JP7180782B2 - チタン合金板及び自動車排気系部品 - Google Patents

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Description

本発明は、チタン合金板及び自動車排気系部品に関する。
本願は、2019年07月30日に、日本に出願された特願2019-139944号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
自動車等の排気装置には、エキゾーストマニホールド及びエキゾーストパイプが備えられている。エンジンから排出され、エキゾーストマニホールドによって集約された排気ガスは、エキゾーストパイプを介して車体後方の排気口から外部に排出される。エキゾーストパイプの途中には、触媒装置やマフラー(消音器)が配置されており、排気ガスの浄化及び排気音の消音がなされる。本明細書では、エキゾーストマニホールドからエキゾーストパイプ、排気口までの全体を通して、「排気装置」と称する。また、排気装置を構成するエキゾーストマニホールド、エキゾーストパイプ、触媒装置、マフラーなどの部品を「排気系部品」と称する。
従来、四輪自動車や二輪車(以下、自動車等という)の排気装置の構成部材には、高強度で耐食性や加工性等に優れたステンレス鋼が使用されていた。しかしながら、近年では、ステンレス鋼よりも軽量であり、高強度で耐食性にも優れるチタン材が使用されつつある。例えば、二輪車の排気装置には、JIS2種の工業用純チタン材が使われている。さらに、最近では、JIS2種の工業用純チタン材に代わって、より耐熱性が高いチタン合金が使用されつつある。
特に最近は、排気ガス温度が上昇する傾向にある。そのため、エキゾーストパイプにおける排気ガス温度は、800℃程度に達する場合があり、この温度域においても十分な高温強度の確保が求められる。また、排気系部品とする際には、加工を伴うので、その素材は、室温での加工性に優れることも求められる。
特許文献1には、Siを0.15~2質量%含むとともに、Alを0.30質量%未満に規制し、残部チタンおよび不可避的不純物からなる耐高温酸化性に優れたチタン合金が記載されている。
また、特許文献2には、質量基準でAl:0.30~1.50%と、Si:0.10~1.0%を含有することを特徴とする耐高温酸化性および耐食性に優れたチタン合金が記載されている。
また、特許文献3には、質量%で、Cu:2.1%超~4.5%、酸素:0.04%以下、Fe:0.06%以下を含有し、残部Tiおよび不可避的不純物からなる、冷間加工性に優れる排気装置部材用耐熱チタン合金が記載されている。
また、特許文献4には、質量%で、Si:0.1~0.6%、Fe:0.04~0.2%、O:0.02~0.15%であり、FeとOの含有量の合計が、0.1%以上、0.3%以下、残部Tiおよび、単独の含有量が0.04%未満の不可避的不純物からなる、耐酸化性に優れた排気系部品用チタン合金材が記載されている。
しかしながら、特許文献1、特許文献3、特許文献4に記載されたチタン合金は、化学成分を限定することで、高温強度を確保しようとするものであり、800℃以上の高温域における強度は必ずしも十分ではなかった。また、特許文献2に記載されたチタン合金は、一定の高温強度が得られるものの、室温での加工性が必ずしも十分ではなかった。
日本国特開2007-270199号公報 日本国特開2005-290548号公報 日本国特開2009-030140号公報 日本国特開2013-142183号公報
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、800℃以上の高温環境下における高温強度に優れるとともに、室温での加工性に優れたチタン合金板及び自動車排気系部品を提供することを課題とする。
本発明の要旨は以下の通りである。
[1]本発明の一態様に係るチタン合金は、化学組成が、質量%で、0~0.60%のSi及び0~4.5%のGeの一方または両方と、0~1.0%のAl、0~1.0%のZr、及び0~2.0%のSnからなる群から選択される1種または2種以上と、0~1.5%のCuとを、下記式(1)~(3)を満足するように含有し、0~1.0%のNbと、0~0.080%のFeと、Mo、Ta、W、V、Cr、Ni、Mn及びCoとを、下記式(4)を満足するように含有し、Ga:0~10.0%、In:0~10.0%、及びHf:0~10.0%、を含有し、O:0.070%以下、に制限し、残部がTi及び不純物からなり、組織中に、平均結晶粒径5μm以上30μm以下のα相と、金属間化合物とを有し、前記金属間化合物は、Si、Geの一方または両方とTiとを含むTiSiGe系金属間化合物を含み、さらに、任意に、Cu及びTiを含むTiCu系金属間化合物を含み、前記組織中における前記TiSiGe系金属間化合物及び前記TiCu系金属間化合物の合計の面積分率が1.0%以上5.0%以下であり、かつ、前記TiSiGe系金属間化合物の面積分率が、1.0%以上である。
1.5%≦[Ge%]+7.5×[Si%]≦4.5% … (1)
[Cu%]+1.5×[Zr%]≦1.5% … (2)
10.0%≦12×[Al%]+10×[Cu%]+3.5×[Zr%]+6×[Sn%]≦36.5% … (3)
[Mo%]+0.2×[Ta%]+0.285×[Nb%]+0.4×[W%]+0.67×[V%]+1.25×([Cr%]+[Ni%])+1.7×([Mn%]+[Co%])+2.5×[Fe%]≦0.4% … (4)
ただし、式(1)~(4)において、[Ge%]、[Si%]、[Zr%]、[Al%]、[Sn%]、[Mo%]、[Ta%]、[Nb%]、[W%]、[V%]、[Cr%]、[Ni%])、[Mn%]、[Co%]、[Fe%]は、各元素の質量%での含有量であり、当該元素を含有しない場合は0を代入する。
[2]上記[1]に記載のチタン合金板は、前記TiSiGe系金属間化合物の平均粒径が、0.1~2.0μmの範囲であってもよい。
[3]上記[1]または[2]に記載のチタン合金板は、個数比率で、前記TiSiGe系金属間化合物の80%以上が、前記α相の結晶粒界に存在してもよい。
[4]上記[1]に記載のチタン合金板は、前記化学組成が、質量%で、0.5%~1.5%のCuを含み、前記TiCu系金属間化合物の面積分率が0%超であってもよい。
[5]上記[4]に記載のチタン合金板は、前記TiSiGe系金属間化合物及び前記TiCu系金属間化合物の平均粒径が、0.1~2.0μmの範囲であってもよい。
[6]本発明の別の態様に係る、自動車排気系部品は、筐体が、[1]~[]の何れかに記載のチタン合金板からなる。
本発明の上記態様によれば、800℃以上の高温環境下における高温強度に優れるとともに、室温での加工性に優れたチタン合金板及びそのチタン合金を備える自動車排気系部品を提供できる。
本発明者らは、高温強度と加工性とを同時に向上させる方法について検討した。
チタン合金板の高温強度を向上させるためには、合金元素を含有させて固溶強化させることが通常行われる。しかしながら、高温強度が向上したチタン合金板は、室温でも高強度になるため、成形加工時のスプリングバックが大きくなり、室温での加工性(成形加工性)が低下する。例えば、溶接などを自動化して排気装置等の製品を効率的に生産するためには、スプリングバックによる従来からの位置ずれを小さくする必要がある。
スプリングバックを抑制するには、ヤング率を高めるか、強度、特に0.2%耐力を低くすることが有効である。ヤング率を高めるためには、AlまたはOを添加するか、集合組織を発達させる必要があるが、これではスプリングバック以前に材料の延性やプレス加工性自体を低下させてしまう。そこで、本発明者らは、室温での強度を低くしつつ、高温での強度を増加させる方法を検討し、温度によって固溶限が大きく異なる元素を活用することを知見するに至った。これによって、成形加工される室温においては固溶元素を析出させることで強度を比較的低くし、高温域で使用される際には析出物を一部固溶させることで固溶強化させ、残りの析出物は高温域で残存させてα相の微細粒化を保つことで強度低下を防止し、かつ、β相は析出させないようにすることで、高温強度が確保可能なチタン合金板を発明するに至った。特に、高温域での使用時に析出物を残存させるためには、より多くの析出物を析出させるようにすることが重要である。
ここで、上述した0.2%耐力について説明する。チタン合金板では、引張試験において、降伏現象を示す場合と示さない場合とがある。降伏現象を示さない場合には、弾性変形と塑性変形との境界を便宜上明らかにするため、降伏応力に相当する応力を耐力と定義する必要がある。一般には、鋼の降伏時の永久ひずみが約0.002(0.2%)であることから、除荷時の永久ひずみが0.2%になる応力を0.2%耐力と呼ぶ。
本発明者らの検討の結果、本発明に係るチタン合金板では、降伏現象を示す場合でも、0.2%耐力と降伏応力とが同等であった。そのため、本実施形態では、この0.2%耐力を降伏応力に代用する。
また、室温での加工性を確保するためには、α相の平均結晶粒径を大きくして延性を高めるとよい。α相の平均結晶粒径を大きくするには、冷間圧延後に焼鈍を行ってα相の粒成長を促すことが有効である。ただし、冷間圧延後の焼鈍時に組織中に金属間化合物が生成すると、金属間化合物によってα相の粒成長が阻害される。そのため、焼鈍は、金属間化合物が析出しないような比較的高い温度域において行うことが望ましい。
