JP7120437B2 - 棒材 - Google Patents
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Description
本発明は、棒材に関する。特に、本発明は、α相とβ相とを含むチタン合金からなる棒材に関する。
本願は、2019年03月06日に、日本に出願された特願2019-040333号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
本願は、2019年03月06日に、日本に出願された特願2019-040333号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
チタン合金は、強度、軽量性、耐食性等に優れることから、近年、様々な分野で使用されている。
チタン合金の中でも、5%のAlと、1%のFeとを含む、Ti-5Al-1Fe系のチタン合金(以下、単に「Ti-5Al-1Fe系合金」と記載する。)は、強度および延性のバランスに優れる。加えて、Ti-5Al-1Fe系合金は、添加元素が比較的安価であることから、経済性にも優れ、適応範囲が広い。例えば、特許文献1には、Ti-5Al-1Fe系合金として、質量%で、0.5%以上1.4%未満のFe、4.6%以上5.5%未満のAlを含む合金が開示されている。
チタン合金は、航空機、自動車等の輸送機の部品に用いられる場合があるが、例えば、これら部品を製造する際には、切削加工が必要になることがある。このため、上記部品に用いられる素材には、切削加工がしやすい、つまり良好な切削性が求められる。しかしながら、Ti-5Al-1Fe系合金は、切削時に、切粉と呼ばれる切り屑が分厚く成長し、切削加工されにくいという課題があった。特に、鍛造を含む製造方法で製造されるチタン合金の棒材において、切削加工性の向上が求められている。
本発明は、上記の課題を解決し、快削チタン合金からなる棒材を提供することを目的とする。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、下記を要旨とする。
(1)本発明の一態様に係る棒材は、α相とβ相とを含むチタン合金からなり、前記チタン合金の化学組成が、質量%で、Al:4.5~6.4%、Fe:0.5~2.1%、C:0.01%以下、N:0.05%以下、O:0.25%以下、V:0.10%以下、Si:0~0.40%、Ni:0~0.15%、Cr:0~0.25%、Mn:0~0.25%、残部:Tiおよび不純物であり、前記チタン合金の金属組織における前記β相の面積率が、20%以下であり、前記β相の結晶粒の平均短軸長さが2.0μm以下である。
(2)上記(1)の線材では、前記化学組成が、質量%で、Si:0.15~0.40%、Ni:0.05~0.15%、Cr:0.10~0.25%、および、Mn:0.10~0.25%、からなる群から選択される一種以上を含有してもよい。
(3)上記(1)または(2)に記載の線材では、前記β相に対する、KAM値が1°以上であるβ相の割合が、面積率で40%以上であってもよい。
本発明の上記態様によれば、切削性に優れる快削チタン合金からなる棒材を得ることができる。
本発明者らは、棒材を構成する(素材である)Ti-5Al-1Fe系合金おける切削性について、種々の検討を行った。その結果、以下の(1)~(3)の知見を得た。
(1)Ti-5Al-1Fe系合金は、α+β型チタン合金と呼ばれる合金であり、金属組織として、α相とβ相とを有する。Ti-5Al-1Fe系合金は、この二つの相を有することで、強度と延性とのバランスが良好になる。
(2)一方、β相は延性が高いうえ、凝着性が強く、切削性を低下させる。具体的には、β相の存在により、切削時に切粉と呼ばれる切り屑が延性に富むうえ、分厚く成長するので、切断されにくくなる。その結果、切粉が排出されにくく目詰まりが生じやすくなり、切削性が低下する。さらに、切粉は、切削されるTi-5Al-1Fe系合金素材、切削工具および切粉同士と凝着することがあり、凝着すると切粉が排出されにくくなり、目詰まりが生じるため切削性が低下する。
(3)切削性を向上させるためには、β相の面積率を適切に制御するのとともに、β相を細く切れやすい状態にすることが有効である。β相を細かく切れやすい状態にするためには、図1に示すように、β相のサイズを小さくすることや、β相にひずみを導入してβ相の延性を低下させることが有効である。β相のサイズについては、図1の(b)に示すようにその円相当直径を小さくした場合だけでなく、(c)や(d)に示すようにその形状を楕円や針状として、少なくとも一方の長さ(短軸長さ)を小さくした場合でも切削性が向上する。
本発明は上記の知見に基づいてなされた。以下、本発明の好ましい一実施形態を詳細に説明し、その際、本発明の好ましい一実施形態を本発明として記載する。
1.相
本実施形態に係る棒材はチタン合金からなり、チタン合金はα相とβ相とを含む。チタン合金はα相とβ相とからなっていてもよい。
本実施形態に係る棒材はチタン合金からなり、チタン合金はα相とβ相とを含む。チタン合金はα相とβ相とからなっていてもよい。
2.化学組成
各元素の限定理由は下記のとおりである。以下の説明において含有量についての「%」は、「質量%」を意味する。また、「~」を挟んで示される数値範囲は、その両端の値を含む。すなわち、4.5~6.4%は、4.5%以上、6.4%以下であることを示す。ただし、超、未満で示される値は、その値を範囲に含まない。
各元素の限定理由は下記のとおりである。以下の説明において含有量についての「%」は、「質量%」を意味する。また、「~」を挟んで示される数値範囲は、その両端の値を含む。すなわち、4.5~6.4%は、4.5%以上、6.4%以下であることを示す。ただし、超、未満で示される値は、その値を範囲に含まない。
Al:4.5~6.4%
Alは、固溶強化能の高い元素であり、室温での引張強さを向上させる元素である。所望する引張強さ(例えば700MPa以上)を得るために、Al含有量は4.5%以上とする。Al含有量は、4.8%以上とするのが好ましい。
一方、Al含有量が6.4%超であると、変形抵抗が増大し、加工性が低下する。また、凝固偏析などにより、母相であるα相が過剰に固溶強化し、局所的に硬さが増大する。この結果、疲労強度および衝撃靱性が低下する。このため、Al含有量は、6.4%以下とする。Al含有量は、5.4%以下とするのが好ましい。
Alは、固溶強化能の高い元素であり、室温での引張強さを向上させる元素である。所望する引張強さ(例えば700MPa以上)を得るために、Al含有量は4.5%以上とする。Al含有量は、4.8%以上とするのが好ましい。
一方、Al含有量が6.4%超であると、変形抵抗が増大し、加工性が低下する。また、凝固偏析などにより、母相であるα相が過剰に固溶強化し、局所的に硬さが増大する。この結果、疲労強度および衝撃靱性が低下する。このため、Al含有量は、6.4%以下とする。Al含有量は、5.4%以下とするのが好ましい。
Fe:0.5~2.1%
Feは、β相安定化元素であるとともに、固溶強化能が高く、室温での引張強さを向上させるために有効な元素である。さらに、Feはβ相の安定化のための指標であるMo当量が2.9と高く(Moを1とした場合。Vは0.67である。)、また、拡散が速い。そのため、Feを含有する場合、切削中に加工発熱で被削されるチタン合金の温度が上昇して高温となった場合においても、β相の面積率が増加し難い。その結果、切削中に切粉が切断されやすく、切削性が向上する。
図2は、Feを含有するチタン合金、またはVやMoなどを含有するチタン合金において、加熱温度(横軸)とその際のβ相の面積率とを示す模式図である。図2から分かるように、Feを含有する場合には、温度が上昇しても、β相の面積率が増加しにくい。
