JP2019203146A - TiAl鋳造合金およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 湯周り性を向上し、溶湯活性を低減させた、TiAl鋳造合金、および、それを製造する方法を提供すること。【解決手段】 本発明のTiAl鋳造合金は、アルミニウム(Al):42〜48原子%、マンガン(Mn):5〜12原子%、残部チタン(Ti)および不可避不純物からなる。さらに、ニオブ(Nb)、シリコン(Si)および炭素(C)からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含んでもよい。また、β相の面積率は5%未満であってもよい。【選択図】 図3

Description

本発明は、TiAl鋳造合金およびその製造方法に関し、詳細には、湯周り性を向上し、溶湯活性を低減させた、TiAl鋳造合金およびその製造方法に関する。
TiAl合金は、近年乗用車ターボチャージャー用タービンホイールやジェットエンジンのタービン最終段動翼に使用が開始された。これらの部品ではいずれも小型の精密鋳造品が使用されている。
一般に、精密鋳造では、製品と同じ形状の空洞部を有するセラミック製の鋳型を用いる。鋳造によりこの空洞を溶湯で満たして凝固させることで、製品形状の鋳造品を得る。なお、鋳造品の外側に付着するセラミックは破壊して除去される。
この精密鋳造品に用いる合金に関しては、鋳造性が良いことが望ましいことは言うまでも無い。鋳造性が良いこととは、まず、鋳型の狭い空洞部分の先端まで、隙間無く溶湯を満たすことができる湯周り性が良好なことが求められる。次に、鋳型の空洞の内表面のセラミック材と溶湯とは接触するため、このセラミック材と反応しにくいことが求められる。セラミック材と溶湯とが反応すれば、製品である鋳造品表面に凹みやガス欠陥などが生じやすくなる。
一般に、TiAl合金の鋳造性は競合材であるNi基超合金に較べると大きく劣る。その最大の理由はNi基超合金に較べると融点が高く、また溶湯が活性なためである。先に述べた鋳造性に関し、湯周り性を向上させるためには、溶湯の過熱温度を大きくすれば良い。しかしながら、TiAl合金では元々融点が高い上に過熱温度を大きくすると溶湯温度は非常に高温になる。さらにTiAl合金の溶湯はNi基超合金の溶湯に較べると活性なため、溶湯温度上昇の効果と相俟って、反応性が非常に高くなる。従って、鋳造時に鋳型のセラミック材との反応が生じやすく、鋳造品表面に欠陥が出やすい。
この反応を防止するためには、溶湯の過熱温度を小さくすることが必要であるが、その場合は湯周り性が低下する。また、そもそもTiAl合金で一般的な溶解方法であるスカル溶解などの水冷銅ルツボ中の溶解では、溶湯の過熱温度を大きくすることは困難ということもある。
以上の状況より、現在のTiAl合金の精密鋳造品では、溶湯の過熱温度を小さくして、吸引鋳造や遠心鋳造などの強制的に湯周り性を向上させる方策が取られてきた(例えば、特許文献1および2を参照)。特許文献1は、吸引鋳造によって精密鋳造品を製造し、特許文献2は、遠心鋳造によって精密鋳造品を製造することを開示する。
しかしながら、これらの方策を取っても溶湯過熱温度が小さいことに伴う湯周り性の低下を完全に補うことはできず、製品に湯周り不良などの欠陥がでやすい。また、溶湯過熱温度が小さくてもTiAl合金は高融点なため溶湯温度は高く、またTiAl合金の溶湯は活性なことから、鋳型表面のセラミック材と反応することで生じる表面欠陥が製品に出やすい。
一方、Mnを添加したTiAl合金が知られている(例えば、特許文献3および4を参照)。特許文献3は、高周波誘導溶解による大型のTiAl鋳造合金インゴットの製造に関し、融点を低下するために、Mnを4〜8重量%添加すること、ならびに、冷却過程におけるTiAl合金の割れを防止するため、冷却過程で積極的に高温変形能が優れたβ相を生成させることを開示している。しかしながら、そのまま製品となる精密鋳造品においては、β相は、高温強度を低下させるため、望ましくない。