一方、合金元素が金属組織中に固溶すると、金属組織が固溶強化され、0.2%耐力が向上してスプリングバックが発生しやすくなり、室温での加工性が阻害される。従って、室温での加工性を確保するためには、金属間化合物がある程度あったほうがよい。
本発明者らが検討した結果、金属間化合物を析出させるために、冷間圧延後の焼鈍によってα相の結晶粒を成長させた後、α相の結晶粒が成長する温度域よりも低い温度域において長時間にわたって2回目の焼鈍を行えば、α相の平均結晶粒径を大きくした上で、一定量の金属間化合物を析出させることができることを見出した。
仮に、金属間化合物を析出させてからα相の結晶粒を大きくするための焼鈍を行うと、先に析出させた金属間化合物が焼鈍によって金属組織中に再固溶してしまい、室温での加工性を確保できなくなる。そこで、α相の結晶粒を大きくするための焼鈍を先に行い、その後、金属間化合物を析出させる2回目の焼鈍を行う必要がある。
また、チタン合金の金属組織は、冷間圧延が施されることによってロール圧下力を受けるため、圧延方向に引き延ばされた結晶粒によって構成された組織になる。従って、α相の平均結晶粒径を制御するための焼鈍は、冷間圧延後に実施する必要がある。
以上説明したように、α相の平均結晶粒径を大きくした上で、一定量の金属間化合物を析出させるためには、冷間圧延後にα相の平均結晶粒径を制御する1回目の焼鈍を行い、次いで、金属間化合物を析出させる2回目の焼鈍を行うことが望ましい。
一方、高温強度を確保するためには、前述のように、チタン合金板が使用温度に加熱された際に、金属間化合物が固溶して固溶強化することが望ましい。ただし、金属間化合物が全て固溶すると、ピン止め効果が失われてα相の粒成長が起こり、高温強度が低下するおそれがあるので、α相の粒成長を抑制できるように金属間化合物は高温でもある程度残存することが好ましい。固溶強化の効果を発揮させ、かつ、高温下で金属間化合物を残存させるためには、室温の状態で多量の金属間化合物を析出させておくことが好ましい。また、高温で残存しやすい種類の金属間化合物を析出させることが有効である。本発明者らが検討した結果、冷間圧延後の2回目の焼鈍によって金属間化合物を析出させる前に、所定の金属間化合物の構成元素を固溶状態のまま局所的に濃化させておくことで、高温で残存しやすい種類の金属間化合物を、室温の状態で多量に析出させることができることが分かった。また、そのためには、熱間加工と冷間圧延との間においてα+β域の温度で焼鈍を行って固溶元素をβ相に濃化させるとよいことも分かった。
このような工程を経て得られたチタン合金板は、α相の結晶粒径が比較的大きく、かつ、高温で残存しやすいTiSiGe系金属間化合物が多量に析出した組織を有するものとなり、低温での加工性を確保することができる。
また、Si及びGeは金属間化合物の共析温度が800℃を超えるので、800℃超での使用時にも金属間化合物が存在し、結晶粒の粗大化を抑制できる。また、Al、Zr、Snのような固溶限が広い合金元素を含んでいるので、高温時に金属間化合物の一部を金属組織中に固溶させてSi及びGeによる固溶強化に加えて、Al、Zr、Snの固溶強化によって高温強度を向上させることができる。
更に、固溶限が広いCuを含む場合、室温近傍ではTiCu系金属間化合物として存在していたCuが高温時に金属間化合物の一部を金属組織中に固溶することで固溶強化をより一層図ることができ、より高温強度を向上させることができる。
本発明に係るチタン合金板は、特に自動車や二輪車等の排気装置の排気系部品の構成部材として好適に用いられる。排気装置は、チタン合金板を成形加工することにより各種の排気系部品とし、これらの排気系部品を組み合わせることで製造される。その後、排気装置は自動車等に搭載され、使用される。排気装置が使用されることにより、構成部材であるチタン合金板は、高温の排気ガスに曝されて高い温度に加熱される。本発明に係るチタン合金板は、金属組織中に金属間化合物が存在し、かつ、α相の平均結晶粒径が比較的大きいため、強度が低くなっている。したがって、本発明に係るチタン合金板は、室温での加工性に優れ、成形加工時のスプリングバックも小さい。
また、成形後、排気装置としての使用時に、チタン合金板が高温の排気ガスに曝されて高温に加熱されることで、成形加工時に存在していた金属組織中の金属間化合物が固溶して固溶強化が図られ、優れた高温強度が確保されるようになる。特に本発明に係るチタン合金板は、800℃以上での高温強度をより高めることができる。
以下、本発明の一実施形態に係るチタン合金板(本実施形態に係るチタン合金板)について詳細に説明する。
本実施形態に係るチタン合金板は、化学組成が、質量%で、0~0.60%のSi及び0~4.5%のGeの一方または両方と、0~1.0%のAl、0~1.0%のZr、及び0~2.0%のSnからなる群から選択される1種または2種以上と、0~1.5%のCuとを、下記式(1)~(3)を満足するように含有し、0~1.0%のNbと、0~0.080%のFeと、Mo、Ta、W、V、Cr、Ni、Mn及びCoとを、下記式(4)を満足するように含有し、Ga:0~10.0%、In:0~10.0%、及びHf:0~10.0%、を含有し、O:0.070%以下、に制限し、残部がTi及び不純物からなり、組織中に、平均結晶粒径5μm以上30μm以下のα相と、金属間化合物とを有し、前記金属間化合物は、Si、Geの一方または両方とTiとを含むTiSiGe系金属間化合物を含み、さらに、任意に、Cu及びTiを含むTiCu系金属間化合物を含み、前記組織中における前記TiSiGe系金属間化合物及び前記TiCu系金属間化合物の合計の面積分率が1.0%以上5.0%以下であり、かつ、前記TiSiGe系金属間化合物の面積分率が、1.0%以上である。
1.5%≦[Ge%]+7.5×[Si%]≦4.5% … (1)
[Cu%]+1.5×[Zr%]≦1.5% … (2)
10.0%≦12×[Al%]+10×[Cu%]+3.5×[Zr%]+6×[Sn%]≦36.5% … (3)
[Mo%]+0.2×[Ta%]+0.285×[Nb%]+0.4×[W%]+0.67×[V%]+1.25×([Cr%]+[Ni%])+1.7×([Mn%]+[Co%])+2.5×[Fe%]≦0.4% … (4)
ただし、式(1)~(4)において、[Ge%]、[Si%]、[Zr%]、[Al%]、[Sn%]、[Mo%]、[Ta%]、[Nb%]、[W%]、[V%]、[Cr%]、[Ni%])、[Mn%]、[Co%]、[Fe%]は、各元素の質量%での含有量であり、当該元素を含有しない場合は0を代入する。
上記チタン合金板は、金属間化合物が、TiSiGe系金属間化合物である場合、前記TiSiGe系金属間化合物の平均粒径が、0.1~2.0μmの範囲であってもよく、前記TiSiGe系金属間化合物の80%以上が、前記α相の結晶粒界に存在してもよい。
また、上記チタン合金板は、Cuを含み、金属間化合物が、TiSiGe系金属間化合物及びTiCu系金属間化合物である場合、前記TiSiGe系金属間化合物及び前記TiCu系金属間化合物の平均粒径が、0.1~2.0μmの範囲であってもよく、個数比率で、前記TiSiGe系金属間化合物及び前記TiCu系金属間化合物の80%以上が、前記α相の結晶粒界に存在してもよい。
上述の通り、本実施形態に係るチタン合金板は、Cuの含有を必須とせず、金属間化合物としてTiSiGe系金属間化合物を含む場合と、Cuを含有し、金属間化合物としてTiSiGe系金属間化合物及びTiCu系金属間化合物を含む場合と、のいずれでもよいので、以下のように言い換えることもできる。
[1’]0質量%以上0.60質量%以下のSiと、0質量%以上4.5質量%以下のGeとの一方または両方と、
1.0質量%以下のAlと、1.0質量%以下のZrと、2.0質量%以下のSnとのうちの1種または2種以上と、
1.0質量%以下(0質量%を含む)のNbと、を含有し、
下記式(1’)~(3’)を満足し、
Feを0.080質量%以下、Oを0.070質量%以下にそれぞれ制限し、
更に、Mo、Ta、W、V、Cr、Ni、Mn、Co及びFeが下記式(4’)を満足するように制限し、
残部がTi及び不純物からなり、
組織中に、平均結晶粒径5μm以上30μm以下のα相と、金属間化合物とを有し、前記金属間化合物には、Si、Geの一方または両方とTiとを含むTiSiGe系金属間化合物を含み、
前記組織中における前記TiSiGe系金属間化合物の面積分率が1.0%以上5.0%以下である、
ことを特徴とするチタン合金板。
1.5%≦[Ge%]+7.5[Si%]≦4.5% … (1’)
1.5[Zr%]≦1.5% … (2’)
10.0%≦12[Al%]+3.5[Zr%]+6[Sn%]≦36.5% … (3’)
[Mo%]+0.2[Ta%]+0.285[Nb%]+0.4[W%]+0.67[V%]+1.25([Cr%]+[Ni%])+1.7([Mn%]+[Co%])+2.5[Fe%]≦0.4% … (4’)
ただし、式(1’)~(4’)において、[Ge%]、[Si%]、[Zr%]、[Al%]、[Sn%]、[Mo%]、[Ta%]、[Nb%]、[W%]、[V%]、[Cr%]、[Ni%])、[Mn%]、[Co%]、[Fe%]は、各元素の含有量(質量%)であり、当該元素を含有しない場合は0を代入する。
[2’]0質量%以上0.60質量%以下のSiと、0質量%以上4.5質量%以下のGeとの一方または両方と、
1.0質量%以下のAlと、1.0質量%以下のZrと、2.0質量%以下のSnとのうちの1種または2種以上と、