上記効果を得るため、Fe含有量は、0.5%以上とする。Fe含有量は、0.8%以上とするのが好ましい。一方で、Fe含有量が過剰になると、β相の面積率が過剰になり、却って、切削性が低下する上、偏析が生じやすい。このため、Fe含有量は、2.1%以下とする。Fe含有量は、1.2%以下とするのが好ましい。Fe含有量が、上記範囲であれば、β相の面積率が適正量となり、チタン合金の強度と延性とのバランスが良好になる。
Feは、β相安定化元素であるとともに、固溶強化能が高く、室温での引張強さを向上させるために有効な元素である。さらに、Feはβ相の安定化のための指標であるMo当量が2.9と高く(Moを1とした場合。Vは0.67である。)、また、拡散が速い。そのため、Feを含有する場合、切削中に加工発熱で被削されるチタン合金の温度が上昇して高温となった場合においても、β相の面積率が増加し難い。その結果、切削中に切粉が切断されやすく、切削性が向上する。
図2は、Feを含有するチタン合金、またはVやMoなどを含有するチタン合金において、加熱温度(横軸)とその際のβ相の面積率とを示す模式図である。図2から分かるように、Feを含有する場合には、温度が上昇しても、β相の面積率が増加しにくい。
上記効果を得るため、Fe含有量は、0.5%以上とする。Fe含有量は、0.8%以上とするのが好ましい。一方で、Fe含有量が過剰になると、β相の面積率が過剰になり、却って、切削性が低下する上、偏析が生じやすい。このため、Fe含有量は、2.1%以下とする。Fe含有量は、1.2%以下とするのが好ましい。Fe含有量が、上記範囲であれば、β相の面積率が適正量となり、チタン合金の強度と延性とのバランスが良好になる。
C:0.01%以下
N:0.05%以下
O:0.25%以下
C、N、およびOは、不純物であり、いずれも多量に含有すると延性および加工性が低下する場合がある。このため、C含有量を0.01%以下、N含有量を0.05%以下、O含有量を0.25%以下とする。
一方、C、N、およびOの含有量を下げるには工業生産的に限界がある。過度な製造コスト上昇を抑えるため、これら元素の含有量は、C:0.0001%以上、N:0.0001%以上、O:0.01%以上とするのが望ましい。
また、Oは、強度向上に使用される元素でもある。強度向上に用いる場合、O含有量を0.08%以上としてもよい。
N:0.05%以下
O:0.25%以下
C、N、およびOは、不純物であり、いずれも多量に含有すると延性および加工性が低下する場合がある。このため、C含有量を0.01%以下、N含有量を0.05%以下、O含有量を0.25%以下とする。
一方、C、N、およびOの含有量を下げるには工業生産的に限界がある。過度な製造コスト上昇を抑えるため、これら元素の含有量は、C:0.0001%以上、N:0.0001%以上、O:0.01%以上とするのが望ましい。
また、Oは、強度向上に使用される元素でもある。強度向上に用いる場合、O含有量を0.08%以上としてもよい。
V:0.10%以下
Vは不純物であり、V含有量が多いと、高温でのβ相の面積率が増加しやすくなる。V含有量が0.10%を超えると、切削時のβ相の面積率の増加が著しくなるので、V含有量は0.10%以下とする。
Vは不純物であり、V含有量が多いと、高温でのβ相の面積率が増加しやすくなる。V含有量が0.10%を超えると、切削時のβ相の面積率の増加が著しくなるので、V含有量は0.10%以下とする。
Si:0~0.40%
Siは、β相安定化元素であるが、α相中にも固溶して高い固溶強化能を有し、棒材の素材となるチタン合金の強度を向上させる元素である。また、Siは、前述するO(酸素)と逆の偏析傾向にあり、さらにO(酸素)ほどには凝固偏析し難い。したがって、SiとOとを複合含有させることにより、引張強さと疲労強度とを両方とも向上させることができる。このため、必要に応じて含有させてもよい。また、上述したように、偏析の問題から、Feは、2.1%を超えて含有させることが難しい。したがって、Si含有量を調整することで、強度を向上させることもできる。Siは含有させなくてもよいが、上記効果を得るためには、Si含有量は、0.15%以上とするのが好ましい。
一方、Si含有量が過剰になると、β相の面積率が過剰になり、切削性が低下する。このため、Si含有量は0.40%以下とする。Si含有量は0.35%以下とするのが好ましい。
Siは、β相安定化元素であるが、α相中にも固溶して高い固溶強化能を有し、棒材の素材となるチタン合金の強度を向上させる元素である。また、Siは、前述するO(酸素)と逆の偏析傾向にあり、さらにO(酸素)ほどには凝固偏析し難い。したがって、SiとOとを複合含有させることにより、引張強さと疲労強度とを両方とも向上させることができる。このため、必要に応じて含有させてもよい。また、上述したように、偏析の問題から、Feは、2.1%を超えて含有させることが難しい。したがって、Si含有量を調整することで、強度を向上させることもできる。Siは含有させなくてもよいが、上記効果を得るためには、Si含有量は、0.15%以上とするのが好ましい。
一方、Si含有量が過剰になると、β相の面積率が過剰になり、切削性が低下する。このため、Si含有量は0.40%以下とする。Si含有量は0.35%以下とするのが好ましい。
Ni:0~0.15%
Siと同様に、Niは、チタン合金の強度を向上させる効果を有する元素である。このため、必要に応じて、含有させてもよい。上記効果を得るためには、Ni含有量は、0.05%以上とするのが好ましい。
一方、Ni含有量が過剰になると、β相の面積率が過剰になり、切削性が低下する。また、平衡相である金属間化合物(Ti2Ni)が生成し、疲労強度および室温延性が低下する。このため、Ni含有量は0.15%以下とする。Ni含有量は、0.10%以下とするのが好ましい。
Siと同様に、Niは、チタン合金の強度を向上させる効果を有する元素である。このため、必要に応じて、含有させてもよい。上記効果を得るためには、Ni含有量は、0.05%以上とするのが好ましい。
一方、Ni含有量が過剰になると、β相の面積率が過剰になり、切削性が低下する。また、平衡相である金属間化合物(Ti2Ni)が生成し、疲労強度および室温延性が低下する。このため、Ni含有量は0.15%以下とする。Ni含有量は、0.10%以下とするのが好ましい。
Cr:0~0.25%
Siと同様に、Crは、チタン合金の強度を向上させる効果を有する。このため、必要に応じて、含有させてもよい。上記効果を得るためには、Cr含有量は、0.10%以上とするのが好ましい。
一方、Crを過剰に含有させると、β相の面積率が多くなり、切削性が低下する。また、平衡相である金属間化合物(TiCr2)が生成し、疲労強度および室温延性が低下する。このため、Cr含有量は0.25%以下とする。Cr含有量は、0.20%以下とするのが好ましい。
Siと同様に、Crは、チタン合金の強度を向上させる効果を有する。このため、必要に応じて、含有させてもよい。上記効果を得るためには、Cr含有量は、0.10%以上とするのが好ましい。
一方、Crを過剰に含有させると、β相の面積率が多くなり、切削性が低下する。また、平衡相である金属間化合物(TiCr2)が生成し、疲労強度および室温延性が低下する。このため、Cr含有量は0.25%以下とする。Cr含有量は、0.20%以下とするのが好ましい。
Mn:0~0.25%
Siと同様に、Mnは、チタン合金の強度を向上させる効果を有する。このため、必要に応じて、含有させてもよい。上記効果を得るためには、Mn含有量は、0.10%以上とするのが好ましい。
一方、Mn含有量が過剰になると、β相の面積率が多くなり、切削性が低下する。また、平衡相である金属間化合物(TiMn)が生成し、疲労強度および室温延性が低下する。このため、Mn含有量は0.25%以下とする。Mn含有量は、0.20%以下とするのが好ましい。
Siと同様に、Mnは、チタン合金の強度を向上させる効果を有する。このため、必要に応じて、含有させてもよい。上記効果を得るためには、Mn含有量は、0.10%以上とするのが好ましい。
一方、Mn含有量が過剰になると、β相の面積率が多くなり、切削性が低下する。また、平衡相である金属間化合物(TiMn)が生成し、疲労強度および室温延性が低下する。このため、Mn含有量は0.25%以下とする。Mn含有量は、0.20%以下とするのが好ましい。
