発明の製造方法により作
製されたTiAl基合金は機械加工性に優れていると言
える。
成の製造方法においては、TiAl合金の素材の組成お
よび各工程における製造条件によりTiAl基合金の金
属組織を制御することが可能である。以下に各工程にお
ける製造条件と、それに伴う金属組織の変化の傾向につ
いて説明する。
メラー粒3および基地4に析出するβ相5の面積分率を
制御することができる。含有量が多いほどβ相が多く析
出して機械加工性は向上するが、高温強度が低下するの
で、3〜10原子%の範囲内で使用目的に応じて設定す
ればよい。
は、その保持温度によりラメラー粒3及びβ相5の面積
分率を制御することができる。
性加工による加工度により、ラメラー粒3の結晶粒径を
制御することが可能である。すなわち、加工度を大きく
するほどラメラー粒の粒径が小さくなり、機械加工性
と、高温強度の両方が向上する。
温度、加熱時間、冷却速度により金属組織の制御を行う
ことができる。すなわち、加熱温度が高いほど、平衡状
態に近づくためにラメラー粒の面積分率が大きくなり、
加熱時間が長いほど、ラメラー粒の粒径は大きくなる。
また、冷却速度が大きいほどラメラー間隔は小さくな
る。(α+β+γ)相領域および(β+γ)相領域の熱
処理では加熱温度および時間が大きくなるほどラメラー
粒の面積分率は小さく、β相の面積分率は大きく、ラメ
ラー間隔は大きくなる。なお、この熱処理では冷却速度
の影響は少ない。つまり以上示した、これらの傾向に基
づいて適切な条件を設定すればよい。
行う工程(加工工程)においては、塑性変形率を毎秒1
0%以上の高速として、ラメラー組織の起点となる歪み
を与える。この場合、材料が高いひずみ速度下で変形を
受けるので、高速塑性加工時の材料をなるべく高温に保
ち、その変形能を大きくすることが必要である。そのた
め塑性加工の最終温度TBを1000℃以上とすること
が好ましい。塑性加工の最終温度TBが1000℃未満
であると、加工時の材料温度が低くなるので、変形能が
低下して材料が割れる虞があるからである。
製造方法においては、高速塑性加工の手段として鍛造法
を用いることが好ましい。これは、前記加工工程におけ
るTiAl基合金素材の加工度を大きくするほど、Ti
Al基合金の金属組織を微細化することが可能であり、
これにより、より優れた高温強度と機械加工性を備えた
TiAl基合金を製造することができるからである。具
体的には、前記高速塑性加工による有効歪みが、0.8
以上となるように前記TiAl基合金素材を加工するこ
とが好ましく、前記高速塑性加工による有効歪みが、
1.2〜4.0となるように前記TiAl基合金素材を
加工することがより好ましい。なお、大きな有効歪みを
短時間に得る方法としては高速四面鍛造が挙げられる。
高速四面鍛造について説明する。図4(a)は、据え込
み鍛造による加工過程を示す模式図であり、図4(b)
は、高速四面鍛造による加工過程を示す模式図である。
図4(a)に示す据え込み鍛造は、鋳塊を加工して作製
された円柱状のTiAl基合金素材40Aを、平坦な加
工面41aを有する加工部41,41で挟み込み、この
加工部41,41により前記素材40Aの軸方向(図示
上下方向)に圧下して円盤状のTiAl基合金素材42
を得る。
鋳塊を加工して作製された円柱状のTiAl基合金素材
40Bを、その側面を4つの加工部43A,43B,4
4A,44Bが取り囲むように配置し、これらの加工部
43A,43B,44A,44Bに設けられた平坦な加
工面43a、43b、44a、44bにより前記素材4
0Bを側面から加工する。この高速四面鍛造は、対向し
て配置された一対の加工部43A,43Bにより素材4
0Bを挟み込むように押圧して加工し、続いて対向して
配置されたもう一対の加工部44A,44Bにより素材
40Bを挟み込むように押圧して加工する。つまり、加
工部43A,43Bによる加工と、加工部44A,44
Bによる加工を交互に連続して行い、角柱状のTiAl