1.0質量%以下(0質量%を含む)のNbと、
1.5質量%以下のCuと、を含有し、
下記式(5’)~(7’)を満足し、
Feを0.080質量%以下、Oを0.070質量%以下にそれぞれ制限し、
更に、Mo、Ta、W、V、Cr、Ni、Mn、Co及びFeが下記式(8’)を満足するように制限し、
残部がTi及び不純物からなり、
組織中に、平均結晶粒径5μm以上30μm以下のα相と、金属間化合物とを有し、前記金属間化合物には、Si、Geの一方または両方とTiとを含むTiSiGe系金属間化合物を含むとともに、Cu及びTiを含むTiCu系金属間化合物を含み、
前記組織中における前記TiSiGe系金属間化合物及び前記TiCu系金属間化合物の合計の面積分率が1.0%以上5.0%以下であり、前記TiSiGe系金属間化合物の面積分率が1.0%以上であり、前記TiCu系金属間化合物の面積分率が0%超である、
ことを特徴とするチタン合金板。
1.5%≦[Ge%]+7.5[Si%]≦4.5% … (5’)
[Cu%]+1.5[Zr%]≦1.5% … (6’)
10.0%≦12[Al%]+10[Cu%]+3.5[Zr%]+6[Sn%]≦36.5% … (7’)
[Mo%]+0.2[Ta%]+0.285[Nb%]+0.4[W%]+0.67[V%]+1.25([Cr%]+[Ni%])+1.7([Mn%]+[Co%])+2.5[Fe%]≦0.4% … (8’)
ただし、式(5’)~(8’)において、[Ge%]、[Si%]、[Cu%]、[Zr%]、[Al%]、[Sn%]、[Mo%]、[Ta%]、[Nb%]、[W%]、[V%]、[Cr%]、[Ni%])、[Mn%]、[Co%]、[Fe%]は、各元素の含有量(質量%)であり、当該元素を含有しない場合は0を代入する。
[3’]前記TiSiGe系金属間化合物の平均粒径が、0.1~2μmの範囲である、[1’]に記載のチタン合金板。
[4’]前記TiSiGe系金属間化合物及び前記TiCu系金属間化合物の平均粒径が、0.1~2μmの範囲である、[2’]に記載のチタン合金板。
[5’]個数比率で、前記TiSiGe系金属間化合物の80%以上が、前記α相の結晶粒界に存在する、[1’]または[3’]に記載のチタン合金板。
[6’]個数比率で、前記TiSiGe系金属間化合物及び前記TiCu系金属間化合物の80%以上が、前記α相の結晶粒界に存在する、[2’]または[4’]に記載のチタン合金板。
[7’]更に、Ga、In、Hfのいずれか1種または2種以上を、Ga≦10質量%、In≦10質量%、Hf≦10質量%を満たす範囲で含有する、[1’]乃至[6’]の何れか一項に記載のチタン合金板。
すなわち、Cuを含有しない場合には、チタン合金板は、Si、Geの一方または両方と、Al、Zr、Snのうちの1種または2種以上と、1.0質量%以下(0質量%を含む)のNbと、を含有し、Si、Ge、Al、Zr、Snの含有量が所定の関係式を満足し、Feを0.080質量%以下、Oを0.070質量%以下にそれぞれ制限し、更に、Mo、Ta、W、V、Cr、Ni、Mn、Co及びFeが所定の式を満足するように制限し、残部がTi及び不純物からなる組成を有するものを例示できる。
一方、Cuを含有する場合には、チタン合金板は、Si、Geの一方または両方と、Al、Zr、Snのうちの1種または2種以上と、1.0質量%以下(0質量%を含む)のNbと、Cuとを含有し、Si、Ge、Al、Cu、Zr、Snの含有量が所定の関係式を満足し、Feを0.080質量%以下、Oを0.070質量%以下にそれぞれ制限し、更に、Mo、Ta、W、V、Cr、Ni、Mn、Co及びFeが所定の式を満足するように制限し、残部がTi及び不純物からなる組成を有するものを例示できる。
以下、各元素及びその含有量について説明する。ここで、化学組成における各元素の含有量についての「%」は、質量%である。
(Si、Geの一方または両方)
本実施形態に係るチタン合金板は、800℃以上に加熱した場合において組織中にα相と金属間化合物とが存在している必要がある。チタンと化合して金属間化合物を形成する元素としては、共析型元素であるSi、Ni、Cu、Sn、Ge、Bi等が挙げられる。これらの共析型元素のうち、共析温度が800℃以上になる元素はSi及びGeであり、その他の元素は共析温度が800℃よりも低い。従って本実施形態に係るチタン合金板は、Si、Geの一方または両方の含有を必須とする。
また、Siは、800℃以上において一部がα相に固溶し、固溶強化により高温強度を向上させるとともに、耐酸化性も向上させる。Geは、Siと同様に一部がα相に固溶して固溶強化させて高温強度を向上させる。
Si、Geの一方または両方を含有させる場合は、下記(1)式を満たす必要がある。また、Si、Geの両方を含有させる場合は、(1)式を満たす限りにおいて、いずれか一方の下限を0%以上にしてもよい。SiまたはGeのいずれか一方を含有させる場合は、(1)式を満たすように、Si含有量は0.20%以上であり、Ge含有量は1.5%以上である。
Siを単独で含む場合は、Si含有量は、0.30%以上が好ましく、0.40%以上がより好ましい。
Geを単独で含む場合は、Ge含有量は、2.0%以上が好ましく、3.0%以上がより好ましい。
SiとGeの両方を含む場合、Si含有量は0.10%以上が好ましく、0.20%以上がより好ましく、0.30%以上が更に好ましい。また、Ge含有量は0.5%以上が好ましく、0.6%以上がより好ましく、0.8%以上が更に好ましい。
1.5%≦[Ge%]+7.5×[Si%]≦4.5% … (1)
ただし、(1)式において、[Ge%]、[Si%]は、各元素の含有量(質量%)であり、当該元素を含有しない場合は0を代入する。
Si、Geの含有量が少なすぎると、すなわち(1)式における[Ge%]+7.5×[Si%]が1.5%未満になると、800℃以上で安定な金属間化合物(TiSiGe系金属間化合物)を形成することができない。
本実施形態に係るチタン合金板は、その他の元素や不純物元素の影響によって、実質的に830℃を超えるとβ相が析出してしまう。従って、実用的な上限温度は820℃程度である。820℃でα相と金属間化合物の相構成を維持するためには、(1)式における[Ge%]+7.5×[Si%]は3.0%以上が好ましい。
ただし、SiやGeの含有量が多いと、室温での延性が低下し、加工性が大きく劣化する。そのため、(1)式における[Ge%]+7.5×[Si%]は4.5%以下とする。よって、Si含有量は0.60%以下であり、Ge含有量は4.5%以下である。Si含有量は好ましくは0.50%以下であり、Ge含有量は好ましくは4.0%以下である。
(Al、Zr、Snのうちの1種または2種以上)
本実施形態に係るチタン合金板では、800℃以上の温度においてSiやGeが金属間化合物(TiSiGe系金属間化合物)として残存する。従って、α相に固溶するSi、Geの固溶量は、それぞれの最大量(飽和量)となり、Si、Geのみでは固溶強化に限界がある。そこで、本実施形態に係るチタン合金板には、より一層の固溶強化を図るために、Si、Ge以外の固溶強化元素を含有させる必要がある。特に、SiやGeよりも固溶範囲が広く、高温強度を向上させる元素を含有させることでより一層の高強度化が可能となる。ただし、β安定化能が大きな元素を含有させると800℃でβ相が析出するようになるので、β安定化能が小さな元素もしくはα安定化元素を含有させる必要がある。このような元素としてAl、Zr、Snが挙げられる。そのため、本実施形態に係るチタン合金板では、Al、Zr、Snのうちの1種または2種以上を含有する。
また、本実施形態に係るチタン合金板では、必要に応じて、更にCuを含有してもよい。
チタン合金にAl、Zr、Snのうちの1種または2種以上を含有させ、必要に応じてCuを含有させる際には、下記の(2)式及び(3)式を満たすように含有させる。
(2)式の左辺([Cu%]+1.5×[Zr%])が1.5%を超えると、800℃以上の高温でβ相が析出するおそれがある。(2)式の左辺は、好ましくは1.4%以下であり、より好ましくは1.3%以下である。
(3)式の中辺(12×[Al%]+10×[Cu%]+3.5×[Zr%]+6×[Sn%])は、各元素の固溶強化量がat%換算した時の固溶量に相関するため、各元素の原子量をCu換算し、さらに各元素の高温での強化能を掛け合わせて得られたものである。(3)式の中辺が10.0%未満になると、固溶強化が不十分になり、800℃以上の高温強度が低下する。(3)式の中辺は、好ましくは11.0%以上であり、より好ましくは12.0%以上、更に好ましくは13.0%以上である。
一方、(3)式の中辺が36.5%を超えると、800℃以上の高温でβ相が析出するおそれがある。また、Al、Cu、及びSn、またはAl、Cu、Zr及びSnが過剰に含まれることになり、室温における延性が低下するおそれがある。(3)式の中辺は、好ましくは32.0%以下であり、より好ましくは30.0%以下である。
[Cu%]+1.5×[Zr%]≦1.5% … (2)
10.0%≦12×[Al%]+10×[Cu%]+3.5×[Zr%]+6×[Sn%]≦36.5% … (3)
ただし、(2)式及び(3)式において、[Zr%]、[Al%]、[Sn%]、[Cu%]は、各元素の含有量(質量%)であり、当該元素を含有しない場合は0を代入する。
また、Al、Zr、Sn、Cuのそれぞれの含有量は、後述する範囲とすることが好ましい。
