JP2015004092A - 熱間鍛造型TiAl基合金 - Google Patents

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Abstract

【課題】 高温強度に優れるとともに、熱間鍛造材としての加工性に優れたTiAl基合金の提供を目的とする。
【解決手段】 本発明のTiAl基合金は、Al:40.0〜42.8原子%、次式によって求められるCr当量、
Cr当量=Cr+Mo+0.5Mn+0.25Nb+0.25V
が1.2〜2.0原子%、残部:Ti及び不可避不純物からなり、α2相とγ相が交互に積層された平均粒径30〜200μmのラメラ粒が密に配列してなる微細組織を有することを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、航空機エンジン、発電用ガスタービン等の動翼やディスクに用いて好適なTiAl基合金に関し、特に熱間鍛造性が良好で、高温での強度が高く、常温での延性も良好なTiAl基合金に関する。また、本発明は、上記のTiAl基合金の製造方法に関するものである。
近年、航空機エンジン、発電用ガスタービンに用いる材料として、軽量で耐熱性に優れるTiAl基合金が注目されている。特に、回転部材の場合、軽量であるほど遠心応力が少なくなるので、最高到達回転数の向上や部品サイズの大型化を図ることができる。
このTiAl基合金は、高温強度に優れた金属間化合物であるTiAlやTiAlを主体とする合金であり、上述の如く耐熱性に優れている。そして、軽量耐熱合金であるTiAl合金の使用形態として鋳造材と熱間鍛造材がある。
鋳造材は高温強度に優れたα2/γ完全ラメラ組織であり850℃程度まで使用可能であるが鍛造性が不良であり、また結晶粒が粗大なため常温延性に乏しいという問題がある。そこで、例えば、特許文献1では、所定の組成を有するTiAl基合金素材を、鋳造材には存在しない(α+β)相の平衡温度領域に保持し、その後に塑性加工することにより、鋳造欠陥を無くすことができるとともに、加工歪みと相変態の相乗効果で組織を微細化することが提案されている。さらに、その後に、TiAl基合金素材を(α+β)相または(α+β+γ)相または(β+γ)相の平衡温度領域に保持して、ラメラ粒及びβ相の面積分率やラメラ粒の粒径を制御し、優れた機械加工性と、比較的低い温度での強度を備えたTiAl基合金を製造することができる。塑性加工としては、押出、圧延、自由鍛造、型鍛造を使用することができる。
特許第4209092号公報 特許第4287991号公報 特開平6−49565号公報
しかしながら、上記した鋳造材の場合、室温での延性向上の点ではなお不充分なものがあった。特に、各種エンジン、タービン等に用いる動翼では、運転時に該動翼にスラッジ等の異物が衝突したり、動翼の製造時においてディスクの外周に翼をハンマ−で植え付ける際の衝撃で翼が破壊することがあるので、TiAl基合金の常温延性を向上させることが必要になってくる。ところが、上記鋳造材の場合、鋳造組織の結晶粒径は一般に粗大であることから、常温延性を向上することは困難であった。
また、鋳造材の場合、自動車用ターボチャージャ部品等の小型部品の製造は比較的容易であるが、鋳型への湯流れの問題や引け巣等の内在する鋳造欠陥等の問題から、大型部品の製造が困難であった。一方、TiAl基合金の鍛造材ではこの鋳造欠陥の問題を防止することができる。TiAl合金の鍛造方法として恒温鍛造ならびに通常の熱間鍛造がある。一般にTiAl合金の高温変形能は乏しいため、従来は高温の一定温度で保持したまま非常に低速で鍛造する恒温鍛造法が用いられてきた。この恒温鍛造法では温度を高温で一定に保つため、鍛造用の型についてもこれ全体を加熱する必要があり特殊な装置が必要である。また、鍛造時間が非常に長くなるため、素材や型の酸化防止のために加熱部全体を真空または不活性雰囲気にする必要があった。そこで、これらの制約に伴う装置能力の限界から大型の素材を鍛造することは困難であった。また特殊装置を使用することから作業費用は非常に高価であった。