本実施形態に係る棒材の化学組成において、残部はTiおよび不純物である。ここで「不純物」とは、チタン合金を工業的に製造する際に、原料、製造工程の種々の要因によって混入する成分であって、本発明に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。不純物の含有量は、上述したC、N、O、Vを除いて、合計で0.50%以下であることが好ましい。不純物としては、上述したC、N、O、Vの他、例えば、H、Sn、Zr、Cu、Pd、W、B、Ta、Hf等が挙げられる。Hが不純物として含まれる場合、その含有量は、例えば、0.015%以下である。また、Sn、Zr、Cu、Pd、W、B、Ta、Hfが含まれる場合、その含有量は、例えば、それぞれ0.05%以下である。
3.β相の面積率
α+β型チタン合金において、β相は強度および延性のバランスを担保する上で必要である。しかしながら、β相は、凝着性が高い。このため、β相の量が過剰であると、延性が増加し、排出される切粉自体の延性も高くなることから、切粉が切断されにくくなる。また、工具と被削されるチタン合金との間で、凝着が生じ、摩擦抵抗が増加する他、切粉と工具との間、および切粉同士で、凝着が生じ、目詰まりが生じやすくなる。この結果、切削性が低下する。
α+β型チタン合金において、β相は強度および延性のバランスを担保する上で必要である。しかしながら、β相は、凝着性が高い。このため、β相の量が過剰であると、延性が増加し、排出される切粉自体の延性も高くなることから、切粉が切断されにくくなる。また、工具と被削されるチタン合金との間で、凝着が生じ、摩擦抵抗が増加する他、切粉と工具との間、および切粉同士で、凝着が生じ、目詰まりが生じやすくなる。この結果、切削性が低下する。
このため、本実施形態に係る棒材を構成するチタン合金では、観察される全組織に対し、β相の面積率は、20%以下とする。β相の面積率は、15%以下とするのが好ましい。一方、β相の低減は、切削性の向上には有効であるが、強度および延性を向上させるためには、β相の面積率は、1%以上とするのが好ましい。
β相の面積率は、観察面を電解研磨またはコロイダルシリカ研磨により鏡面にした後、電子線後方散乱回折法(以下、単に「EBSD」と記載する。)を用いて測定する。具体的には、鏡面にした観察面において、80(μm)×140(μm)の領域を1視野として、5視野に対して、加速電圧を15kV、照射電流量を10nA、ステップを0.3μmとした条件で測定し、付属の画像解析ソフトである「OIM-Analysis(登録商標)」を用いて、結晶構造の違いに基づいてβ相の面積率を算出する。
本実施形態に係る棒材を構成するチタン合金は、全ての部位において、上述のβ相の面積率の規定を満足する必要がある。全ての部位において、上述のβ相の面積率が20%以下であれば、良好な切削性を得ることができる。ここで、β相の面積率は、例えば、冷却されやすさとも関係し、冷却が進みやすい表面付近において高くなり、冷却が進みにくい内部組織において、低くなる。したがって、表面付近、つまり表層の組織において、β相の面積率の規定を満足すれば、内部組織においてもβ相の規定を満足すると考えられる。
そこで、β相の面積率を算出するに際し、チタン合金からなる棒材のC断面における表面近傍(加工面近傍)から試験片を切り出し、試験片を採取すればよい。続いて、採取した試験片の観察面は、例えば、表面(加工面)から上述の80(μm)×140(μm)の領域を設定すればよい。これにより、表層のβ相の面積率を算出でき、間接的にチタン合金全体において、β相の面積率が20%以下となるか否かを判断することができる。
4.β相の平均短軸長さ
β相は変形しやすく凝着性が高い相である。そのため、β相の結晶粒の平均短軸長さ(単にβ相の平均短軸長さと言う場合ある)が、2.0μmを超えると、切粉の延性が高くなる。さらに、工具との接触面積が大きくなるため工具との摩擦抵抗が増加し、切粉が分厚くなる。延性が高く分厚い切粉は、切削中に切断されにくく、目詰まりを起こしやすくする。この結果、切削性が低下する。このため、本実施形態に係る棒材においては、チタン合金が含むβ相の平均短軸長さは、2.0μm以下とする。β相の平均短軸長さは1.7μm以下とするのが好ましい。β相の平均短軸長さの下限値は、特に規定しないが、例えば、後述する方法では、0.3μm以上となると考えられる。
β相は変形しやすく凝着性が高い相である。そのため、β相の結晶粒の平均短軸長さ(単にβ相の平均短軸長さと言う場合ある)が、2.0μmを超えると、切粉の延性が高くなる。さらに、工具との接触面積が大きくなるため工具との摩擦抵抗が増加し、切粉が分厚くなる。延性が高く分厚い切粉は、切削中に切断されにくく、目詰まりを起こしやすくする。この結果、切削性が低下する。このため、本実施形態に係る棒材においては、チタン合金が含むβ相の平均短軸長さは、2.0μm以下とする。β相の平均短軸長さは1.7μm以下とするのが好ましい。β相の平均短軸長さの下限値は、特に規定しないが、例えば、後述する方法では、0.3μm以上となると考えられる。
本実施形態に係る棒材では、チタン合金を加工し、β相の平均短軸長さを小さくすること、または、さらにβ相にひずみを導入することで、β相の延性を低下させ、切削性を向上させる。β相は、α相と比較し、延性が高く加工がされやすい。このため、上述のように、チタン合金に加工を施すと、β相が優先的に変形し、細長く伸びた楕円形状となり、切断されやすくなる。つまり、チタン合金の切削性が向上する。
β相の平均短軸長さは、観察面を電解研磨またはコロイダルシリカ研磨により鏡面にし、EBSDを用いて測定する。β相の面積率の測定と同様に、鏡面化した観察面において、80(μm)×140(μm)の領域を1視野として、5視野に対して加速電圧を15kV、照射電流量を10nA、ステップを0.3μmとした条件で測定する。そして、株式会社TSLソリューションズ社製の画像解析ソフトである「OIM-Analysis(登録商標)」を用いて、上記平均短軸長さを算出する。
ここで、平均短軸長さは、以下のように定義される。具体的には、結晶構造の違いに基づいてβ相のみを測定対象とした上で、傾角15°以上の大角粒界で囲まれる範囲を結晶粒と定義し、結晶粒の最大長さを長軸aと定義し、結晶粒を楕円近似した場合に、以下の式(1)から算出される楕円の短軸b(以下、単に「短軸」と略称する)の長さを、短軸長さと定義する。各β相の結晶粒の短軸の長さを算出し、その平均値を平均短軸長さと定義する。長軸の長さaと結晶粒の面積SはEBSDによって測定する。
S=π×a×b (1)
ここで、平均短軸長さは、以下のように定義される。具体的には、結晶構造の違いに基づいてβ相のみを測定対象とした上で、傾角15°以上の大角粒界で囲まれる範囲を結晶粒と定義し、結晶粒の最大長さを長軸aと定義し、結晶粒を楕円近似した場合に、以下の式(1)から算出される楕円の短軸b(以下、単に「短軸」と略称する)の長さを、短軸長さと定義する。各β相の結晶粒の短軸の長さを算出し、その平均値を平均短軸長さと定義する。長軸の長さaと結晶粒の面積SはEBSDによって測定する。
S=π×a×b (1)
本実施形態に係る棒材は、全ての部位において、上述のβ相の平均短軸長さの規定を満足する必要がある。全ての部位において、上述のβ相の平均短軸長さが2.0μm以下であれば、良好な切削性を得ることができる。ひずみは、表面付近であればあるほど、導入されやすく、内部組織になるほど、導入されにくい。そのため、平均短軸長さは内部よりも表面付近が小さくなりやすい。したがって、内部の組織、つまり中心付近の組織において、β相の平均短軸長さの規定を満足すれば、チタン合金全体として平均短軸長さの規定を満足すると考えられる。
そのため、β相の平均短軸長さを算出する際には、チタン合金のC断面において試験片を中心付近から採取することが好ましい。そして採取した試験片の観察面は、例えば、C断面の中心から80(μm)×140(μm)の領域を設定すればよい。つまり、棒材であれば、径の中心等の加工の最も入りにくい中心組織から上述の領域を設定すればよい。
