JP4905680B2 - マグネシウム鋳造合金およびこれを用いたコンプレッサ羽根車 - Google Patents

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Description

本発明は、マグネシウム鋳造合金およびこれを用いたコンプレッサ羽根車に関する。
例えば自動車や船舶等の内燃機関に組み込まれる過給機は、内燃機関からの排気ガスを利用して排気側のタービン羽根車を回転させ、このタービン羽根車と同軸上にある吸気側のコンプレッサ羽根車を回転させて外気を吸気して圧縮する。そして、圧縮した空気を内燃機関に供給して内燃機関の出力向上を図る機能を有する。
上述の過給機に使用されるタービン羽根車は、内燃機関から排出される高温の排気ガスに曝されるため、通常は耐熱強度に優れるニッケル合金やチタンアルミニウム合金等が使用される。一方、コンプレッサ羽根車は、外気を吸気する部分で利用されて高温に曝されることがないため、通常はアルミニウム合金等が使用される。
近年、内燃機関の燃焼効率をさらに向上させる目的で、タービン羽根車およびコンプレッサ羽根車をより高速回転させるため種々の検討がなされている。これらの検討においてコンプレッサ羽根車は、現状の150℃程度の曝露温度が、高速回転によって180℃〜200℃にまで上昇すると予測されている。このためコンプレッサ羽根車には、曝露温度が200℃でも高強度を維持可能であることが要求されている。
上述のような背景からコンプレッサ羽根車の材質として、従来のアルミニウム合金よりも耐熱性を期待できるマグネシウム合金等の適用が検討されている。
例えば、鋳造可能な耐熱マグネシウム合金としては、米国材料試験協会(ASTM)規定の希土類元素(以下、REという)を含まないAS41(Mg−4%Al−1%Si)、AX52(Mg−5%Al−2%Ca)、およびAJ52(Mg−5%Al−2%Sr)、またREを含むAE42(Mg−4%Al−2%RE)等が知られている。
また、例えば、特開2004−238676号公報(特許文献1)が開示するマグネシウム鋳造合金は、質量%で、Al:4.7〜7.3%、Ca:1.8〜3.2%、Sn:0.3〜2.2%、Mn:0.17〜0.60%、Zn:0.8%以下を含有し、さらに耐クリープ性を得るためにSr:0.5%以下を含有する。この合金は、母相と結晶粒界に形成されたAlと、Ca、Sn、あるいはSrとによって形成される微細な金属間化合物の効果によって強度を得ており、特にSr含有によって高温での強度を持たせた点で優れている。
また、例えば、特開2006−70303号公報(特許文献2)が開示するマグネシウム鋳造合金は、質量%で、AZ91合金(Al:6.0〜11.0%、Zn:0.1〜2.5%、Mn:0.1〜0.5%)に対して例えばSn:0.2〜3.0%を含有し、さらに必須元素としてCaおよびSrを含有する。この合金は、実質的にCa:0.05〜3.5%およびSr:0.1〜2.5%を結晶微細化剤として含有させ、結晶粒径を微細化することによって高温クリープ性能を向上させた点で優れている。
また、例えば、特開2005−68550号公報(特許文献3)が開示するマグネシウム鋳造合金は、質量%で、Al:6.0〜12.0%、Ca:0.05〜4.0%、Sn:0.1〜14.0%、Mn:0.05〜0.50%を含有し、さらにRE:0.5〜4.0%を含有する。この合金は、耐熱性や鋳造性に優れ、製造コストも安価であって、Snによる固溶強化や、Caによって形成される金属間化合物の効果に加えて、さらにREを添加することによって得られる固溶強化の効果によって高温強度を向上させた点で優れている。
特開2004−238676号公報 特開2006−70303号公報 特開2005−68550号公報
