JP2015151612A - 熱間鍛造型TiAl基合金およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 本発明のTiAl基熱間鍛造型合金は、Al:41〜45原子%、Nb:7〜9原子%、Cr:0.4〜4.0原子%、Si: 0.3〜1.0原子%、C:0.3〜1.0原子%、残部:Ti及び不可避不純物からなるTiAl基合金であって、次式によって求められる合金元素パラメータP:
P=(41-Al)/3+0.25Nb+0.8Cr-0.8Si-1.7C
が1.1〜2.3の組成範囲にあり、
α2相とγ相が交互に積層された平均粒径1〜200μm以下のラメラ粒が密に配列してなり、β相を含まない微細組織を有することを特徴とする。
【選択図】図7
Description
鋳造材は高温強度に優れたα2相とγ相が積層した完全ラメラ組織であるが鍛造性が不良であり、また結晶粒が粗大なため常温延性に乏しいという問題がある。そこで、例えば、特許文献1、2では熱間鍛造材を前提に所定の組成を有するTiAl基合金素材を、(α+β)相の平衡温度領域に保持し、その後に塑性加工することにより、鋳造欠陥を無くすことができるとともに、加工歪みと相変態の相乗効果で組織を微細化することが提案されている。さらに、その後熱間鍛造したTiAl基合金素材を(α+β)相または(α+β+γ)相または(β+γ)相の平衡温度領域に保持して、ラメラ粒及びβ相の面積分率やラメラ粒の粒径を制御し、優れた機械加工性と、高温強度を備えたTiAl基合金を製造することができるとしている。熱間鍛造以外の熱間加工方法としては、押出、圧延型鍛造等を使用することができるとしている。
そして、鋳造材の場合、自動車部品等の小型部品の製造は比較的容易であるが、一般にTiAl基合金の湯流れ性等の鋳造性は悪いため大型部品の製造が困難であった
Al:41〜45原子%、
Nb:7〜9原子%、
Cr:0.4〜4.0原子%、
Si: 0.3〜1.0原子%、
C:0.3〜1.0原子%、
残部:Ti及び不可避不純物からなるTiAl基合金であって、次式によって求められる合金元素パラメータP:
P=(41-Al)/3+0.25Nb+0.8Cr-0.8Si-1.7C
が1.1〜2.3の組成範囲にあり、熱間鍛造後に行う熱処理後の最終状態において、Ti3Al相(α2相)とTiAl相(γ相)が交互に積層された平均粒径1〜200μmのラメラ粒が密に配列してなり、β相を含まない細組織を有することを特徴とする。
本発明の発電用ガスタービン、航空機用ガスタ−ビン、船舶用過給器、若しくは各種産業機械用ガスタ−ビン又は蒸気タ−ビンは、上記タ−ビン用動翼を用いたことを特徴とする。
アルミニウム(Al):Alは41.0〜45.0原子%の範囲では、熱処理後の最終的な状態でβ相が存在せず、α2相とγ相が積層した完全ラメラ組織となり、熱間鍛造性が良好となる。熱間鍛造性が良好とは、具体的には図1に示した条件の熱間鍛造を実施しても、大きな割れが発生しないことをいい、酸化等での表面組織変化に伴う微細な割れは含まれないものとする。Alが41.0原子%に満たない場合は、熱間鍛造性は良好であるがα2相の比率が多くなりすぎるため、延性が低下する。Alが45.0原子%を超す場合は、熱間鍛造性が不良になる。
また、熱間鍛造したTiAl基合金素材をα単相域での平衡温度領域内に保持する時間は、1〜20時間とする。保持時間が1時間以下の場合は、時間が短すぎてα単相化しないことがある。保持時間が20時間を超す場合は、時間が長すぎα粒(最終的なラメラ粒)の結晶粒径が粗大化するため、延性等が低下する。