5.KAM値が1°以上であるβ相の面積割合
β相にひずみを導入することで、β相の延性が低下する。そのため、切粉が切断されやすくなり、切削性がより向上する。そのため、本実施形態に係る棒材では、KAM値が1°以上であるβ相の面積割合を高めることが好ましい。KAM(Kernel Average Misorientation)値とは、結晶粒内における隣接測定点間の方位差を示すものであり、導入されたひずみの度合いとも言える。
具体的には、本実施形態に係る棒材では、観察(測定)される全β相に対し、KAM値が1°以上であるβ相の面積割合が、40%以上であるのが好ましい。観察される全β相に対し、KAM値が1°以上であるβ相の面積割合が、40%未満であると、効果的にβ相にひずみを導入できておらず、切削性の更なる向上には十分ではない。このため、全β相に対し、KAM値が1°以上であるβ相の面積割合を、40%以上とするのが好ましい。上記のβ相の面積割合は、50%以上とするのがより好ましく、60%以上とするのがさらに好ましい。
β相にひずみを導入することで、β相の延性が低下する。そのため、切粉が切断されやすくなり、切削性がより向上する。そのため、本実施形態に係る棒材では、KAM値が1°以上であるβ相の面積割合を高めることが好ましい。KAM(Kernel Average Misorientation)値とは、結晶粒内における隣接測定点間の方位差を示すものであり、導入されたひずみの度合いとも言える。
具体的には、本実施形態に係る棒材では、観察(測定)される全β相に対し、KAM値が1°以上であるβ相の面積割合が、40%以上であるのが好ましい。観察される全β相に対し、KAM値が1°以上であるβ相の面積割合が、40%未満であると、効果的にβ相にひずみを導入できておらず、切削性の更なる向上には十分ではない。このため、全β相に対し、KAM値が1°以上であるβ相の面積割合を、40%以上とするのが好ましい。上記のβ相の面積割合は、50%以上とするのがより好ましく、60%以上とするのがさらに好ましい。
KAM値が1°以上であるβ相の面積割合は、上述の平均短軸長さと同様の観察面について、同様の条件でEBSDを用いて、測定することができる。
α相
本実施形態に係る棒材において、チタン合金が含むα相は、限定されず、例えば図3Aのような針状組織であってもよいし、図3Bのような等軸組織であってもよい。疲労特性の観点からは、α相がアスペクト比の小さい(例えば3以下の)等軸組織であることが好ましく、耐亀裂伝播の観点からは、α相が針状組織であることが好ましい。
本実施形態に係る棒材において、チタン合金が含むα相は、限定されず、例えば図3Aのような針状組織であってもよいし、図3Bのような等軸組織であってもよい。疲労特性の観点からは、α相がアスペクト比の小さい(例えば3以下の)等軸組織であることが好ましく、耐亀裂伝播の観点からは、α相が針状組織であることが好ましい。
6.目標とする特性値
本実施形態に係る棒材では、切削性を評価する指標として、ドリル切削試験により得られるVL1000(rpm)を用いる。ここで、VL1000とは、累積孔深さが1000mmの孔あけが可能なドリルの切削速度であって、数値が大きいほど切削性が良好であることを示す。
本実施形態に係る棒材では、切削性を評価する指標として、ドリル切削試験により得られるVL1000(rpm)を用いる。ここで、VL1000とは、累積孔深さが1000mmの孔あけが可能なドリルの切削速度であって、数値が大きいほど切削性が良好であることを示す。
本実施形態では、VL1000が9000rpm以上である場合を切削性が良好であると判断する。また、VL1000が、9000rpm未満である場合を切削性が不良であると判断する。
VL1000(rpm)を算出するためのドリル切削試験では、直径5mmの内部給油式WC・Co超硬ドリル(TiAl・Nコーティング)を用いる。また、上記試験条件は、水溶性切削油(ユシローケンEC50)使用し、穿孔速度0.1mm/rev.、穴深さ15mm(ドリル径の3倍)の条件で行う、ドリル寿命が1000mmになる切削速度を算出する。
7.棒材の形状
本実施形態に係る棒材では、断面のサイズや形状などは限定されない。断面形状としては、円や楕円、四角形や八角形などが例示される。また、断面が大きいほど切削性が課題となるので、断面が大きいほど、本実施形態に係る棒材を用いた際の効果が顕著になる。そのため、例えば、棒材の断面の径(断面が円でない場合には、円相当直径)を2.5mm超としてもよい。断面の径は、1500mm以下としてもよい。
本実施形態に係る棒材では、断面のサイズや形状などは限定されない。断面形状としては、円や楕円、四角形や八角形などが例示される。また、断面が大きいほど切削性が課題となるので、断面が大きいほど、本実施形態に係る棒材を用いた際の効果が顕著になる。そのため、例えば、棒材の断面の径(断面が円でない場合には、円相当直径)を2.5mm超としてもよい。断面の径は、1500mm以下としてもよい。
8.製造方法
本実施形態に係る棒材は、製造方法によらず、上述の構成を有していれば、その効果を得られるが、例えば、以下のような工程(I)、または、工程(II)の少なくともいずれかを含む製造方法によれば、β相の面積率、β相に導入されるひずみの量、およびβ相の形状等を適切に制御することができ、好ましい。
(I)前処理工程+熱間加工工程、
(II)冷間加工工程。
以下、各工程における好ましい条件について説明する。
本実施形態に係る棒材は、製造方法によらず、上述の構成を有していれば、その効果を得られるが、例えば、以下のような工程(I)、または、工程(II)の少なくともいずれかを含む製造方法によれば、β相の面積率、β相に導入されるひずみの量、およびβ相の形状等を適切に制御することができ、好ましい。
(I)前処理工程+熱間加工工程、
(II)冷間加工工程。
以下、各工程における好ましい条件について説明する。
(I)前処理工程+熱間加工工程
本実施形態に係る棒材の製造方法では、冷間加工工程を実施しない場合には、前処理工程及び熱間加工工程を実施する必要がある。
前処理工程及び熱間加工工程は、α相を等軸組織とする場合、針状組織とする場合のそれぞれで、好ましい条件が異なる。
本実施形態に係る棒材の製造方法では、冷間加工工程を実施しない場合には、前処理工程及び熱間加工工程を実施する必要がある。
前処理工程及び熱間加工工程は、α相を等軸組織とする場合、針状組織とする場合のそれぞれで、好ましい条件が異なる。
(i)α相を等軸組織とする場合
α相を等軸組織とする場合、前処理は、以下の条件で行うことが好ましい。
(i-1)表面の温度が850~950℃の温度域で減面率が10~30%の加工を行う
(i-2)中心の温度が1050~1200℃になるように加熱し、当該温度域で5~15分保持を行う
(i-3)中心の温度で、平均冷却速度が10~100℃/秒、となるように770℃以下まで冷却する
また、熱間加工については、以下の条件で行うことが好ましい。
(i-4)表面の温度が850~950℃の温度域で減面率が50%以上の熱間鍛造を行う
(i-5)中心の温度で、平均冷却速度が10℃/秒以上となるように、700~770℃の温度域まで冷却する
(i-6)中心の温度が700~770℃の状態で0.5~24時間保持して冷却、または、表面温度で、平均冷却速度が1℃/秒以下となるように200℃以下まで冷却する
熱間加工は例えば鍛造や圧延である。
表面の温度管理は放射温度計などで測定した値によって行うことができ、中心の温度管理は、シミュレーション、または、予め熱電対を用いて温度変化の挙動を調査して決定した条件の適用によって行うことが出来る。
α相を等軸組織とする場合、前処理は、以下の条件で行うことが好ましい。
(i-1)表面の温度が850~950℃の温度域で減面率が10~30%の加工を行う
(i-2)中心の温度が1050~1200℃になるように加熱し、当該温度域で5~15分保持を行う