特許文献4は、高温強度、衝撃特性を備え、機械加工性に優れたTiAl基合金に関し、β相の面積分率が5〜15%であり、3〜10原子%のMnを含有し、鍛造法によって得られるTiAl基合金を開示する。しかしながら、特許文献4では、熱間鍛造時の高温変形能を確保するため、高いβ相の面積分率を必要とするが、熱間鍛造を実施しない精密鋳造品においては、β相は高温強度を低下させるため、望ましくない。
以上のように、TiAl合金の精密鋳造品では、競合材料であるNi基超合金の精密鋳造品に較べて鋳造欠陥が生じやすく、生産時の歩留まりが低いという問題があった。この低い歩留まりは製品コストの増大に直接的につながる。また、Mnを添加したTiAl合金においても、これまでの合金ではβ相が多量に残留する問題があるため、使用時の高温強度が低下する問題があった。
特開平4−22562号公報 特開2016−78067号公報 特開2011−36877号公報 特開2005−356729号公報
以上から、本発明の課題は、TiAl鋳造合金およびそれを製造する方法を提供することであり、詳細には、湯周り性を向上し、溶湯活性を低減させた、TiAl鋳造合金、および、それを製造する方法を提供することである。
本発明によるTiAl鋳造合金は、アルミニウム(Al):42〜48原子%、マンガン(Mn):5〜12原子%、残部チタン(Ti)および不可避不純物からなり、これにより上記課題を解決する。
さらに、ニオブ(Nb)、シリコン(Si)および炭素(C)からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含んでもよい。
前記Nbの含有量は、0.5〜3.0原子%であってもよい。
前記Siの含有量は、0.3〜1.0原子%であってもよい。
前記Cの含有量は、0.1〜0.7原子%であってもよい。
β相の面積率は、5%未満であってもよい。
前記β相の面積率は、3%以下であってもよい。
重量は800g以下であってもよい。
前記Mnの含有量は、6〜12原子%であってもよい。
前記Alに対する前記Tiの原子数比は、0.83以上1.26以下の範囲であってもよい。
前記Alに対する前記Tiの原子数比は、0.9以上1.2以下の範囲であってもよい。
動翼またはタービンホイールの精密鋳造品であってもよい。
本発明による上記TiAl鋳造合金の製造方法は、鋳造後の成分がアルミニウム(Al):42〜48原子%、マンガン(Mn):5〜12原子%、残部チタン(Ti)および不可避不純物を満たす原料を溶解する工程と、前記溶解する工程によって得られた溶湯を鋳型に注湯する工程とを包含し、これにより上記課題を解決する。
前記溶解する工程は、セラミックるつぼを用いてもよい。
前記溶解する工程は、高周波溶解を用いてもよい。
前記原料は、ニオブ(Nb)、シリコン(Si)および炭素(C)からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含んでもよい。
前記注湯する工程は、800g以下の重量の前記溶湯を前記鋳型に注湯してもよい。
前記注湯する工程後、前記鋳型を室温まで放冷する工程をさらに包含してもよい。
本発明のTiAl鋳造合金は、5〜12原子%のMnが添加されることにより、融点が低下するため、過熱温度を大きくできるので、湯周り性が向上し、湯周り性不良が抑制され得る。さらに、本発明のTiAl鋳造合金は、上述のMnの添加によりTiの含有量が低減し、溶湯活性が低下するので、セラミック鋳型との反応が抑制され、表面欠陥等の発生が抑制される。
本発明のTiAl鋳造合金の製造方法は、鋳造後の成分において、42〜48原子%のAl、5〜12原子%のMn、残部がTiと不可避不純物からなる原料を溶解し、その溶湯を注湯するため、過度温度を大きくした状態で溶湯を注湯できる。その結果、湯周り性不良が抑制されたTiAl鋳造合金が製造される。さらに、従来のTiAl合金に較べ過熱温度を増加させても溶湯温度自体は低く、また溶湯におけるTiの含有量が低減しているので、セラミック鋳型との反応が抑制され、表面欠陥等を有しないTiAl鋳造合金が製造される。
本発明のTiAl鋳造合金を製造する工程を示すフローチャート 例1〜例25で使用した鋳型を模式的に示す図 合金5および合金10の外観を示す図 合金18の反射電子像を示す図
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。なお、同様の要素には同様の番号を付し、その説明を省略する。