続いて、熱間鍛造した素材の熱処理を行う。この熱処理ではα単相域で所定時間保持することで、鍛造材中に存在するβ相を消失させα単相化する。その後、所定の速度で冷却することで、α→α+γ→α2+γ変態を生じさせる。α域での保持時間を適正化することで結晶粒粗大化はなく、冷却速度を適正化することで最終的に高温強度と常温延性に優れた細粒のα2相とγ相が積層した完全ラメラ組織を得ることができる。なお、従来のTiAl基合金の熱間鍛造材とは異なり、本発明の合金は最終的な状態でβ相を含まないことが特徴である。
手順1:インゴット作製
図1は実施例に用いたインゴットと、熱間鍛造性を評価するための熱間鍛造試験を説明するもので、(A)はインゴットの外観写真と鍛造試験に供した素材の切断位置(下側を使用)、(B)は熱間鍛造試験中の情況写真、(C)は熱間鍛造試験での高さの変化の説明図である。
上記手順1で作製したインゴットに対して、当該インゴットの切断面より上側の部位から小片を加工し、1350℃で1時間保持後に水冷処理を実施した。次に、この水冷処理後の供試材について、走査型電子顕微鏡の反射電子像で断面組織を観察し、その結果の写真を画像処理することで供試材中に存在するβ相の面積率を測定した。
熱間鍛造試験は、図1(B)に示す情況写真、および(C)に示す説明図のように行った。即ち、加熱温度は1350℃であり、インゴットを炉から取り出してプレスに設置したプレスを降下させ鍛造を実施した。プレスの降下速度は50mm/秒以上、鍛造方向は据え込み、鍛造回数は7回で、1回鍛造の都度素材を炉に戻して再加熱を行った。熱間鍛造試験での高さの変化は、90mm(初期のインゴット高さ)、80mm、70mm、55mm、40mm、30mm、20mm、15mmであり、順次圧縮を行った。
上記熱間鍛造後の供試材について、1350℃で2時間保持後に0.2℃/minで冷却する徐冷の熱処理を実施し、走査型電子顕微鏡の反射電子像で断面組織を観察してβ相の残留有無を調査した。なお、この熱処理は図2、3の各組成において最終的にβ相が安定であるかどうかを調査するために実施したものであり、その目的のため徐冷処理とした。また、本発明の要件である鍛造後の熱処理条件とは無関係である。
上記手順3後の熱間鍛造材について、以下を変化させた熱処理試験を実施し、組織観察から適正熱処理条件を調査した。変化させた条件は、保持温度、保持時間、冷却速度である。
その結果、本発明の合金、すなわち合金元素パラメータP=(41-Al)/3+0.25Nb+0.8Cr-0.8Si-1.7Cが1.1〜2.3原子%の範囲のTiAl熱間鍛造合金については、保持温度については、α単相域での平衡温度領域に保持するための温度範囲は、1230〜1290℃とするのが良いことが分かった。
保持時間は、熱間鍛造したTiAl基合金をα単相域での平衡温度領域内に保持する時間であり、1〜20時間とするのが良いことが分かった。
冷却速度については、熱間鍛造したTiAl基合金をα単相域での平衡温度領域内に所定時間保持した後の冷却速度であり、1〜10[℃/分]がよいことが分かった。
熱間鍛造材について熱処理を実施した後、クリープ試験片を加工し、870℃×225MPaのクリープ破断試験を実施した。そして、破断時間によって各合金のクリープ強度を評価した。熱処理に関し、発明合金については、上記手順5で目標とした組織が得られる熱処理条件で実施した。また、比較合金(手順4においてβ相が残留することが分かった合金)については、類似組成の発明合金での適正条件である。
図4より、合金元素パラメータP=(41-Al)/3+0.25Nb+0.8Cr-0.8Si-1.7Cと1350℃×1h水冷材のβ相面積率は良い相関があることが確認できる。また、熱間鍛造性と合金元素パラメータP、ならびに1350℃×1h水冷材のβ相面積率の関係に関しては、以下が言える。合金元素パラメータPが1.1原子%以下で1350℃×1h水冷材のβ相面積率は30%以下の組成のインゴットの熱間鍛造性は不良である。一方、合金元素パラメータPが1.1原子%以上で1350℃×1h水冷材のβ相面積率は30%以上の組成のインゴットの熱間鍛造性は良好である。