上述したAS41は、150℃を超える高温域ではクリープ特性が不十分であり、例えば上述したコンプレッサ羽根車に所望される曝露温度が200℃では高強度を維持できるだけのクリープ特性つまり耐熱性が期待できない。この点では、2質量%のCaを含むAX52は、150℃を超える高温域でもクリープ特性を有すると考えられる。しかしながら、AX52は、その鋳造性に問題があり、鋳造後に熱間割れや焼き割れを生じてしまうことがある。
AJ52は、2質量%のSrを含み、このSrの効果によって150℃を超える高温域でもクリープ特性を有すると考えられる。しかしながら、AJ52は、Srを含有するが故に偏析や組織上の問題を生じやすく、このために700℃を超える高温域での溶解や鋳造が必須であり、例えばダイカスト(高圧射出鋳造)やチクソモールド(半溶融射出鋳造)といった鋳造成形においては、成形機の設備上の問題すなわち金型や備品等の信頼性や耐久性等に不都合を生じて使用に適さないことがある。
また、このようなSrを含有するが故の問題点は、上述した特許文献1や特許文献2が開示するマグネシウム鋳造合金においても同様に生じるものである。
AE42は、2質量%のRE(希土類元素)を含み、このREの効果によって150℃を超える高温域でもクリープ特性を有すると考えられる。しかしながら、AE42は、REを含有するが故に大気に対して極めて活性となって容易に酸化し、例えば鋳造時に酸化物の巻込みを生じやすくなる。また、REは高価な材料であるとともにリサイクル性の点でも不利である。このようなことから生産効率やコストの点で不利となる場合が多い。また、REを含むことにより鋳造性が劣化しやすく、例えばコンプレッサ羽根車における羽根部とハブ部のように、薄肉部と厚肉部とが共存する複雑な形状を鋳造形成する場合には、特に不利となる可能性がある。
また、このようなREを含有するが故の問題点は、上述した特許文献3が開示するマグネシウム鋳造合金においても同様に生じるものである。
本発明の目的は、Al、Ca、Snを主成分とするマグネシウム鋳造合金において、上述したように多くの問題点を有するSrやREを含有しなくても150℃を超える高温域でも優れたクリープ特性を有するようなマグネシウム鋳造合金を提供し、およびこれを用いたコンプレッサ羽根車を提供することである。
本発明者は、上述の課題を鑑み、REやSrを含まない従来のMg−Al−Ca−Sn系合金において、鋳造性を考慮しながら耐熱強度の指標となるクリープ特性を向上させることを鋭意検討し、Al、Ca、Snの含有範囲を最適に調整することによってクリープ特性が向上するとともに硬さや引張強度も向上することを見出し本発明に到達した。
すなわち本発明のマグネシウム鋳造合金は、質量%で3.0≦Al≦9.0、2.5≦Ca≦7.0、2.0<Sn≦5.0の範囲で含有し、残部がMgおよび不可避的不純物からなるマグネシウム鋳造合金である。



本発明において望ましくは、質量%で5.5≦Al≦6.5である。
また、望ましくは、Al、Ca、Snが質量%で2.5≦(Al/Ca+Ca/Sn)≦4.0を満足することである。
また、望ましくは、Al、Ca、Snが質量%で1.0≦Al/Ca≦2.2、0.5≦Ca/Sn≦2.5を満足することである。
また、不可避的不純物としてMn≦0.5を含有することができる。
そして、本発明においては、自動車等に使用され、ハブ軸の周りに配列された羽根部が形成された羽根車形状に鋳造形成されるコンプレッサ羽根車には、上述の本発明のマグネシウム鋳造合金を用いることが好適である。
本発明のマグネシウム鋳造合金は、SrやREを含まないマグネシウム鋳造合金としては、150℃を超える高温域でも従来よりも優れたクリープ特性つまり耐熱性を有している。また、鋳造性も良好であって、溶湯が大気と過剰に反応することもないため格別の鋳造設備を用いることもない。
よって、例えば自動車などに搭載される過給機用のコンプレッサ羽根車を、本発明のマグネシウム鋳造合金を用いて鋳造形成することにより、従来よりも高温域の環境下でも使用可能なコンプレッサ羽根車を得ることができるので、本発明は工業上極めて有益な技術となる。