基合金素材46を得るものである。
金の形状は、四角柱状であるため、例えばタービンの動
翼などに用いる際に、少ない加工量で動翼の形状を得る
ことができる。また、加工量が少なくてすむので材料を
節約することができ、加工時間も短くすることができる
ので、製造コストの点で有利である。
明のTiAl基合金を使用した動翼について説明する。
図5に動翼の外観形状を例示する。この図5に示す動翼
において、動翼50は羽根50Aと基部50Bから成
り、基部50Bを円盤状のディスク(図示省略)の外周
の溝部に打ち込むことにより、動翼の全体が構成され
る。なお、上記動翼50の他、ディスク自体を本発明の
TiAl基合金を用いて製造してもよい。
優れているので、航空機用、船舶用あるいは各種産業用
のガスタービンや蒸気タービンの動翼に使用することが
可能で、信頼性を維持したままタービンの高性能化と軽
量化に寄与するものとなる。
合金の金属組織の違いによる特性への影響を検証するた
めに、加工工程後の熱処理条件を種々に変化させてTi
Al基合金を作製し、機械加工性及び高温強度の評価を
行った。
残部:Ti及び不可避不純物からなる組成を有するるT
iAl基合金をプラズマスカル溶解した後、鋳造してイ
ンゴットとし、さらに適宜切り出して表面層を除去し、
95mmφ×109mmの円柱状の鍛造用素材を得た。
800トンの冷間プレス機にて厚みが43.5mmの所
定形状になるまで据え込みで鍛造し、円盤状にした。鍛
造は、炉から押出材を取り出してから約30秒で行な
い、鍛造後空冷放置した。
保持した後取りだし、ラメラー粒径30μmの実施例1
のTiAl基合金試料を得た。
て、上記工程3における熱処理として、1350℃で1
0分間施した以外は、上記実施例1と同様にして、Ti
Al基合金を作製した。
て、上記工程3の熱処理を施さない以外は、上記実施例
1と同様にして、TiAl基合金を作製した。すなわ
ち、比較例1の試料は、鍛造ままのTiAl基合金であ
る。
料として、上記工程3の熱処理条件を、それぞれ900
℃で1時間保持、1370℃で10分間保持とした以外
は、上記実施例1と同様にしてTiAl基合金を作製し
た。
金の機械加工性を評価するために行った加工試験の概要
を図面を参照して以下に説明する。図6は、本加工試験
の実施方法を説明するための斜視図であり、図7は、図
6に示すエンドミルを拡大して示す上面図である。
うに、TiAl基合金試料30の側面上側の面にスクエ
アエンドミル31の側面を当て、このエンドミル31を
回転させてその側面により試料30を切削した。エンド
ミル31の送り方向は、試料30の被加工面30Aにほ
ぼ平行な方向とし、試料30とエンドミル31との接触
面(被加工部30B)の幅Rdは2mm、高さAdは8
mmとした。
り速度F(mm/min)を変化させて行い、エンドミ
ルのビビリや欠損が起こらない最大の送り速度Fを比較
することにより機械加工性を評価した。この送り速度F
は、図7に示す送り量Szを一定とし、エンドミル31
の回転数N(min-1)を変化させることにより調整し
た。この際、送り量Szは以下の式1により与えられる
ので、送り速度Fは、式2のようになり、送り速度Fが
大きいほど、単位時間当たりの切削量が大きくなる。
送り速度が大きいほど、機械加工性に優れるTiAl基
合金であることを示している。また、この送り速度が2
00mm/min以上であれば、例えば動翼などに加工
する際のように加工量が多くとも実用的な製造が可能に
なるので、本実施例では送り速度が、200mm/mi
nに達するか否かで機械加工性を評価した。
はエンドミル31の送り速度、nはエンドミル31の刃
数、N(min-1)はエンドミル31の回転数を示して
いる。また、D(mm)はエンドミル31の直径、V
(m/min)は、エンドミル31の切削速度(エンド
ミル31外周の周速)を示している。
