JP7233659B2 - 熱間鍛造用のチタンアルミナイド合金材及びチタンアルミナイド合金材の鍛造方法並びに鍛造体 - Google Patents

熱間鍛造用のチタンアルミナイド合金材及びチタンアルミナイド合金材の鍛造方法並びに鍛造体 Download PDF

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Description

本開示は、熱間鍛造用のチタンアルミナイド合金材及びチタンアルミナイド合金材の鍛造方法並びに鍛造体に関する。
TiAl(チタンアルミナイド)合金は、Ti(チタン)とAl(アルミニウム)との金属間化合物によって構成される合金である。TiAl合金は、耐熱性に優れており、Ni基合金よりも軽量で比強度が大きいことから、タービン翼等の航空機用エンジン部品等に適用されている。但し、TiAl合金は、延性が乏しく難加工材であることから、熱間鍛造する場合には、恒温鍛造が行われる。特開平5-255781号公報(下記特許文献1)には、アルミニウム化チタン合金をベースとして、添加元素による材料特性の改善効果が記載されている。また、特開2015-004092号公報(下記特許文献2)には、40.0~42.8原子%のAlを含有するTiAl合金が提案され、高温強度に優れ、熱間鍛造材として利用可能であることが記載されている。特開2009-144247号公報(下記特許文献3)には、ニオブを含有するチタンアルミナイド合金の加工方法が記載され、構造部品の製造に利用されることが教示されている。
特開平5-255781号公報 特開2015-004092号公報 特開2009-144247号公報
TiAl合金の恒温鍛造による加工は、金型及びTiAl合金材をほぼ同じ温度に保持して低歪速度で実施される。従って、鍛造素材及び金型が高温に曝され、その周辺部品を含む鍛造装置も熱的影響を受けるので、鍛造温度が高いと、熱負荷の大きさによって鍛造装置等の耐久性が低下し易い。このようなことから、TiAl合金材に汎用の熱間加工方法が適用可能となるように、より低い温度での鍛造を実現することが望まれている。それには、TiAl合金材の熱間加工性を改善することが必要である。
そこで、本開示の課題は、熱間鍛造時の加工性が改善された熱間鍛造用のチタンアルミナイド合金材及びチタンアルミナイド合金材の鍛造方法を提供し、優れた品質の鍛造体を提供することである。
本開示の一形態によれば、熱間鍛造用のチタンアルミナイド合金材は、原子数比で、43.0%以上且つ45.0%以下のアルミニウムと、4.0%以上且つ6.0%以下のニオブと、1.5%以上且つ3.5%以下のクロムと、残部のチタン及び不可避不純物とからなる化学組成を有することを要旨とする。
また、本開示の他の形態によれば、熱間鍛造用のチタンアルミナイド合金材は、原子数比で、43.0%以上且つ45.0%以下のアルミニウムと、4.0%以上且つ6.0%以下のニオブと、1.5%以上且つ3.5%以下のクロムと、0%を超え0.25%以下のホウ素と、残部のチタン及び不可避不純物とからなる化学組成を有することを要旨とする。
更に、本開示の一形態によれば、チタンアルミナイド合金材の熱間鍛造方法は、上記の熱間鍛造用のチタンアルミナイド合金材を用意する工程と、前記チタンアルミナイド合金材の状態図におけるβ相、(β+α)相及び(β+α+γ)相の何れかの相平衡温度領域内の温度に鍛造温度を設定して、非酸化性雰囲気中で前記チタンアルミナイド合金材を前記鍛造温度に保持しながら鍛造する熱間鍛造工程とを有することを要旨とする。
前記熱間鍛造工程における鍛造温度は、1200℃以上且つ1300℃以下とすることができる。上記チタンアルミナイド合金材の熱間鍛造方法は、更に、前記熱間鍛造工程によってえられるチタンアルミナイド合金鍛造体を、1240℃以上且つ1290℃以下の温度に加熱する第1の熱処理と、前記第1の熱処理を経たチタンアルミナイド合金鍛造体を、900℃以上且つ1100℃以下の温度に1時間以上保持する第2の熱処理とを有するとよい。前記第1の熱処理を経たチタンアルミナイド合金鍛造体の温度は、前記第2の熱処理の前に、一旦低下させるとよい。
更に、本開示の一形態によれば、チタンアルミナイド合金鍛造体は、原子数比で、43.0%以上且つ45.0%以下のアルミニウムと、4.0%以上且つ6.0%以下のニオブと、1.5%以上且つ3.5%以下のクロムと、残部のチタン及び不可避不純物とからなる化学組成を有し、ラメラ組織の結晶粒と、γ相の結晶粒と、β相の結晶粒とを含む金属組織を有し、前記金属組織におけるγ相の体積率が80%以上であることを要旨とする。