本発明のマグネシウム鋳造合金における重要な特徴は、従来のMg−Al−Ca−Sn系合金において、Al、Ca、Snの含有比率を最適化したことである。
以下、本発明のマグネシウム鋳造合金について、Mgに対して含有させる各元素とその含有範囲の限定理由について詳細に説明する。なお、元素の含有量の単位は、特に断りのない限り、以下、質量%で記載する。
3.0≦Al≦9.0(質量%)
Alは、本発明において、高温域での機械強度の指標となるクリープ特性の向上と、良好な鋳造性を確保する役割を担う重要な元素である。Alは、Caと結合してAlCaを粒界にネットワーク状に晶出することで、本発明で重要なクリープ特性を向上させる。ただし、9.0%を超えるとβ相(Mg17Al12)が晶出し、伸びや靭性が低下し、高温部材を構成する上での性能を満足しないことがある。また、3.0%未満ではクリープ特性が不十分となることがある。よって、3.0≦Al≦9.0とする。また、望ましくは5.5≦Al≦6.5であり、AlCaがより効果的に晶出するためクリープ特性の更なる向上が期待できる。
2.5≦Ca≦7.0(質量%)
Caは、Alと結合して高温域でも安定なAlCaを粒界にネットワーク状に晶出することで、本発明で重要なクリープ特性を向上させる働きを有する。ただし、7.0%を超えると合金自体が脆くなり、鋳造凝固時に焼き割れや熱間割れを生じることがある。また、伸びや靭性が低下し、高温域で使用される部材を構成する上での性能を満足しないことがある。また、2.5%未満では強度が不十分であったり、鋳造性を劣化させてしまうことがある。よって、2.5≦Ca≦7.0とする。また、含有する上限として望ましくはCa≦4.5であり、より望ましくはCa≦4.0である。
1.6≦Sn≦5.0(質量%)
Snは、単独では、合金の低融点化、固溶強化、および析出強化によってクリープ特性を向上させる働きを有する。本発明においては、固溶強化や、時効処理により安定なMgSnを析出させる析出強化に加えて、Caと結びつくことによる析出強化あるいは晶出強化の効果により、クリープ特性の向上が期待できる。ただし、5.0%を超えるとCaと結びついた金属間化合物が過剰に形成されてしまい、靭性やクリープ特性の低下を招くことがある。また、1.6%未満では所望の効果が得られないことがある。よって、1.6≦Sn≦5.0とする。また、含有する上限として望ましくはSn≦4.0であり、より望ましくはSn≦3.0である。また、下限として望ましくはSn≧2.0である。
以下、本発明において望ましいAl、Ca、Snの配合比率について説明する。
1.0≦Al/Ca≦2.2(質量%比率)
Al/Caは、本発明において、優れたクリープ特性を発揮させるための重要な因子である。AlとCaとは、高温域でも安定な金属間化合物であるAlCaを粒界にネットワーク状に晶出してクリープ特性を大きく向上させる。よって、本発明では、この効果を得るために、少なくともAl/Caを1.0以上としてAlCaを晶出させる。ただし、2.2を超えても、さらなる改善効果が得られないばかりか、伸びや靭性を損ねてしまうことがある。よって、1.0≦Al/Ca≦2.2とする。
0.5≦Ca/Sn≦2.5(質量%比率)
Ca/Snは、本発明において、優れたクリープ特性と良好な鋳造性を得るためには重要な因子である。ただし、Ca/Snが0.5未満ではCaに対してSnが過剰となり、Alに対するCaが不足してしまう。このため、優れたクリープ特性を発現させるために重要なAlCaが十分に形成されずに高温強度や靭性を損ねてしまうことがある。また、Ca/Snが2.5を超えると融点の上昇や焼き割れ等を生じることがある。よって、0.5≦Ca/Sn≦2.5とする。
2.5≦(Al/Ca+Ca/Sn)≦4.0(質量%比率にて)