(i-3)中心の温度で、平均冷却速度が10~100℃/秒、となるように770℃以下まで冷却する
また、熱間加工については、以下の条件で行うことが好ましい。
(i-4)表面の温度が850~950℃の温度域で減面率が50%以上の熱間鍛造を行う
(i-5)中心の温度で、平均冷却速度が10℃/秒以上となるように、700~770℃の温度域まで冷却する
(i-6)中心の温度が700~770℃の状態で0.5~24時間保持して冷却、または、表面温度で、平均冷却速度が1℃/秒以下となるように200℃以下まで冷却する
熱間加工は例えば鍛造や圧延である。
表面の温度管理は放射温度計などで測定した値によって行うことができ、中心の温度管理は、シミュレーション、または、予め熱電対を用いて温度変化の挙動を調査して決定した条件の適用によって行うことが出来る。
(i-1)表面の温度が850~950℃の温度域で減面率が10~30%の加工
(i-2)中心の温度が1050~1200℃なるように加熱し、当該温度域で5~15分保持
前処理工程では、まず、棒状の素材に対し、表面の温度が850~950℃の温度域で減面率が10~30%の熱間加工を行い、その後、中心温度が1050~1200℃になるよう加熱し、5~15分保持を行う。素材としては、上述した化学組成のものを用いることができ、公知の方法により製造されたものを用いることができる。例えば、スポンジチタンから真空アーク再溶解法や電子ビーム溶解法又はプラズマ溶解法等のハース溶解法等の各種溶解法により作製したインゴットを使用することができる。また、保持時間は素材の中心の温度が1050℃に到達してからの時間である。
上記の条件で、加工を行うことで、再結晶後のβ粒を微細化する為のひずみを導入することができる。その後、保持を行うことで、β単相に変態させるが、上記加工時のひずみが駆動力となって変態後のβ粒が微細となる。
変態後のβ粒が平均円相当直径で平均10mm超の粗大組織である場合、後の工程でβ相を微細に分散させるのは困難になるので、変態後(前処理工程後)のβ粒を円相当直径で平均10mm以下にする。
加工温度が950℃超、または、減面率が10%未満では十分にひずみを導入することができず、変態時にβ粒の再結晶が促進されず、変態後のβ粒の円相当直径が10mm超となる。この場合、続く熱間鍛造を行っても、β相の結晶粒の平均短軸長さを2.0μm以下にすることができない。一方、加工温度が850℃未満、または減面率が30%超であると、鍛造割れが生じ、加工困難になる。
また、保持温度が1200℃超であったり、保持時間が15分超であると、変態後のβ粒が成長し、円相当直径が10mm超となる。また、保持温度が1000℃未満であったり、保持時間が5分未満であると、α相が残留し、粗大α相が不均質に形成されるなど、均一な組織が得られない。この場合、その周囲に形成されるβ相も粗大になるおそれがある。
(i-2)中心の温度が1050~1200℃なるように加熱し、当該温度域で5~15分保持
前処理工程では、まず、棒状の素材に対し、表面の温度が850~950℃の温度域で減面率が10~30%の熱間加工を行い、その後、中心温度が1050~1200℃になるよう加熱し、5~15分保持を行う。素材としては、上述した化学組成のものを用いることができ、公知の方法により製造されたものを用いることができる。例えば、スポンジチタンから真空アーク再溶解法や電子ビーム溶解法又はプラズマ溶解法等のハース溶解法等の各種溶解法により作製したインゴットを使用することができる。また、保持時間は素材の中心の温度が1050℃に到達してからの時間である。
上記の条件で、加工を行うことで、再結晶後のβ粒を微細化する為のひずみを導入することができる。その後、保持を行うことで、β単相に変態させるが、上記加工時のひずみが駆動力となって変態後のβ粒が微細となる。
変態後のβ粒が平均円相当直径で平均10mm超の粗大組織である場合、後の工程でβ相を微細に分散させるのは困難になるので、変態後(前処理工程後)のβ粒を円相当直径で平均10mm以下にする。
加工温度が950℃超、または、減面率が10%未満では十分にひずみを導入することができず、変態時にβ粒の再結晶が促進されず、変態後のβ粒の円相当直径が10mm超となる。この場合、続く熱間鍛造を行っても、β相の結晶粒の平均短軸長さを2.0μm以下にすることができない。一方、加工温度が850℃未満、または減面率が30%超であると、鍛造割れが生じ、加工困難になる。
また、保持温度が1200℃超であったり、保持時間が15分超であると、変態後のβ粒が成長し、円相当直径が10mm超となる。また、保持温度が1000℃未満であったり、保持時間が5分未満であると、α相が残留し、粗大α相が不均質に形成されるなど、均一な組織が得られない。この場合、その周囲に形成されるβ相も粗大になるおそれがある。
(i-3)中心の温度で、平均冷却速度が10~100℃/秒となるように、770℃以下まで冷却
保持の後は、素材を水冷し、10~100℃/秒の平均冷却速度で、770℃以下℃まで冷却することで、析出するα相の微細化を図る。冷却停止温度は700℃未満が好ましい。
平均冷却速度が10℃/秒未満であったり、冷却停止温度が770℃超であると粗大なα相が析出する。この場合、結果としてα相間に析出するβ相も粗大となる。
一方、平均冷却速度が100℃/秒超であると、マルテンサイトが生成され、目的の組織が得られない。
保持の後は、素材を水冷し、10~100℃/秒の平均冷却速度で、770℃以下℃まで冷却することで、析出するα相の微細化を図る。冷却停止温度は700℃未満が好ましい。
平均冷却速度が10℃/秒未満であったり、冷却停止温度が770℃超であると粗大なα相が析出する。この場合、結果としてα相間に析出するβ相も粗大となる。
一方、平均冷却速度が100℃/秒超であると、マルテンサイトが生成され、目的の組織が得られない。
(i-4)表面の温度が850~950℃の温度域で減面率が50%以上の熱間鍛造
850~950℃の温度域に加熱し、減面率の高い熱間鍛造を行うことで、冷却中に生じた針状αを加工性や疲労特性に優れた等軸αに変化させる。
鍛造温度が850℃未満では、鍛造割れが生じ、作業が困難となる。一方、鍛造温度が950℃超であると、α相の面積率が低くなりすぎ、冷却後にα相を微細に分散させることができなくなる。この場合、結果としてα相が粗大化し、α相間に析出するβ相も粗大となる。
また、減面率が50%未満であると十分に等軸化が進行しない。
加工温度低下で割れなどが生じる場合、熱間鍛造中に再加熱してもよい。ただし、β相の粗大化を防ぐ為には、1度の再加熱は5時間以下、再加熱回数は7回以下とする。再加熱を行う場合、減面率は、再加熱前後の合計の減面率を制御する。
850~950℃の温度域に加熱し、減面率の高い熱間鍛造を行うことで、冷却中に生じた針状αを加工性や疲労特性に優れた等軸αに変化させる。
鍛造温度が850℃未満では、鍛造割れが生じ、作業が困難となる。一方、鍛造温度が950℃超であると、α相の面積率が低くなりすぎ、冷却後にα相を微細に分散させることができなくなる。この場合、結果としてα相が粗大化し、α相間に析出するβ相も粗大となる。
また、減面率が50%未満であると十分に等軸化が進行しない。
加工温度低下で割れなどが生じる場合、熱間鍛造中に再加熱してもよい。ただし、β相の粗大化を防ぐ為には、1度の再加熱は5時間以下、再加熱回数は7回以下とする。再加熱を行う場合、減面率は、再加熱前後の合計の減面率を制御する。
(i-5)中心の温度で、平均冷却速度が10℃/秒以上となるように、700~770℃の温度域まで冷却(第1冷却)
鍛造後、αおよびβ相が粗大化しやすい770℃までの温度域の冷却速度を速くする。平均冷却速度が10℃/秒未満または冷却停止温度が770℃超では、α相およびβ相が粗大化する。一方、冷却停止温度が700℃未満では、α相の生成が不十分となり、最終的な棒材においてβ相分率が高くなりすぎる。