一方、最近提案されている熱間鍛造材では、例えば特許文献3に示すように、TiAl合金中に高温変形能に優れた(即ち高温強度の低い)β相をβ安定化元素(Mn、V、Nb、Cr等)添加で生成させることで、Ni合金や鉄合金と同様の通常の汎用加熱炉と汎用プレスを用いた通常の鍛造、いわゆる熱間鍛造を可能としている。なお、熱間鍛造とは素材のみを加熱炉で加熱し、そこから素材を取り出して油圧プレス等において大気中で急速に冷却しながら高ひずみ速度で鍛造する方法であり、装置の制約が少ないことから大型素材が比較的安価に製造できる。
しかし、ここで提案された合金では、鍛造後に熱処理を行っても最終製品中に高温強度の低いβ相が残留するため、製品の高温強度が低く使用可能温度は最高700℃程度と、鋳造材の使用可能温度である850℃程度と比較して、大幅に低くなるという課題があった。
本発明者は、各種元素を添加したTiAl基合金の平衡状態図および組織変化過程を鋭意検討して、熱間鍛造材として高温変形能に優れていると同時に、熱処理後の最終製品中にβ相が残留しないような組成を明らかにすることで、本発明の完成に至ったものである。
即ち、本発明は、TiAl基合金における上記した問題を解決し、熱間鍛造材としての鍛造性に優れるとともに、最終的な状態で高温強度に優れるTiAl基合金及びその製造方法の提供を目的とする。
本発明のTiAl基合金は、上記課題を解決するもので、Al:40.0〜42.8原子%、次式によって求められるCr当量、
Cr当量=Cr+Mo+0.5Mn+0.25Nb+0.25V
が1.2〜2.0原子%、残部:Ti及び不可避不純物からなり、α2相とγ相が交互に積層された平均粒径30〜200μmのラメラ粒が密に配列してなる微細組織を有することを特徴とする。
本発明のTiAl基合金のさらに他の一つは、上記TiAl基合金において、さらにC、Si、W、B、Ta、Zrの群から選ばれる1種以上の元素を合計で0.1〜3原子%含有したTiAl基合金である。これらの元素を添加することにより、高温強度、クリ−プ強度、耐酸化性を高めることができる。
本発明のTiAl基合金の製造方法は、上記課題を解決するもので、α2相とγ相が交互に積層された平均粒径30〜200μmのラメラ粒が密に配列してなる微細組織を密に有するTiAl基合金を製造する方法であって、Al:40.0〜42.8原子%、次式によって求められるCr当量、
Cr当量=Cr+Mo+0.5Mn+0.25Nb+0.25V
が1.2〜2.0原子%、残部:Ti及び不可避不純物からなるTiAl基合金素材を、α相とβ相の共存温度領域に保持して熱間鍛造する工程と、前記熱間鍛造したTiAl基合金素材を、1180〜1260℃の温度範囲で0.5〜20時間間保持すると共に、0.3〜10[℃/分]の冷却速度で熱処理する工程とを備えたことを特徴とする。
本発明のTiAl基合金において、Alは40.0〜42.8原子%の範囲では、熱処理後の最終的な状態でβ相が存在せず、α2/γの完全ラメラ組織となる。また、鍛造時はα+β相となるため熱間鍛造性が良好となる。熱間鍛造性が良好とは、具体的には図4に示した条件の熱間鍛造を実施しても、大きな割れが発生しないことをいい、酸化等での表面組織変化に伴う微細な割れは含まれないものとする。Alが40.0原子%に満たない場合は、鍛造性は良好でβ相も残留しないが、α2相の比率が多くなりすぎるため、常温延性が低下する。Alが42.8原子%を超す場合は、鍛造性が不良になる。
本発明のTiAl基合金において、Cr当量は1.2〜2.0原子%の範囲が良い。Cr当量が1.2原子%に満たない場合は、鍛造時のβ相の量が不足のため鍛造性が不良になる。Cr当量が2.0原子%を超す場合は、熱処理後にβ相が残留するため、高温強度が低く使用可能温度が低くなる。
本発明のTiAl基合金において、ラメラ粒の結晶粒径が200μm以下となると、常温延性が確保されて、好ましい。ラメラ粒の平均粒径を30μm未満とすることは工業的に困難であり、又、平均粒径が200μmを超えると、室温延性が低下する。
本発明のTiAl基合金の製造方法において、α+β域で熱間鍛造したTiAl基合金素材を熱処理する際、α単相域での平衡温度領域に保持する温度範囲は、1180〜1260℃とする。1180℃未満の場合は、α+γ域のため、α単相とならず冷却後に完全ラメラ組織が形成されない。1260℃を超す場合は、α+β域のため、冷却速度によってβ相が残留することがある。