Alは、固溶強化に有効な元素であるとともにα安定化元素でもある。この効果を得る場合、Al含有量を0.1%以上とすることが好ましい。
一方、Al含有量が過剰になると室温での双晶変形が阻害され、室温における延性が低下する。従って、Alを含有する場合でも、Al含有量は1.0%以下とする。Al含有量は、0.5%以下が好ましい。(2)式~(3)式を満たせばAl含有量は0%であってもよい。
Zrは、固溶強化に有効な元素であるとともにβ安定化能が小さい元素である。この効果を得る場合、Zr含有量を0.1%以上とすることが好ましく、0.2%以上がより好ましい。
Zr含有量が1.0%以下であれば820℃でもβ相が生成しないので、Zr含有量は1.0%以下とする。(2)式~(3)式を満たせばZr含有量は0%であってもよい。
Snは、固溶強化に有効な元素であるとともにβ安定化能が小さい元素である。この効果を得る場合、Sn含有量は、0.5%以上が好ましく、0.6%以上がより好ましく、0.7%以上が更に好ましい。
また、Snは、Si、Geと同様に金属間化合物を形成させる元素であり、室温における延性を低下させる元素である。ただし、SnとTiとを含む金属間化合物は、形成されにくいことに加えて、800℃以上の高温では存在したとしても残存せずにほぼ全てが固溶する。つまり、Snは固溶強化で高温強度を向上させる。Snを10.0%以上含有してもβ相は生じないが、Snを過剰に含有すると室温での双晶変形が阻害されることで延性が低下する。そのため、Sn含有量は2.0%以下とする。Sn含有量は、好ましくは1.5%以下であり、より好ましくは1.4%以下である。(2)式~(3)式を満たせばSn含有量は0%であってもよい。
Cuは、固溶強化に有効な元素であるとともにβ安定化能が小さい元素である。また、Cuは、Si、Geと同様にTiと化合してTiCuなどの金属間化合物を形成させる元素であり、室温における延性を向上させる元素である。ただし、CuとTiとを含む金属間化合物(TiCu系金属間化合物)は、800℃以上の高温では残存せずに、ほぼ全てが固溶する。
上記の効果を得るため、Cuを本実施形態に係るチタン合金板に含有させてもよい。その場合、Cu含有量は0.5%以上が好ましく、0.7%以上がより好ましく、0.8%以上が更に好ましい。
Cu含有量が1.5%以下であれば820℃でもβ相が生成しないので、Cu含有量は1.5%以下とする。Cu含有量は、1.3%以下が好ましく、1.2%以下がより好ましい。
また、Cuを実質的に含有しないチタン合金板は、Cuを含有するチタン合金板に比較し、耐高温塩害性に優れ、融雪塩が散布された環境での使用により適している。これは、高温塩害が、融雪塩に含まれる塩素が高温でチタン酸化物と反応して大気中での酸化を促進させる現象であり、塩素との反応を促進するCuを含有する場合には、含有されない場合に比べて酸化がより一層促進されるからである。
そのため、耐高温塩害性の観点からは、Cu含有量を0.7%未満とすることが好ましい。より好ましくは0.5%未満であり、さらに好ましくは0.3%以下であり、一層好ましくは0.1%以下である。
Cu含有量は0%であってもよい。
(Nb:0~1.0%)
Nbは、耐酸化性を向上させる元素である。そのため、必要に応じて含有させてもよい(含有させなくてもよい)。耐酸化性の向上効果を得るには、Nbを0.05%以上含有させることが好ましい。
一方、Nb含有量が過剰になると、含有量に対して耐酸化性の向上効果が小さくなり、また、β相が形成されやすくなる。また、Nbは高価な元素である。そのため、含有させる場合でも、Nb含有量を1.0%以下とする。Nb含有量は、好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.4%以下とする。
(Fe:0~0.080%)
Feは、チタン合金に不可逆的に含有される元素であって、β安定化元素である。Feが過剰に含まれるとβ相が形成されやすく、α相の結晶粒の成長が妨げられる。室温において十分な延性を得るためには、α相の結晶粒を成長させる必要があるので、Fe含有量は少ないほうが好ましい。Fe含有量が0.080%超になると、上記の悪影響が顕著になるので、Fe含有量は0.080%以下に制限する必要がある。Fe含有量は、好ましくは0.070%以下、より好ましくは0.060%以下である。Fe含有量は、少ないほど好ましいので0%でもよいが、0.001%未満に低減するためには製造コストが高くなる。そのため、0.001%以上の含有は許容し、Fe含有量を0.001%以上としてもよい。
(Mo、Ta、W、V、Cr、Ni、Mn、Co)
Mo、Ta、W、V、Cr、Ni、Mn、Coは、FeやNbと同様にβ相を安定化させる元素である。そのため、極力低減させる必要がある。これらの元素の含有量は、Fe含有量、Nb含有量とともに下記の(4)式を満たす範囲に制限する必要がある。(4)式の左辺が0.4%を超えると、β相が析出しやすくなるので好ましくない。
(4)式の左辺の下限は限定する必要はないが、実質的に0.01%である。
[Mo%]+0.2×[Ta%]+0.285×[Nb%]+0.4×[W%]+0.67×[V%]+1.25×([Cr%]+[Ni%])+1.7×([Mn%]+[Co%])+2.5×[Fe%]≦0.4% … (4)
(4)式において、[Mo%]、[Ta%]、[Nb%]、[W%]、[V%]、[Cr%]、[Ni%])、[Mn%]、[Co%]、[Fe%]は、各元素の含有量(質量%)であり、当該元素を含有しない場合は0を代入する。
(O:0.070%以下)
O(酸素)は、チタン合金に不可逆的に含有される元素である。Oを過剰に含有すると、室温での強度が向上して延性が低下する。Oは、高温での強度に対する寄与はほとんどないので、O含有量は少ないほうが好ましい。
O含有量が0.070%超になると、上記の悪影響が顕著になるので、O含有量は0.070%以下とする。O含有量は、好ましくは0.065%以下、より好ましくは0.060%以下である。O含有量は、少ないほど好ましいので0%もよいが、0.001%未満に低減するためには製造コストが高くなる。そのため、0.001%以上の含有は許容し、O含有量を0.001%以上としてもよい。
(Ga、In、Hf)
Ga、In、Hfは、固溶強化に有効な元素であり、1種または2種以上を必要に応じて含有させてもよい。固溶強化の効果を発揮させるためには、各元素を少なくとも0.1%以上含有させることが好ましい。一方、これらの元素は高価であるとともに、チタン合金板の比重を高める元素である。そのため、含有させる場合でも、Ga含有量、In含有量、Hf含有量は、それぞれ、10.0%以下とする。Ga含有量、In含有量、Hf含有量は、それぞれ、5.0%以下が好ましく、1.0%以下がより好ましく、0.5%以下が更に好ましい。
本実施形態に係るチタン合金板の化学組成の残部は、Ti及び上記以外の他の不純物である。
本実施形態に係るチタン合金板の化学組成は、以下の方法で求めることができる。
チタン合金板の板厚全厚を含むように試験片を採取する。ただし、炭素を分析する場合は各表面から全厚10%の厚さを除去する。分析前にアセトン超音波洗浄を行う。酸素は不活性ガス溶融赤外線吸収法、窒素及び水素は不活性ガス溶融熱電導度法、炭素は高周波燃焼赤外線吸収法、及びその他含有金属はJIS H1632-1:2014に従い、前記試験片を酸で分解した後、誘導結合プラズマ(ICP)発光分析法により分析し、各元素の化学組成を求める。
次に、本実施形態に係るチタン合金板の組織について説明する。
本実施形態に係るチタン合金板は、組織中に、平均結晶粒径5μm以上30μm以下のα相と、金属間化合物とを有する。
本実施形態に係るチタン合金板において、Cuを含有しない場合には、金属間化合物として、Si、Geの一方または両方とTiとを含むTiSiGe系金属間化合物が含まれる。この場合の組織中におけるTiSiGe系金属間化合物の面積分率は1.0%以上5.0%以下である。
一方、Cuを含有する場合には、金属間化合物として、Si、Geの一方または両方とTiとを含むTiSiGe系金属間化合物と、Cu及びTiを含むTiCu系金属間化合物とが含まれる。この場合の組織中におけるTiSiGe系金属間化合物及びTiCu系金属間化合物の合計の面積分率は1.0%超5.0%以下であり、TiSiGe系金属間化合物の面積分率は1.0%以上であり、TiCu系金属間化合物の面積分率は0%超である。
つまり、本実施形態に係るチタン合金板において、前記TiSiGe系金属間化合物及び前記TiCu系金属間化合物の合計の面積分率が1.0%以上5.0%以下であり、かつ、前記TiSiGe系金属間化合物の面積分率が、1.0%以上である。ただし、Cuを含有しない場合、前記TiCu系金属間化合物は生じず、面積分率は0%である。
金属間化合物は体積分率の測定が難しいため、面積分率で評価する。
以下、本実施形態に係るチタン合金板の組織の詳細について説明する。
[金属間化合物]
本実施形態に係るチタン合金板は、TiSiGe系金属間化合物を含む。
TiSiGe系金属間化合物は、Si、Geの一方または両方とTiとを含む金属間化合物であり、より好ましくはSi、Geの一方または両方とTiとからなる金属間化合物である。TiSiGe系金属間化合物には、Si、Geと一部置換可能な金属元素が含まれてもよい。TiSiGe系金属間化合物として例えば、TiSi、TiGe、TiSiGe(a~dは正の実数)等を例示でき、より具体的には、TiSi、TiSi、TiSi、TiGe、TiZrSi等を例示できる。