本願発明者は、TiAl合金の融点を下げるとともに、TiAl合金の溶湯活性を下げることに着目し、添加元素を用い、Tiの含有量を制御することが、TiAl精密鋳造合金に有効であることを見出した。
詳細には、Tiの比率を下げるためには、Alまたは添加元素の比率を増加する必要があるが、Alの比率の大きな増加は、延性低下等の材料特性の劣化をもたらす。このことから、材料特性が劣化することなくTiの比率を下げるためには、Alの比率を従来と変えることなく、添加元素の比率を多くする必要がある。本願発明者は、TiAl合金に多く添加しても特性を低下させず、融点を低下させる添加元素として、多数の実験からMnが最も有効であることを見出し、以下の組成を有するTiAl鋳造合金およびその製造方法に至った。
特に、MnをTiAlに添加すると、β相が析出しやすくなることが知られており、このβ相は、高温での変形能に富む相であるため、熱間鍛造型TiAl合金では鍛造性を改善させる相として積極的に用いられている。しかしながら、熱間鍛造を前提としない精密鋳造合金(精密鋳造品)では、β相は使用時の高温強度を低下させるため望ましくないが、本発明では、組成を制御するとともに、製造工程を改善することにより、β相の生成が抑制され高温強度に優れたTiAl鋳造合金およびその製造方法を提供する。以下に詳細に説明する。
本発明のTiAl鋳造合金は、アルミニウム(Al):42〜48原子%、マンガン(Mn):5〜12原子%、残部チタン(Ti)および不可避不純物からなる。不可避不純物は、原料中、あるいは、製造工程において混入する不純物である。
Alは、TiとともにTiAl相、TiAl相等を構成するが、Alが48原子%を超えると、TiAl相が増大し、延性や耐衝撃性が低下し得る。Alが42原子%を下回ると、TiAl相が増大し、延性や耐衝撃性が低下し得る。なお、Alの含有量は、好ましくは、43〜46原子%である。このような観点から、本発明のTiAl鋳造合金において、「TiAl」は、TiAl相およびTiAl相を主相とするTiAl金属間化合物を意図しており、その主相とする割合は、95面積%以上であり、好ましくは、97面積%以上である。
Mnは、TiAl鋳造合金に固溶し、それ自身の融点が低いため、TiAl鋳造合金の融点を下げる効果がある。また、Mnは、TiAl鋳造合金に添加される代表的な元素であるCrと比べると、多く固溶され得るが、脆い金属間化合物等の有害相を生成することなく、融点を低下できる。その結果、鋳造時に過熱温度を大きくできるので、湯周り性が向上し、湯周り不良が抑制される。また、Mnの添加によりTiの含有量が低減するため、溶湯活性が低下し、鋳造時にセラミック鋳型との反応が抑制され、表面欠陥等の発生が抑制される。Mnが12原子%を超えると、β相が増大し、高温強度を低下させる虞がある。Mnが5原子%を下回ると、TiAl鋳造合金の融点の低下が十分に低下しない場合がある。Mnの含有量は、好ましくは、6〜12原子%である。この範囲であれば、TiAl鋳造合金におけるβ相の生成を抑制し、低融点化に効果的である。
本発明のTiAl鋳造合金は、好ましくは、ニオブ(Nb)、シリコン(Si)および炭素(C)からなる群から選択される少なくとも1種の元素をさらに含有する。これらの元素は、いずれも、TiAl鋳造合金の高温強度を向上し得る。
添加元素としてNbを添加する場合、Nbの含有量は、好ましくは、0.5〜3.0原子%である。この範囲であれば、高温強度の向上が期待できる。Nbの含有量は、さらに好ましくは、1.5〜2.5原子%である。
添加元素としてSiを添加する場合、Siの含有量は、好ましくは、0.3〜1.0原子%である。この範囲であれば、高温強度の向上が期待できる。Nbの含有量は、さらに好ましくは、0.3〜0.7原子%である。
添加元素としてCを添加する場合、Cの含有量は、好ましくは、0.1〜0.7原子%である。この範囲であれば、高温強度の向上が期待できる。Cの含有量は、さらに好ましくは、0.1〜0.5原子%である。
本発明のTiAl鋳造合金において、β相の面積率(面積分率)は、好ましくは、5%未満に制御されている。これにより、高温強度が向上し得る。さらに好ましくは、β相の面積率は3%以下に制御されている。これにより、さらに高温強度が向上し得る。なお、β相の面積率は、電子顕微鏡等によってTiAl鋳造合金の切断面を観察した際に、組織全体の面積に対するβ相の面積の割合である。
