JP6741171B1 - チタン合金板およびゴルフクラブヘッド - Google Patents

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Abstract

質量%で、Al:7.50〜8.50%、Fe:0.70〜1.50%、Nb:0.50〜2.00%、Si:0.05〜0.30%、Cr:0.0〜2.0%、O:0.25%以下、N:0.010%以下、C:0.010%以下、H:0.013%以下を含有し、残部がTiおよび不可避的不純物からなり、[Al%]+10×[O%]≦10.00%を満足するチタン合金板であって、α相の面積率が85.0%以上であり、α相の結晶粒において、アスペクト比が3.3以下となる結晶粒の面積割合が50.0%以上であり、α相を構成する最密六方格子におけるc軸の最大集積方向の板面内方向と、c軸のなす角θが0°以上20°以下である結晶粒の面積率が、25.0%以上40.0%以下であり、層状組織を形成していることを特徴とする、チタン合金板。

Description

本発明は、チタン合金板およびゴルフクラブヘッドに関する。
近年のゴルフヘッドのフェース部材はチタン合金で製造することが一般的である。このフェース部材には、剛性が高いことが求められる。しかしながら、チタンは鋼に比べて剛性が低い。そのため、フェース部材とするチタン合金は、高剛性化が課題の1つに挙げられる。
従来、ゴルフクラブに使用されうるチタン合金として、特許文献1〜6に開示されるような、Alを多量に含むチタン合金が公知である。
特許文献1には、被削性の改善を目的に、高Al(2〜8.5%)、高C(0.08〜0.25%)を添加したチタン合金において、所定量のCu、Niの1種以上を必須で含有させることが記載されている。
特許文献2には、高Al(7.5〜10%)が添加され、Ti以外の合金元素が、Alを含め8〜12%含有させたゴルフヘッドに用いるチタン合金が記載されている。この合金は、鋳造で製造し、延伸率(伸び)が8〜16%であることが記載されている。
特許文献3には、高Al(7.1〜10%)、Fe(0.1〜3%)を添加したチタン合金において、高比強度(実施例207〜228MPa/g・cm3、TS=900〜1000MPa)とすることが記載されている。
特許文献4には、高比強度化を目的に、高Al(7.1〜9%)、Fe(0.1〜2%)を添加したチタン合金において、所定量のCrおよびSnを必須で含有させることが記載されている。
特許文献5には、疲労強度向上を目的に、高Al(2〜8.5%)、高C(0.06〜0.25%)を添加したチタン合金において、β安定化元素の添加量を2〜10%とし、1次αが5〜80%で伸長方向//押出方向(±15°)としたチタン合金押出材が記載されている。
特許文献6には、高比強度化を目的に、高Al(7.1〜10%)、Fe(0.1〜3%)、あるいはさらに、任意添加で、V、Cr、Ni、Mo、B、Siを所定量含有させ、比強度205以上とすることが記載されている。
特開2016−183407号公報 特開2009−167518号公報 特開2007−239030号公報 特開2010−275606号公報 特開2012−052219号公報 特開2009−084690号公報
従来、高比強度のチタン合金には、上記のように、Alが多量に添加されており、鋳造によって製品が製造されてきた。そのため、鋳造欠陥によってフェースの寿命は必ずしも高くはなかった。しかし、従来の高Al含有チタン合金は、熱間圧延時に必要な熱間加工性が不足しているため、板材の製造は難しかった。このような高比強度のチタン合金は、仮に熱間圧延によって製造可能な場合であっても、Alが多量に添加されることで変形抵抗は高まり、製品を製造する際の熱間加工温度の高温化を避けられなかった。
特に高ヤング率のチタン合金では、熱間加工の加工温度が900℃以上と高温なため、熱間加工時に材料表面が酸化され硬化することによって、疵が多発し熱間加工性を著しく悪くしていたため、製品を効率的に製造できていなかった。
本発明は、高い剛性と比強度に加えて、耐酸化性と熱間加工性に優れたチタン合金板およびこれをフェース部材に用いたゴルフクラブヘッドを提供することを目的とする。
上記の課題を解決する本発明の要旨は、以下のとおりである。
(1)
本発明の一態様に係るチタン合金板は、
質量%で、
Al:7.50〜8.50%、
Fe:0.70〜1.50%、
Nb:0.50〜2.00%、
Si:0.05〜0.30%、
Cr:0.0〜2.0%、
O:0.25%以下、
N:0.010%以下、
C:0.010%以下、
H:0.013%以下を含有し、
残部がTiおよび不純物からなり、
Al含有量およびO含有量が式(1)を満足するチタン合金板であって、
チタン合金板の金属組織に占めるα相の面積率が85.0%以上であり、
α相の結晶粒において、アスペクト比が3.3以下となる結晶粒の面積割合が50.0%以上であり、
EBSD(電子線後方散乱回折)法によって求められた、α相を構成する最密六方格子におけるc軸の最大集積方向の板面内方向と、c軸のなす角θが0°以上20°以下である結晶粒の面積率が、25.0%以上40.0%以下であり、
θが0°以上20°以下である結晶粒が長さ100μm以上に連続する領域と、θが20°超90°以下である結晶粒が長さ100μm以上に連続する領域とが、層状組織を形成する。
[Al%]+10×[O%]≦10.00% 式(1)
ここで、式(1)中の[Al%]にはAlの含有量(質量%)が代入され、[O%]にはO含有量(質量%)が代入される。
(2)
上記(1)に記載のチタン合金板では、θが20°超30°以下である結晶粒の面積率が、5.0%以上20.0%以下であってもよい。
(3)
本発明の一態様に係るゴルフクラブヘッドは、(1)または(2)に記載のチタン合金板がフェース部材に用いられる。
本発明によれば、高い剛性と比強度化に加えて、耐酸化性と熱間加工性に優れたチタン合金板およびゴルフクラブヘッドを提供することができる。
圧延板において、EBSD(電子線後方散乱回折)法によって求められた、α相を構成する最密六方格子におけるc軸の最大集積方向の板面内方向と圧延直角方向(TD)のなす角θ’を説明するための模式図。 θ’が0°以上20°以下、20°超30°以下の結晶を含む組織の(0001)極点図。 任意に加工された板材において、EBSD(電子線後方散乱回折)法によって求められた、α相を構成する最密六方格子におけるc軸の最大集積方向の板面内方向とc軸のなす角θを説明するための模式図。 対称性を考慮した場合のc軸の最大集積方向と位置を示した(0001)極点図。 層状組織の定義を説明する図。 本発明の層状組織が形成される過程の説明図である。
チタン合金はα型、α+β型、β型に大別され、α安定化元素(Al,O,N,Cなど)、β安定化元素(V,Mo,Fe,Cr,Ni,Si,Mn,Cuなど)、中立型元素(Sn,Zrなど)の種類と添加量を調整することで種々の型の合金となるように設計を行う。
α安定化元素であるAl、O、N、Cを添加して、α相を安定化させると、ヤング率、強度は向上するが、熱間加工性(成形性など)は低下する。熱間加工性が低下した場合、高温で熱間加工する必要が生じる。そのため、900℃以上の高温で熱間加工する必要があり、その場合には、チタン合金は、著しく酸化しやすくなる。α安定化元素としてAlを添加した場合は、高温での耐酸化性は比較的良いが、熱間加工温度が高温化することで、従来よりも酸化が進むことには変わりがない。