TiSiGe系金属間化合物は、室温から830℃程度の温度範囲において、チタン合金の組織中に比較的安定して存在する。800℃以上ではTiSiGe系金属間化合物の一部が固溶するものの、室温において多量に析出させておくことで800℃以上の高温域において十分な量を残存させることができる。
TiSiGe系金属間化合物が残存することで、高温時のα相の粒成長を防止できる。また、TiSiGe系金属間化合物の一部が固溶することで、チタン合金の固溶強化を図ることができ、高温強度を高められる。また、室温にてTiSiGe系金属間化合物が組織中に存在することにより、チタン合金のスプリングバックを抑制することで加工性を向上させる。
また、本実施形態に係るチタン合金板がCuを含む場合は、金属間化合物としてTiSiGe系金属間化合物だけでなく、TiCu系金属間化合物を更に含む。TiCu系金属間化合物は、Cu及びTiを含む金属間化合物であり、より好ましくはCu及びTiからなる金属間化合物である。TiCu系金属間化合物として例えば、TiCu等を例示できる。
TiCu系金属間化合物は、室温から790℃程度の温度範囲においてチタン合金の組織中に比較的安定して存在する。TiCu系金属間化合物が組織中に存在することにより、チタン合金の延性が高くなり、加工性が向上する。
一方、790℃を超えると組織中にCuが固溶して固溶強化が図られる。また、Cu含有量によってはβ相が析出する。
[金属間化合物の面積分率及びα相の面積分率]
本実施形態に係るチタン合金板は、室温において、金属組織中に上述の金属間化合物を析出させることによって、固溶強化を抑制し、0.2%耐力を低下させ、これによって加工性を向上させる。この効果を得るためには、Cuを含まないチタン合金板中には、TiSiGe系金属間化合物が面積分率の合計で1.0%以上析出している必要がある。好ましくは、2.0%以上であり、より好ましくは3.0%以上である。ただし、金属間化合物が多量に析出しすぎると、析出強化により室温での延性を低下させる場合があるので、TiSiGe系金属間化合物の面積分率の合計を5.0%以下とする。
一方、Cuを含むチタン合金板中では、TiSiGe系金属間化合物が1.0%以上析出している必要があり、同時にTiCu系金属間化合物が0%超析出していることが好ましい。すなわち、TiSiGe系金属間化合物及びTiCu系金属間化合物が面積分率の合計で1.0%超析出していることが好ましい。
しかしながら、これらの金属間化合物が多量に析出しすぎると、析出強化により室温での延性が低下する場合がある。そのため、TiSiGe系金属間化合物及びTiCu系金属間化合物の面積分率の合計を5.0%以下とする。
本実施形態に係るチタン合金板は、TiSiGe系金属間化合物を多く含むことで、800℃以上の高温に曝された際に一部が固溶して固溶強化が図られるとともに、残部が残存してα相の粒成長を抑制して高温強度の低下を抑制できる。
また、TiCu系金属間化合物はCuを含む場合に含まれるものであるため、Cuを含まないチタン合金板ではその下限値を0%とし、Cuを含むチタン合金板ではその下限値を0%超とする。
金属間化合物以外の残部はα相であり、α相の面積分率は95.0%以上99.0%以下となる。一般にチタン合金板にはβ相が存在する場合があるが、本実施形態に係るチタン合金板にはβ相は存在しないか、存在したとしても金属間化合物の量に対して極微量である。そのため、β相が含まれる場合は金属間化合物の面積分率に含めてもよい。また、α相の結晶粒の粗粒化を阻害しない程度であれば、ごく微量のβ相の混入を排除するものではない。
本実施形態に係るチタン合金板では、チタン合金板のL断面(圧延方向及び板厚方向に平行な断面)の組織を元素マッピングした際に、SiまたはGeの一方または両方が平均組成よりも多く含有され、Tiが同時に検出された領域を、TiSiGe系金属間化合物と特定する。
具体的には、走査型電子顕微鏡(SEM)に付属するエネルギー分散型X線分光器(EDX)もしくは波長分散型X線分光器(WDS)によって元素分布を測定する。測定は加速電圧:15kVで測定面積:50μm×50μmを、0.2μm間隔で走査して測定する。このとき、Feの濃化領域と重複せずにSi,Geが母相よりも濃化している領域がTiSiGe系金属間化合物であると特定する。「母相よりも濃化している」の目安は質量%での濃度が母相の15倍以上である。Feの濃化領域はβ相である。
上述のように、TiSiGe系金属間化合物を特定し、測定面積と特定(検出)された領域の大きさとに基づき、組織におけるTiSiGe系金属間化合物の面積分率を求めることができる。
また、チタン合金板の組織の断面を元素マッピングした際に、CuとTiとが同時に検出された領域を、TiCu系金属間化合物と特定する。また、検出された領域の大きさに基づき、組織におけるTiCu系金属間化合物の面積分率を求めることができる。
本実施形態に係るチタン合金板には、室温における加工性及び高温強度を阻害しない限度で、TiSiGe系金属間化合物、TiCu系金属間化合物以外の金属間化合物が存在していてもよい。TiSiGe系金属間化合物、TiCu系金属間化合物以外の金属間化合物の実質的な上限は0.5%である。
また、α相の面積分率は、上述の要領で、チタン合金板の組織の断面を元素マッピングし、TiSiGe系金属間化合物またはTiCu系金属間化合物と特定された面積を、前記測定面積から減算した差を測定面積で除することで求める。極微量β相が存在する場合、β相は金属間化合物の面積分率に含まれる。
[金属間化合物の平均粒径]
本実施形態に係るチタン合金板は、室温では、TiSiGe系金属間化合物やTiCu系金属間化合物が所定の面積分率で析出することにより、α相中の金属間化合物の固溶量が少なく、0.2%耐力が低くなる。一方、析出した金属間化合物は、高温に曝されると、再度α相中に固溶するので、高い高温強度が得られる。
しかしながら、粗大な金属間化合物が析出していると、高温に曝された時に固溶しにくく、十分な高温強度が得られない場合がある。従って、Cuを含有しないチタン合金板では、TiSiGe系金属間化合物の平均粒径を2.0μm以下とすることが好ましい。より好ましくは1.0μm以下である。しかしながら、金属間化合物が微細に分散しすぎると、室温での析出強化の効果が大きくなり、延性が低下する。また、金属間化合物が微細に分散し過ぎると、800℃以上の高温加熱時に金属間化合物の固溶が進み、金属間化合物の残存率が低下し、結晶粒のピン止め効果が低減してα相が粒成長することが懸念される。そのため、金属間化合物の平均粒径を0.1μm以上とすることが好ましい。
一方、Cuを含有するチタン合金板では、TiSiGe系金属間化合物及びTiCu系金属間化合物の平均粒径を2.0μm以下、より好ましくは1.0μm以下とすることが好ましい。しかしながら、これらの金属間化合物が微細に分散しすぎると、室温での析出強化の効果が大きくなり、延性が低下する。また、これらの金属間化合物が微細に分散し過ぎると、800℃以上の高温加熱時に金属間化合物の固溶が進み、金属間化合物の残存率が低下し、結晶粒のピン止め効果が低減してα相が粒成長することが懸念される。そのため、これらの金属間化合物の平均粒径を0.1μm以上とすることが好ましい。
[金属間化合物の存在領域]
TiSiGe系金属間化合物及びTiCu系金属間化合物は、α相の結晶粒内または結晶粒界に存在する。
Cuを含有しないチタン合金板では、個数比率で80%以上のTiSiGe系金属間化合物が、α相の結晶粒界に存在することが好ましい。個数比率で90%以上のTiSiGe系金属間化合物が、α相の結晶粒界に存在することがより好ましい。大部分の金属間化合物が結晶粒界に存在することで、800℃以上の高温に加熱した際に結晶粒界に金属間化合物が残りやすくなり、高温加熱による粒成長をピン止め効果によって抑制することができる。結晶粒界に存在するTiSiGe系金属間化合物の個数比率が80%未満になると、高温加熱時に結晶粒界に残存する金属間化合物が減少し、α相の結晶粒の粒成長の抑制が困難になる場合がある。
一方、Cuを含有するチタン合金板では、個数比率で80%以上の、TiSiGe系金属間化合物及びTiCu系金属間化合物が、α相の結晶粒界に存在することが好ましい。個数比率で90%以上のTiSiGe系金属間化合物及びTiCu系金属間化合物が、α相の結晶粒界に存在することがより好ましい。大部分の金属間化合物が結晶粒界に存在することで、800℃以上の高温に加熱した際に結晶粒界に金属間化合物が残りやすくなり、高温加熱による粒成長をピン止め効果によって抑制することができる。結晶粒界に存在する金属間化合物の個数比率が80%未満になると、高温加熱時に結晶粒界に残存する金属間化合物が減少し、α相の結晶粒の粒成長の抑制が困難になる場合がある。
[α相の平均結晶粒径]
α相の結晶粒径が小さいほど、強度は高くなるが、室温での延性が低下し、0.2%耐力が高くなって加工性が低下する。本実施形態に係るチタン合金板は排気系部品に適用されることから、室温での加工性をある程度確保することが望ましい。そのため、α相の結晶粒径は5μm以上である。これにより、室温での加工性を確保することができる。α相の結晶粒径は10μm以上であることが好ましい。
一方、結晶粒径が大きいほど室温での延性に優れるものの、結晶粒径が過剰に大きいと、成形によってしわが発生し、外観を損ねる可能性がある。また、結晶粒径が必要以上に大きいと、800℃以上の高温状態において、結晶がさらに粒成長して十分な高温強度が得られないおそれがある。したがって、α相の平均結晶粒径は30μm以下とする。好ましくは25μm以下とする。