関係の説明図である。
β相の残留有無と合金元素パラメータP、ならびに1350℃×1h水冷材のβ相面積率の関係に関しては、以下が言える。合金元素パラメータPが2.3原子%以下で1350℃×1h水冷材のβ相面積率60%以下の組成のインゴットでは徐冷処理後にβ相は消失する。すなわちこれらの組成ではβ相は最終的に安定ではない。一方、合金元素パラメータPが2.3原子%以上で1350℃×1h水冷材のβ相面積率は60%以上の組成のインゴットでは徐冷処理後にβ相は残留する。すなわちこれらの組成ではβ相は最終的に安定である。
以上の図4ならびに図5に示した結果より、合金元素パラメータP=(41-Al)/3+0.25Nb+0.8Cr-0.8Si-1.7Cを用いることで、熱間鍛造性ならびに最終的なβ相の安定性に及ぼす合金組成の影響が評価でき。このパラメータが1.1〜2.3原子%の範囲において、熱間鍛造性は良好であり、また最終的にβ相が残留しないことが確認できた。
[実施例1]
図6は本発明のインゴット(合金13、組成Ti−42Al−8Nb−2.3Cr−0.9Si−0.7C(原子%))を1350℃で熱間鍛造した場合の外観写真である。1350℃でのβ相量は手順2の評価より42%と十分あると推定されるため鍛造性は良く、割れが無い。
即ち、この熱間鍛造後の合金13を適正条件で熱処理すると、熱間鍛造材には存在する高温変形能が優れた(高温強度が低い)β相が存在しなくなる。粒径は鍛造のままに較べると若干粗大化しているが、鋳造材に較べると大幅に小さくなる。そこで、この熱間鍛造材は、以上の組織のため高温強度、常温延性ともに優れている。
図8は、比較合金6のインゴット(組成Ti−41Al−7Nb−0.9Si−0.4C(原子%))を1350℃で熱間鍛造した場合の外観写真である。1350℃でのβ相量は手順2の評価より12%と少ないと推定されるため変形能が悪く、大きな割れが発生した。
図9は、比較合金6のTiAl鋳造材を適正条件で熱処理した供試材の反射電子像組織写真である。発明合金と同様のβ相(大きな白い相)がない完全ラメラ組織である。微細な白い点はSiに起因する析出物(シリサイド)である。
図10は、比較合金4のインゴット(組成Ti−40Al−7Nb−3Cr−0.6Si−0.9C(原子%))を1350℃で熱間鍛造した場合の外観写真である。1350℃でのβ相量は手順2の評価より63%と十分あると推定されるため鍛造性は良く、割れが無い。
図12は本発明のインゴット(合金13)を熱間鍛造した後の熱処理において、適正保持温度より低い1220℃で保持した供試材の反射電子像写真である。なお、他の熱処理条件は適正条件である。黒く大きな等軸状のγ相が存在していることが分かる。すなわち完全ラメラ組織でないため高温強度が発明合金より低下していると考えられる。なお、この原因として1220℃がα単相域ではなくα+γ域であることが考えられる。
図13は本発明のインゴット(合金13)を熱間鍛造した後の熱処理において、適正保持温度より高い1300℃で保持した供試材の反射電子像写真である。なお、他の熱処理条件は適正条件である。白く大きなβ相が存在していることが分かる。β相が残留しているため発明合金より高温強度が低下していると考えられる。なお、この原因として1300℃がα単相域ではなくα+β域であることが考えられる。