また、本開示の他の形態によれば、チタンアルミナイド合金鍛造体は、原子数比で、43.0%以上且つ45.0%以下のアルミニウムと、4.0%以上且つ6.0%以下のニオブと、1.5%以上且つ3.5%以下のクロムと、0%を超え0.25%以下のホウ素と、残部のチタン及び不可避不純物とからなる化学組成を有し、ラメラ組織の結晶粒と、γ相の結晶粒と、β相の結晶粒と、ホウ化物粒子とを含む金属組織を有し、前記金属組織におけるγ相の体積率が80%以上であることを要旨とする。
本開示によれば、鍛造温度をより低い温度に設定した恒温鍛造によってTiAl合金材の熱間鍛造が可能であるので、一般的な金属における鍛造技術を利用してTiAl合金材を鍛造加工することが可能である。従って、製造加工費や製造装置の維持費等において経済性を向上し、製品の製造効率を高めることによって、TiAl合金材の普及に貢献することができる。
Ti-44原子%Alを基本組成とし、β相安定化元素の含有率による相平衡状態を示す状態図である。 鍛造用のTiAl合金材における、温度とピーク応力との関係を示すグラフである。 熱間鍛造後の熱処理の効果を説明するための、引っ張り試験による応力歪み線図である。 熱間鍛造及び熱処理を行ったTiAl合金材における、金属組織中のγ相の体積率と破断延性との関係を示すグラフである。 熱間鍛造及び熱処理を行ったTiAl合金材の金属組織を走査型電子顕微鏡(SEM)によって撮影した画像である。
Ti(チタン)の金属組織は、常温ではα相を示し、同素変態温度以上に加熱した状態ではβ相を示す。合金化元素としてAl(アルミニウム)をTiに添加すると、Alは、α相(α-Ti)を安定化するように作用して合金の変態温度を上昇させる。他方、Mo(モリブデン)、V(バナジウム)、Nb(ニオブ)、Fe(鉄)、Cr(クロム)、Ni(ニッケル)等の元素を添加すると、これらの元素は、β相(β-Ti)を安定化するように作用し、合金の変態温度を低下させる。
TiAl(チタンアルミナイド)合金は、Ti(チタン)とAl(アルミニウム)との金属間化合物であるTiAl(γ相)やTiAl(α相)等で構成される合金材である。TiAl合金は、歪みが少ない鍛造速度であれば、恒温鍛造による熱間加工が可能であることが知られている。しかし、TiAl合金の熱間加工性が改善されてより低い温度での恒温鍛造が可能になれば、鍛造装置等の熱負荷が低下して製造における経済性が高まるので、TiAl合金材の利用分野を拡大することができる。本開示では、より低い温度での恒温鍛造が可能なように熱間加工性が改善された熱間鍛造用のTiAl合金材(以下、鍛造用のTiAl合金材と称することがある)を提示する。また、熱間鍛造用のTiAl合金材の製造方法、及び、熱間鍛造用のTiAl合金材の鍛造方法について併せて提示する。
本開示においては、状態図におけるβ相の領域が低温側に拡大するようにTiAl合金の化学組成を設計することによって、TiAl合金の熱間加工性を改善する。これには、β相を安定化させる元素の添加が有効であり、β相は、相対的に柔らかく熱間加工性に優れる性質を有する。従って、本開示における鍛造用のチタンアルミナイド合金材(TiAl合金材)は、β相を安定化させる元素を含有するTiAl合金で構成された溶製材であり、目標とする鍛造温度において金属組織がβ相を含む状態になるように設計された化学組成を有する。また、Alは、α相安定化元素であるので、β相安定化元素が有効に機能するように、TiAl合金の化学組成の設計においてAlの含有率は低めに設定される。鍛造用のTiAl合金材は、上記構成成分に加えて、B(ホウ素)を含有してもよく、ホウ素の添加は任意である。ホウ素の添加によって、金属組織中の結晶粒が微細化し、TiAl合金材の高温での延性が高まる。従って、必要に応じて、好適な含有率の範囲でホウ素を鍛造用のTiAl合金材に配合することができる。
上述の化学組成を有する鍛造用のTiAl合金材は、熱間鍛造のために恒温状態に加熱されると、その金属組織にβ相が含まれる状態になる。β相は、高温強度は低いが、柔らかい相であるので、金属組織中にβ相を含むTiAl合金材は、鍛造加工が容易である。鍛造を経て常温に冷却されたTiAl合金鍛造体は、金属組織中にβ相を含み得るが、β相は、熱処理による性質改変が可能である。つまり、鍛造体に熱処理を施すことによって合金の性質を改善可能である。具体的には、γ相を生成するような熱処理を施すことによって高温強度を高めることができる。熱処理を経て冷却した鍛造体は、ラメラ組織(約20体積%程度のα相がγ相中に層状に析出した組織)及びγ相が分散した金属組織を呈するTiAl合金材によって構成される。その際、TiAl合金が、金属組織中に80%以上の高い体積率でγ相を有する状態であると、鍛造体は、高い破断延性を発揮し得る。
以下に、本開示の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。