Alの添加により、ヤング率と強度が増加するだけでなく密度が低下するため、比強度も向上するが、Al以外のα安定化元素を添加する場合には強度だけでなく密度も増加するため比強度は、悪化することもある。ゴルフヘッドに使用する場合、重心位置を調整するためにフェース部材には軽さが求められるため、比強度を向上させるAlの添加は非常に有効であり、その効果はO、N、Cよりも大きい。
一方、通常チタン合金に添加できる元素は、そのほとんどがβ安定化元素である。β安定化元素を添加して、β相を安定化させると、熱間加工性、強度は向上するものの、ヤング率、密度、比強度、900℃以上での耐酸化性は概ね悪化する。
α相やβ相の安定度に与える影響が小さな中立型元素であるSn、Zrを添加すると、強度は向上するものの、ヤング率、900℃以上での耐酸化性は向上せず、熱間加工性、密度、比強度は概ね悪化する。
本発明では、高強度化、高剛性化(高ヤング率化)するために、α安定化元素を添加し、α相を安定化させ、α相の面積率(体積率)を高くする。α安定化元素は、高ヤング率化、高比強度化に有効であり、他の特性を比較的阻害しないAlを比較的多量添加する。一方で、同じα安定化元素の中でも、侵入型固溶元素(O、N等)は密度が増加するので、Nは、不可避的不純物として含まれる量に抑制し、Oは、脆性相であるα2相(TiAl相)の析出を抑制するためにAl添加量との関係をかんがみて抑制する。
α安定化元素であるAlが添加されることにより、高強度化、高ヤング率化は実現するものの、熱間加工性が悪化する。そのため、本発明では、熱間加工性確保のために、β安定化元素を所定量添加(熱間加工温度でのβ相量を増加)する。使用するβ安定化元素は密度変化、β相率変化を考慮した結果、Feを選定した。さらに、β安定化元素として、必要に応じてCrも添加できる。
本発明においては、Alの添加量が多く、熱間加工性が低下するため、熱間加工における加工温度が900℃以上に高温化する。加工温度が高温化すると、酸化が顕著となる。この高温での酸化を防止するために、NbとSiを添加する。
さらに、本発明においては、熱間加工の条件を最適化し、集合組織を所定の組織に制御することにより、高ヤング率化と、熱間加工性、延性(室温(常温)伸び)をすべて向上させる。
本実施形態にかかるチタン合金板における成分組成と金属組織について、さらに詳細に説明する。なお、成分の含有範囲を表す%は、全て質量%である。
(成分組成)
Al:7.50〜8.50%
Alを添加することで高強度化し、高温域までα相を安定化することができる。Alを7.50%以上添加することにより、ヤング率を十分に向上させることが可能となる。不可避的不純物として含まれる、O、N、Cによっても、α相は安定化し、ヤング率が向上するが、密度が増加する。よって、Alを添加することで高ヤング率化と低密度化を実現する。一方、8.50%を超えて添加されると、熱間での変形抵抗が高くなり、熱延板を製造することが困難となる。そのため、Alの添加量は、は7.50%以上8.50%以下とした。Al添加量の好ましい下限は、7.60%であり、より好ましくは7.70%、さらに好ましくは、7.80%である。なお、Al添加量の上限は、例えば、8.40%、または8.30%、さらには8.20%であってもよい。
O:0.25%以下
[Al%]+10×[O%]≦10.00%
Oは不純物元素として不可避的に含まれる。Al添加量が多くなると脆性相であるα2相(TiAl相)が析出するようになるが、Oはα2相の析出を促進する効果がある。そのため、O含有量はなるべく低いほうが好ましく、0%であってもよい。しかしながら、Oは不可避的に含まれるものであり、例えば、0.01%以上含有される場合がある。そのため、Oは以下の式(1)を満たすように抑制されなければならない。
[Al%]+10×[O%]≦10.00% 式(1)
[Al%]:Al含有量(質量%)
[O%]:O含有量(質量%)
よって、O含有量の上限は、上記式(1)より、必然的に0.25%以下である。O含有量の好ましい上限は0.15%以下であり、より好ましくは0.12%以下、さらに好ましくは0.10%以下である。しかしながら、精錬工程によりO含有量を極限まで低減すれば、生産性が低下し、製造コストが高くなる。したがって、通常の操業を考慮した場合、O含有量の好ましい下限は0.001%であり、より好ましくは0.005%、さらに好ましくは0.010%である。
また、α2相が析出していない場合でも、上記の式(1)が10.00%を超えると室温での延性が劣化するため、上記式(1)の上限は10.00%以下である。上記式(1)の好ましい上限は9.90%であり、より好ましくは9.70%、さらに好ましくは9.50%である。
Fe:0.70〜1.50%
Feは共析型のβ安定化元素であり、β相を安定化させる。Feはα相中への分配が少ないため、0.70%以上添加することにより、α相の高温での高強度化を抑制できる。そのため、全率固溶型であるV、Moよりも熱間加工性の改善に有効であるとともに安価である。一方、1.50%を超えると、β相の割合が高くなりすぎ、α相の割合が低下して所望のヤング率を得ることができない。よって、0.70%以上1.50%以下とする。Fe添加量の好ましい下限は、0.75%であり、より好ましくは0.85%、さらに好ましくは、0.95%である。また、Fe添加量の好ましい上限は、1.40%、より好ましくは、1.30%、さらに好ましくは1.20%である。
Nb:0.50〜2.00%
Nbは全率固溶型のβ安定化元素であり、β相を安定化するだけでなく耐酸化性も向上させる。本発明のチタン合金の成形加工などでは高温での強度の点で900℃以上に加熱する必要がある。一方、チタンは高温での耐酸化性に著しく劣るため、製品加工時の酸化によって特性が劣化する懸念がある。そのため、Nbを0.50%以上添加する。なお、Alも耐酸化性は向上させるが、高温域ではNbよりも効果が小さくなる。
NbはFeに比べてβ相の安定化度が小さいために、複合的に添加してもβ相率を極端に変化させることはない。よって、十分に耐酸化性が得られるように0.50%以上添加する。しかし、Nbが高価な元素である上に、過剰に添加しても耐酸化性に向上効果が小さい。さらに、Nbが過剰に添加されると、他のβ安定化元素(主にFe、Cr)と共に鋳塊での偏析が生じやすくなり、それに伴って特性がばらつき、圧延直角方向(T方向)で低延性となるために、2.00%以下とする。Nb添加量の好ましい下限は、0.60%であり、より好ましくは0.70%、さらに好ましくは、0.80%である。また、Nb添加量の好ましい上限は、1.80%、より好ましくは、1.50%、さらに好ましくは1.20%である。
Si:0.05〜0.30%
Siは共析型のβ安定化元素であるが、β相の安定化度は小さい。一方で、耐酸化性は大きく向上し、Nbと複合添加することでより耐酸化性を向上させることができる。一方、添加量が多いとシリサイド(Ti−Si金属間化合物)を形成するために、疲労特性などが劣化する。そのため、Si添加量は最大0.30%とする。Si添加量の好ましい上限は0.28%であり、より好ましくは0.25%、さらに好ましくは、0.20%である。Si添加量の下限は耐酸化性向上効果が得られる0.05%以上である。Si添加量の好ましい下限は0.07%、より好ましくは0.09%、さらに好ましくは0.10%以上である。
Cr:0.0〜2.0%