具および加工条件を示す。 加工工具 種類:スクエアエンドミル 型番:SSUP4200ZX(住友電工社製) 母材:超硬 コーティング:TiAlNコーティング 形状:直径D 20mm 長さL 128mm 刃数n 4枚刃 ねじれ角 40° 突き出し量: 60mm 切削条件 切削速度V(m/min) 30 回転数N(min-1) 477〜796 半径方向切り込み深さRd(mm) 2 切削幅Ad(mm) 8 送り量Sz(mm/刃) 0.05〜0.3 送り速度F(mm/min) 95〜430 切削油剤 水溶性
0℃)における引張試験を行い、その引張強さを比較す
ることにより、各実施例及び比較例のTiAl基合金試
料の高温強度を評価した。また、本発明においては、こ
の引張強さが、65kgf/mm2以上であれば、十分
な高温強度を備えているものとして評価を行った。これ
は、上記の引張強さを備えているならば、タービンの動
翼などの用途に問題なく適用できるからである。
と、高温強度の試験結果を表1に併せて記載する。この
表に示すように、上記工程3における加熱温度を135
0℃以下とした実施例1,2の試料は、その金属組織に
おいて本発明の要件を満たしており、いずれも送り速度
が200mm/minを越え、また引張強さも65kg
f/mm2以上であり、十分な高温強度と、優れた機械
加工性を兼ね備えたTiAl基合金であることが確認さ
れた。
かった比較例1の試料は、最大の送り速度が95mm/
minと極端に悪くなった。これは、比較例1の試料は
鍛造ままであり,急激に冷えたため、ラメラー粒の間隔
が0.3μmと小さくなり、延性に劣るためである。ま
た、加熱条件を900℃で1時間とした比較例2の試料
は、ラメラー間隔が0.3μmと鍛造ままと大差ないた
め、本発明の要件を満たしていない。この比較例2の試
料は、機械加工性と高温強度のいずれも目標値に到達し
なかった。また、上記工程3における加熱温度を137
0℃とした比較例3の試料は、ラメラー粒の面積分率が
81%であり、本発明の要件を満たしていない。この比
較例3の試料は、高温強度は81kgf/mm2と目標
に達していたが、機械加工性が目標値に達しなかった。
例3の試料の金属組織の電子顕微鏡像を図8および図9
に示す。これらの図に示す構成要素のうち、図1の模式
図に示した構成要素と同一の構成要素には同一の符号を
付している。図8に示す実施例1の試料の金属組織にお
いては、ラメラー粒3が適度な間隔を有して配置され、
ラメラー粒3の間隙をγ相2とβ相5とからなる基地4
が埋めて構成されている。つまり、図9に示すラメラー
粒3は、金属組織の大部分において基地4を介して配置
されている。一方、図9に示す比較例3の試料の金属組
織は、ラメラー粒の面積分率が多く,間隙を埋める基地
4の面積分率が小さい。また金属組織中の大部分のラメ
ラー粒3は、隣接するラメラー粒3と接するようにして
配置されている。
比較的高温の硬度の小さいβ相5を含む基地4が、ラメ
ラー粒どうしの間隙を埋めている。従って、この金属組
織からは、機械加工時の変形が硬度の大きい,つまり機
械加工性を低下させるラメラー粒により阻害されにく
く、機械加工性に優れた合金であることが示唆されてい
る。これに対して、図9に示す比較例3の試料の金属組
織は、ラメラー粒3の面積分率が多い。従って、この金
属組織からは、加工時の変形がラメラー粒3に阻害され
て、機械加工性に劣る合金であることが示唆されてい
る。
3における保持時間により、TiAl基合金のラメラー
粒径を変化させ、表1に示す実施例3および比較例4の
TiAl基合金試料を作製し、機械加工性及び高温強度
の評価を行った。
を、1280℃で10分間とした以外は、上記実施例1
と同様として実施例3のTiAl基合金試料を作製し
た。
を、1280℃で1時間とした以外は、上記実施例3と
同様として比較例4のTiAl基合金試料を作成した。
および比較例4の試料について、機械加工性及び高温強
度の評価を行った結果を表1に示す。この表に示すよう