本発明においてAl/CaおよびCa/Snは、上述した範囲であることが望ましい。そしてさらに、2.5≦(Al/Ca+Ca/Sn)≦4.0の範囲とすることにより、得られるマグネシウム鋳造合金をよりバランスの良い組織形態とすることができる。これにより、伸びや靭性を損ねることなく、鋳造時の焼き割れ等を生じることもなく、クリープ強度をさらに高めることができる。
以下、本発明における不可避的不純物について説明する。
本発明のマグネシウム鋳造合金は、不可避的不純物としてMn、Si、Fe、Ni、Cu等の元素を含有することがある。
Mn≦0.5(質量%)
Mnは、固溶強化により、マグネシウム鋳造合金のクリープ特性を向上させるといった効果が知られている。また、耐食性に悪影響をもたらす不純物元素をトラップすることによって耐食性を向上させる効果を有するため、高温時の腐食防止に有効と考えられ、少量の含有は可能である。ただし、0.5%を超えるとAlと結びついて化合物を形成しやすくなり、形成された化合物によって耐食性や靭性を損ねてしまうことがある。よって、本発明においては、Mnが含有したとしてもMn≦0.5とすることが望ましく、より望ましくはMn≦0.4である。
Si≦0.05(質量%)
Siは、Mg原料中にも多く含有されている元素である。マグネシウム鋳造合金においては、Siを0.05%以下で含む場合には、合金の高温強度を向上させるためには有効であることが知られており、少量の含有は可能である。しかしながら、Siを0.05%を超えて含む場合には、合金の耐食性を劣化させることがある。また、高融点のMgSiが形成されやすくなって合金の靭性を損ねたり、鋳造性を損ねたりといった不具合を生じてしまうことがある。よって、本発明においては、Siが含有したとしてもSi≦0.05とすることが望ましい。
また、Mg原料中には、Fe、Ni、Cu等の元素も含有されやすい。本発明においては、Fe、Ni、Cuが過剰に含有してしまうと、合金の耐食性や靭性を損ねてしまうことがある。よって、本発明において上述した各元素が含有したとしても、質量%でFe≦0.004%、Ni≦0.001%、Cu≦0.025%とすることが望ましい。
本発明のマグネシウム鋳造合金は、175℃で50MPaを負荷したときの一般には定常クリープ速度とも呼ばれる最小クリープ速度が2.0×10−9/s以下となるクリープ特性を有することができる。本発明のマグネシウム鋳造合金は、上述したように優れたクリープ特性を有することができるので、例えば自動車部材や原子力部材等、高温環境下で長時間使用するための材料としては好適である。
一般にクリープとは、融点以下の高温環境下において、任意の一定の荷重(または応力)を対象とする材料に負荷した際に、その材料が歪み等の点において、どの程度の耐性を有するかを知るための指標となるものである。また、ここでいう最小クリープ速度は、高温環境下で長時間使用される際の高温材料、例えば自動車部材や原子力部材等で使用される材料を選定するための指標やスペックとされる場合が多い。よって、本発明においては、最小クリープ速度をもってしてマグネシウム鋳造合金の耐熱性つまり高温域での機械強度の良否を判断する指標とした。
また、本発明のマグネシウム鋳造合金は、熱処理を施さない鋳造したままの状態であっても上述したように固溶強化や化合物の粒界晶出による強化によって優れたクリープ特性を有することができる合金である。さらに、本発明の合金に対して、所望特性に合わせて適宜選択された条件での溶体化処理や時効処理(T6処理:JIS−H0001)を施すことも望ましい。このような熱処理を施すことにより、余剰に形成された晶出物や析出物を再固溶させることができ、また再析出させることができ、これによって合金のクリープ特性をさらに向上させることができる。