Crは任意選択元素であり、添加されなくてもよい。添加される場合、Crは共析型のβ安定化元素であり、Feと同様に強いβ安定化度を有する。そのため、CrをFeと複合添加することでさらにβ相率を制御することが可能となる。ただし、CrもFeと同様に、過剰に含まれるとβ相の割合が高くなりすぎ、α相の割合が低下して所望のヤング率を得ることができない。そのため、Crを添加する場合、最大2.0%とする。Cr添加量の好ましい上限は1.8%、より好ましくは1.5%である。また、上記効果を得るための、Cr添加量の好ましい下限は0.1%、より好ましくは0.2%である。なお、CrはFe添加のみで十分な熱間加工性を得られた場合は、添加しなくてもよい。
N:0.010%以下
C:0.010%以下
H:0.013%以下
前述のOの他、N、C、Hが不純物元素として不可避的に含まれる。
NはOと同様に密度を上げる上に、β変態点が上昇するためにα相比率が増加し、熱間加工性が劣化するため、N含有量は0.010%以下とすることが望ましい。また、熱間加工性確保のために温度を上げざるをえず、酸化が問題となる。
Cも同様の理由で0.010%以下とすることが望ましい。NおよびCのそれぞれの含有量の好ましい上限は0.008%であり、より好ましくは0.006%である。NおよびCの含有量はなるべく低いほうが好ましく、0%であってもよい。しかしながら、精錬工程によりN含有量を極限まで低減すれば、生産性が低下し、製造コストが高くなる。したがって、通常の操業を考慮した場合、NおよびCのそれぞれの含有量の好ましい下限は0.001%であり、より好ましくは0.002%、さらに好ましくは0.003%である。
Hは、脆化を引き起こす元素であり、室温での固溶限は10ppm前後であるため、これ以上のHが含有される場合には水素化物が形成され、脆化することが懸念される。一般的に、H含有量が0.013%以下であれば、脆化の懸念はあるものの実用上問題なく用いられている。そのため、H含有量は、0.013%以下とする。H含有量の上限は0.010%であり、より好ましくは0.008%以下、さらに好ましくは0.006%であり、0.004%または0.003%であってもよい。H量の下限を規定する必要はなく、その下限は0%である。必要があれば、その下限を0.0001%としてもよい。通常の操業を考慮した場合、H含有量の好ましい下限は0.0005%であり、より好ましくは0.001%である。
残部:Tiおよび不純物
本実施形態にかかるチタン合金板の化学組成の残部は、Tiおよび不純物からなる。ここで、不純物とは、チタン合金板を工業的に製造する際に、原料としてのスクラップや製造環境などから混入されるものであって、本実施形態に係るチタン合金板の特性に悪影響を与えない範囲で許容されるものをいう。
不純物として含まれ得る上述の元素以外のその他の金属元素としては、例えばV、Ni、Sn、Zr、Mn、Mo、Cu等がある。その他の金属元素の上限は0.1%以下である。さらに、その他の金属元素の総和は0.3%以下とする。
(金属組織(ミクロ組織))
α相の面積率:85.0%以上
β相はヤング率が低いためにβ相率が高いとヤング率が低下する。そのため、α相の面積率が85.0%以上必要となる。α相の面積率の好ましい下限は90.0%であり、より好ましくは93.0%、さらに好ましくは95.0%である。β相は、熱間加工性を向上させるので、面積率で、1.0%以上含まれることが望ましい。β相の面積率の好ましい下限は2.0%である。このβ相の面積率は室温での値である。また、これをチタン合金板のα相の面積率で表すと、α相の上限は実質的に99.0%であり、好ましくは98.0%である。測定方法については後に詳細に述べる。なお、α相とβ相以外にシリサイドが存在する場合があるが、存在してもその面積率は0.5%未満であり、微細であることから特性に大きな影響を及ぼさない。また、後述の測定方法によって得られた面積率はその体積率と実質的に同一である。
板表面のEBSD(Electron
Backscattering Diffraction、電子線後方散乱回折)法によって求められた、α相を構成する最密六方格子におけるc軸の最大集積方向の板面内方向と、圧延直角方向(TD)のなす角θが0°以上20°以下である結晶(以下、「θが0°以上20°以下の結晶」ともいう。)粒の面積率:25.0%以上40.0%以下
α相を構成する六方最密格子におけるヤング率は、底面の法線方向(c軸方向)が最も高いため、c軸が配向するほどその方向のヤング率が高くなる。ゴルフクラブのフェース部材では、ゴルフクラブフェースとボールの衝突時に生じるゴルフクラブフェースのたわみを抑えるため、板厚方向以外の方向(図1に示した圧延板において、圧延方向(RD(以降ではL方向ともいう。))、圧延直角方向(TD(以降ではT方向ともいう。)))のヤング率が高いことが求められる。圧延材(ゴルフフェースなどに加工するための切削加工等を施していない板材)において、圧延直角方向(TD)のヤング率を向上させるには、圧延直角方向(TD)とc軸との角度θ’が低い結晶(c軸が板面に対して圧延直角方向(TD)に傾いている結晶)が多くなればよい。そのため、圧延材においては圧延直角方向(TD)とc軸との角度θ’が0°以上20°以下である結晶の面積割合を一定以上とする必要がある。一方、この方向に配向しすぎると材料の靱性や延性が著しく低下して、製造が困難となるため、圧延材におけるこの結晶の面積率は一定以下とする必要がある。
圧延方向(RD)や圧延直角方向(TD)が既知であればθ’を求めることは容易であるが、圧延方向(RD)や圧延直角方向(TD)が不明である場合にθ’を求めることは難しい。そのため、本発明のように「1軸圧延した場合に圧延直角方向(TD)がα相を構成するc軸の最大集積方向の板面内成分に一致する」という特徴から「α相を構成する最密六方格子におけるc軸の最大集積方向の板面内方向とc軸のなす角θ」を定義することで圧延方向(RD)や圧延直角方向(TD)が未知である圧延材のθ’=θとすることができる。
θが0°以上20°以下の結晶粒の面積割合は、ヤング率を確保するために25.0%以上とする必要がある。一方、配向しすぎると材料の靱性や延性が著しく低下して、製造が困難となるため、この結晶粒の面積率は40.0%以下とする。また、配向しすぎるとT方向のヤング率が高まるが、L方向のヤング率には不利な結晶が増えることになるためL方向のヤング率が低下する。θが0°以上20°以下の結晶粒の面積率の好ましい下限は27.0%、より好ましくは29.0%であり、好ましい上限は38.0%。より好ましくは36.0%である。
ここで、c軸の最大集積方向を決定するには、板表面(フェースの場合はフェースの表面)でSEM/EBSD法によって結晶方位を測定し、その結果を図2のような(0001)極点図上に図示する。この時、(0001)極点図において最大集積する方向の位置が存在する測定面内軸方向を「c軸の最大集積方向の板面内方向」とみなすことができる。(0001)極点図は、株式会社TSLソリューションズのソフトウェアOIM Analysis 6.1を用いて作図した。作図のための計算では、Harmonic series expansion(Series rank:16)をGaussian
Half-wdthを5°、試料対称(Sample
Symmetry)をOrthotropicとして行う。なお、対象とする指数は(0001)であり、(0001)面は5°のずれを許容して(0001)とするともに、反転対称(Inversion