鍛造後、αおよびβ相が粗大化しやすい770℃までの温度域の冷却速度を速くする。平均冷却速度が10℃/秒未満または冷却停止温度が770℃超では、α相およびβ相が粗大化する。一方、冷却停止温度が700℃未満では、α相の生成が不十分となり、最終的な棒材においてβ相分率が高くなりすぎる。
(i-6)中心の温度が700~770℃の状態で0.5~24時間保持して冷却、または、表面温度で、平均冷却速度が1℃/秒以下となるように200℃以下まで冷却
第1冷却後、700~770℃の温度域で保持、またはこの温度域からの冷却速度を遅くすることで、β相がα相に変態し、β相の面積率が20%未満になる。
十分な保持を行わず、1℃/秒超の平均冷却速度で冷却を行うと、β相の面積率が20%を超える。
700~770℃で0.5~24時間保持した場合には、その後の冷却は限定されない。
第1冷却後、700~770℃の温度域で保持、またはこの温度域からの冷却速度を遅くすることで、β相がα相に変態し、β相の面積率が20%未満になる。
十分な保持を行わず、1℃/秒超の平均冷却速度で冷却を行うと、β相の面積率が20%を超える。
700~770℃で0.5~24時間保持した場合には、その後の冷却は限定されない。
(ii)α相を針状組織とする場合
α相を針状組織とする場合、前処理及び熱間加工は、以下の条件で行うことが好ましい。
(ii-1)表面の温度が850~950℃の温度域で減面率が10~30%の熱間加工を行う
(ii-2)中心の温度が1050~1200℃になるように加熱し、当該温度域で5~15分保持を行う
(ii-3)中心の温度で、平均冷却速度が15℃/秒以上となるように、700~770℃の温度域まで冷却する
(ii-4)中心の温度が700~770℃の状態で0.5~24時間保持して冷却、または、表面温度で、平均冷却速度が1℃/秒以下となるように200℃以下まで冷却する
また、(ii-3)の冷却の前に熱間加工を行っても良い。熱間加工を行う場合、以下の条件で行うことが好ましい。
(ii-2’)1000℃以上の温度域で熱間加工を行う。減面率等は限定されず、所望の形状とするために設定すればよい。ただし、β粒の粗大化が懸念されるため、熱間加工に際し、2回以上の再加熱は好ましくない。
α相を針状組織とする場合、前処理及び熱間加工は、以下の条件で行うことが好ましい。
(ii-1)表面の温度が850~950℃の温度域で減面率が10~30%の熱間加工を行う
(ii-2)中心の温度が1050~1200℃になるように加熱し、当該温度域で5~15分保持を行う
(ii-3)中心の温度で、平均冷却速度が15℃/秒以上となるように、700~770℃の温度域まで冷却する
(ii-4)中心の温度が700~770℃の状態で0.5~24時間保持して冷却、または、表面温度で、平均冷却速度が1℃/秒以下となるように200℃以下まで冷却する
また、(ii-3)の冷却の前に熱間加工を行っても良い。熱間加工を行う場合、以下の条件で行うことが好ましい。
(ii-2’)1000℃以上の温度域で熱間加工を行う。減面率等は限定されず、所望の形状とするために設定すればよい。ただし、β粒の粗大化が懸念されるため、熱間加工に際し、2回以上の再加熱は好ましくない。
(ii-1)表面の温度が850~950℃の温度域で減面率が10~30%の熱間加工
(ii-2)中心の温度が1050~1200℃になるように加熱し、当該温度域で、5~15分保持
α相を等軸組織とする場合と同じ理由で、前処理工程では、まず、棒状の素材に対し、表面の温度が850~950℃の温度域で減面率が10~30%の熱間加工を行い、その後、1050~1200℃で5~15分保持を行う。
(ii-2)中心の温度が1050~1200℃になるように加熱し、当該温度域で、5~15分保持
α相を等軸組織とする場合と同じ理由で、前処理工程では、まず、棒状の素材に対し、表面の温度が850~950℃の温度域で減面率が10~30%の熱間加工を行い、その後、1050~1200℃で5~15分保持を行う。
(ii-2’)1000℃以上の温度域で熱間加工
保持後、所定の形状とするなどの目的で、熱間鍛造等の熱間加工を行ってもよい。ただし、1000℃未満で鍛造を施すと、等軸化が進行するので、鍛造温度は1000℃以上とすることが好ましい。熱間加工前に温度が低くなっている場合には、加熱(再加熱)を行ってもよいが、β粒が粗大化するため熱間加工中の2回以上の再加熱は好ましくない。
保持後、所定の形状とするなどの目的で、熱間鍛造等の熱間加工を行ってもよい。ただし、1000℃未満で鍛造を施すと、等軸化が進行するので、鍛造温度は1000℃以上とすることが好ましい。熱間加工前に温度が低くなっている場合には、加熱(再加熱)を行ってもよいが、β粒が粗大化するため熱間加工中の2回以上の再加熱は好ましくない。
(ii-3)中心の温度で、平均冷却速度が15℃/秒以上となるように、700~770℃の温度域まで冷却(第1冷却)
αおよびβ相が粗大化しやすい770℃までの温度域の冷却速度を速くする。平均冷却速度が15℃/秒未満または冷却停止温度が770℃超では、α相およびβ相が粗大化する。
一方、冷却停止温度が700℃未満では、α相の生成が不十分となり、最終的な棒材においてβ相分率が高くなりすぎる。
ここでの平均冷却速度は鍛造をしていれば鍛造後から、していなければ冷却開始から、冷却停止までの平均冷却速度を意味する。
αおよびβ相が粗大化しやすい770℃までの温度域の冷却速度を速くする。平均冷却速度が15℃/秒未満または冷却停止温度が770℃超では、α相およびβ相が粗大化する。
一方、冷却停止温度が700℃未満では、α相の生成が不十分となり、最終的な棒材においてβ相分率が高くなりすぎる。
ここでの平均冷却速度は鍛造をしていれば鍛造後から、していなければ冷却開始から、冷却停止までの平均冷却速度を意味する。
(ii-4)中心の温度が700~770℃の状態で0.5~24時間保持して冷却、または、表面温度で、平均冷却速度が1℃/秒以下となるように200℃以下まで冷却
第1冷却後、700~770℃の温度域で所定の時間保持、またはこの温度域からの冷却速度を遅くすることで、β相がα相に変態し、β相の面積率が20%未満になる。十分な保持を行わず、かつ、1℃/秒超の平均冷却速度で冷却を行うと、β相の面積率が20%を超える。
一方、保持時間が長いと、β相が粗大化する。
700~770℃で0.5~24時間保持した場合には、その後の冷却は限定されない。
第1冷却後、700~770℃の温度域で所定の時間保持、またはこの温度域からの冷却速度を遅くすることで、β相がα相に変態し、β相の面積率が20%未満になる。十分な保持を行わず、かつ、1℃/秒超の平均冷却速度で冷却を行うと、β相の面積率が20%を超える。
一方、保持時間が長いと、β相が粗大化する。
700~770℃で0.5~24時間保持した場合には、その後の冷却は限定されない。
(II)冷間加工
冷間加工工程では、中心の温度が200℃以下の温度で、減面率が10%以上となるように冷間加工を行なうのが好ましい。前処理及び熱間加工を行わない場合には、冷間加工工程は必須である。冷間加工を行う場合でも、所定の形状を得るためなどの目的で、冷間加工前に熱間加工を行ってもよいが、その場合の熱間加工条件については限定されない。
上記加工により、加工以後の再結晶を抑制する。さらに、優先的にβ相を変形させ、β相にひずみを導入することで、β相を延伸、または細かく分断することができる。この結果、β相の形状を細長い楕円形状にするとともに、β相の平均短軸長さを2.0μm以下とすることができる。また、上記冷間加工により、KAM値が1°以上のβ相の面積割合を増加させることができる。
冷間加工温度が200℃超、または減面率が10%未満では、十分な効果が得られない。
減面率の上限はないが20%超では加工時に割れや内部欠陥が生じやすくなるため、実質的には減面率は、20%以下となる。
冷間加工工程では、中心の温度が200℃以下の温度で、減面率が10%以上となるように冷間加工を行なうのが好ましい。前処理及び熱間加工を行わない場合には、冷間加工工程は必須である。冷間加工を行う場合でも、所定の形状を得るためなどの目的で、冷間加工前に熱間加工を行ってもよいが、その場合の熱間加工条件については限定されない。