また、本発明においては、上述した溶体化処理および時効処理を施す前に、HIP処理(熱間静水圧加圧処理)を施すことも望ましく、鋳造時の内部欠陥を微小化することができて機械強度を向上させることができる。
次に、本発明のコンプレッサ羽根車について説明する。
本発明のコンプレッサ羽根車は、上述した本発明のマグネシウム鋳造合金を用いて鋳造形成することにより得られるものであり、上述した本発明のクリープ特性に優れたマグネシウム鋳造合金と同等の組成および機械的特性を有する。これにより、クリープ特性に優れ、適度な伸びを有しつつ従来よりも高温域における機械強度を有するコンプレッサ羽根車となる。
本発明のコンプレッサ羽根車(以下、羽根車という)は、例えば図1に示す形状を有している。図1に示す羽根車1は、本発明のコンプレッサ羽根車の一例であって、ハブ部2の最大径φ80mm、全高55mm、長羽根3とスプリッタ羽根4の合計枚数12枚、羽根先端肉厚0.4〜0.6mmの寸法を有する、自動車のディーゼルエンジン用コンプレッサ羽根車である。この羽根車1は、長羽根3とスプリッタ羽根4とが、中心軸20から半径方向に広がるハブ部2に交互に隣接して各々複数枚放射状に突設され、各々が複雑な空力学的曲面形状のブレード面5を表裏に有している。ここでいうブレード面5とは、長羽根3とスプリッタ羽根4の各々の半径方向の外周面に相当するトレイリングエッジ面21およびフィレット面22、さらに長羽根3とスプリッタ羽根4の各々の最上部に相当するリーディングエッジ部23を含まない曲面部である。
上述した本発明の羽根車1を製造する方法としては、例えば以下のような手段が採用できる。まず、羽根車1の形状を有する羽根車素材を、上述の本発明のマグネシウム鋳造合金からなる溶湯を用いて鋳造形成し、この羽根車素材に対して好適な条件で溶体化処理および時効処理等を施し、必要に応じてバリ取りや研磨等の後処理を施すといった方法が利用できる。
羽根車素材の鋳造形成には、コンプレッサ羽根車のハブ部と複雑な形状を有する羽根部とを一体かつ一括で鋳造形成することができる、例えば、鋳造用鋳型を石膏などで形成するプラスターモールド鋳造や、製品と実質的に同一形状の消失性模型から鋳造用鋳型を製作するロストワックス鋳造などを適用することが、生産性の点で有利である。
さらには、金型鋳造を適用することも望ましく、特に湯流れ性に優れるダイカスト(高圧射出成形)による鋳造成形は、薄肉の羽根部にも溶湯を確実に充填できて歩留向上が期待できるとともに、上述のロストワックス鋳造などの形成方法と比較して、生産サイクルも短縮できるためにコンプレッサ羽根車の生産性向上に有利である。
また、ダイカストでは、形成された鋳物の合金組織が微細化されるとともに、急冷による鋳物表面の圧縮応力の効果などにより、クリープ特性や高温域での引張強度あるいは靭性がさらに向上すると考えられる点でも有利である。
本発明のコンプレッサ羽根車は、羽根部にアンダーカットを有し、鋳造用鋳型の型開きが難しいような形状の羽根車であってもよい。この場合、羽根車素材の鋳造形成には、例えば上述のプラスターモールド鋳造を採用することが好ましく、大変形可能なゴム模型を使用できるので鋳造用鋳型の形成が容易となり、鋳造用鋳型には崩壊性のよい石膏等を使用できるので型バラシが容易である。
また、例えば上述のロストワックス鋳造や金型鋳造であっても、以下のような手段を採用すれば適用できる。例えば、鋳造形成する羽根車素材の羽根部の形状を型開き可能な形状とし、鋳造形成後、例えば切削、押圧、曲げなどの機械加工を施すことにより羽根部を最終形状とするような手段である。また例えば、コンプレッサ羽根車の隣接する各羽根間の空間形状を有するスライド金型を中心軸に向かって複数対向させ、これによって形成された空間に溶湯を鋳造して成形後、スライド金型を回動させつつ中心軸の半径方向に移動させて型開きするような手段である。