本発明のTiAl基合金の製造方法において、熱間鍛造したTiAl基合金素材を熱処理する際、α単相域での平衡温度領域内に保持する時間は、0.5〜20時間とする。保持時間が0.5時間未満の場合は、時間が短すぎα単相化しない。保持時間が20時間を超す場合は、時間が長すぎα粒(最終的なラメラ粒)の結晶粒径が粗大化する。
本発明のTiAl基合金の製造方法において、熱間鍛造したTiAl基合金素材をα単相域での平衡温度領域内に所定時間保持した後の冷却速度は、0.3〜10[℃/分]がよい。冷却速度が0.3[℃/分]未満の場合は、遅すぎて、ラメラ粒内のα2相とγ相の間隔が粗大化するため、延性と強度が低下する。冷却速度が10[℃/分]を超す場合は、早すぎて、α2相の比率が多くなりすぎるため、延性が低下する。
本発明のTiAl基合金の製造方法は、具体的には次の工程による。まず、所定の成分のインゴットを溶解する。次に、インゴットの熱間鍛造をする。即ち、従来のTiAl熱間鍛造合金と同様にα+β領域で実施する。従来材と同様のβ相の効果で熱間鍛造性は確保できる。また、鍛造の効果で結晶粒径は微細化する。
続いて、鍛造素材の熱処理を行う。α単相域で所定時間保持後に所定の速度で冷却することで、α→α+γ→α2+γ変態を生じさせる。α域での保持時間を適正化することで結晶粒粗大化はなく、最終的に高温強度と常温延性に優れた細粒のα2/γ完全ラメラ組織を得ることができる。
本発明では、組成を従来のTiAl熱間鍛造材と大幅に変えることで、従来の熱間鍛造材ではなかった相変態過程(α+β→α→α+γ→α2+γ)を実現し、鍛造、熱処理の過程でこの相変態を利用することで最終的な状態で高温強度の高いα2/γ完全ラメラ組織を得るものである。つまり、熱間鍛造性と高温強度の両立を可能としたものである。また、鍛造の効果で結晶粒が微細化することから常温延性は鋳造材より大幅に優れている。
本発明のTiAl熱間鍛造材を1350℃で熱間鍛造した場合の外観写真である。 図1の鍛造後の材料の光学顕微鏡組織写真である。 本発明のTiAl熱間鍛造材をα域の1200℃で2時間保持後に3℃/分℃で冷却した供試材の反射電子像写真である。 本発明のTiAl熱間鍛造材を含むTiAl合金の熱間鍛造性を評価するための熱間鍛造試験を説明する図である。 本発明のTiAl熱間鍛造材を含むTiAl合金の熱間鍛造性に及ぼすAl濃度とCr当量の影響を説明する図で、熱間鍛造での割れ発生状態を説明してある。 図5の熱間鍛造試験後の試験素材の外観写真の例である。 本発明のTiAl熱間鍛造材を含むTiAl合金鍛造材の熱処理後の組織変化に及ぼすAl濃度とCr当量の影響を説明する図であり、β相残留の有無について説明してある。 図7のTiAl合金鍛造材の熱処理後の反射電子像写真の例である。 比較例としてのTiAl鋳造材のTiAl二元系状態図における代表的な組成範囲の説明図である。 比較例としてのTiAl鋳造材の光学顕微鏡組織写真である。 比較例としてのTiAl鋳造材の反射電子像組織写真である。 比較例としてのTiAl鋳造材を1350℃で熱間鍛造した場合の外観写真である。 比較例としての従来のTiAl熱間鍛造材の状態図上における代表的な組成範囲の説明図である。 比較例としての従来のTiAl熱間鍛造材用のインゴットを1300℃で熱間鍛造した場合の外観写真である。 比較例としての従来のTiAl熱間鍛造材を1300℃で2時間分持し、20℃/分で冷却熱処理した供試材の反射電子像である。
表1は、本発明のTiAl熱間鍛造合金ならびに比較例1、2の材料における成分、熱間鍛造温度、熱処理条件、組織、並びに室温、850℃、950℃での引張特性を示している。
図1は本発明のTiAl熱間鍛造材(組成Ti−41Al−0.6Cr−4Nb(at%))を1350℃で熱間鍛造した場合の外観写真である。鍛造温度はα+β領域となっている。高温変形能に優れたβ相が存在するため、この熱間鍛造材の鍛造性は良く、割れが無い。
図3は図1の鍛造後の材料の光学顕微鏡組織写真である。右隅の横線は、10μmを示している。鍛造による塑性ひずみの効果で結晶粒径が微細化し、例えば10〜100μm程度になっている。