本発明のTiAl鋳造合金は、好ましくは、800g以下の重量を有する。これにより、β相の析出が抑制され、使用時の高温強度を維持できる。一般には、MnをTiAl合金に添加するとβ相が析出しやすくなることが知られているが、本願発明者は、後述するように、鋳造過程における冷却速度を、溶湯量を調整することによって制御し、冷却速度を速くすることでβ相の析出量が制御できることを見出した。このような観点からも本発明のTiAl鋳造合金は小型の精密鋳造品として有利である。
本発明のTiAl鋳造合金において、Alに対するTiの原子数比は、好ましくは、0.83以上1.26以下の範囲を満たす。これにより、TiAl金属間化合物を主相とし、かつ、Tiの含有量が制限されるので、溶湯活性が低下し、鋳造時にセラミック鋳型との反応が抑制され、表面欠陥等の発生を抑制できる。Alに対するTiの原子数比は、さらに好ましくは、0.9以上1.2以下の範囲を満たす。これにより、溶湯活性がさらに低減し、表面欠陥等の発生を抑制できる。Alに対するTiの原子数比は、なおさらに好ましくは、0.95以上1.15以下の範囲を満たす。
本発明のTiAl鋳造合金は、上述したように、湯周り性不良や表面欠陥が抑制されており、かつ、高温強度に優れるため、精密鋳造品として有利であり、発電用ガスタービンや航空機用ジェットエンジンの動翼、乗用車ターボチャージャーのタービンホイールなどに利用される。
本発明のTiAl鋳造合金の製造方法を説明する。
図1は、本発明のTiAl鋳造合金を製造する工程を示すフローチャートである。
工程S110:原料を溶解する。ここで、原料は、鋳造後の成分がアルミニウム(Al):42〜48原子%、マンガン(Mn):5〜12原子%、残部チタン(Ti)および不可避不純物を満たすように調整される。原料の形状に特に制限はなく、ペレット、粒状、スポンジ等であり得る。
原料は、好ましくは、ニオブ(Nb)、シリコン(Si)および炭素(C)からなる群から選択される少なくとも1種の元素をさらに含有する。これにより、TiAl鋳造合金の高温強度が向上し得る。この場合も単体金属であってもよいし、例えばCを添加する場合、TiCといった化合物であってもよい。
添加元素としてNbを添加する場合、鋳造後のNbの含有量が、好ましくは、0.5〜3.0原子%、さらに好ましくは、1.5〜2.5原子%となるように添加される。添加元素としてSiを添加する場合、鋳造後のSiの含有量は、好ましくは、0.3〜1.0原子%、さらに好ましくは、0.3〜0.7原子%となるように添加される。添加元素としてCを添加する場合、鋳造後のCの含有量が、好ましくは、0.1〜0.7原子%、さらに好ましくは、0.1〜0.5原子%となるように添加される。
溶解は、水冷銅ルツボに加え、セラミックるつぼを用いて行っても良い。例示的には、イットリアるつぼ、カルシアるつぼが採用される。これにより、るつぼから混入する酸素量の増加が抑制されるため好ましい。また、溶解は、原料が溶解し、溶湯となれば、任意の溶解法を採用できるが、例示的には、高周波溶解等を採用できる。例えば、高周波溶解を採用した場合、原料を投入したるつぼを、チャンバーに設置し、チャンバー内を真空排気し、アルゴンガス等の不活性ガスを導入し、溶解してもよい。
本発明によれば、Mnの添加により融点が低下した原料を溶解するため、例えば、50℃以上200℃以下まで過熱温度を上げることができ、湯周り性が向上し得る。50℃以上200℃以下まで過熱温度を上げても、溶湯温度は1600℃以下であり、従来のTiAl合金の溶湯温度(1630〜1650℃)よりも低い。
工程S120:工程S110で得られた溶湯を鋳型に注湯する。鋳型は一般的なセラミック鋳型であるが、工程S110で得られた溶湯は、Tiの含有量が制限されているので、溶湯活性が低下しており、セラミックとの反応が抑制される。その結果、表面欠陥等の発生が抑制されたTiAl鋳造合金が得られる。また、好ましくは、800g以下の重量の溶湯が鋳型に注湯される。これにより、小型のTiAl鋳造合金からなる精密鋳造品が得られるが、β相の析出を抑制し、使用時の高温強度を維持できる。工程S120に続いて、注湯後の鋳型を室温まで放冷する。