上述の本発明のマグネシウム鋳造合金からなる溶湯は、以下のような手段によって製造することができる。まず所要の原料を溶解して金型等のインゴットケースにより鋳造成形し、上述した各元素を規定量だけ含有するマグネシウム合金素材を得る。溶解にはガス式や電気式等の直接加熱炉や間接加熱炉、鋳造装置に設けられた溶解坩堝等を用いることができ、攪拌や脱ガス処理を施す等ことが好ましい。また、溶湯は大気中や不活性ガス雰囲気中で取り扱うことができる。より好ましくは、溶湯酸化を少しでも低減させることであり、Arガス等による不活性ガス雰囲気で取り扱うことは有効である。
また、上述の羽根車素材の鋳造形成における溶湯の鋳造温度や鋳造圧力および鋳造速度、鋳造後の冷却パターン等の鋳造時の諸条件は、コンプレッサ羽根車の形状や、溶湯や鋳造装置等により適宜選択することができる。また、吸引鋳造法、減圧鋳造法、真空鋳造法および低圧鋳造法等による溶湯の鋳造手段が好ましく、羽根部の先端のような薄肉部においても良好な湯流れ性を確保することができる。
以下、本発明のマグネシウム鋳造合金について、実施例に基づいて詳細に説明する。
まず、表1に、本発明に関連して検討した各合金の分析組成を示す。本発明の実施例となる合金を合金1〜3で示し、また、本発明の組成を有さない比較例となる合金を合金4〜7で示す。なお、実験室レベルでの検証であって高純度の原料を使用しており、不可避的不純物の含有量は質量%でMn:0.001、Si:0.003、Fe:0.001、Ni<0.001、Cu<0.001であった。
Figure 0004905680
比較例として示す、合金4はCa<2.5質量%、合金5はCa<2.5質量%、合金6はSn<1.6質量%、および合金7はSnを含まない、といった点で本発明とは異なる。また、合金4はCa/Sn<0.5、Al/Ca>2.2、Al/Ca+Ca/Sn>4.0、合金5はAl/Ca>2.2、Ca/Sn<0.5、および合金6はCa/Sn>2.5、Al/Ca+Ca/Sn>4.0といった点でも本発明とは異なる。なお、合金7はAX63(6%Al−3%Ca)に相当する。
また、比較例として示す合金8〜10は市販の合金鋳物であって、合金8はAE42、合金9はAS41、および合金10はAZ91に相当する。
上述した合金1〜7の溶製方法について、以下に説明する。
鉄製の坩堝に純Mgを秤量して装入し、大気雰囲気において680〜750℃に温度制御しながら加熱して溶解した。次いで、各合金1〜7に所望の各元素Al、Sn、Caを含む原料を秤量して予熱し、純Mgの溶湯に対して順次添加した。このとき、大気を遮断して溶湯を保護するためにSF+COの混合ガスを導入し、このガスで溶湯表面を覆った状態で各原料を添加した。
この後、150mm×40mm×120mmの略直方体形状のキャビティを有する金型を鋳型とし、この鋳型を200〜250℃に温度制御しながら加熱しておき、上述した各合金組成を有する溶湯をこの鋳型に鋳造した。そして、そのまま自然空冷させて試験体の素材となる鋳物を得た。
得られた鋳物を鋳造のままの状態で用いて、平行部の断面が5mm×50mmの板状試験片を機械加工によって製作した。そして、得られた試験片を用いてクリープ試験(JIS−Z2271)を175℃で50MPaの応力下で400h実施し、得られたクリープ曲線において定常域でのクリープ速度を測定した。そして、その結果に基いて各合金の高温強度を評価した。各合金1〜10に対するクリープ試験によって得られた最小クリープ速度を、常温(25℃)での試験片表面の硬さ(HRC)とともに、表2に示す。
また、表2に合金8〜10で示す値は、表1に示す上記合金鋳物を用い、他の合金1〜7の場合と同様に試験片を切り出し、その試験片を用いてクリープ試験を実施した結果である。
Figure 0004905680
まず、クリープ特性については、本発明の実施例となる合金1〜3は、いずれにおいても最小クリープ速度が2.0×10−9/s以下となっていた。