熱間鍛造用のTiAl合金材は、上述のように、Ti及びAlを主要成分とするTiAl合金をベースとして構成され、β相安定化元素を含有する。β相安定化元素として、Nb(ニオブ)及びCr(クロム)が使用される。具体的には、TiAl合金材は、原子数比で、43.0%以上且つ45.0%以下のアルミニウムと、4.0%以上且つ6.0%以下のニオブと、1.5%以上且つ3.5%以下のクロムと、残部のチタン及び不可避不純物とからなる化学組成を有するとよい。TiAl合金材は、更に、必要に応じてB(ホウ素)を含有してもよい。この場合、TiAl合金材は、ホウ素を含有し、原子数比で、43.0%以上且つ45.0%以下のアルミニウムと、4.0%以上且つ6.0%以下のニオブと、1.5%以上且つ3.5%以下のクロムと、0%を超え0.25%以下のホウ素と、残部のチタン及び不可避不純物とからなる化学組成を有する。
本開示において、熱間鍛造用のTiAl合金材を構成するTiAl合金におけるAl(アルミニウム)の含有率は、43原子%以上且つ45原子%以下であるとよい。Alの含有率が低いほど、TiAl合金の鍛造性及び引っ張り強さは向上するが、Tiの含有率が相対的に大きくなるので、TiAl合金の比重が大きくなり、比強度が低下する。これを考慮して、Alの含有率の下限は、43原子%に設定される。高温強度及び靱性に優れるラメラ組織が形成される合金組成におけるAl含有率は、47~48原子%であるのに対し、本開示の鍛造用のTiAl合金材におけるAlの含有率の上限は、45.0原子%に設定される。これは、Alがα相安定化元素である点を考慮して、β相の安定化に有利な組成を意図した設計に基づいている。このような組成により、TiAl合金材の金属組織は、ラメラ組織の結晶粒子と共に、TiAl粒子(γ相)及びTi粒子(β相)を含有し得る。Alの含有率が45.0原子%より高いと、TiAl合金材の高温鍛造性が低下して、高い鍛造温度が必要になる。
TiAl合金材において、Nb(ニオブ)及びCr(クロム)は、金属組織中でβ相を安定化させる作用を有するβ相安定化元素である。β相安定化元素は、各々、単独で使用して変態温度の低下に有効であり、状態図におけるβ相の存在領域を低温側へ拡大することが可能である。それにより、鍛造時の高温変形性が向上して加工性が改善される。この点に関し、本開示では、Nb及びCrを併用する。これによって、TiAl合金におけるピーク応力が顕著に低下して、鍛造性が格段に向上する。Crは、共析反応を生じてβ共析型の状態図を示す元素であるが、そのβ安定化性能はNbより大きい。Nb及びCrを併用することによって、相乗的にβ相を安定化できるので、Crの含有率を低く抑えてω相の析出による加工性の劣化を回避しつつ、効果的に高温変形性を高めることができる。故に、より低い温度でのTiAl合金の熱間鍛造が可能である。Nb及びCrは、合計で5.5原子%以上且つ9.5原子%以下となるように各々の添加量を設定するとよい。合計の含有率が5.5原子%未満であると、変態温度の低下が不十分なために鍛造温度の低下が難しくなり、9.5原子%を超えると、TiAl合金の機械強度が低下する。また、相乗的にβ相を安定化する上で、Nb含有率/Cr含有率の比率(原子数比)が1.7~2.6程度、好ましくは2.0程度であるとよい。このような範囲において、Crの共析反応による脆化を防止しつつ、好適にβ相を安定化させることができる。
Nbは、耐酸化性及び強度の向上に有効な元素である。Nbの含有率は、4原子%以上且つ6原子%以下であるとよい。Nbの含有率がこの範囲であると、鍛造時の加熱状態においてβ相を良好に形成することができる。Nbの含有率が4原子%未満であると、β相の安定化が十分でなく、Crとの併用による延性の向上効果を得難くなるので、TiAl合金の鍛造性の改善が難しくなる。6原子%を超える場合、偏析を生じる虞があり、また、TiAl合金の比重が増加する。
Crは、高いβ相安定化効果を有するβ相安定化元素であり、添加によって、TiAl合金の鍛造性及び室温延性が向上する。但し、β共析型の状態図を示す元素であるので、Crの含有率は、1.5原子%以上且つ3.5原子%以下に設定するとよい。Crの含有率が1.5原子%未満であると、TiAl合金の延性が十分に改善されず、3.5原子%を超えると、TiAl合金が脆化して強度が低下する虞がある。
B(ホウ素)は、金属組織に生じる結晶粒を微細化して、TiAl合金の延性を高める機能を有する。Bの添加によって、1100℃以上の温度範囲におけるTiAl合金の延性が大きくなり、1200℃以上では特に延性の増加が顕著である。このように、Bは、高温における延性を増加させる機能を有するので、熱間鍛造性を向上させるのに有効である。また、Bは、β相安定化元素であるNb及びCrと組み合わせて添加することによって、鍛造時の変形抵抗を低下させる効果を有し、この点においても鍛造性の向上に有効である。