本実施形態に係るチタン合金板は、排気系部品への適用を想定し、板厚は2.0mm以下が好ましい。より好ましくは、1.8mm以下、更に好ましくは0.8mm以下である。一方、製造上の観点から、板厚は、0.5mm以上が好ましく、0.7mm以上がより好ましく、0.9mm以上が更に好ましい。
また、本実施形態に係る自動車排気系部品は、筐体に上述した本実施形態に係るチタン合金板を用いたものである。
[製造方法]
次に、本実施形態によるチタン合金板の好ましい製造方法について説明する。
本実施形態に係るチタン合金板は、以下の工程を含む製造方法によって製造することが出来る。
(I)上述した化学成分を有するチタン合金からなるインゴットに熱間加工を施す工程(熱間加工工程)、
(II)熱間加工によって得られたチタン合金板を、820~850℃で1.0分以上焼鈍する工程(熱延板焼鈍工程)、
(III)その後、550℃以下まで5℃/秒以上の平均冷却速度で冷却する工程(冷却工程)、
(IV)冷却後のチタン合金板に、冷間圧延を施す工程(冷間圧延工程)、
(V)冷間圧延後のチタン合金板に対して、750~850℃で20秒以上保持する焼鈍を施す工程(第1焼鈍工程)、
(VI)第1焼鈍工程後のチタン合金板に対して、650~730℃で1時間以上保持する焼鈍を施す工程(第2焼鈍工程)。
以下、各工程について説明する。
[熱間加工工程]
熱間加工工程では、素材を熱間加工することで、熱延板(チタン合金板)とする。熱間加工する素材は、真空アーク溶解や電子ビーム溶解などで製造された、上述の化学組成を有するインゴットを用いる。化学組成は、製造工程で変化しないので、製品で分析しても上述の範囲となる。インゴットには分塊圧延や鍛造を熱間加工前に加えて熱間加工素材としてもよい。
熱間加工としては例えば熱間圧延を例示できる。この場合、800~1100℃にインゴットを加熱して熱間圧延を行うことが好ましい。熱間圧延温度は800℃を下回ると変形抵抗が大きくなり、熱間圧延が困難になる。また、1100℃を超えると、酸化が激しく、熱間圧延によるスケール押し込みやスケール部分が多くなることにより、歩留まりが低下する。
[熱延板焼鈍工程]
次に、熱間圧延後のチタン合金板に対して、820~850℃で1.0分以上保持する熱延板焼鈍を行う。熱延板焼鈍を行うことにより、熱間圧延後のチタン合金板が溶体化して金属間化合物が減少し、後で行う冷間圧延が容易になる。
また、熱延板焼鈍を行うことで、組織をα相とβ相との2相状態とし、かつ、β安定化元素をβ相に濃化させることができる。また、Al及び酸素以外の他の元素はα相よりもβ相に濃化しやすいため、熱延板焼鈍によってβ相にSi及びGeも濃化するようになる。熱延板焼鈍においてSi、Ge、Cuをβ相に十分に濃化させることで、冷間圧延後の焼鈍においてTiSiGe系金属間化合物やTiCu系金属間化合物がより多く析出するようになり、特にTiSiGe系金属間化合物がより多く析出するようになる。
熱延板焼鈍の焼鈍温度を820℃以上にすることで、α相とβ相との2相状態にすることができる。焼鈍温度が820℃未満ではβ相が析出されない場合がある。また、焼鈍温度を850℃以下にすることで、β相の過剰な析出を抑制できる。β相が過剰に析出してβ相の面積分率が増大すると、β相に濃化したSi、Ge、Cuの濃度が低下し、TiSiGe系金属間化合物の析出量が減少してしまうので好ましくない。
また、熱延板焼鈍の焼鈍時間は好ましくは1.0分以上、より好ましくは1.5分以上、更に好ましくは2.0分以上である。焼鈍時間を長くするほど、β相にSi、Ge、Cuをより多く濃化させることができる。ただし、焼鈍時間が長すぎると生産性が低下する。そのため、焼鈍時間は10時間以下がよい。
[冷却工程]
次に、熱延板焼鈍後のチタン合金板を、550℃以下まで5℃/秒以上の平均冷却速度で冷却する。この条件で550℃以下まで冷却することで、β相をα相に変態させ、かつ、β相に濃化したSi、Ge、Cuを金属化合物として析出させないようにする。冷間圧延前に金属間化合物を析出させないことで、冷間圧延を円滑に行うことができる。β相から変態したα相は、固溶元素が過剰に濃化しているためやや不安定な状態になっている。
[冷間圧延工程]
冷却工程後のチタン合金板に対し、必要に応じて脱スケールを行った後、冷間圧延を行う。冷間圧延では均一な組織を得るために、冷間圧延率は50%以上が望ましい。一方、冷間圧延率が95%を超えて冷間圧延をすると、歩留まりを大きく低下させるような耳割れが生じる。そのため、冷間圧延率は95%以下とすることが好ましい。より好ましくは90%以下であり、さらに好ましくは85%以下である。中間焼鈍を施す場合は、中間焼鈍後の冷間圧延で50%以上の冷間圧延率とすればよい。
冷間圧延率は複数回の圧延パスを行った場合の累積圧下率、又は1回のみの圧延パスの圧下率を示す。製造性の観点から1パスでの冷延率は20%以下であることが好ましい。
[第1焼鈍工程]
[第2焼鈍工程]
次に冷間圧延後のチタン合金板に対して、750~850℃で20秒以上保持する1回目の焼鈍を施し、更に、650~730℃で1時間以上保持する2回目の焼鈍を施す。2回にわたる焼鈍を行うことにより、目的とする金属組織が得られる。
<1回目の焼鈍>
1回目の焼鈍(以下、焼鈍1または仕上げ焼鈍1という)では、冷間圧延によって圧延方向に引き延ばされた結晶組織を再結晶化させ、再結晶化によってα相の結晶粒の粒径を調整する。また、熱延板焼鈍後の急冷によってα相に変態させられたβ相を再析出させる。β相は、熱延板焼鈍によって合金元素が濃化した領域において再析出するようになる。この際、金属間化合物は極力析出させないようにして、Si、Ge、Cuを更に濃化させる。
α相の結晶粒の粒径の調整及びβ相の再析出化のためには、750℃以上で焼鈍を行う必要がある。本実施形態に係るチタン合金板は、高温強度を高めるために合金元素を多量に含有しており、750℃を下回る温度ではβ相が析出せず、また、α相の結晶粒の粒径調整に障害が生じる。一方、焼鈍温度が850℃を超えると、β相が多くなるため、α相の結晶粒の調整が困難になる。また、β相が増加するためにSi、Geが濃化した領域が増加することで、焼鈍2における金属間化合物の析出量が多くなることがあり、これによって延性の低下が懸念される。
このように、α相の結晶粒径を所定の粒径にするとともにβ相を析出させるため、焼鈍1は750℃~850℃で実施する。焼鈍1により組織を所望の状態に制御するためには、焼鈍時間20秒(0.3分)以上とすることが好ましい。焼鈍時間(保持時間)が20秒未満では、Si、Ge、Cuの濃化が不十分になるとともに、α相の結晶粒の粒径の調整が不完全になる。焼鈍時間は、1.0分以上がより好ましい。一方、焼鈍時間の上限を限定する必要はないが、焼鈍時間が、5.0分以上であると、生産性が低下する。そのため、焼鈍時間は、5.0分未満が好ましい。
焼鈍1の後の冷却は、金属間化合物の一つであるTiCuの析出速度が極めて遅いことから、空冷や炉冷程度でも大きな問題は無い。
<2回目の焼鈍(金属間化合物の析出処理)>
上記焼鈍1を実施した後のチタン合金板は、金属間化合物がほとんど析出せず、析出したとしても金属間化合物の面積分率は0.5%未満である。金属間化合物が固溶したままでは、固溶強化により0.2%耐力が高くなるので、加工性に優れない。したがって、金属間化合物を所定の面積分率で析出させ、固溶強化を抑制し、0.2%耐力を低くする。本実施形態に係るチタン合金板の製造方法では、金属間化合物を所定の面積分率で析出させるために、焼鈍1の後に650~730℃の焼鈍温度で2回目の焼鈍(以下、焼鈍2または仕上げ焼鈍2という)を施す。
焼鈍2の温度が730℃を超えると、金属間化合物が析出しにくくなる。また、650℃未満であると、TiSiGe系金属間化合物が十分に析出せず、金属間化合物の粒成長も促進されない。従って、焼鈍2は650~730℃の範囲内で施すことが好ましい。より好ましくは670℃~720℃の範囲内である。
また、金属間化合物を十分に析出させるため、焼鈍2の焼鈍時間は1.0時間以上とすることが好ましい。より好ましくは2.0時間以上である。焼鈍時間の上限は特に限定する必要はないが、生産性の観点から50時間以下が好ましく、40時間以下がより好ましい。
本実施形態に係るチタン合金板の製造方法では、750℃以上850℃以下の焼鈍1の後、650℃以上730℃以下の焼鈍2を行うが、焼鈍1の後に室温付近まで冷却し、その後加熱し、焼鈍2を行ってもよい。また、焼鈍1の後に、焼鈍2の温度範囲まで冷却し、そのまま焼鈍2を行ってもよい。
焼鈍1を行ってから加熱炉内で長時間放冷(いわゆる炉冷)を行った場合には、焼鈍2の焼鈍温度である650~730℃の領域を通過することになるが、この場合は、650~730℃の領域を1.0時間以上にわたって維持することができず、1.0時間未満でこの温度域を通過してしまう。従って、焼鈍1の後に炉冷するだけでは、金属間化合物を十分に析出させることが困難である。
焼鈍2によって、主に、TiSiGe系金属間化合物が析出し、更にチタン合金板にCuが含まれる場合はTiCu系金属間化合物が析出する。これらの金属間化合物を構成するSi、Ge及びCuは、熱延板焼鈍から焼鈍1までの工程によってβ相に濃化された状態になっている。焼鈍1に引き続き焼鈍2を行うことでこれらの元素が金属間化合物として析出し、β相はほぼ消失する。β相はα相の粒界に存在しているので、これら金属間化合物の大半はα相の粒界に析出するようになる。高温でのα相の粒成長を抑制するためには、個数比率で80%以上の金属間化合物がα相の粒界に存在するようになることが望ましい。