さらに、本願発明者は、注湯後の鋳型の冷却速度に着目し、検討した結果、β相の生成量は冷却速度に著しく依存することが分かった。詳細には、冷却速度が遅いと平衡状態に近づくためβ相の生成が促進され、冷却速度が速いと非平衡状態となりβ相の生成が抑制される。この知見を鋳造合金のサイズに置き換えると、放冷時の冷却速度が小さい大型の鋳造合金(例えば、800gを超える重量)では、β相の生成が促進され、放冷時の冷却速度が大きい小型の鋳造合金(例えば、800g以下の重量)では、β相の生成が抑制され、なおかつ、Mnの多量添加が可能であるため、湯周り性不良が改善され、表面欠陥の発生が抑制されたTiAl鋳造合金が提供できる。
次に具体的な実施例を用いて本発明を詳述するが、本発明がこれら実施例に限定されないことに留意されたい。
[例1〜例25]
表1の組成を満たすよう、スポンジTi、Alペレット、Mn粒状原料、Nb粒状原料、Si粒状原料、TiC粉末を秤量し、イットリアるつぼに投入し、高周波溶解によって溶解した(図1の工程S110)。詳細には、るつぼを溶解炉チャンバーに設置し、チャンバー内を真空排気後、アルゴンガスを導入した。このとき、高周波溶解炉の条件は、5kWであり、原料すべてが溶解後、出力3kWで3分間保持した。その最終段階での溶解時の過熱温度はおよそ100℃(溶湯温度:1500℃)であった。その後、図2に示す鋳型に、表1に示す重量の溶湯を注湯した(図1の工程S120)。
図2は、例1〜例25で使用した鋳型を模式的に示す図である。
鋳型は、湯周り性を評価するため、空洞部の幅を変化させてある。詳細には、空洞部の下から、1mm、3mm、10mm、20mmおよび30mmの幅の直方体が積み重なった形状を有する。また、鋳型の材質は、鋳鉄であるが、実際の精密鋳造品の状況に近づけるため、溶湯と接触する鋳型の内表面にジルコニア系塗料が塗布されている。注湯に際しては、鋳型の上にアルミナ製ロートを置き、このロートの途中まで溶湯で満たした。
注湯後、鋳型を室温まで放冷し、図2に示す箇所で鋳型を分離し、TiAl鋳造合金を取り出した。例1〜例25のそれぞれで得られた試料を、合金1〜合金25と称する。
合金1〜合金25の鋳造性、β相の面積率および材料特性を以下の要領で調べた。なお、得られた合金1〜合金25の組成は目標成分どおりであった。
(1)鋳造性
合金1〜合金25の表面を観察し、湯周り不良の有無および表面欠陥(凹み)の数を調べた。
(2)β相の面積率
β相の面積率は、合金1〜合金25の厚さ30mmの部分の内部について、切断、研磨後に反射電子像を観察し、組織全体に対してのβ相の割合を算出した。
(3)材料特性
合金1〜合金25の厚さ30mmの部分の内部から並行部直径がφ4mmの丸棒試験片を切り出し、引張試験を実施した。引張試験の条件は、室温(25℃)および850℃において、初期歪み速度8×10−5−1であった。室温の延性(%)および850℃における引張強度(MPa)を測定した。
以上の結果を図3、図4および表1にまとめて示す。
図3は、合金5および合金10の外観を示す図である。
図2の鋳型において一番狭い部分は一番下側に示すが、図3では、一番狭い部分が上となるよう上下逆転して示す。図3には、合金10(左側)および合金5(右側)の外観を示す。合金10には湯周り不良が確認され、鋳型の表面に塗布したジルコニア系塗料と溶湯とが反応した際に生じる多くの凹み(表面欠陥)が見られ、鋳造性が悪かった。一方、合金5には湯周り不良および表面欠陥は見られず、鋳造性が良かった。以上の結果から、本発明では、湯周り不良が無く、表面欠陥が5個以下のものを鋳造性に優れる条件とした。
図4は、合金18の反射電子像を示す図である。
図4の反射電子像において、明るいコントラストで示される相がβ相であり、暗いコントラストで示される相が主相であった。合金18は、鋳造性に優れるが、β相の生成が確認された。図示しないが、例えば、合金12の反射電子像では、目視にて確認されるβ相はなかった。また、表1の引張特性を参照すれば、β相の面積率が5%以上になると、高温強度の低下が生じるため、β相の面積率が5%未満のものを高温強度に優れる条件とした。また、表1の引張特性を参照すれば、室温における伸びが0.5%以上であり、850℃での引張強度が400MPa以上のものを材料特性に優れる条件、450MPa以上のものをさらに優れる条件とした。