に、本発明の要件を満たす実施例3の試料は、優れた機
械加工性を備えていることが確認された。また、実施例
3の試料の電子顕微鏡組織は、実施例1の試料と同様の
組織を呈していた。これに対して、比較例4の試料は、
ラメラー粒の粒径が72μmであり、本発明の要件を満
たしていない。この比較例4の試料は、送り速度が19
1mm/minであり、目標値に達していない。これ
は、ラメラー粒が粗大化したことにより高温延性が低下
したためである。
における冷却速度を変化させて表1に示す実施例4,5
および比較例5のTiAl基合金試料を作製し、機械加
工性及び高温強度の評価を行った。
を1280℃で10分間とした以外は、上記実施例1と
同様にして、実施例4のTiAl基合金試料を作製し
た。
却速度を30℃/minとした以外は、上記実施例4と
同様にして、実施例5のTiAl基合金試料を作製し
た。
却速度を60℃/minとした以外は、上記実施例4と
同様にして、比較例5のTiAl基合金試料を作製し
た。
4,5、比較例5の試料の機械加工性および高温強度の
評価結果を表1に示す。表1に示すように、実施例4,
5および比較例5の試料の金属組織を比較すると、ラメ
ラー粒の間隔のみが異なっており、それぞれ1.5μ
m、0.4μm、0.2μmとされている。そして、表
1に示すように、その金属組織の構成が本発明の要件を
満たす実施例4および実施例5の試料は、最大の送り速
度が300mm/minを越えており、特に優れた機械
加工性を備えていることが確認された。一方、ラメラー
粒の間隔が0.2μmの比較例5の試料は、機械加工性
が191mm/minであり、目標値に達しなかった。
尚、実施例4,5の試料の電子顕微鏡組織は、実施例1
と同様の組織を呈していた。
積分率の適切な範囲を検証するために、表1に示すよう
にMn含有量を種々に変化させた実施例6,7および比
較例6,7のTiAl基合金試料を作製し、機械加工性
および高温強度の評価を行った。
に示すように、TiAl基合金素材としてTi−41A
l−5Mnなる組成の素材を用い、上記工程3における
加熱条件を1280℃で10分間とした以外は、上記実
施例1と同様にして作製した。実施例7の試料は、Ti
Al基合金素材としてTi−44Al−3Mnなる組成
の素材を用いた以外は、上記実施例6と同様にして作製
した。
Al基合金素材としてTi−45Al−2Mnなる組成
の素材を用いた以外は、上記実施例6と同様にして作製
した。比較例7の試料は、TiAl基合金素材としてT
i−40Al−6Mnなる組成の素材を用いた以外は、
上記実施例6と同様にして作製した。
6,7および比較例6,7のTiAl基合金試料につい
て、機械加工性及び高温強度の評価結果を表1に示す。
表1に示すように、実施例6,7および比較例6,7の
試料のβ相の面積分率は、それぞれ15%、5%、1
%、24%とされている。そして、本発明の要件を満た
す実施例6,7の試料は、最大の送り速度が300mm
/minを越えており、特に機械加工性に優れたTiA
l基合金であることが確認された。また、これら実施例
6,7の試料は、引張強さにおいても目標値に達してお
り、十分な高温強度を備えていることが確認された。ま
た、これら実施例6,7の試料の電子顕微鏡組織は、実
施例1の試料と同様の組織を呈していた。
例6の試料は、最大の送り速度が191mm/minで
あり、目標値に達しなかった。また、β相の面積率が2
4%とされた比較例7の試料は、最大の送り速度は43
0mm/minと優れていたものの、引張強さが55k
gf/mm2であり、高温強度が不足していた。
すように、添加元素としてNbを添加した試料を作製
し、これらの試料について耐酸化性および機械加工性を
評価した。
に示すように、TiAl基合金素材としてTi−42A
l−5Mn−1Nbなる組成の素材を用い、上記工程5
における加熱条件を1280℃で10分間とした以外
は、上記実施例1と同様にして作製した。実施例9の試