Symmetry)を考慮する。その結果、得られた最大ピーク位置をc軸の最大集積位置として判断する。なお、結晶方位解析は、「c軸の最大集積方向の板面内方向とc軸のなす角θ」について、さらに、図3、4により説明する。
図3に示したように、測定する板表面内に、任意の基準軸A1とA2を直角になるように設定する。この時、c軸の最大集積方向は、板面内方向と板面法線方向の成分で構成されており、板面内成分をA’とする。A’をこのように定義し、板面内方向A’と各結晶粒のc軸のなす角をθとする。熱延板での測定の場合は、A1=板幅方向、A2=圧延方向として測定するのでA’=A1となる。(0001)極点図では対称性を考慮して表記すると図4のようになる。なお、測定面が熱延板表面から傾いた面となっていた場合は図4のような極点図中心の対称とならずにずれることがある。これは成形加工時に湾曲したもしくは切削加工によって削られた場合であり、このような場合は中心に対して対称となるように補正することで判断できる。
板面法線方向にc軸の最大集積方向がそろった場合、A’は、板面に垂直となるので、事実上、板面(板表面)内には存在しなくなる。しかしながら、実際には、完全に最大集積方向が板面垂直方向となることはなく、特に、本発明のチタン合金板の板表面で測定してA’が存在しなくなることはない。また、その場合は、本発明の範囲外である。
そして、θが0°以上20°以下の結晶粒の面積率は、EBSD(電子線後方散乱回折)法によって求められる。
また、θが20°超30°以下である結晶(以下、「θが20°超30°以下の結晶」という。)粒の面積率が5.0%以上であることで、より一層の高ヤング率化が達成できる。また、θが20°超30°以下である結晶粒の面積率の上限は20.0%とする。θが20°超30°以下の結晶粒の面積率の好ましい下限は6.0%、より好ましくは7.0%であり、好ましい上限は16.0%、より好ましくは12.0%である。θが0°以上20°以下の結晶、20°超30°以下の結晶を所定量含む本発明の組織の(0001)極点図を概念的に示すと、図2のようになる。図2においては、c軸の最大集積方向は、圧延直角方向TDに一致している。
θが0°以上20°以下である結晶粒が長さ100μm以上に連続する領域と、θが20°超90°以下である結晶粒が長さ100μm以上に連続する領域とから形成される層状組織
本発明のチタン合金板は、図5に示した層状組織であることを特徴とする。層状組織は、板の圧延方向(L方向)と板厚方向(N方向)が含まれる断面をL断面として観察する。図5に示すL断面において、横軸が圧延方向(L方向)であり、縦軸が板厚方向(N方向)である。図5は、圧延方向(L方向)100μm×板厚方向(N方向)500μmの部分を示している。なお、圧延方向が不明な場合には、図3に記載の板面内方向A’が圧延直角方向(T方向)に相当するため、板面内方向A’と直角な方向を圧延方向(L方向)とみなしてL断面を観察する。L断面の板厚中央部の板厚方向(N方向)500μm×圧延方向(L方向)100μmを測定した際に、θが0°以上20°以下である結晶粒が長さ100μm以上に連続する領域と、θが20°超90°以下である結晶粒が長さ100μm以上に連続する領域とが、重なって層をなす組織を層状組織とする。なお、θが0°以上20°以下である結晶粒が長さ100μm以上に連続する方向と、θが20°超90°以下である結晶粒が長さ100μm以上に連続する方向は、いずれも圧延方向(L方向)である。図5は、θが0°以上20°以下である結晶粒の領域と、θが20°超90°以下である結晶粒の領域を二値化して示しており、図5中、黒色で図示されている部分が、θが0°以上20°以下の結晶を示す領域である。白色で図示されている部分が、θが20°超90°以下の結晶を示す領域である。
図5では、黒色部分(θが0°以上20°以下の結晶を示す領域)の面積が、断面部分の全面積(100μm×500μm)の32.8%である。本発明において、層状とは、圧延方向(L方向)に100μm以上途切れないで連続している黒色領域と白色領域とが、板厚方向(N方向)に層状に重なるように存在し、かつ、かかる黒色領域が2個以上存在していることを意味している。この観察はSEM/EBSD法等で行えばよい。
θが0°以上20°以下である結晶粒が長さ100μm以上に連続する領域と、θが20°超90°以下である結晶粒が長さ100μm以上に連続する領域とが、層状に分布することで、圧延方向(L方向)および圧延方向に直角な圧延直角方向(T方向)のヤング率は並列型の複合則で強化される。層状になることで並列型の複合則で得られるため、直列型よりも高い値を得ることができる。また、ゴルフクラブヘッドのフェースのようにボールが板厚方向に衝突した際には衝撃に対して強い。
α相の結晶粒において、アスペクト比が3.3以下となる結晶粒の面積割合が50.0%以上
引張特性を改善するためにはミクロ組織制御は重要であり、等軸組織ほど延性に優れることが知られている。しかし、優れた延性が得られるミクロ組織は化学組成によって異なる。そのため、組成に応じて定義を明確にする必要がある。本発明の組成においては、等軸度が50.0%以上において、所定の延性を得られていたことから、等軸度が50.0%以上の等軸組織とする。等軸度は高いほど延性に優れるため、より望ましくは60.0%以上、さらに望ましくは70.0%以上である。
ここで、等軸度とは、α相の結晶粒のアスペクト比が3.3以下である結晶粒を等軸粒とみなしたときに、α相中における等軸粒の面積割合で示される等軸化の程度をいう。また、アスペクト比(AR)とは、結晶粒の長軸の長さを短軸の長さで除算して得られる商である。
等軸度の測定では、EBSD法によってL断面において圧延方向に200μm、板厚方向に1mmの領域(もしくは複数視野でこれに相当する面積となるように測定してもよい)を500倍以上の倍率でステップサイズを0.5μm以下として測定する必要がある。また、測定試料は熱間圧延後そのままでは熱間圧延で残留したひずみによって測定が難しくなる上、板を製品へ熱間加工する場合にはその加熱によって組織が変化する。そこで、900〜950℃で1h、空冷の熱処理を行うことで、熱延板においても製品加工後であっても同様の指標で管理することができる。アスペクト比は、測定した200μm×1mmの領域において、株式会社TSLソリューションズのソフトウェアOIM Analysis6.1を用いて、結晶方位差が15°以上である場合を結晶粒界とみなして結晶粒を区分するとともに、結晶粒径が2μm以下の結晶粒を除外して算出した。
(特性)
ゴルフクラブヘッドのフェース部材には、ヤング率がT方向で135GPa以上、L方向で115GPa以上であり、密度が4.43g/cm以下であり、引張強度(TS)がL、T方向とも1000MPa以上、比強度が226kN・m/kg以上であることが必要である。さらに、製造時の取り扱いのため、破断伸びがL、T方向ともに4%以上必要である。酸化においては、800℃で100h保持後の酸化増量が10.0mg/cm以下であることが評価目安となる。また、熱間引張試験(グリーブル1000℃)で評価した、最大変形応力(変形抵抗)が100MPa以下、絞りが80%以上であることが望ましい。なお、これらの評価を得るための試験方法、測定方法については後述する。
本発明のチタン合金板は、これらの特性をすべて満たす。
(製造方法)
次に、本実施形態にかかるチタン合金板の製造方法の一例を述べる。なお、本実施形態にかかるチタン合金板の製造方法は以下の製造方法に限定されない。以下の製造方法は、好ましい製造方法の1つであり、以下の製造方法であれば本実施形態にかかるチタン合金板を製造することができる。