Bの添加は任意であり、添加する場合、TiAl合金のBの含有率は、0原子%を超え0.25原子%以下であるとよい。Bの含有率が増加するにつれて、組織中に生じる結晶粒の粒径が200μm以下に微細化して、粒径を100μm以下に抑えることも可能である。結晶粒の微細化によって、TiAl合金の延性が向上する。但し、Bの含有率が0.25原子%を超える範囲では、結晶粒の更なる微細化の効果は殆ど得られず、却って靱性が低下するので、Bの含有率は0.25原子%以下に設定するとよい。尚、Bの含有率が1.0原子%を超えると、鋳造によるTiAl合金材の調製時に100μmを超える大きさのホウ化物が生じ易くなるので、却って延性が低下して鍛造性が低下する。このホウ化物は、TiB,TiB等で構成され、針状等の形状に析出する。
このように、0.25原子%以下の含有率でBを配合することによって、TiAl合金材の金属組織に生じる結晶粒の粒径が200μm以下となるような微細な構造に形成することができる。ホウ化物は、そのような結晶粒に含まれ、粒径100μm以下の粒子として生じる。このような析出粒子の微細化により、TiAl合金の延性が増加し、鍛造性を向上させることができる。更に、ホウ化物は、鍛造及び熱処理を施したTiAl合金において、金属組織の結晶粒内に粒径100μm以下の粒子として微細に析出し、これによりTiAl合金の機械強度が向上する。尚、本開示で示す結晶粒の粒径は、金属組織断面の画像解析によって結晶粒の面積から換算される面積平均粒径を意味する。
Tiは、高温において空気や雰囲気中のガス成分と反応し、表面酸化や不純物の内部拡散に伴って、酸素、窒素等の不純物を含み得る。Alも、表面酸化によって酸素を含み得る。本開示において、鍛造用のTiAl合金材は、このような不可避不純物を含んでもよい。但し、汚染による合金材の性質劣化は好ましくないので、鍛造用のTiAl合金材の製造において、高温で原料を取り扱う溶融や鋳造等の環境には酸化防止を配慮することが望ましい。
上述のような鍛造用のTiAl合金材を製造する製造方法について説明する。
鍛造用のTiAl合金材の製造方法は、全体組成が上述のTiAl合金材の化学組成となる原料を加熱溶融してTiAl合金材を鋳造する鋳造工程を有する。原料は、粉末、金属片又は金属塊の何れの形態であってもよく、また、これらのうちの2以上の混合形態であってもよい。粉末、金属片及び金属塊は、何れも、TiAl合金材を構成する成分の単味金属、又は、複数の構成成分の合金の何れの状態であってもよい。単味金属の混合物、単味金属と合金の混合物、合金単体、及び、合金と合金の混合物等の形態から原料を適宜選択することができる。全体として上述のTiAl合金材の化学組成となるような各成分の配合によって原料を調製することができる。或いは、予め上記化学組成に調製された原料を入手して使用してもよい。尚、ホウ素単味素材を用いて原料を調製する場合、調製中の損失、計量誤差等を考慮して、ホウ素の含有率については、0.2原子%以上且つ1.0原子%以下であるように配合するとよく、0.5原子%以上且つ1原子%以下となるように配合すると好ましい。
鋳造工程では、上述のように調製した原料を、加熱溶融する溶融処理と、溶融した原料を冷却してインゴット(鋳塊)等に鋳造する成形処理とが行われる。これにより、上述の化学組成を有するTiAl合金の溶製材が得られ、これを鍛造用のTiAl合金材として使用することができる。鋳造は、一般的に金属材料の鋳造で用いられる溶解技術及び鋳造技術を適宜利用して行うとよい。例えば、真空アーク溶解-遠心鋳造法、溶解-鋳造法(LEVICAST法)、フェイスコートした坩堝と遠心鋳造を組み合わせた精密鋳造技術等が挙げられる。鋳造工程で使用する装置は、不純物の混入及び酸化等の反応を防止可能な装置であればよく、真空誘導炉等の鋳造装置を用いることができる。
鋳造によって得られる溶製材に対して、HIP(熱間静水圧プレス)処理を行ってもよい。鋳造欠陥等の内部欠陥などを、HIP処理によって抑制することができる。HIP処理には、一般的な金属材料のHIP処理で用いられているHIP装置を使用することができる。
また、鍛造用のTiAl合金材の製造方法は、更に、鋳造工程によって得られるTiAl合金の溶製材の表面の鋳肌(表面層)を除去する表面加工を有してよい。これにより、表面の酸化被膜等による加工性の低下が防止できるので、表面性状が良好なTiAl合金材を鍛造用のTiAl合金材として提供することができる。表面加工は、切削、研削等によって実施可能である。外部で製造された鍛造用のTiAl合金材を入手して鍛造する場合、表面加工は、熱間鍛造方法における準備段階として鍛造工程の直前に実施すると好適である。
鍛造用のTiAl合金材は、以下のような熱間鍛造方法に従って、所望の形状のTiAl合金鍛造体に加工することができる。即ち、TiAl合金材の熱間鍛造方法は、上述の化学組成を有する熱間鍛造用のTiAl合金材を用意する工程と、非酸化性雰囲気中で熱間鍛造用のTiAl合金材を鍛造温度に加熱し、鍛造温度を維持しながら鍛造する熱間鍛造工程とを有する。前述の表面加工は、熱間鍛造用のTiAl合金材を用意する工程に含むことができる。