上記加工により、加工以後の再結晶を抑制する。さらに、優先的にβ相を変形させ、β相にひずみを導入することで、β相を延伸、または細かく分断することができる。この結果、β相の形状を細長い楕円形状にするとともに、β相の平均短軸長さを2.0μm以下とすることができる。また、上記冷間加工により、KAM値が1°以上のβ相の面積割合を増加させることができる。
冷間加工温度が200℃超、または減面率が10%未満では、十分な効果が得られない。
減面率の上限はないが20%超では加工時に割れや内部欠陥が生じやすくなるため、実質的には減面率は、20%以下となる。
また、この際、均一にβ相にひずみを導入することが望ましい。この場合、チタン合金の加工前において、圧下する方向の該チタン合金の長さをAとした場合、金型との接触面積が0.1A2(mm2)以上で、一回での圧下で0.05A(mm)以上圧下するのが好ましい。そして、少なくとも直交した2方向以上の方向から、外周を順繰りに圧下するのが好ましい。
多軸鍛造機の場合は、圧下方向に直行した面を加圧し、圧下による幅方向の広がりを抑制した状態で圧下を加えるのが好ましい。これらの加工により、β相に均一に加工を加えることができ、KAM値が1°以上であるβ相の面積割合を40%以上とすることができる。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
表1に示す鋼種No.A~Sの化学組成を有するチタン鋳塊を製造し、表2-1~表2-6に示すように、前処理、熱間加工、冷間加工を行って断面が200×300mmの矩形形状の棒材を得た。ただし、表中「-」は、当該工程を実施しなかったことを示す。
冷間加工を行った例では、冷間加工において、チタン合金の加工前における圧下する方向の該チタン合金の長さをAとした場合、金型との接触面積が0.1A2(mm2)以上で、一回での圧下で0.05A(mm)以上圧下した。また、少なくとも直交した2方向以上の方向から、外周を順繰りに圧下した。
なお、表中、850~950℃での減面率、及び200℃以下までの冷却速度は、表面温度で管理し、それ以外は、中心温度で管理した。
冷間加工を行った例では、冷間加工において、チタン合金の加工前における圧下する方向の該チタン合金の長さをAとした場合、金型との接触面積が0.1A2(mm2)以上で、一回での圧下で0.05A(mm)以上圧下した。また、少なくとも直交した2方向以上の方向から、外周を順繰りに圧下した。
なお、表中、850~950℃での減面率、及び200℃以下までの冷却速度は、表面温度で管理し、それ以外は、中心温度で管理した。
(前処理工程後の旧β粒の結晶粒径)
前処理を行った場合には、前処理工程後の旧β粒の結晶粒径を以下の方法で測定した。測定部位は長手方向に垂直な断面の中心付近とし、結晶粒は切断法で測定した。観察倍率は一本の線分で旧β粒を10個以上切断できる任意の倍率とし、線分の本数は切断した旧β粒が合計100個以上になる任意の本数とした。
前処理を行った場合には、前処理工程後の旧β粒の結晶粒径を以下の方法で測定した。測定部位は長手方向に垂直な断面の中心付近とし、結晶粒は切断法で測定した。観察倍率は一本の線分で旧β粒を10個以上切断できる任意の倍率とし、線分の本数は切断した旧β粒が合計100個以上になる任意の本数とした。
(熱間加工後のミクロ組織)
熱間加工後の棒材のミクロ組織について、α相の形態を観察するとともに、β相の平均短軸長さを求めた。
α相については、図3Aのような組織であれば、針状組織、図3Bのような組織であれば、等軸組織であると判断した。
また、β相の平均短軸長さについて、以下の方法で測定した。
観察面を電解研磨またはコロイダルシリカ研磨により鏡面にし、β相の面積率の測定と同様に、鏡面化した観察面において、加速電圧を15kV、照射電流量を10nAとして、80(μm)×140(μm)の領域をステップ0.3μmで5視野測定した。そして、株式会社TSLソリューションズ社製の画像解析ソフトである「OIM-Analysis(登録商標)」を用いて、上記平均短軸長さを算出した。
熱間加工後の棒材のミクロ組織について、α相の形態を観察するとともに、β相の平均短軸長さを求めた。
α相については、図3Aのような組織であれば、針状組織、図3Bのような組織であれば、等軸組織であると判断した。
また、β相の平均短軸長さについて、以下の方法で測定した。
観察面を電解研磨またはコロイダルシリカ研磨により鏡面にし、β相の面積率の測定と同様に、鏡面化した観察面において、加速電圧を15kV、照射電流量を10nAとして、80(μm)×140(μm)の領域をステップ0.3μmで5視野測定した。そして、株式会社TSLソリューションズ社製の画像解析ソフトである「OIM-Analysis(登録商標)」を用いて、上記平均短軸長さを算出した。
β相の平均短軸長さを測定する際、チタン合金のC断面において試験片を中心付近から採取し、観察面がチタン合金のC断面における中心位置付近で80(μm)×140(μm)の領域が観察面となるよう試料を作製した。
また、冷間加工後(冷間加工を行わない場合には熱間加工後)の棒材のミクロ組織について観察し、β相の面積率、β相の平均短軸長さ、KAM値1°以上のβ相の面積割合を求めた。
(β相の面積率)
β相の面積率は、上述した方法で、観察面を電解研磨またはコロイダルシリカ研磨により鏡面にした後、電子線後方散乱回折法(以下、単に「EBSD」と記載する。)を用いて測定した。具体的には、鏡面化した観察面において、加速電圧を15kV、照射電流量を10nAとして、80(μm)×140(μm)の領域をステップ0.3μmで5視野測定し、株式会社TSLソリューションズ社製の画像解析ソフトである「OIM-Analysis(登録商標)」を用いて、β相の面積率を算出した。
β相の面積率は、上述した方法で、観察面を電解研磨またはコロイダルシリカ研磨により鏡面にした後、電子線後方散乱回折法(以下、単に「EBSD」と記載する。)を用いて測定した。具体的には、鏡面化した観察面において、加速電圧を15kV、照射電流量を10nAとして、80(μm)×140(μm)の領域をステップ0.3μmで5視野測定し、株式会社TSLソリューションズ社製の画像解析ソフトである「OIM-Analysis(登録商標)」を用いて、β相の面積率を算出した。
β相の面積率を算出する際、棒材のC断面における加工面近傍から試験片を切り出し、加工面から厚さ方向に80(μm)位置で、幅方向140(μm)である80(μm)×140(μm)の領域を観察面となるよう試料を作製した。
(β相の平均短軸長さおよびKAM値1°以上であるβ相の面積率)
また、β相の平均短軸長さ、およびKAM値1°以上であるβ相の面積率についても同様に、EBSDを用い、測定した。観察面を電解研磨またはコロイダルシリカ研磨により鏡面にし、β相の面積率の測定と同様に、鏡面化した観察面において、加速電圧を15kV、照射電流量を10nAとして、80(μm)×140(μm)の領域をステップ0.3μmで5視野測定した。そして、株式会社TSLソリューションズ社製の画像解析ソフトである「OIM-Analysis(登録商標)」を用いて、上記平均短軸長さを算出した。
また、β相の平均短軸長さ、およびKAM値1°以上であるβ相の面積率についても同様に、EBSDを用い、測定した。観察面を電解研磨またはコロイダルシリカ研磨により鏡面にし、β相の面積率の測定と同様に、鏡面化した観察面において、加速電圧を15kV、照射電流量を10nAとして、80(μm)×140(μm)の領域をステップ0.3μmで5視野測定した。そして、株式会社TSLソリューションズ社製の画像解析ソフトである「OIM-Analysis(登録商標)」を用いて、上記平均短軸長さを算出した。
β相の平均短軸長さおよびKAM値1°以上であるβ相の面積率を測定する際、チタン合金のC断面において試験片を中心付近から採取し、観察面がチタン合金のC断面における中心位置付近で80(μm)×140(μm)の領域が観察面となるよう試料を作製した。