この一例の製造方法の特徴は、熱間圧延をβ変態点以上の温度に加熱して行うことと、β変態点以上の温度域に加熱保持されている時に粗大な組織を形成しておくことである。これによって熱間圧延後に本発明に必要なミクロ組織を形成させることができる。そのために、後述する鋳塊製造、熱間加工1、熱間加工1のひずみ除去(800℃以上で30分以上保持)、熱間加工2、熱間圧延、その他の工程の順に行う必要がある。
鋳塊製造
先ず、上記のように規定した所定の化学組成の鋳塊を、電子ビーム溶解、真空アーク溶解、プラズマアーク溶解などの方法で製造する。
熱間加工1
この工程は凝固欠陥の解消を目的とした工程である。凝固組織の破壊も目的に含まれるが、本発明のような高合金では凝固組織が比較的小さいため、十分に凝固組織の破壊ができていなくてもよい。製造した鋳塊はβ単相領域(β変態点以上の温度)に加熱し、断面減少率20%以上の加工を行う。なお、断面減少率20%以上の加工は最終ヒートで行えばよく、その前に20%以下の加工を行い、リヒートしてもよい。ここでいうβ変態点以上の温度に加熱、とは、熱間加工開始時にβ変態点以上の温度とすることをいうのであって、熱間加工終了時には、β変態点を下回ってもよい。この熱間加工1は、圧延でも鍛造でも熱間加工であれば特に限定されない。
800℃以上で30分以上保持。
熱間加工1においてひずみが導入され、そのひずみが残っている場合には、その後の熱間加工2で加工した場合に熱間加工1で残ったひずみに熱間加工2のひずみが上乗せされるため、熱間圧延のための加熱で再結晶が起こり、組織が微細となってしまうことが懸念される。結晶粒が微細すぎると、本発明の層状組織とすることができない。熱間加工1では加工終了がβ変態点を下回っている場合があり、その場合には熱間加工2に供する時点ですでにひずみが導入されており、再結晶によって比較的微細な組織となってしまう。そのために熱間加工1の後に800℃以上で30分以上保持する必要がある。加熱温度が800℃未満、あるいは、30分未満であると、十分にひずみを除去できないことがある。
ただし、この工程は熱間加工1で加工を終えてから熱間加工2の加工開始までに800℃以上に累積で30分以上保持されていれば、実施しなくてもよい。たとえば、熱間加工1の後に室温付近まで冷却する場合である。熱間加工1完了後から800℃以下に冷却されるまでの時間が30分以上を要した場合は冷却中にこの工程が行われたとみなすことができるため、この工程を行う必要はない。また、前記冷却工程で800℃までに30分を要しなかった場合には熱間加工2のための加熱保持において800℃以上で30分以上保持されるのであれば、この工程を行う必要はない。加えて、熱間加工1の後の800℃までの冷却に要した時間と、熱間加工2のための加熱保持で800℃以上に保持された時間の合計が30分を超える場合も、この工程を行う必要はない。
なお、この工程は完了後に室温まで冷却してもよく、そのまま熱間加工2の温度まで加熱したり、そのまま熱間加工2を施したりしてもよい。
熱間加工2
この工程では不均一に小さなひずみを分布させるための工程である。この工程を経ることで、熱間圧延時の加熱保持での異常粒成長によってβ粒が粗大になる。そのため、小さな加工率(低圧下)で加工を行う必要があり、例えば、減面率(断面減少率)は、1%以上15%以下である。なお、加工温度は特に制限されないが、加工時に割れが発生すると歩留り低下になるため、500℃以上、望ましくは600℃以上で行うのがよく、上限は酸化による歩留り低下を考慮して1250℃、望ましくは1200℃、さらに望ましくは1150℃である。
通常は、粗大な組織が形成されると熱間加工性を阻害するため、加工率が小さな加工は避け、ある程度大きな加工率で加工を行う。しかし、熱間加工2では、小さなひずみを不均一に分布させることを目的としているため、小さな加工率(低圧下)、たとえば減面率1%以上15%以下で加工を行う。これにより、熱間加工2の後の熱間圧延の加熱時に粗大な組織が形成され、熱間圧延後に層状組織が形成されやすくなる。層状組織は粗大な結晶粒が延ばされることに起因して形成されるものであり、結晶粒を粗大化させることで層状組織を形成させやすくなる。なお、本発明で熱間加工性に劣る粗大な組織とするのは、後工程の熱間圧延がβ変態点以上の温度で行われることで熱間加工性に及ぼす組織の影響が小さくなるため、熱間加工性に大きな問題を生じないためである。なお、この工程後は室温付近まで冷却してもよく、室温付近まで冷却せずに所定の温度に保持して熱間圧延を行ってもよい。
熱間圧延
この工程では粗大になったβ粒がβ変態点以上の温度での圧延によって圧延方向に延ばされるとともに、RD//<011>集合組織が主に形成される。なお、RD//<011>集合組織とは、BCC金属組織の圧延集合組織として一般的に認められる、結晶の<110>軸が圧延方向RDに揃った集合組織である。そのため、RD//<011>となっているβ粒(結晶の<110>軸が圧延方向RDであるβ粒であり、結晶の<110>軸が圧延方向RDに対して20°のずれを許容する)が隣接する確率が高くなったり、隣接していなくとも長くのばされている。また、粗大な組織が再結晶する場合、粗大であるほど再結晶粒は大きくなるため、圧延中に動的再結晶が生じても再結晶したβ粒は比較的大きいため、長く伸ばされる。そのため、RD//<011>となっているβ粒が層状になっている。なお、β変態点−50℃まではβ相が50%以上であり、β単相域に近い状態であるため、ここまでは実質β変態点以上の温度での圧延に含めて考える。
その後、β変態点−50℃を下回ると、β相からα相への変態が進む。また、α相はβ相の結晶方位に対応した方位を持つ。そのため、形成されるα粒も[0001](c軸)の方向で分類すると層状となっている。なお、RD//<011>となっているβ粒であった部分はc軸が板幅方向に配向したα粒となる。
β相がα相に変態しても圧延が進むため、これらは加工によって結晶方位が変化する。しかしながら、c軸が板幅方向へ配向したα粒は加工によってひずみが導入されても、c軸を中心とした結晶回転が主に起こるため、c軸の配向はほとんど変化しない。そのため、板幅方向にc軸が配向した結晶粒の集合体は圧延方向に延ばされた集合体のままとなる。一方、その他の方向にc軸が配向した結晶粒では圧延によってc軸周りの結晶回転だけでなく、c軸の配向も変化するため、c軸の配向で区別した結晶粒もしくはその集合体はいくつかに分断される。したがって、c軸が板幅方向に配向したα相が層状に残存することとなり、本発明の層状組織が形成される。
以上のような理由から、例えば次のような条件で熱間圧延を行う。すなわち、熱間加工2の後に、β変態点以上の温度に加熱し、圧延率80〜99%の圧延を行う。β変態点以上の温度への加熱はβ変態点+50℃以上が望ましく、より望ましくはβ変態点+75℃である。保持時間はスラブサイズにもよるが、1時間以上が望ましい。また、長時間保持すると酸化が進むため、10時間以下が望ましい。この工程は一方向の熱間圧延で行う。圧延率が小さいと十分な集合組織制御ができないために80%以上の圧延率が必要となる。さらに、β変態点以上の加熱温度からβ変態点−50℃までの範囲(重要温度範囲)での圧延率を大きくするほど、目的の組織を得られやすくなる。望ましくは、重要温度範囲での圧延率が50%以上である。熱延終了温度が低いと割れが発生するため、熱延終了温度を750℃以上とする必要がある。