料は、表2に示すように、TiAl基合金素材としてT
i−42Al−5Mn−2Nbなる組成の素材を用いた
以外は、上記実施例8と同様にして作製した。
すように、TiAl基合金素材としてTi−42Al−
4.5Mn−3Nbなる組成の素材を用いた以外は、上
記実施例8と同様にして作製した。
例8,9の円盤状のTiAl基合金の電子顕微鏡組織
は、実施例1と同様の組織を呈していた。また、このよ
うにして得た実施例8,9および比較例8、ならびに実
施例1の試料について、機械加工性試験と共に,800
℃×500hの大気酸化試験を行い、それぞれの試料の
酸化増量から耐酸化性を比較した。これらの結果を表2
に併記する。実施例8,9のTiAl基合金は、Nb以
外がこの合金と同じである実施例1の試料に比べ、酸化
増量は大幅に低下している。つまり、Nbは本発明のT
iAl基合金の耐酸化性向上には非常に有効であること
が判る。なお、この効果はW、Ni、Hf、Zrにおい
ても同様である。
試料は、酸化増量はさらに低下しているものの、最大の
送り速度が、143mm/minであり目標値に達しな
かった。従って、Nbの添加量は、3原子%未満とする
ことが好ましい。
すように、添加元素としてC(炭素)を添加した試料を
作製し、これらの試料について高温強度および機械加工
性を評価した。
は、表3に示すように、TiAl基合金素材としてTi
−42Al−5Mn−0.1Cなる組成の素材を用い、
上記工程5における加熱条件を1280℃で10分間と
した以外は、上記実施例1と同様にして作製した。実施
例11の試料は、表3に示すように、TiAl基合金素
材としてTi−42Al−5Mn−0.4Cなる組成の
素材を用いた以外は、上記実施例10と同様にして作製
した。
すように、TiAl基合金素材としてTi−42Al−
5Mn−0.6Cなる組成の素材を用いた以外は、上記
実施例10と同様にして作製した。
例10,11の円盤状のTiAl基合金試料の電子顕微
鏡組織は、実施例1と同様の組織を呈していた。また、
このようにして得たTiAl基合金試料の高温強度と機
械的特性を上記と同様にして測定した。これらの結果を
表3に併記する。実施例10のTiAl基合金試料は、
C以外がこの試料と同じである実施例1の合金に比べ、
高温強度が向上しているが、その反面機械加工性の指標
である最大の送り速度は若干低下している。また、実施
例11の試料についても同様の傾向を示した。つまり、
Cは本発明のTiAl基合金に対して若干の機械加工性
の低下をもたらすものの、高温強度向上には非常に有効
であることが判る。なお、この効果はSi、B、Taに
おいても同様である。
の試料は、実施例1の試料に比して高温強度の向上が著
しいが、最大の送り速度が191mm/minであり、
目標値に達しなかった。従って、本発明のTiAl基合
金に対して、0.1〜0.4原子%のCを添加するなら
ば、優れた機械加工性を維持してかつ高温強度を向上さ
せることができる。
2の高速塑性加工における加工度が、TiAl基合金の
特性に与える影響を検証するために、塑性加工の方法と
して、据え込み鍛造と高速四面鍛造を行った試料を作製
し、これらの試料について機械加工性と高温強度の評価
を行った。
試料は、上記工程2において、図4(b)に示す高速四
面鍛造により高速塑性加工を施し、上記工程3における
熱処理の条件を1280℃で10分間とした以外は、上
記実施例1と同様にして作製した。
より、それぞれの有効歪みを導出し、同時に据え込み鍛
造により加工された実施例1の試料についても、有効歪
みを導出した。それぞれの有効歪みを表4に示す。
の円盤状のTiAl基合金試料の電子顕微鏡組織は、実
施例1と同様の組織を呈していた。また、このようにし
て得たTiAl基合金試料の高温強度と機械的特性を上
記と同様にして測定した。これらの結果を表4に併記す
る。表4に示すように、高速四面鍛造により加工度を向
上させた実施例12,13の試料は、機械加工性と高温