以上から、Al:42〜48原子%、Mn:5〜12原子%、残部Tiおよび不可避不純物を満たす合金3〜合金7、合金12〜合金16、合金19〜合金20、および、合金22〜合金25は、優れたTiAl鋳造合金であることが示された。鋳造時において、過熱温度およそ100℃の溶湯(溶湯温度:1500℃)でも、従来のTiAl合金の過熱温度(例えば、30℃)の溶湯(溶湯温度:1630℃)に比べて、溶湯温度は十分に低く、Mnの添加により融点が低下したことが示された。特に、Nb、Si、Cの添加元素をさらに含有させた合金22〜合金25は、高温強度に優れたTiAl鋳造合金であることが示された。
さらに、合金20と合金21とを比較すると、同じ組成であっても、重量が800g以下とすることによって、β相の面積率の生成が抑制され、高温強度が向上することが示された。
本発明のTiAl鋳造合金は、湯周り性が向上し、溶湯活性が低減されているので、精密鋳造品に用いた場合、湯周り不良や表面欠陥が抑制される。また高温強度に優れるため、発電用ガスタービンや航空機用ジェットエンジンの動翼、乗用車ターボチャージャーのタービンホイールなどとして使用することができる。

Claims (18)

  1. アルミニウム(Al):42〜48原子%、マンガン(Mn):5〜12原子%、残部チタン(Ti)および不可避不純物からなる、TiAl鋳造合金。
  2. さらに、ニオブ(Nb)、シリコン(Si)および炭素(C)からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む、請求項1に記載のTiAl鋳造合金。
  3. 前記Nbの含有量は、0.5〜3.0原子%である、請求項2に記載のTiAl鋳造合金。
  4. 前記Siの含有量は、0.3〜1.0原子%である、請求項2または3のいずれかに記載のTiAl鋳造合金。
  5. 前記Cの含有量は、0.1〜0.7原子%である、請求項2〜4のいずれかに記載のTiAl鋳造合金。
  6. β相の面積率は、5%未満である、請求項1〜5のいずれかに記載のTiAl鋳造合金。
  7. 前記β相の面積率は、3%以下である、請求項6に記載のTiAl鋳造合金。
  8. 重量は800g以下である、請求項1〜7のいずれかに記載のTiAl鋳造合金。
  9. 前記Mnの含有量は、6〜12原子%である、請求項1〜8のいずれかに記載のTiAl合金。
  10. 前記Alに対する前記Tiの原子数比は、0.83以上1.26以下の範囲である、請求項1〜9のいずれかに記載のTiAl鋳造合金。
  11. 前記Alに対する前記Tiの原子数比は、0.9以上1.2以下の範囲である、請求項10に記載のTiAl鋳造合金。
  12. 動翼またはタービンホイールの精密鋳造品である、請求項1〜11のいずれかに記載のTiAl鋳造合金。
  13. 請求項1〜12のいずれかに記載のTiAl鋳造合金の製造方法であって、
    鋳造後の成分がアルミニウム(Al):42〜48原子%、マンガン(Mn):5〜12原子%、残部チタン(Ti)および不可避不純物を満たす原料を溶解する工程と、
    前記溶解する工程によって得られた溶湯を鋳型に注湯する工程と
    を包含する、方法。
  14. 前記溶解する工程は、セラミックるつぼを用いる、請求項13に記載の方法。
  15. 前記溶解する工程は、高周波溶解を用いる、請求項13または14のいずれかに記載の方法。
  16. 前記原料は、ニオブ(Nb)、シリコン(Si)および炭素(C)からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む、請求項13〜15のいずれかに記載の方法。
  17. 前記注湯する工程は、800g以下の重量の前記溶湯を前記鋳型に注湯する、請求項13〜16のいずれかに記載の方法。
  18. 前記注湯する工程後、前記鋳型を室温まで放冷する工程をさらに包含する、請求項13〜17のいずれかに記載の方法。
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