図14は本発明のインゴット(合金13)を熱間鍛造した後の熱処理において、適正保持時間より短い0.5時間で保持した供試材の反射電子像写真である。なお、他の熱処理条件は適正条件である。白く大きなβ相が存在していることが分かる。β相が残留しているため発明合金より高温強度が低下していると考えられる。なお、この原因として保持時間が短かったため、鍛造材中に存在するβ相がα相に変態するための十分な時間がなかったことが考えられる。
図15は本発明のインゴット(合金13)を熱間鍛造した後の熱処理において、適正保持時間より長い23時間で保持した供試材の反射電子像写真である。なお、他の熱処理条件は適正条件である。完全ラメラ組織であるが結晶粒が大きいことが分かる。結晶粒が大きいため常温延性等が発明合金より低下していると考えられる。なお、この原因として保持時間が長かったため、保持中のα粒(冷却後のラメラ粒)が粗大化しすぎたことが考えられる。
図16は本発明のインゴット(合金13)を熱間鍛造した後の熱処理において、適正冷却速度より遅い0.7[℃/分]で冷却した供試材の反射電子像写真である。なお、他の熱処理条件は適正条件である。完全ラメラ組織であるがラメラ間隔が大きいことが分かる。ラメラ間隔が大きいため高温強度が発明合金より低下していると考えられる。
図17は本発明のインゴット(合金13)を熱間鍛造した後の熱処理において、適正冷却速度より速い15[℃/分]で冷却した供試材の反射電子像写真である。なお、他の熱処理条件は適正条件である。完全ラメラ組織であるがラメラ間隔が小さいことが分かる。ラメラ間隔が小さいため常温延性等が発明合金より低下していると考えられる。
本発明によって製造されるTiAl基合金素材は高温強度に優れるとともに、延性や衝撃特性に優れている。このような素材を各種タ−ビンや過給器の動翼とすれば、信頼性を維持しつつ、回転数の上昇によるエネルギ−効率の向上や、軽量化に貢献することが可能となる。
Claims (6)
- Al::41〜45原子%、
Nb:7〜9原子%、
Cr:0.4〜4.0原子%、
Si:0.3〜1.0原子%、
C:0.3〜1.0原子%、
残部がTi及び不可避不純物からなるTiAl基合金であって、
次式によって求められる合金元素パラメータP:
P=(41-Al)/3+0.25Nb+0.8Cr-0.8Si-1.7C
が1.1〜2.3の組成範囲にあり、
Ti3Al相(α2相)とTiAl相(γ相)が交互に積層された平均粒径1〜200μmのラメラ粒が密に配列してなり、β相を含まない微細組織を有することを特徴とするTiAl基合金。 - 請求項1に記載のTiAl基合金において、さらにW、Mo、B、Hf、Ta、Zrの群から選ばれる1種以上の元素を合計で0.1〜3原子%含有することを特徴とするTiAl基合金。
- 請求項1ならびに2のTiAl基合金を六方最密充填構造相(α相)と体心立方構造相(β相)の共存温度領域に保持して熱間鍛造する工程と、
前記熱間鍛造したTiAl基合金素材を、1230〜1290℃の温度範囲で1〜20時間保持すると共に、1〜10[℃/分]の冷却速度で熱処理する工程とを備えたことを特徴とするTiAl基合金の製造方法。 - 前記TiAl基合金は、前記熱処理工程では、鍛造材中に存在するβ相を消失させていったんα単相にした後にα→α+γ→α2+γ変態を生じさせることを特徴とする請求項3に記載のTiAl基合金の製造方法。
- 請求項1若しくは2に記載の組成のインゴットを請求項3若しくは4に記載した製造方法で製造したTiAl基合金素材を用いたタ−ビン用動翼。
- 請求項5に記載のタ−ビン用動翼を用いた発電用ガスタービン、航空機用ガスタ−ビン、船舶用過給器若しくは各種産業機械用ガスタ−ビン又は蒸気タ−ビン。
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