強度のいずれも実施例1の試料と比して優れたものであ
った。これは、高速塑性加工時の加工度を向上させたこ
とにより、金属組織を構成する結晶粒が微細化したため
である。従って、高速塑性加工時の加工度をより大きく
するならば、本発明のTiAl基合金の機械加工性およ
び高温強度を、より優れたものとすることができる。
TiAl基合金は、α2相と、γ相とが交互に積層され
た平均粒径1〜65μmのラメラー粒が分散し、該ラメ
ラー粒の間隙をβ相およびγ相を含む基地が埋めてなる
微細組織を有し、前記ラメラー粒の面積分率が30〜7
0%であり、前記ラメラー間隔が0.4〜1.5μmで
あり、前記β相の面積分率が5〜15%である構成とし
たことので、金属組織中に形成されたラメラー粒自体に
より十分な高温強度とともに、ラメラー粒間のβ相の効
果によって高温変形能が向上し、また同時に,機械加工
時の刃先温度は高温であることから塑性加工が容易とな
る。これにより、従来難削材であったTiAl基合金を
動翼や航空機部品などの大型部品に使用した場合に、効
率よく加工を行うことが可能となる。
2.5原子%のNbを添加して構成するならば、優れた
機械加工性と、耐酸化性を兼ね備えたTiAl基合金と
することができる。
に、0.1〜0.4原子%のC(炭素)を添加して構成
するならば、優れた機械加工性と、特に優れた高温強度
を兼ね備えたTiAl基合金とすることができる。
は、TiAl基合金素材を、(α+β)相の平衡温度領
域に保持し、その後に塑性加工することにより、欠陥が
無くなるとともに、加工歪みと相変態の相乗効果で組織
が微細化される。さらに、その後に、TiAl基合金素
材を(α+β)相または(α+β+γ)相または(β+
γ)相の平衡温度領域に保持して、適当な速度で冷却す
ることでラメラー粒及びβ相の面積分率やラメラー粒の
粒径およびラメラー間隔を制御し、優れた機械加工性
と、高温強度を備えたTiAl基合金を製造することが
できる。
た上記本発明のTiAl基合金を用いたことにより、動
翼を形成するために必要な機械加工にかかるコストを低
減することができるので、低コストの動翼を提供するこ
とができる。また、上記本発明のTiAl基合金を用い
た動翼は、十分な高温強度を備えているので航空機用、
船舶用あるいは各種産業機械用のガスタービンや蒸気タ
ービンの動翼として使用すれば、タービンの性能向上と
軽量化に大いに役立つものとなる。
組織の電子顕微鏡像を模式的に示す図である。
n,Ti−Al−Vの3元系合金の模式状態図である。
図である。
す模式図であり、図4(b)は、高速四面鍛造の加工過
程を示す模式図である。
図である。
方法を説明するための構成図である。
拡大して示す平面図である。
の電子顕微鏡像である。
微鏡像である。
…β相、10…TiAl基合金、50…動翼
Claims (21)
- 【請求項1】 α2相と、γ相とが交互に積層された平
均粒径1〜65μmのラメラー粒が分散し、該ラメラー
粒の間隙をβ相およびγ相を含む基地が埋めてなる微細
組織を有し、前記ラメラー粒の面積分率が30〜70%
であり、前記ラメラー粒内のラメラー間隔が0.4〜
1.5μmであり、前記β相の面積分率が5〜15%で
あることを特徴とするTiAl基合金。 - 【請求項2】 Al:38〜45原子%、Mn:3〜1
0原子%、残部:Ti及び不可避不純物からなることを
特徴とする請求項1に記載のTiAl基合金。 - 【請求項3】 Al:38〜45原子%、CrまたはV
のうち1種以上:3〜10原子%、残部:Ti及び不可
避不純物からなることを特徴とする請求項1に記載のT
iAl基合金。 - 【請求項4】 1〜2.5原子%のNbを含有すること
を特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の
TiAl基合金。 - 【請求項5】 Mo,W,Zrから選ばれる1種以上の
元素を0.5〜2原子%含有することを特徴とする請求