鍛造温度は、TiAl合金の状態図において、β相が存在し得る相平衡温度領域、つまり、β相、(β+α)相及び(β+α+γ)相の何れかの相平衡温度領域内の温度に設定される。具体的には、TiAl合金の状態図を参照して、以下のように鍛造温度を設定するとよい。
図1は、Ti-44原子%Alを基本組成として、β相安定化元素の含有率(Nb及びCrの含有率の合計[原子%])とTiAl合金の相平衡状態との関係を調べた状態図である。β相安定化元素の含有率が5.5~9.5原子%の範囲の合金について、加熱して温度を室温から上昇させると、合金の相状態は、(β+γ)相、(β+α+γ)相、及び、(β+α)相を経てβ相へ変化する。尚、β相安定化元素の含有率が6原子%以下の場合は、(β+α+γ)相と(β+α)相との間に、(α+γ)相及びα相を経由し得るが、α単相の領域は小さい。従って、温度変化の過程でα相粒子の粗大化は抑制し易い。図1の状態図から、1200℃(1473°K)以上、好ましくは1250℃(1523°K)以上の温度において、合金中にβ相が存在して鍛造性が向上することが解る。従って、鍛造温度は、1200℃以上、好ましくは1250℃以上に設定することができる。鍛造温度の上限は、β相の存在し得る範囲において設定可能であるが、上述の化学組成のTiAl合金材においては1300℃(1573°K)以下の温度において好適に鍛造することができる。故に、この温度を鍛造装置等の耐久性の観点による上限としてよい。このように、状態図に基づいて、鍛造温度を1200℃程度以上且つ1300℃程度以下の範囲に設定することができ、TiAl合金材の温度をこの範囲に保持して恒温鍛造を実施するとよい。
熱間鍛造工程は、酸化防止のために、非酸化性の雰囲気中で行うとよい。非酸化性の雰囲気として、例えば、アルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気が挙げられる。鍛造方式は、自由鍛造、型鍛造、回転鍛造、押し出し鍛造などの一般的な金属材料の鍛造方式から適宜選択して適用することができ、適用する鍛造方式に従って適切な鍛造装置を適宜選択して利用すればよい。ホットプレスや熱間圧延においても、本開示における熱間鍛造用のTiAl合金材を使用可能である。型鍛造の場合、TiAl合金材の温度維持の点から、金型温度は700℃程度以上であるとよい。熱間鍛造による加工は、0.1/秒程度又はそれ以上の歪速度において好適に実施できる。TiAl合金材におけるピーク応力が小さく、変形抵抗が低いので、1~10/秒程度の歪速度でも鍛造割れを生じずに良好に鍛造加工することが可能である。
鍛造温度に加熱した状態のTiAl合金材は、金属組織中にβ相が存在することで高温延性が向上し、鍛造による塑性変形が良好に進行する。鍛造によって、TiAl合金材中の鋳造欠陥が減少し、金属組織は、細かい結晶粒状に分断される。鍛造における加工度を大きくするほど、金属組織を微細化し得る。有効歪みが0.5~1程度となる鍛造加工が可能である。
熱間鍛造工程を経て得られるチタンアルミナイド合金鍛造体(TiAl合金鍛造体)は、一旦冷却される。冷却は、鍛造装置内での冷却でも外部での空冷であってもよい。熱間鍛造用のTiAl合金材の化学組成は、β相を安定化するように設計されているので、鍛造後の冷却において、金属組織におけるα相の成長による結晶粒の粗大化は抑制される。
TiAl合金鍛造体中には、β相が残留し得るが、熱処理を施すことによって、金属組織を再構成して製品に求められる高温強度を付与することができる。従って、TiAl合金材の鍛造方法は、更に、熱間鍛造工程によって得られる鍛造体に施される熱処理を有するとよい。熱処理は、酸化防止のために、非酸化性雰囲気中で行うとよい。非酸化性雰囲気として、アルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気、真空雰囲気、水素ガス等の還元性雰囲気等が挙げられる。
TiAl合金鍛造体の熱処理は、第1の熱処理工程及び第2の熱処理工程を含むとよい。第1の熱処理工程においては、鍛造工程によって得たTiAl合金鍛造体を1240℃以上且つ1290℃以下の温度に加熱する。この加熱温度は、状態図における(β+α)相又は(β+α+γ)相の何れかの相平衡温度領域にあり、鍛造体を構成するTiAl合金は、α相が存在し得る状態になる。
第1の熱処理工程は、TiAl合金鍛造体の内部温度が上記温度範囲に達する程度に行えばよい。従って、第1の熱処理工程の処理時間は、概して15分程度以上に設定することができ、1~5時間程度の範囲に設定すると実用的である。