ここで、以上のようにして本発明の層状組織が形成される理由は定かではないが、図6(a)〜(d)に示す過程に基づくと考えられる。図6において、(a)は、熱間圧延が行われる前の微細なβ粒組織10を示す。(b)は、熱間圧延の加熱によって形成された粗大なβ粒組織11を示す。(c)は、熱間圧延の圧延初期において、β単相域での圧延によって形成されたRD//<011>集合組織12が横に長く伸ばされる状態を示す。(d)は、熱間圧延の圧延後期において、c軸が板幅方向へ配向したα相と、その他の方向にc軸が配向したα相が層状に形成された層状組織を示す。
図6(a)に示されるように、熱間圧延が行われる前の微細であったβ粒組織10は、熱間圧延で最初に加熱される際に、図6(b)に示されるように、例えば粒径5〜10mm程度の粗大なβ粒組織11となる。これは、熱間加工2が低圧下であったため、歪誘起による異常粒成長が起こり、粗大なβ粒が形成されることによる。
そして、加熱後に圧延(熱間圧延)が開始されると、β変態点以上の加熱温度からβ変態点−50℃の温度域で大圧下が行われる圧延の初期においては、圧延によって生じるすべり変形による結晶回転が進んでいく。これにより、当初は結晶方位が異なったβ粒であってもRD//<011>となるβ粒へと変化する現象が促進される。この現象により、圧延が進むことでRD//<011>となるβ粒が多く形成され、RD//<011>となるβ粒同士が隣接する確率が高くなり、隣接すると圧延方向に長く連続的に分布するようになる。また、RD//<011>となるβ粒が隣接していなくとも粗大であったために長くのばされることで圧延方向に長く連続的に分布する。
一方、全部のβ粒がRD//<011>となるわけではなく、一部のβ粒は、例えば周囲の結晶粒の拘束を受けることにより、RD//<011>にはなれず、結晶方位が異なったβ粒が残ることとなる。そして、このようにRD//<011>以外となるβ粒も圧延方向に長く伸びて分布することとなる。
こうして、図6(c)に示されるように、RD//<011>となったβ粒が圧延方向に長く連続的に分布する領域12と、RD//<011>以外となったβ粒が圧延方向に長く伸びて分布する領域13が、重なった層状の断面組織が形成される。
そして、熱間圧延の後期では、β変態点−50℃未満の温度領域において、α変態が行われる。このα変態の際に、もとのβ粒の配向度が引き継がれ、熱間圧延の圧延初期においてRD//<011>となったβ粒が圧延方向に長く連続的に分布する領域12は、圧延後期には、θが0°以上20°以下である結晶粒が長さ100μm以上に連続する領域15となり、また、熱間圧延の圧延初期においてRD//<011>以外となったβ粒が圧延方向に長く伸びて分布する領域13は、圧延後期には、θが20°超90°以下である結晶粒が長さ100μm以上に連続する領域16となると考えられる。その結果、図6(d)に示されるように、θが0°以上20°以下である結晶粒が長さ100μm以上に連続する領域15と、θが20°超90°以下である結晶粒が長さ100μm以上に連続する領域16とが、重なって層をなす層状組織が得られるものと考えられる。
なお、こうして形成された層状組織は、その後の加工(圧延)によってもRD//<011>となるβ粒から変態したα粒(領域15)はc軸が板幅方向に配向したまま変化しない。しかし、RD//<011>以外のβ粒から変態したα粒(領域16)はc軸の配向は変化するため、いくつかのc軸の配向方向の集団に分断される。したがって、板幅方向にc軸が配向した結晶粒とそれ以外の結晶粒に区別した場合、板幅方向にc軸が配向した結晶粒の集団が圧延方向に伸長しており、断面組織は層状組織となる。
その他の工程
熱間圧延後に脱スケールを行うが、必要に応じて脱スケール前に焼鈍を行ってもよい。
焼鈍を行う場合は脆性相であるα2相が析出しないように750℃以上で行う必要がある。また、加熱される場合には熱延で形成した組織を維持するためにβ変態点未満で行う必要がある。換言すると、焼鈍を行う場合はα+β二相域で行うとよい。保持時間は温度や板厚にもよるが、800℃であれば5分、1000℃であれば1分を目安に行うとよい。脱スケール方法は、一般的に用いられる、ショットブラストおよび酸洗を行う。酸洗に用いる溶液はふっ酸と硝酸の混合酸であり、それ以外には任意に薬液を添加してもよい。また、脱スケールを機械的な切削加工で行ってもよい。
熱延板は必要に応じて形状矯正を行ってもよい。
形状矯正方法は任意であるが、加熱される場合には750℃以上で行う必要がある。これはα2相の析出を抑制するためである。また、加熱される場合には熱延で形成した組織を維持するためにβ変態点未満で行う必要がある。
チタン板をゴルフクラブヘッドのフェースに成形するため、熱間加工を行ってもよい。この場合も、矯正や、焼鈍の場合と同様に、750℃以上、β変態点未満の温度範囲で加工を行う必要がある。熱間加工後に切削等の機械加工や表面処理が施されてもよい。
表1に示す化学組成を有するチタン合金鋳塊を常法によって製造し、表1に成分を示す比較例1〜9、発明例10〜15、比較例16〜18、発明例19〜22、比較例23〜25、発明例26〜29、比較例30、発明例31、32、比較例33〜46、および発明例47の各チタン合金を得た。各々の鋳塊について、表2に示した種々の条件の熱間加工1、発明例47については800℃以上の保持、熱間加工2を施した。800℃以上の保持において、保持した具体的な温度は、それぞれ、熱間加工2の温度である。熱間加工1は、鍛造で行い、熱間加工2は熱延で行った。
熱間加工2を施した熱間加工材について、成分組成と熱間成形性の関係を評価するために、グリーブル試験を行った。具体的な試験方法と結果については、後にまとめて示す。
熱間加工2の後は、表3に示した種々の条件で、熱間圧延を行い、必要に応じて、表3に示した条件の焼鈍を行い、厚さ4mmのチタン合金板とした。
各チタン合金板の成分組成は、分析の結果、表1に示したものとなった。表1のAleqは、[Al%]+10×[O%]の計算値である。表1に示した成分組成は以下のように分析して求めた。
成分分析方法
分析する試料は熱間圧延後(脱スケール済)のチタン合金板の板厚中央部(1/4tから3/4tの範囲)から採取した。
金属元素は、誘導結合プラズマ(ICP:Inductively
Coupled Plasma)発光分析法により分析した。
Oは不活性ガス溶融赤外線吸収法により分析した。
Nは不活性ガス溶融熱伝導度法により分析した。いずれも0.01%未満であった。
Cは高周波燃焼赤外線吸収法により分析した。いずれも0.01%未満であった。
β変態点は、以下の方法で求めた。あらかじめα+β域での加工および再結晶によって等軸のα粒を有する組織とした試料を所定の温度に10分保持後、水冷してミクロ組織観察を行い、等軸α粒が存在しなくなる最小温度を求めた。温度は約5℃毎に変化させたため、等軸α粒が存在しなくなる最小温度と等軸α粒が存在する最大温度の平均値をβ変態点とした。
表1中、「−」は積極的な添加をしていないことを示す。アンダーラインは、成分が発明の範囲外であることを示す。
Figure 0006741171
Figure 0006741171
Figure 0006741171
[ミクロ組織観察]
得られたチタン合金板の金属組織(ミクロ組織)は、以下の方法により観察した。
α相の面積率測定方法と結晶方位分布