項1ないし4のいずれか1項に記載のTiAl基合金。 - 【請求項6】 0.1〜0.4原子%のC(炭素)を含
有することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1
項に記載のTiAl基合金。 - 【請求項7】 Si,Ni,Taから選ばれる1種以上
の元素を0.2〜1.0原子%含有することを特徴とす
る請求項1ないし6のいずれか1項に記載のTiAl基
合金。 - 【請求項8】 少なくとも38〜45原子%のAlと、
3〜10原子%のMnを含有するTiAl基合金素材
を、(α+β)相の平衡温度領域に保持する第1加熱工
程と、 該温度に保持したTiAl基合金素材を、所定の加工最
終温度まで冷却しながら高速塑性加工する加工工程と、 該加工後のTiAl基合金素材を、(α+β)相の平衡
温度領域または(α+β+γ)相の平衡温度域または
(β+γ)相の平衡温度領域に保持する第2加熱工程と
を備えたことを特徴とするTiAl基合金の製造方法。 - 【請求項9】 少なくとも38〜45原子%のAlと、
3〜10原子%のCr及び/またはVを含有するTiA
l基合金素材を、(α+β)相の平衡温度領域に保持す
る第1加熱工程と、 該温度に保持したTiAl基合金素材を、所定の加工最
終温度まで冷却しながら高速塑性加工する加工工程と、 該加工後のTiAl基合金素材を、(α+β)相の平衡
温度領域または(α+β+γ)相の平衡温度域または
(β+γ)相の平衡温度領域に保持する第2加熱工程と
を備えたことを特徴とするTiAl基合金の製造方法。 - 【請求項10】 前記TiAl基合金素材として、1〜
2.5原子%のNbを含有するものを用いることを特徴
とする請求項8または9に記載のTiAl基合金の製造
方法。 - 【請求項11】 前記TiAl基合金素材として、0.
1〜0.4原子%のC(炭素)を含有するものを用いる
ことを特徴とする請求項8ないし10のいずれか1項に
記載のTiAl基合金の製造方法。 - 【請求項12】 前記第1加熱工程の保持温度が、11
50〜1350℃であることを特徴とする請求項8ない
し11のいずれか1項に記載のTiAl基合金の製造方
法。 - 【請求項13】 前記第2加熱工程の保持温度が、10
00℃〜1350℃であることを特徴とする請求項8な
いし12のいずれか1項に記載のTiAl基合金の製造
方法。 - 【請求項14】 前記加工最終温度が1000℃である
ことを特徴とする請求項8ないし13のいずれか1項に
記載のTiAl基合金の製造方法。 - 【請求項15】 前記加工工程の冷却速度を50〜70
0℃/分として加工することを特徴とする請求項8ない
し14のいずれか1項に記載のTiAl基合金の製造方
法。 - 【請求項16】 前記第2加熱工程の冷却速度を5〜5
0℃/分として加工することを特徴とする請求項8ない
し15のいずれか1項に記載のTiAl基合金の製造方
法。 - 【請求項17】 前記加工工程において、前記高速塑性
加工による有効歪みが、0.8以上となるように前記T
iAl基合金素材を加工することを特徴とする請求項8
ないし16のいずれか1項に記載のTiAl基合金の製
造方法。 - 【請求項18】 前記加工工程において、前記高速塑性
加工による有効歪みが、1.2〜4.0となるように前
記TiAl基合金素材を加工することを特徴とする請求
項17に記載のTiAl基合金の製造方法。 - 【請求項19】 前記高速塑性加工として鍛造法を用い
ることを特徴とする請求項8ないし18のいずれか1項
に記載のTiAl基合金の製造方法。 - 【請求項20】 前記鍛造法が、高速四面鍛造であるこ
とを特徴とする請求項19に記載のTiAl基合金の製
造方法。 - 【請求項21】 請求項1ないし7のいずれか1項に記
載のTiAl基合金を用いたことを特徴とする動翼。
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