一方、比較例として示した合金4、5では、合金1よりも5倍以上大きな値であってクリープ特性が劣っていることがわかった。これはCaの含有量が少なく、特にCa/Snが小さいことに起因すると考えられた。
また、合金6、7では、他合金ほどではないものの、合金1よりも1.5倍以上大きな値であってクリープ特性が劣っていることがわかった。これはSnの含有量が少ないか若しくはSnを含有しないために、Caが相対的に過剰となり、Ca/Snが大きくなりすぎたことに起因すると考えられた。
従来知られていたAE42に相当する合金8では、REを含有させることによって耐熱性を発揮させているにもかかわらず、合金1よりも2.4倍以上大きな値であってクリープ特性が劣っていることがわかった。
これらの結果より、本発明の実施例として示した合金1〜3は、比較例として示したいずれの合金よりも十分に小さい最小クリープ速度を有していることが確認できた。
また、硬さにおいては、本発明の実施例である合金1〜3はそれぞれ53.0、56.0、54.9(HRC)であって、各合金4〜5に比べて同等の値となっていた。特にAl/Ca≦1.9であってAl/Ca+Ca/Sn≦3.30の合金2では56.0(HRC)と他の合金よりも高い硬さを有していることが確認された。この結果より、合金1〜3は、特に合金2、3は、引張強度も優れていることが推測できた。
以上の結果より、Mg−Al−Ca−Sn系のマグネシウム鋳造合金において優れたクリープ特性を得るためには、CaおよびSn、どちらの元素においても適切な含有範囲が存在することが確認できた。また、硬さも向上していることから引張強度についても優れていることが推測できた。
よって、本発明のマグネシウム鋳造合金は、各元素の含有範囲が最適に調整されている合金であって、REやSrを含有していなくても格段に優れたクリープ特性を有することが確認できた。
このように本発明のマグネシウム鋳造合金は、175℃で50MPaの応力下において最小クリープ速度が2.0×10−9/s以下という特性を有しているため、また56.0(HRC)程度の硬さを有しているため、従来のコンプレッサ羽根車における200℃の高温域で耐熱性を有することという課題が解決でき、従来よりも高速回転されて暴露温度が上昇しても使用できる優れた性能を有するコンプレッサ羽根車を得ることができる。
本発明のコンプレッサ羽根車の一例を示す模式図である。
符号の説明
1.コンプレッサ羽根車、2.ハブ部、3.長羽根、4.スプリッタ羽根、5.ブレード面、20.中心軸、21.トレイリングエッジ面、22.フィレット面、23.リーディングエッジ部

Claims (6)

  1. 質量%で3.0≦Al≦9.0、2.5≦Ca≦7.0、2.0<Sn≦5.0の範囲で含有し、残部がMgおよび不可避的不純物からなることを特徴とするマグネシウム鋳造合金。
  2. 質量%で5.5≦Al≦6.5であることを特徴とする請求項1に記載のマグネシウム鋳造合金。
  3. Al、Ca、Snが質量%で2.5≦(Al/Ca+Ca/Sn)≦4.0を満足することを特徴とする請求項1または2に記載のマグネシウム鋳造合金。
  4. Al、Ca、Snが質量%で1.0≦Al/Ca≦2.2、0.5≦Ca/Sn≦2.5を満足することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のマグネシウム鋳造合金。
  5. 不可避的不純物として質量%でMn≦0.5を含有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のマグネシウム鋳造合金。
  6. ハブ軸の周りに配列された羽根部が形成された羽根車形状に、請求項1乃至5のいずれかに記載のマグネシウム鋳造合金が鋳造形成されていることを特徴とするコンプレッサ羽根車。
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