SEMにおいてEBSD法を利用した結晶方位解析を行った。解析は株式会社TSLソリューションズのソフトウェアOIM Analysis6.1を用いた。測定試料は表3の条件で作製した厚さ4mmのチタン合金板の板幅方向および圧延方向の中央部から幅10mm×長さ20mmの試料を採取して行った。ここでは、圧延方向をL方向とし、板幅方向、すなわち、圧延直角方向をT方向とした。そして、採取した試料のL断面の板厚中央部を観察位置とした。なお、圧延方向が不明な場合には、上述ように板面内方向A’と直角な方向を圧延方向(L方向)とみなしてL断面を観察する。観察面は湿式でのエメリー紙#2000まで研磨した後、コロイダルシリカ研磨を行うことで鏡面とした。測定する結晶相はα相とβ相とした。結晶方位分布および等軸度の測定では500倍で板厚方向500μm×L方向100μmの領域、ステップサイズを0.5μmとして、試料のL方向について任意の4か所で実施した。
層状組織形成の判断は、T方向に対してα相のc軸がなす角θが0〜20°である結晶粒を黒色とし、それ以外の結晶粒を白色とした二値化することで判断した。具体的には、黒色領域が、L方向(圧延方向RD)に100μm以上途切れないで連続している領域が2個以上存在している場合に層状組織を形成したと判断した。なお、β相は層状組織の判断に対する影響が小さいため、白色とした。また、4視野すべてで層状組織を形成した場合に層状組織を形成したと判断した。層状組織を形成したと判断されなかった場合は、島状組織と表4に記載した。
等軸度は、以下の手順で算出した。まず、α相のみを抽出し、結晶方位差が15°以上である場合を結晶粒界とみなして結晶粒を区分するとともに、結晶粒径が2μm以下の結晶粒を除外した。その後、アスペクト比が3.3以下の結晶粒の面積率を求め、4視野の平均値とした。α相の面積率(α相率)(%)は、1000倍でL断面板厚中央部の板厚方向100μm×L100μmの領域をL方向の任意の3か所でステップサイズ0.2μmとして測定した。この測定結果を用いて、α相の面積率はPhase−Mapから算出した。
測定結果を表4に示した。
Figure 0006741171
また、剛性、比強度、室温延性、耐酸化性および熱間加工性を調査した。具体的には、ヤング率(GPa)、密度(g/cm)、引張強度(MPa)、伸び(破断伸び)(%)、酸化増量(mg/cm)、変形抵抗(MPa)、絞り(%)を測定した。試料は幅中央部から可能な限り圧延方向中央部となる位置から採取した。なお、引張強度と伸び、およびヤング率はL方向とT方向が試験片長手方向となるようにそれぞれ採取した。
各特性の具体的な試験方法は、以下のとおりである。
[剛性評価]
剛性は、以下のヤング率測定方法により得られたヤング率により評価し、ヤング率がT方向で135GPa以上、かつ、L方向で115GPa以上であった場合、剛性が高いと判断した。
ヤング率測定方法
L方向およびT方向のヤング率を測定した。板厚1.5−2.5mmt、幅10mm、長さ60mmの試験片を用いて共振法にて測定を行った。試験片の表面は#600で仕上げた。試験片は板厚中央部から採取した。少なくとも表面から0.5mm以上は除去されている中央部を採取した。
[比強度評価および室温延性評価]
比強度は、以下の引張試験方法により得られた引張強度(TS)を、以下の密度測定方法により得られた密度で徐した値により評価し、比強度がL、T方向とも226kN・m/kg以上であった場合、比強度が高いと判断した。室温延性は引張試験による破断伸びで評価し、4%以上を室温延性が高いと判断した。
密度測定方法
ピクノメーター法(JIS K 0061:2001)もしくは試験片寸法と重量からの算出によって求めることができる。実施例では、試験片寸法と重量から密度(g/cm)を算出した。具体的には板厚(3mm以上)×10mm以上×10mm以上の試験片を用いて、N≧3(Nは試験片の数)で測定し、その平均値で評価した。
引張試験方法
L方向およびT方向の引張強度は最大荷重を引張試験片の初期断面積で除して求めた。L方向およびT方向の破断伸びは破断時の伸び計で得られた変位を標点間距離で除して求めた。引張試験片はJIS13B引張試験片を用いた。引張試験片は機械加工で約0.5mm/面除去することで脱スケールして使用した(脱スケール後に試験片加工した)。標点間距離を50mmとし、引張速度は1mm/minで破断まで実施した。
なお、引張強度(TS)がL、T方向とも1000MPa以上であった場合、引張強度が高いと判断した。また、密度が4.43g/cm以下であった場合、密度が低いと判断した。
[耐酸化性評価]
耐酸化性は、以下の酸化試験方法により得られた酸化増量により評価し、10.0mg/cm以下であった場合、耐酸化性に優れると判断した。
酸化試験方法
板厚×20mm×40mm以上の大きさの試験片を用いた。試験片の表裏面と側面はエメリー紙#400で研磨した。耐熱皿の上に試料側面の1つが接するように立てて設置し、800℃の大気中に100h保持し、酸化増量で評価した。酸化増量は、酸化前後での重量増加量を表面積(表裏面および側面の面積の和)で割った値で評価した。なお、試料を必ずしも耐熱皿に立てる必要はなく、治具を用いて固定してもよいが、その場合は大気と接する面積が少なくならないように、前記表面積に対して、大気と接する表面積が92%以上とならなければならない。実施例では、大気と接する表面積は試料表面積の92.3%であった。また、スケール剥離した場合は剥離したスケールも酸化後の重量に加えた。
[熱間加工性評価]
熱間加工性は、以下の熱間変形抵抗測定方法により得られた最大変形応力(変形抵抗)および絞りにより評価し、最大変形応力(変形抵抗)が100MPa以下、および、絞りが80%以上、であった場合、熱間加工性に優れると判断した。
熱間変形抵抗測定方法
成分組成の影響を評価するために、グリーブル試験機を用いた熱間引張試験で最大変形応力と絞りを評価した。φ10mmの丸棒試験片をArガス雰囲気で通電加熱で1100℃に10min保持した後、1000℃に冷却し、10min保持後、50mm/sで破断するまで引張を行った。加熱時の均熱部分はおおよそ10mmであった。この時の最大変形公称応力(変形抵抗)と破断部の絞りを評価した。なお、試験片は実施例中の熱間加工2が完了した後に、採取した。
[評価結果]
結果について、表5に示した。表5より明らかなように、本発明の規定する成分、組織を満たす発明例は、ヤング率がT方向で135GPa以上、L方向で115GPa以上であり、密度が4.43g/cm以下であり、引張強度がL、T方向とも1000MPa以上であった。さらに、破断伸びがL、T方向ともに4%以上、熱間加工性の評価は1000℃での熱間引張試験で、絞りが80%以上、変形抵抗が100以下、800℃で100h保持後の酸化増量が10mg/cm以下の全てを満たした。すなわち、成分組成および組織のいずれもが本発明の規定範囲内となった、発明例10〜15、19〜22、26〜29、発明例31、32および47は、剛性および比強度が高く、耐酸化性および熱間加工性も優れていた。本発明の規定する成分、組織を満たす発明例は、高温での熱間加工性に優れるため、ゴルフクラブのフェース部材への成形が容易となる。また、ゴルフクラブヘッドのフェース部材として用いた場合、フェースが軽量化され、ヘッドの中心位置などの構造設計の自由度が高まる。
一方、本発明に規定する成分組成、組織の条件を満たさない比較例1〜9、16〜18、23〜25、30、33〜46は、密度、ヤング率、引張強度、伸び、酸化増量のいずれかの値が目標数値以下となった。また、比較例1、5は、本目的の組織の板材に成形できてしまえば、その性能良いが、発明に規定する成分組成を外れているため、そもそも、目的の形状、組織に熱間加工するまでの成形性が悪く、ゴルフクラブのフェース部材等を生産するためには生産性が悪い。