第1の熱処理を経た鍛造体は、第2の熱処理を施す前に冷却して、温度を一旦低下させるとよい。第2の熱処理工程では、第1の熱処理工程を経た常温のTiAl合金鍛造体を、900℃以上且つ1100℃以下の温度に1時間以上保持する。好ましくは、1時間以上且つ5時間以下の間、加熱温度を保持するとよい。第2の熱処理を経たTiAl合金鍛造体は、この後、室温付近まで冷却される。
第1の熱処理工程においては、鍛造による結晶粒の応力歪みが緩和され、歪みにより変形した粒子に代わって、歪みのない新たな結晶粒が生じる。この際、TiAl合金中に生成したα相が、微細な結晶粒として分散して析出する。つまり、第1の熱処理は、再結晶化処理として作用する。他方、第2の熱処理工程は、結晶粒界における歪みを緩和する時効処理としての効果を有する。第2の熱処理工程において、α相及びγ相によって構成されるラメラ組織の結晶粒が、α相から生成する。第2の熱処理工程により、鍛造体を構成するTiAl合金は、ラメラ組織の結晶粒、γ相の結晶粒及びβ相の結晶粒を有する金属組織を呈する(後述の図5参照)。β相安定化元素は、Ti中に固溶する。
ホウ素を含有するTiAl合金材の場合は、TiAl合金鍛造体を熱処理することによって、微細なホウ化物が針状に結晶粒内に析出する。従って、鍛造体を構成するTiAl合金は、ラメラ組織の結晶粒、γ相結晶粒及びβ相結晶粒に加えて、粒子サイズが0.1μm程度以下の微細なホウ化物粒子を含んだ金属組織を呈する。ホウ化物粒子は、TiB,TiB等によって構成される。
鍛造用のTiAl合金は、温度変化の過程において結晶粒の粗大化を抑制し易い化学組成に設計され、延性の向上により高温加工性が改善される。故に、鍛造割れを抑制しつつ、より大きな歪速度で熱間鍛造することができる。従来のTiAl合金の恒温鍛造では、5×10-5/秒から5×10-1/秒程度の低歪速度で熱間鍛造加工が行われるが、本開示の鍛造用のTiAl合金では、ピーク応力が低く抑えられる。従って、1/秒以上の大きい歪速度で鍛造することができ、10/秒以上の歪速度での高速鍛造も可能となるので、タービン翼等の部品の生産性を向上させることができる。また、鍛造加工を経たTiAl合金鍛造体は、熱処理によって延性を向上させて耐久性を付与することができる。従って、鍛造用のTiAl合金材は、タービン翼等の航空機用エンジン部品を熱間鍛造によって製造するための鍛造用素材として有用である。
(鍛造用のTiAl合金材の調製)
試料1~8の各々について、以下に記載する化学組成(原子数比)を有するTiAl合金原料を用意し、これを高周波真空溶解炉にて溶解して鋳型に投入し、常温まで冷却して鋳造することによって、鍛造用のTiAl合金材の試料を調製した。尚、不可避不純物については、その含有量は少量であるので、以下においては記載を省略する。
試料1: Ti-44.4Al-4.1Nb-5.2V
試料2: Ti-43.7Al-4.1Nb-5.1V-0.1C
試料3: Ti-43.9Al-4.1Nb-5.1V-0.2C
試料4: Ti-44.7Al-3.7Nb-3.5V
試料5: Ti-44.6Al-3.6Nb-3.8V-0.07B
試料6: Ti-45.9Al-5.3Nb-4.0V-0.15B
試料7: Ti-43.6Al-5.2Nb-2.6Cr-0.15B
試料8: Ti-43.0Al-4.0Nb-1.0Mo-0.15B
(ピーク応力の測定による鍛造性の評価)
圧縮試験の試験片として、上述の試料の調製において所定形状の鋳型を用いて、鋳型の形状に対応した鍛造用のTiAl合金材の試料(試料1~8)を作成した。各試料について、試験片を用いて以下の圧縮試験を行った。
温度を1150~1300℃の範囲で一定に維持し、試験装置の2枚の平行板面で挟んだ試験片に荷重を加えて、0.01/秒、0.1/秒、1/秒及び10/秒の各歪速度で圧縮試験を行って、真歪み1.2までの真応力-真歪み曲線を求めた。この曲線における最大応力をピーク応力として得た。尚、歪速度については、真歪みの歪速度とした。温度を上記範囲内で変更して上述の圧縮試験を繰り返すことによって、温度とピーク応力との関係を得た。結果を図2に示す。
図2によれば、TiAl合金材におけるピーク応力は、試料7において顕著に低く抑えられており、他の試料に比べて試料7の低温での鍛造性が非常に高いことが明らかである。図2の結果に基づくと、試料7のピーク応力は、他の試料において50℃程度以上高い温度における値に相当する。従って、他の試料より50℃程度以上低い温度で鍛造可能であり、鍛造温度を1200~1300℃程度に設定可能であると見なすことができる。このような鍛造性の向上は、NbとCrの両方が添加された組成であることに起因すると考えられる。
(鍛造用のTiAl合金材試料の調製:試料9)