図3は本発明のTiAl熱間鍛造材(組成Ti−41Al−0.6Cr−4Nb(at%))を熱間鍛造後にα域の1200℃で2時間保持後に3℃/分で冷却した供試材の反射電子像写真である。(A)は低倍の写真、(B)は高倍の写真である。α2相、γ相よりなる完全ラメラ組織であり、鋳造材と同様になっている。この熱処理後の材料には、高温変形能が優れた(高温強度が低い)β相が存在しない。粒径は鍛造のままに較べると若干粗大化しているが、鋳造材に較べると大幅に小さい。そこで、この熱間鍛造材は、以上の組織のため高温強度、常温延性ともに優れている。
図4は本発明のTiAl熱間鍛造材を含むTiAl合金の熱間鍛造性を評価するための熱間鍛造試験を説明するもので、(A)はインゴットの外観写真と鍛造試験に供した素材の切断位置(下側を使用)、(B)は熱間鍛造試験の情況写真、(C)は熱間鍛造試験での高さの変化の説明図である。
図4(A)は、表2、3の組成についてインゴットを作製した外観写真である。インゴット作製方法は、イットリアるつぼを用いた高周波溶解による。インゴットの原料は、スポンジTi、Al粒に加えて、添加元素としてCr、Mo、Mn、Nb、Vを単独または複合添加する。溶解雰囲気はアルゴンガス中である。写真のインゴット重量は約700gであるが、押し湯切断後は約450gとなる。
図4(B)および(C)は、熱間鍛造試験の情況写真および説明図で、加熱温度は1350℃、プレスの速度は50mm/秒以上、鍛造方向は据え込み、鍛造回数は7回で、都度再加熱を行っている。熱間鍛造試験での高さの変化は、90mm、80mm、70mm、55mm、40mm、30mm、20mm、15mmであり、順次圧縮をしている。
表2と表3は、熱間鍛造性と熱処理後のβ相残留有無を調査したインゴットの組成と試験結果を示すものである。
図5は本発明のTiAl熱間鍛造材を含むTiAl合金の熱間鍛造性に及ぼすAl濃度とCr当量の影響を説明する図で、熱間鍛造での割れ発生状態を説明してある。ここで、図5の各プロットは別々のインゴットに相当している。各添加元素の効果は異なるが、Cr+Mo+0.5Mn+0.25Nb+0.25V(at%)を用いれば結果が良く整理できる。上記Cr当量が1at%以上、Al濃度が43at%以下において、割れずに熱間鍛造できることが確認できた。
図6は図5の熱間鍛造試験後の試験素材の外観写真の例である。図6(A)は割れ無しの場合、(B)は割れ発生の場合を示している。
図7は本発明のTiAl熱間鍛造材を含むTiAl合金鍛造材の熱処理後の組織変化に及ぼすAl濃度とCr当量の影響を説明する図であり、β相残留の有無について説明してある。ここでは、表2、3の組成で作製したインゴットの熱間鍛造材を使用して試験している。試験条件は、熱間鍛造材から切り出した小片について、1350℃で2時間保持後に0.2℃/分で冷却する熱処理を実施している。この図に関する熱処理試験条件では、各組成で最終的にβ相が残留するかどうか調べるため、非常に遅い速度で冷却した。従って結晶粒径は粗大化している。
各添加元素の効果は異なるが、Cr当量であるCr+Mo+0.5Mn+0.25Nb+0.25V(at%)を用いればうまく結果を整理できる。図7の斜めに位置する点線より上側の組成ではβ相が残留し、それ以下ではβ相は冷却過程で消失し、α2/γ完全ラメラ組織が形成されている。なお、この図において点線で囲んだ範囲は、α2/γ完全ラメラ組織が形成され、かつ図5に示した熱間鍛造性が良好であった組成である。
図8は図7のTiAl合金鍛造材の熱処理後の反射電子像写真の例で、(A)はβ相が残留した組織の例 、(B)はβ相が残留せず完全ラメラ組織となった組織の例を示してある。
[比較例1]
図9は、TiAl鋳造材のTiAl二元系状態図における代表的な組成範囲の説明図である。鋳造材ではβ相安定化元素(Mn、Cr、Mo、V等)は添加されても少量のため、相の状態は図9から変化しない。相変態は、α→α+γ→α2+γであり、高温においてもβ相は安定でない。
図10は、従来組成のTiAl鋳造材(組成Ti−46at%Al)の光学顕微鏡組織写真である。結晶粒径が粗大なので常温延性に乏しい