(ドリル切削試験)
得られたチタン合金からなる棒材について、幅40(mm)×厚さ40(mm)×長さ50(mm)の試料を作製し、ドリル切削試験を行い、VL1000を算出し、VL1000が9000rpm以上である場合を切削性が良好であると判断した。また、VL1000が、9000rpm未満である場合を切削性が不良であると判断した。
結果を表2-1~表2-6に示す。
得られたチタン合金からなる棒材について、幅40(mm)×厚さ40(mm)×長さ50(mm)の試料を作製し、ドリル切削試験を行い、VL1000を算出し、VL1000が9000rpm以上である場合を切削性が良好であると判断した。また、VL1000が、9000rpm未満である場合を切削性が不良であると判断した。
結果を表2-1~表2-6に示す。
ドリル切削試験では、直径5mmの内部給油式WC・Co超硬ドリル(TiAl・Nコーティング)を用いた。また、上記試験条件は、水溶性切削油(ユシローケンEC50)使用し、穿孔速度0.1mm/rev.、穴深さ15mm(ドリル径の3倍)の条件で行う、ドリル寿命が1000mmになる切削速度を算出した。
(硬さ試験)
得られたチタン合金について、参考として、強度の指標となる硬さ試験を行った。硬さ試験では、ビッカース硬さ試験機を用い、JIS Z 2244:2009に従って荷重500gfで試験を行った。
結果を表2-1~表2-6に示す。
得られたチタン合金について、参考として、強度の指標となる硬さ試験を行った。硬さ試験では、ビッカース硬さ試験機を用い、JIS Z 2244:2009に従って荷重500gfで試験を行った。
結果を表2-1~表2-6に示す。
以下、纏めて表1および表2-1~表2-6を示す。
試験No.1~22及びNo.42~44は、本発明の規定を満足し良好な切削性を示した。特に、No.3~22は、KAM値が1°以上のβ相の面積割合も大きく、より切削性に優れていた。
一方、試験No.23~41及びNo.45~51は、本発明の規定を1つ以上満足しなかったため、切削性が不良となった。
一方、試験No.23~41及びNo.45~51は、本発明の規定を1つ以上満足しなかったため、切削性が不良となった。
No.23及び24は、Fe含有量が少なく、V含有量の多い、従来材を用いた例であり、切削性が不十分であった。
No.37~41は、それぞれ、Fe含有量、Si含有量、Ni含有量、Cr含有量、Mn含有量が多かった例であり、β相の面積率、β相の平均短軸長さが本発明範囲を外れた。また、その結果、切削性が不十分であった。
No.25は、熱間加工時の再加熱回数が多かく、β相の平均短軸長さが大きかった。また、その結果、切削性が不十分であった。
No.26は、熱間加工後の冷却速度が速く、β相の面積割合が過剰になるとともに、β相の平均短軸長さが大きかった。また、その結果、切削性が不十分であった。
No.27は、前処理工程における減面率が小さく、β相の平均短軸長さが大きかった。また、その結果、切削性が不十分であった。
No.28及び46は、前処理工程における加熱、保持温度が高く、β相の平均短軸長さが大きかった。また、その結果、切削性が不十分であった。
No.29及び47は、前処理工程における保持時間が長く、β相の平均短軸長さが大きかった。また、その結果、切削性が不十分であった。
No.30は、前処理工程における冷却速度が遅く、β相の平均短軸長さが大きかった。また、その結果、切削性が不十分であった。
No.31は、前処理工程における冷却停止温度が高く、β相の平均短軸長さが大きかった。また、その結果、切削性が不十分であった。
No.32、33及び51では、冷間加工工程における加工温度が高く(冷間加工にならなかった)、β相の平均短軸長さが大きかった。また、その結果、切削性が不十分であった。
No.34~36は、冷間加工工程における減面率が小さく、β相の平均短軸長さが大きかった。また、その結果、切削性が不十分であった。
No.45は、前処理工程における減面率が小さく、熱間加工工程での冷却速度が速く、β相の面積率が大きかった。また、その結果、切削性が不十分であった。
No.48は、700~770℃の状態で保持を十分に行わず、かつその後の冷却速度が速かった。このNo.48では、β相の面積率が高く、β相の平均短軸長さが大きかった。その結果、切削性が不十分であった。
No.49及び50では、700~770℃の状態で保持が過剰であった。このNo.49及び50では、β相の平均短軸長さが大きかった。その結果、切削性が不十分であった。
No.37~41は、それぞれ、Fe含有量、Si含有量、Ni含有量、Cr含有量、Mn含有量が多かった例であり、β相の面積率、β相の平均短軸長さが本発明範囲を外れた。また、その結果、切削性が不十分であった。
No.25は、熱間加工時の再加熱回数が多かく、β相の平均短軸長さが大きかった。また、その結果、切削性が不十分であった。
No.26は、熱間加工後の冷却速度が速く、β相の面積割合が過剰になるとともに、β相の平均短軸長さが大きかった。また、その結果、切削性が不十分であった。
No.27は、前処理工程における減面率が小さく、β相の平均短軸長さが大きかった。また、その結果、切削性が不十分であった。
No.28及び46は、前処理工程における加熱、保持温度が高く、β相の平均短軸長さが大きかった。また、その結果、切削性が不十分であった。
No.29及び47は、前処理工程における保持時間が長く、β相の平均短軸長さが大きかった。また、その結果、切削性が不十分であった。
No.30は、前処理工程における冷却速度が遅く、β相の平均短軸長さが大きかった。また、その結果、切削性が不十分であった。
No.31は、前処理工程における冷却停止温度が高く、β相の平均短軸長さが大きかった。また、その結果、切削性が不十分であった。
No.32、33及び51では、冷間加工工程における加工温度が高く(冷間加工にならなかった)、β相の平均短軸長さが大きかった。また、その結果、切削性が不十分であった。
No.34~36は、冷間加工工程における減面率が小さく、β相の平均短軸長さが大きかった。また、その結果、切削性が不十分であった。
No.45は、前処理工程における減面率が小さく、熱間加工工程での冷却速度が速く、β相の面積率が大きかった。また、その結果、切削性が不十分であった。
No.48は、700~770℃の状態で保持を十分に行わず、かつその後の冷却速度が速かった。このNo.48では、β相の面積率が高く、β相の平均短軸長さが大きかった。その結果、切削性が不十分であった。
No.49及び50では、700~770℃の状態で保持が過剰であった。このNo.49及び50では、β相の平均短軸長さが大きかった。その結果、切削性が不十分であった。
本発明によれば、切削性に優れる快削チタン合金からなる棒材を得ることができる。本発明の棒材は、切削加工が行われる、航空機、自動車等の輸送機の部品に用いられる場合等において、生産性の向上に寄与する。
Claims (3)
- α相とβ相とを含むチタン合金からなり、
前記チタン合金の化学組成が、質量%で、
Al:4.5~6.4%、
Fe:0.5~2.1%、
C:0.01%以下、
N:0.05%以下、
O:0.25%以下、
V:0.10%以下、
Si:0~0.40%、
Ni:0~0.15%、
Cr:0~0.25%、
Mn:0~0.25%、
残部:Tiおよび不純物であり、
前記チタン合金の金属組織における前記β相の面積率が、20%以下であり、
前記β相の結晶粒の平均短軸長さが2.0μm以下である、
棒材。 - 前記化学組成が、質量%で、
Si:0.15~0.40%、
Ni:0.05~0.15%、
Cr:0.10~0.25%、および、
Mn:0.10~0.25%、
からなる群から選択される一種以上を含有する、
請求項1に記載の棒材。 - 前記β相に対する、KAM値が1°以上であるβ相の割合が、面積率で40%以上である、
請求項1または2に記載の棒材。
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