また、金属間化合物の析出挙動について、TiSiGe系金属間化合物とTiCu系金属間化合物とを比較すると、TiCu系金属間化合物は、TiSiGe系金属間化合物に比べて比較的低温で析出しやすい。また、TiCu系金属間化合物は、TiSiGe系金属間化合物の析出温度域において析出量が少なくなる。このため、焼鈍2において650℃以上730℃以下の温度で1.0時間以上にわたって焼鈍することで、TiCu系金属間化合物よりもTiSiGe系金属間化合物が多く析出するようになる。
TiSiGe系金属間化合物の平均粒径が2.0μm以下となる好ましい要件としては、以下の製造条件と化学組成の要件があげられる。これら要件は全てを満たす必要はなく、一つの要件を満たせば足りる。
製造条件として、第一に、熱延板焼鈍工程及び第1焼鈍工程の保持時間を満たす範囲内で、保持時間を比較的短時間とすること、第二に、第2焼鈍工程の焼鈍温度を満たす範囲内で、焼鈍温度を比較的低くすること、である。金属間化合物の析出数は粒径に影響を与える。また、化学組成の要件として、金属間化合物を構成するSi、Ge、Cuを前述の化学組成を満たす範囲で、比較的多く含有することである。
個数比率で前記TiSiGe系金属間化合物の80%以上がα相の粒界に存在する好ましい要件としては、以下の製造条件等の要件があげられる。これら要件は全てを満たす必要はなく、一つの要件を満たせば足りる。
製造条件として、第一に、熱延板焼鈍工程の保持時間を満たすが、保持時間を比較的長時間とすること、第二に、第2焼鈍工程の焼鈍温度を満たすが、焼鈍温度を比較的高くすること、である。
また、別の態様として、化学組成及び製造方法の要件があげられる。化学組成が(1)式を満たす範囲で比較的値が大きいと粒内に金属間化合物が析出しやすい。一方で、第1焼鈍工程の焼鈍温度を、前記焼鈍温度を満たす範囲で比較的高くすることで、金属間化合物が析出する核であるβ相が形成され、前記TiSiGe系金属間化合物が粒界に析出される割合が高くなる。
以上の工程により、本実施形態に係るチタン合金板を製造する。
本実施形態に係るチタン合金板によれば、高温強度及び、室温における加工性に優れたチタン合金板を提供できる。
また、本実施形態に係るチタン合金板は、所定の化学成分を有するインゴットに熱間圧延及び冷間圧延を施し、その後、2段階の焼鈍を施すことにより製造される。1回目の焼鈍においてチタン合金板中のα相の結晶粒径を5~30μmに調整する。そして、2回目の焼鈍において金属間化合物を析出させて、TiSiGe系金属間化合物及び/またはTiCu系金属間化合物の面積分率を1.0%以上5.0%以下とする。
本実施形態に係るチタン合金板は、このような金属組織を有しており、また、固溶限が広い合金元素が含まれているため、高温強度を維持しつつ、かつ、室温における0.2%耐力を抑制し、加工性を向上させることができる。
表1A~表1Cに示す化学組成を有するチタン合金No.1~No.84を、真空アークボタン溶解によりインゴットとした。作製したインゴットを1000℃で熱間圧延し、10mm厚の熱延板とした。その後、860℃での熱間圧延を行うことで4mm厚の熱延板(チタン合金板)を得た。表1A~表1Cでは、不純物としてのMo,Ta,W,V,Cr,Ni,Mn,Coの含有量の記載を省略し、これら元素の含有量に基づき計算した(4)式の結果を示す。
Figure 0007180782000001
Figure 0007180782000002
Figure 0007180782000003
その後、脱スケール工程もしくは、表2A~表2Cに記載の温度と時間で熱延板焼鈍を行った後に脱スケール工程を施し、その後、冷間圧延率を75%に設定した冷間圧延を施し、厚さ1.0mmの薄板とした。冷間圧延率は複数回の圧延パスを行った累積冷延率である。その後、表2A~表2Cに記載の焼鈍温度及び焼鈍時間で、仕上げ焼鈍1及び仕上げ焼鈍2を施した。このようにして、No.1~84のチタン合金板を製造した。仕上げ焼鈍1の工程後は空冷し、仕上げ焼鈍2の工程後は炉冷した。以上の工程により作製したNo.1~No.84に対し、以下の方法で、室温引張試験、高温引張試験、酸化増量の測定、及び組織観察を行った。結果は表3A~表3Cに示す。
[室温引張試験]
室温での引張試験は、以下の要領で行った。
上記のチタン合金板から、長手方向が圧延方向に対して平行のASTMハーフサイズ引張試験片(平行部幅6.25mm、平行部長さ32mm、標点間距離25mm)を採取した。この試験片に対し、ひずみ速度を、ひずみ1.5%までを0.5%/min、その後破断までを30%/minとして、引張試験を行った。室温における延性及びスプリングバックの評価は、室温での破断伸び(表3A~表3Cでは破断伸びと表記)及び室温での0.2%耐力(表3A~表3Cでは0.2%耐力と表記)で評価した。室温での破断伸びが25.0%以上であり、かつ、0.2%耐力が340MPa以下である場合を、延性が十分でありスプリングバックが小さいとして合格と判定した。
[高温引張試験]
高温での引張試験は、以下の要領で行った。
上記のチタン合金板から、長手方向が圧延方向に対して平行の引張試験片(平行部幅10mm、平行部長さ及び標点間距離30mm)を採取した。この試験片に対し、ひずみ速度を、ひずみ1.5%までを0.3%/min、その後破断までを7.5%/minとして、引張試験を行った。試験雰囲気は、800℃の大気中で行い、試験片が十分に試験温度に達するように、試験雰囲気中に30分間保持した後、試験を行った。
800℃での引張強度(表3A~表3Cでは高温強度と表記)が37MPa以上の場合を、高温強度に優れるとし、合格と判定した。
[酸化増量]
酸化増量は、酸化しやすいチタンでは、排気系などの高温用途に用いる場合、重要な特性である。酸化が進行すると減肉によって強度不足となることや穴が開くなどの不具合が生じる。そのため、酸化のしやすさを示す指標である酸化増量が一定値以下でなければならない。
酸化増量は、上記のチタン合金板から、20mm×20mmの試験片を採取し、表面をエメリー紙#600で研磨し、800℃で100時間、静止大気中に暴露し、暴露後の増加質量を測定し、増加質量を引張試験片の表面積で割った値(増加質量(mg)/試験片の表面積(cm)、以下「酸化増量」と記載する。)で評価した。4.5mg/cm以下を合格とした。
[組織観察]
上記チタン合金板のL断面(圧延方向及び板厚方向に平行な断面)を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察し、反射電子像からα相と金属間化合物とを判別した。金属間化合物は母相であるα相に比べて白色もしくは黒色であるとともに微細な析出物であるため、この特徴からα相と識別できる。この反射電子像からα相の平均結晶粒径は切断法によって求めた。より具体的には、チタン合金板のL断面から1.0mm(板厚と同じ厚さ)×15.0mmの試験片を作成した。試験片を硝酸とふっ化水素酸の混合水溶液で腐食し、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察し、反射電子像を得た。反射電子像からα相の平均結晶粒径は切断法によって求めた。ここで用いた切断法は、1つの線分で切断する結晶粒を10個以上とし、1もしくは複数の線分を圧延方向に5本以上引き、切断する結晶粒の数を100個以上とした。また前記線分は前記試験片の板厚方向に等分に配置した。切断された各α相の結晶粒径から算術平均によりα相の平均結晶粒径を求めた。
金属間化合物の判別は次のようにして行った。TiSiGe系金属間化合物は、SEMに付属のWDS(波長分散型X線分光器)によってチタン合金板のL断面を元素マッピングした際に、SiまたはGeの一方または両方とTiとが同時に検出された領域をTiSiGe系金属間化合物と特定した。また、検出された領域の大きさに基づき、組織におけるTiSiGe系金属間化合物の面積分率を求めた。
また、TiCu系金属間化合物は、WDSによってチタン合金板のL断面を元素マッピングした際に、CuとTiとが同時に検出された領域をTiCu系金属間化合物と特定した。また、検出された領域の大きさに基づき、組織におけるTiCu系金属間化合物の面積分率を求めた。
更に、元素マッピング及び反射電子像から、TiSiGe系金属間化合物及びTiCu系金属間化合物の平均粒径を求めた。
更に、元素マッピング及び反射電子像から、α相の粒界に存在するTiSiGe系金属間化合物及びTiCu系金属間化合物の個数比率を求めた。測定では、ビーム径をφ0.2μm以下とし、ステップサイズは0.2μm、測定視野はL断面の板厚中央部で一辺が50~100μmの正方形領域で2視野以上とした。
表3A~表3Cのα粒径はα相の平均結晶粒径であり、合計面積分率はTiSiGe系金属間化合物及びTiCu系金属間化合物の合計の面積分率であり、金属間化合物平均粒径はTiSiGe系金属間化合物及びTiCu系金属間化合物の平均粒径であり、Ti(Si,Ge)面積分率はTiSiGe系金属間化合物の面積分率であり、TiCu面積分率はTiCu系金属間化合物の面積分率であり、粒界率はα相の粒界に存在するTiSiGe系金属間化合物及びTiCu系金属間化合物の個数比率である。
Figure 0007180782000004
Figure 0007180782000005