比較例1は、Alが多すぎたため、変形抵抗が大きかった。
比較例2は、Feが多すぎたため、β相が多くなり、α相の面積率が低くなった。その結果、T方向のヤング率が低かった。
比較例3は、Nbが多すぎたため、β相の分布と偏析によって特性がばらつき、T方向の破断伸びが小さかった。
比較例4は、Siが多すぎたため、シリサイド(Ti−Si金属間化合物)が形成されたことにより、L方向およびT方向の破断伸びが小さく、絞りが低下した。
比較例5は、Feが少なすぎたため、絞りが低下した。
比較例6は、Nbが少なすぎたため、酸化増量が大きかった。
比較例7は、Siが少なすぎたため、酸化増量が大きかった。
比較例8は、[Al%]+10×[O%]で求められる値(Aleq)が高すぎたため、L方向およびT方向の破断伸びが小さかった。
比較例9は、Crが多すぎたため、β相が多くなり、α相の面積率が低くなった。その結果、T方向のヤング率が低かった。
比較例16〜18は、Alが多すぎたため、変形抵抗が大きく、[Al%]+10×[O%]で求められる値(Aleq)が高すぎたため、T方向の破断伸びが小さかった。また、NbとSiが含まれていないため酸化増量も大きかった。さらに、比較例16では、熱間加工2の減面率が大きすぎため、島状組織となった。その結果、熱間加工2の減面率のみが異なる比較例17よりも明らかにヤング率が低かった。比較例18では、α+β二相域で熱間圧延したため、θが0°以上20°以下である結晶粒の面積率が小さく、また、島状組織となった。その結果、高Alであるがゆえにヤング率は合格レベルであるが、比較例16や17に比べるとヤング率が低かった。
比較例23は、熱間加工1の減面率が少なすぎたため、凝固偏析及び鋳造組織の破壊が十分でなく、極端な集合組織が形成され、θが0°以上20°以下である結晶粒の面積率が大きかった。その結果、L方向およびT方向の破断伸びが小さかった。
比較例24は、熱間加工2の減面率が大きすぎたため、θが0°以上20°以下である結晶粒の面積率が小さかった。その結果、T方向のヤング率が低くなった。
比較例25は、熱間圧延の圧延率が低くすぎたため、α相の結晶粒の等軸度が低かった。その結果、L方向およびT方向の破断伸びが小さかった。
比較例30は、熱間圧延後にβ域で焼鈍したため、θが0°以上20°以下である結晶粒の面積率が小さかった。その結果、T方向のヤング率が低かった。また、ミクロ組織が針状組織になるため、L方向およびT方向の弾性伸びが小さく、L方向およびT方向の引張強度が低かった。
比較例33は、α+β二相域で熱間圧延したため、θが0°以上20°以下である結晶粒の面積率が小さく、また、島状組織となった。その結果、T方向のヤング率が低かった。
比較例34、35、39は、Alが少なすぎ、NbもSiも添加していない。そのため、密度が高く、L方向の引張強度が低い結果、L方向の比強度が低かった。また、酸化増量も大きかった。
比較例36〜38は、Alが少なすぎるため、比重が重いNbを添加していないにもかかわらず、密度が高かった。
比較例37では、焼鈍したことで再結晶が生じたことでθが0°以上20°以下の結晶粒の割合が減少したため強度がやや低下し、T方向のヤング率が低下した。また、Al量が低いことに加えて焼鈍したことによってL方向の引張強度が低い結果、L方向の比強度が低かった。
比較例39、は、Alが少なすぎ、NbもSiも添加していない。そのため、密度が高く、L方向の引張強度が低い結果、L方向の比強度が低かった。また、酸化増量も大きかった。
比較例40は、Alが少なすぎ、NbもSiも添加していない。そのため、密度が高く、焼鈍で再結晶が生じたためにL方向のヤング率が低かった。また、L方向の引張強度が低い結果、L方向の比強度が低かった。さらに、酸化増量も大きかった。
比較例41は、Feが多すぎたため、β相が多くなり、α相の面積率が低くなった結果、L方向およびT方向のヤング率が低かった。また、Alが少なすぎ、Feも多すぎたため、密度も大きかった。さらに、NbやSiを添加していないため、酸化増量も大きかった。
比較例42は、Ti-6Al-4Vであり、L方向のヤング率が低かった。また、Alが少なすぎため、密度が大きかった。さらに、NbやSiを添加していないため、酸化増量も大きかった。
比較例42は、Alが少なすぎたため、密度が大きく、L方向の強度も低くなった結果、L方向の比強度が低かった。
比較例43、Cが多すぎため、L方向およびT方向の破断伸びが小さく、変形抵抗も大きく、絞りが小さかった。
比較例44は、Oが多すぎたため、Aleqが高く、破断伸びがL方向およびT方向で低かった。
比較例45は、Nが多すぎたため、Aleqが10以下であっても、破断伸びがL方向およびT方向で低かった。
比較例46は、Hが多すぎたため、Aleqが10以下であっても、破断伸びがL方向およびT方向で低かった。
Figure 0006741171
本発明により、軽く、高剛性で飛距離が期待できるゴルフクラブが製造できるという特段の産業上の利用性がある。
RD…圧延方向、TD…圧延直角方向
10 β粒組織
11 粗大なβ粒組織
12 RD//<011>集合組織、RD//<011>となったβ粒が圧延方向に長く連続的に分布する領域
13 RD//<011>以外となったβ粒が圧延方向に長く伸びて分布する領域
15 θが0°以上20°以下である結晶粒が長さ100μm以上に連続する領域
16 θが20°超90°以下である結晶粒が長さ100μm以上に連続する領域

Claims (3)

  1. 質量%で、
    Al:7.50〜8.50%、
    Fe:0.70〜1.50%、
    Nb:0.50〜2.00%、
    Si:0.05〜0.30%、
    Cr:0.0〜2.0%、
    O:0.25%以下、
    N:0.010%以下、
    C:0.010%以下、
    H:0.013%以下を含有し、
    残部がTiおよび不純物からなり、
    Al含有量およびO含有量が式(1)を満足するチタン合金板であって、
    チタン合金板の金属組織に占めるα相の面積率が85.0%以上であり、
    α相の結晶粒において、アスペクト比が3.3以下となる結晶粒の面積割合が50.0%以上であり、
    EBSD(電子線後方散乱回折)法によって求められた、α相を構成する最密六方格子におけるc軸の最大集積方向の板面内方向と、c軸のなす角θが0°以上20°以下である結晶粒の面積率が、25.0%以上40.0%以下であり、
    θが0°以上20°以下である結晶粒が長さ100μm以上に連続する領域と、θが20°超90°以下である結晶粒が長さ100μm以上に連続する領域とが、層状組織を形成していることを特徴とする、チタン合金板。
    [Al%]+10×[O%]≦10.00% 式(1)
    ここで、式(1)中の[Al%]には、Al含有量(質量%)が代入され、[O%]には、O含有量(質量%)が代入される。
  2. θが20°超30°以下である結晶粒の面積率が、5.0%以上20.0%以下である、請求項1に記載のチタン合金板。
  3. 請求項1または2に記載のチタン合金板が、フェース部材に用いられたゴルフクラブヘッド。
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