実施例1と同様の調製方法に従って、Ti-44.0Al-5.0Nb-2.5Crの化学組成を有する鍛造用のTiAl合金材の試料(試料9)を調製した。尚、試料の調製において、鋳型を用いて所定形状に鍛造用のTiAl合金の試料を成形した。
(TiAl合金材の熱間鍛造)
鍛造用のTiAl合金材の試料をアルゴンガスによる不活性雰囲気中で加熱して温度を1250~1275℃に保持し、歪速度:1/秒でプレス型鍛造して、所定の寸法(φ8mm×12mm)の試験片に加工した。
(鍛造後の熱処理及び評価)
鍛造した試験片を用いて、以下の条件C1~C7の何れかに従って、第1の熱処理工程及び第2の熱処理工程を実施した。各熱処理工程の後には、炉冷により一旦常温まで試験片の温度を低下させた。熱処理を行った試験片について、グリーブル試験機を用いて試験片に引っ張り試験を行って、常温での伸びを測定した。具体的には、アルゴンガスによる不活性雰囲気を試験雰囲気として、試験片の両端に所定の引っ張り力を加えて試験片が破断するまで徐々に引っ張り力を増加させた。これにより、応力歪み線図を作成して、伸びを測定した。尚、条件C6又はC7の熱処理を経た試験片における応力歪み線図を図3に示す。
第1の熱処理 第2の熱処理
条件C1:1250℃×1h、900℃×1h
条件C2:1250℃×1h、900℃×5h
条件C3:1250℃×1h、950℃×1h
条件C4:1250℃×1h、950℃×5h
条件C5:1280℃×1h、1100℃×1h
条件C6:1300℃×1h、 なし
条件C7:1250℃×1h、1000℃×1h
熱処理後の試験片の伸びの値は、1.1%(条件C1)、1.2%(条件C2)、1.2%(条件C3)、1.0%(条件C4)、1.8%(条件C5)、0.1%(条件C6)、1.4 %(条件C7)となった。従って、上記結果から、TiAl合金材の破断延性(伸びの値)は、熱処理条件によって異なることが理解される。
条件C6の結果から、第1の熱処理のみでは伸びの改善は小さいことが解る。つまり、第1の熱処理及び第2の熱処理の両方を施すことが伸びの改善に著しく有効である。また、第1の熱処理は、1250℃以上の温度において有効に機能し、1250~1280℃の範囲での第1の熱処理の温度設定は適正である。第2の熱処理は、900℃以上の温度において有効であり、900~1100℃の範囲での第2の熱処理の温度設定は適正である。
実施例2において熱間鍛造を施した試料9のTiAl合金材試料を利用して、様々に条件を変更して熱処理を施した試験片を作成した。得られた試験片の各々について、実施例2と同様の引っ張り試験を行って伸びの値[%]を測定した。
他方、試験片の各々について、TiAl合金の金属組織を走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察した。金属組織の撮影画像におけるコントラスト情報を利用した画像処理によって、画像中のγ相(TiAl)の面積率を算出した。得られた値を金属組織中のγ相の体積率[%]と見なして、γ相の体積率と上述で得た伸びの値との関係を示すグラフを作成した。得られたグラフを図4に示す。
(試料10)
実施例2と同様の調製手順に従って、Ti-44.0Al-4.2Nb-3.3Crの化学組成を有する鍛造用のTiAl合金材の試料(試料10)を調製した。このTiAl合金材の試料について、実施例2と同様の熱間鍛造を実施して所定の寸法の試験片に加工し、条件C3で熱処理を施した。得られた試験片について、上述と同様に、引っ張り試験による伸びの測定、及び、金属組織の撮影画像に基づくγ相の体積率の測定を行った。
(TiAl合金材の鍛造体に対する熱処理の影響の評価)
γ相の体積率には、γ相結晶粒の体積率と、ラメラ組織を構成するγ相の体積率とが含まれる。図4のグラフによれば、金属組織中のγ相の体積率と合金材の破断延性(伸びの値)とには明らかに相関性があり、γ相の増加によってTiAl合金の延性が向上することが理解される。図4においては、金属組織中のγ相の体積率が約80%以上であると試験片が1%以上の伸びを示す。このことから、γ相の体積率が約80%以上になるように熱処理を施すことによって、好適な延性を発揮するTiAl合金材の鍛造体を提供可能であることが明らかである。
尚、図4のグラフにおいて、試料9として表示する測定値は、鍛造体に条件C3又はC6の熱処理を施した試験片における結果であり、上述の試料10における測定結果を併せて記載している。同じ条件C3で熱処理を施した試料9及び試料10は、β相安定化元素におけるNb/Crの比率のみが異なるので、これらの比較によってNb/Crの比率による影響を知ることができる。これによれば、Nb/Crの比率が高い方が、合金材に延性を付与し易く、Nb含有率/Cr含有率の比率(原子数比)が1.7程度以上において延性が高い。つまり、Nb含有率/Cr含有率の比率が1.7程度以上において、Crの共析反応による脆化が抑制されて良好な延性が発揮されると考えられる。