Figure 0007180782000006
Figure 0007180782000007
Figure 0007180782000008
Figure 0007180782000009
表1A~表3Cを参照して、本発明例の化学組成は、本実施形態による耐熱チタン合金材の化学組成の範囲内であり、また表3A~表3Cに示すように、α相の平均結晶粒径、金属間化合物の体積分率のいずれもが目標を満足している。その結果、本発明のチタン合金板として必要とされる性能を満足した。
なお、No.80については、試験雰囲気を、820℃とした条件でも高温引張試験を行った(その他の条件は800℃の場合と同じ)。その結果、820℃での引張強度は38MPaであり、820℃でも十分な高温強度を有していた。
No.5は、(3)式を満たさず、高温強度が不十分になった。
No.7は、Si及びGeを含有せず、Al含有量が過剰であり、(1)式を満たさないため、TiSiGe系金属間化合物が析出せず、高温強度が不十分になった。
No.11、12は、Si及びGeを含有しないため、TiSiGe系金属間化合物が析出せず、高温強度が不十分になった。また、No.11,12はα粒径が粗大であり、引張試験後の外観が劣位であった。
No.8は、(3)式を満たさず、熱延板焼鈍温度が低く、焼鈍1の焼鈍時間が長かった。結果、高温強度が不十分になった。
No.9は、(3)式を満たさず、高温強度が不十分になった。
No.10は、Fe量が過剰であり、(3)式及び(4)式を満たさず、高温強度、0.2%耐力及び破断伸びが不十分になった。
No.15は、(1)式を満たさず、Si含有量が過剰だったため、0.2%耐力及び破断伸びが不十分になった。
No.16は、(2)式を満たさず、β相が析出して高温強度が不十分になった。
No.18は、(3)式を満たさず、破断伸びが不十分になった。
No.28は、Al、Zr、Snが含有されず、(1)式を満たさず、Ge含有量が不十分だったため、TiSiGe系金属間化合物が十分に析出せず、高温強度が不十分になった。
No.29は、Al、Zr、Snが含有されず、(1)式を満たさず、Ge含有量が過剰だったため、破断伸びが不十分になった。
No.32は、(2)式の上限を超えたため、β相が析出して高温強度が不十分になった。
No.36は、(3)式の下限を下回ったため、高温強度が不十分になった。
No.37は、(3)式の上限を超えたため、β相が析出して高温強度が不十分になった。
No.38は、Al、Zr、Snが含有されず、β相が析出して高温強度が不十分になった。
No.46は、(3)式を満たさず、破断伸びが不十分になった。
No.47は、(4)式を満たさず、β相が析出して高温強度が不十分になった。
No.49、54、55は、チタン合金の化学組成は発明範囲内だったが、仕上げ焼鈍1の焼鈍温度が高く、TiSiGe系金属間化合物及びTiCu系金属間化合物の合計の面積分率が上限を超えたため、破断伸びが不十分になった。
No.51、52、53は、Al、Zr、Snが含有されず、仕上げ焼鈍2の焼鈍温度が低く、TiSiGe系金属間化合物の面積分率が低くなり、高温強度が不十分になった。
No.57は、チタン合金の化学組成は発明範囲内だったが、熱延板焼鈍を行わなかった。その結果、TiSiGe系金属間化合物の面積分率が低くなり、高温強度が不十分であった。
No.58、59、68は、チタン合金の化学組成は発明範囲内だったが、熱延板焼鈍温度が低かった。その結果、TiSiGe系金属間化合物の面積分率が低くなり、高温強度が不十分であった。No.58、68は、0.2%耐力も高かった。
No.60、69は、チタン合金の化学組成は発明範囲内だったが、熱延板焼鈍温度が高かった。その結果、TiSiGe系金属間化合物の面積分率が低くなり、0.2%耐力が高く、高温強度が不十分であった。
No.61、70は、チタン合金の化学組成は発明範囲内だったが、熱延板焼鈍時間が短かった。その結果、TiSiGe系金属間化合物の面積分率が低くなり、0.2%耐力が高く、高温強度が不十分であった。
No.62は、チタン合金の化学組成は発明範囲内だったが、焼鈍1の温度が高かった。その結果、α相の平均粒径が小さく、0.2%耐力が高く、伸びが低かった。
No.63、71は、チタン合金の化学組成は発明範囲内だったが、焼鈍1の温度が低かった。その結果、α相の平均粒径が小さく、0.2%耐力が高く、伸びが低かった。また、金属間化合物も少なく、高温強度が低かった。
No.64は、チタン合金の化学組成は発明範囲内だったが、焼鈍1の焼鈍時間が短かった。その結果、α相の平均粒径が小さく、0.2%耐力が高く、伸びが低かった。
No.65、72は、チタン合金の化学組成は発明範囲内だったが、焼鈍2の温度が高かった。その結果、TiSiGe系金属間化合物の面積分率が低くなり、0.2%耐力が高く、高温強度が不十分であった。
No.66、73は、チタン合金の化学組成は発明範囲内だったが、焼鈍2の温度が低かった。その結果、TiSiGe系金属間化合物の面積分率が低くなり、高温強度が不十分であった。No.66では0.2%耐力も高かった。
No.67、74は、チタン合金の化学組成は発明範囲内だったが、焼鈍2の時間が短かった。その結果、TiSiGe系金属間化合物の面積分率が低くなり、高温強度が不十分であった。
No.75は、(1)式を満たさず、TiSiGe系金属間化合物の面積分率が低かった。その結果、高温強度が低かった。
No.76は、Si含有量が過剰で、(1)式を満たさなかったため、SiGe系金属間化合物の面積分率が過剰になり、α相の平均結晶粒径が小さくなった。その結果、0.2%耐力が高く、伸びが低かった。
No.77は、Zr含有量が過剰で、(2)式を満たさなかった。その結果、β相が多く析出し、高温強度が低かった。
No.81は、特許文献2の記載に従い作成した、特許文献2の表1、No.3に相当するチタン合金板である。No.81は、熱延板焼鈍温度が低く、第1焼鈍工程が行われていない。その結果、TiSiGe系金属間化合物の面積分率が低くなり、0.2%耐力が高かった。
No.83は、Sn含有量が過剰だったため、0.2%耐力及び破断伸びが不十分であった。
No.84は、Cu含有量が過剰であり、(2)式を満たさず、高温強度が不十分であった。
本発明によれば、800℃以上の高温環境下における高温強度に優れるとともに、室温での加工性に優れたチタン合金板及びそのチタン合金を備える自動車排気系部品を提供できる。

Claims (6)

  1. 化学組成が、質量%で、
    0~0.60%のSi及び0~4.5%のGeの一方または両方と、
    0~1.0%のAl、0~1.0%のZr、及び0~2.0%のSnからなる群から選択される1種または2種以上と、
    0~1.5%のCuとを、下記式(1)~(3)を満足するように含有し、
    0~1.0%のNbと、0~0.080%のFeと、Mo、Ta、W、V、Cr、Ni、Mn及びCoとを、下記式(4)を満足するように含有し、
    Ga:0~10.0%、
    In:0~10.0%、及び
    Hf:0~10.0%、を含有し、
    O:0.070%以下、に制限し、
    残部がTi及び不純物からなり、
    組織中に、平均結晶粒径5μm以上30μm以下のα相と、金属間化合物とを有し、
    前記金属間化合物は、Si、Geの一方または両方とTiとを含むTiSiGe系金属間化合物を含み、さらに、任意に、Cu及びTiを含むTiCu系金属間化合物を含み、
    前記組織中における前記TiSiGe系金属間化合物及び前記TiCu系金属間化合物の合計の面積分率が1.0%以上5.0%以下であり、かつ、前記TiSiGe系金属間化合物の面積分率が、1.0%以上である、
    チタン合金板。
    1.5%≦[Ge%]+7.5×[Si%]≦4.5% (1)
    [Cu%]+1.5×[Zr%]≦1.5% (2)
    10.0%≦12×[Al%]+10×[Cu%]+3.5×[Zr%]+6×[Sn%]≦36.5% (3)
    [Mo%]+0.2×[Ta%]+0.285×[Nb%]+0.4×[W%]+0.67×[V%]+1.25×([Cr%]+[Ni%])+1.7×([Mn%]+[Co%])+2.5×[Fe%]≦0.4% (4)
    ただし、式(1)~(4)において、[Ge%]、[Si%]、[Zr%]、[Al%]、[Sn%]、[Mo%]、[Ta%]、[Nb%]、[W%]、[V%]、[Cr%]、[Ni%])、[Mn%]、[Co%]、[Fe%]は、各元素の質量%での含有量であり、当該元素を含有しない場合は0を代入する。
  2. 前記TiSiGe系金属間化合物の平均粒径が、0.1~2.0μmの範囲である、請求項1に記載のチタン合金板。
  3. 個数比率で、前記TiSiGe系金属間化合物の80%以上が、前記α相の結晶粒界に存在する、請求項1または2に記載のチタン合金板。
  4. 前記化学組成が、質量%で、
    0.5%~1.5%のCuを含み、
    前記TiCu系金属間化合物の面積分率が0%超である、
    請求項1に記載のチタン合金板。
  5. 前記TiSiGe系金属間化合物及び前記TiCu系金属間化合物の平均粒径が、0.1~2.0μmの範囲である、請求項4に記載のチタン合金板。
  6. 筐体が、請求項1~の何れか一項に記載のチタン合金板からなる、自動車排気系部品。
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