図11は、従来組成のTiAl鋳造材(組成Ti−46at%Al)の反射電子像組織写真である。TiAl鋳造材は、γ相とα2相で構成され、この2相が層状にした組織であるラメラ組織となっている。ここでは、すべての組織がこのラメラ組織で構成されている為、完全ラメラ組織となっている。TiAl鋳造材は完全ラメラ組織であり、高温強度は高く850℃程度まで使用可能である。
図12は、従来組成のTiAl鋳造材(組成Ti−46at%Al)を1350℃で熱間鍛造した場合の外観写真である。β相(高温変形能に優れた相)が存在しないため、変形能が悪く、大きな割れが発生した。
[比較例2]
図13は、従来組成のTiAl熱間鍛造合金の状態図上における代表的な組成範囲の説明図である。この状態図は、Al濃度を42at%に固定し、β安定化元素(この場合はV)を添加してβ相を安定化したTiAl−V三元系合金の状態図である。添加元素がMn、Cr、Mo、Nbでも基本的な構成は共通しているが、各相の存在位置は添加元素に応じて変化する。また、Al濃度の変化によっても各相の存在位置は変化する。ここでは、矩形の実線で囲んだ領域は添加元素がVの場合での従来のTiAl熱間鍛造合金の組成であるが、Vが9〜13at%の領域であるため、1300℃付近でβ+α相領域が出現しており、1000℃以下の低温側でもβ相が安定であるため、どのような熱処理を行っても最終製品にβ相が残る。また製品として高温で長時間使用すれば平衡状態に近づきこのβ相の量が増加していくこともある。
図14は、従来組成のTiAl熱間鍛造材(組成Ti−42Al−5Mn(at%))を1300℃で熱間鍛造した場合の外観写真である。鍛造温度はα+β領域である。高温変形能に優れたβ相が存在するため鍛造性は良く、割れが無い。
図15は、従来組成のTiAl熱間鍛造材(組成Ti−42Al−5Mn(at%))を1300℃で2時間保持し、20℃/分で冷却熱処理した供試材の反射電子像である。この熱間鍛造材の組織は、β相、γ相、ならびにα2/γラメラ組織から構成されている。高温変形能が優れた(高温強度が低い)β相が存在するため、高温強度は低く、使用可能温度700℃程度である。そして、熱処理条件の変化でこのβ相を消失させることは不可能である。この組成では低温でβ相が安定するためである。
本発明のTiAl基合金は、熱間鍛造性が良好であることから大型部品が製造でき、また高温強度、常温延性等に優れているので航空機エンジン、発電用ガスタービンの動翼やディスク等として使用するのに好適である。
本発明のTiAl基合金を用いると高温強度と常温延性に優れた大型の素材が得られる。このような素材を用いた動翼やディスクは、優れた高温強度や常温延性を有することから、航空機エンジン、発電用ガスタービンの動翼やディスクとすれば、信頼性を維持しつつ、回転数の上昇や部品サイズの大型化によるエネルギ−効率の向上に貢献することが可能となる。

Claims (3)

  1. Al:40.0〜42.8原子%、次式によって求められるCr当量、
    Cr当量=Cr+Mo+0.5Mn+0.25Nb+0.25V
    が1.2〜2.0原子%、残部:Ti及び不可避不純物からなり、α2相とγ相が交互に積層された平均粒径30〜200μmのラメラ粒が密に配列してなる微細組織を有することを特徴とするTiAl基合金。
  2. α2相とγ相が交互に積層された平均粒径30〜200μmのラメラ粒が密に配列してなる微細組織を密に有するTiAl基合金を製造する方法であって、Al:40.0〜42.8原子%、次式によって求められるCr当量、
    Cr当量=Cr+Mo+0.5Mn+0.25Nb+0.25V
    が1.2〜2.0原子%、残部:Ti及び不可避不純物からなるTiAl基合金素材を、
    α相とβ相の共存温度領域に保持して熱間鍛造する工程と、
    前記熱間鍛造したTiAl基合金素材を、1180〜1260℃の温度範囲で0.5〜20時間間保持すると共に、0.3〜10[℃/分]の冷却速度で熱処理する工程とを備えたことを特徴とするTiAl基合金の製造方法。
  3. 前記TiAl基合金素材は、前記熱処理工程では、α→α+γ→α2+γ変態を生じさせることを特徴とする請求項2に記載のTiAl基合金の製造方法。

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