図5は、試料9のTiAl合金材の鍛造後に、条件C5で熱処理を施した試験片における金属組織の走査型電子顕微鏡(SEM)による撮影画像である。図5によれば、TiAl合金鍛造体の金属組織は、ラメラ組織(α/γ)の結晶粒、β相(Ti)結晶粒及びγ相(TiAl)結晶粒を有する。これらは、鍛造によって微細に破断された結晶粒から生成している。ラメラ組織は、高温強度と、ある程度の延性及び靱性とを有し、γ相は、高温強度に優れている。また、残留β相の微細粒子によって高温での延性が付与される。従って、ラメラ組織粒子、γ相粒子及びβ相粒子が微細に混合して分散する組織構造は、高温強度が改善され、優れた耐久性も備える。従って、同一化学組成に基づいて、TiAl合金材の熱間鍛造における加工性の向上と、鍛造後のTiAl合金材の高温強度の保持とを両立することが可能である。
TiAl合金材の熱間鍛造における温度を低下すると共に、高温強度及び常温での延性に優れたTiAl合金鍛造体を提供可能であるので、航空機エンジン、発電用ガスタービンの動翼及びディスクなどの部品製造に適用して、優れた製品の提供に貢献し得る。また、経済性を高めることで、TiAl合金材の熱間鍛造の適用範囲の拡大に貢献し得る。

Claims (8)

  1. 原子数比で、43.0%以上且つ45.0%以下のアルミニウムと、4.0%以上且つ6.0%未満のニオブと、1.5%以上且つ3.5%以下のクロムと、残部のチタン及び不可避不純物とからなる化学組成を有し、原子数比でニオブ含有率/クロム含有率の比率が1.7以上である熱間鍛造用のチタンアルミナイド合金材。
  2. 原子数比で、43.0%以上且つ45.0%以下のアルミニウムと、4.0%以上且つ6.0%以下のニオブと、1.5%以上且つ3.5%以下のクロムと、0%を超え0.25%以下のホウ素と、残部のチタン及び不可避不純物とからなる化学組成を有し、原子数比でニオブ含有率/クロム含有率の比率が1.7以上である熱間鍛造用のチタンアルミナイド合金材を用意する工程と、
    前記チタンアルミナイド合金材の状態図におけるβ相、(β+α)相及び(β+α+γ)相の何れかの相平衡温度領域内の温度に鍛造温度を設定して、非酸化性雰囲気中で前記チタンアルミナイド合金材を前記鍛造温度に保持しながら鍛造する熱間鍛造工程と
    を有するチタンアルミナイド合金材の熱間鍛造方法
  3. 請求項1に記載の熱間鍛造用のチタンアルミナイド合金材を用意する工程と、
    前記チタンアルミナイド合金材の状態図におけるβ相、(β+α)相及び(β+α+γ)相の何れかの相平衡温度領域内の温度に鍛造温度を設定して、非酸化性雰囲気中で前記チタンアルミナイド合金材を前記鍛造温度に保持しながら鍛造する熱間鍛造工程と
    を有するチタンアルミナイド合金材の熱間鍛造方法。
  4. 前記熱間鍛造工程における鍛造温度は、1200℃以上且つ1300℃以下である請求項2又は3に記載のチタンアルミナイド合金材の熱間鍛造方法。
  5. 更に、
    前記熱間鍛造工程によってえられるチタンアルミナイド合金鍛造体を、1240℃以上且つ1290℃以下の温度に加熱する第1の熱処理と、
    前記第1の熱処理を経たチタンアルミナイド合金鍛造体を、900℃以上且つ1100℃以下の温度に1時間以上保持する第2の熱処理と
    を有する請求項2~4のいずれか一項に記載のチタンアルミナイド合金材の熱間鍛造方法。
  6. 前記第1の熱処理を経たチタンアルミナイド合金鍛造体の温度は、前記第2の熱処理の前に、一旦常温まで低下させる請求項5に記載のチタンアルミナイド合金材の熱間鍛造方法。
  7. 原子数比で、43.0%以上且つ45.0%以下のアルミニウムと、4.0%以上且つ6.0%以下のニオブと、1.5%以上且つ3.5%以下のクロムと、残部のチタン及び不可避不純物とからなる化学組成を有し、
    原子数比でニオブ含有率/クロム含有率の比率が1.7以上であり、
    ラメラ組織の結晶粒と、γ相の結晶粒と、β相の結晶粒とを含む金属組織を有し、前記金属組織におけるγ相の体積率が80%以上であるチタンアルミナイド合金鍛造体。
  8. 原子数比で、43.0%以上且つ45.0%以下のアルミニウムと、4.0%以上且つ6.0%以下のニオブと、1.5%以上且つ3.5%以下のクロムと、0%を超え0.25%以下のホウ素と、残部のチタン及び不可避不純物とからなる化学組成を有し、
    原子数比でニオブ含有率/クロム含有率の比率が1.7以上であり、
    ラメラ組織の結晶粒と、γ相の結晶粒と、β相の結晶粒と、ホウ化物粒子とを含む金属組織を有し、前記金属組織におけるγ相の体積率が80%以上であるチタンアルミナイド合金鍛造体。
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